JP2016199511A - 鶏の感染症を予防する抗体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブロイラーは密飼される場合が多く、1の個体が感染症にかかると、短期間で全ての個体が感染し、経済的な損失が高くなる。ワクチンや環境整備でこれらの感染症はある程度予防できるものの、経済投資ができない場合は、養鶏業はリスクを背負ったままである。安価で大量に産生できる感染症予防剤が望まれている。【解決手段】本発明は、ニューカッスル病、伝染性気管支炎病、鳥インフルエンザの少なくとも1つの病原体から得た蛋白質を抗原として雌性鳥類に免疫する工程と、前記雌性鳥類が産卵した卵の卵黄から抗体を得る工程を含むことを特徴とする鶏の感染症を予防する抗体の製造方法を提供する。この製造方法によれば、これらの感染症を予防できる効果の高い抗体を大量に産生することができる。【選択図】なし
Description
本発明は、養鶏で飼育される鶏の感染症を予防する抗体およびその製造方法に関するものである。
養鶏では、主として採卵用に飼育されるレイヤーと呼ばれる鶏と、食肉用に飼育されるブロイラーの2種類の鶏がある。レイヤーは、孵化後150日齢頃から産卵を始め、およそ1年間産卵を続ける。一般的に肉があまりついていない白色レグホーン種やロードアイランドレッド等の品種が用いられる。
ブロイラーは、孵化後3ヶ月未満の若鳥で食用にされる目的で飼育されている鶏をいう。具体的にはチャンキー、ハーバード、ラミート、アーバーエーカー、コブといった品種の鶏が知られている。ブロイラーは、食用として品種改良された結果、通常成鶏になるのに、4〜5ヶ月かかるところを、40〜50日で成鶏となる。いずれにしても、養鶏では、多くの鶏を飼育する。
このような養鶏場においては、感染症の蔓延は生産停止に繋がり、大きな経済的ダメージに繋がる。特に養鶏では密飼される場合が多く、一個体が感染するだけで、群れ全体に感染症が広がる。感染症の予防には徹底した飼育環境の衛生管理やワクチン接種が有効とされている。
しかし、衛生管理が不十分であったり、高価なワクチンが経済的に使用できないといった事情がある場合は、各種伝染病によって莫大な被害が発生する。特に発展途上国では、このようなケースが多い。たとえば、アジア諸国においては、肉養鶏や鶏卵は人の不可欠な蛋白源であり、その国の発展の礎であるといってもよい。したがって、肉養鶏や鶏卵の安定的な供給は大変重要な問題である。
鶏の感染病としては、ニューカッスル病、伝染性気管支炎病、鳥インフルエンザ(H5N1型)といった病気が主なものである。これらは病原となるウイルスによって引き起こされる。
ところで、ブロイラーの場合は、孵化後40日前後で出荷され食用とされる。したがって、ワクチンのように個体の免疫力を高めなくても、短期間の間感染を抑制すれば、食用に供することが出来る。つまり、ワクチンより安価であって、病原体抑制力を有するものを使用することで、ブロイラーの感染症の蔓延による経済的ダメージを回避することができる。
レイヤーの場合は、産卵期間はおよそ1年ほどあるが、ワクチンより安価であって、病原体抑制力を有するものがあれば、一定期間毎に摂取させることで感染症による経済的ダメージを回避することができる。
このようなワクチンの代替品となるものとして抗体が知られている。例えば、特許文献1では、A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)由来のヘマグルチニンをダチョウに免疫することで、卵黄から抗体(IgY)を得る方法が開示されている。
