JP2016222467A - Bi系酸化物超伝導薄膜の製造方法とBi系酸化物超伝導薄膜構造体 - Google Patents

Bi系酸化物超伝導薄膜の製造方法とBi系酸化物超伝導薄膜構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】c軸を斜め配向させたBi系酸化物超伝導薄膜を再現性よく得ることを可能にしたBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法を提供する。【解決手段】Bi系酸化物超伝導薄膜の製造方法においては、ペロブスカイト型結晶、疑似ペロブスカイト型結晶、または岩塩型結晶の2回対称の結晶面CFから3°以上25°以下の角度βで傾斜した表面SSを有する酸化物の単結晶基板1を用意する。単結晶基板1の表面SSにBi系酸化物超伝導体結晶を成長させて、Bi系酸化物超伝導薄膜2を成膜する。Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸を、単結晶基板1の結晶面CFから所定の角度α1で斜め方向に、かつ表面SSの結晶面CFからの傾斜角βに基づいて1方向のみに成長させる。【選択図】図1

Description

本発明は、非c軸配向のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法とBi系酸化物超伝導薄膜構造体に関する。
酸化物超伝導体は、その単位結晶内に超伝導層と絶縁層とが交互に積層した構造を有しており、この積層構造により固有ジョセフソン効果が発現することが知られている。中でも、Bi系酸化物超伝導体はこの効果が強く表れる物質群である。Bi系酸化物超伝導体の固有ジョセフソン効果を利用してジョセフソン素子を作製する場合、従来はBi系酸化物超伝導体のc軸配向体(バルク単結晶や単結晶薄膜)が一般的に用いられてきた。Bi系酸化物超伝導体のc軸配向体をジョセフソン素子に応用するためには、メサ構造の作製が必要である。しかしながら、メサ構造ではc軸方向の長さがc軸配向体の厚さにより制限されるため、超伝導層/絶縁層の積層数を十分に増やすことができず、またメサ構造自体の作製に複雑な加工を必要とする等の難点がある。
このような点から、Bi系酸化物超伝導体の非c軸配向膜の研究が進められている。例えば、特許文献1〜3にはLaSrAlO4やLaSrGaO4等の単結晶基板上に、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸が基板面に対して平行で、a軸またはb軸が基板面に対して垂直に配向したBi系酸化物超伝導薄膜を形成することが記載されている。a軸またはb軸を基板面に対して垂直に配向させたBi系酸化物超伝導薄膜によれば、作製が容易なプラナー構造を適用できることに加えて、c軸方向の長さが薄膜の面方向となるため、超伝導層/絶縁層の積層数を十分に増やすことができる。ただし、c軸が基板面に対して平行であるため、ジョセフソン素子を構成する電極の設置が困難になる。
Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸を基板面に対して斜め方向に成長させたBi系酸化物超伝導薄膜によれば、c軸を基板面に対して平行に成長させたBi系酸化物超伝導薄膜と同様にプラナー構造が適用でき、さらに超伝導層/絶縁層の積層数の増大と電極の設置性とを両立させることができる。しかしながら、従来のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法では、実用性に優れた斜め配向のBi系酸化物超伝導薄膜が得られていない。例えば、Bi系酸化物超伝導体結晶を成長させる単結晶基板の結晶面を選択すること等によって、c軸を単結晶基板の基板面に対して斜めに配向させることができるものの、c軸の成長方向を1方向に限定することができない。これではジョセフソン効果が発現せず、ジョセフソン素子を実現することができない。
特許第4448934号公報 特許第4452805号公報 特許第4572386号公報
本発明が解決しようとする課題は、実用性に優れる、c軸を斜め配向させたBi系酸化物超伝導薄膜を再現性よく得ることを可能にしたBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法とBi系酸化物超伝導薄膜構造体を提供することにある。
