本発明は、その一部の実施形態では、神経生理学、およびより詳細には、限定的ではないが、神経生理学的データを分析するための方法およびシステムに関する。
本発明の少なくとも1つの実施形態について詳細に説明する前に、本発明はその適用が以下の説明に規定した、および/または図面および/または実施例に例示した構成要素および/または方法の構造および配置の詳細には必ずしも限定されないと理解されたい。本発明は、他の実施形態、または様々な方法で実践もしくは実施することが可能である。
本発明の実施形態は、個別被験者もしくは被験者の群に対して、行動に関連する神経生理学的パターンを同定できるように彼らの脳活動を分析するため、および脳ネットワーク活動(BNA)パターンを構築するために使用できるツールに向けられる。BNAパターンは、場合により好ましくはそれを1つ以上の事前注釈付きBNAパターンと比較することによって分類することができる。BNAパターンは、BNAパターンに関連する病理を治療するための診断および療法のどちらにも役立つことができる。
図1は、本発明の様々な典型的な実施形態による、神経生理学的データを分析するのに適合する方法のフローチャート図である。他に規定しない限り、以下に記載する操作は、同時に、または多数の組み合わせもしくは実行順序で連続的に実行できることを理解されたい。特に、フローチャート図の順序は、限定的であると見なすべきではない。例えば、以下の説明またはフローチャート図において特定の順序で登場する2つ以上の操作は、異なる順序(例えば、逆の順序)または実質的に同時に実行することができる。さらに、以下で説明する幾つかの操作は任意選択的であり、実行されなくてもよい。
操作の少なくとも一部は、データ処理システム、例えばデータを受信して以下で説明する操作を実行するために構成された専用回路または汎用コンピュータによって実施することができる。
本実施形態の方法を実施するコンピュータプログラムは通例、例えばフロッピーディスク、CD−ROM、フラッシュメモリデバイスおよびポータブルハードドライブなどであるがそれらに限定されない配布媒体でユーザへ配布することができる。該配布媒体から、コンピュータプログラムは、ハードディスクまたは類似の中間記憶媒体へコピーすることができる。コンピュータプログラムは、コンピュータ命令をそれらの配布媒体またはそれらの中間記憶媒体のいずれかからコンピュータの実行メモリ内へロードし、コンピュータが本発明の方法に従って作動するように構成することによって実行することができる。全てこれらの操作は、コンピュータシステムの当業者には周知である。
本実施形態の方法は、多数の形態で具体化することができる。例えば、本方法は、方法操作を実施するためのコンピュータなどの有形媒体上で具体化することができる。本方法は、方法操作を実施するためのコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読媒体上で具体化することができる。本方法は、さらにまた有形媒体上でコンピュータプログラムを実行する、またはコンピュータ可読媒体上で命令を実行するために配列されたデジタルコンピュータ能力を有する電子デバイスにおいても具体化することができる。
分析対象の神経生理学的データは、調査中の被験者の脳から直接取得されるあらゆるデータであってよい。「直接的に」取得されたデータは、データが脳組織自体の電気的、磁気的、化学的または構造的特徴を示すことを意味している。神経生理学的データは、単一被験者の脳から直接的に取得されたデータまたは各々多数の被験者(例えば、研究群)の多数の脳から必ずしも同時にではなく直接的に取得されたデータであってよい。
多数の脳からのデータの分析は、単一脳に対応するデータの各部分について以下で別個に記載する操作を実施することによって行うことができる。それでも、一部の操作は1つを超える脳に対して集合的に実施することができる。従って、他のことを明示的に言及しない限り、単数形での「被験者」または「脳」への言及は必ずしも個別被験者のデータの分析を意味するものではない。単数形での「被験者」または「脳」への言及は、数例の被験者のうちの1人に対応するデータ部分の分析も含んでおり、その分析は他の部分へも同様に適用することができる。
データは、取得直後に分析することができる(「オンライン分析」)、または記録および保存してその後に分析することができる(「オフライン分析」)。
本発明に適合する神経生理学的データのタイプの代表的な例には、制限なく脳波図(EEG)データ、脳磁図(MEG)データ、コンピュータ断層撮影法(CAT)データ、ポジトロン(陽電子)放出断層撮影法(PET)データ、磁気共鳴イメージング(MRI)データ、機能的MRI(fMRI)データ、超音波データ、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)データ、ブレイン・コンピュータ・インターフェース(Brain Computer Interface)(BCI)データ、および神経レベルでの神経プロテーゼからのデータが含まれる。場合により、データは、2つ以上の異なるタイプのデータの組み合わせを含んでいる。
本発明の様々な典型的な実施形態では、神経生理学的データには各々被験者の頭皮上の複数の異なる位置に配置された複数の測定デバイスを使用して収集された信号と関連している。これらの実施形態では、データのタイプは、好ましくはEEGまたはMEGデータである。測定デバイスは、電極、超電導量子干渉素子(SQUID)などを含むことができる。そのような各位置で取得されるデータの部分は、さらにまた「チャネル」とも呼ばれる。一部の実施形態では、神経生理学的データは、脳組織自体の中に配置された複数の測定デバイスを使用して収集された信号と関連している。これらの実施形態では、データのタイプは、好ましくは、皮質脳波記録(ECoG)データとしても公知である侵襲性EEGデータである。
場合により好ましくは、神経生理学的データは、被験者がタスクおよび/または行為を実施する前後に少なくとも収集される。本発明の一部の実施形態では、神経生理学的データは、被験者がタスクおよび/または行為を概念化する前後であるが、実際にはそのタスクを実施していないときに少なくとも収集される。これらの実施形態は、被験者がタスクおよび/または行為の実際的実行を妨害する可能性がある、例えば脳卒中などの様々な脳損傷に応答してみられることがある一部のタイプの身体的および/または認知障害を患っている場合は有用である。それでもなお、これらの実施形態は、所望であればあらゆる被験者のために使用できる。
タスクおよび/または行為(実際に実施されたのか概念化されたのかにかかわらず)に関連する神経生理学的データは、事象関連尺度、例えば事象関連電位(ERP)または事象関連電場(ERF)として使用できる。タスクおよび/または行為(実際に実施されたのか概念化されたのかにかかわらず)は、好ましくは刺激に応答しており、データの取得は該応答の時系列を確立し、この時系列に応答性でデータ特性を抽出するために該刺激と同期化される。典型的には、しかし必ずではないが、データ収集は、神経生理学的データがタスクおよび/または行為の実行または概念化の前、最中および後に連続的に収集されるように継続的である。
様々なタイプのタスク、低レベルおよび高レベル両方の認知タスクおよび行為が企図されている。タスク/行為は、単一、順次または継続的であってよい。継続的低レベル認知タスク/行為の例には、制限なく、映画を見ることが含まれ、単一低レベル認知タスク/行為の例には、制限なく、被験者に音響信号(例えば、単純な音)を提供することが含まれ、そして順次低レベル認知タスク/行為の例には、制限なく、反復して音響信号を鳴らすことが含まれる。繰り返しのタスクについては、被験者は最終的には状態調節され得て余り注意を払わなくなる(順応として公知のプロセス)と理解されているが、それでもまだ脳からの応答は存在する。高レベル認知タスク/行為の例には、制限なく、被験者が高音が聞こえたらボタンを押すように要請されるいわゆる「Go/No−Goタスク」が含まれ、このとき低音が聞こえた場合は、被験者はボタンを押してはならない。このタスクは、当分野において公知であり、多数の認知試験において使用される。
刺激および刺激応答の多数のプロトコルは当分野において公知であり、それらは全てが本発明の一部の実施形態によって企図されている。刺激応答神経生理学的試験には、制限なく、ストループ(Stroop)タスク、ウィスコンシンカード分類(Wisconsin card sorting)試験などが含まれる。刺激単独に基づく試験には、制限なく、ミスマッチ陰性電位、聴性脳幹反応(BERA)などが含まれる。さらに企図されるのは、例えばサッケード分析、運動関連電位(MRP)、N−逆記憶タスクおよびその他の労働記憶タスク、「シリアル・セブン(serial seven)」試験(100から7飛びで逆に数える)、Posner(ポスナー)注意タスクなどであるがそれらに限定されない応答単独に基づく試験である。
本発明の範囲は、刺激、タスクおよび/または行為と関連する神経生理学的データだけに限定することは企図されていないことを理解されたい。本発明の実施形態は、特発性脳活動を記述する神経生理学的データにも適用できる。さらにまた企図されているのは、神経生理学的データが特定活動中に取得されるが、この取得が刺激と同期化されない実施形態である。
ここで図1を参照すると、本方法は10で始まり、場合により好ましくは神経生理学的データが受信される11に続く。データは被験者から直接的に記録することができる、または外部起源、例えばデータがそこに保管されるコンピュータ可読記憶媒体などから受信することができる。
本方法は、データの特徴間の関係が、活動関連特徴を同定できるように決定される12に続く。これは、当分野において公知の任意の手順を用いて実施できる。例えば、国際公開第2007/138579号パンフレット、同第2009/069134号パンフレット、同第2009/069135号パンフレットおよび同第2009/069136号パンフレットに記載した手順を使用することができ、上記特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。大まかに言って、活動関連特徴の抽出は、データの多次元分析を含んでおり、このときデータは、データの空間的および非空間的特性を抽出するために分析される。
空間的特性は、好ましくはそれから各データが取得される位置を記述する。例えば、空間的特性は、被験者の頭皮上の測定デバイス(例えば、電極、SQUID)の位置を含むことができる。
さらに、空間的特性が脳組織内で神経生理学的データが生成される位置を推定する実施形態も企図されている。これらの実施形態では、例えば低分解能電磁気断層撮影法(LORETA)を含むことのできる起源局在化手順が使用される。本実施形態に適合する起源局在化手順は、参照により組み込まれる上述した国際公開特許に記載されている。本実施形態に適合するその他の起源局在化手順は、Greenblatt et al.,2005,「Local Linear Estimators for the Bioelectromagnetic Inverse Problem,」IEEE Trans.Signal Processing,53(9):5430、Sekihara et al.,「Adaptive Spatial Filters for Electromagnetic Brain Imaging(Series in Biomedical Engineering),」Springer,2008およびSekihara et al.,2005,「Localization bias and spatial resolution of adaptive and non−adaptive spatial filters for MEG source
reconstruction,」NeuroImage 25:1056の中に見出され、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
さらに、空間的特性が上皮質表面上の位置を推定する実施形態が企図されている。これらの実施形態では、被験者の頭皮上の位置で収集されたデータは、頭皮電位分布を上皮質表面へマッピングできるように処理される。そのようなマッピングのための技術は、当分野において公知であり、文献においては皮質電位イメージング(CPI)または皮質源密度(CSD)と呼ばれている。本実施形態に適合するマッピング技術は、
Kayser et al.,2006,「Principal Components
Analysis of Laplacian Waveforms as a Generic Method for Identifying ERP Generator Patterns:I.Evaluation with Auditory Oddball Tasks,」Clinical Neurophysiology 117(2):348、Zhang et al.,2006,「A Cortical Potential Imaging Study from Simultaneous Extra−and Intra−cranial Electrical Recordings by Means of the Finite Element Method,」Neuroimage,31(4):1513、Perrin et al.,1987,「Scalp Current Density Mapping:Value and Estimation from Potential Data,」IEEE transactions on biomedical engineering,BME−34(4):283、Ferree et al.,2000,「Theory and Calculation of the Scalp Surface Laplacian,」www.csi.uoregon.edu/members/ferree/tutorials/SurfaceLaplacianおよびBabiloni et al.,1997,「High resolution EEG:a new model−dependent spatial deblurring
method using a realistically−shaped MR−constructed subject’s head model,」Electroencephalography and clinical Neurophysiology 102:69の中に見出される。
上記の実施形態のいずれかでは、空間的特性は、必要に応じて、離散的または連続的空間座標系を使用して提示することができる。座標系が不連続である場合、座標系は、典型的には測定デバイスの位置(例えば、頭皮上、上皮質表面上、膿皮質上または脳内深部の位置)に対応する。座標系が連続的である場合は、好ましくは、頭皮もしくは上皮質表面または一部がサンプリングされたそれらの変形の近似形状を記述する。サンプリングされた表面は、三次元空間内の1セットの点であり、該表面のトポロジーを記述するために十分である点クラウド(point−cloud)によって提示することができる。連続的座標系については、空間的特性は、測定デバイスの位置間の区分的内層法によって得ることができる。区分的内層法は、好ましくは表面上でスムーズな分析機能または1セットのスムーズな分析機能を利用する。
本発明の一部の実施形態では、非空間的特性が、各空間的特性について別個に入手される。例えば、非空間的特性は、各チャネルについて別個に得ることができる。空間的特性が連続的である場合、非空間的特性は、好ましくは連続体上の1セットの離散点について得られる。典型的には、このセットの離散点には、少なくとも区分的内層法のために使用される点が含まれるが、さらにまた表面のサンプリングされたバージョン全体にわたる他の点も含まれる可能性がある。
非空間的特性には、好ましくは、取得時間に従ってデータをセグメント化することによって得られる時間的特性が含まれる。セグメント化は、各々が、各データセグメントがその全体にわたって取得されるエポック(epoch)に対応する複数のデータセグメントを生じさせる。エポックの長さは、神経生理学的データのタイプを特徴付ける時間分解能に左右される。例えば、EEGまたはMEGデータについては、典型的なエポックの長さは、ほぼ1,000msである。
その他の非空間的特性は、データ分解技術によって得ることができる。本発明の様々な典型的な実施形態では、分解は、各空間的特性の各データセグメントに対して別個に実施される。従って、特定データチャネルに対しては、分解が、例えばこの特定チャネルの各データセグメントへ(例えば、第1エポックに対応するセグメントへ最初に、その後第2エポックに対応するセグメントへなどのように)連続的に適用される。そのような連続的分解は、他のチャネルに対して同様に実施される。
神経生理学的データは、データ内のピークのパターンを同定することによって、またはより好ましくは例えばウェーブレット(wavelet)分析であるがそれには限定されない波形分析によって分解することができる。本発明の一部の実施形態では、ピーク同定には、ピークの時空間的近傍の規定が付随する。近傍は、ピークが局在化される空間領域(二次元または三次元)および/またはその間にピークが発生する時間間隔であると定義することができる。好ましくは、空間領域および時間間隔の両方が、各ピークに対して時空間近傍を関連付けられるように規定される。そのような近傍を規定する利点は、それらが時間および/または空間にわたるデータの拡散構造に関連する情報を提供することである。近傍の(各寸法に関する)サイズは、ピークの特性に基づいて決定することができる。例えば、一部の実施形態では、近傍のサイズは、ピークの半値全幅(FWHM)と等しい。近傍についてのその他の定義は、本発明の範囲から除外されない。
波形分析では、好ましくは波が波形を共に作り上げる単一ピークの複数の重複するセットに分解されるようにフィルタリング(例えば、帯域通過フィルタリング)が付随する。場合により、フィルタ自体が重複していてもよい。
神経生理学的データがEEGデータを含む場合は、以下の周波数帯域の1つ以上をフィルタリング中に使用することができる:δ帯域(典型的には約1Hz〜約4Hz)、θ帯域(典型的には約3〜約8Hz)、α帯域(典型的には約7〜約13Hz)、低β帯域(典型的には約12〜約18Hz)、β帯域(典型的には約17〜約23Hz)および高β帯域(典型的には約22〜約30Hz)。例えばγ帯域(典型的には約30〜約80Hz)などであるがそれには限定されないより高周波数帯域も企図されている。
波形分析後には、好ましくは、例えば時間(潜時)、周波数および場合により振幅などであるがそれらには限定されない波形特性が抽出される。これらの波形特性は、好ましくは離散値として入手され、それによりその成分が個別波形特性であるベクトルが形成される。離散値の使用は、その後の分析のためのデータ量を減少させるので有益である。例えば統計的正規化(例えば、標準スコアによって、または任意の統計学的モーメントを使用することによって)などであるがそれには限定されない他の低減技術も企図されている。正規化は、雑音を低減するために使用することができ、本方法が1人を超える被験者から取得されたデータに適用される場合、および/または測定デバイスと脳との間のインターフェースが異なる患者間で、または単一被験者についての異なる位置間で変動する場合にも有用である。例えば、統計学的正規化は、EEG電極間で不均一なインピーダンス・マッチングが存在する場合に有用なことがある。
特性の抽出は、その各々がベクトルの成分として空間的特性(例えば、各電極または他の測定デバイスの位置)、ならびにセグメント化および分解から得られるような1つ以上の非空間的特性を含む複数のベクトルを生じさせる。これらのベクトルの各々はデータの1つの特徴であり、それらの特性が何らかの関連(例えば、2つのベクトルが、1つのベクトルに関連する位置から他方のベクトルに関連する位置への情報の流れに一致する因果関係)に従う任意の対のベクトルは、2つの活動関連特徴を構成する。
従って抽出されたベクトルは、多次元空間を規定する。例えば、成分が、位置、時間および周波数を含む場合、ベクトルは三次元空間を規定し、成分が位置、時間、周波数および振幅を含む場合は、ベクトルは四次元空間を規定する。より多数の寸法は、本発明の範囲から除外されない。
分析が1人の被験者の神経生理学的データに適用される場合、データの各特徴はベクトルによって規定される多次元空間内の1つの点として表され、各セットの活動関連特徴は、該セットの任意の点が該セット内の1つ以上の他の点から時間軸に沿った特定距離(以下では「潜時差」とも呼ぶ)内にある1セットの点として表される。
分析が1つの群または部分群の被験者から取得された神経生理学的データに適用されると、該データの特徴は、好ましくは上述した多次元空間内の1クラスタの離散点として提示される。1クラスタの点は、分析が単一被験者の神経生理学的データに適用される場合にも規定することができる。これらの実施形態では、波形特性のベクトルが、被験者に提示された別個の刺激に対して別個に抽出され、それにより多次元空間内の点のクラスタが規定されるが、このとき該クラスタ内の各点は異なる時点に適用された刺激への応答に対応する。別個の刺激は、場合により好ましくは同一もしくは類似の刺激の1セットの反復提示、または必ずしも同一ではないが同じタイプである(例えば、1セットの必ずしも同一ではない視覚刺激)1セットの刺激を形成する。異なる時点での異なる刺激の使用は、本発明の範囲から除外されない。
上記の提示の組み合わせも企図されるが、このときデータは複数の被験者から収集され、該被験者の1人以上について、波形特性のベクトルが時間の離れた刺激(つまり、別個の時点に適用される刺激)について別個に抽出される。これらの実施形態では、1クラスタは、異なる被験者に対応する点ならびに別個の刺激への応答に対応する点を含有する。例えば、データが被験者10人から収集され、このとき各被験者にデータ取得中に5回の刺激が提示される場合について考察されたい。この場合では、データセットは、各々が1回の刺激への1人の被験者の応答に対応する5×10=50データセグメントを含んでいる。従って、多次元空間内の1クラスタ内では、各々がデータセグメントの1つから抽出された特性の1つのベクトルを提示する5×10点までを含むことができる。
複数の被験者の特性および/または単一被験者に提示された刺激への複数の応答の特性のいずれを表すとしても、所定の空間軸に沿った1クラスタの幅は、対応するデータ特性(時間、周波数など)に対する活動窓のサイズを記述する。代表的な実施例として、時間軸に沿った1クラスタの幅について考察されたい。そのような幅は、場合により好ましくは、本方法によってその間に事象が多数の被験者にわたって発生する潜時範囲を記述するために使用される。同様に、周波数軸に沿った1クラスタの幅は、多数の被験者にわたって発生する1つの事象の発生を示す周波数帯域を記述するために使用できる。位置軸(例えば、2D位置マップに対応するデータのための2つの位置軸、および3D位置マップに対応するデータのための3つの位置軸)に沿った1クラスタの幅を使用すると、そこで事象が複数の被験者にわたって発生する1セットの隣接電極を規定することができ、振幅軸に沿った1クラスタの幅を使用すると、多数の被験者にわたる事象の発生を示す振幅範囲を規定することができる。
