LIOBに加えて、第二高調波発生、第三高調波発生、及び、他の高次の高調波発生プロセスなどの他の多光子吸収プロセスも、組織を活性化させ、しわを減少させるために、修正された組織の再成長を刺激すべく、組織を損傷させるために、使用され得る。多光子イオン化(例えば、レーザ誘起光学破壊)を通じたレーザ皮膚吸収は、1013W/cm2のオーダの高い光強度を必要とする。極めて高い光子束(一般的には、1031cm−2s−1よりも大きい)により、波長λにおいてエネルギーhνを有する複数(N個)の光子は、価電子帯から解き放たれた電子と相互作用するエネルギーNhνの光子のように振る舞う。これは、吸収される光子の総エネルギーが、イオン化ポテンシャルよりも大きい(Nhν>Δ)ことを要する。イオン化によるこのシード電子の生成は、材料のイオン化ポテンシャルを超える総エネルギーを有する(Nhν>Δ)、空間(焦点体積)及び時間(〜フェムト秒)に閉じ込められた同じ偏光を持つ多光子(N)を必要とする。皮膚の内側深くの多光子イオン化は、達成することが困難である。
本発明の目的は、多光子プロセスが比較的低い光強度で生成される多光子プロセスのための非侵襲的な皮膚処理装置を提供することである。
当該目的は、直線偏光したプローブ光と直線偏光した処理光とを生成するための光源と、前記プローブ光の偏光方向と前記処理光の偏光方向とを制御するための偏光変調器と、偏光感知センサの所定の偏光方向における前記目標位置からの後方散乱プローブ光の強度を感知することによって、前記プローブ光の偏光解消レベルを感知するための前記偏光感知センサと、前記センサからの測定信号を受信し、前記偏光変調器及び前記光源に制御信号を供給するためのコントローラと、を有し、前記コントローラは、前記測定信号を受信しつつ偏光方向の所定の範囲に亘って前記プローブ光の前記偏光方向をスキャンするように、前記偏光変調器を制御し、前記プローブ光の偏光解消レベルが最小化される最適な偏光方向を選択する、皮膚処理装置によって、本発明に従って達成される。
本発明は、多光子イオン化を作るための強度閾値が、媒体特性とビーム特性との両方の関数であるという見識に基づいている。媒体特性は、例えば、イオン化エネルギー又は不純物レベルであってもよく、ビーム特性は、例えば、使用される波長、パルス幅、スポットサイズ、及び、偏光であってもよい。多光子イオン化プロセスのためのシード電子を生成するために、同一の偏光方向を持つ多光子が、目標位置において必要である。偏光された光が肌のような不透明な媒体の内側に集中された場合、同一の偏光を持つ光子のごく一部が著しく減少される。これは、高いNA集中、多重散乱、及び、皮膚の複屈折性による偏光における変化によって引き起こされる。焦点体積における多光子イオン化のために利用可能な同一の偏光を具備する光子の数における減少を補償するために、既知の解決法は、光子の数を単純に増加させることである。既知の皮膚処理装置では、これは、イオン化のための高い強度閾値、及び、起こり得る周囲組織の付随的な損傷につながる。本発明者は、(最適な偏光方向とも称される)特定の偏光方向に関し、特定の皮膚部分における皮膚の偏光解消効果が最小となることを発見した。これは、多光子イオン化を生成するために必要な処理光の最小パワーレベルをもたらす。また、本発明者は、この最適な偏光方向が、皮膚組織における様々な位置において異なり得ることも発見した。このため、本発明に従った皮膚処理装置は、最適な偏光方向を発見するために、発せられる直線偏光したプローブ光の偏光方向を局所的に適合させる制御ユニットによって制御される偏光変調器を有する。現在の目標位置に関する、この最適な偏光方向に対応している偏光方向を有する処理光の後続の発光の開始は、最小処理光強度における多光子イオン化プロセスの生成をもたらす。結果として、目標位置の周囲の組織への損傷が最小化される。また、偏光変調器による直線偏光したプローブ光(及び、処理光)の偏光方向の上記局所的な選択及び適合の更なる利点は、変更した処理光を生成するための光源に課される要件を少なくすることができることである。これは、本発明に従った皮膚処理装置の全体コストも減少させる。
本発明に従った皮膚処理装置におけるコントローラは、測定信号を受信しつつ、所定の範囲に亘ってプローブ光の偏光方向をスキャンするように作成及び構成される。当該所定の範囲は、例えば、スキャンの終点におけるプローブ光の偏光方向が、スキャンの開始におけるプローブ光の偏光方向に対して垂直であるような、90度の範囲であってもよい。あるいは、所定の範囲は、90度より大きくてもよい。
皮膚処理装置の或る実施形態では、コントローラが、選択された最適な偏光方向を、多光子イオン化プロセスを生成するための目標位置における処理光の偏光方向として設定するように、偏光変調器を制御するように作成及び構成される。既述のように、プローブ光の偏光方向のスキャン後に最適な偏光方向が発見された場合、コントローラは、現在の目標位置に関して最小の処理光強度で多光子イオン化プロセスを開始可能とするため、この最適な偏光方向を、処理光の偏光方向として設定する。
偏光変調器は、プローブ光と処理光との両方の偏光方向を適合させる単一の変調素子を有していてもよい。あるいは、偏光変調器は、一方が、プローブ光の偏光方向を適合させ、他方が、処理光の偏光方向を適合させる、2つの変調素子を有していてもよい。
