イオン注入装置は、イオンビームをウェハへ衝突させることで、シリコンウェーハを処理するために使用されます。そのようなビーム処理の1つの用途は、集積回路の製造中に半導体材料を生成するために、所定のエネルギーレベルで、かつ制御された濃度で、特定のドーパント材料の不純物を、選択的にウェハを注入することである。
典型的なイオン注入装置は、イオン源、イオン抽出装置、質量分析装置、ビーム輸送装置とウエハ処理装置を含む。イオン源は、所望の原子又は分子のドーパント種のイオンを生成する。これらのイオンは、抽出システム、典型的には、電極のセットから抽出される。抽出システムは、イオンビームを整形しながら、イオン源からのイオンの流れを活性化し、方向付ける。所望のイオンは、質量分析装置のなかで、イオンビームから分離される。典型的には、磁気双極子が、抽出されたビームの質量分散と分離とを行う。ビーム輸送装置は、典型的には、一連の集束装置を含んでおり、イオンビームの所望の特性を維持しながら、イオンビームをウェハ処理装置に輸送する。最後に、半導体ウエハは、ウエハハンドリングシステムを介して、ウエハ処理装置に対して搬入及び搬出される。ウエハハンドリングシステムは、処理されるウエハをイオンビームの前に置き、処理されたウエハをイオン注入装置から除去するために、1つ以上のロボットアームを含んでいる。
バッチ式のイオン注入装置が良く知られている。これは、典型的には、複数のシリコンウエハを、イオンビームを通過するように移動させるための回転ディスクサポートを含んでいる。回転ディスクサポートが、イオンビームを通過するようにウエハを回転させている間、イオンビームがウエハ表面を叩く。シリアル式のイオン注入装置も知られている。これは、一度に一枚のウエハを処理する。ウエハは、カセット内に保持され、一度に一枚が引き出され、ウエハサポートに配置される。ウエハは、その後、イオンビームが一枚のウエハを叩くように、注入方向に向けられる。これらのシリアル式のイオン注入装置は、イオンビームの初期の軌道からイオンビームを偏向させるために、ビーム成形電子装置を用いている。また、シリアル式のイオン注入装置は、しばしば、選択的なドープをするため又はウエハの全表面を処理するために、ウエハサポートの協調した動きと連動して用いられる。ウエハがイオン注入装置を進行している間、ウエハは、特殊な処理チャンバと、ウエハ搬入/搬出ステーションとの間を輸送される。通常、ロボットが、ウエハの処理チャンバに対する搬入/搬出のために用いられる。
既存のイオン注入装置で用いられているイオンビームを発生するイオン源は、典型的には、アークイオン源と呼ばれており、ウエハ処理に適したイオンビームに整形されたイオンを生成するために、加熱されたフィラメントカソードを含み得る。スファーラゾ等の米国特許U.S. Pat. No.5,497,006は、ベースによって支持され、イオン化電子をガス閉じ込めチャンバに噴出するために、ガス閉じ込めチャンバに対して位置決めされたカソードを有するイオン源に関する。米国特許U.S. Pat. No.5,497,006のカソードは、部分的にガス封じ込めチャンバに延伸するエンドキャップを有する管状の導電体です。フィラメントは、管状の導電体内に支持され、電子衝撃を介してエンドキャップを加熱する電子を放出する。それにより、熱イオン的に、ガス閉じ込めチャンバ内にイオン化電子を放出する。
例えば米国特許U.S. Pat. No. 6,501,078に開示されているように、抽出電極は、一般的に、イオン源からイオンのビームを抽出するために、イオン源と組み合わせて使用される。そこでは、ガス閉じ込めチャンバ内に形成されたイオンは、イオン源の正面の出射開口部を介して抽出される。イオン源の前面は、イオン源の電位の第一開口ソース電極を形成する。抽出電極は、典型的には、イオン源から出射したイオンビームが、そこを通過することができるように、第一開口ソース電極(時々、抽出電極と呼ばれる)に対して位置合わせされた、開口抑制電極と開口接地電極とを含む。好ましくは、各開口部は細長いスロットの構成を有する。セラミック絶縁体が、典型的には、抑制電極と接地電極との間に、これら2つの電極を電気的に分離するために設けられる。接地電極は、接地電極とイオン源との間の電界が、接地電極の下流領域に広がることを抑制する。抑制電極は、接地に対して負の電位に電源によってバイアスされ、接地電極の下流のイオンビーム中の電子が、抽出領域及びイオン源に引き込まれることを防止するように作用する。典型的には、抑制及び接地電極は、抽出電極が、イオン源から抽出されてビームのエネルギーに応じて「調整」され得るように、イオンビームの進行方向におけるソースに対して相対的に移動することができるようにマウントされている。電極は、更には、互いに側面に沿って、ソース20に対して、イオンビームの方向にほぼ垂直に移動可能なようにマウントされている。加えて、機構は、電極の開口部の大きさを変化させることが可能なようにもされている。
