本発明は、出荷済みのボトル飲料水等の中に、ガラス破片や虫等の異物が混入していないかどうかを検査する装置に関する。より詳しくは、ボトル等のような透光性を有する各種の容器(ガラス以外の素材から成る透光性を有する容器を含む)にワイン等の飲料用液体等の内容物を封入した検査対象物に、異物が混入していないかどうかを目視により検査する目視異物検査装置に関する。
以下、これらのボトル等の透光性を有する容器と内容物とからなる検査対象物全体を、単に「ボトル等」と称する。
ボトル等内に異物が混入していないかどうかを検査する装置としては、特許文献1〜3に示すように、ボトル等を自動搬送しながら光を照射して、その透過光を各種センサで監視することによる異物の混入を自動的に検知する装置、または画像解析することにより、異物の混入を自動的に検知する自動異物検査装置が存在する。
これらの自動異物検査装置は、ボトル等の内部に液体を封入する製造工程において検査する場合には有用である。しかし、輸入品等のように、すでに工場から出荷済みの製品または既に完成した製品(ボトル等)についての異物混入を、自動異物検査装置により検査するのはあまり効率的ではない。
自動異物検査装置が工場出荷後の製品の異物混入検査にあまり有用でない理由は、
(1)出荷済みのボトル等を検査のために、自動検査装置にセットするセット動作に時間と手間がかかること、
(2)ガラス性等の破損しやすいボトル等の場合には、セット動作時にボトルを丁寧に取り扱わないとボトル等が破損するおそれがあり、またセット動作時にラベル等の外装を破損するおそれがあること、
(3)ボトル等を自動異物検査装置にセットするのに手間がかかるために、高速で検査できないにもかかわらず、高価な自動異物検査装置を輸入品等の完成品の異物混入検査のために使用するのは、費用対効果に見合わないこと.
等のためである。
以上の状況から、現状では、輸入赤ワイン等の異物混入を人の目で見て検査するための目視異物検査装置が使用されている。このような目視異物検査装置に関する特許出願の現状を把握するため、先行技術を調査したが、特許出願されている目視異物検査装置は発見できなかった。そのため、現在、目視検査の現場で使用されている赤ワインのボトルの目視異物検査装置及びその使用方法について説明する。
目視によるボトル等の異物混入検査は、ボトル等に強い光をあてて、ボトル等からの透過光を反対側から目視して、異物の存在を確認することにより行っている。そのため、一般的に赤ワインのように内容物及びボトルの双方が濃い色の場合の異物混入の目視検査には、強い光の光源を用いている。そのため従来の目視異物検査装置では、強い光を発光する常時点灯している光源が、光が外に漏れないように遮蔽された遮蔽ボックス内に設けられており、遮蔽ボックスの正面には両開きドア(観音開きドア)が設けられている。
目視により異物混入検査をする際には、両開きドアを開いてボトル等を光源からの強い光にかざして、ボトル等を透過する光によりボトル等の内部に異物が存在していないかどうかを確認する。一般的に、ボトル内に混入している異物とボトル内容物であるワイン等の液体とは比重が異なるので、通常、異物はボトル等の底に沈んでいるかまたはボトル等の上部に浮いている。したがって、目視検査においては、ボトル等を検査装置の両開きドアに入れる直前にボトル等を逆さにして、異物が逆方向に(上から下または下から上に)移動する瞬間を目で捉えて、異物の存在を発見しなければならない。
特開2004−257937号
特開2003−315280号
特開2003−329604号
輸入品等のような出荷済みの製品の異物混入検査に、特許文献1〜3に記載したような自動異物検査装置を使用するのは、上述したように種々の問題があり、異物混入を機械により自動的に検査するのは難しい。そのために、出荷済みのボトル等の異物混入の検査には、人の目で異物の混入を検査する目視検査が主流である。
しかしながら、従来の目視異物検査装置には以下のような問題があった。
目視検査に使用する従来の目視異物検査装置は、常に光源を発光させておき、両開きドアを開けて光源にボトル等をかざして、ボトルを透過する光により異物混入の有無を検査するものである。赤ワイン等のボトルはボトル自体の色が濃い上に赤ワインの色も比較的濃いため、透過光により異物混入を確認するには、特に強い光を照射して異物混入を確認している。そのため、ボトル等を目視異物検査装置の両開きドアにかざした際に、両開きドアとボトル等の隙間から漏れてくる強烈な光が検査者の眼に入り、眼が眩みやすい。眼が眩むと検査精度が低下するだけでなく、眩惑状態から視力が元に戻るのに時間がかかるために、目視検査精度と検査速度が落ちてしまう。
また、一般的に異物の比重と内容物(ワイン等)と比重が異なるため、異物の混入の有無を確認するためには、ボトル等を逆さにして異物が移動する瞬間に異物混入を確認するのが好ましい。この場合、異物と内容物の比重差が大きい異物の場合には、異物の移動速度が速いため、異物の検知が特に難しくなる。例えば、ガラスの破片や石等の重い異物はボトルの底に沈んでいるため。ボトル等を逆さにして異物が反対側に移動する間に異物を検出しなければならない。
上述のように、ガラスや石のように内容物と異物の比重差が大きく、ボトルを逆さにしたときの異物の移動速度が速い場合には、異物の存在を検知することが難しい。特に目視異物検査装置が1個の点光源の場合、点光源の中心から外側に向けて透過光の強度が弱まるため、点光源に周辺の狭い範囲ではよく見えるが、その外側では異物を発見しにくいという問題があった。また、光の強度が検査領域全体で均一でないため、光強度のばらつきに眼が順応できず、早い速度で移動する異物の発見が難しくなるという問題もあった。
さらに従来技術の目視異物検査装置では、一部の製品を抜き取って検査を行う抜き取り目視検査が一般的であった。しかし、昨今、ファーストフード店での提供商品や、インスタント食品等への異物混入が大きな社会問題となっている。ワイン等への異物混入に関しては、例えば、今年(2015年)1月13日付で、大手百貨店が、赤ワインにガラス片が混入したとして、300本を回収すると発表した。また、2015年5月20付で某大手ビール会社が、ガラス片が混入している可能性があるとして、ワイン4万8000本を自主回収している。このようにボトル等においても異物混入が大きな社会問題となっていることから、従来の抜き取り検査では検査が不十分であるとして、全品検査の要請が強くなっている。したがって、ボトル等の異物混入検査においても、抜き取り検査から全品検査の必要性が高まっており、目視検査の検査精度の向上と検査速度の向上の双方が強く求められている。
本発明は、このような従来の目視異物検査装置の問題点に鑑みてなされたものであり、ボトル等の目視による異物検査の精度を向上させることができ、かつ目視による異物混入の検査速度を確実に向上させることのできる異物混入目視検査装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明にかかる目視異物検査装置は、
透光性を有する容器に封入された検査対象物内の異物混入を検査する異物混入目視検査装置であって、光源と、前記光源を内部に収容し、前記光源からの光を遮光する遮光枠体と、前記遮光枠体の一部に設けられ、前記光源の光を通過させる少なくとも一つの透光部と、前記透光部の近傍に設けられ、前記光源に電気的に接続されており該光源の点灯と消灯とを切り替える投光スイッチと、を備えることを特徴とする。
これにより、漏れ光による検査者の幻惑を抑制することができるため、検査速度及び検査精度が飛躍的に向上する。
本発明に係る異物目視検査装置によると、透光部を設けて透光部からのみ検査光が透過するようにするとともに、異物検査の瞬間だけ光源を点灯するようにした。これにより、ボトル等の検査位置が明確となり検査位置へのボトル移動動作や確認作業が単純化されるので経験度による検査精度のばらつきを抑制することができる。また眩惑による検査ミスも抑制されるので、検査時間および検査精度を大幅に向上させることが可能となる。さらに、強力な光を発光する光源を常時発光させるのではなく、検査時だけ発光させるので、エネルギー使用量を大幅に抑制することも可能となる。本発明にかかる目視異物検査装置は眩惑の抑止に特に顕著な効果を有することから、検査に強い光の照射が必要となる色の濃いボトル等、例えば赤ワイン等比較的色の濃いボトルや濃い色の液体の異物混入の目視検査に有用である。
