JP2016211929A - 膠原線維染色法の染色剤及び膠原線維染色法 - Google Patents
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Abstract
【課題】媒染剤を使用せず、染色時間が短期であり、しかも染色結果の良好な膠原線維染色法の新しい染色剤を提供する。【解決手段】ピクリン酸水溶液中に酸性色素染色剤を溶解させたことを特徴とする。ピクリン酸水溶液は飽和ピクリン酸水溶液である。膠原線維染色法はアザン染色法であり、酸性色素染色剤はアゾカルミン及びオレンジGである。従来法ではアゾカルミンGによる細胞染色に約6時間要し、リンタングステン酸による媒染を一晩必要であったが、本発明によれば細胞染色に約30分、リンタングステン酸による分別を約10分で行うことができ、染色時間を約1時間程度にできる。【選択図】図1
Description
本発明は、膠原線維染色法に使用する新規染色剤、及び、その新規染色剤を使用する膠原線維染色法に関する。
病理組織標本の結合組織の染色に膠原線維染色法がある。この膠原線維染色法の一つにアザン染色法がある。アザン染色法は、膠原線維とその他の細胞成分を染め分ける染色法で、線維性結合組織中の膠原線維をアニリン青で染める。病変経過に伴う組織の器質化を知る上で重要視されており、硝子変性、線維素等の病的産生物も染め出すことが可能であるため、有用な染色法とされる。
組織染色における固定は、抗原性の保持と形態保持のために行われるが、ホルマリンでの固定では染色性が安定しない上に、ホルマリンは発がん性物質とも言われるため安全衛生上問題がある。
そこで、渡辺変法(以下、「既存法」という。)では、重クロム酸及びトリクロロ酢酸の等量混合液による媒染剤が提案されている(非特許文献1、2)。媒染剤の効果は、架橋と開裂の2つの効果があるとされており、これにより組織標本分子間の隙間が均霑化され、酸性色素はその分子の大きさに応じ細胞構造に取り込まれて染色されると考えられている(非特許文献3)。
既存法では、媒染剤による前処理を行った後、酸性色素であるアゾカルミンGを用いて目視による確認を行いながら室温で30分〜6時間の染色を行うことで細胞を赤色に染色し、次にアニリンアルコールによる分別を行い、更に5%リンタングステン酸による媒染を一晩程度行った後にアニリン青・オレンジGを用いて膠原線維を青色に染色し、赤血球をオレンジに染色する(非特許文献4、5)。
しかし、組織染色を施すにあたり、媒染剤としていまだ人体に有害な重クロム酸が使用されている。また既存法では染色時間が約2日程度となる場合があり、染色日数が短期とはいえない。更にアゾカルミンGにより赤色に染まるべき細胞に、アニリン青による共染がみられることで、染色不良となる場合もある。
渡辺恒彦;病理技術研究会誌、3:1〜5、1974.
最新染色法のすべて 第1版 医歯薬出版株式会社、2011年3月25日発行
実験病理組織技術研究会編;膠原線維染色 マッソン・トリクロム(MT)染色とアザン(AZAN)染色、病理組織標本作製の理論、63-75、2008.
山田正人;結合組織の染色 アザン染色、新染色法のすべて、7-10、1999.
山田正人;結合組織の染色 アザン染色、最新染色法のすべて、12-13、2011.
