JP2017029090A - 人工生体膜を製造するデバイス及び製造方法 - Google Patents

人工生体膜を製造するデバイス及び製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】人工生体膜をより短時間で確実に製造することができるデバイスの提供。【解決手段】水溶液2及び水溶液2の液面に積層した脂質が溶媒に溶解した脂質溶解液3を貯留する貯留槽4と、貯留槽4に向かって突出する先端部分が親水膜で覆われるとともに、前記親水膜に膜輸送蛋白質が結合された金属プローブ6とを備え、金属プローブ6を脂質溶解液3に浸漬させて、人工生体膜を製造するデバイス。前記親水膜が金属イオンを具備し、前記膜輸送蛋白質がタグペプチドを具備し、前記タグペプチドが金属イオンに結合することに親水膜に膜輸送蛋白質結合しているデバイス。前記親水膜がポリエチレングリコールで、前記金属イオンがニッケルイオンで、タグペプチドがHisタグペプチドであるデバイス。【選択図】図1

Description

この発明は、創薬スクリーニング等に用いられる人工生体膜を製造するデバイス及びその製造方法に関する。
生体膜の内外に物質を輸送する膜輸送タンパク質は、薬理作用の作用点ともなる非常に重要な役割を果たす膜タンパク質である一方、その機能が未だ十分に解明されておらず、特に創薬分野において盛んに研究が行われている。そして、このような研究や新薬の開発等に用いられる人工生体膜を製造するものとして、例えば特許文献1記載のデバイスがある。
特許文献1記載のデバイスは、先端曲面が導電性の含水材料からなる突起部と、導電性の水溶液及び該水溶液の液面を覆う脂質が溶解した油性溶液を貯留する貯留槽とを備え、以下のようにして人工生体膜を製造する。
まず、突起部を油性溶液に浸漬する。油性溶液に溶解した脂質は、親水基及び疎水基を備えるので、脂質の親水基が突起部の先端曲面及び油性溶液と水溶液との界面に引き寄せられて、突起部の先端曲面に沿って第1単層を形成するとともに、油性溶液と水溶液との界面に沿って第2単層を形成する。この状態で、さらに突起部を前記界面に近づけると、第1単層と第2単層とが結合して、生体膜の基本構造となる脂質二重層が製造される。その後、水溶液に膜輸送タンパク質を溶解し、脂質二重層に衝突した膜輸送タンパク質を組み込んで人工生体膜を製造する。
特開2014−161821号公報
しかしながら、特許文献1記載のデバイスでは、膜輸送タンパク質が脂質二重層に衝突する確率が低いので、人工生体膜の製造を確実に行うことができないという問題がある。また、人工生体膜が製造されたとしても、膜輸送タンパク質が脂質二重層に衝突するタイミングが分からないので、水溶液に膜輸送タンパク質を溶解した後に一定時間待つ必要があり、人工生体膜の製造に時間がかかるという問題がある。これらの問題は、膜輸送タンパク質の活性の測定効率の低下を招いている。
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであって、人工生体膜をより短時間で確実に製造することができるデバイス等を提供することをその主たる課題とするものである。
本発明の人工生体膜を製造するデバイスは、水溶液及び前記水溶液の液面に積層した脂質が溶媒に溶解した脂質溶解液を貯留する貯留槽と、貯留槽に向かって突出する先端部分が親水膜で覆われるとともに、該親水膜に膜輸送タンパク質が結合された金属プローブとを備え、前記金属プローブを前記脂質溶解液に浸漬させて、人工生体膜を製造することを特徴とする。
上述の構成により、金属プローブを脂質溶解液に浸漬すると、脂質溶解液に溶解した脂質が、水溶液と脂質溶解液との界面及び金属プローブの親水膜に沿ってそれぞれ単層の第1脂質層、第2脂質層を形成する。このとき、親水膜には膜輸送タンパク質が結合しているので、親水膜に沿って形成された第2脂質層は、膜輸送タンパク質を内包する。そのため、金属プローブを前記界面にさらに近付けて、金属プローブの先端部分に第1脂質層と第2脂質層とが結合した脂質二重層を形成すると、同時に膜輸送タンパク質が脂質二重層に組み込まれるので、人工生体膜を短時間で確実に製造することができる。
