JP2016501858A - 転移性癌を処置するためのcd44v6由来ペプチド - Google Patents

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Abstract

本発明は、様々な型の膵癌を処置するための化合物、医薬組成物および方法に関する。

Description

本発明は、転移型の癌を処置するための化合物、医薬組成物および方法に関する。
様々なタイプの癌が、cMET、およびVEGFR等の受容体型チロシンキナーゼの過剰活性化を少なくともある程度は伴うことが分かっている。癌として、例えば結腸直腸癌、乳癌および膵癌が挙げられる。
例えばcMET、ERKおよびVEGFRのような受容体型チロシンキナーゼのHGF依存性活性化にCD44が関与すると論じられている(特にPonta他、Nature Reviews (2003)、4、33〜45およびTremmel他、Blood (2009)、25、5236〜5244を参照)。更に、受容体型チロシンキナーゼの過剰活性化を特徴とする癌の一部では、CD44の選択的スプライシング型の発現、即ちCD44v6の発現が生じることが分かっている。そのような癌の処置では、受容体型チロシンキナーゼのCD44v6媒介性活性化をブロックすることができるペプチドが潜在的に有用であると論じられている。
しかしながら、そのような癌の処置、例えば膵癌等の処置を可能とする薬学的活性剤に対する関心が絶えず存在する。
米国では、膵癌は2番目に多い消化管の悪性腫瘍であり、成人において4番目に多い癌関連死である(Cancer Stating Manual、第7版、2010、American Joint Committee on Cancer、Springer)。膵癌は、膵臓を形成する組織で生じる形質転換細胞に由来する悪性新生物である。最も一般的なタイプの膵癌は腺癌または膵外分泌癌であり、これらは、光学顕微鏡検査で、膵臓の外分泌成分と共に生じる腺構造を示す腫瘍である。マイナーなタイプは膵管細胞から生じ、神経内分泌腫瘍と分類される。
膵癌の処置は概して、癌のステージに依存する。現在のところ、限局性癌のみが治癒目的の手術に適していると考えられるが、症例のわずか約20%が限局性疾患と診断される。悪性腫瘍が十二指腸または結腸に侵入しているまたはこれらを圧迫している場合、緩和を目的として手術を行なうこともできる。更なる処置の選択肢として、放射線および緩和的化学療法が挙げられる。現在の化学療法として、ゲムシタビンによる処置、またはゲムシタビン/オキサリプラチンもしくはゲムシタビン/シスプラチン等のゲムシタビンとの併用療法が挙げられる。集中的な研究努力にもかかわらず、長期の無増悪生存をもたらすと考えられるであろう、現在利用可能な処置は存在しない。従って、膵癌はこれまで、全ての新生物の内で予後が最も悪い悪性腫瘍の一つである。特に転移が肝臓、腹腔および肺等へと体中に広がっている場合、既存の転移の効果的な退縮を可能にするであろう、利用可能で効果的な処置は存在しない。
同様の問題はその他の癌に関しても存在しており、この癌では転移が既に形成されている。これらの癌の多くの場合、緩和的化学療法が唯一の治療上の選択肢であるかもしれない。
そのため、転移性拡散が起きている場合に、膵癌等の癌を処置するために使用することができる新規の化合物および方法の必要性が存在する。
本発明の目的の一つは化合物およびそのような化合物を含む医薬組成物を提供することであり、転移性拡散が起きている場合に、該化合物および医薬組成物はヒトの癌を処置するために使用することができる。
別の目的は、転移性拡散が起きている場合にヒトの癌を処置するための新規の方法を提供することである。
以下の説明から明らかになるであろうこれらの目的およびその他の目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の好ましい実施形態の一部が従属請求項で述べられる。
本発明は、共受容体分子CD44v6の分子機能を解明することを目的の一部とする以下に記載の実験データにある程度基づいている。CD44膜貫通糖タンパク質は、細胞接着分子(CAM)の大きなファミリーの一部を形成する。CD44は、選択的にスプライシングされたバリアントを含み、該バリアントの一部は、受容体型チロシンキナーゼMetおよびVEGFRの活性化による転移のプロセスに関与することが認識されている(Matzke他、Cancer Res (2005)、65(14) 6105〜6109を参照)。
以下に記載の実験から、エクソンv6を含む、選択的にスプライシングされたバージョンのCD44(CD44v6)が、例えばヒト膵癌の動物モデルにおける転移の誘導に関与していることが分かる。CD44v6はまた、cMET、ERKおよびVEGFRのような受容体型チロシンキナーゼのHGF依存性活性化での役割におそらく起因して、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌および乳癌等のその他の癌にも関与している。
以下に記載する実験では、N−R−W−H−E等、5個のアミノ酸のペプチド骨格に組み込まれているトリペプチド配列R−W−Hを最小必要条件として有するペプチドがヒト膵癌の動物モデルにおいて転移の形成をブロックすることができることが更に示されている。更に、本明細書に記載するデータは、マウスでのヒト膵癌の同所性モデルにおいて、このペプチドにより、全身にわたって既に広がって形成されている転移の効果的な退縮も可能になることを示す。この背景に先立って、このペプチドにより、膵癌に関してだけなく、CD44v6の発現が示されているホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌および乳癌等のその他の癌に関しても、形成されて体中に広がっている転移の退縮を可能にすることができると結論付けるのが妥当であると考えられる。
既に上述したように、トリペプチド配列R−W−Hが5個のアミノ酸のペプチド骨格に組み込まれる場合には、本明細書に記載のペプチドは転移の阻害だけでなく既に形成された転移の実際の除去にも効果的であることが発見されている。このことは、ペンタペプチドN−R−W−H−Eのアミノ酸NおよびEをそれぞれAに変更することにより発見された。これらは非保存的アミノ酸置換であったにもかかわらず、MetのCD44v6媒介性活性化の阻害においてペプチドは依然として活性がある。そのため、ペンタペプチドN−R−W−H−Eの第1位のNをK、RまたはQ等のアミノ酸で保存的に置換するだけでなく、任意のその他のアミノ酸またはV、LもしくはI等のAに相当する非極性側鎖を有するアミノ酸により保存的に置換することができると結論付けるのが正しいと思われる。当然のことながら、同様の考察をペンタペプチドの第5位に適用し、その結果、アミノ酸EをKによる等の保存的置換により置き換えるだけでなく、任意のその他のアミノ酸または特にV、LもしくはI等のアラニンの特性と類似するアミノ酸に置き換えることができる。
更に、ペンタペプチドN−R−W−H−Eはまた、より長いペプチドに組み込まれる場合に、Metシグナル伝達のCD44v6媒介性活性化を阻害するのに効果的であることも示されており、より長いペプチドの上限は14merであると仮定するのが妥当である。保存的アミノ酸置換だけでなく非保存的アミノ酸置換によりペンタペプチドの最初の位置および最後の位置を置換する可能性の発見を前提として、R−W−Hの必須モチーフ外の任意のアミノ酸を同じ理由に従って置き換えることができたと結論付けるのが妥当であると思われる。
そのため、本発明は一実施形態において、癌が転移を既に形成している場合にヒトの癌の処置において使用するための化合物であって、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号1)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、X、X、X、X、X、X、X、X11、X12、X13もしくはX14が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号7)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号7の少なくともX−R−W−H−X11(式中、XおよびX11が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む化合物に関する。
そのような癌は、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、肺癌、膵癌および乳癌の転移型であることができ、なぜならば、これらの癌の場合、CD44v6の発現が示されているからである。
上記に記載の知見を前提として、即ちペンタペプチドN−R−W−H−E中のアミノ酸Nおよびアミノ酸Eをアラニンに置き換えることができるという知見を前提として、これらの位置で、V、LまたはI等の物理化学特性がアラニンと同程度である保存的アミノ酸置換またはアミノ酸置換のどちらかを含むペプチドが、N−R−W−H−Eと同じ活性を実現することもできると仮定するのが妥当であると思われる。同様の考察が、必須のトリペプチドモチーフR−W−Hに隣接する位置に関する14mer由来のペプチドに当てはまる。
そのため、好ましい実施形態では、本発明は、癌が転移を既に形成している場合にヒトの癌の処置において使用するための化合物に関し、前記化合物は以下を含む:
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号4)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号8)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号8の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物。
そのような癌は、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌の転移型であり得、なぜならば、これらの癌の場合、CD44v6の発現が示されているからである。
ペンタペプチドまたは以下に記載する14mer由来の任意のより長いペプチドは、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌等の癌において、転移の予防だけでなく既に形成された転移の実際の除去にも効果的であるだろうが、本発明の好ましい実施形態は、以下に記載するペンタペプチド配列に関し、特に好ましい実施形態はアミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)に注目する。
配列番号1または配列番号2のペンタペプチド等の本明細書に記載のペプチドと同じアミノ酸または該ペプチドと少なくとも同じ全体構成のペプチドを提供する任意の化合物は、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌等の癌において、転移の形成の予防だけでなく既に形成された転移の除去にも効果的であることができることも当業者は理解するだろう。
従って、本発明はいくつかの実施形態において、以下に記載のペプチドの内のいずれかのペプチド模倣物の、特に配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4もしくは5のペプチド模倣物の使用を意図する。このペプチド模倣物は、同じアミノ酸を好ましくは有することができるが骨格が変更されており、該骨格は、ペプチド自体が提供するのと同じ全体構成のペプチド模倣物を提供するが、例えばプロテアーゼ開裂に対してより耐性を示す。好ましいペプチド模倣物は例えば等配電子のペプトイドであり、該ペプトイドは、骨格のペプチド結合中にポリ−N−置換グリシンを含む。
本発明はまた、本明細書に記載のペプチドおよびペプチド模倣物の更なる改変型も検討する。そのような改変ペプチドまたは改変ペプチド模倣物は、例えばプロテアーゼ分解に対してペプチドをより安定させる、例えば化学的にまたは酵素的に付加された改変を含むことができ、これにより、ペプチドもしくはペプチド模倣物を薬学的に許容される塩として提供することが可能となる、または例えばペプチドもしくはペプチド模倣物の半減期等の生物学的特性を改善することが可能となる。そのようなペプチドまたはペプチド模倣物のそのような好ましい改変型は、このペプチドおよびペプチド模倣物における、特に配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5のペプチドまたはこれらの配列のペプチド模倣物におけるペグ化型、ヘシル化(hesylated)型、パシル化(pasylated)型、ミリストイル化型、およびグリコシル化型および/または環状型を指す。
そのような改変ペプチドまたは改変ペプチド模倣物は一般に、本発明に関して化合物またはペプチド化合物と称される。この化合物またはペプチド化合物を、例えば吸入による経口投与用に、経鼻投与用に、または皮下投与等の注射による投与用に製剤化することができる。
一実施形態では、本発明はまた、転移が既に形成されている場合に癌の処置において使用するための医薬組成物であって、この癌として、ヒトのホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌の転移型が挙げられ、この医薬組成物は、上記に記載の化合物/ペプチド化合物を含む、医薬組成物に関する。この医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含むことができ、該医薬組成物を、吸入による等の経口投与用に、経鼻投与用に、または注射による投与用に製剤化することができる。
本発明はまた、転移が既に形成されている場合に癌の処置において使用するための医薬品の製造での、そのようなペプチド、このペプチド模倣物または改変ペプチドおよび改変ペプチド模倣物の使用であって、この癌として、ヒトのホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌の転移型が挙げられる、使用に関する。
更に、本発明は、ペプチド、このペプチド模倣物またはこれらの改変型を、これらを必要とするヒトに投与することにより、即ち、本発明に係る化合物または本発明に係る化合物を含む医薬組成物を、これらを必要とするヒトに投与することにより、転移が既に形成されている場合に癌を処置する方法であって、この癌として、該投与を必要とするヒトのホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌の転移型が挙げられる、方法に関する。
転移が既に形成されており、更に全身に広がっている可能性がある癌を処置するために、本発明に係る化合物、即ちペプチド、このペプチド模倣物またはその改変型、本発明の医薬組成物および本発明に係る方法が検討される。この癌は転移性癌とも呼ばれる。
本発明に係る転移性癌として、癌組織でCD44v6の発現が観測されている、または例えばCD44v6抗体による対応する検査時に観測され得る癌の転移型が挙げられる。本発明に係る転移性癌として、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌、頭頸部扁平上皮癌および乳癌の転移型が挙げられる。
ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌等の様々な癌のそのような転移性癌型を、対癌米国合同委員会(American Joint Committee on Cancer)の癌病期分類マニュアル(Cancer Staging Manual)のTNM解剖学的段階/予後群システム(TNM Anatomic Stage/Prognostic Group System)(7thedition, 2010, Springer)に従って同定することができる。特にMを1と設定する場合に、TNM解剖学的段階/予後群システムに従って、本発明に係る転移性乳癌を典型的にはステージIVの癌と分類することができる。対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアル(第7版、2010、Springer)には、TNM解剖学的段階/予後群システムと、本明細書で述べた様々な癌に関して癌を例えばステージI、II、IIIおよびIVとみなす条件とが記載されており、そのため、該癌病期分類マニュアルは参照により援用される。
例えば、特に好ましい実施形態では、本発明は、ヒト対象の乳癌または結腸直腸癌を処置するために、本発明の化合物、即ちペプチド、このペプチド模倣物またはこれらの改変型、本明細書に記載の医薬組成物および以下に記載の方法を考慮し、乳癌または結腸直腸癌は、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルのTNM解剖学的段階/予後群システム(7th edition, 2010, Springer、結腸直腸癌に関して145〜166頁をおよび乳癌に関して347〜378頁を参照)に従ってステージIVと分類できる。
本発明の全ての態様および実施形態に関して、即ち以下に記載の化合物、医薬組成物および方法に関して、ヒトの転移性癌を処置するために、特に転移性癌を処置するために、本明細書に記載のペンタペプチド、例えば配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5のペンタペプチド、特に配列番号2のペンタペプチドを使用することが常に好ましく、該転移性癌は、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルのTNM解剖学的段階/予後群システム(第7版、2010、Springer)に従ってステージIVと分類できることを理解すべきである。
Metに関するCD44v6の共受容体機能が腫瘍転移に必要であることを示す図である。A:示した箇所ではBSp73ASおよびその形質移入体をHGFで導入し、MetおよびERKの活性化を材料および方法に記載したように測定した。数字は、コンピュータプログラムImageJにより算出した誘導倍数(fold induction)を示す。全ての実験を少なくとも3回行ない、同様の結果を得た。B:Aで使用した細胞を同系ラットの右後脇腹に皮下注射した(材料および方法)。4週間後、免疫組織化学的分析のためにリンパ節および肺を調製した。表したリンパ節は腋窩リンパ節である。肺について2枚の写真を表示しており、矢印は転移を示す。C:コントロール−shRNAまたはMet−shRNAを発現するレトロウイルスに感染させたASs6腫瘍のパラフィン切片の免疫組織化学的分析。切片を抗GFP抗体で染色してshRNA形質導入領域をモニタリングした、またはホスホ−Met抗体で染色した。倍率20倍。 CD44v6特異的ペプチドが腫瘍細胞の転移性拡散をブロックすることを示す図である。A:示したように、CD44v6特異的ラットペプチド、CD44v6特異的抗体またはコントロールペプチド(マウス)の存在下でBSp73ASs6細胞をHGFで誘導した。ホスホ特異的抗体を使用して、MetおよびErkの活性化を測定した。数値は誘導倍数を示す。B:BSp73ASs6細胞をBD10ラットの右後脇腹に皮下注射した。腫瘍増殖から1週間後に、動物をCD44v6ペプチド(腫瘍投与または静脈内注射)、コントロールペプチド、CD44v6抗体またはPBSで処理した(材料および方法)。図1に記載したように、転移に関して腋窩リンパ節(左側)および肺(右側)を分析した。C:CD44v6ペプチドまたはコントロールペプチドのどちらかで処理した動物の肺の切片をH&EおよびPASで染色した。H&E−ヘマトキシリンおよびエオシン;PAS−過ヨウ素酸シッフ反応。倍率1.5倍。D:示すように28日にわたる処理による動物におけるBSp73ASs6腫瘍の増殖カーブ。ノギスを使用して、処理の開始後に毎週および28日にわたり連続して、PBS、CD44v6抗体、CD44v6ペプチドまたはコントロールペプチド(マウス)で処理したラットの平均腫瘍体積を測定した。 インビボでのCD44v6ペプチドの原発性腫瘍および転移への特異的結合を示す図である。A:左側:BSp73ASs6細胞を固定し、1時間にわたりDY681標識CD44v6ラットペプチドまたはマウスペプチド(コントロール)のどちらかで染色した。20倍の対物レンズを備えたレーザー走査型共焦点顕微鏡(Leica TCS2 SP2)を使用して撮像した。右側:それぞれDY681ラットv6ペプチドとマウスペプチドの存在下においてHGFでBSp73ASs6細胞を誘導し、Erkの活性化を測定した。数値は誘導倍数を示す。B:BSp73ASs6細胞(3週間にわたり増殖させた)の皮下腫瘍を有するラットに、200μgのDY681ラットv6ペプチドまたはDY681マウスv6ペプチド(コントロール)を静脈内注射し、Optix MX2(ART、モントリオール、カナダ)を使用するNIRF撮像により分析した。蛍光強度をNC(正規化関数)で表示する。指定のペプチドの注射後の様々な時点で得た一連の蛍光データセットでは、2日の範囲内でラットv6ペプチドが腫瘍に結合するがマウスv6ペプチドは結合しないことを示す24時間後のおよび48時間後の蛍光シグナルが見られる。C:DY681ラットv6ペプチドを注射したラット由来の腫瘍および肺のエクスビボ走査から、腫瘍領域全体だけでなくラットペプチドの転移への結合を示す肺の特定領域において特異的蛍光シグナルが見られた。 膵癌の同所性モデルにおいてCD44v6ペプチドがヒト腫瘍細胞の転移を防ぐことを示す図である。A:L3.6pl細胞をヒトv6ペプチドまたはコントロールとしてのラットv6ペプチドで処理した後、10ng/mlのHGFで誘導した。Erkの活性化をウェスタンブロットで測定した。数字は誘導倍数を示す。B:L3.6pl細胞を雄のヌードマウス(材料および方法)の膵臓の上部に同所的に注射した。