JP2016210713A - タンパク質経皮投与剤、抗体産生剤及びそれらの使用方法 - Google Patents

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琢郎 新留
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Abstract

【解決課題】角質層を透過しにくく従来の経皮デリバリー技術を適用できなかった親水性のタンパク質等の高分子薬物を簡便で安全に経皮投与する技術を提供する。【解決手段】タンパク質を含むアニオン性又はカチオン性のゲルと、当該ゲルの極性とは反対の極性を有するポリマーで表面が被覆され、当該ゲル表面に結合している金ナノロッドと、を含むゲルパッチであるタンパク質経皮投与剤。【選択図】なし

Description

本発明は、金ナノロッドを含むゲルパッチであるタンパク質経皮投与剤及び抗体産生剤、並びに当該タンパク質経皮投与剤の使用方法に関する。
タンパク質の経皮デリバリーは、これまで電気泳動的に皮内へ移行させるイオントフォレシスや、電気パルスあるいは超音波で角質層に一時的に孔を開けるエレクトロポレーションあるいはソノポレーション、また、角質層の疎水性バリアを開く油と界面活性剤から構成されるエマルション製剤の利用が研究されてきた。しかし、それぞれ固有のデメリットがあり実用化されたものはない。
本発明者らは、金ナノロッド(棒状の金ナノ粒子:図1)が近赤外光(800〜1000nm)を吸収して発熱する特性を利用して、金ナノロッドの発熱により皮膚角質層の物質透過性を一時的に亢進させる手法について研究してきた。アルコールに分散させたシリカコートした金ナノロッドを皮膚に塗り、乾燥させ、そこにモデル抗原タンパク質として蛍光ラベルしたオボアルブミンを添加し、近赤外光(連続光レーザー)を照射すると、皮膚の温度が上昇し、皮内に移行したオボアルブミンが蛍光顕微鏡下で観察され、コントロール実験との対比により金ナノロッドのフォトサーマル効果が角質層の透過性を亢進していることを確認したことを報告した(非特許文献1、図2)。また、シリカコートした金ナノロッドを皮膚の表面に塗布し、その上に円筒カップを用いて、モデルタンパク質としてオボアルブミン水溶液を皮膚の上に乗せ、これに近赤外光レーザーを照射したところ、皮膚が加熱され、オボアルブミンを効率よく皮内へ移行させることに成功したことも報告した(非特許文献2:H. Tang et al., J. Controlled Release, 171, 178-183, 2013)。このとき皮膚組織内に、熱ショックタンパク質の誘導や好中球の浸潤が観察された。これは炎症であるが、この度合いを上手くコントロールすれば、免疫応答を促進することも可能になるので、本系は経皮ワクチンの手段として高い可能性をもつと期待される。しかし、円筒カップを利用するこの方法は煩雑で、近赤外光照射する際も液面や円筒カップ内での光の反射が生じるなど、再現性よくかつ正確に照射することが難しかった。
また、オボアルブミンを内包させた金ナノロッドS/O製剤(油性物質を基剤とする油相(連続相)中に固体(分散相)を分散させた製剤)をポリスチレン製円筒カップに入れて、その上部からキセノンランプを光源とする近赤外光を照射した後、カップを取り除き、ティッシュペーパーを重ねてオボアルブミン及び金ナノロッドを染みこませたパッチをフィルムで貼り付け放置し(初回免疫)、再度円筒カップを接着させ、同様に近赤外光照射とパッチのフィルムによる貼り付け放置(2回目免疫)を行ったところ、2回目免疫後に抗体産生が認められたことを報告した(特許文献1)。
さらに、光を熱に変換するナノ粒子を含む生物分解性ポリマーから作られたキャリア内に薬剤を含むドラッグデリバリパッチが提案されている(特許文献2)。このドラッグデリバリパッチは、キャリアが皮膚に孔を開けるマイクロニードルを含み、マイクロニードルで皮膚に孔を開けた後に、近赤外線を照射してキャリアを溶融させて薬剤を放出させる。