皮膚処理装置の或る実施形態では、皮膚処理装置は、プローブ光の偏光方向のスキャン中、偏光感知センサの所定の偏光方向をプローブ光の偏光方向に対して平行に維持するように作成及び構成される。かかる構成では、最適な偏光方向が、感知される後方散乱プローブ光の強度が、プローブ光の偏光方向の所定の範囲に亘って見られる最大となるプローブ光偏光方向となるように選択される。プローブ光の幾らかは、偏光感知センサに向かって後方散乱する。偏光解消度が最小である場合、プローブ光の最小部分(及び、後方散乱プローブ光の最小部分)が、変化した偏光を持ち、結果、偏光感知センサにおいて測定される強度が、最大となるであろう。当該実施形態に関して、プローブ光の偏光方向は、皮膚組織が実際に露出されるプローブ光の偏光、即ち、偏光変調器を通過した後のプローブ光の偏光方向を表していることに留意する。結果、偏光感知センサの所定の偏光方向は、皮膚表面の位置において皮膚によって発せられるような後方散乱プローブ光の所定の偏光方向を表している。
皮膚処理装置の或る実施形態では、皮膚処理装置は、プローブ光の偏光方向のスキャン中、偏光感知センサの所定の偏光方向を、プローブ光の偏光方向に対して垂直に維持するように作成及び構成される。偏光感知センサの当該構成では、最適な偏光方向が、プローブ光の偏光方向の所定の範囲に亘って見られる、感知される後方散乱プローブ光の強度が最小となるように、プローブ光偏光方向として選択される。この場合もやはり、プローブ光の幾らかは、偏光感知センサに向かって後方散乱する。プローブ光のスキャン中、偏光感知センサの偏光方向が、プローブ光の偏光方向に対して垂直なままである場合、偏光感知センサは、皮膚組織の偏光解消効果により変化した偏光方向を持つ後方散乱プローブ光のみを感知する。偏光解消度が最小である場合、プローブ光の最小部分(及び、後方散乱プローブ光の最小部分)が、変化した偏光を持ち、結果、偏光感知センサにおいて測定される強度が、最小となるであろう。最小値の感知は、通常、より容易であり、一般的には、より正確になされることができるため、偏光感知センサの偏光方向がプローブ光の偏光方向に対して垂直に維持される当該実施形態は、好適である。当該実施形態に関し、プローブ光の偏光方向は、皮膚組織が実際に露出されたプローブ光の偏光方向、即ち、偏光変調器を通過後のプローブ光の偏光方向を表していることに留意する。結果、偏光感知センサの所定の偏光方向は、皮膚表面の位置において皮膚により発せられるような後方散乱プローブ光の所定の偏光方向を表している。
皮膚処理装置の或る実施形態では、後方散乱されたプローブ光が偏光変調器を介して偏光感知センサに伝達されるように、偏光変調器が、目標位置と偏光感知センサとの間に配置される。かかる構成では、後方散乱プローブ光は、所定の範囲に亘るプローブ光のスキャン中、プローブ光を変調するために使用されたものと同一の偏光変調器により測定される。偏光感知センサは、後方散乱プローブ光の測定のための正確な偏光方向が維持されることを保証するために、単一の固定偏光方向に対して敏感であることのみが要求される。プローブ光の偏光方向が、スキャン中、所定の範囲に亘って変調されている場合、後方散乱プローブ光は、偏光感知センサによって測定される前に、自動的に「復調」されるであろう。例えば、光強度センサの前段において固定偏光フィルタを用いることは、当該測定が、正確な偏光方向において実行されることを自動的に保証するであろう。要求される構成に依存して、固定偏光フィルタは、光源によって発せられるプローブ光に対して垂直であってもよい、又は、光源によって発せられるプローブ光に対して平行であってもよい。
また、皮膚組織内側の目標位置に対して、プローブ光及び/又は処理光を集中させるための光学系を有し、コントローラが、光学系に接続され、皮膚表面に対して皮膚組織の内側にある目標位置の深さにおける変化に応じて、最適な偏光方向を再選択するため、所定の範囲に亘ってプローブ光の偏光方向をスキャンすることを再開始するように作成及び構成される、皮膚処理装置を供給することが好適である。既述のように、直線偏光したプローブ光又は直線偏光した処理光の最適な偏光方向は、皮膚組織の内側の様々な目標位置に関して変化し得る。例えば、皮膚処理装置の操作者によって、目標位置の深さが変化した場合、前の目標位置の最適な偏光方向は、変化した現在の目標位置に関してもはや最適ではない可能性がある。皮膚組織内側の多光子イオン化のために使用される処理光の強度を最小に保つことを保証するため、皮膚処理装置は、新しい処理深さにおける新しい目標位置のための最適な偏光方向を再調整するように構成される。かかる実施形態では、本発明に従った皮膚処理装置は、目標位置の深さにおける変化を感知するとともに、かかる深さ情報を深さ信号としてコントローラに供給するための他のセンサを有していてもよい。当該コントローラは、例えば、最適な偏光方向を再調整するためのトリガとして上記深さ信号を使用してもよい。
皮膚処理装置の或る実施形態では、コントローラは、皮膚表面に平行な皮膚処理装置の動きを感知するための動きセンサに接続され、コントローラは、皮膚表面に沿った皮膚処理装置の位置における変化に応じて、最適な偏光方向を再選択するため、所定の範囲に亘ってプローブ光の偏光方向のスキャンを再開始するように作成及び構成される。目標位置の深さにおける変化と同様に、皮膚表面に沿った皮膚処理装置の再配置も、この変化した位置における、発せられた直線偏光したプローブ光又は処理光の最適な偏光方向の変化につながる可能性がある。このため、コントローラは、動きセンサから動き信号を受信するように構成されてもよく、かかる動き信号の受信に応じて、コントローラは、例えば、再配置された目標位置において多光子イオン化処理を適用する前に、最適な偏光方向を再調整するためのトリガとして、この動き信号を使用してもよい。