7日後、動物にヒトCD44v6ペプチドまたはコントロール(ラット)ペプチド(各20μg)を注射した。ペプチド注射を週当たり3回繰り返した。最初のペプチド処理から23日後に動物を屠殺した。腫瘍を単離し、CD44v6発現(BIWA)またはコントロールとしての二次抗体に関して染色した。ヘマトキシリンで核を染色した。C:ホスホ−Met抗体およびMet抗体を使用する、v6ペプチドまたはコントロールペプチドで処理した動物由来のL3.6pl腫瘍の免疫蛍光染色。DAPIで核を染色する。Dの上部:式 体積=(幅)2×長さ/2を使用して、実験の終了時に、v6ペプチドまたはコントロールペプチドのどちらかで処理した動物の腫瘍体積を測定した。バーは、実験の終了時の平均腫瘍体積を表す。Dの下部:15匹の動物からなる、ペプチドの内の1つで処理した各群の動物。バーは、転移を有する動物のパーセントを示す。ペプチドの内の1つで処理した各群の動物は15匹の動物から成った。全てのグラフにおいて、スチューデントt検定:***p<0.001を使用して有意性を算出した。 膵癌の同所性モデルにおいてCD44v6ペプチドがヒト腫瘍細胞の転移を防ぐことを示す図である。E:コントロールペプチドまたはCD31特異的抗体を有するv6ペプチドで処理したL3.6pl腫瘍の染色。倍率は50倍である。グラフは、5つの独立した腫瘍から算出した、平均血管数または平均血管サイズを示す。F:v6ペプチド(培養培地中に200ng/ml)の存在下でまたは非存在下でL3.6pl細胞により産生されたヒトVEGF濃度。バーは、3つの独立した実験で得た3通りからの平均VEGF濃度を反映する。Gの左側:v6ペプチドまたはコントロールペプチドで処理した動物の肝臓の巨視的な転移を調べた。右側:バーは転移の平均数を示す。ペプチドの内の1つで処理した各群の動物は15匹の動物から成った。全てのグラフにおいて、スチューデントt検定:***p<0.001を使用して有意性を算出した。 ヒト膵癌モデルの原発性腫瘍および転移におけるCD44v6ペプチドの特異的蓄積を示す図である。A:左側:DY681標識CD44v6ヒトペプチドまたはDY681標識CD44v6ラットペプチドのどちらかでL3.6pl細胞を染色した。レーザー走査型共焦点顕微鏡(Leica TCS2 SP2)で撮像した。右側:DY681ヒトv6ペプチドまたはDY681ラットv6ペプチドの存在下でL3.6pl細胞をHGFで誘導し、Erkの活性化を測定した。数字は誘導倍数を示す。B:図4に記載したように3週間にわたりL3.6pl腫瘍を同所的に誘導し、その後、DY681ヒトv6ペプチドまたはDY681ラットv6ペプチドを1回静脈内注射した(各20μg)。Pearl(登録商標)Impulse Small Animal Imaging System(Li−Cor)を使用して、麻酔したラットにおいて注射から24時間後にペプチドの結合を分析した。ペプチド処理していない、腫瘍がない動物および腫瘍を有する動物をコントロールとして使用した。 ヒト膵癌モデルの原発性腫瘍および転移におけるCD44v6ペプチドの特異的蓄積を示す図である。C:Bに示す動物から原発性腫瘍、肝臓および脾臓を切除し、標識ペプチドの蛍光をエクスビボでモニタリングした。横のスケールは同期のシグナル強度を示す。 CD44v6ペプチドによる、既存の転移の復帰を示す図である。A:実験手順の略図。ラットまたはヌードマウスにおいてBSp73ASs6細胞またはL3.6pl細胞を注射した。3週間にわたり腫瘍を成長させ、転移を3週の期間後に検出した。v6ペプチドまたはコントロールペプチド(ラットでは200μg、ヌードマウスでは20μg)で処理した群では、3週間後に処理を開始した。更に21日後に動物を屠殺し、肺または肝臓の転移に関して分析した。B:BSp73ASs6皮下腫瘍を有し、v6ペプチド(ラット)またはコントロールペプチド(マウス)で処理したラットの肺を示す。下部の左側:定量化は転移の平均数を表す。各群で使用した動物の数を表3に示す。下部の右側:転移を有する動物の数のグラフ評価を表す。C:L3.6pl膵臓腫瘍を有し、v6ペプチド(ヒト)またはコントロールペプチド(ラット)で処理したマウス由来の肝臓を示す。下部の右側:コントロールペプチド処理動物およびCD44v6ペプチド処理動物における肝転移の数を評価するグラフを示す。下部の右側:転移を有する動物の数のグラフ評価を表す。 既に生じた転移においてCD44v6ペプチドがアポトーシスを誘導することを示す図である。腫瘍細胞の注射から3週間後に肺転移を有する動物に、CD44v6ペプチドまたはコントロールペプチドを1日おきに注射した。指定の日に、各群の内の1匹の動物を屠殺した。開裂カスパーゼ−3および開裂カスパーゼ−8(材料および方法)に対する抗体を使用して、肺転移におけるアポトーシスをパラフィン切片でモニタリングした。転移の領域に印を付けた(M)。倍率は4.5倍である。実験を2回行ない、同様の結果であった。 表1から3を示す図である。 ラット膵臓細胞におけるERKの活性化へのペグ化ラットCD44v6ペプチドの効果を示す図である。 ラット膵臓細胞におけるERKおよびMetの活性化へのペグ化ラットCD44v6ペプチドの効果を示す図である。 結腸癌細胞におけるHGF誘導性クラスター形成へのペグ化ラットCD44v6ペプチドの効果を示す図である。 いくつかのECにおいてMetおよび下流シグナル伝達の活性化にCD44v6が必要であることを示す図である。様々なEC(HUVEC、HAOECおよびHCMEC)を血清飢餓させ、いくつかの試薬(αCD44v6、v6 14merならびにコントロールIgGおよびコントロールペプチド)と共にインキュベートした。増殖因子HGFを添加し、細胞を溶解させた。細胞溶解物中のタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、ウェスタンブロット分析にかけた。Metおよびその下流標的であるErkのリン酸化型を検出するホスホ特異的抗体により、MetおよびErkの活性化を検出した。異なる試料の等量のローディングを確認するために、膜をストリッピング溶液と共にインキュベートし、全てのMetタンパク質およびErkタンパク質を認識する抗体で再度確かめた。数字は、コンピュータプログラムImageJで算出した誘導倍数(fold induction)を示す。 VEGF−A165により誘導されるVEGFR−2および信号伝達の活性化がCD44v6に依存することを示す図である。様々なEC(HUVEC、HAOECおよびHCMEC)を血清飢餓させ、いくつかの試薬(αCD44v6、v6 14merならびにコントロールIgGおよびコントロールペプチド)と共にインキュベートした。次いで、細胞をVEGF−A165で誘導し、溶解させた。細胞溶解物をSDS−PAGEにロードし、ウェスタンブロット分析にかけた。受容体型チロシンキナーゼVEGFR−2およびその下流標的であるErkのリン酸化型を検出する抗体により、VEGFR−2およびErkの活性化を検出した。総VEGFR−2濃度および総Erk濃度を認識する抗体により、ローディングコントロールを行なった。数字は、コンピュータプログラムImageJで算出した誘導倍数を示す。 A:L3.6pl細胞においてHGFにより誘導されるMetおよび信号伝達の活性化がCD44v6に依存することを示す図である。L3.6pl細胞をヒトv6ペプチド(ヒトv6 14mer)またはコントロールとしてのラットv6ペプチドで処理した後、10ng/ml HGFで誘導した。MetおよびERKの活性化をウェスタンブロットで測定した。数字は誘導倍数を示す。実験を少なくとも5回繰り返した。B:HGFにより誘導されるc−Metおよび信号伝達の活性化がCD44v6 HeLa細胞に依存することを示す図である。飢餓させたHeLa細胞またはHT29細胞を37℃で10分にわたりv6ペプチド(ヒトv6 14mer)またはコントロールペプチドと共にインキュベートし、次いで指定の時点で、25ng/mlのHGFで誘導した。次いで、細胞を溶解させ、溶解物をホスホ−MetおよびMetに関するウェスタンブロット分析にかけた。C:HT29細胞においてHGFにより誘導されるc−Metおよび信号伝達の活性化がCD44v6に依存することを示す図である。ホスホ特異的抗体を使用して、上記に記載したようにHT29におけるHGF依存性のc−MetおよびErkのリン酸化を測定した。示した箇所では、細胞をCD44v6ペプチド(ヒトv6 14mer)またはコントロールペプチド(実施例3の材料および方法を参照)で前処理した。ローディングコントロールをそれぞれc−Met抗体とチューブリン抗体で染色した。 EGFおよびERとは対照的に、TGF−α、BC、Her、HB−EGFまたはARによるErbB受容体の誘導がCD44v6に完全に非依存的であることを示す図である。血清飢餓させたHT29細胞を100ng/mlのCD44v6特異的ペプチド(ヒトv6 14mer)またはコントロールペプチドと共に5分にわたりプレインキュベートした。その後、示したように細胞を20ng/mlの様々なErbBリガンドで誘導した。細胞溶解物をSDS−PAGEにより分離した。ウェスタンブロッティングを使用して、ErbBリガンド誘導性のErkキナーゼのリン酸化を検出した。 HT29細胞においてErbB受容体のEGF依存性の誘導をCD44v6特異的ペプチドによりブロックすることができることを示す図である。血清飢餓させたHT29細胞を100ng/mlのCD44v6特異的ペプチド(ペプチド1=14mer、ペプチド2=5mer)またはコントロールペプチドと共に5分にわたりプレインキュベートした。その後、細胞を20ng/mlのEGFまたはTGFαで誘導して溶解させた。細胞溶解物をSDS−PAGEにより分離した。ウェスタンブロッティングを使用して、EGF誘導性のおよびTGFα誘導性のErkキナーゼのリン酸化を検出した。 ヒトCD44v6特異的ペプチドがHGF誘導性の細胞散乱およびマトリゲルへの浸潤をブロックすることを示す図である。24ウェルプレート中でHT29細胞の散乱を測定した。最初に、4.5×10個の細胞を37℃で播種し、24時間後に、更に24時間にわたり細胞を血清飢餓させた。細胞を未処理のままにした(コントロール)、または後に24時間にわたりHGF(50ng/ml)で処理した。示した箇所では、細胞をv6特異的ペプチド(ヒトv6 5mer、10mer、14mer)またはコントロールペプチドで処理した後、30分にわたりHGFで誘導した。位相差顕微鏡を使用して撮像した。倍率40倍。 ECの遊走にCD44v6が必要であることを示す図である。HUVECおよびHAOECをコンフルエンスまで増殖させ、滅菌ピペットチップで細胞単層を傷付けた。洗浄後、示すように、CD44v6に対する抗体、CD44v6ペプチド(ヒトv6 14mer)またはコントロールペプチドと共に細胞をインキュベートした。リガンドHGF、VEGF−A165またはVEGF−A121を添加し、24時間後にECの遊走を分析した。数字は、コンピュータプログラムImageJにより定量化した、スクラッチ領域における空白領域のパーセントを示す。 HUVECの球状体(750個の細胞)を懸滴で生成したことを示す図である。1mg/mlラット尾部コラーゲンIおよび0.6%(重量/体積)メチルセルロースを含有する内皮細胞増殖培地にHUVECの球状体を懸濁させ、48ウェルプレートに分配した(30個の球状体/ウェル)。37℃での凝固後に、100ng/ml v6ペプチド(ヒトv6 14mer)またはコントロールペプチドとVEGF(40ng/ml)とを含有する内皮細胞増殖培地で混合物を覆った。48時間後に撮像し、コンピュータプログラムImageJで新芽形成を定量化した。 血管新生ランゲルハンス島により産生された血管新生因子の混合物へのHUVECの反応を、CD44v6特異的阻害剤により低減することができることを示す図である。HUVEC細胞とCD44v6抗体、CD44v6ペプチドまたはコントロールペプチドとを混合し、次いで、コラーゲンゲル中に懸濁させた。8〜9週齢のRIP1 Tag2マウスの膵臓から単離した過形成性血管新生ランゲルハンス島をHUVEC/コラーゲン混合物の上部に載置し、培地で覆った。3日毎に新たな抗体またはペプチドを添加し、5〜7日後に撮像した。ECの血管新生反応を誘導した島の数を、分析した全ての島のパーセンテージとして示す。定量化のために、条件当たり60個の島を分析した。CD44v6抗体およびCD44v6ペプチド(ヒトv6 14mer)の両方が血管新生反応を低減させ、抗体で得た低減は有意である(p<0.05)。 様々な濃度(注射当たり2μg、20μgおよび200μg)でヒトv6ペプチドおよびこのPEG化誘導体(PEG840およびPEG2000)を使用する、転移および原発性腫瘍の増殖の阻害を示す図である。A:L3.6pl腫瘍を、1週間にわたりヌードマウスに同所的に移植し、その後、3週間にわたり週当たり3回、指定のペプチドを腹腔内注射した。実験の終了時に動物を屠殺して調べた。赤色の矢印は転移を示す。スチューデントt検定:***p<0.001を使用して有意性を算出した。各群は3匹の動物から成った。 様々な濃度(注射当たり2μg、20μgおよび200μg)でヒトv6ペプチドおよびこのPEG化誘導体(PEG840およびPEG2000)を使用する、転移および原発性腫瘍の増殖の阻害を示す図である。B:原発性腫瘍体積の定量化。C:動物当たりのマクロ転移の平均数の概要。 様々な濃度(注射当たり0.2μg、2μg、10μgおよび20μg)でCD44v6ペプチド(直鎖14mer)およびヒト環状8merを使用する、転移および原発性腫瘍の増殖の阻害を示す図である。A:L3.6pl腫瘍を、1週間にわたりヌードマウスに同所的に移植し、その後、3週間にわたり週当たり3回、指定のペプチドを腹腔内注射した。実験の終了時に動物を屠殺して調べた。赤色の矢印は転移を示す。スチューデントt検定:p<0.01、***p<0.001を使用して有意性を算出した。各群は5匹の動物から成った。 様々な濃度(注射当たり0.2μg、2μg、10μgおよび20μg)でCD44v6ペプチド(直鎖14mer)およびヒト環状8merを使用する、転移および原発性腫瘍の増殖の阻害を示す図である。B:各動物における巨視的転移の平均数の概要。Cは、2μgの投薬量から始まる転移性伝播の低下および20μgでの完全な阻害を示す。C:v6 14merおよび環状8merは原発性腫瘍の増殖を低減する。 原発性腫瘍の増殖に関する、v6 14merと、この誘導体(14merPEG840、14merPEG2000、ミリストイル化14mer、D−アミノ酸誘導体DOTA CD44v6−14[daa7]およびDOTA CD44v6−14[r14]、環状8mer、環状5merならびにミリストイル化環状8mer)との対照比較を示す図である。L3.6pl腫瘍を、1週間にわたりヌードマウスに同所的に移植し、その後、3週間にわたり週当たり3回、指定のペプチドを腹腔内注射した。実験の終了時に動物を屠殺して調べた。A:指定の化合物(n=5)で処理した動物の平均腫瘍サイズを示す。スチューデントt検定:***p<0.001を使用して有意性を算出した。各群は5匹の動物から成った。B:各群における動物の個々の腫瘍サイズ。 転移の阻害に関する、v6 14merと、この誘導体(14merPEG840、14merPEG2000、ミリストイル化14mer、D−アミノ酸誘導体DOTA CD44v6−14[daa7]およびDOTA CD44v6−14[r14]、環状8mer、環状5merならびにミリストイル化環状8mer)との対照比較を示す図である。A:指定の化合物に関する原発性腫瘍および肝転移の代表例。赤色の矢印は転移を指す。赤色の円:コントロール群における原発性腫瘍の非常に強力な血管新生に留意すべきである。B:転移を有する動物の数および動物当たりの転移の平均数の概要。 CD44v6ペプチドが十二指腸における腫瘍の数を低減することを示す図である。6週間にわたり、18週齢のAPC/Min/+マウスをv6 14merで処理し(腹腔内注射)、屠殺して十二指腸における総腫瘍数を評価した。A:腫瘍数の巨視的分析。B:腫瘍のサイズによる総腫瘍数の統計的評価。 v6 14merによる処理によって、肺における原発性腫瘍の増殖および巨視的な転移形成が減少することを示す図である。マウス当たり1×10個のマウス4T1細胞を、50μl Matrigelを加えた50μl RPMIに希釈し、10匹の雌のBALB/cマウスの第6乳腺脂肪体に注射した。注射から1週間後に、100μl PBSに溶解した20μgのマウスv6 14merまたは100μl PBSに溶解した20μgのコントロールペプチド(ラットv6 14mer)をマウスに腹腔内注射した。2週間にわたり週毎に3回、注射を行なった。2週間後にマウスを屠殺し、原発性腫瘍および肺を摘出した。A:v6ペプチド処理群における腫瘍体積の全般的な減少。B:原発性腫瘍の血管新生をモニタリングするための内皮マーカーCD34に関する免疫蛍光染色。全血管領域の減少をグラフで表す。C:v6ペプチドにより巨視的な肺転移が減少する。黒色の矢印は転移の例に印を付ける。スケールバーは1cmのサイズに相当する。肺転移の平均数の統計的評価。スチューデントt検定:p<0.01;**p<0.005を使用して有意性を算出した。各群は5匹の動物から成った。 A:v6−PEG3000−パルミチン酸アミドおよびV6−PEG2000のMALDI−TOFスペクトルを示す図である。B:PEG−QD、10%v6−PEG−QDおよび30%v6−PEG−QDのSEM像を示す図である。 CD44v6ペプチド結合量子ドットがCD44v6発現腫瘍細胞に特異的に結合することを示す図である。A:パネル1〜3:100μg/mlのPEG化量子ドット(コントロール)、10%CD44v6−ペプチド−PEG−QDまたは30%CD44v6−ペプチド−PEG−QDと共にインキュベートしたAS10細胞またはASs6細胞をDEPIで共染色し、蛍光顕微鏡で視覚化した。パネル4:mCherry(赤色)を遺伝子導入したAS10細胞およびCFP(青緑色)を遺伝子導入したASs6細胞を共培養し、30%v6−ペプチド−QDで染色した。倍率40倍。 CD44v6ペプチド結合量子ドットがCD44v6発現腫瘍細胞に特異的に結合することを示す図である。B:量子ドット染色細胞の割合を定量化した。C:AS10細胞またはASs6細胞を、10分にわたりPBSまたは100μg/mlのPEG−QD、10%CD44v6−ペプチド−PEG−QDまたは30%CD44v6−ペプチド−PEG−QDと共にインキュベートし、FACS測定によりQD結合に関して分析した。
いくつかの本発明の好ましい実施形態に関して本発明をより詳細に説明する前に、一般的な定義を以下に記載する。
本明細書で具体的に開示していない任意の構成要素(element)または構成要素(elements)、限定事項(limitation)または限定事項(limitations)の非存在下で、以下で例示的に説明する本発明を適宜実行することができる。
特定に実施形態に関しておよびいくつかの図面を参照して本発明を説明するが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
用語「含む」を本発明の説明および特許請求の範囲で使用する場合、該用語は、その他の構成要素を除外しない。本発明の目的のために、用語「からなる」は用語「から構成される」の好ましい実施形態であるとみなす。以下において群が少なくともいくつかの実施形態を含むと定義する場合、このことは、これらの実施形態のみから好ましくはなる群も開示していると理解すべきである。
本発明の目的のために、用語「得られる」は、用語「得ることができる」の好ましい実施形態であるとみなす。以下において例えば抗体を特定の供給源から得ることができると定義する場合、このことは、この供給源から得られる抗体も開示していると理解すべきである。
単数名詞を示す際に不定冠詞または定冠詞、例えば「a」、「an」または「the」を使用する場合、その他に何らかが具体的に述べられている場合を除き、これらはその名詞の複数形を含む。用語「約(about)」または「約(approximately)」は本発明に関連して、当該特徴の技術的効果が依然として保証されると当業者が理解するであろう精度の間隔を意味する。この用語は、示した数値の±20%の、好ましくは±15%の、より好ましくは±10%の、更により好ましくは±5%のずれを典型的には示す。
更に、本明細書および特許請求の範囲において、類似の構成要素を区別するために用語「第1の」、「第2の」、「第3の」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」または「(i)」、「(ii)」、「(iii)」、「(iv)」等を使用するが、これらを逐次的なまたは経時的な順序で記載する必要はない。そのように使用する用語を適切な状況下で交換可能であること、および本明細書に記載の本発明の実施形態を本明細書に記載以外のまたは本明細書で例示以外の順序で実行可能であることを理解すべきである。
用語「第1の」、「第2の」、「第3の」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」または「(i)」、「(ii)」、「(iii)」、「(iv)」等が方法または使用またはアッセイの工程に関する場合、別段の指示がない限り、工程間に時間コヒーレンスまたは時間間隔コヒーレンスは存在しない。即ち、本明細書で上記のまたは下記の用途において別段の指示がない限り、工程を同時に行なうことができる、または各工程間に数秒の、数分の、数時間の、数日の、数週間の、数カ月のもしくは更に数年の時間間隔が存在することができる。
専門用語をその一般的な意味で使用する。ある用語に特定の意味を与える場合、以下のその用語を使用する文脈において、その用語を定義するだろう。
上述したように、本発明は、ヒトの転移性癌の処置に使用するためのペプチドまたはペプチド化合物に関する。