レイヤーは日本で1億羽以上が飼育されている。またブロイラーは、日本だけでも年間6億羽が出荷されるとされている。したがって、個々の個体に摂取させるためには、非常に多くの抗体が必要となる。また、抗体の特性として、少量で抗原に結合するものが好適である。つまり、取得できる抗体の量が少なくても、少量で効果のある抗体であれば望ましい。しかし、従来このようなブロイラーの感染病を抑制できる抗体はなかった。
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたもので、鶏の感染病の病原となるウイルスに対する抗原を大量に、しかも抗原との結合性の高い抗体を得る方法を提供する。
より具体的に本発明に係る鶏の感染症を予防する抗体の製造方法は、
ニューカッスル病、伝染性気管支炎病、鳥インフルエンザの少なくとも1つの病原体から得た蛋白質を抗原として雌性鳥類に免疫する工程と、
前記雌性鳥類が産卵した卵の卵黄から抗体を得る工程を含むことを特徴とする。
ニューカッスル病、伝染性気管支炎病、鳥インフルエンザの少なくとも1つの病原体から得た蛋白質を抗原として雌性鳥類に免疫する工程と、
前記雌性鳥類が産卵した卵の卵黄から抗体を得る工程を含むことを特徴とする。
本発明に係る抗体の製造方法は、ダチョウを使って作製する。ダチョウの卵は鶏の卵の20倍以上あり、1つの卵から大量の抗体を得ることが出来る。また、後述の実施例に示すように、ダチョウの抗体は、通常抗体製造に使用される鳥類より抗原に対する結合力が高く、少ない量でも感染症の抑制効果が高い。つまり、本発明の抗体の製造方法は、抗原との結合力が高い抗体を大量に製造することができる。したがって、鶏に対して、安価で感染病への感染を抑制する効果の高い、ワクチン代替品を提供することができる。
以下本発明に係る抗体の製造方法について説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施形態を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、以下の実施形態および実施例は改変されてもよい。
本発明に係る抗体の製造方法では、ダチョウの雌類に鶏の感染症の病原となるウイルスから得た蛋白質を免疫する。対象となる感染症は、ニューカッスル病、伝染性気管支炎、鳥インフルエンザ、家禽コレラ、家禽サルモネラ感染症等である。
ニューカッスル病は、鳥類のウイルス性感染症で、鶏を含む鳥類全般が感染する。中でも鶏は最も感受性が高いとされる。ニューカッスル病ウイルス(Newcastle Disease Virus:以後「NDV」とも呼ぶ。)が病原体である。感染は、糞で汚染された飼料、水などを通じて起こる。症状としては、呼吸困難、咳といった呼吸器系の症状および、抑うつ、食欲不振、翼の脱力、麻痺といった神経系の症状、また眼や首の膨張、下痢、卵殻異常、産卵数の減少といった症状が起こる。治療法はなく、処分するしかない。
(鶏)伝染性気管支炎はニワトリの感染症である。(鶏)伝染性気管支炎ウイルス((Avian) Infectious Bronchitis Virus:以後「IBV」とも呼ぶ。)が病原体である。呼吸器症状が特徴で、気管、鼻道、副鼻腔に滲出液が出る。極期には、猫の鳴き声のような奇声を発する。
鳥インフルエンザは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる鳥類の感染症である。中でも鶏、ウズラ、七面鳥といった家禽類に感染すると非常に高い病原性をもたらすものは、高病原性鳥インフルエンザと呼ばれる。よく知られているようにA型インフルエンザウイルスは、表面の蛋白質であるヘマグルチニンとノイラミダーゼの種類によって、H1N1〜H16N9型に分けられる。本発明による抗体の製造方法では、強毒型とされるH5N1ウイルス(以後「A/H5N1」とも呼ぶ。)を抗原とする。
