JP2016525676A - リピドミックバイオマーカー - Google Patents
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Abstract
本出願はC型肝炎および肝線維症および肝細胞がんなどの関連症状に対する新規なリピドミックマーカーを提供する。【選択図】図2
Description
本願は米国仮特許出願第61/818,621号(2013年5月2日)に基づく優先権の利益を主張する。本出願の内容はその全体が援用により本明細書に組み込まれる。
本出願は病気や疾患の診断および/または予後診断、特に、リピドミックバイオマーカーを用いる診断および/または予後診断に関する。
一態様はC型肝炎感染症またはその感染症が原因の疾患もしくはその感染症を併発する疾患を評価する方法である。その方法は:(a)評価を必要とする対象から生体試料を入手すること;(b)その生体試料中の少なくとも一種のC型肝炎リピドミックバイオマーカーの水準を決定すること;および(c)工程(b)の水準をC型肝炎リピドミックバイオマーカーの対照水準と比較し、対象のC型肝炎感染症またはその感染症が原因の疾患もしくはその感染症を併発する疾患を評価すること、を含む。
別の態様は治療反応性を評価する方法であって、(a)評価を必要とする対象に薬剤を投与すること;(b)その対象から生体試料を入手すること;(c)その生体試料のグルコシルセラミド、ラクトシルセラミドおよびスフィンゴミエリンのうちの少なくとも一種の不飽和指数を決定すること;および(d)その不飽和指数の値を対照不飽和指数値と比較し薬剤に対する反応性を評価することを含み、決定された不飽和指数の値が対照値よりも高い場合に対象は薬剤に反応している、および/または治療効果があることを意味する方法である。
更に別の態様はインターフェロンおよびリバビリンのうちの少なくとも一種を含むC型肝炎治療に対する反応が見込めないC型肝炎患者を特定する方法である。その方法は:(a)C型肝炎感染症にかかっている対象から生体試料を入手すること;(b)その生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミド、ラクトシルセラミドおよびスフィンゴミエリンのうちの少なくとも一種の不飽和指数を決定すること;および(c)その決定値を対照不飽和指数値と比較することを含み、その決定値が不飽和の対照値よりも高い場合、対象はインターフェロンおよびリバビリンのうちの少なくとも一種を含むC型肝炎治療に反応が見込めない、および/または治療効果が見込めない特定方法である。
特に指定がない限り、「a」または「an」は1以上を意味する。
本発明者らは、対象から入手した生体試料中の一種以上のリピドミックバイオマーカー(脂質代謝物であってよい)の水準を決定し、その決定された水準を対照の水準と比較することで、C型肝炎感染症および/または肝線維症、肝硬変および肝細胞がんなどの関連疾患を評価できることを見出した。
「リピドミックマーカー」または「リピドミックバイオマーカー」という用語は病気や疾患(例えば、C型肝炎感染症および/または関連疾患)のある対象の生体試料と対照の生体試料(一以上の健康な個体の試料、つまり病気や疾患のない一以上の個体の試料であってよい)間の脂質組成物中の特定の差異を指すことがある。態様によっては、「リピドミックマーカー」または「リピドミックバイオマーカー」という用語は病気や疾患(例えば、C型肝炎感染症および/または関連疾患)のある対象の生体試料と対照の生体試料間の一種以上の脂質成分またはその代謝物の絶対的存在量における特定の差異を指すことがある。更に態様によっては、「リピドミックマーカー」または「リピドミックバイオマーカー」という用語は病気や疾患(例えば、C型肝炎感染症および/または関連疾患)のある対象からの脂質成分またはその代謝物と対照間、つまり生体試料と対照間の相対的存在量における特定の差異を指すことがある。
「生体試料」は診断アッセイまたはモニタリングアッセイで用いられる生物体から入手した様々な種類の試料を包含する。この用語は血液および生体由来のその他の液体試料、生検標本や組織培養物などの固体組織試料、またはそれら由来の細胞およびその子孫を包含する。更に、この用語は循環腫瘍またはその他の細胞も包含できる。この用語は特に臨床試料を包含し、更に、細胞培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、尿、羊水、生体液および組織試料を含む。この用語はまた入手後、特定の成分のために試薬で処理、可溶化、または濃縮など任意の方法で処理した試料も包含する。
生体試料は対象の体液または体組織の試料であってよい。例えば、生体試料は対象からの血液、血漿、血清、唾液、胆汁、尿、糞便または脳脊髄液の試料、もしくは細胞、組織または肝臓などの器官に由来する試料であってよい。多くの態様では生体試料として血液、血漿または血清を用いるのが好ましい。種々の手法を用いて生体試料を入手することができる。
本明細書で互換的に用いられる「個体」、「対象」、「宿主」および「患者」は診断、処置または治療が必要な任意の動物の対象、例えば、哺乳類の対象を指す。好ましい一態様では、個体、対象、宿主または患者はヒトである。その他の対象としては、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、霊長類、ウッドチャック、アヒルおよびマウスを含んでもよいが、これらに限定されない。
態様によっては、リピドミックバイオマーカーの水準を決定する前に生体試料を前処理してもよい。その前処理は、例えば、生体試料の少なくとも一画分を分離し、分離した画分中のリピドミックマーカーの水準を決定することを含んでもよい。そのような分画は、例えば、極低密度リポタンパク質画分や低密度タンパク質画分などのリポタンパク質画分、トリグリセリド画分などのグリセリド画分、またはリン脂質画分であってよい。態様によっては、分画は高密度リポタンパク質画分またはエキソソーム画分であってもよく、例えば、Keller、Sandersonら(以下の参考文献欄を参照)を参照のこと。特定の画分の分離には、好適な分離法、例えば、遠心分離、抽出、分取、限外濾過、タンパク質沈殿またはクロマトグラフ分離を用いてよい。
更に態様によっては、リピドミックマーカーの水準決定を前処理または分画していない試料に行ってもよい。
態様によっては、リピドミックマーカーの水準決定を絶食状態(最後の食事から少なくとも1時間、少なくとも1.5時間、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、または少なくとも3時間を意味し、例えば、午前の朝食前に)の対象から入手した前処理または分画していない試料に行うのが好ましい。
更に態様によっては、リピドミックマーカーの水準決定を絶食状態の対象から入手した食後の対象から入手した前処理または分画していない試料。
リピドミックバイオマーカーの水準決定は定量的または半定量的であってよい。態様によっては、定量決定は一種以上の脂質代謝物の絶対量または濃度を決定することを含んでもよい。更に態様によっては、定量決定は一種以上の脂質代謝物の一種以上のその他の代謝物に対する相対量または濃度を決定することを含んでもよい。例えば、態様によっては、少なくとも一種の代謝物Aの量または濃度と少なくとも一種の代謝物Bの量または濃度との比率を決定してもよい。
リピドミックマーカーの水準を決定するのに多くの手法を用いることができる。態様によっては、リピドミックマーカーの水準を決定することはクロマトグラフ法、例えば、液体クロマトグラフ(LC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、ガスクロマトグラフ(GC)、薄層クロマトグラフ、サイズ排除または親和性クロマトグラフの使用を含んでもよい。態様によっては、リピドミックマーカーの水準を決定することは質量分析法、例えば、ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)、液体クロマトグラフ−質量分析(LC−MS)、直接注入質量分析もしくはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT−ICR−MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE−MS)、高速液体クロマトグラフ−質量分析(HPLC−MS)、四重極質量分析、MS−MSまたはMS−MS−MSなど任意に順次組み合わせた質量分析、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)、熱分解質量分析(Py−MS)、イオン移動度質量分析、または飛行時間型質量分析(TOF)の使用を含んでもよい。好適な手法は、例えば、Nissen, Journal of Chromatography A, 703, 1995: 37-57、米国特許第4,540,884号または米国特許第5,397,894号に開示されている。
態様によっては、リピドミックマーカーの水準を決定することは以下の手法:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴画像(MRI)、フーリエ変換赤外分析(FT−IR)、紫外線(UV)分光、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散ラマン分光、またはフレームイオン化検出(FID)のいずれかの使用を含んでもよい。態様によっては、例えば、特定のリポタンパク質画分(特定の血液リポタンパク質画分など)の脂肪アシル組成を決定するのに脂肪酸アシルエステル分析を用いてもよい。態様によっては、LC−MSは個々の脂質種、例えば、リン脂質またはスフィンゴ脂質の決定に用いてもよい。
態様によっては、リピドミックマーカーの水準を決定することはガスクロマトグラフ−オンライン質量分析(GCMS)および/またはLCMS2(高速液体クロマトグラフ−オンライン2次元質量分析)をソフトウェアツール、例えば、脂質質量スペクトル解析ソフトウェア(LIMSA)(例として、データ処理はHaimi et al. Methods Mol. Biol. 2009, 580, 285-94を参照のこと)を用いる好適な内部標準と共に使用することを含んでもよい。
態様によっては、リピドミックマーカーの水準を決定することは特定の化学的または生物学的検定法を含んでもよい。その検定法は一種以上の薬剤(脂質代謝物の化学構造を明確に認識できる薬剤、もしくは他の化合物と反応する特性または生物学的読み取りシステムに反応を引き出せる特性によって脂質代謝物を明確に同定できる薬剤)を利用してもよい。例えば、態様によっては、薬剤(問題の分析物に特異的な抗体など)を用いて標的種の存在量を測定する場合は免疫検定法を用いてもよい。
態様によっては、リピドミックマーカーの水準を決定することは上記の2つ以上の手法の使用を含んでもよい。
態様によっては、C型肝炎リピドミックマーカーは生体試料中のミード酸の存在量、即ち、量または濃度であってよい。対照存在量値と比較してミード酸の存在量値が高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、ミード酸の存在量は肝細胞がんのバイオマーカーとして用いてもよい。その場合、対照存在量値と比較してミード酸の存在量値が高い場合は、対象が肝細胞がんにかかっていることを意味する。
ミード酸の存在量を決定するための試料は、血漿、血液または血清などの生体液の試料であってよい。態様によっては、ミード酸の存在量の決定は処理または分画していない試料に行ってよい。更に態様によっては、ミード酸の存在量の決定は試料の特定の画分(例えば、極低密度リポタンパク質画分など)に行ってよい。
態様によっては、ミード酸の存在量を決定するための生体試料は対象が絶食状態(最後の食事から少なくとも1時間、少なくとも1.5時間、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、または少なくとも3時間を意味する)の時に入手してもよい。態様によっては、空腹時間が24時間を超えないことが好ましい場合もある。更に態様によっては、ミード酸の存在量を決定するための生体試料は対象が食後の時に入手してもよい。
態様によっては、デノボ脂質生成の少なくとも一種の非必須脂肪酸副産物(例えば、パルミトレイン酸(C16:1ω−9およびω−7)およびオレイン酸(C18:1ω−9)の存在量、即ち、量または濃度はC型肝炎またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のバイオマーカーとして用いてもよい。その場合、対照存在量値と比較して決定された存在量値が低い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、非必須脂肪酸の不飽和指数(例えば、VLDL画分などの血液リポタンパク質画分(複数可)の脂質中に存在する非必須脂肪酸の不飽和指数であってよい)はC型肝炎またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のバイオマーカーとして用いてもよい。その場合、対照不飽和指数値と比較して不飽和指数値が低い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。このようなバイオマーカーは他のバイオマーカー(血流中のウイルスなど)に比べて肝障害のより好適な尺度となる。不飽和指数は、例えば、((16:1,ω−7+16:1,ω−9)/16:0)比、つまり、16:1,ω−7および16:1,ω−9脂肪酸の存在量の合計と16:0脂肪酸の存在量との比率とすることができる。
態様によっては、生体試料中の非必須脂肪酸の延長度はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のバイオマーカーとして機能する。その場合、対照延長度値と比較して生体試料の決定された延長度値が高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。このようなバイオマーカーは他のバイオマーカー(血流中のウイルスなど)に比べて肝障害のより好適な指標となる。延長度は、例えば、(18:1ω−7/16:1ω−7)比、つまり、18:1ω−7脂肪酸と16:1ω−7脂肪酸の存在量の比率を用いて決定してもよい。
態様によっては、C型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のリピドミックバイオマーカーは少なくとも一種の多価不飽和ω−6およびω−3脂肪酸(例えば、アラキドン酸およびドコサヘキサエン酸)の存在量であってよい。その場合、対照存在量値(HCVに感染していない一以上の健康な個体の存在量値であってよい)と比較して生体試料の決定された存在量値が高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。このようなバイオマーカーは他のバイオマーカー(血流中のウイルスなど)に比べて肝障害の進行のより好適な指標となる。