本発明は、アミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)またはアミノ酸配列K−E−Q−W−F−G−N−R−W−H−E−G−Y−R(配列番号6)のペプチドがヒト膵癌細胞の転移を阻害することができるだけでなくヒト膵癌の同所性動物モデルにおいて既に生じた転移を除去することもできるという、以下に記載の実験的発見にある程度基づく。そのため、様々な転移性癌で同じ効果を観測することができると仮定するのが妥当であると思われ、特に、この癌がCD44v6の発現を示す場合に妥当であると思われる。NからAへのおよびEからAへの変異により、アミノ酸配列A−R−W−H−A(配列番号3)のペプチドがMet活性化を抑止することができることが更に分かった(Matzke他、Cancer Res. (2005)、65 (14)、6105〜6110を参照)。KからAへのおよびFからAへの非保存的アミノ酸置換(Matzke他、上記参照)にもかかわらずN−R−W−H−E(配列番号2)によるMet活性化への効果が維持されるならば、アミノ酸配列X−R−W−H−X(配列番号1)(式中、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択される)のペプチドを膵癌の処置だけでなく一般的な転移性癌の処置にも使用することができると仮定するのが妥当であると思われる。
そのため、本発明は一実施形態において、ヒトの転移性癌の処置において使用するための化合物であって、少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYかを含む群から選択される)(配列番号1)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物を含む化合物に関する。
好ましくは、本発明は一実施形態において、ヒトの転移性癌の処置において使用するための化合物であって、少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号4)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物を含む化合物に関する。一例は、アミノ酸配列A−R−W−H−A(配列番号3)のペプチドまたはこのペプチド模倣物である。
更により好ましくは、本発明は一実施形態において、ヒトの転移性癌の処置において使用するための化合物であって、少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、K、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、EまたはDを含む群から選択される)(配列番号5)を含むペプチドを含む化合物に関する。最も好ましい実施形態の一例として、ペプチドはアミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)を含むことができ、好ましくは該アミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)からなることができる。
用語「ペプチド」は本明細書で使用する場合、少なくとも上述の5個のアミノ酸および最大で14個のアミノ酸を含む任意の化合物を示す。
本発明に係るペプチドが上述の5個のアミノ酸よりも多くを有する場合、このアミノ酸は、例えばアミノ酸配列K−E−Q−W−F−G−N−R−W−H−E−G−Y−R(配列番号6)のペプチドまたはそのバリアント中に見られるものであることができる。配列番号6のアミノ酸7位〜11位が配列番号2に相当することが留意される。配列番号2のペプチドに関しては、Met活性化への悪影響を有することなくアミノ酸1位、2位、3位、4位、5位、6位、12位、13位または14位をアラニンに置換することができる、アラニン置換によるリンカースクリーン分析(linker screen analysis)で発見されている。そのため、そのようなペプチドは、X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、X11が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、X12が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、X13が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択され、X14が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYを含む群から選択される)(配列番号7)のアミノ酸6〜12位、5〜13位、4〜14位等を含む任意のペプチドであることができる。好ましくは、上記に提示した原理に従って選択を行なう。そのため、Xは、Kに類似のアミノ酸または非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIのどちらかであることができる。同様の考察をX、X、X、X、X、X、X11、X12、X13またはX14に適用する。好ましい一実施形態では、そのようなより長いペプチドは、X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号8)のアミノ酸6〜12位、5〜13位、4〜14位等を含む。更により好ましい実施形態では、そのようなより長いペプチドは、X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択される)(配列番号9)のアミノ酸6〜12位、5〜13位、4〜14位等を含む。
ペプチドは直鎖状であることができ、分枝状であることができ、および分枝しているまたは分枝していない環状であることがきる。環状の、分枝状のおよび分枝した環状のペプチドは、翻訳後の天然プロセスによって生じることができる、または合成方法によって作製され得る。
最も好ましい実施形態のいくつかでは、本発明に係るペプチドは、上述したように5個のまたは14個のアミノ酸を含み、より好ましくは該アミノ酸から成り、配列番号1、2、3、4、5または6〜10のペプチドを含む。本発明の最も好ましい実施形態は配列番号2または配列番号6のペプチドに関する。
用語「ペプチドを含む化合物」は、例えば薬学的に許容される塩の形態で、ペプチドを含む化合物を指す。この用語は、例えば化学的にまたは酵素的に改変されているペプチドも同様に指し、その結果、例えば配列番号1、2、3、4または5のペプチドは、以下に記載する更なる改変を含む。配列番号2のペプチドの改変型が特に好ましい。
そのため、用語「ペプチドを含む化合物」およびその文法的バリエーション、例えば「ペプチド化合物」として本明細書に記載のペプチドの塩が挙げられ、好ましくは本明細書に記載のペプチドの薬学的に許容される塩が挙げられる。用語「薬学的に許容される塩」に包含される塩は、本発明のペプチド化合物の非毒性塩を指す。代表的な塩およびエステルとして、以下のものが挙げられる:アセテート、アスコルベート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビカルボネート、ビスルフェート、ビタータレート、ボレート、カミシレート(caamsylate)、カーボネート、シトレート、ジヒドロクロリド、メタンスルホネート、エタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、シクロヘキシルスルファメート、キネート、エデテート、エジシレート、エストレート、エシレート、フマレート、グルコネート、グルタメート、グリセロホスフェート(glycerophophates)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ラクテート、ラクトビオネート、ラウレート、マレート、マレエート、マンデレート、メシレート、ムケート、ナプシレート、ニトレート、n−メチルグルカミン、オレエート、オキサレート、パルモエート、パモエート(エンボネート)、パルミテート、パントテネート、ペルクロレート、ホスフェート/ジホスフェート、ポリガラクツロネート、サリシレート、ステアレート、スクシネート、スルフェート、スルファメート、サブアセテート、スクシネート、タンエート、タートレート、トシレート、トリフルオロアセテートおよびバレレート。その他の塩として、Ca塩、Li塩、Mg塩、Na塩およびK塩;リシンまたはアルギニン等のアミノ酸の塩;グアニジン、ジエタノールアミンまたはコリン;アンモニウム、置換アンモニウム塩またはアルミニウム塩が挙げられる。従来の方法によりこの塩を調製する。
しかしながら、「ペプチドを含む化合物」のペプチド成分は、配列番号1〜9のいずれかのペプチド配列に加えて、その他のタンパク質由来のアミノ酸配列を含むことができる。従って、本発明のペプチド化合物として、異種アミノ酸配列に融合した配列番号1〜9から本質的になる異種融合ペプチドが挙げられる。異種アミノ酸配列は、1個の、2個の、3個の、4個のまたはより多くのアミノ酸を含むことができる、または該アミノ酸からなることができる。異種アミノ酸配列は、例えば少なくとも5個のまたは少なくとも10個のまたは少なくとも20個の異種アミノ酸を含むことができる、または該異種アミノ酸からなることができる。異種アミノ酸を、CD44由来の配列である配列番号1〜9のN末端および/またはC末端に融合させ、細胞膜を横切る転位の改善等の、その他の機能性を付与することができる。
本発明のペプチド成分が単離されたペプチドであることが好ましい。用語「単離」は、自然の状態から「人の手によって」変更されたことを意味する。「単離」された組成物または物質が天然に存在する場合、該組成物または物質は、その元々の環境から変化しているもしくは該環境から取り出されているまたはその両方である。この用語を本明細書で用いる場合、例えば、生きている動物中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離」されていないが、該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの天然の状態で共存する材料から分離されている、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離」されている。
本発明のペプチドが純粋な状態であることも好ましい。好ましくは、ペプチドは≧80%の純度であり、好ましくは≧90%の純度であり、より好ましくは≧95%の純度であり、更により好ましくは≧99%の純度であり、夾雑している巨大分子、特にその他のペプチドに対して99.9%の純度を超えている薬学的に純粋な状態が特に好ましい。ペプチドが感染因子および発熱因子を含まないことが好ましい。
好ましくは、精製されたペプチドは、その他のペプチドを実質的に含まない。この文脈で使用する場合、用語「純粋な」は、二量体等の別の物理的形態での同じペプチドの存在を排除しない。
本発明のペプチドを、化学合成によりまたは宿主細胞中での組み換え発現により調製することができる。化学合成による調製が好ましい。タンパク質産物として、例えば配列番号2のまたは本発明のその他のペプチドの内のいずれかの化合物の、液相ペプチド合成または固相ペプチド合成の技法による産生が可能である。合成的なペプチド合成アプローチは一般に、自動合成器および固相としての適切な樹脂の使用を伴い、該樹脂には、所望のペプチドのC末端のアミノ酸が結合している。次いで、合成が完了するまで、典型的にはFMOCベースのまたはBOCベースの化学プロトコルのどちらかを使用して、適切に保護された形態の次の所望のアミノ酸を連続的に連結させることにより、N末端方向へのペプチドの伸長が達成される。次いで、通常は樹脂からのペプチドの開裂と同時に、保護基をペプチドから開裂し、次いで、従来の技法を使用して、例えば、溶媒としてアセトニトリルを使用し、イオン対形成剤としてトリフルオロ酢酸を使用する逆相HPLCにより、ペプチドを単離して精製する。そのような手順は一般に、多くの刊行物に記載されており、例えばStewartおよびYoung、「Solid Phase Peptide Synthesis」、第2版、Pierce Chemical Company、Rockford、III. (1984)を参照することができる。
用語「ペプチド模倣物」は、対応するペプチドを模倣するように設計されている低分子タンパク質様鎖を指す。ペプチド模倣物は、既存のペプチドの改変から、またはペプトイドおよびβ−ペプチド等のペプチドを模倣する同様のシステムを設計することにより典型的には生じることができる。アプローチに関係なく、生物活性に悪影響を及ぼすことなく代謝安定性および生物学的利用性等の分子特性を有利に調整するように、改変された化学構造が設計される。
典型的には、ペプチド模倣物は、ペプチド結合のアミド基の代わりにメチル化アミド基等の改変骨格を有し、プロテアーゼによる分解に対するペプチド模倣物の安定性を高めることができる。代わりにまたは加えて、ペプチド模倣物として、非天然アミノ酸またはD−鏡像異性体を挙げることができる。ペプチド模倣物の共通のテーマは、骨格構造中のおよび/またはアミノ酸中の分子変化が、ペプチド模倣物の生物活性に悪影響を及ぼさないように、対応するペプチドと比べてペプチド模倣物の全体構造への実質的影響を有すべきでないことである。そのため、ペプチド模倣物は、対応するペプチドの同配体である。好ましいペプチド模倣物は例えば等配電子のペプトイドであり、該ペプトイドは、骨格のペプチド結合中にポリ−N−置換グリシンを含む。従って、本発明によれば、ペプチド模倣物は、以下に記載する実験において例えば配列番号1、2、3、4または5のペプチド等の以下に記載のペプチドと同じ活性を有するだろう。最も好ましいペプチド模倣物は、配列番号2のペプチド模倣物等の5個のアミノ酸を有するもの、8個のアミノ酸を有するもの(配列番号16、17または18のペプチド模倣物等)または14個のアミノ酸を有するもの(配列番号6、7、8、9または10を参照)である。そのようなペプチド模倣物は、好ましくは等配電子のペプトイドであり、該ペプトイドは、骨格のペプチド結合中にポリ−N−置換グリシンを含む。
本発明はまた、例えばヒトの転移性癌を処置するための医薬組成物としてのペプチドまたはペプチド模倣物の改変型の使用も意図する。そのような改変型は例えば、例えばプロテアーゼによるペプチドまたはペプチド模倣物の分解を減少させるおよびペプチドまたはペプチド模倣物の安定性を高めるために、FMOCもしくはBOC等のブロッキング基によりまたはメチル化等のアルキル化により、各N末端および/またはC末端で化学的に改変されているペプチドまたはペプチド模倣物に関する。その他の改変として、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、即ち環状ペプチド、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化した環状の5mer(配列番号2をベースとする)、6mer、8merまたは14mer等のミリストイル化した環状ペプチド等のミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化等のタンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA媒介性の付加、ユビキチン化およびsumo化が挙げられる。そのようなペプチド模倣物の例を表4に示す。好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、2000Daの分子量を有するPEGまたは200〜20000Daの範囲の分子量を有するPEGでペグ化した14mer、14mer、環状8merまたは環状5merである。典型的なペプチド模倣物は1つまたは複数の改変を有することができる、即ち環状であることができる、ならびに該ペプチド模倣物を更にミリストイル化することができる、ペグ化することができるおよび/またはD−アミノ酸の使用による等の本明細書に記載の任意のその他の方法で改変することができる。ペプチド模倣物の典型例として、配列番号1〜18とL−アミノ酸および/またはD−アミノ酸とを有するものが挙げられる。
例えばZitzmann他(2005、Journal of Nuclear Medicine、46(5):782)に記載された、当業者に一般的に既知である方法により、ペプチドの環化を行なう。
本発明の化合物を、細胞毒性化合物および/または化学療法薬と併用投与することもできる。本発明の化合物を1種もしくは複数種の細胞毒性化合物および/もしくは化学療法薬と一緒に投与することが可能である、または、細胞毒性化合物を本発明のペプチドもしくは化合物に共有結合的に接合させることが可能である。好ましい細胞毒性化合物はマイタンシノイドであり、好ましい化学療法化合物はタキサンである。
加えてまたは代わりに、本発明に係るペプチドまたはペプチド模倣物の好ましい改変型として、例えば、生物学的特性が改善されている、例えば溶解性、吸収、生物学的半減期等が改善されている、本発明に係るペプチドまたはペプチド模倣物の化学的なまたは酵素的な改変型が挙げられる。改変により、分子の毒性を選択的に低減することができ、分子のあらゆる望ましくない副作用等を選択的に除去するまたは軽減することができる。例えば生物学的半減期を増加させる改変として、ペグ化、ヘシル化、パシル化、グリコシル化末端でシアル酸残基を有するグリコシル構造を有する等が挙げられる。
用語「ペグ化(pegylated)」およびその文法的バリエーション、例えば「ペグ化(pegylation)」は全て、ペプチドまたはペプチド模倣物が様々な型で(例えば単離型で、薬学的に許容される塩として等)、本明細書に記載のペプチドまたはペプチド模倣物に共有結合するPEG部分、即ちポリエチレングリコール(polyethylenglycol)鎖を含むことを説明する。
以下に記載するように、配列番号2のヒトCD44v6ペンタペプチドのカウンターパートであり、PEG750またはPEG3000で改変されている、配列NEWQG(配列番号11)のラットCD44v6ペンタペプチドは、少なくともPEG3000部分が、約620Daである配列番号11の配列の算出した分子量よりも著しく高い分子量、即ち3000Daを有するにもかかわらず、MetおよびErkのHGF刺激性のおよびCD44媒介性の活性化を阻害することができる。更に、そのような分子量のPEGは、長いジグザグ構造を有することが知られている。従って、驚くことに、配列番号11のペンタペプチド等の比較的小さいペプチドの改変により活性は失われない。同じ事を配列番号2のペンタペプチド、このペプチド模倣物またはより長いペプチド、例えば配列番号6のペプチド等のヒトカウンターパートに適用すべきであると結論付けるのが正しいと思われる。更に驚くことに、非ペグ化ペプチドと比べてペグ化ペプチドによりERKシグナル伝達がより効果的に阻害される。
用語「PEG部分」または「ポリエチレングリコール(Polyethylenglycol)部分」は以下で使用する場合、約200Da〜約35,000,000Daの平均分子量のPEGを指す。約400Da〜約20,000Daの、好ましくは約600Da〜約10,000Daの、更により好ましくは約700Da〜約10,000Daの平均分子量を有するPEGを使用することが好ましい。最も好ましいPEGは、約800Da〜約8,000Daの、約900Da〜約7,000Daの、約1,000Da〜約6,000Daの、例えば約2,000Daの、約3,000Daの、約4,000Daのまたは約5,000Daの平均分子量を有する。好ましい実施形態では、PEGは、200〜20000Daの範囲の平均分子量を有する。
PEGは概して、その平均分子量により命名される。そのため、9個の繰り返し単位を有するPEGは400Daの平均分子量を有し、PEG−400と呼ばれるだろう。そのため、本発明のために検討するPEGは、PEG400、PEG600、PEG50、PEG840、PEG1000、PEG1500、PEG2000、PEG3000、PEG3350、PEG4000、PEG4600、PEG8000、PEG10000、PEG12000等のPEGであることができる。なぜならば、これらは例えばSigma−Aldrichから市販されているからである。
PEGは、直鎖状の、分枝状の、星状のまたは櫛状のPEGとして生じることができる。分枝状のPEGは、中心コア基から放射状に広がる3〜10個のPEG鎖を有する。星状のPEGは、中心コア基から放射状に広がる10〜100個のPEG鎖を有する。櫛状のPEGは、通常はポリマー骨格にグラフトされた複数のPEG鎖を有する。
本発明の目的のために、直鎖状のPEGを使用することが通常は好ましく、PEG2000、PEG3000、PEG4000もしくはPEG5000またはより高い分子量のPEG等の約1,000〜6,000Daの範囲の平均分子量を有する直鎖状のPEGを使用することが特に好ましい。
PEG部分を更に改変することができる。例えば、脂肪アルコールおよび脂肪酸でPEG部分を共有結合的に改変することができる。そのような更なる改変により、改変ペグ化ペプチドおよび改変ペグ化ペプチド模倣物を構築することまたはミセル様構造体またはリポソーム様構造体に少なくとも組み込むことが可能になる。
本発明はまた、そのようなミセル様構造体またはリポソーム様構造体にも関する。ペグ化ペプチドまたはこのペグ化ペプチド模倣物、およびそのようなペグ化ペプチドまたはこのペグ化ペプチド模倣物を含む医薬組成物は、例えば、薬物溶解性の改善、投薬の頻度の低減、循環半減期の延長、薬物安定性の上昇、タンパク質分解からの保護の強化等を提供することができる。脂肪アルコール鎖または脂肪酸鎖等の更なる改変により、細胞膜との相互作用の改善が可能になることから、ミセル様構造体またはリポソーム様構造体により、ペグ化ペプチドまたはペグ化ペプチド模倣物をより効率的に送達することが更に可能になる。更に、ミセル様構造体またはリポソーム様構造体は、化学療法薬等の追加の薬学的活性剤を含むことができる。膵癌の場合、この薬剤として例えばゲムシタビンを挙げることができる。乳癌の場合、この薬剤としてハーセプチンを挙げることができる。
