JP2016510477A - コンパクトな質量分析計 - Google Patents

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Abstract

質量分析法を用いて試料に関する情報を測定するための質量分析計及び方法が開示される。

Description

本開示は、質量分析法を用いた物質の同定に関わる。
質量分析計は、化学物質を検出するために広く使われている。典型的な質量分析計においては、分子又は粒子が励起又はイオン化され、これら励起種は、しばしば分解してより小さい質量のイオンを形成し又は他の種と反応して他の特徴的イオンを形成する。このイオン形成パターンはシステムオペレータにより解釈され、この化合物の同一性を推論できる。
概して、第1の局面では、本開示は、イオン源と、イオントラップと、イオン検出器と、ガス圧調整サブシステムとを含む質量分析計を提供し、前記質量分析計の動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成され、前記イオン検出器は、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出するよう構成されている。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオントラップ及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源及び前記イオントラップにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源を含むことができる。前記イオン源は、コンデンサ放電イオン化源を含むことができる。前記イオン源は、誘電性バリア放電イオン化源を含むことができる。
前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて前記ガス圧を制御するよう構成されたガスポンプを含むことができる。前記質量分析計は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて前記ガス圧を制御するために前記ガスポンプを作動するコントローラを含むことができる。前記ガスポンプはスクロールポンプを含むことができる。
動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて500ミリトールと10トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて差が10トール未満のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において差が10トール未満のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて同一のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において同一のガス圧を維持するよう構成できる。
前記質量分析計は、ガス経路であって、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器が接続されたガス経路と、前記ガス経路に接続されたガス導入口であって、動作時に、分析されるガス粒子が前記ガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され、前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子の圧力が、100ミリトールと100トールとの間となるように構成されたガス導入口とを含むことができる。前記ガス導入口は、動作時に、前記分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含むガス粒子の混合物が前記ガス導入口内に引き込まれるよう構成でき、前記ガス粒子の混合物は、前記ガス経路内に導入される前に大気ガス粒子を除去するために濾過されない。
前記質量分析計は、前記ガス経路に接続された試料ガス導入口と、前記ガス経路に接続されたバッファガス導入口とをさらに含み、前記質量分析計の動作時に:分析されるガス粒子が前記試料ガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され;バッファガス粒子が前記バッファガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され;且つ前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子と前記バッファガス粒子との組合せ圧力が100ミリトールと100トールとの間となるように、前記試料ガス導入口及び前記バッファガス導入口が構成されている。前記バッファガス粒子は、窒素分子及び/又は希ガス分子を含むことができる。
前記イオン源及び前記イオントラップは、第1の複数電極を含むハウジングに囲われることができ、前記質量分析計は、前記第1の複数電極に解放可能に係合するよう構成された第2の複数電極を備えた支持ベースをさらに含み、前記ハウジングが、繰り返し前記支持ベースに接続可能で且つ前記支持ベースから切り離し可能である。前記質量分析計は、前記第1の複数電極が前記第2の複数電極に係合すると前記ハウジングを前記支持ベースに固定するよう構成された取付機構を含むことができる。前記取付機構はクランプ及びカムの少なくとも1つを含む。
前記第1の複数電極はピンを含むことができ、前記第2の複数電極は前記ピンを収容するよう構成されたソケットを含むことができる。
前記イオン検出器は前記ハウジング内に囲われることができる。前記ガス圧調整システムはポンプを含むことができ、前記ポンプは前記ハウジング内に囲われることができる。
前記支持ベースは、前記第2の複数電極に結合された電圧源と、前記電圧源に接続されたコントローラとを含み、前記コントローラは、前記ハウジングが前記支持ベースに接続されると、前記イオン源と前記イオントラップとにさらに接続される。動作時に、前記コントローラは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも1つ内の前記ガス圧を求め、前記ガス圧調整システムを作動させることで前記ガス圧を制御するよう構成できる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、質量分析計のイオン源、イオントラップ、及びイオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階と、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出する段階と、を含む方法を提供する。
前記方法の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記方法は、前記イオントラップ及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源及び前記イオントラップにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて500ミリトールと10トールとの間のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて差が10トール未満のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において差が10トール未満のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて同一のガス圧を維持する段階をさらに含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において同一のガス圧を維持する段階をさらに含むことができる。
前記方法は、分析されるガス粒子を、前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器とを接続するガス経路内にガス導入口を介して導入する段階であって、前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子の圧力が、100ミリトールと100トールとの間となる段階を含むことができる。前記方法は、ガス粒子の混合物を、前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器とを接続するガス経路内にガス導入口を介して導入する段階を含むことができ、前記ガス粒子の混合物は分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含み、前記ガス粒子の混合物は、前記ガス経路内に導入される前に大気ガス粒子を除去するために濾過されない。
前記方法は、分析されるガス粒子を、前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器とを接続するガス経路内に試料ガス導入口を介して導入する段階と、バッファガス粒子を前記ガス経路内にバッファガス導入口を介して導入する段階とを含むことができ、前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子と前記バッファガス粒子との組合せ圧力が100ミリトールと100トールとの間である。前記バッファガス粒子は、窒素分子及び/又は希ガス分子を含むことができる。
前記方法の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は、第1の複数電極を特徴とする支持ベースと、第2の複数電極を特徴とする差し込み可能なモジュールとを含む質量分析計を提供し、前記差し込み可能なモジュールは、前記第2の複数電極を前記第1の複数電極に係合させることにより、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成され、前記差し込み可能なモジュールは、ガス経路に接続されたイオントラップを含む。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記差し込み可能なモジュールは、前記ガス経路に接続されたイオントラップを含むことができる。前記第2の複数電極はピンを含むことができ、前記第1の複数電極は前記ピンを収容するよう構成されたソケットを含むことができる。
前記支持ベースは第1取付機構を含み、前記差し込み可能なモジュールは、前記第1取付機構に係合するよう構成された第2取付機構を含む。
前記第1及び第2取付機構は、前記差し込み可能なモジュールが前記支持ベースに1つの配向においてのみ解放可能に接続するよう構成できる。前記第1及び第2取付機構の一方は、非対称的な延伸部材を含むことができ、前記第1及び第2取付機構の他方は、前記延伸部材を収容するよう構成された凹部を含むことができる。前記第1及び第2取付機構の少なくとも一方は軟質の密封部材を含むことができる。前記第1及び第2取付機構の少なくとも一方は、クランプ及びカムの少なくとも1つを含むことができる。
前記質量分析計は、前記ガス経路に接続された試料ガス導入口を含むことができる。前記質量分析計は、前記支持ベースに取り付けられたイオン検出器を含むことができる。前記差し込み可能なモジュールは、前記ガス経路に接続されたイオン検出器を含むことができる。前記イオン検出器は、前記差し込み可能なモジュールが前記支持ベースに取り付けられると前記イオン検出器が前記ガス経路に接続されるように、前記支持ベース上に配置できる。
前記質量分析計は、前記支持ベースに取り付けられたポンプを含むことができる。前記差し込み可能なモジュールは、前記ガス経路に接続されたポンプを含むことができる。前記ポンプは、前記差し込み可能なモジュールが前記支持ベースに取り付けられると前記ポンプが前記ガス経路に接続されるように、前記支持ベース上に配置できる。前記ポンプはスクロールポンプを含むことができる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源及び/又はコンデンサ放電イオン化源を含むことができる。
前記質量分析計は、前記ガス経路に接続されたイオン検出器と、前記支持ベースに取り付けられると共に前記イオントラップに接続されたコントローラとを含むことができる。前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記検出器を用いて前記イオン源により発生されたイオンを検出し、前記検出されたイオンの同一性に関連した情報を特定し、出力インターフェースを用いてその情報を表示するよう構成できる。
前記質量分析計は、前記ガス経路に接続されたポンプであって、前記ガス粒子の圧力を100ミリトールから100トールの範囲に維持するよう構成されたポンプを含むことができる。前記質量分析計は、前記イオントラップ及び前記ポンプに接続されたコントローラを含むことができ、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記ガス経路内のガス粒子の圧力を求め、前記ガス粒子の前記圧力を100ミリトールから100トールの範囲に維持するため前記ポンプを作動するよう構成できる。
前記ポンプは、前記ガス粒子の前記圧力を100ミリトールから100トールの範囲に維持するよう構成できる。
前記質量分析計は、前記支持ベース及び前記差し込み可能なモジュールを取り囲む封入容器を含むことができ、前記封入容器は、前記差し込み可能なモジュールに隣接して配置された開口を備え、前記質量分析計のユーザが、前記差し込み可能なモジュールを前記支持ベースに前記開口を介して接続且つ切り離しできる。前記質量分析計は、配置した際に前記囲み容器の前記開口を塞ぐカバー部材を含むことができる。前記カバー部材は引き込み式ドアを含むことができる。前記カバー部材は、前記囲み容器から完全に取り外し可能な蓋を含むことができる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、本明細書で開示した任意の質量分析計を含む質量分析計システムを提供し、当該質量分析計は、第1の差し込み可能なモジュールと、1つ又は複数の付加的な差し込み可能なモジュールを備え、前記付加的な差し込み可能なモジュールのそれぞれは、イオントラップ及び第3の複数電極を含み、前記付加的な差し込み可能なモジュールは、前記第3の複数電極を前記第1の複数電極に係合させることにより、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成されている。
前記システムの実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記付加的な差し込みモジュールの少なくとも1つは、前記第1の差し込み可能なモジュールの前記イオントラップに実質的に類似したイオントラップを含むことができる。
前記第1の差し込み可能なモジュールはイオン源を含むことができ、前記付加的な差し込みモジュールの少なくとも1つは、前記第1の差し込み可能なモジュールの前記イオン源とは異なるイオン源を含むことができる。例えば、前記第1の差し込み可能なモジュールの前記イオン源は、グロー放電イオン化源を含むことができ、前記付加的な差し込みモジュールの少なくとも1つは、グロー放電イオン化源とは異なるイオン化源(例えば、エレクトロスプレーイオン化源、誘電性バリア放電イオン化源、及び/又はコンデンサ放電イオン化源)を含むことができる。
前記付加的な差し込みモジュールの少なくとも1つは、前記第1の差し込み可能なモジュールの前記イオントラップとは異なるイオントラップを含むことができる。前記第1の差し込みモジュールの前記イオントラップの直径は、前記付加的な差し込み可能なモジュールの少なくとも1つのイオントラップの直径とは異なっていてもよい。代替的に又は付加的に、前記第1の差し込みモジュールの前記イオントラップの断面形状は、前記付加的な差し込み可能なモジュールの少なくとも1つのイオントラップの断面形状とは異なっていてもよい。
前記第1の差し込み可能なモジュールはイオン検出器を含むことができ、前記付加的な差し込みモジュールのぞれぞれはイオン検出器を含むことができ、前記第1の差し込みモジュールの前記イオン検出器は、前記付加的な差し込み可能なモジュールの少なくとも1つの前記イオン検出器とは異なっていてもよい。
前記第1の差し込み可能なモジュールの少なくとも1つの表面は、第1被覆を含むことができ、前記付加的な差し込みモジュールの少なくとも1つの少なくとも1つの表面は、前記第1被覆と異なる第2被覆を含むことができる。
前記システムの実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は、質量分析計であって、支持ベースと、前記支持ベースに取り付けられたイオン源と、前記支持ベースに取り付けられたイオントラップと、前記支持ベースに取り付けられたイオン検出器と、前記支持ベースに取り付けられた電源であって、前記支持ベースを介して前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器に電気的に接続された電源と、を含む質量分析計を提供し、前記質量分析計の動作時に、前記電源は電力を、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器に供給するよう構成されている。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計は、前記支持ベースに取り付けられると共に前記支持ベースを介して前記電源に電気的に接続されたガス圧調整システムを含むことができ、前記質量分析計の動作時に、前記電源は、電力を前記ガス圧調整システムに供給するよう構成されている。前記質量分析計は、前記支持ベースに取り付けられたコントローラであって、前記支持ベースを介して前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器と、前記ガス圧調節システムとに電気的に接続されたコントローラを含むことができる。前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器はガス経路に接続でき、前記質量分析計の動作時に、前記ガス圧調節システムは、前記ガス経路内のガス圧を100ミリトールから100トールの範囲(例えば、500ミリトールから10トールの範囲)に維持するよう構成できる。前記ガス圧調節システムはスクロールポンプを含むことができる。
前記支持ベースはプリント回路基板を含むことができる。
前記質量分析計は、前記ガス経路に接続されたガス導入口を含むことができ、前記ガス導入口は、前記質量分析計の動作時に、前記分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含むガス粒子の混合物が前記ガス導入口を介して前記ガス導入口内に引き込まれるよう構成されており、前記ガス粒子の混合物は、前記大気ガス粒子を濾過することなく前記ガス経路内に導入される。前記ガス導入口は、前記コントローラに電気的に接続されたバルブを含むことができ、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは前記ガス粒子の混合物を、少なくとも30秒の間、前記ガス導入口を介して前記ガス経路内に導入するよう構成できる。
前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記イオン検出器を用いて前記イオン源により発生されたイオンを検出し、前記検出されたイオンに基づいて前記イオン源のデューティサイクルを調整するよう構成できる。前記コントローラは、前記イオン源がイオンを発生する時間間隔を調節することによって前記イオン源の前記デューティサイクルを調整するよう構成できる。前記コントローラは、前記イオン源の電極に印加される電位の期間及び大きさの少なくとも一方を調節することによって、前記イオン源の前記デューティサイクルを調整するよう構成できる。
前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記検出されたイオンの同一性に関連した情報を特定し、出力インターフェースを用いてその情報を表示するよう構成できる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源及び/又誘電性バリア放電イオン化源を含むことができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、質量分析計であって、イオン源と、イオントラップと、ガス経路に接続された検出器と;前記ガス経路に接続されると共にバルブを備えたガス導入口と;前記ガス経路内のガス圧を制御するよう構成された圧力調整システムと;前記バルブ、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記検出器に接続されたコントローラとを含む質量分析計を提供し、前記質量分析計の動作時に、前記圧力調整システムは、前記ガス経路内で100ミリトールを上回るガス圧を維持するよう構成されており、前記コントローラは、(a)ガス粒子の混合物が前記ガス経路内に導入されるように前記バルブを作動させ、ここでは、前記混合物が前記分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含み、前記ガス粒子の混合物が、前記大気ガス粒子の濾過なしで前記ガス経路内に導入され、前記コントローラは、(b)前記イオン源を作動して前記分析されるガス粒子からイオンを発生させ、且つ前記コントローラは、(c)前記検出器を作動して前記イオンの質量電荷比に従って前記イオンを検出する。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記大気ガス粒子は、窒素分子及び酸素分子の少なくとも一方を含むことができる。前記圧力調整システムは、前記ガス経路において500ミリトールを上回る(例えば1トールと)ガス圧を維持するよう構成できる。前記コントローラは、前記バルブを作動して前記ガス粒子の混合物を少なくとも10秒間にわたり(少なくとも30秒間にわたり、少なくとも1分間にわたり、少なくとも2分間にわたり)前記ガス経路内に連続的に導入するよう構成できる。
前記質量分析計は:前記イオン源及び前記イオントラップを囲むハウジングであって、前記イオン源及び前記イオントラップに接続された第1の複数電極を備えたハウジングと、前記第1の複数電極に係合するよう構成された第2の複数電極を備えた支持ベースとを含むことができ、前記ハウジングは、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成された差し込み可能なモジュールを形成する。前記コントローラは前記支持ベースに接続可能である。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
動作時には、前記コントローラは、前記イオン源のデューティサイクルを前記検出されたイオンに基づいて調節するように構成できる。例えば、前記コントローラは、イオンが前記分析されるガス粒子から10秒以上の連続期間にわたって(例えば、30秒以上の連続期間にわたって、1分以上の連続期間にわたって、2 分以上の連続期間にわたって)発生されるように、前記イオン源を調節するよう構成できる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は:ガス粒子の混合物を質量分析計のガス経路内に導入する段階であって、前記ガス粒子の混合物は分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含み、前記ガス粒子の混合物は、前記大気ガス粒子を濾過することなく導入される、導入する段階と;前記ガス経路において100ミリトールを上回るガス圧を維持する段階と;前記ガス経路に接続されたイオン源を用いて前記分析されるガス粒子からイオンを発生する段階と;前記ガス経路に接続された検出器を用いて、前記イオンの質量電荷比に従って前記イオンを検出する段階とを含む方法を提供する。
前記方法の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記大気ガス粒子は、窒素分子及び酸素分子の少なくとも一方を含むことができる。
前記方法は、前記ガス経路において500ミリトールを上回る(例えば1トールと)ガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記ガス粒子の混合物を少なくとも10秒間にわたり(少なくとも30秒間にわたり、少なくとも2分間にわたり)前記ガス経路内に連続的に導入する段階を含むことができる。前記方法は、イオンが前記分析されるガス粒子から10秒以上の連続期間にわたって(例えば、30秒以上の連続期間にわたって、2分以上の連続期間にわたって)発生されるように、前記イオン源を調節する段階を含むことができる。
前記方法の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、イオン源と、イオントラップと、イオン検出器と、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器におけるガス圧を制御するよう構成された単一のメカニカルポンプを特徴とする圧力調整システムと、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器に接続されたコントローラとを含む質量分析計を提供し、前記単一のメカニカルポンプは、前記ガス圧を制御するため毎分6000サイクル未満の回数で動作し、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは前記イオン検出器を作動して、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出するよう構成されている。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記単一のメカニカルポンプはスクロールポンプを含むことができる。前記単一のメカニカルポンプは、前記ガス圧を制御するため毎分4000サイクル未満の回数で動作できる。
前記質量分析計の動作時に、前記単一のメカニカルポンプは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持できる。前記質量分析計の動作時に、前記単一のメカニカルポンプは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて500ミリトールと10トールとの間のガス圧を維持できる。前記質量分析計の動作時に、前記単一のメカニカルポンプは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて共通のガス圧を維持できる。前記質量分析計の動作時に、前記単一のメカニカルポンプは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において差が10トール以下のガス圧を維持できる。
前記コントローラは前記ポンプに接続でき、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは前記ポンプの回数を制御するよう構成できる。前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記イオン検出器を用いて前記イオン源により発生されたイオンを検出し、前記検出されたイオンに基づいて前記ポンプの回数を調整するよう構成できる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源、誘電性バリア放電イオン化源、及び/又はコンデンサ放電イオン化源を含むことができる。
前記質量分析計は、前記イオン源及び前記イオントラップを囲むと共に前記イオン源及び前記イオントラップに接続された第1の複数電極を備えるハウジングと、前記第1の複数電極に係合するよう構成された第2の複数電極を備えた支持ベースとを含むことができ、前記ハウジングは、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成された差し込み可能なモジュールである。前記ハウジングは前記ポンプを囲むことができる。前記コントローラは前記支持ベースに取り付け可能である。前記支持ベースはプリント回路基板を含むことができる。前記電気プロセッサは、前記イオン源及び前記イオントラップに前記支持ベースを介して電気的に接続できる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満である。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は、質量分析計のイオン源、イオントラップ、及びイオン検出器におけるガス圧を制御するために単一のメカニカルポンプを用いる段階と、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出するために前記イオン検出器を用いる段階と、を含む方法を提供し、ガス圧を制御するために前記単一のメカニカルポンプを用いる段階は、前記ガス圧を制御するため前記ポンプを毎分6000サイクル未満の回数で動作させる段階を含む。
前記方法の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記方法は、前記ガス圧を制御するため前記ポンプを毎分4000サイクル未満の回数で動作させる段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間の(例えば、500ミリトールと10トールとの間の)ガス圧を維持する段階を含むことができる。
前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて共通のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において差が10トール未満のガス圧を維持する段階を含むことができる。
前記方法は、前記検出されたイオンに基づいて(例えば、前記検出されたイオンの存在量に基づいて)前記ポンプの前記回数を調節する段階を含むことができる。
前記方法の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、質量分析計であって、イオン源と、イオントラップと、イオン検出器と、ユーザインターフェースと、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、及び前記ユーザインターフェースに接続されたコントローラと、を含む質量分析計を提供し、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記イオン検出器を用いて前記イオン源により発生されたイオンを検出し、前記検出されたイオンに関連付けられた化学名を特定し、前記ユーザインターフェースに前記化学名を表示するよう構成され、前記ユーザインターフェースは、前記化学名が表示された後にユーザによって作動されると、前記コントローラに前記検出されたイオンのスペクトルを前記ユーザインターフェース上で表示させる制御手段を含む。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記検出されたイオンの前記スペクトルを表示させることは、前記検出されたイオンの存在量を当該イオンの質量電荷比の関数として表示することを含む。前記制御手段は、ボタン、スイッチ、及びタッチスクリーン表示装置の領域の少なくとも1つを含むことができる。前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記検出されたイオンに関連付けられた危険を前記ユーザインターフェース上で表示するようさらに構成できる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源、コンデンサ放電イオン化源、及び誘電性バリア放電イオン化源の少なくとも1つとすることができる。
