以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔無線通信システム〕
図1は、本発明の実施形態が適用される無線通信システムの全体構成の一例を示す概略図である。この無線通信システムは、移動局用の複数のアンテナ111を備えた移動局(MS)110と、基地局用の複数のアンテナ201−1〜201−6、複数の送受信高周波部(RF(Radio Frequency:無線周波数)部)202−1〜202−6及び変復調部203を備えた基地局(BS)200とを備えて構成される。MS110及びBS200は無線通信装置である。後述するMS1−1等及びBS2−1等についても同様である。BS200において、RF部202−1〜202−6と変復調部203とは、E/O(電気/光変換部)、光ファイバー204−1〜204−6及びO/E(光/電気変換部)を介して接続される。
本無線通信システムでは、BS200は、MS110に設置された複数のアンテナ111から送信された電波を、ビルの屋上等に設置されたBS200側の複数のアンテナ201−1〜201−6にて受信する。そして、BS200側の複数のRF部202−1〜202−6は、受信した電波の無線周波数(RF)帯を中間周波数(IF:Intermediate Frequency)帯に周波数変換した後、受信信号を、光ファイバー204−1〜204−6を介して変復調部203へ送信する。一方、BS200の変復調部203は、送信信号を、同じ経路を逆方向に辿ってアンテナ201−1〜201−6を介してMS110へ送信する。
MS110とBS200とは、同じ無線周波数(RF)を時間領域で分割してシェアするTDD方式に基づいて、双方向通信を行う。MS110からBS200への回線を上り回線(UL)とし、BS200からMS110への回線を下り回線(DL)とする。
図1に示すように、BS200側の複数のアンテナ201−1〜201−6が互いに離れた場所に設置される場合、RF帯の信号(RF信号)とIF帯の信号(IF信号)との間の周波数変換を行うRF部202−1〜202−6も、アンテナ201−1〜201−6毎に個別に必要となる。
尚、IF信号の代わりにRF信号を、光ファイバー204−1〜204−6を介して送信する場合は、BS200側のRF部202−1〜202−6は変復調部203と同じ場所に設置される。この場合、RF部202−1〜202−6及び変復調部203は、1つの装置内に実装される。同様に、MS110側の複数のアンテナ111に対応する図示しないRF部は、それぞれのアンテナ111に対応して個別の装置に実装される場合もあり、また、MS110側の図示しない変復調部と共に1つの装置内に実装される場合もある。
ここで、MS110とBS200との間で送受信される信号は、TDDサブフレームである。つまり、MS110及びBS200は、互いにTDDサブフレームを送受信する。所定のフレームの期間内で、MS110からBS200へTDDサブフレームが送信されるサブフレームの期間、及び、BS200からMS110へTDDサブフレームが送信されるサブフレームの期間が予め設定されている。MS110からBS200へTDDサブフレームが送信されるサブフレームの期間と、BS200からMS110へTDDサブフレームが送信されるサブフレームの期間とは、同じ場合もあり、異なる場合もある。MS110は、前者のサブフレームの期間内で、TDDサブフレームをBS200へ送信し、BS200は、後者のサブフレームの期間内で、TDDサブフレームをMS110へ送信する。
MS110及びBS200は、互いに、時間軸上のサブフレームの期間毎に送信及び受信を切り替えて双方向通信を行うTDD方式の下で、プリアンブルを含むTDDサブフレームを他方へ送信し、プリアンブルを含むTDDサブフレームを他方から受信する。また、MS110及びBS200は、プリアンブルを含まないTDDサブフレームを他方へ送信し、プリアンブルを含まないTDDサブフレームを他方から受信する。プリアンブルは、TDDサブフレームのフレーム同期のタイミングを検出するために用いられる。詳細については後述する。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。実施例1は、MSの各ブランチが共通の局部発振器を用い、BSの各ブランチも共通の局部発振器を用いる場合に、MSに設置された4本のアンテナ及びBSに設置された4本のアンテナから送信されるRF信号の無線周波数を一致させる例である。以下、ブランチは、それぞれのアンテナに対応する処理の系統を示す。
図2は、実施例1の無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。実施例1の無線通信システムは、4本のアンテナ3、RF部4−1及び変復調部5−1を備えたMS1−1と、4本のアンテナ6、RF部7−1及び変復調部8−1を備えたBS2−1とにより構成される。この無線通信システムは、4×4のMIMO−OFDMによるシステムである。後述する実施例2〜4についても同様である。
実施例1は、MS1−1及びBS2−1のそれぞれにおいて、4本のアンテナ3,6に対応したRF部4−1,7−1が、それぞれ1つのRFの装置内に実装され、RF部4−1,7−1が、それぞれ1つの局部発振器(移動局側局部発振器)40及び局部発振器(基地局側局部発振器)70の信号を分配し各ブランチで共通して使用する例である。変調方式はOFDMであるものとする。
実施例1では、MS1−1とBS2−1との間で周波数偏差が存在し、MS1−1及びBS2−1においては、ブランチ間で周波数偏差が存在しない。
MS1−1のRF部4−1は、1つの局部発振器40を備え、ブランチ毎に、スイッチ55、ダウンコンバータ(D/C:Down Converter:周波数変換部)41及びアップコンバータ(U/C:Up Converter:周波数変換部)42を備えている。D/C41は、局部発振器40により出力される所定周波数(既定値Loの発振周波数)の正弦波信号に基づいて、BS2−1からアンテナ3及びスイッチ55を介して受信したRF信号をIF信号に周波数変換するためのモジュールである。U/C42は、局部発振器40により出力される所定周波数の正弦波信号に基づいて、IF信号をRF信号に周波数変換するためのモジュールであり、RF信号は、スイッチ55及びアンテナ3を介してBS2−1へ送信される。
MS1−1の変復調部5−1は、1つの発振器50、ブランチ毎のアナログデジタル変換部(A/D)変換部51及びデジタルアナログ変換部(D/A)変換部52、並びに1つの信号処理部53を備えている。信号処理部53は、ブランチ毎の処理部及び1つの平均部54を備え、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成される。
BS2−1のRF部7−1は、1つの局部発振器70を備え、ブランチ毎に、スイッチ60、D/C71及びU/C72を備えている。D/C71は、局部発振器70により出力される所定周波数(既定値Loの発振周波数)の正弦波信号に基づいて、MS1−1からアンテナ6及びスイッチ60を介して受信したRF信号をIF信号に周波数変換するためのモジュールである。U/C72は、局部発振器70により出力される所定周波数の正弦波信号に基づいて、IF信号をRF信号に周波数変換するためのモジュールであり、RF信号は、スイッチ60及びアンテナ6を介してMS1−1へ送信される。
BS2−1の変復調部8−1は、1つの発振器80、ブランチ毎のA/D変換部81及びD/A変換部82、並びに1つの信号処理部83を備えている。信号処理部83は、ブランチ毎の処理部及び1つの平均部84を備え、例えばFPGA等により構成される。
MS1−1におけるRF部4−1の局部発振器40は、全ブランチで共通であるため、ブランチ間の周波数偏差はゼロである。BS2−1におけるRF部7−1の局部発振器70についても同様である。一方、MS1−1におけるRF部4−1の局部発振器40により出力される正弦波信号の発振周波数と、BS2−1におけるRF部7−1の局部発振器70により出力される正弦波信号の発振周波数とは、個体差に起因して、周波数偏差が存在する。このため、この周波数偏差(MS1−1とBS2−1との間の周波数偏差)を補正し、MS1−1からBS2−1へ送信されるRF信号の周波数と、BS2−1からMS1−1へ送信されるRF信号の周波数とを一致させる必要がある。以下、周波数偏差を補正して、RF信号の周波数を一致させる処理について説明する。
(MS1−1/実施例1)
まず、図2に示したMS1−1について詳細に説明する。図3は、MS1−1の構成を示すブロック図である。このMS1−1は、アンテナ3、スイッチ55、RF部4−1及び変復調部5−1を備えている。図3に示すRF部4−1及び変復調部5−1は、説明の関係上、図2に示したRF部4−1及び変復調部5−1における4ブランチのうち、1ブランチの構成を示している。また、図3に示すスイッチ55は、図2に示したRF部4−1のスイッチ55に対応するが、説明の関係上、RF部4−1の外部に設置されるように示してある。
図3に示すMS1−1の下段が送信処理ブロック部であり、上段が受信処理ブロック部である。具体的には、RF部4−1のU/C42、並びに、変復調部5−1のIFFT演算部10、・・・、QM14及びD/A変換部52により、送信処理ブロック部が構成される。RF部4−1のD/C41、並びに、変復調部5−1のA/D変換部51、QDM20、・・・、リセット信号生成部37及びスイッチ38により、受信処理ブロック部が構成される。
スイッチ55は、後述する変復調部5−1のフレーム同期検出部26から切り替え信号を入力し、切り替え信号に基づいて、内部のスイッチを、受信側(後述するRF部4−1のD/C41側)または送信側(後述するRF部4−1のU/C42側)に切り替える。具体的には、スイッチ55は、切り替え信号がRF信号を受信する期間を示す場合、アンテナ3と受信側とを接続し、アンテナ3を介してRF信号を入力し、受信側に出力する。一方、スイッチ55は、切り替え信号がRF信号を送信する期間を示す場合、アンテナ3と送信側とを接続し、送信側からRF信号を入力し、アンテナ3を介して送信する。
(RF部4−1)
RF部4−1は、1ブランチの構成において、D/C41及びU/C42を備えている。局部発振器40は、全ブランチに共通して使用される。
D/C41は、BS2−1から送信されアンテナ3にて受信したRF信号を、スイッチ55を介して入力し、局部発振器40により出力される既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、RF信号をIF信号に周波数変換する。そして、D/C41は、IF信号を受信信号として変復調部5−1に出力する。
U/C42は、変復調部5−1から送信信号であるIF信号を入力し、局部発振器40により出力される既定値Loの発振周波数の正弦波信号(D/C41が使用する正弦波信号と同じ正弦波信号)に基づいて、IF信号をRF信号に周波数変換し、RF信号をスイッチ55に出力する。これにより、RF信号は、スイッチ55及びアンテナ3を介して送信される。
(変復調部5−1)
変復調部5−1は、1ブランチの構成において、下段に示す送信処理部及び上段に示す受信処理部を備えている。発振器50及び平均部54は全ブランチに共通して使用される。
送信処理部は、逆高速フーリエ変換演算部(IFFT演算部)10、GI(Guard Interval:ガードインターバル)付加部11、アップサンプリング部(US)12、低域通過フィルタ部(LPF)13、直交変調部(QM)14及びデジタルアナログ変換部(D/A変換部)52を備えている。
IFFT演算部10は、図示しない構成部からマッピング後の変調信号(送信信号)を入力し、周波数領域の変調信号にIFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)を施し、時間領域の変調信号を生成する。そして、IFFT演算部10は、時間領域の変調信号をGI付加部11に出力する。
GI付加部11は、IFFT演算部10から時間領域の変調信号を入力し、時間領域の変調信号にGIを付加し、GIを付加した変調信号をUS12に出力する。
US12は、GI付加部11からGIを付加した変調信号を入力し、変調信号にアップサンプリングの処理を施し、アップサンプリング後の変調信号をLPF13に出力する。
LPF13は、US12からアップサンプリング後の変調信号を入力し、変調信号に対し、所定周波数より高い成分を逓減させ、所定周波数以下の成分を通過させるフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の変調信号をQM14に出力する。
QM14は、LPF13からフィルタ処理後の変調信号を入力すると共に、発振器50からスイッチ38を介して、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を入力し、正弦波デジタル信号に基づいて、変調信号にデジタル直交変調を施し、デジタル直交変調後の送信信号をD/A変換部52に出力する。
D/A変換部52は、QM14からデジタル直交変調後のデジタルの送信信号を入力し、デジタル信号をアナログ信号に変換し、アナログの送信信号をIF信号としてRF部4−1のU/C42に出力する。
このように、MS1−1から、固定の既定値fcの発振周波数にてデジタル直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号(固定の無線周波数f1のRF信号)が送信される。
受信処理部は、アナログデジタル変換部(A/D変換部)51、直交復調部(QDM)20、LPF21、ダウンサンプリング部(DS)22、プリアンブル記憶部23、移動相関部24、相関ピーク検出部25、フレーム同期検出部26、トリガ信号生成部27、第1の周波数偏差検出部28、周波数偏差記憶部29、加算部30、数値制御型発振器(NCO)31、シンボル同期検出部32、FFT窓タイミング部33、高速フーリエ変換演算部(FFT演算部)34、パイロットキャリア抽出部35、第2の周波数偏差検出部36、リセット信号生成部37及びスイッチ38を備えている。この場合、LPF21、DS22、プリアンブル記憶部23、移動相関部24、相関ピーク検出部25、フレーム同期検出部26、トリガ信号生成部27、第1の周波数偏差検出部28、周波数偏差記憶部29、加算部30、シンボル同期検出部32、FFT窓タイミング部33、FFT演算部34、パイロットキャリア抽出部35、第2の周波数偏差検出部36及びリセット信号生成部37により、周波数偏差(Δf1+Δf2)を検出する周波数偏差検出部が構成される。後述する実施例2〜4についても同様である。
A/D変換部51は、RF部4−1のD/C41からIF信号であるアナログの受信信号を入力し、アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタルの受信信号をQDM20に出力する。