本発明はまた、追加の薬学的活性剤を含むそのようなミセル様構造体またはリポソーム様構造体にも関する。そのようなミセル様構造体またはリポソーム様構造体により、ペグ化ペプチドまたはこのペグ化ペプチド模倣物によるそのような化学療法薬の例えばCD44v6を発現する腫瘍へのターゲティングが可能になり、そのため、治療のターゲティングおよび改善が可能になる。
ペプチドまたはペプチド模倣物をPEG部分で改変する方法は当業者に既知である。PEG部分の共有結合を化学的にまたは酵素的に行なうことができる。
化学的な改変における最初の工程では概して、PEGポリマーの一方の末端または両方の末端のどちらかが官能化される。官能化により、単官能性の、ホモ二官能性のまたはヘテロ二官能性のPEGを区別することができる。
化学的なペグ化プロセスは概して、2つのタイプ、即ち溶液相バッチプロセスまたはオンカラムフェドパッチプロセス(on-column fed-batch process)に分類され得る。一般に採用されるバッチプロセスは、好ましくは4〜6℃の温度での、適切な緩衝溶液中での試薬の混合、その後の、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィー等の技法を使用する所望の産物の分離および精製を含む。
PEG誘導体に適した官能基の選択は、PEGに連結され得る分子上の利用可能な反応基の種類に基づく。タンパク質およびペプチドの場合、典型的な反応性アミノ酸として、リシン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、チロシンが挙げられる。アルデヒド官能性ポリマーとの接合による部位特異的な部位として、N末端のアミノ基およびC末端のカルボン酸を使用することもできる。例えばペプチドのN末端のみを除いてアミノ酸とPEGとを反応させないことが好ましい場合、例えばFMOCでアミノ酸の官能基をブロックし、ペプチドをペグ化し、次いでアミノ酸を脱ブロックすることができる。
ペグ化ペプチド等のPEG誘導体を形成するために使用する技法は一般的に、PEGポリマーと、ヒドロキシル基と反応する基、典型的には無水物、酸塩化物、クロロギ酸塩および炭酸塩とを反応させている。第2世代のペグ化化学では、アルデヒド、エステル、アミド等のより効果的な官能基を接合に利用可能である。
ヘテロ二官能性PEGは、2つの構成成分を連結するのに非常に有用であり、この連結では、親水性で柔軟な生体適合性のスペーサが必要である。ヘテロ二官能性PEGに好ましい末端基は、マレイミド、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、アミン、カルボン酸およびNHSエステルである。
本発明に係るペグ化ペプチドおよびこのペグ化ペプチド模倣物を、場合により薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物の形態で提供することができる。
以下では、本発明に係る化合物、即ちペプチド、このペプチド模倣物およびこれらの改変型、これらの化合物を含む医薬組成物ならびにこれらの化合物を使用する方法をどのようにしてヒトの転移性癌の処置に使用することできるかを述べる。以下において転移性癌の処置を言及する際は常に、この言及は、好ましい実施形態として、以下に記載するペンタペプチド、即ち配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5のペンタペプチド、特に配列番号2のペンタペプチド、これらのペプチド模倣物またはこれらの改変型、例えばこれらのペグ化型の使用を意図すると理解されたい。
以下に記載の実験から導き出すことができるように、実験で使用したペプチドは、膵癌モデルにおける転移の形成を阻害することできただけでなく、既に形成された転移の退縮を誘導することができた。述べたように、本発明は、特定の乳癌、転移性癌を処置するための化合物、医薬組成物の使用ならびに該処置への本明細書に記載の方法の適用に関する。
本発明に係る転移性癌として、CD44v6の発現が癌組織で観測されている、または例えばCD44v6抗体による対応する検査時に観測され得る転移型の癌が挙げられる。そのため、本明細書に記載の化合物および医薬組成物による処置に患者が適格であるかどうかを調べるために、腫瘍組織の組織診およびCD44v6の発現に関する検査を行なうことができる。腫瘍がCD44v6を発現することが明らかになり得る場合には、および転移が形成され始めているまたは既に形成されており、おそらく体中に広がっている場合には、この腫瘍を本発明に係る転移性癌とみなす。本発明に係る転移性癌として、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌、頭頸部扁平上皮癌(head and neck sqamous cell cancer)、乳癌およびその他の転移型が挙げられる。
ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌および乳癌等の様々な癌のそのような転移癌型を、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルのTNM解剖学的段階/予後群システム(7th edition, 2010, Springer)に従って同定することができる。
本発明に係る転移性癌を、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルのTNM解剖学的段階/予後群システム(第7版、2010、Springer)に従ってステージIIIまたはステージIVの癌と分類することができる。対癌米国合同委員会のTNM(腫瘍結節転移)病期分類システムにより、所属リンパ節(N)に転移があるかどうか、および遠隔転移が既に検出され得る(M)かどうかの問題である病期分類、ここで病期分類とは原発性腫瘍(T)のサイズおよび範囲による癌の分類である、が可能になる。次いで、この指標は、患者の治療において取るべき様々な経路に関する指標として概して受け取られ、この指標により、疾患の信頼性が高い予後も可能になる。これが、TNMシステムが腫瘍医にとって不可欠なツールとなっている理由である。遠隔転移を臨床的に検出することができないが、遠隔転移が発生し始めている可能性がある場合、パラメータMは0の値、即ちM0を受け取る。MをM0に設定する場合、TおよびNの値に応じて患者をステージIIIと分類することができる。そのため、例えば、任意のT、N3およびM0の場合、患者をステージIIIまたは例えば乳癌の場合にはステージIIIcと分類することができる(対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアル(第7版、2010、Springer)の362頁を参照)。そのようなステージIIIの患者のまたはステージIIIの最高のサブクラス(例えば乳癌に関するステージIIIC)を有する患者の骨髄中において、循環腫瘍細胞および微小転移が更に示される場合、これにより予後が悪化され得る。そのため、本発明の目的のために、転移性癌を、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルのTNM解剖学的段階/予後群システム(第7版、2010、Springer)に従ってステージIIIと分類することができる。
好ましくは、本発明に係る転移性癌の場合、MはM1である、即ち遠隔転移を臨床的に検出することができ、その結果、転移性腫瘍を、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルのTNM解剖学的段階/予後群システム(第7版、2010、Springer)に従ってステージIVと分類することができる。
本発明が転移性癌に言及する場合には常に、最も好ましくは本発明がホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌または乳癌等の癌に関する場合には常に、この癌は、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルのTNM解剖学的段階/予後群システム(7th edition, 2010, Springer)に従ってステージIVと分類できることを理解すべきである。対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアル(7th edition, 2010, Springer)の各章(例えば、結腸直腸癌に関しては143〜146頁、膵癌に関しては241〜250頁、扁平上皮癌に関しては301〜314頁、347〜376頁等を参照)に見出すことができる、本システムによる各癌の分類に関する特定の要件が参照により援用される。
そのため、特に好ましい実施形態は、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌または乳癌等の転移性癌を処置するための、以下に記載するペンタペプチド、例えば配列番号1、2、3、4または5のペンタペプチド、最も好ましくは配列番号2のペンタペプチド、このペプチド模倣物またはこれらの改変型、およびこれらの化合物を含む医薬組成物の使用に関し、該転移性癌は、対癌米国合同委員会の癌病期分類マニュアルに従ってステージIVと分類できる。
化合物およびこの塩を、少なくとも1種のそのような化合物のみを含む、または場合により、薬学的に許容される担体、賦形剤および/もしくは希釈剤との混合物で少なくとも1種のそのような化合物を含む、医薬組成物(例えば、液体、懸濁液、エマルション、ロゼンジ剤、サシェ、アンプル、エアロゾル、粉剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射液、溶液等)として上述したように製剤化することができる。
化合物/この塩および医薬組成物を、例えば吸入による経口投与用に、経鼻投与用に、または皮下注射等の注射による投与用に製剤化することができる。
これより実験に関して本発明を説明するが、実験は限定の意味で解釈されるべきではない。
(実施例)
1.材料および方法
1.1 細胞株
ラット膵癌細胞株BSp73AS(ASとも表す)およびその形質移入体が説明されており(Orian-Rousseau他、Genes & Development(2002)、16:3074〜3086)、それらを、10%FCS(PAA、ケルベ、ドイツ)を加えたRPMI(Invitrogen、カールスルーエ、ドイツ)中で増殖させた。ヒト膵癌細胞L3.6pl(Bruns他、Neoplasia (1999)、1、50〜62)を、10%FCS(PAA、ケルベ、ドイツ)、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、L−グルタミンおよびMEMビタミン溶液(Pan Biotech、アイデンバッハ、ドイツ)を補充したDMEM(低グルコース;Invitrogen、カールスルーエ、ドイツ)中で維持した。
1.2 抗体およびその他の試薬
CD44v6に対するヒトモノクローナル抗体(VFF18)はBender(eBioscience、キャンパスヴィエナバイオセンター2、A−1030、ヴィエナ、オーストリア)からの贈与であり、抗ERK1(K−23)、c−Met(C−28)およびGFP抗体(sc−101525)はSanta Cruz Biotechnology(ハイデルベルク、ドイツ)からであり、開裂カスパーゼ−8抗体(IMG−5703)はImgenex(サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)からであり、CD31抗体(MEC13.3)はBD Biosciences、ハイデルベルク、ドイツからであり、開裂カスパーゼ−3(Asp175)、ホスホ−Met(Tyr1234/1235)(D26)、Met(25H2)およびホスホ−ERKホスホ−p44/42抗体はCell Signaling Technology(ビバリー、英国)からであった。ラットエクソンv6特異的抗体1.1ASMLが説明されている(Gunthert他、Cell(1991)、65、13〜24)。西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された二次抗体はDako(グロストルップ、ドイツ)からであった。Alexa FluorR546ヤギ抗ウサギ二次抗体をLife Technologies(ダルムシュタット、ドイツ)から購入した。HGFをPeprotech(ハンブルク、ドイツ)から購入した。CD44v6ラットペプチドおよびCD44v6ヒトペプチド(14merおよび5mer)が説明されている(Matzke他、Cancer Res. (2005)、65(14)、6105〜6110)。ラット14merの配列はKEKWFENEWQGKNP(配列番号10)であり、ラット5merはNEWQG(配列番号11)に対応する。ヒト14merはKEQWFGNRWHEGYR(配列番号6)に対応し、ヒト5merは以下の配列を有する:NRWHE(配列番号2)。インビボでの撮像実験用に、ラット11mer WFENEWQGKNP(配列番号12)、マウス11mer WFQNGWQGKNP(配列番号13)およびヒト11mer WFGNRWHEGYR(配列番号14)を蛍光色素DY681で標識した。ラット細胞またはラット同系モデルの場合におけるコントロールペプチドとして、特異的ラットv6ペプチドと同一の長さのヒトv6ペプチドを使用した。ヒト腫瘍細胞またはヒト同所性腫瘍モデルの場合、コントロールとしてラットv6ペプチドを使用した。全てのペプチドはBachem(ブーベンドルフ、スイス)またはIntavis(ケルン、ドイツ)により産生された。凍結乾燥ペプチドを1%BSA含有PBS中に1mg/mlのストック濃度まで再懸濁した。PBS中に希釈することにより、最終希釈液を得た。
1.3 shRNAのレンチウイルス遺伝子導入
Metをサイレンシングするために使用するレンチウイルスシステムは既に説明されている(Corso他、Oncogene (2008)、27(5):684〜93)。他に記載されているようにレンチウイルスを産生した(Vigna他、J.Gene Med. (2000)、2(5):308〜16)。手短にいうと、4×10個の293T細胞(p12〜15)を10cmのプレートに播種した。24時間後にパッケージングベクターVSV−G、PMDLおよびRev、TetRならびにレンチウイルス構築物(Met−shRNA構築物またはコントロール−shRNA構築物のどちらか)を混合し、450μlの最終体積までTEを添加した。この混合物に、450μlの2.5M CaCl溶液を添加した。ボルテックスおよび5分間のインキュベーション後、DNA−TE−CaCl混合物を全速力でボルテックスしつつ、500μlの2×HBS溶液を滴加した。沈殿物を293T細胞に添加した。16時間後、培地を置き換えて5mM 酪酸ナトリウムを含有する新鮮培地を添加した。24時間後および48時間後に培地を回収した。次いで、8μg/mLのポリブレンの存在下で、ウイルス含有培地を標的細胞BSp73ASs6(70%培養密度)に添加した。感染から24時間後に培地を置き換え、1μg/mlの最終濃度までドキシサイクリン(Doxycylcline)を添加することによりshRNAの産生を誘導した。TetRおよびコントロール−shRNAまたはMet−shRNAを形質導入したBSp73ASs6細胞を72時間にわたりドキシサイクリンで処理した後、動物でのアッセイまたは注射を開始した。
1.4 ウェスタンブロット分析
血清飢餓させた細胞(24時間)を、5分にわたり37℃において増殖因子HGF(10ng/mL)で誘導した。示した箇所では、細胞をペプチド(100ng/ml)で処理した後に、10分にわたり37℃で誘導した(100ng/mLのCD44v6ペプチドまたはコントロールペプチド)。HGFによる誘導後、細胞を氷冷リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。活性化されたMetおよびErkを検出するために、細胞をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、即ち100mMジチオスレイトール(DTT)を含有するサンプルバッファーに溶解させ、煮沸し、ホスホ−Metおよびホスホ−ERKに対する抗体を使用するウェスタンブロット分析にかけた。Met抗体またはERK抗体で確かめることにより、ストリッピング(62.5M Tris、pH6.8、2%SDS、0.8%DTT)後の同じブロットに対してローディングコントロールを行なった。増強化学発光システム(Thermo Fisher Scientific、シュヴェーアト、ドイツ)を使用してブロットを染色した。ウェスタンブロット分析におけるバンドをプログラムImage J(National Institutes of Health)で定量化した。
1.5 細胞培養の上清におけるHGFおよびVEGFの定量測定
Roche(マンハイム、ドイツ)およびR&D Systems(ヴィースバーデン、ドイツ)のQuantikine Human HGF ImmunoassayおよびQuantikine Human VEGF Immunoassayを使用して、L3.6pl細胞の細胞培養培地におけるヒトHGFおよびヒトVEGFの濃度の測定を行なった。この目的のために、指定の各ペプチドの存在下で、15cmのプレート中において5日にわたり3×10個の細胞を培養した。上清(20ml)を遠心分離し(1200rpm)、メーカーの説明書に従ってアッセイを行なった。
1.6 動物実験
雄の胸腺欠損のヌードマウス(NCI−nu)をHarlan(ロスドルフ、ドイツ)から購入した。BD10ラットおよびBDXラットを自家で繁殖させた。Regierungsprasidium Karlsruheにより承認された施設内に動物を収容して特定の病原体フリー条件下で維持した。動物実験に関するドイツの規則に従って全ての動物を取り扱った。Regierungsprasidium Karlsruheから動物実験を承認された(35−9185.817G−192/10)。ゲッティンゲンで撮像実験(図3)を行ない、これはRegierungsprasidiumから認可された(35−9185.817G−106/09)。
ラット同系モデルの場合、1×10個の膵臓細胞(BSp73ASおよびその形質移入体)を動物の右後脇腹に皮下注射した。4週間にわたり腫瘍を発育させた。この期間中、Met−shRNAまたはコントロール−shRNAを発現するBSp73ASs6細胞を注射した動物に、飲料水中のドキシサイクリンを与えた。実験の終了時に、原発性腫瘍を単離した。肺および腋窩リンパ節を分析した。組織を、亜鉛固定剤(1Lの0.1M Tris pH7.4中の0.5g酢酸カルシウム、5.0g酢酸亜鉛、5.0g塩化亜鉛)中で24時間にわたりインキュベートし、更なる分析のためにパラフィンに埋め込んだ。ペプチド処理または抗体処理の場合、最初の処理前に1週間にわたり腫瘍を発育させた。そのように表した箇所では、4週間にわたり週当たり3回の注射当たり200μgのペプチドまたは抗体を動物に与えた。ノギスを使用して腫瘍の増殖を毎週モニタリングした。処理の開始後28日目にまたは30日目に動物を屠殺した。
ヒト同所性モデルの場合、L3.6pl膵癌細胞(24〜26継代)をトリプシン処理後にハンクス平衡塩溶液(Invitrogen、カールスルーエ、ドイツ)に懸濁した。説明されたように細胞を雄のヌードマウスの膵臓に同所的に注射した(Bruns CJ他(1999) Neoplasia 1(1):50〜62)。7日後に、15匹のマウスからなる2つの群それぞれにヒトv6ペプチドまたはラットコントロールペプチド(20μg)のどちらかを腹腔内注射した。本明細書に記載した実験および示した実験全てに、ラット14merコントロールペプチドまたはヒト14merペプチドのどちらかを使用した。次いで、全ての実験をラット5merコントロールペプチドまたはヒト5merペプチド(N−R−W−H−E)で繰り返した。14merペプチドの場合と同じ結果を観測した。注射を21日にわたり週当たり3回繰り返した。最終処理から2日後に動物を屠殺した。
調べるために、上記に記載したように、退縮した転移(BSp73ASs6またはL3.6plのどちらか)を移植した。3週間にわたり腫瘍が増殖した。このとき、コントロール群において全ての動物で転移が発症した。週当たり3回、動物に20μgのペプチド(L3.6pl同所性マウスモデル:ヒトv6ペプチドもしくはラットコントロールペプチド)を腹腔内注射した、または200μgのペプチド(ラット同系モデル:ラットv6ペプチドもしくはマウスコントロールペプチド)を静脈内注射した。ペプチド処理の開始から23日後に動物を屠殺した。
1.7 Optix MX2を使用するインビボでの撮像
既に説明されているように(Napp他、Int J Cancer(2010)、127:1958〜1974)、近赤外蛍光(NIRF)撮像システムOptix MX2(ART、モントリオール、カナダ)を使用して、BD10ラットまたはBDXラットにおいて皮下で増殖したBSp73ASs6腫瘍のインビボでの撮像を行なった。毛皮の自己蛍光を避けるために、撮像前に腫瘍周囲のラットの毛を剃った。その後、2%イソフルランを使用して動物に麻酔をかけ、データの取得の間中、装置の加熱プレート上に動物を静かに固定した。蛍光バックグラウンドを低減するために、NIRF撮像前に1週間にわたり、ラットにクロロフィル低減飼料(Provimi Kliba AG、カイザーアウークシュト、スイス)を与えた。いかなる蛍光プローブも注射しない動物のネイティブ走査により、全てのインビボ分析を先行させた。インビボ分析の場合、尾静脈を介してラットにDY681標識したラットv6の11merペプチドまたはヒトv6の11merペプチド200μgを注射した。等量のDY681標識マウスv6の11merペプチドをコントロールに注射した。ラット11merは配列WFENEWQGKNP(配列番号12)を有し、マウス11merは配列WFQNGWQGKNP(配列番号13)を有し、ヒト11merは配列WFGNRWHEGYR(配列番号14)を有した。全てのペプチドを蛍光色素DY681で標識した。ペプチドの注射から指定された時間後にデータを取得した。エクスビボでのモニタリングの場合、ペプチド注射から24時間で動物を屠殺し、Optix MX2を使用して目的の腫瘍および器官をエクスビボで走査した。