態様によっては、生体試料のコレステロールエステル組成中の一種以上の脂肪酸の存在量、即ち、濃度または量はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のリピドミックバイオマーカーとして機能する。コレステロールエステル組成を測定するために、コレステロールエステルをクロマトグラフ精製などの分離法を用いて生体試料から精製する。特定の場合において、その脂肪酸は少なくとも一種の多価不飽和必須ω−3またはω−6脂肪酸(例えば、20:4脂肪酸、20:5脂肪酸、22:6脂肪酸および22:5脂肪酸)であってよい。その場合、対照存在量値と比較して、一種以上のそのような多価不飽和脂肪酸の決定された存在量値が高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。このようなバイオマーカーは他のバイオマーカー(血流中のウイルスなど)に比べて肝障害の進行のより好適な指標となる。特定の場合において、コレステロールエステル組成中の特定の脂肪酸が欠乏していると、感染した個体の肝細胞にHCVが存在または作用していることを意味する。その場合、脂肪酸は少なくとも一種の一価不飽和脂肪酸(例えば、16:1脂肪酸および18:1脂肪酸)であってよい。その場合、対照存在量値と比較して、一種以上のそのような一価不飽和脂肪酸の決定された存在量値が低い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、生体試料中の一種以上のトリグリセリドの存在量、即ち、濃度または量はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくその感染症が原因の疾患のリピドミックバイオマーカーとして機能する。そのトリグリセリドは、例えば、C54:5−C18:0トリグリセリド、C54:6−C18:1トリグリセリド、C56:5−C20:4トリグリセリドまたはC56:7−C22:6トリグリセリドであってよい。その場合、対照存在量値と比較してそのトリグリセリドの存在量値が高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、トリグリセリドバイオマーカーの存在量の決定は処理または分画していない生体試料(例えば、血漿、血液または血清検体)に行ってもよい。更に態様によっては、トリグリセリドバイオマーカーの存在量の決定は生体試料の画分(例えば、極低密度リポタンパク質画分およびトリグリセリド画分)に行ってもよい。態様によっては、トリグリセリドバイオマーカーの存在量の決定は絶食状態(即ち、最後の食事から少なくとも1時間、少なくとも1.5時間、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、または少なくとも3時間)の対象から入手した生体試料に行ってもよい。更に態様によっては、トリグリセリドバイオマーカーの存在量の決定は食後の対象から入手した生体試料に行ってもよい。C54:5−C18:0トリグリセリド、C56:5−C20:4トリグリセリドまたはC56:7−C22:6トリグリセリドの存在量の決定は、絶食状態の対象から入手した未分画の生体試料(例えば、血漿、血液または血清検体)を用いるのが好ましい。或いは、これらのバイオマーカーには、生体試料の画分、例えば、極低密度リポタンパク質画分およびトリグリセリド画分を用いてもよい。C54:6−C18:1トリグリセリドの存在量の決定は、絶食状態または食後の対象から入手した未分画の生体試料(例えば、血漿、血液または血清検体)に行ってもよい。
態様によっては、生体試料中のリン脂質のうちの一種以上の脂肪酸の存在量、即ち、濃度または量はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のリピドミックマーカーとして機能する。態様によっては、生体試料中のエステル結合リン脂質のうちの一種以上の脂肪酸の存在量、即ち、濃度または量がそのようなリピドミックマーカーとして機能する。例えば、態様によっては、生体試料のジエステル型ホスファチジルコリン中の少なくとも一種の脂肪酸の存在量がリピドミックマーカーであってよい。その脂肪酸は、例えば、PC(32:1)種、PC(32:0)種、PC(34:0)種、PC(34:4)種およびPC(34:5)種から選択されてよい。その場合、PC(32:0)種、PC(34:0)種、PC(34:4)種およびPC(34:5)種の少なくとも一種の存在量値がこれらの種の対照値よりも高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。PC(32:1)種の存在量値がその対照値より低い場合もまた対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、生体試料のジエステル型ホスファチジルエタノールアミン中の少なくとも一種の脂肪酸の存在量、即ち、濃度または量はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のリピドミックマーカーとして用いてもよい。そのような脂肪酸は、例えば、a)ミード酸、b)少なくとも一種のパルミトレイン酸(例えば、16:1ω−7酸およびω−9酸)、またはc)少なくとも一種の必須ω−3脂肪酸またはω−6脂肪酸(例えば、20:3ω−3、20:4ω−6、20:5ω−3、22:6ω−3、22:5ω−3および22:4ω−6)から選択されてもよい。その場合、ミード酸または少なくとも一種の必須ω−3またはω−6の決定された存在量値がそれらの対照存在量値よりも高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。少なくとも一種のパルミトレイン酸の存在量値がその対照値より低い場合もまた対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、生体試料のジエステル型ホスファチジルセリン中の少なくとも一種の脂肪酸の存在量、即ち、濃度または量はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のリピドミックマーカーとして機能する。そのような脂肪酸は、例えば、38:3種または40:6種であってよい。その場合、38:3種および40:6種のうちの少なくとも一種の存在量値がそれらの対照値よりも高い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、生体試料のジエステル型ホスファチジルイノシトール中の少なくとも一種の脂肪酸の存在量、即ち、濃度または量はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のリピドミックマーカーとして機能する。そのような脂肪酸は、例えば、PI(38:3)種、PI(36:4)種、PI(38:4)種またはPI(38:5)種であってよい。その場合、PI(38:3)種の決定された存在量値がその対照存在量値よりも高い場合、またはPI(36:4)種、PI(38:4)種およびPI(38:5)種のうちの少なくとも一種の存在量値がそれらの対照存在量値よりも低い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、生体試料の少なくとも一種のリゾホスファチジルコリンの中から少なくとも一種の脂肪酸の存在量、即ち、濃度または量はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患のリピドミックマーカーとして機能する。そのような脂肪酸は16:1種、16:0種、20:4種または22:6種であってよい。その場合、対照値よりも16:0種、20:4種および22:6種のうちの少なくとも一種の決定された存在量値の方が高いか、16:1種の値の方が低い場合は、対象がC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていることを意味する。
態様によっては、エステル結合ホスファチジルコリンおよびエステル結合ホスファチジルエタノールアミン中の脂肪酸の存在量を決定するのに生体試料の画分、例えば、生体試料の極低密度リポタンパク質画分を用いるのが好ましい。
本バイオマーカーはC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患の診断に用いてよい。その場合、対照水準または対照値はC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患にかかっていない健康な個体で決定されたバイオマーカーの水準または値を指してよい。対照水準または値は健康な個体の集団における平均の水準または値であってもよい。
本バイオマーカーはC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患の進行または退縮の評価に用いてよい。その場合、対照水準または対照値は以前の時点で決定された同一対象のバイオマーカーの水準または値を指してよい。
本バイオマーカーはC型肝炎感染症またはその感染症を併発する疾患もしくはその感染症が原因の疾患に関する薬剤の効果の評価に用いてよい。その場合、対照水準または対照値は、例えば、対象に薬剤を投与する前に決定されたバイオマーカーの水準または値を指してよい。
本バイオマーカーはまたC型肝炎感染症または関連疾患の治療に対する反応性の評価に用いてもよい。その場合、対照水準または対照値は、例えば、対象に治療を施す前に決定されたバイオマーカーの水準または値を指してよい。
本発明者らはまた治療(対象への治療薬投与を含んでもよい)に対する反応性にリピドミックバイオマーカー(対象から入手した生体試料のグルコシルセラミド、ラクトシルセラミドおよびスフィンゴミエリンのうちの少なくとも一種の不飽和指数であってよい)を用いることも見出した。決定された不飽和指数値が対照値(即ち、薬剤を投与する前に入手した対象の試料で決定された値)よりも高い場合は、対象が薬剤に反応していることを意味する。その不飽和指数は24:1/24:0比であってよい。
態様によっては、不飽和指数は生体試料の極低密度リポタンパク質画分で決定してもよい。
態様によっては、不飽和指数はグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミドのいずれかで決定してもよい。更に態様によっては、不飽和指数はグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミド両方で決定してもよい。
態様によっては、治療に対する反応は不飽和指数マーカーに加えて、生体試料のグルコシルセラミドの存在量、即ち、濃度または量を用いて更に評価してもよい。その場合、特にVLDL血液画分中のグルコシルセラミドの存在量が対照値(即ち、薬剤を投与する前の値)よりも減少した場合は、対象が治療に反応していることを意味する。
態様によっては、対象はC型肝炎感染症または関連疾患、例えば、肝線維症や肝細胞がんにかかった対象であってよい。そのような対象に投与される薬剤はC型肝炎に有効とされるイミノ糖であってよい。そのイミノ糖は、例えば、N−置換デオキシノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩、N−置換デオキシガラクトノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩、およびN−置換Me−デオキシガラクトノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩のいずれかであってよい。典型的なイミノ糖としては、N−ブチルデオキシノジリマイシンおよびその医薬的に許容できる塩およびN−(7−オキサ−ノニル)−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトールおよびその医薬的に許容できる塩が挙げられるが、これらに限定されない。C型肝炎に有効なイミノ糖は、例えば、米国特許第7,612,093号および第6,465,487号に開示されている。
態様によっては、対象はリソソーム蓄積症、例えば、ゴーシェ病またはニーマン・ピック病C型にかかった対象であってよい。そのような対象に投与される薬剤はリソソーム蓄積症に有効とされるイミノ糖であってよい。そのイミノ糖は、例えば、N−置換デオキシノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩、N−置換デオキシガラクトノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩、およびN−置換Me−デオキシガラクトノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩のいずれかであってよい。典型的なイミノ糖としては、N−ブチルデオキシノジリマイシンおよびその医薬的に許容できる塩、N−ノニルデオキシノジリマイシンおよびその医薬的に許容できる塩、およびN−ブチルデオキシガラクトノジリマイシンおよびその医薬的に許容できる塩が挙げられるが、これらに限定されない。C型肝炎に有効なイミノ糖は、例えば、米国特許第5,472,969号、第5,525,616号、第5,580,884号、第5,656,641号、第5,786,369号、第5,798,366号、第5,801,185号、第6,291,657号、第6,465,488号、第6,495,570号、第6,610,703号、第6,660,749号、第6,696,059号、第7,348,000号に開示されている。
態様によっては、対象は糖尿病、例えば、2型糖尿病にかかった対象であってよい。そのような対象に投与される薬剤はインシュリン感作物質、例えば、イミノ糖、ビグアニドまたはチアゾリジンジオンであってよい。インシュリン感作イミノ糖の一例としては、N−(5−アダマンタン−1−イル−メトキシペンチル)−DNJおよびその医薬的に許容できる塩が挙げられる。チアゾリジンジオンインシュリン感作物質の例としては、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。ビグアニドインシュリン感作物質の非限定的な一例はメトホルミンである。一般に、ビグアニドおよびインシュリン感作物質は当業者に広く知られている。
本発明者らはまた、C型肝炎治療(ペグ化インターフェロンαなどのインターフェロン、およびリバビリンのうちの少なくとも一種を投与することを含む)に対して反応が見込めないC型肝炎患者(非反応患者)を、そのような患者から入手した生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミド、ラクトシルセラミドおよびスフィンゴミエリンのうちの少なくとも一種の不飽和指数値を決定することで特定してもよいと想定する。決定された不飽和指数値が対照不飽和指数値よりも高いと判明した場合、その患者はインターフェロンおよびリバビリンのうちの少なくとも一種を含むC型肝炎治療に対する反応が見込めない。その場合、その特定された非反応患者にはインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に加えて、もしくはインターフェロンおよび/またはリバビリン療法に対して代替療法を施してもよい。そのような代替療法として、米国特許第7,612,093号および第6,465,487号に開示されているように、C型肝炎に有効とされるイミノ糖の投与を含んでもよい。その不飽和指数は24:1/24:0比であってよい。態様によっては、代替療法は直接作用する抗ウイルス剤、例えば、HCVプロテアーゼ阻害剤(テラプレビルやボセプレビルなど)またはポリメラーゼ阻害剤を投与することを含んでもよい。
態様によっては、不飽和指数は生体試料の極低密度リポタンパク質画分で決定してもよい。
態様によっては、不飽和指数はグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミドのいずれかで決定してもよい。更に態様によっては、不飽和指数はグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミド両方で決定してもよい。
本出願はまたキットも提供し、それには(a)一種以上のリピドミックバイオマーカーの水準を測定するための一種以上の試薬、および(b)使用説明書を含んでもよい。そのキットは1、2、3、4、5、10、またはそれ以上のリピドミックバイオマーカーの水準を測定するための1、2、3、4、5、10、15、20、またはそれ以上の試薬を提供してもよい。態様によっては、キットは免疫検定法のための一種以上の試薬を含んでもよい。態様によっては、キットはMS分析法のための一種以上の試薬を含んでもよい。態様によっては、試薬は脂肪酸などの脂質代謝物に対する抗体であってもよい。抗体の製造方法は当業者に周知である。
側面によっては、キットは(a)脂肪酸などの脂質代謝物に対する抗体、および(b)使用説明書を含んでいてもよい。態様によっては、キットは更に(c)脂肪酸などの第二の脂質代謝物に対する二次抗体を含んでいてもよい。態様によっては、キットは更に(d)脂肪酸などの第三の脂質代謝物に対する三次抗体を含む。
なお、本発明は以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