1つの群または部分群の被験者については、活動関連特徴は、以下のように同定することができる。時間軸に沿った単一クラスタは、好ましくは上述のようにクラスタの幅によって規定される時間窓内で発生する単一事象を提示すると同定される。この窓は、場合により好ましくは、一部の異常点を排除するために狭められ、それにより各データ特性を特徴付ける潜時範囲が再規定される。時間軸に沿った、1連続内の各クラスタが特定の制約内で(時間軸に沿った)幅を有する連続するクラスタに対して、パターン抽出手順は、好ましくはそれらの間で結合性関係に従うそれらのクラスタを同定するために実施される。大まかに言って、そのような手順は、その中にクラスタ間の十分数の点間の結合性関係が存在する対のクラスタをクラスタ全体にわたって探索することができる。
パターン抽出手順は、制限なく、密度に基づくクラスタリング手順、最隣接に基づくクラスタリング手順などを含む任意のタイプのクラスタリング手順を含むことができる。本実施形態に適合する密度に基づくクラスタリング手順は、Cao et al.,2006,「Density−based clustering over an evolving data stream with noise,」Proceedings of the Sixth SIAM International Conference on Data Mining.Bethesda,Maryland,p.328−39に記載されている。本実施形態に適合する最隣接クラスタリング手順は、[R.O.Duda,P.E.Hart and D.G.Stork,「Pattern Classification」(2nd Edition),A Wiley−Interscience Publication,2000]に記載されている。最隣接クラスタリング手順が使用される場合は、クラスタが同定され、その後に集められてクラスタ間の時空間的距離に基づいてメタクラスタが形成される。このため、メタクラスタは、同定されたクラスタのクラスタである。これらの実施形態では、メタクラスタはデータの特徴であり、活動関連特徴は、メタクラスタ間で同定される。
図3Aは、本発明の一部の実施形態による、1群の被験者についての活動関連特徴を同定するための手順を記載しているフローチャート図である。この手順は、40で始まり、孤立クラスタが同定される41へ続く。本実施形態は、クラスタが多次元空間の特定投影上で同定される部分空間クラスタリング、およびクラスタが全多次元空間上で同定される全空間クラスタリングの両方を企図している。部分空間クラスタリングは、計算時間の観点から好ましく、全空間クラスタリングは特徴一般性の観点から好ましい。
部分空間クラスタリングの1つの代表的な実施例には、各既定周波数帯域および各所定空間的位置に対して別個に、時間軸に沿ったクラスタの同定が含まれる。同定は、場合により好ましくは、固定および既定窓幅を備える移動時間窓を特徴付ける。EEGデータに対して典型的な窓幅は、δ帯域に対して約200msである。クラスタ内の点の最小数に関する制限は、分析から小クラスタを排除しないように場合により適用される。典型的には、X未満の点(このときXは群内の被験者の約80%と等しい)を備えるクラスタは除外される。点の最小数は、本手順中に更新することができる。初期セットのクラスタが規定されると、時間窓の幅は、好ましくは低下させられる。
部分空間クラスタリングのまた別の代表的な実施例には、好ましくは各既定の周波数帯域に対して別個に、空間−時間の部分空間にわたるクラスタの同定が含まれる。本実施形態では、抽出された空間的特性は、連続空間的座標系を使用して、例えば上記でさらに詳述したように測定デバイスの位置間の区分的内層法によって提示される。従って、各クラスタは時間窓ならびに空間的領域と関連しているが、このとき空間的領域は、測定デバイスの位置でセンタリングされることがある、またはセンタリングされないことがある。一部の実施形態では、少なくとも1つのクラスタは、測定デバイスの位置以外の位置でセンタリングされる空間的領域と関連している。空間−時間の部分空間は、典型的には1つの時間的寸法および2つの空間的寸法を備える三次元であり、このとき各クラスタは、例えば頭皮表面の形状、上皮質表面の形状などと対応する可能性がある表面の時間窓および二次元空間領域と関連している。さらに企図されるのは、四次元の空間−時間空間であり、このとき各クラスタは、少なくとも一部には脳内に対応する容積にわたる時間窓および三次元空間領域と関連している。
部分空間クラスタリングのまた別の代表的な実施例には、周波数−空間−時間の部分空間にわたるクラスタの同定が含まれる。この実施形態では、各既定の周波数帯域に対して別個にクラスタを探索する代わりに、本方法は、既定ではない周波数でもクラスタの同定を可能にする。従って、周波数は、部分空間にわたる連続座標であると考えられる。空間−時間の部分空間の実施形態と同様に、抽出された空間的特性は、連続空間座標系を使用して提示される。従って、各クラスタは、時間窓、空間領域および周波数帯域と関連している。空間領域は、上記でさらに詳述したように、二次元または三次元であってよい。一部の実施形態では、少なくとも1つのクラスタは、測定デバイスの位置以外の位置でセンタリングされる空間領域と関連しており、少なくとも1つのクラスタには、δ、θ、α、低β、β、高βおよびγ帯域のうちの2つ以上の周波数を含む周波数帯域と関連している。例えば、1つのクラスタは、δ帯域の一部およびθ帯域の一部、またはθ帯域の一部およびα帯域の一部、またはα帯域の一部および低β帯域の一部などにわたる周波数帯域と関連する可能性がある。
この手順は、場合により好ましくは、1対のクラスタが選択される42へ続く。この手順は、場合により好ましくは、選択された対において提示される各被験者に対して、対応する事象間の潜時差(ゼロ差を含む)が場合により計算される43へ続く。この手順は、計算された潜時差に、既定閾値範囲内にある潜時差が受け入れられる間に既定閾値範囲(例えば、0〜30ms)外である潜時差が拒絶されるような計算された潜時差に制約が適用される44に続く。この手順は、この手順が受け入れた差の数が十分に大きい(即ち、一部の数の上方、例えば群内の被験者の80%より上方)かどうかを決定する決定45に続く。受け入れた差の数が十分に大きくはない場合、この手順は、この手順が該対のクラスタを受け入れ、それを1対の活動関連特徴であると同定する46へ進行する。受け入れた差の数が十分に大きい場合は、この手順は、この手順がこの対を拒絶する47へ進行する。本実施形態の手順は、46または47から42へ一巡して元に戻る。
データ特徴間の関係の決定および活動関連特徴の同定についての具体的実施例は、図3Bに示した。この例示は、時間および位置を含む二次元空間上での投影によって提供されている。本実施例は、空間的特性が離散性である実施形態に対してであり、このときクラスタの同定は、各既定周波数帯域および各既定空間位置に対して別個に時間軸に沿っている。当業者であれば、この説明を他の寸法、例えば周波数、振幅などに対して適応させる方法を知っている。図3Bは、データが、1〜6と列挙されている被験者6例から(または、異なる時点で6つの刺激を提示する単一被験者から)収集されるシナリオを示している。明確に提示するために、異なるデータセグメントデータ(例えば、異なる被験者から、または同一被験者からであるが異なる時点の刺激について収集されたデータ)は、「データセグメント番号」と表示された垂直軸に沿って分離される。各セグメントに対して、白丸は「A」と表示された1つの特定位置(測定デバイス、例えばEEG電極によって)で記録された事象を表し、黒丸は「B」と表示された別の特定位置で記録された事象を表す。
時間軸は、例えば、被験者に刺激が提示された時点から測定される各事象の潜時を表す。事象の潜時は、本明細書ではt(i) Aおよびt(i) B(式中、iはセグメント指数を表し(i=1,...,6)、AおよびBは位置を表す)と表示する。明確に提示するために、潜時は図3Bに示していないが、当業者であれば、本明細書に記載した詳細を提供されると図面に潜時を加える方法を承知している。
位置AおよびBの各々について、時間窓が規定される。これらの時間窓は、ΔtAおよびΔtBと表示され、時間軸に沿ったクラスタの幅に対応し、それらは要望通りに同一であっても相互に異なっていてもよい。さらに、2つの単一事象間の潜時差窓ΔtABも規定される。この窓は、クラスタ間(例えば、それらの中心間)の時間軸に沿った分離に対応する。窓ΔtABは、破線セグメントおよび実線セグメントを有する間隔として図示される。破線セグメントの長さは窓の下限を表し、間隔の全長は窓の上限を表す。ΔtA、ΔtBおよびΔtABは、AおよびBで記録された事象の対を活動関連特徴として受け入れるかどうかを決定するための基準の一部である。
時間窓Δt
AおよびΔt
Bは、好ましくは群内の単一事象を同定するために使用される。図示したように、セグメント番号1、2、4および5の各々について、どちらの事象も各時間窓の範囲内にまれる(数学的には、これは次のように記述できる:t
(i) A∈Δt
A、t
(i) B∈Δt
A、i=1,2,4,5)。他方、セグメント番号3については、Aで記録された事象はΔt
Aの範囲内に含まれないが
、Bで記録された事象はΔt
Bの範囲内に含まれ(t
(3) B∈Δt
B)、そしてセグメント番号6については、Aで記録された事象はΔt
Aの範囲内に含まれるが(t
(6) A∈Δt
A)、Bで記録された事象はΔt
Bの範囲内に含まれない
。従って、位置Aについては、単一事象はセグメント番号1、2、4、5および6から得られるデータポイントのクラスタであると規定され、そして位置Bについては単一事象はセグメント番号1〜5から得られるデータポイントのクラスタであると規定される。
潜時差窓Δt
ABは、好ましくは活動関連特徴を同定するために使用される。本発明の様々な典型的な実施形態では、各セグメントの潜時差Δt
(i) AB(i=1,2,...,5)が潜時差窓Δt
ABと比較される。本発明の様々な典型的な実施形態では、1対の特徴は:(i)該対内の特徴の各々が単一事象に属する、および(ii)対応する潜時差がΔtABの範囲内に含まれる場合は、活動関連対として受け入れられる。図3Bの例示では、セグメント番号4および5から記録された対の各々が1対の活動関連特徴として受け入れられるが、それはそれらのセグメント各々について両方の基準が満たされるからである(Δt
(i) AB∈Δt
AB、Δt
(i) A∈Δt
A、Δt
(i) B∈Δt
A、i=4,5)。セグメント番号1〜3から記録された対は潜時差の基準に合格しないが、それは、Δt
(1) AB、Δt
(2) AB、およびΔt
(3) ABの各々がΔt
ABの範囲内に含まれないからである
。このため、これらの対は拒絶される。本実施形態では、セグメント番号6から得られた対が潜時差の基準に合格する場合でさえ、この対は時間窓基準を合格できないので拒絶されることに注目されたい
。
本発明の様々な典型的な実施形態では、この手順は2つ以上の異なる位置で発生するデータの同時発生事象に対応する対も受け入れる。そのような事象は(位置間で情報の流れがないために)相互に関する因果関係はないが、対応する特徴が本方法によって表示される。任意の特定の理論に拘束されなくても、本発明者らは、データの同時発生事象が、本方法によっては同定されないがまた別の事象と因果関係があると考察している。例えば、同一の物理的刺激は、脳内の2つ以上の位置における同時発生事象を発生させることができる。
46で受け入れられる同定された対の活動関連特徴は、特徴空間内で複雑なパターンを構築するための基本構築ブロックとして使用できる基本パターンとして取り扱うことができる。本発明の様々な典型的な実施形態では、本方法は48へ進行し、そこでは2つ以上の対の活動関連特徴が結合されて(例えば、連結されて)2つを超える特徴のパターンが形成される。この連結の基準は、ベクトルによって明示される該対の特性間の類似性であってよい。例えば、一部の実施形態では、2対の活動関連特徴は、それらが共通の特徴を有する場合は連結される。象徴的には、これは次のように公式化することができる:対「A−B」および「B−C」は共通特徴として「B」を有するので、連結すると複合パターンA−B−Cを形成する。
好ましくは、特徴の連結セットは閾値化手順にかけられ、例えば、群内のX%以上の被験者が該連結セット内に含まれる場合は該セットは受け入れられるが、群内のX%未満の被験者しか該連結セット内に含まれない場合は該セットは拒絶される。閾値Xについての典型的な数値は、約80である。
従って3つ以上の特徴の各パターンは、1群のクラスタの集団に対応するが、このとき該群の任意のクラスタは該群内の1つ以上の他のクラスタから特定潜時差の範囲内にあるように規定される。全ての対のクラスタが分析されると、本手順は、終端49へ進んで終了する。
再び図1を参照すると、13では脳ネットワーク活動(BNA)パターンが構築される。
BNAパターンの概念は、本発明の一部の実施形態によると、神経生理学的データから抽出できるBNAパターン20の代表的な実施例である図2を参照するとより明確に理解することができる。BNAパターン20は、各々が活動関連特徴の1つを提示している複数のノード22を有する。例えば、1つのノードは、場合により特定範囲の振幅とともに、特定の位置および特定の時間窓もしくは潜時範囲内で特定周波数帯域(場合により2つ以上の特定周波数帯域)を提示することができる。
ノード22の一部は、各々が各エッジの末端でノード間の因果関係を提示しているエッジ24によって接続される。従って、BNAパターンは、ノードおよびエッジを有するグラフとして提示される。本発明の様々な典型的な実施形態では、BNAパターンは複数の離散性ノードを含むが、このときデータの特徴に関連する情報はノードによってのみ提示され、特徴間の関係に関連する情報はエッジによってのみ提示される。
図2は、脳の様々な葉(前頭葉28、中心葉30、頭頂葉32、後頭葉34および側頭葉36)へノードの位置を関連付けることを可能にする、頭皮のテンプレート26内にBNAパターン20を示している。BNAパターン内のノードは、それらの様々な特性によって標識することができる。所望であれば、カラーコード化または形状コード化による視覚化技術も使用できる。例えば、特定の周波数帯域に対応するノードは、1つのカラーまたは形状を使用して表示することができ、また別の周波数帯域に対応するノードはまた別のカラーもしくは形状を使用して表示することができる。図2の代表的な実施例では、2つのカラーが提示されている。赤色ノードはδ波に対応し、緑色ノードはθ波に対応する。
BNAパターン20は、単一被験者または1つの群もしくは部分群の被験者の脳活動を記述することができる。単一被験者の脳活動を記述するBNAパターンを本明細書では被験者特異的BNAパターンと呼び、1つの群または部分群の被験者の脳活動を記述するBNAパターンを本明細書では群BNAパターンと呼ぶ。
BNAパターン20が被験者特異的BNAパターンである場合は、各被験者のデータから抽出されたベクトルだけを使用してBNAパターンが構築される。従って、各ノードは多次元空間内の点に対応するので、脳内の活動事象を提示する。BNAパターン20が群BNAパターンである場合は、一部のノードは多次元空間内の点のクラスタに対応する可能性があるので、1つの群または部分群の被験者内で優勢である活動事象を提示する。群BNAパターンの統計学的性質に起因して、群BNAパターン内のノードの数(本明細書では「オーダー」と呼ばれる)および/またはエッジの数(本明細書では「サイズ」と呼ばれる)は典型的には被験者特異的BNAパターンのオーダーおよび/またはサイズより大きいが、必ずしも大きくはない。
群BNAパターンを構築するための単純な例として、図3Bに例示した単純化シナリオが考察されるが、このとき「セグメント」は1つの群または部分群の被験者内の異なる被験者に対応する。群データには、本実施例では、位置AおよびBと関連する2つの単一事象が含まれる。これらの事象は各々、多次元空間内で1つのクラスタを形成する。本発明の様々な典型的な実施形態では、本明細書ではクラスタAおよびBと呼ばれるクラスタの各々が、群BNA内の1つのノードによって提示される。2つのクラスタAおよびBは、これらのクラスタ内にそのような関係についての基準を満たす幾つかの個別点が存在するので活動関連特徴であると同定される(本実施例では被験者番号4および5の対)。従って、本発明の様々な典型的な実施形態では、クラスタAおよびBに対応するノードは、1つのエッジによって接続される。結果として生じる群BNAパターンの単純化された例は、図3Cに例示した。
被験者特異的BNAパターンは、場合により好ましくは、各被験者から収集されたデータの特徴および特徴間の関係を本発明の一部の実施形態では群データを含む参照データの特徴および特徴間の関係と比較することによって構築される。これらの実施形態では、被験者のデータと関連する点および点間の関係は、群のデータと関連するクラスタおよびクラスタ間の関係と比較される。例えば、図3Bに例示した、「セグメント」が1つの群または部分群の被験者内の異なる被験者に対応する単純化されたシナリオについて考察されたい。クラスタAは被験者番号3からの貢献を含まず、クラスタBは被験者番号6からの貢献を含まないが、それはこれらの被験者については各点が時間窓基準を満たさないからである。従って、本発明の様々な典型的な実施形態では、被験者特異的BNAパターンが被験者番号3について構築された場合は位置Aに対応するノードを含んでおらず、被験者特異的BNAパターンが被験者番号6について構築された場合は位置Bに対応するノードを含んでいない。他方、被験者番号1、2、4および5のいずれかについて構築された被験者特異的BNAパターン内では、位置AおよびBの両方がノードとして提示される。
各点が1対の活動関連特徴として受け入れられる被験者(本実施例における被験者番号4および5)については、対応するノードは、好ましくはエッジによって接続される。そのような場合についての被験者特異的BNAパターンの単純化された例示は、図3Dに示す。
ノードが2つだけのこの単純化された実施例については、図3Dの被験者特異的BNAは、図3Cの群BNAに類似である。より多数のノードについては、上述した群BNAパターンのオーダーおよび/またはサイズは、典型的には被験者特異的BNAパターンのオーダーおよび/またはサイズより大きい。被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの追加の差は、以下でより詳細に記載するように、エッジによって提示される活動関連特徴間の関係度によって明らかにすることができる。
各点が拒絶された被験者(本実施例における被験者番号1および2)については、対応するノードは、好ましくはエッジによって接続されない。そのような場合についての被験者特異的BNAパターンの単純化された例示は、図3Eに示す。
しかし、被験者特異的BNAパターンを構築するための上記の技術は特定被験者のデータと1群の被験者のデータとの関係によって記載されるが、一部の実施形態では被験者特異的BNAパターンは単一被験者のデータのみから構築することができるので、これは必ずしもそうである必要はないことを理解されたい。これらの実施形態では、波形特性のベクトルは、上記で詳細に記載したように、クラスタ内の各点が異なる時点に適用された刺激への応答に対応する点のクラスタを規定するために、時間の離れた刺激に対して別個に抽出される。これらの実施形態における被験者特異的BNAパターンを構築するための手順は、好ましくは上述した群BNAパターンを構築するための手順と同一である。しかし全てのデータが単一被験者から収集されるので、該BNAパターンは被験者特異的である。
従って、本実施形態は、2つのタイプ、即ち第一タイプとしては、特定被験者と1つの群または部分群の被験者との関連を記述する、特定被験者についての1群のBNAパターンの発現である第1タイプ、および第二タイプとしては、被験者を1つの群または部分群の被験者と関連付けずに特定被験者のデータを記述する第2タイプの被験者特異的BNAパターンを企図している。前者のタイプのBNAパターンを本明細書では関連性被験者特異的BNAパターンと呼び、後者のタイプのBNAパターンを本明細書では非関連性被験者特異的BNAパターンと呼ぶ。
非関連性被験者特異的BNAパターンについては、分析は、好ましくは単一刺激の反復提示のセットを対象に、つまり1セットの単一試行を対象に、場合により好ましくはデータを平均化してそれをデータの単一ベクトルに変換する前に実施される。他方、群BNAパターンについては、該群の各被験者のデータは、場合により好ましくは平均化され、その後にデータのベクトルに変換される。
非関連性被験者特異的BNAパターンは一般に、特定患者にとって(被験者特異的BNAパターンが構築された時点に)固有であるが、被験者は異なる群に異なる関連を有する可能性があるので、同一患者を1つを超える関連性被験者特異的BNAパターンによって特徴付けることができることに留意されたい。例えば、1群の健常被験者および全員が同一脳障害に罹患している1群の非健常被験者について考察されたい。さらに、それらの群の一方に属する可能性がある、または属さない可能性がある被験者Yについて考察されたい。本実施形態は、被験者Yについての幾つかの被験者特異的BNAパターンを企図している。第1のBNAパターンは、被験者Yだけから収集されたデータから構築されるので、上述したようなこの患者に一般に固有である非関連性被験者特異的BNAパターンである。第2のBNAパターンは、被験者Yのデータと健常者群のデータとの関連に関して構築された関連性被験者特異的BNAパターンである。第3のBNAパターンは、被験者Yのデータと非健常者群のデータとの関連に関して構築された関連性被験者特異的BNAパターンである。これらのBNAパターン各々は、被験者Yの状態を評価するために有用である。例えば、第1のBNAパターンは、該BNAパターンを以前に構築された非関連性被験者特異的BNAパターンと比較することを可能にするので、該被験者の脳機能における変化を経時的にモニタリングする(例えば、脳可塑性などをモニタリングする)ために有用な可能性がある。第2および第3のBNAパターンは、被験者Yと各群との関連のレベルを決定し、それによって該被験者についての脳障害の尤度を決定するために有用な可能性がある。
