JP2016174772A - 移植用部材および移植用部材の製造方法 - Google Patents

移植用部材および移植用部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】移植直後の段階から移植部位の組織強度の確保を容易とすること。【解決手段】基材310と、基材310の少なくとも片面310Sに設けられたゲル状細胞含有層320と、基材310とゲル状細胞含有層320とに跨るように、基材310およびゲル状細胞含有層320中に配置された1本以上の支持棒330Aと、を少なくとも備える移植用部材およびその製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、移植用部材および移植用部材の製造方法に関するものである。
機能不全に陥った生体組織を再生する方法として、近年、再生医療が注目されている。そして、このような再生医療などへの利用を目的として、種々の細胞培養装置・方法が提案されており、一例として、中空糸を用いた様々な細胞培養装置・方法が提案されている(特許文献1〜4)。
特開2001−178445号公報 特開2001−190270号公報 特開2003−180334号公報 特開2012−44908号公報
細胞培養装置内で培養された細胞は、細胞培養装置内から掻き出して回収された後に患者に移植され、最終的には移植部位に定着することで治療が完了する。しかし、移植直後から暫くの間は、移植部位の組織強度が著しく低下するため、移植部位の組織強度がある程度回復するまでの間は、たとえば、ギブスによる固定が必要となったり、動作に制限が課されるなどのように、患者に負担を強いることになる。
たとえば、軟骨細胞の移植を一例に挙げれば、以下のような問題がある。まず、細胞培養により得られたゲル状物質で覆われた軟骨細胞は、強度を有さない。この為、これを移植部位に移植した後に生体内にて成熟した軟骨とするまでの間は、移植部位に小さな荷重が加わるだけでも形状変化が起こる上に、移植されたゲル状物質では一旦変形すると元の形状に戻らない。したがって、移植部位の組織強度が低い状態で形状変形を引き起こす荷重が加わると、軟骨層の厚みが本来必要な厚みよりも小さくなり、結果的に十分な治療効果が得られなくなる。したがって移植部位の組織強度が回復するまでの間は、移植部位やその近傍が変形しないように、強固な固定が必要となり患者の負担が大きい。また、移植部位の組織強度が回復するまでの成熟時間が長くなる老年患者の負担はなおさら大きくなる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、移植直後の段階から移植部位の組織強度を確保し易い移植用部材およびその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明の移植用部材は、基材と、基材の少なくとも片面に設けられたゲル状細胞含有層と、基材とゲル状細胞含有層とに跨るように、基材およびゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の支持棒と、を少なくとも備えることを特徴とする。
本発明の移植用部材の一実施形態は、支持棒を構成する材料として、生分解性材料を含むことが好ましい。
本発明の移植用部材の他の実施形態は、支持棒が、多孔質状の多孔質支持棒であることが好ましい。
本発明の移植用部材の他の実施形態は、多孔質支持棒の空隙率が30%〜90%の範囲内であることが好ましい。
本発明の移植用部材の他の実施形態は、多孔質支持棒が、i)血漿、血清、および、フィブリンからなる群より選択される少なくとも1種の血液構成成分、および、ii)線維芽細胞増殖因子、の少なくともいずれかを含有することが好ましい。
本発明の移植用部材の他の実施形態は、支持棒の弾性率が、0.04MPa以上であることが好ましい。
本発明の移植用部材の他の実施形態は、支持棒を3本以上有することが好ましい。
本発明の移植用部材の他の実施形態は、ゲル状細胞含有層の厚みが0.1mm〜5.0mmの範囲内であることが好ましい。
本発明の移植用部材の他の実施形態は、ゲル状細胞含有層が、細胞培養装置内にて培養された塊状のゲル状細胞含有部材を、細胞培養終了時の塊状状態を略維持したまま取り出した部材であることが好ましい。
第一の本発明の移植用部材の製造方法は、半透膜機能を有する中空糸を1本以上含む中空糸束と、細胞培養面を備えた多孔質体と、細胞培養面に向き合うと共に、細胞培養面に略対応する表面形状を有する対向面を備えた対向部材と、中空糸束、多孔質体および対向部材を格納するハウジングと、を少なくとも有し、細胞培養面の面内において、細胞培養面から対向面までの最短距離が略一定となるように、細胞培養面と対向面とを対面させた状態で、ハウジング内に多孔質体および対向部材が配置されると共に、中空糸束が、少なくとも細胞培養面と対向面との間に形成される空間の一部分を占め、多孔質体を貫通し且つ細胞培養面と交差するように配置されている細胞培養用中空糸モジュールを用いて、
細胞培養面と、対向面と、ハウジングの内周面とにより囲まれた空間内に、種細胞を少なくとも含む被培養部材を配置する種細胞配置工程と、