前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記制御手段が動作されなければ前記検出されたイオンの前記スペクトルが表示されないよう構成できる。
前記イオン検出器はファラデー検出器を含むことができる。
前記質量分析計は圧力調節システムを含むことができ、前記質量分析計の動作時に、前記圧力調節システムは、前記イオントラップ及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間の(例えば、500ミリトールと10トールとの間の)ガス圧を維持するよう構成されている。
前記圧力調節システムはスクロールポンプを含むことができる。
前記質量分析計は、前記イオン源、前記イオントラップ、並びに前記イオン源及び前記イオントラップに接続された第1の複数電極を備えた差し込み可能なモジュールと、電圧源及び前記第1の複数電極に係合するよう構成された第2の複数電極を備えた支持ベースとを含むことができ、前記差し込み可能なモジュールは、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成されている。
前記差し込み可能なモジュールは前記イオン検出器を含むことができる。前記差し込み可能なモジュールは圧力調整システムを含むことができる。
前記質量分析計は、前記差し込み可能なモジュール及び前記支持ベースを囲むハウジングであって、前記差し込み可能なモジュールに隣接して配置された開口を備えると共に前記差し込み可能なモジュールを前記開口に挿入して前記支持ベースに解放可能に接続できるよう構成されたハウジングを含むことができる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は、質量分析計であって、イオン源と、イオントラップと、イオン検出器と、ユーザインターフェースと、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、及び前記ユーザインターフェースに接続されたコントローラとを含む質量分析計を備え、前記ユーザインターフェースは、前記質量分析計のユーザが少なくとも2つの状態の何れかに作動できる制御手段を含み、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記イオン検出器を用いて前記イオン源により発生されたイオンを検出し、前記検出されたイオンに関連付けられた化学名を特定し、前記制御手段が第1状態に作動されると、前記ユーザインターフェース上に前記化学名を表示し、前記制御手段が第2状態に作動されると、前記ユーザインターフェース上に前記検出されたイオンのスペクトルを表示するよう構成されている。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記コントローラが前記第2状態に作動されると、前記コントローラは、前記化学名を前記ユーザインターフェース上で表示するようさらに構成できる。前記検出されたイオンの前記スペクトルを表示することは、前記検出されたイオンの存在量を当該イオンの質量電荷比の関数として表示することを含むことができる。前記制御手段は、ボタン、スイッチ、及びタッチスクリーン表示装置の領域の少なくとも1つを含むことができる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源、コンデンサ放電イオン化源、及び/又は誘電性バリア放電イオン化源の少なくとも1つとすることができる。
前記質量分析計は前記コントローラに接続された圧力調節システムを含むことができ、前記質量分析計の動作時に、前記圧力調節システムは、前記イオントラップ及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間の(例えば、500ミリトールと10トールとの間の)ガス圧を維持するよう構成されている。前記圧力調節システムはスクロールポンプを含むことができる。
前記質量分析計は、前記イオン源、前記イオントラップ、並びに前記イオン源及び前記イオントラップに接続された第1の複数電極を含む差し込み可能なモジュールと、電圧源及び前記第1の複数電極に係合するよう構成された第2の複数電極を含む支持ベースとを含むことができ、前記差し込み可能なモジュールは、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成されている。前記差し込み可能なモジュールは、前記イオン検出器及び/又は圧力調整システムを含むことができる。
前記質量分析計は、前記差し込み可能なモジュール及び前記支持ベースを囲むハウジングであって、前記差し込み可能なモジュールに隣接して配置された開口を備えると共に前記差し込み可能なモジュールを前記開口に挿入して前記支持ベースに解放可能に接続できるよう構成されたハウジングを含むことができる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、質量分析計であって、イオン源と、イオントラップと、イオン検出器と、試料導入口と、圧力調整システムとを含む質量分析計を提供し、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、前記試料導入口、及び前記圧力調整システムはガス経路に接続され、前記質量分析計の動作時には、ガス粒子が、前記試料導入口を介してのみ前記ガス経路内に導入され、前記圧力調整システムは、前記ガス経路において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成され、前記イオン検出器は、前記イオン源により前記ガス粒子から発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出するよう構成されている。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記圧力調整システムは、前記ガス圧を500ミリトールと10トールとの間に維持するよう構成できる。前記圧力調整システムは、前記ガス圧を500ミリトールより高く維持するよう構成できる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源、コンデンサ放電イオン化源、及び誘電性バリア放電イオン化源の少なくとも1つを含むことができる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記圧力調節システムはスクロールポンプを含むことができる。
前記試料導入口は、前記ガス経路に導入されるガス粒子が、分析されるガス粒子及び大気ガス粒子を含むように構成できる。
前記質量分析計は、前記試料導入口に接続されたバルブと、当該バルブに接続されたコントローラとを含むことができ、前記質量分析計の動作時には、前記コントローラは、前記ガス粒子を、前記試料導入口を介して前記ガス経路内に少なくとも30秒間にわたり(少なくとも1分間にわたり、少なくとも2分間にわたり)連続的に導入するよう構成できる。
前記質量分析計は、前記イオン源に接続されたコントローラを含むことができ、前記質量分析計の動作時には、前記コントローラは、前記イオン源に印加される電位を調節して、イオンが前記イオン源により前記ガス粒子から少なくとも30秒間にわたり(少なくとも1分間にわたり、少なくとも2分間にわたり)連続的に発生されるよう構成できる。
前記質量分析計は、前記イオン源、前記イオントラップ、並びに前記イオン源及び前記イオントラップに接続された第1の複数電極を備えた差し込み可能なモジュールと、電圧源及び前記第1の複数電極に係合するよう構成された第2の複数電極を備えた支持ベースとを含むことができ、前記差し込み可能なモジュールは、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成されている。前記差し込み可能なモジュールは前記圧力調整システムを含むことができる。
前記質量分析計は、前記差し込み可能なモジュール及び前記支持ベースを囲むハウジングであって、前記差し込み可能なモジュールに隣接して配置された開口を備えると共に前記差し込み可能なモジュールを前記開口に挿入して前記支持ベースに解放可能に接続できるよう構成されたハウジングを含むことができる。
前記圧力調節システムは単一のメカニカルポンプを含むことができ、前記質量分析計の動作時には、前記ガス経路内の前記ガス圧を維持するため、前記単一のメカニカルポンプは、毎分6000サイクル未満の回数で動作するよう構成されている。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は、ガス粒子の混合物を単一のガス導入口を介して質量分析計のガス経路内に導入する段階であって、前記ガス粒子の混合物は分析されるガス粒子及び大気ガス粒子のみを含む、導入する段階と、前記ガス経路において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階と、前記分析されるガス粒子から発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出する段階とを含む方法を提供する。
前記方法の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記方法は、前記ガス圧を500ミリトールと10トールとの間に維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記ガス圧を500ミリトールより高く維持する段階を含むことができる。
前記方法は、前記ガス粒子の混合物を、前記単一のガス導入口を介して前記ガス経路内に少なくとも30秒間にわたり(少なくとも1分間にわたり、少なくとも2分間にわたり)連続的に導入する段階を含むことができる。
前記方法は、前記質量分析計のイオン源に印加される電位を調節して、イオンが前記分析されるガス粒子から少なくとも30秒間にわたり(少なくとも1分間にわたり、少なくとも2分間にわたり)連続的に発生される段階を含むことができる。
前記方法は、前記ガス経路内の前記ガス圧を維持するため、前記単一のメカニカルポンプを毎分6000サイクル未満の回数で動作させる段階を含むことができる。
前記方法の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、出口電極を特徴とするイオン源であって、イオンが前記イオン源を出る際に前記出口電極通過するイオン源と、前記出口電極に隣接して配置された入口電極を特徴とするイオントラップと、イオン検出器と、圧力調整システムとを含む質量分析計を提供し、前記出口電極は、当該出口電極の断面形状を画定する1つ又は複数のアパーチャを含み、前記入口電極は、当該入口電極の断面形状を画定する1つ又は複数のアパーチャを含み;前記出口電極の前記断面形状は、前記入口電極の前記断面形状に実質的に一致し;前記質量分析計の動作時に、前記圧力調整システムは、前記イオントラップにおいて少なくとも100ミリトールのガス圧を維持するよう構成されており、前記イオン検出器は、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出するよう構成されている。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記イオントラップは1つ又は複数のイオンチャンバを含み、当該1つ又は複数のイオンチャンバは前記イオントラップの断面形状を画定し、前記イオントラップの該断面形状は、前記入口電極の前記断面形状に実質的に一致できる。
前記出口電極の前記1つ又は複数のアパーチャは、長方形又は正方形配列に配置された多数のアパーチャを含むことができる。前記出口電極の前記1つ又は複数のアパーチャは、六角形配列に配置された多数のアパーチャを含むことができる。前記出口電極の前記1つ又は複数のアパーチャは、長方形の断面形状を備えたアパーチャを含むことができる。前記出口電極の前記1つ又は複数のアパーチャは、螺旋形状の断面形状を備えたアパーチャを含むことができる。前記出口電極の前記1つ又は複数のアパーチャは、蛇行形状の断面形状を備えたアパーチャを含むことができる。前記出口電極の前記1つ又は複数のアパーチャは、4つのアパーチャ(例えば、8個以上のアパーチャ、24個以上のアパーチャ、100個以上のアパーチャ)を含むことができる。前記出口電極の前記1つ又は複数のアパーチャは、蛇行パターンに配置された複数のアパーチャを含むことができる。
前記質量分析計は、前記出口電極及び前記イオン源の第1電極に接続された電圧源と、当該電圧源に接続されたコントローラとを含むことができ、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、共通の接地電位を基準とする異なる電位を前記第1電極及び前記出口電極に印加することによって、少なくとも2つのモードの一方で前記イオン源を動作させるよう構成できる。前記少なくとも2つのモードの第1モードにおいて、前記コントローラは、前記第1電極が前記共通の接地電位に対して正電位となるように、前記第1電極及び前記出口電極に電位を印加するよう構成でき、前記少なくとも2つのモードの第2モードにおいて、前記コントローラは、前記第1電極が前記共通の接地に対して負電位となるように、前記第1及び第2電極に電位を印加するよう構成できる。
前記質量分析計は、選択可能な制御手段を備えたユーザインターフェースであって、前記制御手段が前記質量分析計の動作時に作動されると、前記コントローラがは前記イオン源の前記動作モードを変更するよう構成されているユーザインターフェースを含むことができる。
前記イオン源は、グロー放電イオン化源を含むことができる。
前記質量分析計は、前記コントローラに接続された検出器を含むことができ、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記イオン検出器を用いて前記イオン源により発生されたイオンを検出し、前記第1電極及び前記出口電極に印加される前記電位を前記検出されたイオンに基づいて調節して前記イオン源がイオンを連続的に発生する期間を制御するよう構成できる。前記質量分析計の動作時に、前記イオン源は、イオン源周波数を画定する複数のイオン化サイクルでイオンを発生でき、各イオン化サイクルは、イオンが発生される第1間隔と、イオンが発生されない第2間隔とを含むことができ、前記第1及び第2間隔はデューティサイクルを画定し、前記コントローラは前記デューティサイクルを1%と40%との間の値(例えば、1%と20%との間の値、1%と10%との間の値)に調節するよう構成できる。
前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記検出されたイオンに基づいて前記イオン源がいつ清浄化されるべきかを判断し、前記イオン源の前記デューティサイクルを50%と90%との間の値に調節し、前記イオン源を清浄化するため前記イオン源を少なくとも30秒間にわたり動作させるよう構成できる。
前記圧力調整システムは、前記イオントラップにおいて100ミリトールと100トールとの間の(例えば、500ミリトールと10トールとの間の)ガス圧を維持するよう構成できる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は、イオン源と、イオントラップと、イオン検出器と、圧力調整システムと、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、及び前記圧力調整システムに接続された電圧源と、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、及び前記電圧源に接続されたコントローラとを含む質量分析計を提供し、前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは、前記イオン源を作動してガス粒子からイオンを発生し、前記イオン検出器を作動して前記イオン源によって発生されたイオンを検出し、前記検出されたイオンに基づいて前記質量分析計の分解度を調節するよう構成される。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記コントローラは前記圧力調整システムに接続でき、且つ前記圧力調整システムを作動して前記イオン源及び前記イオントラップの少なくとも一方におけるガス圧を変更することによって前記分解度を調節するよう構成できる。前記コントローラは、前記圧力調整システムを作動して前記イオン源及び前記イオントラップの前記少なくとも一方における前記ガス圧を低下させることによって前記分解度を調節するよう構成できる。
前記コントローラは、前記イオントラップからイオンを排出するため、前記電圧源を用いて電位を前記イオントラップの中央電極に繰り返し印加するよう構成でき、前記電位の前記繰り返し印加は前記電位の繰り返し数を画定し、前記コントローラは、さらに、前記電位の前記繰り返し数を変更することによって前記分解度を調節するよう構成できる。前記コントローラは、前記電位の前記繰り返し印加を増加することによって前記分解度を増加するよう構成できる。
前記コントローラは、前記電圧源によって前記イオントラップの中央電極に印加される電位の最大振幅を変更することによって前記分解度を調節するよう構成できる。
前記コントローラは、前記電圧源を用いて軸方向電位差を前記イオントラップの対向端部における電極間に印加し、前記軸方向電位差の大きさを変更することによって前記分解度を調節するよう構成できる。前記コントローラは、前記軸方向電位差の大きさを増加することによって前記分解度を増加するよう構成できる。
前記コントローラは、前記イオンを発生するため前記電圧源を用いて前記イオン源の電極間に電位差を繰り返し印加するよう構成でき、前記電位の前記繰り返し印加は前記イオン源の繰り返し数を画定し、前記コントローラは、さらに、前記イオン源の前記繰り返し数を変更することによって前記分解度を調節するよう構成できる。前記コントローラは、前記イオン源の繰り返し数と、前記イオントラップの前記中央電極に印加される前記電位の前記繰返し数とを同期させるよう構成できる。
前記コントローラは、前記電圧源を用いて前記イオン源の電極間に電位差を繰り返し印加するよう構成でき、前記電位の前記繰り返し印加は前記イオン源の繰り返し期間を画定し、前記繰り返し期間は、前記電位差が前記イオン源の前記電極間に印加される第1の時間間隔と、前記電位差が前記イオン源の前記電極間に印加されない第2の時間間隔とを含み;前記コントローラは、さらに、前記イオン源のデューティサイクルを調節することによって前記分解度を調節するよう構成でき、前記デューティサイクルは、前記第1の時間間隔と前記繰り返し期間との比に対応する。前記コントローラは、前記イオン源の前記デューティサイクルを減少させることによって前記分解度を増加するよう構成できる。
前記質量分析計は、ガス経路であって、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、及び前記圧力調整システムが接続されたガス経路と、前記ガス経路に接続されたガス導入口であって、前記コントローラに接続されたバルブを備えたガス導入口とを含むことができ、前記分解度を調節するために、前記コントローラは、前記バルブを制御してバッファガス粒子が前記バッファガス導入口を介して前記ガス経路内に導入される割合を調節するよう構成されている。前記分解度を増加させるために、前記コントローラは、バッファガス粒子が前記ガス経路内に導入される割合を増加させるよう構成できる。
前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは:ガス粒子からイオンを発生させるため前記イオン源を繰り返し作動させ、前記イオン源により発生されたイオンを検出するため前記イオン検出器を作動させ、前記質量分析計の前記分解度を前記検出されたイオンに基づいて調節し、これらを、前記質量分析計の前記分解度が閾値に達するまで行い;前記質量分析計の前記分解度が前記閾値と少なくとも同じ大きさになった時に前記ガス粒子から発生されたイオンを検出するため前記イオン検出器を作動させ;前記質量分析計の前記分解度が前記閾値と少なくとも同じ大きさになった時に検出されたイオンに基づいて前記ガス粒子の同一性に関する情報を特定し;前記情報をユーザインターフェース上で表示するよう構成できる。前記情報は、前記ガス粒子の化学名及び/又は前記ガス粒子に関連付けられた危険に関する情報及び/又は前記ガス粒子が対応する物質の種類に関する情報を含むことができる。
前記質量分析計の動作時に、前記コントローラは前記電位源を調節して、前記分解度が前記閾値に達した時のみに電位が前記イオントラップの中央電極に印加されるよう構成できる。
前記質量分析計の動作時に、前記圧力調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間の(例えば、500ミリトールと10トールとの間の)ガス圧を維持するよう構成できる。
前記質量分析計は、前記イオン源、前記イオントラップ、前記検出器、並びに前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記検出器に接続された第1の複数電極を備えた差し込み可能なモジュールと、前記第1の複数電極に解放可能に係合するよう構成された第2の複数電極を備えた支持ベースとを含むことができ、前記電圧源及び前記コントローラは前記支持ベースに取り付けられ、前記差し込み可能なモジュールは、前記支持ベースに解放可能に接続するよう構成されている。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、ガス粒子を質量分析計のイオン源に導入する段階と、前記ガス粒子からイオンを発生する段階と、前記質量分析計の検出器を用いて前記イオンを検出する段階と、前記質量分析計の分解度を前記検出されたイオンに基づいて調節する段階とを含む方法を提供する。
前記方法の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記分解度を調節する段階は、前記イオン源及び前記イオントラップの少なくとも1つにおけるガス圧を変更する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源及び前記イオントラップの前記少なくとも1つにおける前記ガス圧を低下させることで前記分解度を増加させる段階を含むことができる。
前記方法は、前記イオントラップからイオンを排出するため前記トラップの中央電極に電位を繰り返し印加する段階であって、前記電位の前記繰り返し印加は前記電位の繰り返し数を画定する、印加する段階と、前記コントローラは、さらに、前記電位の前記繰り返し数を変更することによって前記分解度を調節する段階とを含むことができる。前記方法は、前記電位の前記繰り返し数を増加することによって前記分解度を増加させる段階を含むことができる。前記方法は、前記イオントラップの中央電極に印加される電位の最大振幅を変更することによって前記分解度を調節する段階を含むことができる。
前記方法は、軸方向電位差を前記イオントラップの対向端部における電極間に印加する段階と、前記軸方向電位差の大きさを変更することによって前記分解度を調節する段階とを含むことができる。前記方法は、前記軸方向電位差の大きさを増加させることによって前記分解度を増加させる段階を含むことができる。
前記方法は、前記イオンを発生するため前記イオン源の電極間に電位差を繰り返し印加する段階であって、前記電位の前記繰り返し印加は前記イオン源の繰り返し数を画定する印加する段階と、前記イオン源の前記繰り返し数を変更することによって前記分解度を調節する段階とを含むことができる。前記コントローラは、前記イオン源の前記繰り返し数と、前記イオントラップの前記中央電極に印加される前記電位の前記繰返し数とを同期させるよう構成できる。
前記方法は:前記イオン源の電極間に電位差を繰り返し印加する段階であって、前記電位の前記繰り返し印加は前記イオン源の繰り返し期間を画定し、前記繰り返し期間は、前記電位差が前記イオン源の前記電極間に印加される第1の時間間隔と、前記電位差が前記イオン源の前記電極間に印加されない第2の時間間隔とを含む、印加する段階と;前記イオン源のデューティサイクルを調節することによって前記分解度を調節する段階とを含み、前記デューティサイクルは、前記第1の時間間隔と前記繰り返し期間との比に対応する。前記方法は、前記イオン源の前記デューティサイクルを減少させることによって前記分解度を減少させる段階を含むことができる。
前記分解度を調節させるために、前記方法は、バッファガス粒子が前記質量分析計のガス経路内に導入される割合を増加させる段階を含むことができる。前記分解度を増加させるために、前記方法は、バッファガス粒子が前記ガス経路内に導入される割合を増加させる段階を含むことができる。
前記方法は:ガス粒子からイオンを発生させるため前記イオン源を繰り返し作動させる段階と、前記イオン源により発生されたイオンを検出するため前記イオン検出器を作動させる段階と、前記質量分析計の前記分解度を前記検出されたイオンに基づいて調節する段階とを含み、これらを、前記質量分析計の前記分解度が閾値に達するまで行い;前記質量分析計の前記分解度が前記閾値と少なくとも同じ大きさになった時に前記ガス粒子から発生されたイオンを検出するため前記イオン検出器を作動させる段階と;前記質量分析計の前記分解度が前記閾値と少なくとも同じ大きさになった時に検出されたイオンに基づいて前記ガス粒子の同一性に関する情報を特定する段階と;前記情報をユーザインターフェース上で表示する段階とを含むことができる。前記情報は、前記ガス粒子の化学名及び/又は前記ガス粒子に関連付けられた危険に関する情報及び/又は前記ガス粒子が対応する物質の種類に関する情報を含むことができる。
前記方法は、前記分解度が前記閾値に達したときのみ前記イオントラップの中央電極に電位を印加する段階を含むことができる。
前記方法は、100ミリトールと100トールとの間の(例えば、500ミリトールと10トールとの間の)ガス圧を前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて維持する段階を含むことができる。
前記方法の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
さらなる局面では、本開示は、イオン源と、イオントラップと、イオン検出器と、単一のメカニカルポンプを特徴とするガス圧調整システムと、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器に接続されたコントローラとを含む質量分析計を提供し、前記質量分析計の動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成され、前記コントローラは、前記イオン検出器を動作させて、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出するよう構成されており、前記単一のメカニカルポンプは、前記ガス圧を維持するため毎分6000サイクル未満の回数で動作する。
前記質量分析計の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオントラップ及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源及び前記イオントラップにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成できる。
前記メカニカルポンプはスクロールポンプでよい。
動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて差が10トール未満のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において差が10トール未満のガス圧を維持するよう構成できる。動作時に、前記ガス圧調整システムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて同一のガス圧を維持するよう構成できる。
前記質量分析計は、ガス経路であって、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、及び前記ガス圧調整システムが接続されたガス経路と、前記ガス経路に接続されたガス導入口であって、前記質量分析計の動作時に、分析されるガス粒子が前記ガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され、前記ガス経路内の合計圧力が100ミリトールと100トールとの間となるように構成されたガス導入口とを含むことができる。前記ガス導入口は、前記質量分析計の動作時に、前記分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含むガス粒子の混合物が前記ガス導入口内に引き込まれるよう構成でき、前記ガス粒子の混合物は、前記ガス経路内に導入される前に大気ガス粒子を除去するために濾過されない。
前記質量分析計は、ガス経路であって、前記イオン源、前記イオントラップ、前記イオン検出器、及び前記ガス圧調整システムが接続されたガス経路と、前記ガス経路に接続された試料ガス導入口と、前記ガス経路に接続されたバッファガス導入口とを含むことができ、前記質量分析計の動作時に:分析されるガス粒子が前記試料ガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され、バッファガス粒子が前記バッファガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され、且つ前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子と前記バッファガス粒子との組合せ圧力が100ミリトールと100トールとの間となるように、前記試料ガス導入口及び前記バッファガス導入口が構成されている。前記バッファガス粒子は、窒素分子及び希ガス分子の少なくとも一方を含むことができる。
前記質量分析計は、前記イオン源、前記イオントラップ、並びに前記イオン源及び前記イオントラップに接続された第1の複数電極を備えた差し込み可能なモジュールと、前記第1の複数電極に解放可能に係合するよう構成された第2の複数電極を備えた支持ベースをさらに含むことができ、前記差し込み可能なモジュールが、前記支持ベースに接続可能で且つ前記支持ベースから切り離し可能である。前記質量分析計は、前記第1の複数電極が前記第2の複数電極に係合すると前記差し込み可能なモジュールを前記支持ベースに固定するよう構成された取付機構を含むことができる。前記第1の複数電極はピンを含むことができ、前記第2の複数電極は前記ピンを収容するよう構成されたソケットを含むことができる。