硫化銅ナノ粒子のフォトサーマル効果により角質層の透過性を上げた論文が出されている(非特許文献3:S. Ramadan et al., Hollow Copper Sulfide Nanoparticle-Mediated Transdermal Drug Delivery, Small, 8, 3143-3150, 2012)。非特許文献3では、硫化銅ナノ粒子を分散させた流動性ゲルを皮膚に塗り、ランプ光を照射することで、ゲル内の水分を蒸発させて乾燥させ、皮膚表面にナノ粒子を十分に堆積させた。その後、連続光あるいはパルス光レーザーを照射し、硫化銅ナノ粒子を発熱させ、角質層の透過性を向上させた後、FITCデキストランあるいはヒト成長ホルモンを含むゲルパッチを皮膚にのせ、その皮内への移行を調べている。しかし、金ナノ粒子と抗原をもつパッチ製剤は提案されていない。
特開2012-001461号公報 US2012/0283695A1公報
新留琢郎、金ナノロッドのフォトサーマル効果を利用したドラッグデリバリーシステム、オレオサイエンス、第14巻第1号(2014) H. Tang et al., CW/pulsed NIR irradiation of gold nanorods: effect on transdermal protein delivery mediated by photothermal ablation, J. Controlled Release, 171, 178-183 (2013) S. Ramadan et al., Hollow Copper Sulfide Nanoparticle-Mediated Transdermal Drug Delivery, Small, 8, 3143-3150, 2012
薬物の経皮的投与は他の注射投与等と比べ利点が多い。しかし、親水性のタンパク質等の高分子薬物は角質層を透過しにくく、従来の経皮デリバリー技術を適用できなかった。本発明は、簡便で安全なタンパク質の経皮デリバリー技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、金ナノロッドを表面にコートした透明ゲルパッチ製剤を皮膚に貼付し、この上から近赤外光を照射すると、金ナノロッドのフォトサーマル効果により角質層が加熱され、物質透過性が亢進し、ゲル内のタンパク質を皮内に移行させることに成功した。
本発明の態様は以下のとおりである。
[1] タンパク質を含むアニオン性又はカチオン性のゲルと、
当該ゲルの極性とは反対の極性を有するポリマーで表面が被覆され、当該ゲル表面に結合している金ナノロッドと、
を含むゲルパッチであるタンパク質経皮投与剤。
[2] 前記ゲルは、ゲランガム、アガロース、ポリアクリルアミドから選択される成分を含む、[1]に記載のタンパク質経皮投与剤、
[3] 前記ゲルは、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリメタクリル酸から選択される酸性ポリマー成分をさらに含むアニオン性ゲルである、[1]又は[2]に記載のタンパク質経皮投与剤。
[4] 前記タンパク質は、前記金ナノロッドが結合している表面側に多く存在し、反対側に至るほど存在量が少なくなるように存在濃度が傾斜している、[1]〜[3]のいずれかに記載のタンパク質経皮投与剤。
[5] [1]〜[5]のいずれか1に記載のタンパク質経皮投与剤の金ナノロッドが存在する表面側とは反対側の表面上に近赤外線を照射し、前記ゲルを膨潤させて、タンパク質を移動させる、タンパク質経皮投与剤の使用方法。
[6] 前記近赤外線は、パルスレーザー、連続光レーザーあるいはキセノン光源で照射する、[5]に記載の使用方法。
[7] タンパク質を含むアニオン性又はカチオン性のゲルと、
当該ゲルの極性とは反対の極性を有するポリマーで表面が被覆され、当該ゲル表面に結合している金ナノロッドと、
を含むゲルパッチである抗体産生剤。