また、ここで、人工生体膜は機械的な強度が弱く破れ易いので、人工生体膜を分析装置に設置するには手間がかかるという問題があった。しかし本発明では、金属プローブの先端部分に人工生体膜が製造されるので、この金属プローブを電極として用いれば、膜輸送タンパク質を通りぬけるイオンを電流として捉えて、膜輸送タンパク質の分析をそのまま行うことができ、人工生体膜の製造装置を分析装置としても利用することができる。そのため、上述の手間を省いて、膜輸送タンパク質の活性の測定効率の向上を図ることができる。
本発明の人工生体膜を製造するデバイスの具体的な一態様としては、前記親水膜が金属イオンを具備するとともに、前記膜輸送タンパク質がタグペプチドを具備し、前記タグペプチドが前記金属イオンに結合することによって、前記親水膜に前記膜輸送タンパク質が結合しているものを挙げることができる。
この構成により、親水膜表面に膜輸送タンパク質以外の物質が非特異的に吸着することを抑えることができる。また、親水膜表面に膜輸送タンパク質がその機能を失った状態で結合したり、親水膜に入らない状態で結合したりすることを抑えることができる。さらに、膜輸送タンパク質の向きを揃えることができる。
上述の構成の具体例としては、前記親水膜が、ポリエチレングリコールで構成され、前記金属イオンが、ニッケルイオンであり、前記タグペプチドが、Hisタグペプチドであるものを挙げることができる。
本発明の人工生体膜を製造するデバイスの具体的な別の一態様としては、前記膜輸送タンパク質がビオチン化されたタグペプチドを具備するとともに前記親水膜がビオチンと特異的に結合する結合タンパク質を具備し、前記ビオチン化されたタグペプチドと前記結合タンパク質とが結合することによって、前記親水膜に前記膜輸送タンパク質が結合しているものを挙げることができる。
上述の構成によっても、親水膜表面に膜輸送タンパク質以外の物質が非特異的に吸着することを抑えることができ、また、親水膜表面に膜輸送タンパク質がその機能を失った状態で結合したり、親水膜に入らない状態で結合したりすることを抑えることができる。さらに、膜輸送タンパク質の向きを揃えることができる。
上述の構成の具体例としては、前記親水膜が、ポリエチレングリコールで構成され、前記タグペプチドが、aviタグペプチドであり、前記結合タンパク質が、ニュートラアビジンであるものを挙げることができる。
本発明の人工生体膜を製造するデバイスの具体的な一態様としては、前記金属プローブが、金で構成されているものを挙げることができる。
これにより、製造する人工生体膜の大きさ等に合わせた所望の形状に、金属プローブを容易に加工することができる。また、金表面に結合、集積して自発的に薄膜を形成するチオール誘導体を用いれば、より簡便に親水膜を形成することができる。
また、水溶液の液面に脂質が溶媒に溶解した脂質溶解液を積層して、前記水溶液と前記脂質溶解液との界面に沿って前記脂質が並列した第1脂質層を形成し、先端部分の表面を親水膜で覆うとともに、前記親水膜に膜輸送タンパク質を結合した前記金属プローブの先端部分を、前記脂質溶解液に浸漬させて、前記親水膜に沿って前記脂質が並列した第2脂質層を形成し、前記第1脂質層に前記第2脂質層を結合して脂質二重層を形成すると同時に、前記脂質二重層に前記膜輸送タンパク質を組み込んで人工生体膜を形成する人工生体膜の製造方法も本発明の1つである。
本発明によれば、人工生体膜をより短時間で製造することができるとともに、製造装置をそのまま測定装置としても利用することができ、人工生体膜を容易に評価することができる。
本実施形態の人工生体膜の製造デバイスの概略図。 本実施形態の図1のA部分を拡大した模式図。 本実施形態における金属プローブを示す模式図。 (a)(b)本実施形態の人工生体膜の製造工程を示す模式図。 本実施形態の変形例における金属プローブを示す模式図。 (a)(b)(c)(d)(e)本実施形態の金属プローブの親水膜に、イオンチャネルを結合する工程を示す模式図。 (a)実施例1において膜電位固定法を用いた電流変化を示すグラフ。(b)実施例1における電流―電圧曲線を示すグラフ。 実施例1において金属プローブに脂質溶解液を出し入れしたときの電流値の変化を示すグラフ。 (a)実施例2において膜電位固定法を用いた電流変化を示すグラフ。(b)実施例2における電流―電圧曲線を示すグラフ。