さらに、被験者特異的BNAパターンを構築するために使用される参照データが同一被験者から以前に取得された履歴データに対応する実施形態も企図されている。これらの実施形態は、BNAパターンが1群の被験者の代わりに同一被験者の履歴に関連することを除いて、関連性被験者特異的BNAパターンに関して上述した実施形態と類似である。
さらに企図されるのは、参照データがしばらく後の時点に同一被験者から取得されたデータに対応する実施形態である。これらの実施形態は、早期の時点に取得されたデータが後期の時点に取得されたデータに展開するかどうかを調査することを許容する。特定および非限定的実施例は、同一患者に対する数回、例えばN回の治療セッションの場合である。初期の数回の治療セッション(例えば、第1回セッションから第k1<Nセッション)中に取得されたデータは、中間セッション(例えば、第k2>k1セッションから第k3>k2セッション)に対応する第1の関連性被験者特異的BNAパターンを構築するための参照データとして使用することができ、最終の数回の治療セッション(例えば、第k4セッションから第Nセッション)において取得されたデータは、上述した中間セッションに対応する第2の関連性被験者特異的BNAパターンを構築するための参照データとして使用でき、このとき1<k1<k2<k3<k4である。同一被験者についてのそのような2つの関連した被験者特異的BNAパターンを使用すると、治療の初期から治療の後期へのデータ展開を決定することができる。
本方法は、14へ進行し、そこで結合性重みが該BNAパターン内の各対のノード(または、同等にBNA内の各エッジ)に指定され、それによって重み付きBNAパターンが提供される。結合性重みは、図2、3Cおよび3Dにおいて、2つのノードを接続するエッジの厚さによって提示される。例えば、より厚いエッジはより多い重みに対応し、より薄いエッジはより少ない重みに対応する。
本発明の様々な典型的な実施形態によると、結合性重みは、以下のクラスタ特性:(i)対応する対のクラスタ内に関係する被験者の数であって、より多い重みがより多数の被験者に指定される被験者数、(ii)該対の各クラスタ内の被験者数間の差(該対の「差のレベル」と呼ばれる)であって、より多い重みがより低い差のレベルに指定される被験者数の差、(iii)該対応するクラスタ各々に関連する時間窓の幅(例えば、図3AにおけるΔtAおよびΔtBを参照)であって、より多い重みがより狭い窓に指定される時間窓の幅、(iv)2つのクラスタ間の潜時差(図3AにおけるΔtABを参照)であって、より多い重みはより狭い窓に指定される潜時差、(v)該対応するクラスタと関連する信号の振幅、(v)該対応するクラスタと関連する信号の振幅、および(vii)該クラスタを規定する空間窓の幅(座標系が連続性である実施形態において)のうちの少なくとも1つのクラスタ特性に基づいて計算される重み指数WIを含んでいる。特性(i)および(ii)を除く任意のクラスタ特性については、好ましくは、例えば平均値、中央値、上限値、下限値およびクラスタ全体にわたる分散値であるがそれらに限定されない該特性の1つ以上の統計的実測値が使用される。
群BNAパターンまたは非関連性被験者特異的BNAパターンについては、結合性重みは、好ましくはクラスタ特性に基づいて計算される重み指数WIと等しい。
関連性被験者特異的BNAパターンについては、1対のノードの結合性重みは、好ましくは重み指数WIならびにSIと表示される1つ以上の被験者特異的および対特異的量に基づいて指定される。そのような量の代表的な例を以下に提供する。
本発明の様々な典型的な実施形態では、関連性被験者特異的BNAパターンの1対のノードには、WIをSIと結合することによって計算される結合性重みが指定される。例えば、関連性被験者特異的BNAパターンにおける1対の結合性重みは、WI−SIによって得ることができる。1つを超える量(例えばN個の量)が所定の対のノードに対して計算される場合は、該対には1つを超える結合性重み、例えば、WI−SI1、WI−SI2、...、WI−SIN(式中、SI1、SI2、...、SINは、N個の計算量である)を指定することができる。または、もしくは追加して、所定の対の全結合性重みは、例えば平均化する、乗算するなどによって結合することができる。
量SIは、例えば、被験者特異的対と対応するクラスタとの間の関係を特徴付ける統計的スコアであってよい。統計的スコアは、制限なく、平均値からの偏差、絶対偏差、標準スコアなどを含む任意のタイプのスコアであってよい。統計的スコアがそれに対して計算される関連は、制限なく、潜時、潜時差、振幅、周波数などを含む重み指数WIを計算するために使用される1つ以上の特徴に関係する可能性がある。
潜時または潜時差に関係する統計的スコアは、本明細書では同期化スコアと呼び、SIsと表示する。従って、本発明の一部の実施形態による同期化スコアは:(i)対応するクラスタの群平均潜時に比較した該被験者について得られた点の潜時(例えば、上記の実施例におけるt(i) Aおよびt(i) B)、および/または(ii)2つの対応するクラスタ間の群平均潜時差と比較した該被験者から得られた2つの点間の潜時差(例えば、Δt(i) AB)についての統計的スコアを計算することによって得ることができる。
振幅に関係する統計的スコアは、本明細書では振幅スコアと呼び、SIaと表示する。従って、本発明の一部の実施形態による振幅スコアは、該被験者について得られた振幅についての統計的スコアを該対応するクラスタの群平均振幅と比較して計算することによって得られる。
周波数に関係する統計的スコアは、本明細書では周波数スコアと呼び、SIfと表示する。従って、本発明の一部の実施形態による周波数スコアは、該被験者について得られた周波数についての統計的スコアを該対応するクラスタの群平均周波数と比較して計算することによって得られる。
位置に関係する統計的スコアは、本明細書では位置スコアと呼び、SIlと表示する。これらの実施形態は、上記でさらに詳細に説明したように、連続座標系が使用される実施形態において特に有用である。従って、本発明の一部の実施形態による位置スコアは、該被験者について得られた位置についての統計的スコアを該対応するクラスタの群平均位置と比較して計算することによって得られる。
他の特性に関係する統計的スコアの計算は、本発明の範囲から除外されない。
以下は、本発明の一部の実施形態によって量SIを計算するための技術の説明である。
SIが同期化スコアSIsである場合は、計算は場合により好ましくは、そのようなものが存在する場合は電極対によって設定される時空間制約に適合する離散時点(Time
subj)に基づいている。これらの実施形態では、これらの点の時間は、各領域が領域同期化スコアSIs
rを提供できるために、群パターンに関係する離散点の時間(Time
pat)の平均値および標準偏差と比較することができる。次に同期化スコアSIsは、例えば、該対内の2つの領域の領域同期化スコアを平均化することによって計算できる。公式によると、この手順は以下:
(数1)
のように記述することができる。
振幅スコアSIaは、場合により好ましくは、類似の様式で計算される。最初に、個別被験者の離散点の振幅(Amp
subj)は、各領域が領域振幅スコアSIa
rを提供できるために、群パターンに関係する離散点の振幅(Amp
pat)の平均値および標準偏差と比較される。次に振幅スコアは、例えば、該対内の2つの領域の領域振幅スコアを平均化することによって計算できる。
(数2)
次に1つ以上のBNAパターン類似性Sは、以下:
(数3)
のようにBNAパターンのノード全体にわたる重み付き平均値として計算できる。
公式によると、追加の類似性Scは、以下:
(数4)
(式中、SIc
iは、対iが被験者のデータ内に存在する場合は1に等しく、存在しない場合は0となる2進量である)のように計算できる。
本発明の一部の実施形態では、量SIは、記録された活動間の相関値を含んでいる。一部の実施形態では、相関値は該対と関連する2つの位置で特定被験者について記録された活動間の相関を説明し、そして一部の実施形態では、相関値は該対と関連する位置のいずれかで該特定の被験者について記録された活動と同一位置で記録された群活動との相関を記述する。一部の実施形態では、相関値は、活動間の因果関係を記述する。
相関値、例えば因果関係を計算するための手順は、当分野において公知である。本発明の一部の実施形態では、Granger理論[Granger C W J,1969,「Investigating Causal Relations By Econometric Models And Cross−Spectral Methods,」Econometrica,37(3):242]が使用されている。本実施形態に適合するその他の技術は、Durka et al.,2001,「Time−frequency microstructure of event−related electroencephalogram desynchronisation and synchronisation,」Medical & Biological Engineering & Computing,39:315、Smith Bassett et al.,2006,「Small−World Brain Networks」Neuroscientist,12:512、He et al.,2007,「Small−World Anatomical Networks in the Human Brain Revealed by Cortical Thickness from MRI,」Cerebral Cortex 17:2407およびDe Vico Fallani et al.,「Extracting Information from Cortical Connectivity Patterns Estimated from High Resolution EEG Recordings:A Theoretical Graph Approach,」Brain Topogr 19:125の中に見出され、それら全部の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
BNAパターンの全部にわたって指定された結合性重みは、連続性変量(例えば、連続性範囲を有する関数を使用する)または離散性変量(例えば、離散性範囲を有する関数を使用する、またはルックアップ・テーブルを使用する)として計算することができる。任意の場合に、結合性重みは、2つを超える可能性のある数値を有することができる。従って、本発明の様々な典型的な実施形態によると、重み付きBNAパターンは、各々に異なる結合性重みが指定されている、少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つのエッジを有する。
BNAパターンが構築されると、該BNAパターンは、例えばコンピュータモニタまたはプリンタなどのディスプレイ装置へ送信することができる。または、もしくは追加して、BNAパターンは、コンピュータ可読媒体へ送信することができる。
本方法は、15で終了する。
図4は、本発明の様々な典型的な実施形態による、被験者特異的BNAパターンを分析するのに適合する方法を説明するフローチャート図である。本方法は、50で始まり、被験者のBNAパターン、より好ましくは重み付きBNAパターンが、例えば、図1、2および3を参照して上記で説明した操作に従って得られる51へ続く。51で得られたBNAパターンは、以下ではBNAパターン20と呼ぶ。BNAパターン20は、例えばコンピュータモニタなどのディスプレイ装置上に表示する、必要に応じて印刷する、および/またはコンピュータ可読媒体に保存することができる。
本発明の様々な典型的な実施形態では、BNAパターン20は、該被験者のデータと事前注釈付きBNAパターンによって提示される群データとの間の関係に基づいて構築される関連性被験者特異的BNAパターンである。事前注釈付きBNAパターンは、場合により好ましくは、事前注釈付きBNAパターンのデータベース内の入力であってよく、その場合には本方法は好ましくは該データベースの各BNAパターンについての関連性被験者特異的BNAパターンを入手する。
用語「注釈付きBNAパターン」は、注釈情報と関連するBNAパターンを意味する。注釈情報は、該BNAパターンから別個に(例えば、コンピュータ可読媒体上の別個のファイル内に)保存することができる。好ましくは注釈情報は、全BNAパターンが特異的脳関連障害または状態と対応すると同定されている包括的注釈である。従って、例えば、注釈情報は、特異的障害または状態の存在、非存在またはレベルに関係する可能性がある。さらに企図されるのは、注釈情報が被験者に適用される治療に関連する特異的脳関連障害または状態に関係する実施形態である。例えば、BNAパターンは、治療済み脳関連障害に対応すると注釈が付けられることがある。そのようなBNAパターンは、用量、期間および治療後の経過時間を含む治療の特性と共に注釈が付けられることもある。BNAパターンは、場合により好ましくは未治療の脳関連障害に対応すると注釈が付けられることがある。
本明細書で使用する用語「治療」には、状態の進行を無効にする、実質的に阻害する、緩徐化または逆転させる、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に改善する、または状態の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。治療は、制限なく、薬理学的、外科的、放射線、リハビリテーションなどを含む侵襲性および非侵襲性の両方の任意のタイプのインターベンションを含むことができる。
または、もしくは追加して、BNAパターンは、特定群の個人(例えば、特定の性別、人種的起源、年齢群など)に対応すると同定することができ、このとき注釈情報はこの個人群の特性に関係する。本発明の一部の実施形態では、注釈情報は、局所的注釈を含むが、このとき該BNAパターン全体にわたる幾つかの位置でのノードが特異的障害、状態および/または群の指標であると同定される。
本方法は、BNAパターン20が事前注釈付きBNAパターンと比較される52へ進行する。幾つかの被験者特異的BNAパターンが同一被験者について得られる実施形態では、該被験者特異的BNAパターンの各々は好ましくは、対応する注釈が付けられたBNAパターンと比較される。本方法は、場合により好ましくは、相互に最良適合するBNAパターンの対を選択する。場合により、本方法は、1つのスコアを比較される各対のBNAパターンに指定することができる。例えば、そのようなスコアは、上記でさらに詳細に説明した1つ以上のBNAパターン類似性Sであってよい。従って、本発明の様々な典型的な実施形態では、52は、BNAパターン20と事前注釈付きBNAパターンとの類似性を記述する、少なくとも1つのBNAパターン類似性Sの計算を含んでいる。
本発明の様々な典型的な実施形態では、BNAパターン20は、異常であると注釈が付けられた少なくとも1つのBNAパターンおよび正常であると注釈が付けられた少なくとも1つのBNAパターンと比較される。異常であると注釈が付けられたBNAパターンは、脳関連障害または状態の存在、非存在またはレベルと関係する注釈情報と関連するBNAパターンである。正常であると注釈が付けられたBNAパターンは、正常脳機能を有すると同定された被験者、またはより好ましくは1群の被験者から抽出されたBNAパターンである。異常であると注釈が付けられたBNAパターンおよび正常であると注釈が付けられたBNAパターンとの比較は、各脳関連障害または状態によってBNAパターン20を分類するために有用である。そのような分類は、場合により好ましくは、被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性を使用して表現された尤度値によって提供される。
本実施形態によって被験者特異的BNAパターンを分類できる脳関連障害または状態の代表的な例には、制限なく、注意欠陥多動性障害(ADHD)、脳卒中、外傷性脳損傷、心的外傷後ストレス傷害(PTSD)、疼痛、てんかん、パーキンソン病、多発性硬化症、動揺、乱用、アルツハイマー病/アルツハイマー型認知症、不安、パニック、恐怖性障害、双極性障害、境界人格異常、行動制御問題、身体醜形障害、認知問題(例えば、軽度認識障害)、うつ病、解離障害、摂食障害、食欲障害、疲労、しゃっくり、インパルス制御問題、被刺激性、気分の問題、動作障害、強迫性障害、人格障害、統合失調症およびその他の精神障害、季節性情緒障害、性的障害、睡眠障害、構音障害、物質乱用、トゥーレット症候群、抜毛癖または暴力的/自己破壊的行動が含まれる。
事前注釈付きBNAパターンは、場合により好ましくは、正常脳機能を有する、または同一脳障害を有すると同定された1群の被験者を特徴付けるベースライン注釈付きBNAパターンであってよい。そのようなベースライン注釈付きBNAパターンは、場合によりオーダー(つまりBNAパターン内のノード数)および/またはサイズ(つまりBNAパターン内のエッジ数)に関してBNAパターン20より大きい。ベースラインBNAパターンの代表的な例およびそのようなベースラインBNAパターンを構築および注釈を付けるための技術については、以下の実施例の項で記載する。
BNAパターン間の比較は、本発明の一部の実施形態によると、好ましくは定量的である。これらの実施形態では、BNAパターン間の比較は、BNAパターン類似性を計算する工程を含んでいる。BNAパターン類似性は、場合により好ましくは、該BNAパターンの結合性重みの数値に基づいて計算される。例えば、BNAパターン類似性は、被験者特異的BNAパターン全体にわたって結合性重みを平均化する工程によって得ることができる。1つを超えるタイプの結合性重みがBNAパターン20内の各対のノードに対して指定される場合は、平均化する工程は、好ましくは各タイプの結合性重みについて別個にBNAパターン全体にわたって実施される。場合により好ましくは、1つ以上の平均値は、結合BNAパターン類似性を提供するために結合する(例えば、合計する、乗算する、平均化するなど)ことができる。または、平均値の代表値(例えば、最大値)は、BNAパターン類似性として規定できる。
BNAパターン類似性は、各群への被験者の構成員レベルを定量的に記述する分類スコアとして使用できる。この実施形態は、1つを超える被験者特異的BNAパターンが異なる群データを使用して同一被験者に対して構築される場合は特に有用であり、このとき分類スコアを使用して該被験者の構成員レベルを群の各々へ評価することができる。
類似性は、連続性または離散性変量として表現することができる。本発明の様々な典型的な実施形態では、類似性は、非2進数である。これを言い換えると、本方法は、2つのBNAパターンが類似であるか異なるかを決定することよりむしろ、これら2つのBNAパターンがどの程度に類似であるか、または異なるかを計算する。例えば、類似性は、0〜1(例えば、0は完全相違に対応し、1はBNAパターンとそれ自体の類似に対応する)などの非整数としてパーセンテージで表現することができる。
類似性を計算するための上記の手順は、被験者特異的BNAパターン20と異常であると注釈が付けられたBNAパターンとの間の比較、および被験者特異的BNAパターン20と正常であると注釈が付けられたBNAパターンのとの間の比較の両方のために実施できる。
53では、本方法は、BNAパターン20と注釈付きBNAパターンとの比較に応答性で、被験者の状態に関連する情報を抽出する。情報が抽出されると、この情報はコンピュータ可読媒体またはディスプレイ装置または印刷装置へ必要に応じて送信することができる。多数のタイプの情報は、本発明者らによって企図されている。そのようなタイプの代表的な例を以下でさらに詳細に説明する。
本方法は、54で終了する。
本発明の様々な典型的な実施形態では、抽出された情報は、被験者についての異常な脳機能の尤度に関係する。さらに、BNAパターンの比較は、場合により好ましくは、予測情報を抽出するために使用できる。例えば、BNAパターン20は、全員が類似のリハビリテーション歴を有する同一の異常な脳機能に苦しんでいる被験者群を特徴付けるベースライン注釈付きBNAパターンと比較することができるが、このとき該ベースライン注釈付きBNAパターンは、該リハビリテーション過程の開始時に取得された神経生理学的データから構築される。BNAパターン20とそのベースライン注釈付きBNAパターンとの類似性レベルは、特定の異常な脳機能および特定のリハビリテーション過程についての予測指標として使用できる。
異常な脳機能の尤度は、場合により好ましくは、少なくとも一部にはBNAパターン20と注釈付きBNAパターンとの類似性に基づいて脳障害指数を決定する工程によって抽出される。例えば、BNAパターン20とADHAに対応すると注釈が付けられたBNAパターンとの類似性が計算される場合は、この類似性を使用してADHD指数を計算することができる。脳障害指数は、類似性自体であってよい、または類似性に基づいて計算することができる。本発明の様々な典型的な実施形態では、脳障害指数は、BNAパターン20と異常であると注釈が付けられたBNAパターンとの類似性ならびにBNAパターン20と正常であると注釈が付けられたBNAパターンの類似性に基づいて計算される。例えば、前者の類似性をSabnormalおよび後者の類似性をSnormal(式中、SabnormalおよびSnormalはどちらも0〜1である)で表示すると、脳障害指数Idisorderは:
(数5)
Idisorder=(Sabnormal+(1−Snormal))/2
として計算できる。上記の式の変形は、本発明の範囲から除外されない。
ADHDの場合についての脳障害指数を決定するためのプロセスについての代表的な実施例は、EEGデータから構築されたBNAパターンを示している図5A〜Fに示す。図5A〜Fでは、赤色ノードはδ周波数帯域でのERPに対応し、緑色ノードはθ周波数帯域でのERPに対応し、黄色ノードはα周波数帯域でのERPに対応する。BNAパターンには、1つを超える周波数帯域でのERPが記録されている位置に対応するノードも含まれる。これらのノードは、混合カラーとして示されている。詳細には、緑色−赤色ノードはδおよびθ周波数帯域でのERPに対応し、黄色−緑色ノードはαおよびθ周波数帯域でのERPに対応する。
図5Aは正常であると注釈が付けられたベースラインBNAパターンを示し、図5DはADHDに対応すると注釈が付けられたベースラインBNAパターンを示している。これら2つのBNAパターンの各々は、各々正常およびADHDを有すると同定された成人被験者群から構築された。図5Aに示したように、正常脳機能についてのベースラインBNAパターンは、右半球での複数の前頭後頭位置で、主としてδ周波数帯域にあるERPを表すノード(赤色ノード)を有する。δノードの特有の時間窓は、約50msの幅を有する。δノードの特有の潜時は、平均すると、約90〜110msおよび約270〜330msである。図5Dに示したように、ADHDについてのベースラインBNAパターンは、複数の前頭中心位置で、主としてθおよびα周波数帯域にあるERPを表すノード(緑色および黄色ノード)を有する。ADHDについてのBNAパターンは、中心−頭頂位置におけるノードも含むことができる。θおよびαノードの特有の時間窓ΔtAは、約100ms〜約200msである。