抽出アセンブリから出射するイオンビーム30のエネルギーは、イオン源に供給される電圧によって決定される。この電圧の典型的な値は、20kVであり、20keVの抽出ビームのエネルギーを提供する。しかしながら、80keV以上又は0.5keV以下の抽出ビームエネルギーも、得られ得る。より高い又はより低いビームエネルギーを得るためには、ソース電圧を、各々に応じて、上昇させる又は下降させる。
イオン化ソースガスの存在との組み合わせにおいて、イオン源と、典型的なイオン注入システムの抽出電極システムとに関連付けられる電圧バイアスが、抑制及び接地電極、並びに、それらの間に設けられる絶縁体上の堆積物の形成を導くことが知られている。これらの堆積物は、絶縁体、体積物及び絶縁体のコーティングの分解、特には、体積物及び絶縁体の分離や放出の原因となり、イオン注入システムの動作に有害な影響を及ぼす。それらは、イオンビームと共に、イオン注入システムの他の部分、究極には、イオン注入される加工物に運ばれる汚染微粒子を生成する。
電極の近傍に堆積物を除去するための、制御された放出及びそれによるイオン注入システムにおけるウエハ上及びイオンビームラインに沿った汚染の緩和を生じさせる、イオン源抽出電極装置における電極電圧変調のためのシステムを提供することが、この発明の目的である。ある意味では、この発明は、一般的に摘示される米国特許出願公開第20110240889に教示及び開示された概念に基づくものである。この米国特許出願公開の中では、イオン注入システムにおける粒子汚染を低減するために、方法が提供されている。その発明、すなわちイオン注入システムにおいては、イオン源及びイオン源周辺から、十分に下流であって、また、ウエハ処理エンドステーションの近傍にある、減速抑制プレートが提供されている。そこでは、イオンビームを拡大させたり収縮させたりするために、減速抑制プレートに適用される減速(デセル)抑制電圧が調整される。それにより、1つ以上のビームライン部品の表面に存在する、先行して蒸着させた物質よる、加工物の引き続く汚染を抑制するために、当該1つ以上のビームライン部品が、イオンビームによって叩かれる。その特許出願人は、制御されたビームの変動を生じさせる電圧変調を通じて、汚染が抑制されることを教示している。そこでは、鋭利な打撃(ビーク ストライク)が、1つ以上の表面に先行して蒸着された物質又は先行して蒸着された物質に強く接着している蒸着物質を除去する。対照的に、本発明は、電極の近傍に堆積物を除去するために、電極間での制御された放電を生じさせるために、電極電圧変調を提供する。それにより、イオン注入システムにおける、イオンビームラインに沿った、ウエハ上の汚染を軽減する。
最初に図1に示すように、従来技術のイオン注入システム100が示される。それは、従来技術の図2のそれと同様の抽出電極システム200を利用する。図1は、典型的なイオン注入システム100を示している。それは、イオンビームに対して、加工物190(例えば、半導体基板又はウェハ)をスキャンするように動作可能であり、それにより、加工物190にイオンを注入する。図2は、注入のために、イオン源20からイオンビーム30を抽出する三極管型抽出電極システム200を利用する、従来技術の抽出電極システム200の概略図を表す。
従来技術のシステム100(図1)は、モジュラーガスボックス164と166及びガスボックス遠隔パージ制御パネル168を含む。ガスボックス164と166は、特には、ドーパント源材料の1つ以上のガスを含み、ボックス164と166は、ガス(複数可)の、システム100内部のイオン源182への選択的な配送を容易にする。そこでは、ガス(複数可)が、ウエハ又は加工物190への注入にふさわしいイオンを生成するために、イオン化され得る。ガスボックス遠隔制御パネル168は、ガス(複数可)又は他の物質の、システム100からの、「必要として」又は好ましいものとしての、排気又はパージを容易にする。
