本発明は、自動注射装置などの動力補助薬剤送達装置に関する。本発明はまた、このような薬剤送達装置で使用可能な動力装置に関する。
注射装置などの薬剤送達装置は、治療を必要とする人々への液剤投与に広く使われている。多くの注射装置は、各用量設定及び装置の注入機構の操作時に、固定量又は可変量の薬剤を繰り返し設定して注入することができる。幾つかの注射装置は、幾つかの注射可能用量を提供するのに十分な薬剤量を含む充填済み薬剤リザーバによって、薬剤が装填されるように適合されている。リザーバが空になると、ユーザーはリザーバを新しいものと交換することで、注射装置は繰り返し使用可能となる。他の注射装置はユーザーに届けられるときに事前充填され、薬剤リザーバが空になるまで使用可能であるが、その後装置は廃棄される。種々の注射装置は典型的に、動作制御されたピストンロッドを使用して、リザーバ内でピストンを前進させることによって薬剤を吐出する。
注射装置によっては、ユーザーが押しボタンをハウジング方向へ一定の距離だけ押下することが必要で、手動によりピストンロッドがリザーバを加圧し、リザーバ内でピストンを前進させ選択された用量を吐出する。このような操作を実行するため、押しボタンに印加されなければならない力は、一般的にわずかな力ではないため、指の力が弱い及び/又はあまり器用でない人々にとっては問題となることがある。
押し込んだばねの解放に応答して設定用量の薬剤を自動吐出する自動注射装置が一般的なのは、ばねは解放されると注入を完了するのに必要な全エネルギーを供給するためである。このような装置では、注入を開始するには、ユーザーは持続時間の短い小さな力を印加するだけでよい。一又は複数の注入で薬剤リザーバを空にするのに十分なエネルギーを提供するため、ばねは各注入の前に歪んだ状態で配置されてもよく、或いは製造業者などにより事前に歪ませておくこともできる。以前のタイプのばね配置では、ユーザーはばねを歪ませるためのエネルギーを供給することが必要であるため、この要件は煩雑であると考える人もいる。
国際公開第2009/105909号(Tecpharma Licensing)は、注入機構作動用のエネルギーを供給するためにクロックばねを使用する、ペン型自動注入装置を開示している。クロックばねは、用量設定ボタンの回転によって用量を設定する間に、歪まされるように適合されるが、これはユーザーが用量を設定するたびに、ばねの付勢力に逆らって用量設定ボタンが回転されることを意味する。この欠点を回避するため、製造業者は、リザーバを完全に空にするための十分なエネルギー量を保存可能にするため、コイルの数を増やした、より大きな寸法のクロックばねを組み込むことを選択してもよい。しかしながら、ばねが弛緩するにつれて、クロックばねによって提供しうるトルクは減少するため、カートリッジ内でピストンを十分に前進させるために利用しうる十分な力を確保するためには、スプリングのサイズを大幅に増大させることが必要となることがある。これは、装置の細身の構成を損ない、使い勝手のよくない、かさばった設計をもたらすことがある。
この点を踏まえて、満杯の薬剤リザーバを自動的に空にするための保存容量を有する、小型の薬剤送達機構を提供することが望ましい。
本発明の1つの目的は、従来技術の欠点のうち少なくとも1つを排除する、又は低減すること、或いは、従来技術の手法に対する有用な代替策を提供することである。
具体的には、満杯の薬剤容器を完全に空にするのに十分なエネルギーを供給することができる薬剤送達装置に対して、動力装置を提供することは、本発明の1つの目的である。
ペン型の細身の設計の注入装置など、一定の寸法制限を有する薬剤送達装置内で使用可能な構成を有する動力装置を提供することは、本発明の別の目的である。
このような動力装置を組み込む薬剤送達装置を提供することは、本発明のさらに別の目的である。
本発明の開示において、上記の一又は複数の目的に対処する、及び/又は、下記の文章から明らかな目的に対処する、態様及び実施形態が説明される。
本発明の一態様では、薬剤送達装置のための動力装置が提供され、前記動力装置は、全体軸を画定するトルク伝達構造と、第1の相対角変位を受けるように適合された第1端部及び第2端部を備える第1トルク生成構造と、第1軸位置でトルク伝達構造に回転可能に固定される第2端部と、第2の相対角変位を受けるように適合される第3端部及び第4端部を備える第2トルク生成構造と、第1軸位置とは異なる第2軸位置でトルク伝達構造に回転可能に固定される第3端部とを備える。
第1トルク生成構造は、第1端部が第2端部に対して第1方向の相対回転を受けるときにはエネルギーを保存し、第1端部が第2端部に対して逆の相対回転を受けるときにはエネルギーを放出するように適合されてもよい。第2トルク生成構造は、第4端部が第3端部に対して第2の方向の相対回転を受けるときにはエネルギーを保存し、第4端部が第3端部に対して逆の相対回転を受けるときにはエネルギーを放出するように適合されてもよい。第1方向及び第2方向は同じ方向又は反対方向であってもよい。
第1トルク生成構造及び第2トルク生成構造はそれぞれ、具体的には、平面ぜんまいばね部材又はらせんばね部材などの、第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材であってもよい。第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材のうちの少なくとも1つは、トルク伝達構造の周りで同心円状に巻かれてもよい。代替的に、又は追加的に、第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材のうちの少なくとも1つは、トルク伝達構造の一部によって取り囲まれていることがある。第1ぜんまいばね部材は弛緩状態又は緊張状態にあってもよく、また、第2ぜんまいばね部材は弛緩状態又は緊張状態にあってもよい。