700nmのロングパスエミッションフィルタと共に670nmでの励起を使用して、DY681の蛍光を測定した。1.5mmのラスター、走査点当たり0.5〜1秒の光子収集時間および可変レーザー出力で走査を行なった。OptiView(ART)でデータセットを解析した。蛍光強度データを、測定した蛍光強度(数値)を可変レーザー出力および積分時間に関して正規化した正規化数値(NC)で表示し、これにより様々な設定での測定の比較が可能になる。
1.8 Pearl撮像装置を使用するインビボでの撮像
Pearl(商標)撮像装置(LI−COR Biosciences、バートホンブルク、ドイツ)を使用して、L3.6pl腫瘍を有するマウスのインビボでの撮像を行なった。このシステムは、励起用に2つのレーザー(685nmおよび785nm)を使用し、シグナル検出用に電荷結合素子検出器を使用する。レーザー励起により、深組織への浸透が可能になる。近赤外検出により、組織の自己発光の低減に起因して高感度が達成される。画像を標準化するために、発明者らはPearl Cam Softwareを使用した。撮像の1週間前にクロロフィル低減飼料を動物に与え、蛍光バックグラウンドを低減させた(Regime210、安全な飼料、オジー、フランス)。撮像前に、2.0%イソフルランでマウスに麻酔をかけた。動物を撮像装置の加熱プレート上に置き、撮像ドロワー(imaging drawer)中のノーズコーンを介してイソフルランを継続的に送った。700nmおよび800nmの白色光で撮像した。ペプチドの静脈内注射前に、およびDY681標識ヒトv6ペプチドまたはコントロールとしてのDY681標識ラットv6ペプチドのどちらかの注射から24時間後に、動物を撮像した。各撮像セッション直後に動物を屠殺し、腫瘍、肝臓および脾臓を単離し、700nmおよび800nmの白色光においてエクスビボで走査した。
1.9 免疫蛍光
ASs6細胞またはL3.6pl細胞を、Lab−TekR Chamber SlideTM(Nunc、ネーピアビル、イリノイ州、米国)のウェル当たり5,000個の細胞で播種した。翌日に細胞を冷PBSで洗浄し、室温で30分にわたり4%ホルマリンで固定した。室温で1時間にわたり、PBS中の1%BSAにより非特異的結合をブロックした。細胞をDY681標識ペプチドと共に1時間にわたりインキュベートした。PBSによる3回の洗浄工程後、蛍光マウンティング培地(Dako、グロストルップ、デンマーク)と共にカバーガラスを載置し、レーザー走査型共焦点顕微鏡Leica TCS2 SP2(Exton、ペンシルバニア州、米国)により免疫蛍光を測定し、Leica共焦点ソフトウェアを使用して処理した。20倍の対物レンズを撮像に使用した。
1.10 組織学的検査
組織形態学的分析のために、肺のパラフィン埋め込み切片をヘマトキシリンおよびエオシンならびに過ヨウ素酸シッフ(H&EまたはPAS)で染色した。20μmおきに切片を分析することにより全組織ブロックの連続切片を調べ、各切片において、微小転移の存在を評価するために病理学者によって定常的に使用される手順に従って、転移性沈着物の存在および進展を評価した。
1.11 免疫組織学的分析および免疫蛍光分析
7μm厚のパラフィン切片を脱パラフィンして再水和した。P−Met染色の場合、1mM EDTA pH8.0中でスライドを煮沸し、続いて沸点より低い温度で15分にわたりインキュベートすることにより抗原アンマスキングを実現し、CD31染色の場合、切片を37℃で10分にわたりプロテイナーゼK(8μg/ml)で処理した。P−Metによる免疫蛍光染色の場合、60分にわたり5%ヤギ血清(DAKO、グロストルップ、デンマーク)(1×PBS/0.3%TritonX−100に希釈した)で非特異的結合をブロックした。免疫組織化学的検査の場合、内因性ペルオキシダーゼをPBS中の3%Hで最初にブロックし、続いてビオチンブロッキングシステム(Dako、グロストルップ、デンマーク)と共にインキュベートし、次いでPBS中の5%FCSと共にインキュベートすることにより非特的結合を阻害した。切片を4℃で、P−Met抗体(D26、1×PBS/1%BSA/0.3%TritonX−100中に1:50で希釈)、Met抗体(C−28、1:50で希釈)、GFP抗体(sc−101525、1:50で希釈)もしくはCD31抗体(5μg/ml)と共に一晩インキュベートした、またはVFF18(5μg/ml)と共に一晩インキュベートした。PBS中での洗浄後、切片を45分にわたり、Alexa Fluor R 546ヤギ抗ウサギ(免疫蛍光P−Met染色および免疫蛍光Met染色の場合、1:500で希釈)またはビオチン化二次抗体(免疫組織化学染色の場合、VFF18およびCD31用にウサギ抗ラット抗体、P−Met用にヤギ抗ウサギ、GFP用に開裂カスパーゼ−3および開裂カスパーゼ−8およびウサギ抗マウス、1:500で希釈)と共にインキュベートした。DAB(3,3’−ジアミノベンジジン)染色の場合、切片をストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ接合体(Dako、グロストルップ、デンマーク)で処理し、DAB基材システム(3,3’−ジアミノベンジジン;Biozol、エヒング、ドイツ)で現像した。免疫蛍光の場合、核染色にDAPIを使用した。
2.結果
2.1 Metに対するCD44v6の共受容体機能は、ラット膵臓腫瘍細胞の転移性拡散の決定的な手段である
Met受容体に対するCD44v6の共受容体機能が腫瘍細胞の転移性拡散の決定的な手段であるかどうかを調べるために、エクソンv6のみを含有するまたはCD44v1〜10アイソフォームに含まれる全てのバリアントエクソンv1〜10を含有するCD44アイソフォームがラットBSp73AS細胞に転移能を付与することができたかどうかを最初に調べた。この細胞では、CD44v6含有アイソフォームが遺伝子導入されている場合を除いて、HGFによりMetを誘導することできない(図1A)。例えばCD44v1〜10Δv6におけるエクソンv6の除去により、HGFによるMetの活性化が損なわれた(図1A)。
親BSp73AS細胞および上述した構築物(CD44v6、CD44v1〜10およびCD44v1〜10Δv6)を安定的に遺伝子導入した細胞を同質遺伝子的ラットに皮下注射した。全ての動物において、1週間後に原発性腫瘍を既に触知することができた。CD44v6またはCD44v1〜10を遺伝子導入した細胞の場合、対応する動物の腋窩リンパ節が注射から2週間後に既に肥大しており、6週間後に動物を屠殺した。肺およびリンパ節の組織形態学的実験から、腫瘍を発現するCD44v6またはCD44v1〜10を有する全てのラットが結節性の肺内転移を発症したことが明らかになった。対照的に、リンパ節または肺のどちらにおいても、親細胞またはCD44v1〜10Δv6を遺伝子導入した細胞から原発性腫瘍が発生したが転移は発生しなかった(図1Bおよび表1)。この動物の肺では、微小転移を検出しなかった(表1)。そのため、Met活性化が可能である、CD44v6等のCD44アイソフォームはまた、BSp73AS細胞に転移能も付与する。
次に、Met shRNA配列を発現するレンチウイルスをBSp73ASs6細胞(CD44に加えてCD44v6アイソフォームを発現するBSp73AS細胞)に安定的に遺伝子導入した。細胞がMetを発現しないことを確認した(図1A、最後の2つのレーン)。次いで、この細胞(またはコントロールsh−RNA配列を発現するレンチウイルスを感染させた細胞)を同系動物に注射した。注射から6週間後に動物を調べた。全ての動物が原発性腫瘍を発症した(表1)。しかしながら、コントロールsh−RNA発現レンチウイルスを感染させた細胞の原発性腫瘍でのみMet活性化を観測し、Met sh−RNAを発現する原発性腫瘍では観測しなかった(図1C)。更に、Met発現が消失しなかった場合、肺または腋窩リンパ節のどちらにおいても転移または微小転移を検出せず(図1B、表1)、このことは転移プロセスに対するMetの重要性を示す。このデータから、CD44v6およびMetの両方がBSp73AS細胞の転移性拡散に必要であると結論付けることができる。
次に、共受容体機能を妨げる配列番号2(ヒトCD44v6の5merペプチド)または配列番号6(ヒトCD44v6の14merペプチド)のペプチドのラット対応物も転移形成を阻害するかどうかを調べた。ラットペプチドは、配列KEKWFENEWQGKNP(配列番号10)およびNEWQG(配列番号11)を有した。BSp73ASs6細胞を同系ラットに皮下注射し、配列番号10または配列番号11のラットCD44v6ペプチド(もしくはマウスのコントロールペプチド)またはCD44v6抗体(もしくはコントロールとしてのIgG)を腫瘍内にまたは静脈内に週に3回注射した。v6特異的抗体による処理またはv6特異的ペプチドによる処理の両方とも転移を完全に阻害した(図2B、表2)。CD44v6ペプチドで処理した動物由来の肺切片では、PASおよびH&E染色を使用する組織学的分析で転移または微小転移のどちらも検出することができなかった(図2Cおよび表2)。このことは、肺で多数の転移を検出した、コントロールペプチド(またはコントロールIgG)で処理した動物から得た結果との対比において明らかである(図2B、C)。興味深いことに、原発性腫瘍の増殖はどちらの処理の影響も受けなかった(図2D)。このことは、BSp73AS細胞またはBSp73ASv1〜10Δv6細胞もv6形質移入体と同様に原発性腫瘍の形成を誘導することができるという事実と両立することができる。まとめると、実験から、Metに対するCD44v6の共受容体機能がラット膵臓細胞系における転移性拡散の決定的な手段であること、およびMetに対するCD44v6の共受容体機能が原発性腫瘍の増殖の主要因ではないことが示唆される。
2.2 インビボでのCD44v6ペプチドの腫瘍細胞への特異的結合
CD44v6ペプチドの腫瘍部位へのおよび転移への結合の特異性を検証するために、ならびにインビボでの結合反応速度を推定するために、Optix MX2による近赤外蛍光(NIRF)撮像を行なった。この目的のために、以下の2種のCD44v6ペプチドをフルオロフォアDY681で標識した:ラット特異的CD44v6ペプチド、即ちrv6ペプチドDy681、およびコントロールとしてのマウス特異的CD44v6ペプチド、即ちmv6ペプチドDy681。図3Aの右側に示すように、インビトロでの試験により、実際には標識ラットペプチドのみがMet活性化を阻害し、マウスペプチドはMet活性化を阻害しなかったことが明らかとなった。更に、組織培養液中において、DY681標識ラットv6ペプチドはBSp73ASs6細胞に結合したが、DY681標識マウスv6ペプチドはBSp73ASs6細胞に結合しなかった(図3Aの左側)。
インビボでの実験の場合、BSp73ASs6細胞を同系ラットに皮下注射した。3週間後、尾静脈(tail vain)への注射により、どちらかの標識v6ペプチドをラットに投与した。指定の時点で、Optix MX2により、腫瘍領域における蛍光の蓄積を測定した。Dy681標識ペプチドの静脈内(i.v.)注射前に、マウスをネイティブに走査して自己蛍光バックグラウンドの濃度を測定した。次いで、Dy681標識v6ペプチドの皮下腫瘍へのインビボ結合反応速度を測定した。ペプチド注射から1日後に、2日後に、3日後および7日後に撮影した一連の代表的なNIRF画像に示すように、インビボで少なくとも2日にわたり腫瘍領域全体で高蛍光強度を検出し、1日目で最大であった。コントロールペプチドであるm6ペプチドDy681の注射では、腫瘍領域全体で蛍光シグナルが全く生じなかった(図3D)。
腫瘍中におけるv6ペプチドの分布を特に調べるために、および肺中におけるv6ペプチドの分布も特に調べるために、ペプチドの注射から24時間後に両方の組織を摘出し、Optix MX2によりエクスビボで調べた(図3C)。エクスビボで走査したおよびrv6ペプチドDy681を投与したマウスから摘出した腫瘍および肺の特定領域においてのみ蛍光強度を検出することができ、mv6ペプチドDy681を事前に注射した全てのコントロールラット由来の腫瘍および肺では蛍光強度を検出することができなかった(図3C)。この結果は、ラットペプチドが皮下のラット膵臓腫瘍に特異的に結合するというインビボでの観測を裏付けており、転移にインビボで結合することもまた更に示唆する。実際に、組織学的分析により、全ての動物の肺において転移の存在が明らかになった。
2.3 配列番号2または配列番号6のヒトCD44v6ペプチドによりヒト膵臓腫瘍細胞の転移形成が阻害される
ヒト膵臓腫瘍への研究を発展させるために、高転移性ヒト膵癌細胞L3.6pl(Bruns他、Neoplasia (1999)、1(1):50〜62)を調べた。この細胞は、該細胞を更に転移させる手段である、肝臓中でおよび膵臓中で数回継代しているCOLO375細胞が起源である。この細胞ではMetがその活性化およびシグナル伝達をCD44v6に依存していることを確認した(図4A)。配列番号2または配列番号6のヒトv6ペプチドの存在下でまたは非存在下で、L3.6pl細胞をHGFで処理し、Met活性化およびERKへの下流シグナル伝達を測定した。ヒトv6ペプチドによりMetおよびERKの両方のリン酸化が阻害された。対応するラットv6ペプチド(コントロールペプチド、配列番号10または11)による処理は、受容体活性化および信号伝達に影響を及ぼさなかった(図4A)。
腫瘍増殖および転移形成へのペプチドの影響を検証するために、免疫不全マウス(NCI−nu)の膵臓中にL3.6pl細胞を同所的に注射した。このマウスは原発性腫瘍を発症し、4週間後に肝臓中に多数の転移を示した。原発性腫瘍は多量のCD44v6を発現する(図4B)。腫瘍におけるホスホ−MetおよびMetに関する免疫蛍光染色で示すように、3週間にわたる週当たり3回のヒト特異的ペプチドの腹腔内(i.p.)注射により、Met活性化が完全に抑圧された(図4C)。このデータは、ペプチドがインビボでMetに対するCD44v6の共受容体機能を妨げるおよびMetリン酸化を抑止することを示す。Metの活性化は種特異的であり、ヒトHGFによってのみヒトMet受容体を活性化することができることから、この結果は、L3.6pl細胞が自らHGFを産生することを示唆する。興味深いことに、ラット系とは対照的に、膵臓における原発性腫瘍の増殖はヒトv6ペプチドにより強力に抑圧された(図4D上部)。膵臓における原発性腫瘍の増殖も強力に抑圧された(図4D下部)。ラット特異的ペプチド(コントロールペプチド)では転移形成へのいかなる影響または原発性腫瘍の増殖のどちらもなかった(図4D)。この結果は、L3.6pl細胞が自らHGFを産生することを示唆する。実際に、培養から5日後の上清(材料および方法を参照)中にヒトHGFを3375pg/mlの濃度で検出した(データを示さず)。
マウス特異的v6ペプチドによる腫瘍血管新生の阻害により原発性腫瘍の増殖が遅延したことを観測した。ここで、v6ペプチド処理腫瘍における血管の数および血管のサイズの減少で例示されるように、ヒトペプチドによる処理は血管新生も縮小させたことが分かる。血管新生の縮小で腫瘍体積の減少が説明される(図4D、E)。v6ペプチドが種特異的な方法で作用することから、血管新生の阻害は、ヒト膵癌細胞によるVEGF産生の阻害よりもマウスの内皮細胞への影響への影響に起因し得ない。実際に、ヒトL3.6pl細胞は、ヒトv6ペプチドによる処理によってブロックされ得る分泌物であるhVEGFを産生する(図4F)。最も目立つ観測は、ヒト特異的ペプチドが肝臓内での転移形成を完全に阻害したことをであった(図4G)。ラット特異的ペプチド(コントロールペプチド)は転移形成または原発性腫瘍の増殖に影響を及ぼさなかった(図4C〜G)。
次いで、小動物撮像システムPearl Impulseを使用して、ヒトCD44v6ペプチドのインビボでの腫瘍への結合の特異性を調べた。ヒト標識ペプチドはL3.6pl細胞中においてMet活性化を阻害したがラットペプチドは阻害せず(図5Aの右側)、細胞培養液中で、ヒト標識ペプチドはL3.6pl細胞に結合したが、ラットペプチドはL3.6pl細胞に結合しなかった(図5Aの左側)。インビボで、蛍光標識(DY681)ヒトペプチドは、同所的に注射したL3.6pl細胞により誘導された腫瘍中に特異的に蓄積した(図5B)。コントロールペプチドで処理した動物では蛍光を検出しなかった。更に、腫瘍を発症したかどうかに関わらずペプチドを投与しなかった動物ではシグナルを観測しなかった(図5B)。標識ヒトv6ペプチドで処理した動物から単離した器官のエクスビボでの分析により、原発性腫瘍だけでなく転移にほぼ確実に対応する肝臓の領域への結合の検出が可能になった(図5C)。そのため、この実験から、CD44v6ペプチドは原発性腫瘍だけでなく遠位の転移も標的とすることが明らかになる。
2.4 既に生じた転移がCD44v6ペプチドにより除去される
ラット系における肺のおよびヒトモデルにおける肝臓の特定の領域へのCD44v6ペプチドの特異的結合から、このペプチドが既に生じた転移に影響を及ぼすことができたかどうかの疑問が惹起される。図2および4に記載の実験において、腫瘍細胞の注射直後にペプチドを投与し、該ペプチドは転移の発生を完全に抑圧した。既に生じた転移へのCD44v6ペプチドの効果を測定するために、その他の実験的設定を使用した。BSp73ASs6細胞を同系ラットに皮下注射し、L3.6pl細胞を雄のヌードマウスに同所的に皮下注射し、3週間にわたり増殖させた。このとき、コントロール群由来の全ての動物は、ペプチド処理に使用した群の場合と同様であることを示唆する転移(表3)を発症していた。次いで、動物を種特異的CD44v6ペプチドまたはコントロールペプチド(ラット系の場合はマウスおよびヒト系の場合はラット)のどちらかで更に3週間にわたり週当たり2回処理し(図6Aのスキーム)、次いで転移の存在に関して検証した。実験の終了時に、コントロールペプチドで処理した全ての動物で転移を検出することができた(BSp73ASs6細胞の場合は表3、図6B、L3.6pl細胞の場合は表3、図6C)が、種特異的CD44v6ペプチドで処理した動物には転移がなかった。そのため、既に生じた転移はCD44v6ペプチドでの処理により除去される。
転移の消失に関する1つの仮説は、ペプチドが第2の器官におけるCD44v6発現転移性細胞のアポトーシスを誘導することである。この仮説を検証するために、BSp73ASs6細胞を使用して上記に記載の実験を繰り返した。BSp73ASs6細胞を同系ラットで皮下注射し、3週間にわたり腫瘍を成長させた。その後、動物を、特異的ラットCD44v6ペプチドまたはコントロールペプチド(マウス)のどちらかを1日おきに注射した10匹の動物からなる2つの群に分けた。ペプチドの各注射から1日後に1匹の動物の肺を取り出し、カスパーゼ3の開裂型を検出する抗体を使用してアポトーシスを測定した。CD44v6ペプチドで処理した動物の腫瘍領域において、ペプチドの最初の注射から早くも3日後にアポトーシス性細胞を検出した。コントロールペプチドを注射した動物ではアポトーシスを全く検出しなかった(図7)。CD44v6ペプチドの最初の注射から8日後に最大のアポトーシスを測定した。CD44v6ペプチドの注射から12日後にはアポトーシスをほとんど観測しなかった。22日目に、CD44v6ペプチドで処理した動物では転移をもはや検出することができなかったが、コントロール動物の肺では転移性拡散が明らかだった(図7)。この実験から、CD44v6ペプチドが転移性細胞のアポトーシスを誘導すると結論付けられる。
ミトコンドリアタンパク質の放出を特徴とする内因性経路、またはアポトーシスに関する、リガンドが結合した細胞死受容体により活性化された外因性経路のどちらがv6ペプチドにより誘導されたかを識別するために、v6ペプチドで処理した転移における開裂カスパーゼ−8の発現を調べた。v6ペプチド処理動物の肺における、カスパーゼ−3の場合に得たものと同様のカスパーゼ−8の活性化の動力学を観測した。この実験から、発明者らは、CD44v6ペプチドは外因性のアポトーシス経路を介して転移性細胞のアポトーシスを誘導すると結論付ける。
ペグ化CD44v6ペプチドはHGF依存性のCD44v6媒介シグナル伝達を阻害する
1.材料および方法
1.1 ペグ化ペプチドの合成
Applied Biosystems自動ペプチド合成機(モデル433A)でペプチド合成を行ない、分取HPLCによりペプチドを精製した。配列NEWQG(配列番号11)のペプチドおよびコントロールペプチドNAAAG(配列番号15)を合成した。質量分析計に接続されたLC(Bruker Daltonics−Bremen(ドイツ)製のμTOF LCMS)により、粗製物および精製物の特徴を明らかにした。
標準的なFmoc固相ペプチド合成プロトコル(例えばFields他、Int J Pept Protein Res. (1990)、35、161〜214、Maisch他、J Am Chem Sco. (2009)、131、15596〜15597、Strandberg他、Biophys J. (2006)、90、1676〜1686およびWadhwani他、J Org Chem. (2006)、71、55〜61を参照)を使用してペプチド合成を行なった。NMP中の20〜22%ピペリジンによりFmoc脱保護を行なった。DMF中のFmoc−アミノ酸:HOBt:HBTU:DIEA(4:4:3.9:8)の混合物を使用してカップリングを行なった。TFA:HO:TIS(93.5:2.5:4)の混合物を使用して、ペプチドを固体支持体から切断した。Nフロー下で切断試薬を除去し、ジエチルエーテルを使用して標識ペプチドを沈殿させた。
