JP2016519057A - 改変型ヒアルロナンおよびその癌の治療における使用 - Google Patents

改変型ヒアルロナンおよびその癌の治療における使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2016519057A
JP2016519057A JP2016501498A JP2016501498A JP2016519057A JP 2016519057 A JP2016519057 A JP 2016519057A JP 2016501498 A JP2016501498 A JP 2016501498A JP 2016501498 A JP2016501498 A JP 2016501498A JP 2016519057 A JP2016519057 A JP 2016519057A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cancer
hyaluronan
depolymerized
antibody
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016501498A
Other languages
English (en)
Inventor
ナン シャン チャン
ナン シャン チャン
ワン ペイ スー
ワン ペイ スー
Original Assignee
ナショナル・チェン・クン・ユニヴァーシティ
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ナショナル・チェン・クン・ユニヴァーシティ filed Critical ナショナル・チェン・クン・ユニヴァーシティ
Publication of JP2016519057A publication Critical patent/JP2016519057A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/70Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
    • A61K31/715Polysaccharides, i.e. having more than five saccharide radicals attached to each other by glycosidic linkages; Derivatives thereof, e.g. ethers, esters
    • A61K31/738Cross-linked polysaccharides
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/70Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
    • A61K31/715Polysaccharides, i.e. having more than five saccharide radicals attached to each other by glycosidic linkages; Derivatives thereof, e.g. ethers, esters
    • A61K31/726Glycosaminoglycans, i.e. mucopolysaccharides
    • A61K31/728Hyaluronic acid
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K39/395Antibodies; Immunoglobulins; Immune serum, e.g. antilymphocytic serum
    • A61K39/39533Antibodies; Immunoglobulins; Immune serum, e.g. antilymphocytic serum against materials from animals
    • A61K39/3955Antibodies; Immunoglobulins; Immune serum, e.g. antilymphocytic serum against materials from animals against proteinaceous materials, e.g. enzymes, hormones, lymphokines
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/44Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against material not provided for elsewhere, e.g. haptens, metals, DNA, RNA, amino acids
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08BPOLYSACCHARIDES; DERIVATIVES THEREOF
    • C08B37/00Preparation of polysaccharides not provided for in groups C08B1/00 - C08B35/00; Derivatives thereof
    • C08B37/006Heteroglycans, i.e. polysaccharides having more than one sugar residue in the main chain in either alternating or less regular sequence; Gellans; Succinoglycans; Arabinogalactans; Tragacanth or gum tragacanth or traganth from Astragalus; Gum Karaya from Sterculia urens; Gum Ghatti from Anogeissus latifolia; Derivatives thereof
    • C08B37/0063Glycosaminoglycans or mucopolysaccharides, e.g. keratan sulfate; Derivatives thereof, e.g. fucoidan
    • C08B37/0072Hyaluronic acid, i.e. HA or hyaluronan; Derivatives thereof, e.g. crosslinked hyaluronic acid (hylan) or hyaluronates

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

癌の治療における脱重合化ヒアルロナン(例えば、天然に存在するヒアルロナンなどの高分子量ヒアルロナンを超音波処理することで調製される)または抗Hyal−2抗体の使用。また本明細書では、超音波処理による脱重合化および架橋型ヒアルロナンの調製方法およびそのようにして得られたヒアルロナン組成物についても記載する。【選択図】図1