複製可能C型肝炎ウイルス(HCVcc)の感染、及びERグルコース分解酵素及び/又はグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤である様々な抗ウイルス性を有するイミノ糖による処理が、肝がん細胞の脂質組成に及ぼす影響を調べた。非感染の場合、イミノ糖で処理されていない肝がん細胞の全脂肪酸組成は、細胞が構成的な脂肪酸欠乏状態にあったことを意味する不飽和非必須脂肪酸量の顕著な増加を示した。特に、ミード酸(エイコサトリエン酸、20:3ω−9)量が顕著に増加していた。複製可能C型肝炎ウイルスへの感染は、脂肪酸の新規生合成を著しく阻害し(ミード酸及び一価不飽和脂肪酸含有量の低下より明らかである)、高度の多価不飽和必須ω−3脂肪酸及びω−6脂肪酸含有量の増加を引き起こした。C型肝炎ウイルスへの感染は、細胞の脂肪酸含有量を増加させ、且つ、リン脂質、トリグリセリド及びコレステロールエステルの脂肪酸−アシル組成を大きく変えて、細胞内で合成される非必須脂肪酸アシル鎖の鎖長と飽和度を増加させ、且つ、高度の多価不飽和必須脂肪酸の膜脂質及び蓄積脂質への取り込みを促進した。イミノ糖はグルコシドセラミドの存在量を低下させ、かつ、驚くべきことに、グルコシルセラミドの不飽和度を増加させた。イミノ糖によるグルコシルセラミドの存在量及び不飽和度の変化は、感染状態及び非感染状態の両方で観察された。HCVの影響とは異なり、イミノ糖は、新規脂質生成(de novo lipogenesis, DNL)及びミード酸生成を促進したが、この促進は非感染状態でのみ観察された。これらの新たに観察された細胞脂質組成の変化は、発がん性形質転換、HCV感染及びイミノ糖処理があったことを意味するものであり、C型肝炎の診断マーカー及び/又は予測マーカーとして使用でき、かつ肝細胞がんの診断に使用できると考えられる。
C型肝炎及びそれに関連する症状
世界の人口の約3%がC型肝炎ウイルスに感染しており(Marcellin 1999、末尾のREFERENCEセクションを参照)、肝線維症、肝硬変及び肝細胞がんを含む肝疾患の主要な要因となっている。しかも、C型肝炎ウイルスへの感染は、米国及び欧州において肝移植の最大の適応症である(Chen and Morgan 2006)。この感染は、ペグ化インターフェロンαとリバビリン(Ribavirin)との併用によって、約50%が「治療可能」(つまり、持続性ウイルス陰性化可能)であるが、この治療は最長1年を必要とし、重大な副作用がある(例えば、インターフェロンに起因するインフルエンザ様症状)(Awad, Thorlund et al. 2010; Pawlotsky 2011)。近年認可された新たな「直接作用型」抗ウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤であるTelaprevir及びBoceprevir)や、ヌクレオチド類縁体ポリメラーゼ阻害剤であるギリアド社(Gilead)のGS-7977(前名称PI-7977)等の開発中薬剤によって、治癒率は向上している。これら新薬は大きな期待を集めているものの、この高い変異性を有するウイルスに長期間どの程度の薬効を奏するか、また、インターフェロンの使用及びそれに伴う副作用を避けつつ、再感染を防ぐために必要と思われる他の薬剤と併用した場合にどの程度の薬効を奏するか、は未だ不明である(Pawlotsky 2011)。更に、上記の新承認薬剤は高価であるが、保険及び医療予算は限られており、薬剤経済学的に見て、どの患者がこの高額な治療を必要とする可能性が高く、どの患者を歴史的に確立された標準的治療(つまりインターフェロンとリバビリンとの併用)を処置すべきかを見分けることは重要であると考えられる。同様に、どの患者が疾患の進行が早く、他の患者に比べてより早期に、より積極な治療又は肝移植が必要となる可能性が高いかを予測可能にすることも、重要であると考えられる。
世界の人口の約3%がC型肝炎ウイルスに感染しており(Marcellin 1999、末尾のREFERENCEセクションを参照)、肝線維症、肝硬変及び肝細胞がんを含む肝疾患の主要な要因となっている。しかも、C型肝炎ウイルスへの感染は、米国及び欧州において肝移植の最大の適応症である(Chen and Morgan 2006)。この感染は、ペグ化インターフェロンαとリバビリン(Ribavirin)との併用によって、約50%が「治療可能」(つまり、持続性ウイルス陰性化可能)であるが、この治療は最長1年を必要とし、重大な副作用がある(例えば、インターフェロンに起因するインフルエンザ様症状)(Awad, Thorlund et al. 2010; Pawlotsky 2011)。近年認可された新たな「直接作用型」抗ウイルス剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤であるTelaprevir及びBoceprevir)や、ヌクレオチド類縁体ポリメラーゼ阻害剤であるギリアド社(Gilead)のGS-7977(前名称PI-7977)等の開発中薬剤によって、治癒率は向上している。これら新薬は大きな期待を集めているものの、この高い変異性を有するウイルスに長期間どの程度の薬効を奏するか、また、インターフェロンの使用及びそれに伴う副作用を避けつつ、再感染を防ぐために必要と思われる他の薬剤と併用した場合にどの程度の薬効を奏するか、は未だ不明である(Pawlotsky 2011)。更に、上記の新承認薬剤は高価であるが、保険及び医療予算は限られており、薬剤経済学的に見て、どの患者がこの高額な治療を必要とする可能性が高く、どの患者を歴史的に確立された標準的治療(つまりインターフェロンとリバビリンとの併用)を処置すべきかを見分けることは重要であると考えられる。同様に、どの患者が疾患の進行が早く、他の患者に比べてより早期に、より積極な治療又は肝移植が必要となる可能性が高いかを予測可能にすることも、重要であると考えられる。
C型肝炎ウイルス感染患者の血中C型肝炎ウイルス量は、その患者の肝臓の基礎疾患の重篤度のよい指標となるという期待があるかも知れないが、実際はそうではなく、肝疾患の病態に関する最も信頼性のある指標と考えられている(一方で苦痛を伴い患者を重大なリスクにさらす)肝生検に比べ、ウイルス血症(viaremia)(又は血中ウイルス濃度、比較的非侵襲的な血液サンプリングによって算定される)と重篤度とには明確な関連性がない(Hollingsworth RC 1996)。現在まで、血中タンパク質バイオマーカーの測定による線維症(肝硬変の予測因子)の発症及び進行の検出に非侵襲的な予測調査の焦点が当てられてきた。その検出のために、タンパク質バイオマーカーパネルが開発されている(例えば、米国においてFibroSureとして知られるFibrotest)(Castera, Vergniol et al. 2005)(Gangadharan, Bapat et al. 2012)。このようなタンパク質バイオマーカーを用いた試験(FibroTest)によって、肝硬変の発症をその発症前段階において示唆する線維症の検出が可能である。更に、本発明者らがこれまでに発見したような新規なタンパク質バイオマーカーも、疾患活動性の有用な指標となり得る。しかし、非侵襲的方法又は出来るだけ侵襲度の低い方法によって肝臓疾患の病態に対するC型肝炎ウイルスの影響の早期指標を得ることが、より強く求められている。また、患者にとって反応性が一番高い薬剤又は薬剤の組み合わせを用いて治療が行われるように、つまり、いわゆる「個別化」医療又は「層別化」医療が行われるようにするために、ある治療に対する反応性を予測することができるバイオマーカー又はバイオマーカーパネルを特定することに関心が集まっている。このような試みによって、本質的に医療予算に上限がある中で、患者にとっての最大利益と社会にとっての最大利益(つまり、同様の強さの医療ニーズを有する、別の疾患に罹患した患者を含んでいる社会)とを均衡させることができる。
C型肝炎ウイルス感染に対する治療反応性を予測するための現時点で最も定評のあるバイオマーカーの例として、ペグ化インターフェロンαとリバビリンとの併用(近年まで、C型肝炎の「標準治療法」とされていた)の持続性ウイルス学的著効性の予測因子となるIL28B遺伝子多型が挙げられる。しかし、IL28多型のみでは予測価値(predictive value)が低く、患者がある治療計画に対する反応性を有するかどうかの臨床判断には未だ使用されていない。IL28多型は、別の遺伝子多型と組み合わせて追加的又は相乗的に予測価値を上げることができる可能性があり、また、別のバイオマーカー(例えばタンパク質バイオマーカー)と併用することもでき、新たに承認された薬剤や開発中薬剤の出現によって薬剤の選択肢がより増えるという新たな治療環境において、治療に関する決定の一助となる可能性がある(Clark and Muir 2012)。しかし現時点では、C型肝炎ウイルス感染に対するバイオマーカー戦略としては、タンパク質及び遺伝子バイオマーカーに限られており、今までのところ、脂質バイオマーカーの使用可能性については、調査もなされておらず、確証も得られていない。
C型肝炎ウイルスの複製サイクルは、肝細胞の脂質代謝、特にコレステロール代謝に大きく依存する(Barba, Harper et al. 1997; Sagan, Rouleau et al. 2006; Aizaki, Morikawa et al. 2008; Amemiya, Maekawa et al. 2008; Burlone and Budkowska 2009; Lyn, Kennedy et al. 2009; McLauchlan 2009; Ogawa, Hishiki et al. 2009; Diamond, Syder et al. 2010; Herker, Harris et al. 2010; Syed, Amako et al. 2010; Merz, Long et al. 2011; Miyoshi, Moriya et al. 2011; Clark, Thompson et al. 2012; Moriishi and Matsuura 2012; Rodgers, Villareal et al. 2012)。生体内において、C型肝炎ウイルスの子孫は感染細胞の小胞体から、超低比重リポタンパク質(VLDL)を伴ったエンベロープを有するビリオン(つまり、脂質膜に覆われたウイルス粒子)として、リポウイルス粒子(lipoviral particle)の形態で出現する。新たに細胞に感染するために、このウイルス粒子は、細胞表面の受容体(テトラスパニン、スカベンジャー受容体B1(SRB1)及びLDL受容体(LDL−R)等)に結合する必要があると考えられる。SRB1及びLDL−Rはリポタンパク質受容体である。これらの受容体は、「脂質ラフト」(コレステロール及び飽和スフィンゴ糖脂質が豊富に存在する膜マイクロドメインのこと)と関与を持つ。C型肝炎ウイルスがひとたび細胞のエンドソームに入ると、C型肝炎ウイルスは、細胞質内に逃げ込むために、更にコレステロール受容体である「ニーマン・ピック病C型様タンパク質1」(Niemann-Pick type-C disease like protein 1, NPCL1)と相互作用する必要があると考えられている(Sainz, Barretto et al. 2012)。C型肝炎ウイルスがひとたび細胞の細胞質内に入ると、C型肝炎ウイルスは、ウイルス自身による細胞小器官(「membranous web」と呼ばれる膜構造)を形成してウイルス自身の複製装置の機能を援護するために、小胞体の脂質代謝を阻害する。ビリオンの集合体(アセンブリ)は、コアタンパク質と脂質滴表面との結合を契機に、脂質滴(小胞体(以下ERとも記載する)内のVLDLの直接前駆体)上に形成される。次いで完全ウイルス粒子(intact virons)がVLDLを伴うリポウイルス粒子として出現し、以上のサイクルが繰り返される。
HCVが自身の複製のために肝細胞の脂質代謝の多くの側面を制御及び利用することから、本発明者らは、HCVは細胞の脂質組成に特異的且つ検出可能な影響を及ぼし、更には、肝臓から分泌される血中リポタンパク質の脂質組成(特にVLDLの成分)の変化として、そうした脂質組成の変化が血中に現れるという仮説、そして、肝生検試料の脂質組成の変化として分析可能であるという仮説を立てた。加えて、本発明者らは、HCVが宿主細胞に及ぼす影響の指標としての、感染細胞に対するHCVの「リピドームの足跡(lipidomic imprint)」、すなわち肝細胞の脂質代謝にHCVが及ぼす影響は、ウイルス血中濃度に比べて、疾患活動性のバイオマーカーとしてより優れたものとなることを発見した。この発見は、「リピドームの足跡(lipidomic imprint)」が、肝機能及び肝疾患の病理に対する悪影響をより直接的に反映するものであると考えられること、及び、単独では予測価値の小さい種々の遺伝子多型によって影響を受けやすい、ウイルス感染に対する細胞の複雑な代謝反応の全体を反映するものであると考えられることに基づいている。更に、本発明者らは、C型肝炎ウイルスに感染した患者の血漿及び生検試料におけるリピドームの足跡の予測価値は、現時点において未利用のバイオマーカー使用を可能にするものであり、遺伝子多型やプロテオミックバイオマーカーと併用することで、ある治療計画に対する治療反応性や、肝線維症、肝硬変及び原発性肝細胞がんを発症する危険性及び可能性をより正確に予測可能となることを見出した。加えて、本発明者らは、脂質代謝が活発な肝細胞から生じる原発性肝細胞がんは、肝細胞の変化後の状態に特徴的な脂質代謝の変化を反映する特有のリピドームの足跡を有することを見出し、更に、肝細胞がん(HCC)において発現されないこともあるα−フェトプロテイン(約80%の症例で発現、Huo, Hsia et al. 2007)等の、現時点で利用されているバイオマーカーでは信頼性が確保できなかった肝細胞がんの早期発見に、血中リポタンパク質組成としての原発性肝細胞がんのリピドミームの足跡が利用可能であることを見出した。従って、本発明者らは、原発性肝がん細胞(Huh7.5)のリピドームに複製可能C型肝炎ウイルスHCVcc感染が及ぼす影響、並びに、イミノ糖による処理に対する感染細胞及び非感染細胞のリピドーム組成及びリピドームの応答を調べた。このイミノ糖は、ERαグルコース分解酵素及びグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤であること、タンパク質フォールディングに影響を及ぼす(グルコース合成酵素の阻害作用による)こと(Branza-Nichita, Durantel et al. 2001; Chapel, Garcia et al. 2006; Chapel, Garcia et al. 2007)、グルコシルセラミド合成酵素の阻害(Platt, Reinkensmeier et al. 1997; Butters, Dwek et al. 2003; Butters, Dwek et al. 2005)、及び、中性のリソソーム外グルコシルセラミド合成酵素であるβ−グルコシダーゼ2(GBA2)の阻害(Boot, Verhoek et al. 2007)によって脂質代謝に影響を及ぼすことが知られているものである。
感染細胞及び非感染細胞の脂質含有量
感染状態及び非感染状態の肝がん細胞の全脂肪酸含有量(遊離脂肪酸及び脂肪アシル鎖の合計)を測定した(図2)。感染細胞の脂質含有量は、非感染細胞に比べ顕著に高かった(3〜5倍)が、この脂質含有量の上昇の原因は即断できない。なぜなら、例えば、肝がん細胞は(リポタンパク質受容体を介して)脂質を取り込み、同様に脂質を(リポタンパク質として)分泌可能であり、更に新規脂質生成によって脂質を新たに生成することが出来るためである。後述の理由によって、感染細胞の高脂質含有量は、ヒト細胞においては生成できない必須脂肪酸(おそらくリポタンパク質の脂質成分として)の取り込みを伴うものであり、また、この高脂質含有量は、感染状態においては強く抑制される新規脂質生成に起因するものではないことが示唆された。または、リポタンパク質の分泌が減少(肝細胞に対するHCV感染の影響として知られている)したことが原因であるとも考えられる。
感染状態及び非感染状態の肝がん細胞の全脂肪酸含有量(遊離脂肪酸及び脂肪アシル鎖の合計)を測定した(図2)。感染細胞の脂質含有量は、非感染細胞に比べ顕著に高かった(3〜5倍)が、この脂質含有量の上昇の原因は即断できない。なぜなら、例えば、肝がん細胞は(リポタンパク質受容体を介して)脂質を取り込み、同様に脂質を(リポタンパク質として)分泌可能であり、更に新規脂質生成によって脂質を新たに生成することが出来るためである。後述の理由によって、感染細胞の高脂質含有量は、ヒト細胞においては生成できない必須脂肪酸(おそらくリポタンパク質の脂質成分として)の取り込みを伴うものであり、また、この高脂質含有量は、感染状態においては強く抑制される新規脂質生成に起因するものではないことが示唆された。または、リポタンパク質の分泌が減少(肝細胞に対するHCV感染の影響として知られている)したことが原因であるとも考えられる。
