JP2016179973A - 化合物またはその塩および医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】少ない副作用で高い効果が得られる化合物またはその塩および医薬組成物を提供する。【解決手段】N−メチルピロールとN−メチルイミダゾールが連なったピロール−イミダゾールポリアミド(PIポリアミド)であるGPR56−1もしくはGPR56−2、またはこれらの塩を有効成分として含む医薬組成物。当該医薬組成物はGPR56発現抑制剤として使用できる。また当該医薬組成物は白血病の治療または予防に使用できる。【選択図】図13

Description

本発明は、化合物またはその塩および医薬組成物に関する。
骨髄性白血病には、一定の割合で難治性の患者が存在する。難治性の骨髄性白血病に対する様々な治療方法が開発されつつあるが、実用化に至った治療方法は少ない。骨髄性白血病の治療方法を実用化するには、骨髄性白血病の本態と考えられる白血病幹細胞を標的とする治療方法を開発する必要がある。
ゲノムプロジェクトによってヒトの遺伝子のほとんどが同定された現在、白血病幹細胞に関する標的分子の探索が進められている。骨髄性白血病を含む多くの疾患は、生体の恒常性を維持するための生体分子間の相互作用によるシグナル伝達機構の破綻と関係している。したがって、骨髄性白血病に関与するシグナル伝達機構の要となる分子が標的分子となりうる。
例えば、転写因子EVI1(Ecotropic Viral Integration site−1)は、難治性の白血病患者において高発現していることから、白血病を発症する原因の1つとして考えられている。さらに、EVI1の発現が高い白血病細胞の網羅的解析において、EVI1によって制御されていて、かつ白血病細胞で高発現しているGPR56(G−protein coupled receptor 56)が同定された(非特許文献1参照)。GPR56遺伝子の転写は、EVI1がGPR56遺伝子のプロモータ領域に結合することで活性化される(非特許文献2参照)。GPR56は、特許文献1に開示されるように癌治療のターゲット分子として知られている。
GPR56は、幹細胞性の維持に必要不可欠な分子である。GPR56は、難治性の急性骨髄性白血病における接着依存性抗がん剤耐性(CAM−DR)に寄与している。GPR56の転写阻害によって、骨髄nicheから白血病幹細胞が追い出され、細胞増殖が抑制され、アポトーシスが誘導される(非特許文献2参照)。
国際公開第2012/157589号
Saito Y et al.,CD52 as a molecular target for immunotherapy to treat acute myeloid leukemia with high EVI1 expression.,Leukemia,2011,25(6),921−931 Saito Y et al.,Maintenance of the hematopoietic stem cell pool in bone marrow niches by EVI1−regulated GPR56.,Leukemia,2013,27(8),1637−1649
白血病幹細胞は、正常な造血幹細胞と同様のシグナル伝達機構を有している。このため、治療の標的分子としての可能性のある白血病幹細胞のシグナル伝達機構に関与する分子は、正常な造血幹細胞と共通することが多い。したがって、白血病幹細胞のシグナル伝達機構に関与する分子のみに対して選択的に働く治療薬の開発は、原理上、非常に困難である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、癌幹細胞のシグナル伝達機構に関与する分子のみに対して選択的に作用し、少ない副作用で高い効果が得られる化合物またはその塩および医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、EVI1を介したGPR56の転写を抑制することで、白血病幹細胞のシグナル伝達を選択的に遮断することができると考え、鋭意研究を重ねた。その結果、GPR56の転写を制御するプロモータ領域へのEVI1の結合を化合物で阻害して、GPR56の転写を抑制することで、造血系に影響なく、白血病に対する非常に高い薬効が得られることを見出した。
すなわち、本発明の第1の観点に係る化合物は、

もしくは

で表される。
本発明の第2の観点に係る塩は、
上記本発明の第1の観点に係る化合物の塩である。
本発明の第3の観点に係る医薬組成物は、
上記本発明の第1の観点に係る化合物または上記本発明の第2の観点に係る塩を有効成分として含む。
この場合、上記医薬組成物は、
GPR56発現抑制剤であってもよい。
また、上記医薬組成物は、
白血病の治療または予防に使用するためのものであってもよい。
本発明によれば、少ない副作用で高い効果が得られる。