Description

ヒアルロン酸(HA)またはヒアルロネートとしても知られているヒアルロナンは、結合組織、上皮組織および神経組織など、様々な組織に分布している、硫酸化されていない、陰イオン性のグリコサミノグリカンである。HAは、D−グルクロン酸とD−N−アセチルグルコサミンからなる二糖の重合体であり、D−グルクロン酸とD−N−アセチルグルコサミンは交互に、β1,4−グリコシド結合とβ1,3−グリコシド結合で繋がっている。細胞間マトリックス中で、HAが、細胞の移動、増殖および分化、組織の修復と水力学、ならびに免疫制御など、様々な生理学的機能を果たしていることが分かっている。
天然に存在するHAは、10,000個以上の二糖単位を含んでいることが多く、その分子量は400万ダルトン以上に達する場合がある。そのような高分子量HA分子を、酵素的、化学的、または物理学的な方法によって分解し、脱重合したHA産物を生産することができる。
高分子量HA(例えば、天然のHA)は、抗血管新生性、抗炎症性、および免疫抑制性の効果を有する。反対に小さいHA断片は、炎症性ケモカインの放出を誘導する、CD44の切断を刺激する、血管新生を増やす、および腫瘍細胞の移動を促進する場合がある。
ヒトにおいてHAはヒアルロニダーゼによって分解され、ヒアルロニダーゼには、例えばヒアルロニダーゼ1から4(Hyal−1〜Hyal−4)およびヒアルロニダーゼPH−20など、6つのメンバーが含まれる。この中でも、Hyal−2はグルコシルホスファチジルイノシトール(GPI)との結合を介して細胞膜の外側に局在しているアンカータンパク質である。HAYL−2がトランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF−β1)の受容体であることが分かっている。スー(Hsu)ら、米国生化学分子生物学会誌(J.Biol.Chem.)284:16049〜16059;2009。
本開示は、高分子量HA(例えば、天然のHA)または抗Hyal−2抗体を超音波処理することで調製した、脱重合し、架橋したヒアルロナンが、マウスモデルにおいて有意に癌細胞の成長を抑制したが、天然の高分子量HAはこのような抗がん作用を示さなかったという、予想外の発見に基づいている。
従って本開示の一側面は、癌細胞(例えば、乳癌細胞、メラノーマ細胞、皮膚基底細胞癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、膠芽腫細胞、または神経芽細胞腫細胞)を、鎖間共有架橋を含み得る脱重合したヒアルロナンを含んでいる組成物と接触させることを含む、癌細胞の成長を抑制する方法を特徴とする。いくつかの態様では、脱重合したヒアルロナンの少なくとも約90%の分子量は、約100〜500kDaの範囲である。
本開示の別の側面は、癌(例えば、乳癌、メラノーマ、皮膚基底細胞癌、前立腺癌、肺癌、膠芽腫、または神経芽細胞腫)の治療方法を特徴とする。この方法は、それを必要とする対象に上述した脱重合HAを投与することを含む。いくつかの例においてそのような治療を必要とする対象は、癌と診断された対象(例えば、ヒト患者)である。他の例において対象は、癌の疑いがあるまたは癌のリスクのある対象(例えば、ヒト患者)である。
本明細書に記載のいずれの方法においても、脱重合したヒアルロナンは、約25%以上のレベルの鎖間架橋を含む可能性がある。
いくつかの態様では、本明細書に記載のいずれかの方法において使用される脱重合ヒアルロナンは、高分子量ヒアルロナン(例えば、天然のヒアルロナン)の超音波処理によって調製することができる。超音波処理は、約20〜80kHz(例えば、50〜60kHz)で約3〜6時間、実施することができる。あるいはまたはそれに加えて、超音波処理は、約50〜80℃(例えば、65〜70℃)の温度範囲で行ってもよい。
さらに本開示は、高分子量ヒアルロナンを約20〜80kHzで約3〜6時間、場合により約50〜80℃(例えば、65〜70℃)の温度範囲で超音波処理することを含む、脱重合化・架橋型ヒアルロナンの調製方法を提供する。ここで記載した方法によって調製した脱重合化・架橋型ヒアルロナンを含んでいる全ての組成物も本開示に範囲に入る。
さらに別の側面において本開示は、それを必要とする対象に、有効量の、ヒアルロニダーゼ−2(Hyal−2)、例えば細胞表面に発現しているHyal−2に結合可能な抗体を投与することを含む、癌の治療方法を提供する。いくつかの態様において抗体は、CPDVEVARNDQLAWL(配列番号1)またはその断片に結合する。本明細書に記載の方法において使用される抗Hyal−2抗体は、完全長抗体であっても、またはその抗原結合断片であってもよい。あるいは、抗体はヒト抗体であってもまたはヒト化抗体であってもよい。
いくつかの態様においてそのような抗体治療を必要とする対象は、癌と診断された対象(例えば、ヒト患者)である。他の態様において対象(例えば、ヒト患者)は、癌の疑いがあるかまたは癌発症のリスクがある。この方法によって治療される癌の例としては、メラノーマ、基底細胞癌、皮膚基底細胞癌、前立腺癌、肺癌、膠芽腫、および神経芽細胞腫が挙げられるが、これらには限定されない。
また、癌の治療または癌細胞の成長抑制に用いられる組成物、例えば医薬組成物であって、本発明に記載の脱重合化ヒアルロナンまたは抗Hyal−2抗体を含んでいる組成物、および本明細書に記載のいずれの癌をも含む、癌治療用薬物の製造におけるそのような抗がん剤の使用も本開示の範囲に入る。
本発明の1つ以上の態様の詳細を以下に示す。本発明の他の特徴または利点は、以下の図面およびいくつかの態様についての詳細な説明、さらに添付の請求項から明らかになる。
まず図面について説明する。
図1は、アガロースゲル電気泳動後の、天然のヒアルロン酸(HA)、超音波処理したHAおよびUV照射したHAを示している写真である。試料はアルシアンブルーで染色した。 図2は、天然のHA、超音波処理したHA、およびUV照射したHAの、BALB/cマウスにおけるB16F10メラノーマ細胞成長に及ぼす抑制効果を示しているグラフである。パネルA:PBSまたは天然のHAで処理したマウス。パネルB:超音波処理したHA、HAson(3時間)およびHAson(6時間)で処理したマウス。パネルC:UV照射したHA、HAuv(4ジュール/cm2)およびHAuv(8ジュール/cm2)で処理したマウス。 図3は、超音波処理したHAの、TおよびB細胞欠損NOD−SCIDマウスにおけるB16F10メラノーマ細胞の成長に及ぼす抑制効果を示しているグラフである。 図4は、超音波処理したHAの、NOD−SCIDマウスにおけるMDA−MB−231乳癌細胞の成長に及ぼす抑制効果を示しているグラフである。 図5は、抗Hyal−2抗体の、ヌードマウスにおける基底細胞癌細胞であるBCCの成長に及ぼす抑制効果を示しているグラフである。上段:正常血清(対照)下段:Hyal−2抗血清。 図6は、抗Hyal−2抗体の、BALB/cマウス(パネルA)およびNOD−SCIDマウス(パネルB)におけるB16F10メラノーマ細胞の成長に及ぼす抑制効果を示しているグラフである。NRS(正常ウサギ血清)およびPBSを対照として用いた。 図7は、抗Hyal−2抗体の、ヌードマウスにおけるB16F10メラノーマ細胞の成長に及ぼす抑制効果を示しているグラフである。
本開示は、脱重合したHA(特定の範囲の分子量を有する)および抗Hyal−2抗体が動物モデルにおいて、癌細胞の成長を抑制したという予想外の発見に基づくものである。理論により束縛されないが、脱重合したHAまたは抗Hyal−2抗体のいずれかが、特定の型の免疫細胞上で、細胞膜アンカータンパク質であるHyal−2に結合し、望ましい抗がん作用を引き起こしていると考えられる。
従って本明細書では、脱重合化HA、抗Hyal−2抗体またはそれらの組み合わせを用いる癌の治療方法、1つ以上の抗がん剤を含んでいる医薬組成物、脱重合化HAの調製方法、ならびにそのような調製方法によって生産された組成物について記載する。
脱重合化HA
様々な組織中で見られる天然に存在するヒアルロナン(HA)つまり天然のHAは、10,000個以上の二糖単位を含み、その分子量は400万ダルトンを超える(HAの二糖単位の平均分子量は約400ダルトンである)。HAは、希釈溶液中では、局所的な高次構造がいくぶん定まったランダムコイルを形成し、濃縮溶液中では、強い鎖間接続と分子の重複を介した網細工状の組織を形成している。チャン(Chang)ら、分子免疫学雑誌(mol.immunol.)、22(8):843〜848;1985;およびチャンら、分子免疫学雑誌、22(4):391〜397;1985。
高分子量HA(例えば、分子量が400万kDaを超えるHA)が癌細胞の成長を促進することが分かっている。同様に、小さいHA断片(例えば、分子量が100kDa未満のHA)は血管形成を高め、また、CD44の切断を刺激することで癌細胞の成長を促進する場合がある。驚くことに、本試験の結果から、特定のレベルの分解度および/または架橋を有するHAが、マウス癌モデルにおいて癌細胞の成長を有意に抑制することが示され、このような脱重合化HAが癌に治療において有効であることが示唆された。
本明細書に記載の脱重合化ヒアルロナンは、天然のHAよりもかなり小さいが、前述した小さいHA断片よりは大きい分子量を有する。いくつかの態様では、本明細書に記載の癌治療に用いられる脱重合化HAの少なくとも80%(例えば、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上)は、分子量が、100〜500kDa(例えば、150kDa〜450kDa;200kDa〜400kDa、200kDa〜500kDa、300kDa〜500kDa、400kDa〜500kDa、100kDa〜200kDa、100kDa〜300kDa、または100kDa〜400kDa)の範囲である。
本明細書に記載の脱重合化HAは、脱重合HAの抗がん作用に寄与していると考えられる鎖間共有架橋を多く含むことが好ましい。鎖間共有架橋とは、2つの別個のHA分子の間に形成された共有結合を指す。いくつかの態様では、脱重合化HAにおける鎖間共有架橋のレベルは少なくとも25%である。つまり、全HA分子中の少なくとも25%のHA分子が、別のHA分子との間に、少なくとも1つの共有架橋を含んでいる。他の態様において脱重合化HAは、少なくとも30%、例えば、40%、50%、60%、70%、80%、または90%のレベルの鎖間共有架橋を含んでいる。
本明細書に記載の脱重合化HAは、天然のHAとは異なる立体構造を含む場合もある。いくつかの態様では、脱重合化HAの少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)が、還元末端にN−アセチルグルコサミンを、および/または非還元末端にグルクロン酸を含む場合がある。一例では、脱重合化HAの少なくとも85%の還元末端がN−アセチルグルコサミンであり、および/または少なくとも95%の非還元末端がグルクロン酸である。
本明細書に記載の脱重合化HAは、当該分野で知られている好適な方法のいずれによっても調製することができる。いくつかの態様では、脱重合化HAは超音波処理によって調製される。例えば、高分子量HA(例えば、分子量が100、200、300または400万ダルトンを超えるHA)を好適な条件(例えば頻度、処理時間、および温度)で超音波処理し、過分解させずに分解して、所望の抗がん作用を有する脱重合化HAを生産することができる。一例では、超音波処理工程は以下に挙げる条件の1つ以上を満たす条件で実施することができる。
頻度:20〜100kHz、例えば20〜80kHz、40〜80kHz、50〜70kHz、60〜70kHzまたは60〜75kHz。
処理時間:2〜8時間、例えば3〜6時間、2〜7時間または4〜6時間。
温度:50〜90℃、例えば、50〜90℃、50〜80℃、60〜80℃、70〜80℃、または75〜80℃。
当業者であれば所望の脱重合化HAを生産するために好適な超音波処理の条件を理解でき、また、慣習的な実践によって決定することができる。一例を以下に挙げる。
組織から単離するかまたは業者から購入することができる(医薬品等級のHA)天然のHAを予め決めておいた条件で超音波処理することができる。その結果として得られる分解されたHAを試験し、慣習的な技術(例えば、電気泳動)によって、分子量の範囲を決定することができる。そのようにして得られた結果に基づいて、超音波処理の条件を調整することができる。分解したHAのうちの実質的な部分が、予め決めておいた値を超える分子量、例えば500kDaであった場合、超音波処理条件を調整することができる。例えば、より分解度が進むように、頻度、処理時間および/または温度を上げることができる。逆に、分解したHAのうちの実質的な部分が予め決めておいた値よりも小さい分子量、例えば100kDaであった場合、分解レベルを下げるように超音波処理条件を調整することができる。
一例では超音波処理工程を、約53kHzで約3〜6時間、約70℃で行う。
前述した方法によって得られた、好適な特徴、例えば好適な分子量、鎖間架橋レベルおよび/または立体構造の変化を有する脱重合化HAについて標準的な方法によって、例えば下記実施例で説明する方法によって解析し、その抗がん作用を確認することができる。
前述した調製方法のいずれかによって生産された脱重合化HAおよびこれらを含有している組成物(例えば、医薬組成物)もまた、本開示の範囲に入る。
抗HYAL−2抗体
ヒアルロニダーゼ−2は、ヒアルロナンをインビボで分解する酵素である。例えば、ヒトHyal−2のアミノ酸配列を以下に示す(配列番号2):
(i)抗体
本明細書に記載の癌治療に使用する、これもまた本明細書に記載されている抗体は、ヒアルロニダーゼ−2、例えばヒトHyal−2に結合可能である。例えばこの抗体は、配列番号2の227〜241番目に相当する、Hyal−2中の領域に結合することができる。いくつかの態様において抗体は、CPDVEVARNDQLAWL(配列番号1)またはその断片に結合する。このような断片は、配列番号2のうちの、少なくとも4個の連続したアミノ酸残基を含んでいる。いくつかの態様において抗体は、N末端、C末端または両方に1つ以上の欠損がある(例えば2、3、4または5個のアミノ酸残基が欠損している)配列番号2の断片に結合する。
抗体(複数形も同じ意味で使用する)は、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に、免疫グロブリン分子の可変領域に局在している少なくとも1つの抗原認識部位を介して特異的に結合することが可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、完全な(つまり完全長の)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(scFv)、その突然変異体、抗体部分を含んでいる融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ディアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)ならびに、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の全ての改変型構造、例えば、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体および共有結合的に改変された抗体を包含する。抗体には、任意のクラス、例えばIgD、IgE、IgG、IgA、またはIgM(もしくはそのサブクラス)の抗体が含まれ、また抗体は特定のクラスのものである必要はない。抗体重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、免疫グロブリンをいくつかのクラスに分類することができる。免疫グロブリンには主に、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMという5つのクラスがあり、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(イソ型)に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分類することができる。免疫グロブリンのそれぞれのクラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれている。それぞれのクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造はよく分かっている。