また、透光部が検査光の面光源となり、ボトル等の検査範囲の全体に亘り、ほぼ均等に透過光が照射されるのでボトルの上下部分も見やすい。そのため移動の早い異物をより発見しやすくなり、検査精度が高くなる。また、正面の透光部以外の部分に柔らかなウレタンを設けることにより、ガラス等からなるボトルを検査装置にぶつけてもボトルが破損しにくくなる。したがって、検査者は破損のおそれを感じることなく透光部にボトルをかざすことができるので、ボトル移動時間を早めることができる。したがって、初心者であっても目視検査速度を向上させることができる。
本発明に係る異物混入目視検査装置の構成の一例を示す部分斜視図。
投光スイッチの構成例及び電気接続状態の一例を模式的に示す図。
図1に示す異物混入目視検査装置の使用状態を示す正面図。
投光スイッチの他の実施形態を示す模式図。
本発明に係る目視異物検査装置の他の実施形態を説明するための展開部分斜視図。
検証試験に使用した器具の仕様または製品型番を示す図表
検査試験に使用したサンプルの種類(原産地等)を示す図表。
サンプルA〜Cについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
サンプルDについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
サンプルEについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
サンプルA〜Cについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
7人のモニター検査者により、それぞれ従来の目視異物検査装置と本願発明の目視異物検査装置を用いて目視による異物検査を行った結果を比較して示す図表。
図面を参照して本発明に係る異物混入目視検査装置の一実施例を説明する。図1は本発明の一実施例に係る目視異物検査装置10(以下目視検査装置10と称する)を、一部省略して示している部分斜視図であり、図2は図1に示す目視検査装置10を用いてボトル等への異物混入を検査する状態を示す正面図である。図1では内部構造がわかり易いように天板及び右側壁を除いた状態で描いている。図1に示す目視検査装置10は、光源11の光を遮蔽する遮光枠体12と、遮光枠体12の正面に設けられて光源から光を通過させる透光部13光源11と透光部13の間に設けられた散光部15とを備えている。また、透光部13の下側には光源11の発光をオン・オフするための投光スイッチ16が設けられている。
<光源>
目視検査装置10の透光部13から外部に透過する光は、透光部13の全体に亘り均一の強さであること望ましい。そのために、理想的な光源11としては、透光部13全体に亘り均一な強さの光を照射できる面光源が好ましい。
図1に示す実施例では、広範囲に亘り均一なビーム光を照射できる光源11をボトル等の長さ方向に2個配置している。このような光源11として、例えば、朝日電球(株)から販売されている散光型ビームランプ(EBRF110V120W/W:ビーム角30°またはEBRF110V80W/W:ビーム角30°)等を使用することができる。図2では2個の光源を使用する構成例を示しているが、光源11は1個であっても3個以上であっても良い。一様な強さの光を検査面全体に均一に照射できるように、多くの小さなLEDを面上に多数密接配置して(例えばマトリクス条に配列)して全体を面光源として使用することもできる。
<光源の位置調整>
光源11を適切な位置に配置することができるようにするために、光源11の位置を調整することが望ましい。そのため、光源11は横方向の位置を適宜ずらして光源支持部22に取り付けて固定することができることが望ましい。または、光源支持部22に沿って横方向(左右方向)にスライド移動して固定可能な構造とすることもできる。さらに、光源支持部22を、縦方向にスライド移動可能な縦方向支持部23を備える構成として、縦方向(上下方向)の位置も調整することができるようにすることが好ましい。
図1においては、2つの光源11がそれぞれ個別の光源支持部22に固定されている。光源11はスライド溝30を水平方向にスライド移動可能に構成されており、横方向の位置を調整したら、固定ネジ31を用いて光源11を光源支持部22に固定することができる。また、各光源支持部22は、スライド溝32を上下方向にスライド移動可能に縦方向支持部23に保持されている。光源支持部22は、上下方向の位置が調整された後、固定ネジ33により縦方向支持部23を固定される。なお、水平・垂直方向の固定ネジ31、33は、手で調性可能な固定ノブとしても良い。
<光源の照度(光量)調整>
適切な光源11の明るさ(照度、光量、強さを含む。以下、単に「照度」という)は、後述するように、検査対象物によって異なる。したがって、検査対象物に応じて、光源の照度を検査対象物に合わせて変更できるように構成することが好ましい。例えば、図2に例示するように、光源11の照度を調整することができる照度調整器14を設けることができる。照度調整器14はアナログ的に変更することが好ましいが、デジタル的に複数ステップ変更可能な構成とすることもできる。照度調整器は、例えば、光源11の電圧(電流)を変更することにより調整することができる。
<散光部15>
また、光源11と透光部13の間に設けられている散光部15は、例えば表面に凹凸を設けたすりガラス状のもので構成することができる。散光部15は、透光部13から透過する光を散乱させて透光部の全体に亘り均一な強さの光として通過させることを目的としており、この目的に適合するものであれば、特に材料や構造は限定されない。光源11が一定の強さの光を透光部13の全体にわたり均一に照射できる等の一定の基準を満たせば必ずしも散光部15を設ける必要はないが、眩惑のリスクを抑えつつ目視検査の精度を高めつつ検査速度を上げるためには、散光部15を設けることが好ましい。
<投光スイッチ16>
投光スイッチ16は、電源と光源11とに接続されており、検査対処物(ワインボトル等)が透光部13の前に置かれたときに光源11を発光(点灯)させ、検査対象物が透光部13を離れたら光源11の発光を停止(消灯)するよう光源11の発光を切り替えるものである。このスイッチ16は、通常状態では、光源11を消灯する方向に弾性部材等により付勢されている(図1では上方向に付勢されている)。
図2は、投光スイッチ16の構成例及び光源11の電気接続の一例を模式的に示している。投光スイッチ16はバネ等の弾性部材により上方向に付勢されている。投光スイッチ16は電気接点25の接点を開閉するように設けられており、投光スイッチ16が上方向に移動しているときには、電気接点25は解放状態にあり、光源11は電源26から切り離されて消灯している。投光スイッチ16が下方に押圧されて下方に移動すると電気接点25が接続状態となり、光源11に電源26から照度調整器14を介して電流が供給される。これにより光源11は点灯する。下方向に押圧される力が解除されると、投光スイッチ16は上方向に付勢されているので、電気接続点25は解放されて、光源11は消灯する。
図3は、目視検査のためにボトル等60が投光部13の前に配置された状態(目視検査時の使用状態)を示している。図3に示すように、検査者は、目視検査のためにボトル等60の首部から先端部61を持って、ボトル等を逆さにして投光部13の前に配置する。その際、ボトル等60を逆さにして持った手(図示せず)、またはボトルの先端部61の下端を投光スイッチ16の上に置き下方に押圧する。これにより、光源11が点灯する。光源11が点灯すると、投光部13からの透過光がボトル全体に照射され、透過光によりボトル等60の内部をみることができる。もし異物65が存在する場合には、ボトル等60を逆さにしたことにより、異物65と内容液の比重の差に応じて異物65が上下のいずれかの方向に移動するので、異物65を発見するこことができる。目視検査が終わり、手またはボトル等60を投光スイッチ16から離すと、投光スイッチ16が自力(弾性力等の付勢により)で上方に押し上げられて光源11が消灯する。なお、図3では、ボトルの首部分が見えるように下の方まで開口部13が伸びた形状を示しているが、ボトルの首部分からの漏れ光による眩惑を防止するために、開口部13が首部分にかからないように、開口部13を短くしても良い。または、首部分の開口部13をボトル形状に合わせて細い開口とすることもできる。