本発明のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法は、ペロブスカイト型結晶、疑似ペロブスカイト型結晶、または岩塩型結晶の2回対称の結晶面から3°以上25°以下の角度で傾斜した表面を有するペロブスカイト型、疑似ペロブスカイト型、または岩塩型の酸化物単結晶基板を用意する工程と、前記酸化物単結晶基板の前記表面にBi系酸化物超伝導体結晶を成長させて、Bi系酸化物超伝導薄膜を成膜する工程を具備し、前記Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸を、前記結晶面から所定の角度で斜め方向に、かつ前記表面の前記結晶面からの傾斜角に基づいて1方向のみに成長させて、前記Bi系酸化物超伝導薄膜を成膜することを特徴としている。
本発明のBi系酸化物超伝導薄膜構造体は、ペロブスカイト型結晶、疑似ペロブスカイト型結晶、または岩塩型結晶の2回対称の結晶面から3°以上25°以下の角度で傾斜した表面を有するペロブスカイト型、疑似ペロブスカイト型、または岩塩型の酸化物単結晶基板と、前記酸化物単結晶基板の前記表面に成膜されたBi系酸化物超伝導薄膜であって、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸が、前記結晶面から所定の角度で斜め方向に、かつ1方向のみに成長したBi系酸化物超伝導薄膜とを具備することを特徴としている。
本願発明の製造方法によれば、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸を基板面に対して斜め方向に、かつ1方向のみに成長させたBi系酸化物超伝導薄膜を再現性よく得ることができる。従って、実用性に優れたBi系酸化物超伝導薄膜およびそれを用いた構造体を提供することができる。
実施形態のBi系酸化物超伝導薄膜の製造工程を示す図である。 SrTiO3単結晶基板の(110)面上におけるBi2Sr2Cu1O6+δ(Bi−2201)の(115)配向膜の成長状態を模式的に示す図である。 表面がSrTiO3の(110)面に対して平行な単結晶基板上におけるBi系酸化物超伝導体結晶の成長初期状態を模式的に示す図である。 図3に示すBi系酸化物超伝導体結晶に基づくBi系酸化物超伝導薄膜を模式的に示す図である。 表面がSrTiO3の(110)面に対して傾斜した単結晶基板上におけるBi系酸化物超伝導体結晶の成長初期状態を模式的に示す図である。 図5に示すBi系酸化物超伝導体結晶に基づくBi系酸化物超伝導薄膜を模式的に示す図である。 比較例1のBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折結果を示す図である。 実施例1のBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折結果を示す図である。 実施例2のBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折結果を示す図である。 実施例3のBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折結果を示す図である。 表面がSrTiO3(110)面に対して平行な単結晶基板上に成膜したBi系酸化物超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折の測定状態を模式的に示す図である。 表面がSrTiO3(110)面に対して傾斜した単結晶基板上に成膜したBi系酸化物超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折の測定状態を模式的に示す図である。
以下、実施形態のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法、およびBi系酸化物超伝導薄膜構造体について、図面を参照して説明する。
図1は実施形態のBi系酸化物超伝導薄膜の製造工程を示す図である。まず、図1(a)に示すように、ペロブスカイト型酸化物、疑似ペロブスカイト型酸化物、または岩塩型酸化物からなる単結晶基板1を用意する。Bi系酸化物超伝導薄膜を成長させる単結晶基板1には、SrTiO3(STO)、LaAlO3(LAO)、NdGaO3(NGO)、NdAlO3、(LaAlO3)0.3−(SrAl0.5Ta0.5O3)0.7(LSAT)等の一般式ABO3(AはCa、Sr、La等の半径の大きい陽イオン、BはTi、Al等のAより小さい陽イオン)で表される組成を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物単結晶、LaSrAlO4、LaSrGaO4等の疑似ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物単結晶、またはMgO等の岩塩型結晶構造を有する酸化物単結晶を用いることが好ましい。
