JP2017025066A - 高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞および樹状細胞を用いた活性細胞癌免疫療法のための手段および方法 - Google Patents

高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞および樹状細胞を用いた活性細胞癌免疫療法のための手段および方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017025066A
JP2017025066A JP2016153454A JP2016153454A JP2017025066A JP 2017025066 A JP2017025066 A JP 2017025066A JP 2016153454 A JP2016153454 A JP 2016153454A JP 2016153454 A JP2016153454 A JP 2016153454A JP 2017025066 A JP2017025066 A JP 2017025066A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
tumor
tumor cells
dendritic cells
induced
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016153454A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6235085B2 (ja
Inventor
イジナ バルトゥンコヴァ,
Bartunkova Jirina
イジナ バルトゥンコヴァ,
ラデク シュピシェク,
Spisek Radek
ラデク シュピシェク,
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sotio AS
Original Assignee
Sotio AS
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from EP11172622A external-priority patent/EP2543386A1/en
Application filed by Sotio AS filed Critical Sotio AS
Publication of JP2017025066A publication Critical patent/JP2017025066A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6235085B2 publication Critical patent/JP6235085B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K39/0005Vertebrate antigens
    • A61K39/0011Cancer antigens
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/0634Cells from the blood or the immune system
    • C12N5/0639Dendritic cells, e.g. Langherhans cells in the epidermis
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/51Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising whole cells, viruses or DNA/RNA
    • A61K2039/515Animal cells
    • A61K2039/5152Tumor cells
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/51Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising whole cells, viruses or DNA/RNA
    • A61K2039/515Animal cells
    • A61K2039/5154Antigen presenting cells [APCs], e.g. dendritic cells or macrophages

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】腫瘍細胞に対して免疫応答を誘導するための医薬組成物を製造するための方法の提供。
【解決手段】免疫療法に使用するための、腫瘍細胞をパルスした樹状細胞の製造方法であって、(a)高静水圧処理により腫瘍細胞の免疫応答誘導性細胞死を誘導するステップと、(b)治療を受ける患者の単球を未成熟樹状細胞に分化させるステップと、(c)ステップ(a)で得た免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞を、ステップ(b)の未成熟樹状細胞にパルスするステップとを含む方法。更に、腫瘍細胞をパルスした樹状細胞を次いで成熟させる方法。
【選択図】なし