第1ぜんまいばね部材が緊張状態にある場合には、第1の相対角変位は第1ぜんまいばね部材に保存されているエネルギーを解放し、第2ぜんまいばね部材が緊張状態にある場合には、第2の相対角変位は第2ぜんまいばね部材に保存されているエネルギーを解放する。
本発明の特定の実施形態では、第1の相対角変位と第2の相対角変位は等しいか、実質的に等しく、例えば、同一又は実質的に同一の寸法と、同一又は実質的に同一の材料特性を有する2つのぜんまいばねによって得られる。
別の態様では、本発明は、第1インターフェース部分及び第2インターフェース部分を備える薬剤送達装置のための動力装置であって、第1インターフェース部分及び第2インターフェース部分に対する回転のための配置可能なトルク伝達構造と、トルク伝達構造と第1インターフェース部分との間の相対角変位を低減するため第1インターフェース部分とトルク伝達構造との間で動作するように適合される第1のトルク印加手段と、トルク伝達構造と第2インターフェース部分との間の相対角変位を低減するためトルク伝達構造と第2インターフェース部分との間で動作するように適合される第2のトルク印加手段とを備える動力装置を提供する。
このような動力装置の操作は、トルク伝達構造と第1インターフェース部分との間の相対角変位と、トルク伝達構造と第2インターフェース部分との間の相対角変位との和に等しい、第2インターフェース部分と第1インターフェース部分との間の総相対角変位をもたらす。特に、第1インターフェース部分が回転可能に固定されているとみなしうる場合には、第1トルク印加手段はトルク伝達構造を第1インターフェース部分に対する1つの回転方向に角度的に変位するように適合されてもよく、一方、第2トルク印加手段は第2インターフェース部分をトルク伝達構造に対する前記1つの回転方向に角度的に変位するように適合されてもよい。その結果、第2インターフェース部分は、第1インターフェース部分に対するトルク伝達構造の角変位とトルク伝達構造に対する第2インターフェース部分の角変位との和に等しい総角変位を、第1インターフェース部分に対する前記一方向に受ける。
薬剤送達装置は、第1インターフェース部分と第2インターフェース部分との間の相対角変位が薬剤リザーバの容積減少、すなわち薬剤リザーバからの薬剤の吐出を引き起こすタイプのものであってもよい。代替的に、又は追加的に、薬剤送達装置は、第1インターフェース部分と第2インターフェース部分との間の相対角変位が用量の設定、又は薬剤送達装置の動作状態の変更を引き起こすタイプのものであってもよい。
第1トルク印加手段は、トルクばね又はねじりばね、例えばクロックばね、らせんばね、ねじりバーなどを備えてもよい。同様に、但し必ずしも全く同じではないが、第2トルク印加手段は、トルクばね又はねじりばね、ねじりバーなどを備えてもよい。
本発明による動力装置は、第1インターフェース部分に関する相対運動を受けることが薬剤送達装置の状態の変化、例えば、用量の設定、又は薬剤送達装置からの薬剤の吐出などを引き起こすときに、薬剤送達装置の第1インターフェース部分に結合可能である少なくとも1つのばね部材と、薬剤送達装置の第2インターフェース部分に結合可能な少なくとも1つのばね部材とを、2つ以上の直列に備えてもよい。
本発明の更に別の態様では、薬剤送達装置用の動力装置が提供され、全体軸に沿って延在して、第1平面トルクばね部材などの第1ぜんまいばね部材を備える前記動力装置は、第1コイル端部と第2コイル端部、及び第2平面トルクばね部材などの第2ぜんまいばね部材を備え、第3コイル端部及び第4コイル端部を備える。第1コイル端部は、薬剤送達装置の第1インターフェース部分への回転固定のために適合され、第4コイル端部は、薬剤送達装置の第2インターフェース部分への回転固定のために適合され、薬剤送達装置は第1インターフェース部分に対して回転可能である。第3コイル端部は、第2コイル端部に対して回転可能に固定されているが、軸方向にずれており、動力装置は、第1インターフェース部分と第2インターフェース部分との間の相対回転を誘導するため、例えば、第1インターフェース部分に対する第2インターフェース部分の回転を誘導するため、エネルギーを解放するように適合されている。
これに関連して、コイル端部が薬剤送達装置部分などのインターフェース部分に回転ア可能に固定されているとき、特定のコイル端部及び特定のインターフェース部分は、少なくとも1つの相対角変位を受けることができない(すなわち、これらは共に角度的に固定されているか、少なくとも一方向に結合して回転しなければならない)。
第1コイル端部はさらに、第1インターフェース部分への並進固定に対して適合されてもよい。代替的に、第1コイル端部は、第1インターフェース部分に関する相対並進運動に対して適合されてもよい。同様に、第4コイル端部は、第2インターフェース部分への並進固定、又は第2インターフェース部分に関する相対並進運動に対して更に適合されてもよい。
本発明の上述の態様のいずれかによる動力装置は、第2インターフェース部分に対して専用薬剤リザーバをつぶすのに十分な回転数をもたらすだけでなく、動作範囲全体にわたって第2インターフェース部分に比較的一定のトルクを印加する能力を有する小型の構造物として実現されうる。特に動力装置は、ペン型注入装置での使用に適した細身の構造物として実現可能である。
動力装置は、満杯のリザーバを空にするのに十分なエネルギーを保存するように、事前に歪ませておくのが望ましいが、代替的に、吐出機構を毎回作動する前に歪ませるように適合されてもよい。吐出機構が1回で吐出できる以上の薬剤をリザーバが保持している場合には、コイルばねの寸法は、リザーバの最大容量に対応する容積を供給するためではなく、最大吐出可能用量を供給するための十分なエネルギーを動力装置が保存できるように選択されてもよい。