本明細書に記載の方法において使用される抗体は、マウス、ラット、ヒト、または任意の他の由来の抗体であってよい(キメラまたはヒト化抗体を含む)。いくつかの例において抗体は、改変された定常領域、例えば、免疫学的に不活性な定常領域、例えば、補体媒介性溶解を引き起こさない、または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を刺激しない定常領域を含む。ADCC活性は米国特許第5,500,362号に開示されている方法によって評価することができる。他の態様において定常領域は、欧州免疫学雑誌(Eur.J.Immnol.)(1999)29:2613〜2624;PCT出願のPCT/GB99/01441;および/または英国特許出願第9809951.8号に記載されているような改変型である。
本明細書に記載の抗体はいずれも、モノクローナルであってもまたはポリクローナルであってもよい。「モノクローナル抗体」とは均一の抗体集団を指し、「ポリクローナル抗体」は不均一な抗体集団を指す。これら2つの用語は、抗体供給源またはその作成方法を限定するものではない。
一例において本明細書に記載の方法で用いられる抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体とは、非ヒト(例えばマウス)形態の抗体を指し、それらは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその抗原結合断片である。大抵の場合ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(受容抗体)の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、望ましい特異性、親和性および結合能を有する非ヒト種(供与抗体)例えばマウス、ラット、またはウサギのCDR由来の残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリンである。例えば、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基が、対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらにヒト化抗体は、受容抗体にも、組み入れられるCDRまたはフレームワーク配列にも見られないが、抗体の性能をよりよくし、かつ、最適化するために含まれる残基を含み得る。一般的にヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインを実質的に全て含み、このうち、CDR領域の全てまたは実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、FR領域の全てまたは実質的に全てはヒト免疫グロブリンの共通配列に相当する。ヒト化抗体はさらに、免疫グロブリン、通常はヒト免疫グロブリンの、定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部を至適に含む。抗体は、国際公開第99/58572号に記載されているように改変されたFc領域を含む場合もある。他のフォーマットのヒト化抗体は、元の抗体のものとは異なる1つ以上(1、2、3、4、5、6個)のCDRを含み、これらは、元の抗体の1つ以上のCDR「に由来する」1つ以上のCDRとも呼ばれる。ヒト化抗体は、親和性成熟を伴う場合もある。
別の例において本明細書に記載の抗体は、ヒト抗体由来の重鎖定常領域と軽鎖定常領域を含む場合のあるキメラ抗体である。キメラ抗体とは、第一の種に由来する可変領域または可変領域の一部と、第二の種に由来する定常領域を含む抗体を指す。通常これらのキメラ抗体では、軽鎖および重鎖両方の可変領域は1種の哺乳類(例えばマウス、ウサギ、およびラットなどの非ヒト哺乳類)に由来する抗体の可変領域を模倣し、定常部分は、別の哺乳類、例えばヒト由来の抗体に見られる配列と相同である。いくつかの態様では、可変領域および/または定常領域中にアミノ酸修飾を施すこともできる。
いくつかの例において本明細書で開示の抗体は、Hyal−2またはその断片(例えば、配列番号1)に特異的に結合する。標的またはエピトープに「特異的に結合する」抗体という用語は、当該分野ではよく知られており、そのような特異的結合を決定するための方法も当該分野で知られている。ある分子が特定の標的抗原に対し、他の標的よりも高頻度で、より迅速に、より長い期間および/またはより高い親和性でもって反応するまたは関係する場合、その分子は「特異的結合」を示すと言われる。ある抗体が、標的抗原またはエピトープに、他の抗原またはエピトープに対するよりも高い親和性、結合力で、より迅速におよび/またはより長い期間結合する場合、その抗体は標的抗原またはエピトープに「特異的に結合する」。例えば、Hyal−2またはHyal−2エピトープに特異的に(または優先的に)結合する抗体は、他の抗原またはエピトープ(他のHyal−2エピトープなど)に対してよりも、この抗原またはエピトープに高い親和性、結合力で、より迅速におよび/または長い期間結合する抗体である。また、この定義を読むことから、第一の標的抗原に特異的に結合する抗体は、第二お標的抗原に特異的にまたは優先的に結合する場合も結合しない場合もあると理解される。つまり「特異的結合」または「優先的結合」とは、排他的な結合である必要はない(それも含まれるが)。一般的に、結合への言及は優先的な結合を意味するが、そうである必要はない。
本明細書に記載するように、抗Hyal−2抗体のHyal−2(例えば、ヒトHyal−2)に対する結合親和性、例えば膜結合型ヒトHyal−2に対する結合は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pMのいずれにも満たないものから、およそ2pMのいずれであってもよい。結合親和性はKDつまり平衡解離定数で表すことができ、高い結合親和性は低いKDに相当する。抗体のHyal−2に対する結合親和性を決定するための方法の一つに、抗体の単機能Fab断片の結合親和性を測定することがある。単機能Fab断片を得るために、抗体(例えば、IgG)をパパインで切断するか、または組換え的に発現させることができる。抗体の抗Hyal−2 Fab断片の親和性は、表面プラズモン共鳴(ビアコア3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、ビアコア社、ピスカタウェイ、ニュージャージー)で決定することができる。動的結合率(kon)および解離率(koff)(通常25℃で測定される)が得られ、平衡解離定数(KD)をkoff/konとして算出する。
いくつかの態様において抗体は、ヒトHyal−2に結合するが、別の哺乳類種由来のHyal−2には有意に結合しない。いくつかの態様において抗体は、ヒトHyal−2、ならびに別の哺乳類種由来の1種類以上のHyal−2に結合する。さらに他の態様において抗体は、Hyal−2、例えばヒトHyal−2の直鎖状エピトープまたは立体エピトープに結合することができる。
(ii)抗体の調製
本明細書に記載のHyal−2またはその断片に結合可能な抗体は、当該分野で知られている方法のいずれによっても作成することができる。例えば、ハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)(1988)『抗体:実験の手引き(Antibodies:A Laboratory Manual)』コールド・スプリング・ハーバー研究所出版局を参照のこと。
いくつかの態様では、標的抗原(例えば、ヒトHyal−2)に特異的な抗体を、標準的なハイブリドーマ技術によって作成することができる。必要に応じてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの担体タンパク質に結合させた完全長の標的抗原またはその断片を用いて、その抗体に結合する抗体を生成させるために、宿主動物に免疫性を付与することができる。宿主動物に免疫を付与するための経路およびスケジュールは、本明細書の以降の項で記載するように、一般的に、抗体を刺激および産生するための確立されている標準的な技術に沿ったものである。マウス、ヒト化およびヒト抗体を産生するための一般的な技術は当該分野で知られており、また、本明細書でも記載する。ヒトを含む任意の哺乳類対象またはそれらに由来する抗体産生細胞は、ヒトを含む哺乳類のハイブリドーマ細胞株を産生するための基盤となるように操作することができる。一般的に、本明細書に記載の免疫原を含む一定量の免疫原を、宿主動物の腹膜に、筋内に、経口的に、皮下に、足底内に、および/または皮内に接種する。
ハイブリドーマは、クラー(Kohler),B.およびミリシュタイン(Milstein),C.(1975)ネイチャー、256:495〜497の基本的な体細胞ハイブリダイゼーション技術、またはバック(Buck),D.W.ら、インビロト(In Vitro)、18:377〜381(1982)によって改変された技術を用い、リンパ球や不死化した骨髄腫細胞から調製することができる。X63−Ag8.653を含むがこれらには限定されない利用可能な骨髄腫細胞株、およびソーク研究所の細胞頒布センター(Salk Institute、Cell Distribution Center)(サンディエゴ、カリフォルニア、米国)から入手可能な細胞株を、ハイブリダイゼーションに利用することもできる。通常この技術は、ポリエチレングリコールなどの融合剤(fusogen)を使用して、または当業者によく知られている電気的な手段によって、骨髄腫細胞とリンパ細胞を融合させることを伴う。融合させた後、細胞を融合培地から分離し、選択的な成長培地、例えばヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地中で生育させて、ハイブリダイズしていない親細胞を除去する。本明細書に記載の血清を含むまたは血清を含まない培地はいずれも、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの培養に用いることができる。細胞融合技術の代わりに、EBVで不死化させたB細胞を使って、本発明の抗Hyal−2モノクローナル抗体を産生してもよい。ハイブリドーマを増やして、必要があればサブクローニングし、そして上清を抗免疫原活性に関し、標準的な免疫検定の手法(例えば、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、または蛍光免疫測定法)で検定する。
抗体源として使用可能なハイブリドーマには、膜結合型Hyal−2に結合可能なモノクローナル抗体を産生し、対応するシグナル伝達経路のきっかけとなる親ハイブリドーマの全ての誘導体や後代細胞が包含される。そのような抗体を産生するハイブリドーマを、知られている手法によってインビトロでまたはインビボで生育させてもよい。必要であれば、硫酸アンモニウム沈殿法、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、および限外濾過などの標準的な免疫グロブリン精製手法によって、モノクローナル抗体を培地または体液から単離してもよい。もしも望ましくない活性が認められる場合には、例えば、免疫原を結合させた固相でできた吸着剤に沈殿物をかけ、免疫原から所望の抗体を溶出または放出させることで、これを除去することができる。免疫する種で免疫原性をもつタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤)に二機能性試薬または誘導体化剤(例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して結合する)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介して結合する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は別のアルキル基))を使って結合させた標的アミノ酸配列を含有している標的抗原または断片で宿主動物を免疫化することで、抗体(例えばモノクローナル抗体)の集団を得ることができる。
所望ならば、目的の抗体(例えば、ハイブリドーマによって産生された抗体)の配列を決定してもよく、その後、ポリヌクレオチド配列は発現または増殖用のベクターにクローニングしてもよい。目的の抗体をコードしている配列を宿主細胞中のベクターとして維持してもよく、その後、宿主細胞を増やし、以後の使用のために凍結させることができる。あるいは、ポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に用いて、抗体を「ヒト化」する、または親和性を改善する(親和性成熟)もしくは抗体の他の特徴を改善することもできる。例えば、抗体を臨床試験やヒトの治療において使用した場合の免疫応答を回避するために、定常領域を改変して、ヒトの定常領域により似せてもよい。標的抗原に対するより高い親和性を得るため、およびHyal−2介在性シグナル伝達経路の調節に対する強い効力を得るために、抗体の配列を遺伝的に操作することが望まれる場合もある。標的抗原に対する結合特異性を維持しながら、抗体の1つ以上のポリヌクレオチドに変更を施すことが可能であることは当業者には明らかである。
他の態様では、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように改変され、市販されているマウスを利用して、完全なヒト抗体を得ることができる。より望ましい(例えば、完全なヒト抗体)またはより強固な免疫応答を生じるように設計されているトランスジェニック動物を使用して、ヒト化またはヒト抗体を生成してもよい。そのような技術の例としては、アムジェン社(フリーモント、カリフォルニア)のゼノマウス(登録商標)、およびメダレックス社(プリンストン、ニュージャージー)のHuMAb−マウス(登録商標)およびTCマウス(商標)がある。別の態様では、抗体を、ファージディスプレー技術によって組換え的に作成してもよい。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号;および同第6、265、150号;ならびにウィンター(Winter)ら、(1994)免疫学年報(Annu.Rev.Immunol.)12:433〜455を参照のこと。あるいは、ファージディスプレー技術(マカファーティー(McCafferty)ら、(1990)ネイチャー、348:552〜553)を使用して、免疫を付与していないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子のレパートリーから、インビトロで、ヒト抗体および抗体断片を産生することもできる。
