JP2016216444A - 自然免疫系炎症抑制剤、食品組成物、食品添加物、及び、自然免疫系抑制剤のスクリーニング方法 - Google Patents

自然免疫系炎症抑制剤、食品組成物、食品添加物、及び、自然免疫系抑制剤のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】自然免疫系の異常な活性化状態に起因する炎症を抑制し、アトピー性皮膚炎等の発生を十分に抑制できる自然免疫系炎症抑制剤を提供する。【解決手段】炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸を含有する。自然免疫系炎症はアトピー性皮膚炎である。cis型モノ不飽和脂肪酸はcis型-9-モノ不飽和脂肪酸である。cis型モノ不飽和脂肪酸はミリストレイン酸、パルミトレイン酸又はオレインである。【選択図】図11

Description

本発明は、自然免疫系が異常な活性化状態になることに起因する炎症を抑制する炎症抑制剤及びその炎症抑制剤を含有する食品組成物等に関する。
アレルギー疾患は国民の約3割が罹患する国民病であり、その疾患は乳幼児のアトピー性皮膚炎(以下、「Atopic Dermatitis:AD」と略することがある。)から始まり、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症へと進行し、このアレルギー疾患の行進はアレルギーマーチと言われることがある。
一方、アレルギーを始めとする免疫疾患で作用する免疫系は、第1段階目の自然免疫系と第2段階目の獲得免疫系とからなる。自然免疫系は、先天的に備わる抗原非特異的な免疫反応であり、例えば好中球やマクロファージによる細菌の貪食作用等が典型的に挙げられる。これに対して獲得免疫系は、一度感作された抗原に対する免疫記憶により、2回目以降の感作において強力な免疫反応が誘導される抗原特異的な免疫反応であり、例えばT細胞やB細胞を介した抗原抗体反応等が典型的に挙げられる。
ここで自然免疫系は獲得免疫系の発動を支配していると考えられており、即ち自然免疫系が活性化しなければ、AD等の獲得免疫系は活性化しないとされている。そのため、免疫系の入り口である自然免疫系を抑制すれば、その後に作用するAD等の獲得免疫系も予防でき、ひいては上述のアレルギーマーチの行進も抑制しうると思われる。
例えば特許文献1には、6,9-オクタデカジエン酸、8,11-エイコサジエン酸、及び5,8,11-エイコサトリエン酸等のオメガ9系不飽和脂肪酸がアレルギー反応を抑制し得る旨の記載がある。また特許文献2には、ω3系高度不飽和脂肪酸を含有する油脂、ω6系高度不飽和脂肪酸を含有する油脂及びシソ葉抽出物からなるアレルギー性患者用の抗アレルギー性油脂組成物が記載されている。また特許文献3には、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、コレステロールを配合してなる低アレルギー性調製乳が記載されている。また例えば特許文献4には、冬虫夏草の抽出エキス又は乾燥粉末、ビタミンD3、トレハロース及びイソロイシンからなる免疫調整作用を有する組成物を含有する自然免疫機能調節組成物が記載されている。また特許文献5には、自然免疫機能を調節する新規乳酸菌株としてのラクトバチルス・パラカゼイLT12株が記載されている。また特許文献6には、自然免疫機能を調節する組成物として、パントエア・アグロメランス由来のリポ多糖が記載されている。
特開2005−336205号公報 特開平09−291299号公報 特開平08−033448号公報 特開2008−154488号公報 特開2011−142907号公報 特開2015−023832号公報
しかし、特許文献1乃至3に記載されている技術は自然免疫系炎症を抑制することに着目されておらず、また特許文献4乃至6に記載されている技術は自然免疫系炎症の抑制を意図しているものの、自然免疫系の過剰な活動を十分に抑制することに至っていない。このように従来の技術ではアレルギーマーチの行進を止めることができず、アトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー疾患を十分に抑制することは困難である。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、自然免疫系の異常な活性化状態に起因する炎症を抑制し、アトピー性皮膚炎等の発生を十分に抑制できる自然免疫系炎症抑制剤を提供することを目的とする。また、この自然免疫系炎症抑制剤を含有する食品組成物及び食品添加物を提供することを目的とする。また、この自然免疫系炎症抑制剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる自然免疫系炎症抑制剤は、炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸を含有することを特徴とする。
本発明にかかる食品組成物及び食品添加物は、上述の自然免疫系炎症抑制剤を含有することを特徴とする。
