JP2016505729A - 電気絶縁紙、その製造方法およびそれから製造される物品 - Google Patents

電気絶縁紙、その製造方法およびそれから製造される物品 Download PDF

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Abstract

ポリエーテルイミドと他の合成繊維を含む繊維質基板、および該繊維質基板を含む電気絶縁紙と物品の製造方法が開示される。【選択図】なし

Description

本開示は電気絶縁紙に関する。
種々のタイプの電動機には、帯電部品と導線を非帯電部品および筐体要素から非導電的に分離するために電気絶縁紙が含まれている。電気絶縁紙は主に、セルロースとアラミド繊維の2つの材料の内の1つから製造される。これらの両材料ともかなりの吸湿性を有しており、これによって、材料の電気的特性および絶縁システムのシステムレベルの性能は悪影響を受ける。そのために、これらの材料を十分に乾燥させておくために、広範囲に及ぶ乾燥操作と製造上の配慮が必要である。
また、セルロース紙の熱性能には限界があるため、天然のセルロース系材料は、約120℃を超える温度への暴露の間、著しい長期分解を呈し始める。さらに、セルロースの分解メカニズムは、単に水による触媒作用だけではなく、副生成物として水も生成されるため、これによって、自己触媒的分解のカスケードサイクルが生じる。
一方、Nomexなどのアラミド繊維紙は、比較的高価であり、また、その多くの用途で「熱的に過剰品質」を表わしている。例えば、ほとんどのモータの絶縁システムは、クラスF(155℃)またはクラスH(180℃)であるが、Normexはクラス−220℃絶縁である。こうした用途では、Normex電気絶縁紙のフルの熱性能は設計要件ではなく、従って、Normexは、不要な過剰コストと考えられ得る。
従って、当分野では、セルロースやNormexより吸湿性がかなり低く、製造上高価でない電気グレード絶縁紙が求められている。こうした繊維が高温で作動できれば、さらに有利であろう。さらに、こうした電気紙の効率的な製造方法も求められている。
ある実施形態では、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約10〜約65質量%のポリイミド繊維と、約10〜約30質量%の、芳香族ポリアミドフィブリッドまたはポリカーボネート繊維から選択された繊維と、約25〜約70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、を含む繊維組成物の圧密化生成物であって、厚みが0超〜8ミル未満の圧密化生成物を含む繊維質基板が提供される。
別の実施形態では、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面を有する繊維質基板であって、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約20〜65質量%のポリイミド繊維と、約30〜70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含む繊維組成物の圧密化生成物を含み;約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、前記第1の面上に配置された第1の層と;約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、前記第2の面上に配置された第2の層と、を有する前記繊維質基板を含み、厚みが0超〜80ミル未満の電気紙が開示される。
さらなる実施形態では、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面を有する繊維質基板であって、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約75〜95質量の%ポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドを含む繊維組成物の圧密化生成物を含み;約35〜45質量%のポリイミド繊維と、約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第1の面上に配置された第1の層と;約35〜45質量%のポリイミド繊維と、約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第2の面上に配置された第2の層と、を有する繊維質基板を含み、厚みが0超〜80ミル未満の電気紙が開示される。
別の実施形態では、懸濁溶媒と;繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約20〜65質量%のポリイミド繊維と、約30〜70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含む繊維組成物と;を含むスラリーから層を形成するステップと、前記層から水を取り除くステップと、前記層を圧密化して繊維質基板を形成するステップと、を備える繊維質基板の調製プロセスであって、約75〜95質量%のポリイミド繊維と5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドの層を、前記圧密化するステップの前または後に、前記繊維質基板のそれぞれの表面に塗布し、基板とポリイミド層を共に圧密化ステップにかける調製プロセスが開示される。
別の実施形態では、上記の繊維質基板を含む物品が提供される。
本発明者らは、ポリエーテルイミド繊維と芳香族ポリアミドフィブリッドの組み合わせを用いて、耐湿性の電気グレード繊維質基板が製造できることを見出した。この紙は、主要ポリマーを連続フィルム状にプレスし補強繊維ポリマーは不溶繊維として残す圧密化が可能なように、十分に異なる溶融温度を有するように選択された数種類の異なるチョップド熱可塑性ポリマー繊維を混合することによって製造される。ある実施形態では、圧密化基板は、溶融ポリエーテルイミド繊維を含んでおり、この繊維が、紙内にフィルム状の構造を作る連続または半連続のマトリックスを形成する。
繊維質基板は、高温で熱安定であり得、高い機械的強度と弾性率、低クリープおよびまたは良好な化学的安定性を有し得る。
本明細書での「繊維」は、アスペクト比(長さ:直径)が2超の、具体的には5超の、10超の、あるいは100超の単一のフィラメントを有する種々の構造を含む。「繊維」はまた、フィブレット(非常に短い(1mm未満))、微粒子(径50μm未満)、フィブル化繊維(高度に分枝化し不規則であるため、高表面積を有する)およびフィブリル(繊維の小さな糸状要素)も含む。繊維径は、一般にはdtexもしくはdpfで報告される繊維番号で表される。「dtex」として報告される数値は、繊維10,000m当たりのグラム質量を表す。「dpf」値は、繊維当たりのデニールを表す。デニール系の測定は、2本のフィラメント繊維と単一のフィラメント繊維で行われ、dpf=総デニール/均一なフィラメント量である。デニール関連のいくつかの一般的な算出式は以下の通りである:
1デニール=9000m当たり1g=450m当たり0,05g=1m当たり0.111mg。
9,000mの測定は実際には厄介であり、通常、サンプル900mを秤量しそれを10倍してデニール重量を求める。
本明細書での「フィブリッド」は、非常に小さくて非顆粒状、繊維状またはフィルム状の粒子であって、その3つの寸法の内少なくとも1つの寸法が最大寸法に対して非常に小さく本質的には2次元粒子を意味する。この粒子の大きさは典型的には、長さ:0超〜0.3mm未満、幅:0超〜0.3mm未満、高さ:0超〜0.1mm未満である。フィブリッドの好適なサイズは100μm×100μmx0.1μmである。
フィブリッドは典型的には、ポリマー溶液をこの溶液の溶媒とは混合しない液体の凝固浴へ流すことにより作られる。ポリマーの凝固に伴って、ポリマー溶液の流れは、激しいせん断力と乱流の影響を受ける。本発明のフィブリッド材料は、メタ−もしくはパラ−アラミドあるいはこれらの混合物であってもよい。より具体的には、フィブリッドはパラ−アラミドである。こうしたアラミドフィブリッドは、乾燥前に、湿潤状態で使用でき、紙のフロック成分周りに物理的に絡みついたバインダーとして堆積され得る。
本特許出願においては種々の数値範囲が開示される。これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本出願に明記された種々の数値範囲は近似である。同じ成分あるいは特性に係る範囲はすべて終点を含むものであり、該終点は独立に組み合わせ可能である。
単数表現は量の限定を示すものではなく、参照されたアイテムが少なくとも1つ存在することを示すものである。本明細書での「その組み合わせ」とは、参照された要素の1つまたは複数と、任意に参照されていない類似の要素と、を含むものである。明細書全体に亘る「ある実施形態」、「別の実施形態」、「一部の実施形態」などは、該実施形態に関連して記載された特定の要素(例えば、特徴、構造、特性およびまたは特質)が記載の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、他の実施形態には含まれていてもいなくてもよい。また、記載された要素(類)は、種々の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせられ得るものと理解されるべきである。
化合物は標準命名法を用いて記載される。例えば、表記のいかなる基によっても置換されていない位置は、その価電子帯が表示された結合または水素原子によって満たされているものと理解されるべきである。2つの文字または記号間以外のダッシュ(「−」)は、置換基の結合点を示す。例えば、−CHOは、カルボニル基の炭素を経由して結合される。「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有するC1−30分枝鎖および直鎖の不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルキルの例としては、これに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、n−およびs−ヘキシル、n−およびs−ヘプチルおよびn−およびs−オクチルが挙げられる。「アリール」は、指定された数の炭素原子と、任意に1〜3個のヘテロ原子(例えばO、S、P、NまたはSi)と、を含む芳香族部分を意味し、これには、フェニル、トロポン、インダニルあるいはナフチルなどが含まれる。
別途明示がある場合を除き、本出願中の分子量はすべて質量平均分子量を指す。こうした分子量はすべてダルトン単位で表される。
別途明示がある場合を除き、すべてのASTM試験は、ASTM標準2003年版に基づくものである。
ポリエーテルイミドは、式(1)の構造単位を1超、例えば10〜1,000個あるいは10〜500個含む:
Figure 2016505729