完全な抗体(完全長抗体)の抗原結合は、慣習的な方法によって調製することができる。例えば、抗体分子のペプシン消化によってF(ab’)2断片を産生することができ、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することでFab断片を生成することができる。
ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体および二特異的抗体などの遺伝的に改変した抗体は、例えば、標準的な組換え技術によって産生することができる。一例では、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードしているDNAは容易に単離し、標準的な手法で(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列を決定することができる。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦単離すれば、DNAを1種以上の発現ベクター中に配置させ、これを次に、形質転換しなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞もしくは骨髄腫細胞に形質転換し、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成させてもよい。例えば、PCT出願の国際公開第87/04462号を参照のこと。次いで、ヒトの重鎖および軽鎖定常ドメインを相同のマウス配列(モリソン(Morrison)ら、(1984)米国アカデミー紀要、81:6851)で置換すること、または免疫グロブリンのコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドをコードしている配列の全体または一部を共有結合させることでDNAを、修飾することができる。この様式では、標的抗体に対する結合特異性を有する遺伝的に改変した抗体、例えば「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体を調製することができる。
「キメラ抗体」を産生するために開発された技術は当該分野でよく知られている。例えば、モリソンら、(1984)米国アカデミー紀要、81:6851;ノイバーガー(Neuberger)ら、(1984)ネイチャー、312:604;およびタケダ(Takeda)ら、(1984)ネイチャー、314:452を参照のこと。
ヒト化抗体を構築するための方法も当該分野でよく知られている。例えば、クィーン(Queen)ら、米国アカデミー紀要、86:10029〜10033(1989)を参照のこと。一例では、親非ヒト抗体のVHおよびVLの可変領域を、当該分野で知られている方法に従って、三次元分子モデル解析にかける。次に、同じ分子モデル解析によって、正しいCDR構造の形成に重要だと予測されるフレームワークのアミノ酸残基を同定する。並行して、親VHおよびVL配列を検索クエリーとして、任意の抗体遺伝子データベースから、親非ヒト抗体のアミノ酸配列と相同のアミノ酸配列を有するヒトのVHおよびVL鎖を同定する。その後、ヒトのVHおよびVLアクセプター遺伝子を選択する。
選択したヒトアクセプター遺伝子中に含まれているCDR領域を、親非ヒト抗体またはその機能性変異体に由来するCDR領域で置き換えることができる。必要があれば、親鎖のフレームワーク領域中の、CDR領域との相互作用に重要であると予想される残基(前述した説明を参照のこと)を、ヒトアクセプター遺伝子中の対応する残基での置換に使用することができる。
一本鎖抗体は、組換え技術を介して、重鎖可変領域をコードしているヌクレオチド配列と軽鎖可変領域をコードしているヌクレオチド配列とを繋ぐことで調製することができる。2つの可変領域の間に、柔軟性のあるリンカーを組み込むことが好ましい。あるいは、一本鎖抗体を生産するための記載されている技術(米国特許第4,946,778号および同第4,704,692号)を適用してファージscFvライブラリーを作成し、このライブラリーから慣習的な手法によって、Hyal−2に特異的なscFvクローンを同定することができる。陽性クローンをさらにスクリーニングにかけ、Hyal−2介在性シグナル伝達経路を誘発するクローンを同定することができる。
当該分野で知られている方法および本明細書に記載されている方法によって得られる抗体は、当該分野でよく知られている方法によって解析することができる。例えばそのような方法の一つに、抗原が結合するエピトープを同定する方法、つまり「エピトープマッピング」がある。当該分野では、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングするおよび解析する方法が多く知られており、そのような方法としては、抗体抗原複合体の結晶構造の解析、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドを使用するアッセイなどがあり、例えば、ハーロウおよびレーン『抗体の使用:実験の手引き(Using Antibodies:A Laboratory Manual)』コールド・スプリング・ハーバー研究所出版局(1999)の第11章に記載されている。別の例では、エピトープマッピングを利用して、抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープは直線状のエピトープ、つまり、アミノ酸の単一の鎖に含まれているエピトープの場合も、または単一の鎖(直線状の一次構造)に含まれている必要はないアミノ酸同士の、三次元的な相互作用によって形成されている立体エピトープである場合もある。抗体を用いた結合アッセイ用に、様々な長さの(例えば、少なくとも長さが4〜6アミノ酸の)ペプチドを単離しても、または合成しても(例えば組換え的に合成しても)よい。別の例では、抗体が結合するエピトープを、標的抗原の配列に由来する重複しているペプチドを使用した体系的なスクリーニングと抗体による結合を決定することで、決定することができる。遺伝子断片発現アッセイでは、標的抗原をコードしているオープンリーディングフレームを無作為にまたは特定の遺伝子構築物によって断片化し、発現させた抗原断片と試験する抗体との反応性を決定する。遺伝子断片を、例えば、PCRによって生産し、次いで転写し、放射性アミノ酸存在下、インビトロでタンパク質に翻訳してもよい。その後、抗体と放射性標識した抗原断片との結合を、免疫沈降やゲル電気泳動によって決定する。また、ファージ粒子の表面に提示させた無作為なペプチド配列の大規模ライブラリー(ファージライブラリー)を使用して、特定のエピトープを同定することもできる。あるいは、単純な結合アッセイで、重複しているペプチド断片の限定的なライブラリーを、被験抗体との結合に関して試験することもできる。さらに別の例では、抗原結合ドメインへの突然変異生成、ドメインスワッピング実験およびアラニンスキャニングによる突然変異生成を行って、エピトープとの結合に必要とされる、十分なおよび/または必須の残基を同定することができる。例えば、Hyal−2ポリペプチドの様々な断片が、密接に関係しているが、抗原的には別個のタンパク質(例えばニューロトロフィンタンパク質ファミリーの別のメンバー)で置き換えられている(スワップしている)標的抗原の突然変異体を使用して、ドメインスワッピング実験を行うことができる。抗体とHyal−2突然変異体との結合を評価することで、特定の抗原断片の抗体結合に対する重要性を評価することができる。
あるいは、同じ抗原に結合することが分かっている他の抗体を使用して、競合アッセイを実施し、ある抗体がその他の抗体と同じエピトープに結合するか否かを決定することができる。競合アッセイは当業者によく知られている。
さらに、このようにして調製した任意の抗Hyal−2抗体の抗がん作用を、慣習的な技術および以下の実施例で説明する技術によって試験することができる。
医薬組成物
脱重合化HAまたは抗Hyal−2抗体を、緩衝剤などの薬学上許容可能な担体(賦形剤)と混合して、癌細胞の成長抑制および癌の治療に使用する医薬組成物を形成することができる。「許容可能な」とは、その担体が組成物の活性成分と適合し(好ましくは活性成分を安定化することが可能で)、かつ、治療を受ける対象にとって有害でないことを意味する。薬学上許容可能な賦形剤(担体)には、当該分野でよく知られている緩衝剤が含まれる。例えば、レミントン『レミントンの薬学』第20版(2000)リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス、K.E.フーバー編を参照のこと。
本方法に用いる医薬組成物には、薬学上許容可能な担体、賦形剤、または安定剤を、凍結乾燥した製剤または水性溶液の形で含めることができる。(レミントン『レミントンの薬学』第20版(2000)リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス、K.E.フーバー編)。許容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度では受容者によって無毒で、また、緩衝剤(リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸など);酸化防止剤(アスコルビン酸およびメチオニンなど);防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性高分子(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなど);単糖、二糖、および他の糖質(グルコース、マンノース、またはデキストランなど);キレート剤(EDTAなど);糖類(ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなど);塩形成性対イオン(ナトリウムなど);金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤(ツイーン(商標)、プルロニック(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)など)を含み得る。薬学上許容可能な賦形剤については本明細書でさらに記載する。
いくつかの例において本明細書に記載の医薬組成物は、抗Hyal−2抗体または脱重合化HAを含有しているリポソームを含む。そのようなリポソームは、エプスタイン(Epstein)ら、米国アカデミー紀要、82:3688(1985);ホワン(Hwang)ら、米国アカデミー紀要、77:4030(1980);および米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されている方法などの、当該分野で知られている方法によって調製することができる。米国特許第5,013,556号には、循環時間の長いリポソームが記載されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含んでいる脂質を用いた逆相蒸発法(reverse phase evaporation method)によって生成することができる。リポソームを決められた口径のフィルターに通すことで、望ましい直径のリポソームが得られる。
活性成分(例えば、本明細書に記載の抗Hyal−2抗体または脱重合化したHA)を、マイクロカプセル中に、例えば、コアセルべーション技術または界面重合によって調製した、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセルのそれぞれに、コロイドによる薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)としてまたはマクロエマルションとして封入してもよい。このような技術は当該分野で知られており、例えば、レミントンの『レミントンの薬学』第20版、マック出版(2000)を参照のこと。
他の例では、本明細書に記載の医薬組成物を、持続放出性の形態で処方することができる。持続放出性製剤の好適な例としては、抗体を含有している疎水性の固体ポリマーの半透性で、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどに成形されたマトリックスがある。持続放出性マトリックスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸と7エチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸共重合体、例えばリュープロン・デポット(LUPRON DEPOT)(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体と酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微粒子)、スクロース酢酸イソブチル、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
インビボ投与に使用する医薬組成物は無菌的でなければならない。このことは、例えば無菌的な濾過膜を通して濾過することで容易に達成される。治療用の抗体組成物は通常、無菌的に操作できるポートのある容器、例えば輸液バッグ、または皮下注射用の針を刺し通すことのできるストッパーのある容器に入れられている。
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口もしくは直腸投与用、または吸入もしくは吹込投与用の錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁液、または座剤などの単位容量形態であってもよい。
錠剤などの固形組成物を調製するためには、主活性成分を医薬担体、例えば標準的な打錠用成分、例えばトウモロコシデンプン、乳糖、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはガム、および他の製剤用の希釈剤、例えば水と混合して、本発明の化合物またはその毒性のない薬学上許容可能な塩の均一な混合物を含有している、固形の予備処方組成物を形成することができる。これらの予備処方組成物が均一であると言う場合、それは、活性成分が組成物全体に均一に分散していて、組成物を容易に、錠剤、丸薬およびカプセルなどの均等で有効な単位容量形態に分割できることを意味する。次いでこの固形予備処方組成物を、本発明の活性成分を0.1〜約500mg含有している、前述したような単位容量形態に分割する。この新規組成物の錠剤または丸薬を被覆しても、あるいは、持続作用の恩恵が受けられるように加工してもよい。例えば、錠剤または丸薬に、内部調剤成分と、これを覆うエンベロープの形をとる外側調剤成分を含めることもできる。この2つの成分を腸溶性の層で分けて、胃での分解を防ぎ、内部成分が完全なまま十二指腸に届けられるように、または放出を遅らせるようにしてもよい。このような腸溶性の層または被覆剤には、様々な材料を使用することができ、そのような材料としては、いくつかのポリマー酸や、シェレック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料を含むポリマー酸の混合物が挙げられる。