プロモータアッセイの結果を示す図である。 クロマチン免疫沈降アッセイの結果を示す図である。(a)は陰性コントロールであるAP1−2の結果を示す図である。(b)はGPR56−1の結果を示す図である。 フローサイトメトリーで評価したGPR56−1によるGPR56の発現抑制を示す図である。(a)および(b)は、それぞれAP1−2を添加した場合の結果およびGPR56−1を添加した場合の結果を示す図である。 RT−PCRで評価したGPR56−1によるGPR56の発現抑制を示す図である。 GPR56−1を作用させた白血病細胞の経時変化を示す図である。(a)および(b)は、それぞれAP1−2を添加した場合の結果およびGPR56−1を添加した場合の結果を示す図である。 GPR56−1による白血病細胞のアポトーシスの誘導を示す図である。 GPR56−1による白血病細胞のアポトーシス関連マーカーの発現を示す図である。 GPR56−1およびGPR56−2を作用させた白血病細胞の細胞数の経時変化を示す図である。(a)および(b)は、それぞれUSCD/AML1細胞およびMOLM1細胞の結果を示す図である。 皮下移植白血病モデルの腫瘍サイズの経時変化を示す図である。 皮下移植白血病モデルの腫瘍重量を示す図である。 皮下移植白血病モデルの外観を示す図である。(a)および(b)は、それぞれAP1−2を投与した場合およびGPR56−1を投与した場合を示す図である。 皮下移植白血病モデルの骨髄画分に対するフローサイトメトリーの結果を示す図である。 全身白血病モデルの生存率を示す図である。 フローサイトメトリーで評価した全身白血病モデルの各臓器および末梢血にける白血病細胞の割合を示す図である。(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ骨髄、脾臓、肝臓および末梢血の結果を示す図である。
本発明に係る実施の形態について添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態および図面によって限定されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態に係る化合物GPR56−1は、次の式で表される。
GPR56−1は、N−メチルピロールとN−メチルイミダゾールが連なったピロール−イミダゾールポリアミド(PIポリアミド)である。GPR56−1は、上記式に基づいて、任意の方法で合成できる。好適には、GPR56−1は、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム 3−オキシドヘキサフルオロフォスフェイト(HCTU)と各モノマーとの混合物を、ペプチド合成装置にセットしたチューブ内でβ−アラニン−ワング レジンと、上記式の順番に従って順次反応させることで得られる。
合成後は、HPLCで精製し、目的のフラクションを回収してエバポレーターで濃縮してもよい。濃縮したGPR56−1溶液を、凍結乾燥して、GPR56−1を粉末としてもよい。ペプチド合成装置としては、例えば、自動固相合成機PSSM−8(島津製作所製)が挙げられる。
GPR56−1は、ヒト16番染色体にあるGPR56遺伝子の転写制御領域の所定の塩基配列の部位に特異的に結合するように設計されている。GPR56遺伝子の転写制御領域には、EVI1の8〜10番目のzincフィンガー部位が結合する部位「D2B」がある。D2Bの塩基配列は、5’側から3’側に向かって「GAAGAT」である。GPR56−1は、D2Bを含む領域に結合する。GPR56−1が結合する領域の塩基配列は、5’側から3’側に向かって「ACGGAAGAT」である。
GPR56−1がD2Bに結合することで、GPR56遺伝子の転写制御領域へのEVI1の結合が抑制される。このため、EVI1を介したGPR56遺伝子の転写が抑制される。つまり、GPR56−1は、GPR56の発現を抑制する。
GPR56−1は、各種実験に用いることができる。例えば、GPR56−1は、培養した細胞のGPR56の発現抑制試験に使用することができる。この場合、適切な溶媒に溶解したGPR56−1を細胞に暴露させ、当該細胞を所定時間培養すればよい。D2BへのGPR56−1への結合は、培養後の細胞を用いたクロマチン免疫沈降などの方法で確認できる。GPR56のmRNAレベルでの発現抑制を確認するためには、PCR(Polymerase Chain Reaction)法などが用いられる。また、細胞表面におけるタンパク質としてのGPR56の発現抑制を評価するには、培養後の細胞に対するフローサイトメトリー法などが好適である。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るGPR56−1は、GPR56の転写領域に特異的に結合するため、GPR56の発現を抑制できる。特に、GPR56−1は、白血病細胞で高い発現が見られるEVI1のD2Bへの結合を抑制するため、EVI1を介したGPR56の発現を特異的に抑制することができる。また、GPR56−1は、核酸医薬と違い核酸分解酵素に分解されないため、細胞や生体内で安定である。
なお、本実施の形態に係る化合物は、GPR56−1の塩であってもよい。塩は、特に限定されず、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩またはリン酸塩など、適宜選択される。
本実施の形態に係る化合物は、PIポリアミドGPR56−2またはその塩であってもよい。GPR56−2は次の式で表される。