単結晶基板1は、ペロブスカイト型酸化物結晶の場合、2回対称の結晶面CFに対して3°以上25°以下の角度(β)で傾斜した物理的な表面(基板面)SSを有する。2回対称の結晶面とは、180°回転させたときに元の形に重なる形状を有する結晶面である。例えば図2に示すように、SrTiO3の(110)面においては、[11(バー)0]方向の単位格子の軸長が5.523Åで、[001]方向の軸長が3.095Åであり、2回対称の結晶面であることが分かる。ここではSrTiO3の(110)面について述べたが、LaAlO3の(110)面も同様である。このようなペロブスカイト型酸化物結晶の特定の結晶面CFから表面(以下、傾斜表面とも記す)SSが3〜25°の角度βで傾斜するように、単結晶体の表面を加工して単結晶基板1を作製する。SrTiO3やLaAlO3以外のペロブスカイト型酸化物、あるいは疑似ペロブスカイト型酸化物や岩塩型酸化物からなる単結晶基板1を用いる場合も同様である。
次に、図1(b)に示すように、特定の傾斜表面SSを有する単結晶基板1上にBi系酸化物超伝導体結晶を成長させてBi系酸化物超伝導薄膜2を成膜する。Bi系酸化物超伝導薄膜2としては、以下に示す(1)式、(2)式、または(3)式で表される組成を有するBi系酸化物超伝導体が用いられる。
(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Cu1O6+δ …(1)
(式中、AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)
(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Ca1Cu2O8+δ …(2)
(式中、AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)
(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Ca2Cu3O10+δ …(3)
(式中、AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)
上記した(1)〜(3)式において、A元素としてはPbに代表されるが、これ以外にもHg、Al等が例示され、B元素としてはBa、ランタノイド等が例示される。
例えば、(1)式で表される組成を有するBi系酸化物超伝導体(Bi−2201)の薄膜を、SrTiO3単結晶基板の(110)面上に成膜した場合、Bi−2201超伝導体結晶とSrTiO3の(110)面との格子マッチング等に基づいて、図2に示すようにSrTiO3の(110)面上にBi−2201超伝導体結晶の(115)面が成長する。その結果、Bi−2201超伝導体結晶は、c軸([001]f)がSrTiO3の(110)面に対して38.5°の角度(α1)となるように成長する。角度α1は、Bi−2201超伝導体結晶のc軸のSrTiO3の(110)面からの角度である。角度α2は、SrTiO3の(110)面の法線方向に対するBi−2201超伝導体結晶のc軸の傾き角であり、この場合は51.5°である。
(2)式で表される組成を有するBi系酸化物超伝導体(Bi−2212)の薄膜、あるいは(3)式で表される組成を有するBi系酸化物超伝導体(Bi−2223)の薄膜を、SrTiO3単結晶基板の(110)面上に成膜した場合においても、具体的な角度(α1、α2)等は異なるものの、Bi−2201超伝導体結晶と同様に、Bi−2212超伝導体結晶やBi−2223超伝導体結晶はそれらのc軸がSrTiO3の(110)面から斜め方向に配向するように成長する。SrTiO3の(110)面に代えて、LaAlO3の(110)面を用いた場合、さらに他のペロブスカイト型酸化物結晶、疑似ペロブスカイト型酸化物結晶、岩塩型酸化物結晶の(110)面を用いた場合も同様に、c軸が斜め方向に配向するようにBi系酸化物超伝導体結晶の薄膜が成長する。
Bi−2212超伝導体結晶は、SrTiO3の(110)面上に(117)面が成長する。その結果、Bi−2212超伝導体結晶は、SrTiO3の(110)面に対するc軸の角度(α1)が41.6°となるように成長する。この場合、角度α2は48.4°である。Bi−2223超伝導体結晶は、SrTiO3の(110)面上に(119)面が成長する。その結果、Bi−2223超伝導体結晶は、SrTiO3の(110)面に対するc軸の角度(α1)が47.3°となるように成長する。この場合、角度α2は42.7°である。