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、媒染剤を使用せず、染色時間が短期であり、しかも染色結果の良好な膠原線維染色法の新しい染色剤及びその染色剤を使用した新しい膠原線維染色法を提供することを目的とする。
本発明にかかる膠原線維染色法の染色剤は、ピクリン酸水溶液中に酸性色素染色剤を溶解させたことを特徴とする。ここで酸性色素染色剤とは、酸性下において主に生体内球状タンパク質NH3基と反応し、着色する染色剤を規定する。
本発明にかかる膠原線維染色法は、ピクリン酸水溶液中に酸性色素染色剤を溶解させた染色剤を用いる染色工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、媒染剤を使用せず、染色時間が短期であり、しかも染色結果の良好な膠原線維染色が可能となる。
即ち、本発明によれば、重クロム酸を含む媒染剤が不必要となり、更にはアニリンアルコールによる脱色、分別も不必要となるため、ケミカルハザードレベルが大幅に減少する。
また、従来の染色法ではアゾカルミンGによる細胞の染色に約6時間程度要する場合があり、リンタングステン酸による媒染についても一晩要する場合があったが、本発明によれば細胞の染色に約30分、リンタングステン酸による分別を約10分で行うことができ、染色時間を約1時間程度に短縮することができる。
本発明によれば、臓器、組織の種類や固定条件等の検体の差異に関わらず、上皮細胞、筋細胞、弾性線維及び変性赤血球を赤色、赤血球を黄色からオレンジ、膠原線維を青色に、安定的に美しく染めだすことが可能となる。
本発明によれば、様々な症例での膠原線維染色を安定的に行うことが可能であり、血管壁においても、膠原線維、弾性線維、筋上皮、内皮細胞等の組織構成が明瞭に染色され、各々の関係性が明瞭となる。
本発明では従来の膠原線維染色色素を変更なく使用しているので、染色部位や染色態度には変化を生じない。これにより、従来の染色性を完全に再現しつつコントラストよくより観察しやすい標本を作製できる。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
アザン染色はアゾカルミンG、アニリン青及びオレンジGからなる3種類の色素を用いて染色を行うところ、これらは酸性色素であるため化学的挙動は同じであるが、分子サイズが異なるため組織透過性に違いが生じると考えられていた。即ち、組織構築の密な赤血球には小分子のオレンジG、組織構築の中間な細胞質には中分子のアゾカルミンG、組織構築の疎な膠原線維には大分子のアニリン青が入り込む。そして、アニリン青の媒染剤として用いられるリンタングステン酸は大分子としての性質を持ち、膠原線維等の疎な構築組織に入り込んだオレンジGやアゾカルミンGを追い出し、その後リンタングステン酸はアニリン青に置き換えられる、と考えられていた。
しかし、実際にはこの原理通りの染め分けが十分になされていない場合があり、アニリン青は細胞質にも染まり、アゾカルミンGと共染しやすい傾向にある。従って従来から述べられている分子サイズによる組織の染め分けには矛盾が残る。また分子量で比較してみると、オレンジG452.4、アゾカルミンG580、アニリン青800、リンタングステン酸2880.2というようにオレンジGとアゾカルミンGはあまり分子量が変わらず、圧倒的に大きなリンタングステン酸がアニリン青にとって替わられるか疑問を有する。
そこで、本発明者は、アザン染色の染め分けには染色の原理は組織透過性といった物理的な機序ではなく、結合といった化学的な機序に基づいているのではないかと考え、数種の染色を試みたところ、組織の疎水性・親水性の割合及び色素の疎水性・親水性の割合が染色の染め分けに関与していると考えた。即ち、組織では、膠原線維・細網線維は圧倒的に疎水性が強く、弾性線維は疎水性領域と親水性領域を持つ。筋線維では、アクチンは球状タンパク質からなるため親水性が強く、ミオシンは親水性領域と疎水性領域を持ち、筋細胞内には球状タンパク質のミオグロビンを持つ。細胞質では球状タンパク質と線維状タンパク質を含むがその割合的に疎水性よりも親水性が強い。また、染色結果的に色素では、ピクリン酸は親水性>疎水性、アゾカルミンGは親水性>疎水性、リンタングステン酸は親水性>疎水性、アニリン青は親水性=疎水性となる。さらに親水性の強さはリンタングステン酸>ピクリン酸>アゾカルミンG>アニリン青、疎水性の強さはアニリン青>ピクリン酸>アゾカルミンG>>リンタングステン酸となる。従って染色順により、色素の結合の強さが影響すると考えられる。
これらのことから、まずピクリン酸が優位に細胞質の親水基及び疎水基に結合する。次にアゾカルミンGがピクリン酸とππ結合をするとともに、線維系に疎水性結合する。その後、リンタングステン酸がアゾカルミンGと親水性結合をするが、その時、膠原線維・細網線維との結合力が弱いアゾカルミンGはリンタングステン酸に吸着され、脱離する。そして、アニリン青が膠原線維・細網線維と疎水性結合すると考えられる。