第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材は、それぞれクロックばねであってもよい。その場合、第2コイル端部及び第3コイル端部はそれぞれ内側コイル端部であってもよく、第1コイル端部及び第4コイル端部はそれぞれ外側コイル端部であってもよい。第2コイル端部及び第3コイル端部は、軸方向に延在する、例えば、ねじり剛性のある構造に回転可能に固定されてもよく、軸方向に延在する構造は中央スパインとして機能することができ、動力装置を特別に細身の構成にすることができる。
第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材は、付加的なトルク伝達並びに第1コイル端部と第4コイル端部との間の角変位を最大にするため、軸方向に延在する構造の周りで反対方向に巻かれてもよい。第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材が、全体軸の周りに同心円状に配置され、軸方向にずれている場合、更に、これらが反対方向に巻かれている場合には、大容量で小型の動力装置が提供可能である。
代替的に、第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材は同じ方向に巻かれてもよく、この場合、第2コイル端部及び第4コイル端部はそれぞれ内側コイル端部となり、一方、第1コイル端部及び第3コイル端部はそれぞれ外側コイル端部となるか、又はその逆である。次に、軸方向に延在する構造は、2つの同心円状に配置されたばねの内側コイル端部及び外側コイル端部とそれぞれ整合するように構成されてもよい。これにより、薬剤送達装置内での動力装置の使用が可能になり、例えば、第2インターフェース部分は第2ぜんまいばね部材によって取り囲まれるのに適している。
それぞれのコイル端部には、第1及び第2インターフェース部分又は軸方向に延在する構造にそれぞれ係合するための別々の手段が提供されてもよい。代替的に、コイル端部はそれぞれ、第1及び第2インターフェース部分又は軸方向に延在する構造を受けるように、或いはこれらに受け入れられるように形成されてもよい。
具体的な実施形態では、第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材は、寸法及び材料特性の点で、同一であるか、少なくとも実質的に同一であり、個々の能力は等しいか、少なくとも実質的に等しい。
動力装置は、例えば、第2ぜんまいばね部材、及び軸方向に延在する構造を備えるばねアセンブリを備えてもよい。軸方向に延在する構造は、第1シャフト部分及び第2シャフト部分と、第1シャフト部分の周りに巻かれる第1ぜんまいばね部材及び第1シャフト部分に装着される第2コイル端部と、第2シャフト部分の周りに巻かれる第2ぜんまいばね部材及び第2シャフト部分に装着される第3コイル端部とを備える。第1シャフト部分及び第2シャフト部分は同心円状に配置されてもよく、相互に軸上に固定されてもよく、例えば、単一エレメントとして、或いはディスクのように半径方向に延在する構造によって分離された2つのエレメントとして提供されてもよい。代替的に、軸方向に延在する構造は、シャフト部分及びドラム部分と、シャフト部分に装着されシャフト部分の周りに巻かれている第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材のうちの一方と、ドラム部分内に配置され、ドラム部分に装着されている第1ぜんまいばね部材及び第2ぜんまいばね部材のうちの他方とを備える。軸方向に延在する構造は、薬剤送達装置に回転据え付けするように適合されてもよく、例えば、薬剤送達装置の一部を受けるため軸方向に延在する中央通路を備えてもよい。
軸方向に延在する構造はねじりに対して柔軟であってもよい。特に、軸方向に延在する構造は、第2コイル端部が固定される第1アンカー部品、第3コイル端部が固定される第2アンカー部品を備え、第1アンカー部品及び第2アンカー部品は相対回転方向に付勢されてもよい。例えば、軸方向に延在する構造は、第1アンカー部品と第2アンカー部品との間で働くぜんまいばね部材などの、トルク生成構造を備える。したがって、軸方向に延在する構造自体は、第1コイル端部と第4コイル端部との間の総相対角変位に寄与することができ、より高い能力の動力装置の準備を可能にする。
実際には、軸方向に延在する構造は、複数のアンカー部品、並びに第1アンカー部品と第2アンカー部品との間の総相対角変位に対して個別に寄与するように、第1アンカー部品と第2アンカー部品との間に直列に配置される付属の複数のトルク生成構造によって実現されてもよい。したがって、動力装置は、薬剤送達装置の魅力的な細身の構成を損なうことなく、大容量のリザーバを空にするように提供されてもよい。
動力装置は代替的に、第1ぜんまいばね部材、第2ぜんまいばね部材、及び軸方向に延在する構造を備える、単一のばねエレメントを備えてもよい。その場合、薄い金属シートなどの1個の材料は、軸方向に延在する中央部分及び中央部分の対向する側面から延在する2つの横方向細片により形成されてもよい。中央部分自体は折り曲げ可能で、同心円状のコイルが生成可能である。したがって、非常に単純かつ安価な動力装置が供給されうる。
本発明の更なる態様では、上述の態様及び実施形態の任意の1つと関連付けて説明されている動力装置を備える薬剤送達装置が提供される。
例えば、第1インターフェース部分、第2インターフェース部分、及び第1インターフェース部分と第2インターフェース部分との間の相対回転運動を誘導するため、第1インターフェース部分と第2インターフェース部分との間にトルクを生成して伝達するように解放可能な動力装置を備える、薬剤送達装置が提供される。