本発明にかかる自然免疫系炎症抑制剤のスクリーニング方法は、ヒト末梢血単球由来細胞THP-1を培養する培地にホルボールミリステートアセテートを添加して前記ヒト末梢血単球由来細胞THP-1をマクロファージに分化させ、その培地に飽和脂肪酸を添加させてマクロファージの培養上清におけるIL-1βの産生量を測定する第1工程と、前記マクロファージに分化させたその培地に更に目的物質を添加させて、マクロファージの培養上清におけるIL-1βの産生量を測定する第2工程と、第2工程におけるIL-1βの産生量が、第1工程におけるIL-1βの産生量よりも低減される場合に、前記目的物質が自然免疫系抑制剤であると判断する工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、自然免疫系の過剰な活動を十分に抑制することができ、アトピー性皮膚炎等を効果的に抑制できる。特に乳児用粉ミルクに本発明を利用することにより、アレルギーマーチを効果的に予防することが可能となる。即ち、アレルギーマーチは、典型的には、乳児期に飽和脂肪酸等の摂取によりアトピー性皮膚炎を発症し、生後6カ月頃で喘鳴を発症し、1〜2歳になると呼吸困難が加わる気管支喘息発作が発生し、14〜15歳になると成人型気管支喘息が発症するように、次から次へアレルギーが形を変えて進行してゆくことであるが、本発明にかかる自然免疫系炎症抑制剤を乳児用粉ミルクに利用することにより、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症を防止し、アレルギーマーチを予防することができる。また搾乳期の母親用食品に本発明を利用することによっても、母乳を経由して乳児に本発明にかかる自然免疫系炎症抑制剤を適用することができるため、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症を防止してアレルギーマーチを予防することができる。本発明によればステロイド薬の利用やアレルゲン含有食品の制限等を行うこと無く、効果的にアレルギーマーチを抑制できるので極めて社会的価値が高い。また、本発明にかかるスクリーニング方法によれば、簡易且つ正確に自然免疫系炎症抑制剤をスクリーニングすることができるため、見出された組成物を利用することにより、自然免疫系の過剰な活動を抑制してアトピー性皮膚炎等を効果的に抑制できる。
AD群とnon-AD群とにおける母乳中のDAMPs活性の測定結果を示す図である。 脂肪酸においてAD群とnon-AD群とにおける母乳中のDAMPs活性の測定結果を示す図である。 母乳中に含まれる物質の質量分析の多変量解析結果である。 母乳中における炭素鎖長C16の飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の割合を示す図である。 モノ飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸の濃度を増加した場合においてTHP-1をPMA(Phorbol Myristate Acetate(ホルボールミリステートアセテート))で分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。 飽和脂肪酸添加系に更にcis型-9-モノ不飽和脂肪酸の濃度を増加した場合において、THP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。 飽和脂肪酸及びtrans型不飽和脂肪酸の濃度を0,50,100,150,200μMと増加した場合においてTHP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。 飽和脂肪酸添加系に、天然(cis型)不飽和脂肪酸及びtrans型不飽和脂肪酸を添加した場合において、THP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。 パルミチン酸を含有させた餌により飼育したHR-1マウスを示す図である。 オレイン酸を含有させた餌により飼育したHR-1マウスを示す図である。 飽和脂肪酸投与群(PA)に不飽和脂肪酸(OLC)を混ぜた場合におけるHR-1マウスの皮膚病変抑制を示す図である。 HR-1マウスの皮膚切片の免疫染色組織図である。 HR-1マウスの正常餌に飽和脂肪酸(パルミチン酸:PA)、不飽和脂肪酸(オレイン酸:OLC)、又はPAとOLCの混合物を混ぜて5ヶ月間観察した場合の血中IgE濃度の測定結果を示す図である。 HR-1マウスの通常の血中IgA,IgG3,IgG2a,IgM,IgG2b,IgG1濃度の測定結果を示す図である。 PAを含む餌群の母親から生まれた新生仔(A-(PA)群のマウス)の写真図である。 HR-1マウスの母乳中のDAMPs活性の測定結果を示す図である。 正常餌群の母親から生まれた新生仔を、PAを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(PA)群のマウス)の写真図である。 正常餌群の母親から生まれた新生仔を、OLCを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(OLC)群のマウス)の写真図である。 正常餌群の母親から生まれた新生仔を、PA+OLCを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(PA+OLC)群のマウス)のの写真図である。 PA餌群の母親から生まれた新生仔を、正常餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(ND)群のマウス)の写真図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