前記差し込み可能なモジュールは前記イオン検出器を含むことができ、前記第1の複数電極は前記イオン検出器に接続できる。前記差し込み可能なモジュールは前記メカニカルポンプを含むことができる。
前記質量分析計は電圧源を含むことができ、当該電圧源及び前記コントローラは、前記支持ベースに取り付けられると共に前記第2の複数電極に接続される。
前記支持ベースはプリント回路基板を含むことができる。前記コントローラは、前記差し込み可能なモジュールが前記支持ベースに接続されると、前記イオン源と前記イオントラップとにさらに接続されうる。
前記単一のメカニカルポンプは、前記ガス圧を維持するため毎分4000サイクル未満の回数で動作できる。
前記質量分析計の最大寸法は35cm未満とすることができる。前記質量分析計の全質量は4.5kg未満とすることができる。
前記質量分析計の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
別の局面では、本開示は、毎分6000サイクル未満の回数で動作する単一のメカニカルポンプを用いて、質量分析計のイオン源、イオントラップ、及びイオン検出器の少なくとも2つにおけるガス圧を維持する段階と、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出する段階と、を含む方法を提供し、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて、前記ガス圧は100ミリトールと100トールとの間に維持される。
前記方法の実施形態は、次の特徴の内1つ又は複数を含むことができる。
前記イオン源及び前記イオントラップ内のガス圧は、100ミリトールと100トールとの間に維持することができる。前記イオントラップ及び前記検出器内のガス圧は、100ミリトールと100トールとの間に維持することができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて差が10トール未満のガス圧を維持する段階を含むことができる。前記方法は、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において同一のガス圧を維持する段階をさらに含むことができる。
前記方法は、ガス粒子の混合物を、前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器とを接続するガス経路内に導入する段階を含むことができ、前記ガス粒子の混合物が分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含み、前記ガス粒子の混合物は、前記ガス経路内に導入される前に大気ガス粒子を除去するために濾過されない。
前記方法は、前記ガス圧を制御するため前記メカニカルポンプを毎分4000サイクル未満の回数で動作させる段階を含むことができる。
前記方法の実施形態は、本明細書で開示された任意の他の特徴を、適宜、任意の組合せで含むことができる。
他に特に定義しない限り、本明細書で用いる科学技術用語は、本開示が属する分野の通常の技能を備えた当業者が一般に理解する意味と同一である。本明細書に記載したものと類似又は同等の方法及び材料を、本明細書の主題の実施又は試験に用いることができるが、適切な方法及び材料は後述する。本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の引用文献は、その全体を引用して援用する。矛盾が生じた場合は、定義も含めて本明細書が優先する。さらに、これら材料、方法、及び例は、例示的なものであって限定する意図はない。
1つ又は複数の実施形態の詳細が、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴及び利点は、詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかとなるはずである。
図1Aは、コンパクトな質量分析計の概略図である。 図1Bは、質量分析計の一実施形態の断面図である。 図1Cは、質量分析計の別の実施形態の断面図である。 図1Dは、構成要素が支持ベースに取り付けられた質量分析計の概略図である。 図1Eは、差し込み可能なモジュールを備えた質量分析計の概略図である。 図1Fは、質量分析計のモジュールを支持ベースに接続するための取付機構の概略図である。 図2A及び2Bはグロー放電イオン源の概略図である。 図2C-2Hは、アパーチャを備えたイオン源の電極を示す概略図である。 図2Iは、イオン源の電極に印加されるバイアス電荷を示すグラフである。 図2Jは、イオン源を清浄化するためイオン源の電極に印加されるバイアス電荷を示すグラフである。 図2Kは、コンデンサ放電イオン源の概略図である。 図3Aは、イオントラップの一実施形態の断面図である。 図3Bは、イオントラップの別の実施形態の概略図である。 図3Cは、図3Bのイオントラップの断面図である。 図4Aは電圧源の概略図である。 図4Bは、イオントラップの増幅されていない変調信号を示すグラフである。 図4Cは、イオントラップの修正された信号を示すグラフである。 図4Dは、基準搬送波形を示すグラフである。 図4Eは、イオントラップの増幅された変調信号を示すグラフである。 図4Fは、図4Eの信号を増幅するための共振回路を示す図である。 図5Aは、ファラデーカップ荷電粒子検出器の一実施形態の透視図である。 図5Bは、図5Aのファラデーカップ検出器の概略図である。 図5Cは、ファラデーカップ検出器の別の実施形態の概略図である。 図5Dは、ファラデーカップ検出器アレイの概略図である。 図6Aは、スクロールポンプを備えた圧力調整サブシステムの概略図である。 図6Bは、スクロールポンプフランジの概略図である。 図7Aは、コンパクトな質量分析計の透視図である。 図7B及び7Cは、コンパクトな質量分析計の実施形態の断面図である。 図8Aは、質量スペクトル情報を測定し且つ試料に関する情報を表示するための一連のステップを示すフローチャートである。 図8Bは、コンパクトな質量分析計の一実施形態の概略図である。 図8Cは、質量スペクトル情報を測定し且つ質量分析計の構成を調節するための一連のステップを示すフローチャートである。
これら様々な図面中の類似参照記号は、類似の構成要素を示す。
I. 概説
化学物質の同定のために使われる質量分析計は、典型的にはかなりの電力を消費する大型で複雑な計器である。こうした計器は持ち運びするには重くて嵩張りすぎであり、よってこれらは実質的に固定させておける環境での用途に限られている。さらに、従来の質量分析計は、典型的には高価であり、これら計器が生成するイオン情報パターンのスペクトルを解釈して、分析対象の化学物質の同定を推論するには高度な訓練を受けたオペレータを要する。
高い感度及び分解度を達成するには、従来の質量分析計は、典型的には低ガス圧での動作のために設計された種々様々な構成要素を用いる。例えば、電子増幅管などの従来のイオン検出器は、概ね10ミリトールを上回る圧力では効果的に動作しない。別の例としては、従来のイオン源で使われる熱電子放出器は、せいぜい概ね10ミリトール未満の圧力での動作にしか適しておらず、酸素濃度がそれほど高くなくても一般には使用できない。さらに、従来の質量分析計は、典型的には10ミリトール未満の圧力で、具体的にはミクロトール範囲の圧力での動作のみのために特に設計された幾何学的形状を備えた質量分析部を含む結果的に、従来の質量分析計は低圧での動作用に構成されているだけでなく、従来の質量分析計は、それが使用する構成要素のためにより高いガス圧で動作できない。より高いガス圧は、例えば、従来の質量分析計の幾つかの構成要素を破壊する可能性がある。それほど劇的ではないが、幾つかの構成要素は、単純により高いガス圧では動作不能であり又は動作が極めて不十分であって、これら質量分析計は、有用な質量スペクトル情報をえることができなくなる。結果的に、より高圧で動作(例えば、100ミリトールを上回る圧力)するには、非常に異なる構成及び構成要素を備えた質量分析計が必要である。
低圧を達成するには、従来の質量分析計は、典型的には分析計の内部体積を排気する一連のポンプを含む。例えば、従来の質量分析計は、システムの内部圧力を急激に低下させる粗引きポンプと、内部圧力をミクロトール値までさらに引き下げるターボ分子ポンプとを含むことができる。ターボ分子ポンプは大型であり、かなりの電力を消費する。しかし、こうした考慮事項は、従来の質量分析計では二次的な重要性でしかなく、最も重要な考慮事項は、測定した質量スペクトルで高い分解度を達成することである。低圧で動作する上述の構成要素を使用することで、従来の質量分析計は、通常、0.1原子質量単位(amu)又はそれより優れた分解度を達成できる。
重く、嵩張る従来の質量分析計とは対照的に、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、低電力で高能率の動作用に設計されている。低電力の動作を達成するため、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、ターボ分子ポンプ又は他の電力消費量が大きい真空ポンプを含まない。その代わり、このコンパクトな質量分析計は、典型的には低回数で動作する単一のメカニカルポンプのみを含み、これが電力消費量をかなり低下させる。
より小型のポンプを使うことで、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、典型的には100ミリトール〜100トールの圧力範囲で動作し、これは従来の質量分析計の動作圧力範囲よりかなり高くなっている。従来の質量分析計は、これらのより高い圧力で動作するよう改造することはできないが、その理由は、従来の質量分析計で使用される構成要素(例えば、電子増倍管、熱電子放出器、及びイオントラップ)が、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計が動作する圧力範囲では機能しないからである。さらに、従来の質量分析計は、一般により高い内圧で動作するように改造されないが、その理由は、そうするとその装置を用いて測定した質量スペクトルの分解度が低くなってしまうからである。そうした装置を使用する際には、可能な限り最大の分解度で質量スペクトルを得ることが一般的な目標なので、装置を改造して分解度を低くする理由は存在しない。
しかし、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、従来の質量分析計とは異なる種類の情報をユーザに与える。特に、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、典型的には、分析中の化学物質の名前、その物質に関連付けられた危険情報、及び/又はその物質が属する種類などの情報を報告する。本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、例えば、その物質が特定の目標物質かどうかも報告できる。典型的には、記録された質量スペクトルは、ユーザがこのスペクトルを表示させる制御手段を作動しない限りはユーザに表示されない。結果的に、従来の質量分析計とは異なり、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、最大の分解度で質量スペクトルを取得する必要はない。その代わり、得られたスペクトルが、ユーザに報告される情報を求めるのに十分に高質であれば、分解度のさらなる増大は重要な性能要求ではない。
より低い分解度(典型的には、質量スペクトルは1 amuと10 amuとの間の分解度で得られる)で動作することで、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、従来の質量分析計と比べて消費電力がかなり少なくなる。例えば、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、質量電荷比が異なるイオンを分離するために100ミリトール〜100トールの圧力で効率的に動作する小型イオントラップを具備しており、同時に、サイズが小さいためイオントラップなどの従来の質量アナライザーよりも消費電力が大幅に減少する。例えば、円筒形イオントラップのサイズが減少すると、イオンを分離するためのこのトラップに印加される最大電圧が減少し、その電圧を印加する周波数が増加する。結果的に、電源回路に使用されるインダクタ及び/又は共鳴器のサイズが小さくなり、最大電圧を発生するために使用される他の構成要素のサイズ及び消費電力要件も減少する。
さらに、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、従来の質量分析計で一般的に設けられる熱電子放出器などのイオン源に比べてさらに電力消費を低下させるグロー放電イオン化源及び/又はコンデンサ放電イオン化源などの効率的なイオン源を備えている。本明細書で開示したコンパクトな質量分析計では、従来の質量分析計で設けられる電力消費量がより大きい電子増倍管でなく、ファラデー検出器のような効率的で低電力検出器が使用されている。これらの低電力の構成要素のため、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は、効率的に動作し、電力消費量が比較的低くなる。これらは、標準的なバッテリに基づいた電源(例えば、リチウムイオンバッテリ)から電力を供給され、手持ち型のフォームファクターを備え持ち運び可能である。
従来の質量分析計は高分解度の質量スペクトルをユーザに直接与えるので、特別な訓練を受けていない人員による物質の携帯走査を含む用途には概して不向きである。特に、空港及び列車の駅などの交通ハブでの現場セキュリティ走査などの用途に関しては、従来の質量分析計は解決策として現実的ではない。対照的に、そうした用途は、上述したようにコンパクトな、動作に比較的少量の電力しか必要とせず、高度な訓練を受けていない人員によって容易に解釈できる情報を与える質量分析計から恩恵を受ける。コンパクトな、低コストの質量分析計は、様々な他の用途に関しても有用である。例えば、こうした装置は、研究室で用いて未知の化合物の特性を迅速に記述できる。これらは低コストで設置面積が小さいので、研究室では作業者に個人用の分析計を与えることができ、集中型の質量分析設備における分析時間を予約する必要性を減少又は無くすことができる。コンパクトな質量分析計は、臨床環境及び個別の患者の住居の両方における医療診断テストとしての用途にも使用できる。こうしたテストを実行する技師は、そうした分析計が提供する情報を容易に解釈して、リアルタイムの評価的情報を患者に与えたり、迅速に更新された情報を医療施設、医師、及び他の医療従事者に与えたりできる。
本開示は、小型で低電力の質量分析計であって、当該分析器が走査した化学物質の識別情報を含む様々な情報並びに/又は物質が属する類(例えば、酸、塩基、強い酸化性物質、火薬、硝酸化合物(nitrated compounds))に関する情報、その物質に関連した危険情報、及び安全指示及び/若しくは情報を含む関連した文脈情報をユーザに与える質量分析計を提供する。これら分析計は、従来の質量分析計よりも高い内部ガス圧で動作する。より高い圧力で動作することによって、これらコンパクトな質量分析計のサイズ及び電力消費量は、従来の質量分析計に比べてかなり低下する。さらに、これら分析計はより高い圧力で動作するが、それらの分解度は、多種多様な化学物質の正確な同定と定量化を行うには十分である。
図1Aは、コンパクトな質量分析計100の一実施形態の概略図である。分析計100は、イオン源102と、イオントラップ104と、電圧源106と、コントローラ108と、検出器118と、圧力調整サブシステム120と、試料導入口124とを含む。試料導入口129はバルブ129を含む。分析計100には、オプションでバッファガス源150が含まれている。分析計100の構成要素はハウジング122内に収容されている。コントローラ108は、電子プロセッサ110と、ユーザインターフェース112と、記憶装置114と、表示装置116と、通信インターフェース117とを含む。
コントローラ108は、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、圧力調整サブシステム120と、電圧源106と、バルブ129と、オプションのバッファガス源150とにそれぞれ制御線127a-127gを介して接続されている。制御線127a-127gによってコントローラ108(例えば、コントローラ108内の電子プロセッサ110)は、それが接続されている各構成要素に動作コマンドを出すことができる。そうしたコマンドは、例えば、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、圧力調整サブシステム120と、バルブ129と、バッファガス源150とを作動する信号を含むことができる。分析計100の様々な構成要素を作動するコマンドは、電圧源106にこれら構成要素へ電位を印加させる命令を含むことができる。例えば、イオン源102を作動させるためには、コントローラ108は、イオン源102の電極へ電位を印加させる命令を電圧源106に送信できる。別の例としては、イオン源104を作動させるため、コントローラ108は、イオントラップ104の電極へ電位を印加させる命令を電圧源106に送信できる。さらに別の例としては、検出器118を作動させるため、コントローラ108は、検出器118の検出素子へ電位を印加させる命令を電圧源106に送信できる。又、コントローラ108は、分析計100の様々な構成要素内のガス圧を制御するために(例えば、電圧源106を介して)圧力調整サブシステム120を作動する信号と、ガス粒子を試料導入口124を介して分析計100に導入させるための信号をバルブ129に(例えば、電圧源106を介して)送信できる。
さらに、コントローラ108は、信号を分析計100の各構成要素から制御線127a-127gを介して受信できる。例えば、こうした信号は、イオン源102及び/又はイオントラップ104及び/又は検出器118及び/又は圧力調整サブシステム120の動作特性に関する情報を含むことができる。コントローラ108は、検出器118により検出されたイオンに関する情報も受信できる。この情報は、検出器118により測定されたイオン電流を含むことができ、これは、特定の質量電荷比を備えたイオンの存在量に関連する。特定のイオン存在量は検出器118により測定されるので、この情報は、イオントラップ104の電極に印加された電圧に関する情報も含むことができる。これら印加電圧は、これらイオンの質量電荷比の値に関連している。この電圧情報を測定された存在量情報に相関させることにより、コントローラ108は、イオンの存在量を質量電荷比の関数として求めることができ、この情報を質量スペクトルの形式で表示装置116を使って提示できる。
電圧源106は、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、圧力調整サブシステム120と、コントローラ108とにそれぞれ制御線126a-127eを介して接続されている。電圧源106は、電位及び電力を制御線126a-eを介してこれら構成要素それぞれに供給する。電圧源106は、相対電圧0ボルトの電気的接地に対応する基準電位を設定する。電圧源106が分析計100の様々な構成要素に印加する電位は、この接地電位を基準とする。一般に、電圧源106は、基準接地電位に対して正の電位と負の電位とを分析計100の構成要素に印加するよう構成されている。符号が異なる電位をこれらの構成要素に(例えば、これら構成要素の電極に)印加することで、異なる符号の電界がこれら構成要素内に発生され、イオンを様々な方向に移動させる。従って、適切な電位を分析計100の構成要素に印加することで、コントローラ108は(電圧源106を介して)分析計100内部のイオンの移動を制御できる。
イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118とは、ガス粒子及びイオン用の内部通路であるガス経路128がこれら構成要素間を延伸するように接続されている。試料導入口124及び圧力調整サブシステム120もガス経路128に接続されている。オプションのバッファガス源150が設けられている場合は、これもガス経路128に接続される。ガス経路128の幾つかの部分は図1Aに概略的に示した。一般に、ガス粒子及びイオンはガス経路128内で任意の方向に移動でき、この移動方向は分析計100の構成よって制御できる。例えば、適切な電位をイオン源102及びイオントラップ104の電極に印加することで、イオン源102内で発生したイオンをイオン源102からイオントラップ104内に流入するよう方向付けることができる。
図1Bは、質量分析計100の部分断面図である。図1Bに示したように、イオン源102の出力アパーチャ130は、イオントラップ104の入力アパーチャ132に結合されている。さらに、イオントラップ104の出力アパーチャ134が、検出器118の入力アパーチャ136に結合されている。結果として、イオン及びガス粒子は、イオン源102、イオントラップ104、及び検出器118の間で任意方向に流動できる。分析計100の動作時に、圧力調整サブシステム120は、ガス経路128内のガス圧を大気圧未満の値まで下げるよう動作する。結果的に、分析されるガス粒子は、分析計100の周囲の環境(例えば、ハウジングの外の環境)から試料導入口124に入り、ガス経路128内に進入する。ガス経路128を介してイオン源102に入るガス粒子は、イオン源102によってイオン化される。これらイオンは、イオン源102からイオントラップ104に伝播し、そこでイオンは、電圧源106が適切な電位をイオントラップ104の電極に印加する際に形成される電界により捕捉される。
捕捉されたイオンはイオントラップ104内で循環する。循環するイオンを分析するため、電圧源106は、コントローラ108の制御下で、イオントラップ104の1つ又は複数の電極に印加される無線周波捕捉電界の振幅を変化させる。振幅の変化は繰り返し発生し、イオントラップ104の掃引周波数を画定する。電界の振幅が変化すると、特定の質量電荷比を備えたイオンが軌道から落ち、幾つかはイオントラップ104から排出される。排出されたイオンは検出器118によって検出され、これら検出されたイオンに関する情報(例えば、検出器からの測定イオン電流及び特定のイオン電流が測定されたときのイオントラップ104に印加される電圧)がコントローラ108に送信される。
ガス粒子がハウジング122の外の環境からイオントラップ104に入るように試料導入口124が図1A及び1Bには配置されているが、より一般的に、試料導入口124は他の位置にも配置できる。例えば、図1Cは、ガス粒子がハウジング122の外の環境からイオン源102に入るように試料導入口124が配置された分析計100の部分断面図を示す。図1Cに示した構成に加え、試料導入口124は、その位置によってガス粒子がハウジング122の外の環境からガス経路128に進入できるなら、ガス経路128沿いの任意の位置に配置できる。
通信インターフェース177は、概して、有線又は無線(或いはそれら両方)の通信インターフェースでよい。コントローラ108は、通信インターフェース177を介して、遠隔コンピュータ、携帯電話、並びに監視及びセキュリティスキャナを含む多種多様な装置と通信するよう構成できる。通信インターフェース177は、イーサネット(登録商標)ネットワーク、ワイヤレスWiFiネットワーク、セルラー式ネットワーク、及びブルートゥースワイヤレスネットワークを含むがそれらに限定されない様々なネットワークを介してデータを送受信するよう構成できる。コントローラ108は通信インターフェース177を使って遠隔装置と通信して、分析計100の動作及び構成設定を含む様々な情報と、既知の物質の質量スペクトルの記録、特定の物質に関連した危険、対象となる物質が属する化合物の種類、並びに/又は既知の物質のスペクトルの特徴を含む、対象となる物質に関する情報とを得ることができる。この情報は、試料測定値を分析するためコントローラ108により使用できる。さらに、コントローラ108は、特定の物質(例えば、危険物質及び/又は爆発物)が分析計100により検出されたときの警戒メッセージを含む情報を遠隔装置に送信できる。
本明細書で開示した質量分析計は、コンパクトであり、低電力の動作が可能である。コンパクトなサイズ及び低電力の動作を達成するため、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、圧力調整サブシステム120と、電圧源106とを含む様々な分析計の構成要素が、空間要件及び電力消費量を最小化するため注意深く設計且つ構成される。従来の質量分析計では、低い内部動作圧力(例えば、1x10-3トール又はそれよりかなり低い値)を達成するため使用される真空ポンプは、大型になり且つかなりの量の電力を消費する。例えば、そうした圧力を達成するため、従来の質量分析計は、典型的には、内部システム圧力を大気圧から約0.1-10トールまで急激に下げる1つの粗引きポンプと、内部システム圧力を10トールから所望の内部動作圧力まで下げる1つ又は複数のターボ分子ポンプとを含む2つ以上の一連のポンプを使用する。粗引きポンプ及びターボ分子ポンプは、両方とも運転に相当量の電力を必要とするメカニカルポンプである。粗引きポンプ(例えば、ピストン式ポンプを含むことができる)は、典型的にはかなりの機械的振動を発生する。ターボ分子ポンプは、典型的には振動及び機械的衝撃の両方に敏感であり、回転速度が高いためジャイロスコープに近い効果を生む。結果的に、従来の質量分析計は、これらの真空ポンプの電力消費要件を満たすのに十分な電源と、これらポンプの継続的動作を保証するための隔離機構(例えば、防振及び/又は回転隔離機構)とを含む。従来の質量分析計は、動作時に内部のターボ分子ポンプが移動すると、そうしたポンプを破壊する恐れもあるため移動させないことを要件とする場合もある。結果として、従来の質量分析計で使用される真空ポンプと電源の組合せによって、これらは大型で、重くなり、且つ移動させることができない。
対照的に、本明細書で開示した質量分析計及び方法は、コンパクト且つ移動可能であり、さらに低電力動作を達成する。これらの特性は、従来の分析計に一般的に備わっているターボ分子、粗引き、及び他の大型メカニカルポンプを省略したことにより部分的には達成される。これら大型ポンプの代わりに、小型で、低電力の単一のメカニカルポンプを使用して質量分析計システム内のガス圧を制御している。本明細書で開示した質量分析計システムで使用される単一のメカニカルポンプは、従来のターボ分子ポンプほど低圧に達することはできない。結果として、本明細書で開示されたシステムは、従来の質量分析計よりも高い内部ガス圧で動作する。
後に詳述するように、より高圧での動作は、衝突により誘起される線の広がり及び分子フラグメント間での電荷交換によって、一般に質量分析計の分解度を低下させる。「分解度」という用語は、測定された質量ピークの半波高全幅値(FWHM)として定義される。特定の質量分析計の分解度は、100-125amuの質量電荷比の範囲内に出現するすべてのピークに関するFWHMを測定し、単一ピーク(例えば、2つ以上のピークからなる接近した組に対応するピーク幅は排除する)に対応する最大のFWHMを分解度として選択することによって求められる。この分解度を求めるには、トルエンなどの周知の質量スペクトルを備えた化学物質が使用できる。
質量分析計の分解度は、より高い圧力で動作すると低下することがあるが、本明細書で開示した質量分析計は、分解度が低下しても該分析計の有用性が影響を受けないように構成されている。特に、本明細書で開示した質量分析計は、対象となる化学物質が分析計を使って走査される際に、従来の質量分析計で通常されように分子イオンの質量分解スペクトルでなく、分析計がその物質の同一性に関わる情報をユーザに報告するように構成されている。幾つかの実施形態で、本明細書で開示した質量分析計で用いるアルゴリズムは、測定されたイオンフラグメンテーション・パターンを既知のフラグメンテーション・パターンと比較して、対象となる物質の同一性及び/又は対象となる物質が属する化合物の1つ又は複数の種類などの情報を特定できる。幾つかの実施形態では、これらアルゴリズムは、対象となる物質の同一性に関する情報を特定する専門システムを含むことができる。例えば、デジタルフィルタを用いて対象となる物質の測定スペクトルの特徴を探すことができ、その物質は、スペクトルでのそれら特徴の存在又は不在に基づいて特定の目標物質に一致する又は目標物質に一致しないものとして識別できる。
コントローラ108が上述の分析を実行する際に、高圧での動作による低い分解度は本明細書で開示したシステムによって補償できる。すなわち、測定されたフラグメンテーション・パターンと基準情報との間の信頼できる対応が達成できれば、高圧動作による分解度の低下は、本明細書で開示した質量分析計のユーザにはほとんど取るに足らないことである。よって、本明細書で開示した質量分析計は従来の質量分析計より高圧で動作するが、ユーザが、対象となる物質のイオンフラグメンテーション・パターンを詳細に検査するよりはその物質を同定することに主たる関心があり、ユーザが質量スペクトルの解釈の高度な訓練を受けていない、セキュリティ走査、医療診断、研究室分析などの広範囲において有用性を維持する。
単一の小型メカニカルポンプを使用することで、本明細書で開示した質量分析計の重量、サイズ、及び電力消費量は、従来の質量分析計に比べてかなり小さくなる。よって、本明細書で開示した質量分析計は、小型メカニカルポンプを装備し且つ内部ガス圧(ガス経路128と、このガス経路128に接続されたイオン源102と、イオントラップ104と、検出器118とにおけるガス圧)を、100ミリトールと100トールとの間(例えば100ミリトールと500ミリトールの間、500ミリトールと100トールの間、500ミリトールと10トールの間、500ミリトールと50トールの間、100ミリトールと1トールとの間)に維持する圧力調整サブシステム120を含む。幾つかの実施形態では、この圧力調整サブシステムは、本明細書で開示した質量分析計の100ミリトールを上回る内部ガス圧(例えば、500ミリトールを上回る、1トールを上回る、10トールを上回る、20トールを上回る)を、維持するよう構成されている。
上述の圧力では、本明細書で開示した質量分析計は、10 amu又はそれより優れた分解度でイオンを検出する。例えば、幾つかの実施形態では、本明細書で開示した質量分析計の分解度は、上述のように測定して、10 amu又はそれより優れている(例えば、8 amu又はそれより優れており、6 amu又はそれより優れており、5 amu又はそれより優れており、4 amu又はそれより優れており、3 amu又はそれより優れており、2 amu又はそれより優れており、1 amu又はそれより優れている)。一般に、これら分解度のいずれも、本明細書で開示した質量分析計を用いて上述の圧力の何れかで達成できる。
ポンプに加え、圧力調整サブシステム120は、様々な他の構成要素を含むことができる。幾つかの実施形態では、圧力調整サブシステム120は、1つ又は複数のセンサを含む。この1つ又は複数のセンサは、圧力調整サブシステム120が接続された、例えばガス経路128などの流体管路内のガス圧を測定するよう構成できる。ガス圧の測定値は、圧力調整サブシステム120内のポンプ及び又はコントローラ108に送信でき、さらに表示装置116で表示できる。幾つかの実施形態では、圧力調整サブシステム120は、1つ又は複数のバルブ、アパーチャ、密封部材、及び/又は流体管路などの流体処理用の他の要素を含むことができる。