QDM20は、A/D変換部51からデジタル信号の受信信号を入力すると共に、NCO31から正弦波デジタル信号(所定の値(補正値)fNCO(=fc−Δf’1−Δf’2)を発振周波数とする正弦波デジタル信号)を入力し、正弦波デジタル信号に基づいて、受信信号にデジタル直交復調を施し、デジタル直交復調後の受信信号をLPF21に出力する。
LPF21は、QDM20からデジタル直交復調後の受信信号を入力し、受信信号に対し、所定周波数より高い成分を逓減させ、所定周波数以下の成分を通過させるフィルタ処理を施し、フィルタ処理後の受信信号をDS22に出力する。
DS22は、LPF21からフィルタ処理後の受信信号を入力し、受信信号にダウンサンプリング処理を施し、ダウンサンプリング後の受信信号を移動相関部24、フレーム同期検出部26、シンボル同期検出部32及びFFT演算部34に出力する。
プリアンブル記憶部23には、MS1−1とBS2−1との間で送受信されるTDDサブフレームの先頭に付加されているプリアンブルの波形のうち、繰り返し単位の波形に対応するデジタル信号(プリアンブルの基本信号)が記憶されている。このプリアンブルの基本信号は、同じ波形が例えば8回繰り返され8つの同じ波形により構成されたプリアンブルの信号のうちの1/8の信号であり、繰り返し単位の信号である。
移動相関部24は、DS22からダウンサンプリング後の受信信号を入力すると共に、プリアンブル記憶部23からプリアンブルの基本信号を読み出し、受信信号とプリアンブルの基本信号との間で移動相関演算を行い、相互相関値を算出する。受信信号の時間軸において、受信信号とプリアンブルの基本信号との間で相互相関が高い場合、すなわち受信信号におけるプリアンブルの時間箇所では、相互相関値が大きい値となる。移動相関部24は、受信信号の時間軸における相互相関値を相関ピーク検出部25に出力する。
相関ピーク検出部25は、移動相関部24から受信信号の時間軸における相互相関値を入力し、相互相関値がピークとなる時間軸上の相関ピーク位置(相関ピークのタイミング)を検出すると共に、当該相関ピーク位置の相互相関値を相関ピーク値として検出する。相関ピーク位置は、受信信号の時間軸において、相互相関値が所定時間範囲内でピークとなる時間位置を示す。相関ピーク検出部25は、相関ピーク位置をフレーム同期検出部26に出力すると共に、相関ピーク値を第1の周波数偏差検出部28に出力する。
フレーム同期検出部26は、DS22からダウンサンプリング後の受信信号を入力すると共に、相関ピーク検出部25から相関ピーク位置を入力する。フレーム同期検出部26は、相関ピーク位置に基づいて、ヘッダ部の先頭からFFT処理を開始するタイミング、すなわち受信信号のフレーム同期のタイミングを検出する。MS1−1がプリアンブルを含むTDDサブフレームのRF信号を受信した場合に、相関ピーク検出部25により相関ピーク位置が検出されるから、プリアンブルを含むTDDサブフレームに対するフレーム同期のタイミングが検出される。
一方、フレーム同期検出部26は、MS1−1がプリアンブルを含まないTDDサブフレームのRF信号を受信した場合、すなわち、DS22からダウンサンプリング後の受信信号を入力するが、相関ピーク検出部25から相関ピーク位置を入力しない場合、検出すべきフレーム同期のタイミングが、プリアンブルを含むTDDサブフレームのRF信号を受信したときに(相関ピーク位置に基づいて)検出したフレーム同期のタイミングと同じであるとして、フレーム同期のタイミングを推定(検出)する。具体的には、フレーム同期検出部26は、MS1−1がプリアンブルを含むTDDサブフレームのRF信号を連続して2回受信することで、それぞれの相関ピークに基づいて、2回のフレーム同期のタイミングを検出する。そして、フレーム同期検出部26は、2回のフレーム同期のタイミングの時間間隔と同じ時間間隔にて、MS1−1がプリアンブルを含まないTDDサブフレームを受信した場合のフレーム同期のタイミングを推定する。
尚、MS1−1がプリアンブルを含まないTDDサブフレームのRF信号を受信した場合において、フレーム同期のタイミングの推定を、後述するシンボル同期検出部32が行うようにしてもよい。
フレーム同期検出部26は、受信信号のフレーム同期のタイミングを示すフレーム同期タイミング信号を生成し、フレーム同期タイミング信号をトリガ信号生成部27、シンボル同期検出部32、FFT窓タイミング部33及びリセット信号生成部37に出力する。
また、フレーム同期検出部26は、検出したフレーム同期のタイミングに基づいて、MS1−1がTDDサブフレームのRF信号を送信するサブフレームの期間とTDDサブフレームのRF信号を受信するサブフレームの期間とを判断し、これらの期間の切り替わりのタイミングを判断する。例えば、フレーム同期検出部26は、検出したフレーム同期のタイミングの所定時間前から所定時間後までの間を、TDDサブフレームのRF信号を受信するサブフレームの期間であると判断し、それ以外の期間を、TDDサブフレームのRF信号を送信するサブフレームの期間であると判断する。
フレーム同期検出部26は、RF信号の送受信を切り替えるための切り替え信号(RF信号を送信するサブフレームの期間を示す切り替え信号、またはRF信号を受信するサブフレームの期間を示す切り替え信号)を生成し、そのタイミングにて、切り替え信号をスイッチ55に出力する。
トリガ信号生成部27は、フレーム同期検出部26からフレーム同期タイミング信号を入力し、入力したフレーム同期タイミング信号が通信開始時の最初のTDDサブフレームに対応するフレーム同期タイミング信号である場合、トリガ信号を生成して周波数偏差記憶部29に出力する。トリガ信号生成部27は、入力したフレーム同期タイミング信号が通信開始時の第2番目のTDDサブフレームに対応するフレーム同期タイミング信号である場合、当該フレーム同期タイミング信号を除去し、トリガ信号を出力しない。
具体的には、トリガ信号生成部27は、前回入力したフレーム同期タイミング信号から、今回入力したフレーム同期タイミング信号までの経過時間をカウントし、その経過時間と所定時間とを比較し、当該経過時間が所定時間を超えている場合、入力したフレーム同期タイミング信号が通信開始時の最初のTDDサブフレームに対応するフレーム同期タイミング信号であるとして、トリガ信号を出力する。トリガ信号生成部27は、当該経過時間が所定時間を超えていない場合、入力したフレーム同期タイミング信号が通信開始時の第2番目以降のTDDサブフレームに対応するフレーム同期タイミング信号であるとして、トリガ信号を出力しない。ここで、所定時間とは、通信開始時に最初にプリアンブルを含むTDDサブフレームを受信してから、第2番目にプリアンブルを含むTDDサブフレームを受信するまでの間の時間である。
このように、トリガ信号は、フレーム同期が最初に確立したタイミングにおいて、周波数偏差記憶部29に出力される。尚、トリガ信号生成部27は、第1の周波数偏差検出部28が第1の周波数偏差Δf1を周波数偏差記憶部29に出力するタイミングよりも遅いタイミングにて、トリガ信号を周波数偏差記憶部29に出力するものとする。
シンボル同期検出部32は、DS22からダウンサンプリング後の受信信号を入力すると共に、フレーム同期検出部26からフレーム同期タイミング信号を入力し、受信信号からGI相関を求め、フレーム同期タイミング信号及びGI相関に基づいて、受信信号のシンボル同期のタイミングを検出する。そして、シンボル同期検出部32は、受信信号のシンボル同期のタイミングを示すシンボル同期タイミング信号を生成し、FFT窓タイミング部33及びリセット信号生成部37に出力する。
FFT窓タイミング部33は、フレーム同期検出部26からフレーム同期タイミング信号を入力すると共に、シンボル同期検出部32によりフレーム同期タイミング信号及びGI相関に基づいて検出されたシンボル同期タイミング信号を入力する。そして、FFT窓タイミング部33は、フレーム同期タイミング信号を、シンボル同期タイミング信号を用いて補正し、補正後のフレーム同期タイミング信号を用いて、受信信号のヘッダ部の先頭からFFT処理を開始するタイミングを検出する。そして、FFT窓タイミング部33は、そのタイミングを反映したFFT窓タイミング信号を生成し、FFT演算部34に出力する。これにより、フレーム同期タイミング信号は、シンボル同期タイミング信号を用いて補正され、正確なタイミングの信号となり、結果として、正確なタイミングのFFT窓タイミング信号を生成することができる。
FFT演算部34は、DS22からダウンサンプリング後の受信信号を入力すると共に、FFT窓タイミング部33からFFT窓タイミング信号を入力し、FFT窓タイミング信号を入力したタイミングにて、時間領域の受信信号にFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を施し、周波数領域の受信信号を生成する。そして、FFT演算部34は、周波数領域の受信信号をパイロットキャリア抽出部35、及び、TDDサブフレームのヘッダ部及びペイロード部の復調処理を行う構成部(図示せず)に出力する。
ここで、QDM20が、所定の値fNCO(=fc−Δf’1)を発振周波数とする正弦波デジタル信号に基づいて、受信信号をデジタル直交復調した場合、FFT演算部34は、周波数誤差Δf’1が補正されたダウンサンプリング後の受信信号を入力する。また、QDM20が、所定の値fNCO(=fc−Δf’1−Δf’2)を発振周波数とする正弦波デジタル信号に基づいて、受信信号をデジタル直交復調した場合、FFT演算部34は、周波数偏差(Δf’1+Δf’2)が補正されたダウンサンプリング後の受信信号を入力する。
リセット信号生成部37は、フレーム同期検出部26からフレーム同期タイミング信号を入力すると共に、シンボル同期検出部32からシンボル同期タイミング信号を入力する。また、リセット信号生成部37は、図示しないC/N比(Carrier to Noise Ratio)算出部(FFT演算部34の後段に設けられ、周波数領域の受信信号に基づいてC/N比を算出する構成部)からC/N比を入力する。
リセット信号生成部37は、フレーム同期タイミング信号の入力周期が所定周期であるか否かを判定すると共に、シンボル同期タイミング信号の入力周期が所定周期であるか否かを判定し、また、C/N比が所定のしきい値以上であるか否かを判定する。
リセット信号生成部37は、フレーム同期タイミング信号の入力周期が所定周期であると判定し、シンボル同期タイミング信号の入力周期が所定周期であると判定し、かつ、C/N比が所定のしきい値以上であると判定した場合、通信は正常であると判断する。
一方、リセット信号生成部37は、フレーム同期タイミング信号の入力周期が所定周期でないと判定した場合、シンボル同期タイミング信号の入力周期が所定周期でないと判定した場合、または、C/N比が所定のしきい値以上でない(所定のしきい値より小さい)と判定した場合、通信は異常である(通信が遮断された)と判断し、リセット信号を周波数偏差記憶部29及び第2の周波数偏差検出部36に出力する。
フレーム同期タイミング信号の入力周期が所定周期でない場合は、フレーム同期が確立していないことを示し、シンボル同期タイミング信号の入力周期が所定周期でない場合は、シンボル同期が確立していないことを示す。いずれの場合も、通信が異常であると判断される。
これにより、リセット信号が周波数偏差記憶部29に出力され、周波数偏差記憶部29に保持された周波数偏差Δf1がリセットされ、周波数偏差記憶部29からヌルの信号が加算部30に出力される。また、リセット信号が第2の周波数偏差検出部36に出力され、第2の周波数偏差検出部36が出力する第2の周波数偏差Δf2がリセットされ、ヌルの信号が加算部30に出力される。
第1の周波数偏差検出部28は、相関ピーク検出部25から相関ピーク値を入力し、相関ピーク値に基づいて、相関ピーク位置間の位相回転量を算出し、位相回転量から周波数偏差Δf1を検出する。そして、第1の周波数偏差検出部28は、周波数偏差Δf1を周波数偏差記憶部29に出力する。
例えば、第1の周波数偏差検出部28は、相関ピーク検出部25から8つの相関ピーク値を入力し、各相関ピーク値の位相角の差分を算出する。例えば、8つの相関ピーク値をそれぞれ第1の相関ピーク値、第2の相関ピーク値、・・・、第8の相関ピーク値とする。相関ピーク検出部25は、各相関ピーク値の位相角の差分を算出する際に、第1の相関ピーク値の位相角と第2の相関ピーク値の位相角との間の差分、第1の相関ピーク値の位相角と第3の相関ピーク値の位相角との間の差分、・・・、第1の相関ピーク値の位相角と第8の相関ピーク値の位相角との間の差分等をそれぞれ算出する。そして、第1の周波数偏差検出部28は、位相角の差分から相関ピーク位置間の位相回転量を算出し、所定の換算式により、位相回転量を周波数偏差Δf1に換算する。尚、位相回転量を周波数偏差Δf1に換算するための換算式は既知であるから、ここでは詳細な説明を省略する。
周波数偏差記憶部29は、第1の周波数偏差検出部28から周波数偏差Δf1を入力すると共に、トリガ信号生成部27からトリガ信号を入力する。また、周波数偏差記憶部29は、リセット信号生成部37からリセット信号を入力する。
周波数偏差記憶部29は、トリガ信号を入力した場合(トリガ信号がONの場合)、入力している周波数偏差Δf1を記憶して保持する。トリガ信号は、通信開始時の最初のTDDサブフレームにてフレーム同期が確立したときにトリガ信号生成部27から入力され、通信開始時の第2番目のTDDサブフレームにてフレーム同期が確立したときには入力されない。通信開始時の第3番目以降のTDDサブフレームにてフレーム同期が推定されたときも入力されない。周波数偏差Δf1は、通信開始時の最初のTDDサブフレームにて検出され、トリガ信号が入力されたときには既に、第1の周波数偏差検出部28から入力されている。そして、周波数偏差記憶部29は、保持している周波数偏差Δf1を加算部30に出力する。
これにより、通信開始時の最初のTDDサブフレームにて検出された周波数偏差Δf1のみが、周波数偏差記憶部31に保持され、加算部30に出力される。第2番目以降のTDDサブフレームにて検出された周波数偏差Δf1は、周波数偏差記憶部29に保持されない。後述する加算部30は、周波数偏差Δf1を平均部54に出力し、後述するNCO31は、補正値(fNCO=fc−Δf’1)を発振周波数とする正弦波デジタル信号をQDM20及びスイッチ38に出力する。周波数偏差Δf’1は、全ブランチにおける周波数偏差Δf1の平均値であり、平均部54により算出される。平均部54の処理については後述する。
周波数偏差記憶部29は、リセット信号を入力した場合、記憶して保持している周波数偏差Δf1を削除する。そして、周波数偏差記憶部29は、ヌルの信号を加算部30に出力する。
これにより、フレーム同期が確立できなかった場合、シンボル同期が確立できなかった場合、またはC/N比が所定のしきい値より小さい場合に、通信が遮断したと判断され、周波数偏差記憶部29に保持された周波数偏差Δf1が削除される(リセットされる)。そして、通信が正常になって再開した時(通信開始時)の最初のTDDサブフレームにて検出された新たな周波数偏差Δf1が周波数偏差記憶部29に保持される。