鳥インフルエンザは感染した鳥類の呼吸器からの分泌物や糞便を介して感染する。感染すると、食欲不振、産卵数の減少といった症状が現れることもある。しかし、特に症状を示す前に死ぬ場合もある。この病気も治療法はなく、処分されることになる。
抗原として用いるのは、少なくとも上記の3種の感染症の弱毒化した病原体(ウイルス)である。これは市販のワクチンが好適に利用できる。
雌性鳥類に対して免疫する工程では、公知の方法を利用することができる。免疫の際は、抗原とともに各種アジュバンドを利用することができる。また、免疫も初回免疫の後、追加免疫してもよい。
利用できる鳥類としては、ウズラ、ニワトリ、ダチョウ等が利用できる。しかし、体の大きなダチョウが好適に利用できる。また、後述する実施例からもダチョウの抗体が最も抗原に対する結合性に優れたものが得られる。
免疫後の鳥類から得られた卵から抗体(IgY)を回収する工程では、公知の方法で抗体を回収することができる。なお、以後の実施例を含め、NDVを抗原としてダチョウに接種し、得られた抗体を「抗NDVダチョウ抗体」と呼ぶ。同様にIBVを抗原として得た抗体を「抗IBVダチョウ抗体」と呼び、鳥インフルエンザウイルスを抗原として得た抗体を「抗A/H5N1ダチョウ抗体」と呼ぶ。
また、これらの病原体を接種させないダチョウが産卵した卵黄から得た抗体を「免疫前ダチョウ抗体」と呼ぶ。「免疫前ダチョウ抗体」に対応する呼び方として、「抗NDVダチョウ抗体」、「抗IBVダチョウ抗体」、「抗A/H5N1ダチョウ抗体」は「免疫後ダチョウ抗体」とも呼ぶ。
得られた、抗体は、注射薬とすることができる。鶏に摂取しやすくするためである。
<鳥類の種類による抗体の反応性>
成熟したメス鳥(ダチョウ、ニワトリ、ウズラ)を用いた。NDV、IBV、A/H5N1の市販のワクチン(蛋白量100μg)をそれぞれ、フロイントの完全アジュバント0.2mLと混和し、筋肉内に免疫した。各抗原を個別に5羽のダチョウ、5羽のニワトリ、5羽のウズラに接種した。したがって、ダチョウもニワトリもウズラも同量の抗原を接種したことになる。
成熟したメス鳥(ダチョウ、ニワトリ、ウズラ)を用いた。NDV、IBV、A/H5N1の市販のワクチン(蛋白量100μg)をそれぞれ、フロイントの完全アジュバント0.2mLと混和し、筋肉内に免疫した。各抗原を個別に5羽のダチョウ、5羽のニワトリ、5羽のウズラに接種した。したがって、ダチョウもニワトリもウズラも同量の抗原を接種したことになる。
初回免疫後、2週目と4週目に50μgの抗原とフロイントの不完全アジュバントの混和液を、各鳥に追加免疫した。初回免疫後8週目に得られた各鳥からの卵の卵黄より卵黄抗体(IgY)を精製した。
具体的には、まず得られた卵の卵黄に5倍量のTBS(20mMのTris−HCl、0.15MのNaCl、0.5%NaN3)と同量の10%デキストラン硫酸/TBSを加え20分攪拌した。
次に1MのCaCl2/TBSを卵黄と同量加え攪拌し、12時間静置した。その後、15000rpmで20分遠心し上清を回収した。そして、最終濃度が40%になるように硫酸アンモニウムを加え4℃で12時間静置した。
12時間の静置後、15000rpmで20分遠心し、沈殿物を回収した。最後に、卵黄と同量のTBSに再懸濁し、TBSにて透析した。以上の方法で、各卵から純度90%の抗体(IgY)が回収できた。
得られた卵黄抗体の各ウイルス抗原に対する反応性をELISAにより検証した。96穴ELISAプレートの各穴にウイルス抗原をそれぞれ10μgを別々に固層化した。固層化は、室温で4時間放置することで行った。その後、ダチョウ抗体(各5羽のダチョウから得た卵黄からの抗体の混合物)、ニワトリ抗体(各5羽のニワトリから得た卵黄からの抗体の混合物)、ウズラ抗体(各5羽のウズラから得た卵黄からの抗体の混合物)の段階希釈液(原液は2mg/mL)を各穴に滴下し、室温で1時間反応させた。