非感染細胞の全脂肪酸組成
宿主細胞のリピドームに感染及びイミノ糖が及ぼす影響の全体像を把握するため、全脂肪酸の酸性メチル基転移反応を行った非感染細胞の全脂肪酸(脂肪酸メチルエステルとして)組成を調べた。この分析においては、非エステル化脂肪酸及びエステル化脂肪酸(後者は、コレステロールエステル、トリグリセリド、種々のリン脂質及びスフィンゴ脂質の一部)が分析対象に含まれる(図3)。驚くべきことに、イミノ酸処理をしていない非感染細胞の「ミード酸」(20:3、ω−9、全脂肪酸の13%を占める)の含有量が非常に高かった(図4)。ミード酸はパルミチン酸エステル(C16:0)から生成され、鎖長延長反応及び不飽和化反応を控えた新規脂質生成の直接前駆体である。初代肝細胞の全脂肪酸組成におけるミード酸発現量(百分率として)は、肝がん細胞Huh7.5の培養細胞のミード酸発現量に比べ、顕著に低くなる(Claude Wolf、私信による)。
宿主細胞のリピドームに感染及びイミノ糖が及ぼす影響の全体像を把握するため、全脂肪酸の酸性メチル基転移反応を行った非感染細胞の全脂肪酸(脂肪酸メチルエステルとして)組成を調べた。この分析においては、非エステル化脂肪酸及びエステル化脂肪酸(後者は、コレステロールエステル、トリグリセリド、種々のリン脂質及びスフィンゴ脂質の一部)が分析対象に含まれる(図3)。驚くべきことに、イミノ酸処理をしていない非感染細胞の「ミード酸」(20:3、ω−9、全脂肪酸の13%を占める)の含有量が非常に高かった(図4)。ミード酸はパルミチン酸エステル(C16:0)から生成され、鎖長延長反応及び不飽和化反応を控えた新規脂質生成の直接前駆体である。初代肝細胞の全脂肪酸組成におけるミード酸発現量(百分率として)は、肝がん細胞Huh7.5の培養細胞のミード酸発現量に比べ、顕著に低くなる(Claude Wolf、私信による)。
ミード酸は、ヒト及び動物の体内が必須脂肪酸欠乏状態になると、その量が大きく増加することが知られている(Siguel, Chee et al. 1987; Duffin, Obukowicz et al. 2000)。従って、ミード酸量の上昇は、非感染宿主細胞が必須脂肪酸、つまり主要な食物由来必須脂肪酸であるリノレン酸(18:2、ω−6)及びαリノレン酸(18:3、ω−3)(ω−6脂肪酸であるアラキドン酸及びω−3脂肪酸であるドコサヘキサエン酸を含む高度の多価不飽和脂肪酸の生合成に必須である)の事実上の欠乏状態にあることを示す。
このミード酸量上昇現象は、HCC患者の肝がん細胞は、健康な肝細胞と異なりミード酸をVLDL等のリポタンパク質の脂質成分の脂肪アシル鎖として分泌すること、更には、このようなVLDL組成の変化が、食物由来必須脂肪酸量が変化しても起こることを示唆している。本発明者らは、原発性肝細胞がんの臨床的に有用なタンパク質バイオマーカーであるα−フェトプロテインと異なり、このようなVLDL組成の変化は、血清α−フェトプロテイン(長く使用されてきたHCCのバイオマーカー)の有無に関わらず、HCC患者において普遍的に現れるという仮説を立てた。この仮説のもと、本発明者らは、VLDL中のミード酸量上昇に基づいた診断テストが、α−フェトプロテイン(約80%の症例で上昇)を用いた場合に比べ、感受性がより高く且つより信頼性のある、潜在する原発性肝細胞がんの指標となるという仮説を立て、更に、このようなテストを別の少なくとも1種のHCC診断方法と組み合わせることで、その組み合わせる別のHCC診断方法を、診断の正確性及び信頼性を高めるという観点から補完するものであるという仮説を立てた。
HCVcc感染細胞の全脂肪酸組成
HCVの感染によって、感染細胞のミード酸含有量は大きく減少した(20倍以上、図4)。HCVの感染によって、ミード酸以外の新規脂質生成の非必須脂肪酸副生成物、つまりパルミトレイン酸(C16:1、ω−9及びω−7)及びオレイン酸(C18:1、ω−9)の存在量も減少した(非感染細胞と比べた場合)。一方で、新規脂質生成で生成される別の非必須脂肪酸であるバクセン酸(C18:1、ω−7)には変化がなかった。HCVがミード酸及びその他新規脂質生成の副生成物の存在量を減少させるメカニズム、又はなぜこのような減少が起きるのか(おそらくは細胞代謝の自己防衛反応だと思われる)は、明らかではない。しかし少なくとも、新規脂質生成の直接前駆体であるパルミチン酸エステル(16:0)は、組成におけるその存在量が感染によって変化しなかったことから、このエステルが阻害要因であるとは考えにくい。よって、HCVは、ミード酸を生成するのに必要な不飽和化及び鎖長延長反応を阻害していると考えられる(ヒト細胞において、ミード酸は、Δ9不飽和化酵素(デサチュラーゼ)、Δ6不飽和化酵素及びΔ5不飽和化酵素、並びに鎖長延長酵素であるELOVL6及びELOVL5による、連続した不飽和化反応及び鎖長延長反応によって、パルミチン酸(16:0)から生成される)。なお、ラット体内の食物由来コレステロールは、肝臓内のΔ5不飽和化酵素及びΔ6不飽和化酵素(両者はミード酸生成に必須である)の活性を抑制することが知られている(Muriana, Vazquez et al. 1992; Bernasconi, Garda et al. 2000)。本発明はこの作用機序によって限定解釈されるべきではないが、ミード酸合成の抑制は、HCV感染による細胞内コレステロール量の上昇の結果であると考えられる。ここで、HCV感染は細胞内コレステロール量の上昇を引き起こすことが知られている(Sagan, Rouleau et al. 2006; Kapadia, Barth et al. 2007; Waris, Felmlee et al. 2007; Ye 2007)。感染細胞で観察された非必須脂肪酸(細胞内で生成されたもの)の不飽和化の抑制は、感染によってその量が顕著に増加することが観察され(後述)、且つ肝臓に含まれる3種の関連する不飽和化酵素(つまりΔ9、Δ6及びΔ5不飽和化酵素)の発現を阻害することで知られるアラキドン酸やドコサヘキサエン酸(Cho, Nakamura et al. 1999; Cho, Nakamura et al. 1999; Ntambi 1999)等の高度の多価不飽和脂肪酸の影響によるものであるとも考えられる。また、感染細胞において、Δ9不飽和指数が減少していた(図5)。この減少は、感染細胞においてPUFA又はコレステロール量が増加したことと整合する。
HCVの感染によって、感染細胞のミード酸含有量は大きく減少した(20倍以上、図4)。HCVの感染によって、ミード酸以外の新規脂質生成の非必須脂肪酸副生成物、つまりパルミトレイン酸(C16:1、ω−9及びω−7)及びオレイン酸(C18:1、ω−9)の存在量も減少した(非感染細胞と比べた場合)。一方で、新規脂質生成で生成される別の非必須脂肪酸であるバクセン酸(C18:1、ω−7)には変化がなかった。HCVがミード酸及びその他新規脂質生成の副生成物の存在量を減少させるメカニズム、又はなぜこのような減少が起きるのか(おそらくは細胞代謝の自己防衛反応だと思われる)は、明らかではない。しかし少なくとも、新規脂質生成の直接前駆体であるパルミチン酸エステル(16:0)は、組成におけるその存在量が感染によって変化しなかったことから、このエステルが阻害要因であるとは考えにくい。よって、HCVは、ミード酸を生成するのに必要な不飽和化及び鎖長延長反応を阻害していると考えられる(ヒト細胞において、ミード酸は、Δ9不飽和化酵素(デサチュラーゼ)、Δ6不飽和化酵素及びΔ5不飽和化酵素、並びに鎖長延長酵素であるELOVL6及びELOVL5による、連続した不飽和化反応及び鎖長延長反応によって、パルミチン酸(16:0)から生成される)。なお、ラット体内の食物由来コレステロールは、肝臓内のΔ5不飽和化酵素及びΔ6不飽和化酵素(両者はミード酸生成に必須である)の活性を抑制することが知られている(Muriana, Vazquez et al. 1992; Bernasconi, Garda et al. 2000)。本発明はこの作用機序によって限定解釈されるべきではないが、ミード酸合成の抑制は、HCV感染による細胞内コレステロール量の上昇の結果であると考えられる。ここで、HCV感染は細胞内コレステロール量の上昇を引き起こすことが知られている(Sagan, Rouleau et al. 2006; Kapadia, Barth et al. 2007; Waris, Felmlee et al. 2007; Ye 2007)。感染細胞で観察された非必須脂肪酸(細胞内で生成されたもの)の不飽和化の抑制は、感染によってその量が顕著に増加することが観察され(後述)、且つ肝臓に含まれる3種の関連する不飽和化酵素(つまりΔ9、Δ6及びΔ5不飽和化酵素)の発現を阻害することで知られるアラキドン酸やドコサヘキサエン酸(Cho, Nakamura et al. 1999; Cho, Nakamura et al. 1999; Ntambi 1999)等の高度の多価不飽和脂肪酸の影響によるものであるとも考えられる。また、感染細胞において、Δ9不飽和指数が減少していた(図5)。この減少は、感染細胞においてPUFA又はコレステロール量が増加したことと整合する。
感染状態における、非必須脂肪酸の不飽和度の減少及び鎖長延長度の促進
原則的には、不飽和化酵素及び鎖長伸長酵素がミード酸合成に必須であることから、感染状態におけるミード酸量の減少は上述の不飽和化酵素活性の低下、又は鎖長伸長活性の低下に起因するものである可能性が考えられた。しかし実際は、脂肪酸鎖長伸長は感染によって抑制されず、全脂肪酸組成分析によって、感染状態における脂肪酸の鎖長伸長反応を(18:1、ω−7/16:1、ω−7)の比率で確認したところ、酵素ELOVL−1及びELOVL−6による伸長反応は促進されていた(図5)。それに対し、感染状態においては、不飽和化酵素活性が減少していた。よって、Δ9不飽和化酵素(ステアロイルCoA不飽和化酵素1(SCD1)としても知られる)が、パルミチン酸(16:0)及びステアリン酸(18:0)の両方を不飽和化していたことが分かる。16:1/16:0の比は感染によって低下しており、Δ9不飽和化酵素活性が低下したことが示唆された。具体的には、Δ9不飽和化酵素活性は、パルミチン酸種の存在量に対する、パルミトレイン酸存在量の比率(つまり、(16:1ω−7+16:1ω−9)/16:0の比)によって確認し、感染状態においてその比の減少が確認された。この分析結果は、感染状態においては、Δ9不飽和化酵素活性の低下及び鎖長伸長反応の促進が起こっていたことを示している。これらの発見(つまりΔ9不飽和化酵素に関する発見)は、Δ5及びΔ6不飽和化酵素活性の低下を示唆するミード酸量の減少という結果と整合するものであり、感染状態において、不飽和化酵素(Δ9、Δ6及びΔ5)の活性低下は、非必須脂肪酸量(ミード酸を含む)の低下の要因であることを示唆するものである。
原則的には、不飽和化酵素及び鎖長伸長酵素がミード酸合成に必須であることから、感染状態におけるミード酸量の減少は上述の不飽和化酵素活性の低下、又は鎖長伸長活性の低下に起因するものである可能性が考えられた。しかし実際は、脂肪酸鎖長伸長は感染によって抑制されず、全脂肪酸組成分析によって、感染状態における脂肪酸の鎖長伸長反応を(18:1、ω−7/16:1、ω−7)の比率で確認したところ、酵素ELOVL−1及びELOVL−6による伸長反応は促進されていた(図5)。それに対し、感染状態においては、不飽和化酵素活性が減少していた。よって、Δ9不飽和化酵素(ステアロイルCoA不飽和化酵素1(SCD1)としても知られる)が、パルミチン酸(16:0)及びステアリン酸(18:0)の両方を不飽和化していたことが分かる。16:1/16:0の比は感染によって低下しており、Δ9不飽和化酵素活性が低下したことが示唆された。具体的には、Δ9不飽和化酵素活性は、パルミチン酸種の存在量に対する、パルミトレイン酸存在量の比率(つまり、(16:1ω−7+16:1ω−9)/16:0の比)によって確認し、感染状態においてその比の減少が確認された。この分析結果は、感染状態においては、Δ9不飽和化酵素活性の低下及び鎖長伸長反応の促進が起こっていたことを示している。これらの発見(つまりΔ9不飽和化酵素に関する発見)は、Δ5及びΔ6不飽和化酵素活性の低下を示唆するミード酸量の減少という結果と整合するものであり、感染状態において、不飽和化酵素(Δ9、Δ6及びΔ5)の活性低下は、非必須脂肪酸量(ミード酸を含む)の低下の要因であることを示唆するものである。
イミノ糖が全脂肪酸組成に及ぼす影響
非感染状態において、イミノ糖は概して、全脂肪酸組成において既に高かったミード酸量を更に抗ウイルス活性を与える濃度にまで高めていた(図4)。あるイミノ糖(AMP-DNJ)の場合、ミード酸含有量は約2倍になっていた。イミノ糖のこれらの影響は、統計学的に有意なものであった。
非感染状態において、イミノ糖は概して、全脂肪酸組成において既に高かったミード酸量を更に抗ウイルス活性を与える濃度にまで高めていた(図4)。あるイミノ糖(AMP-DNJ)の場合、ミード酸含有量は約2倍になっていた。イミノ糖のこれらの影響は、統計学的に有意なものであった。
イミノ糖によるミード酸生成の促進は、Δ6及びΔ5不飽和化酵素の活性が更に上昇したことによるものであり、元々ミード酸量が高かったという事実から、これら不飽和化酵素の活性上昇は、培養肝がん細胞にとって構成的に高レベルといえる量を超えた活性上昇であったと考えられる。このイミノ糖の影響は、HCV感染の影響と真逆のものである、逆に言えば、HCV感染の効果が非常に支配的であるために、感染状態においては観察されないものである。非感染状態におけるこのイミノ糖の影響は、細胞のイミノ糖処理によってインシュリンへの感受性が高まったことを示唆していると考えられる。イミノ糖の一種(AMP−DNJ、AMP−DNMとしても知られる)は、肥満マウスにおいて、肝臓のインシュリン感受性を上昇させ、脂肪酸合成酵素の活性を低下させ、脂肪肝を改善するものである(Bijl, Sokolovic et al. 2009)。また、インシュリンはΔ6不飽和化酵素発現を促進し、活性(ミード酸生成の律速因子である(Wang, Botolin et al. 2006))を上昇させるものであり、このことは、イミノ糖がインシュリン感受性を上昇させたという仮説を支持するものであると考えられる。本発明者らは、HCVに感染したII型糖尿病患者において、HCV感染に対する治療(インターフェロンとリバビリンの併用)に対する反応性が悪いと予想できるということ、及びHCV感染症が治癒した患者はインシュリン抵抗性も治癒していたということ(Clement, Pascarella et al. 2009; Eslam, Khattab et al. 2011)は、イミノ糖のインシュリン感受性向上効果は、C型肝炎ウイルスの複製にとって有利となる肝細胞に潜在する代謝異常に拮抗できるイミノ糖薬剤によって、抗ウイルス治療が可能であることを示唆するものである。
全脂肪酸組成における必須多価不飽和脂肪酸成分にHCV感染が及ぼす影響
哺乳細胞は、必須脂肪酸であるリノレン酸及びαリノレン酸を生合成することができない。また、上述の通り、哺乳細胞は、これらの必須脂肪酸の深刻な欠乏状態にある。従って、感染状態においてアラキドン酸やドコサヘキサエン酸等の高度の多価不飽和ω−6及びω−3脂肪酸の存在量が大きく上昇していたという発見は、驚くべきものである。本発明はこの作用機序によって限定解釈されるべきではないが、感染状態においてこれら高度の多価不飽和脂肪酸の相対的な存在量が上昇したことは、細胞内で脂肪酸を生成する新規脂質生成がウイルス感染によって抑制され、その結果これらの脂肪酸が希釈されなかったことを単純に反映したものであると考えられる。
哺乳細胞は、必須脂肪酸であるリノレン酸及びαリノレン酸を生合成することができない。また、上述の通り、哺乳細胞は、これらの必須脂肪酸の深刻な欠乏状態にある。従って、感染状態においてアラキドン酸やドコサヘキサエン酸等の高度の多価不飽和ω−6及びω−3脂肪酸の存在量が大きく上昇していたという発見は、驚くべきものである。本発明はこの作用機序によって限定解釈されるべきではないが、感染状態においてこれら高度の多価不飽和脂肪酸の相対的な存在量が上昇したことは、細胞内で脂肪酸を生成する新規脂質生成がウイルス感染によって抑制され、その結果これらの脂肪酸が希釈されなかったことを単純に反映したものであると考えられる。