ダイオードアレイ検出器が取り付けられたJasco−HPLCシステム(東京、日本)を使用して、35℃において逆相C18カラム(4.6mm×240mm)で分取HPLCを行なった。アセトニトリル/水勾配が0.1%のTFAを使用して、エピマー型ペプチドを分離した。
全てのアミノ酸をNovabiochem(シュヴァルバッハ、ドイツ)から購入した。MeO−PEG−COOH(分子量750Daおよび2000Da)ならびにカップリング試薬(HBTU、HCTU)ならびにDIEAはIris Biotech(マルクトレドヴィッツ、ドイツ)製であり、溶媒およびその他の試薬はVWR−Merck(ブルフザル、ドイツ)製であった。
以下の化合物を合成した:
PEG−コントロールペプチド:PEG−NAAAG、
PEG−ラットCD44v6ペプチド:PEG−NEWQG
パルミチン酸−NH−PEG−CONH−コントロールペプチド
パルミチン酸−NH−PEG−CONH−ラットCD44V6ペプチド
Fmoc−NH−PEG−COOH分子量3000Daを配列番号11または配列番号15のどちらかに最初にカップリングさせることにより、パルミチン酸−NH−PEG−CONH−コントロールペプチドおよびパルミチン酸−NH−PEG−CONH−ラットCD44V6ペプチドを合成した。次いで、ペグ化ペプチドをパルミチン酸と反応させた。
1.2 活性化アッセイ
PEG−コントロールペプチドおよびPEG−ラットCD44v6ペプチドを、受容体型チロシンキナーゼMetおよびERKのHGF誘導性活性化をブロックする能力に関して比較した。
ラット膵癌細胞BSp73ASs6(Ass6とも表す)を、コントロールペプチド(配列番号15)、非ペグ化v6ペプチド(配列番号11)および高濃度のペグ化ペプチド、即ちPEG−ラットコントロールペプチドならびにPEG−ラットCD44v6ペプチドのいずれかと共に37℃で10分にわたりインキュベートした後、HGFで誘導した(10ng/ml;37℃で5分)。
ホスホ−Metおよびホスホ−Erk特異的抗体(ホスホ−MetクローンD16細胞シグナル伝達、ホスホ−Erk p42/44細胞シグナル伝達)を使用する標準的なSDSおよびウェスタンブロッティング技法により、ERKおよびMetの活性化を測定した。
1.3 細胞アッセイ
散乱アッセイを更に行なった。HT29結腸癌細胞を10%FCS含有培地中で増殖させた。播種から1日後に細胞を飢餓させた。3日目に、細胞をHGF(10ng/ml)で誘導し、ペプチドなし、コントロールペプチド(配列番号15)、非ペグ化v6ペプチド(配列番号11)またはペグ化ペプチド、即ちPEG−ラットコントロールペプチドおよびPEG−ラットCD44v6ペプチドのいずれかと共にプレインキュベートした。
2.結果
図9および10は、ペグ化ペプチドがMetおよびERKのHGF依存性活性化の阻害で効果的であることを示す。非ペグ化ペプチドと比べてペグ化ペプチドによりERKがより効果的に阻害される。
図11は、ペグ化ペプチド、更に非ペグ化ペプチドにより細胞が細胞クラスターから離れて解離して遊走するが、コントロールペプチドにより細胞が細胞クラスターから離れて解離して遊走しないことを示す。
インビトロでの結果
本明細書の記載の直鎖CD44v6ペプチド
ラット:14mer KEKWFENEWQGKNP、5mer NEWQG、DY681標識11mer WFENEWQGKNP
ヒト:14mer KEQWFGNRWHEGYR、5mer NRWHE、DY681標識11mer WFGNRWHEGYR
マウス:DY681標識11mer WFQNGWQGKNP
1.ヒトv6ペプチドを使用するRTKのインビトロでの阻害
直鎖ペプチド(ヒト、14mer KEQWFGNRWHEGYR、5mer NRWHE)
使用した細胞株
HT29(結腸直腸癌)
HeLa(子宮頸癌)
HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)
HCMEC(ヒト心微小血管EC)
HAOEC(ヒト大動脈EC)
L3.6pl(ヒト膵癌細胞)
MCF7(ヒト乳癌)
1.1 内皮細胞
血管新生においてCD44v6がMetの共受容体として作用するかどうかを分析するために、様々な種類のヒト血管から単離したいくつかの一次ECを使用した。
ECは、該ECが局在化する血管に応じて形状、機能および細胞間結合のタイプが異なることができる。静脈中のEC(HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞))と比べて、動脈中のEC(HAOEC(ヒト大動脈EC))には高圧がかかっている。毛細血管では、ガスおよび栄養素の主要な交換が行なわれる。EC(例えばHCMEC(ヒト心微小血管内皮細胞))は、この交換を制御するための唯一のバリアである。
このECをHGFで処理した場合、受容体型チロシンキナーゼMetがリン酸化され、Metの下流標的であるErkへのシグナル伝達が促進された(図12)。様々なツールを使用して、この細胞におけるCD44v6のMetシグナル伝達への寄与を分析した。エクソンv6にコードされた配列を認識する抗体(αCD44v6と呼ぶ)およびv6領域に由来する14個のアミノ酸から構成されるペプチド(v6ペプチドと呼ぶ)(Matzke他、2005)の両方とも、HGFによる誘導前に細胞に添加した場合にMetおよびその下流標的であるErkの活性化を防ぐことができた(図12を参照)。コントロール抗体とのおよびコントロールペプチドとのインキュベーションによりMetの活性化およびシグナル伝達が妨げられなかったことから、この結果から、使用したECの全てのタイプでMet活性化にCD44v6が必要であることが分かる。
CD44のアイソフォームがVEGFR−2活性化に必要であるかどうかを調べるために、VEGFR−2がVEGF−A165により活性化された実験で、CD44v6活性を阻害する3つのツールを使用した。予想したように、全てのECがVEGF−A165処理に反応し、VEGFR−2がリン酸化されてErkにシグナル伝達された。CD44v6を認識する抗体およびCD44v6 14merは、VEGF−A165により誘導されるVEGFR−2の活性化およびErkへの下流信号伝達をブロックした(図13)。そのため、CD44v6は、この細胞における機能的なVEGF−A165/VEGFR−2システムにも必要である。
1.2 上皮細胞
CD44v6ペプチド(v6 14mer;v6 5merも検証した、データを示さず)を使用して、ヒト上皮膵癌細胞L3.6pl(Colo357に由来する)、子宮頸癌細胞HeLaおよび結腸癌細胞HT29におけるCD44v6のMetシグナル伝達への寄与を分析した。HGFによる誘導前に細胞に添加した場合に、Metのおよびその下流標的Erkの活性化を妨げることができた(図14A、BおよびC)。コントロールペプチドとのインキュベーションによりMet活性化およびシグナル伝達を妨げられなかったことから、この結果から、この細胞株全てにおけるMet活性化にCD44v6が必要であることが分かる。
VEGFRおよびMetに加えて、ErbB1のCD44v6への依存性を調べた。EGFおよびその他の5種のリガンド、即ちAR、BC、ER、HB−EGFおよびTGF−αは、ErbB1受容体を活性化することができる。EGF、ARおよびTGF−αは、ErbB1ホモ二量体またはERbB1/2ヘテロ二量体のどちらかに結合する。これらの二量体に加えて、BC、ERおよびHB−EGFは、Erb4/4ホモ二量体またはErbB2/4ヘテロ二量体にも結合することができる。ここで、指定のリガンドによるErbB受容体の活性化もCD44v6に依存しているかどうかを調べた。
この目的のために、HT29細胞を24時間にわたり血清飢餓させ、v6特異的ペプチドまたはコントロールペプチドで前処理した。次いで、HT29細胞を、指定のErbBリガンドで誘導した。Erkキナーゼのリン酸化を、受容体活性化のリードアウトとして使用した。全てのリガンドはErkキナーゼを活性化することができた。HT29細胞のCD44v6ペプチド(ヒトv6 14mer)とのプレインキュベーションにより、EGF依存性のおよびER依存性のErkのリン酸化が阻害されたが、コントロールペプチドは効果が見られなかった(図15)。このことは、EGFに加えて、ERが、共受容体としてのCD44v6に依存している別のErbB1リガンドであることを示す。対照的に、CD44v6をブロックすることによりErbB受容体のAR依存性の、BC依存性の、HB−EGF依存性のおよびTGF−α依存性の活性化を阻害することはできなかった(図15)。これらのリガンドでは、それらのErbB受容体の誘導がCD44v6に非依存的である。このことは特に印象的である。なぜならば、EGFおよびTGF−αは同じ受容体対(ErbB1/1またはErbB1/2)に焦点を当てるからである。これらのデータは、ErbB活性化の共受容体として使用される特異的なCD44アイソフォームは、ErbB受容体を活性化させるリガンドにより決定されるが、受容体のタンパク質自体により決定されないことを示唆する。
MCF7では、CD44v6特異的ペプチドにより、Erkのリン酸化がEGF処理でブロックされるがTGFα誘導ではブロックされない。5merおよび14merの両方のペプチドが同様の効果を示した。コントロールペプチドはErkのリン酸化に対する効果を有しなかった(図16)。
2.細胞アッセイ
2.1 散乱アッセイ
受容体型チロシンキナーゼMetおよびRonは、それらのリガンドでの処理により、細胞遊走および散乱を誘導する。v6ブロッキングペプチドの散乱および遊走への効果を調べた。CD44v6ペプチド(ヒトv6 5mer、10merおよび14mer)は、細胞外マトリックスにより散乱および浸潤を完全に防いだ(図17)。
2.2 スクラッチアッセイ
このアッセイでは、細胞遊走に対するCD44v6の必要性を検証した。スクラッチ閉塞アッセイでは、静脈のECまたは動脈のECのどちらかの遊走を検証した。この細胞をコンフルエンスまで増殖させ、滅菌ピペットチップを使用して、コンフルエントな単層にスクラッチを付けた。スクラッチの端に並んでいる細胞が、隙間を閉塞するために、この空隙に向かって遊走し始めた。HGF、VEGF−A165またはVEGF−A121のいずれかの存在下では、細胞はリガンドの非存在下に比べて早く遊走し、スクラッチが1日以内に閉塞された。CD44v6抗体またはCD44v6ペプチド(ヒトv6 14mer)が受容体活性化を妨げた場合、ECの遊走は基礎レベルまで低下した(図18)。
2.3 血管新生アッセイ
2.3.1 新芽形成アッセイ
HUVEC細胞のクラスター、いわゆる球状体を懸滴で生成し、3次元コラーゲンマトリックスに埋め込んだ。これを、ブロッキング物質および増殖因子を含有する培地で覆った。増殖因子VEGF−A165およびVEGF−A121による活性化によって、球状体からECが増殖し始めた(図19)。細胞をv6ペプチド(ヒトv6 14mer)で処理した場合、VEGF−A処理に反応して新芽形成するこの能力は完全にブロックされた。コントロールペプチドは、VEGF−A誘導性の新芽形成に影響を及ぼさなかった。1つの球状体に由来する全ての新芽の全長を解析することにより、ECの新芽形成を定量化した。
2.3.2. マトリゲル/フィブリンプラグ
ランゲルハンス島は、コラーゲンマトリックス中でHUVEC細胞と共培養した場合に血管新生反応を刺激することができる。ランゲルハンスのそのような血管新生過形成性の島をコラゲナーゼかん流により単離した。この島は血管新生因子の混合物を産生し、それにより、ECを誘引して毛細血管様構造体に組織化する。CD44v6抗体またはv6特定的ブロッキングペプチド(ヒトv6 14mer)によりECのヒトCD44v6をブロックした場合にECの血管新生反応は低下したが、コントロールペプチドは血管新生反応を妨げなかった。コントロール実験では、公表されたデータと一致して島の約60%が血管新生反応を刺激した(図20)。
1.直鎖ペプチドおよびPEG化v6 5merによる用量の増減
ポリエチレングリコールポリマー鎖の共有結合のプロセスであるPEG化は、免疫原性および抗原性を低下させることが知られている。PEG化により、化合物の流体力学的サイズが増大し、腎クリアランスの低下により動物中での循環時間が延びる。
3種のCD44v6特異的化合物(ヒト由来のv6 5mer、PEG840−v6 5merおよびPEG2000−v6 5mer)ならびにコントロールペプチドを、4週間にわたり週当たり3回3種の濃度(注射当たり2μg、20μg、200μg)で腹腔内投与した。処理の開始1週間前に、L3.6pl腫瘍細胞をヌードマウスに同所的に移植した。結果は、PEG化はペプチドの効果に影響を及ぼさないことを示した。全てのv6特異的化合物が腫瘍細胞の転移性拡散を防ぎ、原発性腫瘍の増殖が減少した。注射当たり20μgの場合に転移の完全なブロックを観測したが、10倍低い濃度を使用して阻害効果を既に観測した(図21)。更に、処理用量を注射当たり200μgまで増加しても動物に副作用は生じなかった。
2.直鎖v6 14merおよび環状v6 8merの用量の減少に関する結果
この実験では、ペプチドの用量の減少を調べた。週当たり3回の注射の処理サイクルを維持した。更に、共受容体機能に必要である3つの重要なアミノ酸を含有する直鎖配列に基づく環状v6 8merを、その阻害効果に関してインビボで検証した。インビトロでのデータは、全てのペプチドによるリン酸化アッセイおよび細胞アッセイでMetおよびErkの活性化が既にブロッキングされていることを示した。
環を形成するペプチド結合を有するアミノ末端とカルボキシル末端との連結により、環化による直鎖ペプチドの改変が実現される。環化は、ペプチドの安定性を高めるのに、および透過性を改善するのに効果的な方法である。
L3.6pl細胞を動物に同所的に移植した。1週間にわたり腫瘍を増殖させた後、直鎖v6 14mer、環状v6 8merおよびコントロールペプチド(ラットv6 14mer)による処理を開始した。3週間にわたり注射当たり0.2、2および10μgの濃度で、週当たり3回、全てのペプチドを注射した。処理の終了時に動物を屠殺した。
コントロール群の全ての動物は、巨視的な転移を示した。0.2および2μgのv6 14merを注射した動物は、肝転移を示したが、動物当たりの転移の平均数は減少した。注射当たり10μgの用量により、転移性拡散が完全に阻害された(図22A、B)。更に、v6 14merによる処理により、コントロール群と比較して原発性腫瘍のサイズが有意に減少した(図22C)。
環状v6 8merは、注射当たり2μgでおよび20μgで転移性拡散を非常に効率的にブロックしており、このことは、環化による構造的変化はペプチドの機能の喪失につながらなかったことを示す(図22A、B)。環状v6 8merはまた、原発性腫瘍の増殖への劇的な影響も示した(図22C)。
3.L3.6pl同所的異種移植片モデルにおける様々なCD44v6ペプチド誘導体の対照比較
同所的L3.6pl腫瘍を有する動物において、様々なCD44v6ペプチド誘導体の比較を行なった。それぞれ5匹の動物からなる10個の群に、3週間にわたり週当たり3回、注射当たり20μgの用量のペプチドを投与し、化合物を表4に列挙する。処理の開始から3週後に動物を屠殺し、巨視的な転移および腫瘍の体積を分析した。
転移に関する組織学的分析(H&E染色)、ならびに腫瘍血管新生(抗CD31染色)および腫瘍中における様々なRTKの活性化に関する免疫組織学的分析はまだ途中である。
CD44v6 14merで処理した、PEG化14mer(PEG840およびPEG2000)で処理した、D−アミノ酸改変を含有する14merで処理した、および環状ペプチド(ミリストイル化環状ペプチドを含む)で処理した動物は、コントロールペプチドと比べて、腫瘍増殖の有意な減少を示した。ミリストイル化直鎖14merは、腫瘍増殖に対して阻害効果を示さなかった。コントロール動物と比べて、PEG2000 14mer、v6 14mer、環状8merおよび環状5mer(図23A)により腫瘍サイズの最大の減少が達成された(ここで、原発性腫瘍の強い可視血管新生(図24A)に留意すること)。これらの4種の化合物はまた、群内の個々の腫瘍サイズの低い変動性も示した(図23B)。
肝臓の分析により、PEG840−14mer、PEG2000−14mer v6−14[daa7]およびミリストイル化環状8merの場合に転移性拡散の減少が分かった。動物をv6 14mer、v6−14[r14]、環状8merおよび環状5merで処理した場合に、転移の完全な阻害を観測した(図24A、B)。
この対照比較によりv6 14merの効果を確認したが、インビボでの安定性の増加を示すことができた直鎖ペプチド配列の有望な改変としてのv6−14[r14]、環状8merおよび環状5merが明らかになった。
4.その他の癌型の評価
4.1 結腸癌
4.1.1 背景
大腸腺腫様ポリポーシス(Apc)腫瘍抑制遺伝子の変異および不活化は、結腸直腸癌の進行での初期現象である。腺腫様ポリープの約80%でApcの不活化が起こり、該不活化は、遺伝子疾患である家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)の原因でもあり、該家族性腺腫性ポリポーシスは、結腸癌を生じる小腸および大腸での腺腫性ポリープの形成につながる。この遺伝性疾患を研究するために、APC/Min/+マウスモデルを生成した。この遺伝子操作マウスは、結腸腫瘍に加えて、小腸中に100個以下のポリープを発症することができる。このマウスとCD44ノックアウトマウスとの交配により腺腫の数が大幅に低下し、このことは、大腸の発癌におけるCD44の役割を示す。このことを、腺腫も減少させたshRNAによる、特にAPC/Min/+マウスの腸におけるCD44v6の除去により更に確認することができた。
4.1.2 予備データ
18週齢のマウスを使用して、v6 14merの効果をAPC/Min/+マウスモデルで検証した。6週間にわたり週当たり3回、20μgのv6 14mer(マウス14mer)またはコントロールペプチド(ラット14mer)を動物に腹腔内注射した。実験の終了時に動物(各群3匹)を屠殺し、腫瘍の総数に関して十二指腸を分析した(図25)。
v6 14merでの処理により、十二指腸において腫瘍サイズが大幅に減少した。注目すべきことは、この減少は小さい腫瘍の場合により顕著なこと(0〜1mm>1〜2mm>2〜5mm)である。5mmよりも大きな腫瘍の場合の腫瘍数は、v6 14merの場合より高い。
これらのデータから、発癌イニシエーションにおけるCD44の寄与が明らかになる。
4.2 乳癌
4.2.1 背景
多種多様な癌において、RTKのErbBファミリーの様々なメンバーが過剰発現される、または変異される。例えば、乳腺癌腫を含む癌腫の大部分で高ErbB1発現が見られ、転移性乳癌の病巣の20〜30%でErbB2遺伝子の増幅を見ることができる。この乳癌型の造腫瘍性はErbB受容体の構成的活性化に依存する。
いくつかの乳癌細胞株ではEGFによるErbB受容体の活性化がCD44v6により可能になることが分かった。従って、CD44v6は、造腫瘍性をEGFに基づくErbB活性化に依存している乳癌型に関与することができた。そして実際に、100個の原発性の侵襲性乳房腫瘍および18個のリンパ節転移の評価から、CD44v6の発現と造腫瘍性とが関連付けられた。このCD44バリアントの存在は低い生存率と相関する。2つのより近年の研究が同様の結果となった。
しかしながら、乳癌におけるCD44v6の役割に関して相反するデータが存在する。ステージIIの乳房新生物を患っている109例の患者を評価する研究では、例えばCD44v6発現と無病生存率または全生存期間とが全く関連付けられていなかった。相反する研究では、CD44v6は全ての乳癌型の共受容体として作用しないと解釈され得た。ErbB受容体の活性化がTGF−αにより媒介される癌型では、TGF−αによる活性化がCD44v6に非依存的であることが示され得たことから、例えば、CD44v6は共受容体として必要ないであろう。
4.2.2 CD44v6 14merの効果
マウス乳癌細胞4T1の同所的注射により、同系マウスモデルにおいてCD44v6 14merの効果を検証した。4T1細胞は元々、自然発生的なBALB/c乳腺腫瘍に由来した。同所的に誘導した場合、4T1細胞は原発性部位で急速に増殖し、3〜6週の期間内に肺およびリンパ節中で転移を形成する。BALB/cマウスにおける4T1細胞の腫瘍増殖および転移性拡散は、ヒト乳癌ステージIVを非常に密に模倣する。
4T1細胞を第6乳腺脂肪体に同所的に注射した。次いで、それぞれ移植腫瘍細胞を有する5匹の動物からなる2つの群を実験に使用した。1つの群をv6 14merペプチドで処理し、もう1つの群をコントロール(ラット)ペプチドで処理した。ペプチドの注射を週当たり3回行ない、3〜4週間にわたり計画したが、コントロール群が大きな腫瘍を患ったことから2週間後に中止した。
原発性腫瘍の分析から、v6 14mer処理群では腫瘍サイズの著しい減少が明らかになった(図26A)。腫瘍血管新生をモニタリングするための免疫蛍光分析(抗CD34染色)から、v6 14mer処理群では血管の総数が著しく減少したことが分かった(図26B)。
v6 14mer処理動物とコントロールペプチド処理動物との間の差異を転移性拡散の場合でも見ることができた。肺の巨視的分析から、コントロールペプチドで処理した全てのマウスが転移を発症したことが明らかになった。転移の平均数は肺当たり6個の転移であった。v6ペプチド処理群において、3匹の動物では巨視的な転移が全く見られず、2匹の動物は1つの転移のみを有した。従って、v6ペプチドでの処理により、肺における転移の形成が大幅に減少する(図26C)。