GPR56−2は、GPR−1と同様にGPR56遺伝子の転写制御領域にあるD2Bに特異的に結合するように設計されている。GPR56−2が結合するD2Bを含む領域の塩基配列は、5’側から3’側に向かって「GAAGATAAT」である。GPR56−2がD2Bに結合することで、GPR56遺伝子の転写制御領域へのEVI1の結合が抑制される。このため、EVI1を介したGPR56遺伝子の転写が抑制される。つまり、GPR56−2は、GPR56の発現を抑制する。
GPR56−2は、GPR56−1と同種同等の性質を有し、本実施形態に係る化合物としてGPR56−1と同様に用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態に係る医薬組成物は、GPR56−1もしくはGPR56−2またはその塩を有効成分として含む。上記実施の形態1に記載のように、GPR56−1およびGPR56−2は、EVI1を介したGPR56の発現を抑制する。このため、当該医薬組成物は、GPR56発現抑制剤として使用できる。
当該医薬組成物は、GPR56が関連する疾患、より詳細には、GPR56の活性化に関連する疾患の治療または予防のために用いられる。好適には、当該疾患は、EVI1を介したGPR56の発現または活性化に関連する疾患である。当該疾患は、例えば、悪性黒色腫、卵巣がん、前立腺がん、大腸がん、子宮頸がん、すい臓がん、および非小細胞肺癌である。
好ましくは上記疾患の例として骨髄性白血病、特には急性骨髄性白血病、とりわけEVI1の発現を特徴とする急性骨髄性白血病が挙げられる。上述のように、難治性の白血病患者においてEVI1が高発現しており、EVI1によって発現が制御されるGPR56も白血病細胞で高発現している。一方で、GPR56の発現低下は、白血病細胞の細胞死を引き起こす(上記非特許文献2参照)。このため、EVI1を介したGPR56の発現を抑制することで、白血病細胞の増殖を抑制することができる。したがって、本実施の形態に係る医薬組成物は、白血病の治療または予防に使用するのが好ましい。特に、EVI1は、難治性の急性骨髄性白血病患者で特徴的に高発現しているため、標準治療法による治療が困難なEVI1の発現を特徴とする急性骨髄性白血病の治療または予防に使用するのが特に好ましい。
疾患がEVI1の発現を特徴とする急性骨髄性白血病であるか否かは、急性骨髄性白血病患者から採取した検体試料におけるEVI1遺伝子の発現の有無により確認することができる。遺伝子発現は、公知の手法で確認できる。遺伝子発現は、限定されるものではないが、例えば急性骨髄性白血病患者から採取した検体試料より得られたcDNAをテンプレートとして、EVI1遺伝子に特異的なプライマーセットを用いたPCR法によって確認することができる(国際公開第2010/098166号参照)。
本実施の形態に係る医薬組成物は、GPR56−1またはGPR56−2を有効成分として含有するように既知の方法で製造される。当該医薬組成物は、有効成分として0.1〜99%、1〜50%、好ましくは1〜20%(%は重量%)のGPR56−1またはGPR56−2を含む。
本実施の形態に係る医薬組成物の剤形は、注射剤および経口投与剤が好ましい。この他、当該医薬組成物の剤形は、直腸坐剤、膣坐剤、経鼻吸収剤、経皮吸収剤、経肺吸収剤、口腔内吸収剤などであってもよい。当該医薬組成物は、薬理的に許容される担体と配合された合剤であってもよい。薬理的に許容される担体は、各種の有機担体物質または無機担体物質である。薬理的に許容される担体は、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、または液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして当該医薬組成物に配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの添加物を用いることもできる。
賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などである。滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどである。結合剤は、例えば、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどである。崩壊剤は、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどである。
溶剤は、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴールなどである。溶解補助剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどである。懸濁化剤は、界面活性剤、親水性高分子などであって、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどである。
等張化剤は、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトールなどである。緩衝剤は、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩の緩衝液などである。無痛化剤は、例えば、ベンジルアルコールなどである。防腐剤は、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などである。抗酸化剤は、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などである。