この圧力調整サブシステムが本明細書で開示した質量分析計の内部圧力を制御するため効率的に機能することを保証するため、これら分析計の内部容積(例えば、圧力調整サブシステムによりポンピングされる容積)は、従来の質量分析計の内部容積に比べてかなり減少している。内部容積が減少することで、本明細書で開示した質量分析計の全体的なサイズが減少するという付加的利点があり、これら分析計が、コンパクト且つ携帯可能で、ユーザによる片手の操作が可能になる。
図1B及び1Cに示したように、本明細書で開示した質量分析計の内部容積は、イオン源102、イオントラップ104、及び検出器118の内部容積並びにこれら構成要素間の領域を含む。より一般的には、本明細書で開示した質量分析計の内部容積は、ガス経路128の容積すなわちガス粒子及びイオンが循環できる質量分析計100内の連結された空間すべての容積に一致する。幾つかの実施形態では、質量分析計100の内部容積は、10 cm3以下(例えば、7.0 cm3以下、5.0 cm3以下、4.0 cm3以下、3.0 cm3以下、2.5 cm3以下、2.0 cm以下、1.5 cm3以下、1.0 cm3以下)である。
幾つかの実施形態では、本明細書で開示した質量分析計は、単一の支持ベース上で完全に統合されている。図1Dは、そのすべての構成要素が単一の支持ベース140上に統合された質量分析計100の一実施形態の概略図である。図1Dに示したように、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、コントローラ108と、電圧源106とは、支持ベース140にそれぞれ取り付けられ、電気的に接続されている。支持ベース140はプリント回路基板であり、分析計100の構成要素間に延伸する制御線を含む。従って、例えば、電圧源106は、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、コントローラ108と、圧力調整サブシステム120とに、支持ベース140に組み込まれた制御線(例えば、制御線126a-127e)を介して電力を供給する。さらに、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、圧力調整サブシステム120と、電圧源106とは、それぞれ支持ベース140に組み込まれた制御線(例えば、制御線127a-127e)を介してコントローラ108に接続されており、コントローラ108は電気信号をこれら構成要素それぞれに支持ベース140を介して送受信できる。
プリント回路基板のような単一の支持ベースでの統合は、多くの重要な利点をもたらす。支持ベース140は、分析計100の構成要素に安定したプラットフォームを提供して、各構成要素が安定的且つ安全に取り付けられることを保証し、構成要素が分析計100が粗雑に取り扱われた時に破損する可能性を低下させる。さらに、すべての構成要素を単一の支持ベース上に取り付けることで、支持ベース140がこれら様々な構成要素の位置決めと互いに対する接続の再現可能なテンプレートとなるため、分析計100の製造が単純化される。さらに、すべての制御線をこの支持ベースに統合し、電力及び制御信号の両方が支持ベース140を通って構成要素間で伝達されることによって、構成要素間の電気接続の保全性が維持される。すなわちこうした接続は、構成要素間に延伸する個別の電線により形成された接続よりも摩耗及び/又は破断を被りにくい。
さらに、分析計100の構成要素を単一の支持ベース上に統合することで、分析計100はコンパクトなフォームファクターを備える。特に、支持ベース140の最大寸法(例えば、支持ベース140上の任意の2点間の最大直線距離)は25 cm以下(例えば、20 cm以下、15 cm以下、10 cm以下、8 cm以下、7 cm以下、6 cm以下)である。
図1Dに示したように、支持ベース140は、取付ピン145を使ってハウジング122に取り付けられている。幾つかの実施形態では、取付ピン145は、支持ベース140(及び支持ベース140に取り付けられた構成要素)を機械的衝撃から隔離する。例えば、取付ピン145は、支持ベース140を機械的衝撃から緩衝するための衝撃吸収材料(例えば、軟質ゴムなどの伸展性がある材料)を含むことができる。別の例としては、衝撃緩衝材から形成されたグロメット又はスペーサを、支持ベース140とハウジング122との間に配置して支持ベース140を機械的衝撃に対して緩衝できる。
幾つかの実施形態では、本明細書で開示した質量分析計は、複数のシステム構成要素が統合されている差し込み可能で交換可能なモジュールを含む。図1Eは、差し込み可能で交換可能なモジュール148と、モジュール148を収容するよう構成された支持ベース140とを含む質量分析計100の一実施形態の概略図である。イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118と、試料導入口124とはそれぞれモジュール148に統合されている。
モジュール148は、当該モジュールから外側に延伸する複数の電極142も含む。モジュール148内では、電極142は、例えば、イオン源102、イオントラップ104、及び検出器118などのこのモジュールの構成要素それぞれに接続される。
図1Eには、コントローラ108と、電圧源106と、圧力調整サブシステム120とが取り付けられた支持ベース140(例えば、プリント回路基板)も示した。支持ベース140は、モジュール148の電極142に着脱可能に係合且つ分離するよう構成された複数の電極144を含んでいる。幾つかの実施形態では、例えば、電極142はピンであり、電極144は電極142を収容するよう構成されたソケットである。代替的には、電極144はピンでよく、電極142はこれらピンを収容するよう構成されたソケットでよい。モジュール148の電極142が支持ベースの対応する電極144に位置合わせされた状態で図1Eの矢印で示した方向に力を掛けることで、モジュール148は支持ベース140に接続でき、これによりモジュール148が支持ベース140に着脱可能に接続又は切り離し可能となる。モジュール148は、矢印と反対方向に力を掛けることで支持ベース140から分離できる。
支持ベース140の電極144は、図1Eに示したように、コントローラ108と電圧源106とに接続されている。電極142と電極144とが接続されると、コントローラ108は、制御線127に関連して上述したように、モジュール148内に統合された各構成要素との間で信号を送受信できるようになる。さらに、電圧源106は、制御線126に関連して上述したように、モジュール148内に統合された各構成要素に電力を供給できる。
支持ベース140に取り付けられた圧力調整サブシステム120は、管路123を介してマニホルド121に接続されている。モジュール148が支持ベース140に接続されると、密封流体接続がマニホルド121とモジュール148との間に確立されるように、1つ又は複数のアパーチャ125を含むマニホルド121が支持ベース140上に位置決めされる。特に、マニホルド121のアパーチャ125とモジュール148の対応するアパーチャとの間に流体接続が確立される(図1Eでは示されていない)。モジュール148のアパーチャは、イオン源102、イオントラップ104、及び/又は検出器118の壁部に形成できる。この密封流体接続が確立されると、圧力調整サブシステム120は、ガス粒子を148モジュールからマニホルド121を介して送り出すことでこのモジュールの構成要素内のガス圧を制御できる。
モジュール148の他の構成も可能である。幾つかの実施形態では、検出器118はモジュール148の一部としないで、その代わりに支持ベース140に取り付けられている。そうした構成では、モジュール118が支持ベース140に接続されると、密封流体接続がイオントラップ104と検出器118との間に設けられるように、検出器118が支持ベース140上に位置決めされる。密封流体接続が確立されると、イオントラップ104内の循環イオンが、このトラップから排出され且つ検出器118を使って検出されうるようになり、さらに、圧力調整サブシステム120が検出器118内で低いガス圧(例えば、100ミリトールと100トールとの間)を維持できるようになる。
幾つかの実施形態では、圧力調整サブシステム120はモジュール148に統合できる。例えば、圧力調整サブシステム120は、イオントラップ104の下面に取り付けて、モジュール148内のガス経路128に直接接続できる。圧力調整サブシステム120もモジュール148の電極に電気的に接続できる。モジュール148が支持ベース140に接続されると、圧力調整サブシステム120は、コントローラ108及び電圧源106との間で電極142を介して電気信号を送受信できる。
図1Eに示した質量分析計100のモジュラー構成は幾つかの利点をもたらす。例えば、質量分析計100の動作時に、幾つかの構成要素は検体の残留物により汚染されることがある。例えば、検体の残留物はイオントラップ104の壁部に付着して、イオントラップ104がイオンを分離する効率を低下させることがあり、さらに他の物質の分析に悪影響を及ぼすことがある。イオントラップ104をモジュール148内に統合することで、イオントラップ104が汚染された場合、モジュール148全体を容易且つ迅速に交換でき、訓練を受けていないユーザによっても質量分析計100は動作状態に現場で素早く復帰させられることが保証される。同様に、イオントラップ104又は検出器118の何れかが汚染又は故障した場合は、モジュール148は分析計100のユーザによって容易に交換して分析計100を動作に復帰させることができる。
図1Eに示したモジュール構成によれば、分析計100がコンパクトで携帯可能であることが保証される。幾つかの実施形態では、例えば、支持ベース148の最大寸法(モジュール148上の任意の2点間の最大直線距離)は10 cm以下(例え9 cm以下、8 cm以下、7 cm以下、6 cm以下、5 cm以下、4 cm以下、3 cm以下、2 cm以下、1 cm以下)である。
機能が劣化したモジュール148(例えば、イオン源102、イオントラップ104、及び/又は検出器118の内壁部に付着した検体粒子で汚染されたモジュール)は再生して、再利用できる。幾つかの実施形態では、モジュール148を通常の動作に復帰させるため、このモジュールは分析計100内に取り付けられている際に加熱できる。加熱は、支持ベース140に取り付けられた加熱要素127によって行うことができる。図1Eに示したように、モジュール148が支持ベース140に接続されると、加熱要素127がモジュール148の1つ又は複数の構成要素(例えば、イオン源102、イオントラップ104、及び検出器118)に接触するように、加熱要素127が支持ベース140上に位置決めされる。
コントローラ108は、電圧源106に指示して適切な電位を加熱要素127に印加させることで、加熱要素127を作動させるように構成できる。加熱の開始並びに加熱の温度及び継続時間は、例えば、表示装置116の制御手段を作動且つ/又はユーザ構成設定を記憶装置114に入力することなどにより、分析計100のユーザにより制御できる。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、いつモジュール148を再生するのが適切かを自動的に判断するよう構成できる。例えば、コントローラ108は、一定時間にわたって検出イオン電流を監視でき、特定の期間内に(例えば、1時間以上、5時間以上、10時間以上、24時間以上、2日以上、5日以上、10日以上), イオン電流が閾値量を超えて(例えば、25%以上、50% 以上、60%以上、70%以上) 減少した場合、コントローラ108はモジュール148の再生が必要であると判断する。
加熱要素127は図1Eでは支持ベース140に取り付けられているが、他の構成も可能である。幾つかの実施形態では、例えば、加熱要素127はモジュール148の一部とし、モジュール148の構成要素(例えば、イオン源102、イオントラップ104、及び検出器118)の幾つか又はすべてに直接接触するように取り付けできる。
幾つかの実施形態では、モジュール148は再生のため分析計100から取り外すことができる。例えば、モジュール148の機能が低下しているようであれば(例えば、分析計100のユーザによる判断により、又は上述の基準を用いたコントローラ108による自動的な判断により)、モジュール148は分析計100から取り外して、通常の動作状態に復帰させるため加熱できる。加熱は、汎用炉内での加熱を含む様々な方法で実行できる。幾つかの実施形態では、分析計100は、モジュール148を収容するよう構成されたスロットを含む専用の差込形加熱器を含むことができる。モジュールがこのスロットに挿入されて加熱器が作動すると、そのモジュールは加熱されその機能が復帰する。
イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118とは一般に多種多様な化学物質を検出し、同定するように構成されているが、幾つかの実施形態では、これら構成要素は、特定の種類の物質を検出するように特化されている。幾つかの実施形態では、イオン源102は、特定の物質と共に使用するよう特に構成できる。例えば、異なる電位をイオン源102の電極に印加して、ガス粒子から正イオン又は負イオンを発生させることができる。さらに、イオン源102の電極に印加される電位の大きさを変化させて、特定の物質をイオン化する効率を制御できる。一般に、異なる物質は、それらの化学構造によって異なるイオン化親和性を備えている。イオン源102の電極間の極性及び電位差を調節することで、様々な物質のイオン化を注意深くに制御できる。
幾つかの実施形態では、イオントラップ104は、特定の物質と共に使用するよう特に構成できる。例えば、イオントラップ104の内部寸法(例えば内径)は、より高い質量電荷比を備えたイオンの捕捉及び検出に有利になるように選択できる。
幾つかの実施形態では、イオン源102、イオントラップ104、及び検出器118の1つ又は複数内の内部ガス圧は、よりソフトな若しくはよりハードなイオン化機構又は正イオン若しくは負イオン生成に有利になるように選択できる。さらに、イオン源102及びイオントラップ104の電極に印加される電位の大きさ及び極性は、特定のイオン化機構に有利になるように選択できる。上述したように、異なる物質は、異なるイオン化に親和性がある、ある方法が別の方法に比べて(例えば1つの機構によって)より効率的にイオン化することがある。分析計100内のガス圧と様々な電極に印加される電位とを調節することによって分析計を適合でき、特に様々な物質及び物質の種類を検出できるようになる。さらに、イオントラップ104の幾何学的形状及び/又はその電極に印加される電位を調節することで、イオントラップ104の質量ウィンドウ(例えば、イオントラップ104内の循環軌道に維持可能なイオン質量電荷比の範囲)を選択できる。
幾つかの実施形態では、イオン源102は、特定種類の物質に特化した特定種類のイオナイザを含むことができる。例えば、グロー放電イオン化、エレクトロスプレー質量イオン化、コンデンサ放電イオン化、誘電性バリア放電イオン化、及び本明細書で開示した他の種類のイオナイザの任意のものに基づいたイオン化源をイオン源102で使用できる。
幾つかの実施形態では、検出器118は、特定の種類の検出タスクのために特化できる。例えば、検出器118は、本明細書で開示した1つ又は複数の検出器の何れかとすることができる。これら検出器は、検出器118内において、後に説明するように複数のファラデーカップ検出器のような複数の検出素子を備えた、例えばアレイ形式のような特定の構成で且つ/又は任意の構成で配列できる。特定の物質の検出のために特化することに加え、検出器118は、特定種類のイオン源及びイオントラップと共に使用するため特化させることができる。例えば、検出器118内の検出素子の配列及び種類は、特にイオントラップ104が複数のイオンチャンバを含む場合は、イオントラップ104内のイオンチャンバの配列に対応するように選択できる。
幾つかの実施形態では、モジュール148の(例えば、イオン源102及び/又はイオントラップ104及び/又は検出器118の)1つ又は複数の内表面は、1つ又は複数の被覆及び/又は表面処理を含むことができる。これら被覆及び/又は表面処理は、特定種類の物質の検出、特定のガス圧範囲内での動作、及び/又は特定の印加電位での動作を含む特定の用途のために適合できる。モジュール148を特定の物質及び/又は用途に特化させるのに使用可能な被覆及び/又は表面処理の例は、テフロン(登録商標)(より一般的には、フッ化ポリマー被覆)、陽極酸化被覆、ニッケル、及びクロームを含む。
モジュール148の他の構成要素は、特定の物質又は幾つかの種類の物質を検出するために適合させることもできる。例えば、試料導入口124には、一定の種類の物質のみを分析計100内に通過させ、又は、同様に一定の物質の分析器内への通過を他の物質の通過と比べて遅らせるフィルタ(例えば、後の項目で説明する図7Bのフィルタ706)を設けることができる。幾つかの実施形態では、例えば、このフィルタは、試料導入口124に入るガス粒子の流動から塵粒子などの固体でミクロン単位のサイズの粒子を除去するHEPAフィルタ(又は似た種類のフィルタ)を含むことができる。幾つかの実施形態では、このフィルタは、試料導入口124に入るガス粒子の流動から水蒸気を除去する分子ふるいに基づいたフィルタを含むことができる。これらの種類のフィルタは、両方とも大気ガス粒子(例えば窒素分子及び酸素分子)を濾過せず、大気ガス粒子は通過させて分析計100のガス経路128に進入させる。本開示でいう大気ガス粒子を除去又は濾過しないフィルタ706のようなフィルタに関しては、そのフィルタはそれに接触する大気ガス粒子のすくなくとも95%以上を通過させるものと理解すべきである。
従って、幾つかの実施形態では、質量分析計100は多数の交換可能なモジュール148を含むことができる。これらモジュールの幾つかは同一でよく、互いの直接的代替品として機能できる(例えば、汚染された場合などに)。他のモジュールは様々なモードの動作のために構成できる。例えば、多数の交換可能なモジュール148は、異なる種類の物質を検出するために構成できる。分析計100を操作するユーザは、特定種類の物質に適したモジュールを選択し、分析を開始する前に、選択したモジュールを支持ベース140に差し込むことができる。別の種類の物質を分析するには、ユーザはこの第1モジュールを支持ベース140から分離し、新たなモジュールを選択し、その新たなモジュールを支持ベース140に差し込めばよい。結果として、様々な異なる用途に向けた質量分析計100の構成要素の再構成は、迅速且つ容易である。モジュールは異なる種類の測定用に特に構成することも可能である(例えば、異なるイオン化方法、イオントラップ104の電極に印加される異なる捕捉及び/若しくは排出電位、並びに/又は異なる検出方法)。一般に、多数の交換可能なモジュール148のそれぞれは本明細書で開示した任意特徴を含むことができる。従って、これらモジュールの幾つかはイオン源に基づいて異なることができ、これらモジュールの幾つかはイオントラップに基づいて異なることができ、これらモジュールの幾つかは検出器に基づいて異なることができる。幾つかのモジュールは、これら構成要素の2つ以上に基づいて互いから異なることがある。
幾つかの実施形態では、1つ又は複数の取付機構を用いてモジュール148を支持ベース140に固定できる。図1Fを参照すると、モジュール148は、支持ベース140上の第2取付機構197と係合する延伸部材の形式の第1取付機構195を含む。幾つかの実施形態では、延伸部材195は支持ベース140上で位置決めでき、補完的な取付機構がモジュール148に含まれている。幾つかの実施形態では、取付機構195は取付機構197と回転係合するカムでよく、取付機構197は、例えばこのカムを収容するよう構成された凹部を含んでいる。幾つかの実施形態では、ゴム及び/又はシリコンなどの軟質材料製の1つ又は複数の密封部材193(例えば、Oリング、ガスケット、及び/又は他の密封部材)を配置してモジュール148と支持ベース140との間の接続部を密封できる。
幾つかの実施形態では、取付機構195及び197は、モジュール148が単一の配向のみで支持ベース140に接続されるようにキー固定できる。これら取付機構のキー固定には、ユーザがモジュール148を誤った配向で取り付けてしまうことを防止する利点がある。
幾つかの実施形態では、他の取付機構を用いることもできる。例えば、支持ベース140及び/又はモジュール148は、モジュール148を支持ベース140に固定するクランプ199を含むことができる。1つ又は複数のクランプを使用できる。さらに、他の取付機構に加えてクランプを使用してもよい。
下記の節では、質量分析計100の様々な構成要素をより詳細に説明し、質量分析計100の様々な動作モードも説明する。
II. イオン源
一般に、イオン源102は、電子及び/又はイオンを発生するように構成されている。イオン源102が、分析されるガス粒子からイオンを直接発生する場合は、次にこれらイオンは、イオン源102及びイオントラップ104の電極に印加される適切な電位によってイオン源102からイオントラップ104に移動される。イオン源102の電極に印加される電位の大きさ及び極性と分析されるガス粒子の化学構造次第で、イオン源102の電極により発生されるイオンは正イオン又は負イオンとなりうる。幾つかの実施形態では、イオン源102により発生される電子及び/又はイオンは、分析される中性ガス粒子と衝突してこれらガス粒子からイオンを発生させることができる。イオン源102の動作時に、分析されるガス粒子の化学構造とイオン源102の動作パラメータ次第で、様々なイオン化作用がイオン源102内で同時に発生しうる。
従来の質量分析計よりも高い内部ガス圧で動作させることで、本明細書で開示したコンパクトな質量分析計は様々なイオン源を使用できる。特に、小型で且つ動作に比較的小さい電力しか必要としないイオン源を分析計100で使用できる。幾つかの実施形態では、例えば、イオン源102はグロー放電イオン化(GDI)源でよい。幾つかの実施形態では、イオン源102はコンデンサ放電イオン源でもよい。
動作に必要な電力量及びサイズ次第で、様々な他の種類のイオン源を分析計100で使用してもよい。例えば、分析計100で使用するのに適した他のイオン源としては、誘電性バリア放電イオン源及び熱電子放出源が含まれる。別の例としては、エレクトロスプレーイオン化(ESI)に基づいたイオン源を分析計100で使用できる。こうしたイオン源には、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、二次イオンエレクトロスプレーイオン化(SESI)、抽出エレクトロスプレーイオン化(EESI)、及びペーパースプレーイオン化(PSI)などのイオン源が含まれるが、それらに限定されない。さらに別の例としては、レーザ脱離イオン化(LDI)に基づいたイオン源を分析計100で使用できる。こうしたイオン源には、エレクトロスプレー支援レーザ脱離イオン化(ELDI)及びマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)などのイオン源が含まれるが、それらに限定されない。さらに、大気固体分析プローブ(ASAP)、脱離大気圧化学イオン化(DAPCI)、脱離大気圧光イオン化(DAPPI)及びソニックスプレーイオン化(SSI)などの技法に基づいたイオン源を分析計100で用いることができる。ナノファイバのアレイ(例えば、カーボンナノファイバのアレイ)に基づいたイオン源も使用に適している。上述のイオン源の他の側面及び特徴、並びに分析計100での使用に適したイオン源の他の例は、例えば次の刊行物に開示されており、それら各刊行物の内容全体はここに引用して援用する。アルベルチ(Alberici)等、「周囲環境質量分析:質量分析を"実世界“に応用する」(“Ambient mass spectrometry: bringing MS into the ‘real world,’”) 分析及び生化学分析(Anal. Bioanal. Chem.) 398: 265-294 (2010); ハリス(Harris)等、「周囲環境サンプリング/イオン質量分析:応用と現在の傾向」(“Ambient Sampling/Ion Mass Spectrometry: Applications and Current Trends,”) 分析化学(Anal. Chem.) 83: 4508-4538 (2011); 及びチェン(Chen)等、「二重ゲート分離縦配置カーボンナノファイバアレイを用いた携帯型質量分析計用のマイクロイオナイザ(“A Micro Ionizer for Portable Mass Spectrometers using Double-gated Isolated Vertically Aligned Carbon Nanofiber Arrays”)、 IEEE電子装置部会紀要58(7): 2149-2158 (2011).
GDI源はコンパクトで低電力動作に適しているので、分析計100で用いるのに特に有利である。しかし、これらイオン源の使用時に起こるグロー放電は、ガス圧が十分な時にしか起こらない。典型的には、例えば、GDI源は、動作時に概ね200ミリトール以上のガス圧に限定される。200ミリトール未満の圧力では、安定したグロー放電を維持するのが困難となることがある。結果として、GDI源は、1ミリトール以下の圧力で動作する従来の質量分析計では用いられない。しかし、本明細書で開示した質量分析計は100ミリトールから100トールの間のガス圧で動作するので、GDI源が使用できる。
図2Aは、前方電極210及び後方電極220を含むGDI源200の一例を示す。これら2つの電極210及び220は、ハウジング122と共にGDIチャンバ230を形成する。幾つかの実施形態では、GDI源200は、このイオン源の電極を囲むハウジングも含むことができる。例えば、図2Bに示した実施形態では、GDIチャンバ230は、電極210及び220を囲む別個のハウジング232を備える。ハウジング232は固定要素250(例えば、クランプ、ねじ、ねじ部品、又は他の種類の締結具)を介してハウジング122に固着又は取り付けされる。
図2A及び2Bに示したように、前方電極210は、分析されるガス粒子がGDIチャンバ230に入るアパーチャ202を備えている。本明細書では、「ガス粒子」という用語は、気体の状態で別個の実体として存在する気体の原子、分子、又は凝集した分子を指す。例えば、分析される物質が有機化合物であれば、この物質のガス粒子は、気相状態にあるこの物質の個々の分子である。
アパーチャ202は絶縁チューブ204により囲まれている。図2A及び2Bでは、アパーチャ202は試料導入口124(図示されていない)に接続されており、分析されるガス粒子が、分析計100の外部の雰囲気とGDIチャンバ230との気圧差によってGDIチャンバ230内に引き込まれる。分析されるガス粒子に加え、大気ガス粒子もこの気圧差によってGDIチャンバ230内に引き込まれる。本明細書では、「大気ガス粒子」という用語は、酸素ガス又は窒素ガスの分子のような空気中のガスの原子又は分子を指す。
幾つかの実施形態では、イオン源における電子及び/又はイオンの発生を助けるため、付加的なガス粒子をGDI源200に導入できる。例えば、図1Aに関連して上述したように、分析計100は、ガス経路128に接続されたバッファガス源150を含むことができる。バッファガス源150からのバッファガス粒子はGDI源200に直接導入してもよいし、ガス経路128の別の部分に導入して、GDI源200内に拡散させてもよい。こうしたバッファガス粒子は、窒素分子及び/又は希ガス原子(例えば、He、Ne、Ar、Kr、Xe)を含むことができる。バッファガス粒子の一部は電極210及び220によりイオン化できる。
代替的に、幾つかの実施形態では、分析されるガス粒子及び大気ガス粒子を含むガス分子の混合物が、GDI源200に導入される唯一のガス粒子である。そうした実施形態では、分析されるガス粒子のみがGDIチャンバ230内でイオン化できる。幾つかの実施形態では、分析されるガス粒子と導入された大気ガス粒子の両方がGDIチャンバ230内でイオン化できる。
図2A及び2Bでは、アパーチャ202が前方電極210の中央に配置されているが、より一般的には、アパーチャ202はGDI源200の様々な場所に配置できる。例えば、アパーチャ202はGDIチャンバ230の側壁部に配置でき、ここで試料導入口124に接続される。さらに、上述したように、幾つかの実施形態では、分析されるガス粒子がイオントラップ104又は検出器118のような分析計100の別の構成要素内に直接引き込まれるように試料導入口124を位置決めできる。ガス粒子がイオン源102以外の構成要素に引き込まれると、これらガス粒子はガス経路128を介してイオン源102内部に拡散する。代替的に又は付加的に、分析されるガス粒子がイオントラップ104などの構成要素内に直接引き込まれる場合は、イオン源102はイオン及び/又は電子を発生でき、これらはイオントラップ104内で分析されるガス粒子と衝突して、これらガス粒子からイオントラップ104内で直接イオンを発生する。
従って、分析されるガス粒子が分析計100のどこに導入されるか(例えば、試料導入口124の位置)によって、イオンは様々な異なる位置でガス粒子から発生させられる。イオンはイオン源102内で直接発生でき、発生したイオンは、適切な電位をイオン源102及びイオントラップ104の電極に印加することでイオントラップ104内に移動できる。イオンはイオントラップ104内でも発生でき、その場合、イオン源102により発生されたイオン(例えばバッファガスイオン)及び電子などの荷電粒子はイオントラップ104に入り、分析されるガス粒子と衝突する。一般に、イオンは複数の場所で同時に発生でき(例えば、イオン源102とイオントラップ104の両方で)、発生したすべてのイオンは最終的にはイオントラップ104内で捕捉される。この節の説明はイオン源102内での対象となるガス粒子からの直接的なイオン発生に主として焦点を当てているが、本明細書で開示した諸側面及び特徴は、分析計100の他の構成要素内における対象となるガス粒子からの二次的イオン発生にも概して適用できる。
電極210と後方電極220との間には様々な異なる間隔を使用できる。一般に、イオンの発生効率は、電極210と電極220との間の電位差、GDI源200内のガス圧、電極210と電極220との間の距離、及びイオン化されるガス粒子の化学構造を含む多くの要因により決定される。典型的には、距離234は、GDI源200のコンパクトさを確実に維持にするため比較的小さくする。幾つかの実施形態では、電極210と電極220との間の距離234は、1.5 cm以下(例えば、1 cm以下、0.75 cm以下、0.5 cm以下、0.25 cm以下、0.1 cm以下)である。
GDIチャンバ230内のガス圧は、一般に圧力調整サブシステム120によって調整される。幾つかの実施形態では、GDIチャンバ230内のガス圧は、イオントラップ104及び/又は検出器118内のガス圧と概ね同一である。幾つかの実施形態では、GDIチャンバ230内のガス圧は、イオントラップ104及び/又は検出器118内のガス圧とは異なる。典型的には、GDIチャンバ230内のガス圧は、100トール以下(例えば50トール以下、20トール以下、10トール以下、5トール以下、1トール以下、0.5トール以下)及び/又は100ミリトール以上(例えば200ミリトール以上、300ミリトール以上、500ミリトール以上、1トール以上、10トール以上、20トール以上)である。