皮膚処理装置の或る実施形態では、プローブ光パワーレベルが、多光子プロセスに必要な処理光パワーレベルよりも低い。最適な偏光方向を発見するために、処理光よりも低いパワーレベルを持つプローブ光を使用している場合、最適な偏光方向を発見しようとしている間の皮膚への損傷機会が、著しく減少される。また、より低いパワーレベルを持つ当該プローブ光の使用は、現在の目標位置の最適な偏光方向の選択を可能とする。さらに、かかるプローブ光のパワー要件は、多光子イオン化プロセスを生成するために必要なパワーよりも著しく低い。結果、最小の偏光解消度を発見するために、偏光変調器をスキャンしている間、プローブ光を使用することによって、皮膚処理装置の全体のパワー要件が、少なくなる。特に、皮膚処理装置がバッテリ駆動される実施形態では、全体のパワー要件における上記減少は、重要であろう。
皮膚処理装置の或る実施形態では、光源が、直線偏光したプローブ光を生成するためのプローブ光エミッタと、直線偏光した処理光を生成するための処理光エミッタと、を有する。かかる実施形態の利点は、プローブ光エミッタと処理光エミッタとの両方が、特に、それぞれ、個別に必要なパワーレベルを発するように構成され得ることである。これは、個別の光エミッタの全体的な要件を減少させ得る。さらに、単一の光エミッタのみが存在する場合に必要であったパワーレベル調整回路が省略され得る。
あるいは、本発明に従った皮膚処理装置における光源は、例えば、プローブ光又は処理光を発するため、異なる強度レベル間で切り替えるように構成され得る単一の光エミッタを持っていてもよい。
皮膚処理装置の或る実施形態では、皮膚処理装置は、目標位置における多光子プロセスの発生を感知するための他のセンサを有する。最適な偏光方向が、多光子イオン化が目標位置において最小の光強度で実行されることを保証するように選択されるが、様々な目標位置において必要な最小の光強度は、既述のように、異なる可能性がある。例えば、皮膚組織内側の目標位置の深さが減少された場合、皮膚の偏光解消効果は、一般的に、減少する。光は、より短い距離の皮膚組織を通って伝搬するためである。かかる状況では、処理光パワーレベルの強度は、特定の目標位置において更に減少され得る。あるいは、特定の目標位置における多光子イオン化処理が、増大された深さで実行される必要がある場合、最適な偏光方向は、異なる目標位置のため、調整される必要があろう。また、全体処理の光パワーレベルも、皮膚組織内側の増大された深さ(最適な偏光の使用にも関わらず増大した偏光解消効果を発生させる皮膚組織を通る増大された経路)のため、増加する必要があろう。従って、皮膚処理装置の他の実施形態では、目標位置が、直線偏光した処理光に対して露出されている場合、コントローラは、多光子プロセスの発生を感知するための他のセンサに接続される。多光子プロセスが感知されない場合、コントローラは、例えば、直線偏光した処理光のパワーレベルを調整する、又は、皮膚表面に対して皮膚組織内側の目標位置の深さを減少させるように構成されてもよい。目標位置において多光子プロセスの発生を感知するための上記他のセンサは、光検出器、CCDカメラと組み合わせられた回折格子、及び、音響センサを有するリストから選択されてもよい。光検出器は、フォトダイオード、光電子増倍管、又は、光子計数器を有していてもよい。
多光子プロセスは、例えば、光誘起光学破壊であってもよい。
また、目標位置が、処理される皮膚の真皮層に配置される、皮膚処理装置を供給することが好適であろう。例えば、目標位置は、皮膚表面の下、0.2mmと2mmとの間にある、又は、皮膚表面の下、0.5mmと1.5mmとの間にある。
また、本発明の目的は、本発明に従った皮膚処理装置を制御するためのコンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムが、皮膚処理装置のコントローラが、光源を用いて、皮膚組織における目標位置に向かって、直線偏光したプローブ光を生成し、発するステップと、偏光感知センサから測定信号を受信しつつ、偏光変調器を用いて、所定の範囲に亘ってプローブ光の偏光方向をスキャンするステップと、プローブ光の偏光解消レベルが最小となる最適な偏光方向を選択するステップと、を実行するように、制御する、コンピュータプログラム製品によって達成される。
コンピュータプログラム製品の或る実施形態では、コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムが、コントローラが、偏光変調器を用いて、目標位置における処理光の偏光方向として、選択された最適な偏光方向を設定するステップと、多光子イオン化プロセスを生成するための光源を用いて、目標位置に向かって直線偏光した処理光を生成し、発するステップと、を実行するように、更に制御する。