本発明によれば、近赤外光線照射による金ナノロッドの発熱を利用した患者への負担が少ないタンパク質経皮投与剤が提供される。本発明のタンパク質経皮投与剤の金ナノロッドが存在する表面側とは反対側の表面上に近赤外線を照射することで、皮膚の角質層に接している金ナノロッドを加熱し、角質層の物質透過性を高め、タンパク質をゲルパッチから皮膚内に移動させることができる。
本発明による手法は、近赤外光源は必要になるが、簡便で安全なタンパク質の経皮デリバリー技術の基礎となるものである。タンパク質を皮内に移行させる際、パルス光レーザーを利用すれば、皮膚全体を加熱することなしに達成できる。一方、キセノンランプ光源あるいは連続光レーザーを利用すれば、広範囲で加熱できるため、免疫応答を促進し、ワクチン投与への適用が可能である。
金ナノロッドの電子顕微鏡写真である。 金ナノロッドの発熱による皮膚角質層の物質透過性亢進の説明図である。 FITC-OVAが片側に局在するゲルの蛍光顕微鏡写真である。 実施例におけるGG/CSゲルのFITC-OVA放出率を示すグラフである。 実施例におけるGG/CSゲルのFITC-OVA放出率を示すグラフである。 実施例におけるGG/HAゲルのFITC-OVA放出率を示すグラフである。 実施例におけるGG/ HAゲルのFITC-OVA放出率を示すグラフである。 フランツ拡散セルを用いたタンパク質の皮内移行試験の説明図である。 皮内移行試験のゲルパッチ表面の温度推移を示すグラフである。 (a)金ナノロッド粒子含有、(b)金ナノロッド粒子なしの各場合における皮膚切片の蛍光顕微鏡画像(矢印は角質層)である。 In vivoでのFITC-OVAの皮内移行を確認する際の照射概略図である。 In vivoでのFITC-OVAの皮内移行試験におけるゲルパッチ表面の温度推移を示すグラフである。 In vivoでのFITC-OVAの皮内移行試験における(a)金ナノロッド粒子含有及び(b)金ナノロッド粒子なしの場合における皮膚切片の蛍光顕微鏡画像(矢印は角質層側)である。 本発明のゲルパッチによるIgG1抗体産生価を示すグラフである。
好ましい実施形態
本発明は、タンパク質を含むアニオン性又はカチオン性のゲルと、当該ゲルの極性とは反対の極性を有するポリマーで表面が被覆され、当該ゲル表面に結合している金ナノロッドと、を含むゲルパッチであるタンパク質経皮投与剤を提供する。
本願明細書及び特許請求の範囲において「金ナノロッド」とは、金のナノサイズの粒子であって、そのアスペクト比(短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比)が1よりも大きい棒状の粒子をいう。本発明において使用される金ナノロッドは、長軸方向の長さが、20nm〜300nmであり、分散安定性や形状均一性の観点から、好ましくは20nm〜190nm、より好ましくは20nm〜80nmであり、短軸方向の長さが、3nm〜20nmであり、分散安定性や形状均一性の観点から、好ましくは4nm〜200nm、より好ましくは5nm〜20nmである。典型的な例は、長軸方向の長さが50nmであり、短軸方向の長さが10nmのものである。金ナノロッドは一般に、アスペクト比が大きくなればなるほど、長波長側に吸収領域はシフトするので、好ましい吸収スペクトルを有する金ナノロッドの設計に際しては、アスペクト比を約4〜約7とすることができる。
金ナノロッドは、市販品でも、公知の方法に従って合成したものでもよいが、生体適合化されたものであることが好ましい。通用、金ナノロッドは、カチオン性界面活性剤である4級アンモニウム塩のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(以下「CTAB」ともいう。)に溶解した水中で合成され、表面にCTABの二分子膜を有する(特開2004-292627号公報、特開2005-97718号公報、特開2006-169544号公報、特開2006-118036号公報)。CTABの保護作用により水中で安定に分散させることができるが、生体適合性を考慮して、適切な方法で表面のCATBを除き、生体適合性のある物質、たとえばシリカで金ナノロッド表面を修飾してもよい。