本発明の人工生体膜を製造するデバイスの一実施形態について、以下図面を用いて説明する。
本実施形態におけるデバイス1は、例えば創薬スクリーニングテスト等において、生体膜の膜輸送タンパク質の特性を評価するために用いられる人工生体膜を製造するものである。
ここで、生体膜は、親水基及び疎水基を有する脂質が、互いに疎水基が向かい合うように2重に並列した脂質二重層と、脂質二重層に付着する膜タンパク質とで構成されている。この膜タンパク質のうち、脂質二重層を貫通するように組み込まれたものが膜輸送タンパク質である。以下、本実施形態では、膜輸送タンパク質としてイオンチャネルを脂質二重層に組み込んだものを人工生体膜とする。なお、イオンチャネル以外の膜輸送タンパク質を組み込んだものを人工生体膜としてもよい。このイオンチャネル以外の膜輸送タンパク質としては、例えばATP合成酵素、トランスロコンが挙げられる。
デバイス1は、図1に示すように、水溶液2及び脂質が溶媒に溶解した脂質溶解液3を貯留する貯留槽4と、貯留槽4に向かって先端部分が突出する金属プローブ6とを備える。
脂質溶解液3は、油性の溶媒に脂質が溶解したものであって、図1に示すように水溶液2の液面を覆うように層状に積層している。ここで脂質には、生体膜を構成する主成分となる、例えばリン脂質、糖脂質、コレステロール等を用いることができるが、本実施形態ではリン脂質を用いている。このリン脂質は、図2に示すように、コリンやリン酸等で構成される親水性の頭部(以下、親水基ともいう)と、脂肪酸等で構成される疎水性の尾部(以下、疎水基ともいう)とがグリセロール等で結合されたものであり、親水基と疎水基とを備えている。そのため、脂質溶解液3に溶解したリン脂質の一部は、親水基が水溶液2に引き寄せられて、水溶液2と脂質溶解液3との界面に沿って集まり、単層の第1脂質層10を形成する。このとき、リン脂質の疎水基は脂質溶解液3内に留まろうとするので、第1脂質層10においてリン脂質の疎水基は親水基の上方に配置している。
貯留槽4には、脂質溶解液3から水溶液2まで達するように挿入された金属線7を具備する。この金属線7は、金属プローブ6が脂質溶解液3に浸漬した状態で金属プローブ6と一対の電極を構成する。また金属線7及び金属プローブ6には、それぞれリード線8が接続されており、リード線8は、電圧を印加したり、金属プローブ6と金属線7との間に流れる電流を測定したりする外部装置9に接続されている。
しかして金属プローブ6は、図3に示すように、その先端部分の表面が親水膜5で覆われるとともに、親水膜5に膜輸送タンパク質の一種であるイオンチャネルが結合されている。
金属プローブ6は金で構成されており、この金の表面が、ポリエチレングリコール(以下、PEGとも記載する)からなる親水膜5で覆われている。なお、PEG以外に、アガロースやポリエチレンイミン等を用いることもできる。この親水膜5は、例えば金属プローブ6を、PEGを端末にもつチオール誘導体に浸漬して構成することができる。チオール誘導体は、金や白金等の貴金属の表面において結合、集積して自己組織化し、自発的にPEGからなる親水膜5を形成する。
この親水膜5を構成するPEGの官能基は、ニトリロ三酢酸(以下、AB−NTAとも記載する)で修飾されており、AB−NTAの先端には2価のニッケルイオンが存在している。そのため、親水膜5は、金属イオンであるニッケルイオンを具備している。
このニッケルイオンには、図3に示すように、6個のヒスチジンで構成されるHisタグペプチドが配位している。このHisタグペプチドは、ニッケルイオン等の金属イオンと特異的に結合する性質を有する。そして、Hisタグペプチドには、イオンチャネルであるKcsA(E71A)変異体(71番目のグルタミン酸がアラニンに置き換わった変異体)が結合している。