図1A及び図1Bは、本発明に従った皮膚処理装置100の第1の実施形態を図式的に示している。皮膚処理装置100は、直線偏光したプローブ光12と直線偏光した処理光22(図1B参照)とを生成するように作成及び構成された光源10を有している。また、皮膚処理装置100は、光源10から受けた直線偏光したプローブ光12の偏光方向を制御するための偏光変調器30を更に有しており、光は、光学系70を用いて、皮膚組織200内側の目標位置210に向かって発せられるとともに集中される。さらに、皮膚処理装置100は、目標位置210からの後方散乱プローブ光42の強度を感知するための偏光感知センサ40を有している。偏光感知センサ40は、偏光感知センサ40の所定の偏光方向において、目標位置210からの後方散乱プローブ光42の強度を感知することによって、プローブ光12の偏光解消レベルを感知するように構成されている。後方散乱プローブ光42は、例えば、半透明ミラー74を用いて、偏光感知センサ40へ再方向付けされてもよい。皮膚処理装置100は、偏光感知センサ40から測定信号Smを受信しつつ、所定の範囲に亘ってプローブ光12の偏光方向をスキャンするように作成及び構成されたコントローラ60を有している。また、コントローラ60は、現在の目標位置210に関してプローブ光12の偏光解消度が最小である、最適な偏光方向P1(図3参照)を選択するように構成されている。次いで、当該最適な偏光方向P1は、目標位置210において多光子イオン化プロセスを生成するための処理光22(図1B参照)の偏光方向として用いられる。処理光22のための当該最適な偏光方向P1の使用は、現在の目標位置210における多光子イオン化プロセスに必要なパワーレベルが最小であることを保証する。
本発明者は、多光子イオン化を作るための強度閾値が、媒体特性とビーム特性との両方の関数であることを発見した。本発明は、特に、処理光22の偏光が多光子イオン化に与える影響に着目している。偏光された光が皮膚組織200のような不透明な媒体の内側に集中された場合、同一の偏光を持つわずかな偏光保存光子が、高いNA集中、多重散乱、及び、皮膚の複屈折性の使用により、著しく減少される。しかしながら、多光子イオン化の生成を可能とするために、同一の偏光方向を持つ特定の密度の光子が、目標位置210において、必要とされる。焦点体積における多光子イオン化プロセスのために利用可能な同一の偏光を有する光子の数における減少を補償するために、既知の解決法は、光子の数を増加させるものであり、これは、多光子イオン化のための比較的高い強度閾値、及び、皮膚組織200の周囲で起こり得る付随的な損傷につながる。本発明者は、特定の偏光方向に関し、特定の目標位置210における皮膚組織200の偏光解消効果が最小であり、これが、多光子イオン化を生成するためになお十分である、発せられた直線偏光処理光22の最小のパワーをもたらすことを発見した。また、本発明者は、(最適な偏光方向P1として示される)特定の偏光方向は、皮膚組織200内側の様々な位置において異なり得ることを発見した。従って、本発明に従った皮膚処理装置100は、多光子偏光が、最小の光強度で発生するように、発せられる直線偏光処理光22の偏光方向を局所的に適合させるため、制御ユニット60によって制御される偏光変調器30を有する。結果として、目標位置210周囲の皮膚組織200の損傷は、最小化され得る。偏光変調器30による発せられた直線偏光処理光22の偏光方向の上記局所的な適合の更なる利点は、直線偏光した処理光22を生成するための光源10によって満たされる要件を少なくし、結果、かかる皮膚処理装置100の全体的なコストを減少させ得ることである。
偏光感知センサ40は、所定の偏光方向、例えば、直線偏光したプローブ光12に対して垂直な偏光方向において、後方散乱プローブ光42を感知し得る。プローブ光12の偏光方向のスキャン中、偏光感知センサ40の所定の偏光方向も、偏光感知センサ40の所定の偏光方向が、直線偏光したプローブ光12に対して垂直なままであることを保証するために、スキャンされる必要がある。かかる構成では、目標位置におけるプローブ光12の偏光解消度が最小である場合、後方散乱プローブ光42の強度は、最小である。
あるいは、偏光感知センサ40の所定の偏光方向は、直線偏光したプローブ光12に対して平行であってもよい。また、この場合、プローブ光12の偏光方向をスキャン中、偏光感知センサ40の所定の偏光方向が、直線偏光したプローブ光12に対して平行なままであることを保証するために、スキャンされる必要がある。かかる構成では、目標位置におけるプローブ光12の偏光解消度が最小である場合、後方散乱プローブ光42の強度は、最大である。
また、代替的に、図1A,図1B,図2A及び図2Bに示されるように、後方散乱プローブ光42が、偏光変調器30を通じて、偏光感知センサ40によって感知されるように、偏光変調器30は、目標位置210と偏光感知センサ40との間に配置されてもよい。かかる構成では、後方散乱プローブ光42は、所定の範囲に亘るプローブ光12のスキャン中、プローブ光12を変調するために使用されるものと同一の偏光変調器30を通じて測定される。偏光感知センサ40は、後方散乱プローブ光42の測定のための正確な偏光方向が維持されることを保証するために、単一の固定偏光方向に対してのみ敏感である必要がある。スキャン中、所定の範囲に亘ってプローブ光12の偏光方向を変調している間、後方散乱プローブ光42は、偏光感知センサ40によって測定される前に、自動的に「復調」される。