この時に、疎水性結合を行う線維状タンパク質であるが、細胞質内、弾性線維、筋線維、及び膠原線維・細網線維の立体構造上の違いにより、親水性がある程度強い色素との疎水性結合の起こりやすさに違いが生じると考えられる。
また、オレンジGはヘム構造と高い親和性があり、水との親和性も高く、加熱することで水分子の活動が活発になるとともにオレンジGの分子運動も活発になる。このため、オレンジGは他の酸性色素とはまた異なった機序も関与しつつ赤血球に結合するものと考えられる。
本発明者は上述の考察に基づき本発明を完成させた。即ち、本発明にかかる膠原線維染色法の染色剤は、ピクリン酸水溶液中に酸性色素染色剤を溶解させたことを特徴とする。
ピクリン酸水溶液は飽和ピクリン酸水溶液であることが好ましい。飽和ピクリン酸水溶液は、例えば、褐色瓶に充分量のピクリン酸を入れた上に蒸留水を加えて攪拌、放置、沈殿させ、上澄み液を使用することが好ましい。
ピクリン酸水溶液は再結晶ピクリン酸の飽和水溶液であることが好ましい。ピクリン酸の再結晶の溶媒は特に限定されるものではないが、例えばエタノール、ベンゼン等である。
本発明の膠原線維染色法は、好ましくはアザン染色法に適用され、かかる場合、本発明における染色剤は、ピクリン酸水溶液中にアゾカルミン及びオレンジGを溶解させたことを特徴とする。特に限定されるものではないが、ピクリン酸水溶液1L中に、アゾカルミン0.1〜10g及びオレンジG0.8〜80gを溶解させることが可能である。
アゾカルミンは、好ましくは下記化学式に示されるアゾカルミンGである。
なお、アゾカルミンは下記化学式に示されるアゾカルミンBとすることも可能である。
オレンジGは下記化学式で示される。
ピクリン酸は下記化学式で示される。ピクリン酸はピクラートを形成するが、まずピクリン酸のヒドロキシル基がイオン性の水素結合をし、その後の吸着保持にはベンゼン核のππ相互作用によるものが大きく、ピクリン酸との結合ではこのππ相互作用の安定性が影響してくると考えられる。
そしてこのππ相互作用は、ベンゼン環の縮合数が増えるほど安定性があることから、アゾカルミンの4つのベンゼン環が縮合した構造が最も親和性が高く、オレンジGやポンソーキシリジン、アゾフロキシンがもつナフタレン構造もそれほど親和性が高くないが親和性をもつ。なお、アニリン青や酸フクシン、ライトグリーンといったベンゼン核構造はピクリン酸との親和性は低いと考えられる。
アザン染色法に適用される本発明の膠原線維染色法の染色工程を下記に示す。
まず、通常の自動包埋装置によりパラフィンブロックを作成し、薄切切片を作成してスライドガラスに貼付し、脱パラ水洗後、ピクリン酸水溶液中にアゾカルミン及びオレンジGを溶解させた染色剤にて20分〜30分染色を行う。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、10%リンタングステン酸液にて5〜10分作用させる。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、アニリン青にて10分〜20分染色を行う。
最後に、アルコールにて分別・脱水を行い、透徹・封入する。
次に、本発明の膠原線維染色法は、マッソン・トリクローム染色法に適用されることも可能で有り、かかる場合、本発明における染色剤は、ピクリン酸水溶液中にポンソーキシリジンを溶解させたことを特徴とする。ポンソーキシリジンは分子式C18H14N2Na2O7S2で示される。特に限定されるものではないが、ピクリン酸水溶液1L中にポンソーキシリジン0.1〜10gを溶解させることが可能である。
マッソン・トリクローム染色法に適用される本発明の膠原線維染色法の染色工程を下記に示す。
まず、通常の自動包埋装置によりパラフィンブロックを作成し、薄切切片を作成してスライドガラスに貼付し、脱パラ水洗後、ピクリン酸水溶液中にポンソーキシリジンを溶解させた染色剤にて3分〜10分染色を行う。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、ワイゲルトの鉄ヘマトキシリン液を5分作用させる。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、1%塩酸70%アルコールで分別して色出しを行う。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、酸フクシン溶液で2分〜5分染色する。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、リンタングステン酸液及びリンモリブデン酸混合溶液にて20分〜60分染色を行う。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、アニリン青にて3分〜5分染色を行う。