遊離状態のドコサヘキサエン酸等の多価不飽和脂肪酸(PUFA)が、HCVの複製及び感染システムを阻害する抗ウイルス効果を有する(Leu, Lin et al. 2004; Kapadia and Chisari 2005; Miyoshi, Moriya et al. 2011)ことを鑑みると、HCV感染細胞がPUFAを高含量で含むことは更に驚くべきことである。本発明はこの作用機序によって限定解釈されるべきではないが、感染状態においてコレステロールエステル及びトリグリセリド中のω−3脂肪酸及びω−6脂肪酸のPUFA含有量が高い(後述)のは、HCVが、これら脂肪酸のウイルス複製抑制作用が阻害される脂肪滴にこれらの脂肪酸を取り込む傾向にあることを反映するものであると考えられる。
感染状態において観察された、細胞内の多価不飽和ω−3及びω−6脂肪酸量のこの驚くべき高さは、これらの脂肪酸の高い血漿中量が、HCV感染の度合、又はHCV感染が肝臓の代謝機能に及ぼす影響の定量的な指標となり得ることを示唆すると考えられる。しかし、これらの必須脂肪酸(EFA)は一般的な食品成分(肉類に多い(ω−6)、又は魚類に多い(ω−3))であるので、血漿中の全脂肪酸組成におけるこれらの脂肪酸の存在量をバイオマーカーに利用する方法は、食生活の変化に影響を受けてしまう可能性がある。従って、この食生活が全脂肪酸組成に及ぼす影響を鑑みると、より精密な分析方法が求められる。
各脂質クラス(lipid class)における脂肪酸組成
コレステロールエステル: 感染状態及び非感染状態において、コレステロールエステル中の最も一般的な脂肪酸を測定した。感染によって、コレステロールエステルの脂肪酸組成は大きく変化しており(図6)、必須ω−3及びω−6脂肪酸(20:4、22:6及び22:5)が5〜14倍増加し、EFA形態に変換されない一価不飽和脂肪酸(16:1及び18:1)が減少していた。つまり、コレステロールエステルにおける変化は、HCV感染による全脂肪酸組成の変化を反映しており、従って、培養肝がん細胞の全脂肪酸組成に大きく寄与するものである。全脂肪酸組成とは異なり、イミノ糖で処理しても、感染状態及び非感染状態の両方において、コレステロールエステルの脂肪酸組成はあまり変化しなかったが、一方で、コレステロールエステルの脂肪酸組成において、ミード酸(通常コレステロールエステルの主要成分としては検出されない)は測定されなかった。超低比重リポタンパク質(VLDL)の直接前駆体であるコレステロールエステルは脂肪滴の主要成分であること、及び、VLDLはHCVリポウイルス粒子のリポタンパク質成分であることから、EFA種で富化されたコレステロールエステル量の増加は、C型肝炎細胞の感染に関する有用なバイオマーカーとして、又はC型肝炎ウイルスが感染患者の肝細胞の代謝に及ぼす影響を分析するのに、有用である。
コレステロールエステル: 感染状態及び非感染状態において、コレステロールエステル中の最も一般的な脂肪酸を測定した。感染によって、コレステロールエステルの脂肪酸組成は大きく変化しており(図6)、必須ω−3及びω−6脂肪酸(20:4、22:6及び22:5)が5〜14倍増加し、EFA形態に変換されない一価不飽和脂肪酸(16:1及び18:1)が減少していた。つまり、コレステロールエステルにおける変化は、HCV感染による全脂肪酸組成の変化を反映しており、従って、培養肝がん細胞の全脂肪酸組成に大きく寄与するものである。全脂肪酸組成とは異なり、イミノ糖で処理しても、感染状態及び非感染状態の両方において、コレステロールエステルの脂肪酸組成はあまり変化しなかったが、一方で、コレステロールエステルの脂肪酸組成において、ミード酸(通常コレステロールエステルの主要成分としては検出されない)は測定されなかった。超低比重リポタンパク質(VLDL)の直接前駆体であるコレステロールエステルは脂肪滴の主要成分であること、及び、VLDLはHCVリポウイルス粒子のリポタンパク質成分であることから、EFA種で富化されたコレステロールエステル量の増加は、C型肝炎細胞の感染に関する有用なバイオマーカーとして、又はC型肝炎ウイルスが感染患者の肝細胞の代謝に及ぼす影響を分析するのに、有用である。
トリグリセリド: トリグリセリドは、脂肪滴の主要成分であり、分泌されたVLDL及びリポウイルス粒子の核を(コレステロールエステルと共に)形成するものである。本明細書において本発明者らが述べた、血中のVLDL/リポウイルス脂質組成が肝細胞の代謝にHCV感染が及ぼす影響に対する感度の高い指標となり得るという理論を鑑みれば、トリグリセリドは特に注目に値する。分子当たり1個だけ脂肪アシル鎖が含まれるコレステロールエステルとは異なり、トリグリセリドには3個の脂肪アシル鎖が含まるものである。そして、合成酵素の基質選択性、及び細胞内の利用可能な遊離脂肪酸前駆体量を反映して、これら3つは、いずれかの脂肪アシル鎖が他と同様のものではない傾向にある(Berry 2009)。トリグリセリド生合成のこういった特徴は、脂肪アシル鎖の異性体組成の多様性に自由度を与え、他の脂質に比べてその多様性を顕著に高めている。図7は、検出された種々のトリグリセリドの百分率組成、及びHCV感染及びイミノ糖処理がこの組成に及ぼす影響を示すものである。
注目すべきことに、全てのトリグリセリドの1/4から1/3を占める、最も豊富に存在するトリグリセリドであって、パルミトレイン酸(16:1)を含むトリグリセリドである「C52:2−C16:1」の脂質組成における存在量には、HCVの感染による変化は検出されなかった。しかし、このグリセリドより存在量の少ない数種のトリグリセリドに、際立った量の変化が検出された。9種のトリグリセリドの存在量が半分より少なくなり、6種のトリグリセリドの存在量は2倍を超えて上昇した。以下に記すトリグリセリドの存在量が、HCV感染によって最も大きく上昇した。その上昇は感染前の15倍を超えるものであった。
C54:5−C18:0
C54:6−C18:1
C56:5−C20:4
C56:7−C22:6
C54:6−C18:1
C56:5−C20:4
C56:7−C22:6
注目すべきことに、トリグリセリドC54:6−C18:1の量は、感染によって96倍も上昇したが、上昇後でも、感染状態におけるトリグリセリド組成中1.7%を占めるに過ぎない。以上のトリグリセリド量の変化は、ルーチンの臨床診断テストにおける従来の血中トリグリセリドの検査では明らかにされていなかった。なぜならば、従来のテストでは、トリグリセリド総量を測定するのみで、各トリグリセリドの脂肪酸組成や分子種まで分析するものではなかったからである。同様に注目すべきことに、二重結合を非常に多く含み、且つ必須脂肪酸を含むトリグリセリドであるC56:5−C20:4(アラキドン酸(20:4)を含む)及びC56:7−C22−6(ドコサヘキサエン酸を含む)の量が、感染状態において顕著に上昇していた(16倍超)。しかし、これらのトリグリセリドの上昇後の量は、細胞全トリグリセリド量に対しては依然微量のままであった(図8)。
完全に飽和化されたトリグリセリドであるC44:0−C16:0の存在量は、感染状態において1/5にまで減少していたので、血中トリグリセリド又はVLDLに含まれるこのトリグリセリド存在量の減少は、肝臓の脂質代謝にC型肝炎ウイルスが及ぼす影響を決定するために有用となり得る。イミノ糖は、この飽和トリグリセリド存在量を非感染状態において上昇させ、感染状態においては減少させる傾向を示したが、これら以外には、トリグリセリドの脂肪酸組成に体系的な影響を及ぼさなかった。イミノ糖が特定のトリグリセリドに限って及ぼすこの軽微な影響には、診断及び予測上の重要性はないと考えられる。
ホスファチジルコリン: エーテル結合を有するPCの場合(後述)と異なり、エステル結合を有するリン脂質PC、PE、PS及びPIは、感染によって、リゾ型PC等に大きく再構築された。ジエステル型PCの場合、感染によって一価不飽和PC32:1の量が減少した一方で、感染によって飽和PC32:0、飽和PC34:0及びPUFA富化PC(PC34:4及びPC38:5)の量が上昇していた(図9)。この分析では、全分子種に含まれる異性体に起因する曖昧さにより、ミード酸と他の多価不飽和脂肪酸とを明確に区別することが出来ない。しかし、感染状態において観察された多価不飽和脂肪アシルの形態のPCの増加は、上述の全脂肪酸組成及びコレステロールエステル組成の分析結果、すなわち感染状態において必須多価不飽和脂肪アシルの存在量が上昇するとともに膜リン脂質の形態に組み込まれたという驚くべき結果と、整合するものである。
エーテル型リン脂質形態のPC(つまり、ペルオキシソーム内で合成される「プラズマローゲン」型PC)の脂肪酸組成は、感染の影響を受けないことが観察された(図10)。ER内で合成されるエステル結合型リン脂質の選択的再構成は、HCVが、リン脂質の再構成に対して部分特異的に影響を及ぼすことで、ペルオキシソームではなくERに影響を及ぼすことを示すものである。このことは、HCVが、「membranous web」と呼ばれる膜構造(前述)の生成、脂肪滴へのウイルスコアタンパク質の組み込み(ERも密接に関与する)、及びERからのリポウイルス粒子としての出芽に関して、ERに密接に依存していることと整合するものである。
リゾ型PCの分析(図11)によって、上述の異性体に起因する曖昧さを解消することができる。ジエステル結合型PCから合成され、且つ1個の脂肪アシル鎖のみを含むリゾ型PCの場合、感染状態においては、不飽和パルミチン酸(16:1)量が減少し、それに伴って16:0のパルミチン酸が増加したことが観察された。この観察結果は、上述のΔ9不飽和指数の観察結果と整合するものであり、更に、全脂肪酸組成分析によって観察された優勢的な変化が、蓄積脂質及び膜脂質における変化を反映していることを示すものである。リゾ型PCと同様に、20:4(アラキドン酸)及び22:6の明らかな増加も観察された。この観察結果は、感染状態においてより多量であるこれらの必須脂肪酸が膜リン脂質に組み込まれる経路が存在することを示すものである。
ホスファチジルエタノールアミン: ジエステル型PEを分析したところ(図12)、ミード酸(C20:3、ω−9)が明らかに検出された。全脂肪酸組成については、感染によってミード酸量が1/20未満にまで減少し、一方で、イミノ糖で処理したところ、イミノ糖の種類によって異なるものの、ミード酸量に2倍迄の増加が観察された(ただし、この増加は非感染状態のみで観察された)。同様に、感染によって、パルミトレイン酸(16:1、ω−7及びω−9)量の顕著な減少、及び必須ω−3及びω−6脂肪酸(20:3、ω−3;20:4、ω−6;20:5、ω−3;22:6、ω−3;22:5、ω−3、及び22:4、ω−6)量の顕著な上昇が観察された。これらのPEの脂肪アシル組成分析結果は、上述の全脂肪酸組成、コレステロールエステル組成及びジエステル型PC組成の結果を、強く支持するものである。しかし、ジエステル型PC組成と異なり、PEの場合は、(一価不飽和型と比べて)飽和型の存在量が均衡を保つよう上昇していなかった。よって、PEの場合、HCVの感染は、(細胞分裂やERからのウイルス出芽に必要とされる)膜への融合及び分裂特性に対し大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。
ホスファチジルセリン: ジエステル型PSの場合、HCV感染によって、18:0及びミード酸(20:3、ω−9)を含んでいると思われるPS38:3種の量が1/2未満にまで減少した。よってPSは他の脂質クラスに比べて、全脂肪酸組成において優勢的だった諸変化に対する可塑性が低かったことが示された(図13)。この相対的に低い可塑性は、PSの比較的低い代謝回転率を反映したものだと考えられた。更には、40:6種の量が、感染によって減少していた。しかし、このレベルの分析では、このPS種が、1個の22:6とC18:0との組み合わせ、又はC20:3同士の組み合わせのどちらであるかは明らかにはできない。
ホスファチジルイノシトール: 4種のみが存在するジエステル型PIは、HCV感染によって、その脂肪酸組成が大きく変化した(図14)。感染によって、PI38:3量が1/6に減少し、一方で、PI(PI36:4、38:4及び38:5)の残留PUFA富化種の量がそれぞれ約2倍に上昇した。PIにおける組成のうち一番大きな変化は、感染によって引き起こされたものであり(イミノ糖で処理した場合とは異なる)、PI38:3のPI38:4への実質的な総置換であった。PI38:3の構造は18:0/20:3と予想されるため、感染による変化は、感染状態におけるミード酸(20:3、ω−9)量の減少と整合するものである。ミード酸は感染状態において最も多量に存在する脂肪酸であるアラキドン酸(20:4、ω−6)と置換された。つまり、18:0/20:3(ステアリン酸/ミード酸)から、18:0/20:4(ステアリン酸/アラキドン酸)に変化した。また、感染状態においてのみ、イミノ糖の存在下で、PI38:3種の量が上昇する傾向が観察され、この傾向はイミノ糖による全脂肪酸組成におけるミード酸量の大きな上昇を若干反映したものであったといえる。PIは細胞内シグナル伝達機構に深く関与している。よって、(感染又はイミノ糖処理によってもたらされる)PIの脂肪酸組成の変化は、PIを介した細胞内シグナル伝達(例えば、インシュリン感受性)に影響を及ぼすものと考えられる。ここで、アラキドン酸(ω−6)は、インシュリンによるPI3キナーゼ活性化を阻害し、そのP38MAPキナーゼを介したグルコース6リン酸脱水素酵素の誘導を阻害する(Talukdar, Szeszel-Fedorowicz et al. 2005)。また、感染によるPIの脂肪酸組成の変化は、PI3キナーゼに対する基質としてのPIの挙動を変化させると考えられる。加えて、この感染によるPIにおける変化はC型肝炎ウイルス感染において大きな病理学的意義を持つと確信させる、(インシュリン耐性とは別の)理由がある。その理由とは、PIはエイコサノイド合成に使用されるアラキドン酸の主要供給源であるため、感染によってPI中のアラキドン酸量が3倍に上昇すると、これら生物活性成分の生合成量が上昇し、それによって宿主細胞のウイルスに対する炎症性反応を向上させると考えられるというものである。
バイオマーカーの特定におけるリン脂質脂肪酸組成の意義
肝臓は、HCVビリオンを、VLDL粒子を伴うHCVビリオンを含むリポウイルス粒子(前述)の一部として分泌する。本発明はこの作用機序によって限定解釈されるべきものではないが、本発明者らは、VLDL粒子の脂質表面はPC及びPEが優勢的に存在するので、細胞内におけるPC及びPEの脂肪酸組成にHCVウイルスが及ぼす影響は、HCV感染患者の血中VLDLの脂肪酸組成の変化に現れるという仮説を立てた。PCの場合、感染による脂肪酸組成変化は、ジエステル型PCの脂肪酸組成のみに観察された。よって、バイオマーカーの特定という観点からは、VLDLに含まれるジエステル型PCの脂肪酸組成変化が最も注目されるべきものであること、そして、エーテル型PCの脂肪酸組成が対照群(コントロール)として有用であると考えられる。この点に関して、まず注意すべきは、感染によってPC32:1量は減少し、一方で飽和PC32:0及び34:0、並びにPUFA富化PC(PC34:4及びPC38:5)量は上昇することが観察されているという点である。よって、ジエステル型PC32:1量の減少及び上記ジエステル型PC量の上昇(つまりPC32:0、34:0、34:4及び38:5量の上昇)は、肝細胞のリン脂質代謝に対しHCVが影響を及ぼしたことを示すものであると考えられる。
PEの場合は、非感染状態におけるミード酸量の上昇が観察されており、原発性肝細胞がんに起因する血中VLDL粒子中のミード酸もまた上昇していると考えられるので、血中VLDLのミード酸含有量は、原発性肝細胞がんのバイオマーカーとして有用であると考えられる。更に、感染によってパルミトレイン酸(16:1、ω−7及びω−9)量が大きく減少し、必須ω−3及びω−6脂肪酸(20:3、ω−3;20:4、ω−6;20:5、ω−3;22:6、ω−3、22:5、ω−3;及び22:4、ω−6)量が大きく上昇することが観察されおり、従って、感染状態に特徴的な血中VLDLにおける後者の脂肪酸群の量変化は、HCV感染が肝細胞に及ぼす影響の指標となり得、またバイオマーカーとして有用であると考えられる。