まとめると、結腸癌に関するおよび乳癌に関する予備データから、v6 14merは、膵癌以外の症状に有望なツールでもあることが明らかになった。
腫瘍細胞上に選択的に結合したCD44v6ペプチド官能化ナノ粒子
材料および方法
A.Zweibaum(Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale、フランス)からの贈与であるヒト腺癌細胞株HT29を、10%FCS(PAA、ケルベ、ドイツ)を補充したDMEM(Invitrogen、カールスルーエ、ドイツ)中で増殖させた。ラット膵癌細胞BSp73AS10(AS10)およびその形質移入体BSp73ASs6(ASs6)(ペーパーベロ(paper vero))を、10%FCSを加えたRPMI(Invitrogen)中で増殖させた。550nmで発光する疎水性CdTe量子ドット(粒子分子量は32000g/molである)を、PlasmaChem GmbH(ドイツ)から得た。アルファ−(9−フルオレニルメチルオキシ−カルボニル)アミノ−オメガ−カルボキシポリ(エチレンングリコール)(PEG−MW3.000ダルトン)およびアルファ−メトキシ−オメガ−カルボン酸ポリ(エチレングリコール)(PEG−MW2.000ダルトン)を、IRIS Biotech GmbH(ドイツ)から得た。パルミチン酸(99%)およびポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(MW 2000g/mol)をSigma−Aldrich(ドイツ)から得た。
計測手段
Malvern Zetasizer Nano ZS(マルバーン、ドイツ)で動的光散乱を行なった。量子ドットナノ粒子を、0.1mg/mlの量子ドットの濃度までMilliQ水で希釈した。750μlのナノ粒子溶液をキュベット中に加え、粒子サイズ(流体力学的径)および表面電荷(ゼータ電位)を測定した。
LEO1530Gemini走査型電子顕微鏡(ツァイス、ドイツ)を使用する走査型電子顕微鏡法(SEM)により、量子ドットナノ粒子をキャラクタライズした。粒子を0.1mg/mlの濃度でMilliQ水に再懸濁させることにより、SEM用の試料を調製した。生じた分散液をシリコンウェハ上に滴加し、空気中で乾燥させた。次いで、SEM測定前に、Cressington108自動スパッターコーターを使用して、20秒にわたり粒子に金をスパッターコーティングした。
4800MALDI−TOF/TOF質量分析計(Applied Biosystems、フラミンガム、マサチューセッツ州、米国)で、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分析を行なった。Data Explorer Software4.0(Applied Biosystems)を使用してピークリストを作成した。2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する1mlのテトラヒドロフラン中に10mg)を、PEG化ペプチドおよびペプチド−PEG−パルミチン酸アミド用のマトリックスとして使用した。10μlのPEG化ペプチドおよびペプチド−PEG−パルミチン酸アミド(1mlのMilliQ中に1mg)と10μlのマトリックスとを混合し、1μlの混合溶液をステンレス鋼MALDI担体上にスポッティングした。
ナノ粒子の調製
様々な密度のCD44v6ペプチド官能化量子ドットナノ粒子を以下のように調製した:(a)4mlのバイアル中において、300μlのPEG2000−パルミチン酸エステル(クロロホルム中に4mg/ml)と30μlのQD(クロロホルム中に10mg/ml)とを混合することにより、PEG−QDを調製した。20秒にわたる撹拌後、混合溶液を一晩にわたり、開口したバイアル中に入れてクロロホルムを確実に蒸発させた。300μlのPBS緩衝液(pH7.4)を4mlのバイアルに添加し、30秒にわたり撹拌してナノ粒子を形成した。(b)4mlのバイアル中において、270μlのPEG2000−パルミチン酸エステル(クロロホルム中に4mg/ml)と120μlのv6−PEG−パルミチン酸アミド(クロロホルム中に0.5mg/ml)と30μlのQD(クロロホルム中に10mg/ml)とを混合することにより、10%v6−PEG−QDを調製した。20秒にわたる撹拌後、混合溶液を一晩にわたり、開口したバイアル中に入れてクロロホルムを確実に蒸発させた。300μlのPBS緩衝液(pH7.4)を4mlのバイアルに添加し、30秒にわたり撹拌してナノ粒子を形成した。(c)4mlのバイアル中において、210μlのPEG2000−パルミチン酸エステル(クロロホルム中に4mg/ml)と360μlのv6−PEG−パルミチン酸アミド(クロロホルム中に0.5mg/ml)と30μlのQD(クロロホルム中に10mg/ml)とを混合することにより、30%v6−PEG−QDを調製した。20秒にわたる撹拌後、混合溶液を一晩にわたり、開口したバイアル中に入れてクロロホルムを確実に蒸発させた。300μlのPBS緩衝液(pH7.4)を4mlのバイアルに添加し、30秒にわたり撹拌してナノ粒子を形成した。
ウェスタンブロッティングならびにMetおよびErkの活性化
24時間にわたり血清飢餓させたASs6細胞を、5分にわたり37℃においてHGF(10ng/ml)で誘導した。示した箇所では、細胞をPEG化ペプチドまたは非PEG化ペプチドで処理した後、10分にわたり37℃で誘導した(150nM)。細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、煮沸した、100mMジチオトレイトール(DTT)を含有する硫酸ドデシルナトリウム(SDS)−試料緩衝液中で溶解させた。その後、溶解物を、リン酸化Mekおよびリン酸化Erk(細胞シグナル伝達)に対する抗体を使用するウェスタンブロット分析にかけた。同じブロットに関してMekおよびErkのローディンコントロールを行ない、ストリッピングし(62.5mM Tris pH6.8、2%SDS、0.8%DTT)、Mek体およびErk抗体で調べた。増強化学発光システム(Thermo Fisher Scientific)を使用してブロットを染色した。
散乱アッセイ
24ウェルプレート中において、HT29細胞の散乱を測定した。最初に、4×10個の細胞を37℃で播種し、細胞を未処理のままにした後、または48時間後に24時間にわたりHGF(50ng/ml)で処理した後、またはPEG化ペプチドもしくは非PEG化ペプチド(100ng/ml)で処理した後、30分にわたりHGFで誘導した。
免疫蛍光アッセイ
ウェル当たり1×10個のAS10細胞およびASs6細胞を、37℃で24時間にわたり8ウェル顕微鏡チャンバースライド上に播種した。細胞を氷冷PBSで洗浄し、−20℃で15分にわたりメタノールで固定し、再びPBSで3回洗浄した。その後、暗所において室温で1時間にわたり、指定の改変量子ドットと共に細胞をインキュベートした。その後、細胞を、室温で30分にわたり、PBS中の4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)で染色し、PBSで3回洗浄し、マウンティング培地に埋め込んだ。63倍の対物レンズのLeica SPE共焦点蛍光顕微鏡を使用して、蛍光像を得た。
蛍光活性化細胞選別(FACS)
10cmのペトリ皿中で培養したASs6細胞およびAS10細胞を、5mM EDTA/PBSにより、80%の培養密度で回収した。PBS中の3%FCSで細胞を3回洗浄した。その後、10分にわたり、3%FCS/PBS中の100ng/mlの量子ドットと共に細胞をインキュベートした。次いで、細胞をPBS中の3%FCSで3回洗浄し、FCSを含まないPBS中に再懸濁させ、FACS測定にかけた。
結果および考察
CD44v6ペプチドおよびPEG化ペプチドの合成およびキャラクタリゼーション
上記に記載したように、様々な癌細胞株において、c−Metシグナル伝達のHGF誘導性の活性化をブロックするのにCD44v6ペプチド(CD44v6ペプチド)を使用することができる。更に、このペプチドは、HT29腺癌細胞において、HGF誘導性の細胞散乱(細胞塊からの単細胞の分離および遊走を説明する用語)を効果的にブロックすることができる。このペプチドは腫瘍増殖および転移を効果的に阻害することができ、更に、既に生じた転移を除去することができる。要するに、これにより、このペプチドは癌治療用の非常に有望な潜在的薬物候補となる。CD44v6ペプチドはCD44v6発現細胞に特異的に結合することから、このペプチドを量子ドット(QD)表面で更に官能化し、このペプチドの腫瘍細胞に対する選択的結合を明らかになる。
PEG化は、インビボでのペプチド、タンパク質およびナノ粒子の安定性を高めるために一般的に使用される技法である。ここで、CD44v6ペプチドを、N末端で特異的にPEG化した。CD44v6ペプチドおよびPEG化ペプチドをWang樹脂上で順次合成し、分取HPLCで精製した。CD44v6ペプチドおよびPEG化ペプチドの純度を更に分析し、分析HPLCおよびMALDI−TOFでキャラクタライズした(図27)。
CD44v6ペプチドおよびPEG化ペプチドのブロッキングアッセイ
また、2000ダルトンのPEG鎖の付着後に、ペプチドのブロッキング能力を検証した。CD44v6を高度に発現するラット膵癌細胞株BSp73ASs6をPEG化CD44v6ペプチドで処理し、この処理により、RTK MetおよびErk経路を介する該RTK Metの下流シグナル伝達のHGF誘導性の活性化がブロックされ得るかどうかを検証した。陽性コントロールとして、非PEG化CD44v6ペプチド(A=本発明者らが産生した、B=Bachemにより産生された)を使用し、陰性コントロールとして、非PEG化コントロールペプチドまたはPEG化コントロールペプチドを使用し、3つの必須アミノ酸をアラニンに置き換えた。確かに、PEG化は、CD44v6ペプチドの機能性に影響を及ぼさなかった。PEG化CD44v6ペプチドによるASs6細胞の処理により、HGFはMet−リン酸化の誘導およびErkシグナル伝達の活性化に完全に失敗したが、PEG化コントロールペプチドでは効果が見られなかった(図10)。また、HGF誘導性のHT29細胞の散乱は、PEG化CD44v6ペプチドによる前処理によって強力に阻害されたが、PEG化コントロールペプチドでは阻害されなかった(図11)。これらの結果は、PEG化はCD44v6ペプチドの機能性に影響を及ぼさないことを明確に示す。
CD44v6ペプチド官能化ナノ粒子の調製およびキャラクタリゼーション
QDでCD44v6ペプチドを官能化するために、本発明者らは、固相合成を順次使用してv6−PEG3000−パルミチン酸アミドを合成した。両親媒性v6−PEG3000−パルミチン酸アミドを分取HPLCで更に精製し、MALDI−TOFでキャラクタライズした。
CD44v6ペプチド官能化ナノ粒子の結合アッセイ
CD44v6発現は癌の進行期と相関することが多く、多様な癌型での予後不良と密接な関係がある。そのため、多くの悪性癌細胞は、その表面上で多量のCD44v6を発現し、この細胞を標的とするための重要なマーカーとしてCD44v6を示す。従って、PEG化CD44v6ペプチドを使用して、細胞上でのCD44v6発現を標的とするためにおよび可視化するために使用することができる多価複合ナノ粒子を作成することができる。この目的のために、PEG化CD44v6ペプチドを、鮮やかに輝くおよび非常に安定した蛍光プローブとして使用することができる、小型半導体ナノ粒子である量子ドット(QD)に接合させた。QDの大きな利点は、様々な濃度でPEG化CD44v6ペプチドと量子ドットの表面とを結合させる多価であるということである。3つの異なるタイプのナノ粒子、即ち量子ドットにPEG鎖のみが付着しているナノ粒子(PEG−QD)、量子ドットの周囲のPEG鎖の10%および30%がCD44v6ペプチドに結合しているナノ粒子(それぞれ10%−v6ペプチド−QDおよび30%−v6ペプチド−PEGと表す)を作成した。これらの量子ドットがCD44v6発現細胞に特異的に結合して該CD44v6発現細胞を染色することができるかどうか、およびCD44v6ペプチド濃度が結合能力に影響を及ぼすかどうかを検証した。
本発明者らは、CD44v6を発現するBSp73ASs6細胞(ASs6)またはCD44v6陰性BSp73AS10細胞(AS10)を様々な量子ドットと共にインキュベートし、免疫蛍光顕微鏡により染色を可視化した。PEG化QDの細胞への非特異的な結合を除いて、PEG鎖のみにより囲まれたQDはASs6細胞もAS10細胞も染色しなかった(図28A)パネル1)。CD44v6ペプチドに結合したPEG鎖の10%を含有するQDも、いずれの細胞型も染色しなかった(図28A)パネル2)。しかしながら、QD表面でPEG鎖の30%がCD44v6ペプチドに付着する場合、CD44v6陽性ASs6細胞の膜でのみ量子ドットを検出することができたが、CD44v6陰性AS10細胞では検出せず、このことは、CD44v6発現細胞の特異的染色を示す(図28A)パネル3)。このこととは対照的に、CD44v6の発現に関係なく、両方の細胞型の表面で50%v6ペプチド−QDを検出することができた(データを示さず)。
これらの結果を更に分析し、いくつかの独立した実験(n=5)の量子ドット染色細胞の割合を定量化した。PEG−QDは、AS10細胞またはASs6細胞を染色しなかった。10%v6−QDを、AS10細胞またはASs6細胞のわずか10%の表面上で見出した。しかしながら、ASs6の90%が30%v6−QDで染色されたが、AS10細胞ではわずか15%であり、このことは、30%v6−QDのCD44v6発現細胞への高度に特異的な結合を示す。30%−v6ペプチド−QDの特異性を更に確かめるために、AS10細胞にmCherry発現ベクターを遺伝子導入し、ASs6細胞に、CFPを含有する発現ベクターを遺伝子導入し、両方の細胞株を共培養した。これらの共培養細胞を30%−v6ペプチド−QDで処理し、免疫蛍光顕微鏡により染色を可視化した。確かに、30%−v6ペプチド−QDは、CFP陽性のおよびCD44v6を発現するASs6細胞にのみ結合した。mCherry陽性AS10細胞は未染色のままであった(図28A)パネル4)。
免疫蛍光顕微鏡に加えて、蛍光活性化細胞選別分析(FACS分析)により、様々なCD44v6ペプチド結合量子ドットの結合を分析した。顕微鏡結果により、本発明者らは、CD44v6を発現するASs6細胞上でのみ30%v6ペプチド−QDの結合を検出することができた(図28C)。要約すると、PEG化は、HGF誘導性のMetシグナル伝達および細胞散乱への影響をブロックすることに関してCD44v6ペプチドの機能性に影響を及ぼさないことをデータは明確に示す。このPEG化ペプチドを量子ドットに結合させることができ、これにより、CD44v6発現癌細胞を標的とするおよび染色するための特異的なバイオマーカーとして容易に使用することができる多機能なナノ粒子を提供することができる。
結論
CD44v6発現は、癌の進行期および予後不良と相関することが多い。更に、CD44v6発現は、おそらくc−MET受容体型チロシンキナーゼおよびVEGFR受容体型チロシンキナーゼの共受容体としての機能に起因して、非転移性癌細胞に転移能を付与する可能性がある。3つのアミノ酸、即ちR−W−HがCD44v6の機能に必須であり、これら3つのアミノ酸を含む少なくとも5つのアミノ酸長の小ペプチドを、CD44v6の機能を効果的にブロックするために使用することができる。膵癌に関するインビボのマウスモデルおよびラットモデルにおいて、CD44v6のブロッキングにより、HGF誘導性のc−Metシグナル伝達またはVEGF−A誘導性のVEGFR−2シグナル伝達が完全に阻害され、その結果、血管新生および転移がブロックされる。更に、CD44v6ペプチドはCD44v6発現細胞に結合し、これにより、悪性のCD44v6発現腫瘍細胞または組織に対するマーカーとして、このペプチドを使用することが可能になる。
この実施例では、CD44v6ペプチドをPEG化し、分子レベルでのPEG化ペプチドの機能性を確認し、PEG化ペプチドを量子ドットに結合させた。このCD44v6−QDナノ粒子はCD44v6発現細胞に特異的に結合して染色し、このことを、免疫蛍光顕微鏡およびFACS分析により確認した。
ペプチドの量子ドットへの結合にはいくつかの利点があり、一方では、明るく輝くおよび非常に安定した、CD44v6発現細胞に対するバイオマーカーが作成され、該バイオマーカーをCD44v6発現腫瘍細胞または組織の検出およびより良好なキャラクタリゼーションに使用することができ、更に患者におけるCD44v6発現転移を検出するために使用することもできる。他方では、多価のため、従来の抗癌剤のようなその他の化合物とCD44v6−QDとを結合させてCD44v6発現腫瘍細胞を特異的に標的とする多機能性薬物を作成する可能性がある。
本発明の実施形態の内のいくつかは以下に関する。
1.ヒトの転移性癌の処置において使用するための化合物であって、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号1)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、X、X、X、X、X、X、X、X11、X12、X13もしくはX14が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号7)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号7の少なくともX−R−W−H−X11(式中、XおよびX11が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む化合物。
2.前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号4)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号8)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号8の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、実施形態1に記載の使用のための化合物。
3.前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDを含む群から選択される)(配列番号5)含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択される)(配列番号9)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号9の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、実施形態2に記載の使用のための化合物。
4.前記化合物が、アミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)、アミノ酸配列K−E−Q−W−F−G−N−R−W−H−E−G−Y−R(配列番号6)を含む、場合により、からなるペプチドまたはこのペプチド模倣物を含む、実施形態1、2または3に記載の使用のための化合物。
5.前記化合物が前記ペプチドまたは前記ペプチド模倣物の改変型である、実施形態1、2、3または4に記載の使用のための化合物。
6.前記化合物が、前記ペプチドまたはペプチド模倣物のペグ化型、ヘシル化型、パシル化型、ミリストイル化型、グリコシル化型および/または環状型である、実施形態5に記載の使用のための化合物。
7.化合物が経口投与用に、経鼻投与用にまたは皮下投与用に製剤化されている、実施形態1、2、3、4または5に記載の使用のための化合物。
8.ヒトの転移性癌の処置において使用するための医薬組成物であって、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号1)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、X、X、X、X、X、X、X、X11、X12、X13もしくはX14が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号7)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号7の少なくともX−R−W−H−X11(式中、XおよびX11が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む化合物を含む医薬組成物。
9.前記医薬組成物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号4)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号8)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号8の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む化合物を含む、実施形態8に記載の使用のための医薬組成物。
10.前記医薬組成物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDを含む群から選択される)(配列番号5)含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択される)(配列番号9)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号9の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む化合物を含む、実施形態9に記載の使用のための医薬組成物。