本実施形態にかかる自然免疫系炎症抑制剤は、自然免疫系炎症の予防及び/又は治療に用いられ、炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸を含有する。
本発明者は、出生コホート研究の母乳栄養児の解析の過程で、生後6ヶ月から1年の時点で、専門医の診断によりアトピー性皮膚炎と診断された乳幼児を持つ母親の初乳(AD群母乳)を用いて、自然免疫系炎症を惹起する活性(Damage-associated molecular patterns活性:DAMPs活性)を測定した。すると、AD群検体の約10%にDAMPs活性を検出する一方、非AD群検体ではDAMPs活性は全く検出できなかった。かかる事実から、本発明者は、AD群母乳中にDAMPs活性を惹起する原因物質の存在を想定し、そしてその原因物質が飽和脂肪酸にあることを見出し、かかる事実に基づいて本発明を完成させた。
ここで自然免疫系炎症とは、自然免疫系が異常な活性化状態となることに起因する炎症であり、自然免疫系とは、生体が備える免疫のうち生体に先天的に備わっており、事前に抗原に暴露していなくても抗原を生体から排除するに際に機能する機構を意味する。
本発明にかかる自然免疫系炎症抑制剤は、自然免疫系炎症の予防及び/又は治療のためのものであるが、本明細書において「予防」には炎症の発症を抑えること及び遅延させることが含まれ、炎症になる前の予防だけでなく、治療後の炎症の再発に対する予防も含まれる。「治療」には炎症の症状を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが含まれる。
炭素数14〜24のモノ不飽和脂肪酸とは、二重結合を1つ有する炭素数14〜24の脂肪酸のことをいい、炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸とは、異性体のうちシス体のみを包含しトランス体を排除する趣旨である。炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸には、例えば、炭素数16のcis-6-モノ不飽和脂肪酸であるサピエン酸、炭素数18のcis-11-モノ不飽和脂肪酸であるバクセン酸、炭素数20のcis-9-モノ不飽和脂肪酸であるガドレイン酸、炭素数20のcis-11-モノ不飽和脂肪酸であるエイコセン酸、炭素数22のcis-13-モノ不飽和脂肪酸であるエルカ酸、又は、炭素数24のcis-15-モノ不飽和脂肪酸であるエルボン酸等が包含される。
炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸は、炭素数14〜24のcis型-9-モノ不飽和脂肪酸であることが好ましい。cis型-9-モノ不飽和脂肪酸とは、不飽和結合が9位にシス型配置する不飽和脂肪酸であることを意味する。
具体的には、炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸は、例えば下記に示すように炭素数14のcis-9-モノ不飽和脂肪酸であるミリストレイン酸である。
また、炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸は、例えば下記に示すように炭素数16のcis-9-モノ不飽和脂肪酸であるパルミトレイン酸である。
また、炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸は、例えば下記に示すように炭素数18のcis-9-モノ不飽和脂肪酸であるオレイン酸である。
本発明の自然免疫系炎症抑制剤は炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸を含有するものであるが、かかる態様に限定されず、炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸誘導体をも含有することが可能である。モノ不飽和脂肪酸誘導体は特に限定されるものではなく、例えばcis型モノ不飽和脂肪酸エステルや、二重結合がシクロプロパン環によって置換されたcis型モノ不飽和脂肪酸である。
本発明の自然免疫系炎症抑制剤は、自然免疫系の過剰な活動に起因するアレルギー疾患性炎症を対象とすることができ、例えば顎関節炎、潰瘍性大腸炎、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎であり、そのうち好ましくはアトピー性皮膚炎である。
本発明は、上述した自然免疫系炎症抑制剤を含有する医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物としては、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、注射剤、輸液、散剤、腸溶剤、懸濁剤、シロップ剤、内服液剤、トローチ剤、乳剤、外用液剤、湿布剤、点鼻剤、点耳剤、点眼剤、吸入剤、軟膏剤、ローション剤、座剤等の形態とすることが可能である。