式中、Rは、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、C6−20芳香族炭化水素基またはそのハロゲン化誘導体、直鎖または分枝鎖C2−20アルキレン基またはそのハロゲン化誘導体、C3−8シクロアルキレン基またはそのハロゲン化誘導体などの置換または未置換の二価有機基であり、特に式(2)の二価基である:
Figure 2016505729
式中、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、あるいは−C2y−(y:1〜5の整数)またはそのハロゲン化誘導体(パーフルオロアルキレン基を含む)である。ある実施形態では、Rは、m−フェニレンまたはp−フェニレンである。
さらに、式(1)のTは、−O−または式:−O−Z−O−基であり、ここで、−O−または−O−Z−O−基の二価結合は、3,3’、3,4’、4,3’または4,4’位置にある。式(1)のZ基は、同じであっても異なっていてもよく、置換または未置換の二価有機基であり、Zの原子価を超過しないという条件で、1〜6個のC1−8アルキル基、1〜8個のハロゲン原子あるいはこれらの組み合わせで任意に置換された芳香族C6−24単環式または多環式部分であってもよい。典型的なZ基は、式(3)のジヒドロキシ化合物から誘導された基を含む:
Figure 2016505729
式中、RとRは、同じであっても異なっていてもよく、例えば、ハロゲン原子または一価のC1−6アルキル基であり;pとqは,それぞれ独立に0〜4の整数であり;cは0〜4であり;Xは、ヒドロキシ置換芳香族基を結合する架橋基であり、この架橋基と各Cアリーレン基のヒドロキシ置換基は、Cアリーレン基上で互いにオルト、メタまたはパラ(特定的にはパラ)に配置されている。架橋基Xは、単結合、−O−、−S、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−またはC1−18有機架橋基であってもよい。C1−18有機架橋基は、環式であっても非環式であってもよく、また芳香族であっても非芳香族であってもよく、さらに、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、シリコンまたはリンなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。C1−18有機基は、これに結合するCアリーレン基が、それぞれ共通のアルキリデン炭素、またはC1−18有機架橋基の異なる炭素に結合されるように配置されていてもよい。特定の例では、Z基は式(3a)の構造の二価基である:
Figure 2016505729
式中、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、あるいは−C2y−(y:1〜5の整数)またはそのハロゲン化誘導体(パーフルオロアルキレン基を含む)である。特定の実施形態では、Zは、式(3a)のQが2,2−イソプロピリデンであるビスフェノールAから誘導される。
ある実施形態では、式(1)のRは、m−フェニレンまたはp−フェニレンであり、Tは、Zが式(3a)の二価基である−O−Z−Oである。あるいは、Rは、m−フェニレンまたはp−フェニレンであり、Tは、Zが式(3a)の二価基(Q:2,2−イソプロピリデン)である−O−Z−Oである。
一部の実施形態では、ポリエーテルイミドは、コポリマーであってもよく、例えば、式(1)の構造単位を含むポリエーテルイミドスルホンコポリマーであってもよい。式中、R基の少なくとも50モル%は、Qが−SO−である式(2)のものであり、残りのR基は、独立にp−フェニレン、m−フェニレンあるいはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせであり;Zは、2,2−(4−フェニレン)イソプロピリデンである。あるいは、該ポリエーテルイミドは任意に、追加のイミド構造単位、例えば式(4)のイミド単位を含む:
Figure 2016505729
式中、Rは式(1)で説明したものであり、Wは下式のリンカーである。
Figure 2016505729
これらの追加のイミド構造単位の量は、単位の合計数に対して0〜10モル%であり得、具体的には0〜5モル%であり得、より具体的には0〜2モル%であり得る。ある実施形態では、ポリエーテルイミド中には、さらなるイミド単位は存在しない。
ポリエーテルイミドは、式(5)の芳香族ビス(エーテル無水物)と
Figure 2016505729
式(6)の有機ジアミン
Figure 2016505729
(式中、TとRは上記に定義したもの)
との反応を含む当業者に周知のいずれかの方法で調製できる。ポリエーテルイミドのコポリマーは、式(5)の芳香族ビス(エーテル無水物)と、異なるビス(無水物)、例えばTがエーテル官能性を含まないビス(無水物)、例えばスルホンであるビス(無水物)と、の組み合わせを用いて製造できる。
ビス(無水物)の具体的な例としては、3,3−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物およびこれらの種々の組み合わせが挙げられる。
有機ジアミンの例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)スルフィド、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,4−ビス(p−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス−(4−アミノフェニル)スルホンおよびビス(4−アミノフェニル)エーテルが挙げられる。これらの化合物の組み合わせも使用できる。一部の実施形態では、有機ジアミンは、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、スルホニルジアニリンまたはこれらのものの1つまたは複数を含む組み合わせである。
多くのポリエーテルイミド製造方法の中には、米国特許第3,847,867号、同第3,852,242号、同第3,803,085号、同第3905,942号、同第3,983,093号、同第4,443,591号および同第7,041,773号に開示されたものが含まれる。これらの特許では、教示の目的および例示として、一般的および特定のポリイミド調製方法が言及されている。一部のポリエーテルイミド(PEI)材料は、ASTM D5205−96のポリエーテルイミド材料の標準分類システムに記載されている。
ポリエーテルイミドのメルトインデックスは、ASTM D1238に準拠し温度340〜370℃、荷重6.7kgで測定して、0.1〜10g/minであり得る。一部の実施形態では、ポリエーテルイミドポリマーの質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィで測定して、1,000〜150,000g/モル(ダルトン)である。一部の実施形態では、ポリエーテルイミドのMwは10,000〜80,000ダルトンである。こうしたポリエーテルイミドポリマーの固有粘度は、典型的には、25℃のm−クレゾール中で測定して、0.2dL/g超であり、より具体的には0.35〜0.7dL/gである。
ある実施形態では、ポリエーテルイミドは、50ppm未満のアミン末端基を含む。他の例では,該ポリマーは、1ppm未満の遊離した未重合のビスフェノールA(BPA)も有するであろう。
ポリエーテルイミドは、残留溶媒およびまたは水などの低濃度の残留揮発性種を有し得る。一部の実施形態では、ポリエーテルイミドの残留揮発性種濃度は、1,000質量ppm未満であり、より具体的には500質量ppm未満であり、さらにより具体的には300質量ppm未満であり、さらにより具体的には100質量ppm未満である。一部の実施形態では、該組成物の残留揮発性種濃度は、1,000質量ppm未満であり、より具体的には500質量ppm未満であり、さらにより具体的には300質量ppm未満であり、さらにより具体的には100質量ppm未満である。
残留揮発性種の例としては、ハロゲン化芳香族化合物(クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなど)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)など)、ジアリールスルホン、スルフォラン、ピリジン、フェノール、ベラトロール、アニソール、クレゾール、キシレノール、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、ピリジンおよびこれらの混合物が挙げられる。
最終のポリマー生成物中の低濃度の残留揮発性種は、例えば、蒸発液化や蒸留などの既知の方法で達成できる。一部の実施形態では、任意の溶媒の大部分は除去でき、任意の残留揮発性種も、任意に減圧下の蒸発液化または蒸留によってポリマー生成物から除去できる。他の実施形態では、重合反応が溶媒中で所望の完了レベルまで行われると重合は本質的に完成し、残留水の大部分は、溶液中での初期反応後の少なくとも1つの蒸発液化ステップ中に除去される。ポリマー混合物を液化させて、溶媒と他の揮発性種の濃度を良好な溶融加工性に必要な低濃度まで低減させる装置は、一般に、揮発性種の除去を促進するために高表面積を迅速に生成する能力と共に、減圧下で高温加熱できる。一般に、こうした装置の混合部は、ポンプに十分なパワーを供給して、高温で非常に粘性であり得るポリエーテルイミド融液を撹拌できる。好適な蒸発液化装置としては、これに限定されないが、例えば、LUWA社製のものなどのワイプ式薄膜蒸発装置(wiped films evaporator)やWerner Pfleiderer社またはWelding Engineers社製のものなどの脱揮押出機(特に、多数の通気孔部分を備えた二軸押出機)などが挙げられる。
一部の実施形態では、該ポリエーテルイミドのガラス転移温度は200〜280℃である。
既知の溶融ろ過技術を用いてポリエーテルイミドを溶融ろ過し、異物、炭化粒子、架橋樹脂あるいは同様の不純物を除去することが有用であることが多い。溶解ろ過は最初の樹脂分離の間に行ってもよく、あるいはそれ以降のステップで行ってもよい。ポリエーテルイミドは、押出操作で溶融ろ過できる。溶融ろ過は、大きさが100μm以上の粒子を十分に除去できる細孔径、あるいは大きさが40μm以上の粒子を十分に除去できる細孔径のフィルタを用いて行える。
ポリエーテルイミド組成物は、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、およびこれらのものの1つまたは複数を含む組み合わせなどの添加剤を任意に含んでいてもよい。一部の実施形態では、添加剤は、離型剤と、ホスファイト安定剤、ホスホナイト安定剤、ヒンダードフェノール安定剤およびこれらの組み合わせから選択された安定剤と、の組み合わせを含んでいてもよい。ある実施形態では、リン含有安定剤が使用される。