高電圧端子配電器172と高電圧絶縁変圧器174は、イオンを生成するため、エネルギーを電気的に励起して、ドーパントガス(複数可)に与えるために、特に、含まれている。イオンビーム抽出アセンブリ176は、イオン源182からイオンを抽出し、図1の中に括弧で示されているビームライン領域178のなかへ、それらを、加速するために含まれている。ビームライン領域178は、質量分析磁石180を含んでいる。質量分析磁石180は、不適切な、質量に対する電荷の比を有するイオンを選別又は排除する動作をする。特には、質量分析磁石180は、好ましくない質量電化比のイオンが衝突する、湾曲した側壁を有するガイドを含んでいる。それらは、質量分析磁石180の磁石(複数可)によって生成された1つ以上の磁界によるビームガイドを通じて、伝搬される。
コンポーネント184が、イオンビームの角度を制御することを支援するために含まれうる。これは、特には、走査角度補正レンズを含み得る。加速/減速カラム186は、イオンビームの中のイオンの速度の制御及び調整及び/又は集束を容易にする。コンポーネント188は、汚染微粒子の除去動作を行う。例えば、最終エネルギーフィルターが、エネルギー汚染イオンが加工物190に遭遇することを抑制するために含まれ得る。
ウェハ及び/又は加工物190は、加工物に対するイオンの選択的な注入のためのに、エンドステーションチャンバ192に搭載される。メカニカルスキャンドライブ194は、イオンビームとの選択的な遭遇を容易にするために、チャンバ192内の加工物190を操作する。ウエハ又は加工物190は、加工物処理システム196によって、エンドステーションチャンバ192の内部へ又はエンドステーションチャンバ192から外部に移動される。それは、例えば1つ以上の機械的又はロボットのアーム197を含みうる。典型的な注入作業では、ドープされていない加工物又はウェーハは、加工物を、注入チャンバ又はエンドステーションにおいて、正しい方向に移動させる、チャンバ外部のロボットによって、複数個のカセットの中の1つから取り出される。チャンバロボットのロボットアームは、加工物をつかみ、それを注入チャンバー内に運び、それをイオンビームの前での加工物の走査をサポートする、静電クランプ又はチャック支持機構の上に配置する。
オペレータコンソール198は、オペレータが、システム100の1つ以上のコンポーネントを選択的に制御することによって、注入プロセスを調整することがでる。最終的に、配電ボックス199が、システム100の全体に電力を提供するために含まれている。
再び従来技術の図2に示すように、三極管の抽出アセンブリを利用する、イオン源20と抽出電極とが、側断面図として概略的に示されてる。イオン源20は、ハウジング15に取り付けられたアークチャンバ20Aを備える。ブッシング20Bは、イオン源20をハウジング15の残りから分離するための絶縁体として機能する。アークチャンバ20Aの内部に形成されたイオンは、イオン源20の前面22における出口開口部21を介して、イオン源20から抽出される。イオン源20の前面22は、第1開口ソース電極を形成する。それは、イオン源20の電圧と同じ電位の電圧でバイアスされる。抽出電極システムが、図2に示されるように、開口抑制電極24及び開口接地電極25によって与えられている。開口電極24・25の各々は、単一の導電性板を備え、それは、イオン源20から出射するイオンビームが通過可能なように、板を貫通する開口部を有している。好ましくは、各開口部は、図2の平面に対して垂直な伸長方向を有する、細長いスロット構造を有する。言い換えれば、図示されるように、正のz軸を紙に刺さる方向として、スロットは、z軸に沿って長い寸法を有する。
正イオンのビームのために、イオン源20は、電圧供給によって、接地に対して正の電位に保たれる。接地電極25は、接地電極25とイオン源20との間の電界が、接地電極25の右側の領域(図2)に侵入することを抑制します。抑制電極24は、電圧供給によって、接地に対して負の電位にバイアスされる。負にバイアスされた抑制電極24は、接地電極25(図2の右側)の下流のイオンビーム中の電子が、抽出領域及びイオン源20に引き込まれることを抑制する。抑制及びグランド電極24、25は、矢印Xで示されるイオンビーム30の進行方向に、イオン光源20に対して相対的に移動可能なように設けられている。この装置は、ビームエネルギーが大きいとき、抽出及び抑制電極24との間のギャップが大きくなるように「調整」可能である。電極は、さらには、イオン源20に対して、抑圧24及び接地電極25が、相対的に、矢印yの方向に側面に沿って移動可能なように設けられている。すなわち紙面内であって、イオン源20に対して、イオンビームの方向に対してほぼ垂直な方向である。また、機構は、図2の矢印yで示される横方向yに、電極のスリットのサイズが調整することができるように提供されている。図面を参照すると、図1は、イオンビーム注入装置10の概略図である。この注入装置は、イオンビーム14を形成するイオンを生成するイオン源12を含む。イオンビーム14は、ここでは注入ステーション20として示されている終了位置へのビーム経路を横断するように、形造られ、また、選択的に偏向される。この注入ステーションは、半導体ウエハ等の加工物が、イオンビーム14を構成するイオンによる注入のために配置される内部領域を画定する、バキューム又は注入チャンバ22を含む。