動作時には、コントローラ108の制御下で、電圧源106によって電圧差が前方電極210と後方電極220との間に印加されると、GDI源200は自己持続グロー放電(又はプラズマ)を発生する。幾つかの実施形態では、この電圧差は、グロー放電を維持するため200V以上(例えば、300V以上、400V以上、500V以上、600V以上、700V以上、800V以上)とすることができる。上述したように、検出器118はGDI源200により発生されたイオンを検出し、電極210と電極220との間の電位差はコントローラ108により調節して、イオンがGDI源200により発生される割合を制御できる。
幾つかの実施形態では、図1Dに示したように、GDI源200は支持ベース140に直接取り付け、電極210及び220は、支持ベース140を介して電圧源106に直接接続される。幾つかの実施形態では、図1Eに示したように、GDI源200はモジュール148の一部をなし、電極210及び220は支持ベース148の電極142に接続される。モジュール148が支持ベース140に差し込まれると、電極210及び220は、電極142に係合する電極144を介して電圧源106に接続される。
電圧源106によって確立された大地電位に対して異なる極性の電位を印加することで。GDI源200は異なるイオンモードで動作するように構成できる。例えば、GDI源200の典型的な動作時には、ガス粒子のほんの一部が不規則過程(例えば、熱衝突)によってGDIチャンバ230内で先ずイオン化される。幾つかの実施形態では、前方電極210がカソードとして作用し、後方電極220がアノードとして作用するように、前方電極210と後方電極220に電位が印加される。この構成では、GDIチャンバ230内で発生した正イオンは、チャンバ内の電界によって前方電極210に向けて動かされる。負イオン及び電子は後方電極220に向けて動かされる。これら電子及びイオンは他のガス粒子と衝突して、大量のイオンを発生する。負イオン及び/又は電子は後方電極220を介してGDIチャンバから出る。
幾つかの実施形態では、前方電極210がとアノードして作用し、後方電極220がカソードとして作用するように、前方電極210と後方電極220に適切な電位が印加される。この構成では、GDI源200内で発生した正に帯電したイオンは、後方電極220を介してチャンバから出る。これら正に帯電したイオンは他のガス粒子と衝突して、大量のイオンを発生する。
幾つかの実施形態では、ユーザインターフェース112は、ユーザによる上述のイオン化モードの何れかの選択を可能とする制御手段を含むことができる。適切なイオン化モードの選択は、分析計100により分析される物質の性質に依存することがある。ある種の物質はより効率的に正イオンとしてイオン化され、後方電極220がカソードとして機能するように動作モードを選択できる。このモードによる動作時に発生した正イオンは、後方電極220を介してGDIチャンバ200を出る。代替的には、ある種の物質は負イオンとしてより効率的にイオン化され、動作モードは、後方電極220がアノードとして機能するように選択できる。このモードによる動作時に発生した負イオンは、後方電極220を介してGDI源200を出る。一般に、コントローラ108は、検出器118により測定されるイオン電流を監視し、このイオン電流に基づいてGDI源の適切な動作モードを選択するよう構成される。代替的に又は付加的に、分析計100のユーザは、ユーザインターフェース114に表示される制御手段を使って、又は適切な構成設定を分析計100の記憶装置114に入力することで適切な動作モードを選択できる。
イオンが何れかの動作モードで発生され、後方電極220を介してGDIチャンバ230を出ると、これらイオンはエンドキャップ電極304を介してイオントラップ104に入る。一般に、後方電極220は、1つ又は複数のアパーチャ240を含むことできる。アパーチャ240の数及びその断面形状は、一般に、エンドキャップ電極304に入射するイオンの比較的均一な空間的分布が実現されるように選択される。GDIチャンバ230内で発生したイオンは後方電極220の1つ又は複数のアパーチャ240を介してチャンバから出ると、これらイオンは衝突及び空間電荷相互作用によって互いから空間的に分散する。結果として、GDI源200を出るイオンの全体的な空間的分布は拡散する。特定の断面形状を備えた適切な数のアパーチャ240を選択することで、GDI源200を出るイオンの空間的分布は、この分布がエンドキャップ電極304に形成されたすべてのアパーチャ292に重なる又は満たすように制御できる。幾つかの実施形態では、付加的なイオン光学素子(例えばイオンレンズ)を後方電極220とエンドキャップ電極304との間に配置して、GDI源200から出るイオンの空間的分布をさらに操作できる。しかし、本明細書で開示したコンパクトなイオン源の独特の利点は、後方電極220とエンドキャップ電極304との間に付加的な要素を配置することなく適切なイオン分布が得られることである。
幾つかの実施形態では、後方電極220は単一のアパーチャ240を含む。アパーチャ240の断面形状は、円形、正方形、四角形でよく、或いは任意の規則的な又は不規則形状のN個の辺を持つ多角形に概ね対応できる。幾つかの実施形態では、アパーチャ240の断面形状は不規則形状としてよい。
幾つかの実施形態では、後方電極220は2つ以上のアパーチャ240を含む。一般に、後方電極220はGDI源200で使用するのに機械的に十分に安定状態を維持するのであれば、後方電極220は任意の距離で離間した、任意数のアパーチャを含むことができる(例えば、2個以上、4個以上、8個以上、16個以上、24個以上、48個以上、64個以上、100個以上、200個以上、300個以上、500個以上)。図2C-2Hは、それぞれが様々な異なるアパーチャ240を備えた後方電極220の様々な実施形態を示す。図2C-2Hに示したように、後方電極220は、一般に円形、四角形、又は他の任意形状とすることができる。
図2Cは、規則的な配列のアパーチャ242を備えた後方電極220を示す。図2Cでは25個のアパーチャ242が示されているが、より一般的には任意数のアパーチャ242が存在できる。さらに、アパーチャ242は円形の断面形状を備えているが、より一般的には、任意の規則的又は不規則の断面形状を備えたアパーチャ242を使用できる。異なる断面形状を備えたアパーチャを1つの電極220で使用してもよい。一般に、アパーチャ242により形成される開口のサイズは所望どおりに選択すればよく、異なるサイズのアパーチャ242が単一の後方電極220に存在していてもよい。典型的には、後方電極220に形成されたアパーチャの数及びアパーチャのサイズが、電極のガス圧降下を制御する。従って、アパーチャサイズ及び数を選択することで、質量分析計100の動作時での後方電極220の目標圧力降下を達成できる。
図2D-2Gは、開口243、244、245、及び246を備えた後方電極220のさらなる例示的な実施形態を示す。図2D-2Gでは、開口243、244、245、及び246は、スリット(例えば、連続的な開口)又は後方電極220に形成され且つ互いに離間された一連のアパーチャにより形成されていてもよい。図2D-2Gに示したように、開口243、244、245、及び246は、直線状開口の配列、同心円状の円弧の配列、蛇行経路、及び螺旋経路を形成するよう配置できる。しかし、図2D-2Gに示した実施形態は例示目的にすぎない。より一般的には、異なる断面形状及びサイズを備えた多種多様な異なる配列のアパーチャを後方電極220で使用できる。
図2Hは、六角形配列のアパーチャ247を備えた後方電極220の一実施形態を示す。図2Hに示した六角配列及び図2Cに示した正方形又は四角形配列は、後方電極220に形成可能なアパーチャの規則的な配列の例である。しかし、より一般的には、後方電極220には、円形配列又は放射状配列などの(それらに限定されないが)様々な異なる規則的配列のアパーチャを用いることができる。
図2A及び2Bに示したように、イオントラップ104のエンドキャップ電極304は、1つ又は複数のアパーチャ294を含むこともできる。幾つかの実施形態では、エンドキャップ電極304は、円形、正方形、長方形、又は他のN個の辺を備えた多角形の断面形状を備えた単一のアパーチャ294を含む。幾つかの実施形態では、このアパーチャは不規則な断面形状を備えている。
より一般的には、エンドキャップ電極304は多数のアパーチャ294を含むことができる。エンドキャップ電極304のアパーチャの種類、それらの配列、及び特定種類のアパーチャを選択する判断基準は、一般に、後方電極220に関連して既に説明した種類、配列、及び判断基準に類似している。さらに、上述の説明は、エンドキャップ電極304に形成されたアパーチャ294にも同様に当てはまる。
図2A及び2Bに示したように、後方電極220は、エンドキャップ電極304から量244の分だけ離間している。これら電極間の空間によって、後方電極220から出るイオンは空間的に分散し、エンドキャップ電極304に形成されたアパーチャ294を可能な限り均一に満たすことができる。アパーチャ294の均一な充満をさらに促進するため、幾つかの実施形態では、後方電極220に形成されたアパーチャ240のパターンは、エンドキャップ電極304に形成されたアパーチャ294のパターンに一致させることができる。
より詳細には、図2Hに示したように、後方電極220に形成されたアパーチャ247のパターンは、後方電極220の断面形状を画定している。同様に、エンドキャップ電極304に形成されたアパーチャのパターンは、エンドキャップ電極304の断面形状を画定している。幾つかの実施形態では、後方電極220及びエンドキャップ電極304の断面形状は、概ね一致している。本明細書では、「概ね一致」とは、後方電極220に形成されたアパーチャの少なくとも70%以上の相対位置が、エンドキャップ電極304に形成されたアパーチャの相対位置と同じであることを意味する。各アパーチャに関して、その位置はその質量の中心の位置に対応する。
幾つかの実施形態では、後方電極220に形成されたアパーチャ240のパターンは、エンドキャップ電極304に形成されたアパーチャ294のパターンに正確に一致しており、すなわち、これらのアパーチャ間には一対一の対応関係が存在する。一般に、これらアパーチャが後方電極220及びエンドキャップ電極304で一致する度合いが増加すると、後方電極220から出るイオンがエンドキャップ電極304のアパーチャ294をより均一に充満するようになるので、後方電極220とエンドキャップ電極304との距離244は短くすることができる。これら電極間のアパーチャが完全又はほぼ完全に一致していれば、距離244はゼロとして(すなわち、後方電極220はエンドキャップ電極304に直接的に隣接して配置できる)、GDI源200を極めてコンパクトにすることができる。さらに、アパーチャ間の一致の度合いが増加するにつれ、アパーチャ294に入るイオンの数は、アパーチャ間でエンドキャップ電極304の部分に衝突するイオンの数が減少させることによって最大化できる。結果的に、イオントラップ104のイオン収集効率が向上する。さらに、イオン源102により発生されたイオンがイオントラップ104内で収集される効率を向上させることによって、後方電極220及びエンドキャップ電極304の全体的サイズを、アパーチャが1つの電極及び/又は一致していないアパーチャを備えた電極に比べ減少することができる。
幾つかの実施形態では、後方電極220及びエンドキャップ電極304は単一要素として形成でき、GDI源200で発生されたイオンはその要素を通過することでイオントラップ104に直接進入できる。こうした実施形態では、一体とした後方及びエンドキャップ電極は、上述のように単一のアパーチャ又は多数のアパーチャを含むことができる。
さらに、幾つかの実施形態では、イオントラップ104のエンドキャップ電極は、GDI源200の前方電極210及び後方電極220として機能できる。後に詳述するように、イオントラップ104は、当該トラップの互いに反対となる面に配置された2つのエンドキャップ電極304及び306を含んでいる。適切な電位(例えば、前方電極210及び後方電極220に関連して上述したように)をこれら電極に印加することで、エンドキャップ電極304は前方電極210として機能でき、エンドキャップ電極306は後方電極220として機能できる。従って、これら実施形態では、イオントラップ104はグロー放電イオン源102としても機能する。
様々な動作モードを用いてGDI源200で電荷粒子を発生させることができる。例えば、幾つかの実施形態では、連続的な動作モードを使用できる。図2Iは、定バイアス電圧262が、GDI源200の前方電極210と後方電極220との間に印加される連続運転モードの一実施形態を示すグラフを含んでいる。このモードでは、荷電粒子がイオン源内で連続的に発生する。
幾つかの実施形態では、GDI源200はパルス動作を行うよう構成されている。図2Iは、バイアス電位272が一定期間272にわたって前方電極210と後方電極220に印加されるパルスモード動作の一実施形態を示す。バイアス電位272を繰り返し印加することで、連続パルス間の期間276の逆に対応するパルス動作の繰り返し数を画定する。一般に、期間276は、バイアス電位272が電極に印加されている期間274よりもかなり長くなることがある(例えば、100倍の長さ)。幾つかの実施形態では、例えば、期間274は約0.1ミリ秒であり、期間276は約10ミリ秒である。より一般的には、期間274は、5ミリ秒以下(例えば4ミリ秒以下、3ミリ秒以下、2ミリ秒以下、1ミリ秒以下、0.8ミリ秒以下、0.6ミリ秒以下、0.5ミリ秒以下、0.4ミリ秒以下、0.3ミリ秒以下、0.2ミリ秒以下、0.1ミリ秒以下、0.05ミリ秒以下、0.03ミリ秒以下)であり、期間276は、50ミリ秒以下(例えば40ミリ秒以下、30ミリ秒以下、20ミリ秒以下、10ミリ秒以下、5ミリ秒以下)である。
バイアス電位272が電極に印加される期間274にわたりイオンが発生する。幾つかの実施形態では、後に詳述するように、パルスモード運転時のパルスバイアス電位272のタイミングは、イオントラップ104の中心電極に印加される高電圧RF信号482を発生するのに使用される変調信号412と同期させることもできる。図2Jのグラフ280は、イオントラップ104の中心電極に印加されるRF信号482を発生するため用いられる変調信号412のプロットである。グラフ280をグラフ270と比較すると、パルスバイアス電位272がGDI源200の電極に印加されると、変調信号412が停止される。この期間中に、イオンがGDI源200で発生される。次にバイアス電位272が停止され、変調電位282がかけられる。間隔284では、これらイオンがイオントラップ104内で捕捉され、安定化される。そして、間隔286において、イオントラップ104の中心電極に印加される電位の振幅を増大することによって、捕捉されたイオンがイオントラップ104から検出器118内に排出される。
パルスモード運転には幾つかの利点がある。例えば、パルスバイアス電位272の繰り返し数並びに期間及び/又は振幅は、イオントラップ104内に存在する分析対象のガス粒子の量及びガス圧に適合させることができる。一般に、コントローラ108は、検出器118により測定されるイオン電流を監視し、コントローラ108は、このイオン電流の大きさに基づいてパルスモード運転に関連付けられたパラメータの1つ又は複数を調節できる。
幾つかの実施形態では、例えば、コントローラ108はバイアス電位272の振幅を調節できる。バイアス電位を増加させると、イオンがGDI源200で発生される割合を増加させることができる。
幾つかの実施形態では、コントローラ108はバイアス電位272の繰り返し数を調節できる。対象となる幾つかの検体に関しては、繰り返し数を増加させるとGDI源200でのイオンの発生率を増加させることができる。別の検体に関しては、繰り返し数を減少させるとGDI源200でのイオンの発生率を増加させることができる。コントローラ108は、GDI源200でのイオン発生率が適切な値に達するまで繰り返し数を適応的態様で調節するように構成できる。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、GDI源200のデューティサイクルを調節するように構成できる。グラフ270を参照すると、GDI源200のデューティサイクルは、バイアス電位272が印加される期間274の合計期間276に対する割合を示す。コントローラ108は、GDI源200のデューティサイクルを調節するように構成できる。例えば、このデューティサイクルを減少させて、GDI源200におけるイオンが発生される割合を低下させることができる。イオンが発生される割合を低下させることで、測定イオン信号の信号対雑音比が向上し、望ましくないゴーストピークが除去される(イオン源200による測定される際に停止されると、GDI源200により発生される望ましくない荷電粒子によるピーク。代替的には、デューティサイクルを増加して、イオンがGDI源200で発生する割合を増加させることもできる。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、デューティを1%と50%との間(例えば1%と40%との間、1%と30%との間、1%と20%との間、1%と10%)との間の値に調節するよう構成できる。
パルスモード運転の別の重要な利点は、不要な時には、例えばイオン源200が既にイオンを発生したときには、電極210と220との間に印加されるバイアス電位が停止されることである。イオン源200のデューティサイクルのほとんどの期間にバイアス電位を停止することで、分析計の動作に必要な電力量のかなり減少の減少に繋がりうる。
さらに、パルスモード運転は、GDI源200と検出器118との間に配置されたゲート又はシールドの使用を回避する。従来の質量分析計において一般に使用されるゲート及びシールドを除去することで、かなりの空間が節約され、さらに分析計100の動作に必要な電力量が減少する。
幾つかの実施形態では、GDI源200の動作条件は、自動較正手順を用いてチェックできる。例えば、ユーザは、1つ又は複数の既知の基準試料を順に分析する較正手順を始動できる。ファントムピーク(すなわち、測定スペクトル中に存在すべきでないピーク)は、GDI源200が汚染されていることを示している可能性がある。例えば、電極210及び220の一方には、ファントムピーク検出の原因となりうる粘着性の粒子又は破片が埋め込まれてしまうことがある。幾つかの構成手順では、試料は注入されず、ファントムピークが分析計ノイズを背景として検出される。GDI源200を交換する必要があるかどうかの判断は、較正の結果、例えば検出されたファントムピークの数及び大きさに基づくものとしてよい。
交換を容易にするため、幾つかの実施形態では、イオン源200は分析計100の他の構成要素とは別のモジュールとして構成できる。例えば、図2Bに示したように、GDI源200は、分析計100の他の構成要素から又はハウジング122から取付要素250を解放することによって容易に取り外し可能な個別のモジュールとして実装できる。代替的には、電極210及び220はGDI源200から個別に取り外し可能に構成できる。電極210及び220の取り外しは、例えば、電極の位置に隣接したハウジング122と一体化したカバーを取り外すことで達成できる。このカバーがハウジング122から取り外されると、露出した電極はGDI源200から取り外し可能になる。
幾つかの実施形態では、GDI源200は交換する代わりに清浄にできる。例えば、GDI源200は、逆デューティサイクルに対応する電位バイアスを電極210及び220に印加することで清浄化できる。図2Jは、バイアス電位264、すなわちグラフ270で示したパルスモードバイアス電位に関して逆にしたもの、が清浄処理時に電極210及び220に印加される逆デューティサイクルのグラフ263である。定DC電位がデューティサイクルの殆どの期間で印加され、期間274の短い電位降下のみによって中断される。これら電位降下は、期間276で繰り返される。理論に縛られることを望まないが、この速い電圧変化が、電極210及び220に埋め込まれた粘着性粒子の除去を容易にすると考えられる。一旦、GDI源200が清浄になったと判断されれば(例えば、上述の較正手順を用いて)、GDI源200は通常動作(例えば、パルスモード運転)に切り換えてイオンを発生できる。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、清浄化時のデューティサイクルを50%と100%との間(例えば50%と90%との間、50%と80%との間、50%と70%との間、50%と60%との間)の間の値に調節するよう構成される。逆デューティサイクルは、合計5秒以上(例えば10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、1分以上、2分以上、3分以上、5分以上)の期間にわたり印加できる。
GDI源200の電極が汚染される場合は、他の方法を用いてそれらを清浄にすることもできる。幾つかの実施形態では、電極210及び220の粘着性粒子の除去を容易にするため、清浄ガスをGDI源200に注入してもよい。適切な清浄ガスとしては、例えば希ガスを含むことができる。さらに、幾つかの実施形態では、GDI源200の電極の清浄化は、電極210及び220を加熱することによっても促進できる。幾つかの実施形態では、電極210及び220は、GDI源200から取り外し、適切な清浄化溶液中で清浄にできる。
上述の説明は、GDI源200が汚染されているかを判断するためのファントムピークの測定に焦点を当てたものである。より一般的には、ファントムピーク検出に加え又はその代わりに、他の方法を用いることもできる。例えば、コントローラ108は、検出器118によるイオン電流の測定を監視するよう構成できる。検出器118により測定されたイオン信号が、閾値量以上で揺らめくすなわち突然変化する(例えば、跳ね上がったり下降したりする)場合、又は平均検出イオン/電子信号が特定の閾値未満への減衰を備えている場合、コントローラ108は、GDI源200の清浄化又は交換が望ましいと自動的に判断できる。
GDI源200の電極210及び220を含むイオン源102の電極を形成するために様々な材料が使用できる。幾つかの実施形態では、イオン源102の電極は、銅、アルミ、銀、ニッケル、金、及び/又はステンレス鋼などの材料から製造できる。一般に、粘着性粒子の吸着が起こりにくい材料が有利だが、それはそうした材料は典型的には清浄化又は交換を頻繁には必要としないからである。
上述の説明は、分析計100におけるGDI源200の使用に焦点を当てたものである。しかし、上述の特徴、設計基準、アルゴリズム、及び側面は、コンデンサ放電源及び熱電子放出源などの分析計100で使用可能な他の種類のイオン源にも同様に当てはまる。特に、コンデンサ放電源は、分析計100が動作する比較的高いガス圧における使用によく適している。従って、上述の記載はそうしたイオン源にも当てはまる。例えば、図2Kは、イオン化源266のアレイを含むコンデンサ放電源265の一例を示す。図2Kの差込図は、電線267と絶縁被覆線268とを備えた単一のイオン化源266の拡大図を示す。バイアス電位が電圧源106によって線267に印加されると、イオン化源266それぞれからプラズマ放電が発生する。コンデンサ放電源265により発生されたイオンはイオントラップ104に入り、そこで捕捉され且つ検出のため選択的に排出される。コンデンサ放電源の付加的な側面及び特徴は、例えば米国特許第7,274,015号に記載されており、その内容全体はここに引用して援用する。
コンパクトで、間隔が狭い電極を使用するため、イオン源102の全体的サイズは小さくできる。イオン源102の最大寸法は、当該イオン源の任意の2点間の最大直線距離を指す。幾つかの実施形態では、イオン源102の最大寸法は、8.0 cm以下(例えば、6.0 cm以下、5.0 cm以下、4.0 cm以下、3.0 cm以下、2.0 cm以下、1.0 cm以下)とする。
III. イオントラップ
第I節で説明したように、イオン源102が発生したイオンはイオントラップ104内で捕捉され、そこでイオンは、電位をイオントラップ104の電極に印加することで形成される電界の影響下で循環する。こうした電位は、コントローラ108から制御信号を受信した後、電圧源106によってイオントラップ104の電極に印加される。検出のためにイオントラップ104から循環するイオンを排出するため、コントローラ108は電圧源106に信号を送信し、この信号は電圧源106に、イオントラップ104内の高周波(RF)電界の振幅を変調させる。RF電界の振幅の変調によって、イオントラップ104内の循環イオンが軌道から外れてイオントラップ104を出て、検出器118に入りそこで検出される。
第I節で説明したように、質量分析計100がコンパクトで且つ動作時に比較的少量の電力しか消費しないことを保証するため、質量分析計100は、圧力調整サブシステム120内で単一の小型メカニカルポンプのみを使用してその内部ガス圧を調節する。結果として、質量分析計100は、従来の質量分析計の内部圧力より高い内部ガス圧で動作する。分析計100に引き込まれるガス粒子が迅速にイオン化され分析されることを保証するため、質量分析計100の内部容積は、従来の質量分析計の内部容積よりかなり小さくされている。分析計100の内部容積を減らすことによって、圧力調整サブシステム120は、ガス粒子を素早く分析計100に引き込むことができる。さらに、迅速なイオン化及び分析を保証することで、分析計100のユーザは特定の物質に関する情報を素早く得ることができる。分析計100の内部容積が小さいことで、動作時に汚染されやすい内部表面が小さくなるという付加的な利点ももたらされる。従来の質量分析計は、様々な異なる質量アナライザーを使用するが、それらの多くは動作時に低圧に維持される大きな内部容積を備え且つ/又は動作時に大量の電力を消費する。例えば、ある種の質量分析計はリニア四重極マスフィルタを使用するが、これらは軸方向に延伸しているので大きな内部容積を備え、これによって質量フィルタリング及び大きな電荷蓄積容量が可能となる。ある種の質量分析計は扇形磁界質量フィルタ(magnetic sector mass filters)を使用し、こうしたフィルタも典型的には大型で質量フィルタリング磁界を生成するため大量の電力を消費することがある。従来の質量分析計は双曲線イオントラップを用いることもでき、これは大きな内部容積を備えることがあり、さらに製造が困難となることがある。
上述した従来のイオントラップ技術とは対照的に、本明細書で開示した質量分析計は、イオンを捕捉し分析するためのコンパクトで円柱形のイオントラップを使用する。図3Aは、イオントラップ104の一実施形態の断面図である。イオントラップ104は、円柱形の中心電極302と、2つのエンドキャップ電極304及び306と、2つの絶縁スペーサ308及び310とを含む。電極302、304、及び306は、それぞれ制御線312、314、及び316を介して電圧源106に接続されている。電圧源106は制御線120eを介してコントローラ108に接続され、コントローラ108は信号を制御線127eを介して送信し、電圧源106に指示してイオントラップ104の電極に電位を印加させる。
動作時に、イオン源102により発生されたイオンは、電極304内のアパーチャ320を介してイオントラップ104に入る。電圧源106は電位を電極304及び306に印加してイオントラップ104内で軸方向の電界(例えば、軸318に関して対称)を生成する。この軸方向電界は電極304と306との間で軸方向にイオンを閉じこめて、イオンが電極306のアパーチャ320又はアパーチャ322を介してイオントラップを出ないことを保証する。電圧源106は電位を中央電極302にも印加して、イオントラップ104内に半径方向閉じ込め電界を発生する。この半径方向電界は、イオンを電極302の内部アパーチャ内で半径方向に閉じ込める。
軸方向電界及び半径方向電界がイオントラップ104内に存在することで、イオンがトラップ内で循環する。各イオンの軌道形状は、電極302、304、及び306の幾何学形状、電極に印加される電位の大きさ及び符号、並びに当該イオンの質量電荷比を含む多くの要因により決定される。中央電極302に印加される電位の大きさを変化させることで、特定の質量電荷比のイオンはトラップ104内で軌道から外れ、電極306を介してトラップを出て、検出器118に入る。従って、異なる質量電荷比のイオンを選択的に分析するため、電圧源106は、(コントローラ108の制御下で)電極302に印加される電位の振幅を段階的に変化させる。電界の振幅が変化すると、異なる質量電荷比のイオンがイオントラップ104から排出され、検出器118により検出される。
イオントラップ104の電極302、304、及び306は、概してステンレス鋼、アルミ、又は他の金属のような導電材料で形成されている。スペーサ308及び310は、概してセラミックス、テフロン(登録商標)(例えば、フッ化ポリマー被覆材料)、ゴム、又は様々なプラスチック材料から形成されている。
エンドキャップ電極304及び306と、中央電極302と、スペーサ308及び310の中央開口は、同じ直径及び/若しくは形状、又は異なる直径及び/若しくは形状を備えることができる。例えば、図3Aに示した実施形態では、電極302並びにスペーサ308及び310の中央開口は、円形の断面形状及び直径c0を備え、エンドキャップ電極304及び306は、円形の断面形状及び直径 c2 < c0を備えた中央開口を具備している。図3Aに示したように、電極及びスペーサの開口は軸318に沿って軸方向に位置合わせされ、これら電極及びスペーサがサンドイッチ構造で組み立てられると、これら電極及びスペーサの開口はイオントラップ104内を延伸する連続的な軸方向開口を形成する。
一般に、電極302の中央開口の直径c0は、イオンをイオントラップ104から選択的に排出する際に特定の目標分解能を達成し、且つ分析計100の合計内部容積を調節するため所望どおりに選択すればよい。幾つかの実施形態では、c0は概ね0.6mm以上(例えば0.8 mm以上、1.0 mm以上、1.2 mm以上、1.4 mm以上、1.6 mm以上、1.8 mm以上)である。エンドキャップ電極304及び306の中央開口の直径c2も、イオンをイオントラップ104から排出する際に特定の目標分解能を達成し、且つ排出されないイオンの適切な閉じ込めを保証するため所望どおりに選択してもよい。幾つかの実施形態では、c2は概ね0.25 mm以上(例えば0.35 mm以上、0.45 mm以上、0.55 mm以上、0.65 mm以上、0.75 mm以上)である。
又、電極302並びにスペーサ308及び310の組合せ開口の軸方向長さc1も、イオンの適切な閉じ込めを保証するため且つイオンをイオントラップ104から排出する際に特定の目標分解能を達成するため所望どおりに選択すればよい。幾つかの実施形態では、c1は概ね0.6mm以上(例えば0.8 mm以上、1.0 mm以上、1.2 mm以上、1.4 mm以上、1.6 mm以上、1.8 mm以上)である。
c1/c0が0.83を上回るようにc0及びc1が選択されると、分析計100の分解能は大きくなることが実験により確かめられている。従って、幾つかの実施形態では、c1/c0の値が0.8以上(例えば0.9以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.4以上、1.6以上)となるように、c0及びc1が選択される。
