JP2016194121A - 硬質鉄材、被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

硬質鉄材、被覆部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性が要求される摺動面等に好適な硬質鉄材を提供する。【解決手段】本発明の硬質鉄材は、鉄からなる母相中にFe3O4からなる酸化鉄粒子が分散していることを特徴とする。本発明の硬質鉄材は、例えば、基材の少なくとも一部の表面を被覆する鉄めっき膜に用いられる。このような鉄めっき膜を有する被覆部材は、例えば、有機酸を含む処理液を用いて形成した析出層を熱処理することにより得られる。その処理液の温度(浴温度)は、常温程度でも十分であるため、安定して効率的な操業が可能となる。また、熱処理温度も300〜400℃程度で行えば十分である。従って本発明の製造方法によれば、アルミニウム系基材や銅系基材の表面にも、硬質な鉄めっき膜(硬質鉄めっき膜)を形成することが可能である。【選択図】図1

Description

本発明は、硬質鉄材と、その硬質鉄材で被覆された被覆部材およびその製造方法に関する。
各種部材の耐摩耗性等を向上させる場合、その表面にニッケルリンめっき膜やクロムめっき膜等の硬質膜が形成されることが多い。これに対して、鉄めっき膜は、鉄系部材の表面補修やシリンダー内周壁面(摺動面)の形成等に用いられるものの、あまり多用されていない。この理由は、鉄めっき膜がニッケルリンめっき膜等よりも軟質なためである。
しかし、鉄めっき膜は、環境負荷物質であるCr、Ni等を用いずに、安価に形成され得る。このため、鉄めっき膜の硬質化を図る提案が種々なされており、例えば、下記の特許文献に関連した記載がある。
特開昭53−96933号公報 特開平9−202991号公報
特許文献1には、水溶性鉄塩にホウ酸および次亜リン酸を加えた50℃のめっき浴中で電析を行い、得られた電析物を300℃で加熱することにより、硬質な鉄めっき膜(800HV程度)が得られる旨の記載がある。この鉄めっき膜が硬質である理由として、脱水素過程に伴う低温時効とホウ素の共析作用が挙げられている。
特許文献2には、鉄塩に脂肪族カルボン酸および次亜リン酸を加えた50℃のめっき浴中で電析を行うことにより、耐摩耗性に優れた鉄めっき膜が得られる旨の記載がある。この鉄めっき膜が耐摩耗性を発揮する理由は、次亜リン酸が鉄めっき膜中の酸化物量を減少させ、その靱性が向上するためとされている。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、従来の鉄めっき膜等とは異なる機構により硬質化を図れる硬質鉄材と、この硬質鉄材で被覆された被覆部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、有機酸(イオン)を含む鉄塩溶液中で電析して得られた析出層を熱処理すると、その析出層は母相(マトリックス)中にFeナノ粒子が分散した硬質な複合層となることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる種々の発明を完成させるに至った。
《硬質鉄材》
本発明の硬質鉄材は、鉄からなる母相中にFeからなる酸化鉄粒子が分散していることを特徴とする。
本発明の硬質鉄材は、鉄からなる母相中に、硬質なFe粒子(強化粒子)が微細に分散した複合材からなる。このため本発明の硬質鉄材は、P、B、Cr等の環境負荷物質を用いたり、浸炭処理や窒化処理等のような高温処理を施したりするまでもなく、十分な硬さを発揮する。従って本発明の硬質鉄材は、耐摩耗性等が要求される多種多様な部材に広く利用され得る。
《被覆部材》
本発明の硬質鉄材は、バルク材等でもよいが、基材の表面に形成された被覆層であると好適である。そこで本発明は、基材と、該基材の少なくとも一部の表面を被覆する被覆層とからなる被覆部材であって、前記被覆層は、上述した硬質鉄材からなることを特徴とする被覆部材としても把握できる。