洗浄後、各抗体に対するHRP(Horseradish Peroxidase)標識2次抗体を室温で1時間反応させた。十分な洗浄後、ペルオキシダーゼ用発色キット(S−Bio SUMILON)を用いてプレートリーダーにて吸光度(450nm)を測定した。免疫前の各鳥種の卵黄抗体の2倍以上の吸光度値を示す最大希釈倍率をELISA(Enzyme−Linked Immuno−Sorbent Assay)値として示した。結果を表1に示す。
表1を参照して、A/H5N1、IBV、NDVを免疫することにより、ダチョウ、ニワトリ、ウズラ、アヒルに高感度の卵黄抗体が作製された。特に、各鳥類には同量の抗原を免疫したにもかかわらず、巨大なダチョウが最も反応性が高い抗体が産生されていた。これは、ダチョウを使うことによって、少量の抗原でも高感度の抗体が産生できることを表している。
<各鳥類の抗体の解離係数(KD)の比較>
A/H5N1を免疫した鳥類の卵黄由来抗体の抗原(A/H5N1)との結合強度を解離係数で比較した。結果を図1に示す。図1を参照して、横軸は解離係数毎のウズラ(「Q」で表した。)、ニワトリ(「C」で表した。)、ダチョウ(「O」で表した。)の種類を表し、縦軸は個体率(%)を表す。図1では、KDが10−10まではウズラ(Q)とニワトリ(C)の個体率が多く、10−11以下ではダチョウ(O)の個体率が多くなっているのがわかる。
A/H5N1を免疫した鳥類の卵黄由来抗体の抗原(A/H5N1)との結合強度を解離係数で比較した。結果を図1に示す。図1を参照して、横軸は解離係数毎のウズラ(「Q」で表した。)、ニワトリ(「C」で表した。)、ダチョウ(「O」で表した。)の種類を表し、縦軸は個体率(%)を表す。図1では、KDが10−10まではウズラ(Q)とニワトリ(C)の個体率が多く、10−11以下ではダチョウ(O)の個体率が多くなっているのがわかる。
その結果、ダチョウでは解離係数が低い個体が多いことが判明した。つまり、ダチョウ抗体は結合力が高いことが分かった。これは、少量の抗体でも抗原によく結合することを表している。表1の結果を考慮すると、ダチョウを用いたブロイラーの感染症予防用の抗体の製造方法では、少量の接種でよい抗体が大量に得ることができることがわかった。
<抗A/H5N1ダチョウ抗体の中和活性>
培養細胞MDCK細胞にA/H5N1ウイルス(100TCID50)を感染させ、免疫前ダチョウ抗体と免疫後ダチョウ抗体(抗A/H5N1ダチョウ抗体)を添加し、細胞変性効果(Cytopathic Effect:以後「CPE」とも呼ぶ。)を観察した。結果を図2に示す。
培養細胞MDCK細胞にA/H5N1ウイルス(100TCID50)を感染させ、免疫前ダチョウ抗体と免疫後ダチョウ抗体(抗A/H5N1ダチョウ抗体)を添加し、細胞変性効果(Cytopathic Effect:以後「CPE」とも呼ぶ。)を観察した。結果を図2に示す。
図2を参照して、図2(a)は免疫前ダチョウ抗体を添加した場合であり、図2(b)は抗A/H5N1ダチョウ抗体を添加した場合である。図2(a)ではスポンジ状の映像が映っており、図2(b)にはわずかに網目状が映っている。したがって、免疫前ダチョウ抗体の添加ではCPEが認められたが、抗A/H5N1ダチョウ抗体の添加によりCPEの出現が抑えられたと判断できる。つまり、ダチョウ抗体によりA/H5N1の感染が抑制(中和)されることが証明された。
次にA/H1N1、A/H5N1、B型インフルエンザウイルスに対する抗A/H5N1ダチョウ抗体の中和活性を調べた。具体的にはTCID50(Median Tissue Culture Infectious Dose 50)を50%抑制し得る抗体量を算出した。TCID50は、予め細胞を培養して付着させた試験管やウェルプレート上にウイルス希釈液を接種し、50%の細胞に対して感染する濃度のことを指す。結果を表2に示す。