図5Bおよび5Eは、正常およびADHDベースライン群BNAパターン各々との比較に基づいて構築された関連性被験者特異的BNAパターンを示している。上記で記載したように計算した類似性値は、Snormal=0.76(図5B)およびSADHD=0.47(図5E)である。従って、本被験者のBNAパターンは、ADHDベースラインBNAパターンよりも正常ベースラインBNAパターンにより類似している。本被験者のADHD指数は、0.47、またはより好ましくは(0.47+(1−0.76))/2=0.355に設定することができる。
図5Cおよび5Fは、被験者特異的BNAパターン(また別の単一被験者について構築された)と正常およびADHDベースラインBNAパターン各々との比較の結果を示している。上記で記載したように計算した類似性値は、Snormal=0.32(図5C)およびSADHD=0.68(図5F)である。従ってこの被験者のBNAパターンは、正常ベースラインBNAパターンよりADHDベースラインBNAパターンにより類似しており、この被験者のADHD指数は、0.68、またはより好ましくは(0.68+(1−0.32))/2=0.68に設定することができる。
脳障害指数は、ユーザにスケールバー上でグラフによって提示することができる。ADHDの場合についてのそのようなグラフ提示の代表的な実施例は、図38に示す。
上記の実施形態ではADHDを特に強調して記載してきたが、この障害に関するより詳細な言及は、本発明の範囲を決して限定すると見なすべきではないと理解されたい。従って、BNAパターン比較技術は、上述した脳関連障害のいずれかを含む、多数の脳関連障害の尤度を評価するために使用できる。脳関連障害の尤度の評価に関するまた別の実施例は、以下の実施例のセクションに提供する(ADHDについては実施例1ならびに軽度認識障害およびアルツハイマー病については実施例5を参照)。
ベースライン注釈付きBNAパターンは、群内の被験者に適用された治療との関連で1群の被験者の特異的脳関連障害または状態に関係する注釈情報と関連付けることもできる。そのようなベースラインBNAパターンは、用量、期間および治療後の経過時間を含む治療の特性を用いて注釈付けることもできる。BNAパターン20とそのようなタイプのベースラインBNAパターンとの比較は、被験者の治療への反応性および/またはその特定被験者にとっての治療の有効性に関連する情報を提供することができる。そのような比較は、場合により好ましくは、特定の治療に結び付けて使用して予測情報を抽出することができる。そのようなベースラインBNAパターンに補完的であるBNAパターンは、未治療脳関連障害に対応すると注釈が付けられたBNAパターンである。
場合により好ましくは、本方法は、BNAパターン20を治療済み脳関連障害に対応すると注釈が付けられた少なくとも1つのベースラインBNAパターンおよび未治療脳関連障害に対応すると注釈が付けられた少なくとも1つのベースラインBNAパターンと比較する。そのような2つのベースラインBNAパターンを使用して被験者の治療への反応性を評価するためのプロセスの代表的な実施例は、図6A〜F、7A〜Dおよび8A〜Eに例示する。
図6A〜Dに示したBNAパターンは、特定ADHD被験者から記録されたEEGデータから構築された関連性被験者特異的BNAパターンである。図6A〜D内の黒色ドットは、EEG電極の位置を示している。これらのBNAパターン内のカラーコードは、上記に規定したものと同一である。図6A〜Bに示した被験者特異的BNAパターンはADHD被験者と1群の未治療ADHD被験者との関連を記述しており、図6C〜Dに示したBNAパターンは、ADHD被験者と全員がメチルフェニデート(MPH)で治療された1群のADHD被験者との関連を記述している。図6Aおよび6Cに示した被験者特異的BNAパターンは、任意の治療の前にADHD被験者から記録されたEEGデータに基づいており、図6Bおよび6Dに示した被験者特異的BNAパターンは、MPHによる治療後のADHD被験者から記録されたEEGデータに基づいている。
未治療ADHD被験者の群から構築されたベースライン注釈付きBNAパターン、および同一被験者群から、しかしMPHによる治療後に構築されたベースライン注釈付きBNAパターンは、各々図6Eおよび6Fに示す。
BNAパターン類似性は、図6A〜Dに示した被験者特異的BNAパターン各々について計算された。図6AのBNAパターンに対応する計算類似性は0.73、図6BのBNAパターンに対応する計算類似性は0.19、図6CのBNAパターンに対応する計算類似性は0.56および図6DのBNAパターンに対応する計算類似性は0.6である。本発明者らは、これらの類似性値は、該被験者が治療に反応性であることを示すと認識している。治療前は、該被験者のBNAパターンは、未治療ADHD被験者の群についてのベースラインBNAパターンとの相対的に高い類似性(0.73)および治療済みADHD被験者の群についてのベースラインBNAパターンとの相対的に低い類似性(0.56)を有していたが、これはこの被験者を未治療ADHD被験者の群に分類できることを意味している。MPHを用いた単回投与治療後、未治療ADHD群についてのベースラインBNAパターンとの類似性値は0.73から0.19へ科学的に減少したが、治療済みADHD群についてのベースラインBNAパターンとの類似性値は0.56から0.6へ上昇したが、これは単回投与治療後に、該被験者の脳活動がもはや未治療ADHD活動の特性を有さず、むしろ治療ADHD活動の特性を有することを意味している。
ADHD被験者についてのMPH試験の一部の結果は、図39にまとめられている。各被験者に対して、2つの関連性被験者特異的BNAパターンが構築された。第1のBNAパターンは、該被験者と1群の未治療ADHD被験者との関連を記述し、第2のBNAパターンは、該被験者と1群の健常被験者(コントロール)との関連を記述した。左のバーはMPHによる治療前の被験者についての平均スコアを示し、中央のバーはMPHによる治療後の被験者についての平均スコアを示し、一番右のバーはコントロール群のスコアを示している。
群BNAパターンの経時的な展開の代表的な実施例は、図40に示す。図40には、未治療ADHD被験者(左の列)、MPHによる治療後のADHD被験者(中央の列)およびコントロール(右の列)の群に対応するBNAパターンの3つの列が示されている。この展開は、50msの間隔で示されている。各列の一番上のBNAパターンは、その列内での他のパターンの重ね合わせによって形成される。
ADHD被験者から取得された神経生理学的データの分析に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションに提供する(実施例1を参照)。
本実施形態のBNAパターン技術は、被験者のための推奨用量を決定するためにも使用できる。詳細には、用量は、治療された被験者についてのベースラインBNAパターンとの十分に高いまたは最高類似性が得られるまで変動させることができる。そのような類似性が達成されると、本方法は、そのような類似性を達成する用量がこの被験者のための推奨用量であると決定できる。
図7A〜Dに示したBNAパターンは、図6A〜Dの応答被験者に関して上述したプロトコルと同一プロトコルに従ってMPHによる治療も行われた異なるADHD被験者から記録されたEEGデータから構築された。図7A〜D内の黒色ドットは、EEG電極の位置を示し、これらのBNAパターン内のカラーコードは上記に規定したカラーコードと同一である。従って、図7A〜Bに示した被験者特異的BNAパターンはADHD被験者と1群の未治療ADHD被験者との関連を記述しており、図7C〜Dに示したBNAパターンは、ADHD被験者と全員がメチルフェニデート(MPH)により治療された1群のADHD被験者との関連を記述している。図7Aおよび7Cに示した被験者特異的BNAパターンは、任意の治療の前にADHD被験者から記録されたEEGデータに基づいており、図7Bおよび7Dに示した被験者特異的BNAパターンは、MPHによる治療後のADHD被験者から記録されたEEGデータに基づいている。
図7Aおよび7DのBNAパターンは、ノードおよびエッジを全く含んでいないことに注目されたい。しかしこれは、これらの被験者が脳活動を有していなかったことを意味するものではない。空隙関連性被験者特異的BNAパターンは各被験者のデータ特徴のいずれも該被験者がそれに関連するかどうかが試された群内のクラスタの構成員ではなかったことを意味している。
BNAパターン類似性は、図7A〜Dに示した被験者特異的BNAパターン各々について計算された。図7AのBNAパターンに対応する計算類似性は0、図7BのBNAパターンに対応する計算類似性は0、図7CのBNAパターンに対応する計算類似性は0.06および図7DのBNAパターンに対応する計算類似性は0である。本発明者らは、これらの類似性値は、該被験者が治療に非反応性であることを示すと認識している。
図8A〜Dは、2人の健常志願被験者から記録されたEEGデータから構築された関連性被験者特異的BNAパターンを示している。図8A〜D内の黒色ドットは、EEG電極の位置を示し、これらのBNAパターン内のカラーコードは上記に規定したカラーコードと同一である。図8A〜Dに示した被験者特異的BNAパターンは、該被験者とプラセボ剤による治療後で、注意タスク関連オッドボールタスクを実施している1群の健常被験者との関連を記述している。この群のベースライン注釈付きBNAパターンは、図8Eに示す。
図8Aおよび8Cは、プラセボによる治療後の第1被験者(図8A)および第2被験者(図8C)から収集されたEEGデータから構築された被験者特異的BNAパターンであり、図8Bおよび8Dはスコポラミン薬による治療後の該第1被験者(図8B)および該第2被験者(図8D)から収集されたEEGデータから構築された被験者特異的BNAパターンである。スコポラミンは、興奮型のM2−コリン作動性受容体に阻害作用を及ぼす抗コリン作動性薬である。スコポラミンは、典型的にはわずかな麻酔作用を誘導して、大脳皮質に阻害作用を有する。
BNAパターン類似性は、図8A〜Dに示した被験者特異的BNAパターン各々について計算された。計算類似性は、各々0.937、0.079、1.0および0.94である。本発明者らは、これらの類似性値は、スコポラミンへの反応性が、第1被験者(図8Aおよび8B)については高く、第2被験者(図8Cおよび8D)については低いことを示すと認識している。これらの結論は、スコポラミンによる治療後に、第1患者については行動エンドポイントにおける70%減少が観察されたが、第2の患者については行動エンドポイントにおける変化が観察されなかった臨床観察所見においても確証された。
スコポラミンが投与された被験者から取得された神経生理学的データの分析に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションに提供する(実施例4を参照)。
上記の実施例は、本実施形態のBNAパターン比較技術は、治療への反応性の定量的評価のために使用できることを証明している。上記の実施形態はMPHおよびスコポラミンによる治療を特に強調して記載してきたが、これらの治療に関するより詳細な言及は、本発明の範囲を決して限定すると見なすべきではないと理解されたい。従って、BNAパターン比較技術を使用して、多数のタイプの治療への反応性およびそれらの有効性を評価することができる。
本発明の様々な典型的な実施形態では、抽出された情報は、被験者が経験している疼痛のレベルに関係する。好ましくは、情報には客観的疼痛レベルが含まれる。本発明の一部の実施形態による疼痛レベル評価は、慢性疼痛に苦しんでいる被験者の治療またはリハビリテーションを提供する医療機関において特に有用である。疼痛を測定するためにBNAパターンを使用する代表的な実施例は図9Aおよび9Bに例示されており、これらの図は以下の実施例のセクション(実施例3を参照)においてさらに詳述されている、疼痛試験中にEEGデータから構築されたBNAパターンを示している。図9Aは疼痛が相対的に重度であると申告した被験者から構築された被験者特異的BNAパターンであり、図9Bは疼痛が相対的に軽度であると申告した被験者から構築された被験者特異的BNAパターンである。図示したように、疼痛レベルの差はBNAパターンで表示されるが、このとき軽度の疼痛を経験している被験者についてのBNAパターンのサイズは高度の疼痛を経験している被験者についてのサイズより小さい。従って、BNAパターンのサイズは、疼痛レベルについての指標として使用できる。
本発明の一部の実施形態では、BNAパターン20は、異なる時点に同一被験者について構築されたBNAパターンと比較される。これらの実施形態は、多数の用途のために有用である。
例えば、一部の実施形態では、この比較は脳内の神経可塑性の存在、非存在および/またはレベルを決定するために使用される。
脳可塑性は、時には損傷もしくは脳卒中の後に、しかしより一般的には新規の技能を取得する際に変化した状態へ(機能的および/または構造的に)順応するための脳の能力に関する。脳可塑性は、多数の基本的タスクにおいて証明されており、得られた証拠は反復実行中の皮質における物理的変更を指している。特定タスクの反復実行の結果として生じる神経相互作用の可塑性は、改良された実行をもたらすことが公知である。
神経可塑性の決定は、脳の一部が損傷しており、他の部分は機能し始める、またはそれらの機能を変化させる脳卒中に罹患している被験者のために特に有用である。脳卒中後の被験者の2つのBNAパターン間の比較を使用して、脳活動における変化を同定するため、従ってさらに脳内の神経可塑性を評価することができる。本発明の一部の実施形態では、後期BNAパターンは、被験者のために該被験者のリハビリテーション中に構築される。後期BNAパターンは、場合により、数回のリハビリテーションセッション中に、好ましくは十分に進行したリハビリテーション期に取得されたデータからである。そのようなBNAパターンは、運動機能障害を克服するために、脳によって達成された神経ネットワーク経路であると見なすことができる。個々のセッション中に構築された被験者特異的BNAパターンは、次に後期BNAパターンと比較することができ、それによって該被験者についての学習曲線を確定できる。
神経可塑性の決定は、慢性疼痛に苦しんでいる被験者のために特に有用である。本発明者らは、慢性疼痛の存在は脳内で感知されて確立され、多くの場合に脳内の化学的変化が付随すると認識している。例えば、N−アセチルアスパルテートの減少および他の脳代謝産物における変化が存在する。これらの化学的変化は、うつ病、不安および/または認知記憶機能の消失を結果として生じさせる。被験者の2つのBNAパターン間の比較を使用して、脳活動における変化を同定する、従ってさらにそれらの化学変化を評価することもできる。そのような評価を使用して、例えば、疼痛刺激と結び付けて、該被験者が慢性疼痛罹患者であること、または疼痛刺激への正常応答を有する尤度を決定することができる。
一部の実施形態では、治療後に取得された神経生理学的データから構築されたBNAパターンは、治療前に取得された神経生理学的データから構築されたBNAパターンと比較される。そのような比較を使用して、治療への反応性および場合により治療の有効性を評価することができる。これは、この比較が被験者のBNAパターンと1群のベースラインBNAパターンとの間の代わりに同一被験者の2つのBNAパターン間で行われることを除いて、一般に図6A〜D、7A〜Dおよび8A〜Dに関して上述したように実施することができる。
一部の実施形態では、被験者が特定のタスクを実施する間に取得された神経生理学的データから構築されたBNAパターンは、該被験者が該特定のタスクを実施していない間および/または該被験者がまた別の特定のタスクを実施する間に取得された神経生理学的データから構築されたBNAパターンと比較される。以下では、これらの実施形態についての代表的な実施例について図10A〜Hを参照しながら説明する。
図10A〜Hは、ワーキングメモリ試験中に2つの群の被験者から記録されたEEGデータから構築された群BNAパターンを示している。図10A〜H内の黒色ドットは、EEG電極の位置を示し、これらのBNAパターン内のカラーコードは、上記に規定したカラーコードと同一である。この試験中、群の各被験者は、ヒトの顔の画像(「キュー(cue)」と呼ばれる)を記憶するように求められた。2秒後、被験者には再びヒトの顔の画像(「プローブ(probe)」と呼ばれる)が提示され、該プローブが該キューと適合するかどうかを決定するように求められた。
第1群のBNAパターンは、図10A〜Dに示す。図10Aおよび10Bは、プラセボ(以下ではプラセボAと呼ばれる)による治療後に構築された群BNAパターンであり、図10Cおよび10Dは、スコポラミンによる治療後に構築された群BNAパターンである。第2群のBNAパターンは、図10E〜Hに示されており、このとき図10Eおよび10Fは、プラセボ(以下ではプラセボBと呼ばれる)による治療後に構築された群BNAパターンであり、図10Gおよび10Hは、ケタミンによる治療後に構築されたBNAパターンである。
スコポラミンの作用については、上記で説明されている。ケタミンは、麻酔状態を生成するために迅速に作用する全身非バルビツール系麻酔薬であると広範に認識されている。より詳細には、ケタミンは、解離麻酔の誘導において伝統的に使用されるアクリルシクロアルキルアミンである。ケタミンは、健常小児における待機手術の前に麻酔を誘導するため、およびさらに全身麻酔薬を忍容することのできなかった高齢被験者において麻酔を誘導するためにも使用されてきた。
図10A、10C、10Eおよび10GのBNAパターンは、キューが提示され、本発明者らが脳内の記憶過程に関連する情報を含有すると認識した時間中に取得されたデータから構築された(文献においては「コード化」としても公知である)。図10B、10D、10Fおよび10HのBNAパターンは、プローブが提示された時間中に取得され、本発明者らが脳内の想起過程に関連する情報を含有すると認識したデータから構築された。図10A〜HのBNAパターンは、活動ネットワークを弁別する工程を記述していることに注目されたい。従って、例えば、図10AのBNAパターンは、プラセボAとスコポラミンとの間を最も弁別したキュー中の脳活動を記述しており、図10BのBNAパターンは、プラセボBとケタミンとの間を最も弁別したキュー中の脳活動を記述している。
図10A〜Bおよび10E〜Fに図示したように、プラセボによる治療後には、想起中のBNAパターンは、記憶中のBNAパターンよりオーダーおよびサイズの両方において実質的に大きい。この状況は、スコポラミンおよびケタミンによる治療後で異なる。スコポラミン(図10C〜D)は、(i)前頭および頭頂領域間の低結合性、ならびに(ii)広範な代償性中心および前頭活性化を誘導した。ケタミン(図10G〜H)は、増加した中心および前頭活性化、ならびに減少した右側性化を誘導した。BNAパターンの前頭−頭頂部分における有意な変化は観察されなかった。
スコポラミンが投与された被験者から取得された神経生理学的データの分析に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションに提供する(実施例4を参照)。
本実施形態のBNAパターン比較技術は、脳機能における改善を誘導するためにも使用できる。本発明の一部の実施形態では、関連性被験者特異的BNAパターンは、一般にはリアルタイムでのより高レベルの認知試験中の被験者について構築される。該被験者には、構築されたBNAパターンまたはそれの何らかの提示を提示することができ、該被験者はそれらをフィードバックとして使用できる。例えば、認知行為の結果として、該被験者のBNAパターンが健常群の特有のBNAパターンにより類似するようになったとき、該被験者へのそのような結果の提示は、該被験者が正のフィードバックとして使用できる。これとは逆に、認知行為の結果として、被験者のBNAパターンが脳障害群の特有のBNAパターンにより類似するようになると、該被験者へのそのような結果の提示は、該被験者が負のフィードバックとして使用できる。神経フィードバックと連結したBNAパターンのリアルタイム分析を利用して、場合により好ましくは、外部刺激電極を使用して改良された皮質刺激を達成することができる。
本実施形態のBNAパターン比較技術は、光線療法への反応性および場合により有効性を評価するためにも使用できる。光線療法は、所定の生物学的機能、例えば自然組織治癒および再生過程を刺激するための生物学的組織への光エネルギーの適用である。または、より高出力レベルの光線療法は、癌性組織の症例において適用できるように、組織の自然生物学的機能を阻害する、または該組織を破壊することができる。
一般に、光線療法は、皮膚もしくは皮下または組織の表面で患者の組織内へ光エネルギーを放射することによって実施される。放射線は、可視範囲または不可視赤外(IR)範囲のいずれかの波長で適用される。光線療法は、連続法またはパルス法のいずれかで、コヒーレントおよび非コヒーレント光エネルギー、レーザーおよび非レーザー光エネルギー、ならびに狭帯域および広帯域光エネルギーを適用することによっても実施できる。放射線エネルギーは、典型的にはミリワット単位で測定される、典型的には低出力強度でも適用される。治療において適用される相対的に低い放射線エネルギーは、低レベル光線療法(LLLT)と呼ばれている。LLLTは、CNSにおける神経学的障害のため、損傷の予防および/または修復、症状の緩和、疾患進行の緩徐化および遺伝的異常の矯正のためにも提案されてきた。詳細には、光線療法は、脳血管障害(脳卒中)後に使用することができる。
本実施形態は、神経学的障害の光線療法、特にLLLTへの反応性および場合により有効性を評価するために使用できる。そのような評価は、光線療法の前、後および場合により最中に取得された神経生理学的データからBNAパターンを構築し、上記でさらに詳細に説明したように、それらのBNAパターンをそれら自体の間で、および/またはベースラインBNAパターンと比較することによって実施できる。
本実施形態のBNAパターン比較技術は、高圧療法への反応性および場合により有効性を評価するためにも使用できる。高圧療法は、多数の医学的状態、治療目的、およびトレーニングレジメンのために適応される。高圧療法は、多数の酸素依存性疾患ならびにスポーツ傷害の治療において役立つことができる。高圧療法によって効果的に治療できる一部の病気には:脳水腫、外傷性頭部および脊髄損傷、慢性脳卒中、脳卒中後、早期器質性脳症候群、脳幹症候群、脳虚血、脳血液循環障害および頭痛疾患が含まれる。典型的には、高圧チャンバ内での治療は、閉鎖循環式マスク、フードまたはその間に高圧チャンバが周囲圧力より高い圧力で維持されるその他のデバイスによってユーザに酸素を投与することによって提供される。酸素は、ユーザに該チャンバの外部の供給源から供給される。被験者は、該チャンバ内の周囲空気が23.5%未満の酸素で残存する、または酸素富化ではないように、閉鎖システムを通して該チャンバの外側に息を吐き出す。該チャンバ内の環境は、さらに一般に該チャンバの外側にある供給源によって維持され、一般にはサーモスタットによって制御される。