なお、ここでいう被覆層は、厚さ(層厚)が0.1〜100μm程度の薄膜でもよいし、厚さが0.1〜100mm程度の厚膜でもよい。このような代表例として、(硬質)鉄めっき膜がある。なお、厚さは、被覆層の断面を(電子)顕微鏡で観察して、基材の最表面から被覆層の最表面までの距離を測定することにより特定できる。
《被覆部材の製造方法》
硬質鉄材や被覆部材は種々の方法により得ることができる。例えば、上述した被覆部材なら、鉄イオンと、有機酸または有機酸イオンとを含む処理液中に基材を浸漬して該基材の少なくとも一部の表面に鉄を含む析出層を形成する析出工程と、該析出工程後の基材を加熱して析出層中にFe を生成させる熱処理工程と、を備える製造方法により得ることができる。
この製造方法により硬質鉄材からなる被覆層が形成される理由は、必ずしも定かではないが、現状では次のように考えられる。先ず、析出工程で、鉄(例えば、α−Feのナノ結晶)と共に有機酸(イオン)を取り込んだ析出層(複合層)が形成される。次に、熱処理工程で、その析出層を加熱すると、有機酸(イオン)が鉄と反応して微細なFe粒子を生成する。こうして、鉄(特にα−Fe)からなる母相層中に硬質で微細なセラミックス粒子であるFe粒子がほぼ均一的に分散した硬質鉄材からなる析出層が基材表面に形成されると考えられる。なお、析出層中へ有機酸が取り込まれる理由は、処理液中で鉄が有機酸とキレート錯体を構成しており、鉄が基材表面に析出する際に有機酸も一緒に引き込むためと考えられる。
《その他》
(1)本明細書でいう「硬質」は、その具体的なレベルを問わないが、例えば、純鉄(α−Fe)よりも硬いレベルであるとよい。敢えていうなら、本発明の硬質鉄材は、硬さが400〜1200HVさらには600〜1000HVであると好ましい。
(2)本発明の硬質鉄材は、硬さや耐摩耗性等をさらに改善し得る改質元素やコスト的または技術的な理由で除去困難な不可避不純物元素を含み得る。また本発明に係る母相を構成する鉄は、必ずしも純鉄ではなくても、製造過程で混入するC、O等を含む鉄合金でもよい。要するに本発明に係る母相は、主たる構成元素がFe(母相全体に対してFeが50原子%超)であればよい。
(3)特に断らない限り、本明細書でいう「x〜y」は、下限値xおよび上限値yを含む。さらに本明細書中に記載した数値やその「x〜y」に含まれる任意の数値を適宜組合わせて、新たな任意の数値範囲「a〜b」を構成し得る。
各試料1に係る浴温度と、熱処理前後の鉄めっき膜の硬さとの関係を示す分散図である。 試料1に係る電析工程後と熱処理工程後の被覆表面を観察したTEM像である。
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。本明細書で説明する内容は、本発明に係る硬質鉄材のみならず、被覆部材またはそれらの製造方法等にも該当し得る。本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を、上述した本発明の構成要素に付加することができる。プロダクトバイプロセスクレームとして理解すれば、方法に関する内容は物(硬質鉄材、被覆部材等)に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《硬質鉄材/被覆層》
本発明の硬質鉄材は、鉄(α−Fe等)の母相中に酸化鉄粒子(Fe粒子)が分散した複合材からなる。なお、本明細書では、便宜上、硬質鉄材からFe粒子を除いた部分を母相という。
(1)母相は、Fe以外に、各種の元素(C、H、O、S等)を単独または化合物等として含んでもよい。例えば、硬質鉄材全体を100質量%として、Cを0〜1.2質量%さらには0.1〜0.8質量%含んでもよい。Cは、母相中に固溶したり、微細なセメンタイト(FeC)を母相中に析出させたりして、母相を強化し、ひいては硬質鉄材の硬さを向上させ得る。なお、母相(ひいては硬質鉄材)は、不純物として存在する場合を除き、環境負荷物質となるN、PおよびBを実質的に含まないと好ましい。
(2)酸化鉄粒子は、硬質鉄材全体を100体積%として、5〜50体積%、10〜45体積%さらには12〜40体積%含まれると好ましい。酸化鉄粒子が過少では、粒子間距離が長くなり、転位の抑止効果が低くなって、硬質鉄材の硬さまたは強度が不十分となり得る。酸化鉄粒子が過多になると、硬質鉄材の靱性が低下し得る。