Description

様々な腫瘍によって引き起こされる疾患は、いまだ医療や人の健康上の大きな問題である。手術、化学療法および放射線療法を組み合わせることで癌患者の予後は著しく改善した。このような手法によって腫瘍のほとんどはその体積が大幅に減少するのにもかかわらず、腫瘍前駆細胞や癌幹細胞の小さな細胞群は生き延び、その結果、新たな腫瘍細胞群が発生して癌が再発することが多い。また、手術および/または他の治療法によって腫瘍の大部分を取り除いても、微量の腫瘍細胞が体内を循環し、体の他の部分に転移性腫瘍が形成される場合もある。従って、単独で使用することができ、好ましくは他の腫瘍治療法と組み合わせることが可能な代替治療薬および代替療法が変わらず必要とされている。
先行技術
WO2006/095330には、抗原性を有する細胞を熱的、機械的および/または化学的に損傷させ、この細胞を抗原提示細胞との凝集体として患者に導入することにより、細胞群の増殖を抑制する方法が記載されている。
Frankら,“Harnessing Naturally Occurring Tumor Immunity; A Clinical Vaccine Trial in Prostate Cancer”, PLOS ONE, vol.5, no.9, 1 January 2010 (2010-01-01), page E12367には、紫外線(UV)照射によりアポトーシスを起こしたLNCaP細胞と自己樹状細胞とを含む腫瘍ワクチンが開示されている。
Minarikら,“Phase I/II of Clinical Study of Prostate Cancer Immunotherapy Using Dendritic Cell Vaccination Strategy - First Results”, European Urology Supplements, vol.9, no.6, 1 September 2010, page 629には、紫外線A波(UVA)を照射してアポトーシスを引き起こすことによりLNCaP細胞を死滅させ、この細胞をパルスした樹状細胞を使用することによって行われる前立腺癌免疫療法の第I/II相臨床試験の予備結果が開示されている。
Weissら,“Ex vivo- and in vivo-induced dead tumor cells as modulators of antitumor responses”, Annals of the New York Academy of Sciences, vol. 1209, no.1, 1 October 2010 (2010-10-01), pages 109-117には、腫瘍細胞の高静水圧処理が開示されている。死滅させた腫瘍細胞が癌ワクチンとして動物モデルに直接使用されている。
Weissら,“High hydrostatic pressure treatment generates inactivated mammalian tumor cells with immunogeneic features”, Journal of Immunotoxicology, vol.7, no.3, 1 September 2010, pages 194-204には、高静水圧処理によりアポトーシスが誘導された腫瘍細胞は不活性であるが免疫原性を有することが開示されている。マウスモデルにおいて腫瘍細胞に対する抗体が産生および同定されている。
US2008/0286314には、癌患者の治療に用いることが可能な、熱ショックを加えた非アポトーシス癌細胞を取り込んだ抗原提示細胞を含む癌ワクチンが開示されている。
本発明は、抗腫瘍免疫応答の誘導に使用することができる医薬組成物、具体的には、体内において腫瘍細胞に対する免疫原性反応を惹起させる腫瘍ワクチン接種に使用することができる医薬組成物に関する。
紫外線照射などの標準的な方法によって死滅させた腫瘍細胞は一般的に免疫原性を有さない。紫外線照射した腫瘍細胞を癌免疫療法薬の製造に使用する場合、強力なアジュバントと組み合わせて投与する必要がある。紫外線照射により死滅させた腫瘍細胞を樹状細胞などの抗原提示細胞にパルスする場合、このような腫瘍細胞は活性化シグナルを与えない。従って、病原体由来分子などの他の物質によって樹状細胞を活性化する必要がある。
ヒト腫瘍細胞、特にヒト由来の卵巣癌細胞、前立腺癌細胞および急性リンパ芽球性白血病細胞のimmunogenic deathを誘導する新規の方法を開示する。高静水圧(以下HHPともいう)によって死滅させた腫瘍細胞は、別の刺激がなくても、樹状細胞、特に未成熟樹状細胞に強力な活性化刺激を与える。この方法で死滅させた腫瘍細胞はimmunogenic cell deathマーカーを高レベルに発現し、この免疫原性腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞は、望ましくない制御性Tリンパ球を増殖させることなく、多数の腫瘍特異的Tリンパ球を誘導する。本発明の実験データから、高静水圧処理により死滅させた腫瘍細胞と樹状細胞とを組み合わせると、食作用および腫瘍抗原の効率的な提示が起こり、さらには強力な抗腫瘍免疫応答が誘導されることが明らかとなった。
腫瘍細胞は免疫原性を有していないか、あるいは弱い免疫原性しか有さず、強力なアジュバントの非存在下で用いた場合、一般的に腫瘍特異的免疫応答を誘導する能力はない。近年の研究では、いくつかの化学療法薬、例えばボルテゾミブ、オキサリプラチン、アントラサイクリン類などで死滅させた腫瘍細胞は、腫瘍特異的免疫応答を誘導できることが明らかとなっている。このようなimmunogenic cell deathは、上記の化学療法薬すべてに共通する分子事象を特徴とする。すなわち、immunogenic cell deathの開始後数時間以内に、アポトーシスを起こす前段階の腫瘍細胞は、「eat me」シグナル(ホスファチジルセリン)として働く他の分子ならびにカルレティキュリンおよび熱ショックタンパク質を小胞体から細胞表面へと移動させる。
これと同時に、immunogenic tumor cell deathを起こしている腫瘍細胞は「don't eat me」シグナル(表面CD47など)の発現をダウンレギュレートし、腫瘍細胞の認識と樹状細胞による貪食とを促進する。さらに、形質膜の透過化が起こった後、後期のアポトーシスマーカーである高速移動群ボックス1(HMGB1)が細胞から細胞外環境へと遊離する。HMGB1は、Toll様受容体2(TLR2)、TLR4および終末糖化産物受容体(RAGE)などの数種のパターン認識受容体(PRR)と結合できる。HMGB1の遊離は、死滅しかかっている腫瘍細胞に由来する抗原の最適な提示、樹状細胞によるT細胞プライミング、およびそれに続くT細胞が介在する腫瘍の除去に必要だと考えられる。
免疫原性を獲得するように死滅させた腫瘍細胞を使用することは、癌免疫療法を設計するうえで極めて重要である。免疫原性を有する腫瘍細胞を投与することによって腫瘍特異的免疫応答を誘導でき、その結果、腫瘍細胞の増殖を抑制できる。これによって、疾患の進行を遅延させたり、さらには疾患の進行を安定化させ、癌患者の予後が改善される。また、体内を循環する腫瘍細胞の分布および転移巣の形成を少なくとも実質的に減少することができると考えられる。
本発明および実験結果を以下の図に示す。
本発明の医薬組成物がどのようにして得られるのかを示す概略図である。患者から得られた腫瘍細胞または細胞株から得られた腫瘍細胞を高圧処理することで腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こす。 樹状細胞は白血球除去により単離する。未成熟樹状細胞とアポトーシス腫瘍細胞とを混合することによって成熟樹状細胞を産生させ、この成熟樹状細胞をワクチンとして用いることができる。 高静水圧処理によってヒト腫瘍細胞上に熱ショックタンパク質の発現が誘導されることを示す。計5回の実験の結果をまとめたものを示す。*:紫外線を照射した腫瘍細胞と比較したP値、P<0.05。様々な処理によって引き起こされた、2種の腫瘍細胞株(OV90およびLNCap)上のマーカーHSP70、HSP90およびカルレティキュリンの発現の経時的変化を示す。 高静水圧処理によって、腫瘍細胞(OV90およびLNCap)からのHMGB1(高速移動群タンパク質B1)の遊離が誘導されることを示す。HMGB1は炎症のサイトカインメディエーターである。計5回の実験の結果をまとめたものを示す。*:紫外線を照射した腫瘍細胞と比較したP値、P<0.05。図3は、HMBG1の時間依存性の遊離に関しており、HHP処理が他の従来の処理よりも効果的であることを示している。 高静水圧で処理された腫瘍細胞に対する未成熟DCの食作用の動態を示す。5回の独立した実験の結果をまとめ、代表的な結果を示す。この実験においては、OV90腫瘍細胞またはLNCap腫瘍細胞を用いた。0℃および37℃においてHHP処理とUV処理とを比較する。 高静水圧で死滅させた腫瘍細胞(OV90およびLNCap)と相互作用させた後の、マーカーOD86およびHLA−DRに基づく樹状細胞の表現型を示す。5日目の未成熟DCを、HHPまたは紫外線照射により死滅させた腫瘍細胞と共に24時間培養した。24時間後、DC上の成熟関連分子の発現をフローサイトメトリーにより分析した。LPSを対照として使用した。平均蛍光強度(MFI)を示す。*:紫外線照射した腫瘍細胞を取り込んだDCと比較したP値、P<0.05。 静水圧で死滅させた腫瘍細胞(LNCapおよびOV90)を取り込んだ樹状細胞による腫瘍特異的T細胞の誘導を、紫外線照射により死滅させた腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞によるものと比較した。データは5回の独立した実験の結果をまとめたものである。*:紫外線照射した腫瘍細胞と比較したP値、P<0.05。 紫外線照射(UV照射)により死滅させた腫瘍細胞と比較することによって、腫瘍細胞の高静水圧(HHP)による処理が優れていることを示す。この試験は、前立腺癌細胞株(LNCap)と卵巣癌細胞株(OV90)を用いて行った。対照試験は樹状細胞を単独で用いて行った。ポリI:Cにより細胞を刺激した。 図7にまとめた結果から、高静水圧で死滅させた腫瘍細胞(LNCapまたはOV90)を取り込んだ樹状細胞によって前立腺特異抗原(PSA)特異的T細胞が誘導されることがわかる。