特に、第1インターフェース部分と、リザーバからある用量の物質を供給するように動作可能な吐出機構であって、ある用量の物質がリザーバから供給されるようにする第1インターフェース部分に関して相対回転を受けることができる第2インターフェース部分を備える吐出機構と、第1インターフェース部分と第2インターフェース部分との間の相対回転を誘導するためのエネルギーを解放するように適合された動力装置であって、長手方向軸に沿って延在し、a)第1内側コイル端部及び第1外側コイル端部を備える第1ぜんまいばね部材、b)第2内側コイル端部及び第2外側コイル端部を備える第2ぜんまいばね部材を備える動力装置とを備える薬剤送達装置が提供され、第1内側コイル端部及び第1外側コイル端部のうちの一方は第1インターフェース部分に回転可能に固定され、第2内側コイル端部及び第2外側コイル端部のうちの一方は第2インターフェース部分に回転可能に固定され、且つ、第1内側コイル端部及び第1外側コイル端部のうちの他方は第2内側コイル端部及び第2外側コイル端部のうちの他方に対して回転可能に固定され、軸方向にずれている。
薬剤送達装置は、動力装置の少なくとも一部を収容するためのハウジングを更に備え、リザーバは使用中に少なくとも並進可能に固定される。第1インターフェース部分はハウジングの一部であってもよく、少なくとも動力装置がエネルギーを解放するときには、ハウジングに対して回転可能に固定されてもよい。いずれの場合でも、動力装置からのエネルギーの解放は、ハウジングに対する第2インターフェース部分の回転を引き起こす。
吐出機構は、リザーバの容積を低減することが可能なピストンロッドなどのアクチュエータ、及び第2インターフェース部分の回転出力をアクチュエータへ伝達するための伝達手段を更に備えてもよい。伝達手段は、第2インターフェース部分に回転可能且つ並進可能に固定されるスリーブ部材と、ハウジング内に回転可能に据え付けられ、動力装置の解放中にスリーブ部材と係合するように構成されたガイド部材であって、アクチュエータに対して回転可能に固定されるガイド部材と、ハウジング内に固定的に配置されねじによってアクチュエータに係合されるナット部材とを備えてもよい。動力装置の解放中、スリーブ部材とガイド部材には係合関係がもたらされ、第2インターフェース部分の回転は、リザーバを加圧するためハウジングを通って遠位方向に前進するにアクチュエータに伝達される。
薬剤送達装置は、吐出機構を作動するため、ユーザー制御による作動力の印加によって動作可能な作動ボタンを更に備える。作動ボタンは、吐出機構が停止している作動可能位置と吐出機構が動力装置によって作動されている作動時位置との間を移動するように構成されてもよい。作動可能位置から作動時位置までの移動中、作動ボタンによりスリーブ部材はガイド部材と係合し、作動時位置から作動可能位置までの移動中、作動ボタンによりスリーブ部材はガイド部材から解放される。
作動ボタンは、例えば、好適なばねによって作動可能位置へ向かって付勢されてもよく、この場合、進行中の用量の吐出は、作動力の中断によって選択的に中止される。
軸方向に延在する構造は軸方向の通路を形成し、作動ボタンは通路を経て延在する遠位方向に向かって尖ったピン構造を備えてもよく、これによって動力装置に対するハブを構成する。作動ボタンは、例えば、ピン構造とスリーブ部材の一部との間の係合によって、第2インターフェース部分に対して並進可能に固定されてもよい。作動ボタンの任意の並進運動は、第2インターフェース部分及びスリーブ部材に伝達され、結果として生ずるスリーブ部材とガイド部材の結合及び第2インターフェース部分の保持構造からのその後の解放、並びに結果として生ずる第2インターフェース部分と保持構造との再係合、並びにスリーブ部材のガイド部材からの分離を可能にする。
薬剤送達装置は、その後の吐出機構の作動によってもたらされる用量の選択的な設定のための用量設定機構を更に備える。用量設定機構は、用量を設定するためハウジングに対する回転に適合される用量ダイヤル、及び設定用量を示すための用量ディスプレイを備えてもよい。特に、用量表示は、その上に印刷されるなどして取り付けられた数字を有するスケールドラム、及びスケールドラムの一部を見ることができるウィンドウを備えてもよい。
用量ダイヤルは更に、設定用量の吐出中に、ハウジングに対する回転固定のために適合されてもよい。例えば、用量ダイヤルは、作動ボタンに対して回転可能に固定されてもよく、また、作動ボタンは、作動可能位置から作動時位置まで移動する間に、ハウジングと回転可能に連結するように、また、作動時位置から作動可能位置まで移動する間に、ハウジングから回転可能に分離されるように、適合されてもよい。
スケールドラムは、ハウジングにねじ係合され、設定用量増加時には一方の軸方向に、設定用量減少時には反対の軸方向にらせん状に移動するように構成されている。スケールドラムは更に、第2インターフェース部分に対して回転可能に固定されてもよく、第2インターフェース部分が用量ダイヤルと結合して、或いは用量ダイヤルに対して回転するかどうかに応じて、用量設定又はリザーバから吐出される用量を画定するため、第2インターフェース部分が回転するたびにスケールドラムはハウジング内で相関運動を実行するという点で、用量設定機構と吐出機構との間の直接結合がもたらされる。
第1インターフェース部分は、用量ダイヤルの一部、好ましくは内側部材など、用量ダイヤルの内側部分であってもよい。これにより、用量設定時に用量ダイヤルに沿って動力装置を歪まないように回転させることが可能で、例えば、ハウジングに対する第2外側コイル端部の最大変位に対してエネルギーを解放し、用量提供時に吐出機構に対して最大限に伝達することができる。したがって、少なくとも動力装置の一部は、用量ダイヤル内に収容され、これによって動力装置構成はそこに組み込まれる薬剤送達装置の軸方向の全寸法に対してわずかな寸法の追加がなされるか、全く追加がなされないことが保証される。
薬剤送達装置は、例えば、注入装置、点滴装置、吸入装置など、非経口薬剤送達が可能な任意の種類の装置であってもよい。特に、薬剤送達装置は、ペン型インジェクタ、すなわち万年筆の形状に似た形状を有する注入装置など(例えば、ブドウ糖調整剤の自己投与のための)携帯用注入装置であってもよい。更に、薬剤送達装置は一体型薬剤リザーバを備えてもよく、或いは分離されて供給される薬剤リザーバを受けるように適合されてもよい。