このような投光スイッチ16を設けることにより、検査対象物60(ワイン等の内容物とボトル等の容器の双方を含む:以下、「ボトル等60」と称する)が透光部13の近傍に存在しないとき(検査していないとき)には、光源11が消灯しており透光部13から光が漏れることがない。そのため、検査対象物60が透光部13の前に存在しないときの眩惑を防止できる。検査時以外は点灯しないのでまた消費電力を大幅に低減することも可能となる。なお、検査の瞬間だけ光源11を発光させることが望ましいため、光源11は投光スイッチ16からオン信号を受けたら、できるだけ短時間で(数100ミリ秒以内に)所定の基準を超える明るさ以上に発光することが好ましい。
投光スイッチ16の配置は、検査のためにボトル等60を投光部の前面に移動した際に、投光スイッチ16を操作して光源11を点灯させることができる位置に配置するのが好ましい。図1においては投光部の下側に投光スイッチ16が設置されている。これによりボトル等60を持つ方の手(片手)で投光スイッチ16を操作することができる。投光スイッチ16の操作は必ずしも検査者の手や腕で操作できることが必須要件ではなく、ボトル等60により押圧して点灯できるような構成であっても良い。例えば、投光部13の上下、左右の位置など、種々の位置に配置することも可能である。また、センサ等でボトル等の位置またはボトル等を持つ手の位置を検知して、センサがボトル等または手を検知している間または検知してから所定の時間だけ、光源11を点灯させる構成とすることも可能である。
散光部15は、光源11から照射された光を散乱させて、できるだけ透光部13の全面に亘って均一の強さの光が透過するように作用する。これにより、検査者が異物の混入を確認することが容易となる。図1に示す実施例の場合には、細長い透光部13から均一の強さの光が透過する。従って、ボトル等60(図2参照)の上下方向の広い範囲を同時に見ることができるので、異物65の移動が速い場合でも異物の確認が容易となる。
透光部13は遮光枠体12の一部に設けられた開口であり、検査対象物60の検査範囲となる。したがって、検査対象物60より少し小さ目で検査対象物60の形に合わせた開口形状とするのが好ましい。例えば、赤ワインのボトルの場合には、ボトルの胴体部の形状に合わせて縦長の透光部とするのが良い。
また、透光部13は、検査対象物60よりもやや小さめにして、透光部13を透過した光が検査対象物60を透過せずに直接目に入るのを防止するようにすることが望ましい。これにより検査時(光源11の点燈時)の漏れ光による眩惑の可能性を減少させることができる。
透光部13を囲む外側表面はウレタンのような衝撃吸収性(クッション性)を有する材料からなる衝撃緩衝部材17を設けることが望ましい。これにより、検査の際に誤って、ボトルのようなガラスからなる検査対象物60を目視検査装置10にぶつけても、衝突時の衝撃が衝撃吸収部材17により吸収されるので、検査対象物60または目視検査装置11の破損やラベル等の外装の毀損を防止することができる。また、衝撃緩衝部材17の厚みを比較的厚くすることにより、破損の可能性をより低減することが可能となる。
なお、図1に示す実施形態では、光源11をステンレス等の強固な遮光枠体12で完全に包囲するように囲み、一部に所望の開口を設けて透光部13を形成している。しかし、必ずしも光源11の全体を、強固な遮光枠体12で覆う必要はない。投光部13を設ける面は遮光枠体12を設けずに、散光部15と衝撃緩衝部材17で覆うように構成することもできる。この場合、衝撃緩衝部材17を遮光可能な材料で形成し、検査対象物60の形状に応じた開口部を設けておき、これを散光部17の外側表面に交換可能に配置するよう構成とする。検査対象物60の形状に合わせて、異なる形状の開口部を設けた衝撃緩衝部材17を用意しておき、検査対象物60の形状に合わせて、衝撃緩衝部材17を入れ替えることにより、検査対象物60に応じた最適な透光部13の形状を備える目視検査装置とすることができ、眩惑リスクをより防止可能となる。図5にこのような構造の実施形態を示す。
図5に示す他の実施形態は、遮光枠体12一部を開口とするとともに、その開口部分にすりガラス等からなる散光部15を固定するとともに、その外側にスライド枠18を設けて、散光部15の外側に衝撃緩衝部材17a、17b等を交換可能に取り付ける構造としたものである。図5の実施形態では、衝撃緩衝部材17a、17b等を、遮光枠体12に設けられたスライド枠18と散光部材15の間にスライド挿入して、交換することが可能である。
スライド挿入する衝撃緩衝部材17a、17b等は、光源11からの光を遮光できる遮光性の高い材料を用いるとともに、中央近傍に検査対象物60の形状に合わせた形状の開口部13a、13bを設ける。この実施形態では、スライド挿入された衝撃緩衝部の開口部13a、13bが透光部13となる。したがって、検査対象物60の形状に合わせて開口部の形状の異なる各種の衝撃緩衝部材17a、17b等を用意しておき、検査対象物60に合わせて衝撃緩衝部材17a、17b等を入れ替えることができる。図xxでは2個の衝撃緩衝部材17a、17bのみを示したが、検査対象物の応じた形状の開口部を有する各種の衝撃緩衝部材を用意しておくことが好ましい。
このように、透光部13の形状を検査対象物の容器60の形状に合わせて交換することにより、検査対象に応じた専用の目視異物検査装置とすることが可能となる。これにより、透光部13からの漏れ光を効率的に防止できるので、眩惑による検査ミスを防ぐとともに、目視検査速度を向上させることが可能となる。
また、衝撃緩衝部材17a、17b等を交換可能に設ける構成は、スライド挿入に限定されない。例えば、面ファスナー等のような一対の接続部材(図示せず)を、衝撃緩衝部材と散光部15(または遮光枠体12)のそれぞれに互いに対面する位置に固定しておき、該接続部材を用いて衝撃緩衝部材17a、17b等を散光部材15に接続固定する構成としても良い。また、単に両面テープで衝撃緩衝部材17a、17bと散光部15とを接着するように構成しても良い。
なお、図1では、投光スイッチ16として、メカニカル構造の投光スイッチを透光部の近傍に配置する例を示したが、透光スイッチはこのような構成に限定されない。例えば、発光部と受光部からなるセンサを用いて、投光スイッチを構成することも可能である。
図4は、光センサを用いた投光スイッチの構成例を模式的に示した図である。示すように、発光部19aと受光部19bと、受光部19bの光感知状態に応じて接続状態を切り替えるスイッチ(例えばトランジスタや各種半導体スイッチ等)と、該スイッチを介して電源26と光源11の電気的接続を切り替える構成(以下「センサスイッチ」と称する)とすることにより、投光スイッチとすることが可能となる。発光部19aからの光を受光部19bが検知しているときに、光源11は消灯されており、ボトル等60により発光部19aからの光が遮断されて、発光部19aからの光が受光部19bにより検知されないときに光源11を点灯させる。
このようなセンサスイッチの発光部と受光部を、発光部からの光が透光部を横切るように配置することにより、検査対象物の容器60が透光部に配置されたときにのみ光源11が点灯するようにすることができ、人為的に透光スイッチを操作する必要がないので、検査作業をより簡素化して検査速度を向上させることが可能となる。
光源11の光の強さについて説明する。光源11の光の強さは赤ワインなど検査対象となる内容物の色の濃さ及び容器60の色の濃さを含む、検査対象物全体の透光性に応じて選定する必要がある。好ましくは、光の強度をアナログ的に調整可能またはデジタル的に数段階調整可能な構成とすることが望ましい。
<ボトル等の目視異物検査に必要な光の強度>
ボトルに詰められた液体医療物の異物混入検査に必要な光の強度について、検証試験結果を用いて説明する。検証試験は6種類のサンプルを用いて行った。サンプルとして、3種類のボトルに入った赤ワイン(サンプルA〜C)と、色の濃い炭酸飲料水(サンプルD、コーヒー(サンプルE)、ウーロン茶(サンプルF)を用いて異物混入検査を行うことにより、目視検査に必要な光の強度についての検証試験を行った。
図6は、検証試験に使用した器具の仕様または製品型番を示す図表である。図7は、被検査対象として選定したサンプルA〜Fの種類と赤ワインA〜Cの3種類の原産地を示す図表である。
図6に示すように、目視検査に必要な光強度を測定する装置としては、本願発明の1実施形態である図1に示す目視異物検査装置を使用した。その光源としては、朝日電球(株)EBRF110V120W/W(ビーム角30°)のビームランプを用いた。また光源の光度を調整する中間調光器具として、太洋電機産業(株)のパワーコントローラ(20w〜160wまでの白熱等対応)を用い、照度計は、(株)佐藤商事のデジタル照度計Lx−PRO(TM−204)を使用した。