酸化防止剤は、ホスファイト、ホスホナイト、ヒンダードフェノールまたはこれらの組み合わせなどの化合物であってもよい。トリアリールホスファイトとアリールホスホネートを含むリン含有安定剤は、有用な添加剤として注目される。二官能性リン含有化合物も使用され得る。一部の実施形態では、溶融混合の間、あるいは射出成形などのその後の溶融成形プロセスの間の安定剤の逸失を防ぐためには、分子量が300ダルトン以上〜5,000ダルトン以下のリン含有安定剤が有用である。添加剤は、分子量が500ダルオン超のヒンダードフェノールを含んでいてもよい。リン含有安定剤の組成物中の量は、組成物の質量に対して、0.01〜3.0質量%あるいは0.01〜1.0質量%であってもよい。
ある実施形態では、ポリエーテルイミド繊維は、ポリエーテルイミド繊維、ポリエーテルイミドスルホン繊維、ポリエーテルアミドイミド繊維およびこれらの組み合わせから選択される。
繊維質基板は、ポリエーテルイミド以外の材料で構成された繊維をさらに含む。該他の繊維は、芳香族ポリアミド繊維(ホモポリマーとコポリマーを含む)および芳香族ポリエステル繊維(ホモポリマーとコポリマーを含む)などの高強度・耐熱性有機繊維であってもよい。こうした繊維は、約10g/D〜約50g/Dの、具体的には15g/D〜50g/Dの強度と、300℃を超える、具体的には約350℃を超える熱分解温度と、を有していてもよい。本明細書での「芳香族」ポリマーは、2つの芳香環に直接結合したポリマー結合(例えば−CO−NH−)を少なくとも85モル%含む。
芳香族ポリアミド繊維もアラミド繊維として既知であり、パラ−アラミド繊維またはメタ−アラミド繊維として広く分類できる。パラ−アラミド繊維の具体的な例としては、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維(例えば、E.I.Du Pont de Nemours and Company社およびDu Pont−Toray社がKEVLAR(登録商標)の商標名で製造)、p−フェニレンテレフタルアミド/p−フェニレン3,4’−ジフェニレンエーテルテレフタルアミドコポリマー繊維(帝人(株)がTECHNORAの商品名で製造)、(帝人(株)がTWARONの商品名で製造)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。メタ−アラミド繊維の具体的な例としては、ポリ(m−フェニレンテレフタルアミド)繊維(例えば、E.I.Du Pont de Nemours and Company社がNOMEX(登録商標)の商標名で製造)が挙げられる。こうしたアラミド繊維は、当業者に既知の方法で製造できる。特定の実施形態では、アラミド繊維はパラ−タイプホモポリマーであり、例えばポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維である。
アラミドフィブリッドは、繊維質基板における好適な成分である。フィブリッドは典型的には、ポリマー溶液をこの溶液の溶媒とは混合しない液体の凝固浴へ流すことにより作られる。ポリマーの凝固に伴って、ポリマー溶液の流れは、激しいせん断力と乱流の影響を受ける。本発明のフィブリッド材料は、メタ−またはパラ−アラミドあるいはこれらのブレンドから選択できる。より好適には、該フィブリッドはパラ−アラミドである。こうしたアラミドフィブリッドは、乾燥前に、湿潤状態で使用でき、紙のフロック成分周りに物理的に絡みついたバインダーとして堆積され得る。
繊維質基板は、ポリカーボネート繊維を含んでいてもよい。ポリカーボネートは、式(1)の繰り返し構造カーボネート単位を有するポリマーである:
Figure 2016505729
ここで、R基の総数の少なくとも60%は芳香族部分を含んでおり、残りのR基は、脂肪族、脂環式または芳香族である。ある実施形態では、RはそれぞれC6−30芳香族基であり、すなわち、少なくとも1つの芳香族部分を含む。Rは、式HO−R−OH、特に、式(2)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導され得る:
Figure 2016505729
式中、AおよびAは、それぞれ単環式二価芳香族基であり、Yは、単結合、あるいはAとAを分離している1つまたは複数の原子を有する架橋基である。典型的な実施形態では、1つの原子がAとAを分離している。また、式(3)の化合物も含まれる:
Figure 2016505729
式中、RおよびRは、それぞれ独立にハロゲン原子または一価炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよく;pとqはそれぞれ独立に0〜4の整数であり;Xは、2つのヒドロキシ置換芳香族基を結合する架橋基であり、この架橋基と各Cアリーレン基のヒドロキシ置換基は、Cアリーレン基上で互いにオルト、メタあるいはパラ(特定的にはパラ)に配置されている。ある実施形態では、架橋基Xは、単結合、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−あるいはC1−18有機基である。C1−18有機架橋基は、環式であっても非環式であってもよく、また芳香族であっても非芳香族であってもよく、さらに、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、シリコンまたはリンなどのヘテロ原子を含んでいてもよい。C1−18有機基は、これに結合するCアリーレン基が、それぞれ共通のアルキリデン炭素、またはC1−18有機架橋基の異なる炭素に結合されるように配置されていてもよい。特に、Xは、C1−18アルキレン基、C3−18シクロアルキレン、縮合C6−18シクロアルキレン基、あるいは式−B−W−B−(BとBは、同じであっても異なっていてもよいC1−6アルキレン基;Wは、C3−12シクロアルキリデン基またはC6−16アリーレン基)の基である。
典型的なC1−18有機架橋基としては、メチレン、シクロヘキシルメチレン、エチリデン、ネオペンチリデン、イソプロピリデン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデンおよび、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデンおよびアダマンチリデンなどのシクロアルキリデンが挙げられる。Xが置換シクロアルキリデンである式(3)のビスフェノールの特定の例は、シクロヘキシリデン架橋化アルキル置換ビスフェノール(4)である:
Figure 2016505729
式中、Ra’とRb’は、それぞれ独立にC1−12アルキルであり;Rは、C1−12アルキルまたはハロゲンであり;rとsはそれぞれ独立に1〜4であり;tは0〜10である。特定の実施形態では、Ra’とRb’の少なくとも1つは、シクロヘキシリデン架橋基に対してメタに配置されている。炭素原子を適切数含む場合の置換基Ra’、Rb’およびRは、直鎖であっても、環式、二環式、分枝鎖、飽和または不飽和であってもよい。ある実施形態では、Ra’とRb’は、それぞれ独立にC1−4アルキルであり;RはC1−4アルキルであり;rとsはそれぞれ1であり;tは0〜5である。別の特定の実施形態では、Ra’、Rb’およびRはそれぞれメチルであり;rとsはそれぞれ1であり;tは0または3である。別の典型的な実施形態では、シクロヘキシリデン−架橋化ビスフェノールは、クレゾール2モルと、水素化イソホロン(例えば1,1,3−トリメチル−3−シクロヘキサン−5−オン)1モルと、の反応生成物である。
ビスフェノール(3)のXは、置換C3−18シクロアルキリデン(5)であってもよい:
Figure 2016505729
式中、R、R、RおよびRは、独立に水素、ハロゲン、酸素またはC1−12有機基であり;Iは、直接結合、炭素あるいは二価の酸素、硫黄、あるいは−N(Z)−(Z:水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−12アルキル、C1−12アルコキシまたはC1−12アシル)であり;共に取り込まれたR、R、RおよびRの少なくとも2つが縮合脂環式環、芳香環またはヘテロ芳香環であることを条件として、hは0〜2であり、jは1または2であり、iは0または1の整数であり、kは0〜3の整数である。該縮合環が芳香族であれば、式(5)の環は、環が縮合された炭素−炭素不飽和結合を有するであろうことは理解されるであろう。kが1、iが0の場合、式(5)の環は炭素原子を4個含み、kが2の場合、式(5)の環は炭素原子を5個含み、kが3の場合、この環は炭素原子を6個含む。ある実施形態では、2つの隣接する基(例えば、共に取り込まれたRとR)が芳香族基を形成し、別の実施形態では、共に取り込まれたRとRが1つの芳香族基を形成し、共に取り込まれたRとRが第2の芳香族基を形成する。共に取り込まれたRとRが芳香族基を形成する場合、Rは、二重結合酸素原子すなわちケトンであり得る。
ビスフェノール化合物(3)の別の特定の実施形態では、C1−18有機架橋基としては、−C(R)(R)−基または−C(=R)−基(R、Rは、それぞれ独立に水素原子または一価の直鎖または環式炭化水素基;Rは二価の炭化水素基;pとqはそれぞれ0または1;R、Rは、それぞれC1−3アルキル基であり、具体的には、それぞれのアリーレン基上のヒドロキシ基に対してメタに配置されたメチル)が挙げられる。
式HO−R−OHの他の有用な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、式(7)の化合物が挙げられる:
Figure 2016505729
式中、Rは、それぞれ独立にハロゲン原子、C1−10アルキル基などのC1−10ヒドロカルビル、ハロゲン置換C1−10アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン置換C6−10アリール基であり;nは0〜4である。該ハロゲンは、通常、臭素である。
特定の芳香族ジヒドロキシ化合物の一部の実例としては、以下の4,4’−ジヒドロキシビフェニール、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2,6−ジヒドロキシベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、2,7−ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、置換レゾルシン化合物(5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノールなど);カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノン(2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキンオンなど);およびこれらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