つまり、金属プローブ6には、図3に示すように、その先端部分を覆う親水膜5が形成されるとともに、親水膜5は、該親水膜5を構成するPEGの官能基に修飾されたAB−NTAに配位するニッケルイオンが、Hisタグペプチドと結合することによって、イオンチャネルであるKcsA(E71A)変異体が結合している。
上述のように構成されたデバイス1を用いた人工生体膜の製造方法について、以下説明する。
金属プローブ6の先端部分を脂質溶解液3に浸漬する。これにより、図4(a)に示すように、脂質溶解液3に溶解したリン脂質の親水基が、金属プローブ6の先端部分を覆う親水膜5に引き寄せられて、親水膜5に沿って並列して単層の第2脂質層11を形成する。このとき、親水膜5にはイオンチャネルが結合されているので、形成された第2脂質層11にはイオンチャネルが内包されている。また、リン脂質の疎水基は、親水膜5から離間しようとするので、疎水基は親水基の下方に配置している。
そして、金属プローブ6をさらに脂質溶解液3に浸漬させて、その先端部分が水溶液2と脂質溶解系3との界面に到達すると、図4(b)に示すように、親水膜5に形成された第2脂質層11の疎水基と、水溶液2の液面に形成された第1脂質層10の疎水基とが接触し、これらが結合して、金属プローブ6の先端部分に生体膜の基本構造となる脂質二重層12が形成される。このとき、第2脂質層11に内包されたイオンチャネルが、脂質二重層12の形成と同時に脂質二重層12の内部に組み込まれて、人工生体膜が製造される。
上述のように構成した人工生体膜の製造方法は以下のような格別の効果を奏する。
つまり、金属プローブ6の先端部分を覆う親水膜5にイオンチャネルを結合しているので、親水膜5に沿って形成される第2脂質層11にイオンチャネルが内包する。そのため、このイオンチャネルを内包した状態で、第2脂質層11が第1脂質層10と結合して脂質二重層12を形成するので、脂質二重層12を形成すると同時に、イオンチャネルが脂質二重層12に組み込まれて、人工生体膜を短時間で確実に製造することができる。
また、金属プローブ6の先端部分に人工生体膜が製造されるので、この金属プローブを電極として用いれば、イオンチャネルを介して貯留槽4に貯留された水溶液と親水膜5に含まれる水溶液との間を通りぬけるイオンを電流として捉えて、イオンチャネルの分析をそのまま行うことができ、製造装置を分析装置としても利用することができる。そのため、人工生体膜を分析装置に設置する手間を省いて、イオンチャネルの活性の測定効率の向上を図ることができる。
さらに、金属プローブ6を金で構成しているので、製造する人工生体膜の大きさ等に合わせた所望の形状に、金属プローブ6を容易に加工することができる。また、金表面に結合、集積して自発的に薄膜を形成するチオール誘導体を用いるので、より簡便に親水膜を形成することができる。
上述した本実施形態の変形例として、以下のものが考えられる。
この変形例では、親水膜5にイオンチャネルを結合する方法が異なっているので、その部分について説明する。
図5に示すように、本変形例では、イオンチャネルであるMthKチャネルにaviタグペプチドが結合されるとともに、このaviタグペプチドにビオチンが結合(ビオチン化)されている。このビオチンには、人工ビオチン結合タンパク質(ニュートラアビジン)が結合され、ニュートラアビジンは親水膜5に結合している。ニュートラアビジンは、ビオチンと特異的に結合する性質を備える結合タンパク質である。そのため、この変形例では、ビオチン化されたAviタグペプチド及びニュートラアビジンを介して親水膜5にMthKチャネルが結合している。
この変形例においても、金属プローブの先端部分を覆う親水膜にイオンチャネルが結合されているので、脂質二重層の形成と同時に、該脂質二重層にイオンチャネルが組み込まれ、人工生体膜を短時間で確実に形成することができる。
本発明は上述した実施形態に限られたものではない。