高静水圧で死滅させた腫瘍細胞単独との比較、および紫外線照射により死滅させた腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞との比較を行った。図7に示したデータは、5回の独立した実験結果をまとめたものである。*:紫外線照射した腫瘍細胞と比較したP値、P<0.05。図7は実施例7で得られた結果をまとめたものである。 高静水圧で死滅させた腫瘍細胞による制御性T細胞の誘導を、紫外線照射された腫瘍細胞による制御性T細胞の誘導と比較する。データは5回の独立した実験の結果をまとめたものである。 図8にまとめた実験結果から、本発明による教示を様々な種類の腫瘍に適用可能であることがわかる。図8の上段は、卵巣癌細胞(OV90)を用いて行った実験結果を示している。下段は、前立腺癌細胞株(LNCap)を用いて行った実験結果を示している。これらの実験においては、制御性T細胞(Treg)をさらに識別するために、Fox P3(Forkhead Box P3)の濃度を測定した。これらの実験から、本発明に従ってHHPで処理した腫瘍細胞によって誘導される制御性T細胞の数は、紫外線照射した腫瘍細胞によって誘導される制御性T細胞の数よりも確かに少ないことがわかった。 本明細書に開示した腫瘍ワクチン接種により複数の患者を治療したインビボ試験の結果を示す。これらの患者はすべて前立腺切除術または放射線療法による根治的治療を受けていた。関連するパラメーターとしてPSA倍加時間を決定した。Antonarakisら,BJU Int. 2011, 108(3), p. 378-385によれば、PSA倍加時間は、前立腺特異抗原(PSA)が再び上昇した前立腺癌患者の転移を起こさずに生存できる期間および全生存期間の最も強力な決定因子である。「PSA倍加時間」とは、PSA値が2倍になるまでの時間を意味する。PSA倍加時間が長ければ長いほど、治療を受けている患者の生存率は高くなる。本発明の腫瘍ワクチン接種を施すことにより、PSA倍加時間を大幅に延長することができた。 *:紫外線照射した腫瘍細胞と比較したP値、P<0.05。 本発明による治療を受けた複数の末期前立腺癌患者のKaplan−Meier生存曲線を示す。 Kaplan−Meier生存曲線においては、生存率(%)は患者1人の死亡ごとに100%から1段階ずつ減少する。Halabiノモグラムは通常予測される生存者数の減少を表し、生存期間中央値は12ヶ月である。 本明細書に記載の癌ワクチンを用いた活性癌免疫療法によって、生存期間中央値が23ヶ月に延長した。
本発明の好ましい実施形態
ヒトの腫瘍、特に、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞および急性リンパ芽球性白血病細胞のimmunogenic cell deathを近年報告されている化学療法薬よりもはるかに高程度に誘導する新規の方法および医薬組成物を開示する。この方法により死滅させた腫瘍細胞は樹状細胞によって捕捉されるとともに、immunogenic cell deathマーカーを高レベルに発現し、次いで、抗腫瘍免疫応答を抑制しうる制御性T細胞を誘導することなく多数の腫瘍特異的Tリンパ球を誘導する。本発明に従って処理された腫瘍細胞と樹状細胞との組み合わせにより得られる抗腫瘍免疫応答は、免疫原性の腫瘍細胞単独によって誘導される免疫応答の約10倍であることが明らかとなっている。
死滅させた腫瘍細胞を取り込んだ成熟樹状細胞(DC)の投与に基づく好ましい癌免疫療法プロトコルの原理の概要を図1に示す。最終製品である本発明の医薬組成物を製造するための工程はすべて、GMP施設において「医薬品の製造および品質管理に関する基準」に準じて行われる。
好ましい実施形態では、患者ごとに医薬組成物を製造する方法の第1の工程において、末梢血から多数の単球を回収するために白血球除去を行う。好ましい実施形態においては、白血球除去により得られた回収物をPBS+1mM EDTA(ロンザ、ベルギー国ヴェルヴィエ)などの適切な緩衝液で希釈し、Premium Ficoll Paque(GEヘルスケア、英国リトル・チャルフォント)を用いた密度勾配遠心分離によって単核細胞を分離する。回収した単核細胞(PBMC)を[例えばPBS+1mM EDTA(ロンザ)で]洗浄後、Cell Gro培地中に再懸濁し、トリプルフラスコ(例えばNUNC、デンマーク国ロスキレ)に表面積1cmあたり1×10個の細胞を入れる。2時間後、付着しなかった細胞をPBS(ロンザ)で洗い流す。付着した単球は、20ng/mL IL−4(Gentaur)および500U/mL GM−CSF(Gentaur)と共にCell Gro培地中で6日間培養し、培養の3日目に新鮮なサイトカインを添加する。
6日目に未成熟DCを採取し、死滅させた腫瘍細胞(例えば前立腺癌細胞株、卵巣癌細胞株、急性リンパ芽球性白血病細胞株)を取り込ませる。新たに解凍した未成熟DC(3〜6日目)に腫瘍細胞をDC:腫瘍細胞=5:1の固定比率で加え、腫瘍細胞を4時間かけて取り込ませる。樹状細胞:処理された腫瘍細胞の比率は1:1〜10:1の範囲が好ましく、約4:1〜6:1の範囲がより好ましい。
本発明によれば、様々な分化段階、成熟段階および/または活性段階にある樹状細胞を使用することができる。樹状細胞の成熟段階は成熟因子によって影響されうる。
次いで、腫瘍細胞をパルスしたDCを25μg/mLポリI:Cと共に一晩培養することによって成熟させ、液体窒素中で凍結保存することが好ましい。投与する前に、腫瘍細胞をパルスした成熟DC 1×10個を0.9%NaCl(バクスター)に再懸濁し、12時間以内、好ましくは30分〜12時間以内に鼠蹊部および上腕部に皮下注射する。免疫応答を継続的にブーストするために、この投与形態の癌免疫療法を2〜6週間の一定間隔を置いて繰り返すことが好ましい。本明細書に開示した方法によって、腫瘍により誘導される免疫寛容の再確立を防ぐことができると考えられる。この形態の免疫療法は、異なる臨床病期の前立腺癌患者、生化学的再発を呈した前立腺癌患者、および去勢抵抗性転移性前立腺癌患者に治療効果があることが報告されており、さらに転移性ホルモン感受性段階の前立腺癌患者においてもおそらく治療効果があることが報告されている。
しかしながら、本発明は上記の好ましい実施形態に限定されない。本発明の最も広い範囲においては、腫瘍治療における特定のニーズに応じて本発明を別の方法で実施することができる。上記の好ましい実施形態では、治療を受ける患者から得た腫瘍細胞または腫瘍細胞株もしくは腫瘍細胞株バンクから得た腫瘍細胞を用いた場合について本発明を説明した。また、樹状細胞も治療を受ける患者から得ることが好ましい。
より一般的な方法において、本発明は、
腫瘍細胞に対して免疫応答を誘導するための医薬組成物であって、
a)静水圧処理によってアポトーシスを起こした腫瘍細胞と、
b)樹状細胞と
を含む医薬組成物に関する。
本発明の重要な態様は、本発明の医薬組成物に用いられる腫瘍細胞がネクローシスではなくアポトーシスを起こした細胞であることである。アポトーシスとネクローシスの違いは当業者であれば理解できるであろう。細胞死およびそれに続くネクローシスと呼ばれる死後変化は、正常な発生と成熟サイクルに不可欠な現象である。この過程は重要であるにもかかわらず、細胞が死滅するときに起こるメカニズムに関する報告はいくつかあるものの細胞死の根底にあるメカニズムはいまだあまり解明されていない。本発明において、「アポトーシス」はプログラムされかつコントロールされた形態の細胞死であり、これに対して「ネクローシス」は意図されていない偶発的な形態の細胞死であると理解される。
本発明において「アポトーシス」は、正常な生理学的条件下で起こる細胞死の形態であると理解され、細胞は自身の死に積極的に関与する。アポトーシスを起こしている細胞は特有の形態学的特徴および生化学的特徴を示す。これらの特徴としては、クロマチン凝集、核および細胞質の濃縮、リボソームを含む断片化した細胞質および核が包まれた膜結合小胞(アポトーシス小体)、ならびに形態学的に無傷なミトコンドリアおよび核材料が挙げられる。通常、アポトーシス小体は生体内においてマクロファージまたは隣接する上皮細胞に認識されて貪食されることから、本発明の方法において用いられる腫瘍細胞がアポトーシスを起こした腫瘍細胞にできるだけ近似していることが重要である。アポトーシスは通常、個々の細胞に限定され炎症反応を起こさない。
一方、「ネクローシス」は、形質膜を損傷する可能性のある極端な生理学的条件に細胞がさらされたときに起こる。ネクローシスは、ホメオスタシスを維持する細胞の機能が損なわれることから始まり、次いで水や細胞外イオンの流入がおこる。細胞内オルガネラ(最も顕著にはミトコンドリア)および細胞全体が膨潤して破裂する。最終的に形質膜が破壊されることによって、リソソーム酵素などの細胞質内容物が細胞外液に遊離する。従って、生体内でのネクローシス性細胞死は広範な組織損傷を伴うことが多く、激しい炎症反応を起こす。本発明の医薬組成物に用いられる腫瘍細胞はネクローシスでなくアポトーシスを起こした細胞であることが重要である。
本発明によれば、アポトーシスを起こした細胞は高静水圧処理によって作製する。本発明において高静水圧とは、圧力水頭が100MPa[1MPa=10bar=9.86923atm=145.0377psi]以上であると定義される。高静水圧は、例えばWeissら,Journal of Immunotoxicology, 2010, pp 194-209(特に図1)に記載された装置によって発生させることができる。
腫瘍細胞の高静水圧処理は加圧オートクレーブ中で行うことが好ましい。腫瘍細胞は適切な低温用バイアルに入れる。低温用バイアルを腫瘍細胞の懸濁液で完全に満たし、密閉する。このとき、気泡が入らないようにする必要がある。次いで、バイアルを可撓性フィルム(例えばパラフィルム(登録商標))で密封する。このようにして準備したバイアルを、圧力伝達媒体で満たした圧力室に載置する。次いで、適切な装置で高圧を発生させ、細胞を十分な時間高圧にさらす。
好ましい実施形態においては、少なくとも200MPaの高静水圧を少なくとも10分間維持する。より好ましい実施形態においては、腫瘍細胞を10分〜12時間、好ましくは10分〜1時間、特に好ましくは10〜30分間にわたり、200〜300MPa、好ましくは200〜250MPaの圧力にさらす。