好適な界面活性剤としては、特に、非イオン性の薬剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン(例えばツイーン(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えばスパン(商標)20、40、60、80または85)が挙げられる。界面活性剤を含む組成物は、0.05〜5%の界面活性剤を好都合に含み、これは0.1〜2.5%であってもよい。当然のことながら、他の成分、例えばマンニトールまたは他の薬学上許容可能な媒体も必要に応じて含めてもよい。
好適な乳剤は、市販されている脂肪乳剤、例えばイントラリピッド(Intralipid)(商標)、リポシン(Liposyn)(商標)、インフォニュトロール(Infonutrol)(商標)、リポファンジン(Lipofundin)(商標)およびリピフィサン(Lipiphysan)(商標)を使って調製することができる。活性成分は、予め混合しておいた乳剤組成物に溶解しても、あるいは、油(例えばダイズ油、紅花油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油またはアーモンド油)に溶解して、リン脂質(例えば卵リン脂質、ダイズリン脂質またはダイズレシチン)および水を混合することで乳剤を形成してもよい。乳剤の浸透圧を調整するために、グリセロールまたはグルコースなどの他の成分を含めてもよいと理解される。好適な乳剤は通常、最大20%の油、例えば5〜20%の範囲の油を含む。脂肪乳剤には、0.1〜1.0.imの、特に0.1〜0.5.imの脂肪滴が含まれていてもよく、かつ、pHは5.5〜8.0の範囲であってよい。
乳剤組成物は、抗Hyal−2抗体をイントラリピッド(商標)またはその成分(ダイズ油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することで調製したものであってもよい。
吸入または吹込用の医薬組成物としては、薬学上許容可能な水性溶媒もしくは有機溶媒に溶解している溶液および懸濁液、またはその混合物、および粉末が挙げられる。液体または固体組成物は、前述したような好適な薬学上許容可能な賦形剤を含み得る。いくつかの態様において組成物は、局所または全身に作用するように、経口的にまたは経鼻的に投与される。
好ましい無菌的な薬学上許容可能な溶媒に溶解した組成物を、ガスを利用して噴霧吸入してもよい。噴霧吸入される溶液は、噴霧吸入用の装置から直接吸入しても、あるいは、噴霧吸入用の装置をフェイスマスク、テント、または間欠的陽圧呼吸装置に接続してもよい。溶液、懸濁液または粉末組成物を、製剤を適した様式で送達する装置を介して、好ましくは経口的にまたは経鼻的に投与することができる。
癌治療
本明細書で使用する場合「癌」という用語は、一般的に制御されていない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理学的な状態を指す。本明細書に記載する癌は、良性および悪性の癌、転移性癌、腺腫、または腺癌である可能性がある。「良性腫瘍」または「良性癌」は、発症した場所での限局性を維持し、離れた場所に浸潤、侵入または転移する能力をもたない腫瘍を指す。「悪性腫瘍」は、侵入し、その周囲の他の組織に損傷を与える腫瘍を指す。
本明細書に記載の方法は、いかなる種類の癌の治療にも適用可能であり、そのような癌には、これらには限定されないが、扁平上皮癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、食道または胃癌、膵癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎つまり腎臓癌、前立腺癌、ある種の頭頸部癌、B細胞リンパ腫(例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫);メラノーマ、中皮腫、および多発性骨髄腫などが含まれる。特に好ましいものは、乳癌、メラノーマ、基底細胞癌(例えば、皮膚基底細胞癌)、前立腺癌、肺癌、膠芽腫、および神経芽細胞腫である。
本明細書で開示する癌の治療法を実践するためには、有効量の、前述した医薬組成物をその治療を必要とする対象(例えばヒト)に、好適な経路を介して、例えば静脈内投与で、例えば急速投与として、あるいは筋内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、鞘内、経口、吸入または局所経路を介した長時間にわたる持続注入によって、投与することができる。ジェット噴霧器や超音波噴霧器などの液体製剤用の市販されている噴霧吸入器も投与に有用である。液体製剤を直接噴霧することも、凍結乾燥した粉末を再構成したあとに噴霧することもできる。あるいは、本明細書に記載の抗Hyal−2抗体または脱重合化HAを、フルオロカーボン製剤と定量吸入器を使ってエアロゾルの形にしてもよく、あるいは、凍結乾燥し、破砕した粉末として吸入することもできる。
本明細書に記載の方法によって治療される対象は哺乳動物であってよく、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、これらには限定されないが、家畜、競技動物、愛玩動物、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが含まれる。その治療を必要とするヒト対象は、癌に罹患している、癌のリスクのある、または癌が疑われるヒト患者であってよい。癌に罹患している対象は、慣習的な健康診断、例えば、臨床検査、CTスキャン、または超音波試験で同定することができる。癌に罹患していることが疑われる対象は、その疾患の症状を1つ以上、例えば、発熱、極度の疲労、原因不明の体重減少、静脈での血栓形成、脱力感およびめまい、腫脹、皮膚の変化、嚥下困難、乳房の変化、出血、断続的な腹部疼痛および抑うつ状態、消化不良、口の変化、痛み、および/またはしつこい咳のうちの1つ以上を示すだろうと考えられる。癌のリスクのある対象とは、その疾患に関連するリスク因子を1つ以上保持している対象の場合がある。癌に関連するリスク因子としては、これらには限定されないが、癌の家族歴、タバコおよび/またはアルコールの使用、喫煙、ウイルス感染(例えば、HBV、HCV、HPV、またはEBV)、電離放射線および/または紫外線照射、エストロゲン、または発癌物質への過度の暴露、遺伝的背景(BRCA−1およびBRCA−2などの癌感受性遺伝子をもっている)などが挙げられる。
本明細書で使用する場合「有効量」とは、単独でまたは1種以上の他の活性薬剤との併用でのいずれかで、対象に治療効果を与えるのに必要とされる各活性薬剤の量を指す。当業者であればわかるように、有効量は治療する特定の状態、状態の重篤度、個々の患者の指標(年齢、健康状態、大きさ、性別および体重など)、治療期間、併用療法(もしあれば)の特性、投与する特定の経路などの健康管理者の知識や見解の範囲内にある要因によって変化する。これらの因子は当業者にはよく知られており、慣習的な程度の実験によって対処することができる。通常、個々の成分またはその組み合わせの最大投与量、つまり、適正な医学的判断による安全な最高用量を使用することが好ましい。当業者には当然なことであるが、医学的な理由、身体的な理由、または実質的に他の全ての理由によって、患者がより少ない用量または許容量を主張することもあり得る。
一般的に、半減期などの実験的な考察も用量の決定に寄与するだろう。例えば、ヒト免疫系と適合する抗体、例えばヒト化抗体または完全なヒト抗体を使用して、抗体の半減期を延ばすことや、宿主の免疫系からの攻撃を受けている抗体を保護することができる。投与頻度は、治療経過とともに決定し、調整することができる。また投与頻度は通常、そうである必要はないが、癌の治療および/または抑制および/または緩和および/または遅延に基づく。あるいは、抗Hyal−2抗体または脱重合化HAの、持続性で連続的放出製剤が適切な場合もある。持続放出を達成するための様々な製剤および装置が当該分野では知られている。
一例では、本明細書に記載の抗Hyal−2抗体または脱重合化HAの投与量は、1種類以上の活性成分の投与を受けた個人において、経験的に決定することができる。薬剤の用量を徐々に増やして個人に投与する。アンタゴニストの効力を評価するために、癌の指標を追跡することができる。
通常、本明細書に記載の抗体のいずれかを投与する場合、初回候補投与量は約2mg/kgとなる可能性がある。本開示の目的における典型的な一日の投与量は、前述した要因により、およそ0.1μg/kg〜3μg/kg〜30μg/kg〜300μg/kg〜3mg/kg、〜30mg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上のいずれかになるだろう。数日またはそれを上回る期間の反復投与では、状態にもよるが、症状の所望の抑制が生じるまで、または十分な治療レベルが達成され、癌もしくはその症状が緩和されるまで、あるいは癌発症のリスクが軽減されるまで、治療が続けられる。例示的な投与計画では、初回に約2mg/kgを投与し、その後、1週間に1回、約1mg/kgの維持量の抗体を投与するか、または2週間に1回、約1mg/kgの維持量を投与する。しかしながら、施術者が望む薬物動態の減衰パターンに応じて、他の投与計画が有用なこともある。例えば、1週間に1〜4回投与することが想定される。いくつかの態様では、約3μg/mg〜約2mg/kg(例えば約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、および約2mg/kg)の用量を用いてもよい。いくつかの態様において投与頻度は、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、もしくは10週間に1回;または1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、もしくは3ヶ月またはそれ以上の期間に1回である。この治療の進行状況は、標準的な技術やアッセイによって容易に監視される。投与計画(使用する抗体を含む)は、時間経過とともに変わる場合がある。
脱重合化HAを使用する場合、患者の体重1キログラム当たり約0.1〜300mgの率で1〜3回に分けて、または本明細書で開示するように投与することができる。正常な体重の成人患者に関するいくつかの態様では、約0.3〜5.00mg/kgの範囲の用量を投与することができる。特定の投与計画、つまり用量、時間および反復は、特定の個人およびその個人の病歴、ならびに個々の薬剤の特性(例えばその薬剤の半減期および当該分野で知られている他の考察)に依存する。
本開示の目的では、抗Hyal−2抗体または脱重合化HAの適切な用量は、使用される特定の薬剤および癌の種類と重篤度(その治療薬が予防的に投与されるのであっても、あるいは治療的に投与されるのであっても)、これまでの治療、患者の病歴およびその薬剤への反応、ならびに主治医の判断に依存する。医師は通常、望まれる結果が達成される用量に達するまで、抗Hyal−2抗体または脱重合化HAを投与する。治療薬の投与は、例えば、患者の生理学的な状態(投与が治療的であってもあるいは予防的であっても)、および当業者に知られている他の要因に応じて、連続的または断続的になる場合がある。薬剤の投与は、予め選択された期間にわたる本質的に連続的なものになる場合も、または一定の期間をおいた(例えば、癌を発症する前、発症中、または発症後のいずれかの)一連の投与となる場合もある。
本明細書で使用する場合、「治療する」という用語は、癌を患っている、癌の症状がある、または疾患の素因のある対象に、その疾患、疾患の症状、または疾患に対する素因を治療する、治癒する、緩和する、軽減する、変化させる、治す、回復させる、改善する、または影響を与えるという目的で、1種以上の活性薬剤を含んでいる組成物を対象に適用または投与することを指す。
癌を緩和することには、発症もしくは疾患の進行を遅らせること、または疾患重篤度を軽減することが含まれる。疾患の緩和には、必ずしも治療上の結果は必要とされない。本明細書で使用する場合、癌の発症を「遅らせる」とは、疾患の進行を、延期する、妨げる、遅くする、遅延する、安定化する、および/または先延ばしにすることを意味する。この遅延は、疾患の経緯および/または治療される個人によって、様々な長さとなり得る。疾患の発展を「遅らせる」または緩和する方法、または疾患の発症を遅らせる方法は、ある一定の時間枠の中で、疾患の症状のうちの1つ以上が発展する確率を下げるおよび/または一定の時間枠の中で、その方法を使用しなかった場合と比較して、症状の度合いを下げるものである。そのような比較は通常、統計的に有意な結果を得るのに十分な数の対象を含む臨床試験に基づくものである。
疾患の「発展」または「進行」とは、疾患の初期症状および/またはその後の進行を意味する。疾患の発展は、当該分野でよく知られている標準的な臨床技術によって検出および評価することができる。しかしながら発展とは、検出不能な場合もある進行も指す。本開示の目的において発展または進行は、症状の生物学的な経過を指す。「発展」には、出現、再発および発症が含まれる。本明細書で使用する場合、癌の「発症」または「出現」には、最初の発症および/または再発が含まれる。
いくつかの態様では、そのような治療を必要とする対象に、患者における癌細胞の成長を少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上)抑制するのに十分な量の本明細書に記載の抗Hyal−2抗体または脱重合化HAを投与する。他の態様では、癌発展のリスクを軽減する、癌の発症を遅らせる、または癌の進行を抑制するために、治療薬を患者に(例えば、癌に罹患していることが疑われるまたは癌発展のリスクのある癌患者に)投与する。
医学分野の当業者に知られている標準的な方法を用い、治療する癌の種類または癌の部位に応じて、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することができる。またこの組成物を、他の都合のよい経路を介して、例えば、経口的に、非経口的に、吸入スプレーを使って、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、経膣的にまたは埋め込み型のリザーバーを介して、投与することもできる。本明細書で使用する場合、「非経口的に」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、病巣内、および頭蓋内への注入または点滴技術を含む。加えて医薬組成物を、1、3または6ヶ月持続型の注入可能なまたは生分解性の材料および方法などを使った注入可能なデポー投与経路を介して対象に投与することもできる。
注入可能な組成物は、様々な担体、例えば植物油、ジメチルラクタミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、およびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)を含み得る。静脈内注射には、水溶性の抗体を、抗体と生理学的に許容可能な賦形剤を含有している医薬製剤が注入される点滴によって投与することができる。生理学的許容可能な賦形剤としては、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー液または他の適切な賦形剤を挙げることができる。筋内用製剤、例えば、抗体の好適な可溶性の塩形態の無菌的な製剤は、医薬賦形剤、例えば注入用の水、0.9%生理食塩水、または5%グルコース溶液に溶解して、投与することができる。