ビスフェノール化合物(3)の具体的な例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)および1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせも使用できる。ある特定の実施形態では、ポリカーボネートは、式(3)のAとAがそれぞれp−フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールAから誘導された線状ホモポリマーである。
本明細書での「ポリカーボネート」としては、ホモポリカーボネート(ポリマー中のRはそれぞれ同じである)、カーボネート単位中に異なるR部分を含むコポリマー(本明細書では「コポリカーボネート」と呼ぶ)、カーボネート単位と他の種類のポリマー単位(エステル単位など)とを含むコポリマー、および少なくとも1つのホモポリカーボネートおよびまたはコポリカーボネートを含む組み合わせが挙げられる。本明細書での「組み合わせ」には、配合物、混合物、混ぜもの、反応生成物などが含まれる。
特定のポリカーボネートコポリマーはポリ(カーボネート−エステル)である。こうしたコポリマーは、式(1)の繰り返しカーボネート単位に加えて、式(7)の繰り返し単位をさらに含む:
Figure 2016505729
式中、Jは、ジヒドロキシ化合物から誘導された二価基であり、例えば、C2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20芳香族基、あるいは、アルキレン基が2〜約6個の炭素原子、具体的には2個、3個または4個の炭素原子を含むポリオキシアルキレン基であってもよく;Tは、ジカルボン酸から誘導された二価基であり、例えば、C2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20アルキル芳香族基またはC6−20芳香族基であってもよい。異なるT基およびまたはJ基の組み合わせを含むポリ(カーボネート−エステル)も使用できる。ポリ(カーボネート−エステル)は分枝鎖であっても直鎖であってもよい。
ある実施形態では、Jは、直鎖、分枝鎖または環式(多環式を含む)構造を有するC2−30アルキレン基である。別の実施形態では、Jは、式(3)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。別の実施形態では、Jは、式(4)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。別の実施形態では、Jは、式(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。
ポリエステル単位の調製に使用できる典型的な芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸、あるいはこれらの酸の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。1,4−、1,5−または2,6−ナフタレンジカルボン酸などの縮合環を含む酸が存在していてもよい。特定のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸あるいはこれらの酸の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。特定のジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸の質量比が約91:9〜約2:98であるこれらの組み合わせを含む。別の特定の実施形態では、JはC2−6アルキレン基であり、Tは、p−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、二価の脂環式基あるいはこれらの組み合わせである。
該コポリマーのカーボネート単位とエステル単位とのモル比は、最終組成物の所望の特性に応じて大きく変わり得るが、例えば1:99〜99:1であり、具体的には10:90〜90:10であり、より具体的には25:75〜75:25である。
式(8)のポリ(カーボネート−エステル)の特定の実施形態は、繰り返し芳香族カーボネート単位と繰り返し芳香族エステル単位とを含む:
Figure 2016505729
式中、Arは、ジカルボン酸またはジカルボン酸類の組み合わせの二価芳香族残基であり、Ar’は、式(3)のビスフェノールまたは式(6)のジヒドロキシ化合物の二価芳香族残基である。このように、Arはアリール基であり、好適には式(9a)のイソフタル酸、式(9b)のテレフタル酸
Figure 2016505729
またはこれらの組み合わせである。Ar’は、例えばビフェノールまたはビスフェノールAの残基などの多環式であっても、あるいは、例えばヒドロキノンまたはレゾルシノールの残基などの単環式であってもよい。
さらに、式(8)のポリ(カーボネート−エステル)において、xとyはそれぞれ、コポリマーの合計100質量部に対する芳香族エステル単位の質量部および芳香族カーボネート単位の質量部を表す。具体的には、芳香族エステル含有量xは、20〜100質量部、具体的には30〜95質量部、さらにより具体的には50〜95質量部であり、カーボネート含有量yは、0超〜80質量部、より具体的には5〜70質量部、さらにより具体的には5〜50質量部である。一般に、ポリエステル類の調製に従来使用されてきた芳香族ジカルボン酸はいずれも、式(8)のポリ(カーボネート−エステル)の調製に利用され得るが、テレフタル酸だけを利用してもよく、あるいは、テレフタル酸とイソフタル酸との質量比が5:95〜95:5の範囲であるこれらの混合物を利用してもよい。この実施形態では、式(8)のポリ(カーボネート−エステル)は、ビスフェノールAおよびホスゲンとイソ−およびテレフタロイルクロリドとの反応から誘導でき、その固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定して、0.5〜0.65dL/gであり得る。35〜45質量%のカーボネート単位と、55〜65質量%のエステル単位(イソフタレートとテレフタレートとのモル比は45:55〜55:45)を含む式(8)のコポリマーは、ポリ(カーボネート−エステル)(PCE)と呼ばれることが多く、15〜25質量%のカーボネート単位と、75〜85質量%のエステル単位(イソフタレートとテレフタレートとのモル比は98:2〜88:12)を含むコポリマーは、ポリ(フタレート−カーボネート)(PPC)と呼ばれることが多い。
別の特定の実施形態では、ポリ(カーボネート−エステル)は、式(3)のビスフェノール化合物から誘導された式(1)のカーボネート単位と、芳香族ジカルボン酸と式(6)のジヒドロキシ化合物とから誘導されたエステル単位と、を含む。具体的には、該エステル単位は、式(9)のアリーレートエステル単位である:
Figure 2016505729
式中、Rは、それぞれ独立にハロゲンまたはC1−4アルキルであり;pは0〜3である。アリレートエステル単位は、テレフタル酸とイソフタル酸の混合物、あるいはそれらの化学的等価物の混合物と化合物(5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、2,4,5−トリフルオロレゾルシノール、2,4,6−トリフルオロレゾルシノール、4、5,6−トリフルオロレゾルシノール、2,4,5−トリブロモレゾルシノール、2,4,6−トリブロモレゾルシノール、4,5,6−トリブロモレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2ーメチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、2,3,5−トリ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5−トリフルオロヒドロキノン、2,3,5−トリブロモヒドロキノン、あるいはこれらの化合物の少なくとも1つを含む組み合わせ)との反応から誘導されてもよい。該エステル単位は、ポリ(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノールエステル)単位(「ITR」エステルとしても既知)であってもよい。
(9)式のエステル単位を含むポリ(カーボネート−エステル)は、コポリマーの合計質量に対して、1〜100質量%未満の、10〜100質量%未満の、20〜100質量%未満の、あるいは40〜100質量%未満の、式(3)のビスフェノール化合物から誘導された式(1)のカーボネート単位と、0超〜99質量%の、0超〜90質量%の、0超〜80質量%の、あるいは0超〜60質量%の、芳香族ジカルボン酸と式(6)のジヒドロキシ化合物とから誘導されたエステル単位と、を含んでいてもよい。式(9)のアリレートエステル単位を含む特定のポリ(カーボネート−エステル)は、ポリ(ビスフェノールA−カーボネート)−co−ポリ(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノールエステル)である。
別の特定の実施形態では、該ポリ(カーボネート−エステル)は、式(3)のビスフェノールと式(6)のジヒドロキシ化合物との組み合わせから誘導された式(1)のカーボネート単位と、式(9)のアリーレートエステル単位と、を含む。式(3)のジヒドロキシ化合物から誘導されたカーボネート単位と、式(6)のジヒドロキシ化合物から誘導されたカーボネート単位と、のモル比は1:99〜99:1であってもよい。このタイプの特定のポリ(カーボネート−エステル)は、ポリ(ビスフェノールA−カーボネート)−co−(レゾルシノールカーボネート)−co(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノールエステル)である。
ポリカーボネートは、界面重合や溶融重合などのプロセスで製造できる。界面重合の反応条件は変わり得るが、典型的なプロセスは一般に、二価フェノール反応物を苛性ソーダ水溶液または苛性カリ水溶液に溶解または分散させるステップと、得られた混合物を水非混和性溶媒媒体に添加するステップと、例えば約8〜約12などにpHを制御した条件下、トリエチルアミンなどの触媒およびまたは相間移動触媒の存在下で前記反応物をカーボネート前駆体に接触させるステップと、を備える。最も一般的に使用される水非混和性溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
典型的なカーボネート前駆体としては、臭化カルボニルまたは塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、二価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロホルメート)またはグリコールのビスハロホルメート(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロホルメート)などのハロホルメートが挙げられる。これらのタイプのカーボネート前駆体の少なくとも1つを含む組み合わせも使用できる。典型的な実施形態では、カーボネート結合を形成する界面重合反応では、カーボネート前駆体としてホスゲンが用いられ、ホスゲン化反応と呼ばれる。