図1Aに示される実施形態では、光源10は、多光子イオン化プロセスのために必要なパワーレベルよりも著しく低いパワーレベルを持つ直線偏光したプローブ光12を発するように構成されている。プローブ光12の偏光方向の当該スキャンは、プローブ光12の偏光解消度が最小である(又は、偏光感知センサ40の偏光方向が、プローブ光12の偏光方向に対して垂直である場合、後方散乱プローブ光42の強度が最小である)最適な偏光方向P1を発見するために、目標位置210を調査することを可能にする。減少されたパワーを持つかかるプローブ光12の使用は、最適な偏光方向P1を発見するための目標位置210の調査中、皮膚組織200に対する任意の付随的な損傷も減少させる。
図1A及び図1Bに示される皮膚処理装置100は、光学系70を有している。光学系70は、皮膚組織200内側にある目標位置210に向かって光を集中させるように構成される。光学系70は、単一のレンズ素子70として、図1A及び図1Bに示されているが、勿論、目標位置210に向かって光を集中させるために、複数のレンズ素子(図示省略)を有していてもよい。光学系70は、(図1A及び図1Bに示されるように)偏光変調器30の下流に配置されてもよい。又は、代替的に、光学系70は、偏光変調器30の上流、即ち、光源10と偏光変調器30との間(図1A及び図1Bには示されていない)に配置されてもよい。光学系70は、幾つかが偏光変調器30の上流に配置されるとともに、幾つかが偏光変調器30の下流に配置される(図示省略)複数のレンズ素子を有していてもよい。
また、光学系70は、調整可能なレンズ(図示省略)、又は、調整可能なミラー(図示省略)を更に有していてもよい。各素子、又は、それらの組み合わせが、焦点合わせ動作を供給することができる。皮膚表面に対する深さ方向、及び、皮膚表面を横切る深さ方向の両方において、上記素子の両方は、目標位置210において、焦点の位置を調整するために調整可能であってもよい。当該調整可能なレンズは、距離設定を有するレンズを有していてもよく、又は、ズームレンズであってもよい。当該調整可能なミラーは、1又は複数の方向、例えば、2つの方向において、回転可能なミラーを有していてもよい。例えば、レンズと組み合わせられた場合、特に、ミラーが焦点合わせ動作を供給する場合、当該ミラーは、平坦であってもよいし、又は、凹状であってもよい。
好適には、調整可能なレンズは、オートフォーカスレンズを有している。かかるレンズは、皮膚表面に対して自動的に調整される。これは、ほとんど全ての環境において、正確な処理深さを保証する。
図1Aにおいて、光源10は、最適な偏光方向P1を選択するため、直線偏光したプローブ光12を発する。図1Bにおいて、光源10は、多光子イオン化に必要な強度レベル以上の強度レベルを持つ直線偏光した処理光22を発する。光源10は、例えば、直線偏光したプローブ光12又は直線偏光した処理光22のいずれかを発するように調整され得る調整可能な光出力レベルを持っていてもよい。プローブ光12を用いて、最適な偏光方向P1に調整される偏光変調器30が、処理光22の偏光方向を最適な偏光方向P1に適合させるとともに、皮膚組織200の中の目標位置210へ焦点合わせするために使用される。
使用中、皮膚処理装置100の出力窓(図示省略)は、処理される皮膚組織200の皮膚表面の近傍、又は、処理される皮膚組織200の皮膚表面と接触するように配置される。一般的に、皮膚組織200へ発せられる直線偏光プローブ光12又は処理光22光学的結合を高めるために、屈折率整合流体が、皮膚処理装置100の出力窓と皮膚表面との間に使用され得る。皮膚処理装置100は、目標位置210において、発せられる直線偏光プローブ光12又は処理光22の焦点を作るように構成される。皮膚処理装置100が、皮膚組織200200におけるしわを減少させるために使用されている場合、目標位置210は、目標位置210における顕微鏡的病変を作るために、真皮のコラーゲンに配置され、これは、新たなコラーゲン形成をもたらす。
本発明は、皮膚が、真皮において、極めて小さい焦点に焦点合わせされる電磁場放射を伝搬するという事実を用いる。この効果を最大化するために、光の波長は、800nmと1100nmとの間にある。この波長は、例えば、1064nmの放射及び1ps〜1000psのパルス持続時間を有するNd:YAGレーザによって生成される。当該範囲では、伝播は、比較的高く、散乱及び線形吸収は低い。しかしながら、他の波長の使用を除外するものではない。
特に、所定のパルス時間は、100psと10nsとの間にある。この範囲では、多光子イオン化によって生成されるプラズマは、極めて局所的であり、即ち、小さい空間的拡がりを持ち、これは、周囲組織に対する意図されない損傷のリスクを最小化させる。さらに、多光子イオン化を得るために必要とされるピークパワーは、当該範囲におけるパルス時間とは実質的に独立している。しかしながら、例えば、約100fs〜約100psの範囲などの他のパルス時間も使用されてもよく、ns〜ms範囲でさえ使用され得る。
一般的に、レーザビームパルスにおいて伝達可能なエネルギーレベルは、皮膚の表面において測定される値として、0.1mJと10mJとの間にある。かかるエネルギーレベルは、処理において有用である、即ち、新たな組織の成長を刺激するために十分なダメージを生成することが分かっている。より具体的には、エネルギーレベルは、約0.5mJと約5mJとの間にあり、一般的には、約1mJである。しかしながら、最大2mmの大きな処理深さに関して最大約20mJのレベルなど、他のエネルギーレベルも除外されない。上述のエネルギーレベルに関する示唆において、エネルギーは、皮膚の表面において測定される、即ち、皮膚の中に実際に発せられるエネルギーを表している。