リセット信号生成部37からリセット信号が出力された場合、後述する第2の周波数偏差検出部36からも、加算部30にヌルの信号が出力される。したがって、後述する加算部30は、ヌルの信号を後述する平均部54に出力する。
このように、通信開始時の最初のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf1が検出され、QDM20において、受信信号の周波数偏差Δf’1が補正される。周波数偏差Δf’1の補正は、通信開始時の最初のTDDサブフレームに含まれるプリアンブルに続くヘッダの先頭から行われ、周波数偏差Δf’1の補正がされたヘッダ部及びペイロード部が、LPF21及びDS22を介してFFT演算部34に入力される。
周波数偏差Δf1,Δf’1の精度は、TDDサブフレームに含まれるプリアンブルの長さに依存する。プリアンブルが長い場合は、プリアンブルが短い場合に比べて、精度の高い周波数偏差Δf1,Δf’1が検出されるが、伝送効率は低下する。これに対し、伝送効率の低下を避けるために、プリアンブルの長さを、フレーム同期の検出等に必要な最小限の長さとした場合には、十分な精度の周波数偏差Δf1,Δf’1を検出することができない。このため、受信信号に対して周波数偏差Δf’1を補正したのみでは、周波数偏差が残留し、さらなる補正が必要となる。
そこで、第2の周波数偏差検出部36にて、パイロットキャリア抽出部35により抽出されたパイロットキャリアを用いて、残留した周波数誤差が周波数偏差Δf2として検出され、後述する加算部30は、周波数偏差(Δf1+Δf2)を平均部54に出力し、後述するNCO31は、補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)を発振周波数とする正弦波デジタル信号をQDM20に出力する。平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)は、全ブランチにおける周波数偏差Δf1及び周波数偏差Δf2の加算値の平均値であり、平均部54により算出される。平均部54の処理については後述する。
これにより、通信開始時の最初のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf2が検出され、QDM20において、受信信号の周波数偏差(Δf’1+Δf’2)が補正される。周波数偏差(Δf’1+Δf’2)の補正は、通信開始時の第2番目のTDDサブフレームから行われ、周波数偏差(Δf’1+Δf’2)が補正されたヘッダ部及びペイロード部が、LPF21及びDS22を介してFFT演算部34に入力される。この処理は、第3番目以降のTDDサブフレームについても行われ、残留した周波数誤差は徐々に小さくなり、周波数偏差(Δf’1+Δf’2)の精度は徐々に高くなる。
パイロットキャリア抽出部35は、FFT演算部34から周波数領域の受信信号を入力し、受信信号のキャリアから所定位置のパイロットキャリアを抽出し、パイロットキャリアを第2の周波数偏差検出部36に出力する。
第2の周波数偏差検出部36は、パイロットキャリア抽出部35からパイロットキャリアを入力すると共に、リセット信号生成部37からリセット信号を入力する。第2の周波数偏差検出部36は、パイロットキャリアを入力すると、パイロットキャリアに基づいて、所定のシンボル間隔の複素除算値を算出し、複素除算値から位相回転量を算出し、位相回転量から周波数偏差Δfi 2を検出する。iは、TDDサブフレームの番号を示す。そして、第2の周波数偏差検出部36は、サブフレーム毎に検出した周波数偏差Δfi 2を累積し、累積した周波数偏差Δf2を加算部30に出力する。
第2の周波数偏差検出部36は、リセット信号を入力すると、周波数偏差Δf2を削除し、ヌルの信号を加算部30に出力する。
加算部30は、周波数偏差記憶部29から周波数偏差Δf1を入力すると共に、第2の周波数偏差検出部36から周波数偏差Δf2を入力し、周波数偏差Δf1及び周波数偏差Δf2を加算し、加算結果(Δf1+Δf2)を平均部54に出力する。
全ブランチ共通に使用される平均部54は、各ブランチの加算部30から加算結果(Δf1+Δf2)を入力し、各ブランチの加算結果(Δf1+Δf2)の平均値を算出し、全ブランチの周波数偏差の平均値である平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)を各ブランチのNCO31に出力する。
全ブランチ共通に使用される発振器50は、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を、各ブランチのNCO31及びスイッチ38に出力する。
NCO31は、局部発振器であり、発振器50から既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を入力すると共に、平均部54から平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)を入力し、既定値fcを平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)で減算することで補正し、補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)を発振周波数とした正弦波デジタル信号を生成し、正弦波デジタル信号をQDM20及びスイッチ38に出力する。
スイッチ38は、発振器50とQM14とが接続されるように、予め設定されている。これにより、発振器50から出力される既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号は、スイッチ38を介してQM14へ入力される。尚、スイッチ38は、既定値fcまたは補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)のいずれかを選択することが可能であるが、既定値fcのみを選択するものとする。
ここで、通信開始時の最初のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf1が検出された際には、加算部30は、周波数偏差記憶部29から周波数偏差Δf1を入力すると共に、第2の周波数偏差検出部36からヌルの信号を入力し、加算結果Δf1を平均部54に出力する。そして、NCO31は、平均部54から平均周波数偏差(Δf’1)を入力し、補正値(fNCO=fc−Δf’1)を発振周波数とする正弦波デジタル信号をQDM20及びスイッチ38に出力する。これにより、QDM20において、受信信号の周波数偏差Δf’1が補正される。尚、平均部54により、平均周波数偏差(Δf’1)が算出されるものとする。
また、通信開始時の最初のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf2が検出された際には、加算部30は、周波数偏差記憶部29から周波数偏差Δf1を入力すると共に、第2の周波数偏差検出部36から周波数偏差Δf2を入力し、加算結果(Δf1+Δf2)を平均部54に出力する。そして、NCO31は、平均部54から平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)を入力し、補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)を発振周波数とする正弦波デジタル信号をQDM20及びスイッチ38に出力する。これにより、QDM20において、受信信号の周波数偏差(Δf’1+Δf’2)が補正される。通信開始時の第2番目以降のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf2が検出された際も同様である。
このように、MS1−1の変復調部5−1において、受信信号の周波数偏差(Δf’1+Δf’2)が補正される。
(BS2−1/実施例1)
次に、図2に示したBS2−1について詳細に説明する。図4は、BS2−1の構成を示すブロック図である。このBS2−1は、アンテナ6、スイッチ60、RF部7−1及び変復調部8−1を備えている。図4に示すRF部7−1及び変復調部8−1は、説明の関係上、図2に示したRF部7−1及び変復調部8−1における4ブランチのうち、1ブランチの構成を示している。また、図4に示すスイッチ60は、図2に示したRF部7−1のスイッチ60に対応するが、説明の関係上、RF部7−1の外部に設置されるように示してある。
図4に示すBS2−1の下段が送信処理ブロック部であり、上段が受信処理ブロック部である。具体的には、RF部7−1のU/C72、並びに、変復調部8−1のIFFT演算部85、・・・、QM89及びD/A変換部82により、送信処理ブロック部が構成される。RF部7−1のD/C71、並びに、変復調部8−1のA/D変換部81、QDM92、・・・、第2の周波数偏差検出部108及びリセット信号生成部109により、受信処理ブロック部が構成される。
スイッチ60は、図2に示したBS2−1のスイッチ60に対応し、後述する変復調部8−1のフレーム同期検出部98から切り替え信号を入力し、切り替え信号に基づいて、内部のスイッチを、受信側(後述するRF部7−1のD/C71側)または送信側(後述するRF部7−1のU/C72側)に切り替える。
(RF部7−1)
RF部7−1は、1ブランチの構成において、D/C71及びU/C72を備えている。局部発振器70は、全ブランチに共通して使用される。
D/C71は、図2に示したBS2−1のD/C71に対応し、MS1−1から送信されアンテナ6にて受信したRF信号を、スイッチ60を介して入力し、局部発振器70により出力される既定値Loの発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて、RF信号をIF信号に周波数変換する。
U/C72は、図2に示したBS2−1のU/C72に対応し、変復調部8−1から送信信号であるIF信号を入力し、局部発振器70により出力される既定値Loの発振周波数の正弦波信号(D/C71が使用する正弦波信号と同じ正弦波信号)に基づいて、IF信号をRF信号に周波数変換し、RF信号をスイッチ60に出力する。これにより、RF信号は、スイッチ60及びアンテナ6を介して送信される。
(変復調部8−1)
変復調部8−1は、1ブランチの構成において、下段に示す送信処理部及び上段に示す受信処理部を備えている。発振器80及び平均部84は全ブランチに共通して使用される。
送信処理部は、IFFT演算部85、GI付加部86、US87、LPF88、QM89及びD/A変換部82を備えている。図4に示す送信処理部と図3に示した送信処理部とを比較すると、図4に示すQM89がNCO103から入力する正弦波デジタル信号と、図3に示したQM14が発振器50からスイッチ38を介して入力する正弦波デジタル信号とが異なる点で相違する。具体的には、QM14は、発振器50からスイッチ38を介して、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を入力するのに対し、QM89は、NCO103から、所定の値(補正値)(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2))を発振周波数とする正弦波デジタル信号を入力する。
図4に示すIFFT演算部85、GI付加部86、US87、LPF88及びD/A変換部82は、図3に示したIFFT演算部10、GI付加部11、US12、LPF13及びD/A変換部52にそれぞれ対応し、同様の処理を行うから、詳細な説明を省略する。
QM89は、LPF88からフィルタ処理後の変調信号を入力すると共に、NCO103から正弦波デジタル信号(補正値fNCO(=fc−Δf’’1−Δf’’2)を発振周波数とする正弦波デジタル信号)を入力し、正弦波デジタル信号に基づいて、変調信号にデジタル直交変調を施し、デジタル直交変調後の送信信号をD/A変換部82に出力する。
このように、BS2−1から、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数にてデジタル直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号(無線周波数f2のRF信号)が送信される。
受信処理部は、A/D変換部81、QDM92、LPF93、DS94、プリアンブル記憶部95、移動相関部96、相関ピーク検出部97、フレーム同期検出部98、トリガ信号生成部99、第1の周波数偏差検出部100、周波数偏差記憶部101、加算部102、NCO103、シンボル同期検出部104、FFT窓タイミング部105、FFT演算部106、パイロットキャリア抽出部107、第2の周波数偏差検出部108及びリセット信号生成部109を備えている。この場合、LPF93、DS94、プリアンブル記憶部95、移動相関部96、相関ピーク検出部97、フレーム同期検出部98、トリガ信号生成部99、第1の周波数偏差検出部100、周波数偏差記憶部101、加算部102、シンボル同期検出部104、FFT窓タイミング部105、FFT演算部106、パイロットキャリア抽出部107、第2の周波数偏差検出部108及びリセット信号生成部109により、周波数偏差(Δf1+Δf2)を検出する周波数偏差検出部が構成される。後述する実施例2〜4についても同様である。
図4に示す受信処理部と図3に示した受信処理部とを比較すると、図4に示す受信処理部は、図3に示したスイッチ38を備えていない点で相違する。その他の構成については同様であるので、詳細な説明を省略する。
ここで、加算部102は、周波数偏差Δf1及び周波数偏差Δf2の加算結果(Δf1+Δf2)を平均部84に出力する。全ブランチ共通に使用される平均部84は、各ブランチの加算部102から加算結果(Δf1+Δf2)を入力し、全ブランチの加算結果(Δf1+Δf2)の平均値を算出し、全ブランチの周波数偏差の平均値である平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)を各ブランチのNCO103に出力する。
全ブランチ共通に使用される発振器80は、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を、各ブランチのNCO103に出力する。
NCO103は、局部発振器であり、発振器80から既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を入力すると共に、平均部84から平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)を入力し、既定値fcを平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)で減算することで補正し、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)を発振周波数とした正弦波デジタル信号を生成し、正弦波デジタル信号をQM92及びQM89に出力する。これにより、QDM92において、受信信号の周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が補正され、QM89において、送信信号の周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が補正される。