最後に、水洗した後、1%酢酸水溶液を作用させ、アルコールにて分別・脱水を行い、透徹・封入する。
次に、本発明の膠原線維染色法は、エラスチカ・マッソン染色法に適用されることも可能で有り、かかる場合、本発明における染色剤は、ピクリン酸水溶液中にレゾルシン・フクシン液を溶解させたことを特徴とする。特に限定されるものではないが、ピクリン酸水溶液1L中にレゾルシン・フクシン液0.1〜10gを溶解させることが可能である。
エラスチカ・マッソン染色法に適用される本発明の膠原線維染色法の染色工程を下記に示す。
まず、通常の自動包埋装置によりパラフィンブロックを作成し、薄切切片を作成してスライドガラスに貼付し、脱パラ水洗後、ピクリン酸水溶液中にレゾルシン・フクシン液を溶解させた染色剤にて10分〜20分染色を行い、1%アルコールで分別する。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、ワイゲルトの鉄ヘマトキシリン液を5分作用させる。
次に、流水及び蒸留水で水洗した後、スカーレット・フクシン液で10分〜15分染色をする。
1%酢酸水溶液を作用させ、リンタングステン酸液及びリンモリブデン酸混合溶液にて1分〜2分染色を行う。
1%酢酸水溶液を作用させ、ライトグリーン液で3分染色する。
1%酢酸水溶液を作用させ、アルコールにて分別・脱水を行い、透徹・封入する
診療現場において、手術材料として肝臓組織標本が採取された。また解剖により肝臓標本及び心臓標本が採取された。診断後3ヶ月以上経過した手術標本(肝臓:4症例)及び10%中性ホルマリン固定を施した剖検標本(肝臓:4症例、心臓:4症例;肝臓及び心臓のセット症例)の合計8症例12標本を用いた。採取された組織は、厚さ20mm程度にスライスされホルマリン固定された。使用したホルマリンは10%緩衝中性ホルマリンであった。固定された組織は、10mm×5mm×5mmに切り出され、ブロックが作成された。ブロックを作製するために、組織はアルコールによる脱水、中間剤による処理の後約60℃の温度下でパラフィン浸透を行った。本行程は18時間かけて行った。
作製されたブロックを用い、ミクロトームを用いて薄切を行った。使用した材料は、同一ブロックで作製を行うことで、一枚の標本上で8症例12標本の観察が可能となるよう作製を行った。薄切厚はアザン染色を行う場合通常2μmの薄さで切片を採取した。採取した切片は水に浮かべたのち、スライドガラスに採取を行い、その後45℃前後に温め、切片の進展及び標本の乾燥を行うことで標本が作製された。
[使用試薬]
アザン染色に使用した試薬は下記であった。
アゾカルミンG (CHROMA社製)
ピクリン酸 (ナカライテスク社)
酢酸(特級; ナカライテスク社)
オレンジG (MERCK社製)
アニリン青 (MERCK社製)
12タングスト(VI)リン酸水和物 (リンタングステン酸; ナカライテスク社)
ニクロム酸カリウム (特級; ナカライテスク社)
トリクロロ酢酸 (特級; ナカライテスク社)
アニリン(ナカライテスク社)
[試薬調製方法]
既存法の試薬調製方法は下記であった。
1)渡辺媒染剤
10%重クロム酸カリウム 1容
10%トリクロール酢酸 1容
(等量混合液)
2)アゾカルミンG液
アゾカルミンG 0.1g
酢酸 1ml
蒸留水 100ml
3)アニリンアルコール
アニリン 0.1ml
95%エタノール 100ml
4)酢酸アルコール
酢酸 0.1ml
95%エタノール 100ml
5)5%リンタングステン酸
リンタングステン酸 5g
蒸留水 100ml
6)アニリン青・オレンジG液
アニリン青 0.5g
オレンジG 2.0g
酢酸 8ml
蒸留水 100ml
本発明の試薬調製方法は下記であった。
1)新規染色剤
アゾカルミンG 0.1g
オレンジG 0.8g
飽和ピクリン酸 100ml
即ち、本発明にかかる新規染色剤は、飽和ピクリン酸100mlにアゾカルミンG0.1g及びオレンジG0.8gを溶解させて作製した。飽和ピクリン酸は下記のように作製した。800mlの蒸留水にピクリン酸30gを加え、撹拌後60℃恒温槽にて1時間加温した。一時間後に再度撹拌し室温にて一晩放置した後、針状結晶の析出を確認し、上清液をろ紙にて全量濾過法により採取し、これを飽和ピクリン酸とした。
2)10%リンタングステン酸
リンタングステン酸 10g
蒸留水 100ml
3)アニリン青液
アニリン青 0.5g
蒸留水 100ml
[染色手技]
既存法の染色手技は下記であった。
アザン染色に使用した試薬は下記であった。
アゾカルミンG (CHROMA社製)