本発明による薬剤送達装置は、リザーバから薬剤を吐出するための貯蔵容量を増やすため、2つ以上を直列に配置した動力装置を備えてもよい。
本明細書では、一定の態様又は一定の実施形態(例えば「一態様」「第1態様」「一実施形態」「例示的な一実施形態」等)への言及は、それぞれの態様又は実施形態に関連して説明される特定の特性、構造或いは特徴が、発明の少なくともその1つの態様又は実施形態に含まれ、或いはそれに内在することを表すが、必ずしも、発明の全ての態様又は実施形態に含まれ/内在することを表すわけではない。しかし、発明に関連して説明される様々な特性、構造及び/又は特徴の任意の組合せは、本書に明示的に記述されるか、或いは、文脈によって明確に否定されない限り、発明によって包括されることが強調される。
本文における、実施例又は例示的な文言(例えば「など」)のうち、任意のもの、及びそれら全ての使用は、単に発明を明快にすることを意図するものであり、特許請求の範囲で主張されない限り、発明の範囲に限定を課するものではない。更に、明細書中のいかなる文言又は言い回しも、特許請求されていない任意の要素が発明の実施に対して不可欠であることを示していると、解釈されるべきではない。
以下に、図面を参照して発明を更に説明する。
発明の一実施形態による、薬剤送達装置の分解斜視図である。
使用前の状態にある図1の薬剤送達装置の縦方向断面図である。
図1の薬剤送達装置に組み込まれた動力装置の分解斜視図である。
巻かれていない動力装置の上面図で、図1の薬剤送達装置内では巻かれた状態で、使用に適している。
巻かれた状態にある、図4aの動力装置の斜視図である。
本発明の代替的な実施形態による、薬剤送達装置内での使用に適した動力装置の分解斜視図である。
薬剤送達装置内での使用にも適した動力装置の分解斜視図である。
図面において、同様の構造物は、主として同様の参照番号で識別される。
下記で、「時計まわり」及び「反時計まわり」のような相対的表現が使用される時には、これらは添付の図面に言及するものであり、必ずしも実際の使用状況について言及している訳ではない。図示の図面は概略的な表示であり、種々の構造の構成並びにそれらの相対的な寸法は、例示目的のみを意図している。
図1は、糖尿病治療のためのインスリン又はglp−1など、液状薬剤物質を投与するためのペン型注入装置1を示している。注入装置1は、全体軸を画定する長手方向ハウジング2を備える。ハウジング2は、内側スレッド3に加えて、内側に沿って配置されるスペースで区切られた軸方向の溝4を有する。カートリッジ70を収容するカートリッジホルダ60は、例えば、接着剤、スナップ式接続金具、バヨネット結合などによって、ハウジング2の遠位端部に着脱可能に、或いは着脱できないように装着される。遠位端部では、カートリッジホルダ60に、注入ニードルユニット(図示せず)を受入れるためのニードルハブインターフェース64が用意されている。カートリッジ70の内容物は、カートリッジホルダ60の細長いウィンドウ62を通して検査可能で、カートリッジ70の内側へのアクセスは再密封可能な隔壁72の穿通によって可能である。
ハウジング2内に配置されるねじ切りされたピストンロッド6は、ピストンロッドガイド8及びナット5を通って延在し、ピストン74の近位端部に留まるピストンロッドフット7に当接するように遠位端で構成される(図2参照)。ピストンロッド6はピストンロッドガイド8にスプライン結合されており、これによって、ピストンロッド6とピストンロッドガイド8は相対的な軸運動が可能であるが、相対回転はできない。ピストンロッド6は更にねじ穴を通してナット5で受け止められる。ナット5はハウジング2に並進可能かつ回転可能に固定され、これによって、ピストンロッドガイド8はハウジング2内で並進可能に固定されるが、ハウジング2に対して反時計まわりに回転することはできない。
以下から明らかなように、ハウジング2は更に、ばね固定と伝達エレメントとして機能するドライバ20を収容する。ドライバ20は、少なくともピストンロッド6の一部を取り囲む軸スリーブ21及び近位カップ22を備える。複数の長手方向リブ23はスリーブ21の外表面上に設けられ、スペースで区切られた複数の軸方向の溝24は、近位端でカップ22の周囲に沿って分布する。スリーブ21の内側遠位端部には、円周上にスペースで区切られた複数の軸方向の溝25が設けられている。溝25は、ハウジング2に対してドライバ20とピストンロッドガイド8の結合回転をもたらすように、ハウジング2内でのドライバ20の特定の軸位置で、ピストンロッドガイド8上に設けられた対応するリッジ9に係合するように意図されている。
注入装置1はまた、注入ニードルユニットがニードルハブインターフェース64に装着されると、カートリッジ70から薬剤を吐出するため、エネルギーを供給するためのばねアセンブリ10を備える。ばねアセンブリ10は、近位シャフト13と、遠位シャフト14及び分割プレート12を備えるローター11と、近位ぜんまいばね15と、近位シャフト13に装着される内側コイル端部15b(図3参照)と、遠位ぜんまいばね16と、遠位シャフト14に装着される内側コイル端部16b(図3参照)とを備える。近位の斜視図から見ると、近位ばね15は近位シャフト13の周りで反時計まわりに巻かれており、遠位ばねは遠位シャフト14の周りで時計まわりに巻かれている。更に、2つのばね15、16は実質的に等しい寸法と弾性係数を有するため、ローター11を浮動トルク伝達中間媒体として、付加的なトルクと同等な大きさの角変位を提供することができる。遠位ぜんまいばね16の外側コイル端部16a(図3参照)は、外側コイル端部16aとドライバ20の結合回転を可能にするように、カップの内側部分22に装着されている。