使用可能な相間移動触媒の中には、式(RX(Rは、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、C1−10アルキル基であり;Qは窒素原子またはリン原子であり;Xは、ハロゲン原子、C1−8アルコキシ基またはC6−18アリールオキシ基である)の触媒が含まれる。典型的な相間移動触媒としては、例えば、[CH(CHNX、[CH(CHPX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、CH[CH(CHNXおよびCH[CH(CHNX(Xは、Cl、Br、C1−8アルコキシ基またはC6−18アリールオキシ基)が挙げられる。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの質量に対して、約0.1〜約10質量%であってもよい。別の実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの質量に対して、約0.5〜約2質量%であってもよい。
組成物の所望の特性に著しい悪影響を及ぼさないことを条件として、すべてのタイプのポリカーボネート末端基は、ポリカーボネート組成物内で有用なものとして考慮される。
分枝鎖ポリカーボネートブロックは、重合中に分岐剤を添加することにより調製できる。こうした分岐剤としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、ハロホルミル基およびこれらの官能基の混合物から選択された少なくとも3つの官能基を含む多官能性有機化合物が挙げられる。特定の実施例では、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸トリクロリド、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミル無水フタル酸、トリメシン酸およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が含まれる。分岐剤は、約0.05〜約2.0質量%の量で添加できる。直鎖ポリカーボネートと分枝鎖ポリカーボネートとを含む混合物も使用できる。
重合中に、連鎖停止剤(キャッピング剤とも呼ぶ)が含まれていてもよい。連鎖停止剤によって分子量の成長速度が制限され、ポリカーボネートの分子量が制御される。典型的な連鎖停止剤としては、特定のモノフェノール化合物、モノカルボン酸クロリドおよびまたはモノクロロホルメートが挙げられる。モノフェノール連鎖停止剤は、フェノールなどの単環式フェノール、p−クミル−フェノール、レゾルシノールモノベンゾエートおよびp−およびターシャリ−ブチルフェノールなどのC1−22アルキル置換フェノール;およびp−メトキシフェノールなどのジフェノールのモノエーテルによって例証される。8〜9個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル置換基を有するアルキル置換フェノールも特定的に挙げられる。例えば4−置換−2−ヒドロキシベンゾフェノンとその誘導体、アリールサリチレート、ジフェノール(レゾルシノールモノベンゾエート、2−(2−ヒドロキシアリール)−ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、2−(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジンおよびその誘導体など)のモノエステルなどの、所定のモノフェノール紫外線吸収剤もキャッピング剤として使用できる。
モノカルボン酸クロリドも連鎖停止剤として使用できる。これらとしては、単環式モノカルボン酸クロリド(ベンゾイルクロリド、C−C22アルキル置換ベンゾイルクロリド、トルオイルクロリド、ハロゲン置換ベンゾイルクロリド、ブロモベンゾイルクロリド、シンナモイルクロリド、4−ナジミドベンゾイルクロリドおよびこれらの組み合わせなど);多環式モノカルボン酸クロリド(無水トリメリット酸クロリドおよびナフトイルクロリドなど);および単環式モノカルボン酸クロリドと多環式モノカルボン酸クロリドの組み合わせが挙げられる。約22個以下の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸のクロリドは有用である。また、アクリロイルクロリドおよびメタクリロイルクロリドなどの脂肪族モノカルボン酸の官能化クロリドも有用である。また、フェニルクロロホルメート、アルキル−置換フェニルクロロホルメート、p−クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメートおよびこれらの組み合わせなどの単環式モノクロロホルメートを含むモノクロロホルメートも有用である。
あるいは、該ポリカーボネートの製造に溶融プロセスが使用できる。ポリカーボネートは、一般に溶融重合プロセスにおいて、ジヒドロキシ反応物と、炭酸ジフェニルなどのジアリールカーボネートエステルと、を溶融状態で、エステル交換触媒の存在下、Banbury(登録商標)ミキサーまたは二軸押出機などで共反応させて均一な分散を形成することによって調製できる。揮発性の一価フェノールは、蒸留によって溶融反応物から除去され、ポリマーは、溶融残留物として単離される。ポリカーボネートの製造に特定的に有用な溶融プロセスでは、アリール上に電子吸引性置換基を有するジアリールカーボネートエステルが用いられる。電子吸引性置換基を有する特定的に有用なジアリールカーボネートエステルの例としては、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ビス(4−メチルカルボキシルフェニル)カーボネート、ビス(2−アセチルフェニル)カルボキシレート、ビス(4−アセチルフェニル)カルボキシレートあるいはこれらのエステルの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。また、有用なエステル交換触媒としては、式(RX(R、QおよびXは上記で定義したもの)の相間移動触媒が挙げられ得る。典型的なエステル交換触媒としては、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムフェノラートあるいはこれらのものの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
特に、ポリエステル−ポリカーボネートは、ポリカーボネートに関して上記に一般的に説明したように、界面重合によって調製できる。ジカルボン酸あるいはジオールそれ自体を利用しないで、対応する酸ハロゲン化物などの該酸またはジオールの反応性誘導体、特に、酸ジクロリドと酸ジブロミドが使用できる。従って、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの酸の少なくとも1つを含む組み合わせを使用する代わりに、イソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリドまたはこれらのジクロリドの少なくとも1つを含む組み合わせが使用できる。
該ポリカーボネートの固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して、0.3〜1.5dL/gであり、具体的には0.45〜1.0dL/gであり得る。ポリカーボネートの質量平均分子量は、交差結合されたスチレン−ジビニルベンゼンカラムを用い、ポリカーボネート標準に対して校正するゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定して、10,000〜200,000ダルトンであり得、具体的には20,000〜100,000ダルトンであり得る。GPCサンプルは1mg/mLの濃度で調製され、1.5mL/minの流量で溶離される。異なる流動特性を有するポリカーボネートを組み合わせて使用し、全体で所望の流動特性を実現できる。ある実施形態では、ポリカーボネートは、AとAがそれぞれp−フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールA系である。該ポリカーボネートの質量平均分子量は、上記のようにGPCで求めて、5,000〜100,000ダルトンであり得、より具体的には、10,000〜65,000ダルトンであり得、さらにより具体的には15,000〜35,000ダルトンであり得る。
特に、ポリエステル−ポリカーボネートの分子量は一般に高く、固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して、0.3〜1.5dl/gであり、好適には0.45〜1.0dl/gである。これらのポリエステル−ポリカーボネートは、分枝鎖であっても非分枝鎖であってもよく、質量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定して、一般に10,000〜200,000であり、好適には20,000〜100,000であろう。
ポリ(カーボネート−シロキサン)ブロックを含むポリカーボネートが使用され得る。ポリシロキサンブロックはポリジオルガノシロキサンであり、式(10)に見られるように、ジオルガノシロキサンの繰り返し単位を含む:
Figure 2016505729
式中、Rは、それぞれ独立に同じであっても異なっていてもよく、C1−13一価有機基である。例えば、Rは、C−C13アルキル、C−C13アルコキシ、C−C13アルケニル基、C−C13アルケニルオキシ、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルコキシ、C−C14アリール、C−C10アリールオキシ、C−C13アリールアルキル、C−C13アラルコキシ、C−C13アルキルアリールあるいはC−C13アルキルアリールオキシであり得る。これらの基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの組み合わせで、完全にあるいは部分的にハロゲン化され得る。透明なポリシロキサン−ポリカーボネートが望ましいある実施形態では、Rは、ハロゲンでは置換されていない。これらのR基の組み合わせも同じコポリマーに使用できる。