本実施の形態に係る医薬組成物の投与量は、患者の性別、年齢、体重、症状などによって適宜決定される。当該医薬組成物は、GPR56−1またはGPR56−2が治療上有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要なGPR56−1またはGPR56−2の量であり、治療または処置する状態の進行の遅延、阻害、予防、逆転または治癒をもたらすのに必要な量である。当該医薬組成物の投与量は、典型的には、0.01〜1000mg/kg、好ましくは0.1〜200mg/kg、より好ましくは0.2〜20mg/kgであり、1日に1回、またはそれ以上に分割して投与することができる。当該医薬組成物を分割して投与する場合、当該医薬組成物は、好ましくは1日に1〜4回投与される。また、当該医薬組成物は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週、1ヶ月に1回などの様々な投与頻度で投与してもよい。好ましくは、投与頻度は、医師により容易に決定される。なお、必要に応じて、当該医薬組成物は、上記の範囲外の量で使用されてもよい。
本実施の形態に係る医薬組成物の投与方法は、特に限定されないが、注射、経鼻、経皮、経肺、経口などで投与できる。投与方法としては、静脈内投与、動脈内投与または経口投与が特に好ましい。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る医薬組成物は、GPR56−1もしくはGPR56−2またはその塩を有効成分として含むので、EVI1を介するGPR56の発現を選択的に抑制する。このため、少ない副作用で高い薬効が得られる。
また、本実施の形態に係る医薬組成物は、好ましくは、白血病の治療または予防に使用されることとした。EVI1を介するGPR56の発現は、白血病細胞のシグナル伝達機構に関するため、EVI1を介するGPR56の発現を抑制することで、下記実施例6に示すように、白血病細胞のアポトーシスが誘導される。これにより、当該医薬組成物は、白血病細胞の生存を阻害、あるいは白血病細胞の増殖を抑制することができる。このため、当該医薬組成物は、白血病の治療または予防に特に有効である。また、当該医薬組成物は、下記実施例5、9、11に示すように、白血病に対して強力な薬効を示すため、病態の進行が早い急性骨髄性白血病の治療にも有効である。
なお、本実施の形態に係る医薬組成物が有効成分として含むGPR56−1およびGPR56−2は、EVI1を介したGPR56の発現を選択的に抑制し、EVI1が介在しないGPR56の発現にはほとんど影響しない。下記実施例9〜12に示すように、当該医薬組成物を、マウスに長期間(1〜3ヶ月)投与しても、副作用が見られず、特に造血系への影響もなかった。このため、当該当該医薬組成物は安全性が高く、長期間の投与も可能である。
また、GPR56は、幹細胞性の維持に必要不可欠な分子であるため、本実施の形態に係る医薬組成物は、白血病幹細胞の機能を傷害し、白血病を根治するための白血病治療薬として使用できる。
また、本実施の形態に係る医薬組成物が有効成分として含むGPR56−1またはGPR56−2は、ベクターや薬剤輸送システムを利用せずに細胞の核内に取り込まれる。このため、製造コストを増大させることなく、好ましい薬物動態プロファイルが得られる。
なお、本実施の形態に係る医薬組成物は、GPR56の活性化が関与する疾患であれば、任意の疾患の治療または予防に使用できる。例えば、白血病以外のGPR56の活性化が関与する癌の治療または予防にも使用することができる。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1:GPR56−1の合成)
GPR56のプロモータ領域におけるEVI1が結合する部位(D2B)を含む領域の塩基配列ACGGAAGATを認識してDNAに結合するPIポリアミドとして、GPR56−1(Dp−β−ImPy−β−Im−ImPy−γ−ImPy−Py−β−Py−Py−Ac、化学式C76953015+、分子量1667.76)を以下のように合成した。なお、ここでは、Acはアセチルを、Pyはピロールを、Imはイミダゾールを、βはβ−アラニンを、γはγ−酪酸を、DpはN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンを、意味する。
自動固相合成機PSSM−8(島津製作所製)に、固相樹脂である0.01mmolのβ−アラニン−ワング レジンを9.8mg加えたLibra Tube(商標)をセットした。10本の2.0mL丸底エッペンドルフチューブそれぞれに、0.1mmolのHCTUを41.4mg加えた。HCTUを加えた丸底エッペンドルフチューブの内の3本各々に、0.1mmolの4−(Fmoc−アミノ)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボン酸(Fmoc−Py)を36.2mg、1本に0.1mmolの4−(Fmoc−アミノ)−1−メチル−1H−イミダゾール−2−カルボン酸(Fmoc−Im)を36.3mg、3本各々に0.1mmolのFmoc−ImPy−COOHを43.5mg、2本各々に0.1mmolのN−β−Fmoc−β−アラニンを31.4mg、1本に0.1mmolのN−Fmoc−γ−アミノ酪酸を32.5mg加えた。次に、全試料に対して減圧乾燥を行った。