表2を参照して、抗A/H5N1ダチョウ抗体は少量でも高いウイルス中和活性を有することが判明した。また、季節性インフルエンザA/H1N1やB型にも中和能を有することが判明した。
<抗A/H5N1ダチョウ抗体の効果>
鶏としてここでは、ブロイラーを用いた。ブロイラーの初生ヒナ(0日齢)にA/H5N1ウイルス105TCID50を鼻腔内接種した。ウイルス接種2時間前に免疫前ダチョウ抗体(50μg/羽 または抗A/H5N1ダチョウ抗体(50μg/羽)をそれぞれ10羽のヒナに接種しておいた。ウイルス接種5日までの致死率を算出した。結果を表3に示す。
鶏としてここでは、ブロイラーを用いた。ブロイラーの初生ヒナ(0日齢)にA/H5N1ウイルス105TCID50を鼻腔内接種した。ウイルス接種2時間前に免疫前ダチョウ抗体(50μg/羽 または抗A/H5N1ダチョウ抗体(50μg/羽)をそれぞれ10羽のヒナに接種しておいた。ウイルス接種5日までの致死率を算出した。結果を表3に示す。
表3を参照して、抗A/H5N1ダチョウ抗体の接種により、すべてのヒナが生存した。
<ダチョウ抗体によるIBV感染の抑制効果>
鶏の腎細胞(培養細胞)にIBV・A1株を感染させ、免疫前ダチョウ抗体と免疫後ダチョウ抗体(抗IBVダチョウ抗体)を添加し、顕微鏡観察を行った。結果を図3に示す。図3(a)は免疫前ダチョウ抗体を添加した場合であり、図3(b)は免疫後ダチョウ抗体(抗IBVダチョウ抗体)を添加した場合である。図3(a)には、水泡のような泡状のものが映っており、図3(b)には特に泡状のものは映っていなかった。
鶏の腎細胞(培養細胞)にIBV・A1株を感染させ、免疫前ダチョウ抗体と免疫後ダチョウ抗体(抗IBVダチョウ抗体)を添加し、顕微鏡観察を行った。結果を図3に示す。図3(a)は免疫前ダチョウ抗体を添加した場合であり、図3(b)は免疫後ダチョウ抗体(抗IBVダチョウ抗体)を添加した場合である。図3(a)には、水泡のような泡状のものが映っており、図3(b)には特に泡状のものは映っていなかった。
これより、免疫前ダチョウ抗体の添加(5μg/mL)(図3(a))では、CPE(細胞変性効果)が認められたが、抗IBVダチョウ抗体(5μg/mL)の添加によりCPEが抑制された。これにより、抗IBVダチョウ抗体がIBVの感染を抑制(中和)することが証明された。
<IBV感染による腎炎の発生に対する抑制効果>
ブロイラーの初生ヒナ(0日齢)にIBV・A1株103TCID50を静脈内接種した。ウイルス接種2時間前に免疫前ダチョウ抗体(50μg/羽)または免疫後ダチョウ抗体(抗IBVダチョウ抗体)(50μg/羽)をそれぞれ10羽のヒナに接種しておいた。ウイルス接種5日目に腎臓を摘出し、病理組織学的検索(パラフィン切片、ヘマトキシリン・エオジン染色)をした。結果を図4に示す。
ブロイラーの初生ヒナ(0日齢)にIBV・A1株103TCID50を静脈内接種した。ウイルス接種2時間前に免疫前ダチョウ抗体(50μg/羽)または免疫後ダチョウ抗体(抗IBVダチョウ抗体)(50μg/羽)をそれぞれ10羽のヒナに接種しておいた。ウイルス接種5日目に腎臓を摘出し、病理組織学的検索(パラフィン切片、ヘマトキシリン・エオジン染色)をした。結果を図4に示す。
図4(a)は免疫前ダチョウ抗体の場合で、図4(b)は抗IBVダチョウ抗体の場合である。図4(a)では、写真中央に複数の濃点が含まれる島状の区画ができ、その周囲は白い輪で囲まれ、さらにその周囲には細く分かれた区画が観察できない輪状の部分が映っている。一方図4(b)では、さしの入った肉状のものが映っている。
これより、IBVによる間質性腎炎が免疫前ダチョウ抗体の注射では抑制出来なかったが、抗IBVダチョウ抗体の注射では顕著に抑制されたことがわかった。