図7に示すように、サンプルA〜Cの赤ワインは、原産地の異なるものを使用した。検証試験に赤ワインを用いたのは、赤ワインはボトル及びワインの色が濃く、強い光が必要となるものであるからの光の強度のテストにふさわしいと考えたからである。サンプルD〜Fは、本願発明に係る目視異物検証装置が赤ワイン以外のボトル等の検査にも使用できることを検証するため、清涼飲料水についても調べたものである。サンプルDはペットボトル1.5L容器のコカコーラ(登録商標)であり、サンプルDはペットボトル900mml容器入りユーシーシー上島珈琲株式会社製のブラックコーヒー、サンプルFは、ペットボトル2。0L容器入りのサントリー社製の烏龍茶である。
図8は、サンプルA〜Cについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図である。図8から、サンプルB及びCの赤ワインの目視により異物検査を行うには、少なくとも12000ルクスを超える照度の光が必要であることがわかる。このような強い光が直接目にあたると眩惑の可能性が極めて大きい。
テストには、異物の混入しているサンプルA〜Fを使用し、各サンプルA〜Cのそれぞれについて各照度ごとに10回のテストを行った。テスト結果は3段階評価とし、10回のテスト中の10回ともすべて異物を検出できたものを○、10回中9回〜4回異物を検知できたものを△、10回中の検出回数が3回以下のものを×と評価した。
光の強度テストの結果から、光源11の照度にかかわりなく、サンプルA〜Fを透過する光の量(透過光量)が2.6または2.7ルクスを超えると、サンプルA〜Fのすべてについて、目視検査が可能であることが分かった。すなわち、検査対象商品によっては、図8に示す赤ワインの場合のように、透過光量が2.6ルクス以上で検査可能なものもあれば、2.7ルクス以上の透過光量が必要な商品もある。また、図9〜図11に示すように、赤ワイン以外の商品についても、2.7ルクス以上の透過光量が必要であることがwかった。さらに、図11からわかるように、色の薄い商品であっても、確実な目視検査には透過光量2.7以上あることが望ましいことがわかった。
図8〜図11の結果から、検査対象商品の色の濃さが濃い商品にかぎらず、色の薄い商品(図11のサンプルFを参照)であっても、適切な検査を行うには2.7ルクス以上が好ましいことが判明した。
以上から、各種検査対象商品について確実な検査を行うためには、検査対象商品の透過光量が少なくとも2.7ルクス以上となるように光源11の照度または強度を調整すれば、ほぼすべての投光性を有する商品についての目視検査が可能となる。
したがって、検査対象商品ごとに透過光量が2.7ルクス以上となる光源11の照度(強度)を測定してリストにしておき、そのリストの記載に基づいて検査対象商品に合わせて光源の照度を調整することにより、目視異物検査の対象商品に合わせた透過光量の設定が容易となり、的確な目視異物検査を行うことが可能となる。なお、光源の照度の適切な値を検査対象商品毎にリスト化する場合、透過光量が2.7ルクス以上となる光源の照度を示すのが良い。なお、透過光量が2.7ルクス以上であれば目視検査を良好に実施できるが、透過光量が2.7ルクスをあまり大きく超えない範囲(例えば2.8ルクス以下、又は2.9ルクス以下)となるように設定することが好ましい。明るすぎると眩惑のリスクが高くなるので、光源の照度を検査可能な範囲で低く抑えることにより、眩惑のリスクを避けることができるだけでなく、消費電力等も抑制可能となる。
また、仮にサンプルA〜Fとは異なり目視検査に適切な透過光量の限界値が2.6〜2.7の範囲ではない商品が出てきた場合、その検査対象商品の目視検査に適切な透過光量となる光源の照度を予め測定してリストに記録しておくことにより、適切な目視検査が可能となる。
さらに、適切な光源の照度がリストに登録されていない商品については、透過光量が2.7以上となるように、光源11の照度を設定するのが好ましい。この場合も同様に、透過光量が2.7から大きくなり過ぎない(例えば2.8程度又は2.9以下)ことが好ましい。なお、リスト化されていない商品の場合、特に透過光量の測定数値にこだわらず、光源11の照度を変化させながら検査対象承認に光を照射し、検査対象商品の透過光を実際に観察しながら、目視検査しやすい照度に光源11の照度を調整しても良い。
図8に示すサンプルB,Cの赤ワインのように、透光性が比較的低い検査対象物の場合には、光源の照度が12000ルクス以上という極めて強い光が必要となる場合がでてくる。このような強烈な光の場合、漏れ光による眩惑のリスクが高まる。しかし、図11に示すように、サンプルFのような透光度が高い場合には、光源の照度は570ルクスで検査可能となる。白ワインのような透光性の高い内容物の場合にも同様に光源の照度を低く抑えることができるものと思われる。このように光源の照度が低い場合には、漏れ光による検査者の幻惑リスクを抑え、検査精度、検査速度をあげることができるので、検査対象物に合わせて適切に光源の照度を調整することは、極めて有用である。
図12に、従来の目視検査装置と、本願発明の目視検査装置を用いて目視による異物検査を実施した場合の検査速度を測定して比較した結果を示す。この検査速度の測定テストにおいて、従来の目視検査装置とは、段落[0010]に於いて説明した構造の目視異物検査装置であり、本発明の目視異物検査装置とは、図1・図2及び段落[0019]〜段落[0025]に於いて説明したようなに示す目視異物検査装置である。検査速度の測定でも光源は、光源の照度試験と同じように、朝日電球(株)EBRF110V120W/W(ビーム角30°)のビームランプを用いた。光源の照度は、透過光量が2.7となるように設定して試験を行った。
このテストでは、7人の検査者(検査モニター)により、サンプルBの赤ワインボトルを従来技術の目視異物検査装置と本発明に係る目視異物検査装置を用いて、それぞれの装置について1時間ずつ目視により異物検査してもらった。図12は、その結果を示す表である。
図12に示す「1人/60分検査本数」の欄は、従来の装置を使って1時間目視検査した場合の各検査モニターの検査総本数と、本発明の装置を使って1時間検査した場合の検査挿本数を、検査モニター毎に示している。平均とは7人のモニターの検査済み総本数の平均である。「1人/1分検査本数」の欄は、上記検査結果を1分間の検査料に換算した値を示している。
増減率は、従来装置使用した場合と本願発明の装置を使用した場合の検査速度の違いを示している。増減率からわかるように、本願発明の目視異物検査装置では、すべての検査モニターに置いて検査速度が向上しており、平均で約14%検査速度が向上していることがわかる。ここで、7人のモニターの平均速度が14%向上したことも重要であるが、7人の検査モニター全員の検査速度が向上したことである。これは、検査モニターの経験度とは無関係に、本願発明の装置が従来装置よりも優れた効果を有するものであることを客観的に証明しているものである。
以上の検査では、ボトルに封入された赤ワイン、炭酸飲料水、ウーロン茶等6種類のみを測定したが、を用いて各種測定を行ったが、本発明の装置は赤ワインボトルに限定されることなく、光透過性のある容器に光透過性のある液体を封入した商品または製品の目視による異物検査に使用することができる。また、検査対象物の最適な光の照射強度を得るために、検査対象品の透過光を基準にして光源の照射強度を調整する構成も有用である。このような光源の調整方法としては、光源へ供給する電流を増減するように構成しても、電圧を増減するように構成しても良い。このような装置として、例えば、太洋電機産業製のパワーコントローラを使用することができる。最適透過光量の調整は、検査対象商品等毎に最適透過光量となる光源の照射強度を予め測定しておいた測定データに基づいて、光源の照射強度を調整するのが望ましい。
10 目視異物検査装置11 光源
12 遮光枠体
13 投光部
14 照度調整器
15 散光部
16 投光スイッチ
17、17a、17b 衝撃緩衝部材
18 スライド枠
19a 発光部
19b 受光部
22 光源支持部縦方向支持部23
23 縦方向支持部
25 電気接点