例えば、イオンチャネル、金属イオン、タグペプチド、及び結合タンパク質は、上述の実施形態やその変形例に限られず、適宜適当なものを使用することができる。また、親水膜もPEGに限られず、親水性を備える材料であれば、適宜適当なものを使用することができる。
また、イオンチャネル以外の膜タンパク質を用いた場合であっても、上述のデバイス及び方法を用いて同様の効果を得ることができる。
また、貯留槽に金属線を挿入する構成だけではなく、例えば貯留槽の底面に導電体を配置して、導電板と金属プローブとで一体の電極を構成してもよい。
本発明は、その他その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<実験準備>
・金属プローブ
実験に使用する金属プローブを、金細線(φ:0.25mm)をCaCl溶液中に挿入して電解研磨して針状にして形成する。このとき、オゾンクリーナーを用いて金属プローブの表面の有機物を除去する。
そして、以下のようにして金属プローブの表面処理を行う。
まず、上述のように構成された金属プローブの先端部分を、PEGを端末にもつチオール誘導体であるo−(3−carboxypropyl)−o’−[2−(3−mercaptopropinylamino)ethyl)−polyethylene glycol)/EtOH溶液2mMに2h以上漬けて、金属プローブの先端部分にPEGからなる親水膜を形成する(図6(a)参照)。
次に、EtOH及び超純水でリンスした後、金属プローブの先端部分を0.2M EDC、0.05M sulfo−NHS、20mM NaPi、150mM NaClからなる溶液に1h以上漬けて、PEGの官能基をNHSで修飾する。(図6(b)参照)
その後、超純水でリンスした後、50mM AB−NTA、20mM NaPi、150mM NaClからなる溶液に1h以上漬けて、NHSで修飾されたPEGの官能基をAB−NTAで修飾する(図6(c)参照)。
最後に、超純水でリンスした後、金属プローブの先端部分を10mM NiClにつけて、AB−NTAの先端にNiイオンを配位する(図6(d)参照)。
そして、Niイオンを具備する金属プローブの先端部分を、Hisタグペプチドが結合したKcsA(E71A)変異体が溶解した溶液の中に浸漬する。なお、HisタグペプチドをKcsA(E71A)変異体に結合する方法としては、pQE−70プラスミドベクターを用いて、サブクローン化したKcsA(E71A)変異体のC端末に、Hisタグペプチドを結合する方法が挙げられる。Hisタグペプチドは、Niイオンに特異的に結合するので、親水膜にHisタグペプチド及びNiイオンを介してイオンチャネルであるKcsA(E71A)変異体が結合する(図6(e)参照)。
・貯留槽
貯留槽は、200mM KCl,20mMsuccinate−KOH(pH4.0)からなる水性記録液及び、溶媒であるn−decaneの中に、20mg/mLの1,2−diphytanoyl−sn−glycero−3−phosphocholineが溶解した脂質溶解液を貯留している。この状態において、脂質溶解液は水性記録液の液面上に層状に積層している。また、貯留槽には金属線からなる電極が配置されている。
<実験方法>
貯留槽の中に、金属プローブの先端部分を脂質溶解液中に浸漬させて、金属プローブの先端部分に人工生体膜を製造し、膜電位固定法を用いて製造した人工生体膜の評価を行った。なお、金属プローブの先端部分を浸漬する深さは、その先端に製造される人工生体膜が、脂質溶解液と水性記録液との界面から10μm〜1mmの深さの位置で製造されるようにした。
上述の膜電位固定法とは、人工生体膜に電極を装着して、生体膜に所定の電位波形を与えることによりイオンチャネルの挙動を解析する方法である。本実施例では金属プローブの先端部分にイオンチャネルが結合しているので、金属プローブはイオンチャネルを介して人工生体膜に装着されている。そのため、金属プローブをそのまま電極として用いるとともに、金属プローブと貯留槽の金属線との間に電圧をかけて、人工生体膜に膜電位を与えた。
<実験結果>
上述の実験方法に基づいて得られた結果を、以下図7(a)(b)、図8に示す。