VLDLに少量含まれるリン脂質成分であるPI及びPSのHCV感染のバイオマーカーとしての有用性は、比較的低いと考えられる。しかし、VLDL中のPIに含まれるミード酸量の減少、又はPI38:3量の減少については、HCV感染の影響の有用な指標となり得ると考えられる。また、VLDL中のPI及びPS(これらは通常、細胞膜及びERによって細胞内に形成された膜内に取り込まれる)の量の上昇は、HCV感染が起こったことを意味するものであると考えられる。従って、HCV感染状態で起こる肝細胞のアポトーシスは、膜非対称性を増大し、その結果として、通常VLDLから多量に排除されるPI及びPS等の脂質量を上昇させ、VLDLのリン脂質単層表面に存在するPI及びPS存在量を大きく上昇させる。
感染細胞及び非感染細胞、並びに処理済み細胞及び非処理細胞における、スフィンゴ糖脂質の存在量及び脂肪酸組成
感染及び非感染細胞を、抗ウイルス活性を奏する濃度のイミノ糖で処理すると、「グリコシルセラミド」(ここで、現在の質量分光分析では、グルコシル型とガラクトシル型は区別されない)の細胞内濃度が、グルコシルセラミド合成酵素の阻害によって、大幅に減少する(図15)。この影響は、グルコシルセラミドの産物であることが(質量分光分析ではグルコースかガラクトースかが明白にならない「グリコシルセラミド」とは異なり)明白なラクトシルセラミドにおいて、より顕著に現れる。以上の結果は、これらの化合物が既にグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤として知られていたことから、予測可能なものであった。
感染及び非感染細胞を、抗ウイルス活性を奏する濃度のイミノ糖で処理すると、「グリコシルセラミド」(ここで、現在の質量分光分析では、グルコシル型とガラクトシル型は区別されない)の細胞内濃度が、グルコシルセラミド合成酵素の阻害によって、大幅に減少する(図15)。この影響は、グルコシルセラミドの産物であることが(質量分光分析ではグルコースかガラクトースかが明白にならない「グリコシルセラミド」とは異なり)明白なラクトシルセラミドにおいて、より顕著に現れる。以上の結果は、これらの化合物が既にグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤として知られていたことから、予測可能なものであった。
しかし、予想外なことに、イミノ糖処理によって、グルコシルセラミドの脂肪酸組成が変化したことが観察された。一方で、(上述の、感染による主要及び微量細胞脂質の大幅な再構成及びΔ9総不飽和指数の変化を鑑みると)驚くべきことに、感染によっても、GlcCerの脂肪酸組成は変化しなかった。それに対し、イミノ糖処理によって、GlcCerの鎖長延長及び不飽和化が起こった(これらの影響のうち、後者がより顕著なものであった)。これらの現象(つまり不飽和化及び鎖長延長)は、感染状態でも非感染状態でも同様に観察された。図16は、グルコシルセラミド不飽和化反応の、これら薬剤に対する反応性を示すものである。図17は、これらの変化が、スフィンゴ脂質(GlcCer及びLacCer)に特有のもの、つまりPC及びPEでは観察されなかったことを示すものである。
GlcCerの脂肪酸組成の変化(感染状態及び非感染状態で同様に観察されたイミノ糖による不飽和度の上昇)は、上述の、感染状態で観察された不飽和化酵素活性の低下及びそれに基づく仮説(前述)といくつかの点で整合しないものの、上記観察結果によれば、イミノ糖によるGlcCerの不飽和化は、非感染状態より感染状態の方が軽度であった。これらの変化は、好都合なことに、GlcCerの「不飽和指数」、つまりC24:1/C24:0の存在量比(つまり、ネルボン酸/リグノセリン酸脂肪アシル鎖のモル比)に反映される(図18)。GlcCerの不飽和指数及びLacCerの不飽和指数(より低い不飽和指数)はイミノ糖によって上昇したことが観察された。一方で、関連化合物であるスフィンゴ脂質セラミド(GlcCerの直接前駆体)の不飽和指数は変化しなかった(図示せず)。GlcCer合成酵素の阻害剤であるイミノ糖の存在下における不飽和GlcCerの蓄積は、LacCer合成酵素(ガラクトース転移酵素I)又はより複雑な飽和型グリコスフィンゴ脂質合成経路のより下流の酵素による不飽和化の方が、感染状態において強く抑制されたΔ9不飽和化酵素の活性(この抑制は、前述の細胞内全脂肪酸組成より明らかである)を介した不飽和化より優勢であったためと考えることができる。又は、これらの変化は不飽和鎖をより多く含むガングリオシド合成につながる、つまり、LacCer合成酵素のGlcCer前駆体プールの大半は不飽和型であると考えること、又は、これらの変化は、後述するように、不飽和型GlcCerによるLacCer合成の競合的阻害につながると考えることもできる。
GlcCer及びLacCerはガングリオシドの主要前駆体であること(Butters, Dwek et al. 2005; Fuller 2010)、及びガングリオシドは脂質ラフトの重要な成分(スフィンゴミエリン及びコレステロールと共に)であること(Quinn 2010)から、本発明者らは、細胞のGlcCer存在量の減少は、細胞膜脂質ラフトの存在量及び/又は大きさの減少、又は細胞脂質ラフトの機能を変化させるという仮説を立てた。更に、HCVの複製サイクルのいくつかの段階は脂質ラフトに大きく依存することから(Aizaki, Lee et al. 2004; Matto, Rice et al. 2004; Aizaki, Morikawa et al. 2008; Weng, Hirata et al. 2010)、イミノ糖による脂質ラフトの存在量の減少又は機能変化は、イミノ糖の抗HCV効果の原因であると考えられた。加えて、グルコシルセラミド合成酵素の阻害剤であるイミノ糖は、GlcCerの存在量の減少に加え、驚くべきことに、GlcCerの不飽和度の上昇も引き起こしたことが観察された。この上昇は脂質ラフトの量及び性質に影響を及ぼすものである、つまり、不飽和型ガングリオシドの脂質ラフトへの取り込み(脂質ラフトは「飽和型の」ミクロドメインであるという特徴を有する)によって、脂質ラフトの構造及び機能を変化させるものと考えられる。ガングリオシドの病的蓄積によって、コレステロールが細胞膜に取り込まれる(この現象は、ゴーシェ病等の、ガングリオシドを蓄積する疾患において観察される)ので、イミノ糖は、コレステロールの局在化又は輸送に影響を及ぼすと考えられる。例えば、脂質ラフトにおいてガングリオシド成分が枯渇すると、脂質ラフトからコレステロールが遊離され、細胞膜内の「遊離」コレステロール濃度が高くなると考えられる。よって、イミノ糖は、その脂質ラフトへ及ぼす直接的影響に加えて、GlcCerの脂肪酸組成を変化させてコレステロールを膜脂質ラフトから遊離させ、それによって抗ウイルス効果を奏するものと考えられる。
コレステロールの脂質ラフトからの遊離は、「コレステロール過多」状態にあると細胞に誤解させ、遊離コレステロールに起因するコレステロール合成阻害を引き起こし、ウイルスの複製に必要なコレステロールを、ウイルスから奪う結果につながると考えられる。
スフィンゴ糖脂質の存在量及び不飽和指数のバイオマーカー用途の意義
上記から、グルコシルセラミドの存在量、並びに血中リポタンパク質中のグルコシルセラミド及びラクトシルセラミドの不飽和指数は、イミノ糖を用いた治療の抗HCV治療効果の指標となり得ると考えられる。同様に、これらの不飽和指数は、ゴーシェ病やニーマン・ピック病C型等の、遺伝性のライソゾーム病に対するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤による治療への反応性の指標ともなると考えられる。これまで、グルコシルセラミドのガングリオシド産物(つまり白血球表面のGM3)存在量はゴーシェ病に対する治療への反応性のバイオマーカーとして試験的に使用されてきたが、このような疾病に対するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤による治療に対する反応性のバイオマーカーとして、グルコシルセラミドの不飽和指数を使用することは、全く示唆されていなかった。同様に、全脂肪酸組成及びスフィンゴ脂質(具体的には、セラミド、スフィンゴミエリン及びセレブロシド)におけるネルボン酸(24:1)の存在量は、I型糖尿病のラット及びネズミ科モデルにおいて減少していた(Fox, Bewley et al. 2011)ことが知られているが、現在まで、グルコシルセラミドの不飽和指数が、II型糖尿病の疾患活動性、又はII型糖尿病に対するインシュリン抵抗性改善薬による治療への反応性に関するバイオマーカーとして使用可能であることは、全く示唆されていなかった。本発明者らは、メタボリックシンドローム及びII型糖尿病は、(高インシュリン血症に起因する)VLDL中のグルコシルセラミドの不飽和指数の上昇によって特徴づけられること、そしてインシュリン抵抗性改善薬(例えば特定のイミノ糖、ビグアニド及びチアゾリジンジオン)による治療によって、インシュリン感受性を改善(特に、インシュリンによって刺激されるグルコース取り込み量、及び肝臓におけるグルコース生成量の減少という観点からの改善)して高インシュリン血症を改善することで、この不飽和指数を正常値に戻すことができることを、ここに初めて示した。
上記から、グルコシルセラミドの存在量、並びに血中リポタンパク質中のグルコシルセラミド及びラクトシルセラミドの不飽和指数は、イミノ糖を用いた治療の抗HCV治療効果の指標となり得ると考えられる。同様に、これらの不飽和指数は、ゴーシェ病やニーマン・ピック病C型等の、遺伝性のライソゾーム病に対するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤による治療への反応性の指標ともなると考えられる。これまで、グルコシルセラミドのガングリオシド産物(つまり白血球表面のGM3)存在量はゴーシェ病に対する治療への反応性のバイオマーカーとして試験的に使用されてきたが、このような疾病に対するグルコシルセラミド合成酵素阻害剤による治療に対する反応性のバイオマーカーとして、グルコシルセラミドの不飽和指数を使用することは、全く示唆されていなかった。同様に、全脂肪酸組成及びスフィンゴ脂質(具体的には、セラミド、スフィンゴミエリン及びセレブロシド)におけるネルボン酸(24:1)の存在量は、I型糖尿病のラット及びネズミ科モデルにおいて減少していた(Fox, Bewley et al. 2011)ことが知られているが、現在まで、グルコシルセラミドの不飽和指数が、II型糖尿病の疾患活動性、又はII型糖尿病に対するインシュリン抵抗性改善薬による治療への反応性に関するバイオマーカーとして使用可能であることは、全く示唆されていなかった。本発明者らは、メタボリックシンドローム及びII型糖尿病は、(高インシュリン血症に起因する)VLDL中のグルコシルセラミドの不飽和指数の上昇によって特徴づけられること、そしてインシュリン抵抗性改善薬(例えば特定のイミノ糖、ビグアニド及びチアゾリジンジオン)による治療によって、インシュリン感受性を改善(特に、インシュリンによって刺激されるグルコース取り込み量、及び肝臓におけるグルコース生成量の減少という観点からの改善)して高インシュリン血症を改善することで、この不飽和指数を正常値に戻すことができることを、ここに初めて示した。
メタボリックシンドローム及びII型糖尿病が、HCV感染症に対するインターフェロン及びリバビリンの併用の治療反応性の負の予測因子である(Clement, Pascarella et al. 2009; Eslam, Khattab et al. 2011)ことを鑑みると、血中VLDLのGlcCer及び/又はLacCerの不飽和度は、インターフェロン及びリバビリンの併用への反応性が低いHCV感染体を特定するために使用可能であると考えられる。例えば、GlcCer又はLacCerの不飽和指数としての24:1/24:0比が異常に高いHCV感染患者(例えば未診断のメタボリックシンドロームによる高インシュリン血症を呈するHCV感染患者)は、インターフェロン及びリバビリンの併用への反応性が低く、新規承認薬を用いたより積極的な治療(その新規承認薬のみ、新規承認薬同士の併用、又は新規承認薬と、インターフェロン及びリバビリンとの併用等)を必要とすると考えられる。同様に、このような患者は、グルコシルセラミド合成酵素阻害剤であるイミノ糖を用いて(肝臓を含む)体内組織のインシュリン感受性を改善し高インシュリン血症を改善するという治療への反応性が、他のHCV感染患者よりも低いと考えられる。反応性がより高い薬剤をC型肝炎患者が使用できるようにすることが患者の利益となり、治療コストも軽減される。
血中VLDLのトリグリセリド中のパルミトレイン酸の不飽和指数16:1/16:0比は、代謝疾患のマーカーとして使用可能であるといわれてきた(Peter, Cegan et al. 2009)。具体的には、この不飽和指数は代謝異常症候群において上昇する。しかし、このマーカー使用は、スフィンゴ糖脂質がインシュリンシグナル伝達に関与していることを示すものである、アダマンタン化合物であるAMP−DNJ/AMP−DNMに例示されるイミノ糖のインシュリン感受性改善作用によるインシュリン感受性に特に関連する、本発明で特定されたグルコシルセラミドの不飽和指数の利用価値の高さを予測させるものではない。更に、本明細書に記載される観察結果は、(グルコシルセラミドの不飽和指数とは異なり)16:1/16:0比が、感染細胞においてHCVの感染によって減少する(少なくとも、感染細胞の全脂肪酸組成において)傾向にあるため、HCV感染状態における代謝疾患のマーカーとしての有用性が限定的なものであることを示唆している。
診断テストの実施
血液は、数種の異なる形態のリポタンパク質を含むものであり、それらリポタンパク質のいくつかは、食品摂取に応じて徐々に動的に変化する。例えば脂肪分は、食事中最も濃度が高くなり、且つ食後急速に(6時間以内)消失する、カイロミクロンの形態で吸収される。カイロミクロンは食物脂肪を主に含み、加えてトリグリセリド、ジグリセリド、コレステロールエステル、遊離コレステロール、リン脂質及び遊離脂肪酸を含むものである。それに対し、VLDLは、肝臓由来産物であり、リン脂質に加えて、再構成され再内包されたトリグリセリド及びコレステロールエステルを含み、これらは全て、本発明者らによる仮説に基づけば、HCV感染によって影響を受けた細胞の脂質代謝に、影響を受ける。これまでに、HCV感染が肝細胞の代謝に及ぼす影響を分析するのに適しているといわれる様々な脂質バイオマーカーが特定されてきたが、そのうちのいくつかの血漿濃度を測定しても、カイロミクロン形態の食物由来脂質によって測定バックグラウンドが変化するため、測定値がその変化に影響を受けやすい。しかし、別のいくつかのバイオマーカー、例えば(感染によって96倍にまで増加する)C54:6−C18:1トリグリセリドは、絶食状態でも食後でも、非分画血漿中の量を測定するのであれば、バイオマーカーとして有用であると考えられる。また、ヒト血漿中の全脂肪酸組成に関する近年の研究によって、種々の脂肪酸の存在量は、狭い範囲内に収まるように制御されていることが報告されており(Lamaziere, Wolf et al. 2012)。よって、血漿中の全脂肪酸組成自体のバイオマーカーとしての有用性は限定的であると報告されているものの(Flowers 2009)、栄養状態で変動するバックグラウンドが、C型肝炎の脂質分子組成バイオマーカーに及ぼす影響は、HCV感染が代謝に及ぼす影響のバイオマーカーとしての使用を断念させるほどには大きなものではないと考えられる。しかし、血漿中の食物由来脂質の動的な変化が及ぼす影響を解消する方法は、少なくとも2つあると考えられる。