試料を充分に乾燥させてから、Libra tube(商標)に1mLのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を加え、1時間膨潤させた後にNMPを溜去した。次に0.7mLの30%ピペリジン/NMP溶液を加えて樹脂上のFmocの脱保護を行った。脱保護の後、レジンをNMP(0.9mL)で5回繰り返し洗浄した。次に、最初の縮合反応として、上記で調整したFmoc―ImPy−COOHとHCTUの混合物をLibra Tube(商標)に加え、0.3mLのNMP、塩基として40μLのDIEAを加えて混合物を溶解し、1時間撹拌して反応させた。1時間経過後、反応液を除去し、0.9mLのNMPで5回洗浄後、0.7mLの無水酢酸を加えて10分間反応させて未反応のアミノ末端をアセチル基で保護し、それ以上の伸長反応が起こらないようにした。反応後、0.9mLのNMPで5回洗浄し、その後、0.7mLの30%ピペリジン/NMP溶液でFmocの脱保護を行った。
以後、GPR56−1の構成(レジン−ImPy−β−Im−ImPy−γ−ImPy−Py−β−Py−Py)に従って同様の工程を繰り返した。この繰り返し反応は、プログラミングによって、PSSM−8で行った。最後のPyの縮合が終了後、0.7mLの30%ピペリジン/NMP溶液でFmocの脱保護を行い、0.9mLのNMPで5回洗浄した。最後に0.7mLの無水酢酸を加えて10分間反応させ、N末端のアミノ基をアセチル基でキャッピングした。キャッピング後、1.0mLのメタノールで3回樹脂を洗浄し、真空ポンプを用いて乾燥させた後に樹脂をスクリューキャップ付きの1.5mLエッペンドルフチューブに移した。さらに、0.5mLのN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(Dp)を加えて、65℃で8時間撹拌し、樹脂上から目的化合物を切り出した。
反応液を回収後、HPLCで精製し(流速10mL/分、0.1% AcOH/HO−CHCN、0−100%、20分、線形勾配、波長310nm)、目的のフラクションを回収してエバポレーターで濃縮した。HPLCで濃縮物の純度検定を行い、四重極LCMSで質量分析を行った([M+1]=1668.95)。最後に凍結乾燥機を用いて粉末にすることで、GPR56−1を白色の粉末として得た。
GPR56のプロモータ領域におけるEVI1が結合する部位(D2B)を含む領域の塩基配列GAAGATAATを認識してDNAに結合するPIポリアミドとして、GPR56−2(Dp−β−Py−Py−β−Py−Py−Py−γ−Py−Py−Py−β−ImPy−Ac、化学式C79982715+、分子量1665.7948)を、GPR56−1と同様に合成した。
以下、陰性コントロールとして用いるAP1−2は、TGF−β遺伝子のAP1サイトに結合するポリアミドである。AP1−2が認識する塩基配列は、5’側から3’側に向かって「WGTCWGCW」(Wは「A」または「T」のいずれか)である。
AP1−2は、次の式で示される。AP1−2は、下記式に従ってGPR56−1と同様に合成した。
(実施例2:プロモータアッセイによる転写調節の確認)
EVI1を発現するプラスミドは、pCMV26ベクター(シグマアルドリッチ社製)に、EVI1遺伝子の全長をサブクローニングすることで作製した。GPR56遺伝子の転写調節を評価するために、GPR56遺伝子のプロモータ領域としてGPR56遺伝子の転写開始点から上流約3000塩基対の領域を、pGL4.10 Luc2ベクター(プロメガ社製)に組み込んだ。組み換え実験で用いたコンピテントセルはDH5α株である。組み換えDH5α株の培養に使用したLB培地の組成は、1%バクトトリプトン(ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー(BD)社製)、0.5%酵母エキス(BD社製)、pH7.4の0.5%塩化ナトリウム(ナカライテスク社製)である。また、LBプレートは、アガロース(BD社製)を使用して作成した。
内在のEVI1の影響を除くため、EVI1遺伝子の発現が低い293T細胞(独立行政法人理化学研究所の細胞バンクから取得)に、上述のEVI1を発現するプラスミド、上記GPR56遺伝子のプロモータ領域を組み込んだプラスミド、およびバックグラウンドを測定するためのpTK−Lucプラスミドを同時に導入した。導入後、GPR56−1を、0.1、0.3、1または10μMの濃度で添加した。添加から48時間経過後、ルシフェラーゼの活性を測定した。なお、ルシフェラーゼの活性は、Dual Luciferase Reporter Assay System(プロメガ社製)およびLumat 9507(ベルトールドジャパン社製)を使用して測定した。なお、293T細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)(ニチレイ社製)が添加されたDMEM(044−29765;和光純薬工業社製)で培養した。