図7(a)は、膜電位を80mV、40mV、−40mV、−80mVにそれぞれ固定した電流変化をそれぞれ表したものである。
図7(a)のグラフでは、各膜電位においてHisタグペプチドが結合したKcsA(E71A)変異体に特有の電流変化を示す波形が表れており、脂質二重層にHisタグペプチドが結合したKcsA(E71A)変異体が組み込まれていることを確認することができた。
図7(b)は、膜電位を160mVから−160mVの間で20mV刻みで膜電位を固定して、各膜電位において得られた電流値をプロットした電流―電圧曲線を示すものである。図7(b)に示すように、得られた電流−電圧曲線は、プラスの電位で若干流れやすくなる特性を示し、これは、KcsAカリウムイオンチャネルに共通する特性である。また、膜電位を60mV、40mV、20mV、0mV、−20mV、−40mV、−60mVに固定したときの各電流値を回帰分析した直線の傾きから、コンダクタンスは、128±3pSであると推定される。ここで、人工生体膜におけるコンダクタンスとは、イオンチャネルのイオンの通しやすさを示しており、このコンダクタンス値によって、個々のイオンチャネルの特徴的な性質を知ることができる。
図8は、膜電位を80mVに固定した状態において、金属プローブを脂質溶解液に中に浸漬させたり、脂質溶解液から取り出したりした場合における電流値の時間変化を示すものである。黒塗りの下向き三角(図中▼で表されている)は、金属プローブを脂質溶解液に浸漬させた時点を示しており、中抜きの下向き三角(図中▽で表されている)は、金属プローブを脂質溶解液から取り出した時点を示す。また、図8の下段のグラフは、上段のグラフの25sから30sの間を拡大したものである。
図8に示すように、金属プローブを脂質溶解液に浸漬させると、電流値が急激に上がる一方で、金属プローブを脂質溶解液から取り出すと、電流値がゼロ値になることが分かる。この結果から、金属プローブを貯留槽に挿入すると、KcsAからなるイオンチャネルが脂質二重層の作成と同時に脂質二重層の中に組み込まれて、人工生体膜が形成されているので、電流が流れたと考えられる。一方、金属プローブを貯留槽から取り出すと、脂質二重層が第1脂質層と第2脂質層とに別れるとともに、イオンチャネルが金属プローブの親水膜に付いて貯留槽から取り出されるので、電流が流れなくなったと考えられる。
<実験準備>
・金属プローブ
金属プローブ自体は実施例1と同様であるが、その表面処理が実施例1とは異なるので、その部分についてのみ以下説明を行う。
まず、実施例1と同様にPEGからなる親水膜で金属プローブの先端部分を覆った後、PEGの官能基をNHSで修飾する。そして、この金属プローブを83μM neutravidin 40mM HEPES−NaOH 50mM KCl 2mM EGTA 10mM MgClからなる溶液に2h漬けて、NHSで修飾されたPEGの官能基を人工ビオチン結合タンパク質(ニュートラアビジン)で修飾し、超純水でリンスする。
そして、金属プルーブの先端部分をビオチン化したaviタグペプチドが結合したMthKチャネルが溶解する溶液の中に浸漬する。aviタグペプチドをMthKチャネルに結合する方法については、以下の通りである。まず、大腸菌でMthKチャネルを大量発現させると同時に、ビオチンリガーゼの共発現によってaviタグペプチドにビオチンを結合(ビオチン化)させる。その後、ビオチン化したaviタグペプチドを具備するMthKチャネルを単離・精製する。
金属プローブの先端部分をビオチン化したaviタグペプチドが結合するMthKチャネルが溶解した溶液の中に浸漬すると、ニュートラアビジンとビオチンとが特異的に結合するので、親水膜に、ビオチン化したaviタグペプチド及びニュートラアビジンを介してMthKチャネルが結合する。
なお、このaviタグペプチドは、GLNDIFEAQKIEWHE配列を具備するものである。
・貯留槽
上述した実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