上述したように、Bi系酸化物超伝導体結晶とSrTiO3やLaAlO3等の酸化物結晶の特定の結晶面CFとの格子マッチング等を利用することで、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸を酸化物結晶の特定の結晶面CFに対して所定の角度α1で斜め方向に成長させることができる。ペロブスカイト型酸化物としてSrTiO3やLaAlO3を用いた場合、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸とペロブスカイト型酸化物結晶の結晶面CFとの角度α1は、上述したように約38〜48°となる。ここでは、Bi系酸化物超伝導体結晶とSrTiO3やLaAlO3の特定の結晶面CFとの関係について述べたが、これに限定されない。SrTiO3やLaAlO3以外のペロブスカイト型酸化物結晶、疑似ペロブスカイト型酸化物結晶、岩塩型酸化物結晶を用いた場合のBi系酸化物超伝導体結晶薄膜のc軸の斜め配向、さらにはBi系以外の酸化物超伝導体結晶薄膜のc軸の斜め配向についても、当該酸化物超伝導体結晶と酸化物結晶との格子マッチングを利用することができる。具体的な角度は、酸化物超伝導体の種類と配向面により変化する。
Bi系酸化物超伝導体結晶をペロブスカイト型酸化物等の単結晶基板上に成長させる場合に、図3に示すように物理的な表面SSを結晶面CFに略一致させた単結晶基板1Xを用いると、結晶面CFが2回対称面であることに由来して、Bi系酸化物超伝導体結晶2Aは2方向に成長することになる。図4は、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸が酸化物結晶の特定の結晶面CFに対して所定の角度α1で斜め配向しているものの、c軸の配向方向が2方向であるBi系酸化物超伝導薄膜2Xを示している。このようなBi系酸化物超伝導薄膜2Xの表面に電極を付けて、プラナー型の固有ジョセフソン素子を作製したとき、電極間が薄膜結晶のc面で繋がるため、超伝導層/絶縁層の積層方向に電圧を印加できず、固有ジョセフソン効果は発現しない。
そこで、実施形態の製造方法においては、特定の結晶面CFから3〜25°の角度βで傾斜した表面SSを有するペロブスカイト型酸化物等の単結晶基板1を用いている。傾斜表面SSを有する単結晶基板1において、原子層レベルでは図5に示すように、表面SSにステップ1Sが形成される。このようなステップ1Sを有する表面SSにBi系酸化物超伝導薄膜を成膜した場合、成膜初期の超伝導体結晶2Bはステップ1Sの段差面1Rの下部から成長する。超伝導体結晶2Bは、段差面1Rが向いている1方向のみに成長し、もう一方の方向への成長は段差面1Rで遮られる。従って、図6に示すように、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸が結晶面CFから所定の角度α1で斜め方向に、かつ1方向のみに成長したBi系酸化物超伝導薄膜2を得ることができる。
例えば、SrTiO3の(110)面からの傾斜角βが10°の表面SSを有するSrTiO3単結晶基板1を用いて、Bi−2201超伝導体結晶を成長させた場合、Bi−2201超伝導体結晶のc軸をSrTiO3の(110)面に対して38.5°の角度α1で、かつ単結晶基板1の表面SSに対して48.5°の角度(α1+β)で斜め方向に配向させ、さらにBi−2201超伝導体結晶のc軸の配向方向を1方向のみに限定したBi系酸化物超伝導薄膜2が得られる。LaAlO3単結晶基板1を用いた場合にも、同様なBi系酸化物超伝導薄膜2を得ることができる。Bi−2212超伝導体結晶やBi−2223超伝導体結晶を用いた場合においても、c軸の配向角度が若干異なるものの、同様なBi系酸化物超伝導薄膜2を得ることができる。
Bi系酸化物超伝導薄膜2の成膜方法は、特に限定されるものではなく、原料として有機金属やそのガスを用いた有機金属化学気相成長法(MOCVD法)、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法(PLD法)、反応性蒸着法等の一般的な成膜法を適用することができる。これらの中でも、熱力学的平衡条件に近く、成膜速度が遅いため、高品質のBi系酸化物超伝導薄膜2が得られるMOCVD法を適用することが好ましい。MOCVD法を適用してBi系酸化物超伝導薄膜2を成膜する場合、成膜条件は特に限定されるものではないが、典型的な作製条件としては基板温度600℃程度、全圧6kPa程度、酸素分圧3kPa程度、成膜速度は毎時10Å程度とすることが好ましい。