本発明の医薬組成物においては、自然免疫系炎症抑制剤を含有する限りその比率については特に限定されるものではないが、例えば自然免疫系炎症抑制剤を0.01質量%以上90質量%以下含有するものとすることが可能である。
また本発明は、上述した自然免疫系炎症抑制剤を含有する皮膚外用剤に関する。本発明の皮膚外用剤としては、例えば、クリーム、乳液、化粧水、パック、洗浄剤、頭皮・毛髪用品、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、パーマネント剤、石けん、歯磨き剤等の形態とすることが可能である。
本発明の皮膚外用剤においては、自然免疫系炎症抑制剤を含有する限りその比率については特に限定されるものではないが、例えば自然免疫系炎症抑制剤を0.01質量%以上90質量%以下含有するものとすることが可能である。本発明の皮膚外用剤は、対象の年齢や肌の状態により異なるが、例えばその使用量は1日あたり約0.001〜10gとすることが可能である。
また本発明は、上述した自然免疫系炎症抑制剤を含有する食品組成物に関する。本発明の食品組成物は、一般飲食品に加えて特定保健用食品、健康食品、機能性食品等を包含する概念である。本発明の食品組成物は、例えば、粉ミルク、母親用食品、チーズ、うどん、そば、パン、ウインナー、ソーセージ、ハム、アイスクリーム、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、チューインガム、ヨーグルト、グミ、チョコレート、ビスケット等である。
粉ミルクは、乳幼児が授乳期に飲む乳幼児用粉ミルクであることが好ましい。また、母親用食品は、搾乳期の母親用食品であることが好ましい。後述の実施例にて記載されるが、本発明者は、出生後の乳幼児のアトピー性皮膚炎様の皮膚湿疹病変は、授乳期間中の母乳栄養による影響が大きいことを見出した。そこで、乳幼児が授乳期に飲む乳幼児用粉ミルクに本実施形態にかかる自然免疫系炎症抑制剤を含有させることにより、乳幼児が直接的に本実施形態にかかる自然免疫系炎症抑制剤を摂取することで、アトピー性皮膚炎の発症を効果的に抑制することが可能となる。また、搾乳期の母親用食品に本実施形態にかかる自然免疫系炎症抑制剤を含有させることにより、乳幼児が間接的に本実施形態にかかる自然免疫系炎症抑制剤を摂取することで、アトピー性皮膚炎の発症を抑制することが可能となる。
本発明の食品組成物においては、自然免疫系炎症抑制剤を含有する限りその比率については特に限定されるものではないが、例えば自然免疫系炎症抑制剤を0.01質量%以上50質量%以下含有するものとすることが可能である。
また本発明は、上述した自然免疫系炎症抑制剤を含有する食品添加物に関する。本発明の食品添加物は、食品の製造の過程において又は加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいい、具体的には乳化剤、緊張化剤、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等である。
本発明の食品添加物においては、自然免疫系炎症抑制剤を含有する限りその比率については特に限定されるものではないが、例えば自然免疫系炎症抑制剤を0.01質量%以上30質量%以下含有するものとすることが可能である。
なお、本発明はアトピー性皮膚炎モデルマウスにも関連する。本発明者は、マウスの餌に飽和脂肪酸を混合させて所定期間飼育したところ皮膚湿疹病変がみられ、ヒトのアトピー性皮膚炎では大半の場合血中の抗体IgEクラスだけ上昇するところ、このモデルマウスでも抗体IgEクラスだけが上昇していることを見出し、かかる事実に基づいて本発明がアトピー性皮膚炎モデルマウスの作製にも応用できることを見出した。即ち、本発明にかかるアトピー性皮膚炎モデルマウスは、飽和脂肪酸を含有する飼料を所定期間投与することにより皮膚湿疹病変が発症したマウスである。
また、本実施形態にかかる自然免疫系抑制剤のスクリーニング方法は、ヒト免疫系細胞を培養する培地に細胞分化調整剤を添加してヒト免疫系細胞をマクロファージに分化させ、その培地に飽和脂肪酸を添加させてマクロファージの培養上清における炎症性サイトカインの産生量を測定する第1工程と、マクロファージに分化させたその培地に更に目的物質を添加させて、マクロファージの培養上清における炎症性サイトカインの産生量を測定する第2工程と、第2工程における炎症性サイトカインの産生量が、第1工程における炎症性サイトカインの産生量よりも低減される場合に、目的物質が自然免疫系抑制剤であると判断する工程と、を有する。
細胞分化調整剤としては特に限定されるものではないが、例えばホルボールミリステートアセテート(PMA:Phorbol Myristate Acetate)が挙げられる。炎症性サイトカインとしては特に限定されるものではないが、例えばIL-1βが挙げられる。ヒト免疫系細胞としては特に限定されるものではないが、例えばヒト末梢血単球由来細胞THP-1が挙げられる。