先に述べたように、抽出電極アセンブリ(例えば、図2)は、典型的には、抽出電極22、開口抑制電極24及び開口接地電極25を含む。抑制電極24は、接地に対して負の電位に、電圧供給装置によって、バイアスされ得る。負にバイアスされた抑制電極は、接地電極25の下流のイオンビーム中の電子が、抽出領域内及びイオン源20内に引き込まれることを抑制するように動作する。
一般的に、抽出アセンブリの抑制及び接地電極は、ビーム方向に移動可能となるように設けられている。それにより、イオン源の抽出電極と抑制電極との間のギャップが、このギャップが増加又は減少のいずれかに調整することが可能となっている。抑制及び接地電極の間のギャップも、同様に、正及び負のy方向に調整することができる。このように、抽出アセンブリを構成する電極は、その間のギャップの大きさを、選択的に、増加又は減少するように「調整」することができる。そこでは、例えば、望まれるビームエネルギーがより大きくなるにつれ、電極アッセンブリ内に、より大きなギャップが設定され得る。
次に図3を参照すると、図面は、簡略化された概略ブロック図の形式において、本発明の複数の態様が実施される、典型的な高ドーズイオン注入システム300を示している。システム300は、例えば、0.5から60keVの範囲内のイオンビーム332を生成するために示されている。システム300は、イオン源302、ビームラインアセンブリ305及びエンドステーション306を含む。示されている例では、イオン源302は、プラズマ発生コンポーネント308、カソード310、フィラメント313、アノード312、リペラ314、ガス供給源316、ソースマグネットコンポーネント318と320及びイオン抽出電極アセンブリ322を備える。ドーパントガスは、例えば、導管334を通じて、ガス源316からチャンバ304に供給され得る。また、他のフィラメント電源324及びカソード電圧源326は、それぞれ、動作可能なように、フィラメント313とカソード310と結合されている。また、他の電力源328は、示される例では、ソースマグネットコンポーネント318、320に接続されている。
動作時において、ガス供給源316は、イオンが生成されるイオン源302の領域330に(例えば、導管334を通じて)、1つ以上の前駆体ガスを提供する。カソード310は、一例では、フィラメント313(例えば、タングステン又はタングステン合金から形成された棒)を含む。このフィラメントは、フィラメント電源324によって加熱(例えば、約2500度ケルビンまで)され、それにより、その中の電子を励起し、ドーパントガス分子に衝突させる。次に、カソード電圧源326は、カソード310に追加のエネルギーを提供することができる(例えば、カソード310を、約2500ケルビンまで加熱するため)。これにより、電子を、カソード310からガスが配置された領域330内に飛び込ませる。アノード312は、電子を領域330の中に引き込むことを手助けし、例えば、イオン源302の側壁を含み得る。さらに、電源(図示せず)もまた、追加の電子が領域330に引き込まれるのを容易にするために、バイアスが、カソード310とアノード312との間に設定されるように、アノード312に結合され得る。
リペラ314はまた、電子を領域330内の維持することを手助けし得る。特には、ミラー電極リペラ314に付与されたバイアスが、カソード310からバック領域330に放出された電子を領域330に押し戻すことに役立つ。同様に、ソース磁石318及び320によってイオン源302内に誘起される磁界は、電子を、領域330の内部及びソース302の側壁から離れた位置に維持することに役立つ。図示の例では、ソース磁石の二つのソース磁石部品318と320とが示されている。これらは、例えば、電磁石の巻線及び/又はヨークの断面図において示され得る。領域330内を移動する電子は、イオンを作成するために、領域330内の気体分子と衝突する。特には、気体分子と十分な力で衝突した電子は、1つ以上の電子が、分子から除去される原因となり、その結果、正に帯電した気体状イオンを生成する。ソース磁石部品318と320とによって印加される磁界は、電子の経路長を増加させ、領域330内でのイオン及び電子の両者のプラズマを維持することに助けるため、y方向335において、カソード310に対して垂直であることが好ましい。