さらに、感染ヒナの腎臓内のウイルス増殖を免疫蛍光抗体法で観察した。結果を図4(c)および図4(d)に示す。図4(c)では、粒径が粒状(略球状)から葉巻状(円筒状にちかい)をした複数の物体があり、その物体の縁が緑に光っているものが映っている。図4(d)では、粒状から葉巻状をした複数の物体は認められるものの、縁は緑に光っていない。
これより、尿細管でのIBVの増殖が、免疫前ダチョウ抗体注射では認められたが、抗IBVダチョウ抗体の注射では、ウイルス増殖が認められなくなった。これらの所見は、すべてのヒナに同様に認められた。結果として、抗IBVダチョウ抗体の接種により、IBVの感染がブロックされ腎炎が発症しないことが判明した。つまり、抗IBVダチョウ抗体を接種した場合の腎炎の発生率は0%であった。腎炎の発生率を表4に示す。
<NDVに対する中和効果>
ブロイラーの初生ヒナ(0日齢)にNDV・野外株103TCID50を静脈内接種した。ウイルス接種2時間前に免疫前ダチョウ抗体(50μg/羽)または免疫後ダチョウ抗体(抗NDVダチョウ抗体)(50μg/羽)をそれぞれ10羽のヒナに接種しておいた。ウイルス接種5日目に各主要臓器を摘出し、病理組織学的検索(パラフィン切片、ヘマトキシリン・エオジン染色)をして観察を行った。
ブロイラーの初生ヒナ(0日齢)にNDV・野外株103TCID50を静脈内接種した。ウイルス接種2時間前に免疫前ダチョウ抗体(50μg/羽)または免疫後ダチョウ抗体(抗NDVダチョウ抗体)(50μg/羽)をそれぞれ10羽のヒナに接種しておいた。ウイルス接種5日目に各主要臓器を摘出し、病理組織学的検索(パラフィン切片、ヘマトキシリン・エオジン染色)をして観察を行った。
NDVによる急性炎症像(出血、壊死、白血球浸潤)が免疫前ダチョウ抗体の注射では抑制出来なかったが、抗NDVダチョウ抗体の注射では顕著に抑制された。これらの所見は、すべてのヒナに同様に認められた。結果として、抗NDVダチョウ抗体の接種により、NDVの感染がブロックされ炎症が発症しないことが判明した。NDVの病理組織学的炎症像発現率を表5に示す。
赤血球にNDV(100HA)を添加すると凝集が起こる。そこで、赤血球に免疫前ダチョウ抗体と免疫後ダチョウ抗体(抗NDVダチョウ抗体)を添加し、赤血球凝集抑制試験(Hemagglutination Inhibition test:以後「HI」とよび、その値をHI値と呼ぶ。)を行った。結果を図5に示す。図5を参照して、横軸は抗体を得たダチョウの個体(1から6)であり、縦軸はHI値を表す。ダチョウ1から3には、抗NDVダチョウ抗体を産生させ、ダチョウ4から6にはNDV抗原を免疫せずに抗体を産生させた。
図5を参照して、赤血球に抗NDVダチョウ抗体(原液1mg/mL)を添加するとNDVによる凝集が抑制された。HI値は血球凝集が抑制される抗体の最大希釈倍率数で示した。3羽(ダチョウ1〜3)からの抗NDVダチョウ抗体では高いHI値を示したが、免疫前のダチョウ4〜6の抗体ではHI値が低かった。つまり抗NDVダチョウ抗体はNDVに対する高い中和活性を有することが判明した。
本発明に係るダチョウ抗体は、レイヤーやブロイラーを含む鶏の感染症抑制に好適に利用することができる。
Claims (3)
- ニューカッスル病、伝染性気管支炎病、鳥インフルエンザの少なくとも1つの病原体から得た蛋白質を抗原として雌性鳥類に免疫する工程と、
前記雌性鳥類が産卵した卵の卵黄から抗体を得る工程を含むことを特徴とする鶏の感染症を予防する抗体の製造方法。 - 前記鳥インフルエンザはH5N1型であることを特徴とする請求項1に記載の鶏の感染症を予防する抗体の製造方法。
- 請求項1または2に記載された抗体を用いた注射薬。
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