ここで、通信開始時の最初のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf1が検出された際には、加算部102は、周波数偏差記憶部101から周波数偏差Δf1を入力すると共に、第2の周波数偏差検出部108からヌルの信号を入力し、加算結果Δf1を平均部84に出力する。そして、NCO103は、平均部84から平均周波数偏差(Δf’’1)を入力し、補正値(fNCO=fc−Δf’’1)を発振周波数とする正弦波デジタル信号をQDM92及びQM89に出力する。これにより、QDM92において、受信信号の周波数偏差Δf’’1が補正され、QM89において、送信信号の周波数偏差Δf’’1が補正される。尚、平均部84により、平均周波数偏差(Δf’’1)が算出されるものとする。
また、通信開始時の最初のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf2が検出された際には、加算部102は、周波数偏差記憶部101から周波数偏差Δf1を入力すると共に、第2の周波数偏差検出部108から周波数偏差Δf2を入力し、加算結果(Δf1+Δf2)を平均部84に出力する。そして、NCO103は、平均部84から平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)を入力し、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)を発振周波数とする正弦波デジタル信号をQDM92及びQM89に出力する。これにより、QDM92において、受信信号の周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が補正され、送信信号の周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が補正される。通信開始時の第2番目以降のTDDサブフレームを用いて周波数偏差Δf2が検出された際も同様である。
このように、BS2−1の変復調部8−1において、受信信号の周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が補正され、送信信号の周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が補正される。
(周波数偏差補正処理/実施例1)
次に、図2に示した実施例1の無線通信システムにおいて、MS1−1のRF部4−1から送信されるRF信号の無線周波数と、BS2−1のRF部7−1から送信されるRF信号の無線周波数との間の偏差を補正し、全ての経路の無線周波数を一致させる処理について説明する。前述のとおり、MS1−1のRF部4−1から送信されるRF信号の無線周波数は変化せず一定であり、BS2−1のRF部7−1から送信されるRF信号の無線周波数は、NCO103から出力される補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)に応じて変化する。
図5は、実施例1において、無線周波数の偏差を補正して一致させる処理を示すフローチャートである。まず、MS1−1は、各ブランチから同時にRF信号を送信する(ステップS501)。具体的には、MS1−1における変復調部5−1のQM14により、発振器50における既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われ、RF部4−1のU/C42により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいてRF信号に周波数変換され、RF信号がMS1−1のブランチから送信される。このRF信号の無線周波数は固定である。
BS2−1は、MS1−1とBS2−1との間の平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)を検出する(ステップS502)。具体的には、BS2−1におけるRF部7−1のD/C71により、局部発振器70における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部8−1の第1の周波数偏差検出部100により、第1の周波数偏差Δf1が検出され、第2の周波数偏差検出部108により、第2の周波数偏差Δf2が検出され、平均部84により、平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が算出される。
BS2−1は、全ブランチにおいて、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をMS1−1へ送信する(ステップS503)。具体的には、BS2−1における変復調部8−1のQM89により、既定値fcが周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)で補正された補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われる。そして、RF部7−1のU/C72により、局部発振器70における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいてRF信号に周波数変換され、RF信号がBS2−1から送信される。このRF信号の無線周波数は、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)に応じて変化する。つまり、QM89により、MS1−1とBS2−1との間の平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が反映された補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて、直交変調が行われる。
BS2−1は、全ブランチにおいて、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS504)。具体的には、BS2−1におけるRF部7−1のD/C71により、局部発振器70における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部8−1のQDM92により、既定値fcが周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)で補正された補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交復調が行われる。つまり、QDM92により、MS1−1とBS2−1との間の平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が反映された補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて、直交復調が行われる。
図6は、図5に示した処理の無線周波数を説明する図である。MS1−1から送信されるRF信号の無線周波数をf1とし、BS2−1から送信されるRF信号の無線周波数をf2とする。通信開始時に、MS1−1から無線周波数f1のRF信号が送信されると、BS2−1において、MS1−1の局部発振器40の発振周波数とBS2−1の局部発振器70の発振周波数との間の偏差に相当する周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が検出される。そうすると、QDM92により、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交復調が行われ、QM89により、補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われる。BS2−1から送信されるRF信号の無線周波数f2は、最初から常に、MS1−1から送信されるRF信号の無線周波数f1と一致する。
ここで、周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)は、MS1−1のU/C42が使用する局部発振器40の既定値Loの発振周波数と、BS2−1のD/C71が使用する局部発振器70の既定値Loの発振周波数との間の偏差である。また、BS2−1のD/C71及びU/C72が使用する局部発振器70は共通である。したがって、BS2−1から送信されるRF信号の無線周波数f2は、周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)が補正された周波数に変化し、結果として、MS1−1から送信されるRF信号の無線周波数f1に自ずと一致することになる。
図5に戻って、MS1−1は、MS1−1とBS2−1との間の平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)を検出する(ステップS505)。具体的には、MS1−1におけるRF部4−1のD/C41により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部5−1の第1の周波数偏差検出部28により、第1の周波数偏差Δf1が検出され、第2の周波数偏差検出部36により、第2の周波数偏差Δf2が検出され、平均部54により、平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)が算出される。
MS1−1は、全ブランチにおいて、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をBS2−1へ送信する(ステップS506)。送信信号の周波数補正は行われない。具体的には、MS1−1における変復調部5−1のQM14により、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われる。そして、RF部4−1のU/C42により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいてRF信号に周波数変換され、RF信号がMS1−1から送信される。
MS1−1は、全ブランチにおいて、補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS507)。具体的には、MS1−1におけるRF部4−1のD/C41により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部5−1のQDM20により、既定値fcが周波数偏差(Δf’1+Δf’2)で補正された補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交復調が行われる。つまり、QDM20により、MS1−1とBS2−1との間の平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)が反映された補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて、直交復調が行われる。
ただし、MS1−1における変復調部5−1の各ブランチで検出される周波数偏差(Δf1+Δf2)及び全ブランチの平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)は、BS2−1における変復調部8−1の各ブランチにて周波数偏差(Δf1’’+Δf2’’)が補正されることから、理想的にはゼロに近い値となる。
そして、この処理は、ステップS506及びステップS507からステップS502へ移行し、ステップS502〜ステップS507を繰り返す。2回目以降の処理であっても、MS1−1の変復調部5−1は、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調する。
このように、MS1−1から送信されるRF信号の無線周波数を基準に、当該無線周波数に各部の周波数が同期した状態で、MS1−1及びBS2−1が動作することになる。
以上のように、実施例1の無線通信システムによれば、MS1−1の各ブランチが共通の局部発振器40を用い、BS2−1の各ブランチも共通の局部発振器70を用いた場合に、MS1−1の各ブランチは、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調し、局部発振器40における既定値Loの発振周波数にて送信信号を周波数変換し、基準となる無線周波数のRF信号を送信するようにした。そして、BS2−1の各ブランチは、MS1−1の局部発振器40とBS2−1の局部発振器70との間の周波数偏差が反映された全ブランチの平均周波数偏差(Δf’’1+Δf’’2)を検出し、これの補正値(fNCO=fc−Δf’’1−Δf’’2)の発振周波数にて、直交変調を行いRF信号を送信すると共に、直交復調を行うようにした。
これにより、MS1−1から送信されるRF信号の無線周波数に、BS2−1から送信されるRF信号の無線周波数を一致させることができる。つまり、MS1−1とBS2−1との間で無線周波数の偏差が存在する状態から、無線周波数の偏差が存在しない状態へ変化する。MS1−1及びBS2−1においては、通信開始時の最初からブランチ間で無線周波数の偏差が存在しない。結果として、結果として、MS1−1及びBS2−1から送信される全てのRF信号の無線周波数が一致する。
したがって、外部からのリファレンス信号を利用することなく、無線通信システム内で、MS1−1のRF部4−1から送信されるRF信号の無線周波数に、BS2−1のRF部7−1から送信されるRF信号の無線周波数を高精度に一致させることが可能となる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。実施例2は、MSの各ブランチが共通の局部発振器を用い、BSの各ブランチが独立した個別の局部発振器を用いる場合に、実施例1と同様に、送信される全てのRF信号の無線周波数を一致させる例である。
図7は、実施例2の無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。実施例2の無線通信システムは、4本のアンテナ3、RF部4−1及び変復調部5−1を備えたMS1−2と、4本のアンテナ6、RF部7−2及び変復調部8−2を備えたBS2−2とにより構成される。この実施例2の無線通信システムは、図1に示した無線通信システムにおけるアンテナ201−5,201−6及びRF部202−5,202−6を除去したものに相当する。
実施例2は、MS1−2において、4本のアンテナ3に対応したRF部4−1が、1つのRFの装置内に実装され、1つの局部発振器40の信号を分配し各ブランチで共通して使用する。また、BS2−2において、4本のアンテナ6のそれぞれに対応したRF部7−2が、ブランチ毎に個別のRFの装置内に実装され、局部発振器70も独立して使用する例である。