一態様では、抗HYLA−2抗体または脱重合化HAを部位特異的な技術または標的部位送達技術によって投与する。部位特異的または標的部位送達技術の例としては、種々の埋め込み可能な治療薬の貯蔵性供給源または局所送達用カテーテル、例えば注入カテーテル、留置カテーテル、もしくは針付きカテーテル、人工血管、外膜ラップ(adventitial wrap)、シャントおよびステントまたは他の埋め込み型装置、部位特異的担体、直接投与、もしくは直接的な使用が挙げられる。例えば、PCT出願の国際公開第00/53211号および米国特許第5,981,568号を参照のこと。
必要に応じて本明細書に記載の治療薬を、化学療法(例えば、1つ以上のさらなる抗がん剤と共に)、放射線治療、および/または外科的治療などの他の抗癌療法と併用してもよい。治療効果は、当該分野において周知の方法によって評価することができる。
癌治療に使用するためのキット
本開示はまた、癌治療に使用するためのキットも開示する。そのようなキットは、抗Hyal−2抗体(例えば、ヒトHyal−2に結合する抗体もしくはその断片、例えば配列番号2)または脱重合化HAが入った1つ以上の容器を含む場合がある。
いくつかの態様においてキットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従う使用説明書を含む場合がある。含まれる使用説明書には、癌を治療する、発症を遅らせるまたは緩和するため、または癌発展のリスクを軽減するための治療薬の投与に関する説明が含まれる場合がある。キットはさらに、その個人が癌に罹患しているかまたは癌のリスクを有しているか否かを同定することに基づく、治療に好適な個人の選抜に関する説明を含み得る。さらに他の態様において使用説明書は、癌に罹患していることが疑われるまたは癌のリスクのある個人に、本明細書に記載の1種以上の治療薬を投与することに関する説明を含む。
抗Hyal−2抗体または脱重合化HAの使用に関する使用説明書は基本的に、目的とする治療のための用量、投与計画、および投与経路の情報を含んでいる。容器は、単位用量であっても、大量包装(例えば多回投与用の包装)であってもまたは副次的単位用量であってもよい。本発明のキットと共に供給される使用説明書は通常、ラベルに記載された説明か、または添付文書(例えば、キットに含まれる紙のシート)であるが、機械で読み取り可能な(例えば、磁気または光学保存用ディスクとして供給される)使用説明書でもよい。
ラベルまたは添付文書は、その組成物が癌の治療のため、発症を遅らせるため、癌を緩和するために、および/または癌のリスクを軽減するために使用されることを示すものである。使用説明書は、本明細書に記載の方法のいずれかを実践するために提供される場合もある。
本発明のキットは、好適に包装されている。好適な包装には、これらには限定されないが、バイアル、ボトル、瓶、柔らかい包装(例えば、密閉されたマイラーまたはプラスチック製の袋)などが挙げられる。また、特定の装置、例えば吸入器、経鼻投与用装置(例えば、アトマイザー)またはミニポンプなどの注入用装置と併せて使用される包装も想定される。キットが、無菌的に操作可能なポートを有している場合もある(例えば、容器が輸液バッグまたは、皮下注射用の針を通すことのできるストッパーのあるバイアルであってよい)。また容器が、無菌的に操作可能なポートを有している場合もある(例えば、容器が輸液バッグまたは、皮下注射用の針を通すことのできるストッパーのあるバイアルであってよい)。
本明細書に記載のキットは場合により、緩衝剤および解釈にかんする情報などのさらなる構成要素を提供し得る。キットは一般的に、容器および容器に貼られたまたは関連付けられたラベルまたは添付文書を含む。いくつかの態様において本発明は、前述したキットの内容を含んでいる工業製品を提供する。
基本技術
別段の指定のない限り、本発明の実践には、当該分野の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の標準的な技術が用いられる。そのような技術は、例えば、分子クローニング(Molecular Cloning):実験の手引き(A Laboratory Manual)第二版(サンブルック(Sambrook)ら、1989)、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版局;オリゴヌクレオチドの合成(Oligonucleotide Synthesis)(M.J.ガイト(Gait)編、1984);分子生物学の手法(Methods in Molecular Biology)、ヒューマナ・プレス;細胞生物学(Cell Biology):実験の手引き(A Laboratory Notebook)(J.E.セリス(Cellis)編、1998)アカデミック・プレス;動物細胞の培養(Animal Cell Culture)(R.I.フレシュニー(Freshney)編、1987);細胞および組織培養入門(Introduction to Cell and Tissue Culture)(J.P.マター(Mather)およびP.E.ロバーツ、1998)プリナム・プレス;細胞および組織培養(Cell and Tissue Culture):実験手法(Laboratory Procedures)(A.ドイル、J.B.グリフィス、およびD.G.ニューウェル編、1993〜8)ジョン・ワイリー・アンド・サンズ;酵素学の方法(Methods in Enzymology)(アカデミック・プレス社);実験免疫学ハンドブック(Handbook of Experimental Immunology)(D.M.ワイヤーおよびC.C.ブラックウェル編);哺乳細胞用の遺伝子導入用ベクター(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells)(J.M.ミラーおよびM.P.キャロス(Calos)編、1987);分子生物学の最新手法(Current Protocols in Molecular Biology)(F.M.アウスベルら編、1987);PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(The Polymerase Chain Reaction)、(マリス(Mullis)ら編、1994);免疫学の最新手法(Current Protocols in Immunology)(J.E.コリガンら編、1991);分子生物学の手短なプロトコール(Short Protocols in Molecular Biology)(ワイリー・アンド・サンズ1999);免疫学(Immunobiology)(C.A.ジェインウェイおよびP.トラバース、1997);抗体(Antibodies)(P.フィンチ、1997);抗体:実践的アプローチ(a practical approach)(D.キャティ編、IRLプレス、1988〜1989);モノクローナル抗体(Monoclonal antibodies):実践的アプローチ(P.シェパードおよびC.ディーン編、オックスフォード大学出版、2000);抗体の使用:実験の手引き(Using Antibodies:A Laboratory Manual)(ハーロウおよびレーン、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版局、1999);抗体(The Antibodies)(M.ザネッティおよびJ.D.カプラ編、ハリウッド・アカデミック出版、1995)などの文献で詳しく説明されている。
当業者はこれまでの説明に基づいて、さらに工夫することなく、本発明を最大限利用することができると考えられる。従って、以下の具体的な態様は単なる例示であって、本開示の残余を何であっても決して限定するものではないと解釈される。本明細書に引用した全ての出版物は、本明細書で言及した目的または対象のために、参照にすることより本明細書に組み込まれる。
実施例1:超音波処理による脱重合化ヒアルロン酸(HA)の調製および解析
本試験において試験したHA試料は以下のように調製した。医薬用のヒアルロナン(高分子量)をギンゴ・トレーディング社(Ginkgo−Trading Co.,Ltd)、(アルハンブラ、カリフォルニア、米国)から購入した。ソナー(Soner)206H(ロッカー・サイエンティフィック社)を使い、2mg/mlのヒアルロナン(滅菌したミリQ水に溶解)を、53kHzで3および6時間、70℃で、超音波処理し、超音波処理したHA試料、HAson(3時間)とHAson(6時間)のそれぞれを得た。加えて、FB−UVXL−1000(フィッシャー・サイエンティフィック)を使い、2mg/mlの医薬用ヒアルロナンを4および8J/cm2のUV照射で処理し、照射したHA試料のHAuv(4J/cm2)とHAuv(8J/cm2)を得た。
前述したように調製したHA試料を、以下の通り、アガロースゲル電気泳動で試験した。1×TAE緩衝液(40mMのトリス、82mMの酢酸、および8mMのEDTA、pH=7.9)を使い、1%のアガロースゲルを調製した。14μlのH2Oに溶解したヒアルロナン8μgを含有するHA試料を、1×TAE緩衝液に溶解した2Mのショ糖溶液2μl(0.02%のブロモフェノールブルー含有)と混合した。電気泳動は、電圧を50Vに一定に保ち、2.5時間行った。次いでアガロースゲルを1%のアルシアンブルー(酢酸(galactic acid)溶液、pH=2.5)に浸し、斜光用の覆いを掛けて1時間染色糸、その後、7%酢酸で一晩脱染した。
図1に示すように、超音波処理とUV照射のいずれによってもHAは分解され、天然のHAよりも分子量が小さい脱重合化HAが得られた。さらに、UV照射は超音波処理よりも高いレベルのHA分解を引き起こし、超音波処理で生産された脱重合化HAよりも分子量が小さい脱重合化HAが生じた。
実施例2:超音波処理したヒアルロン酸(HA)はメラノーマ細胞の成長を抑制する
免疫適格性のBALB/cまたはT/B細胞欠損NOD−SCIDマウスを、天然のHA(200μg、100μlの滅菌ミリQ水に溶解したもの)、実施例1で前述したHAson(3時間)とHAson(6時間)を含む超音波処理したHA(200μg)、およびこれも実施例1で前述したHAuv(4J/cm2)とHAuv(8J/cm2)を含むUV照射したHAを1日おきに尾静脈に注入することで前処理した。陰性対照としてはPBSを用いた。19日後、図2および3のそれぞれに示すように、マウス両腹部の皮下に、B16F10メラノーマ細胞(250万個)を注入した。腫瘍容積を毎日測定した。
図2のパネルAに示すように、天然のHAはBALB/cマウスでのB16F10メラノーマ細胞の成長を高めた。驚くことに、超音波処理したHAは処理したマウスにおけるB16F10の成長を有意に阻害したが、UV照射したHAはこの抗がん作用を示さず、変わりに癌細胞の成長を促進した。図2、パネルBおよびC。
同様に、超音波処理したHAはNOD−SCIDマウスでのメラノーマ細胞の成長も有意に抑制した。図3を参照のこと。
実施例3:超音波処理したHAは乳癌細胞の成長を抑制する
免疫不全NOD−SCIDマウスに200μgの超音波処理したHA(100μl滅菌ミリQ水に溶解したHAson(3時間)およびHAson(6時間))または陰性対照としてのミリQ水を3日に1回尾静注することで、前処理した。3週間後、マウスの両腹部皮下に、MDA−MB−231乳癌細胞(250万個)を注入した。腫瘍容積を毎日測定した。
図4に示すように、超音波処理したHA試料であるHAson(3時間)およびHAson(6時間)は両方とも、乳癌の成長を、対照と比較して劇的に阻害した。
実施例4:Hyal−2抗体は基底細胞癌(BCC)細胞の成長を抑制する
例示的な抗Hyal−2抗体を、スーら、米国生化学分子生物学会誌、284(23):16049〜16059、2009に記載されているように調製した。簡単に説明すると、マウスHyal−2の合成ペプチド、NH2−CPDVEVARNDQLAWL−COOH(配列番号2;配列番号1の227〜241番目のアミノ酸に相当する)を慣習的な技術によって調製した(ジーンメッド・シンセシス(Genemed Synthesis)、サンアントニオ、テキサス、米国)。この領域は、ヒト、ブタ、およびラットのHyal−2に共通のドメインで、ヒアルロニダーゼに含まれているlyco_hydro_56ドメイン(または触媒ドメイン)の三次元構造に関するジェンバンク(商標)データベースの相同性検索から、らせん状の表面が露出したセグメントであると予測した。
配列番号2でウサギを免疫化し、EZ抗体産生および精製キット(ピアス)を使用して、記載のあるように(チャンら、米国生化学分子生物学会誌、2001、276:3361〜3370;ズィー(Sze)ら、米国生化学分子生物学会誌、2004、279:30498〜30506;チャンら、米国生化学分子生物学会誌、2003、278:9195〜9202)、このペプチドに結合可能な抗体を産生した。ポリクローナル抗Hyal−2抗体を含有しているHyal−2抗血清を回収した。
ヌードマウスに、分割量のHyal−2抗血清または正常ウサギ血清(10μlと90μlのPBS)を連続して3週間注入した。1週間後、マウスの皮下に、BCC皮膚癌細胞(片腹に250万個)を注入した。腫瘍容積を毎日測定した。
図5に示すように、抗Hyal−2抗体を含有している抗血清はBCCの成長を阻害したが、正常血清は阻害しなかった。
実施例5:Hyal−2抗体はメラノーマ細胞の成長を抑制する
免疫適格性のBALB/cまたはT/B細胞欠損NOD−SCIDマウスを、実施例4で前述したように、抗Hyal−2抗体(10μlの血清を90μlのPBSで希釈したもの)を3日に1回尾静注することで前処理した。3週間後、マウスの皮下に、B16F10皮膚メラノーマ細胞(両腹部に250万個)を注入した。腫瘍容積を毎日測定した。
図6に示すように、分割量のHyal−2に対する抗血清を、尾静脈を介して受けていた免疫適格性のBALB/cおよび免疫不全NOD−SCIDは、B16F10皮膚メラノーマ細胞の成長に対して耐性になっていた。
同様の実験で、ヌードマウスに分割量のHyal−2抗血清(10μl、90μlのPBSで希釈)または2μgの正常ウサギ血清IgG(100μlのPBSに溶解)を3日間連続して注入した。1週間後、マウスの皮下に、B16F10細胞(片腹に200万個ずつ)を注入した。腫瘍容積を毎日測定した。このようにして得られた結果から、Hyal−2抗体もヌードマウスにおけるB16F10メラノーマ細胞の成長を阻害することが示された。図7を参照のこと。
その他の態様
本明細書で開示した全ての特徴は、どのように組み合わせてもよい。本明細書で開示したそれぞれの特徴を、同じ、等価の、または同様の目的を提供する別の特徴と置き換えてもよい。従って、そうでないことが明示されていない限り、開示したそれぞれの特徴は単に、等価または同様の特徴の一般的な系の一例である。
これまでの記載から当業者は、本発明に必須の特徴を容易に確定し、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更および改変を施し、それを様々な用途および条件に適用することができる。従って、他の態様もまたは特許請求の範囲に含まれる。