<実験方法>
実験方法も上述した実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
<実験結果>
上述の実験方法に基づいて得られた結果を、以下図9(a)(b)に示す。
図9(a)は、膜電位を80mV、40mV、−40mV、−80mVにそれぞれ固定した状態における電流変化をそれぞれ表したものである。なお、本実施例においては、MthKチャネルが活性化してゲートを開くために細胞内にCa2+を必要とするので、電極を予めCaClを含む溶液の中に入れておく。
図9(a)に示すように、各膜電位においてaviタグペプチドが結合したMthKチャネルに特有の電流変化を示す波形が表れており、脂質二重層にaviタグペプチドが結合したMthKチャネルが組み込まれていることを確認することができた。
図9(b)は、膜電位を160mVから−160mVの間で20mV刻みで膜電位を固定して、各膜電位において得られた電流値をプロットした電流―電圧曲線を示すものである。
図9(b)に示すように、得られた電流−電圧曲線は、マイナスの電位で流れ難く、プラスの電位で流れ易い特性を示す。これは、MthKチャネルに共通する特性である。また、膜電位を0mV、−20mV、−40mV、−60mVに固定したときの各電流値を回帰分析した直線の傾きから、コンダクタンスは、173±15pSであると推定される。
1・・・デバイス
2・・・水溶液
3・・・脂質溶解液
4・・・貯留槽
5・・・親水膜
6・・・金属プローブ
10・・第1脂質層
11・・第2脂質層
12・・脂質二重層

Claims (7)

  1. 水溶液及び前記水溶液の液面に積層した脂質が溶媒に溶解した脂質溶解液を貯留する貯留槽と、
    貯留槽に向かって突出する先端部分が親水膜で覆われるとともに、該親水膜に膜輸送タンパク質が結合された金属プローブとを備え、
    前記金属プローブを前記脂質溶解液に浸漬させて、人工生体膜を製造するデバイス。
  2. 前記親水膜が金属イオンを具備するとともに、前記膜輸送タンパク質がタグペプチドを具備し、
    前記タグペプチドが前記金属イオンに結合することによって、前記親水膜に前記膜輸送タンパク質が結合していることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
  3. 前記親水膜が、ポリエチレングリコールで構成され、
    前記金属イオンが、ニッケルイオンであり、
    前記タグペプチドが、Hisタグペプチドである請求項2記載のデバイス。
  4. 前記膜輸送タンパク質がビオチン化されたタグペプチドを具備するとともに、前記親水膜がビオチンと特異的に結合する結合タンパク質を具備し、
    前記ビオチン化されたタグペプチドと前記結合タンパク質とが結合することによって、前記親水膜に前記膜輸送タンパク質が結合していることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
  5. 前記親水膜が、ポリエチレングリコールで構成され、
    前記タグペプチドが、aviタグペプチドであり、
    前記結合タンパク質が、ニュートラアビジンであることを特徴とする請求項4記載のデバイス。
  6. 前記金属プローブが、金で構成されている請求項1、2、3、4又は5記載のデバイス。
  7. 水溶液の液面に脂質が溶媒に溶解した脂質溶解液を積層して、前記水溶液と前記脂質溶解液との界面に沿って前記脂質が並列した第1脂質層を形成し、
    先端部分の表面を親水膜で覆うとともに、前記親水膜に膜輸送タンパク質を結合した前記金属プローブの先端部分を、前記脂質溶解液に浸漬させて、前記親水膜に沿って前記脂質が並列した第2脂質層を形成し、
    前記第1脂質層に前記第2脂質層を結合して脂質二重層を形成すると同時に、前記脂質二重層に前記膜輸送タンパク質を組み込んで人工生体膜を形成する人工生体膜の製造方法。
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