実施例2では、MS1−2とBS2−2との間で周波数偏差が存在し、MS1−2においては、ブランチ間で周波数偏差が存在せず、BS2−2においては、ブランチ間で周波数偏差が存在する。
MS1−2のRF部4−1及び変復調部5−1は、図2に示した実施例1の構成と同様であるから、ここでは説明を省略する。
BS2−2におけるRF部7−2のブランチは、他のブランチとは異なる局部発振器70を備え、スイッチ60、D/C71及びU/C72を備えている。局部発振器70、スイッチ60、D/C71及びU/C72は、図2にて説明済みであるから、ここでは説明を省略する。
BS2−2の変復調部8−2は、1つの発振器80、ブランチ毎のA/D変換部81及びD/A変換部82、並びに1つの信号処理部112を備えている。信号処理部112は、ブランチ毎の処理部を備え、例えばFPGA等により構成される。
MS1−2におけるRF部4−1の局部発振器40は、全ブランチで共通であるため、ブランチ間の周波数偏差はゼロである。RF部7−2の局部発振器70は、ブランチ間で異なるため、ブランチ間の周波数偏差は存在する。一方、MS1−2におけるRF部4−1の局部発振器40により出力される正弦波信号の発振周波数と、BS2−2におけるブランチ毎のRF部7−1の局部発振器70により出力される正弦波信号の発振周波数とは、個体差に起因して、周波数偏差が存在する。このため、MS1−2とBS2−2の各ブランチとの間の周波数偏差を補正し、MS1−2からBS2−2へ送信されるRF信号の周波数と、BS2−2からMS1−2へ送信されるRF信号の周波数とを一致させる必要がある。以下、周波数偏差を補正して、RF信号の周波数を一致させる処理について説明する。
(MS1−2/実施例2)
図7に示したMS1−2は、図3に示した実施例1のMS1−1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
(BS2−2/実施例2)
図7に示したBS2−2について詳細に説明する。図8は、BS2−2の構成を示すブロック図である。このBS2−2は、アンテナ6、スイッチ60、RF部7−2及び変復調部8−2を備えている。図8に示すRF部7−2及び変復調部8−2は、説明の関係上、図7に示したRF部7−2及び変復調部8−2における4ブランチのうち、1ブランチの構成を示している。また、図8に示すスイッチ60は、図7に示したRF部7−2のスイッチ60に対応するが、説明の関係上、RF部7−2の外部に設置されるように示してある。
図4に示した実施例1のBS2−1と同様に、図8に示すBS2−2の下段が送信処理ブロック部であり、上段が受信処理ブロック部である。
図8に示す実施例2のBS2−2と図4に示した実施例1のBS2−1とを比較すると、実施例2のBS2−2は、RF部7−2の局部発振器70が独立して当該ブランチにのみ用いられ、NCO103が加算部102から周波数偏差(Δf1+Δf2)を直接入力する点で、実施例1のBS2−1と相違する。
(変復調部8−2)
変復調部8−2は、1ブランチの構成において、下段に示す送信処理部及び上段に示す受信処理部を備えている。発振器80は、全ブランチに共通して使用される。変復調部8−2は、実施例1の平均部84を備えていない。
送信処理部は、図4に示した実施例1と同様に、IFFT演算部85等を備えている。これらの構成部は、図4に示した実施例1と同様であるから、ここでは説明を省略する。実施例2において、QM89は、NCO103から、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)を発振周波数とする正弦波デジタル信号を入力する。mはブランチの番号を示す。
このように、BS2−2のブランチから、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にてデジタル直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号(無線周波数f2,mのRF信号)が送信される。
受信処理部は、A/D変換部81等を備えている。これらの構成部は、図4に示した実施例1の構成部と同じであるから、説明を省略する。実施例2において、加算部102は、周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)をNCO103に出力し、NCO103は、加算部102から周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)を入力し、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)を発振周波数とした正弦波デジタル信号を生成し、正弦波デジタル信号をQDM92及びQM89に出力する。これにより、QDM92において、受信信号の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正され、QM89において、送信信号の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正される。
このように、BS2−2の変復調部8−2の各ブランチにおいて、受信信号の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正され、送信信号の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正される。
(周波数偏差補正処理/実施例2)
次に、図7に示した実施例2の無線通信システムにおいて、MS1−2のRF部4−1から送信されるRF信号の無線周波数と、BS2−2のRF部7−2の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数との間の偏差を補正し、全ての経路の無線周波数を一致させる処理について説明する。前述のとおり、MS1−2のRF部4−1から送信されるRF信号の無線周波数は変化せず一定であり、BS2−2のRF部7−2の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、NCO103から出力される補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)に応じて変化する。
図9は、実施例2において、無線周波数の偏差を補正して一致させる処理を示すフローチャートである。まず、MS1−2は、各ブランチから同時にRF信号を送信する(ステップS901)。ステップS901は、図5に示したステップS501と同様である。
BS2−2は、ブランチ毎に、MS1−2とBS2−2のブランチとの間の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)を検出する(ステップS902)。具体的には、BS2−2におけるRF部7−2のD/C71により、局部発振器70における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部8−2の第1の周波数偏差検出部100により、第1の周波数偏差Δf1,mが検出され、第2の周波数偏差検出部108により、第2の周波数偏差Δf2,mが検出され、加算部102により、周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が算出される。
BS2−2は、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をMS1−2へ送信する(ステップS903)。具体的には、BS2−2における変復調部8−2のQM89により、既定値fcが周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)で補正された補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われる。そして、RF部7−2のU/C72により、局部発振器70における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいてRF信号に周波数変換され、RF信号がBS2−2から送信される。このRF信号の無線周波数は、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)に応じて変化する。
BS2−2は、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS904)。具体的には、BS2−2におけるRF部7−2のD/C71により、局部発振器70における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部8−2のQDM92により、既定値fcが周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)で補正された補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交復調が行われる。つまり、QDM92により、MS1−2とBS2−2のブランチとの間の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)を反映した補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて、直交復調が行われる。
図10は、図9に示した処理の無線周波数を説明する図である。MS1−2から送信されるRF信号の無線周波数をf1とし、BS2−2のm番目のブランチから送信されるRF信号の無線周波数をf2,mとする。以下、構成部の番号に付加する「−m」は、m番目のブランチの構成部であることを示す。
通信開始時に、MS1−2から無線周波数f1のRF信号が送信されると、BS2−2において、MS1−2の局部発振器40の発振周波数とBS2−2のブランチにおける局部発振器70−mの発振周波数との間の偏差に相当する周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が検出される。そうすると、QDM92−mにより、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交復調が行われ、QM89−mにより、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われる。BS2−2のm番目のブランチから送信されるRF信号の無線周波数f2,mは、最初から常に、MS1−1から送信されるRF信号の無線周波数f1と一致する。
ここで、周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)は、MS1−2のU/C42が使用する局部発振器40の既定値Loの発振周波数と、BS2−2のD/C71−mが使用する局部発振器70−mの既定値Loの発振周波数との間の偏差である。また、BS2−2のD/C71−m及びU/C72−mが使用する局部発振器70−mは共通である。したがって、BS2−2のm番目のブランチから送信されるRF信号の無線周波数f2,mは、周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正された周波数に変化し、結果として、MS1−2から送信されるRF信号の無線周波数f1に自ずと一致することになる。
図9に戻って、MS1−2は、MS1−2とBS2−2との間の平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)を検出し(ステップS905)、全ブランチにおいて、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をBS2−2へ送信する(ステップS906)。送信信号の周波数補正は行われない。そして、MS1−2は、全ブランチにおいて、補正値(fNCO=fc−Δf’1−Δf’2)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS907)。ステップS905〜ステップS907は、図5に示したステップS505〜ステップS507と同様である。
ただし、MS1−2における変復調部5−1の各ブランチで検出される周波数偏差(Δf1+Δf2)及び全ブランチの平均周波数偏差(Δf’1+Δf’2)は、BS2−2における変復調部8−2の各ブランチにて周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正されることから、理想的にはゼロに近い値となる。
そして、この処理は、ステップS906及びステップS907からステップS902へ移行し、ステップS902〜ステップS907を繰り返す。2回目以降の処理であっても、MS1−2の変復調部5−1は、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調する。
このように、MS1−2から送信されるRF信号の無線周波数を基準に、当該無線周波数に各部の周波数が同期した状態で、MS1−2及びBS2−2が動作することになる。
以上のように、実施例2の無線通信システムによれば、MS1−2の各ブランチが共通の局部発振器40を用い、BS2−2の各ブランチが独立した個別の局部発振器70を用いた場合に、MS1−2の各ブランチは、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調し、局部発振器40における既定値Loの発振周波数にて送信信号を周波数変換し、基準となる無線周波数のRF信号を送信するようにした。そして、BS2−2の各ブランチは、MS1−2の局部発振器40とBS2−2の当該ブランチの局部発振器70との間の周波数偏差が反映された周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)を検出し、これの補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて、直交変調を行いRF信号を送信すると共に、直交復調を行うようにした。
これにより、MS1−2から送信されるRF信号の無線周波数に、BS2−2の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数を一致させることができる。つまり、MS1−2とBS2−2の各ブランチとの間で無線周波数の偏差が存在する状態から、無線周波数の偏差が存在しない状態へ変化する。MS1−2は、通信開始時からブランチ間で無線周波数の偏差が存在しない。BS2−2は、通信開始時からブランチ間で無線周波数の偏差が存在するが、各ブランチの無線周波数がMS1−2から送信されるRF信号の基準となる無線周波数に一致するから、ブランチ間で無線周波数の偏差が存在しない状態へ変化する。結果として、MS1−2及びBS2−2から送信される全てのRF信号の無線周波数が一致する。