本発明は、出荷済みのボトル飲料水等の中に、ガラス破片や虫等の異物が混入していないかどうかを検査する装置に関する。より詳しくは、ボトル等のような透光性を有する各種の容器(ガラス以外の素材から成る透光性を有する容器を含む)にワイン等の飲料用液体等の内容物を封入した検査対象物に、異物が混入していないかどうかを目視により検査する目視異物検査装置に関する。
以下、これらのボトル等の透光性を有する容器と内容物とからなる検査対象物全体を、単に「ボトル等」と称する。
ボトル等内に異物が混入していないかどうかを検査する装置としては、特許文献1〜3に示すように、ボトル等を自動搬送しながら光を照射して、その透過光を各種センサで監視することによる異物の混入を自動的に検知する装置、または画像解析することにより、異物の混入を自動的に検知する自動異物検査装置が存在する。
これらの自動異物検査装置は、ボトル等の内部に液体を封入する製造工程において検査する場合には有用である。しかし、輸入品等のように、すでに工場から出荷済みの製品または既に完成した製品(ボトル等)についての異物混入を、自動異物検査装置により検査するのはあまり効率的ではない。
自動異物検査装置が工場出荷後の製品の異物混入検査にあまり有用でない理由は、
(1)出荷済みのボトル等を検査のために、自動検査装置にセットするセット動作に時間と手間がかかること、
(2)ガラス性等の破損しやすいボトル等の場合には、セット動作時にボトルを丁寧に取り扱わないとボトル等が破損するおそれがあり、またセット動作時にラベル等の外装を破損するおそれがあること、
(3)ボトル等を自動異物検査装置にセットするのに手間がかかるために、高速で検査できないにもかかわらず、高価な自動異物検査装置を輸入品等の完成品の異物混入検査のために使用するのは、費用対効果に見合わないこと、
等のためである。
以上の状況から、現状では、輸入赤ワイン等の異物混入を人の目で見て検査するための目視異物検査装置が使用されている。このような目視異物検査装置に関する特許出願の現状を把握するため、先行技術を調査したが、特許出願されている目視異物検査装置は発見できなかった。そのため、現在、目視検査の現場で使用されている赤ワインのボトルの目視異物検査装置及びその使用方法について説明する。
目視によるボトル等の異物混入検査は、ボトル等に強い光をあてて、ボトル等からの透過光を反対側から目視して、異物の存在を確認することにより行っている。そのため、一般的に赤ワインのように内容物及びボトルの双方が濃い色の場合の異物混入の目視検査には、強い光の光源を用いている。そのため従来の目視異物検査装置では、強い光を発光する常時点灯している光源が、光が外に漏れないように遮蔽された遮蔽ボックス内に設けられており、遮蔽ボックスの正面には両開きドア(観音開きドア)が設けられている。
目視により異物混入検査をする際には、両開きドアを開いてボトル等を光源からの強い光にかざして、ボトル等を透過する光によりボトル等の内部に異物が存在していないかどうかを確認する。一般的に、ボトル内に混入している異物とボトル内容物であるワイン等の液体とは比重が異なるので、通常、異物はボトル等の底に沈んでいるかまたはボトル等の上部に浮いている。したがって、目視検査においては、ボトル等を検査装置の両開きドアに入れる直前にボトル等を逆さにして、異物が逆方向に(上から下または下から上に)移動する瞬間を目で捉えて、異物の存在を発見しなければならない。
特開2004−257937号
特開2003−315280号
特開2003−329604号
輸入品等のような出荷済みの製品の異物混入検査に、特許文献1〜3に記載したような自動異物検査装置を使用するのは、上述したように種々の問題があり、異物混入を機械により自動的に検査するのは難しい。そのために、出荷済みのボトル等の異物混入の検査には、人の目で異物の混入を検査する目視検査が主流である。
しかしながら、従来の目視異物検査装置には以下のような問題があった。
目視検査に使用する従来の目視異物検査装置は、常に光源を発光させておき、両開きドアを開けて光源にボトル等をかざして、ボトルを透過する光により異物混入の有無を検査するものである。赤ワイン等のボトルはボトル自体の色が濃い上に赤ワインの色も比較的濃いため、透過光により異物混入を確認するには、特に強い光を照射して異物混入を確認している。そのため、ボトル等を目視異物検査装置の両開きドアにかざした際に、両開きドアとボトル等の隙間から漏れてくる強烈な光が検査者の眼に入り、眼が眩みやすい。眼が眩むと検査精度が低下するだけでなく、眩惑状態から視力が元に戻るのに時間がかかるために、目視検査精度と検査速度が落ちてしまう。
また、一般的に異物の比重と内容物(ワイン等)と比重が異なるため、異物の混入の有無を確認するためには、ボトル等を逆さにして異物が移動する瞬間に異物混入を確認するのが好ましい。この場合、異物と内容物の比重差が大きい異物の場合には、異物の移動速度が速いため、異物の検知が特に難しくなる。例えば、ガラスの破片や石等の重い異物はボトルの底に沈んでいるため。ボトル等を逆さにして異物が反対側に移動する間に異物を検出しなければならない。
上述のように、ガラスや石のように内容物と異物の比重差が大きく、ボトルを逆さにしたときの異物の移動速度が速い場合には、異物の存在を検知することが難しい。特に目視異物検査装置が1個の点光源の場合、点光源の中心から外側に向けて透過光の強度が弱まるため、点光源に周辺の狭い範囲ではよく見えるが、その外側では異物を発見しにくいという問題があった。また、光の強度が検査領域全体で均一でないため、光強度のばらつきに眼が順応できず、早い速度で移動する異物の発見が難しくなるという問題もあった。
さらに従来技術の目視異物検査装置では、一部の製品を抜き取って検査を行う抜き取り目視検査が一般的であった。しかし、昨今、ファーストフード店での提供商品や、インスタント食品等への異物混入が大きな社会問題となっている。ワイン等への異物混入に関しては、例えば、今年(2015年)1月13日付で、大手百貨店が、赤ワインにガラス片が混入したとして、300本を回収すると発表した。また、2015年5月20付で某大手ビール会社が、ガラス片が混入している可能性があるとして、ワイン4万8000本を自主回収している。このようにボトル等においても異物混入が大きな社会問題となっていることから、従来の抜き取り検査では検査が不十分であるとして、全品検査の要請が強くなっている。したがって、ボトル等の異物混入検査においても、抜き取り検査から全品検査の必要性が高まっており、目視検査の検査精度の向上と検査速度の向上の双方が強く求められている。
本発明は、このような従来の目視異物検査装置の問題点に鑑みてなされたものであり、ボトル等の目視による異物検査の精度を向上させることができ、かつ目視による異物混入の検査速度を確実に向上させることのできる異物混入目視検査装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明にかかる目視異物検査装置は、
透光性を有する容器に封入された検査対象物内の異物混入を検査する異物混入目視検査装置であって、光源と、前記光源を内部に収容し、前記光源からの光を遮光する遮光枠体と、前記遮光枠体の一部に設けられ、前記光源の光を通過させる少なくとも一つの透光部と、前記透光部の近傍に設けられ、前記光源に電気的に接続されており該光源の点灯と消灯とを切り替える投光スイッチと、前記光源と前記透光部の間で前記透光部に近接して設けられ、前記光源からの光を散乱させる散光部と、前記光源の照度を調整する照度調整器と、を備え、前記透光部が設けられている側面の前記透光部以外の部分の最も外側全面に、衝撃緩衝部材が設けられており、前記投光スイッチは、前記検査対象物が前記透光部の前に載置されている間のみ前記光源を点灯させることを特徴とする。
これにより、漏れ光による検査者の眩惑を抑制することができるため、検査速度及び検査精度が飛躍的に向上する。
本発明に係る異物目視検査装置によると、透光部を設けて透光部からのみ検査光が透過するようにするとともに、異物検査の瞬間だけ光源を点灯するようにした。これにより、ボトル等の検査位置が明確となり検査位置へのボトル移動動作や確認作業が単純化されるので経験度による検査精度のばらつきを抑制することができる。また眩惑による検査ミスも抑制されるので、検査時間および検査精度を大幅に向上させることが可能となる。さらに、強力な光を発光する光源を常時発光させるのではなく、検査時だけ発光させるので、エネルギー使用量を大幅に抑制することも可能となる。本発明にかかる目視異物検査装置は眩惑の抑止に特に顕著な効果を有することから、検査に強い光の照射が必要となる色の濃いボトル等、例えば赤ワイン等比較的色の濃いボトルや濃い色の液体の異物混入の目視検査に有用である。