本発明の医薬組成物に使用される腫瘍細胞は、様々な供給源から得ることができる。特定の一実施形態において、腫瘍細胞は、治療を受ける患者の原発腫瘍または転移腫瘍に由来する。腫瘍細胞は生検または手術によって得ることができる。得られた組織をばらばらにし、分離精製した腫瘍細胞を直接使用することができる。また、原発腫瘍の細胞株を樹立し、このようにして得られた細胞を腫瘍ワクチン接種に用いることも好ましい。あるいは、適切な腫瘍細胞株から腫瘍細胞を得てもよい。このような腫瘍細胞株を自己腫瘍から調製してもよい。あるいは、例えばATCCなどの寄託機関から市販されている腫瘍細胞を用いてもよい。
本発明の医薬組成物の別の成分は樹状細胞である。本発明によれば、様々な段階にある樹状細胞を使用することができる。患者の血液から樹状細胞を分離することによって直接得ることのできる樹状細胞を使用することもできる。しかし、段階に応じて樹状細胞をさらに分類することもできる。本発明の一実施形態においては、末梢血単球から分化させた未成熟樹状細胞を腫瘍ワクチンの調製に用いる。
末梢リンパ器官中には、T細胞を活性化できる抗原提示細胞が主に3種存在することが知られており、これらはすなわち樹状細胞、マクロファージおよびB細胞である。これらの細胞のうち最も強力なものは樹状細胞であり、異種抗原をT細胞に提示する機能を有することが知られている。未成熟樹状細胞は、皮膚、消化管および気道を含む体全体の組織に存在する。樹状細胞は機能的および表現型的に異なる2つの段階、すなわち未成熟樹状細胞または成熟樹状細胞として存在する。未成熟樹状細胞は高いエンドサイトーシス活性を有し、抗原の捕捉および処理に特化しており、生体内の末梢組織に存在する。未成熟樹状細胞は、末梢性寛容の誘導と維持に重要な役割を果たしている。病原体由来産物または自然免疫系の炎症性シグナルに暴露されると、樹状細胞は食作用活性を失い、成熟樹状細胞に分化しながら所属リンパ節へと遊走する。成熟樹状細胞は、抗原提示分子、接着分子および共刺激分子を高レベルに発現するとともに、CD83やDC−LAMPなどの他の樹状細胞特異的マーカーを発現することによって、高い抗原提示能とT細胞刺激能を発揮する。
本発明の医薬組成物に使用される未成熟樹状細胞は、様々な供給源から得ることができる。好ましい実施形態においては、治療を受ける患者の単球から未成熟樹状細胞を分化させる。あるいは、採血事業者から入手可能な市販の血液製剤などの他の供給源から未成熟樹状細胞を得てもよい。
本発明の医薬組成物の調製を目的として、適切な未成熟樹状細胞を調製する。様々な方法で樹状細胞(DC)を調製することができ、このような樹状細胞(DC)は様々な特性を奏してもよい。本発明の好ましい実施形態においては、樹状細胞は白血球除去によって単離された単球から得られる。
DCには末梢血中単核細胞が1%未満含まれる。白血球除去を用いて約10〜10個の樹状細胞を単離することができ、白血球除去をポジティブ選択またはネガティブ選択と組み合わせてもよい。末梢血から樹状細胞を直接単離することによって樹状細胞を速やかに調製することができるが、プロトコルに複数回の免疫処置が必要とされる場合、必要に応じて白血球除去を繰り返し行う。
本発明の好ましい実施形態においては、白血球除去により得られた単球をプラスチック材料上に付着させて濃縮する。樹状細胞は、サイトカインの存在下、好ましくは種々のサイトカインのカクテルの存在下で分化させる。サイトカインとしては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)とインターロイキン4との組み合わせが好ましい。
樹状細胞の調製方法としては、樹状細胞をエクスビボで作製する方法が特に好ましい。単球は樹状細胞の前駆細胞であり、末梢血単核細胞から様々な方法によって濃縮することができる。このような方法としては、白血球除去、プラスチック付着法、密度勾配遠心分離、CD14細胞のポジティブ選択、B細胞およびT細胞のネガティブ選択、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。濃縮した前駆細胞群を、サイトカイン、特に顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)+インターロイキン4またはインターロイキン13を用いて約3〜7日間、好ましくは7日間処理することによって、DCを培養および分化させてもよい。この実施形態の利点として、単回の白血球除去により得られた回収物から10個を超えるDCを調製できること、およびこのようにして得られたDC調製物を好ましくは液体窒素中で凍結保存することによってさらなる複数回のワクチン接種に使用できることが挙げられる。DCは様々な培地で培養することができるが、無血清培地または自己血清を含む培地を使用することが好ましい。本発明の医薬組成物を工業規模で調製する場合、(例えばウシ胎仔血清による)アナフィラキシー反応の発生やウイルス汚染が起こらないような方法で未成熟樹状細胞を大規模調製することが特に好ましい。
本発明の医薬組成物の調製における次の工程では、高静水圧処理によって得られたアポトーシス腫瘍細胞を未成熟樹状細胞に取り込ませる。好ましい実施形態においては、次いで、例えば腫瘍壊死因子α(TNF−α)、リポ多糖またはポリI:Cの添加などによる様々な刺激を加えることによって、アポトーシス腫瘍細胞に接触させた未成熟樹状細胞を成熟させる。
得られた医薬組成物は、好ましくは凍結保存によって、投与するまで保存することができる。生物試料の凍結保存は、臨床医学や生物医学的研究において広く行われている。しかし、この方法が細胞の生存能力に与える影響、特に細胞の機能に与える影響は、時に過小評価されている場合がある。従って、癌ワクチンに使用する前の細胞調製物の凍結に用いる方法については注意深く検討すべきである。凍結保存による影響は使用する特定の細胞に確実に左右される。また、医薬組成物の生物学的活性が凍結保存によって変化していないかどうかを調べる必要がある。必要に応じて、非免疫原性多糖類やDMSOなどの保護成分を添加する。
本発明の医薬組成物は、静脈内(IV)投与、皮内投与、皮下投与またはリンパ内投与することができるが、皮下投与が特に好ましい。
本発明の医薬組成物を用いた免疫処置に最適な用量と投与回数は、腫瘍の種類、患者の年齢や状態、腫瘍疾患の進行度に左右される。好ましい実施形態においては、はじめに免疫量の本発明の医薬組成物を投与した後、2〜8週間の間隔を置いて長期間にわたりブースター注射を投与する。
本明細書に記載の腫瘍ワクチン接種は、あらゆる形態の腫瘍に効果的に適用することができる。好ましい実施形態においては、本発明の医薬組成物を末期癌患者の治療だけでなく、早期癌患者の治療にも用いる。特に好ましい実施形態においては、ホルモン治療抵抗性転移性前立腺癌を有する末期前立腺癌患者に本発明の腫瘍ワクチン接種を適用する。「早期癌」とは、診断可能な形態の癌と理解される。このような患者は疾患の徴候を示さないことが多い。「末期癌」では、患者の多くは疾患により痛みや衰弱などの重度の症状を呈する。
ワクチン接種による腫瘍の治療にアジュバント剤を使用することは当技術分野において公知であるが、本発明においては、リポ多糖、フロイント不完全アジュバント、熱ショックタンパク質などのさらなるアジュバントを使用しないことが好ましい。
本発明の重要な態様の一つは、高静水圧で処理された腫瘍細胞が、患者に投与しても増殖や転移腫瘍の形成を起こすことのできない段階の細胞であることである。このことは、clonogenic assayを含む多数の実験方法によって証明されている。
本明細書に記載の医薬組成物は、癌免疫療法(ワクチン接種)によるヒトの治療に用いることができる。治療を受ける患者から得ることが可能な腫瘍細胞を、上記の高静水圧処理によってアポトーシスを起こした段階へと移行させる。あるいは適切な腫瘍細胞株を用いる。同一患者から未成熟樹状細胞を好ましくは白血球除去により得、該細胞をサイトカインで処理することによりエクスビボ培養する。適切な量(例えば10〜10個)のこのような未成熟樹状細胞に、アポトーシス腫瘍細胞を取り込ませる。未成熟樹状細胞:アポトーシス腫瘍細胞の比率の最適な範囲は10:1〜1:1、好ましくは5:1〜3:1である。
樹状細胞を成熟させた後、本発明の医薬組成物を患者に投与することができる。高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞を捕捉した樹状細胞は、腫瘍ワクチン接種に直接使用することができる。しかし、患者に投与する前に例えばサイトカイン処理などによって、細胞をさらに活性化させたり成熟させてもよい。
本発明によれば、下記の材料と方法を用いることが好ましい。
卵巣癌細胞、前立腺癌細胞および急性リンパ芽球性白血病細胞を高静水圧(200MPa)により約21℃で10分間処理すると、腫瘍細胞にimmunogenic cell deathが誘導されることが認められている。HHP(高静水圧)により死滅させた腫瘍細胞は、immunogenic cell deathを誘導することが知られている唯一の細胞分裂抑制薬であるアントラサイクリン類によって死滅させた腫瘍細胞または紫外線照射によって死滅させた腫瘍細胞よりもかなり高い免疫原性を有する。HHPにより死滅させた免疫原性腫瘍細胞は抗原提示細胞によって活発に貪食され、LPSなどのさらなる病原体由来刺激の非存在下でもこれらの抗原提示細胞の成熟化を誘導する。HHPにより死滅させた腫瘍細胞を取り込んだ抗原提示細胞は、強力なCD4媒介性腫瘍特異的T細胞応答および強力なCD8媒介性腫瘍特異的T細胞応答を誘導し、潜在的に有害な制御性T細胞を誘導しない。従って、HHPにより死滅させた腫瘍細胞は、臨床で癌免疫療法を行うための強力な手段となる。
新薬が次々に導入され、化学療法プロトコルがさらに改良されているにもかかわらず、ある時点で化学療法は限界に達して臨床効果は横ばいになるであろう。さらに、悪性腫瘍のいくつかでは化学療法は紛れもなく成功を収めているが、ある種の腫瘍、特に固形腫瘍では化学療法により治療効果が得られるのはまれである。治療法を組み合わせることは癌療法の標準的戦略であり、典型的な例においては手術と化学療法または放射線療法とを組み合わせる。最新の免疫療法戦略の設計に努力を注ぐだけでなく、現在の化学療法プロトコルへの免疫療法の組み込みにも尽力すべきである。今後は化学療法と免疫療法とを互いに拮抗する治療法ととらえるべきではなく、これらを合理的に組み合わせることで癌患者の予後を大いに改善できると考えられる。