式(10)におけるEの値は、熱可塑性組成物中の各成分のタイプと相対量、組成物の所望の特性および同様の考慮事項によって大きく変わり得る。Eの平均値は、一般に2〜約1,000であり、具体的には約2〜約500であり、より具体的には約5〜約100である。一実施形態では、Eの平均値は約10〜約75であり、さらに別の実施形態では、約40〜約60である。Eの値が小さい場合、例えば約40未満の場合、比較的多量のポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを使用することが望ましい。逆に、Eの値が大きい場合、例えば約40より大きい場合、比較的少量のポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーが使用できる。
第1および第2(あるいはそれ以上)のポリ(カーボネート−シロキサン)コポリマーの組み合わせが使用でき、この場合の第1のコポリマーのEの平均値は、第2のコポリマーのEの平均値より小さい。
ある実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは式(11)のものである:
Figure 2016505729
式中、Eは上記に定義したものであり;Rはそれぞれ、同じであっても異なっていてもよく上記に定義したものであり;Arは、同じであっても異なっていてもよく置換または未置換C−C30アリーレン基であり、該結合は、芳香族部分に直接結合されている。式(11)のAr基は、C−C30ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば、上記の式(3)または(6)のジヒドロキシアリーレン化合物)から誘導され得る。典型的なジヒドロキシアリーレン化合物は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルフィド)および1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンである。これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせも使用できる。
別の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは式(12)のものである:
Figure 2016505729
式中、RとEは上記のものであり、Rは、それぞれ独立に二価のC−C30炭化水素基であり、重合されたポリシロキサン単位は、その対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である。
特定の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは式(13)のものである:
Figure 2016505729
式中、RとEは上記に定義したものである。式(13)のRは、二価のC−C脂肪族基である。式(14)のMは、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルオキシ基、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルコキシ、C−C10アリール、C−C10アリールオキシ、C−C12アラルキル、C−C12アラルコキシ、C−C12アルキルアリール、あるいはC−C12アルキルアリールオキシであり得;nは、それぞれ独立に0、1、2、3または4である。
ある実施形態では、Mは、臭素または塩素、メチル、エチルまたはプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシまたはプロポキシなどのアルコキシ基、あるいは、フェニル、クロロフェニルまたはトリルなどのアリール基であり;Rは、ジメチレン、トリメチレンまたはテトラメチレン基であり;Rは、C1−8アルキル、トリフルオロプロピルなどのハロアルキル、シアノアルキルあるいはアリール(フェニル、クロロフェニルまたはトリルなど)である。別の実施形態では、Rは、メチル、またはメチルとトリフルオロプロピルとの組み合わせ、またはメチルとフェニルとの組み合わせである。さらに別の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、Rは二価のC−C脂肪族基であり、Rはメチルである。
式(13)のブロックは、式(14)の対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサンから誘導され得る:
Figure 2016505729
式中、R、E、M、Rおよびnは、上記に記載したものである。こうしたジヒドロキシポリシロキサンは、式(15)のシロキサン水素化物間の白金触媒付加の実現で製造できる:
Figure 2016505729
式中、RとEは前述に定義したものであり、脂肪族不飽和一価フェノールである。典型的な脂肪族不飽和一価フェノールとしては、オイゲノール、2−アルキルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェノール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェノールおよび2−アリル−4,6−ジメチルフェノールが挙げられる。これらのフェノールの少なくとも1つを含む組み合わせも使用できる。
ポリ(カーボネート−シロキサン)は、50〜99質量%のカーボネート単位と1〜50質量%のシロキサン単位とを含んでいてもよい。この範囲内で、ポリ(カーボネート−シロキサン)は、70〜98質量%の、より具体的には75〜97質量%のカーボネート単位と、2〜30質量%の、より具体的には3〜25質量%のシロキサン単位と、を含んでいてもよい。
ポリ(カーボネート−シロキサン)の質量平均分子量は、交差結合されたスチレン−ジビニルベンゼンカラムを用い、サンプル濃度1mg/mLとし、ポリカーボネート標準に対して校正するゲル透過クロマトグラフィで測定して、2,000〜100,000ダルトンであり得、具体的には5,000〜50,000ダルトンであり得る。
ポリ(カーボネート−シロキサン)のメルトボリュームフローレートは、300℃/1.2kgで測定して、1〜50cc/10minであり、具体的には2〜30cc/10minであり得る。異なる流動特性を有するポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートの混合物を用いて、全体として所望の流動特性を達成できる。
前述のポリカーボネートは、単独で使用しても組み合わせで使用してもよく、例えば、ホモポリカーボネートと1つまたは複数のポリ(カーボネート−エステル)類の組み合わせ、あるいは、2つ以上のポリ(カーボネート−エステル)類の組み合わせで使用してもよい。異なるポリカーボネート−エステル類の混合物をこれらの組成物に使用してもよい。
本明細書に開示の繊維質基板と電気紙を製造するために、繊維が組み合わせられる。繊維質基板中には、一般に、約10〜約65質量%のポリイミド繊維と、約10〜約30質量%の、芳香族ポリアミドフィブリッドまたはポリカーボネート繊維から選択された繊維と、約25〜約70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、が存在する。
一部の実施形態では、該繊維質基板を含む樹脂は、二成分繊維押出として既知の繊維押出プロセス中に混合されてもよい。こうした実施形態では、既知の方法に従って、第1のポリマーを第2のポリマーと共に溶融紡糸してコア/シース繊維を形成できる。2成分繊維および多成分繊維の製造方法は周知であり、ここで詳細に説明する必要はない。例えば米国特許第5,227,109号(参照により本明細書に援用される)には、シース成分およびコア成分それぞれをシース−コア関係に移動させる所定の流路を画定する複数の隣接するプレートが組み込まれた紡糸パックにおける、シース−コア関係の2成分繊維の形成について記載されている。また、米国特許第5,458,972号(参照により本明細書に援用される)に記載されているものなどの、より複雑な多成分繊維形態も本明細書で使用されるコアシース用語内で考慮され得る。同特許には、3つの脚と、3つの頂点および軸センターを画定する三葉キャピラリを用い、第1の溶融ポリマー組成物を軸センターに移動させ、第2の溶融ポリマー組成物を該頂点の内の少なくとも1つに送ることによる多成分三葉繊維の製造方法が記載されている。製造された繊維は、コア外表面と、コア外表面の少なくとも約1/3に隣接するシースと、を画定する三葉コアを有する。
種々の実施形態では、第1のポリマーがコア繊維、第2のポリマーがシース繊維であってもよく、あるいは、第2のポリマーがコア繊維、第1のポリマーがシース繊維であってもよい。第1および第2のポリマーは、上記の有用な繊維の文脈で記載したポリマーから選択されてもよい。
ある実施形態では、ポリエーテルイミドがコアであり、ポリカーボネートが外層であろう。この実施形態では、マット内の繊維をより均一に接合するであろう。別の実施形態では、任意の高温、高強度ポリマーがコアであり、ポリエーテルイミドが外層であろう。こうしたコアポリマーの例としては、ポリエチレンテレフタレートや半結晶ポリエチレンおよびプロピレンの変異体などの、応力誘導結晶化材料、半結晶ポリマーあるいは結晶ポリマーが挙げられる。この例としては、SpectraやDyneema、アラミド(パラ−およびメタ−)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)Zylon、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアミドなどがあり、一部の実施形態では、窒化ケイ素繊維および炭素繊維である。この実施形態では、紙の構造化において、所定の領域上での材料の分散の均一性が向上するであろう。この実施形態では、このような非常に薄い生成物での均一分散に重要なより細い繊維の製造も可能になるであろう。
円網抄紙機や長網抄紙機などの既知の製紙技術を用いて電気絶縁紙を製造してもよい。一般に、繊維を裁断し不純物を取り除いて適切な繊維サイズとする。水などの懸濁溶媒に合成繊維とバインダーを添加して、繊維と水との混合物を形成する。
その後、混合物を篩にかけて排水し、紙シートを形成する。スクリーンは、縦方向と呼ばれるシートが移動する方向に繊維を方向付ける傾向がある。その結果、得られた絶縁紙は、横方向と呼ばれる垂直方向よりも縦方向の引張強度が大きくなる。紙シートは、スクリーンからロール上に、さらに紙内の水分を除去する他の処理装置を通って搬送される。
ポリエーテルイミド繊維、芳香族ポリアミド繊維および芳香族ポリアミドフィブリッドを含む基板を用い、その基板だけを、あるいは追加の層を組み合わせて圧密化して電気紙を形成してもよい。あるいは、この基板を繊維質基板の追加の層と組み合わせて電気紙を形成できる。例えば、ポリエーテルイミド繊維、芳香族ポリアミド繊維および芳香族ポリアミドフィブリッドを含む基板を層のスタック状に配置して、電気紙の厚みを構築できる。一実施形態では、ポリエーテルイミド繊維、芳香族ポリアミド繊維および芳香族ポリアミドフィブリッドを含む基板は、異なる組成物の基板の層と交互化される。例えば、ポリエーテルイミド繊維、芳香族ポリアミド繊維および芳香族ポリアミドフィブリッドを含む基板は、内層として機能し、異なる組成物の基板は外層として配置される。あるいは、異なる組成物の基板が内層として機能し、ポリエーテルイミド繊維、芳香族ポリアミド繊維および芳香族ポリアミドフィブリッドを含む基板が外層として配置されてもよい。