ピクリン酸 (ナカライテスク社)
酢酸(特級; ナカライテスク社)
オレンジG (MERCK社製)
アニリン青 (MERCK社製)
12タングスト(VI)リン酸水和物 (リンタングステン酸; ナカライテスク社)
ニクロム酸カリウム (特級; ナカライテスク社)
トリクロロ酢酸 (特級; ナカライテスク社)
アニリン(ナカライテスク社)
[試薬調製方法]
既存法の試薬調製方法は下記であった。
1)渡辺媒染剤
10%重クロム酸カリウム 1容
10%トリクロール酢酸 1容
(等量混合液)
2)アゾカルミンG液
アゾカルミンG 0.1g
酢酸 1ml
蒸留水 100ml
3)アニリンアルコール
アニリン 0.1ml
95%エタノール 100ml
4)酢酸アルコール
酢酸 0.1ml
95%エタノール 100ml
5)5%リンタングステン酸
リンタングステン酸 5g
蒸留水 100ml
6)アニリン青・オレンジG液
アニリン青 0.5g
オレンジG 2.0g
酢酸 8ml
蒸留水 100ml
本発明の試薬調製方法は下記であった。
1)新規染色剤
アゾカルミンG 0.1g
オレンジG 0.8g
飽和ピクリン酸 100ml
即ち、本発明にかかる新規染色剤は、飽和ピクリン酸100mlにアゾカルミンG0.1g及びオレンジG0.8gを溶解させて作製した。飽和ピクリン酸は下記のように作製した。800mlの蒸留水にピクリン酸30gを加え、撹拌後60℃恒温槽にて1時間加温した。一時間後に再度撹拌し室温にて一晩放置した後、針状結晶の析出を確認し、上清液をろ紙にて全量濾過法により採取し、これを飽和ピクリン酸とした。
2)10%リンタングステン酸
リンタングステン酸 10g
蒸留水 100ml
3)アニリン青液
アニリン青 0.5g
蒸留水 100ml
[染色手技]
既存法の染色手技は下記であった。
作製された標本に対し、極性のない若しくは低い有機溶剤を使用し、標本よりパラフィンを取り除いた。有機溶剤はキシレンを使用した。パラフィンを取り除いたのち、標本を浸水させる為、極性が中位な有機溶剤を使用しキシレンを取り除いた。有機溶剤はエタノールを使用した。標本よりキシレンを取り除いたのち標本を浸水させた。この過程を脱パラフィン、浸水操作と呼ぶ。標本を十分に浸水させた後、渡辺媒染剤を用い、媒染処理を30分行った。流水水洗を5分行いアゾカルミンG液で60分染色を行った。流水水洗を5分後、アニリンアルコールで分別、酢酸アルコールで分別停止操作を行い、流水水洗の後、5%リンタングステン酸液に1時間浸漬し、流水水洗を5分後、アニリン青・オレンジG液で30分染色を行った後、エタノールを用い分別を行った。合計約3時間の染色操作を行った。次に極性が中位な有機溶剤を使用し標本の脱水を行った。有機溶剤はエタノールを用いた。脱水を行った後、標本を封入するためにエタノールを取り除いた。機溶剤はキシレンを使用した。標本を十分にキシレンに浸漬させた後、非水溶性封入剤を用い、さらにカバーガラスをかぶせ、封入を行った。この過程を封入操作と呼ぶ。これら一連の操作により、染色が終了した。
本発明の染色手技は下記であった。
上記脱パラフィン、浸水操作の後、新規染色剤で60℃30分間染色を行った。軽い流水後、10%リンタングステン酸液に10分浸漬させ軽く流水を行った。次にアニリン青液で20分染色を行った後、エタノールを用い分別を行った。合計1時間程度の染色操作を行った。その後、封入操作を行い染色終了した。
図1は、既存法及び本発明にかかる新規法において、手術標本(肝臓)及び解剖標本(肝臓、心臓)の肉眼的観察像を示す図である。標本は、上段が心臓解剖標本、中段が肝臓解剖標本、下段が肝臓手術標本である。図1に示されるように、本発明にかかる新規法による染色は既存法と比較して、コントラストよく安定的に美しく染め出している。例えば、既存法による肉眼所見では、上段左より2症例目の標本がより青みが強く、下段左より4番目の標本がより赤みの強いように、標本別に肉眼的に検体別の色調に差異のある染色結果である。新規法では、既存法に比して、肉眼的に検体別の色調に差異のない染色結果である。
図2は、解剖標本(心臓)の顕微鏡観察像を示す図であり、そのうち(a)は既存法の顕微鏡観察像であり、(b)は本発明にかかる新規法の顕微鏡観察像である。対象とした標本は、図1において左から2番目の心臓解剖標本であった。顕微鏡ステージに、染色された標本を顕微鏡ステージにセットし、顕微鏡電源を入れ、光源の照射を行い、光源光が標本を透過した実態を観察した。標本の観察は2倍から100倍の対物レンズ及び接眼レンズを用いた。顕微鏡はOLYMPUS BX-53を用いた。
図2(a)に示されるように、既存法による染色では、筋細胞にアニリン青が共染しておりコントラストが悪く、膠原線維の走行が不明瞭であった。しかし図2(b)に示されるように、新規法による染色では、筋細胞にアニリン青の共染が抑制されておりコントラストが良く、心筋細胞間の膠原線維が明瞭に染色されていた。