11.前記化合物が、アミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)、アミノ酸配列K−E−Q−W−F−G−N−R−W−H−E−G−Y−R(配列番号6)を含む、場合により、からなるペプチドまたはこのペプチド模倣物を含む、実施形態8、9または10に記載の使用のための医薬組成物。
12.前記化合物が前記ペプチドまたは前記ペプチド模倣物の改変型である、実施形態8、9、10または11に記載の使用のための医薬組成物。
13.前記化合物が、前記ペプチドまたはペプチド模倣物のペグ化型、ヘシル化型、パシル化型、グリコシル化型、ミリストイル化型および/または環状型である、
実施形態12に記載の使用のための医薬組成物。
14.前記医薬組成物が薬学的に許容される賦形剤を含む、実施形態8、9、10、11、12または13に記載の使用のための医薬組成物。
15.前記医薬組成物が経口投与用に、経鼻投与用にまたは皮下投与用に製剤化されている、実施形態8、9、10、11、12、13または14に記載の使用のための医薬組成物。
16.ヒトの転移性癌の処置において使用するための医薬品の製造における化合物の使用であって、
前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号1)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、X、X、X、X、X、X、X、X11、X12、X13もしくはX14が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号7)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号7の少なくともX−R−W−H−X11(式中、XおよびX11が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、化合物の使用。
17.前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号4)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号8)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号8の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、実施形態16に記載の化合物の使用。
18.前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDを含む群から選択される)(配列番号5)含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択される)(配列番号9)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号9の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、実施形態17に記載の化合物の使用。
19.前記化合物が、アミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)、アミノ酸配列K−E−Q−W−F−G−N−R−W−H−E−G−Y−R(配列番号6)を含む、場合により、からなるペプチドまたはこのペプチド模倣物を含む、実施形態16、17または18に記載の化合物の使用。
20.前記化合物が前記ペプチドまたは前記ペプチド模倣物の改変型である、実施形態16、17、18または19に記載の化合物の使用。
21.前記化合物が、前記ペプチドまたはペプチド模倣物のペグ化型、ヘシル化型、パシル化型、ミリストイル化型、グリコシル化型および/または環状型である、実施形態20に記載の化合物の使用。
22.前記医薬品が経口投与用に、経鼻投与用にまたは皮下投与用に製剤化されている、実施形態16、17、18、19、20または21に記載の化合物の使用。
23.化合物を、それを必要とするヒトに化合物を投与することによりヒトの転移性癌を処置する方法であって、前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号1)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、X、X、X、X、X、X、X、X11、X12、X13もしくはX14が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号7)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号7の少なくともX−R−W−H−X11(式中、XおよびX11が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、方法。
24.前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号4)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WもしくはYまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)(配列番号8)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号8の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、実施形態23に記載の方法。
25.前記化合物が、
・少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NもしくはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEもしくはDを含む群から選択される)(配列番号5)含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
・アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、Xが、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択され、X12が、Gまたは非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばA、V、LもしくはIを含む群から選択され、X13が、非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、例えばF、WまたはYを含む群から選択され、X14が、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択される)(配列番号9)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号9の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、NH基を有するアミノ酸、例えばK、R、NまたはQを含む群から選択され、X11が、負荷電側鎖を有するアミノ酸、例えばEまたはDを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
を含む、実施形態24に記載の方法。
26.前記化合物が、アミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)、アミノ酸配列K−E−Q−W−F−G−N−R−W−H−E−G−Y−R(配列番号6)を含む、場合により、からなるペプチドまたはこのペプチド模倣物を含む、実施形態23、24または25に記載の方法。
27.前記化合物が前記ペプチドまたは前記ペプチド模倣物の改変型である、実施形態23、24、25または26に記載の方法。
28.前記化合物が、前記ペプチドまたはペプチド模倣物のペグ化型、ヘシル化型、パシル化型、ミリストイル化型、グリコシル化型および/または環状型である、実施形態27に記載の方法。
29.前記化合物が経口投与用に、経鼻投与用にまたは皮下投与用に製剤化されている、実施形態23、24、25、26、27または28に記載の方法。
30.前記転移性癌がCD44v6の発現を示す、実施形態1、2、3、4、5、6もしくは7のいずれかに記載の使用のための化合物、実施形態8、9、10、11、12、13、14もしくは15のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、実施形態16、17、18、19、20、21もしくは22のいずれかに記載の使用または実施形態23、24、25、26、27、28もしくは29のいずれかに記載の方法。
31.前記転移性癌が対癌米国合同委員会の癌病期分類システムのTNM解剖学的/予後群システムに従ってステージIIIまたはステージIVと分類できる、実施形態1、2、3、4、5、6、7もしくは30のいずれかに記載の使用のための化合物、実施形態8、9、10、11、12、13、14、15もしくは30のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、実施形態16、17、18、19、20、21、22もしくは30のいずれかに記載の使用または実施形態23、24、25、26、27、28、29もしくは30のいずれかに記載の方法。
32.前記転移性癌が対癌米国合同委員会の癌病期分類システムのTNM解剖学的/予後群システムに従ってステージIVと分類できる、実施形態1、2、3、4、5、6、7、30もしくは31のいずれかに記載の使用のための化合物、実施形態8、9、10、11、12、13、14、15、30もしくは31のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、実施形態16、17、18、19、20、21、22、30もしくは31のいずれかに記載の使用または実施形態23、24、25、26、27、28、29、30もしくは31のいずれかに記載の方法。
33.前記転移性癌がホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌、頭頸部扁平上皮癌または乳癌の転移型を含む群から選択される、実施形態1、2、3、4、5、6、7、30、31もしくは32のいずれかに記載の使用のための化合物、実施形態8、9、10、11、12、13、14、15、30、31もしくは32のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、実施形態16、17、18、19、20、21、22、30、31もしくは32のいずれかに記載の使用または実施形態23、24、25、26、27、28、29、30、31もしくは32のいずれかに記載の方法。
34.前記転移性癌が、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌または乳癌の転移型を含む群から選択され、前記転移性癌が、対癌米国合同委員会の癌病期分類システムのTNM解剖学的/予後群システムに従ってステージIVと分類でき、前記転移性癌がCD44v6の発現を示す、実施形態1、2、3、4、5、6、7、30、31、32もしくは33のいずれかに記載の使用のための化合物、実施形態8、9、10、11、12、13、14、15、30、31、32もしくは33のいずれかに記載の使用のための医薬組成物、実施形態16、17、18、19、20、21、22、30、31、32もしくは33のいずれかに記載の使用または実施形態23、24、25、26、27、28、29、30、31、32もしくは33のいずれかに記載の方法。

Claims (12)

  1. ヒトの転移性癌の処置において使用するための化合物であって、
    少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択され、Xが、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号1)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
    アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、X、X、X、X、X、X、X、X11、X12、X13もしくはX14が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)(配列番号7)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号7の少なくともX−R−W−H−X11(式中、XおよびX11が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WもしくはYを含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
    を含む化合物。
  2. 前記化合物が、
    少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、K、R、NもしくはQのようなNH基を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、EもしくはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択される)(配列番号4)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
    アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、K、R、NもしくはQのようなNH基を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、EもしくはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、K、R、NもしくはQのようなNH基を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、F、WもしくはYのような非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、F、WもしくはYのような非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、Gまたは、A、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、K、R、NもしくはQのようなNH基を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、X11が、EもしくはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、X12が、Gまたは、A、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、X13が、F、WもしくはYのような非極性側鎖もしくは非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、X14が、K、R、NもしくはQのようなNH基を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択される)(配列番号8)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号8の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、K、R、NもしくはQのようなNH基を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、X11が、EもしくはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸、またはA、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
    を含む、請求項1に記載の使用のための化合物。
  3. 前記化合物が、
    少なくともアミノ酸配列X−R−W−H−X(式中、Xが、K、R、NもしくはQのようなNH基を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、EもしくはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択される)(配列番号5)含むペプチドまたはこのペプチド模倣物、または
    アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−R−W−H−X11−X12−X13−X14(式中、Xが、K、R、NまたはQのようなNH基を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、EまたはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、K、R、NまたはQのようなNH基を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、F、WまたはYのような非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、F、WまたはYのような非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、Gまたは、A、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、Xが、K、R、NまたはQのようなNH基を有するアミノ酸を含む群から選択され、X11が、EまたはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、X12が、Gまたは、A、V、LもしくはIのような非極性側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択され、X13が、F、WまたはYのような非極性側鎖または非荷電側鎖と芳香環構造とを有するアミノ酸を含む群から選択され、X14が、K、R、NまたはQのようなNH基を有するアミノ酸を含む群から選択される)(配列番号9)の内の少なくとも5個の、6個の、7個の、8個の、9個の、10個の、11個の、12個の、13個のまたは14個のアミノ酸を含むペプチドであり、配列番号9の少なくともX−R−W−H−X11(式中、Xが、K、R、NまたはQのようなNH基を有するアミノ酸を含む群から選択され、X11が、EまたはDのような負荷電側鎖を有するアミノ酸を含む群から選択される)を含むペプチドまたはこのペプチド模倣物
    を含む、請求項2に記載の使用のための化合物。
  4. 前記化合物が、アミノ酸配列N−R−W−H−E(配列番号2)、アミノ酸配列K−E−Q−W−F−G−N−R−W−H−E−G−Y−R(配列番号6)を含む、場合により、からなるペプチドまたはこのペプチド模倣物を含む、請求項1、2または3のいずれかに記載の使用のための化合物。
  5. 前記化合物が前記ペプチドまたは前記ペプチド模倣物の改変型である、請求項1、2、3または4のいずれかに記載の使用のための化合物。
  6. 前記化合物が、前記ペプチドまたはペプチド模倣物のペグ化型、ヘシル化型、パシル化型、グリコシル化型、ミリストイル化型および/または環状型である、請求項5に記載の使用のための化合物。
  7. 化合物が経口投与用に、経鼻投与用にまたは皮下投与用に製剤化されている、請求項1、2、3、4または5のいずれかに記載の使用のための化合物。
  8. 前記転移性癌がCD44v6の発現を示す、請求項1、2、3、4、5、6または7のいずれかに記載の使用のための化合物。
  9. 前記転移性癌が、対癌米国合同委員会の癌病期分類システムのTNM解剖学的/予後群システムに従ってステージIIIまたはステージIVと分類できる、請求項1、2、3、4、5、6、7または8のいずれかに記載の使用のための化合物。
  10. 前記転移性癌が、対癌米国合同委員会の癌病期分類システムのTNM解剖学的/予後群システムに従ってステージIVと分類できる、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9のいずれかに記載の使用のための化合物。
  11. 前記転移性癌が、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌、頭頸部扁平上皮癌または乳癌の転移型を含む群から選択される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のいずれかに記載の使用のための化合物。
  12. 前記転移性癌が、ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、子宮頸癌、肺癌、皮膚癌、例えば扁平上皮癌または基底細胞癌、頭頸部癌、胃癌、膵癌または乳癌の転移型を含む群から選択され、前記転移性癌が、対癌米国合同委員会の癌病期分類システムのTNM解剖学的/予後群システムに従ってステージIVと分類でき、前記転移性癌がCD44v6の発現を示す、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のいずれかに記載の使用のための化合物。
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