したがって、外部からのリファレンス信号を利用することなく、無線通信システム内で、MS1−2のRF部4−1から送信されるRF信号の無線周波数に、BS2−2のRF部7−2から送信されるRF信号の無線周波数を高精度に一致させることが可能となる。
〔実施例3〕
次に、実施例3について説明する。実施例3は、MSの各ブランチが独立した個別の局部発振器を用い、BSの各ブランチも独立した個別の局部発振器を用いる場合に、実施例1と同様に、送信される全てのRF信号の無線周波数を一致させる例である。
図11は、実施例3の無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。実施例3の無線通信システムは、4本のアンテナ3、RF部4−2及び変復調部5−2を備えたMS1−3と、4本のアンテナ6、RF部7−2及び変復調部8−2を備えたBS2−3とにより構成される。
実施例3は、MS1−3において、4本のアンテナ3のそれぞれに対応したRF部4−2が、ブランチ毎に個別のRFの装置内に実装され、局部発振器40も独立して使用し、BS2−3において、4本のアンテナ6のそれぞれに対応したRF部7−2が、ブランチ毎に個別のRFの装置内に実装され、局部発振器70も独立して使用する例である。
実施例3では、MS1−3とBS2−3との間で周波数偏差が存在し、MS1−3及びBS2−3において、ブランチ間で周波数偏差が存在する。
MS1−3におけるRF部4−2のブランチは、他のブランチとは異なる局部発振器40を備え、スイッチ55、D/C41及びU/C42を備えている。局部発振器40、スイッチ55、D/C41及びU/C42は、説明済みであるから、ここでは説明を省略する。
MS1−3の変復調部5−2は、1つの発振器50、ブランチ毎のA/D変換部51及びD/A変換部52、並びに1つの信号処理部113を備えている。信号処理部113は、ブランチ毎の処理部を備え、例えばFPGA等により構成される。
BS2−3のRF部7−2、及び変復調部8−2は、図7に示した実施例2の構成と同様であるから、ここでは説明を省略する。
MS1−3におけるRF部4−2の局部発振器40は、ブランチ間で異なるため、ブランチ間の周波数偏差は存在する。BS2−3におけるRF部7−2の局部発振器70も、ブランチ間で異なるため、ブランチ間の周波数偏差は存在する。一方、MS1−3におけるブランチ毎のRF部4−2の局部発振器40により出力される正弦波信号の発振周波数と、BS2−3におけるブランチ毎のRF部7−2の局部発振器70により出力される正弦波信号の発振周波数とは、個体差に起因して、周波数偏差が存在する。このため、MS1−3の各ブランチとBS2−3の各ブランチとの間の周波数偏差を補正し、MS1−3からBS2−3へ送信されるRF信号の周波数と、BS2−3からMS1−3へ送信されるRF信号の周波数とを一致させる必要がある。以下、周波数偏差を補正して、RF信号の周波数を一致させる処理について説明する。
(MS1−3/実施例3)
図11に示したMS1−3について詳細に説明する。図12は、MS1−3の構成を示すブロック図である。このMS1−3は、アンテナ3、スイッチ55、RF部4−2及び変復調部5−2を備えている。図12に示すRF部4−2及び変復調部5−2は、説明の関係上、図11に示したRF部4−1及び変復調部5−1における4ブランチのうち、1ブランチの構成を示している。また、図12に示すスイッチ55は、図11に示したRF部4−2のスイッチ55に対応するが、説明の関係上、RF部4−2の外部に設置されるように示してある。
図3に示した実施例1のMS1−1と同様に、図12に示すMS1−3の下段が送信処理ブロック部であり、上段が受信処理ブロック部である。
図12に示す実施例3のMS1−3と図3に示した実施例1のMS1−1とを比較すると、実施例3のMS1−3は、RF部4−2の局部発振器40が独立して当該ブランチにのみ用いられ、NCO31が加算部30から周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を直接入力する点で、実施例1のMS1−1と相違する。nはブランチの番号を示す。
また、実施例3のMS1−3において、4つのブランチのうちマスターブランチに設定された変復調部5−2のブランチ(例えば、1番目のブランチ)では、スイッチ38は、発振器50とQM14とが接続されるように設定されており、QM14は、発振器50からスイッチ38を介して、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を固定して入力する。
変復調部5−2のマスターブランチ以外のブランチでは、スイッチ38は、通信開始時の所定時間内に、発振器50とQM14とが接続されておらず、かつNCO31とQM14とが接続されないように設定され、所定時間後に、NCO31とQM14とが接続されるように設定される。
つまり、変復調部5−2のマスターブランチ以外のブランチでは、通信開始時の所定時間内に、正弦波デジタル信号はQM14へ入力されない。これにより、通信開始時の所定時間内には、当該ブランチからRF信号は送信されない。そして、QM14は、所定時間後に、NCO31からスイッチ38を介して正弦波デジタル信号を入力する。これにより、所定時間後には、当該ブランチからRF信号が送信される。ここで、所定時間とは、例えば、通信を開始してから予め設定された時間である。
(変復調部5−2)
変復調部5−2は、1ブランチの構成において、下段に示す送信処理部及び上段に示す受信処理部を備えている。発振器50は、全ブランチに共通して使用される。変復調部5−2は、実施例1の平均部54を備えていない。
送信処理部は、図3に示した実施例1と同様に、IFFT演算部10等を備えている。これらの構成部は、図3に示した実施例1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
変復調部5−2のマスターブランチでは、QM14は、常に、発振器50からスイッチ38を介して、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を入力する。これにより、常に、マスターブランチから基準となるRF信号が送信される。変復調部5−2のマスターブランチ以外のブランチでは、QM14は、通信開始時の所定時間内に、正弦波デジタル信号を入力せず、所定時間後に、NCO31からスイッチ38を介して、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)を発振周波数とする正弦波デジタル信号を入力する。これにより、通信開始時の所定時間内には、当該ブランチからRF信号は送信されず、所定時間後には、当該ブランチからRF信号が送信される。
マスターブランチ以外のブランチにおいて、図示しない制御部は、通信開始時の所定時間内または所定時間後を示す正弦波デジタル信号をスイッチ38及びQM14に出力する。スイッチ38は、通信開始時の所定時間内を示す正弦波デジタル信号を入力した場合、発振器50とQM14とが非接続となり、かつNCO31とQM14とが非接続となるように設定され、所定時間後を示す正弦波デジタル信号を入力した場合、NCO31とQM14とが接続されるように設定される。また、QM14は、通信開始時の所定時間内を示す正弦波デジタル信号を入力した場合、信号を出力せず、所定時間後を示す正弦波デジタル信号を入力した場合、デジタル直交変調した信号をD/A変換部52に出力する。
尚、マスターブランチのスイッチ38は、発振器50とQM14とが接続されるように予め設定され、前述の正弦波デジタル信号を入力しない。
このように、MS1−3のマスターブランチから、固定の既定値fcの発振周波数にてデジタル直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号(固定の無線周波数f1のRF信号)が、常に送信される。また、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチから、通信開始時の所定時間内にRF信号が送信されず、所定時間後に、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)を発振周波数にてデジタル直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号が送信される。
受信処理部は、A/D変換部51等を備えている。これらの構成部は、図3に示した実施例1の構成部と同様であるから、説明を省略する。実施例3において、加算部30は、周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)をNCO31に出力し、NCO31は、加算部30から周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を入力し、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)を発振周波数とした正弦波デジタル信号を生成し、正弦波デジタル信号をQDM20及びスイッチ38に出力する。これにより、QDM20において、受信信号の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)が補正される。
尚、スイッチ38がNCO31とQM14とを接続するように切り替えられている場合、QM14は、NCO31から、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)を発振周波数とする正弦波デジタル信号を入力し、送信信号の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)が補正される。
このように、MS1−3の変復調部5−2において、受信信号の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)が補正される。
(BS2−3/実施例3)
図11に示したBS2−3は、図7に示した実施例2のBS2−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
(周波数偏差補正処理/実施例3)
次に、図11に示した実施例3の無線通信システムにおいて、MS1−3のRF部4−2の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数と、BS2−3のRF部7−2の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数との間の偏差を補正し、全ての経路の無線周波数を一致させる処理について説明する。
前述のとおり、通信開始時の所定時間内においては、MS1−3から送信されるRF信号は、マスターブランチのみからのRF信号であり、その無線周波数は変化せず一定である。BS2−3の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、NCO103から出力される補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)に応じて変化し、通信開始時の所定時間内において周波数偏差が補正されたときに、MS1−3のマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数と一致する。そして、所定時間後においては、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、NCO31から出力される補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)に応じて変化する。
図13は、実施例3において、無線周波数の偏差を補正して一致させる処理を示すフローチャートである。まず、MS1−3は、マスターブランチ(例えば1番目のブランチ)からRF信号を送信する(ステップS1301)。具体的には、MS1−3における変復調部5−2のマスターブランチのQM14により、発振器50における既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われ、RF部4−2のU/C42により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいてRF信号に周波数変換され、RF信号がMS1−3のマスターブランチから送信される。このRF信号の無線周波数は変化せず一定である。他のブランチからRF信号は送信されない。
BS2−3は、ブランチ毎に、MS1−3のマスターブランチとBS2−3のブランチとの間の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)を検出し(ステップS1302)、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をMS1−3へ送信する(ステップS1303)。そして、BS2−3は、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS1304)。ステップS1302〜ステップS1304は、図9に示したステップS902〜ステップS904と同様である。
MS1−3は、ブランチ毎に、MS1−3とBS2−3との間の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を検出する(ステップS1305)。具体的には、MS1−3におけるRF部4−2のD/C41により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部5−2の第1の周波数偏差検出部28により、第1の周波数偏差Δf1,nが検出され、第2の周波数偏差検出部36により、第2の周波数偏差Δf2,nが検出され、加算部30により、周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)が算出される。
MS1−3は、マスターブランチにおいて、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をBS2−3へ送信すると共に、マスターブランチ以外のブランチにおいて、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をBS2−3へ送信する(ステップS1306)。具体的には、通信開始時の所定時間後に、MS1−3における変復調部5−2のマスターブランチ以外のブランチのQM14により、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われる。そして、RF部4−2のU/C42により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいてRF信号に周波数変換され、RF信号がMS1−3から送信される。
これにより、マスターブランチ以外の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、マスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数と一致することになる。