好ましい細胞株:急性リンパ芽球性白血病細胞株(REH)(DSMZ、ドイツ国ブラウンシュヴァイク)、卵巣癌細胞(OV90)(ATCC、英国テディントン)、および前立腺癌細胞(LNCap)(ATCC、英国テディントン)を用いた。細胞株はすべてRPMI1640培地(Gibco)で培養した。培地にはすべて、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(ロンザ)、100U/ml ペニシリンおよび2mmol/L L−グルタミンを添加した。
原発性腫瘍細胞の単離:原発性卵巣癌細胞および原発性前立腺癌細胞は、手術を受けた複数の患者から得た。急性リンパ芽球性白血病患者の白血病芽細胞は、(すべての)患者の骨髄をFicoll勾配による密度勾配遠心分離に供することによって得た。
アポトーシスの誘導と検出:高静水圧処理を10分間行うことによって腫瘍細胞死を誘導した。比較試験として、紫外線光の照射により腫瘍細胞死を誘導した。紫外線光の照射では、7.6J/cmのエネルギーを10分間照射した。細胞死は、アネキシンV/フルオレセインイソチオシアネート染色により評価した。すなわち、1試料あたり2×10個の細胞を回収し、PBSで洗浄後、ペレット化し、アネキシンV/フルオレセインイソチオシアネート抗体を含むインキュベーション緩衝液中に再懸濁した。試料を暗所に静置し、15分間インキュベート後、0.1%ヨウ化プロピジウム培養緩衝液400μlを加え、FlowJoソフトウェアを用いてAria蛍光活性化セルソーター(BDバイオサイエンス)により分析した。
細胞表面のhsp70、hsp90およびCRT(カルレティキュリン)のフローサイトメトリー分析:合計10個の細胞を12ウェルプレートに加えた。その翌日に本明細書に記載の薬剤で処理した。これとは別に、対照として紫外線照射(7.6J/cm)を6、12または24時間行った。さらにこれとは別に、高静水圧処理を21℃で10分間行った。細胞を回収し、PBSで2回洗浄した。コールドブロッキング緩衝液(2%ウシ胎仔血清含有PBS)で希釈した一次抗体と共に細胞を30分間インキュベート後、細胞を洗浄し、ブロッキング溶液中でAlexa648標識モノクローナル二次抗体と共にインキュベートした。次いで、各試料をFACScan(BDバイオサイエンス)で分析して、細胞表面のhsp70、hsp90およびCRTを同定した。
遊離HMGB1の検出:HMGB1酵素結合免疫吸着測定キットIIを株式会社シノテスト(日本国東京)から入手した。REH細胞、OV90細胞、LNCap細胞、原発性卵巣癌細胞および白血病芽細胞(10個)を、各細胞種に適切な完全培地1mlに加えた。上清を様々な時点で回収した。死滅した腫瘍細胞を遠心分離により除去することによって上清を分離し、得られた上清を直ちに凍結した。メーカーの説明書に従って酵素結合免疫吸着法を実施し、上清中のHMGB1を定量した。
蛍光顕微鏡法、免疫蛍光法:細胞表面上のCRTを検出するために、細胞を氷上に置き、PBSで2回洗浄し、0.25%パラホルムアルデヒド含有PBSで5分間固定した。次に、細胞をPBSで2回洗浄し、コールドブロッキング緩衝液で希釈した一次抗体を加えて30分間静置した。冷PBSで2回洗浄後、適切なAlexa648標識二次抗体と共に細胞を30分間インキュベートした。細胞を4%パラホルムアルデヒドで20分間固定し、PBSで20分間洗浄し、スライドに載せた。
食作用を観察するため、DCをVybrant(登録商標)DiO細胞標識溶液(インビトロジェン)で染色した。腫瘍細胞はVybrant(登録商標)DiI細胞標識溶液(インビトロジェン)で染色し、アントラサイクリン類の存在下、または紫外線光の照射下、または21℃、10分間の高静水圧処理下で培養した。DC/腫瘍細胞の比率が1:5になるように、未成熟DC(5日目)を腫瘍細胞に加えた。細胞を4%パラホルムアルデヒドで20分間固定後、PBSで20分間洗浄し、ProLong Gold antifade reagent(インビトロジェン)を使用してスライドに載せた。
腫瘍細胞を取り込んだDCの作製および腫瘍細胞死の誘導:バフィーコートから単離した精製CD14細胞を、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(Gentaur、ベルギー国ブリュッセル)およびインターロイキン−4(IL−4)(Gentaur、ベルギー国ブリュッセル)の存在下で培養することによりDCを得た。腫瘍細胞を21℃、10分間の高静水圧処理により死滅させた。これとは別に、対照として紫外線照射またはアントラサイクリン類により腫瘍細胞を死滅させた。アポトーシスの程度をアネキシンV/PI染色により観察した。DCに加える前に細胞をよく洗浄した。DC/腫瘍細胞の比率が1:5になるように、未成熟DC(5日目)を腫瘍細胞に加えた。いくつかの実験では、パルスしたDCを100ng/mlのリポ多糖(LPS)(シグマ)で12時間または25μg/mLのポリI:C(Invivogenより入手)で刺激した。
死滅させた腫瘍細胞と相互作用させた後のDC表現型のFACS分析:腫瘍細胞と共に培養したDCの表現型をフローサイトメトリーで観察した。腫瘍細胞を、選択した細胞分裂抑制剤もしくは紫外線照射(比較例)または21℃、10分間の高静水圧処理(本発明)によって死滅させ、未成熟DCと24時間共培養した。いくつかの実験では、共培養の前にDCおよび腫瘍細胞を色素標識し、食作用を観察した。CD80−FITC、CD83−FITC、CD86−PE、CD14−PE(イムノテック、フランス国マルセイユ)、CD11c−PE、またはHLA−DR(BDバイオサイエンス、カリフォルニア州サンノゼ)それぞれに対する複数のモノクローナル抗体(mAb)を用いた。
DCを4℃で30分間染色後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、FlowJoソフトウェアを用いてFACS Aria(BDバイオサイエンス)で分析した。DCをFSC特性およびSSC特性によってゲーティングした。適切なアイソタイプコントールを使用した。各実験において50000個の生存DCが得られた。
IFN−γ産生性腫瘍特異的T細胞の評価:培養0日目および7日目に、パルスしていないDCまたは腫瘍細胞を取り込んだDCを自己T細胞に1:10の比率で加えた。培養2日目および7日目にIL−2(25〜50IU/mL;PeproTech)を加えた。DCで最後に刺激してから7〜9日後に培養物を試験し、腫瘍特異的T細胞の存在を確認した。腫瘍細胞を取り込んだDCにより誘導された、腫瘍応答性およびインターフェロン(IFN)−γ産生性を示す前立腺特異抗原(PSA)応答性T細胞をフローサイトメトリーにより測定した。このT細胞は抗ヒトCD8/IFN−γで染色した。培養物中の制御性Tリンパ球の頻度は、CD4/CD25およびFoxP3で染色することにより分析した。制御性T細胞は、CD4陽性、CD25陽性およびFoxP3陽性を示す細胞としてフローサイトメトリーにより識別した。
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
高静水圧処理後のヒト癌細胞株およびヒト原発性腫瘍細胞のimmunogenic cell deathマーカーhsp70、hsp90およびカルレティキュリンの発現
白血病細胞株、卵巣癌細胞株、前立腺癌細胞株および原発性腫瘍細胞の高静水圧処理(HHP、200MPa)を21℃で10分間行い、公知のimmunogenic cell deathマーカーであるhsp70、hsp90およびカルレティキュリンの発現を6、12および24時間後に観察した。HHP処理の6、12および24時間後に、試験したすべての腫瘍モデルにおいて、カルレティキュリン、hsp70およびhsp90の有意な発現が検出された。これらの免疫原性分子の発現は、immunogenic cell deathの誘導因子として唯一知られているアントラサイクリン類によって誘導される発現よりも有意に高かった(図2)。HHP処理によりカルレティキュリンおよび熱ショックタンパク質の発現が増加したのと同時に、これらの分子は細胞表面へと移動した。また、HHP処理により、immunogenic cell deathの可溶性マーカーであるHMGB1の大量かつ急速な遊離が誘導された。遊離したHMGB1の量は、紫外線照射やアントラサイクリン類により処理を行った場合よりもはるかに多かった(図3)。
HMGB1核タンパク質の遊離は、腫瘍細胞死を誘導した48時間後に最大となった。
実施例2
高静水圧処理された腫瘍細胞により増強された、抗原提示細胞による腫瘍細胞の貪食
カルレティキュリンはeat meシグナルとしての役割が実証されていることから、高静水圧により死滅させた腫瘍細胞が樹状細胞(DC)によって貪食される速度を調べた。樹状細胞(DC)は、免疫応答の開始に欠かせない抗原提示細胞として最も優れた細胞である。アントラサイクリン類や紫外線照射などの他の方法で死滅させた腫瘍細胞と比べて、高静水圧処理した腫瘍細胞ではより多くの細胞がより速い速度で貪食された。12時間後、貪食されたHHP処理白血病細胞の数は、紫外線照射により死滅させた細胞の4倍となった(図4aおよび図4b)。
実施例3
高静水圧処理された腫瘍細胞の貪食によるDC成熟化の誘導
DCが免疫応答を活性化する能力は、DC自体の活性化状態と共刺激分子の発現とに左右される。通常の環境において、DCの成熟は、グラム陰性細菌由来のリポ多糖(LPS)などの病原体由来分子によって最も効率的に誘導される。高レベルの共刺激分子を発現している活性化(成熟)DCだけが免疫応答を開始することができる。本発明者らは、HHPにより死滅させた腫瘍細胞を貪食したDCの表現型を分析した。DCとHHP処理腫瘍細胞との相互作用による誘導によって、LPSによる活性化と同程度にまで共刺激分子(CD86、CD83)および成熟関連分子(HLA−DR)がアップレギュレートされた(図5)。従って、HHPによって死滅させた腫瘍細胞は、病原体由来LPSと同程度にDCの成熟化を誘導することができる。