また、透光部が検査光の面光源となり、ボトル等の検査範囲の全体に亘り、ほぼ均等に透過光が照射されるのでボトルの上下部分も見やすい。そのため移動の早い異物をより発見しやすくなり、検査精度が高くなる。また、正面の透光部以外の部分に柔らかなウレタンを設けることにより、ガラス等からなるボトルを検査装置にぶつけてもボトルが破損しにくくなる。したがって、検査者は破損のおそれを感じることなく透光部にボトルをかざすことができるので、ボトル移動時間を早めることができる。したがって、初心者であっても目視検査速度を向上させることができる。
本発明に係る異物混入目視検査装置の構成の一例を示す部分斜視図。
投光スイッチの構成例及び電気接続状態の一例を模式的に示す図。
図1に示す異物混入目視検査装置の使用状態を示す正面図。
投光スイッチの他の実施形態を示す模式図。
本発明に係る目視異物検査装置の他の実施形態を説明するための展開部分斜視図。
検証試験に使用した器具の仕様または製品型番を示す図表。
検査試験に使用したサンプルの種類(原産地等)を示す図表。
サンプルA〜Cについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
サンプルDについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
サンプルEについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
サンプルA〜Cについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図表。
7人のモニター検査者により、それぞれ従来の目視異物検査装置と本願発明の目視異物検査装置を用いて目視による異物検査を行った結果を比較して示す図表。
図面を参照して本発明に係る異物混入目視検査装置の一実施例を説明する。図1は本発明の一実施例に係る目視異物検査装置10(以下目視検査装置10と称する)を、一部省略して示している部分斜視図であり、図2は図1に示す目視検査装置10を用いてボトル等への異物混入を検査する状態を示す正面図である。図1では内部構造がわかり易いように天板及び右側壁を除いた状態で描いている。図1に示す目視検査装置10は、光源11の光を遮蔽する遮光枠体12と、遮光枠体12の正面に設けられて光源から光を通過させる透光部13光源11と透光部13の間に設けられた散光部15とを備えている。また、透光部13の下側には光源11の発光をオン・オフするための投光スイッチ16が設けられている。
<光源>
目視検査装置10の透光部13から外部に透過する光は、透光部13の全体に亘り均一の強さであること望ましい。そのために、理想的な光源11としては、透光部13全体に亘り均一な強さの光を照射できる面光源が好ましい。
図1に示す実施例では、広範囲に亘り均一なビーム光を照射できる光源11をボトル等の長さ方向に2個配置している。このような光源11として、例えば、朝日電球(株)から販売されている散光型ビームランプ(EBRF110V120W/W:ビーム角30°またはEBRF110V80W/W:ビーム角30°)等を使用することができる。図2では2個の光源を使用する構成例を示しているが、光源11は1個であっても3個以上であっても良い。一様な強さの光を検査面全体に均一に照射できるように、多くの小さなLEDを面上に多数密接配置して(例えばマトリクス条に配列)して全体を面光源として使用することもできる。
<光源の位置調整>
光源11を適切な位置に配置することができるようにするために、光源11の位置を調整することが望ましい。そのため、光源11は横方向の位置を適宜ずらして光源支持部22に取り付けて固定することができることが望ましい。または、光源支持部22に沿って横方向(左右方向)にスライド移動して固定可能な構造とすることもできる。さらに、光源支持部22を、縦方向にスライド移動可能な縦方向支持部23を備える構成として、縦方向(上下方向)の位置も調整することができるようにすることが好ましい。
図1においては、2つの光源11がそれぞれ個別の光源支持部22に固定されている。光源11はスライド溝30を水平方向にスライド移動可能に構成されており、横方向の位置を調整したら、固定ネジ31を用いて光源11を光源支持部22に固定することができる。また、各光源支持部22は、スライド溝32を上下方向にスライド移動可能に縦方向支持部23に保持されている。光源支持部22は、上下方向の位置が調整された後、固定ネジ33により縦方向支持部23を固定される。なお、水平・垂直方向の固定ネジ31、33は、手で調性可能な固定ノブとしても良い。
<光源の照度(光量)調整>
適切な光源11の明るさ(照度、光量、強さを含む。以下、単に「照度」という)は、後述するように、検査対象物によって異なる。したがって、検査対象物に応じて、光源の照度を検査対象物に合わせて変更できるように構成することが好ましい。例えば、図2に例示するように、光源11の照度を調整することができる照度調整器14を設けることができる。照度調整器14はアナログ的に変更することが好ましいが、デジタル的に複数ステップ変更可能な構成とすることもできる。照度調整器は、例えば、光源11の電圧(電流)を変更することにより調整することができる。
<散光部15>
また、光源11と透光部13の間に設けられている散光部15は、例えば表面に凹凸を設けたすりガラス状のもので構成することができる。散光部15は、透光部13から透過する光を散乱させて透光部の全体に亘り均一な強さの光として通過させることを目的としており、この目的に適合するものであれば、特に材料や構造は限定されない。光源11が一定の強さの光を透光部13の全体にわたり均一に照射できる等の一定の基準を満たせば必ずしも散光部15を設ける必要はないが、眩惑のリスクを抑えつつ目視検査の精度を高めつつ検査速度を上げるためには、散光部15を設けることが好ましい。
<投光スイッチ16>
投光スイッチ16は、電源と光源11とに接続されており、検査対処物(ワインボトル等)が透光部13の前に置かれたときに光源11を発光(点灯)させ、検査対象物が透光部13を離れたら光源11の発光を停止(消灯)するよう光源11の発光を切り替えるものである。このスイッチ16は、通常状態では、光源11を消灯する方向に弾性部材等により付勢されている(図1では上方向に付勢されている)。
図2は、投光スイッチ16の構成例及び光源11の電気接続の一例を模式的に示している。投光スイッチ16はバネ等の弾性部材により上方向に付勢されている。投光スイッチ16は電気接点25の接点を開閉するように設けられており、投光スイッチ16が上方向に移動しているときには、電気接点25は解放状態にあり、光源11は電源26から切り離されて消灯している。投光スイッチ16が下方に押圧されて下方に移動すると電気接点25が接続状態となり、光源11に電源26から照度調整器14を介して電流が供給される。これにより光源11は点灯する。下方向に押圧される力が解除されると、投光スイッチ16は上方向に付勢されているので、電気接続点25は解放されて、光源11は消灯する。
図3は、目視検査のためにボトル等60が透光部13の前に配置された状態(目視検査時の使用状態)を示している。図3に示すように、検査者は、目視検査のためにボトル等60の首部から先端部61を持って、ボトル等を逆さにして透光部13の前に配置する。その際、ボトル等60を逆さにして持った手(図示せず)、またはボトルの先端部61の下端を投光スイッチ16の上に置き下方に押圧する。これにより、光源11が点灯する。光源11が点灯すると、透光部13からの透過光がボトル全体に照射され、透過光によりボトル等60の内部をみることができる。もし異物65が存在する場合には、ボトル等60を逆さにしたことにより、異物65と内容液の比重の差に応じて異物65が上下のいずれかの方向に移動するので、異物65を発見するこことができる。目視検査が終わり、手またはボトル等60を投光スイッチ16から離すと、投光スイッチ16が自力(弾性力等の付勢により)で上方に押し上げられて光源11が消灯する。なお、図3では、ボトルの首部分が見えるように下の方まで開口部13が伸びた形状を示しているが、ボトルの首部分からの漏れ光による眩惑を防止するために、開口部13が首部分にかからないように、開口部13を短くしても良い。または、首部分の開口部13をボトル形状に合わせて細い開口とすることもできる。