母相中に分散した微細な酸化鉄粒子の体積率を直接特定することは容易ではない。そこで本明細書では、次のようにして酸化鉄粒子(Fe粒子)の体積率を求めた。先ず、硬質鉄材中に含まれる酸素(O)量を蛍光エックス線法で測定する。次に、硬質鉄材中に含まれる全てのOがFe粒子になっていると仮定して、測定されたO量から硬質鉄材中に含まれるFe粒子の質量割合を算出する。そして、母相(通常はα−Fe)とFe の各密度(公称値)を用いて、その算出されたFe粒子の質量割合を体積割合(体積率)に換算する。本明細書では、このようにしてFe粒子の体積率を特定した。
酸化鉄粒子は、単結晶でも多結晶でもよいが、いずれにしてもFeの結晶質からなると考えられる。従って、酸化鉄粒子の有無は、透過型電子顕微鏡(TEM)等による観察の他、X線回折(XRD)でも把握できる。例えば、XRDのプロフィル上で、Fe を示すピークが3つ以上さらには4つ以上あれば、酸化鉄粒子の結晶が存在するといえる。
(3)酸化鉄粒子は微細であるほど好ましい。例えば、酸化鉄粒子の平均粒径が300nm以下、200nm以下さらには100nm以下であると好ましい。酸化鉄粒子の平均粒径が過大では、硬質鉄材の硬さや靱性等が低下し得る。酸化鉄粒子の平均粒径の下限値は特に規定されないが、敢えていうなら、1nm以上さらには10nm以上であればよい。なお、酸化鉄粒子の粒径は、実質的に、その結晶粒径とほぼ同義であると考えられる。
酸化鉄粒子の平均粒径は、切片法(切断法)により特定される。具体的には、硬質鉄材の表面の異なる5視野をTEMで観察する。各視野のTEM像上に、縦方向と横方向のそれぞれについて、100nm間隔の3本の直線(全長L=1710nm)を引く。各直線を横切った粒子数(n)を求め、各直線毎の平均切片長さ(l)を求める。この平均切片長さの1視野あたりの平均値(6本の直線分の平均値)を求め、さらに、その5視野あたりの平均値を求める。こうして得られた相加平均値(5×3×2本分の直線の平均切片長さの平均値)を、本明細書でいう酸化鉄粒子の平均粒径とする。
《製造方法》
本発明の硬質鉄材は種々の製造方法により得られる。その一例として、硬質鉄材からなる被覆層が基材表面に形成された被覆部材の製造方法を取り上げる。この製造方法は、上述したように、析出工程と熱処理工程からなる。以下、各工程について順に説明する。
(1)析出工程
本発明に係る析出工程は、鉄イオンと有機酸または有機酸イオンとを含む処理液中で、基材の表面に鉄を含む析出層を形成する工程である。この析出層は、いわゆる鉄めっき層であるが、単なる純鉄(α−Fe)からなるめっき層ではなく、少なくとも有機酸または有機酸イオンを内包している。
処理液(めっき液)の温度(浴温度)は、常温でも温間でもよい。温間であると析出工程が促進される。但し、処理液が高温になると有機酸の分解や揮発等を生じ、処理液の管理ひいては操業が難しくなる。そこで処理液の温度は、75℃以下、60℃以下さらには常温域(40℃以下)であると好ましい。なお、析出工程を行える限り、処理液は低温でもよいが、通常は、0℃以上さらには10℃以上であると好ましい。
処理液に含まれる有機酸、有機酸イオン(R−COO等)または有機酸塩(それらをまとめて、適宜、単に「有機酸」という。)は、析出層(鉄めっき層)中でFeの析出に寄与するものであれば、その種類を問わない。本発明に係る有機酸は、通常、1以上のカルボキシ基を有する水溶性のカルボン酸(R−COOH等)である。このような水溶性有機酸として、例えば、L−アスコルビン酸、クエン酸またはフマル酸の一種以上を用いると好ましい。
有機酸の濃度(合計)は、例えば、1〜100mmol/Lさらには10〜50mmol/Lであると好ましい。有機酸の濃度が過小ではFeの析出量も過少となり、有機酸の濃度が過大であると処理液のpHが低すぎてHが大量に発生し、電流効率が悪くなり好ましくない。質量濃度でいうなら、有機酸(特にL−アスコルビン酸、クエン酸またはフマル酸)の合計濃度は0.5〜50g/L、1〜30g/Lさらには2〜20g/Lとすると好ましい。