実施例4
高静水圧処理された腫瘍細胞を提示したDCによる腫瘍特異的T細胞および少数の抑制性・制御性T細胞の誘導
HHPで処理されたことによってimmunogenic cell deathマーカーを発現した腫瘍細胞が抗腫瘍免疫を誘導するかどうかを調べるために、本発明者らは、腫瘍細胞を取り込んだDCが腫瘍細胞特異的T細胞応答を活性化する能力を評価した。HHPによって死滅させた腫瘍細胞と未成熟DCとを共培養し、次いでLPSを用いて成熟させた場合と成熟させなかった場合とを設けた。次いで、これらのDCを自己T細胞の刺激物質として用い、腫瘍細胞を取り込んだDCにより再刺激を行った1週間後にIFN−γ産生T細胞の頻度を分析した。HHPで死滅させた腫瘍細胞をパルスしたDCは、紫外線を照射した細胞をパルスしたDCと比較してより多くの腫瘍特異的IFN−γ産生T細胞を誘導し、さらなる成熟刺激(LPS)の非存在下でもより多くの腫瘍特異的IFN−γ産生T細胞を誘導した。
さらに、DCとT細胞との共培養物中において誘導された制御性T細胞(Treg)の頻度を調査した。Tregは腫瘍に対する免疫応答を抑制するため、腫瘍免疫療法においてはTregが誘導されることは望ましくない。HHPで死滅させた腫瘍細胞をパルスしたDCは、未成熟DCおよびLPS活性化DCのいずれと比較しても、制御性T細胞を増殖させる能力は低かった(図8)。FoxP3表面マーカーは制御性T細胞に特異的である。
実施例5
手術または放射線療法による腫瘍の一次治療後に残された病変が微小である場合、単一治療法として活性細胞免疫療法を施すことができる。前立腺癌においては、生化学的再発の徴候(超高感度法で測定された末梢血中前立腺特異抗原(PSA)レベルの上昇)を示した患者に適用できる。
手術によって患者の原発腫瘍が切除された場合に本発明の効果は最大限に発揮される。本願に記載の医薬組成物は、腫瘍組織または腫瘍細胞株から単離された腫瘍細胞から製造することができる。
前立腺癌患者(68歳)は腫瘍発生の初期段階であると診断された。腫瘍は切除されたが、手術の数ヶ月後にPSAレベルの上昇が検出された。そこで、患者に白血球除去法を行い、単離した単球から未成熟樹状細胞を分化させた。前立腺癌細胞株から得た腫瘍細胞に本明細書に記載の高静水圧処理を行うことによってアポトーシスを引き起こし、このアポトーシスを起こした腫瘍細胞を未成熟樹状細胞と接触させて本発明のワクチン組成物を調製した。
医薬組成物を小分けし、使用するまで液体窒素中で凍結した。前立腺癌の生化学的再発が検出された4週間後に腫瘍ワクチンの初回接種を行った。ブースター接種を4週間ごとに1年間にわたり実施した。
ワクチン接種によって、わずかに残っていた腫瘍細胞に対して免疫応答が誘導されて腫瘍細胞の再増殖が大幅に遅延し、その結果、患者の生存期間が延長した。
実施例6
進行性癌患者においては、化学免疫療法の基本理念に従って、活性細胞免疫療法を化学療法(すなわち前立腺癌ではドセタキセル)と組み合わせて実施すべきである。
進行性前立腺癌患者(76歳)の治療を本発明に従って行った。通常の化学療法と本明細書に開示した活性細胞免疫療法とを組み合わせた。患者は65歳のときに前立腺腫瘍の治療を受けていた。手術による腫瘍の切除およびホルモン療法を行った後、PSA(前立腺特異抗原)は低レベルに保たれ、前立腺癌細胞は増殖していなかった。ホルモン療法を12ヶ月行った後、体内の数ヶ所(特に骨)において転移性前立腺癌が発生し、この腫瘍はホルモン抵抗性を獲得していた。この患者に対して、樹状細胞に基づく活性細胞免疫療法を併用したドセタキセルによるホルモン抵抗性前立腺癌療法を行うことが承認された。
化学療法を開始する前に、白血球除去法により得られた単球から未成熟樹状細胞を作製した。前立腺癌細胞株から得た腫瘍細胞を210MPaの静水圧により21℃で30分間処理した。本発明に従って処理した10個の腫瘍細胞を用いて、10個の未成熟樹状細胞をパルスした。腫瘍細胞を用いてあらかじめパルスすることによって得られた成熟樹状細胞を小分けして液体窒素中で急速凍結し、後の治療に使用した。
ドセタキセルによる標準的化学療法を併用した活性癌免疫療法と、(ドセタキセルによる治療終了後の)活性癌免疫療法の単独治療とを4〜6週間ごとに交互に実施し、これを1年間継続した。併用化学免疫療法により疾患は安定し、骨髄転移は縮小し、予測されたよりも生存期間が延長した。治療開始時にこの患者に対して予測された生存期間は6ヶ月であったが、患者は現在3年を超えて生存している。
実施例7
紫外線により死滅させた腫瘍細胞よりもHHPで死滅させた腫瘍細胞が優れていることを示すインビトロ実験
インビトロ実験において、未成熟樹状細胞、ポリI:Cで活性化した成熟樹状細胞、HHP処理した腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞、および紫外線照射した腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞について、腫瘍特異的免疫の誘導能を調べた。腫瘍特異的免疫は、腫瘍特異的Tリンパ球のパーセンテージとして測定した。
HHPで死滅させた腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞を、紫外線照射により死滅させた腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞およびHHPで死滅させた腫瘍細胞単独と直接比較した。実験結果を図7に示す。
腫瘍特異的T細胞の誘導能を調べるため、培養0日目および7日目にパルスしていない樹状細胞または腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞を自己T細胞に1:10の比率で加えた。2日目および7日目に25〜50IU/mLのIL−2(PeproTech)を培養物に加えた。DCで最後に刺激してから7〜9日後に培養物を試験し、腫瘍特異的T細胞の存在を確認した。腫瘍細胞を取り込んだDCにより誘導された、腫瘍応答性およびインターフェロン(IFN)−γ産生性を示す前立腺特異抗原(PSA)応答性T細胞をフローサイトメトリーにより測定した。このT細胞は抗ヒトCD8/IFN−γで染色した。
高静水圧により死滅させた腫瘍細胞(LNCap)を取り込んだ樹状細胞による前立腺特異抗原(PSA)特異的T細胞の誘導を、高静水圧により死滅させた腫瘍細胞単独によるものおよび紫外線照射により死滅させた腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞によるものと比較する。
実験結果を図7に示す。図7の上段は、HHPにより死滅させた腫瘍細胞を取り込んだDCが、成熟シグナルの非存在下でも腫瘍特異的T細胞を誘導できることを示している。紫外線処理により死滅させた腫瘍細胞を取り込んだDCまたはHHPにより死滅させた腫瘍細胞単独では、腫瘍免疫は誘導されない。驚くべきことに、(本発明に従って)HHP処理した腫瘍細胞と未成熟樹状細胞との組み合わせのみが腫瘍特異的免疫応答を誘導することができたが、紫外線照射により処理した腫瘍細胞と未成熟樹状細胞との組み合わせではこの応答を誘導することはできない。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、HHP処理した腫瘍細胞だけが未成熟樹状細胞と協働して腫瘍特異的T細胞免疫応答を誘導できると考えられる。HHP処理した腫瘍細胞は、未成熟樹状細胞の一種の活性化因子として作用すると考えられるのに対し、紫外線で処理した腫瘍細胞はこの効果を有さない。
図7の下段は、ポリI:Cによる処理を行った場合、HHP処理した腫瘍細胞は、紫外線照射した腫瘍細胞と比較してより多くの特異的Tリンパ球を誘導できることを示している。
実施例8
本発明による腫瘍ワクチン接種により得られたインビボデータ
上述した患者と類似した患者コホートから樹状細胞を得た。上述のように死滅させた腫瘍細胞を樹状細胞にパルスした。前立腺切除術または放射線療法による根治的治療後に前立腺癌の生化学的再発を呈した複数の患者に腫瘍ワクチンを4〜6週間の間隔で最大12回接種した。疾患の進行は個々の患者のPSA倍加時間によって評価した。「PSA倍加時間」とは、PSA値が2倍になるのに要する時間と理解される。PSA倍加時間は、前立腺癌を有する男性の全生存期間および転移を起こさずに生存できる期間の最も強力かつ信頼性の高い決定因子であることが示されている。PSA倍加時間が短いと、生存期間が短縮し、転移の発生までの時間が短縮する(Antonarakisら,BJU Int., 2012, 108 (3); pp 378-385)。
図9に示すように、前立腺切除術または放射線療法による根治的治療後に前立腺癌の生化学的再発を呈した患者に本発明の腫瘍ワクチンを連続投与すると、PSA倍加時間は有意に延長する。本明細書に開示した腫瘍ワクチン接種を施すことによって、癌免疫療法の開始前には5ヶ月だった平均PSA倍加時間が、免疫療法を12ヶ月行った後には30ヶ月に延長することが明らかとなった。これは、生化学的再発を呈した前立腺癌患者にとって大いに有益である。
実施例9
末期前立腺癌患者における臨床試験
この臨床試験では、本明細書に記載のように死滅させた腫瘍細胞を樹状細胞にパルスした。複数の末期前立腺癌患者に腫瘍ワクチン接種を繰り返し施した。これらの患者は去勢抵抗性転移性前立腺癌を患っていた。これらの患者において、一定間隔でドセタキセル化学療法を行いながら、癌免疫療法を実施した。
治療コホートの生存期間を歴史的コホートまたはHalabiノモグラムによって推定された生存期間と比較した。Halabiノモグラムによって算出された予測生存期間(生存期間中央値13ヶ月)に基づく歴史的対照コホートと比較すると、活性癌免疫療法を継続的に行うことによって治療患者の生存期間は大幅に延長する(生存期間中央値23ヶ月)ことが示された。
この実験から、本発明の腫瘍ワクチン接種によって末期前立腺癌患者の生存期間が大幅に延長することが明らかとなった。このような患者の予測される平均生存期間は、治療を行わない場合は13ヶ月であるのに対して、本発明による腫瘍ワクチン接種で治療した場合では23ヶ月である。このことは、投薬治療を成功させることが極めて難しいこのような患者において著しい改善が見られたことを示している。