(結果)
図1は、ルシフェラーゼの相対的な活性を示す。ルシフェラーゼの活性は、組み込んだプロモータ領域の転写活性に相当する。GPR56−1を添加しないD2B/WTで見られた転写活性は、GPR56−1を添加することで、ほとんど消失した。
(実施例3:ChIPアッセイによる結合抑制能の評価)
GPR56−1によるGPR56遺伝子のプロモータ領域へのEVI1の結合抑制能を評価するために、クロマチン免疫沈降(Chromatin immunoprecipitation;ChIP)アッセイを実施した。293T細胞に、EVI1を発現するプラスミド(EVI1 WT)または8〜10番目のzinc finger部位を欠くEVI1を組み込んだプラスミド(EVI1Δ8−10)、および上記GPR56遺伝子のプロモータ領域を組み込んだプラスミドを導入した。導入後、AP1−2あるいはGPR56−1を、0.1、1、10μMの濃度で添加した。添加から48時間経過後、細胞を回収してPBS(−)で洗浄した。ChIP Lysisバッファーで細胞を溶解し、FLAG M2抗体(シグマアルドリッチ社製)とDynaBeads(ベリタス社製)用いて免疫沈降を行った。
常法に従い、ChIP DNAを抽出した。抽出したChIP DNAに対してPCRを行い、プロモータ領域との結合を評価した。PCRには、ExTaq(タカラバイオ社製)およびサーマルサイクラー(ABI 2720)を用いた。PCRに用いたプライマーの塩基配列を以下に示す。
GPR56 ChIP Fw:3’−GCAAGACAGGTGAGACAGCA−5’(配列番号1)
GPR56 ChIP Rv:3’−CTGAGAAGCCTTCCATGACC−5’(配列番号2)
(結果)
図2に示すように、EVI1 WTでは、GPR56遺伝子のプロモータ領域へのEVI1の結合が確認された。一方、EVI1Δ8−10では、EVI1がzinc finger部位を欠くため、GPR56遺伝子のプロモータ領域に結合しないことが示された。AP1−2を添加した場合、GPR56遺伝子のプロモータ領域へのEVI1の結合が維持されているが(図2(a)参照)、GPR56−1では、濃度依存的にバンドが消失した(図2(b)参照)。
このため、GPR56−1がGPR56遺伝子のプロモータ領域へのEVI1の結合を抑制することが示された。なお、IgGにバンドが現れなかったので、当該実験では、非特異的な抗体の結合ではなく、GPR56遺伝子のプロモータ領域へのEVI1の結合を評価していることが確認できた。
(実施例4:GPR65の発現抑制の評価)
GPR56の発現量が高い難治性白血病細胞株であるUCSD/AML1細胞(カリフォルニア大学サンディエゴ校より提供)を用いて、GPR56−1がGPR56の発現を抑制することを確認した。
USCD/AML1細胞は、10%FBS(04−001−1A、Biological Industries社製)および10ng/mLのhrGM−CSF(077−04113、和光純薬工業社製)を添加したRPMI1640(189−02025、和光純薬工業社製)で、常法に従って培養した。培養したUSCD/AML1細胞を、1μMまたは3μMのGPR56−1で3日間処理した後、細胞表面におけるGPR56の発現を、GPR56に対する抗体(BioLegend社製)を用いてフローサイトメトリーで評価した。検出装置として、FACS Calibur(BD社製)を用いた。染色手順は常法に従い、洗浄および懸濁にはMACS(商標) Buffer(2mM EDTA、0.5%BSAを含むPBS(−))を使用した。なお、MACS Bufferは、超純水に10 X PBSと0.5M EDTA(pH8.0)を混合し、pH7.2に調製したものをオートクレーブで滅菌し、無菌的に10%BSAを加えて混合することで調製した。調製後は、脱気し、冷却保存しておいた。
また、mRNAレベルでのGPR56の発現を、RT−PCRで確認した。遺伝子の増幅には、ExTaq(タカラバイオ社製)およびサーマルサイクラー(ABI 2720)を用いた。RT−PCRで使用したGPR56に対するプライマーの塩基配列を次に示す。
hGPR56 RT Fw:5’−TTGATCTTCTTCTCCTTTGCTTC−3’(配列番号3)
hGPR56 RT Rv:5’−CGCATGGACCAGTACCAGAT−3’(配列番号4)
β−アクチンに対するプライマーの塩基配列を次に示す。
hβ−actin RT Fw:5’−GACAGGATGCAGAAGGAGATCACT−3’(配列番号5)
hβ−actin RT Rv:5’−TGATCCACATCTGCTGGAAGGT−3’(配列番号6)
(結果)
図3は、フローサイトメトリーの結果を示す。AP1−2を添加しても、処理なしと同等のGPR56の発現が確認された(図3(a)参照)。一方、GPR56−1を添加することで、濃度依存的にGPR56の発現が抑制された(図3(b)参照)。
また、図4に示すように、GPR56−1によるGPR56の発現抑制は、mRNAレベルでも確認された。