Claims (32)

  1. 癌細胞と脱重合化ヒアルロナンを含んでいる組成物とを接触させることを含む癌細胞の成長を抑制する方法であって、ここで前記脱重合化ヒアルロナンは鎖間共有架橋を含み、かつ、前記脱重合化ヒアルロナンの少なくとも約90%が約100〜500kDaの範囲の分子量を有する、癌細胞の成長を抑制する方法。
  2. 前記脱重合化ヒアルロナンの前記鎖間共有架橋のレベルが少なくとも25%である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記組成物に含まれる前記脱重合化ヒアルロナンが、高分子量ヒアルロナンの超音波処理によって調製される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記脱重合化ヒアルロナンが、高分子量ヒアルロナンを約20〜80kHzで約3〜6時間超音波処理することで調製される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記超音波処理が約50〜80℃の範囲の温度で行われる、請求項3または4に記載の方法。
  6. 前記癌細胞が、乳癌細胞、メラノーマ細胞、皮膚基底細胞癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、膠芽腫細胞、および神経芽細胞腫細胞からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 癌細胞の成長抑制または癌の治療に使用するための、脱重合化ヒアルロナンを含んでいる組成物であって、ここで前記脱重合化ヒアルロナンは鎖間共有架橋を含み、かつ、前記脱重合化ヒアルロナンの少なくとも約90%が約100〜500kDaの範囲の分子量を有する、組成物。
  8. 前記脱重合化ヒアルロナンの前記鎖間共有架橋のレベルが少なくとも25%である、請求項7に記載の使用のための組成物。
  9. 前記組成物に含まれる前記脱重合化ヒアルロナンが、高分子量ヒアルロナンの超音波処理によって調製される、請求項7または8に記載の使用のための組成物。
  10. 前記脱重合化ヒアルロナンが、高分子量ヒアルロナンを約20〜80kHzで約3〜6時間超音波処理することで調製される、請求項9に記載の使用のための組成物。
  11. 前記超音波処理が約50〜80℃の範囲の温度で行われる、請求項9または10に記載の使用のための組成物。
  12. 前記癌細胞が、乳癌細胞、メラノーマ細胞、皮膚基底細胞癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、膠芽腫細胞、および神経芽細胞腫細胞からなる群より選択される、請求項7〜11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
  13. それを必要とする対象に有効量の医薬組成物を投与することを含む癌の治療方法であって、ここで前記医薬組成物は脱重合化ヒアルロナンおよび薬学上許容可能な担体を含み、前記脱重合化ヒアルロナンは鎖間共有架橋を含み、かつ、前記脱重合化ヒアルロナンの少なくとも約90%が約100〜500kDaの範囲の分子量を有する、癌の治療方法。
  14. 前記脱重合化ヒアルロナンの前記鎖間共有架橋のレベルが少なくともおよそ25%である、請求項13に記載の方法。
  15. 前記組成物に含まれる前記脱重合化ヒアルロナンが、高分子量ヒアルロナンの超音波処理によって調製される、請求項13または14に記載の方法。
  16. 前記脱重合化ヒアルロナンが、高分子量ヒアルロナンを約20〜80kHzで約3〜6時間超音波処理することで調製される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記超音波処理が約50〜80℃の範囲の温度で行われる、請求項15または16に記載の方法。
  18. 前記対象が癌に罹患していると診断されている、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記対象が癌に罹患しているまたは癌のリスクを有していると疑われる、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記癌が、乳癌、メラノーマ、皮膚基底細胞癌、前立腺癌、肺癌、膠芽腫、および神経芽細胞腫からなる群より選択される、請求項18または19に記載の方法。
  21. 高分子量ヒアルロナンを約20〜80kHzで約3〜6時間超音波処理することを含む、脱重合化および架橋型ヒアルロナンの調製方法。
  22. 前記超音波処理工程が約50〜80℃の範囲の温度で行われる、請求項21に記載の方法。
  23. 請求項21または22に記載の方法によって調製される脱重合化および架橋型ヒアルロナンを含んでいる組成物。
  24. それを必要とする対象に、有効量の、ヒアルロニダーゼ−2(Hyal−2)に結合可能な抗体を投与することを含む、癌の治療方法。
  25. 前記抗体がCPDVEVARNDQLAWL(配列番号1)に結合する、請求項24に記載の方法。
  26. 前記抗体が完全長抗体またはその抗原結合断片である、請求項24または25に記載の方法。
  27. 前記抗体がヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
  28. 前記対象が癌に罹患していると診断されている、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記対象が癌に罹患しているまたは癌のリスクを有していると疑われる、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
  30. 前記癌が、メラノーマ、基底細胞癌、皮膚基底細胞癌、前立腺癌、肺癌、膠芽腫、および神経芽細胞腫からなる群より選択される、請求項28または29に記載の方法。
  31. ヒアルロニダーゼ−2(Hyal−2)に結合することが可能な抗体および薬学上許容可能な担体を含んでいる、癌の治療に使用するための医薬組成物。
  32. 前記抗体がCPDVEVARNDQLAWL(配列番号1)に結合する、請求項31に記載の医薬組成物。
JP2016501498A 2013-03-14 2014-03-12 改変型ヒアルロナンおよびその癌の治療における使用 Pending JP2016519057A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US13/826,952 US9375447B2 (en) 2013-03-14 2013-03-14 Modified hyaluronan and uses thereof in cancer treatment
US13/826,952 2013-03-14
PCT/US2014/024323 WO2014159592A2 (en) 2013-03-14 2014-03-12 Modified hyaluronan and uses thereof in cancer treatment