MS1−3は、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS1307)。具体的には、MS1−3におけるRF部4−2のD/C41により、局部発振器40における既定値Loの発振周波数の正弦波信号に基づいて、受信したRF信号がIF信号に周波数変換される。そして、変復調部5−2のQDM20により、既定値fcが周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)で補正された補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交復調が行われる。つまり、QDM20により、MS1−3とBS2−3との間の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を反映した補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて、直交復調が行われる。
ただし、MS1−3における変復調部5−2の各ブランチで検出される周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)は、BS2−3における変復調部8−2の各ブランチにて周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正されることから、理想的にはゼロに近い値となる。つまり、MS1−3における変復調部5−2のマスターブランチ以外の各ブランチで検出される周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)は、マスターブランチと当該各ブランチとの間の周波数偏差に相当する。
そして、この処理は、ステップS1306及びステップS1307からステップS1302へ移行し、ステップS1302〜ステップS1307を繰り返す。
図14は、図13に示した処理の無線周波数を説明する図である。MS1−3のマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数をf1とし、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチから送信されるRF信号の無線周波数をf1,nとし、BS1−3のm番目のブランチから送信されるRF信号の無線周波数をf2,mとする。以下、構成部の番号に付加する「−m」「−n」は、それぞれm番目、n番目のブランチの構成部であることを示す。
図14の上段は、図10に示した実施例2に対応する。通信開始時に、MS1−3のマスターブランチから無線周波数f1のRF信号が送信されると、BS2−3のm番目のブランチから送信されるRF信号の無線周波数f2,mは、周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)が補正された周波数に変化し、結果として、MS1−3のマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数f1に自ずと一致することになる。
図14の下段を参照して、MS1−3のマスターブランチにおいては、QM14−1により、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われ、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチにおいては、QM14−nにより、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号に基づいて直交変調が行われる。MS1−3がBS2−3から受信するRF信号の無線周波数f2,mは、図14の上段に示したとおり、無線周波数f1に一致するから、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチから送信されるRF信号の無線周波数f2,nも、BS2−3の無線周波数f2,m=f1に一致するように補正される。
これにより、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチから送信されるRF信号の無線周波数f2,nは、周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)が補正された周波数に変化し、結果として、MS1−3のマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数f1に自ずと一致することになる。
以上のように、実施例3の無線通信システムによれば、MS1−3の各ブランチが独立した個別の局部発振器40を用い、BS2−3の各ブランチも独立した個別の局部発振器70を用いた場合に、MS1−3のマスターブランチは、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調し、当該ブランチの局部発振器40における既定値Loの発振周波数にて送信信号を周波数変換し、基準となる無線周波数のRF信号を送信するようにした。また、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチは、通信開始時の所定時間内に、RF信号を送信しないようにし、所定時間後に、当該ブランチにて検出した周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を反映した補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数にて、直交変調を行いRF信号を送信すると共に、直交復調を行うようにした。
BS2−3の各ブランチは、MS1−3の局部発振器40とBS2−3の当該ブランチの局部発振器70との間の周波数偏差が反映された周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)を検出し、これの補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて、直交変調を行いRF信号を送信すると共に、直交復調を行うようにした。
これにより、通信開始時の所定時間内に、MS1−3のマスターブランチから送信されるRF信号の基準の無線周波数に、BS2−3の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数を一致させることができる。つまり、MS1−3のマスターブランチとBS2−3の各ブランチとの間で無線周波数の偏差が存在する状態から、無線周波数の偏差が存在しない状態へ変化すると共に、BS2−3のブランチ間で無線周波数の偏差が存在する状態から、無線周波数の偏差が存在しない状態へ変化する。
そして、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチは、BS2−3の各ブランチから基準の無線周波数のRF信号を受信するから、所定時間後に、基準の無線周波数のRF信号を送信するようになる。これにより、MS1−3のマスターブランチから送信されるRF信号の基準の無線周波数に、MS1−3のマスターブランチ以外のブランチから送信されるRF信号の無線周波数を一致させることができる。つまり、MS1−3のブランチ間で無線周波数の偏差が存在する状態から、MS1−3のブランチ間で無線周波数の偏差が存在しない状態へ変化する。結果として、MS1−3及びBS2−3から送信される全てのRF信号の無線周波数が一致する。
したがって、外部からのリファレンス信号を利用することなく、無線通信システム内で、MS1−3のRF部4−2から送信されるRF信号の無線周波数に、BS2−3のRF部7−2から送信されるRF信号の無線周波数を高精度に一致させることが可能となる。
〔実施例4〕
次に、実施例4について説明する。実施例4は、MSの各ブランチが独立した個別の局部発振器を用い、BSの各ブランチも独立した個別の局部発振器を用いる実施例3を応用した例であり、MSのマスターブランチが装置の故障等により使用不可となった場合に、マスターブランチを更新するものである。以下、実施例4において、実施例3と同じ構成部については説明を省略する。
(MS1−4/実施例4)
実施例4の無線通信システムにおけるMS1−4について詳細に説明する。図15は、MS1−4の構成を示すブロック図である。このMS1−4は、アンテナ3、スイッチ55、RF部4−2、変復調部5−3、及び、全ブランチで共通するマスター選択部16を備えている。
図12に示した実施例3のMS1−3と同様に、図15に示すMS1−4の下段が送信処理ブロック部であり、上段が受信処理ブロック部である。送信処理ブロック部は実施例3と同様であり、受信処理ブロック部は、RF部4−2のD/C41、並びに、変復調部5−3のA/D変換部51、QDM20、・・・及び加算部30、さらに、実施例3と異なるNCO31’及びスイッチ38’を備え、全ブランチで共通するマスター選択部16を備えている。
(RF部4−2)
図15に示すRF部4−2は、図12に示した実施例3のRF部4−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
(変復調部5−3)
変復調部5−3は、1ブランチの構成において、下段に示す送信処理部及び上段に示す受信処理部を備えている。MS1−4がBS2−4から後述するマスターブランチNGの信号を受信しない場合、変復調部5−3は、実施例3と同様に動作する。送信処理部は、実施例3と同様に、IFFT演算部10等を備えている。
変復調部5−3のQM14は、実施例3と同様である。尚、後述するマスター選択部16により、新たなマスターブランチが選択された場合には、変復調部5−3における新たなマスターブランチのQM14は、スイッチ38’から、既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を入力するのではなく、新たなマスターブランチが選択される前に通常のブランチとして動作していたときの最新の補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号を入力し、直交変調を行う。それ以降、新たなマスターブランチのQM14は、この正弦波デジタル信号を固定的に入力する。
これにより、通信開始時のマスターブランチが継続して選択されている場合、通信開始時のマスターブランチから、既定値fcの発振周波数で直交変調されたRF信号が送信され、このRF信号の無線周波数が基準となる。その後、マスターブランチが故障等により使用不可となり、新たなマスターブランチが選択された場合、新たなマスターブランチから、当該新たなマスターブランチが選択される前に通常のブランチとして動作していたときの最新の補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数で直交変調されたRF信号が送信される。このRF信号の無線周波数が基準となる。つまり、旧マスターブランチから新たなマスターブランチに切り替わった直後では、新たなマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、切り替わる直前の旧マスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数と同じになる。その後、新たなマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数が変動すると、他のブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、その変動した無線周波数に追従することになる。
このように、通信開始以降、MS1−4のマスターブランチから、固定の既定値fcの発振周波数にて直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号(固定の無線周波数f1のRF信号)が、常に送信される。また、MS1−4のマスターブランチ以外のブランチから、通信開始時の所定時間内にRF信号が送信されず、所定時間経過後に、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数にて直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号が送信される。そして、その後、マスターブランチが故障等により使用不可となり、新たなマスターブランチが選択された場合、MS1−4の新たなマスターブランチから、当該新たなマスターブランチが選択される前に通常のブランチとして動作していたときの最新の補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数にて直交変調され、かつ固定の既定値Loの発振周波数にて周波数変換されたRF信号が送信される。
受信処理部は、A/D変換部51、QDM20、・・・及び加算部30、並びに実施例3と異なるNCO31’及びスイッチ38’(実施例3のNCO31及びスイッチ38に新たな機能を追加したNCO31’及びスイッチ38’)を備えている。NCO31’及びスイッチ38’以外の構成部は、図12に示した実施例3と同様であるから、ここでは説明を省略する。
NCO31’は、加算部30から周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を入力すると共に、後述するマスター選択部16から選択信号を入力し、選択信号が通常のブランチ(マスターブランチ以外のブランチ)を示している場合、通常のブランチとして動作しているときの最新の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を、図示しないメモリに格納すると共に、実施例3のNCO31と同様の処理を行う。また、NCO31’は、選択信号に基づいて、通常のブランチからマスターブランチに切り替わったことを判断すると、メモリから、通常のブランチとして動作していたときの最新の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を読み出し、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号をスイッチ38’に出力し、QM14に変調処理を行わせる。この場合、NCO31’は、そのときに算出した(更新した)補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号をQDM20に出力し、復調処理を行わせる。