血液は、数種の異なる形態のリポタンパク質を含むものであり、それらリポタンパク質のいくつかは、食品摂取に応じて徐々に動的に変化する。例えば脂肪分は、食事中最も濃度が高くなり、且つ食後急速に(6時間以内)消失する、カイロミクロンの形態で吸収される。カイロミクロンは食物脂肪を主に含み、加えてトリグリセリド、ジグリセリド、コレステロールエステル、遊離コレステロール、リン脂質及び遊離脂肪酸を含むものである。それに対し、VLDLは、肝臓由来産物であり、リン脂質に加えて、再構成され再内包されたトリグリセリド及びコレステロールエステルを含み、これらは全て、本発明者らによる仮説に基づけば、HCV感染によって影響を受けた細胞の脂質代謝に、影響を受ける。これまでに、HCV感染が肝細胞の代謝に及ぼす影響を分析するのに適しているといわれる様々な脂質バイオマーカーが特定されてきたが、そのうちのいくつかの血漿濃度を測定しても、カイロミクロン形態の食物由来脂質によって測定バックグラウンドが変化するため、測定値がその変化に影響を受けやすい。しかし、別のいくつかのバイオマーカー、例えば(感染によって96倍にまで増加する)C54:6−C18:1トリグリセリドは、絶食状態でも食後でも、非分画血漿中の量を測定するのであれば、バイオマーカーとして有用であると考えられる。また、ヒト血漿中の全脂肪酸組成に関する近年の研究によって、種々の脂肪酸の存在量は、狭い範囲内に収まるように制御されていることが報告されており(Lamaziere, Wolf et al. 2012)。よって、血漿中の全脂肪酸組成自体のバイオマーカーとしての有用性は限定的であると報告されているものの(Flowers 2009)、栄養状態で変動するバックグラウンドが、C型肝炎の脂質分子組成バイオマーカーに及ぼす影響は、HCV感染が代謝に及ぼす影響のバイオマーカーとしての使用を断念させるほどには大きなものではないと考えられる。しかし、血漿中の食物由来脂質の動的な変化が及ぼす影響を解消する方法は、少なくとも2つあると考えられる。
絶食状態では、血中トリグリセリドは、主にリポタンパク質VLDLに貯留される(Flowers 2009; Peter, Cegan et al. 2009)。従って絶食状態では、血漿中トリグリセリドの組成は、VLDL中のトリグリセリド組成と同等であると考えられる。よって、絶食状態においては、少なくとも肝臓における代謝にHCV感染が及ぼす影響の指標として本明細書において特定されたトリグリセリド種の組成に関しては、その非分画血漿の分析結果が本明細書に記載するバイオマーカーとして適切に使用可能であると期待できる。
バックグラウンドの食物由来脂質が及ぼす影響に対する二つ目の解消方法は、密度勾配遠心法等の適切な分離操作やクロマトグラフ法によって、血液からVLDLを分離する方法である。(トリグリセリドの場合には)また、薄層クロマトグラフ法やHPLCによって、血漿中のトリグリセリドを単離精製することもできる。ヒト血漿からのVLDL及びトリグリセリド画分の単離は、例えばPeter et al. 2009に記載されている。
グルコシルセラミドの不飽和指数(24:1/24:0比)の測定に関しては、(肝臓由来の)VLDLも、上述の他のマーカー(例えば、特定のトリグリセリド種)のように、血中リポタンパク質として適切な分析対象となることを認識する必要がある。しかし、血管を循環するスフィンゴ脂質のうち、スフィンゴミエリンはグルコシルセラミドより多量に存在することが分かっている(Hammad, Pierce et al. 2010)。VLDL中のグルコシルセラミドの不飽和状態の測定に加えて、本発明者らによって、グルコシルセラミドの不飽和指数と同様の機序でイミノ糖の影響を受けることが見出されたスフィンゴミエリンの不飽和指数24:1/24:0比も測定することで、より高い有用性及び高感受性が達成されると考えられる。
材料及び方法
Huh7.5細胞及びHCV株Jc1の細胞培養: 肝がん細胞における複製可能HCVの細胞培養系の方法の要点はすでに知られている通りである(Pollock, Nichita et al. 2010)。Huh7.5細胞(Apath, LLC製)を、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、1×MEM及び10%FBSを含むDMEMで増殖させた。培養条件は、全て37℃及び5%CO2とした。イミノ糖による処理が細胞脂質組成に及ぼす影響を、HCVcc感染細胞及び非感染細胞の両方について調べた。HCV株Jc1(遺伝子型2a)をHuh7.5細胞に感染させるために、既知の感染価を有するウイルスストックを用いて、感染多重度(MOI)=0.02の条件で、当該ウイルスの存在下Huh7.5細胞を1時間培養した。一部の細胞しか感染させられず、感染細胞が「感染状態」として示すリピドミックな足跡が薄まってしまうことを防ぐため、約2週間培養して、ほぼ100%の細胞を感染させた。感染の有無は、HCVコアタンパク質の免疫蛍光法によって確認した。次いで、HCV感染細胞及び非感染細胞の両方を、イミノ糖の存在下又は非存在下で4日間培養し、培養後、トリプシン/EDTAを用いて回収し、氷冷PBSで3回洗浄し、トリパン青(trypan blue)染色によって細胞数を計数し、脂質組成分析に先立って、細胞ペレットをメタノール:アセトン(容積比1:1)に再懸濁した。各試料について、少量(液量)をブラッドフォードタンパク質分析(Bio-Rad)に供して、総タンパク質量を見積もった。
Huh7.5細胞及びHCV株Jc1の細胞培養: 肝がん細胞における複製可能HCVの細胞培養系の方法の要点はすでに知られている通りである(Pollock, Nichita et al. 2010)。Huh7.5細胞(Apath, LLC製)を、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、1×MEM及び10%FBSを含むDMEMで増殖させた。培養条件は、全て37℃及び5%CO2とした。イミノ糖による処理が細胞脂質組成に及ぼす影響を、HCVcc感染細胞及び非感染細胞の両方について調べた。HCV株Jc1(遺伝子型2a)をHuh7.5細胞に感染させるために、既知の感染価を有するウイルスストックを用いて、感染多重度(MOI)=0.02の条件で、当該ウイルスの存在下Huh7.5細胞を1時間培養した。一部の細胞しか感染させられず、感染細胞が「感染状態」として示すリピドミックな足跡が薄まってしまうことを防ぐため、約2週間培養して、ほぼ100%の細胞を感染させた。感染の有無は、HCVコアタンパク質の免疫蛍光法によって確認した。次いで、HCV感染細胞及び非感染細胞の両方を、イミノ糖の存在下又は非存在下で4日間培養し、培養後、トリプシン/EDTAを用いて回収し、氷冷PBSで3回洗浄し、トリパン青(trypan blue)染色によって細胞数を計数し、脂質組成分析に先立って、細胞ペレットをメタノール:アセトン(容積比1:1)に再懸濁した。各試料について、少量(液量)をブラッドフォードタンパク質分析(Bio-Rad)に供して、総タンパク質量を見積もった。
リピドミクス方法
全脂質の脂肪酸組成:GCMSによる全脂質中のFAの測定方法は、既に公開されている(Wolf 2008; Quinn, Rainteau et al. 2009)。簡潔に説明すると、以下のとおりである。まず、培養した肝がん細胞Huh7.5ペレットに、Bligh & Dyerによる方法に従ってクロロホルム抽出を行った(Bligh and Dyer 1959)。培養した肝がん細胞Huh7.5細胞ペレットからクロロホルムで抽出した脂質抽出物に、内部標準物質としてヘプタデカン酸を添加した。次いで、この溶媒抽出物を真空内で乾燥させ、乾燥させた脂質フィルムを、不活性窒素/アルゴン雰囲気下、抗酸化剤としてブチル化ヒドロキシトルエンを加え、メタノール硫酸(18N、容積百分率2%)で1時間、70℃で処理して、脂質のメチル基転移反応を行った。このとき、多価不飽和脂肪酸の過酸化反応を最小限に抑えるため、テフロンで密封したガラス製ディスポーザブルチューブを用いた。冷却後、水(容積比1/2となる量の水)を加え、FAメチルエステル(FAME)をヘキサン内に抽出した。ヘキサン抽出物を窒素ガス中で濃縮し、濃縮物を、200μlのガラス製容器が嵌め込み装着された自動サンプリング装置用バイアル(Agilent 5975 ; 91940 Les Ulis,フランス)に移した。1μlずつ、スプリットレスモードのGCMS装置(Agilent 5975; 91940 Les Ulis,フランス)に注入した。不飽和FAME異性体(ω−2重結合位置がn3、n6、n7、n9)を、ポリエチレングリコールが極性結合したキャピラリーカラム上に分離した(Omegawax; Sigma-Aldrich, L'Isle d'Abeau Chesnes 38297 Saint-Quentin Fallavier,フランス)。次いで、付加物(FAME+NH4 +)を、試薬ガスとしてアンモニアを用い(≒10−4トール(Torr)、ソース温度(source temperature)≒100℃)化学イオン化モードで分析した。内部標準物質(ヘプタデカン酸)に基づいて標準化し、Ponderal calibration mixture(Mix-37; Supelco-Sigma-Aldrich L'Isle d'Abeau Chesnes 38297 Saint-Quentin Fallavier,フランス)を用いて応答係数を較正した後のピーク面積を積分法で求めて、定量を行った。
全脂質の脂肪酸組成:GCMSによる全脂質中のFAの測定方法は、既に公開されている(Wolf 2008; Quinn, Rainteau et al. 2009)。簡潔に説明すると、以下のとおりである。まず、培養した肝がん細胞Huh7.5ペレットに、Bligh & Dyerによる方法に従ってクロロホルム抽出を行った(Bligh and Dyer 1959)。培養した肝がん細胞Huh7.5細胞ペレットからクロロホルムで抽出した脂質抽出物に、内部標準物質としてヘプタデカン酸を添加した。次いで、この溶媒抽出物を真空内で乾燥させ、乾燥させた脂質フィルムを、不活性窒素/アルゴン雰囲気下、抗酸化剤としてブチル化ヒドロキシトルエンを加え、メタノール硫酸(18N、容積百分率2%)で1時間、70℃で処理して、脂質のメチル基転移反応を行った。このとき、多価不飽和脂肪酸の過酸化反応を最小限に抑えるため、テフロンで密封したガラス製ディスポーザブルチューブを用いた。冷却後、水(容積比1/2となる量の水)を加え、FAメチルエステル(FAME)をヘキサン内に抽出した。ヘキサン抽出物を窒素ガス中で濃縮し、濃縮物を、200μlのガラス製容器が嵌め込み装着された自動サンプリング装置用バイアル(Agilent 5975 ; 91940 Les Ulis,フランス)に移した。1μlずつ、スプリットレスモードのGCMS装置(Agilent 5975; 91940 Les Ulis,フランス)に注入した。不飽和FAME異性体(ω−2重結合位置がn3、n6、n7、n9)を、ポリエチレングリコールが極性結合したキャピラリーカラム上に分離した(Omegawax; Sigma-Aldrich, L'Isle d'Abeau Chesnes 38297 Saint-Quentin Fallavier,フランス)。次いで、付加物(FAME+NH4 +)を、試薬ガスとしてアンモニアを用い(≒10−4トール(Torr)、ソース温度(source temperature)≒100℃)化学イオン化モードで分析した。内部標準物質(ヘプタデカン酸)に基づいて標準化し、Ponderal calibration mixture(Mix-37; Supelco-Sigma-Aldrich L'Isle d'Abeau Chesnes 38297 Saint-Quentin Fallavier,フランス)を用いて応答係数を較正した後のピーク面積を積分法で求めて、定量を行った。
全コレステロール(GCMS): 全コレステロール(エステル化したもの及びエステル化していないものの合計)及びステロール代謝物を、トリメチルシリルエステル誘導体にし、文献(Chevy, Illien et al. 2002; Chevy, Humbert et al. 2005)の記載に従って、GCMSによって組成分析した。簡潔に説明すると、以下の通りである。まず、脂質のクロロホルム抽出物に、d7−クロロホルム(Avanti Polar Lipids, Lipid MS standards, Alabaster, AL 35007)、及び内部標準物質としてエピコプロスタノール(Sigma-Aldrich)を加えた。上述のFAME調製物に対するメチル基転移反応を行った後、ヘキサン抽出物を窒素気流中で乾燥させた。ステロールを0.5mlのBSTFA(N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド)及び1%TMCS(トリメチルクロロシラン)(Supelco Sigma-Aldrich 38297 Saint-Quentin-Fallavier Cedex)で、60℃で60分処理して、ステロールをシリル化した。次いで、過剰な試薬を蒸発させ、シリル化ステロールを、GCに注入するためにヘキサンに溶解させた。コレステロール及び代謝物を、200〜250℃に加熱された、ジフェニル−ジメチルポリシロキサンが中程度の極性で極性結合したキャピラリーカラム(RTX50; Restek France Lisses France 9109)上で分離した。正モードで、特徴的なフラグメントイオンに由来するピークの面積を積分法によって求めて、検出、及びPonderal校正混合物に対する相対量を得た(電子衝突エネルギーは70eVに設定した)。
LCMS2によるリピドミクス測定: LCMS2法は、既に方法に関する総説に記載されている((Ivanova, Milne et al. 2007; Myers, Ivanova et al. 2011)。簡潔に説明すると、以下の通りである。まず、リン脂質のクロロホルム抽出物を、Huh7.5細胞ペレットから調製し、内部脂質標準物質の混合物(Avanti Polar Lipids, Lipid MAPS MS standards, Alabaster, AL 35007)を抽出物に加えた。各クラスの脂質をHPLC(Agilent 1200 Series)を用いて、ポリビニルアルコール修飾型シリカカラム(PVASil, YMC, ID 4mm, length 250mm, Interchim, Montlucon 03100,フランス)上で分離した。極性の低い脂質(トリグリセリド、ジグリセリド、コレステロールエステル、セラミド、グルコシルセラミド及びラクトシルセラミド)は、ヘキサン/イソプロパノール/10mM酢酸アンモニウム水溶液(容積比40/58/2)によって、5〜15分の画分に溶出された。それらに続いて、リン脂質が、ヘキサン/イソプロパノール/10mM酢酸アンモニウム水溶液(容積比40/50/10)によって、より極性の高い15〜60分の画分に溶出された。リン脂質の溶出順は以下の通りである:ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、リゾホスファチジルコリン。溶出された脂質を、分光計のエレクトロスプレーインターフェース(TurboIon, Framingham, MA 01701, USA)へと流し、ポジティブモードで脂質をイオン化し、M+NH4 +及びM+H+を検出した。ソースを「衝突誘起解離」モード(又は「前駆体」モード)で運転している三連四重極型質量分析計(API3000, ABSciex, Toronto,カナダ)に連結して、上記順次溶出された脂質クラスに特徴的なフラグメントイオンを監視した。特徴的なフラグメントイオンの由来である前駆体分子種は、ソフトウェアLIMSA(Haimi, Chaithanya et al. 2009)を用いて、培養肝がん細胞用に調製されたライブラリと照合して同定した。脂質の分子種が同定されたので、多重反応モニタリング(MRM)による定量のために、イオンの組み合わせ(前駆体/産物イオン)のリストを作成した。続いて、対応するMRMピークに対し時間積分を行った。そして、脂質量を、応答係数が各脂質クラスの全ての分子種で等しいと仮定して、各脂質クラスの適切な標準物質に対する相対量として得た。
統計解析:脂質及び脂肪酸組成を統計的に比較するため、ソフトウェアXLStat(登録商標)(version 2011. 2; Addinsoft,フランス)を用いた。文献(Golmard 2012)に詳述される手法に基づいて、パラメトリック検定、多変量解析、相関検定及び回帰分析を行った。
Claims (57)
- C型肝炎感染症または前記感染症が原因の疾患もしくは前記感染症を併発する疾患を評価する方法であって、
(a)評価を必要とする対象から生体試料を入手すること、
(b)前記生体試料中の少なくとも一種のC型肝炎リピドミックバイオマーカーの水準を決定すること、および