本発明は、また、負に帯電したイオンを利用することができるアプリケーションを備えることを検討すること、又は、備えていることが好ましい。加えて、ビーム電流密度や強度は、イオン源302内で生成されるイオンの数に関連付けられることも好ましい。このように、本発明の一つ以上の態様によると、イオン源302の何れか1つ以上の構成要素は、ビーム電流を調整するために、選択的に調節される。ただ例示の目的であって限定を意図しないが、ソース磁石部品318と320とによって設定される磁場は、ソース302内で発生したイオンの数を増させたり、減少させたりし、それに伴って、ビーム電流を増減させるために、電源328を制御することにとって代わられ得る。
本発明は、さらに上述のアーク放電源とは異なる種類のイオン源に適用する意図があり適用できると理解される。例えば、イオン源は、イオンを生成するための高周波(RF)励起手段を含み得る。このようなイオン源は、U.S. Pat. No. 5,661,308に開示されており、参照によって本願に組み込まれる。他の例には、イオンを生成するための電子ビーム注入による励起手段を含み得るイオン源がある。これは「ソフトイオン化」タイプのイオン源として参照されることがある。このようなイオン源の例として、U.S. Pat. No. 6,452,338がある。そのすべてが、参照によって本願に組み込まれる。本発明を適用できるイオン源の他の例には、複数のイオンを生成するためのマイクロ波励起手段を含むイオン源がある。
イオンビーム332(例えば一点鎖線として明瞭に図示されているもの)は、おおむねイオン源302に対して負にバイアスされた(陽イオンを引きつける)抽出電極336によってイオン源302から抽出される。抑制電極338は、それがおおむね正にバイアスされることにより、イオン源302へ引きつけられる電子の抑制をもたらす機能を果たす。さらに、X正方向333において、ビーム332は、接地電極340に行き当たる。1つ又は複数の実施形態では、固定された抽出電極336と移動可能な抑制電極338と接地電極340との間のギャップ342は、調整可能である。
この実施形態では、例えば、ギャップ(g)342のサイズは、より高エネルギーのビームを得るべく大きくされ得る、又は、より低エネルギーのビームを得るべく小さくされ得る。そして、抽出電極336と抑制電極338との間のギャップ342を調整することにより、電場は、アーク放電を回避する及び/又は減らすように調整され得る。つまり、イオン注入システム300は、典型的により広いエネルギー範囲(例えば0.5から80keV)において実現され得るものよりも、高いビーム電流において動作できる。対照的に、より低いビームエネルギーにおいては、空間電荷の反発作用を、ギャップ342を減らすことによって減らせる。さらに、ギャップ342を調整できることにより、イオンビーム332を、より強く焦点に集めるとともに制御できる。
抽出電極336は、抽出開口344が形成された一枚のプレートを備え得る。抽出開口344は、イオン源出口開口346に向かい合って並んでいる。抽出電極336は、上述の抽出ギャップ(g)342として参照される間隙により、抑制電極338に対して調整可能に離間している。抑制電極338には、可変の抑制開口348が設けられている。抑制電極338及び接地電極340は、可変の抑制開口348及び接地開口350を調整するために、それぞれ、さらに、2つ又はそれ以上の分割プレート(非図示)を備え得る。それぞれ、可変開口電極(VAE;variable aperture electrode)として当業者に知られている。可変の接地開口350が形成された接地電極340は、抑制電極338の異なる側に位置している(図示されているとおり)とともに、例えば、抑制電極338に対して固定的に離間され得る。
開口348及び350が、Y方向335において抽出開口344に対して一直線にそろえられるように、抑制電極338及び接地電極340の双方は、調整され得る。他に、抽出開口344及び抑制開口348は、設定中において一直線にそろえられることもある。しかし、メカニズムは、Y軸方向335における、すべての開口に対するアクティブ制御として用いられ得ると、当業者には理解されるべきである。