(1)実施例1〜母乳中のDAMPs活性測定
母乳のみで育てた母子のコホートを集め、生後6ヶ月〜1年の時点で専門医による検診でアトピー性皮膚炎と診断された群(AD群)と、そうでない群(non-AD群)とにおいて、母乳中成分の差異を検討するコホート研究を行った。なお、コホート研究とは分析疫学における手法の一つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団とを追跡し、研究対象となる疫病の発生率を比較することで、要因と疫病発生との関連を調べる研究方法である。免疫系の入り口である自然免疫系は、病原体の構成成分(PAMPs)又は組織破壊により放出される自己成分(DMPs)のどちらかによる活性化が必要であるところ、実施例1ではアレルギー疾患との関連からDAMPs活性を測定した。
測定法は、ヒト単球(monocyte)細胞株THP-1を刺激し、マクロファージへと分化させてその培養液に母乳を添加し、炎症性サイトカインIL-1betaの放出を測定した。
図1は、AD群とnon-AD群とにおける母乳中のDAMPs活性の測定結果を示す図である。図1に示されるように、Non-AD群の母乳75検体では、全てDAMPs活性が陰性であった。しかし、AD群の母乳75検体中5検体に、非常に強いDAMPs活性が認められた。その程度は、図1に示されるように、既知のDAMPs物質である尿酸結晶(痛風の原因物質)と同程度であった。
そして、母乳中に含まれるIL-1betaは検出限界以下であったことから、母乳中の炎症性サイトカインを測定しているわけではないことが示され、母乳中のDAMPs活性物質XがTHP-1細胞に作用した結果、IL-1betaの産生が起きたと考えられた。
なお、このDAMPs活性物質Xは、既知のDAMPs物質である尿酸結晶、ATP又はヒアルロン酸と異なる物質であることは、それぞれの分解酵素であるUricase処理、ATPase処理、Hyarrulonidase処理等で母乳中DAMPs活性に変化がないことで実験的に証明された(データ示さず)。
(2)実施例2〜DAMPs活性物質Xの同定
次に、AD群の母乳中に含まれアトピー性皮膚炎の要因となるDAMPs活性物質Xの同定を質量分析解析により試みた。
図2は、脂肪酸においてAD群とnon-AD群とにおける母乳中のDAMPs活性の測定結果を示す図である。(a)はミリスチン酸であり、(b)はパルミチン酸であり、(c)はステアリン酸であり、(d)はアラキジン酸であり、(e)はミリストレイン酸であり、(f)はパルミトレイン酸であり、(g)はオレイン酸であり、(h)はアラキドン酸である。図2に示されるように、脂肪酸においてAD群とnon-AD群とに母乳中のDAMPs活性の差異が認められた。特に図2(a)及び図2(b)に示されるように飽和脂肪酸と、図2(f)及び図2(g)に示されるように不飽和脂肪酸とにおいて有意差が顕著であった。なお、アミノ酸群や低分子量物質群においては、両群(non-AD群、AD群・DAMPs(+))ともに有意差が見られなかった(データ示さず)。
そこで脂肪酸に焦点を絞り、多変量解析による主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)を行った。多変量解析は、変数に関するデータにつき関連性を明確にする統計解析である。図3は母乳中に含まれる物質の質量分析の多変量解析結果である。多変量解析に使用したサンプル数は3000であり、図3中のデータが示す数字はサンプル番号である。横軸D1スコアは第1主成分である飽和脂肪酸含量であり、縦軸D2スコアは第2主成分である不飽和脂肪酸含量である。なお主成分分析におけるスコアとは、横軸D1、縦軸D2の個々の散布点の値を意味する。図3に示されるようにAD群(DAMPs+)とNon-AD群とではっきりと異なる分布(相関)を示した。
前述の図2に示したように一般的にAD群の母乳では脂肪酸含量が多い傾向が見られるが、単純に脂肪酸含量を増やしてもDAMPs測定系では差がなかった(データ示さず)。
図4は、母乳中における炭素鎖長C16の飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の割合を示す図である。即ちパルミトレイン酸/パルミチン酸の比を示す図である。図4に示されるように、AD群とNon-AD群とでは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率が異なる点が明らかとなった。なお、母乳中における炭素鎖長C14及びC18の場合においても、飽和脂肪酸に対する不飽和脂肪酸の割合は、AD群とNon-AD群とにおいて明らかに異なるものであった(データ示さず)。これによりAD群の母乳中に含まれアトピー性皮膚炎の要因となるDAMPs活性物質Xは飽和脂肪酸であることが判明した。
(3)実施例3〜in vitroでのDAMPsアッセイ
次に、in vitroでのDAMPsアッセイとして、モノ飽和脂肪酸(ミリスチン酸:MA、パルミチン酸:PA、ステアリン酸:STR、アラキジン酸:ARAD)及びモノ不飽和脂肪酸(ミリストレイン酸:MTLC、パルミトレイン酸:PTLC、オレイン酸:OLC、アラキドン酸:ARA)の濃度を0,50,100,150,200μM/mLと増加した場合において、ヒト単球細胞株THP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析を行った。