処理液中の鉄イオンは、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩(特に第一鉄塩)を供給源とすることができる。鉄イオン(特にFe2+:第一鉄イオン)の濃度は、0.1〜5mol/L、0.3〜1.5mol/Lさらには0.5〜1mol/Lであると好ましい。換言すると、鉄イオンは、5〜250g/L、20〜200g/Lさらには50〜150g/Lであると好ましい。鉄イオンの濃度が過小では析出層の効率的な形成が困難になると共に、析出工程中の陰極表面に多くのHが付着して電流効率が低下する。鉄イオンの濃度が過大では不経済であり、相対的に有機酸の濃度が低下してFeの析出量も過少となり易い。なお、有機酸(イオン)に対する鉄イオンのモル濃度比は、5〜100さらには10〜50とするとよい。
析出工程は、めっき工程ということもできる。めっき工程は、基材の種類等に応じて、電解めっき工程、無電解めっき工程または置換めっき工程のいずれかが適宜選択されるとよい。例えば、基材が導電性を有する場合、析出工程は、処理液に浸漬した基材へ通電してなされる電析工程(電解めっき工程)であると、硬質鉄材からなる被覆層を効率的に形成し得る。
(2)熱処理工程
熱処理工程は、その析出層を加熱して、析出層中にFeを生成させる工程である。加熱温度は、例えば、250〜550℃さらには300〜500℃であると好ましい。加熱温度が過小ではFeの析出が困難となり、加熱温度が過大では粗大なFe 粒子の析出、またはそれ以外の酸化鉄(FeO、Fe)の析出等も生じ易くなる。また、加熱温度が過大になると、基材に相応な耐熱性が要求され、基材の選択幅が狭くなる。
加熱時間は、10秒〜10時間、10分〜3時間さらには30分〜2時間とするとよい。加熱時間が過少ではFeの析出が不十分となり、加熱時間が過多では不経済である。なお、加熱雰囲気は、不活性ガス(Arガス、Nガス等)雰囲気でもよいが、大気中でも十分である。
《用途》
本発明の硬質鉄材は、種々の用途に用いられるが、十分な硬さを有することから耐摩耗性が要求される部材(特に、その表面改質)等に利用されると好ましい。
被覆部材(特に、基材)は、形状、大きさ、種類等を問わない。電析工程により硬質鉄材からなる被覆層を形成する場合なら、基材は導電性を有するものであればよく、例えば、金属の他、炭素、セラミックス、樹脂などの非金属でもよい。本発明の製造方法によれば、高温で加熱処理する必要がないため、従来の浸炭処理や窒化処理等に不適な金属(純AlまたはAl合金、純CuまたはCu合金等)からなる基材を用いることもできる。
硬質鉄材からなる被覆層は、薄くても厚くてもよく、薄い場合でも十分な耐摩耗性を発揮し得る。被覆層と基材表面との間に、密着性を高める下地層(または中間層)を設けてもよい。また被覆層は、深さ方向または厚さ方向に関して、組成や組織が連続的に変化した傾斜構造をしていてもよいし、不連続的に変化する多層構造をしていてもよい。
基板(基材)の表面に鉄めっき膜(被覆層、析出層)を形成した試料(被覆部材)を種々製作し、それらの表面硬さ(膜硬さ)を明らかにした。また、各鉄めっき膜の表面をTEM等で観察することにより、その構造を明らかにした。これらの内容を示すことにより、本発明をより具体的に説明する。
《試料の製造》
(1)電析工程(析出工程)
純銅からなる長方形状(15mm×60mm×0.2mm)の基板(以下、「Cu基板」という。)を用意した。Cu基板の表面は、予め、アセトンで脱脂しておいた。なお、その脱脂前に、Cu基板の表面を粗面化しておいてもよい。
表1に示す各処理液毎に、Cu基板を陰極、可溶性電極となる純鉄板を陽極として浸漬し、それらの電極間で通電することによりCu基板の表面に鉄めっき膜を形成した。処理液の温度(浴温度)、通電量(電流密度)、通電時間(電析時間)は表1に併せて示した。なお、試料C1は、処理液中に有機酸を含まない場合である。
(2)熱処理工程
自然乾燥した電析工程後の各Cu基板を、電気炉を用いて、大気雰囲気中で、350℃×1時間加熱した。こうしてCu基板の表面に鉄めっき膜が形成された各試料(被覆部材)を得た。
《鉄めっき膜の特性・観察》
(1)硬さ