金ナノロッドは、680〜1200nmに吸収帯を有することが好ましい。700〜950nmの近赤外光は、皮膚を含む生体組織を透過しやすいという性質を有するため、このような近赤外光の照射が有効であり、金ナノロッドも同範囲の近赤外光を吸収することが好ましい。
本発明のゲルパッチタンパク質経皮投与剤は、アニオン性又はカチオン性のゲル内に、経皮投与対象であるタンパク質を含む。当該ゲル表面には、金ナノロッドが結合している。金ナノロッドの表面はポリマーで被覆されている。金ナノロッドの表面を被覆するポリマーは、ゲルの極性とは反対の極性を有する。たとえば、アニオン性ゲルを用いる場合には、金ナノロッドの表面を被覆するポリマーはカチオン性である。ゲルと反対の極性を有するポリマーで被覆されている金ナノロッドをゲルに結合させることによって生じる静電的作用により、ゲルパッチ表面に金ナノロッドを分散させ、ゲルパッチ内部に含有されている経皮投与対象であるタンパク質をゲルパッチ表面側に偏在するように分散させることができる。経皮投与時には、金ナノロッド及びタンパク質が偏在している側を投与目的部位に貼付して、反対側から近赤外光線を照射する。このため、タンパク質を内包し、金ナノロッドが結合しているゲルは、金ナノロッドが結合していない表面側から照射した近赤外光線がゲル内部を透過して、ゲル中皮膚側に偏在する金ナノロッドに到達させるものであることが好ましい。
アニオン性ゲルとしては、微生物由来又は植物由来の多糖類を主成分とするゲルを挙げることができ、ゲランガム、アガロース、ポリアクリルアミドなどを好適に用いることができる。また、多糖類単独ではなく、カチオン性ポリマーで修飾した金ナノロッドを吸着させるためにアニオン性ポリマーを添加したゲルが好ましい。たとえばゲランガム又はアガロースを主成分としてコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリメタクリル酸などを混合したものなどを好適に挙げることができる。中でも、ゲランガムとコンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸との組み合わせが特に好ましい。
多糖類のゲル中含有量は、例えばゲランガムの場合には1.5〜3wt%が好ましい。ゲランガムとコンドロイチン硫酸との配合比(質量比)は、ゲランガムのゲル中含有量により異なるが、ゲランガムがゲル中1.5〜3.0wt%の場合にはゲランガム:コンドロイチン硫酸=10:1〜10:3が好ましく、10:1がより好ましい。ゲランガムとヒアルロン酸との配合比は、ゲランガムのゲル中含有量により異なるが、ゲランガムがゲル中1.0〜3.0wt%の場合にはゲランガム:ヒアルロン酸=10:1〜10:2が好ましく、10:1がより好ましい。ゲル中ゲランガムの含有量が増加するほど、コンドロイチン硫酸の配合量は多い方が好ましく、ヒアルロン酸の配合量は少ない方が好ましい。
カチオン性ゲルとしては、キトサンやポリアリルアミン、ポリリジン、ポリエチレンイミン、あるいは、ポリアミドアミンを添加したゲランガムが挙げられる。キトサンやポリアリルアミン、ポリリジン、ポリエチレンイミン、あるいは、ポリアミドアミンを添加したアガロースでもよい。
アニオン性ゲルを用いる場合に反対の極性を有するカチオン性ポリマーを用いる。カチオン性ポリマーとしては、キトサンやポリアリルアミン、ポリリジン、ポリエチレンイミン、あるいは、ポリアミドアミンが利用できる。
カチオン性ゲルを用いる場合に反対の極性を有するアニオン性ポリマーを用いる。アニオン性ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸や、ポリビニルスルホン酸、ポリメタクリル酸が利用できる。
ポリマーでコートされた金ナノロッドは、CTAB中で調製された金ナノロッド溶液の過剰なCTABを遠心操作で除去し、それにアニオン性ポリマーを添加する。過剰のアニオン性ポリマーを遠心操作で除去することで、アニオン性ポリマーでコートされた金ナノロッドが得られる。これに、カチオン性ポリマーを添加し、過剰のカチオン性ポリマーを遠心操作で除去することで、カチオン性ポリマーでコートされた金ナノロッドが得られる。