抽出電極336、抑制電極338、及び接地電極340は、互いに電気的に絶縁されている。そして、それぞれは、それぞれ別個の電圧源352・354・356に接続されている。電圧源352・354・356及びコントローラ358のそれぞれは、中央処理装置360に接続されている。中央処理装置360は、電極336・338・340、イオン源アークチャンバ304、及びギャップ342のそれぞれの電位を制御するための制御信号を生成する。そして、測定されたイオンエネルギーは、イオン生成におけるパラメータを制御するためのフィードバックループに用いられ得る。イオン生成のパラメータは、例えば、ギャップ342、開口幅/寸法調節、開口配置、電極(336・338・340)に与えられる電位等である。例えば、中央処理装置360は、測定されたエネルギーに依存するイオンビーム抽出パラメータを制御するための制御信号を生成できる。
そして、イオンビーム332は、ビームラインアセンブリ305及び付随している分析磁石364に入射する。質量分析磁石364は、約90°の角度に形成され得る。そして、その中に磁場が生成される。イオンビーム332が電磁石364に入射するときに、質量に対する電荷の比が不適切なイオンを排除するようにイオンビーム332は、その磁場によって相応に曲げられる。また特に、質量に対する電荷の比が大きすぎる又は小さすぎるイオンは、371に示されるように磁石364の側壁370へそらされる。このように、磁石364は、完全に磁石364を通りこえるために望ましい質量に対する電荷の比を有するイオンのみを、ビーム332に残すことができる。
制御電子機器又はコントローラ358は、他の特性によって磁場の強さ及び方向を調節できる。磁場は、例えば、磁石364の界磁巻線を流れる電流の量を調整することによって制御され得る。コントローラ358は、(例えば、オペレータによって、前もって及び/又はすぐに得られたデータによって、及び/又はプログラムによって)システム300のすべてを制御するための、プログラム可能なマイクロコントローラ、プロセッサ、及び/又は他の種類のコンピューティングメカニズム、を含み得ると理解される。
ビームラインアセンブリ305は、例えば、イオンビーム332を収束する、曲げる、及び/又は除染するだけではなく、イオンを加速及び/又は減速するために、構成された又はバイアスされた複数の電極366を備える加速器/減速器374を含んでもよい。電極366は、後述する手法により、ビーム332を曲げるとともにビーム332から混入した粒子を分離することによってビーム332を除染する。
さらに、イオンビームと他の粒子との衝突はイオンビームの完全性を低下させ、イオン源302からエンドステーション306までの全ビームラインアセンブリ305を、1つ以上のポンプ(図示しない)によって空にされることが理解される。加速器/減速機307の下流には、ビームラインアセンブリ305から質量分析されたイオンビーム332を受けるエンドステーション306が設けられている。エンドステーション306はスキャニングシステム376を含んでおり、スキャニングシステム376は、支持と、加工物382が選択的に移動するように取り付けられたエンドエフェクター378と、を備えている。エンドエフェクター378と加工物382とは、イオンビーム332のマイナスy方向に対して概ね垂直な面(すなわち、xz平面)であるターゲット面に存在する。
ビーム電流は、システム300の多くの構成要素によって影響を受けることが理解される。例えば、抽出電極336、抑制電極338、接地電極340、および電極366の各バイアスが、ビーム電流に影響を及ぼし得る。したがって、ビーム電流は、選択的に制御する1つ以上の抽出電源352および抑制電源354のそれぞれによって調整される。浮動グランド電源356、電源328、電源324、および電源326は、様々な構成要素に加えられる各電圧を制御する。ここでは、連結した抽出電極336と抑制電極338のセットについて説明するが、本発明では、分離した抽出電極336と抑制電極338とが、これらの電極に加えられる各電圧を変えるために独立して変化し得る各電源を備えていてもよい。また、通常、接地電極340は、他の電極336・338とは異なる電圧に調整され、接地電位と同じか、または異なる電圧に調整される。