図5は、モノ飽和脂肪酸及びモノ不飽和脂肪酸の濃度を増加した場合においてTHP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。図5に示されるように、飽和脂肪酸は容量依存的にDAMPs活性が上昇(IL-1beta産生上昇)した。即ち、何れの飽和脂肪酸でも濃度が0,50,100,150,200μM/mLと増加するにつれてIL-1beta産生が上昇しており、これは飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸に対する含有率が上昇するにつれてIL-1beta産生が上昇することであり、まさしくDAMPs活性物質Xである飽和脂肪酸濃度が上昇しているからである。それに対して不飽和脂肪酸は全くコントロールレベル(ベースライン・レベル)であった。即ち、何れの不飽和脂肪酸においても濃度が0,50,100,150,200μM/mLと増加してもIL-1beta産生量はほぼ一定であり、これはDAMPs活性物質Xである飽和脂肪酸濃度が上昇していないからと考えられる。なお、飽和脂肪酸による活性は、尿酸結晶と同程度の強い炎症惹起活性であった。
図6は、飽和脂肪酸添加系に更にcis型-9-モノ不飽和脂肪酸の濃度を増加した場合において、THP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。図6に示されるように、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸又はオレイン酸を加えることによりDAMPs活性が抑制できることが示された。
次に、天然型不飽和脂肪酸は全てcis型であるが、部分硬化油等で発生するtrans型不飽和脂肪酸(エライジン酸:EA,MyristelaidicAcid:MTLD)(マーガリン、ショートニングなどに含まれる)を添加した。図7は、飽和脂肪酸及びtrans型不飽和脂肪酸の濃度を0,50,100,150,200μM/mLと増加した場合においてTHP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。図7に示されるように、天然型cis型不飽和脂肪酸とは全く逆で飽和脂肪酸と同様に容量依存的にIL-1beta 産生が増加した(DAMPs活性が増加)。即ち、飽和脂肪酸の濃度が0,50,100,150,200μM/mLと増加するにつれてIL-1beta産生が上昇しており、同様に、trans型不飽和脂肪酸の濃度が0,50,100,150,200μM/mLと増加するにつれてIL-1beta産生が上昇しており、これはtrans型不飽和脂肪酸も飽和脂肪酸と同様にDAMPs活性を上昇させることを意味する。
図8は、飽和脂肪酸添加系に、天然(cis型)不飽和脂肪酸及びtrans型不飽和脂肪酸を添加した場合において、THP-1をPMAで分化させたマクロファージの培養上清におけるIL-1betaのELISA解析結果を示す図である。天然型cis-不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸の炎症活性を抑制する作用があるが、図8に示されるようにtrans型不飽和脂肪酸はその抑制活性を持たなかった。
(4)実施例4〜in vivoでのDAMPsアッセイ
皮膚病変が観察しやすいようにHR-1マウス(ヘアレス・マウス、免疫系は正常)の正常餌に飽和脂肪酸(パルミチン酸:PA)又は不飽和脂肪酸(オレイン酸:OLC)を混ぜて5ヶ月間観察した。
ここで正常餌の組成は下記表1に示すものであった。以後、本実施例において正常餌の組成は同一である。
正常餌に含有させたパルミチン酸の濃度は30重量%であった。また、正常餌に含有させたオレイン酸の濃度は30重量%であった。以後、本実施例においてPAを含む餌のパルミチン酸濃度及びOLCを含む餌のオレイン酸濃度は同一である。図9はパルミチン酸を含有させた餌により飼育したHR-1マウスを示す図であり、図10はオレイン酸を含有させた餌により飼育したHR-1マウスを示す図である。図9に示されるように、PA投与群でのみ皮膚湿疹病変が観察されたが、図10に示されるようにOLC投与群では皮膚は正常であった。
HR-1マウスの正常餌にパルミチン酸及びオレイン酸を混ぜて5ヶ月間観察した。正常餌に含有させたパルミチン酸の濃度は30重量%であり、オレイン酸の濃度も30重量%であった。以後、本実施例においてPA+OLCを含む餌のパルミチン酸及びオレイン酸の濃度は同一である。図11は飽和脂肪酸投与群(PA)に不飽和脂肪酸(OLC)を混ぜた場合におけるHR-1マウスの皮膚病変抑制を示す図である。図11におけるPA+OLCを参照するに、in vivo実験系で飽和脂肪酸投与群(PA)に不飽和脂肪酸(OLC)を混ぜると、皮膚病変が抑制されることが分かった。