高圧療法への反応性および場合により有効性の評価は、高圧療法の前、後および場合により最中に取得された神経生理学的データからBNAパターンを構築し、上記でさらに詳細に説明したように、それらのBNAパターンをそれら自体の間で、および/またはベースラインBNAパターンと比較することによって実施できる。
本実施形態のBNAパターン比較技術によって評価できる治療の追加の実施例には、制限なく、超音波治療、リハビリテーション治療ならびに神経フィードバック、例えばEMGバイオフィードバック、EEG神経フィードバック、経頭蓋磁気刺激(TMS)および直接電極刺激(DES)が含まれる。
上記で記載したMPH、スコポラミンおよびケタミンの他に、BNAパターン比較技術を使用して、多数の他のタイプの薬物治療への反応性および場合によりそれらの有効性を評価することができる。
例えば、被験者が神経変性障害、例えばアルツハイマー病に罹患している場合は、治療は、ドネペジル、フィソスチグミン、タクリン、それらの医薬上許容される酸付加塩および上記のいずれかの組み合わせからなる群から選択される薬理学的活性薬剤の使用を含むことができる。被験者が神経変性障害、例えばハンチントン病に罹患している場合は、治療は、フルオキセチン、カルバマゼピンおよびそれらの医薬上許容される酸付加塩および上記の組み合わせからなる群から選択される薬理学的活性薬剤の使用を含むことができる。被験者が神経変性障害、例えばパーキンソン病に罹患している場合は、治療は、アマンタジン、アポモルフィン、ブロモクリプチン、レボドパ、ペルゴリド、ロピニロール、セレギリン、トリヘキシフェニジル、アトロピン、スコポラミン、グリコピロレート、それらの医薬上許容される酸付加塩および上記の任意の組み合わせからなる群から選択される薬理学的活性薬剤の使用を含むことができる。被験者が神経変性障害、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患している場合は、治療は、バクロフェン、ジアゼパム、チザニジン、ダントロレン、それらの医薬上許容される酸付加塩および上記の任意の組み合わせからなる群から選択される薬理学的活性薬剤の使用を含むことができる。
一般に、薬物治療は、薬理学的活性薬剤、例えば中枢作用薬、特にCNS活性薬剤ならびに以下の:交感神経様作用アミン類;神経栄養因子を含む神経保護剤および神経再生剤;神経活性アミノ酸およびペプチド;神経伝達物質;ムスカリン受容体アゴニストおよびアンタゴニスト;抗コリンエステラーゼ類;神経筋遮断薬;神経節刺激薬;神経変性障害、例えばアルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための薬剤;抗てんかん薬;CNSおよび呼吸刺激薬;ならびに麻酔薬、鎮静薬、鎮吐薬、降圧薬、脳血管拡張薬、催眠剤および鎮痛薬、抗不安薬および精神安定剤、神経弛緩薬、抗菌物質、αアドレナリン作用性アンタゴニストおよび食欲抑制剤を含むCNS機能を選択的に修飾する薬物を含むがそれらに限定されない他の神経系薬剤を含むことができる。当業者であれば理解できるように、一部の薬剤は上記の群の2つ以上に包含される。
これらの薬理学的活性薬剤の例には、制限なく、交感神経様作用アミン類(例えば、アルブテロール、アンフェタミン、ベンズフェタミン、コルテロール、ジエチルプロピオン、ドーパミン、塩酸ドーパミン、ドブタミン、エフェドリン、エピネフリン、重酒石酸エピネフリン、エチルノルエピネフリン、塩酸エチルノルエピネフリン、フェンフルラミン、フェノールドパム、フェノールドパム、メシル酸フェノールドパム、ヒドロキシアンフェタミン、臭化水素酸ヒドロキシアンフェタミン、イボパミン、イソエタリン、イソプロテロノール、塩酸イソプロテロノール、メフェンテルミン、硫酸メフェンテルミン、メタプロテレノール、メタラミノール、重酒石酸メタラミノール、メトキサミン、塩酸メトキサミン、ミドドリン、ノルエピネフリン、重酒石酸ノルエピネフリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェンテルミン、フェニルエフリン、塩酸フェニルエフリン、フェニルエチルアミン、フェニルプロパノールアミン、プレナルテロール、プロピルヘキセドリン、リトドリン、テルブタリン、硫酸テルブタリンおよびチラミンを含む);神経保護剤および神経再生剤(例えば、興奮性アミノ酸アンタゴニストおよび神経栄養因子、例えば脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、および神経成長因子、ニューロトロフィン(NT)3(NT3)、NT4およびNT5);神経活性アミノ酸およびペプチド(例えば、γ−アミノ酪酸(GABA)、グリシン、β−アラニン、タウリンおよびグルタミン酸塩が含まれ、そして神経活性ペプチドには、ブラジキニン、カリジン、des−Arg9−ブラジキニン、des−Arg10−カリジン、des−Arg9−[Leu8]−ブラジキニン、[D−Phe7]−ブラジキニン、HOE140、神経ペプチドY、エンケファリンおよび関連オピオイドペプチド、例えばMet5−エンケファリン、Leu5−エンケファリン、α−、β−およびγ−エンドルフィン、α−およびβ−ネオ−エンドルフィンおよびダイノルフィン、神経伝達物質(例えば、GABA(γ−アミノ酪酸)、グリシン、グルタミン酸塩、アセチルコリン、ドーパミン、エピネフリン、5−ヒドロキシトリプタミン、サブスタンスP、セロトニン、上記のようなエンケファリン類および関連オピオイドペプチドならびにカテコールアミン類;ムスカリン受容体アゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、コリンエステル類、例えばアセチルコリン、メタコリン、カルバコール、ベタネコール(カルバミルメチルコリン)、塩酸ベタネコール;コリン様作用性天然アルカロイド類、およびアレコリン、ピロカルピン、ムスカリン、McN−A−343およびオキソトレモリンを含むそれらの合成アナログが含まれる。ムスカリン受容体アゴニストは、一般にはベラドンナ・アルカロイド類またはそれらの半合成もしくは合成アナログ、例えばアトロピン、スコポラミン、ホマトロピン、臭化メチルホマトロピン、イプラトロピウム、メタンテリン、メトスコポラミンおよびチオトロピウム、抗コリンエステラーゼ類(例えば、アンベノニウム、塩化アンベノニウム、デメカリウム、臭化デメカリウム、ヨウ化エコチオフェート、エドロフォニウム、塩化エドロフォニウム、ネオスチグミン、臭化ネオスチグミン、硫酸メチルネオスチグミン、フィソスチグミン、サリチル酸フィソスチグミン、ピリドスチグミンおよび臭化ピリドスチグミン);神経筋遮断薬および神経節遮断薬(例えば、ジコリンエステル類(例えば、スクシニルコリン)、ベンジルイソキノリン類(d−ツボクラリン、アトラクリウム、ドキサクリウム、ミバクリウム)およびピペロクロニウム、ロクロニウム、ベクロニウム)、ヘキサメトニウム、トリメタファンおよびメカミルアミン;神経変性疾患を治療するための薬剤(例えば、アルツハイマー病を治療するための活性薬剤、例えばドネゼピル、塩酸ドネペジル、フィソスチグミン、サリチル酸フィソスチグミン、タクリンおよび塩酸タクリン、例えばフルオキセチンおよびカルバマゼピンを含むがそれらに限定されないハンチントン病を治療するための活性薬剤、例えばアマンタジン、アポモルフィン、ブロモクリプチン、レボドパ(特にレボドパ/カルビドパの組み合わせ)、ペルゴリド、ロピニロール、セレギリン、トリヘキシフェニジル、塩酸トリヘキシフェニジルおよび抗コリン作用性薬などであるがそれらに限定されない抗パーキンソン病薬;ならびに鎮痙薬(鎮痙)薬、例えば、バクロフェン、ジアゼパム、チザニジンおよびダントロレン)などであるがそれらに限定されないALSを治療するための薬剤;抗てんかん薬(例えば、抗痙攣(抗発作)薬、例えばアゼタゾラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、クロラゼペート、エトスクシミド、エトトイン、フェルバメート、ガバペンチン、ラモトリジン、メフェニトイン、メフォバルビタール、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン、トリメタジオン、ビガバトリン、ならびに不安、不眠および悪心を含む多数の適応症のために有用であるベンゾジアゼピン類;ならびにCNSおよび呼吸刺激薬(例えば、キサンチン類、例えばカフェインおよびテオフィリン;アンフェタミン類、例えばアンフェタミン、塩酸ベンズフェタミン、デキストロアンフェタミン、硫酸デキストロアンフェタミン、レバンフェタミン、塩酸レバンフェタミン、メタンフェタミンおよび塩酸メタンフェタミン;ならび多種多様な刺激剤、例えばメチルフェニデート、塩酸メチルフェニデート、モダフィニル、ペモリン、シブトラミンおよび塩酸シブトラミン)である。
さらに企図されるのは、CNS機能を選択的に修飾する薬物である。これらには、制限なく、麻酔薬、例えばケタミン;オピオイド鎮痛薬、例えばアルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、ドロコード、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルフィン、ナルブフィン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、スフェンタニルおよびトラマドール;非オピオイド鎮痛薬、例えばアパゾン、エトドラク、ジフェンピラミド、インドメタシン、メクロフェナメート、メフェナム酸、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカムおよびトルメチン;制吐薬、例えばクロルプロマジン、シサプリド、ドンペリドン、グラニセトロン、メトクロプラミド、オンダンセトロン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、チエチルペラジンおよびトリフルプロマジン;降圧薬、例えばアプラクロニジン、クロニジン、グアンファシンおよびグアナベンズ;脳血管拡張薬、例えばビンカミン、シュウ酸ナフチドロフリル、パパベリンおよびニコチン酸;催眠剤および鎮静剤、例えばクロメチアゾール、エチナメート、エトミデート、グルテチミド、メプロバメート、メチプリロン、ゾルピデムおよびバルビツール酸塩類(例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メフォバルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、チオペンタール);抗不安薬および精神安定剤、例えばベンゾジアゼピン類(例えば、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、デモキセパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム)、ブスピロンおよびドロペリドール;神経弛緩薬であって、抗うつ薬、抗躁病薬および抗精神病薬を含み、抗うつ薬には、(a)三環系抗うつ薬、例えばアモキサピン、アミトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリンおよびトリミプラミン、(b)セロトニン再取り込み阻害剤、シタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンおよびベンラファキシン、(c)モノアミンオキシダーゼ阻害剤、例えばフェネルジン、トラニルシプロミンおよび(−)−セレギリン、ならびに(d)その他の「非定型」抗うつ薬、例えばブプロピオン、ネファゾドンおよびトラゾドンベンラファキシンが含まれ、抗躁病および抗精神病薬には(a)フェノチアジン類、例えばアセトフェナジン、マレイン酸アセトフェナジン、クロルプロマジン、塩酸クロルプロマジン、フルフェナジン、塩酸フルフェナジン、エナント酸フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、メソリダジン、ベシル酸メソリダジン、ペルフェナジン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、トリフルオペラジンおよび塩酸トリフルオペラジン、(b)チオキサンテン類、例えばクロルプロチキセン、チオチキセンおよび塩酸チオチキセン、ならびに(c)その他の複素環薬、例えばカルバマゼピン、クロザピン、ドロペリドール、ハロペリドール、デカン酸ハロペリドール、コハク酸ロキサピン、モリンドン、塩酸モリンドン、オランザピン、ピモジド、クエチアピン、リスペリドンおよびセルチンドールが含まれる神経弛緩薬;抗コリン作用性薬、例えばアトロピン、スコポラミンおよびグリコピロレート;抗菌物質、例えば(a)テトラサイクリン系抗生物質および関連化合物(クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ロリテトラサイクリン)、(b)マクロライド系抗生物質、例えばエリスロマイシン、クラリスロマイシンおよびアジスロマイシン、(c)ストレプトグラミン系抗生物質、例えばキヌプリスチンおよびダルホプリスチン、(d)βラクタム系抗生物質、例えばペニシリン類(例えば、ペニシリンG、ペニシリンVK)、抗ブドウ球菌性ペニシリン類(例えば、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリンおよびオキサシリン)、広域スペクトルペニシリン類(例えば、アミノペニシリン類、例えばアンピシリンおよびアモキシリン、および抗緑膿菌ペニシリン類、例えばカルベニシリン)、ならびにセファロスポリン類(例えば、セファドロキシル、セフェピム、セファレキシン、セファゾリン、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、セフォタキシム、セフタジジムおよびセフトリアゾン)、ならびにカルバペネム類、例えばイミプレネム、メロペネムおよびアズトレオナム、(e)アミノグリコシド系抗生物質、例えばストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシンおよびネオマイシン、(f)グリコペプチド系抗生物質、例えばバンコマイシンおよびテイコプラニン、(g)スルホンアミド系抗生物質、例えばスルファセタミド、スルファベンズアミド、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメチゾールおよびスルファメトキサゾール、(h)キノロン系抗生物質、例えばシプロフロキサシン、ナリジクス酸およびオフロキサシン、(i)抗マイコバクテリア剤、例えばイソニアジド、リファンピン、リファブチン、エタムブトール、ピラジンアミド、エチオナミド、アミノサリチル酸およびシクロセリン、(j)全身性抗真菌剤、例えばイトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾールおよびアムホテリシンB、(k)抗ウイルス剤、例えばアシクロビル、ファミシクロビル、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、アマンタジン、インターフェロンα、リバビリンおよびリマンタジン、ならびに(l)多種多様な抗菌剤、例えばクロラムフェニコール、スペクチノマイシン、ポリミキシンB(コリスチン)およびバシトラシン;αアドレナリン作用性受容体アンタゴニスト、例えばドキサゾシン、インドラミン、フェノキシベンズアミン、フェントラミン、プラゾシン、トラゾリン、テラゾシン、トリマゾシンおよびヨヒンビン;および食欲抑制剤、例えばアンフェタミン、デキストロアンフェタミン、硫酸デキストロアンフェタミン、塩酸ジエチルプロピオン、マジンドール、塩酸メタンフェタミン、フェンテルミンおよび塩酸フェンテニンが含まれる。
本発明の一部の実施形態の1つの態様によると、神経生理学的データを分析するためのシステムが提供される。本システムは、データ処理装置、例えば、神経生理学的データを受信する、および本明細書に記載した操作の少なくとも一部を実行するために構成された専用回路または汎用コンピュータを含んでいる。
本明細書で使用する用語「約」は±10%を意味する。
用語「典型的な」は、本明細書では「実施例、事例または実例として役立つ」ことを意味するために使用される。「典型的な」と記載される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態より好ましい、または有益であると見なされる、および/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外する必要はない。
用語「場合により」は、本明細書では「一部の実施形態において提供され、他の実施形態においては提供されない」ことを意味するために使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り、複数の「場合による」特徴を含むことができる。
用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes」)、「含んでいる(including)」、「有する(having)」およびそれらの同根語は、「〜を含むがそれらに限定されない」ことを意味する。
用語「〜からなる」は、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する。
用語「〜から本質的になる」は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含む可能性があるが、追加の成分、工程および/または部分が本明細書で請求された組成物、方法または構造の基本的および新規な特性を実質的に変化させない場合に限られる。
本明細書で使用する単数形「1つの」および「その」には、状況が明白に他のことを指示しない限り複数の言及が含まれる。例えば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、それらの混合物を含む複数の化合物を含むことができる。
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示することができる。範囲形式での記述はただ単に便宜性および簡潔さのためであり、本発明の範囲への柔軟性のない制限であると見なすべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記述は全ての考えられる部分的範囲ならびに該範囲内の個別数値範囲を明確に開示していると見なすべきである。例えば、1〜6などの範囲の記述は、例えば1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの部分的範囲ならびにその範囲内の個別数、例えば1、2、3、4、5および6を明確に開示していると見なすべきである。これは、該範囲の幅とは無関係に適用される。
本明細書で数値範囲が指示される場合は常に、該指示範囲内の任意の引用数字(分数または整数)を含むことが意図されている。語句第1指示数および第2指示数「にわたる/の間にわたる」および第1指示数「から」第2指示数「へ」「にわたる/の間にわたる」は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2指示数ならびにそれらの間の全ての分数および整数を含むことが意図されている。
明確さのために、別個の実施形態の状況において記述された本発明の所定の特徴は、単一実施形態において組み合わせて提供することもできる。これとは逆に、簡潔さのために、単一実施形態の状況において記述された本発明の様々な特徴は、別個に、または任意の適切な部分組み合わせで、または適切に本発明の任意の他の記述された実施形態において提供することもできる。様々な実施形態の状況において記述された所定の特徴は、本実施形態がそれらの要素を含まなければ動作不能ではない限り、それらの実施形態の本質的な特徴であると見なすべきではない。
上記で描出した、および以下の特許請求の範囲で要求した本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的確証を見出すことができる。
ここでは、上記の説明と共に非限定的方法で本発明の一部の実施形態を例示している以下の実施例を参照する。
ADHD被験者のBNAパターン
ADHDは、不注意、多動および衝動性を特徴とする一般的発達障害である。ADHDであると診断された小児においては、症状が成人期になっても続くことが多い。臨床徴候は成長に伴って変化し得るが、状況の必要に応答した行動の抑制が欠如する衝動性は、成人においてこの障害の優勢な行動特徴を残している。本発明者らは、ADHD被験者においては抑制制御が欠如し、これは応答阻害がADHD症状の基礎にある他の機能的欠損も媒介することを意味すると理解している。応答阻害を評価するための最も広範に使用されるパラダイムの1つは、被験者がベースラインおよび外れ値刺激へ迅速に応答することを要求するパラダイムであるGo/No−go試験(Liddle et al.,2001;Bokura,2001;Garavan et al.,2002)である。
本実施形態の技術は、1群のADHD被験者および1群の適合しているコントロール被験者の聴覚Go/No−goタスクへのERP応答を分析するために利用されてきた。
方法
被験者
ADHDの混合亜型であると診断された男女両方の成人13例ならびに年齢および性別を適合させたコントロール13例が本試験に参加した。全例が右利きで、正常な聴力および正常もしくは矯正正常視力を有すると報告された。ADHD被験者は、イスラエル国ランバンヘルスケアキャンパスの神経認知ユニット(Neuro−Cognitive Unit)で募集された。9例は、小児期からADHDであると診断された。コントロールは、テクニコン・イスラエル工科大学からの学生志願者であった。全被験者は、包括的神経学的および神経生理学的評価を受けた。ADHD被験者は、DSM−IV(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4th edition;Association,2000)基準およびコナーズ(Conners)成人ADHD評価スケール(Murphy and Adler,2004)の翻訳版に従ったADHD症状を満たした。ADHD群は、レーブン(Raven)漸進的マトリックススコア上では正常群と相違しなかった。併存障害(例えば、うつ病、不安、物質乱用および学習障害)を備える被験者は除外された。ADHD被験者13例中6例は、定期的メチルフェニデート療法について報告した。全被験者は、最小24時間の薬剤ウォッシュアウト後に評価された。本プロトコルは、ヒト被験者を包含する実験を対象とするランバン施設内治験審査委員会(ヘルシンキ委員会)によって承認され、全参加者は本試験に参加する前にインフォームドコンセントに署名した。