Claims (19)

  1. 免疫療法に使用するための、腫瘍細胞をパルスした樹状細胞の製造方法であって、
    (a)高静水圧処理により腫瘍細胞の免疫応答誘導性細胞死(immunogenic cell death)を誘導するステップと、
    (b)治療を受ける患者の単球を未成熟樹状細胞に分化させるステップと、
    (c)ステップ(a)で得た免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞を、ステップ(b)の未成熟樹状細胞にパルスするステップと
    を含む方法。
  2. 前記腫瘍細胞が、治療される癌に相当する腫瘍細胞株から得られたものであること、または治療を受ける患者の腫瘍由来のものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記単球が、白血球除去により得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 前記腫瘍細胞をパルスした樹状細胞を次いで成熟させる、請求項1に記載の方法。
  5. 前記腫瘍細胞をパルスした樹状細胞を凍結保存する、請求項1又は3に記載の方法。
  6. 前記免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞が、紫外線照射した腫瘍細胞による誘導と比較して、未成熟樹状細胞の食作用を高レベルに誘導する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞が、紫外線照射した腫瘍細胞における発現と比較して、少なくとも1つの免疫応答誘導性細胞死マーカーを高レベルに発現しており、該免疫応答誘導性細胞死マーカーがhsp70、hsp90及びカルレティキュリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞が、紫外線照射した腫瘍細胞と比較して、高レベルの免疫応答誘導性細胞死マーカーHMGB1を遊離する、請求項1に記載の方法。
  9. 前記免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞をパルスした樹状細胞によって誘導される制御性T細胞の数が、紫外線照射した腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞によって誘導される制御性T細胞の数よりも少ない、請求項1に記載の方法。
  10. 前記免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞をパルスした樹状細胞によって誘導される腫瘍抗原特異的T細胞の数が、紫外線照射した腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞によって誘導される腫瘍抗原特異的T細胞の数よりも多い、請求項1に記載の方法。
  11. 前記高静水圧が、200〜300MPaの静水圧である、請求項1に記載の方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の方法により得られる、腫瘍細胞をパルスした樹状細胞。
  13. 高静水圧処理により免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞をパルスした樹状細胞。
  14. 前記免疫応答誘導性細胞死を起こしている腫瘍細胞をパルスした樹状細胞によって誘導される腫瘍抗原特異的T細胞の数が、紫外線照射した腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞によって誘導される腫瘍抗原特異的T細胞の数よりも多い、請求項12または13に記載の樹状細胞。
  15. 前記免疫応答誘導性細胞死を起こしている前記腫瘍細胞をパルスした樹状細胞によって誘導される制御性T細胞の数が、紫外線照射した腫瘍細胞を取り込んだ樹状細胞によって誘導される制御性T細胞の数よりも少ない、請求項12〜14のいずれかに記載の樹状細胞。
  16. 請求項12〜15のいずれかに記載の腫瘍細胞をパルスした樹状細胞を含む医薬組成物。
  17. 早期癌または末期癌患者に使用するための、請求項16に記載の医薬組成物。
  18. 末期癌がホルモン治療抵抗性転移性前立腺癌である、請求項17に記載の医薬組成物。
  19. 前立腺癌または卵巣癌などの癌に罹患した患者に使用するための、請求項16に記載の医薬組成物。
JP2016153454A 2011-07-05 2016-08-04 高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞および樹状細胞を用いた活性細胞癌免疫療法のための手段および方法 Active JP6235085B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201161504387P 2011-07-05 2011-07-05
US61/504,387 2011-07-05
EP11172622.0 2011-07-05
EP11172622A EP2543386A1 (en) 2011-07-05 2011-07-05 Means and methods for active cellular immunotherapy of cancer by using tumor cells killed by high hydrostatic pressure