図12はHR-1マウスの皮膚切片の免疫染色組織図である。免疫染色プロトコールは、HR-1マウスの皮膚採取後、4%パラホルムアルデヒドで一晩固定し、10%ショ糖PBS(一晩)→20%ショ糖PBS(一晩)→30%ショ糖PBS(一晩)の順で処理し、ドライアイスアセトンで凍結させて表皮側から刃を入れ、厚さ5μmで薄切りにしてPBSで水和してHE染色した。図12におけるPA+OLCを参照するに、飽和脂肪酸投与群(PA)に不飽和脂肪酸(OLC)を混ぜると皮膚病変炎症の抑制が確認された。
(5)実施例5〜マウス血中におけるIgE濃度測定
図13は、HR-1マウスの正常餌に飽和脂肪酸(パルミチン酸:PA)、不飽和脂肪酸(オレイン酸:OLC)、又はPAとOLCの混合物を混ぜて5ヶ月間観察した場合の血中IgE濃度の測定結果を示す図である。ヒトのアトピー性皮膚炎では、ほとんどの場合血中の抗体IgEクラスだけ上昇することが知られているが、図13に示されるように飽和脂肪酸(PA)投与群でのみでIgE上昇が観察された。不飽和脂肪酸投与群(OLC)、及び、飽和+不飽和脂肪酸・混合投与群(Mix)ではIgEの上昇は観察出来なかった。
図14は、HR-1マウスの通常の血中IgA,IgG3,IgG2a,IgM,IgG2b,IgG1濃度の測定結果を示す図である。図14に示されるように、IgE以外の抗体クラスのレベルに有意差は認められなかった。即ち、飽和脂肪酸を含有する飼料を所定期間マウスに投与することにより、アトピー性皮膚炎モデルマウスを作製することができたことが示唆された。
(6)実施例6
実施例6ではマウス新生仔を用いた実験を行った。同日に妊娠した雌マウスを準備し、正常餌群、PAを含む餌群、OLCを含む餌群、PA+OLCを含む餌群、の4つの実験群を設定し、妊娠期間中、前述の餌を食べさせ続けた。出産後も同様であった。そして、正常餌群の母親から生まれた新生仔(New born mice)は、正常餌を摂取している母親から母乳を摂取する状況を作った(A-(ND)群のマウス)。
PAを含む餌群の母親から生まれた新生仔(New born mice)は、PAを含む餌を摂取している母親から母乳を摂取する状況を作った(A-(PA)群のマウス)。OLCを含む餌群の母親から生まれた新生仔(New born mice)は、OLCを含む餌を摂取している母親から母乳を摂取する状況を作った(A-(OLC)群のマウス)。PA+OLCを含む餌群の母親から生まれた新生仔(New born mice)は、PA+OLCを含む餌を摂取している母親から母乳を摂取する状況を作った(A-(PA+OLC)群のマウス)。
約3週間でマウスは離乳し(一般的にマウスの離乳年齢は21?28日である。)、新生仔マウスは餌を食べ始め、それ以降は、母親と子供のマウスの餌は、正常餌に取り替えて観察を行った。少なくとも、各群5匹以上の観察を行い、その実験を2回繰り返し、再現性を確認した。
図15は、PAを含む餌群の母親から生まれた新生仔(A-(PA)群のマウス)の生後3ヶ月の写真図である。図15に示されるように、生後約3ヶ月程度で、上記4群のマウスの中で、PA餌群の母親から生まれたマウスだけが、皮膚湿疹病変を呈した。しかし、他の3群のマウスでは皮膚病変は認められなかった。これにより、OLCを加えることで、PA摂取群の皮膚病変の発症を抑制できることが示唆された。
次に、正常餌群、PAを含む餌群、OLCを含む餌群、PA+OLC餌群、の4つの実験群からのマウスの母乳を搾乳し、上述の実施例1と同様の活性測定法にて、その母乳中のDAMPs活性を測定した。図16は、HR-1マウスの母乳中のDAMPs活性の測定結果を示す図である。図16に示されるように、PAを含む餌群の母親から搾乳した母乳にのみ、DAMPs活性が検出され、OLCを含む餌群の母親から搾乳した母乳では、DAMPs活性は全く検出できなかった。その活性は、尿酸結晶(MSU)添加した場合と同等の、非常に強いIL-1beta産生誘導活性であった。
(7)実施例7
実施例7でもマウス新生仔を用いた実験を行った。上述の実施例6の実験系では2つの発症要因が含まれている。発症要因1は、妊娠マウス(母親)が妊娠期間中に摂取した餌(食事)に含まれるPAの影響が、胎盤(血液)を通して胎仔の血液・免疫系に及ぼす影響である。発症要因2は、出産直後から、新生仔が摂取する母乳による消化管粘膜系を介した新生仔免疫系への影響である。そこで、実施例7では、この発症要因1と発症要因2とのうち、どちらの要因が皮膚病変に寄与しているかを確認できる実験系をデザインした。
この実験系では、同日に妊娠した雌マウスを準備し、正常餌群、PAを含む餌群、OLCを含む餌群、PA+OLC餌群、の4つの実験群を設定し、妊娠期間中、前述の餌を食べさせ続けた。出産後も同様であった。ただし、この実験系では、出産後に新生仔を取り替えた(Baby-swapping)。
妊娠期間中は正常餌を摂取していた母親マウスから生まれた新生仔を、PAを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育つ環境を作った(B-(PA)群のマウス)。妊娠期間中は正常餌を摂取していた母親マウスから生まれた新生仔を、OLCを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育つ環境を作った(B-(OLC)群のマウス)。妊娠期間中は正常餌を摂取していた母親マウスから生まれた新生仔を、PA+OLCを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育つ環境を作った(B-(PA+OLC)群のマウス)。なお、離乳後(約3週間後)は、新生仔は正常餌を摂取する環境で飼育した。この様にすれば、発症要因1は無視でき、発症要因2の影響(母乳の影響)のみを観察できる。