追加の被験者15例のADHD群がボストンのマサチューセッツ総合病院(MGH)から募集された。これらの被験者は、全員がDSM−IV TR基準に従ってADHDであると診断され、専門精神科医による臨床面接において確定された。臨床全般印象評価スケール−重症度(Clinician Global Impression of Severity Scale)(CGI−S)、成人注意欠陥多動性障害治験責任医師の症状に関する報告スケール(Adult Attention−Deficit/Hyperactivity Disorder Investigator Symptom Rating Scale)(AISRS)およびADHD評価スケール(ADHD−RS)もこの追加の群について実施された(Guy 1976,Spencer 2004)。
他に特に記載しない限り、ADHD群についての言及はランバンヘルスケアキャンパスから募集されたADHD被験者についての言及であると理解すべきであり、追加のADHD群についての言及はマサチューセッツ総合病院から募集されたADHD被験者についての言及であると理解すべきである。
刺激
刺激は、長方形エンベロープを用いて60dBで両耳に提示される、1,000〜2,000Hzの40ms持続純音から構成された。Go試行(2,000Hzトーン)は、試行の80%において提示され、被験者はこのトーンへ応答してできる限り急速にボタンを押すように指示された。No−go試験(1,000Hz)は、試行の残り20%において提示され、被験者は応答することを控えるように指示された。刺激は疑似ランダム的に提示され、刺激間の時間間隔は1,000〜2,000msの間でランダムに変化した。10回の試行の実施ブロック後、被験者に、各々が200回の試行からなる5回の記録ブロックが提示された。被験者は、右手の人差し指を用いたボタン押しで応答するように指示された。
実験手順
ERPは、導電ジェルが充填され、位置Fp1、Fp2、F7、F3、Fz、F4、F8、T3、C3、Cz、C4、T4、T5、P3、Pz、P4、T6、O1、O2、ならびに左右の乳様突起(A1およびA2)の総計21カ所の部位でコロジオングルーによって頭皮に取り付けられた9mmの銀盤電極を用いて記録された。活動は、顎の中心を基準とした全EEG電極およびアースとしての左前腕上の電極を用いて記録された(Ceegraph IV Biologic Systems Corp.社、米国イリノイ州)。Fzと指示された左目の下方の電極は、眼球運動(EOG)を記録するために役立った。各電極でのインピーダンスは、5kΩ未満で維持された。EEG(×100,000)およびEOG(×20,000)チャネルからの電位が増幅させられ、12ビットのA/Dコンバータを用いてサンプル256例/秒の速度でデジタル化され、フィルタにかけられ(0.1〜100Hz、6dB/オクターブスロープ)、オフライン分析のために保存された。
被験者は、音響的に隔離された室内で調節可能な肘掛け椅子にくつろいで座り、イヤホーンから提示される聴覚刺激を聴き、右手の中の押しボタンボックスで応答することでタスクを実施した。被験者は、できる限り眼球運動および瞬きを回避し、タスク実施中には眼前にある一定の点を注視するように指示された。
データ処理−総括
図11は、本実施例において、および本発明の一部の実施形態に従って使用された本方法を例示する図である。図11では、青色の矢印は群ネットワーク認識についての計算操作を表し、赤色の矢印は個別被験者評価についての計算操作を表している。
前処理およびアーチファクト除外、帯域通過、離散化および正規化は、最初に群ネットワーク認識および個別患者評価両方のための個別記録を対象に実施された。
第1ADHD群、追加のADHD群およびコントロール群の各々について、全群の活動ピークがプールされ、三次元特徴空間(時間、周波数、位置)上に投影され、脳パターンのデータベースを抽出して群BNAパターンを構築するために処理された。構築されたBNAパターンは、各群を明確に特徴付けたので、群ネットワーク認識を容易にした。
個別被験者のBNAパターンも、各個別被験者を別個に取り扱うことによって構築された。そのような各個別被験者の活動ピークは、被験者特異的BNAパターンを形成するために処理され、該パターンはその後群BNAパターンと比較された。これは、各個別被験者の群の各々への段階的分類を可能にする。BNAパターン比較は、さらに被験者評価および行動的尺度との相関を可能にした。
ここでは、上記で描出したデータ処理の詳細について説明する。
ERP波形分析
連続個別記録は、300msで始まりトーン開始後1,000msまでのエポックへセグメント化することによってオフラインで処理された(図11、前処理)。これらの記録は、独立成分分析(例えば、Makeig et al.,1996を参照)を利用して、ブラインド音源分離に基づく眼球運動補正後の刺激タイプ(GoおよびNo−go)に従って選択的に平均化された。補正反応に関連し、過度の(<100μV)の電気的活動を含まないNo−goエポックだけが平均値に含まれた。平均化後、データは帯域通過フィルタリングにかけた(0.5〜30Hzの帯域通過フィルタを備えるIIR長方形フィルタ)。本試験には、Goエポックは含まれなかった。
次に各電極は、EEG活動を基本的な周知の脳プロセスへ分離するために重複する周波数帯域にフィルタリングされた(Klimesch,1999;Basar et al.,2001)。周波数帯域は、以下のように規定された:δ帯域(1〜4Hz)、θ帯域(3〜8Hz)、α帯域(7〜13Hz)、低β帯域(12〜18Hz)、β帯域(17〜23Hz)、および高β帯域(22〜30Hz)。全ての重複する周波数帯域は、情報消失が発生しないように分析の次の段階において使用された。図11は、ADHD被験者のNo−go刺激へ応答した単一電極平均化活動の帯域通過段階の例を示している。
データ整理:離散化および正規化
波形分析後、活動は、各周波数帯域での全ての波形の局所的極値を記述する1セットの離散点に整理された。波形ピーク周囲の波形がほぼ対称性であるために、各局所波形はそこで負および正のピークの潜時および振幅を表示する1対の数に減らされた(図11、離散化)。
離散化後、各周波数帯域についての各電極内の活動を表す被験者内ピークは、以下の様式で全被験者および周波数にわたって標準化(図11、正規化)するためにzスコア正規化された:各電極について、および各周波数帯域内では、zスコアは最大値および最小値点だけに基づいて計算された。次に各被験者について、各周波数帯域内の全電極の全zスコアは一緒にプールされた。既定閾値(zスコア閾値)に合格した局所的正および負のピークのzスコアが選択され、それらの対応する潜時および振幅は、ネットワーク分析のためのインプットとして利用された。インピーダンス差について補正することに加えて、正規化は雑音減少に貢献した。
幾つかのzスコア閾値が使用された:zスコア点の上方40%はδ周波数帯域のために取られ、zスコア点の上方18.2%はθ周波数帯域のために取られ、zスコア点の上方10%はα周波数帯域のために取られ、zスコア点の上方6.7%は低β周波数帯域のために取られ、zスコア点の上方5%はβ周波数帯域のために取られ、およびzスコア点の上方3.8%は高β周波数帯域のために取られた。
ネットワーク分析
データ整理後、各実験群における全被験者の全試験関連活動は、時間(ピーク潜時)、周波数および電極(位置)の三次元空間内の1セットの離散点であると見なされた。図11は、コントロール群からの、各々が異なる色で表示されている被験者3例についてのこの概念を示している(ネットワーク分析、右のウィンドウ)。zスコア閾値を合格した点は、全か無かのベースで特徴空間内に投影された。本実施例では、各点の特異的振幅レベルは後期のために維持されたが、別個の寸法としては含まれなかった。しかし追加の寸法が振幅である四次元空間の使用も、少なくとも本発明の一部の実施形態において企図されている。
この三次元空間内では、部分群の被験者における単一優勢活動事象(任意の周波数帯域内の負または正のピーク)は、密に分布した離散点のクラスタとして出現した。所定の寸法でのそのようなクラスタの幅は、その寸法変量に対する活動窓のサイズを規定するために使用された。例えば、時間次元内のクラスタの幅は、その中で事象が全被験者にわたって発生する可能性がある潜時範囲を記述するために使用された。従って、各クラスタは、既定周波数帯域内および既定潜時範囲内で小セットの隣接電極において、患者の部分群と共通する活動を提示した。そのようなクラスタの時間系列は、ネットワーク活動の時空間パターンとして取り扱われた。本実施例のネットワーク分析の目標は、全被験者にわたって一致したそれらの活動パターンを抽出すること、そして独特のパターンならびに該被験者群各々を特徴付けた優勢な接合関連の解明を試みることであった。
時間次元においては、単一クラスタは、時間窓内で発生した単一事象を提示した。この窓は、明白な外れ値(outlier)を除外し、潜時の許容範囲を制約するために狭められた。そのような単一事象の連続は、該順序内の各事象についての固定時間窓を備える、展開する時空間パターンを記述する。全被験者にわたる事象間の時間的関係を維持するために、パターン抽出は、密度に基づくクラスタリング法を利用する以下の手順を使用して各実験群に対して実施された(図11、ネットワーク分析)。
最初に、各周波数帯域に対して、時間ドメイン内の単一活動(正および負のピーク)のクラスタが、既定および固定窓サイズを備える実行窓を使用して、局在化された。調整可能な被験者閾値パラメータを使用する閾値化は、最小数の被験者を有していないクラスタを廃棄するために使用された。本実施例では、クラスタ内の被験者の最小数は、最初に11に設定され、その後適応させられた。残りのクラスタに対しては、最初の既定窓は、被験者閾値を満たす最小幅に狭められた。次に、各可能性のある対のクラスタに出現した各被験者については、2つの単一事象の出現間の潜時差(ゼロ差を含む)が計算された。次にこれらの差の範囲が試験された:被験者閾値によって可能にされたように、十分数の差(本実施例では10を超える差)が既定窓内に含有されることが見出された場合、この事象対は、変動性の制約を満たす全被験者に共通の「対−パターン」であると受け入れられた。
1対のパターンは、2つの異なる位置での2つの同時の事象または同一もしくは異なる位置での2つの連続する事象のいずれかを含んでいた。そのような対のパターンは、基本的時空間的単位を形成した。
次に、共通単一活動を伴う単位時空間パターンは、2つを超える単一活動の複合パターンを形成するために連結された。新規パターンを共有する被験者群は、2つの追加されたパターンに参加した2つの被験者群の断面積によって決定された。被験者閾値を満たさなかった3つの単位パターンを生じさせる結果は廃棄された。4つを超える単位を備えるパターンが類似の方法で構築された。最後に、冗長パターンは、各実験群に対して最小セットの固有の多位置パターンが解明されるように取り除かれた。残りのパターンの各々は、段階的追加プロセスを生残した最大数のノードを含有する同期化ネットワークを規定する。
図11(ネットワーク分析を参照)は、離散性データ点のセットにネットワーク分析が及ぼす作用を証明している。オリジナルの三次元空間内の離散性データ点の全セットは、抽出されたパターンのセットに関係する点の小さなサブセット(この場合では、例示する目的で被験者3例だけについて)に整理されている。ネットワーク分析の前には幾つかの潜在的クラスタが出現するが、少数しか残っていないことに注目されたい。図11における2本の黄色の矢印は、全3例の被験者が共有する2つのそのようなクラスタを表示している。2つのクラスタ間の時間的関係(x軸の距離)が該クラスタ内の全被験者について類似であることに注目されたい。これらのクラスタは、以下の図12に提示されている、コントロール群の全13例の被験者に共有されていたコントロールパターンにも関係した。
所定の群を特徴付けたネットワーク活動を解明することに加えて、本実施例のネットワーク分析のもう1つの目標は、群間を識別するネットワーク活動を同定することであった。従って、各抽出パターンに対して、該パターンが出現した被験者数は、両群において見出された。これらの2つの数間の差は、以下ではパターンの弁別レベルと呼ぶ。識別パターンを同定するために、閾値化手順を使用した。詳細には、12の弁別レベル閾値に合格したパターンだけが識別パターンとして受け入れられ、他の全てのパターンは拒絶された。識別パターンには、それに対して該識別パターンが同定された各群内の被験者数であると規定された、群−被験者値が指定された。
分類
未分類被験者の分類は、以下に述べるようにK−分割交差検証法(k−folds cross validation)アルゴリズムを用いて実施された。本試験の全被験者は前分類されたので、各被験者が順にその群から取り出され、あたかも新規な未分類被験者であるかのように扱われた。次に上記で説明したBNAパターン分析が2つの群を対象に再実行され、上述のように識別パターンが同定された。従って、同定された識別パターンは、個別被験者を含んでいなかった。
両群において抽出された識別パターンの各々に対して、重み指数(WI)が、関係する全ての基本的時空間単位(対−パターン)に、該対の複数の特性に基づいて与えられた。WIは、該対に関係する被験者数、該対−パターンの弁別レベルおよび狭小化された時間窓の幅(窓が狭いほど重みが大きくなる)によって決定された。
個別被験者は、2つの群の1つに、個別被験者の電極活動と識別パターン各々の活動要件との類似性を計算することによって分類された。この類似性を類似性指数(SI)と呼ぶ。関係する各対−パターンについての比較は、3つの異なる態様:結合性、同期化および振幅において行われ、それにより3種の類似性指数:SIc、SIsおよびSIa各々が計算された。
対−パターンのSIcは、試験された被験者全員に適合した(即ち、被験者の電極活動が該対−パターンによって設定された制約を満たした)場合は1であり、適合しなかった場合は0である。1のSIcを備える全対−パターンのSIsを評価するためには、個別被験者の離散性活動点の時間が、2つの領域の各々について該群対−パターンの活動時間の平均値およびSDと比較された。該対のSIaは、類似様式で活動点の振幅を比較することによって評価された。群の各々への個別被験者の全分類スコアは、該群の全パターンにおける全対の積WI−SIを平均化することによって計算された。分類スコアは、各類似性指数に対して、3種の分類スコア:結合性スコア、同期化スコアおよび振幅スコアが計算されるように別個に計算された。個別被験者は、該被験者がより高い分類スコアを達成した群に分類された。この分類は、3種のスコア各々について実施された(表1)。
最後に、試験した被験者のSIスコアとADHD群およびコントロール群との間の差が被験者のADHD指数の推定値と見なされた。各類似性スコアに対して1種ずつの3種のそのようなADHD指数が規定された。これらの3種の定量的ADHD指数を利用して、被験者の脳活動に基づいて、それらを独立して引き出された行動スコアと相関させることによって、本実施形態の方法が試験被験者の行動的尺度を予測する能力が決定された(図16)。
外れ値の除外
本実施例において使用した追加の計算操作は、群内の外れ値の自動同定を含んでいた。この操作を使用する利点は、時間窓のさらなる狭小化を促進し、従って脳全体にわたるより多くの位置へのパターンの拡張を可能にすることにある。以下の手順は、コントロール群およびADHD群における外れ値を自動的に同定するために使用された。各被験者について、上記の3種のADHD指数が計算された。次に各ADHD指数の平均値および標準偏差(SD)が、各群内で別個に計算された。全3種のADHD指数が平均値±2SDの範囲外にある被験者は外れ値であると同定された。外れ値(各群について1つ)の除外後、精密(コア) 群に対してネットワーク分析が繰り返された。コア群から解明されたパターンに基づいて、全被験者(外れ値を含む)の分類が繰り返された。以下の図14〜16に提示した結果は、コア群に関係する。
追加の被験者群について、手順は同様であった。手短には、64電極EEGデータが複数の領域、周波数および時間スケールにわたって収集された。前処理されたEEGデータは、重複する生理的周波数帯域に帯域通過フィルタリングされ、エポック分析され、ERPへ平均化された。各帯域に対して、データは局所的極値を示す1セットの離散点に整理された。各条件に対して、アルゴリズムは被験者全体にわたって同期ピーク潜時を検索した。次に、ピーク−対−パターンが、ピーク間間隔も被験者全体にわたり同期しているように同定された。3つ以上のピークを備えるより複雑なパターンも、状態固有の多部位時空間パターンまたは複数のパターンが出現するまで同定された。次に最高識別パターンが対向する極として使用された。被験者には、各条件に対して各極のパターンに個別BNAパターンが適合する程度を定量した類似性指数が指定された。
結果
コントロール群活動のネットワーク分析
コントロール群のNo−go活動をADHD群のNo−go活動から識別した電極活動のパターンは、本実施形態のBNAパターン分析によって自動的に解明された。これらの識別パターンを以下ではコントロールパターンと呼ぶ。
コントロールパターンの例は、図12に提示されている。このコントロールパターンは、δ周波数が優勢である、1セットの主として大脳右半球前頭−中心−頭頂電極(図12の中央の頭皮上の分布)を包含していた。脳の画像は、このパターンに関係する電極の頭皮上の位置を提示している。各電極(明確に提示するために図12から1つは除外されている)に対して、コントロール群(左)およびADHD群(右)における、個別活動(上方の2つのパネル)および被験者の活動の時間実行総加算平均値(time−running grand average)(下方の2つのパネル)を描出している複合パネルが提示されている。
電極活動の周波数帯域は、複合パネルの中央上部に表示されている。各群に対して、上方のカラーパネルは、各被験者に対して1行ずつの13行を有する。各行において、被験者の記録されたエポックの持続時間に対する非正規化平均活動はカラースケールによって提示され、青色は負の極値であり、赤色は正の極値である。上方パネル内の垂直線は、該パターン内の電極活動の最小(左)および最大(右)潜時限度を提示している。正の活動の境界を区切る時間セグメントは赤色で表示され、負の活動を区切る時間セグメントは青色で表示されている。ドットは、その被験者についてのパターンの時間セグメント内のzスコア振幅閾値を合格した活動の正(赤色)または負(青色)のピークを提示している。
参加した全被験者の時間セグメントの境界内のピーク活動潜時(ms)の平均値および標準偏差は、上方パネルの下の括弧内に提示されている。電極Fzのパネル内の白色矢印は、外れ値であると自動的に選択された単一コントロール被験者の活動ピークを表示している(本文参照)。電極C3のパネル内の青色矢印および赤色矢印は、各々総加算平均活動におけるN100成分およびP300成分を表示している。
所定の被験者は、活動ピークが該パターンに関係している全電極の全時間窓に出現した場合に、全パターンを満たしたと言明された。図12に提示したパターンは、全コントロール被験者(N=13)において見出された。従ってこのパターンは、13の群−被験者値を有していた。ADHD被験者1例だけがこのパターンについての要件の完全セットを満たしたので、これは13−1=12のパターン弁別レベルをもたらした。
各時間/被験者の長方形に対して、離散化されたが正規化されていない活動振幅の総加算平均値が計算された(カラーパネルの下方の狭い長方形)。従って結果として生じるトレースは、この位置での対応する周波数に対する群の平均ERPに近似する。これらのトレースは、大多数の関係する電極内で優勢な単位活動が大きなN100成分(電極C3の総加算平均値パネル内で青色矢印によって表示されたピーク)であり、その後に顕著なP300成分(同一トレースにおいて赤色矢印によって表示されたピーク)が続くことを示している。
ネットワークの全ての連結された対−パターンにおける2つの事象の単一被験者潜時が抽出され、単一起源から広がっている活動の多部位頭皮提示であるネットワークを同定できるように分析された。最高識別コントロールパターンネットワーク内には193のそのような対が包含され、平均潜時差(ΔLs)の範囲は0.3〜240msに及んだ。平均値間の差についてのノンパラメトリックの対応のある試験(ウィルコクソン(Wilcoxon)の符号付き検定)は、193ΔLsの75.3%がゼロと有意に異なることを見出した(p<0.05)。これらは、約200msのΔLsを備える89対を含んでおり、N100およびP300成分に関連する、2つの実施された深部で生成された事象の頭皮全体に広がる発現を提示するためにも構築することができた。しかし、時間的に隣接する事象を備える104の対−パターン(ΔL<±35)だけを考察した場合でさえ、59%はゼロとは有意に異なることが見出された。1つが293対を備えるADHD最大識別ネットワークの類似の検査および試験も、183ΔLs<±65の59%がゼロとは有意に異なることを見出した。
N100およびP300成分は、ADHD群における各電極からの総加算平均値において著しく弱かった。これは、コントロール被験者と比較して、ADHD被験者における低い個別ERP振幅および高い潜時変動性の両方から生じた。この高い変動性の結果は、数例のADHD被験者が大きなピーク振幅を有していたという事実にもかかわらず、彼らの潜時がコントロールパターンの時間的制約の範囲内に含まれなかったことであった。図12に示したパターンに加えて、他の抽出されたパターン内の大部分の活動(領域の75%)は、δ周波数帯域内で表示された。
図12内の白色矢印は、自動的に外れ値であると同定されたコントロール被験者のピーク活動点を表示している。この被験者の後方活動(電極P3、PzおよびP4)は、コントロール群の残りと比較して小さい振幅によって特徴付けられた。さらに、このパターンに関係する全電極において、外れ値のピーク活動の潜時は、この群の残りの潜時より短かった。この点において、この被験者の電極活動はADHD群の活動により類似したが、被験者は、以下でより詳細に記載するように、ADHD群を特徴付けた全ネットワーク活動を示さなかった。
ADHD群活動のネットワーク分析
ADHD群のNo−go活動をコントロール群のNo−go活動から最高に識別した電極活動のパターンも、場合により好ましくはBNAパターン分析によって自動的に解明された。これらの識別パターンを本明細書ではADHDパターンと呼ぶ。