イオントラップ104のサイズが比較的小型であることで、イオントラップ104内で同時に捕捉できるイオンの数は様々な要因によって限られている。そうした要因の1つは、イオン間の空間電荷相互作用である。捕捉されたイオンの密度が増加するにつれ、捕捉された循環イオン間の平均間隔が減少する。これらイオン(すべては正又は負の電荷を備える)が互いに近づけられると、これら捕捉されたイオン間の斥力が増大する。
イオントラップ104内に同時捕捉できるイオンの数の制限を克服し、分析計100の能力を増加させるため、幾つかの実施形態では、分析計100は複数のチャンバを備えたイオントラップを含むことができる。図3Bは、六角形アレイに配置された、複数のイオンチャンバ330を備えたイオントラップ104の概略図を示す。各チャンバ330は、図3Aのイオントラップ104と同様に機能し、2つのエンドキャップ電極及び円柱形の中央電極を含む。図3Bでは、エンドキャップ電極304がエンドキャップ電極306の一部と共に図示されている。エンドキャップ電極304は、接続点344を介して電圧源106に接続され、エンドキャップ電極306は、接続点332を介して電圧源106に接続されている。
図3Cは、図3Bの断面線A-Aについての断面図である。断面線A-Aに沿った5つのイオンチャンバ330それぞれが図示されている。電圧源106は、単一の接続点(図3Cでは図示しない)を介して中央電極302に接続されている。結果として、適切な電位を電極302に印加することで、電圧源106は(コントローラ108の制御下で)、各チャンバ330内にイオンを同時に捕捉し、選択した質量電荷比を備えたイオンを各チャンバ330から排出できる。
幾つかの実施形態では、イオントラップ104内のイオンチャンバ330の数は、エンドキャップ電極304に形成されたアパーチャの数に一致させることができる。第II節で説明したように、エンドキャップ電極304は、概して1つ又は複数のアパーチャを含むことができる。エンドキャップ電極304が複数のアパーチャを含む場合、イオントラップ104も複数のイオンチャンバ330を含み、エンドキャップ電極304に形成された各アパーチャが異なるイオンチャンバ330に対応する。このように、イオン源102内で発生したイオンはイオントラップ104により効率的に収集でき、イオンチャンバ330内に捕捉できる。上述したように、多数のチャンバを使用することで、捕捉されたイオン間の空間電荷相互作用が減少し、イオントラップ104の捕捉能力が増大する。一般に、イオンチャンバ330の位置及び断面形状は、第II節で説明したアパーチャ240及び294の配列及び形状と同じでよい。
一例として、図3Bを参照すると、エンドキャップ電極304は、六角形アレイに配置された複数のアパーチャを含む。電極304に形成された各アパーチャは対応するイオンチャンバ330に一致しており、従って、イオンチャンバ330も六角形アレイに配置される。
幾つかの実施形態では、イオンチャンバ330の数、配置、及び/又は断面形状は、エンドキャップ電極304の開口の配置に一致していない。例えば、エンドキャップ電極304は1つ又は少数のアパーチャ294のみを備えるが、イオントラップ304は複数のイオンチャンバ330を含むこともできる。多数のイオンチャンバ330を使用することでイオントラップ104の捕捉能力が増大するので、多数のイオンチャンバ使用は、例えイオンチャンバの配置がエンドキャップ電極304のアパーチャの配置と一致していなくても有利となりうる。
イオントラップ104の付加的な側特徴は、米国特許第6,469,298号、米国特許第6,762,406号、及び米国特許第6,933,498号に記載されており、それぞれの内容全体はここに引用して援用する。
IV. 電圧源
電圧源106は、制御線127eを介してコントローラ108により送信される信号に基づいて、分析計100の構成要素に動作電力及び電位を与える。第I節で上述したように、本明細書で開示した質量分析計の重要な利点は、従来の質量分析計に比べたコンパクトなサイズとかなり少ない電力消費量である。分析計100は一般に様々な電圧源を用いて動作できるが、分析計100の電力消費量を可能な限り減少させるためには、電圧源106が高効率であれば有利である。
しかし、サイズが小さく且つ分析計100の構成要素を駆動するのに十分な電圧を発生する高効率の電圧源は、市販のものは容易に入手できない。図4Aは、イオントラップ104の中央電極302に印加される高電圧RF信号482を供給するよう構成された高効率の電圧源106の一実施形態の概略図を示す。動作時に、電圧源106は電源440から受け取った電圧を増幅する一方で、高電圧RF信号482の波形を特定の質量スペクトル測定に適するように修正できる。
電源106の設計によって、分析計100は、高電圧RF信号482の様々な掃引段階において高い電力効率で動作可能となる。各段階で、電力効率は、入力電力と出力電力の比として定義される。幾つかの実施形態では、電源106の効率は、電圧増幅のすべての段階で、40%以上(例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上)とすることができる。対照的に、従来の電力増幅器(例えば、エミッターホロワー又はA級増幅器)は、典型的には最も高い増幅レベルにおいて最大効率を備えるが、より低い増幅レベルでは効率がかなり低くなる。従って、従来の電力増幅器は不十分であり、掃引電圧増幅を必要とする用途では不十分の場合がある。
高効率の動作に加え、電圧源106によって、比較的低い電源(例えばバッテリ)が、分析計100の様々な構成要素を作動するのに必要な電力及び電位を提供できるようになる。結果として、分析計100はコンパクトなフォームファクターを備え、従来の電力増幅器と比べてかなり軽量である。
図4Aを参照すると、電圧源106は、比例積分形微分(PID)制御ループ420と、スイッチモード電源430と、オプションのリニアレギュレータ450と、D級増幅器460と、共振回路480とを含む。幾つかの実施形態では、電圧源106の様々な構成要素はモジュールに統合でき、このモジュールは支持ベース140に差し込むことができる。これによって電圧源106は、故障した場合、別のモジュールと容易に交換できる。代替的には、幾つかの実施形態では、電圧源106の1つ又は複数の構成要素は、別のモジュールとして実装でき、それだけで交換可能である。幾つかの実施形態では、幾つか又はすべての構成要素は支持ベース140に直接取り付け可能である。図4Aに示した各構成要素は、比較的低コストで普通に市販されているため、電圧源106は経済的に製作できる。
動作時に、PID制御ループ420は、変調信号412を変調信号発生器410から受信し、これは電圧源106の構成要素であってもよいし、そうでなくてもよい。図4Bは変調信号412の一例を示し、信号の振幅の変化(すなわち包絡線)が時間の関数として示されている。変調信号412の包絡線は、出力高電圧RF信号482の包絡線と概ね相関している。変調信号412に基づいて、PID制御ループ420は、制御信号422及び422をそれぞれスイッチモード電源430及びリニアレギュレータ450(存在していれば)に送信する。
スイッチモード電源430は、バッテリ(例えば、リチウムイオン、リチウムポリマー、ニッケルカドミウム、ニッケル金属水素電池)を含むことができる電源440から入力電力信号442を受け取るよう構成されている。電源440により供給される電圧は、典型的には約0.5Vと約13Vとの間である。一例として、この電圧は約7.2Vである。スイッチモード電源430は制御信号422に基づいて入力電力信号422を増幅し、リニアレギュレータ450(存在していれば)に送信される被変調電圧信号432が得られる。被変調電圧信号432は図4Cに示されている。被変調電圧信号432は、典型的には0Vと約25Vとの間の振幅を備えている。
幾つかの実施形態では、スイッチモード電源430は、効率的な電力増幅用のスイッチングレギュレータを含んでいる。動作時には、入力電力信号422は、出力電圧信号432より低くても、同一でも、上回ってもよい。この特徴は電源440がバッテリであるときは有利である。線形電源とは異なり、スイッチモード電源430(非線形増幅器である)は、様々な増幅状態間をスイッチングする際に殆ど又は全く電力を損失しないため、高い電力変換をもたらす。さらに、スイッチモード電源430は、典型的には、より小型の内部変圧器のサイズ及び重量によって、従来の電力増幅器 コンパクトで軽量である。
リニアレギュレータ450は、オプションで電圧源106に含まれる。リニアレギュレータ150が電圧源106に存在しない場合は、修正電圧信号432がスイッチモード電源430からD級増幅器460に直接送られる。代替的には、リニアレギュレータ450が電圧源106に存在する場合は、リニアレギュレータ450は、スイッチモード電源430からの被変調電圧信号432とPID制御ループ420からの制御信号424との両方を受信する。
リニアレギュレータ450は、修正電圧信号432の不規則性をフィルタする機能を果たす。リニアレギュレータ450からのフィルタされた電圧信号442は、D級増幅器460によって受信される。典型的には、リニアレギュレータ450は低ドロップアウト電圧レギュレータであり、この場合、一定の低ドロップ電圧によって、電圧源106の全体的効率がリニアレギュレータ450の存在によって僅かしか低下しないことが保証される。幾つかの実施形態では、リニアレギュレータ450により受信される制御信号422を用いて、出力電圧信号442の包絡線を、特定の物質の質量スペクトル測定に適するように修正する。
基準波発生器470は、オプションで電圧源106に含まれる。設けられていれば、基準波発生器470はD級増幅器460に基準波信号472を与える。一般に、基準波信号472は、高周波域の周波数(例えば、約0.1 MHzから約50 MHzまで)を備える。例えば、幾つかの実施形態では、基準波信号472は、1 MHz以上(例えば2 MHz以上、4MHz以上、6MHz以上、8MHz以上、15MHz以上、30 MHz以上)の周波数を備えることができる。
図4Dは基準波信号472の一例を示す。図4Dでは、基準波信号472の一例は方形波である。より一般的には、基準波発生器470は、様々な異なる波形の基準波信号472を発生できる。幾つかの実施形態では、例えば、基準波信号472は、三角波形、正弦波形、又は正弦波に近い波形の何れかに一致できる。
D級増幅器460は、基準波信号472(基準波発生器470が設けられている場合)とフィルタされた電圧信号442(又は、リニアレギュレータ450が設けられていない場合は修正電圧信号432)との両方を受信し、これら入力信号から被変調RF信号462を発生する。図4Eは被変調RF信号462の一例を示す。この例では、信号462の周期は約10ミリ秒である。信号462の振幅は約0Vと約30Vとの間を変化する。RF信号462の搬送波の周波数は、基準波信号472の周波数と同じ又は概ね同じである。RF信号462の包絡線(例えば、図4Eの破線で示した)は、フィルタされた電圧信号442(又は修正電圧信号432)の包絡線と同じ又は概ね同じである。
図4Fは、D級増幅器460の一実施形態の概略図である。D級増幅器460は一対のトランジスタ441を含む。D級増幅器460内で、基準波信号472は、フィルタされた電圧信号442(又は修正電圧信号432)の包絡線により変調されてRF信号462を発生する。
RF信号462は、図4Fにも概略的に示されている共振回路480により受信される。共振回路480は、インダクタ486及びコンデンサ488を含む。幾つかの実施形態では、インダクタ486及びコンデンサ488の位置は図4Fに示した位置に対して入れ換えてもよい。インダクタ486のインダクタンス及びコンデンサ488の静電容量の値は、一般に、回路480の共振周波数が基準波信号472の周波数に実質的に一致するように選択される。
幾つかの実施形態では、共振回路480は、60以上(例えば、80以上、100以上)のQ因子を備える。RF信号462が共振回路480に印加されると、高電圧RF信号482がコンデンサ488で発生される。一般に、高電圧RF信号482の波形は、高電圧RF信号482の振幅がRF信号462の振幅よりかなり大きいことを除いて、RF信号462の波形と同じ又は概ね同じである。例えば、幾つかの実施形態では、高電圧RF信号482の最大振幅は100V以上(例えば500V以上、1000V以上、1500V以上、2000V以上)である。一般に、共振回路480の高いQ因子によって、RF信号462で大きな振幅の電圧が発生される。
D級増幅器460と共振回路480との組合せは、低電力消費量及び周波数調節を含む多くの理由で有利である。さらなる重要な利点は、純粋な正弦基準波信号472が動作に必要ではないという事実に起因する。実際に、D級増幅器460と共振回路480との組合せは、様々な波形形状の基準波信号を用いることができる。方形波のような一定の波形形状は、しばしば純粋な正弦波形よりも高い忠実度を備えるように生成できる。結果的に、D級増幅器460と共振回路480との組合せによって、安定度が高い基準波信号での動作が可能となる。
図4Aに戻ると、高電圧RF信号482は、オプションであって電圧源106に設けられていてもいなくてもよい信号モニタ490によって監視できる。信号モニタ490は、一般に高電圧RF信号482の低振幅レプリカであるフィードバック信号484を共振回路480から受信する。フィードバック信号484は典型的には高電圧RF信号482よりもかなり振幅が小さいが、フィードバック信号484の振幅は、一般に、高電圧RF信号482の振幅にすべての点で比例する。
信号モニタ490により共振回路から受け取られるフィードバック信号は、制御信号492としてPID制御ループ420及び/又は基準波発生器470に送信できる。変調信号492に基づいて、PID制御ループ420は修正制御信号422及び422を、それぞれスイッチモード電源430及びリニアレギュレータ450に送信でき、高電圧RF信号482の波形及び振幅を最適化する。例えば、PID制御ループ420は、制御信号492に基づいて修正電圧信号432の包絡線を修正でき、高電圧RF信号482の振幅を最大化する。
幾つかの実施形態では、共振回路480の共振周波数は、基準波信号472の周波数に完全には一致しないことがある。例えば、これは、インダクタ486のインダクタンス及び/又はコンデンサ488のキャパシタンスの不正確な値が原因となることがある。さらに、インダクタ486のインダクタンス及び/又はコンデンサ488のキャパシタンスは経時的に変化することもある。これは、例えば、D級増幅器460がRF信号462の出力周波数を歪ませ、RF信号462の周波数が基準信号波472に一致しなくなることから発生することもある。この不一致は、共振回路480がRF信号462の効果的な共振器でなくなるので電源106の効率を減少させてしまうことがある。
この不一致を補償するため幾つかの技法を実施できる。幾つかの実施形態では、基準波信号472の周波数は、基準波発生器470によって走査でき、同時に制御信号492を監視できる。基準波発生器470は、基準波信号472の最適周波数を、制御信号492の振幅を最大化させる周波数として選択できる。
幾つかの実施形態では、コンデンサ488のキャパシタンスは共振回路480において変化させ、どの容量値が制御信号492の振幅を最大化させるかを特定できる。この目的では、コンデンサ488は可変コンデンサとすることができる。
周波数の不一致を補償するための上述の技法は、直接的にハードウェアに、ソフトウェアに、又はそれら両方に実装すればよい。例えば、コントローラ108は、周波数の不一致を補償するためこれら方法の1つ又は複数を実行するよう構成できる。コントローラ108は、これら方法を、自動的に且つ/又は周波数の一致を連続的に最適化するため継続的に実行するよう構成できる。代替的には、コントローラ108は、ユーザから指示を受けたとき、例えばユーザがユーザインターフェース112の制御手段を起動した時のみにこれらの方法を実行するように構成できる。本明細書で開示された周波数の不一致を補償するための技法は、コントローラ108によって実行されると、典型的には5分以内(例えば、3分以内、2分以内、1分以内)に完了する。
高電圧RF信号482が、検出器118による検出のため捕捉イオンを選択的に排出するためイオントラップ104に(例えば、イオントラップ104の中央電極302に)印加される。イオントラップ104を用いて分析可能な質量電荷比の範囲は、他の要因に加えてRF信号462のプロファイル(例えば、包絡線及び最大振幅)に依存する。RF信号482のこうした特徴を変化させることで、電圧源106は、(コントローラ108の制御下で)分析される質量電荷比の範囲を選択できる。
幾つかの実施形態では、電圧源106は、多数の基準波発生器470及び/又は多数の共振回路480を含むことができる。動作時には、特定の基準波発生器470と特定の共振回路480との組合せは、イオントラップ104を使った質量電荷比の特定の範囲の分析に適した高電圧RF信号482を発生させるようにコントローラ108が選択できる。分析する質量電荷比の範囲を変更するには、コントローラ108は異なる基準波発生器470及び/又は共振回路480を選択する。
V. 検出器
検出器118は、イオントラップ104を出る荷電粒子を検出するよう構成される。これら荷電粒子は、正イオン、負イオン、電子、又はそれらの組合せでよい。
多種多様な異なる検出器を分析計100で使用できる。図5Aは、ファラデーカップ500を含む検出器118の一実施形態を示す。ファラデーカップ500は、円形ベース502と円柱形側壁504を備える。一般に、ファラデーカップ500の形状及び寸法は、分析計100の感度及び分解度を最適化するように変化させることができる。
例えば、ベース502は、正方形、長方形、楕円形、円形、又は他の任意の規則的若しくは不規則な形状を含む様々な断面形状を備えることができる。ベース502は、例えば平坦又は湾曲形状でよい。
図5Bは、ファラデーカップ500の側面図を示す。幾つかの実施形態では、側壁504の長さ506は、20 mm以下(例えば、10 mm以下、5 mm以下、2 mm以下、1 mm以下、更には0 mm)とする。一般に、長さ506は、分析計100のコンパクトさを維持すること、荷電粒子の検出時に必要な選択性を与えること、及び分解度を含む様々な基準に従って選択できる。幾つかの実施形態では、側壁504は、ベース502の断面形状に一致している。しかし、より一般的には、側壁504は、ベース502の形状に一致する必要はなく、ベース502の形状とは異なる様々な断面形状を備えることができる。さらに、側壁504は円柱形である必要はない。幾つかの実施形態では、例えば、側壁504は、ファラデーカップ500の軸方向に沿って湾曲していてもよい。
一般に、ファラデーカップ500は比較的小型でよい。ファラデーカップ500の最大寸法は、当該カップの任意の2点間の最大直線距離に対応する。幾つかの実施形態では、例えば、ファラデーカップ500の最大寸法は、30 mm以下(例えば、20 mm以下、10 mm以下、5 mm以下、3 mm以下)である。
典型的には、ベース502の厚さ及び/又は側壁504の厚さは、荷電粒子の効率的な検出を保証するよう選択される。幾つかの実施形態では、ベース502の厚さ及び/又は側壁504の厚さは、5 mm以下(例えば、3 mm以下、2 mm以下、1 mm以下)である。
ファラデーカップ500の側壁504及びベース502は、一般に1つ又複数の金属製である。ファラデーカップ500を作製するの使用できる金属には、例えば、銅、アルミ、及び銀が含まれる。幾つかの実施形態では、ファラデーカップ500は、ベース502及び/又は側壁504の表面に1つ又複数の被覆層を含む。こうした1つ又複数の被覆層は、銅、アルミ、銀、及び金などの材料から作製できる。
分析計100の動作時に、荷電粒子がイオントラップ104から排出されると、これら荷電粒子はファラデーカップ500にドリフト又は加速して入ることができる。一旦ファラデーカップ500に入ると、荷電粒子はファラデーカップ500の表面(ベース502及び/又は側壁504の表面)に捕捉される。ベース502又は側壁504の何れかに捕捉された荷電粒子は電流を発生し、この電流は測定され(例えば、検出器118内の電気回路により)、コントローラ108に報告される。これら荷電粒子がイオンであれば、測定される電流はイオン電流であり、その振幅は測定された電流イオンの存在量に比例する。
検体の質量スペクトルを得るために、イオントラップ104の中央電極302に印加される電位の振幅を変化させ(例えば、可変振幅信号、高電圧RF信号482が印加される)、イオントラップ104から特定の質量電荷比のイオンを選択的に排出する。異なる質量電荷比に対応する振幅のそれぞれの変化に関し、選択された質量電荷比の排出イオンに対応するイオン電流が、ファラデーカップ500を用いて測定される。電極302に印加された電位の関数としての測定イオン電流は、質量スペクトルに対応し、コントローラ108に報告される。幾つかの実施形態では、コントローラ108は印加された電圧を、アルゴリズム及び/又はイオントラップ104の較正情報に基づいて特定の質量電荷比に変換する。
エンドキャップ電極306を介したイオントラップ104からの排出に続いて、荷電粒子は、検出器118とエンドキャップ電極306との間に電界を形成することで検出器118に衝突するように加速できる。幾つかの実施形態では、検出器118が例えばファラデーカップ500を含む場合は、ファラデーカップ500の導電性表面は電源106により確立された大地電位に維持され、正の電位がエンドキャップ電極306に印加される。これらの印加される電位により、正イオンはエンドキャップ電極306からファラデーカップ500の接地された導電性表面に向けて反発される。さらに、エンドキャップ電極306を通過する電子はエンドキャップ電極306に引き付けられるので、ファラデーカップ500には衝突しない。従って、この構成は信号対雑音比を向上させる。より一般的には、この構成では、ファラデーカップ500はエンドキャップ電極306よりも低い電位にある限りは、大地以外の任意電位とすることができる。
幾つかの実施形態では、負の荷電粒子(例えば、負イオン及び/又は電子)を検出することが望ましい。こうした粒子を検出するため、ファラデーカップ500はエンドキャップ電極306よりも高電圧にバイアスされて、負の荷電粒子をファラデーカップ500に引き付ける。
幾つかの実施形態では、検出器118は、2つの領域が絶縁領域で分離されているファラデーカップ500を含むことができる。異なるバイアス電位を各領域に加えることができる。例えば、図5Cは、絶縁領域530で分離されている2つの導電性領域510及び520を含むファラデーカップ500を示す。エンドキャップ電極306を接地し、正及び負のバイアス電圧をそれぞれ領域510及び520に印加することで、領域510は負の荷電粒子を検出でき、領域520は正の荷電粒子を検出できる。この構成は、正に帯電したイオンも負に帯電したイオンも同時に検出できるので、質量スペクトルの測定時に付加的な情報を提供できる。代替的に、正に帯電したイオン及び負に帯電したイオンの測定は、バイアス電位を印加することで領域510及び520の何れかをまず活性化させ、次に他方の領域を活性化させることで順番に行うことができる。代替的には、幾つかの実施形態では、検出器118は2つのファラデーカップ500を含むことができ、この場合、正に帯電したイオン及び負に帯電したイオンの測定のため、異なるバイアス電圧が各ファラデーカップ500に印加される。
幾つかの実施形態では、検出器118はハウジング122に直接固定してもよい。例えば、図5Cは、ハウジング122が、ファラデーカップ500に接触した1つ又複数の電極550及び552を含むことを示している。代替的には、幾つかの実施形態では、1つ又複数の電極550及び552はファラデーカップ500に直接取り付けてもよい。幾つかの実施形態では、1つの電極を用いてファラデーカップ500にバイアスをかけ、別の電極を用いてファラデーカップ500が発生する電流を測定できる。代替的には、幾つかの実施形態では、このバイアス電圧の印加と電流測定は同一電極を使用して実行できる。
幾つかの実施形態では、ハウジング122は、検出器118が容易に着脱できるように構成できる。例えば、図5Cに示したように、ハウジング122は、ファラデーカップ500が保持要素540(例えば、ネジ又は他の留め具)により固定し、保持できる開口を含む。これは、ファラデーカップ500が破損又は汚染された際に特に有利であり、これは、上述したように質量スペクトル測定時にファントムピークを検出することで判定できる。汚染されたファラデーカップ500は、カップ500をハウジング122の開口から取り外し、交換品を取り付けることで取り替えできる。汚染されたファラデーカップは修理するかその場で清浄化できる。例えば、ファラデーカップ500は、ファラデーカップ500の表面の粘着性粒子が気化されるように携帯用の炉で焼くことができる。清浄化済みのファラデーカップはハウジング122に再び挿入すればよい。こうして取り替えできることによって、分析計100の幾つかの構成要素が汚染されたとしても分析計の中断時間が最小限に抑えられる。幾つかの実施形態では、汚染されたファラデーカップ500は、ハウジング122に取り付けたまま加熱することで(例えば、大電流をベース502及び側壁504に印加することで)清浄化できる。ベース502及び/又は側壁504の表面から放出された汚染物粒子は、圧力調整サブシステム120により分析計から除去できる。
幾つかの実施形態では、第I節で述べたように、ファラデーカップ500は、差し込み可能で交換可能なモジュール148の構成要素として実装されている。このモジュール式構成において、ファラデーカップ500は、例えば、導電物質プレートに設けた凹部として形成できる。このプレートはイオントラップ104のようなモジュール148の別の構成要素に直接取り付けて、エンドキャップ電極306の開口部がこの凹部と位置合わせされ、イオントラップ104から排出されたイオンがファラデーカップに直接入るようにしてもよい。異なるファラデーカップ寸法を備えたモジュールを用いて異なる種類の検体を選択的に検出できる。
図5Dは、ファラデーカップ検出器500のアレイを含む検出器118を示し、これは一体的に形成してもよいしそうでなくてもよい。検出器のアレイは、例えば、イオントラップ104がイオンチャンバ330のアレイを含む場合に有利となりうる。エンドキャップ電極306は、各イオンチャンバと位置合わせした複数のアパーチャ560を含むことができ、各チャンバから排出されたイオンは実質的にアパーチャ560の1つのみを通過する。アパーチャ560の1つを通過した後は、イオンはアレイのファラデーカップ検出器500の何れかに入射する。イオンの排出及び検出に関するアレイに基づいたこのアプローチは、排出されたイオンが検出される効率をかなり向上する。図5Dに示したアレイの幾何学形状では、各ファラデーカップ500のサイズは、エンドキャップ電極306に形成された各アパーチャ560のサイズに適合できる。
幾つかの実施形態では、バイアスを掛けた反発力グリッド又は磁界をファラデーカップ500の前に配置して、イオントラップ104からの排出イオンの測定を歪ませうる二次荷電粒子放出を防止できる。代替的には、幾つかの実施形態では、ファラデーカップ500からの二次電子放出を、排出イオンの検出のために使用できる。
これまでの説明は低電力動作及びコンパクトなサイズによるファラデーカップ検出器に注目してきたが、より一般的には様々な他の検出器を分析計100で使用できる。例えば、他の適切な検出器には、電子増倍器、光電子増倍管、シンチレーション検出器、イメージ電流検出器、デイリー検出器、蛍光体に基づいた検出器(phosphor-based detectors)、及び入射荷電粒子が光子を発生し、それらが検出される他の検出器(すなわち、電荷・光子エネルギー変換機構を利用する検出器)が含まれる。
VI. 圧力調整サブシステム
圧力調整サブシステム120は、一般に、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118の内部容量を含むガス経路128内のガス圧を調整するよう構成される。第I節で上述したように、分析計100の動作時には、圧力調整サブシステム120は、分析計100内のガス圧を、100ミリトール以上(例えば200ミリトール以上、500ミリトール以上、700ミリトール以上、1トール以上、2トール以上、5トール以上、10トール以上)及び/又は100トール以下(例えば80トール以下、60トール以下、50トール以下、40トール以下、30トール以下、20トール以下)に維持する。
幾つかの実施形態では、圧力調整サブシステム120は、分析計100の幾つかの構成要素内のガス圧を上記の範囲に維持する。例えば、圧力調整サブシステム120は、イオン源102及び/又はイオントラップ104及び/又は検出器118のガス圧を、100ミリトールと100トールとの間(例えば100ミリトールと10トールの間、200ミリトールと10トールの間、500ミリトールと10トールの間、500ミリトールと50トールの間、500ミリトールと100トールとの間)に維持する。幾つかの実施形態では、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118との内の少なくとも2つのガス圧は同一である。幾つかの実施形態では、3つすべての構成要素のガス圧は同一である。
幾つかの実施形態では、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118との内の少なくとも2つのガス圧は比較的僅かな量で異なる。例えば、圧力調整サブシステム120は、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118との少なくとも2つのガス圧の差を、100ミリトール以下(例えば50ミリトール以下、40ミリトール以下、30ミリトール以下、20ミリトール以下、10ミリトール以下、5ミリトール以下、1ミリトール以下)に維持できる。幾つかの実施形態では、イオン源102と、イオントラップ104と、検出器118のすべてのガス圧の差は、100ミリトール以下(例えば50ミリトール以下、40ミリトール以下、30ミリトール以下、20ミリトール以下、10ミリトール以下、5ミリトール以下、1ミリトール以下)である。
図6Aに示したように、圧力調整サブシステム120は、1つ又複数の交互配置スクロールフランジ602及び604を具備したポンプ容器606を備えたスクロールポンプ600を含むことができる。スクロールフランジ602と604との間の相対軌道運動は、ガス及び液体を捕捉し、ポンピング動作を導く。幾つかの実施形態では、スクロールフランジ604は固定できる一方、スクロールフランジ602は自転あり又はなしで偏心軌道を描いて回る。幾つかの実施形態では、両方のスクロールフランジ602及び604は、偏った回転中心で運動する。図6Bは、スクロールフランジ602の概略図を示す。スクロールフランジの幾何学形状の例は、伸開線、アルキメデスの螺線、及び混成曲線(hybrid curves)を含む(がそれらに限定されない)。
クロールフランジ602及び604の軌道運動.により、スクロールポンプ600は、動作時には非常に小さい振幅の振動及び低い騒音しか発生しない。従って、スクロールポンプ600は、質量スペクトル測定時に実質的に好ましくない影響をもたらすことなくイオントラップ104に直接接続できる。振動性結合をさらに低下させるため、軌道スクロールフランジ602は、単純な質量で平衡させることができる。スクロールポンプ600は運動部分がほとんど無く、非常に小さい振幅の振動しか発生しないので、そうしたポンプの信頼性は一般に非常に高い。