近位ぜんまいばね15の外側コイル端部15a(図3参照)は、用量ダイヤル40の内側部材45に装着されており、用量ダイヤル40の外側コイル端部15aの回転固定をもたらす。用量ダイヤル40は、カートリッジ70から供給される所望の用量を設定するようにユーザーが操作可能で、軸方向に延在する表面ひだ41を有し、両方向に容易にダイヤル操作可能である。軸方向に延在する複数の歯46は、用量設定時にカップ22の溝24と係合するように、内側部材45の遠位端部で円周上に配置されている。したがって、用量ダイヤル40ある角度数回転することによって用量が設定されると、ドライバ20は回転し、同じ角度数だけ角変位する。
ハウジング2内には、らせん経路に沿って印刷された複数の数字32を有するスケールドラム30も収容されている。各数字32は供給される特定の用量を表し、薬剤吐出中にピストンロッド6が移動する距離に相関している。スケールドラム30はまた、内側スレッド3と協働する外側スレッド31、及びスリーブ21上にリブ23とスプライン結合された関係をもたらす、軸に沿って延在する幾つかのトラック33を有する。その結果、ドライバ20の任意の回転はスケールドラム30に伝達され、逆もまた同様である。
ユーザーが操作できる注入ボタン50は、ハウジング2の近位端部に配置されている。注入ボタン50は、指を受け止めるように適合された近位の押下面51と、ローター11を通り遠位へ延在するピン本体52とを有する。ローター11の遠位部では、ピン本体52はネック53と尖頭部54で終わる。また、軸に沿って延在するリッジ56は、溝4で受け止められるように適合されており、用量注入時に注入ボタン50がハウジング2に向かって押下されるとき、注入ボタン50のハウジング2への回転固定を保証する。注入ボタン50は、ボタンばね55によってハウジング2から離れる向きに付勢されている。これは、押下面51に力が印加されていないとき、リッジ56は溝4から解放されており、注入ボタン50はハウジング2に対して回転できるようになっている。注入ボタン50と用量ダイヤル40は、常に互いに回転可能に固定されている。
図2は注入装置1の縦方向断面図であるが、スケールドラム30は断面で示していない。注入装置1は、用量がダイヤル設定されていない使用前の状態にある。この状態で、ハウジング2の用量ウィンドウ99は数字「0」(図示せず)をユーザーに示す。カートリッジ70は、遠位端では隔壁72によって、近位端ではピストン74によって閉じられ、薬剤(図示せず)が収容されるチャンバ75が提供される。
用量ダイヤル40は、ハウジング2上の円周リッジ98に係合し、用量ダイヤル40をハウジング2に並進可能に固定する内側環状溝42を有する。また、内側部材45は、プレート12に係合する内側環状溝47を有し、これにより用量ダイヤル40内のローター11に対する回転支持として機能する。内側部材45は更に、ボタンばね55が留まる上部48を有する。
図2はまた、ローター11を通って延在するピン本体52を示す。スリーブ21の近位部分の内側くびれ26はネック53でピン本体52を保持し、これにより注入ボタン50をドライバ20に並進可能に固定する。
図3は、ばねアセンブリ10の拡大分解図である。これは、内側コイル端部16bが挿入される遠位シャフト14の長手方向スロット18を示し、これによりローター11と内側コイル端部16bの結合回転を保証する。ローター11と内側コイル端部15bの結合回転を保証するため、近位シャフト13に同様のスロット(図示せず)が設けられている。
図4a及び4bは、本発明による動力装置の代替的な実施形態を示している。この実施形態では、1個の材料から形成される2つのぜんまいばねを備えるばねユニット110がもたらされる。図4aからわかるように、ばねユニット110は、軸方向スパイン111及びそこから反対方向に延在する2つの側方分枝115、116を備える。図4bに示すように、側方分枝115、116は軸方向スパイン111のまわりに巻くことが可能で、各側方分枝は、例えば、上述の注入装置1に関連して、薬剤送達装置の第1インターフェース部分と第2インターフェース部分に係合するように準備された各内側コイル端部115b、116b及び各外側コイル端部115a、116aを備える。
注入装置1及びばねアセンブリ10の操作について記述する。図2を参照すると、注入装置1で注入を実行することを望むユーザーは、最初に適切な注入ニードルユニット(図示せず)をニードルハブインターフェース64に装着し、これにより隔壁72は穿通され、チャンバ75との流体連通が確立される。次いでユーザーは、システムを準備し、送達ライン内の気泡を取り除くため、従来の方法で空気抜きを行ってもよい。注入すべき所望の用量は、対応する数字32がウィンドウ99に現れるまで、注入装置1の全体軸のまわりにある角度だけ、用量ダイヤル40を(図の上方から見て)時計まわりに回転することによって設定される。用量ダイヤル40の回転は、歯46と溝24との間の係合によるドライバ20の回転、及びリブ23とトラック33との間の係合によるスケールドラム30の回転を引き起こす。ハウジング2に対するスケールドラム30の回転が減少すると、スレッド31を内側スレッド3に沿って移動させ、スケールドラム30を最上部位置からハウジング2内でらせん状に変位させる。ユーザーが何らかの理由により所望の用量よりも大きい用量にダイヤル設定した場合には、用量を適宜調整するため、用量ダイヤル40の回転を戻すことができる。この点に関して、用量ダイヤル40の反時計まわりの回転は、スケールドラム30をハウジング2内で後退させるだけにすぎない。
注入装置1のこの用量設定状態では、カップ22は、ボタンばね55によって近位方向に付勢される注入ボタン50により、内側部材45にしっかりと結合され、その結果、尖頭部54は近位方向に向けられた力をくびれ26に働かせる。その結果、ドライバ20はピストンロッドガイド8から分離されたある軸位置に保持され、ピストンロッド6に運動が伝達されないように保証する。