アニオン性又はカチオン性のゲルを乾燥させて、ポリマーコートされた金ナノロッドを含む水溶液を滴下し、ゲルを湿潤させ、ポリマーコートされた金ナノロッドをゲルの片面側に偏在させて、本発明のゲルパッチを調製する。具体的には、たとえばゲランガムを主成分とし、アニオン性又はカチオン性ポリマーを添加し、水に完全に溶解させた水溶液を80℃以上98℃以下、好ましくは90℃以上95℃以下で、3分以上20分未満、好ましくは5分以上10分未満にわたり加熱した後、厚さ1mmのガラス製の型に流し込み、室温まで放冷してゲル化させる。このゲルを約1日風乾させて完全に乾燥させた後、縦横各10mmの正方形(100mm2)に切り分け、フルオレセインイソチアシアネート(以下「FITC」ともいう。)でラベルしたオボアルブミン(FITC-OVA)2mgとカチオン性又はアニオン性のポリマーでコートした金ナノロッドを含む水溶液をマイクロピペットで塗布し、ゲルを膨潤させる。膨潤したゲルを再び風乾させ、皮膚へ貼付する直前にこの乾燥ゲルを水に浸し、再び膨潤させる。
ゲルパッチ内における金ナノロッドの含有量は、1平方センチあたり1μg以上であることが好ましく、3〜20μgであることがより好ましい。ゲルパッチ内における金ナノロッドは、ゲルパッチ調製時に金ナノロッドを含む水溶液を滴下した表面側に多く偏在し、反対側の表面側に近づくにつれて金ナノロッドの存在量は減少する。
本発明のタンパク質経皮投与剤により経皮投与できるタンパク質は特に限定されるものではなく、投与目的に応じて種々のタンパク質に適用可能である。
本発明のタンパク質経皮投与剤に照射して金ナノロッドを発熱させる近赤外線光照射は、パルス光レーザー又は連続光レーザー、キセノンランプ、LEDなどを用いることができる。パルス光レーザーは、皮膚全体を加熱することなく、選択した箇所のみを部分的に加熱することができるため、過度な炎症を抑制したい場合に適する。連続光レーザーは、皮膚組織全体を加熱することができ、適度な炎症を誘導することが可能で、免疫作用を意図するワクチン投与に適する。キセノンランプは安価であるため、簡易なタンパク質投与に適する。
近赤外線光照射強度及び照射時間を変えることによっても種々の態様でタンパク質を経皮投与することができる。たとえば、照射強度50mW以上、照射時間3秒以上が好ましく、150〜300mWで1〜10分間がより好ましい。
上記ゲル及びポリマーの中から、ゲランガムを主成分としてコンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸を混合したアニオン性ゲルと、ポリアリルアミンであるカチオン性ポリマーを用いて、タンパク質をゲル内に保持し、金ナノロッドが表面にコートされ、照射光が透過する透明なゲルパッチ製剤を例として具体的に説明する。
ゲルとして、微生物由来の多糖類であるゲランガムを主成分として、コンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸を混合し、アニオン性とする。これを乾燥させ、フルオレセインイソチアシアネート(以下「FITC」ともいう。)でラベルしたオボアルブミン(以下「OVA」ともいう)とカチオン性ポリマー(ポリアリルアミン)で表面コートした金ナノロッドを含む水溶液で膨潤させる。このときゲルの一方の面側からのみ膨潤させ、他方の面側は湿潤させない。金ナノロッドを含む水溶液で湿潤させたゲル表面側に金ナノロッドは偏在し、FITCラベルしたオボアルブミン(以下「FITC-OVA」ともいう。)は、金ナノロッドを含む水溶液で湿潤させたゲル表面側に高濃度で偏在し、徐々に濃度が低くなる態様でゲル内部に湿潤する(図3)。このゲルのFITCオボアルブミン放出能を測定した結果、アニオン性ゲルとしてコンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸を混合した各例において、4時間に渡ってFITC-OVA徐放性を確認できた(図4〜7)。