スクロールポンプ600は、典型的にはコンパクトなサイズで質量が小さい。幾つかの実施形態では、例えば、スクロールポンプ600の最大寸法(例えば、スクロールポンプ600上の任意の2点間の最大直線距離)は10 cm未満(例えば、8 cm未満、6 cm未満、5 cm未満、4 cm未満、3 cm未満、2 cm未満)である。幾つかの実施形態では、スクロールポンプ600の重さは、1.0 kg未満(例えば、0.8 kg未満、0.7 kg未満、0.6 kg未満、0.5 kg未満、0.4 kg未満、0.3 kg未満、0.2 kg未満)である。
スクロールポンプ600のサイズが小さいこと及び重量が軽いので、このスクロールポンプは様々な構成で分析計100に組み込むことができる。幾つかの実施形態では、例えば、図1D及び1Eで示したように、スクロールポンプ600(圧力調整サブシステム120の一部として)は、支持ベース140(例えば、プリント回路基板)に直接取り付け可能である。幾つかの実施形態では、スクロールポンプ600(圧力調整サブシステム120の一部として)は、差し込み可能で交換可能なモジュール148の構成要素として実装でき、さらに、イオン源102、イオントラップ104、及び/又は検出器118のようなモジュール148の1つ又複数の他の構成要素に直接取り付けできる。
図6Aは、プリント回路基板608に直接取り付けられたスクロールポンプ600を示す。ポンプ導入口610は、マニホルド121のポンプ導入口620に直接接続されている。スクロールポンプ600は、固着要素630及び固定要素632により基板608に直接固定でき、これらは、ポンプ導入口610及び620から1cm以上(例えば、2cm以上、3cm以上、4cm以上)の箇所に位置決めでき、従ってポンプ600と基板608との間の振動性結合を減少させる。代替的には、ポンプ600と基板608との直接接続でなく、幾つかの実施形態では、管(柔軟な又は硬質の管)によってポンプ導入口610とポンプ導入口620とを接続してもよい。
圧力調整サブシステム120での使用に適したスクロールポンプは、例えばアジレント・テクノロジーズ社(カリフォルニア州サンタクララ)から市販されている。スクロールポンプに加え、他のポンプを圧力調整サブシステム120で使用してもよい。適切なポンプの例としては、膜ポンプ、膜ポンプ、及びルーツ送風機ポンプが含まれる。
小型で単一のメカニカルポンプの使用により、従来の質量分析計で採用されているポンピング機構に比べて幾つかの利点がもたらされる。特に、従来の質量分析計は、典型的には少なくとも1つが高回転数で動作する多数のポンプを使用する。高回転数で動作する大型のメカニカルポンプは、分析計の他の構成要素に結合されうる機械振動を発生し、測定情報に望ましくないノイズを発生させてしまう。さらに、こうした振動から構成要素を隔離する処置が講じられていても、その隔離機構は、典型的には分析計のサイズを増加させてしまい、時として大きく増加させることがある。さらに、高回転数で動作する大型ポンプは大量の電力を消費する。従って、従来の質量分析は、これら要件を満たすため大型の電源を含み、さらにそうした計器のサイズを大きくしてしまう。
対照的に、スクロールポンプなどの単一のメカニカルポンプを本明細書で開示した分析計で使用して、システムの各構成要素内のガス圧を制御できる。このメカニカルポンプを比較的低回転数で動作することで、分析計の他の構成要素への振動の機械的結合は大きく減少又は取り除かれる。さらに、低回転数で動作することで、ポンプが消費する電力の量も十分小さいため、その低い要件は電圧源106によって満足可能である。
幾つかの実施形態では、この単一のメカニカルポンプを毎分6000サイクル未満(例えば、毎分5000サイクル未満、毎分4000サイクル未満、毎分3000サイクル未満、毎分2000サイクル未満)の回数で動作することで、このポンプは、分析計100内部で所望のガス圧を維持することができ、同時に、その電力消費要件は電圧源106により満たすことができる。
VII. ハウジング
第I節で上述したように、質量分析計100は、当該分析計の構成要素を囲むハウジング122を含む。図7Aは、ハウジング122の一実施形態の概略図を示す。試料導入口124はハウジング122内に一体化され、ガス粒子をガス経路128に導入するよう構成されている。表示装置116及びユーザインターフェース112もハウジング122に一体化されている。
幾つかの実施形態では、表示装置116は、アクティブ又はパッシブ液晶又は発光ダイオード(LED)表示装置である。幾つかの実施形態では、表示装置116はタッチスクリーン表示装置である。コントローラ108が表示装置116に接続されており、様々な情報を質量分析計100のユーザに表示装置116を用いて表示できる。表示される情報は、例えば、分析計100で走査される1つ又複数の物質の同一性に関する情報を含むことができる。この情報は、質量分析(例えば、質量電荷比の関数として検出器118により検出されたイオンの存在量の測定値)も含むことができる。さらに、表示される情報は、質量分析計100に関する動作パラメータ及び情報(例えば、測定されたイオン電流、質量分析計100の様々な構成要素に印加される電圧、分析計100に取り付けられた電流モジュール148に関連付けられた名前及び/又は識別子、分析計100により同定された物質に関連付けられた警告、並びに分析計100の動作に関する設定されたユーザ基本設定)を含むことができる。設定されたユーザ基本設定及び動作設定などの情報は記憶装置114に格納して、表示のためにコントローラ108により取り出し可能である。
幾つかの実施形態では、図7Aに示したように、ユーザインターフェース112は、ハウジング122に組み込まれた一連の制御手段を含む。これら制御手段は、分析計100のユーザが作動できるものであり、ボタン、スライダ、ロッカー、スイッチ、及び他の類似の制御手段を含むことができる。ユーザインターフェース112の制御手段を作動することで、分析計100のユーザは様々な機能を起動できる。例えば、幾つかの実施形態では、これら制御手段のいずれかを作動させると分析計100による走査が開始され、その間に分析計は試料(例えばガス粒子)を試料導入口124内に引き込み、それらガス粒子からイオンを発生し、さらにイオントラップ104及び検出器118を使ってそれらイオンを捕捉且つ分析する。幾つかの実施形態では、何れかの制御手段が作動されると、新たな操作実行前に分析計100がリセットされる。幾つかの実施形態では、分析計100は、ユーザにより作動されると(例えば、モジュール148及び/又は試料導入口124に接続されたフィルタなどの分析計100の構成要素の何れかを交換した後)分析計100を再始動させる制御手段を含む。
表示装置116がタッチスクリーン表示装置であれば、ユーザインターフェース112の一部又は全部でさえ、表示装置116上の一連のタッチスクリーン制御手段として実装することもできる。すなわち、ユーザインターフェース112の制御手段の一部又は全部は、指で表示装置116を触ることによりユーザが作動できる表示装置116の接触感応式領域とすることができる。
第I節で上述したように、幾つかの実施形態では、質量分析計100は、イオン源102、イオントラップ104、及び(オプションで)検出器118を含む交換可能で差し込み可能なモジュール148を含むことができる。質量分析計100が差し込み可能なモジュール148を含む場合、ハウジング122は、ユーザがハウジング122の内部にアクセスしてハウジング122を分解することなくモジュール148を取り換え可能とする開口を含むことができる。図7Bは、差し込み可能なモジュール148を含む質量分析計100の断面図である。図7Bにおいて、ハウジング122は、開口702と開口702を塞ぐ仕切り704とを含む。モジュール148を交換する場合、分析計100のユーザは仕切り704を開いて、分析計100の内部を露出させることができる。仕切り704は、差し込み可能なモジュール148に直接アクセス可能とするように配置されるので、ユーザはハウジング122を分解することなく、支持ベース140からモジュール148を取り外し、別のモジュールを替わりに取り付け可能となる。すると、ユーザは仕切り704を固定することによって開口702を再び塞ぐことができる。
図7Bでは、仕切り704は引き込み式ドアの形式で実現される。しかし、さらに一般的には、様々な仕切りを用いてハウジング122の開口を塞ぐことができる。例えば、幾つかの実施形態では、仕切り704は、ハウジング122から完全に取り外し可能な蓋として実現してもよい。
一般的には、質量分析計100は、様々な異なる試料導入口124を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、試料導入口124は、分析計100の周囲環境からガス経路128内にガス粒子を直接引き込むよう構成されたアパーチャを含む。試料導入口124は、1つ又複数のフィルタ706を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、フィルタ706はHEPAフィルタであり、粉塵及び他の固体粒子が分析計100に入ることを防止する。幾つかの実施形態では、フィルタ706は、水分子を捕捉する分子ふるい材料を含む。
上述したように、従来の質量分析は低い内部ガス圧で動作する。低いガス圧を維持するため、従来の質量分析計は、試料導入口に取り付けられた1つ又複数のフィルタを含む。これらフィルタは選択的であり、大気ガス粒子(例えば、窒素及び/又は酸素分子)などの特定種類の物質を濾過して質量分析計に入らないようにする。これらフィルタは、生物学的分子などの特定種類の検体用に特に適合させてもよく、他の種類の分子を濾過して除去できる。結果として、従来の質量分析計で使用されるフィルタは、ピンチ弁や、物質の選択的な移動を可能とするポリジメチルシロキサンなどの材料製の薄膜フィルタを含むことができ、流入するガス粒子の流れを濾過してこの流れから特定種類の粒子を除去する。こうしたフィルタがなければ、従来の質量分析計は機能しないが、それは低いガス圧が維持できず、この質量分析計に導入された粒子の一部が幾つかの構成要素の動作を妨げてしまうはずだからである。一例として、従来の質量分析計で使用される熱イオン源は、多少でも濃縮された空中酸素の存在下では動作しない。
従来の質量分析計で特定物質用フィルタを使用するには幾つかの欠点がある。例えば、これらフィルタは選択的なので、煩雑な作業となりうるフィルタ及び/又は動作条件の変更なしでは少ない種類の検体しか分析できない。特に、質量分析計に熟練していないユーザにとっては、適切な選択的フィルタを選ぶことによって特定の検体用に分析計の再構成をすることは困難となる場合がある。さらに、従来の質量分析計で使用されるフィルタは、検体粒子がフィルタを介して瞬時に拡散しないので時間遅れを引き起こしてしまう。フィルタの選択性及び検体の濃度次第で、検体が最初に接触した時間と、質量スペクトル情報を生成するのに十分な量の検体イオンが検出される時間との間にかなりの遅れが発生することがある。
しかし、本明細書で開示した質量分析計はより高圧で動作するので、薄膜フィルタなどのフィルタを含めて分析計内で低いガス圧を維持する必要はない。従来の質量分析計で使用される種類のフィルタなしで動作することで、本明細書で開示した分析計は、大幅な再構成なしでより多数の異なる種類の試料を分析でき、且つより速く分析を実行できる。さらに、本明細書で開示した分析計の構成要素は窒素及び酸素のような大気ガスには一般に感度が低く、これらガスは対象となる検体粒子とともに分析計に導入でき、これが分析の速度を大きく向上し、分析計の他の構成要素の動作要件(例えば、圧力調整サブシステム120のポンピング負荷)を低下させる。
従って、一般に、本明細書で開示した分析計で使用されるフィルタ(例えばフィルタ706)は、試料導入口124に入るガス粒子の流れから大気ガス粒子(例えば、窒素分子及び酸素分子)を濾過しない。特に、フィルタ706は、当該フィルタに接触する大気ガス粒子の少なくとも95%以上を通過させる。
異なる種類のフィルタ706が交換可能であり、汚れたり効果が薄れたりすれば分析計100のユーザにより交換できる。幾つかの実施形態では、質量分析計100は多数のフィルタ706を含むことができ、ユーザは、分析中の試料の性質次第で、これらフィルタの任意の1つ又複数を選択的に取り付けることができる。
幾つかの実施形態では、試料導入口124は、分析される物質を直接注入によって受け取るよう構成できる。例えば、フィルタ706は、試料導入口124に取り付けられた試料注入ポートと取り換えてもよい。分析計100の使用時に、この試料注入ポートを介して試料導入口124に注入される物質は、ガス経路128に導入され、イオン源102によりイオン化され、イオントラップ104及び検出器118により分析される。
幾つかの実施形態では、分析計100は、ハウジング122に取り付けて異なる種類の検体を分析計100に導入できる様々な試料導入モジュールを含むことができる。試料導入モジュール750が図7Cに概略的に示されている。モジュール750は、ハウジング122内の電極752がモジュール750内の対応する電極と電気接続を確立するようにハウジング122に取り付けられる。電極752は、支持ベース140上のコントローラ108と電圧源106とに接続される。電圧源106は電極752を介してモジュール750に電力を供給でき、コントローラ108及びはモジュール750との間で信号を送受信する。モジュール750がハウジング122に取り付けられると(例えば、ねじ山又はキー固定接続、磁気取付機構、又は様々な他の取付機構の何れかを使用して)、電圧源106は電力を自動的に供給してモジュール750を作動させる。一旦作動されると、モジュール750はその同一性をコントローラ108に報告し、コントローラは作動したモジュールに関する情報を表示装置116で表示できる。コントローラ108は、構成設定及び他の動作パラメータを記憶装置114から受信でき、よって分析計100は、モジュール750を介して導入された試料を分析するように自動的に構成される。
一般に、様々な試料導入モジュールを分析計100と共に使用できる。例えば、幾つかの実施形態では、モジュール750は蒸気熱脱離モジュールである。幾つかの実施形態では、モジュール750は低温プラズマモジュールである。幾つかの実施形態では、モジュール750はエレクトロスプレーイオン化モジュールである。これら各モジュールは分析計100で交換可能に使用でき、異なる多種多様な試料を分析できる。
交換可能モジュール750に加え、分析計100は様々なセンサを含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、質量分析計100は、コントローラ108に結合されるリミットセンサ708を含むことができる。リミットセンサ708は、質量分析計の周囲の環境におけるガス粒子を検出し、ガス濃度をコントローラ108に報告する。ユーザによる質量分析計100の動作時に、コントローラ108はリミットセンサ708により測定されるガスの期間及び濃度を監視し、ユーザのガス粒子への曝露が閾値濃度又は閾値時間制限を超過する場合は、警告をユーザに(例えば、表示装置116を介して)表示する。閾値曝露濃度及び時間制限に関する情報は記憶装置114に格納して、例えば、コントローラ108により取り出し可能である。質量分析計100で使用可能な例示的リミットセンサは、可燃性/低爆発レベルガスセンサ、光イオン化センサ、電気化学センサ、並びに温度及び湿度センサを含む。
幾つかの実施形態では、質量分析計100は爆発危険センサ710を含むことができる。爆発危険センサ710はコントローラ108に接続されるもので、分析計100の近傍における爆発生物質の存在を検出する。様々な爆発生物質の閾値濃度は記憶装置114に格納し、コントローラ108により取り出し可能である。分析計100の動作時に、センサ710により測定された1つ又複数の爆発生物質の濃度が閾値を上回る場合、コントローラ108は、表示装置116を介して分析計100のユーザに警告メッセージを表示できる。幾つかの実施形態では、この警告メッセージは、この1つ又複数の爆発生物質の着火を防止するために、ユーザに分析計100の使用中止か、それを補助遮蔽体(例えばケージ)内で使用するよう助言できる。質量分析計100で使用可能な爆発危険センサは、例えば、MSA(ペンシルベニア州カンタベリータウンシップ)及びRAEシステムズ(カリフォルニア州サンホセ)から入手可能な可燃物センサを含む。
ハウジング122は、一般に、片手又は両手を使ってユーザが快適に操作できるよう成形されている。一般に、ハウジング122は多種多様な異なる形状を備えることができる。しかし、本明細書で開示した分析計100の構成要素の選択と組込によって、ハウジングは一般的にコンパクトになる。図7A及び7Bに示したように、全体的な形状の如何を問わず、ハウジング122は、当該ハウジングの外表面上の任意の2点間の最長直線距離に対応する最大寸法a1を備える。幾つかの実施形態では、a1は35 cm以下(例えば、30 cm以下、25 cm以下、20 cm以下、15 cm以下、10 cm以下、8 cm以下、6 cm以下、4 cm以下)である。
さらに、分析計100内の構成要素の選択によって、分析計100の全体的な重量は従来の質量分析計に比べてかなり低くなる。幾つかの実施形態では、分析計100の全体的な重量は4.5 kg以下(例えば、4.0 kg以下、3.0 kg以下、2.0 kg以下、1.5 kg以下、1.0 kg以下、0.5 kg以下)である。
VIII. 動作モード
一般に、質量分析計100は、様々な異なる動作モードに従って動作する。図8Aは、試料を走査し且つ分析するための異なる動作モードで実行される一般的な一連のステップを示す。第1のステップ802では、試料の走査が開始される。幾つかの実施形態では、この走査は分析計100のユーザにより開始される。例えば、分析計100は、ユーザが単にユーザインターフェース112の制御手段を作動することによって、試料の走査を開始できる「ワンタッチ」モードで動作するよう構成できる。図8Bは、ユーザインターフェース112が走査を開始するための制御手段820を含む分析計100の一実施形態を示す。制御手段820がユーザにより作動されると、試料(図8Bではガス粒子822として示した)の走査が開始される。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、1つ又複数のセンサの読みに基づいて自動的に走査を開始できる。例えば、分析計100が光イオン化検出器及び/又はLELセンサなどのリミットセンサを備える場合、コントローラ108はこれらセンサからの信号を監視できる。例えば、これらセンサが対象となりうる物質が検出されたことを示した場合、コントローラ108は走査を開始できる。一般に、自動的に走査を開始するため、多種多様な異なるセンサに基づく事象又は条件をコントローラ108が使用できる。
幾つかの実施形態では、分析計100は、「連続走査」モードで実行するよう構成できる。分析計100が連続走査モードに置かれると、走査が固定間隔の経過毎に繰り返し開始される。この時間間隔はユーザにより構成可能であり、その時間間隔の値は記憶装置114に格納し、コントローラ108により取り出し可能である。よって、図8Aのステップ802では、分析装置100が連続走査モードにあるときは、走査は分析計によって開始される。
この走査が開始された後、試料はステップ804で分析計100に導入される。様々な異なる方法を用いて試料を分析計に導入できる。幾つかの実施形態では、試料がガス粒子(例えば、図8Bのガス粒子822)からなる場合は、コントローラ108はバルブ129を作動してこのバルブを開け、ガス粒子を分析計100内(例えば、ガス経路128内)に導入する。試料導入口124がフィルタ706を含む場合は、ガス粒子はこのフィルタを通過し、これが粉塵及び他の固体物質をガス粒子の流れから除去する。上述のように、圧力調整サブシステムが、ガス経路128内では大気圧未満のガス圧を維持する。結果的に、バルブ129が開くと、ガス粒子822は、ガス経路128と分析計100の周囲の環境との間の差圧によって試料導入口124内に引き込まれる。代替的に又は付加的に、圧力調整サブシステム120は、ガス粒子を分析計100内に流入させてもよい。
幾つかの実施形態では、試料は直接注入によって分析計100に導入できる。第VII節で上述したように、分析計100は試料導入口124に接続された試料注入ポートを含むことができる。この試料注入ポートによって、分析計100のユーザは試料を分析のため試料導入口124に直接注入できるようになる。一旦注入されれば、試料はガス経路128に入る。
幾つかの実施形態では、部分的にイオン化された状態の試料は、静電力又は電流力によって分析計100内に引き込むことができる。例えば、適切な電位を分析計100の電極に印加することで、荷電粒子を(例えば、試料導入口124を介して)分析計100内に加速できる。
続いて、ステップ806において、試料はイオン源102内でイオン化される。上述したように、試料導入口124は、分析計100の他の構成要素に対して、ガス経路128に沿った異なる位置に配置できる。例えば、幾つかの実施形態では、試料導入口124は、分析計100に導入されたガス粒子が、試料導入口124から先ずイオントラップ104に入るように配置できる。例えば、幾つかの実施形態では、試料導入口124は、分析計100に導入されたガス粒子が、試料導入口124から先ずイオン源102に入るように配置できる。幾つかの実施形態では、試料導入口124は、ガス粒子が、試料導入口124から先ずイ検出器118に入るように配置できる。さらに、試料導入口124は、分析計100に入るガス粒子が、イオン源102と/又はイオントラップ104と/又は検出器118との間の地点からガス経路128に入るように配置できる。
試料(例えば、ガス粒子822として)が、ガス経路128に沿った地点で分析計100に導入された後、ガス粒子の一部はイオン源102に入る。ガス粒子822がイオン源102に直接入るように試料導入口124が配置されていない場合は、ガス粒子822のイオン源102内への移動は拡散によって起こる。イオン源102に入れば、第II節で開示したように、コントローラ108はイオン源102を作動させ、ガス粒子をイオン化させる。
次に、ステップ806で発生されたイオンは、ステップ808でイオントラップ104内に捕捉される。第II節で上述したように、イオン源102からイオントラップ104へのイオンの移動は、一般にイオン源102とイオントラップ104との間で発生される電界の影響で起こる。一旦イオントラップ104内に入れば、イオンはこのトラップ内部の電界によって捕捉され、中央電極302の開口内で且つエンドキャップ電極304と306との間で循環する。イオントラップ104内の電界はコントローラ108の制御下で電圧源106により発生され、これは適切な電位を電極302、304、及び306に印加して捕捉電界を発生する。
ステップ810では、イオントラップ104内の捕捉され循環するイオンはこのトラップから選択的に排出される。第III節で上述したように、トラップ104からのイオンの選択的排出は、コントローラ108の制御下で行われ、コントローラは、中央電極302に印加されるRF電圧の振幅を変化させるための信号を電圧源106に送信する。この電位の振幅が変化すると、中央電極302の内部開口の電界の振幅も変化する。さらに、中央電極302内の電界の振幅が変化すると、特定の質量電荷比を備えた循環イオンが中央電極302内の軌道から落ち、エンドキャップ電極306の1つ又複数のアパーチャを介してイオントラップ104から排出される。コントローラ108は、定義された関数に従って印加された電位の振幅を掃引して(例えば、線形振幅掃引)、特定の質量電荷比のイオンをイオントラップ104から検出器118内に選択的に排出するように構成される。印加電圧が掃引される速度はコントローラ108によって自動的に求めることができ(例えば、分析計100の目標分解能を達成するため)、且つ/又は分析計100のユーザが設定できる。
これらイオンがイオントラップ104から選択的に排出されると、これらはステップ812において検出器118によって検出される。第V節で開示したように、多種多様な異なる検出器を使用してこれらイオンを検出できる。例えば、幾つかの実施形態では、検出器118は、これら排出されたイオンを検出するのに使用されるファラデーカップを含む。
イオントラップ104内で中央電極302に印加される電荷の振幅により選択される各質量電荷比に関して、検出器118は、選択された質量電荷比で検出されたイオンの存在量に関連した電流を測定する。測定された電流はコントローラ108に送られる。結果として、コントローラ108が検出器118から受け取る情報は、これらイオンの質量電荷比の関数として検出されたイオンの存在量に対応する。この情報は、試料の質量スペクトルに対応する。
より一般的には、コントローラ108は、イオンの質量電荷比に従ってイオンを検出するよう構成され、これはコントローラ108が、イオンの検出に相関し且つイオンの質量電荷比に関連した信号を検出又は受信することを意味する。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、イオンに関する情報を質量電荷比の直接の関数として検出又は受け取る。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、イオンに関する情報を、例えばイオントラップ104に印加された電位など、イオンの質量電荷比に関連した別の量の関数として受け取る。これらすべての実施形態において、コントローラ108はイオンを質量電荷比に従って検出する。
ステップ814では、検出器118から受信した情報はコントローラ108によって分析される。一般に、この情報を分析するため、コントローラ108(例えば、コントローラ108内の電子プロセッサ110)は試料の質量スペクトルを基準情報と比較して、試料の質量スペクトルが何れかの既知物質を示しているかどうかを判断する。この基準情報は、例えば記憶装置114に格納し、分析を行うためコントローラ108により取り出し可能である。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、遠隔位置に格納されたデータベースから基準情報を取り出してももよい。例えば、検出器118により測定された情報の分析で使用するため、コントローラ108は、通信インターフェース117を用いてそうしたデータベースと通信して既知物質の質量スペクトルを得ることができる。
検出器118により測定された情報は、試料の同一性に関する情報を求めるためコントローラ108によって分析される。試料が多数の化合物を含む場合、コントローラ108は、検出器118からの測定情報を基準情報と比較することで、これら多数の物質の一部又は全部の同定に関する情報を求めることができる。
コントローラ108は、1つの試料の同一性に関する様々な情報を求めるように構成されている。例えば、幾つかの実施形態では、この情報は、試料の慣用名、IUPAC名、CAS番号、UN番号、及び/又はその化学式の1つ又複数を含む。幾つかの実施形態では、試料の同一性に関する情報は、その試料が特定種類の物質(例えば、爆発物、高エネルギー物質、燃料、酸化剤、強酸又は強塩基、毒物)に属するか否かの情報を含む。幾つかの実施形態では、この情報は、試料に関連付けられた危険、取扱い指示、安全警告、及び報告指示に関する情報を含むことができる。幾つかの実施形態では、この情報は、分析計により測定された試料の濃度又はレベルに関する情報を含むことができる。
幾つかの実施形態では、この情報は、試料が目標物質に一致するか否かの指示を含むことができる。例えば、走査がステップ802で開始されると、分析計100のユーザは分析計を目標モードに置くことができ、その場合、分析計100は試料を走査して、特に試料が一連の同定されている目標物質の何れかに一致するかどうかを判断する。コントローラ108は、デジタルフィルタリング及びエキスパートシステムなどの様々なデータ分析技法を使用して測定質量スペクトル情報内の特定のスペクトル特徴を探すことができる。特定の目標物質に関して、コントローラ108は、特定の質量電荷比におけるピークなどの、その目標物質の特性を示す質量スペクトル特徴を探すことができる。特定のスペクトル特徴が測定質量スペクトル情報から欠けていれば、又はその測定情報が出現すべきでないスペクトル特徴を含んでいれば、コントローラ108により特定された試料の同一性に関する情報は、試料が目標物質に一致しないという指示を含む可能性がある。コントローラ108は、多数の目標物質に関してこうした情報を特定するよう構成できる。
試料分析が完了した後、コントローラ108は、この試料に関する情報をステップ816で、表示装置116を用いてユーザに表示する。表示される情報は、分析計100の動作モード及びユーザの動作によって異なる。第I節で開示したように、分析計100は、質量スペクトルの解釈に関して特別の訓練を受けていない人により使用できるよう構成されている。こうした訓練を受けていない人には、完全な質量スペクトル(例えば、質量電荷比の関数としてのイオンの存在量)はほとんど意味不明であることが多い。結果として、分析計100は、ステップ816において、試料の測定された質量スペクトルをユーザに表示しないように構成される。その代わり、分析計100は、ステップ814で決定された試料の同一性に関する情報一部のみ(又は全部)をユーザに表示する。特別な訓練を受けていないユーザにとっては、試料の同一性に関する情報が最も意味がある。
試料の同一性に関する情報に加え、コントローラ108は他の情報も表示できる。例えば、幾つかの実施形態では、分析計100は、既知の危険物質のデータベース(例えば、記憶装置に格納されているか、通信インターフェース117を介してアクセスできる)にアクセスできる。試料の同一性に関する情報が危険物質のデータベースに存在していれば、コントローラ108は警戒メッセージ及び/又は付加的な情報をユーザに表示できる。この警戒メッセージは、例えば、試料の相対的な危険性に関する情報を含むことができる。この付加的情報は、例えば、ユーザ又は他者のこの物質への曝露を制限する動作及び他のセキュリティ関連動作を含む、ユーザがとることを考慮すべき動作を含むことができる。
幾つかの実施形態では、分析計100は、制御手段が作動されたときに試料の質量スペクトルをユーザに表示するように構成される。図8Bを参照すると、ユーザインターフェース112は、ユーザにより作動されると、試料の質量スペクトルを表示装置116で表示する制御手段824を含む。制御手段824によって、質量スペクトルの解釈に関する訓練を受けた人は、検出器118により測定された情報を直接閲覧できる。この情報は、例えば、測定された質量スペクトル情報と基準情報との間の明確な一致が得られない場合に有用となりうる。さらに、分析計100が研究室での分析に使用される場合は、例えば、ユーザは特定のイオンのフラグメンテーションなどの、より詳細な化学情報を推論するために制御手段824を作動できる。幾つかの実施形態では、分析計100は、制御手段824がユーザによって作動された時のみ且つ/又は試料の同一性に関する情報が表示された後のみに試料の質量スペクトルを表示するように構成される。すなわち、分析計100を構成することで、通常の動作時には詳細な質量スペクトル情報がユーザに表示されず、制御手段824の作動によってのみユーザがこの詳細情報を閲覧可能とすることができる。