このような投光スイッチ16を設けることにより、検査対象物60(ワイン等の内容物とボトル等の容器の双方を含む:以下、「ボトル等60」と称する)が透光部13の近傍に存在しないとき(検査していないとき)には、光源11が消灯しており透光部13から光が漏れることがない。そのため、検査対象物60が透光部13の前に存在しないときの眩惑を防止できる。検査時以外は点灯しないのでまた消費電力を大幅に低減することも可能となる。なお、検査の瞬間だけ光源11を発光させることが望ましいため、光源11は投光スイッチ16からオン信号を受けたら、できるだけ短時間で(数100ミリ秒以内に)所定の基準を超える明るさ以上に発光することが好ましい。
投光スイッチ16の配置は、検査のためにボトル等60を透光部の前面に移動した際に、投光スイッチ16を操作して光源11を点灯させることができる位置に配置するのが好ましい。図1においては透光部の下側に投光スイッチ16が設置されている。これによりボトル等60を持つ方の手(片手)で投光スイッチ16を操作することができる。投光スイッチ16の操作は必ずしも検査者の手や腕で操作できることが必須要件ではなく、ボトル等60により押圧して点灯できるような構成であっても良い。例えば、透光部13の上下、左右の位置など、種々の位置に配置することも可能である。また、センサ等でボトル等の位置またはボトル等を持つ手の位置を検知して、センサがボトル等または手を検知している間または検知してから所定の時間だけ、光源11を点灯させる構成とすることも可能である。
散光部15は、光源11から照射された光を散乱させて、できるだけ透光部13の全面に亘って均一の強さの光が透過するように作用する。これにより、検査者が異物の混入を確認することが容易となる。図1に示す実施例の場合には、細長い透光部13から均一の強さの光が透過する。従って、ボトル等60(図2参照)の上下方向の広い範囲を同時に見ることができるので、異物65の移動が速い場合でも異物の確認が容易となる。
透光部13は遮光枠体12の一部に設けられた開口であり、検査対象物60の検査範囲となる。したがって、検査対象物60より少し小さ目で検査対象物60の形に合わせた開口形状とするのが好ましい。例えば、赤ワインのボトルの場合には、ボトルの胴体部の形状に合わせて縦長の透光部とするのが良い。
また、透光部13は、検査対象物60よりもやや小さめにして、透光部13を透過した光が検査対象物60を透過せずに直接目に入るのを防止するようにすることが望ましい。これにより検査時(光源11の点燈時)の漏れ光による眩惑の可能性を減少させることができる。
透光部13を囲む外側表面はウレタンのような衝撃吸収性(クッション性)を有する材料からなる衝撃緩衝部材17を設けることが望ましい。これにより、検査の際に誤って、ボトルのようなガラスからなる検査対象物60を目視検査装置10にぶつけても、衝突時の衝撃が衝撃緩衝部材17により吸収されるので、検査対象物60または目視検査装置11の破損やラベル等の外装の毀損を防止することができる。また、衝撃緩衝部材17の厚みを比較的厚くすることにより、破損の可能性をより低減することが可能となる。
なお、図1に示す実施形態では、光源11をステンレス等の強固な遮光枠体12で完全に包囲するように囲み、一部に所望の開口を設けて透光部13を形成している。しかし、必ずしも光源11の全体を、強固な遮光枠体12で覆う必要はない。透光部13を設ける面は遮光枠体12を設けずに、散光部15と衝撃緩衝部材17で覆うように構成することもできる。この場合、衝撃緩衝部材17を遮光可能な材料で形成し、検査対象物60の形状に応じた開口部を設けておき、これを散光部17の外側表面に交換可能に配置するよう構成とする。検査対象物60の形状に合わせて、異なる形状の開口部を設けた衝撃緩衝部材17を用意しておき、検査対象物60の形状に合わせて、衝撃緩衝部材17を入れ替えることにより、検査対象物60に応じた最適な透光部13の形状を備える目視検査装置とすることができ、眩惑リスクをより防止可能となる。図5にこのような構造の実施形態を示す。
図5に示す他の実施形態は、遮光枠体12一部を開口とするとともに、その開口部分にすりガラス等からなる散光部15を固定するとともに、その外側にスライド枠18を設けて、散光部15の外側に衝撃緩衝部材17a、17b等を交換可能に取り付ける構造としたものである。図5の実施形態では、衝撃緩衝部材17a、17b等を、遮光枠体12に設けられたスライド枠18と散光部15の間にスライド挿入して、交換することが可能である。
スライド挿入する衝撃緩衝部材17a、17b等は、光源11からの光を遮光できる遮光性の高い材料を用いるとともに、中央近傍に検査対象物60の形状に合わせた形状の開口部13a、13bを設ける。この実施形態では、スライド挿入された衝撃緩衝部の開口部13a、13bが透光部13となる。したがって、検査対象物60の形状に合わせて開口部の形状の異なる各種の衝撃緩衝部材17a、17b等を用意しておき、検査対象物60に合わせて衝撃緩衝部材17a、17b等を入れ替えることができる。図5では2個の衝撃緩衝部材17a、17bのみを示したが、検査対象物の応じた形状の開口部を有する各種の衝撃緩衝部材を用意しておくことが好ましい。
このように、透光部13の形状を検査対象物の容器60の形状に合わせて交換することにより、検査対象に応じた専用の目視異物検査装置とすることが可能となる。これにより、透光部13からの漏れ光を効率的に防止できるので、眩惑による検査ミスを防ぐとともに、目視検査速度を向上させることが可能となる。
また、衝撃緩衝部材17a、17b等を交換可能に設ける構成は、スライド挿入に限定されない。例えば、面ファスナー等のような一対の接続部材(図示せず)を、衝撃緩衝部材と散光部15(または遮光枠体12)のそれぞれに互いに対面する位置に固定しておき、該接続部材を用いて衝撃緩衝部材17a、17b等を散光部15に接続固定する構成としても良い。また、単に両面テープで衝撃緩衝部材17a、17bと散光部15とを接着するように構成しても良い。
なお、図1では、投光スイッチ16として、メカニカル構造の投光スイッチを透光部の近傍に配置する例を示したが、透光スイッチはこのような構成に限定されない。例えば、発光部と受光部からなるセンサを用いて、投光スイッチを構成することも可能である。
図4は、光センサを用いた投光スイッチの構成例を模式的に示した図である。示すように、発光部19aと受光部19bと、受光部19bの光感知状態に応じて接続状態を切り替えるスイッチ(例えばトランジスタや各種半導体スイッチ等)と、該スイッチを介して電源26と光源11の電気的接続を切り替える構成(以下「センサスイッチ」と称する)とすることにより、投光スイッチとすることが可能となる。発光部19aからの光を受光部19bが検知しているときに、光源11は消灯されており、ボトル等60により発光部19aからの光が遮断されて、発光部19aからの光が受光部19bにより検知されないときに光源11を点灯させる。
このようなセンサスイッチの発光部と受光部を、発光部からの光が透光部を横切るように配置することにより、検査対象物の容器60が透光部に配置されたときにのみ光源11が点灯するようにすることができ、人為的に透光スイッチを操作する必要がないので、検査作業をより簡素化して検査速度を向上させることが可能となる。
光源11の光の強さについて説明する。光源11の光の強さは赤ワインなど検査対象となる内容物の色の濃さ及び容器60の色の濃さを含む、検査対象物全体の透光性に応じて選定する必要がある。好ましくは、光の強度をアナログ的に調整可能またはデジタル的に数段階調整可能な構成とすることが望ましい。
<ボトル等の目視異物検査に必要な光の強度>
ボトルに詰められた液体医療物の異物混入検査に必要な光の強度について、検証試験結果を用いて説明する。検証試験は6種類のサンプルを用いて行った。サンプルとして、3種類のボトルに入った赤ワイン(サンプルA〜C)と、色の濃い炭酸飲料水(サンプルD、コーヒー(サンプルE)、ウーロン茶(サンプルF)を用いて異物混入検査を行うことにより、目視検査に必要な光の強度についての検証試験を行った。
図6は、検証試験に使用した器具の仕様または製品型番を示す図表である。図7は、被検査対象として選定したサンプルA〜Fの種類と赤ワインA〜Cの3種類の原産地を示す図表である。