ADHDパターンの例は、図13に提示されている。図13に提示した書式は、図12における書式と同一である。電極C3のパネル内の白色矢印は、外れ値であると自動的に選択された単一ADHD被験者の活動ピークを表示している。
所定の被験者は、活動ピークが該パターンに関係している全電極の全時間窓に出現した場合に、全パターンを満たしたと言明された。θおよびα周波数帯域が優勢である図13に提示したパターンは、全ADHD被験者(N=13)および1例のみのコントロール被験者において見出された。従ってこのパターンは、13の群−被験者値および13−1=12のパターン弁別レベルを有していた。
このパターンに関係した特異的周波数でのADHD被験者の総加算平均活動は、コントロール活動に比較して大きい、該パターンに関係している全電極における150〜170msの大きな負の成分を解明したが、これはおそらくADHD群における増強されたN200成分を示している。この場合も、複数の関係する電極におけるピーク−活動潜時は、30msの大きさまで有意に相違した。
図13内の白色矢印は、自動的に外れ値であると同定されたADHD被験者のピーク活動点を表示している。コントロール群外れ値とは相違して、この外れ値は、コントロールパターンの全制約を満たした唯一のADHD被験者であった(図12)。2例の外れ値被験者(1例のコントロール被験者および1例のADHD被験者)はこれ以降、その後の全分析で取り除かれた。外れ値の自動除外は、コア群におけるBNAパターンをより明瞭に記述する精密パターンの検出を可能にした。
図12および13に提示したパターンは、関係する全位置において自動的に解明された単一事象の実施例である。本実施例では、該識別パターンを共有する異なる領域間の結合性も、以下でさらに詳細に説明するように分析された。
今では外れ値の除外後の、コントロール群とADHD群との2つの識別BNAパターンは、各々図14Aおよび14Bに提示されている。これらのノードは、パターンに参加した単一事象を示している。ノードの位置は、事象が発生した電極を表し、ノードの色は、活動の周波数帯域を表す(赤色はδ帯域、緑色はθ帯域および黄色はα帯域を表示している)。様々なパターンを構成する領域の対間の結合は、2つの領域を結合する線によって提示される。対−パターンに包含される領域だけが線によって結合されている。2つの領域間の結合線の幅は、各結合に指定されたWIを示す。従って、太線は、この線によって結合された2つの領域間の強力な結合を指示している。
これらのパターンを含む活動の電極の位置および周波数のサブセットは外れ値除外前のパターンの電極の位置および周波数のサブセットと似ていることに注目されたい(図14〜Bを図12および13各々の中央パネルと比較されたい)。それでも、この除外はADHD群およびコントロール群各々の活動ネットワークに3〜5つのノードを加えた。ノードの追加は、精密コア群において見出されたより均質なBNAパターンから生じた。群パターンのネットワーク結合性は、コントロール群(図14A)における大脳右半球における強力な前頭−後頭ネットワークおよびADHD群(図14B)における幾らか弱く、余り広汎性ではないネットワークを解明した。
分類および行動との相関
新規患者をADHD群またはコントロール群について見出された識別パターンのセットに基づいたADHDまたはコントロールのいずれであるかの分類を図15A〜Fに提示した実施例に例示する。図15Aは、分類対象のコントロール被験者(そのネットワーク活動は図15C〜Dに提示されている)を除外した、コントロール群における最も明確なパターンのネットワーク結合性を例示している。図15Bは、試験されたADHD被験者(そのネットワーク活動は図15E〜Fに提示されている)を除外した、ADHD群最も明確なパターンを例示している。図15C〜Dは、コントロール群パターンおよびADHD群パターン各々のために試験されたコントロール被験者のネットワーク結合性を例示している。図15E〜Fは、コントロール群パターンおよびADHD群パターン各々のために試験されたコントロール被験者のネットワーク結合性を例示している。図15A〜Bにおける線幅書式は、図14A〜Bにおける線幅書式と同一である。図15C〜Fにおける2つのノード間の結合線の幅は、パターン内の各対についての対−パターン類似性尺度を計算することによって決定されるように、両方の母群への被験者の結合の類似性を示している(群パターンにおけるその電極対のWIの倍数である、各電極対について計算されたSc)。太線は、群パターンの結合と高度に類似する結合を示している。群パターンにおいて出現するが、試験された被験者のパターン内には出現しない線は、対応する対が単一被験者の活動内に存在しないことを示している。ノードのカラーは図14A〜Bにおけるものと同様である。
図15A〜Bでは、除外された被験者がこの段階の前に取り除かれた2つの外れ値ではないことに注目されたい。
図15Cおよび15Fに示したように、試験したコントロール被験者の活動におけるコントロールパターン(図15C)および試験したADHD被験者の活動におけるADHDパターン(図15F)の強力な発現が存在した。しかし図15Dおよび15Eに図示したように、両方の試験被験者において、電極活動は対照的な群パターンの強力な発現を引き出さなかった。単一被験者の群への分類は、その群について抽出されたパターンの各々へのこの類似性レベルに基づいていた。
以下の表1は、分類結果を要約している。結合性および同期性に基づく分類は、84%の感受性(ADHD被験者13例中11例がそのように分類された)および92%の特異性(コントロール被験者13例中12例は非ADHDであると分類された)を生じさせたが、振幅に基づく分類は84%の感受性および76%の特異性をもたらした。
(表1)
以下の表2は、13例のコントロール被験者およびADHD被験者の各々について本発明の一部の実施形態によって計算された、コナーズ成人ADHD評価スケール(CAARS)およびBNAパターンに基づくADHD指数を要約している。
(表2)
表2の結果は、CAARSサブスケールと本実施形態のBNAパターンに基づくADHD指数(図16においては「BNAパターンスコア」と表示した)との相関を示している図16に提示されている。図16の上方、中央および下方パネルは、不注意症状、過活動/衝動および総合指数各々についてのCAARSサブスケール間の相関を示す図に対応している。図16における緑色ドットはADHD被験者を表示し、青色ドットはコントロール被験者を表示している。外れ値は、上述したように自動的に同定された。相関係数(r)および有意レベル(p)は、各パネルの上方に(外れ値を含めて、および含めずに)提示されている。
有意な相関は、本発明のADHD指数と全3種のCAARSスコア間で出現した。相関の範囲は、全被験者が含まれた場合は約0.51〜約0.65であり、自動的に検出された外れ値が除外された場合は約0.77〜約0.87であった。これらの結果は、本実施形態のBNAパターン比較技術が、広範な障害にわたって考察された場合、つまりコントロールおよびADHD被験者の両方が含まれた場合に異なるレベルのADHDに感受性であることを証明している。
本実施形態の技術の感受性は、その中でBNAパターンがCAARSとの関係を示さない2つの不連続群(コントロールおよびADHD)を結合するアーチファクトではないことに注目されたい。これは、BNA−CAARS関係がCAARSスコアの全範囲にわたって明白である図16に示す。
これらの結果は、さらに各CAARSスケール上で被験者を以下のように中央分割に基づいて「高」および「低」に分けることによって分析された:低不注意(スコア≦80)、高不注意(スコア≧81)、低過活動/衝動(スコア≦74)、高過活動/衝動(スコア≧75)、低CAARS合計(スコア≦88)および高CAARS合計(スコア≧89)。この後、BNAパターンを使用して、高/低群について記述統計量が計算された。表3は、記述統計量を要約している。
(表3)
この統計学的観察において証明されたように、「高」CAARS群における平均BNAパターンは、「低」における平均BNAパターンの約2倍であり、他方中央値については、この比率は約3倍である。
表4は、追加のADHD群の13番被験者を除いて、被験者15例の各々について本発明の一部の実施形態によって計算された、臨床評価スコア(CGI−s、AISRSおよびADHD−RS)およびBNAパターンに基づくADHD指数を要約している。
(表4)
これらの結果は、さらに各CGI−SおよびAISRSスコア上で被験者を以下のように中央分割に基づいて「高」および「低」に分けることによって分析された:低CGI−S(スコア=4)、高CGI−S(スコア=5または6)、低AISRS(スコア≦34)、高AISRS(スコア≧35)。以下の表5は、BNAパターンを使用して、高/低群について計算した記述統計量を要約している。
(表5)
この統計的観察において証明されたように、本発明のBNAパターンに基づくADHD指数の平均値は、「低」および「高」群間で分けられる。
結論
本実施例で記載した試験は、本実施形態のBNAパターン技術がADHD被験者と非ADHD被験者とを判別することに加えて、様々なADHDレベル間を判別する能力を証明した。そのような判別は、場合により好ましくは、被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性として表現された尤度値によって提供される。尤度値は、コンピュータ可読媒体に送信する、またはグラフもしくはその他の方法で表示することができる。
本試験で証明されたように、本実施形態は、比較的に均質なADHD集団、例えば本試験において試験した集団についてさえそのような判別を首尾よく提供する。このため、本実施形態のBNAパターン技術は、ADHD重症度の範囲を評価するための客観的診断ツールとして利用できると結論付けられている。
神経可塑性を監視するためのBNAパターン比較の使用
本実施形態の実施形態を使用して自然および治療誘導性回復(脳可塑性)に関係する生理学的プロセスを監視した。この技術は、個別脳卒中患者が病変部近傍の運動領域を動員することによって、または休眠神経回路を見出すことによって、自身の運動能力を回復することを監視するために有用である。そのような監視は非侵襲性であり、毎日の臨床ベースで利用することができる。
方法
本試験は、片側不全麻痺被験者30例およびコントロール群としての健常被験者18例を含んでいた。10回の治療セッションが各被験者に対して2週間かけて毎日実施された。各被験者について、EEGデータはBioSemi社製Active−Twoシステムを使用して64個の頭皮電極を用いて収集され、EMGデータは両腕の伸筋、屈筋および二頭筋を用いて収集された。10回の治療セッションを完了したのが全被験者ではなかったので、本実施例には9回の治療セッションだけが提示されている。
各治療セッション中、以下のプロトコルが実施された:
(i)治療前評価:障害のある手による手首の30回の背屈繰り返しによる手の活動中のEEGおよびEMG記録。
(ii)治療:理学療法−鏡治療:
(a)60回の繰り返し−鏡で運動を観察しながら、麻痺のない手;および
(b)30回の繰り返し−鏡で麻痺のない手を観察しながら、両手
(iii)治療後評価:障害のある手による30回の手首背屈繰り返しによる手の活動中のEEGおよびEMG記録。
コントロールは、各手による30回の手首背屈繰り返しによる手の活動中のEEGおよびEMG記録を含んでいた。
機能的有効性エンドポイントは、フーゲル・マイヤー(Fugl−Meyer)(FM)試験による手/腕の機能を含んでいた。
群BNAパターンは、コントロール群に対して構築され、被験者特異的BNAパターンは各被験者から構築された(患者1例治療1回に付き1つのBNAパターン)。さらに、後期BNAパターンは、最終3日間の治療中に収集されたEEGデータに基づいて各被験者に対して構築された。全BNAパターンは、上記の実施例1に記載した技術を使用して構築された。
結果
図17A〜Bは、健常コントロールの手の活動化に特有であるベースラインBNAパターン(図17A)およびfMRI(図17B)を示している。fMRIは活動の5〜6秒後に取得され、BNAパターンは1,500ms間に取得されたデータに基づいて構築された(運動開始については聴覚的キューの開始500ms前から聴覚的キューの1,000ms後まで)。BNAパターンのカラーコードは、次の通りである:赤色ノードはδ波に対応し、緑色ノードはθ波に対応し、黄色ノードはα波に対応し、シアンノードは低β波に対応する。
以下は、右腕/手に機能障害がある1例の代表的な右利きの女性片側不全麻痺被験者(48歳)についての症例結果である。
図18は、9回の治療セッション後の片側不全麻痺被験者の従来型CTスキャンである。CTスキャンは、脳の左側での病変領域を示している(図18における白色領域を参照)。
図19は、この被験者のBNAパターン分析を示している。図19には、9日間各々について構築された被験者特異的BNAパターンならびに該被験者特異的BNAパターンと図17AのベースラインBNAパターンとの類似性が示されている。さらに、フーゲル・マイヤー有効性スコアのエンドポイント(ダイヤモンド形)間の直線(点線)も示されている(第1日ではFM=27および第9日ではFM=46)。これらのFMの最大スコア(FMmax=66)に比したパーセンテージは、各々41%および70%である。
第7、8および9日から平均化したデータに基づいて、この被験者についての後期BNAパターンが構築された。後期BNAパターンは、図20に例示する(カラーコードは上記の通り)。
図21は、特定の1日の被験者特異的BNAパターンが群BNAパターンとの代わりに後期BNAパターンと比較されることを除いて、該被験者のBNAパターン分析を示している。図21には、第3〜8日のBNAパターンを示す。FM有効性エンドポイントの書式および数値は、図19と同一である。
結論
本実施例において記載した試験は、本実施形態のBNAパターン技術が神経可塑性を監視する能力を証明した。そのような監視は、場合により好ましくは、被験者特異的BNAパターンを同一被験者の群BNAパターンおよび/または後期BNAパターンと比較することによって実施される。この比較は、各BNAパターン間の類似性値を計算することによって定量的である可能性があるが、その場合には神経可塑性の監視が時間の関数として達成される神経可塑性の「量」を記載する類似性値の時間順序シリーズとして表示することができる。この時間順序シリーズは、コンピュータ可読媒体に送信する、またはグラフもしくはその他の方法で表示することができる。
急性疼痛を監視するためのoBNAパターン比較の使用
本実施形態の実施形態を高温および低温状態を特徴付けるパターンを抽出するため、および脳パターンを疼痛強度に相関させるために使用した。
方法
本試験は、14例の右利き健常被験者を含んでいた。各被験者は、異なるセッションにおいて2種の温度強度:35℃(ベースライン温度)および52℃(高温)で左前腕に適用される熱刺激を受けた。視覚アナログスケール(VAS)上の客観的数値疼痛スコアを各刺激後に収集した。
31個の電極からのERP記録を収集した。頭皮上の電極配置は、図22に例示する。図22の記号は、EEG記録において一般に使用される慣習に従っている。詳細には、Fは前頭葉を意味し、Tは側頭葉を意味し、Pは頭頂葉を意味し、Oは後頭葉を意味し、Cは中心葉を意味し、Zは正中線を意味する。
2つの群BNAパターン(ベースライン温度に対する1つのBNAパターンおよび高温に対する1つのBNAパターン)ならびに幾つかの被験者特異的BNAパターン(被験者1例当たり1セッション当たり1つのBNAパターン)は、上記の実施例1に記載したように本実施形態の教示に従って構築された。
被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性は、上記の実施例1に記載したように計算された。各被験者に対して、客観的疼痛指数は、高温に対する被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性であると規定された。
結果
図23Aおよび23Bは、ベースラインおよび高温各々についての群BNAパターンを示している。ノードについてのカラーコードおよび線書式は、上記の図14A〜B(実施例1)に記載した通りである。図示したように、高温状態についての群BNAパターンは、BNAパターンの順序およびサイズの両方に関してベースライン温度状態に対する群BNAパターンより有意に高い。2つの被験者特異的BNAパターンの代表的な例は、上述した図9Aおよび9Bに提供する。
図24Aおよび24Bは、高温およびベースライン温度各々についての単一電極(PZ位置に配置された、図22を参照)活動の代表的な例を示している。図24A〜Bには、電極の個別活動(上方)および該活動の時間実行総加算平均値(下方)が図示されている。図24A〜Bの各々における上方パネルは、各被験者に対して1行ずつの18行を有する。各行において、被験者の記録されたエポックの持続時間に対する非正規化平均活動はカラースケールによって提示され、青色は負の極値であり、赤色は正の極値である。上方パネル内の垂直線は、該電極活動の最小(左)および最大(右)潜時限度を提示している(第2青色線および第1赤色線が重複しているのに注目されたい)。正の活動の境界を区切る時間セグメントは赤色で表示され、負の活動を区切る時間セグメントは青色で表示されている。ドットは、その被験者についてのパターンの時間セグメント内のzスコア振幅閾値を合格した活動の正(赤色)または負(青色)のピークを提示している。
図25は、客観的疼痛指数と視覚アナログスケール上の主観的疼痛スコアとの相関を示している。「A」および「B」と表示された点は、図9Aおよび9Bの各々に図示された被験者特異的BNAパターンに対応する。ピアソン(Pearson)相関係数は、r=0.9、p<0.001である。
客観的疼痛指数を規定するための代替アプローチは、単一パラメータ、例えば特定電極の振幅による。
図26は、CZ電極の振幅と視覚アナログスケール上の主観的疼痛スコアとの相関を示している。この場合のピアソン相関係数は、r=0.45、p>0.5である。従って、客観的疼痛指数と疼痛レベルの知覚との相関は、本実施形態のBNAパターン比較技術を用いると単一パラメータ分析よりも高い。
本実施例は、本実施形態のBNAパターン比較技術が、高い感受性および特異性を備えてベースラインと高熱誘導性疼痛との間を有意に判別する脳パターンを同定するために使用できることを証明した。本実施例は、さらに本実施形態のBNAパターン比較技術が客観的疼痛指数を計算するために使用できることも証明した。
結論
本実施例において記載した試験は、本実施形態のBNAパターン技術が疼痛を監視する能力を証明した。そのような監視は、場合により好ましくは、被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性値を使用して表示される客観的疼痛指数として提供される。この客観的疼痛指数は、コンピュータ可読媒体に送信する、またはグラフもしくはその他の方法で表示することができる。
薬理学的誘導性記憶欠損症を分析するためのBNAパターンの使用
スコポラミンは、動物およびヒトにおいて記憶喪失特性を有する。健常ヒトへのスコポラミンの投与は、アルツハイマー病において観察される症状に類似する所定の症状を誘導することが公知である。スコポラミン誘導性記憶欠損症は、この状態の経過において観察される記憶障害の実験的薬理学的モデルとして使用されている。スコポラミンは、ラットにおける受動回避の試験における取得、記憶および想起の能力を低下させる。これは、動物が、学習後にその場所で弱い電気ショックを受ける暗所区画に進入する際に有する慎重さを測定する工程を含んでいる。スコポラミンの投与は、この慎重さを抑制し、試験化合物はスコポラミンの作用を妨害する。
本発明の実施形態は、スコポラミンが投与された被験者から取得されたEEGデータを分析するために使用されてきた。
方法
本試験には、15例の成人被験者(男性12例、女性3例、年齢37.6±5.6歳)が参加した。全被験者は、健常志願者であった。
全被験者にはスコポラミン0.4mg、およびプラセボ剤として機能する食塩液がランダム方法で連日投与された。
全被験者は聴覚的オッドボール標的検出試験およびワーキングメモリ試験を受けた。
聴覚的オッドボール標的検出試験では、被験者は、一連の標準刺激内で低頻度および不規則に発生する聴覚的標的刺激に応答するように要請された。標準刺激は1,000Hzトーンの形で行われ、標的刺激は2,000Hzトーンの形で行われた。2つの連続刺激(標準または標的)間の間隔は、1.5秒間であった。各被験者は一連の刺激に曝露させられたが、そのうちの80%は標準刺激であり、10%は標的刺激であった。追加の10%は、背景音(「新規刺激」と呼ばれた)であった。
ワーキングメモリ試験では、各被験者は、ヒトの顔の画像(「キュー」と呼ばれる)を記憶するように要請された。2秒後、被験者には再びヒトの顔の画像(「プローブ」と呼ばれる)が提示され、プローブがキューと適合するかどうかを決定することを求められた。
全被験者は、試験中にEEG記録を受けた。ERPは、国際10−20法に従って配置され、導電性ジェル(Signa、Parker社)が充填された、頭皮に取り付けられた64個のAg−AgCl活性電極(ActiveTwo、Biosemi社)を使用して記録された。
EEGチャネルからの電位は増幅させられ、256Hzのレートでデジタル化され、オフライン分析のために保存された。
2つの群BNAパターン(プラセボ群に対する1つのBNAパターンおよびスコポラミン群に対する1つのBNAパターン)および幾つかの被験者特異的BNAパターンは、上記の実施例1に記載したように本実施形態の教示に従って構築された。被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性は、データ選択に関する下記の前提条件を除いて、上記の実施例1に記載したように計算された。
本実施例では、2つのタイプの群BNAパターンが構築された。本明細書ではDIFF BNAパターンと呼ばれる第1のタイプは、2つの群間または2つの条件間を最も弁別した活動について記述した。このタイプでは、1つの群内の最大数の被験者15例中で被験者2例の弁別閾値(1つの群内で該パターンを有していた被験者数から他の群内で該パターンを有していた被験者数を減じた数)を除いて少なくとも被験者11例において出現したデータ特性を使用してBNAパターンが構築された。これを言い換えると、DIFF BNAパターンは、2つの群の共通特徴を含んでいない。このタイプのBNAパターンについてのSI量は、上記の実施例1に記載したように計算された。