(実施例5:GPR56−1の薬効評価1)
GPR56−1の薬効を評価するために、USCD/AML1細胞の増殖への影響を評価した。AP1−2またはGPR56−1を0.1、0.3、1、3、10μM添加した培地でUSCD/AML1細胞を5日間培養した。培養中、細胞を1日1回回収し、トリパンブルーで染色後、生細胞を光学顕微鏡下で計数した。
(結果)
図5は、生細胞数の経時変化を示す。AP1−2は、USCD/AML1細胞の増殖を抑制してないのに対し(図5(a)参照)、GPR56−1は、USCD/AML1細胞の増殖を濃度依存的に抑制した(図5(b)参照)。
(実施例6:GPR56−1の薬効評価2)
GPR56−1によるUSCD/AML1細胞におけるアポトーシスの誘導を、フローサイトメトリーを用いて評価した。USCD/AML1細胞をプレートに撒いて、AP1−2またはGPR56−1を1μMで添加した。添加から3日経過後、7−AAD抗体(559925、BD社製)およびFITCで標識したアネキシンV抗体(640906、BioLegend社製)を加え、FACS Calibur(BD社製)で解析した。
(結果)
図6は、フローサイトメトリーで得られた結果を示す。AP1−2に対して、GPR56−1では、7−AADおよびアネキシンVの発現が増加していた。このため、GPR56−1は、USCD/AML1細胞のアポトーシスを誘導することが示された。
(実施例7:GPR56−1の薬効評価3)
さらに、各種マーカー遺伝子の発現を、Western blot法で評価した。マーカー遺伝子は、アポトーシス関連遺伝子であるp53、MDM2、p21、p27、CDK4およびCDK6である。USCD/AML1細胞にAP1−2およびGPR56−1をそれぞれ1μMまたは3μMで添加した。添加から3日経過後、USCD/AML1細胞を、RIPA Bufferで溶解し、BCA法でタンパク質濃度を測定した。アクリルアミドゲルは常法に従って作製し、10%アクリルアミドゲルを用いて泳動した。各レーンには10μgのタンパク質を泳動し、100V、1時間で転写を行った。その後、5%スキムミルク/TBS−Tを用いてブロッキングし、TBS−Tにて3回洗浄し、1/1000に希釈した抗体液で、4℃で一晩処理した。抗体はCan Get Signal(商標)液(東洋紡社製)にて希釈した。処理後、TBS−Tで3回洗浄し、1/5000に希釈した二次抗体液(抗体はGE社製、希釈液はCan Get Signal(商標)液)で、常温で一時間処理した。その後、TBS−Tで3回洗浄の後、Lumi light plus(ロシュ社製)で検出した。検出に用いた装置は、LAS3000(フジフィルム社製)である。
(結果)
図7は、各種マーカー遺伝子の発現を示す。GPR56−1によって、MDM2の発現が抑制され、p53の蓄積が見られた。この結果から、GPR56−1が、USCD/AML1細胞のp53を介したアポトーシスを誘導することが示された。
(実施例8:GPR56−1及びGPR56−2の薬効評価)
GPR56−1およびGPR56−2の薬効を評価するために、EVI1高発現AML細胞株の増殖への影響を評価した。GPR56−1もしくはGPR56−2、または対照群としてジメチルスルホキシド(DMSO)を1μM添加した培地で、USCD/AML1細胞またはMOLM1細胞(株式会社林原生物化学研究所製)を5日間培養した。培養中、細胞を1日1回回収し、トリパンブルーで染色後、生細胞を光学顕微鏡下で計数した。
(結果)
図8(a)および(b)にそれぞれUSCD/AML1細胞およびMOLM1細胞の生細胞数の経時変化を示す。DMSO添加群と比較して、GPR56−1添加群及びGPR56−2添加群では、USCD/AML1細胞およびMOLM1細胞ともに細胞増殖が有意に抑制された。GPR56−1添加群とGPR56−2添加群には差は見られなかった。この結果から、GPR56−1およびGPR56−2は、同等にEVI1高発現白血病細胞の増殖を抑制することが示された。
(実施例9:皮下移植白血病モデルにおけるGPR56−1の薬効評価)
公益財団法人実験動物中央研究所より提供されている6週齢の高度免疫不全マウス(NOD/Shi−scid−IL2Rγnullマウス、以下単に「NOGマウス」とする)に、1個体あたり5×10個のUCSD/AML1細胞を移植した。詳細には、UCSD/AML1細胞を移植当日にサブコンフルエントになるように培養し、UCSD/AML1細胞を100μLの滅菌PBS(−)に懸濁した。UCSD/AML1細胞の懸濁液と等量のマトリゲル(BD社製)とを混合し、29Gのシリンジを用いてNOGマウスの皮下へ注入して移植した。移植後、腫瘍が5mm四方のサイズになったことを確認し(通常約1ヶ月間)、薬剤(AP1−2またはGPR56−1)の投与を開始した。薬剤は、週に1回、1mg/kgずつ投与し、腫瘍の大きさを測定した。なお、当該投薬スケジュールおよび薬剤濃度は、予備実験において1ヶ月間投与しても外観に目立った影響がないことを確認して設定した。
(結果)
図9に示すように、AP1−2投与群と比較して、GPR56−1投与群では、有意な腫瘍サイズの抑制が確認された。図10は、腫瘍の重量を示す。GPR56−1投与群では、腫瘍重量はほとんど増加しなかった。