図17は、正常餌群の母親から生まれた新生仔を、PAを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(PA)群のマウス)の生後3ヶ月の写真図である。図18は、正常餌群の母親から生まれた新生仔を、OLCを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(OLC)群のマウス)の生後3ヶ月の写真図である。図19は、正常餌群の母親から生まれた新生仔を、PA+OLCを含む餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(PA+OLC)群のマウス)の生後3ヶ月の写真図である。
図17、図18及び図19に示されるように、生後15週以上観察すると、B-(PA)群のマウスの皮膚にのみ、アトピー様の湿疹病変が観察できた、B-(OLC)群やB-(PA+OLC)群では、皮膚病変は観察できなかった。PA摂取による皮膚湿疹病変をOLC摂取群の母乳を飲むことで抑制できることがわかった。
さらに逆の実験群での観察も行った。即ち、妊娠期間中はPAを含む餌を摂取していた母親マウスから生まれた新生仔を、正常餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育つ環境を作った(B-(ND)群のマウス)。なお、離乳後(約3週間後)は、新生仔は正常餌を摂取する環境で飼育した。この系では、妊娠期間中の母親の食事環境のみがPAを多く含む環境であるが、新生仔の生後の環境は、母乳栄養、その後の正常餌を含め全て正常な環境である。
図20は、PA餌群の母親から生まれた新生仔を、正常餌を食べている母親マウスのケージに移動させ、その母乳を飲んで育ったマウス(B-(ND)群のマウス)の生後3ヶ月の写真図である。図20に示されるように、この系では、生後3ヶ月以上観察したが、皮膚の湿疹病変を見いだすことができなかった。
この実験結果より、(1)出生後の乳幼児のアトピー性皮膚炎様の皮膚湿疹病変は、授乳期間中の母乳栄養による影響が大きいこと、また、(2)妊娠期間中の母親の食事栄養による影響は、それに比べればはるかに小さいことが示唆された。
アトピー性皮膚炎の症状の改善に利用できる。乳児のアトピー性皮膚炎から進行するアレルギーマーチを抑制できる。

Claims (11)

  1. 炭素数14〜24のcis型モノ不飽和脂肪酸を含有することを特徴とする、自然免疫系炎症の予防及び/又は治療に用いられる自然免疫系炎症抑制剤。
  2. 前記自然免疫系炎症がアトピー性皮膚炎であることを特徴とする請求項1に記載の自然免疫系炎症抑制剤。
  3. 前記cis型モノ不飽和脂肪酸がcis型-9-モノ不飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然免疫系炎症抑制剤。
  4. 前記cis型モノ不飽和脂肪酸がミリストレイン酸、パルミトレイン酸又はオレイン酸であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の自然免疫系炎症抑制剤。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の自然免疫系炎症抑制剤を含有する医薬組成物。
  6. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の自然免疫系炎症抑制剤を含有する皮膚外用剤。
  7. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の自然免疫系炎症抑制剤を含有する食品組成物。
  8. 前記食品組成物は、乳幼児用粉ミルクである請求項7記載の食品組成物。
  9. 前記食品組成物は、搾乳期の母親用食品である請求項7記載の食品組成物。
  10. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の自然免疫系炎症抑制剤を含有する食品添加物。
  11. ヒト末梢血単球由来細胞THP-1を培養する培地にホルボールミリステートアセテートを添加して前記ヒト末梢血単球由来細胞THP-1をマクロファージに分化させ、その培地に飽和脂肪酸を添加させてマクロファージの培養上清におけるIL-1βの産生量を測定する第1工程と、
    前記マクロファージに分化させたその培地に更に目的物質を添加させて、マクロファージの培養上清におけるIL-1βの産生量を測定する第2工程と、
    第2工程におけるIL-1βの産生量が、第1工程におけるIL-1βの産生量よりも低減される場合に、前記目的物質が自然免疫系抑制剤であると判断する工程と、を有することを特徴とする、自然免疫系抑制剤のスクリーニング方法。
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