図6に示すように、目視検査に必要な光強度を測定する装置としては、本願発明の1実施形態である図1に示す目視異物検査装置を使用した。その光源としては、朝日電球(株)EBRF110V120W/W(ビーム角30°)のビームランプを用いた。また光源の光度を調整する中間調光器具として、太洋電機産業(株)のパワーコントローラ(20w〜160wまでの白熱等対応)を用い、照度計は、(株)佐藤商事のデジタル照度計Lx−PRO(TM−204)を使用した。
図7に示すように、サンプルA〜Cの赤ワインは、原産地の異なるものを使用した。検証試験に赤ワインを用いたのは、赤ワインはボトル及びワインの色が濃く、強い光が必要となるものであるからの光の強度のテストにふさわしいと考えたからである。サンプルD〜Fは、本願発明に係る目視異物検証装置が赤ワイン以外のボトル等の検査にも使用できることを検証するため、清涼飲料水についても調べたものである。サンプルDはペットボトル1.5L容器のコカコーラ(登録商標)であり、サンプルDはペットボトル900mml容器入りユーシーシー上島珈琲株式会社製のブラックコーヒー、サンプルFは、ペットボトル2.0L容器入りのサントリー社製の烏龍茶である。
図8は、サンプルA〜Cについて、目視による異物検査に必要な光の強度を検証した結果を示す図である。図8から、サンプルB及びCの赤ワインの目視により異物検査を行うには、少なくとも12000ルクスを超える照度の光が必要であることがわかる。このような強い光が直接目にあたると眩惑の可能性が極めて大きい。
テストには、異物の混入しているサンプルA〜Fを使用し、各サンプルA〜Cのそれぞれについて各照度ごとに10回のテストを行った。テスト結果は3段階評価とし、10回のテスト中の10回ともすべて異物を検出できたものを○、10回中9回〜4回異物を検知できたものを△、10回中の検出回数が3回以下のものを×と評価した。
光の強度テストの結果から、光源11の照度にかかわりなく、サンプルA〜Fを透過する光の量(透過光量)が2.6または2.7ルクスを超えると、サンプルA〜Fのすべてについて、目視検査が可能であることが分かった。すなわち、検査対象商品によっては、図8に示す赤ワインの場合のように、透過光量が2.6ルクス以上で検査可能なものもあれば、2.7ルクス以上の透過光量が必要な商品もある。また、図9〜図11に示すように、赤ワイン以外の商品についても、2.7ルクス以上の透過光量が必要であることがわかった。さらに、図11からわかるように、色の薄い商品であっても、確実な目視検査には透過光量2.7以上あることが望ましいことがわかった。
図8〜図11の結果から、検査対象商品の色の濃さが濃い商品にかぎらず、色の薄い商品(図11のサンプルFを参照)であっても、適切な検査を行うには2.7ルクス以上が好ましいことが判明した。
以上から、各種検査対象商品について確実な検査を行うためには、検査対象商品の透過光量が少なくとも2.7ルクス以上となるように光源11の照度または強度を調整すれば、ほぼすべての透光性を有する商品についての目視検査が可能となる。
したがって、検査対象商品ごとに透過光量が2.7ルクス以上となる光源11の照度(強度)を測定してリストにしておき、そのリストの記載に基づいて検査対象商品に合わせて光源の照度を調整することにより、目視異物検査の対象商品に合わせた透過光量の設定が容易となり、的確な目視異物検査を行うことが可能となる。なお、光源の照度の適切な値を検査対象商品毎にリスト化する場合、透過光量が2.7ルクス以上となる光源の照度を示すのが良い。なお、透過光量が2.7ルクス以上であれば目視検査を良好に実施できるが、透過光量が2.7ルクスをあまり大きく超えない範囲(例えば2.8ルクス以下、又は2.9ルクス以下)となるように設定することが好ましい。明るすぎると眩惑のリスクが高くなるので、光源の照度を検査可能な範囲で低く抑えることにより、眩惑のリスクを避けることができるだけでなく、消費電力等も抑制可能となる。
また、仮にサンプルA〜Fとは異なり目視検査に適切な透過光量の限界値が2.6〜2.7の範囲ではない商品が出てきた場合、その検査対象商品の目視検査に適切な透過光量となる光源の照度を予め測定してリストに記録しておくことにより、適切な目視検査が可能となる。
さらに、適切な光源の照度がリストに登録されていない商品については、透過光量が2.7以上となるように、光源11の照度を設定するのが好ましい。この場合も同様に、透過光量が2.7から大きくなり過ぎない(例えば2.8程度又は2.9以下)ことが好ましい。なお、リスト化されていない商品の場合、特に透過光量の測定数値にこだわらず、光源11の照度を変化させながら検査対象承認に光を照射し、検査対象商品の透過光を実際に観察しながら、目視検査しやすい照度に光源11の照度を調整しても良い。
図8に示すサンプルB,Cの赤ワインのように、透光性が比較的低い検査対象物の場合には、光源の照度が12000ルクス以上という極めて強い光が必要となる場合がでてくる。このような強烈な光の場合、漏れ光による眩惑のリスクが高まる。しかし、図11に示すように、サンプルFのような透光度が高い場合には、光源の照度は570ルクスで検査可能となる。白ワインのような透光性の高い内容物の場合にも同様に光源の照度を低く抑えることができるものと思われる。このように光源の照度が低い場合には、漏れ光による検査者の眩惑リスクを抑え、検査精度、検査速度をあげることができるので、検査対象物に合わせて適切に光源の照度を調整することは、極めて有用である。
図12に、従来の目視検査装置と、本願発明の目視検査装置を用いて目視による異物検査を実施した場合の検査速度を測定して比較した結果を示す。この検査速度の測定テストにおいて、従来の目視検査装置とは、段落[0010]に於いて説明した構造の目視異物検査装置であり、本発明の目視異物検査装置とは、図1・図2及び段落[0019]〜段落[0025]に於いて説明したようなに示す目視異物検査装置である。検査速度の測定でも光源は、光源の照度試験と同じように、朝日電球(株)EBRF110V120W/W(ビーム角30°)のビームランプを用いた。光源の照度は、透過光量が2.7となるように設定して試験を行った。
このテストでは、7人の検査者(検査モニター)により、サンプルBの赤ワインボトルを従来技術の目視異物検査装置と本発明に係る目視異物検査装置を用いて、それぞれの装置について1時間ずつ目視により異物検査してもらった。図12は、その結果を示す表である。
図12に示す「1人/60分検査本数」の欄は、従来の装置を使って1時間目視検査した場合の各検査モニターの検査総本数と、本発明の装置を使って1時間検査した場合の検査挿本数を、検査モニター毎に示している。平均とは7人のモニターの検査済み総本数の平均である。「1人/1分検査本数」の欄は、上記検査結果を1分間の検査料に換算した値を示している。
増減率は、従来装置使用した場合と本願発明の装置を使用した場合の検査速度の違いを示している。増減率からわかるように、本願発明の目視異物検査装置では、すべての検査モニターに置いて検査速度が向上しており、平均で約14%検査速度が向上していることがわかる。ここで、7人のモニターの平均速度が14%向上したことも重要であるが、7人の検査モニター全員の検査速度が向上したことである。これは、検査モニターの経験度とは無関係に、本願発明の装置が従来装置よりも優れた効果を有するものであることを客観的に証明しているものである。
以上の検査では、ボトルに封入された赤ワイン、炭酸飲料水、ウーロン茶等6種類のみを測定したが、を用いて各種測定を行ったが、本発明の装置は赤ワインボトルに限定されることなく、光透過性のある容器に光透過性のある液体を封入した商品または製品の目視による異物検査に使用することができる。また、検査対象物の最適な光の照射強度を得るために、検査対象品の透過光を基準にして光源の照射強度を調整する構成も有用である。このような光源の調整方法としては、光源へ供給する電流を増減するように構成しても、電圧を増減するように構成しても良い。このような装置として、例えば、太洋電機産業製のパワーコントローラを使用することができる。最適透過光量の調整は、検査対象商品等毎に最適透過光量となる光源の照射強度を予め測定しておいた測定データに基づいて、光源の照射強度を調整するのが望ましい。
10 目視異物検査装置
11 光源
12 遮光枠体
13 透光部
14 照度調整器
15 散光部
16 投光スイッチ
17、17a、17b 衝撃緩衝部材
18 スライド枠
19a 発光部
19b 受光部
22 光源支持部
23 縦方向支持部
25 電気接点