図11は、AP1−2を投与したマウスおよびGPR56−1を投与したマウスの外観を示す。AP1−2を投与したマウスでは、腫瘍が増大しているのに対して(図11(a)参照)、GPR56−1を投与したマウスでは、腫瘍の増大はほとんど見られなかった(図11(b)参照)。
(実施例10:GPR56−1の造血系への影響の確認)
薬剤を投与した実施例9に係るマウスの血液を採取し、全自動血球計数器(MK−6450 セルタックα、日本光電工業社製)で血液を検査した。また、骨髄画分を次のようにフローサイトメトリーで評価した。
上記マウスより骨髄を分取し、セルストレイナー(352340、BD社製)を用いて細胞を含む試料を取得した。試料に溶血試薬(555899、BD社製)を加えて溶血させて、試料中の細胞数をカウントした。1×10個の細胞を100μLのMACS Bufferに懸濁し、各種抗体でそれぞれ染色した。染色は、氷上で30分後静置し、MACS Bufferで3回洗浄した。染色した試料を、FACS Calibur(BD社製)で解析した。
使用した抗体は、骨髄に関しては、CD11b−APC(101212、BioLegend社製)およびGr1−PE(108408、BioLegend社製)である。赤血球に関しては、TER119−APC(116262、BioLegend社製)である。巨核球に関しては、CD61−PE(104308、BioLegend社製)である。B細胞に関しては、CD19−PE(115508、BioLegend社製)およびB220−APC(103212、BioLegend社製)である。T細胞に関しては、CD3e−APC(100312、BioLegend社製)である。
(結果)
表1は、血液検査の項目ごとの測定値の平均を示す。いずれの項目においても、AP1−2投与群とGPR56−1投与群との間に有意差はなかった。
図12は、フローサイトメトリーの結果を示す。AP1−2投与群とGPR56−1投与群との間で、骨髄(CD11b+Gr1+)、赤血球(TER119+)、巨核球(CD61+)、B細胞(CD19+B220+)およびT細胞(CD3e)に有意な差は見られなかった。以上の結果から、GPR56−1の投与によって、マウスへの副作用、特に、造血系への副作用はないことが示された。
(実施例11:全身白血病モデルにおけるGPR56−1の薬効評価)
全身白血病モデルを作製するために、熊本大学CARDで樹立された免疫不全マウスBalb/c−RJマウス(Rag2/Jak3 dKO)に、UCSD/AML1細胞を注射した。マウス1個体あたり5×10個のUCSD/AML1細胞を、尾静脈に注射した。薬剤(AP1−2またはGPR56−1)は、週に1回、1mg/kgで投与した。薬剤の投与は、観察期間(90日)の間継続した。
(結果)
図13は、90日間のマウスの生存率を示す。GPR56−1投与群の約半数は長期に渡って生存した。GPR56−1の投与によって、全身白血病モデルのマウスの有意な延命が確認された。このため、白血病の病態により近い全身白血病モデルに対してもGPR56−1は、非常に有効である。
(実施例12:全身白血病モデルにおける各臓器の白血病細胞浸潤の評価)
薬剤を投与した実施例11に係るマウスより骨髄、脾臓、肝臓および末梢血を分取し、セルストレイナー(352340、BD社製)を用いて細胞を含む試料を取得した。試料に溶血試薬(555899、BD社製)を加えて溶血させて、試料中の細胞数をカウントした。1x10個の細胞を100μLのMACS Bufferに懸濁し、PEで標識されたヒトCD45抗体(304008、BioLegend社製)で染色した。染色は、氷上で30分後静置し、MACS Bufferで3回洗浄した。染色した試料を、FACS Calibur(BD社製)で解析した。
(結果)
図14は、骨髄(a)、脾臓(b)、肝臓(c)および末梢血(d)それぞれにおけるCD45陽性、すなわち白血病細胞の割合を示す。骨髄、脾臓、肝臓および末梢血のいずれにおいても、GPR56−1投与群は、PBS投与群およびAP1−2投与群と比較して、白血病細胞の割合が有意に低かった。したがって、GPR56−1は、全身白血病モデルにおける各臓器への白血病細胞の浸潤を抑制することが示された。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態および変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等な発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本発明は、白血病の治療または予防に好適である。本発明を適用することにより、白血病の治療の成績が向上し、患者の生活の質が向上する。

Claims (4)


  1. もしくは

    で表される化合物またはその塩。
  2. 請求項1に記載の化合物またはその塩を有効成分として含む医薬組成物。
  3. GPR56発現抑制剤である請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 白血病の治療または予防に使用するための請求項2または3に記載の医薬組成物。
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