各試料の鉄めっき膜のビーカス硬さを、熱処理工程前後でそれぞれ測定した。この測定は次のようにして行った。先ず、各鉄めっき膜の表面を#800のエメリー紙で研磨した後、さらに3μmのダイアモンド砥粒でバフ研磨して仕上げた。各試料の研磨面のビーカス硬さを、その直交方向(法線方向)から測定した。この際、印加荷重:100g、荷重保持時間:15秒とした。こうして得られた各試料に係る鉄めっき膜の硬さ(単に「膜硬さ」という。)を表1に併せて示した。また、熱処理工程前後の硬さの変化を図1に示した。
表1および図1から明らかなように、熱処理を行うことにより、膜硬さは140〜430HVも上昇することがわかった。特に、浴温度を25℃として電析工程を行った試料1〜6は、熱処理工程により膜硬さが大きく向上することがわかった。
(2)組織
試料1に係る鉄めっき膜について、熱処理工程前後の組織をTEMで観察した様子を図2に示した。熱処理工程前の鉄めっき膜は、α−Feの微細粒子(粒径:数nm程度)からなることがわかる。一方、熱処理工程後の鉄めっき膜は、そのα−Feからなる母相中に、微細なFe 粒子(粒径:数nm〜数十nm)がほぼ均一的に分散していることがわかった。
(3)酸化鉄(Fe)粒子の体積率と平均粒径
熱処理工程後の鉄めっき膜(100体積%)に含まれる酸化鉄粒子の体積率は、既述したように、蛍光エックス線法により測定された鉄めっき膜全体に含まれるO量(質量%)と、FeおよびFeの各密度とに基づいて算出した。なお、O量の測定は、鉄めっき膜の表面を#600のエメリー紙で研磨して、その表面に存在する酸化物を予め除去してから行った。
鉄めっき膜中に含まれる酸化鉄粒子の平均粒径は、既述したように、5視野のTEM像を用いて、切片法により特定した。こうして各試料の鉄めっき膜について得られた酸化鉄粒子の体積率と平均粒径を、それぞれ表1に併せて示した。
表1から明らかなように、熱処理前後で硬化している試料1〜9はいずれも、平均粒径が60〜140nm程度である微細な酸化鉄粒子が、12〜40体積%程度分散していることがわかった。また、試料1〜6と試料7〜9を比較すると明らかなように、概して、微細な酸化鉄粒子が多数分散している試料ほど、硬さが大きくなる傾向にあることもわかった。さらに、試料C1から明らかなように、有機酸を含まない処理液中で形成された鉄めっき膜は、熱処理してもFe が鉄めっき膜中に析出することはなく、熱処理前後で膜硬さも殆ど変化しないこともわかった。
なお、試料1〜9に係る硬質鉄めっき膜がα−FeとFe からなることは、X線回折(XRD)でも確認している。

Claims (10)

  1. 鉄からなる母相中にFeからなる酸化鉄粒子が分散していることを特徴とする硬質鉄材。
  2. 前記酸化鉄粒子は、平均粒径が300nm以下である請求項1に記載の硬質鉄材。
  3. 前記酸化鉄粒子は、前記硬質鉄材全体を100体積%として5体積%以上含まれる請求項1または2に記載の硬質鉄材。
  4. 被覆層を構成する請求項1〜3のいずれかに記載の硬質鉄材。
  5. 前記被覆層は、鉄めっき膜である請求項4に記載の硬質鉄材。
  6. 基材と、
    該基材の少なくとも一部の表面を被覆する被覆層と、
    からなる被覆部材であって、
    前記被覆層は、請求項1〜3のいずれかに記載の硬質鉄材からなることを特徴とする被覆部材。
  7. 鉄イオンと、有機酸または有機酸イオンとを含む処理液中に基材を浸漬して該基材の少なくとも一部の表面に鉄を含む析出層を形成する析出工程と、
    該析出工程後の基材を加熱して析出層中にFe を生成させる熱処理工程とを備え、
    請求項6に記載の被覆部材が得られることを特徴とする被覆部材の製造方法。
  8. 前記析出工程は、前記処理液に浸漬した導電性を有する前記基材へ通電してなされる電析工程である請求項7に記載の被覆部材の製造方法。
  9. 前記処理液は、75℃以下である請求項7または8に記載の被覆部材の製造方法。
  10. 前記熱処理工程は、250〜550℃で加熱する工程である請求項7に記載の被覆部材の製造方法。
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