本明細書ではALL BNAパターンと呼ばれる第1のタイプは、他の群または条件とは関連しない、単一の群または状態の活動を記述した。このタイプのBNAパターンのSI量は、固定時間窓に基づいていた(図3AにおけるΔtAおよびΔtBを参照)。時間窓は、平均値±1.5*STD(式中、STDは群の標準偏差であった)と規定された。結果
オッドボール試験
標的刺激の検出中のプラセボ群の活動をスコポラミン群から識別した電極活動のパターンは、本実施形態のBNAパターン分析によって自動的に解明された。これらの識別パターンを以下ではプラセボパターンと呼ぶ。
プラセボパターンの1つの例は、図27A〜Dに提示されている。そのようなパターンは、標的刺激の検出中にプラセボ群の被験者12例において観察された。従ってこのパターンは、12の群−被験者値を有していた。4例のスコポラミン被験者がこのパターンについての要件の完全セットを満たしたので、これは8のパターン判別レベルをもたらした。
このパターンは、δ周波数での電極:CP6、P2、P4、P6、P8、PO4、PO8を含んでいた。
図27Aは、プラセボ群(中央の列)およびスコポラミン群(右の列)に対する、このパターンについての固有のBNAパターン(左の列、上方)ならびにCP6、P4およびP2電極(各々、第1、第2および第3行)における特有の活動を示している。図27B〜Dは、プラセボ群(黒色曲線)およびスコポラミン(赤色曲線)群についてのCP6(図27B)、P4(図27C)およびP2(図27D)電極によって測定された時間の関数(ms)としてのERP(μV)を示している。
図27Aの右の列に示したBNAパターンのカラーコードは、次の通りである:赤色ノードはδ波に対応し、緑色ノードはθ波に対応し、黄色ノードはα波に対応し、シアンノードは低β波に対応する。2つのノード間の結合線の幅は、各結合に指定されたWIを示し、太い線はより高いWI値に対応する。
図27Aの中央および右の列には、各群および各電極についてのデータがカラーパネルおよびグラフで提示されている。このグラフは、活動の時間実行総加算平均値を示している。カラーパネルは、該群の各被験者当たり1行である15行を有する。各行において、被験者の記録されたエポックの持続時間に対する非正規化平均活動はカラースケールによって提示され、青色は負の極値であり、赤色は正の極値である。カラーパネル内の垂直の線は、該パターン内の電極活動の最小(左)および最大(右)潜時限度を提示している。正の活動の境界を区切る時間セグメントは赤色で表示され、負の活動を区切る時間セグメントは青色で表示されている。ドットは、その被験者についてのパターンの時間セグメント内のzスコア振幅閾値を合格した活動の正(赤色)または負(青色)のピーク(本実施例では提示されていない)を提示している。参加している全被験者の時間セグメントの境界内のピーク活動潜時(ms)の平均値および標準偏差は、カラーパネルの下の括弧内に提示されている。標的刺激の検出中のスコポラミン群の活動をプラセボ群から識別した電極活動のパターンも、本実施形態のBNAパターン分析によって自動的に解明された。これらの識別パターンを以下ではスコポラミンパターンと呼ぶ。
スコポラミンパターンの例は、図27A〜Cに提示されている。そのようなパターンは、標的刺激の検出中にスコポラミン群の被験者12例において観察された。従ってこのパターンは、12の群−被験者値を有していた。1例のプラセボ被験者がこのパターンについての要件の完全セットを満たしたので、これは11のパターン弁別レベルをもたらした。このパターンは、β(12〜18Hz)周波数で電極:F4、FC2、FC4、FC5、FC6、FT8、C2、C4、C6、TP8を含んでいた。
図28Aは、プラセボ群(中央の列)およびスコポラミン群(右の列)に対する、このパターンについての特有のBNAパターン(左の列)ならびにFC6およびFC2電極(各々、第1および第2行)における特有の活動を示している。図28B〜Cは、FC6およびFC2電極各々によって測定されたプラセボ群およびスコポラミン群についての時間の関数としてのERPを示している。単位、提示の書式およびカラーコードは、図27A〜Dにおけるものと同様である。
新規刺激の検出中のプラセボ群の活動をスコポラミン群から識別した電極活動のパターンは、本実施形態のBNAパターン分析によって自動的に解明された。これらの識別パターンを以下ではプラセボパターンと呼ぶ。
プラセボパターンの例は、図29A〜Dに提示されている。そのようなパターンは、新規刺激の検出中にプラセボ群の被験者14例において観察された。従ってこのパターンは、14の群−被験者値を有していた。スコポラミン被験者はこのパターンについての要件の完全セットを1例も満たさなかったので、これは14のパターン弁別レベルをもたらした。このパターンは、δ周波数での電極:AF4、F1、F2、F4、F5、F6、F7、F8、Fz、FC1、FC2、FC3、FC4、FC5、FC6、FCz、FT7、FT8、C1、C2、C3、C4、C5、C6、Cz、T7、T8、CP1、CP2、CP4、CP5、CP6、CPz、TP7、P1、P2、P4、P5を含んでいた。
図29Aは、このパターンについて特有のBNAパターンを示しており、図29Bは、プラセボ群(左の列)およびスコポラミン群(右の列)に対する、F7、F3およびFC3電極(各々、第1、第2および第3行)における特有の活動を示している。図29C〜Dは、FC7およびFC3電極各々によって測定されたプラセボ群およびスコポラミン群についての時間の関数としてのERPを示している。単位、提示の書式およびカラーコードは、図27A〜Dにおけるものと同様である。
ワーキングメモリ試験
本実施形態のBNAパターン分析は、コード化過程中(つまり該被験者にキューが提示されている間)および想起過程中(つまり該被験者にプローブが提示されている間)の両方の電極活動の識別パターンを首尾よく解明した。
図10Bおよび30A〜Cは、想起プラセボDIFF BNAパターンの実施例を提示している。そのようなパターンは、想起過程中にプラセボ群の被験者14例において観察されたので、この群を識別するために使用された。従ってこのパターンは、14の群−被験者値を有していた。1例のスコポラミン被験者がこのパターンについての要件の完全セットを満たしたので、これは13のパターン弁別レベルをもたらした。
このパターンは、θ周波数での電極:F7、AF7、Fp1、Fpz、Fp2、AF8、F8、AF3、AFz、AF4、F1、Fz、F2、F6、F8、FCz、FC2、P9、P10、Izおよびα周波数での電極:Fp1、Fp2、AF4、PO7、PO8、P8、P10、Oz、O2、Izを含んでいた。図10Bは、このパターンについて特有のBNAパターンを示しており、図30Aは5つの時点(プローブ提示の110ms、150ms、170ms、206msおよび292ms後)における経時的なこのパターンの出現を示している。図30B〜Cは、プラセボ群(図30B)およびスコポラミン群(図30C)に対する、P8電極における特有の活動を示している。単位、提示の書式およびカラーコードは、図27A〜Dにおけるものと同様である。
図10Dおよび31A〜Eは、想起スコポラミンDIFF BNAパターンの実施例を提示している。そのようなパターンは、想起過程中にスコポラミン群の被験者15例において観察されたので、この群を識別するために使用された。そこでこのパターンは、15の群−被験者値を有していた。1例のプラセボ群被験者がこのパターンについての要件の完全セットを満たしたので、これは14のパターン弁別レベルをもたらした。
このパターンは、θ周波数での電極:Fp1、Fpz、AF7、AFz、AF4、AF8、Fz、F1、F2、F3、F4、F5、F7、FCz、FC1、FC2、FC3、FC4、FC5、FC6、FT7、FT8、Cz、C1、C2、C4、C6、CPz、CP2を含んでいた。図10Dは、このパターンについて特有のBNAパターンを示しており、図31Aは4つの時点(プローブ提示の105ms、145ms、151msおよび252ms後)における経時的なこのパターンの出現を示している。図31B〜Eは、プラセボ群(図31Bおよび31D)およびスコポラミン群(図31Cおよび31E)に対する、CP2(図31B〜C)およびFCZ(図31D〜E)電極における特有の活動を示している。単位、提示の書式およびカラーコードは、図27A〜Dにおけるものと同様である。
図10A、32A〜B、33A〜Fおよび34A〜Bは、コード化プラセボDIFF BNAパターンの実施例を提示している。そのようなパターンは、コード化過程中にプラセボ群の被験者13例において観察されたので、この群を識別するために使用された。従ってこのパターンは、13の群−被験者値を有していた。2例のスコポラミン被験者がこのパターンについての要件の完全セットを満たしたので、これは13−2=11のパターン弁別レベルをもたらした。このパターンは、4つのノード:IZ(潜時、約166ms、主としてθ波)、P9(潜時、約170〜175ms、主としてα波およびθ波)、P10(潜時、約170〜175ms、主としてα波)およびF6(潜時、約266ms、主としてθ波)を含んでいた。図10Aは、このパターンについて特有のBNAパターンを示している。図32A〜Bは、プラセボ群(図32A)およびスコポラミン群(図32B)に対する、IZ電極における特有の活動を示している。図33A〜Dは、プラセボ群(図33Aおよび33C)およびスコポラミン群(図33Bおよび33D)に対する、P9電極におけるθ波(図33A〜B)およびα波(図33C〜D)の特有の活動を示している。図33E〜Fは、プラセボ群(図33E)およびスコポラミン群(図33F)に対する、P10電極における特有の活動を示している。図34A〜Bは、プラセボ群(図34A)およびスコポラミン群(図34B)に対する、F6電極における特有の活動を示している。単位、提示の書式およびカラーコードは、図27A〜Dにおけるものと同様である。
図10Cおよび35A〜Bは、コード化スコポラミンDIFF BNAパターンの実施例を提示している。そのようなパターンは、コード化過程中にスコポラミン群の被験者13例において観察されたので、この群を識別するために使用された。従ってこのパターンは、13の群−被験者値を有していた。3例のプラセボ被験者がこのパターンについての要件の完全セットを満たしたので、これは1a−3=10のパターン弁別レベルをもたらした。このパターンは、θ周波数での電極:Fp1、Fpz、Fp2、AF7、AF3、AFz、AF4、AF8、F2、F5、F7、Fz、FCz、FC1、FC2、FC3、FC4、Cz、C1、C2、C3、CP1、CP2、CP3、CP4、Pz、P2を含んでいた。図10Cは、このパターンについて特有のBNAパターンを示しており、図35A〜Bは、プラセボ群(図35A)およびスコポラミン群(図35B)に対する、F4電極における特有の活動を示している。
全タイプのBNAパターンに関係する結果は、図41〜43に示す。
図41A〜Dは、第1群がコード化プラセボと規定され(つまり、データがプラセボで治療された被験者からのコード化過程中に収集された)、および第2群が想起プラセボと規定され(つまり、データがプラセボで治療された被験者からのコード化過程中に収集された)た場合に得られた結果を示している。図41Aはコード化プラセボBNAパターンの例を提示し、図41Bは想起BNAパターンの例を提示している。コード化プラセボBNAパターンは、θ周波数での電極:Fpz、AF3、AFz、AF4、F1、Fz、F2、F4、F6、FC1、FCz、FC2、FC4、C5、C3、C1、Cz、C2、CP1、CPz、CP2、Iz、O2、PO8、P8、P9、P10、α周波数での電極:P9、P10および低β周波数での電極O1を含んでいた。想起プラセボBNAパターンは、θ周波数での電極AF3、AFz、AF4、F3、F1、Fz、F2、F4、F6、F8、FC3、FC1、FCz、FC2、FC4、C1、Iz、P9、P10およびα周波数での電極:Fpz、Fp2、AF4、F4、P9、P10、PO7を含んでいた。図41Cは、コード化プラセボ(左の列)および想起プラセボ(右の列)BNAパターンの展開を示しており、図41Dは、これらの群についての特有のBNAスコアの要約を示している棒グラフである。ウィルコクソン検定に従った対応するp値は、3.05×10−5であった。
図42A〜Dは、第1群がコード化プラセボとして規定され、第2群がコード化スコポラミンとして規定された場合に得られた結果を示している。図42Aはコード化プラセボBNAパターンの例を提示し、図42Bはコード化スコポラミンBNAパターンの例を提示している。コード化プラセボBNAパターンは、θ周波数での電極:Fpz、AF3、AFz、AF4、F1、Fz、F2、F4、F6、FC1、FCz、FC2、FC4、C5、C3、C1、Cz、C2、CP1、CPz、CP2、Iz、O2、PO8、P8、P9、P10、α周波数での電極:P9、P10および低β周波数での電極O1を含んでいた。コード化スコポラミンBNAパターンは、θ周波数での電極:Fp1、Fpz、Fp2、AF7、AF3、AFz、AF4、F3、F1、Fz、F2、F4、F6、FC3、FC1、FCz、FC2、FC4、C5、C3、C1、Cz、C2、C4、C6、CP3、CP1、CP2、CP4、Pz、P2、P9、Izおよびα周波数での電極:FpzおよびP9を含んでいた。図42Cは、コード化プラセボ(左の列)および想起プラセボ(右の列)BNAパターンの展開を示しており、図42Dは、これらの群についての特有のBNAスコアの要約を示している棒グラフである。ウィルコクソン検定に従った対応するp値は、9.16×10−5であった。
図43A〜Dは、第1群が想起プラセボとして規定され、第2群が想起スコポラミンとして規定された場合に得られた結果を示している。図43Aは想起プラセボBNAパターンの例を提示し、図43Bは想起スコポラミンBNAパターンの例を提示している。想起プラセボBNAパターンは、θ周波数での電極AF3、AFz、AF4、F3、F1、Fz、F2、F4、F6、F8、FC3、FC1、FCz、FC2、FC4、C1、Iz、P9、P10およびα周波数での電極:Fpz、Fp2、AF4、F4、P9、P10、PO7を含んでいた。想起スコポラミンBNAパターンは、θ周波数での電極:Fpz、AFz、F1、Fz、F2、F4、F8、FC3、FCz、FC2、FC4、FT8、C1、Cz、C2、C4、C6、CPz、CP2、Oz、O2、PO8、P9、P10およびα周波数での電極:Fpl、Fpz、Fp2、P9、PO7、O1、Oz、Iz、O2、PO4、PO8、P8、P10を含んでいた。図43Cは、想起プラセボ(左の列)および想起スコポラミン(右の列)BNAパターンの展開を示しており、図43Dは、これらの群についての特有のBNAスコアの要約を示している棒グラフである。ウィルコクソン検定に従った対応するp値は、3.05×10−5であった。
結論
上記の実施例は薬理学的誘導性記憶欠損症の分析に関するが、本発明者らは、本実施形態のBNAパターン技術は、薬理学的またはその他のインターベンションによって誘導されたのではない場合でさえ、誘導性記憶欠損症を分析するためにも使用できると認識している。本実施例において記載した試験は、本実施形態のBNAパターン技術が様々なレベルの誘導性記憶欠損症間を判別する能力を証明した。そのような判別は、場合により好ましくは、被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性として表現された尤度値によって提供される。尤度値は、コンピュータ可読媒体に送信する、またはグラフもしくはその他の方法で表示することができる。
軽度認識障害およびアルツハイマー病を備える被験者のBNAパターン
アルツハイマー病(AD)は、高齢者集団において最も広まっている進行性変性疾患である。この疾患の対症療法は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えば、タクリン、ドネペジル、リバスチグミンおよびガランタミンによって提供される。しかし、得られる治療的有用性は、最高様式であっても控えめであると認識される。ADに対する効果的な治療戦略は限られるので、臨床実践において現在利用できる分子の作用様式とは異なる作用様式を備える分子を使用する、そしてこの疾患を治療する、または進行を遅延させることのできる新規治療を見出すことは望ましい。
診断医は、ADの最終的診断を行うために現在利用できる唯一の手段である脳組織の組織病理学的検査とは対照的に、認知症になった患者の生存期間中にADを厳密に同定するための手段を長年にわたり探し求めてきた。ADは、認知症の最も一般的な形態である。わずかな記憶喪失や混乱を訴える患者は、初期には、一部の例ではアルツハイマー病の古典的症状へ進行して知的能力および社会生活能力の重度の障害を生じさせる軽度認識障害(MCI)に罹患していると特徴付けられる。
ADやその診断を巡る論争には、AD患者を他の認知機能低下(cognitive decline)の形態、特に、概してMCIと特徴付けられる低下に苦しむ患者から区別する問題が加わる。そのような低下は、記憶喪失もしくは混乱の一過性症状だけで診断されることが多いという点で潜行性であるが、このとき認知能力は、患者が例えばミニメンタルステート検査(MMSE)などの検査でパフォーマンスの低下であると指摘される点までは減少しておらず、従って見逃されてきちんと治療されない。
MCIの診断は困難である。用語「軽度認識障害」は、最終的に認知症に至ることがある、または至らないことがある状態を記述するために作り出されてきた。一部の試験は、MCI患者はコントロール患者より認知機能のより急速な低下を有するが、軽度アルツハイマー病の患者より急速ではない低下を有することを証明している。
MCIは、認知症または他の認知機能の、年齢もしくは教育的背景から予測される程度を越える程度までの有意な障害を伴わない軽度の最近の記憶喪失と関連する状態であると特徴付けられるが、それでも多くの患者においてはADへ進行する。ADを発症するまで進行する、MCIを有する個人の数に関する数字は様々であるが、文献においてしばしば見られる数字は、MCIであると診断された患者の約40%までが約3年間後にはADを発症するというものである。
本発明の実施形態は、MCIに罹患している被験者およびADに罹患している被験者から取得されたEEGデータを分析するために使用されてきた。
方法
本試験には、成人被験者14例が参加した。7例はADであると診断され、7例はMCIであると診断された。
全被験者が聴覚的オッドボール標的検出試験を受けた。認知ERPの記録は、聴覚的オッドボールパラダイムに従って実施された。患者は、防音され、暗くした室内の検査用のベッドに目を開いて横たわった。音(60dB SPL、持続時間、100ms)が、計150回の刺激となるまでヘッドホンを通して両耳に提示された。患者は、標準の1,000Hzの低音刺激(共通音)の間で20%の発生確率を有する2,000Hzの偏奇(odd)高音刺激(標的音)を確認するように指示された。認知タスクは、偏奇刺激に注意を払い、それらを計数することを必要とした。刺激の出現順序はランダムであり、各刺激間には少なくとも1,140msの間隙があった。3回の検査は、2分間の休止の後に反復指示を行うことによって記録された。この検査は90回の標的刺激が行われると終了され、患者は最偏奇音の計数を報告するように求められた。
電気的脳活動は、参照としての右および左の耳朶(A1〜A2)に取り付けた2つの連結電極を用いて、国際10−20法に従って4つの頭皮誘導(前頭部:Fz、中心部:Cz、頭頂部:Pz、後頭部:Oz)から記録された。インピーダンスは、5KΩ未満であった。EEG活動(サンプリングレート、512Hz)は40,000ゲインで増幅させられ、0.5〜150Hzの帯域通過フィルタを用いて処理され、ERP装置のスクリーン上で視認された。記録は、ベースラインとして機能するための刺激前の100msで開始し、その後は900msに進めて維持された。眼球運動によって歪められたEEGシーケンスは、自動的に拒絶された。
2つの群BNAパターンが、上記の実施例1に記載したように本実施形態の教示に従って構築された。1つの群BNAパターンはAD群から取得されたデータを用いて構築され、もう1つの群BNAパターンはMCI群から取得されたデータを用いて構築された。
結果
本実施形態のBNAパターン分析は、電極活動の識別パターンを首尾よく解明した。
図36A〜Cは、ADパターンの1つの例を提示している。そのようなパターンは、AD群の全被験者において観察されたので、この群を識別するために使用された。従ってこのパターンは、7の群−被験者値を有していた。MCI群被験者はこのパターンについての要件の完全セットを満たさなかったので、これは7のパターン弁別レベルをもたらした。このパターンは、δ、θおよびα周波数帯域にある頭頂および後頭電極(各々、PzおよびOz)を含んでいた。図36Aは、このパターンについて特有のBNAパターンを示しており、図36B〜Cは、AD群(図36B)およびMCI群(図36C)に対する、Oz電極における特有の活動を示している。単位、提示の書式およびカラーコードは、図27A〜Dにおけるものと同様である。
図37A〜Cは、MCIパターンの例を提示している。そのようなパターンは、MCI群の全被験者において観察されたので、この群を識別するために使用された。従ってこのパターンは、7の群−被験者値を有していた。AD被験者はこのパターンについての要件の完全セットを1例も満たさなかったので、これは7のパターン弁別レベルをもたらした。このパターンは、δ、θおよびα周波数帯域にある電極Oz、Pz、CzおよびFzを含んでいた。図37Aは、このパターンについて特有のBNAパターンを示しており、図37B〜Cは、AD群(図37B)およびMCI群(図37C)に対する、Oz電極における特有の活動を示している。単位、提示の書式およびカラーコードは、図27A〜Dにおけるものと同様である。
図36Aおよび37Bに示したように、ADとMCIの特有のパターン間にはこれらの群の各BNAパターンによって明示された有意差がある。従って、本実施例は、本実施形態のBNAパターン比較技術が、ADに対する尤度がMCIより高いか低いかに関して、特定被験者について評価するために使用できる。
結論
本実施形態のBNAパターン技術は、AD被験者をMCI被験者から、ならびに様々なレベルのADおよび/またはMCI間を判別することができる。そのような判別は、場合により好ましくは、被験者特異的BNAパターンと群BNAパターンとの類似性として表現された尤度値によって提供することができる。尤度値は、コンピュータ可読媒体に送信する、またはグラフもしくはその他の方法で表示することができる。
上記の実施例はADおよびMCIに関するが、本発明者らによって、本実施形態のBNAパターン比較技術は、制限なく軽度認識障害、年齢関連性認知機能低下およびMCIを含む多数のタイプの認知障害間を判別するためにも有用であると認識されている。
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