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016519057A true JP2016519057A (ja) 2016-06-30

Family

ID=51527956

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016501498A Pending JP2016519057A (ja) 2013-03-14 2014-03-12 改変型ヒアルロナンおよびその癌の治療における使用

Country Status (6)

Country Link
US (1) US9375447B2 (ja)
EP (1) EP2968398B8 (ja)
JP (1) JP2016519057A (ja)
AU (1) AU2014240389B2 (ja)
CA (2) CA2905934C (ja)
WO (1) WO2014159592A2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
IT202100009425A1 (it) 2021-04-14 2022-10-14 Lem Compounding Res Ita Srl Composizione comprendente acido ialuronico a peso molecolare alto e un oligomero dell’acido ialuronico

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5902795A (en) * 1992-06-16 1999-05-11 Trustees Of Tufts College Oligosaccharides reactive with hyaluronan-binding protein and their methods of use

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2175282A1 (en) * 1996-04-29 1997-10-30 Rudolf Edgar Falk Use of forms of hyaluronic acid (ha) for the treatment of cancer
US9066919B2 (en) * 2000-07-14 2015-06-30 Alchemia Oncology Pty Limited Hyaluronan as a chemo-sensitizer in the treatment of cancer
US7229778B2 (en) 2004-02-26 2007-06-12 The Procter & Gamble Company Methods for determining the relative benefits and/or evaluating quantitative changes of products on epithelial tissue
WO2005112888A2 (en) 2004-05-20 2005-12-01 Mentor Corporation Methods for making injectable polymer hydrogels

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5902795A (en) * 1992-06-16 1999-05-11 Trustees Of Tufts College Oligosaccharides reactive with hyaluronan-binding protein and their methods of use

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
CANCER LETT, vol. 278(1), JPN6016037704, 8 June 2009 (2009-06-08), pages 9 - 16, ISSN: 0003411846 *
CHEMICAL ABSTRACTS, vol. Vol.121, No.13, abstract no.158104, JPN4007016477, 1994, ISSN: 0003411848 *
PETER CHABRECEK ET AL, JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE: APPLIED POLYMER SYMPOSIUM, vol. 48, JPN4007016476, 1991, pages 233 - 241, ISSN: 0003411847 *
PLOS ONE, vol. 3(8), JPN6016037705, August 2008 (2008-08-01), pages 3031, ISSN: 0003411849 *

Also Published As

Publication number Publication date
CA2987436C (en) 2021-12-07
WO2014159592A2 (en) 2014-10-02
CA2987436A1 (en) 2014-10-02
CA2905934C (en) 2018-01-16
WO2014159592A3 (en) 2014-12-18
EP2968398A2 (en) 2016-01-20
CA2905934A1 (en) 2014-10-02
EP2968398B8 (en) 2019-06-19
EP2968398A4 (en) 2016-12-28
EP2968398B1 (en) 2019-04-17
US9375447B2 (en) 2016-06-28
US20140271620A1 (en) 2014-09-18
AU2014240389A1 (en) 2015-10-08
AU2014240389B2 (en) 2016-11-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6707590B2 (ja) 片頭痛の治療または予防法
AU2021200309B2 (en) Compositions and methods for treatment of diabetic macular edema
US20230399388A1 (en) Methods for treating inflammation using antibodies to kallidin and des-arg10-kallidin
JP2021107436A (ja) pH範囲で結合性が異なる薬物動態改善のための抗TFPI抗体変異体
JP2020007354A (ja) 抗血漿カリクレイン抗体
BR112019015426A2 (pt) Composição farmacêutica para uso no tratamento ou prevenção de uma doença relacionada a c5 e um método para tratar ou prevenir uma doença rela-cionada a c5
TWI704157B (zh) 在c5相關疾病之治療或預防中使用的醫藥組成物與治療或預防c5相關疾病的方法
JP7164530B2 (ja) Il-4r阻害剤を投与することによって重度のアトピー性皮膚炎を処置するための方法
AU2014240389B2 (en) Modified hyaluronan and uses thereof in cancer treatment
TW202114734A (zh) Il-17拮抗劑治療自身免疫疾病的方法
RU2789389C2 (ru) Фармацевтическая композиция, предназначенная для применения для лечения или предупреждения связанного с с5 заболевания, и способ лечения или предупреждения связанного с с5 заболевания
WO2023250507A1 (en) Methods for treating complement-mediated diseases
TW202417482A (zh) 治療補體介導疾病的方法
Li et al. Antibodies to kallidin and des-Arg 9-kallidin

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161004

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161226

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170307

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20171219