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014517778A Division JP5986196B2 (ja) 2011-07-05 2012-07-04 高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞および樹状細胞を用いた活性細胞癌免疫療法のための手段および方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017025066A true JP2017025066A (ja) 2017-02-02
JP6235085B2 JP6235085B2 (ja) 2017-11-22

Family

ID=50023029

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016153454A Active JP6235085B2 (ja) 2011-07-05 2016-08-04 高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞および樹状細胞を用いた活性細胞癌免疫療法のための手段および方法

Country Status (7)

Country Link
JP (1) JP6235085B2 (ja)
CL (1) CL2013003282A1 (ja)
CY (1) CY1115803T1 (ja)
HR (1) HRP20141230T1 (ja)
IL (2) IL229702A (ja)
MX (1) MX2013013243A (ja)
ZA (1) ZA201307886B (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2852672C (en) 2011-10-17 2021-07-20 Massachusetts Institute Of Technology A microfluidic system and method for delivering a payload into a cell by causing perturbations in a cell membrane of the cell
JP6502940B2 (ja) 2013-08-16 2019-04-17 マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー 細胞への物質の選択的送達
KR20170074235A (ko) 2014-10-31 2017-06-29 메사추세츠 인스티튜트 오브 테크놀로지 면역 세포로의 생체분자의 전달
CN113897285A (zh) 2014-11-14 2022-01-07 麻省理工学院 化合物和组合物向细胞中的破坏和场实现的递送
CN107250373A (zh) 2015-01-12 2017-10-13 麻省理工学院 通过微流体递送实现的基因编辑
EP4257675A3 (en) 2015-07-09 2024-01-03 Massachusetts Institute of Technology Delivery of materials to anucleate cells

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002504322A (ja) * 1998-02-20 2002-02-12 ザ ロックフェラー ユニバーシティー 樹状細胞に対するアポトーシス細胞介在抗原提示
WO2006095330A2 (en) * 2005-03-10 2006-09-14 Yeda Research And Development Co. Ltd. Methods and immunogenic cell preparations for treating antigen-associated diseases

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002504322A (ja) * 1998-02-20 2002-02-12 ザ ロックフェラー ユニバーシティー 樹状細胞に対するアポトーシス細胞介在抗原提示
WO2006095330A2 (en) * 2005-03-10 2006-09-14 Yeda Research And Development Co. Ltd. Methods and immunogenic cell preparations for treating antigen-associated diseases

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ANNALS OF THE NEW YORK ACADEMY OF SCIENCES, vol. 1209, JPN5014008305, 2010, pages 109 - 117, ISSN: 0003650967 *
CURRENT MEDICINAL CHEMISTRY, vol. 15, no. 23, JPN6016007665, 2008, pages 2329 - 2336, ISSN: 0003650969 *
EUROPEAN UROLOGY SUPPLEMENTS, vol. 9, no. 6, JPN5014008304, 2010, pages 629 - 40, ISSN: 0003650966 *
JOURNAL OF IMMUNOTOXICOLOGY, vol. 7, no. 3, JPN5014008306, 2010, pages 194 - 204, ISSN: 0003650968 *
PLOS ONE, vol. 5, no. 9, JPN5014008303, 2010, pages 12367, ISSN: 0003650965 *

Also Published As

Publication number Publication date
IL229702A0 (en) 2014-01-30
IL229702A (en) 2016-09-29
IL247781A0 (en) 2016-11-30
CY1115803T1 (el) 2017-01-25
CL2013003282A1 (es) 2014-10-10
JP6235085B2 (ja) 2017-11-22
ZA201307886B (en) 2015-03-25
IL247781B (en) 2019-11-28
HRP20141230T1 (hr) 2015-02-13
MX2013013243A (es) 2014-05-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5986196B2 (ja) 高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞および樹状細胞を用いた活性細胞癌免疫療法のための手段および方法
JP6235085B2 (ja) 高静水圧によって死滅させた腫瘍細胞および樹状細胞を用いた活性細胞癌免疫療法のための手段および方法
US10918704B2 (en) Means and methods for active cellular immunotherapy of cancer by using tumor cells killed by high hydrostatic pressure and dendritic cells
AU2012280322A1 (en) Means and methods for active cellular immunotherapy of cancer by using tumor cells killed by high hydrostatic pressure and dendritic cells
JP6134763B2 (ja) GM−CSF及びインターフェロンαを用いて生成され、且つ熱処理され死滅したがん細胞を取り込んだ樹状細胞
Ning et al. β‐Glucan restores tumor‐educated dendritic cell maturation to enhance antitumor immune responses
Su et al. Anti-tumor efficacy of a hepatocellular carcinoma vaccine based on dendritic cells combined with tumor-derived autophagosomes in murine models
JP2021533798A (ja) エクソソームに基づく抗腫瘍ワクチン
Shan et al. Cytokine-induced killer cells co-cultured with dendritic cells loaded with the protein lysate produced by radiofrequency ablation induce a specific antitumor response
Graf et al. Tumor infiltration by myeloid suppressor cells in response to T cell activation in rat gliomas
Zhang et al. Enhanced human T lymphocyte antigen priming by cytokine-matured dendritic cells overexpressing bcl-2 and IL-12
Santin et al. Restoration of tumor specific human leukocyte antigens class I-restricted cytotoxicity by dendritic cell stimulation of tumor infiltrating lymphocytes in patients with advanced ovarian cancer
WO2011060205A1 (en) Methods, compositions, and assays for determining the effect of an immune cell on a cell from an infectious or neoplastic disease
Xie et al. Inhibitory effects of a dendritic cell vaccine loaded with radiation-induced apoptotic tumor cells on tumor cell antigens in mouse bladder cancer
US10716810B2 (en) Canine autologous immunotherapy using dendritic cell induced cancer killing immunocytes
NZ618000B2 (en) Means and methods for active cellular immunotherapy of cancer by using tumor cells killed by high hydrostatic pressure and dendritic cells
Park et al. Active immunization using dendritic cells mixed with tumor cells inhibits the growth of lymphomas.
Jacobs Towards immunotherapy in pediatric cancer patients.

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170502

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170711

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171003

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171025

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6235085

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250