(c)工程(b)の前記水準を前記C型肝炎リピドミックバイオマーカーの対照水準と比較し、前記対象のC型肝炎感染症または前記感染症が原因の疾患もしくは前記感染症を併発する疾患を評価すること、を含む方法。 - 前記生体試料が前記対象の血清検体または前記対象の血漿検体である請求項1に記載の方法。
- 前記対象がヒトである請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料中のミード酸の存在量を決定することであり、対照存在量値と比較して決定された存在量の方が低い場合は、前記対象はC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項1に記載の方法。
- 対照存在量値と比較して決定された存在量の方が高い場合は、前記対象は肝細胞がんを患っていることを意味する請求項4に記載の方法。
- 前記ミード酸の存在量を決定することが、生体試料の極低密度タンパク質画分中のミード酸の存在量を決定することを含む請求項4に記載の方法。
- 前記水準を決定することがパルミトレイン酸およびオレイン酸うちの少なくとも一種の存在量を決定することを含み、ここで決定された存在量の方が対照存在量値よりも低い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料中の非必須脂肪酸の不飽和水準を決定することを含み、ここで決定された不飽和水準の方が対照不飽和水準値よりも低い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料中の細胞中の(16:1,ω−7+16:1,ω−9)/16:0比を決定することを含み、前記バイオマーカー験体中の細胞中の(16:1,ω−7+16:1,ω−9)/16:0比が、対照(16:1,ω−7+16:1,ω−9)/16:0比よりも低い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項8に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料中の非必須脂肪酸の延長度を決定することを含み、前記生体試料中の延長度の値の方が対照延長度の値よりも高い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料中の多価不飽和ω−6脂肪酸およびω−3脂肪酸の少なくとも一種の存在量を決定することを含み、前記生体試料中の存在量値の方が対照存在量値よりも高い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することがアラキドン酸およびドコサヘキサン酸のうちの少なくとも一種の存在量を決定することを含み、前記生体試料中の存在量値の方が対照存在量値よりも高い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項11に記載の方法。
- 前記水準を決定することがコレステロールエステル組成中の一種以上の脂肪酸の濃度を決定することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記一種以上の脂肪酸が20:4脂肪酸、20:5脂肪酸、22:6脂肪酸および22:5脂肪酸から選ばれた少なくとも一種の多価不飽和必須ω−3脂肪酸およびω−6脂肪酸を含み,前記生体試料のコレステロールエステル組成中の多価不飽和脂肪酸の濃度値の方が多価不飽和脂肪酸の対照コレステロールエステル組成濃度よりも高い場合、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項13に記載の方法。
- 前記一種以上の脂肪酸が16:1脂肪酸および18:1脂肪酸から選択された少なくとも一種の一価不飽和脂肪酸を含み、前記生体試料の細胞中のコレステロールエステル組成における一価不飽和脂肪酸の濃度値が前記一価不飽和脂肪酸の対照コレステロールエステル組成濃度よりも減少する場合、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項13に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記バイオマーカー験体中の少なくとも一種のトリグリセリドの濃度を決定することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記少なくとも一種のトリグリセリドがC54:5−C18:0トリグリセリド、C54:6−C18:1トリグリセリド、C56:5−C20:4トリグリセリドおよびC56:7−C22:6トリグリセリドから選ばれ、前記少なくとも一種のトリグリセリドの決定された濃度の値の方が前記少なくとも一種のトリグリセリドの対照値よりも高い場合、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項16に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記試献体中のC54:6−C18:1トリグリセリドの濃度を決定することを含み、C54:6−C18:1トリグリセリドの決定された濃度の方がC54:6−C18:1トリグリセリドの対照値よりも高い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項16に記載の方法。
- 前記生体試料が前期対象の未分画血漿検体である請求項18に記載の方法。
- 前記生体試料を入手することが、前期対象が絶食状態のときに行われる請求項16に記載の方法。
- 前記水準を決定することが、生態試料中の少なくとも一種のエステル結合リン脂質の中から少なくとも一種の脂肪酸の濃度を決定することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料のジエステル型ホスファチジルコリン中の少なくとも一種の脂肪酸の濃度を決定することを含み、前記少なくとも一種の脂肪酸はPC(32:1)種、PC(32:0)種、PC(34:0)種、PC(34:4)種およびPC(34:5)種から選択され、PC(32:0)種、PC(34:0)種、PC(34:4)種およびPC(34:5)種の少なくとも一種の濃度値の方がこれらの種の対照値よりも高い場合、或いはPC(32:1)種の濃度値が対象値より低い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項21に記載の方法。
- 前記水準を決定することが、生態試料中の少なくとも一種のリゾホスファチジルコリンの中から少なくとも一種の脂肪酸の濃度を決定することを含み、前記脂肪酸が16:1、16:0種、20:4種および22:6種から選ばれ、対照値よりも前記16:0種、20:4種および22:6種のうちの少なくとも一種の濃度値の方が高いか、前記16:1の濃度値の方が低い場合は、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することが生体試料の細胞のジエステル型のホスファチジルエタノールアミン中の少なくとも一種の脂肪酸の濃度を決定することを含み、前記少なくとも一種の脂肪酸がa)ミード酸、b)16:1ω−7酸およびω−9酸から選ばれた少なくとも一種のパルミトレイン酸、およびc)20:3ω−3、20:4ω−6、20:5ω−3、22:6ω−3、22:5ω−3および22:4ω−6から選ばれた必須ω−3脂肪酸およびω−6脂肪酸のうちの少なくとも一種から選択され、ミード酸または前記少なくとも一種の必須ω−3酸またはω−6酸の決定された濃度値の方がそれらの対照値よりも高い場合、あるいは前記少なくとも一種のパルミトレイン酸の決定された濃度値の方がその対照値よりも低い場合、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項23に記載の方法。
- 前記水準を決定することが生体試料のジエステル型のホスファチジルセリン中の少なくとも一種の脂肪酸の濃度を決定することを含み、前記少なくとも一種の脂肪酸が38:3種および40:6種から選ばれ、前記38:3種および40:6種のうちの少なくとも一種の決定された濃度値の方がこれらの対照値よりも高い場合は前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項24に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料のジエステル型のホスファチジルイノシトール中の少なくとも一種の脂肪酸の濃度を決定することを含み、前記少なくとも一種の脂肪酸がPI(38:3)種、PI(36:4)種、PI(38:4)種およびPI(38:5)種から選ばれ、前記PI(38:3)種の決定された濃度の値の方がその対照値よりも高い場合、または少なくとも一種の前記PI(36:4)種、PI(38:4)種およびPI(38:5)種のうちの少なくとも一種の濃度値がそれらの対照値よりも低い場合、前記対象がC型肝炎感染症または前記感染症が原因もしくは前記感染症を併発する疾患にかかっていることを意味する請求項21に記載の方法。
- 前記水準を決定することが生体試料の極低密度リポタンパク質画分中のエステル結合ホスファチジルコリンおよびエステル結合ホスファチジルエタノールアミンのうちの少なくとも一種中の少なくとも一種の脂肪酸の濃度を決定することを含む請求項21に記載の方法。
- 生体試料の極低密度リポタンパク質画分を分離することをさらに含み、前記水準を決定することが前記生体試料の極低密度リポタンパク質画分中の少なくとも一種のC型肝炎リピドミックバイオマーカーの水準を決定することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記分離が密度勾配超遠心分離法またはクロマトグラフ法により行われる請求項26に記載の方法。
- 生体試料のトリグリセリド画分を分離することをさらに含み、前記水準を決定することが前記生体試料のトリグリセリド画分中の少なくとも一種のC型肝炎リピドミックバイオマーカーの水準を決定することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記水準を決定することがガスクロマトグラフ−質量分析法および液体クロマトグラフ−質量分析法のうちの少なくとも一種を用いて決定することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記方法がC型肝炎感染症の重症度を確認、監視又は評価する方法である、請求項1に記載の方法。
- 前記方法がC型肝炎感染症の進行又は退縮を評価する方法である、請求項1に記載の方法。
- 前記方法がC型肝炎感染症に関する薬剤の効果を決定する方法であり、該入手の前に前記対象に前記薬剤を投与することをさらに含み、前記対照水準が前記投与の前に入手された前記対象の生体試料中で決定される請求項1に記載の方法。
- 前記方法がC型肝炎感染症の治療に対する反応を評価する方法であり、前記入手の前に対象に治療を施すことをさらに含み、前記対照水準が前記治療の前に入手された前記対象の生体試料中で決定される請求項1に記載の方法。
- 治療反応性を評価する方法であって、
(a)評価を必要とする対象に薬剤を投与すること、
(b)前記対象から生体試料を入手すること、
(c)生体試料のグルコシルセラミド、ラクトシルセラミドおよびスフィンゴミエリンのうちの少なくとも一種の不飽和指数を決定すること、および
(d)前記不飽和指数の値を対照不飽和指数値と比較し前記薬剤に対する反応性を評価することを含み、決定された前記不飽和指数の値が対照値よりも高い場合に前記対象は前記薬剤に反応していることを意味する方法。 - 前記生体試料が前記対象の血清検体または前記対象の血漿検体である請求項36に記載の方法。
- 前記対象がヒトである請求項36に記載の方法。
- 前記生体試料の極低密度リポタンパク質画分を分離することをさらに含み、前記水準を決定することが前記生体試料の前記極低密度リポタンパク質画分における不飽和指数の水準を決定することを含む請求項36に記載の方法。
- 前記分離が密度勾配超遠心分離法またはクロマトグラフ法によって行われる請求項39に記載の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミドのうちの少なくとも一種の24:1/24:0比を決定することを含む請求項36に記載の方法。
- 前記決定が前記生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミド両方の不飽和指数を決定することを含む請求項36に記載の方法。
- 前記生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミドの濃度を決定することをさらに含む請求項36に記載の方法。
- 前記対象がC型肝炎感染症および遺伝性リソソーム蓄積症のうちの少なくとも一種の症状を患っている請求項36に記載の方法。
- 前記対象がゴーシェ病またはニーマン・ピック病C型を患っている請求項44に記載の方法。
- 前記薬剤がイミノ糖を含む請求項44に記載の方法。
- 前記イミノ糖がN−置換デオキシノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩、N−置換デオキシガラクトノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩、およびN−置換Me−デオキシガラクトノジリマイシンおよびそれらの医薬的に許容できる塩から選択される請求項46に記載の方法。
- 前記イミノ糖がN−ブチルデオキシノジリマイシンおよびその医薬的に許容できる塩、メトキシノニル−デオキシノジリマイシンおよびその医薬的に許容できる塩、N−(5−アダマンタン−1−イル−メトキシペンチル)−DNJおよびその医薬的に許容できる塩、N−ブチル=デオキシガラクトノジリマイシンおよびその医薬的に許容できる塩、N−(7−オキサ−ノニル)−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトールおよびその医薬的に許容できる塩、およびN−(N−{4’−アジド−2’−ニトロフェニル}−6−アミノヘキシル)デオキシノジリマイシンまたは医薬的に許容できるその塩から選ばれる請求項47に記載の方法。
- 前記対象が2型糖尿病を患っており、前記薬剤がインシュリン感作物質である請求項36の方法。
- 前記インシュリン感作物質がイミノ糖、ビグアニドおよびチアゾリジンジオンから選ばれる請求項49に記載の方法。
- インターフェロンおよびリバビリンのうちの少なくとも一種を含むC型肝炎治療に対する反応が見込めないC型肝炎患者を特定する方法であって、
(a)C型肝炎感染症を患っている対象から生体試料を入手すること、
(b)前記生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミド、ラクトシルセラミドおよびスフィンゴミエリンのうちの少なくとも一種の不飽和指数を決定すること、および
(c)前記決定値を対照不飽和指数値と比較することを含み、前記決定値が前記不飽和の対照値よりも高い場合は、前記対象はインターフェロンおよびリバビリンのうちの少なくとも一種を含むC型肝炎治療に反応が見込めない、特定方法。 - 前記生体試料が前記対象の血清検体または前記対象の血漿検体である請求項51に記載の方法。
- 前記対象がヒトである請求項51に記載の方法。
- 前記生体試料の極低密度リポタンパク質画分を分離することをさらに含み、前記水準を決定することが前記生体試料の前記極低密度リポタンパク質画分中の不飽和指数の水準を決定することを含む請求項51に記載の方法。
- 前記分離が密度勾配超遠心分離法またはクロマトグラフ法によって行われる請求項54の方法。
- 前記水準を決定することが前記生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミドのうちの少なくとも一種の24:1/24:0比を決定することを含む請求項54に記載の方法。
- 前記決定が前記生体試料のリポタンパク質中のグルコシルセラミドおよびラクトシルセラミド両方の不飽和指数を決定することを含む請求項54に記載の方法。
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