上述したように、実施形態の製造方法によれは、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸が特定の結晶面CFから所定の角度α1で斜め方向に、かつ1方向のみに成長したBi系酸化物超伝導薄膜2を再現性よく得ることができる。実施形態のBi系酸化物超伝導薄膜2によれば、例えばジョセフソン素子を作製する際に、一般的なリフトオフ法等の2次元リソグラフィ−技術で形成することが可能なプラナー構造を適用できる。c軸方向の長さが薄膜の面方向となるため、超伝導層/絶縁層の積層数を十分に増やすことができる。さらに、c軸方向が基板面に対して斜め方向であるため、電極の設置が容易になる。従って、実用性に優れるBi系酸化物超伝導薄膜構造体を提供することが可能になる。
次に、実施例およびその評価結果について述べる。
(比較例1)
LaAlO3単結晶基板を用意した。LaAlO3単結晶基板は(110)面に平行な表面(β=0°)を有している。このようなLaAlO3単結晶基板の表面((110)面)に、MOCVD法によりBi−2212超伝導体結晶を成長させた。成膜条件は、基板温度600℃、全圧6kPa、酸素分圧3kPa、成膜速度は毎時10Åとした。
このようにして得たBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折測定を行った。その測定結果を図7に示す。図7は、超伝導薄膜の表面をφ軸方向とψ軸方向の2方向にスキャンしてX線回折ピークを測定した結果を、φ軸の角度とψ軸の角度に基づいて平面化して示したものである。図7では4つのピーク(丸を付した部分)が表れている。これは、対称性に基づいて1つの面(c面)から2つのピークが現われるためである。図7において、右上と左下のピークと右下と左上のピークは、それぞれ同じc軸を反対側から見たものである。4つのピークが存在するということは、2つの方向にc軸が存在していることを意味し、c軸が2方向に成長していることが分かる。なお、φ−ψ2軸スキャン法によるX線回折測定については、後に詳述する。
(実施例1)
LaAlO3単結晶基板を用意した。LaAlO3単結晶基板は、(110)面に対して10度傾いた表面(β=10°)を有している。このようなLaAlO3単結晶基板の表面に、MOCVD法によりBi−2212超伝導体結晶を成長させた。成膜条件は比較例1と同一とした。このようにして得たBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折測定を行った。その測定結果を図8に示す。
図8は図7と同様なX線回折ピークの測定結果である。図8では2つのピーク(丸を付した部分)、すなわち右下と左上のピークのみが現われており、右上と左下のピークは消滅している。2つのピークしか存在しないということは、1つの方向のみにc軸が存在していることを意味し、c軸が1方向に成長していることが分かる。
(実施例2)
LaAlO3単結晶基板を用意した。LaAlO3単結晶基板は、(110)面に対して20度傾いた表面(β=20°)を有している。このようなLaAlO3単結晶基板の表面に、MOCVD法によりBi−2212超伝導体結晶を成長させた。成膜条件は比較例1と同一とした。このようにして得たBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折測定を行った。その測定結果を図9に示す。
図9は図7と同様なX線回折ピークの測定結果である。図9では2つのピーク(丸を付した部分)、すなわち右下と左上のピークのみが現われており、右上と左下のピークは消滅している。2つのピークしか存在しないということは、1つの方向のみにc軸が存在していることを意味し、c軸が1方向に成長していることが分かる。
(実施例3)
SrTiO3単結晶基板を用意した。SrTiO3単結晶基板は、(110)面に対して10度傾いた表面(β=10°)を有している。このようなSrTiO3単結晶基板の表面に、MOCVD法によりBi−2212超伝導体結晶を成長させた。成膜条件は比較例1と同一とした。このようにして得たBi−2212超伝導薄膜のφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折測定を行った。その測定結果を図10に示す。
図10は図7と同様なX線回折ピークの測定結果である。図10では2つのピーク(丸を付した部分)、すなわち右下と左上のピークのみが現われており、右上と左下のピークは消滅している。2つのピークしか存在しないということは、1つの方向のみにc軸が存在していることを意味し、c軸が1方向に成長していることが分かる。
なお、実施例1〜3と同様に、(110)面に対して10度傾いた表面を有するLaAlO3単結晶基板、(110)面に対して20度傾いた表面を有するLaAlO3単結晶基板、(110)面に対して10度傾いた表面を有するSrTiO3単結晶基板上に、MOCVD法によりBi−2201超伝導体結晶またはBi−2223超伝導体結晶を成長させたところ、実施例1〜3と同様な結果が得られることが確認された。