一実施形態では、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約20〜65質量%のポリイミド繊維と、約30〜70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含む繊維質基板は、スタックの内層であり、約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、繊維質基板の第1の面上に配置された第1の層と;約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、繊維質基板の第2の面上に配置された第2の層と、を有する。
別の実施形態では、それぞれ繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含む繊維組成物の圧密化生成物を含む繊維質基板は、スタックの内層であり、約35〜45質量%のポリイミド繊維と、約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、繊維質基板の第1の面上に配置された第1の層と;約35〜45質量%のポリイミド繊維と、約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、繊維質基板の第2の面上に配置された第2の層と、を有する。
該基板は、繊維質基板の表面に接着されたポリマーフィルムの層をさらに含んでいてもよい。こうしたフィルムは、上記のように使用される場合に、請求項に記載の範囲の最終特性を発揮する任意のポリマーを含んでいてもよい。ポリエーテルイミドフィルムが好適である。ポリマーフィルムの厚みは、0超〜50μmであってもよく、4〜40μmであってもよく、5〜30μmであってもよい。一般に、ポリマーフィルムは、繊維質基板の第1の表面および第2の表面に接着される。また、繊維質基板の複数の層とポリマーフィルムは、組み合わせできる。例えば、繊維質基板の2つの層は、ポリマーフィルムの3つの層と交互に存在していてもよい。反りを回避するために、繊維質基板とポリマーフィルムとの組み合わせが左右対称であることが望ましい。繊維質基板とポリマーフィルムとのスタックは、一般に、プレスによる圧密化またはカレンダー加工よって接着される。
異なる組成物の基板がスタックに組み合わせられる場合、その相対的比率は、所望の特性を有する最終圧密化生成物を製造するように選択されてもよい。全面にカレンダー加工された寸法4ミル以下の紙の場合、層の相対比率は、一般に1:1〜2:1である。より大きな寸法の基板では、この比率は、例えば、ある組成物の内層によって提供される最終圧密化寸法の優勢な部分と、異なる組成物の外層によって提供される比較的少ない割合によって、より大きく変わり得る。
繊維質基板は、当分野で既知の種々の密度(一般に、g/m(GSM)で表される)で調製できる。一般に、繊維質基板の密度は5〜200GSMであってもよく、より具体的には20〜100GSMであってもよい。好適な実施形態では、圧密化繊維質基板の密度は80GSMである。当業者であれば、所定の寸法の基板の個々の層を種々の方法で組み合わせて、より大きな寸法の紙が製造できることは理解するであろう。例えば、80gsmの紙は、両側に20gsm層を有する40gsmの内層から構築でき得る。
種々の気孔率を有する繊維質基板が調製できる。気孔率の測定方法は当業者には既知であり、例えばISO5636−5:2003などがある。この技術でのガーリー秒(Gurley second)またはガーリー単位は、空気100cmが水圧差4.88インチ(0.188psi)において所定の材料1.0inを通過するのに必要な秒数を表す単位であり、単位はs・in/dLである。SI単位系では、1s・in/dL=6.4516s/m(m:空気カラム)である。一実施形態では、電気絶縁紙の気孔率は、10超〜120s・in/dL(ガーリー秒)未満である。
別の一般的な態様では、電気装置の構築方法は、少なくとも1つの導体を提供するステップと、電気絶縁紙を提供するステップと、前記導体の少なくとも一部を前記絶縁紙で囲むステップと、を備える。
別の一般的な態様では、絶縁導体は、電気絶縁紙で少なくとも部分的に囲まれた導電体を含む。一部の用途では、該絶縁導体を変圧器に組み込んでもよい。
特に、典型的な寸法の電気紙として使用されるように意図されたものの一部の実施形態では、
繊維質基板の厚みは0超〜8ミル未満である。特に、繊維質基板の層をスタックして構築されたものの一部の実施形態では、厚みは0〜80ミルである。他の実施形態では、厚みは3〜20ミルである。
繊維質基板の吸水率は一般に、相対湿度100%の水飽和状態で5質量%以下である。他の実施形態では、吸水率は3%以下であり、好適な実施形態では、2%以下である。
一部の実施形態では、電気紙の抵抗率は、少なくとも1000MΩ−cmである。他の実施形態では、電気紙の絶縁破壊強度は、少なくとも600V/ミルである。一般に、電気紙の熱性能は、NEMAクラスF(155℃)絶縁およびNEMAクラスH(180℃)絶縁の基準を超える熱性能を超えるであろう。
以下の実施例は例示であり、限定するものではない。
実施例
材料
実施例で使用する材料を表1に示す。
Figure 2016505729
技術と手順
引張強度はASTM D828に準拠して求めた。
伸び率はASTM D828に準拠して求めた。
ヤング率はASTM D638に準拠して求めた。
Elmendorf引裂強度はASTM D1922に準拠して求めた。
サンプルは、表2に示す処方に従って調製した。
Figure 2016505729
製紙方法:水中で、繊維を混合して繊維スラリーを形成した。繊維をメッシュ上に堆積させて層を形成し、12インチ×12インチのハンドプレス機内で脱水した。層の圧密化は以下のように行った。
圧密化条件:シリコーンブラダーと、下部のステンレス鋼板を覆うアルミホイルの被覆シートと、を載荷して、サンプルを収容するTMP真空プレス機を用意した。混合繊維のサンプルをハンドプレス機から取り出し、アルミホイル上に置いた。その後、プレスプラテンを閉じ、内部の温度100°F、最低システム圧5トンで上部のステンレス鋼板をサンプルに接触させた。その後、温度セレクタを460°Fに設定した(サンプルは490°Fでも圧密化した)。温度計が350°Fを表示すると、格納ドアを閉め、チャンバ内を制御セットで脱気し、圧力を28.9mmHg未満に維持した。プラテンが460°Fに達すると、温度設定を100°Fに下げて冷却を開始し、圧力設定を200トン(2778psi)に上げて保持した。100°Fまで冷却されると、真空を大気圧に、圧力を0にリセットした。ドアを開けてサンプルを取り出した。
交流絶縁破壊強度試験手順−ASTM D−149:3インチ径電極上の1インチ径電極を使用し、空気中または含浸オイル中、電圧勾配:100V/秒、トリップ限界値:約0.1mAで試験。
表3の条件に従い、連続ダブルベルトプレスでサンプルを圧密化した。ダブルベルトプレスは、主に、木製シート製品の生産やシート物品に対する表面被覆のラミネート加工用として、多くのメーカーから供給されている。該プレスは、互いに上下にあって接面が同じ方向に並行して走る2本の連続したベルトで構成され、これらを逆方向に駆動させるドラム周りを移動する。これらの表面を加熱・加圧後、加圧下で冷却して、シートや複合製品の接着剤や樹脂性バインダーを硬化させる。
Held Technologie社では、生成物に非常に高くて均一な圧力をかけられ、また、ポリエーテルイミド樹脂に必要な加工温度までベルトを加熱後、そのまま加圧下でシートを冷却できるプレスを製造している。
材料は、例えば、必要な材料をロールやシート物品から供給する多くの巻出しステーションからプレスに供給される。これらの材料はニップに供給されて、それ自体上記のように加熱・圧縮される。
電気絶縁紙のための圧密化条件:一般に、電気紙は、約40〜120gsmと空中質量が非常に小さい材料であるが、一部の用途では、より高いあるいははるかに高い材料が使用される。紙状の材料は、商業的には、複数のローラがスタックされて複数のニップが設けられたカレンダー加工で圧密化される。非常に競争の激しい民間業界では、紙を高速で加工するために、ローラは、高速で加熱・調整される。高速での電気絶縁紙の要件を満たす材料の製造には、今まで、低速の連続ベルトプレスによって、高速のカレンダー装置の場合より良好な結果が得られた。
Figure 2016505729
サンプルの物性試験の結果を表4に示す。
Figure 2016505729
考察:高強度、低気孔率が得られ、また縦方向と横方向間の差が小さいことから、上記のデータは、カレンダー加工の紙と比較して優れている。
引用された特許、特許出願および他の参照文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。以下の非限定的な実施形態によって、本発明をさらに例証する。
実施形態1:繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約10〜約65質量%のポリイミド繊維と、約10〜約30質量%の、芳香族ポリアミドフィブリッドまたはポリカーボネート繊維から選択された繊維と、約25〜約70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、を含む繊維組成物の圧密化生成物であって、厚みが0超〜8ミル[203.2μm/0.2032mm]未満の圧密化生成物を含む繊維質基板。
実施形態2:実施形態1に記載の繊維質基板を含む電気紙。
実施形態3:第1の面と前記第1の面に対向する第2の面を有する繊維質基板であって、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約20〜65質量%のポリイミド繊維と、約30〜70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含む繊維組成物の圧密化生成物を含み;約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、前記第1の面上に配置された第1の層と;約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、前記第2の面上に配置された第2の層と、を有する前記繊維質基板を含み、厚みが0超〜8ミル未満の電気紙。
実施形態4:前記繊維質基板は、約40質量%のポリイミド繊維と、約40質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約20質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第1と第2の層は、約90質量%のポリイミド繊維と約10質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含む実施形態3に記載の電気紙。