スイッチ38’は、発振器50から既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号を入力すると共に、NCO31’から補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号を入力し、さらに、後述するマスター選択部16から選択信号を入力する。スイッチ38’は、選択信号が通信開始時のマスターブランチを示している場合、発振器50からの既定値fcの発振周波数の正弦波デジタル信号をQM14に出力する。スイッチ38’は、選択信号が通常のブランチを示している場合、通信開始時の所定時間内に、いずれの正弦波デジタル信号もQM14に出力せず、所定時間後に、NCO31’からの補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号をQM14に出力する。また、スイッチ38’は、選択信号に基づいて、通常のブランチからマスターブランチに切り替わったと判断した場合、NCO31’からの補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号(通常のブランチとして動作していたときの最新の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を補正する補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数の正弦波デジタル信号)をQM14に出力する。
(マスター選択部16)
マスター選択部16は、複数のブランチからマスターブランチを選択し、マスターブランチを示す選択信号または通常のブランチを示す選択信号を、各ブランチのNCO31’及びスイッチ38’に出力する。また、マスター選択部16は、FFT演算部34から周波数領域の受信信号を入力し、受信信号をOFDM復調し、受信信号にマスターブランチNGの信号が含まれているか否かを判定する。そして、マスター選択部16は、マスターブランチNGの信号が含まれると判定した場合、新たなマスターブランチを選択し、新たなマスターブランチを示す選択信号を、新たなマスターブランチのNCO31’及びスイッチ38’に出力する。また、マスター選択部16は、通常のブランチを示す選択信号を、新たなマスターブランチ以外のブランチのNCO31’及びスイッチ38’に出力する。
尚、マスター選択部16は、マスターブランチNGの信号に基づいて、通常のブランチとして動作しているブランチがマスターブランチへ切り替わることを判断するようにしてもよい。この場合、マスター選択部16は、通常のブランチからマスターブランチに切り替わったことを示す選択信号をNCO31’及びスイッチ38’に出力する。また、図15では、マスター選択部16は、変復調部5−3の外部に設けられているが、変復調部5−3の内部に設けるようにしてもよい。
(BS2−4/実施例4)
実施例4の無線通信システムにおけるBS2−4について詳細に説明する。図16は、BS2−4の構成を示すブロック図である。このBS2−4は、アンテナ6、スイッチ60、RF部7−2、変復調部8−3、及び、全ブランチで共通するマスター送信判定部18を備えている。
図8に示した実施例2のBS2−2と同様に、図16に示すBS2−4の下段が送信処理ブロック部であり、上段が受信処理ブロック部である。送信処理ブロック部は実施例2と同様であり、受信処理ブロック部は、全ブランチで共通するマスター送信判定部18を備えている点で、実施例2と異なる。
(RF部7−2)
図16に示すRF部7−2は、図8に示した実施例2のRF部7−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
(変復調部8−3)
図16に示す変復調部8−3は、図8に示した実施例2の変復調部8−2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
(マスター送信判定部18)
マスター送信判定部18は、FFT演算部106から周波数領域の受信信号を入力し、MS1−4の各ブランチのパイロットキャリアを検出し、各ブランチのパイロットキャリアの振幅レベルが所定の閾値以上であるか否かを判定する。そして、マスター送信判定部18は、各ブランチのパイロットキャリアの振幅レベルが所定の閾値以上であると判定した場合、MS1−4の各ブランチから正常にRF信号が送信されているものと判断する。一方、マスター送信判定部18は、各ブランチのパイロットキャリアの振幅レベルが所定の閾値以上でない(所定の閾値未満である)と判定した場合、MS1−4の当該ブランチから正常にRF信号が送信されていないものと判断する。
マスター送信判定部18は、マスターブランチのパイロットキャリアの振幅レベルが所定の閾値以上であると判定した場合、マスターブランチから正常にRF信号が送信されており使用可であると判断し、マスターブランチが使用可であることを示すOK信号を、図示しない送信信号生成部に出力する。一方、マスター送信判定部18は、マスターブランチのパイロットキャリアの振幅レベルが所定の閾値以上でない(所定の閾値未満である)と判定した場合、マスターブランチから正常にRF信号が送信されておらず使用不可であると判断し、マスターブランチが使用不可であることを示すNG信号を、図示しない送信信号生成部に出力する。このNG信号は、マスターブランチNG信号として送信信号に挿入され、BS2−4から送信される。
そして、図示しない送信信号生成部は、マスター送信判定部18からOK信号/NG信号を入力し、NG信号を入力した場合、マスターブランチNGの信号をヘッダ等に挿入して送信信号を生成し、マッピング後の変調信号としてIFFT演算部85に出力する。これにより、BS2−4から、マスターブランチNGの信号を含むRF信号が送信される。
尚、図16では、マスター送信判定部18は、変復調部8−3の外部に設けられているが、変復調部8−3の内部に設けるようにしてもよい。
(周波数偏差補正処理/実施例4)
次に、実施例4の無線通信システムにおいて、MS1−4のRF部4−2の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数と、BS2−4のRF部7−2の各ブランチから送信されるRF信号の無線周波数との間の偏差を補正し、全ての経路の無線周波数を一致させる処理について説明する。
図17は、実施例4において、無線周波数の偏差を補正して一致させる処理を示すフローチャートである。まず、MS1−4は、マスターブランチ(例えば1番目のブランチ)からRF信号を送信する(ステップS1701)。BS2−4は、ブランチ毎に、MS1−4のマスターブランチとBS2−4のブランチとの間の周波数偏差(Δf1,m+Δf2,m)を検出する(ステップS1702)。ステップS1701及びステップS1702は、図13に示したステップS1301及びステップS1302と同様である。
BS2−4は、MS1−4のマスターブランチによる送信が正常であるか否か(OKであるか否か)を判定し(ステップS1703)、通信が正常である(マスターブランチが使用可である)と判定した場合(ステップS1703:Y)、ステップS1704及びステップS1705へ移行する。一方、BS2−4は、通信が正常でない(異常である、マスターブランチが使用不可である)と判定した場合(ステップS1703:N)、ステップS1709へ移行する。ステップS1703の処理は、マスター送信判定部18により行われる。
BS2−4は、マスターブランチの通信が正常である場合、ステップS1703から移行して、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をMS1−4へ送信する(ステップS1704)。また、BS2−4は、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS1705)。
MS1−4は、ブランチ毎に、MS1−4とBS2−4との間の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を検出する(ステップS1706)。そして、MS1−4は、マスターブランチにおいて、既定値fcの発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をBS2−4へ送信すると共に、マスターブランチ以外のブランチにおいて、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数にて送信信号を直交変調し、RF信号をBS2−4へ送信する(ステップS1707)。また、MS1−4は、ブランチ毎に、補正値(fNCO=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数にて受信信号を直交復調し、復調処理を継続する(ステップS1708)。ステップS1704〜ステップS1708は、図13に示したステップS1303〜ステップS1307と同様である。
BS2−4は、ステップS1703において、マスターブランチの通信が正常でない場合、ステップS1703から移行して、マスターブランチNGの信号をMS1−4へ送信する(ステップS1709)。
MS1−4は、マスターブランチNGの信号を受信すると、新たなマスターブランチを選択し、新たなマスターブランチにおいて、以前のマスターブランチの通信が異常(NG)になる前の正常時における補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m)の発振周波数を固定の発振周波数として直交変調し、RF信号をMS1−4へ送信する。また、MS1−4は、新たなマスターブランチ以外のブランチにおいて、更新した発振周波数にて直交変調し、RF信号をBS2−4へ送信する(ステップS1710)。
そして、この処理は、ステップS1707、ステップS1708及びステップS1710からステップS1702へ移行し、ステップS1702〜ステップS1710を繰り返す。尚、MS1−4は、マスターブランチNGの信号を受信し、新たなマスターブランチを選択した後、ステップS1707において、新たなマスターブランチにて、ステップS1710と同じ補正値(以前のマスターブランチの通信が異常(NG)になる前の正常時における補正値(fNCO=fc−Δf1,m−Δf2,m))の発振周波数を固定の発振周波数として直交変調し、RF信号をMS1−4へ送信する。
以上のように、実施例4の無線通信システムによれば、MS1−4の各ブランチが独立した個別の局部発振器40を用い、BS2−4の各ブランチも独立した個別の局部発振器70を用いた場合、実施例3と同様に、MS1−4の複数のブランチのうちの1つがマスターブランチとして動作しているときに、BS2−4のマスター送信判定部18は、マスターブランチのパイロットキャリアの振幅レベルが所定の閾値以上でない(閾値未満である)と判定した場合、マスターブランチの使用不可を判断し、BS2−4は、マスターブランチNGの信号を含むRF信号を送信するようにした。
MS1−4のマスター選択部16は、BS2−4からのRF信号にマスターブランチNGの信号が含まれることを判定すると、新たなマスターブランチを選択する。MS1−4の新たなマスターブランチは、通常のブランチとして動作していたときの最新の周波数偏差(Δf1,n+Δf2,n)を反映した補正値fNCO(=fc−Δf1,n−Δf2,n)の発振周波数を固定の発振周波数として直交変調を行い、RF信号を送信する。
これにより、マスターブランチが装置の故障等により使用不可となり、新たなマスターブランチが選択された場合、旧マスターブランチから新たなマスターブランチに切り替わった直後では、新たなマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、切り替わる直前の旧マスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数と同じになる。その後、新たなマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数が変動すると、他のブランチから送信されるRF信号の無線周波数は、その変動した無線周波数に追従することになる。
つまり、MS1−4の新たなマスターブランチから送信されるRF信号の無線周波数を基準として、MS1−4の新たなマスターブランチ以外のブランチから送信されるRF信号の無線周波数を一致させることができる。結果として、MS1−4及びBS2−4から送信される全てのRF信号の無線周波数が一致する。
したがって、マスターブランチが装置の故障等により使用不可となった場合であっても、外部からのリファレンス信号を利用することなく、無線通信システム内で、MS1−4のRF部4−2から送信されるRF信号の無線周波数に、BS2−4のRF部7−2から送信されるRF信号の無線周波数を高精度に一致させることが可能となる。
以上、実施例1〜4を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1〜4に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施例1〜4では、4本のアンテナ3および4本のアンテナ6のMIMO−OFDMによる無線通信システムの例を挙げて説明したが、アンテナ3及びアンテナ6の数は、それぞれ4本に限るものではない。
また、前記実施例1は、MS1−1の各ブランチが共通の局部発振器40を用い、BS1−1の各ブランチも共通の局部発振器70を用いる例であり、前記実施例2は、MS1−2の各ブランチが共通の局部発振器40を用い、BS2−2の各ブランチが独立した個別の局部発振器70を用いる例であり、実施例3,4は、MS1−3,1−4の各ブランチが独立した個別の局部発振器40を用い、BS2−3,2−4の各ブランチも独立した個別の局部発振器70を用いる例である。本発明は、MSの各ブランチが独立した個別の局部発振器40を用い、BSの各ブランチが共通の局部発振器70を用いる場合についても適用がある。
また、前記実施例1〜4のMS1−1〜1−4において、変復調部5−1〜5−3に備えた信号処理部53,113(及び実施例4ではマスター選択部16)の各構成部の処理は、MS1−1〜1−4に搭載される集積回路であるLSIのチップにより実現されるようにしてもよく、これらにA/D変換部51及びD/A変換部52を含む各構成部の処理が、LSIのチップにより実現されるようにしてもよい。これらは、個別に1チップ化されていてもよいし、これらの一部または全部が1チップ化されていてもよい。
また、前記実施例1〜4のBS2−1〜2−4において、変復調部8−1〜8−3に備えた信号処理部83,112(及び実施例4ではマスター送信判定部18)の各構成部の処理は、BS2−1〜2−4に搭載される集積回路であるLSIのチップにより実現されるようにしてもよく、これらにA/D変換部81及びD/A変換部82を含む各構成部の処理が、LSIのチップにより実現されるようにしてもよい。これらは、個別に1チップ化されていてもよいし、これらの一部または全部が1チップ化されていてもよい。
また、LSIの代わりに、集積度の異なるVLSI、ULSI等のチップにより実現されるようにしてもよい。さらに、LSI等のチップに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いるようにしてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いるようにしてもよい。