上述のいずれの場合においても、パルスがLIOB現象を生成する限り、単一パルスの代わりに、複数のパルスを供給することも可能であることが理解されるべきである。
既述のように、偏光変調器30は、皮膚処理装置100の任意の適切な部分に配置されてもよく、都合がよければ、他の光学的コンポーネント又は光源とさえ一体化されていてもよい。偏光変調器30は、回転1/2ラムダ波長板、電気光学変調器、音響光学変調器などの、当該技術分野において既知である任意の適切な光学素子であってもよい。
皮膚は、様々な光学特性を有する複数の層を有する。表皮は、最外層からなり、水を通さない保護バリアを形成する。表皮の最外層は、粗さにおける微小変動により、皮膚処理装置100と皮膚組織200との間の光の結合を阻害する角質層である。表皮の下には、真皮が位置している。真皮は、一般的に皮膚処理の目標とされるコラーゲン繊維を有する。
一般的に、皮膚処理装置100は、少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.4の開口数(NA:numerical aperture)を持つ。開口数の上記値は、特定の表皮において、重なっている皮膚層のための安全性に関する。特に、表皮は、メラニンなどの多くの発色団を含んでいるため、表皮における残りの線形吸収は無視できない。従って、かかる層において、フルエンス又はエネルギー密度を十分低く保つことが好適である。これは、強く集中された、即ち、収束の大きな角度を具備するレーザビーム、ひいては、光学系の多くの開口数を供給することによって達成され得る。許容可能な範囲内で、表皮におけるフルエンスを維持するために、レーザビームは、十分大きい領域をカバーする。特に、表皮におけるフルエンスは、多くても3J/cm2である。所望の開口数は、処理深さ、及び、パルスにおける実際のエネルギーに依存していることに留意する。モデル計算は、0.5mmの処理深さ、(焦点における)プラズマでの1mJのエネルギーに関し、少なくとも0.4の開口数で十分であり、より高いエネルギーレベル、及び、より小さい処理深さのために、より高いNAが必要であり、また、その逆も然りであることを示している。
損傷されるべきでない表皮までのより大きな距離のため、より大きな処理深さのために必要なNAは、勿論、小さい処理深さのために必要なNAより小さいことに留意する。しかしながら、処理深さにおいて十分な多光子イオン化を達成するために必要な総強度及び総エネルギーは、多層における残余吸収及び散乱のため、より大きくなる。
典型的な処理深さに関して、少なくとも0.7の開口数が、焦点において最適な強度を供給するため、及び、皮膚の表層上の熱負荷を最小化するために好適であろう。
特に、レーザビームパルスのフルエンスは、皮膚の表面と真皮層との間の皮膚において、多くとも3Jcm2である。かかるフルエンスは、上記皮膚層に関して実に安全である。レーザビームパルスに関する好適なエネルギーレベルとともに、これは、好適なレーザビーム尖角、1mJ及び0.5mmの処理深さに関し、特に少なくとも11°(半角)につながる。所望の処理深さ及びパルスエネルギーに依存して、当業者は、好適な尖角、又は、関連する開口数を容易に決定することができる。
一般的に、処理深さは、皮膚の表面下、0mmと2mmとの間であり、より具体的には、0.2mmと1.5mmとの間である。これは、角質層を有する表皮の一般的な総厚さに基づいており、顔では、0.06mmと0.2mmとの間であり、真皮層の一般的な厚さは2mmである。このため、真皮は、約0.2mmと約2mmとの間の深さにおいて発見され得る。0.5mmと1.5mmとの間の処理深さは、表皮などの周囲層に如何なるリスクをもたらすことなく、十分な拡がりで真皮の処理を可能にする範囲を提供する。特定の場合では、表皮及び/又は真皮は、より薄い、又は、より厚い、あるいは、手などの身体の他の部分などでは、わずかに異なる深さにおいて存在し得る。このような場合において、当業者は、真皮の深さ及び/又は厚さを容易に決定し、装置を然るべく構成することができる。異なる処理深さは、真皮層の深さ及び厚さを確立後、固定されてもよい。また、例えば、超音波エコー装置など、Stiefel Cutechの「Dermal depth Detector」、又は、他のOCT装置(断層映像法)のような真皮及び/又は表皮の厚さの自動的な決定のための装置を使用又は含むことも可能である。
図2A及び図2Bは、本発明に従った皮膚処理装置102の第2の実施形態を図式的に示している。図2A及び図2Bに示される実施形態において、偏光変調器30、センサ40、コントローラ60、及び、光学系70は、図1A及び図1Bに示される実施形態と同一である。しかしながら、図2A及び図2Bに示される実施形態では、皮膚処理装置102は、プローブ光エミッタ10A及び別個の処理光エミッタ10Bを持つ光源10を有している。プローブ光エミッタ10Aは、多光子イオン化を生成するのに必要な強度レベルよりも著しく低い強度レベルを持つ直線偏光された光であるプローブ光12を生成するように構成されている。処理光エミッタ10Bは、多光子イオン化に必要な強度レベル以上の強度を持つ直線偏光した光である処理光22を生成するように構成されている。既述のように、一方は、最適な偏光方向P1の調査及び選択のための光エミッタであり、他方は、皮膚組織200の処理のための光エミッタである、別個の光エミッタの使用は、皮膚処理装置102の全体的コストを減少させ得る。図2A及び図2Bに示される実施形態では、プローブ光エミッタ10Aの光、及び、処理光エミッタ10Bの光は、他の半透明ミラー76を用いて結合されている。