実施形態5:第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面を有する繊維質基板であって、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含む繊維組成物の圧密化生成物を含み;約35〜45質量%のポリイミド繊維と、約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第1の面上に配置された第1の層と;約35〜45質量%のポリイミド繊維と、約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第2の面上に配置された第2の層と、を有する前記繊維質基板を含み、厚みが0超〜80ミル未満の電気紙。
実施形態6:前記ポリイミド繊維は、ポリエーテルイミド繊維、ポリエーテルイミドスルホン繊維、ポリエーテルアミドイミド繊維およびこれらの組み合わせから選択される実施形態2乃至実施形態5のいずれかに記載の電気紙。
実施形態7:前記繊維質基板の前記繊維の引裂強度は、Elmendorf引裂強度として測定して、少なくとも85mNである実施形態2乃至実施形態5のいずれかに記載の電気紙。
実施形態8:前記芳香族ポリアミドは、芳香族パラ−ポリアミドである実施形態2乃至実施形態5のいずれかに記載の電気紙。
実施形態9:前記芳香族ポリアミドは、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド−co−3’4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド)およびこれらの組み合わせから選択される実施形態2乃至実施形態5のいずれかに記載の電気紙。
実施形態10:繊維質基板内に含浸された熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーをさらに含む実施形態2乃至実施形態5のいずれかに記載の電気紙。
実施形態11:実施形態2乃至実施形態5のいずれかに記載の電気紙を含む物品。
実施形態12:前記物品は、相セパレータ、モータ、発電機または変圧器内の第1の絶縁体、モータ、発電機または変圧器内の第2の絶縁体、である実施形態11に記載の物品。
実施形態13:懸濁溶媒と;繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、約20〜65の質量%のポリイミド繊維と、約30〜70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含む繊維組成物と;を含むスラリーから層を形成するステップと、前記層から水を取り除くステップと、前記層を圧密化して繊維質基板を形成するステップと、を備える繊維質基板の調製プロセスであって、約75〜95質量%のポリイミド繊維と5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドの層を、前記圧密化するステップの前または後に、前記繊維質基板のそれぞれの表面に塗布し、基板とポリイミド膜を共に圧密化ステップにかける調製プロセス。
実施形態14:実施形態13に記載のプロセスで製造される繊維質基板。
実施形態15:実施形態14に記載の繊維質基板を含む物品。
実施形態16:厚みが0超〜8ミル未満の、実施形態1乃至実施形態15のいずれかに記載の電気紙、繊維質基板または物品。
実施形態17:厚みが0〜80ミルの、例えば、実施形態1乃至実施形態16のいずれかによって得られた繊維質基板の層をスタックすることによって構築されたものなどの、実施形態1乃至実施形態16のいずれかに記載の電気紙、繊維質基板または物品。
実施形態18:厚みが3〜20ミルの、実施形態17に記載の電気紙、繊維質基板または物品。
実施形態19:相対湿度100%の水飽和状態での吸水率が3質量%以下である実施形態1乃至実施形態18のいずれかに記載の電気紙、繊維質基板または物品。
実施形態20:相対湿度100%の水飽和状態での吸水率が2質量%以下である実施形態1乃至実施形態19のいずれかに記載の電気紙、繊維質基板または物品。
本発明をその好適なバージョンを参照して詳細に説明したが、他の変形も可能である。従って、添付の請求項の趣旨と範囲は、本明細書に含まれるバージョンの記載に限定されるべきではない。

Claims (15)

  1. 繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、
    約10〜約65質量%のポリイミド繊維と、
    約10〜約30質量%の、芳香族ポリアミドフィブリッドまたはポリカーボネート繊維から選択された繊維と、
    約25〜約70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、
    を含む繊維組成物の圧密化生成物であって、厚みが0超〜8ミル未満の圧密化生成物を含む、
    ことを特徴とする繊維質基板。
  2. 請求項1に記載の繊維質基板を含むことを特徴とする電気紙。
  3. 第1の面と前記第1の面に対向する第2の面を有する繊維質基板であって、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、
    約20〜65質量%のポリイミド繊維と、
    約30〜70質量%の、芳香族ポリアミド繊維と、
    約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含む繊維組成物の圧密化生成物を含み;
    約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、前記第1の面上に配置された第1の層と;
    約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含み、前記第2の面上に配置された第2の層と、を有する前記繊維質基板を含み、
    厚みが0超〜8ミル未満であることを特徴とする電気紙。
  4. 前記繊維質基板は、約40質量%のポリイミド繊維と、約40質量%の芳香族ポリアミド繊維と、約20質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第1と第2の層は、約90質量%のポリイミド繊維と約10質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含む請求項3に記載の電気紙。
  5. 第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面を有する繊維質基板であって、繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、
    約75〜95質量%のポリイミド繊維と約5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドとを含む繊維組成物の圧密化生成物を含み;
    約35〜45質量%のポリイミド繊維と、
    約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、
    約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第1の面上に配置された第1の層と;
    約35〜45質量%のポリイミド繊維と、
    約35〜45質量%の芳香族ポリアミド繊維と、
    約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含み、前記第2の面上に配置された第2の層と;を有する前記繊維質基板を含み、
    厚みが0超〜80ミル未満であることを特徴とする電気紙。
  6. 前記ポリイミド繊維は、ポリエーテルイミド繊維、ポリエーテルイミドスルホン繊維、ポリエーテルアミドイミド繊維およびこれらの組み合わせから選択される請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電気紙。
  7. 前記繊維質基板の前記繊維の引裂強度は、Elmendorf引裂強度として測定して、少なくとも85mNである請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電気紙。
  8. 前記芳香族ポリアミドは、芳香族パラ−ポリアミドである請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電気紙。
  9. 前記芳香族ポリアミドは、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド−co−3’4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド)およびこれらの組み合わせから選択される請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電気紙。
  10. 前記繊維質基板内に含浸された熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーをさらに含む請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電気紙。
  11. 請求項2乃至5のいずれか1項に記載の電気紙を含むことを特徴とする物品。
  12. 前記物品は、相セパレータ;モータ、発電機または変圧器内の第1の絶縁体;モータ、発電機または変圧器内の第2の絶縁体;である請求項11に記載の物品。
  13. 懸濁溶媒と;
    繊維組成物中の繊維の合計質量に対して、
    約20〜65の質量%のポリイミド繊維と、
    約30〜70質量%の芳香族ポリアミド繊維と、
    約10〜30質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドと、を含む繊維組成物と;を含むスラリーから層を形成するステップと、
    前記層から水を取り除くステップと、
    前記層を圧密化して繊維質基板を形成するステップと、を備える繊維質基板の調製プロセスであって、
    約75〜95質量%のポリイミド繊維と5〜25質量%の芳香族ポリアミドフィブリッドの層を、前記圧密化するステップの前または後に、前記繊維質基板のそれぞれの表面に塗布し、基板とポリイミド膜を共に圧密化ステップにかけることを特徴とする調製プロセス。
  14. 請求項13に記載のプロセスで製造されることを特徴とする繊維質基板。
  15. 請求項14に記載の繊維質基板を含むことを特徴とする物品。
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