これをマウスから摘出した皮膚に貼付し、近赤外線光(75〜150mW)を照射した結果、皮膚温度は29〜43℃まで上昇した(図9)。その後、そのパッチを24時間貼ったままにした。その皮膚の薄膜切片を作製し、蛍光顕微鏡で観察した結果、金赤外光照射した場合において有意なFITC-OVAの皮内移行が認められた(図10)。生きたマウスに対しても同様の実験をした場合でも、FITC-OVAの皮内への移行が観察され、また、抗オボアルブミン抗体の産生も検出された(図14)。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[ゲルパッチの作製]
ゲランガム(GG)(和光純薬工業(株))を主成分とし、コンドロイチン硫酸(CS)(東京化成(株))、あるいはヒアルロン酸(HA)(長良サイエンス(株))を添加し、水に完全に溶解させた。この水溶液を加熱(90℃、5分間)後、厚さ1mmのガラス製の型に流し込み、室温まで放冷してゲル化させた。このゲルを約1日風乾させ、硬いフィルムになるまで完全に乾燥させた。この乾燥ゲルを縦横各10mmの正方形にカットした。この乾燥ゲルに、FITCラベルしたオボアルブミン(FITC-OVA)2mgとカチオン性ポリマーで表面コートした金ナノロッド6.0×10−8mol(金原子濃度として)(たとえばAlaaldin M. Alkilany, Lucas B. Thompson, and Catherine J. Murphy, Polyelectrolyte Coating Provides a Facile Route to Suspend Gold Nanorods in Polar Organic Solvents and Hydrophobic Polymers, ACS Applied Materials & Interfaces, vol.2, pp 3417-3421, 2010に記載されているような通常の方法にしたがって作製した。)を含む水溶液73.2μLをマイクロピペットで乾燥ゲルに塗布し、ゲルを膨潤させ、再び風乾させた。皮膚へ貼付する直前にこの乾燥ゲルを水に浸し、膨潤させた。様々なゲル濃度、ゲル組成で作成した結果、表1の白丸(○)の組成で透明なゲルができ、それ以外の場合では、ゲルにならなかったり、あるいは、表面がザラザラしているゲルができたりした。
[ゲルからのFITC-OVAの放出]
表1のうち、透明なゲルとなった白丸(○)の組成のゲルパッチを対象に、FITC-OVAのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)への放出試験を行った。各々のゲルパッチにFITC-OVA2mg水溶液73.2mLをマイクロピペットで塗布し(金ナノロッドは含まず)、膨潤させた。これを約1日風乾し、皮膚へ貼付する直前にこの乾燥ゲルを水に浸し、膨潤させ、試験用ゲルパッチとした。測定用セルにPBSを3mL加え、試験用ゲルパッチのFITC-OVA塗布面が下面となるようにPBS上に乗せた。PBSを400rpmで撹拌しつつ、PBSに溶出したFITC-OVAの蛍光強度を蛍光光度計(FP-6600,JASCO)で測定をした(励起光495nm,500〜540nmの蛍光波長を測定)。
FITC-OVA2mgを溶解したPBSでの蛍光強度を測定したところ、520nmで極大蛍光波長が得られた。この時の蛍光強度を100%として、それぞれのゲルパッチにおけるFITC-OVAの放出率を求めた(図4〜7)。図4〜7において、GG/CS(1.50/0.15wt%)は、ゲル内のGGおよびCSのwt%がそれぞれ1.50wt%、0.15wt%であることを意味する。一般的にゲル濃度が高いと、放出速度や放出量は低くなり、また、ヒアルロン酸を含むゲル(GG/HA)は、コンドロイチン硫酸を含むゲル(GG/CS)より、FITC-OVAの放出量は低いことがわかった。これはゲル組成を変えることで、目的に応じた放出能をコントロールできることを示している。