図3は、手術標本(肝臓)の顕微鏡観察像を示す図であり、そのうち(a)は既存法の顕微鏡観察像であり、(b)は本発明にかかる新規法の顕微鏡観察像である。対象とした標本は、図1において左から1番目の肝臓手術標本であった。顕微鏡での観察手法は前述と同じであった。
図3(a)に示されるように、肝臓グリソン鞘内に存在する肝動脈が観察されるが、既存法による染色では、動脈の構成成分である平滑筋細胞、弾性線維及び膠原線維の組織学的構築を観察するに当たり、筋細胞及び弾性線維にアニリン青が共染しておりコントラストが悪く、膠原線維の走行が不明瞭であった。しかし図3(b)に示されるように、新規法による染色では、筋細胞及び弾性線維にアニリン青の共染が抑制されておコントラスト良く、膠原線維の走行が明瞭に染色されていた。
病理染色に利用できる。
Claims (20)
- ピクリン酸水溶液中に酸性色素染色剤を溶解させたことを特徴とする、膠原線維染色法の染色剤。
- 前記ピクリン酸水溶液は飽和ピクリン酸水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記ピクリン酸水溶液は再結晶ピクリン酸の飽和水溶液であることを特徴とする請求項2に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記膠原線維染色法は、アザン染色法であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記酸性色素染色剤は、アゾカルミン及びオレンジGを含むことを特徴とする請求項4に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記アゾカルミンはアゾカルミンGであることを特徴とする請求項5に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- ピクリン酸水溶液1L中に、アゾカルミンG0.1〜10g及びオレンジG0.8〜80gを含むことを特徴とする請求項6に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記膠原線維染色法は、マッソン・トリクローム染色法であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記酸性色素染色剤は、ポンソーキシリジンであることを特徴とする請求項8に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- ピクリン酸水溶液1L中に、ポンソーキシリジン0.1〜10gを含むことを特徴とする請求項9に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記膠原線維染色法は、エラスチカ・マッソン染色法であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- 前記酸性色素染色剤は、レゾルシン・フクシン液であることを特徴とする請求項11に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- ピクリン酸水溶液1L中に、レゾルシン・フクシン液0.1〜10gを含むことを特徴とする請求項12に記載の膠原線維染色法の染色剤。
- ピクリン酸水溶液中に酸性色素染色剤を溶解させた染色剤を用いる染色工程を有することを特徴とする、膠原線維染色法。
- 前記ピクリン酸水溶液は飽和ピクリン酸水溶液であることを特徴とする請求項14に記載の膠原線維染色法。
- 前記ピクリン酸水溶液は再結晶ピクリン酸の飽和水溶液であることを特徴とする請求項15に記載の膠原線維染色法。
- 前記酸性色素染色剤は、アゾカルミン及びオレンジGを含むことを特徴とする請求項14乃至16の何れか1項に記載の膠原線維染色法。
- 前記アゾカルミンはアゾカルミンGであることを特徴とする請求項17に記載の膠原線維染色法。
- 前記酸性色素染色剤は、ポンソーキシリジンであることを特徴とする請求項14乃至16の何れか1項に記載の膠原線維染色法。
- 前記酸性色素染色剤は、レゾルシン・フクシン液であることを特徴とする請求項14乃至16の何れか1項に記載の膠原線維染色法。
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JP2015094782A JP2016211929A (ja) | 2015-05-07 | 2015-05-07 | 膠原線維染色法の染色剤及び膠原線維染色法 |
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