外側コイル端部16aはカップ22に回転可能に固定され、外側コイル端部15aは用量ダイヤル40の内側部材45に回転可能に固定されるため、用量設定中、ばねアセンブリ10全体は変形しない回転を受け、用量ダイヤル40とドライバ20によって働かされる。この実施形態では、ばねアセンブリ10は事前に十分な張力が印加されており、すなわち、近位ぜんまいばね15及び遠位ぜんまいばね16は共に、一又は複数の注入で、カートリッジ70を空にするのに十分な角変位とトルクを注入機構に提供することができる。
設定用量を注入するため、ユーザーはボタンばね55の付勢力に抗して、注入ボタン50をハウジング2へ押下する。これにより最初にリッジ56をスライドさせて溝4に係合し、これにより注入ボタン50をハウジング2に回転可能に固定する。用量ダイヤル40は注入ボタン50に対して回転可能に固定されているため、注入ボタン50の押下により、最初に用量ダイヤル40はハウジング2に回転可能に固定される結果となる。
注入ボタン50の任意の軸運動は、ピン本体52とくびれ26との間の相互作用により、ドライバ20に伝達される。したがって、注入ボタン50の押下は結果的に溝25をスライドさせてリッジ9と係合し、ドライバ20をピストンロッドガイド8に回転可能に固定し、最終的には、溝24をスライドさせて歯46との係合から外し、カップ22を内側部材45から分離し、ばねアセンブリ10を解放する。
したがって、ドライバ20が用量ダイヤル40に係合していないときには、事前に張力を印加したばねアセンブリは自由になり、エネルギーを注入機構に供給する。注入装置1のこの用量注入状態では、注入ボタン50が押下されるとき、用量ダイヤル40はハウジング2に対して並進可能且つ回転可能に固定されるため、外側コイル端部15aはハウジング2に対して動かない。エネルギー解放時に近位ぜんまいばね15が部分的にほどけることにより、内側コイル端部15bは近位シャフト13、更にはプレート12及び遠位シャフト14も回転させるように誘導される。特に、この回転は反時計まわりで、すなわち、用量設定時に用量が増加すると、用量ダイヤル40の回転と反対になる。遠位ぜんまいばね16の内側コイル端部16bは、遠位シャフト14に対して回転可能に固定されているため、角変位θ1を受けるが、これは、近位ぜんまいばね15が部分的にほどけるときのローター11の角変位に対応している。しかしながら、遠位ぜんまいばね16自体はまた、部分的にほどけて、遠位シャフト14に対する外側コイル端部16aの角変位θ2だけ、外側コイル端部16aの総角変位に寄与する。したがって、外側コイル端部16a、及びその結果としてカップ22は、ハウジング2に対する総角変位θ1+θ2を受ける。
ドライバ20の反時計まわりの回転は、2つの同時事象を引き起こす。溝25とリッジ9との間の係合が確立することにより、ピストンロッドガイド8はスリーブ21と共に回転させられ、ピストンロッドガイド8とピストンロッド6との間のスプライン結合された関係により、ピストンロッド6も同様になる。ピストンロッド6とナット5との間のねじ係合は、ピストンロッドをハウジング2に対して軸方向に前進させ、カートリッジ70内でピストン74を遠位方向に押し、これにより薬剤はニードル(図示せず)を通って供給される。更に、リブ23とトラック33との間の係合はスケールドラム30の反時計まわりの回転を引き起こし、これにより、内側スレッド3に沿ってスレッド31を後退させ、スケールドラム30をハウジング2内で最上位置に向かってらせん状に上方へ変位させる。
カートリッジ70からの薬剤の吐出は、スケールドラム30が最上位置に到達し、ウィンドウ99に「0」が表示されるまで続く。最上位置では、スケールドラム30はこれ以上反時計まわりに回転することはできず、その結果、カップ22の停止をもたらし、ばねアセンブリ10が更にエネルギーを放出するのを防止する。その後ユーザーが押下面51から指を外すと、ボタンばね55は弛緩し、注入ボタン50を押し上げて使用前の位置に戻す。これにより、尖頭部54はカップ22を持ち上げて戻し、内側部材45と係合させ、これによりピストンロッドガイド8をドライバ20から分離し、ばねアセンブリ10を固定する。これで、注入装置1の新しい用量設定手続きの準備が整う。
付勢された注入ボタン50はまた、任意選択により注入の停止を行うことができる。注入中、スケールドラム30が最上位置まで戻る前に、ユーザーが押下面51から指を外した場合には、ボタンばね55は即座にカップ22を持ち上げ、これにより溝24は歯46と係合し、更なる回転に対してばねアセンブリ10を固定する。スケールドラム30は現在の位置に留まり、ピストンロッド6は、注入ボタン50が再度ハウジング2に押下されるまで停止している。
ユーザーが注入装置1から用量の薬剤を吐出するにつれて、外側コイル端部15a、16aのそれぞれの角たわみは徐々に減少し、ばねアセンブリ10のポテンシャルエネルギーを低減する。しかしながら、注入機構、カートリッジ70、注入ニードル(図示せず)、及びばねアセンブリ10からなるシステムは、体の特定の標的部位に対して十分な力で、チャンバ75内の投与可能な量の薬剤すべてを送達できる寸法になっている。
注入装置1は代替的に、ばねアセンブリ10の代わりにばねユニット110を含むように設計されてもよい。その場合、巻かれた分枝115、116は、それぞれ専用の近位ばねハウジングと遠位ばねハウジング(図示せず)を占めることがあり、ばねハウジングは用量ダイヤル40にスプライン結合されてもよい。注入ボタン50の押下中は、遠位ばねハウジングは用量ダイヤル40との係合から外れ、上述と同様な方法で、部分的にほどけた分枝115、116からのトルクを注入機構に伝達する。