幾つかの実施形態では、制御手段824は、異なる2つのモードの動作を可能とするように構成できる。例えば、制御手段824が分析計100のユーザにより第1状態に作動されると、試料の同一性に関する情報は分析が完了したときにユーザに表示される。制御手段824が第2状態に作動されると、質量スペクトル情報(例えば、質量電荷比の関数としてのイオンの存在量)が表示される。従って、制御手段824は、分析装置の動作時にユーザが所望の情報表示モードを選択できる二路スイッチの形式とすることもできる。幾つかの実施形態では、制御手段824が第2状態に作動されると、分析計100は、質量スペクトル情報に加えて、試料の同一性に関する情報を表示するよう構成できる。
ステップ816では、フローチャート800に示した処理が終了する。この走査が、ステップ802においてユーザが制御手段820を作動することによって開始された場合は、分析計100は、次の走査を開始するため制御手段820が作動されるのを待つ。代替的には、分析計100が連続走査モードになっている場合は、分析計100は定められた時間間隔を待機し、その時間間隔が経過した後に自動的に次の走査を開始するか、センサ信号などの別の外部トリガを待つ。
上述したように、一般に、分析計100は大気ガス粒子を濾過するフィルタは使用しない。結果として、検体の粒子がこの分析計に導入されると、大気ガス粒子も導入され、分析計100内部でガス粒子の混合物が形成される。分析計100は従来の質量分析計の内部圧力よりもかなり高い圧力で動作するため、又、分析計100の構成要素は大気ガス粒子に対する感度が概して比較的低いため、本明細書で開示された分析計を用いて従来の質量分析計では不可能な方法で検体を導入できる。特に、検体粒子の導入は、当該検体の粒子と大気ガス粒子を濾過することなく、それら粒子の混合物を連続的に引き込むことによって実行可能である。幾つかの実施形態では、分析計100は、ガス粒子の混合物を試料導入口124を介してガス経路128内に、少なくとも10秒(例えば、少なくとも15秒、少なくとも20 秒、少なくとも30秒、少なくとも45秒、少なくとも1分、少なくとも1.5分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分、少なくとも5分)以上にわたり連続的に導入するよう構成できる。
検体の粒子が延長時間にわたって連続的に導入されると、分析計100はイオン源102のデューティサイクルを調節して、イオン源102が延長時間にわたり(例えば、検体粒子が導入される期間の一部又は全部)イオンを発生する。上述したように、イオン源102のデューティサイクルは、一般に、イオンが発生される期間を制御するように調節できる(例えば、図2Iの期間274を調節することで)。幾つかの実施形態では、分析計100は、デューティサイクルを調節してイオンがイオン源102により10秒以上(例えば20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、1分以上、1.5分以上、2分以上、3分以上、4分以上、5分以上)にわたって連続的に発生されるよう構成される。
上述したように、分析計100は、従来の質量分析計に典型的に見られる電力消費量が大きい構成要素を除去することで、コンパクトさと低電力動作との両方を達成している。これらの構成要素のうち、真空ポンプとりわけターボ分子ポンプは重く、大量の電力を消費する。分析計100はこうしたポンプは含まず、結果として従来の質量分析計よりもかなり軽く、電力消費量がかなり少なくなる。
圧力調整サブシステム120を使用することで、質量分析計100は、従来の質量分析計の内部ガス圧よりかなり高い内部ガス圧で動作する。一般に、より高圧では、衝突により誘起される線の広がり及びイオン・中性電荷交換を含む様々な仕組みによって、質量分析計の分解度が低下する。従って、可能な限り高分解度の質量スペクトルを得るため、質量分析計内の内部ガス圧は可能な限り低く維持すべきである。
しかし、上述したように、試料の同一性に関する情報を含む試料に関する有用な情報は、質量分析計の分解度が可能な限り最高の値より低くても試料の質量電荷比を測定することによって得られ且つユーザに与えることができる。特に、測定された質量スペクトル情報と基準情報との間の十分に正確な一致は、質量分析計100が従来の質量分析計よりも高い内部ガス圧で、従ってより低い分解度で動作する場合にも達成できる。
質量分析計100は従来の質量分析計よりも低い分解度で動作するため、幾つかの実施形態では、質量分析計100は、その全体的な電力消費量をさらに低下させるため幾つかの構成要素の動作を適応的に調節するようにさらに構成できる。測定された質量スペクトル情報における目標分解度を達成するため、又は質量スペクトル情報と既知の物質又は条件に関する基準情報との間の十分な一致を達成するために、構成要素は適応的に動作される。
図8Cは、測定された質量スペクトル情報と既知の物質又は条件に関する基準情報との間の十分な一致を達成するための質量分析計100の適応性動作の一連のステップを含むフローチャート850を示す。目標分解度は、質量分析計100のユーザが設定するか(例えば、ユーザ定義設定によって又は測定された質量スペクトル情報の目視検査によって)、コントローラ108が自動的に設定できる。第1のステップ852では、ステップ802に関連して上述したものと同じ態様で走査が開始される。続いて、ステップ854では、試料が、ステップ804に関連して上述したものと同じ態様で分析計100に導入される。ステップ856では、ステップ806に関連して上述したように、イオンを発生するため試料粒子がイオン化される。
続いて、ステップ858において、イオン源102によりイオン化された試料イオンは、検出器118を用いて検出される。ステップ858は、イオンを捕捉又は選択的に排出するためイオントラップ104を作動することなく実行できる。その代わり、ステップ858では、イオン源102により発生されたイオンは、イオントラップ104のエンドキャップ電極304及び306を直接通過して、検出器118に入射する。電圧源106は、イオン源102及び検出器118の電極に電位を印加するよう構成でき、イオンの移動を促進するためイオン源102と検出器118との間に電界を形成できる。
次に、ステップ860では、コントローラ108は、閾値イオン電流が検出器118により検出されたか否かを判断する。閾値イオン電流は、分析計100のユーザ定義設定でもよく且つ/又はユーザ調整可能設定でもよい。代替的には、閾値イオン電流は、例えば、コントローラ108による検出器118における暗電流及び/又はノイズの測定に基づいて分析計100によって自動的に判断してもよい。閾値電流に達していない場合は、試料のイオン化及び試料イオンの検出はステップ856及び858で継続する。さらに、閾値電流に達している場合は、コントローラ108はステップ862でイオントラップ104を作動させ、イオンをトラップして検出器118内に選択的に排出する。これら排出されたイオンは検出器118により測定され、その質量スペクトル情報は、試料の同一性に関する情報を求めるためステップ864でコントローラ108によって分析される。
ステップ864の分析の一部として、コントローラ108は、試料の測定された質量スペクトル情報が既知の物質又は条件から生じる確率を求めることができる。ステップ866では、コントローラ108は、求めた確率を閾値確率と比較してこの質量スペクトル情報の分析が分析計100の分解度によって制限されているかどうかを判断する。この確率が閾値よりも大きい場合は、コントローラ108は試料に関する情報(例えば、試料の同一性及び/又は試料の同一性に関する情報)を表示装置116を使って表示し、この処理はステップ870で終了する。
しかし、ステップ866においてこの確率が閾値確率値より低い場合、この質量スペクトル情報の分析は分析計100の分解度によって制限されているのかもしれない。分析計100の分解度を向上させるため、コントローラ108は、処理がステップ862に戻る前に分析計の構成を適応的に調節する。
コントローラ108は、分析計100の分解度を向上するための様々な方法でその構成を調整するよう構成されている。幾つかの実施形態では、コントローラ108は、バッファガスをガス経路128に導入するためバッファガス源150を作動するよう構成されている。導入されたバッファガス粒子は、例えば、窒素分子、水素分子、又はヘリウム、アルゴン、ネオン、若しくはクリプトンなどの希ガスの原子を含むことができる。バッファガス源150は、バッファガス粒子を収容した交換可能シリンダ及び制御線127aを介してコントローラ108と接続されたバルブ又はバッファガス発生器を含むことができる。コントローラ108は、制御された量のバッファガス粒子がガス経路128に放出されるようにバッファガス源150のバルブを作動するよう構成できる。バッファガス粒子は、一旦ガス経路128内に放出されると、イオン源102により発生されたイオンと混合し、イオンの捕捉と検出器118内への選択的な排出を促進し、よって分析計100の分解能を向上させる。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、分析計100の内部ガス圧を低下させて分析計100の分解能を増加させる。内部ガス圧を低下させるため、コントローラ108は制御線127dを介して圧力調整サブシステム120を作動する。代替的に又は付加的に、コントローラ108は内部ガス圧を低下させるためバルブ129を閉じることもできる。幾つかの実施形態では、バルブ129は、特定のデューティサイクルのパルス方式で交互に開閉して内部ガス圧を低下させることができる。幾つかの実施形態では、分析計100は多数の試料導入口を含むことができ、バルブ129は試料導入口124を封止するため閉じることができ、同時に直径がより小さい試料導入口に設けた別のインラインバルブを開くことができる。異なる試料導入口を用いて分析計100内のガス圧を低下させることで、ポンピング速度の変更は必要ない。分析計100の内部ガス圧を低下させると、イオン源102、イオントラップ104、及び検出器118内のイオン間の衝突頻度を減少させることで、分析計100の分解度を増加させる。
幾つかの実施形態では、分析計100の分解度を向上させるため、コントローラ108は、中央電極302に印加される電位が変化する頻度を増加させる。印加電位が変化する率を減少させることで、電極302の内部電界が変化する率も減少する。結果的に、イオンがイオントラップ104から排出される選択性が増加し、分析計100の分解度が向上する。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、分析計100の分解度を変化させるため、イオントラップ104内の軸方向電界周波数又は振幅を変更するよう構成されている。イオントラップ104内の軸方向電界の変化がイオントラップの排出境界を移動させることで、分析計の高質量範囲を拡張又は減少させ且つ分析計100の分解能及び/又は分解度を修正できる。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、イオン源102のデューティサイクルを変化させることで分析計100の分解度を増大させるよう構成されている。イオン化時間の減少は、質量分析計100の分解度を向上することが実験的に観察されている。よって、図2Iのグラフ270を参照すると、バイアス電位272がイオン源102に印加される期間274を減少させる(例えば、イオン源102のデューティサイクルを減少させる)ことによって、分析計100の分解度を向上させることができる。
反対に、分析計100の分解度を低下させることも一定の状況では有用となりうる。例えば、図2Iのグラフ270及び280を参照すると、バイアス電位272がイオン源102に印加される期間274を増加させる(例えば、イオン源102のデューティサイクルを増加させる)ことによって、従ってイオントラップ104の電極302に印加される電位の振幅が増加される期間(グラフ280の期間284及び286)を減少させることで、分析計100の分解度は減少するが、分析計100の感度は向上し、よって、分析計100を用いて測定される質量スペクトル情報の信号対雑音比が増大する。こうして増大した感度は、非常に濃度が低い特定の物質を検出しようとする際に特に有用となりうる。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、イオントラップ104の電極302に印加される電位を増加させる期間(例えば、図2Iの間隔286)を増加させることによって分析計100の分解度を増加させるよう構成されている。掃引期間を増加することで、循環イオンはイオントラップ104からより低速で排出されるので、測定される質量スペクトル情報の分解度が増加する。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、電極302に印加される電位の振幅掃引に関連付けられたランププロフィルを調節することで分析計100の分解度を変化させるよう構成されている。図2Iのグラフ280に示したように、電極302に印加される電位の振幅は、典型的には線形ランプ関数に従って増加する。しかし、より一般的には、コントローラ108は、電極302に印加される電位の振幅を異なるランプ関数に従って増加させるように構成できる。例えば、このランププロフィルは、印加される電位が、一連の異なる線形ランププロフィル(それぞれが異なる率の該電位増加を表す)に従って増加するようにコントローラ108によって調節できる。別の例では、このランププロフィルは、電極302に印加される電位の振幅が、指数関数又は多項式関数のような非線形関数に従って増加するように調節できる。
上述したように、コントローラ108は、分析計100の分解度を変化させるため上述の動作の1つ又は複数を実行するよう構成されている。これら動作が実行される順序は、分析計100によって決定されてもよいし、ユーザ基本設定により決定されてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、分析計100のユーザは、分析計100の分解度を増大させるため且つ/又は電力消費量を減少させるため、分析計が上述のステップのどれを、どの順序で実行するかを指定できる。こうしたユーザ選択は記憶装置114で一組の基本設定として格納できる。代替的に、幾つかの実施形態では、コントローラ108により実行される動作の順序は、コントローラ108の論理回路に永久的に符号化してもよいし、記憶装置114に非修正可能設定として記憶してもよい。
幾つかの実施形態では、コントローラ108は、他の考慮すべき事項に基づいて動作の順序を決定できる。例えば、分析計100の消費電力を確実に最小限にするため、分析計100の分解能を向上させるためコントローラ108が実行する動作の順序は、各動作の結果としての電力消費の増加に従って決定できる。コントローラ108は、上述の各動作がどのように全体的な電力消費を増加させるかに関する情報を用いて構成でき、この電力消費情報に基づいて適切な動作の順序を選択でき、電力消費の増加が最小になる動作が最初に行われる。代替的には、コントローラ108は、各動作に関連付けられた電力消費の増加を測定するよう構成でき、さらに、測定された電力消費値に基づいて動作の順序を選択できる。
フローチャート850では、分析計100の構成の調節は、測定された質量スペクトル情報が既知の基準情報に一致する確率に基づいているが、分析計100の構成の調節は他の判断基準に基づいていてもよい。幾つかの実施形態では、例えば、分析計100の構成の調節は、分析計100の目標分解度が達成されているか否かに基づくこともできる。ステップ864では、コントローラ108は、測定された質量スペクトル情報に基づいて(例えば、分析計100の測定ウィンドウ内の単一のイオンピークのFWHMに基づいて)分析計100の実際の分解度を求める。ステップ866では、実際の分解度がコントローラ108によって分析計100の目標分解度に比較される。実際の分解度が目標分解度より低ければ、ステップ872において、コントローラ108が上述したように分析計100の分解度を向上させるため、当該分析計の構成を調整する。
ハードウェア、ソフトウェア、電子処理
本明細書に開示された任意の方法ステップ、特徴、及び/又は属性は、コントローラ108(例えば、コントローラ108の電子プロセッサ110)及び/又は標準的なプログラミング技法に基づいてプログラムを実行する1つ又は複数の付加的な電子プロセッサ(例えば、コンピュータ又はプログラム済み集積回路)により実行できる。こうしたプログラムは、プロセッサ、データ格納システム(メモリ及び/又は記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力装置、及び表示装置又はプリンタなどの少なくとも1つの出力装置をそれぞれが含んだ、プログラム可能計算装置又は特別に設計された集積回路上で実行できるように設計される。プログラムコードは入力データに適用して、関数を実行し且つ1つ又は複数の出力装置に適用される出力情報を生成する。そうした各コンピュータプログラムは、高レベル手続き言語若しくはオブジェクト指向プログラミング言語又はアセンブリ若しくは機械言語で実現するのが好ましい。さらに、こうした言語はコンパイル済み言語でも翻訳言語でもよい。こうした各コンピュータプログラムは、コンピュータに読み出されると、当該コンピュータのプロセッサに本明細書で記載した分析と制御機能を実行させる、コンピュータ読み出し可能記憶媒体(例えば、CD-ROM又は磁気ディスク)上に格納できる。
他の実施形態
幾つかの実施形態では、分析計100は、例えば、最大1気圧(例えば760トール)の高ガス圧でも動作するよう構成される。すなわち、イオン源102、イオントラップ104、及び/又は検出器118の1つ又は複数の内部ガス圧は、分析計100がイオンの質量電荷比に従ってイオンを検出する際は、100トールと760トールとの間(例えば、200トール以上、300トール以上、400トール以上、500トール以上、600トール以上)である。
本明細書で開示した幾つかの構成要素は、最大1気圧(及びそれ以上の圧力)の圧力での動作に既に適している。例えば、グロー放電イオン源などの本明細書で開示されたイオン源の幾つかは、ほとんど又は全く改造することなく最大1気圧の圧力で動作できる。さらに、ファラデー検出器などのある種の検出器(例えば、ファラデーカップ検出器及びそのアレイ)は、ほとんど又は全く改造することなく最大1気圧の圧力で動作できる。
本明細書で開示したイオントラップは、最大1気圧の圧力で動作するよう改造できる。例えば、図3Aを参照すると、1気圧の圧力で動作させるには、イオントラップ104の寸法c0は、1.5ミクロンと0.5ミクロンとの間(例えば、1.5ミクロンと0.7ミクロンとの間、1.2ミクロンと0.5ミクロンとの間、1.2ミクロンと0.8ミクロンとの間、概ね1ミクロン)に減少すべきである。さらに、最大1気圧のガス圧で動作させるには、電圧源106は、例えば1.0 GHz以上の周波数であるGHz範囲の周波数(例えば1.2 GHz以上、1.4 GHz以上、1.6 GHz以上、2.0 GH以上、5.0 GHz以上、又はそれを上回る値)で繰り返す掃引電圧をイオントラップ104に加えるよう改造できる。イオントラップ104及び電圧源106がこのように改造されると、質量分析計100は最大1気圧の圧力で動作できるようになり、圧力調整サブシステム120の使用が大きく短縮される。幾つかの実施形態では、例えば、分析計100がポンプを持たない分析計となるよう、分析計100から圧力調整サブシステム120を削除することも可能となりうる。
幾つかの実施形態を説明してきた。しかしながら、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく多くの修正が可能なことは理解されるであろう。従って、これ以外の実施形態も次の特許請求の範囲に入る。

Claims (44)

  1. イオン源と、
    イオントラップと、
    イオン検出器と、
    ガス圧調整サブシステムとを含む質量分析計であって、
    前記質量分析計の動作時に、
    前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成され、
    前記イオン検出器は、前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出するよう構成された、質量分析計。
  2. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオントラップ及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  3. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源及び前記イオントラップにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  4. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  5. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  6. 前記イオン源はグロー放電イオン化源を含む、請求項1に記載の質量分析計。
  7. 前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて前記ガス圧を制御するよう構成されたガスポンプを含む、請求項1に記載の質量分析計。
  8. 前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて前記ガス圧を制御するために前記ガスポンプを作動するコントローラをさらに含む、請求項7に記載の質量分析計。
  9. 前記ガスポンプはスクロールポンプを含む、請求項7に記載の質量分析計。
  10. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて500ミリトールと10トールとの間のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  11. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて差が10トール未満のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  12. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において差が10トール未満のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  13. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて同一のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  14. 動作時に、前記ガス圧調整サブシステムは、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において同一のガス圧を維持するよう構成された、請求項1に記載の質量分析計。
  15. ガス経路であって、前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器が接続されたガス経路と、
    前記ガス経路に接続されたガス導入口であって、動作時に、
    分析されるガス粒子が前記ガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され、
    前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子の圧力が、100ミリトールと100トールとの間となるように構成されたガス導入口とをさらに含む、請求項1に記載の質量分析計。
  16. 前記ガス導入口は、動作時に、前記分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含むガス粒子の混合物が前記ガス導入口内に引き込まれるよう構成されており、前記ガス粒子の混合物は、前記ガス経路内に導入される前に大気ガス粒子を除去するために濾過されない、請求項15に記載の質量分析計。
  17. 前記ガス経路に接続された試料ガス導入口と、
    前記ガス経路に接続されたバッファガス導入口とをさらに含み、
    前記質量分析計の動作時に、
    分析されるガス粒子が前記試料ガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され、
    バッファガス粒子が前記バッファガス導入口を介して前記ガス経路内に導入され、且つ
    前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子と前記バッファガス粒子との組合せ圧力が100ミリトールと100トールとの間となるように、前記試料ガス導入口及び前記バッファガス導入口が構成されている、請求項1に記載の質量分析計。
  18. 前記バッファガス粒子は窒素分子を含む、請求項17に記載の質量分析計。
  19. 前記バッファガス粒子は希ガス分子を含む、請求項17に記載の質量分析計。
  20. 前記イオン源及び前記イオントラップが第1の複数電極を含むハウジングに囲われており、前記質量分析計は、前記第1の複数電極に解放可能に係合するよう構成された第2の複数電極を含む支持ベースをさらに含み、前記ハウジングが、繰り返し前記支持ベースに接続可能で且つ前記支持ベースから切り離し可能である、請求項1に記載の質量分析計。
  21. 前記第1の複数電極が前記第2の複数電極に係合すると前記ハウジングを前記支持ベースに固定するよう構成された取付機構をさらに含む、請求項20に質量分析計。
  22. 前記取付機構はクランプ及びカムの少なくとも1つを含む、請求項21に記載の質量分析計。
  23. 前記第1の複数電極はピンを含み、前記第2の複数電極は前記ピンを収容するよう構成されたソケットを含む、請求項20に質量分析計。
  24. 前記イオン検出器は前記ハウジング内に囲われている、請求項20に記載の質量分析計。
  25. 前記ガス圧調整サブシステムはポンプを含み、前記ポンプは前記ハウジング内に囲われている、請求項20に記載の質量分析計。
  26. 前記支持ベースは、
    前記第2の複数電極に結合された電圧源と、
    前記電圧源に接続されたコントローラとを含み、
    前記コントローラは、前記ハウジングが前記支持ベースに接続されると、前記イオン源と前記イオントラップとにさらに接続される、請求項20に記載の質量分析計。
  27. 動作時に、前記コントローラは、
    前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも1つ内の前記ガス圧を求め、
    前記ガス圧調整サブシステムを作動させることで前記ガス圧を制御するよう構成されている、請求項26に記載の質量分析計。
  28. 前記質量分析計の最大寸法は35cm未満である、請求項1に記載の質量分析計。
  29. 前記質量分析計の全質量は4.5kg未満である、請求項1に記載の質量分析計。
  30. 質量分析計のイオン源、イオントラップ、及びイオン検出器の少なくとも2つにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階と、
    前記イオン源により発生されたイオンを当該イオンの質量電荷比に従って検出する段階とを含む、方法。
  31. 前記イオントラップ及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  32. 前記イオン源及び前記イオントラップにおいて100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  33. 前記イオン源及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  34. 前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において100ミリトールと100トールとの間のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  35. 前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の前記少なくとも2つにおいて500ミリトールと10トールとの間のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  36. 前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて差が10トール未満のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  37. 前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において差が10トール未満のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  38. 前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器の少なくとも2つにおいて同一のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  39. 前記イオン源、前記イオントラップ、及び前記イオン検出器において同一のガス圧を維持する段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  40. 分析されるガス粒子を、前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器とを接続するガス経路内にガス導入口を介して導入する段階であって、前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子の圧力が、100ミリトールと100トールとの間となる段階をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  41. ガス粒子の混合物を、前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器とを接続するガス経路内にガス導入口を介して導入する段階をさらに含み、
    前記ガス粒子の混合物は分析されるガス粒子と大気ガス粒子とを含み、
    前記ガス粒子の混合物は、前記ガス経路内に導入される前に大気ガス粒子を除去するために濾過されない、請求項30に記載の方法。
  42. 分析されるガス粒子を、前記イオン源と、前記イオントラップと、前記イオン検出器とを接続するガス経路内に試料ガス導入口を介して導入する段階と、
    バッファガス粒子を前記ガス経路内にバッファガス導入口を介して導入する段階とをさらに含み、
    前記ガス経路内の前記分析されるガス粒子と前記バッファガス粒子との組合せ圧力が100ミリトールと100トールとの間である、請求項30に記載の方法。
  43. 前記バッファガス粒子は窒素分子を含む、請求項42に記載の方法。
  44. 前記バッファガス粒子は希ガス分子を含む、請求項42に記載の方法。
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