図2A及び図2Bに示される皮膚処理装置102の実施形態は、光学系70が発せられた直線偏光プローブ光12及び/又は処理光22を集中させる目標位置210の深さを感知するための、あるいは、目標位置210の深さにおける変化を感知するための焦点センサ72を更に有している。本発明者は、目標位置210の深さにおける変化でさえ、本発明に従った皮膚処理装置102が、最適な偏光方向P1を再選択するため、所定の範囲に亘ってプローブ光12の偏光方向のスキャンを再開始することを必要とし得ることを発見した。焦点センサ72は、コントローラ60に結合され、目標位置210の位置の表現である、又は、目標位置210の位置における変化の表現である焦点信号Sfをコントローラ60に供給する。
図2A及び図2Bに示される皮膚処理装置102の実施形態は、直線偏光した処理光22が目標位置210に向かって発せられた場合に、皮膚組織200の内側における多光子イオン化の存在を感知するための他のセンサ82を更に有している。当該他のセンサ82は、コントローラ60に結合され、皮膚組織200における多光子イオン化プロセスの発生の表現であるイオン化信号Siをコントローラ60に供給する。かかる他のセンサ82は、光検出器、CCDカメラと組み合わせられた回折格子、及び、音響センサを有するリストから選択され得る。
皮膚処理装置102の実施形態は、皮膚表面に対して平行な方向における皮膚処理装置102の動きを感知するための動きセンサ80を有していてもよい。動きセンサ80は、コントローラ60に結合され、動き信号Svをコントローラ60に供給してもよい。コントローラ60は、皮膚表面に沿った皮膚処理装置102の位置における変化に応じて、最適な偏光方向P1を再調整するように構成され得る。目標位置210の深さにおける変化と同様に、皮膚表面に沿った皮膚処理装置102の再配置も、変化した位置に関して、最適な偏光方向の変化をもたらし得る。このため、コントローラ60は、動きセンサ80から動き信号Svを受信するように構成されてもよく、当該受信に応じて、コントローラ60は、再配置された目標位置210における多光子イオン化処理を適用する前に、最適な偏光方向P1を再選択するため、この動き信号Svを、所定の範囲に亘るプローブ光12の偏光方向のスキャンを再開始するためのトリガとして使用してもよい。
図2Aに示される皮膚処理装置201の実施形態は、プローブ光エミッタ10Aが、最適な偏光方向P1を選択するためのプローブ光12を発するモードを表している。図2Bでは、プローブ光エミッタ10Aが、オフに切り替えられ、処理光エミッタ10Bが、オンに切り替えられ、目標位置210において多光子イオン化を生成するために、偏光変調器30を介して目標位置210に向かって処理光22を発している。
図3は、発せられた直線偏光プローブ光12の偏光方向の変化の際に、センサ40によって測定される測定信号Smの一例を図式的に示している。図3のグラフにおいて、水平軸は、発せられた直線偏光プローブ光12の直線偏光の角度を表しており、垂直軸は、任意単位におけるセンサ信号を表している。本実施形態では、偏光感知センサ40の所定の偏光方向が、直線偏光プローブ光12の偏光方向に対して垂直に配置されている。偏光された光が皮膚に入射した場合、皮膚組織200の内側の散乱効果、及び、コラーゲン組織の存在によって、部分的に偏光が解消され、光の偏光が変化する。既述のように、これらの偏光解消効果は、目標位置の内側で同一の偏光方向を持つ光子の数を減少させる。既知の解決法では、目標位置210において多光子イオン化を生成するための処理光22のパワーが増加される。本発明に従った実施形態では、後方散乱プローブ光42が感知される。後方散乱プローブ光42が感知された場合、プローブ光12の偏光方向に対して垂直な所定の偏光方向を用いて、センサ40は、偏光方向が、皮膚組織200の内側の偏光解消度により変更された後方散乱プローブ光42の一部のみを感知する。同様に、現在の構成において、後方散乱プローブ光42の感知された強度が低い場合、現在の目標位置210において焦点合わせしている場合、偏光解消度も低い。目標位置210における皮膚組織200の偏光解消効果が低い場合、同一の偏光方向を持つ光子の数は、比較的高く、これは、処理光22の最小パワーをもたらし、多光子イオン化をなお生成するのに十分であり得る。既述のように、本発明者は、この特定の偏光方向が、皮膚組織200の様々な位置において異なる可能性があることを発見し、このため、本発明に従った皮膚処理装置100,102は、直線偏光した処理光22の偏光方向を局所的に適合させるように構成されている偏光変調器30を有する。