前記電源は、例えば、イオン注入の間、利用されるビーム電流のスキャンの終わりを示す測定系372(すなわち、測定系はファラデーカップ384を含む)からの測定値を取り込む他のコントローラによって制御される。同様に、コントローラ358は、イオンビーム332が受けるアクティブプラズマの量を選択的に規制することによってビーム電流を調整するように、ビーム中和システム362と連結して動作可能であってもよい。アクティブプラズマ中和は、典型的には、高エネルギーでの効果的なビーム輸送を要求されないため、プラズマソースを介してビーム電流を調整することは、低エネルギー(すなわち、約3keV未満)においては、より効果的である。コントローラ358は、上述したように注入波形の生成を助け、また、イオンビーム電流への選択的な適合の促進においてこのような波形を利用する。
今発明の少なくとも一つ以上の発明の実施形態に係れば、図4および5を参照すると、抽出電極プレートアッセンブリはそれぞれ透視図、および断面図で描かれている。同種の様々なギャップを有する電極(VGE)はU.S. Pat. No. 7,915,597で一般に開示されており、全体が参照として組み込まれている。図3によれば、抽出電極アッセンブリ900は二つの整合黒鉛ディスクアッセンブリ902および904を備える。整合黒鉛ディスクアッセンブリ902および904はそれぞれ、前述する抑制電極と接地電極を構成する。ディスクアッセンブリ902および904はそれぞれ、あらかじめ決められたビーム光路xに垂直になるように、水平に組み立てられ整列し、それらはイオン源302から出てくるイオンがその間を通過する延長ギャップ906を定めるように、間隔をあけられている。抽出電極アッセンブリはあらかじめ定められたビーム光路xに沿って、精密に整列され得る。
抑制ディスクアッセンブリ902は抑制電極プレートディスク片908および910と、抑制プレート交換可能エッジ挿入部911および913と、を備える。同じく、接地ディスク片アッセンブリ904はプレートディスク片912および914と、接地版ディスク片交換可能エッジ挿入部915および916と、を備える。ディスク片交換可能エッジ挿入部911、913、915および916はそれぞれ、ディスク片908、910、912および914に固定され、共に電極ギャップ906を定めている。挿入部911、913、915および916は加速しているイオンの衝撃によって引き起こされる電位的損傷を受けても交換可能であり、これにより構成機器の交換のコストが削減される。加えて、ディスク片908、910、912および914は必要に応じて交換できる。抑制電極プレートディスク片908は、例えば、ディスク片908と912の間に定められた、その間に絶縁体を形成するように平行につながっている、セラミックスペーサーや抑制絶縁体918と連結したばね式段付きねじによって、接地電極プレートディスク片912との繋がりを隔てるように固定されている。同様に、抑制電極プレートディスク片910は、セラミックスペーサーや抑制絶縁体918とともに、接地電極プレートディスク片914と繋がりを隔てるように固定されている。
プレートディスク片908および912によって形成されるアッセンブリは、支持脚アッセンブリ802に接続され、支えられている。接続は、例えば、アッセンブリ802および912をねじで貫く接続によってなされる。同様に、アッセンブリ910および914は、脚804によって支持され、脚804は接地電極プレートディスク914に接続される。二つの支持脚アッセンブリ802および804の動きは、プレートディスク片908および912と、アッセンブリ910および914を動かすだろう。このように、ギャップ906と孔は調整できる。支持脚アッセンブリ802および804は、プレートに取り付けられた支持フランジ810の溝開口部806および808を通って伸びている。支持脚アッセンブリ802および804および開口部の空間は、フレキシブルリボンベロー922および924に覆われている。
図5に描かれるように、今発明の方法200はイオン注入システム(動作205)を規定することで開始する。このイオン注入システムは、図1のイオン注入システムのように、イオンビームを用いて少なくとも一つ以上の製品にイオンを注入することを設定されている。図1のイオン注入システムは一つの例であるが、同種や異種の構成要素を持つ様々な他のイオン注入システムは、今回記述されているような方法の注入を提供していて、そのようなイオン注入システムは全て、今発明の範囲内に落ち着くと熟考される。イオン注入システム(動作205)は、例えば少なくとも、イオン源と、イオン源に付随する抽出電極装置と、イオンの注入の間に製品を支持すると考えられるエンドステーションと、抽出電極装置に供給される電圧と電位を発生するタイミングを調節するコントロールシステムと、を備える。