<摘出したマウス皮膚を用いたIn vitro試験>
[ゲルパッチ]
ゲランガム(1.5w%)及びコンドロイチン硫酸(0.15w%)の組成で作製したゲルパッチについて、in vitroにおけるタンパク質の皮内移行を調べた。対照は、FITC-OVA水溶液のみを塗布したゲルパッチとした。
[マウス皮膚の採取]
麻酔下で、6週齢のddYマウスの背部をバリカン剃毛し、エピラット(登録商標)除毛クリーム(クラシエ製)を用いて除毛した。24時間後、除毛した部分から縦横各約1.5cmになるように皮膚を摘出した。
[近赤外線光照射による皮膚の温度上昇]
図8に示すように、面積0.79cmのフランツ拡散セルにPBSを満たし、摘出した皮膚の角質層が上向きになるようにフランツ拡散セルのレセプター部分に乗せた。この上からゲルパッチの金ナノロッド塗布面がマウス皮膚片に接するようにゲルパッチを貼付した。ゲルパッチの上部から連続光レーザー(Alfright Corporation)を用いて近赤外線光(920nm,200mW)の連続照射を10分間行った。また、照射中のゲルパッチ表面の温度を赤外線サーモグラフィーカメラ(G100EX / G120EX,NEC/Avio)でモニターした。その結果、金ナノロッドを塗布したゲルパッチは近赤外線光照射開始すぐに、約43℃まで急激に温度が上昇し、その後、近赤外線光照射終了まで一定の温度が保たれた(図9)が、金ナノロッドを塗布していないゲルパッチは近赤外光を照射しても温度上昇しなかったことがわかる。このことから、この発熱は金ナノロッドのフォトサーマル効果(吸収された光エネルギーが熱に変換される効果)によるものであると確認できた。
[FITC-OVAの皮内への移行評価]
近赤外線光照射後、約37℃で24時間インキュベーションし、ゲルパッチを皮膚から剥がし、ティシュー・テックO.C.T(Optimal Cutting Temperature)コンパウンド(商品名:サクラファインテックジャパン製)を用いて包埋し、液体窒素で凍結させた。凍結させた皮膚は凍結切片作製装置(クリオトーム,Thermo Scientific)を用いて、10μm厚の切片をスライドガラス上に作製した。作製した皮膚切片は倒立型電動顕微鏡(Axio Observer, ZEISS)を用いて蛍光観察した(図10)。その結果、金ナノロッドを塗布したゲルパッチの場合、皮内に蛍光が見られることより、FITC-OVAがゲルパッチから皮内に移行したことが示された。一方、金ナノロッドがない場合では、FITC-OVAの皮内移行は見られなかった。
[In vivoでのFITC-OVAの皮内移行]
ゲランガム(1.5w%)及びコンドロイチン硫酸(0.15w%)の組成で作製したゲルパッチについて、6週齢のddYマウスを用いて、in vivoにおけるタンパク質の皮内移行試験を試みた。対照として、FITC-OVA水溶液のみ(金ナノロッドなし)を塗布したゲルパッチを用いて比較として示す。
まず、麻酔下で、ddYマウスの背部をバリカン剃毛し、エピラット(登録商標)除毛クリーム(クラシエ製)を用いて除毛処理した。24時間後、除毛処理した部分の上から、ゲルパッチの金ナノロッド塗布面が皮膚に接するようにゲルパッチを貼付した。ゲルパッチの上部から連続光レーザー(Alfright Corporation)を用いて近赤外光(920nm,100mW)の連続照射を10分間行った。(図11)また、照射中のゲルパッチ表面の温度を赤外線サーモグラフィーカメラ(G100EX / G120EX,NEC/Avio)でモニターした(図12)。
24時間インキュベーション後、ゲルパッチを皮膚から剥がし、照射されていた部分の皮膚を摘出した。この皮膚をO.C.T コンパウンド(商品名:サクラファインテックジャパン製)を用いて包埋し、液体窒素で凍結させた。凍結させた皮膚は凍結切片作製装置(クリオトーム、Thermo Scientific)を用いて、10μm厚の切片をスライドガラス上に作製した。作製した皮膚切片は倒立型電動顕微鏡(Axio Observer,ZEISS)により観察した(図13)。その結果、金ナノロッドを含むゲルパッチを使用した場合において、有意に多くのFITC-OVAが皮内に移行していることが確認できた(図13中矢印で示す部分の「緑色」が濃いほどFITC-OVAの濃度が高い)。