図4は、本発明に従った皮膚処理装置100,102を制御するためのフロー図を示している。このフロー図は、本発明に従った皮膚処理装置100,102を制御するためのコンピュータプログラム製品においてコード化されてもよい。当該フロー図は、皮膚処理が、皮膚処理装置100,102において開始される「皮膚処理を開始」ステップ300において開始する。次に、「目標位置の探索」ステップ310において、目標位置が、プローブ光12の偏光解消度が最小である最適な偏光方向P1を発見するために探索される。次に、プロセスは、2つのフローに別れる。一方(ステップ320A,330A及び340A)は、皮膚処理装置100が、プローブ光12と処理光22との両方を生成するために強度が変化され得る光源10を有する、図1A及び図1Bに示される実施形態に関するものであり、他方(ステップ320B,330B及び340B)は、皮膚処理装置102が、プローブ光エミッタ10Aと処理光エミッタ10Bとを別個に有する、図2A及び図2Bに示される実施形態に関するものである。図1Aに示される実施形態に関するフローに着目すると、「レーザパワーを減少させる」ステップ320Aは、直線偏光したプローブ光12を生成するためにパワーを減少させるべく、皮膚処理装置100の光源10を制御する。当該パワーは、多光子イオン化を達成するために必要なパワーよりも著しく低い。次に、「偏光変調器を回転する」ステップ330Aは、発せられた直線偏光プローブ光12の偏光方向をスキャンし、「最小の偏光解消度を発見する」ステップ340Aは、どの偏光方向が、プローブ光12の偏光解消度において最小値をもたらすのかを発見する。即ち、発見された偏光方向が、最適な偏光方向P1である。図2Aに示される実施形態に関するフローに着目すると、「プローブレーザを開始する」ステップ320Bは、プローブ光12を発するために、多光子イオン化を達成するのに必要なパワーよりも著しく低いパワーレベルで、光源10のプローブ光エミッタ10Aを制御する。「偏光変調器を回転する」ステップ330B、及び、「最小の偏光解消度を発見する」ステップ340Bは、ステップ330A及び340Aと同一であり、発せられた直線偏光プローブ光12の偏光方向をスキャンし、どの偏光方向が、プローブ光12の偏光解消度において最小値をもたらすのかを発見する。次に、「処理レーザを開始する」ステップ350において、処理光エミッタ10Bが開始され、又は、光源10の強度レベルが、多光子イオン化が皮膚組織200において発生し得るレベル以上まで増大される。次いで、「多光子プロセスを感知?」ステップ360において、多光子プロセスの発生が感知される。何の多光子プロセスも感知されない場合(「N」で示されている)、皮膚処理装置100,102は、処理光22のパワーが増大される、「パワー変更」ステップ355へ移動してもよく、その後、処理光エミッタ10Bは、ステップ350において再開始される。あるいは、皮膚処理装置100,102は、「深さ変更」ステップ365において、目標位置210の深さを変更してもよく、その後、プロセスは、変更された目標位置210の探索ステップ310へ戻る。ステップ360において、多光子プロセスが感知された場合(「Y」で示されている)、プロセスは、皮膚処理が異なる位置において続けられるべきかどうかが検出される、「次の位置?」ステップ370へ進んでもよい。次の位置がない場合(「N」で示されている)、プロセスは、「停止」ステップ380で停止する。他の位置が処理される必要がある場合(「Y」で示されている)、プロセスは、皮膚処理装置100,102の位置が皮膚表面に対して変更される「位置変更」ステップ375へ続き、再び、プロセスは、この変更された位置における探索ステップ310へ戻る。
要約すると、本発明は、直線偏光したプローブ光12と直線偏光した処理光22とを生成するように作成及び構成される光源10と、プローブ光の偏光方向と処理光の偏光方向とを制御するように作成及び構成される偏光変調器30と、偏光感知センサの所定の偏光方向において目標位置210からの後方散乱プローブ光42の強度を感知することによって、プローブ光の偏光解消レベルを感知するように作成及び構成される偏光感知センサ40と、測定信号Smを受信しつつ、所定の範囲に亘ってプローブ光の偏光方向をスキャンするとともに、プローブ光の偏光解消度が最小である最適な偏光方向P1を選択するように構成されるコントローラ60と、を有する非侵襲的な皮膚処理装置100を提供する。また、本発明は、皮膚処理装置を制御するためのコンピュータプログラム製品を提供する。
上述の実施形態は、本発明を限定するものではなく、例示であり、当該技術分野における当業者は、多くの代替的な実施形態を設計可能であることに留意すべきである。
請求項中、括弧内の任意の参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。「有する」なる動詞及びその活用形の使用は、請求項に記載された要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を除外しない。要素の単数形は、かかる要素が複数存在することを除外しない。本発明は、幾つかの異なる要素を有するハードウェアにより、及び、適切にプログラムされたコンピュータにより、実装されてもよい。幾つかの手段を規定している装置に関する請求項において、これらの手段の幾つかは、全く同一のハードウェアによって実現されてもよい。特定の特徴が相互に異なる従属形式請求項において言及されているという単なる事実は、こられの特徴の組み合わせが好適に使用されないということを示すものではない。