一つの例と同様に、イオンビームがイオン源から形成される(動作210)。さらに抑制電圧は抑制プレートに供給され、通常イオンビームを形成するためのイオン源から引き抜かれたイオンから、電子が選択的に引きはがされる。そのため、イオン源と抽出電極アッセンブリの下流に配置された製品は、例えば、それによって形成されたイオンビームからイオンを注入される。一度効率的な注入が完了すれば、製品はエンドステーションから外部環境へ移動され(動作215)、別の製品を、イオン注入のために、外部環境からエンドステーションに移動させることができる。
発明と同様にして、イオン源に電圧が供給され、抑制電極が調節される(動作220)。これは一般的に、動作215におけるエンドステーションの内部または外部への製品の移動と同時に発生する。好ましい実施形態として、抽出電極と抑制電極に、接地電位にドリフトする浮遊電位を実現させるために、イオン源の抽出電極と抽出電極アッセンブリの抑制電極に付随する高電圧スイッチが開かれる。エンドステーションで支持されるウェハからウェハが移動させられるとき、この初めの工程は、注入サイクルの終わりと一致するように発生のタイミングがとられる。これはイオン源からのイオンの抽出の停止にも影響を及ぼす。その後、それぞれフィラメント313とカソード310で効果的に連結されている、フィラメント電源324とカソード電圧源326を経るように、イオン源のカソードに供給される電源は、例えば、イオン源制限チャンバのプラズマの構成を除去するための、アーク電流/カソード電圧コントロール論理開回路を設定することで、除去される。よって、今回の例では、製品が移動している間にイオンビームを消去できる利点がある。そしてその後は、好ましくは、少なくとも50msの誘導遅延の後、15kV程度の高電圧を抑制電極に供給するために、抑制電極と接地電極を分断する絶縁体を通して、定められた時間だけ(好ましくは2秒程度)電流を発生し、もしくはそれらを横切るアーク放電を引き起こす、抑制電極と結合する高電圧スイッチが閉じられる。この誘導電流かつ/もしくはアーク放電が、電極周囲の抽出電極アッセンブリから沈殿する沈殿物を除去し、イオンビームラインの周囲とイオン注入システムのウェハの汚染を低減することが知られている。
動作220を構成する上述したステップは、典型的には、上述したようにコントローラ358と中央処理装置360などによって、ソフトウェアおよび/またはファームウェアを介してコントローラおよび/またはコンピュータによって実行される。これらの処理ステップは、注入のための加工物の支持の上に未処理のウエハを配置するために処理したウエハをエンドステーションの外に移動させる間、割り当てられた回数ほど繰り返され得る。本発明において、抑制電極の電圧の調整は、加工物の移動の間、1サイクルまたは複数サイクル繰り返される。このようにして、動作220は、エンドステーションと外部との間で加工物が移動する期間(すなわち、動作215で加工物を交換する間)に、繰り返し起こり、その結果、本発明の電圧調整によってイオンビームを介して加工物への運搬から放出される粒子による加工物の汚染の可能性を和らげる。
動作220において抑制電極の電圧を調整することによって、一般的に、予め抽出電極アセンブリと結び付いた1以上の表面に堆積された(すなわち、スパッタされた)材料は、後述するように、加工物を汚染することなく表面から放出される。本発明は、予め堆積された材料が、後のイオン注入の間、加工物に有害な影響を与える可能性を和らげる。
本発明について、ある好ましい実施例に関して示し、説明したが、本明細書および添付図面の解釈および理解の下で、他の技術への等価な変更や改良が生じ得ることは、当業者にとって明らかである。特に、上述した構成要素(アセンブリ、装置、回路など)が実行する様々な機能に関して、上記のような構成要素を説明するために用いた文言(「手段」の言及を含む)は、他の記載が無い限り、本発明の模範的な実施例に記載された機能を実行する構造と構造上同等でない場合であっても、記載された構成要素の特定の機能を有する(すなわち、機能的に同等な)どの構成要素にも対応するものと意図している。さらに、いくつかの実施例の中のひとつに関して、本発明の特別な特徴を開示したが、このような特徴は、1つまたは2つ以上の好ましい他の実施例の他の特徴と、または、任意の出願または特定の出願の利点と、組み合わせることができる。上述した本発明の好ましい実施例の記載から、当業者は、これらの改良、変更、および改善に気付くことができる。当業者によるこれらの改良、変更、および改善は、添付する特許請求の範囲に含まれる。