上述したφ−ψ2軸スキャン法によるX線回折測定について、以下に詳述する。通常のθ−2θ型の粉末用X線回折装置(2軸ディフラクトメーター)を用いた薄膜の評価は、一般的に行われている。通常の2軸ディフラクトメーターで薄膜の配向を評価する場合、基板に垂直方向の回折を観察することになる。一般的なBi系酸化物超伝導薄膜はc軸配向(基板面に対してc軸が垂直)しており、2軸ディフラクトメーターで基板に垂直方向の(002n)の回折を観測することが可能である。ペロブスカイト型酸化物の単結晶基板の(110)面上に形成されるBi系酸化物超伝導薄膜は、非c軸配向(例えば117配向)であり、通常の2軸ディフラクトメーターによる観察では(117)面による回折が観測される。しかし、(117)面が基板の(110)面に平行であるため、(117)ピークの観察では1方向成長と2方向成長の区別をつけることができない。
このような観点から、成長方向の直接的な評価を行うためには、c軸の方向を測定することが望ましい。さらに、基板の機械的表面に対して結晶面が大きく傾いた基板を用いた場合において、c軸を観測するためには、c軸の結晶面の法線に対する傾斜角(α2)と結晶面に対する基板面の傾斜角(β)とを考え合わせ、機械的な基板表面に対して(α2+β)と(α2−β)とを評価する必要がある。このようなc軸が基板面に対して傾いた試料で配向を知るためには、ω軸の角度にオフセット(軸オフセット)を与える必要がある。傾きの小さい試料では、この手法はとても有効である。しかし、基板の傾き(基板オフセット)が大きく、さらに軸オフセットを与える方法では、回折X線が試料自体の陰になってしまい、測定が不可能になる。このため、非c軸配向膜のc軸がどの方向を向いているのかを直接的に観測することはできない。
多軸のX線回折装置を使用する場合には、極点図法(pole figure法)が良く用いられている。上述した実施例で示したφ−ψ2軸スキャン法は、極点図法とスキャン軸が同じであるが、スキャン範囲をψ軸のプラスマイナス側に広くとり、直交座標に表示している。これらによって、大きな傾斜角を持つ基板上での2軸配向成長様式を直接的に可視化することができる。これは、2軸ディフラクトメーターの使用時のω軸のオフセットに代えて、ψ軸が結晶面の傾きを利用していることになる。また、基板と膜の結晶のそれぞれについて測定することによって、方位関係も直接的に評価することできる。図10は2方向成長の測定状態を模式的に示しており、図11は1方向成長の測定状態を模式的に示している。2方向成長でも1方向成長でも、測定結果は対称性により右下と左上の1組のピークと右上と左下の1組のピークに基づいて判定される。これらのうち、1組のピークしか現れていなければ、c軸が1方向に成長していることが確認される。
1…単結晶基板、1S…基板表面のステップ、1R…ステップの段差面、2…Bi系酸化物超伝導薄膜、2A,2B…成長初期のBi系酸化物超伝導体結晶、CF…ペロブスカイト型酸化物の結晶面、SS…単結晶基板の表面、SF…Bi系酸化物超伝導薄膜の表面、α1…単結晶基板の結晶面に対するBi系酸化物超伝導体結晶のc軸の角度、α2…単結晶基板の結晶面の法線方向に対するBi系酸化物超伝導体結晶のc軸の角度、β…ペロブスカイト型酸化物基板の結晶面に対する基板表面の角度。

Claims (10)

  1. ペロブスカイト型結晶、疑似ペロブスカイト型結晶、または岩塩型結晶の2回対称の結晶面から3°以上25°以下の角度で傾斜した表面を有するペロブスカイト型、疑似ペロブスカイト型、または岩塩型の酸化物単結晶基板を用意する工程と、
    前記酸化物単結晶基板の前記表面にBi系酸化物超伝導体結晶を成長させて、Bi系酸化物超伝導薄膜を成膜する工程を具備し、
    前記Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸を、前記結晶面から所定の角度で斜め方向に、かつ前記表面の前記結晶面からの傾斜角に基づいて1方向のみに成長させて、前記Bi系酸化物超伝導薄膜を成膜することを特徴とするBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法。
  2. 前記酸化物単結晶基板は、SrTiO3、LaAlO3、NdGaO3、NdAlO3、(LaAlO3)0.3−(SrAl0.5Ta0.5O3)0.7、LaSrAlO4、LaSrGaO4、またはMgOからなり、前記結晶面は(110)面である、請求項1に記載のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法。