図5は、3つの直列に配置されたぜんまいばねを有する、代替的なばねアセンブリ210の分解図である。ばねアセンブリ210は、近位ぜんまいばね215と、近位ローター211、遠位ローター281を介して動作可能に結合される遠位ぜんまいばね216と、中央ぜんまいばね285を備える。近位ローター211は、中空シャフト部分213及びドラム部分214を備える。同様に、遠位ローター281は、中空シャフト部分283及びドラム部分284を備える。
近位ぜんまいばね215は、少なくとも薬剤送達中に動かない薬剤送達装置の一部に回転固定されるように適合された外側コイル端部215aと、近位シャフト部分13に対する内側コイル端部15bの固定と同様の方法で、シャフト部分213に回転固定されている内側コイル端部215bとを有する。中央ぜんまいばね285は、ドラム部分214のスロット218に挿入される外側コイル端部285aを有し、ローター211と外側コイル端部285aの結合回転を保証し、シャフト部分283のスロット289に挿入される内側コイル端部285bは、ローター281と内側コイル端部285bの結合回転を保証する。したがって、中央ぜんまいばね285は、ドラム部分214内を占め、シャフト部分283の周りに巻かれる。遠位ぜんまいばね216は、ドラム部分284のスロット288に挿入され、ローター281と外側コイル端部216aの結合回転を保証する外側コイル端部216aと、固定部分に対して回転されるとき、例えば、ある用量の薬剤の吐出を引き起こす薬剤送達装置の一部に回転固定されるように適合される内側コイル端部216bとを4有する。
ばねアセンブリ210は、ドライバ20が内側コイル端部216bと回転可能に係合するように再設計されているならば、ばねアセンブリ10の代わりに注入装置1内で使用可能である。例えば、各ぜんまいばね215、216、285の構造的特徴がぜんまいばね15、16のそれぞれの構造的特徴と同一であるならば、ばねアセンブリ210は、付加的な中央ぜんまいばね285があることによって、ばねアセンブリ10よりも高い能力を有することがあり、ばねアセンブリ210はその結果として、注入機構に対してより大きな総角変位をもたらすことが可能となりうる。
事実、近位ローター211、近位ぜんまいばね215、及び中央ぜんまいばね285からなるアセンブリ部品は、その内部に、特に2つのぜんまいばねが同じ巻き方向を有するばねアセンブリ10に対して代替的な動力装置を構成する。
図6は、4つの直列に配置されたぜんまいばねを備える、更なる代替的なばねアセンブリ310の分解図である。ばねアセンブリ310は、近位ぜんまいばね315、近位ローター311及び第1中央ぜんまいばね385からなる近位ばねアセンブリと、遠位ぜんまいばね316、遠位ローター381、及び第2中央ぜんまいばね386からなる遠位ばねアセンブリと、近位ばねアセンブリと遠位ばねアセンブリを動作可能に結合する中央ローター1381とを備える。近位ローター311は、横断分割プレート312によって分離される中空近位シャフト313と中空遠位シャフト314を備える。同様に、遠位ローター381は、横断分割プレート382によって分離される中空近位シャフト383と中空遠位シャフト384を備える。中央ローター1381は、相対回転できない近位ドラム部分1383及び遠位ドラム部1384を備える。また、近位ローター311と遠位ローター381は共にねじり剛性構造である。
近位ぜんまいばね315は、薬剤送達中に動かない薬剤送達装置の一部に装着されるように適合された外側コイル端部315a、及び近位シャフト313に回転可能に固定される内側コイル端部315bを有する。第1中央ぜんまいばね385は、遠位シャフト314のスロット318に挿入され、内側コイル端部385bと近位ローター311の結合回転を保証する内側コイル端部385b、及び近位ドラム部分1383のスロット1389に挿入され、外側コイル端部385aと中央ローター1381の結合回転を保証する外側コイル端部385aを有する。第2中央ぜんまいばね386は、遠位ドラム部分1384のスロット1388に挿入され、外側コイル端部386aと中央ローター1381の結合回転を保証する外側コイル端部386a、及び近位シャフト383に回転可能に固定される内側コイル端部386bを有する。最終的に、遠位ぜんまいばね316は、遠位シャフト384のスロット388に挿入され、内側コイル端部316bと遠位ローター381の結合回転を保証する内側コイル端部316b、及び、例えば、固定部分に対して回転されるとき、ある用量の薬剤の吐出を引き起こす薬剤送達装置の一部に回転固定されるように適合される外側コイル端部316aを有する。
近位ぜんまいばね315及び第1中央ぜんまいばね385は、近位ローター311の周りで反対方向に巻かれている。同様に、第2中央ぜんまいばね386及び遠位ぜんまいばね316は、遠位ローター381の周りで反対方向に巻かれている。更に、第1中央ぜんまいばね385及び第2中央ぜんまいばね386は、反対の巻き方向を有する。したがって、事前に張力が印加されたばねアセンブリ310は解放されると、個々のぜんまいばねのコイル端部の間の相対角変位の和に等しい、外側コイル端部315aに対する外側コイル端部316aの総角変位をもたらす。
見てわかるように、原理的に、ばねアセンブリ310は、ドラム1381を介して直列に配置される図3に示したタイプの2つのサブアセンブリを備え、より大きなリザーバを空にするため、図1に示すタイプの注入装置のばねアセンブリ10をそれ自体で直接交換することが可能である。
本明細書で開示されているばねアセンブリのすべては、使用される薬剤送達装置の固有の要件を満たすため、所望どおりに伸長させることができる。ばねアセンブリ10は例えば、図6に関して説明されている方法で伸長可能であり、ばねアセンブリ210は例えば、ドラム部分の更なるぜんまいばねを内側コイル端部216などに運ぶローターのような付加部分によって伸長可能であり、ばねアセンブリ310は例えば、サブアセンブリを外側コイル端部316aなどに運ぶドラムのような付加部分によって伸長可能である。