[OVAの抗体産生評価]
ゲランガム(1.5w%)−コンドロイチン硫酸(0.15w%)の組成で作製したゲルパッチについて、6週齢のddYマウスを用いて、タンパク質の抗体産生を評価した。対照として、照射強度を変えて評価した。
麻酔下で、ddYマウスの背部をバリカン剃毛し、エピラット(登録商標)除毛クリーム(クラシエ製)を用いて除毛処理した。24時間後、除毛処理した部分の上から、ゲルパッチの金ナノロッド塗布面が皮膚に接するようにゲルパッチを貼付した。ゲルパッチの上部からCWレーザー(Alfright Corporation)を用いて近赤外線光(920nm)の連続光レーザー照射を10分間行った。6日後、再びddYマウスの背部を除毛した後、24時間後に同様の照射試験を行った。更に1週間後、ddYマウスから心血採取した。採取した血液を2時間4℃で静置した後、1500gで15分間遠心し、血清を採取した。この血清をシバヤギ『レビス(登録商標)OVA-IgG1マウス』キットのスキームに従って、OVA抗体産生を吸光度測定装置(Model 680 microplate Reader,Biorad)を用いて評価した(図14)。光照射していない場合も抗体産生が認められたが、これは測定限界に近いため、シグナル/ノイズ比が大きいレンジである。しかしながら、照射強度が上昇するにつれて抗体産生価も上昇している傾向みられた。
本透明ゲルパッチは、光照射と組み合わせた高分子の経皮デリバリーシステムに利用でき、これは、マイクロニードルやイオントフォレシス、エレクトロポレーションあるいはソノポレーションといった経皮的タンパク質デリバリーシステムに変わる新しい技術となる。薬物の経皮デリバリーシステムや化粧品へ応用することが考えられる。

Claims (7)

  1. タンパク質を含むアニオン性又はカチオン性のゲルと、
    当該ゲルの極性とは反対の極性を有するポリマーで表面が被覆され、当該ゲル表面に結合している金ナノロッドと、
    を含むゲルパッチであるタンパク質経皮投与剤。
  2. 前記ゲルは、ゲランガム、アガロース、ポリアクリルアミドから選択される成分を含む、請求項1に記載のタンパク質経皮投与剤。
  3. 前記ゲルは、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリメタクリル酸から選択される酸性ポリマー成分をさらに含むアニオン性ゲルである、請求項1又は2に記載のタンパク質経皮投与剤。
  4. 前記タンパク質は、前記金ナノロッドが結合している表面側に多く存在し、反対側に至るほど存在量が少なくなるように存在濃度が傾斜している、請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質経皮投与剤。
  5. 請求項1〜5のいずれか1に記載のタンパク質経皮投与剤の金ナノロッドが存在する表面側とは反対側の表面上に近赤外光線を照射し、当該金ナノロッドを発熱させると共にタンパク質を当該ゲルパッチから投与目的部位に侵出させる、タンパク質経皮投与剤の使用方法。
  6. 前記近赤外光線は、パルス光レーザー、連続光レーザーあるいはキセノン光源で照射する、請求項5に記載の使用方法。
  7. タンパク質を含むアニオン性又はカチオン性のゲルと、
    当該ゲルの極性とは反対の極性を有するポリマーで表面が被覆され、当該ゲル表面に結合している金ナノロッドと、
    を含むゲルパッチである抗体産生剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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