  3. 前記Bi系酸化物超伝導体は、(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Cu1O6+δ(AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)、(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Ca1Cu2O8+δ(AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)、または(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Ca2Cu3O10+δ(AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)で表される組成を有する、請求項1または請求項2に記載のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法。
  4. 前記Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸を、前記結晶面に対して38°以上48°以下の角度で成長させる、請求項3に記載のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法。
  5. φ−ψ2軸スキャン法により前記Bi系酸化物超伝導薄膜のX線回折測定を実施し、得られたX線回折結果から前記Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸が1方向のみに成長していることを確認する、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のBi系酸化物超伝導薄膜の製造方法。
  6. ペロブスカイト型結晶、疑似ペロブスカイト型結晶、または岩塩型結晶の2回対称の結晶面から3°以上25°以下の角度で傾斜した表面を有するペロブスカイト型、疑似ペロブスカイト型、または岩塩型の酸化物単結晶基板と、
    前記酸化物単結晶基板の前記表面に成膜されたBi系酸化物超伝導薄膜であって、Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸が、前記結晶面から所定の角度で斜め方向に、かつ1方向のみに成長したBi系酸化物超伝導薄膜と
    を具備することを特徴とするBi系酸化物超伝導薄膜構造体。
  7. 前記酸化物単結晶基板は、SrTiO3、LaAlO3、NdGaO3、NdAlO3、(LaAlO3)0.3−(SrAl0.5Ta0.5O3)0.7、LaSrAlO4、LaSrGaO4、またはMgOからなり、前記結晶面は(110)面である、請求項6に記載のBi系酸化物超伝導薄膜構造体。
  8. 前記Bi系酸化物超伝導体は、(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Cu1O6+δ(AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)で表される組成を有し、かつ前記Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸は、前記結晶面に対して38.5°の角度で成長している、請求項6または請求項7に記載のBi系酸化物超伝導薄膜構造体。
  9. 前記Bi系酸化物超伝導体は、(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Ca1Cu2O8+δ(AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)で表される組成を有し、かつ前記Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸は、前記結晶面から41.6°の角度で成長している、請求項6または請求項7に記載のBi系酸化物超伝導薄膜構造体。
  10. 前記Bi系酸化物超伝導体は、(Bi1−aAa)2(Sr1−bBb)2Ca2Cu3O10+δ(AおよびBは陽イオンであり、aは0≦a<1を満足する数、bは0≦b<1を満足する数、δは0≦δ<1を満足する数である。)で表される組成を有し、かつ前記Bi系酸化物超伝導体結晶のc軸は、前記結晶面に対して47.3°の角度で成長している、請求項6または請求項7に記載のBi系酸化物超伝導薄膜構造体。
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