中空糸の内部空間に、酸素を含むガス、および、培養液から選択される少なくとも1種の媒体を供給する媒体供給工程と、
細胞の培養が完了した後に、多孔質体と、増殖した細胞を含む被培養部材と、中空糸束とが一体となった状態で、これら部材をハウジング内から取り出す取り出し工程と、を少なくとも実施することにより、多孔質体と、増殖した細胞を含む被培養部材と、中空糸束とが一体となった複合部材を作製し、
さらに、複合部材から、中空糸束を構成する少なくとも一部の中空糸を棒状部材に置換する中空糸−棒状部材置換工程を少なくとも実施することにより、
多孔質体からなる基材と、基材の少なくとも片面に設けられると共に増殖した細胞を含む被培養部材からなるゲル状細胞含有層と、基材とゲル状細胞含有層とに跨るように、基材およびゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の支持棒と、を少なくとも備え、且つ、支持棒が、(i)棒状部材のみ、または、(ii)棒状部材および中空糸−棒状部材置換工程において棒状部材に置換されなかった中空糸とから構成される移植用部材を製造することを特徴とする。
第二の本発明の移植用部材の製造方法は、半透膜機能を有する中空糸を1本以上含む中空糸束と、細胞培養面を備えた多孔質体と、細胞培養面に向き合うと共に、細胞培養面に略対応する表面形状を有する対向面を備えた対向部材と、中空糸束、多孔質体および対向部材を格納するハウジングと、を少なくとも有し、細胞培養面の面内において、細胞培養面から対向面までの最短距離が略一定となるように、細胞培養面と対向面とを対面させた状態で、ハウジング内に多孔質体および対向部材が配置されると共に、中空糸束が、少なくとも細胞培養面と対向面との間に形成される空間の一部分を占め、多孔質体を貫通し且つ細胞培養面と交差するように配置されている細胞培養用中空糸モジュールを用いて、
細胞培養面と、対向面と、ハウジングの内周面とにより囲まれた空間内に、種細胞を少なくとも含む被培養部材を配置する種細胞配置工程と、
中空糸の内部空間に、酸素を含むガス、および、培養液から選択される少なくとも1種の媒体を供給する媒体供給工程と、
細胞の培養が完了した後に、多孔質体と、増殖した細胞を含む被培養部材と、中空糸束とが一体となった状態で、これら部材をハウジング内から取り出す取り出し工程と、を少なくとも実施することにより、
多孔質体からなる基材と、基材の少なくとも片面に設けられると共に増殖した細胞を含む被培養部材からなるゲル状細胞含有層と、基材とゲル状細胞含有層とに跨るように、基材およびゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の中空糸からなる支持棒と、を少なくとも備えた移植用部材を製造することを特徴とする。
本発明によれば、移植直後の段階から移植部位の組織強度を確保し易い移植用部材およびその製造方法を提供することができる。
本実施形態の移植用部材の一例を示す模式断面図である。 本実施形態の移植用部材の他の例を示す模式断面図である。 本実施形態の移植用部材の他の例を示す模式断面図である。 本実施形態の移植用部材の製造方法に用いられる細胞培養用中空糸モジュールの一例を示す模式側面図である。 図4に示す細胞培養用中空糸モジュールを用いて作製された複合部材の模式断面図である。 本実施形態の移植用部材の製造方法に用いられる細胞培養用中空糸モジュールの他の例を示す模式側面図である。 本実施形態の移植用部材の製造方法に用いられる細胞培養用中空糸モジュールの他の例を示す模式側面図である。
<<移植用部材>>
本実施形態の移植用部材は、基材と、基材の少なくとも片面に設けられたゲル状細胞含有層と、基材とゲル状細胞含有層とに跨るように、基材およびゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の支持棒と、を少なくとも備える。すなわち、ゲル状細胞含有層は、基材によってその下面側が支持されるのみならず、基材とゲル状細胞含有層とに跨るように、基材およびゲル状細胞含有層中に配置された支持棒によって、基材のゲル状細胞含有層が配置される面(支持面)と平行な方向にずれることが抑制される。このため、本実施形態の移植用部材を移植部位に移植した場合、シャーレや細胞培養用中空糸モジュールなどの細胞培養装置から掻き出して回収した培養細胞を移植部位に移植する場合と比べて、移植直後から移植部位の組織強度を確保することがより容易となる。それゆえ、患者の負担を軽減することができる。
なお、ゲル状細胞含有層を構成する材料としては、移植部位の周囲の組織と生体適合性を持つ細胞を含むゲル状の材料であれば制限無く利用できる。なお、細胞としては通常、細胞培養装置内にて培養された培養細胞を用いたゲル状細胞含有部材が用いられる。ここで、ゲル状細胞含有層は、細胞培養装置内にて培養された塊状のゲル状細胞含有部材を、細胞培養終了時の塊状状態を略維持したまま取り出した部材から構成されることが特に好ましい。ゲル状細胞含有層が、細胞培養装置内にて培養された塊状のゲル状細胞含有部材を細胞培養装置内から掻き出すことで得られた部材、言い換えれば、細胞培養装置内から取り出す直前の塊状状態が一旦破壊された状態の部材から構成される場合と比べて、ゲル状細胞含有層の強度が飛躍的に向上するため、結果的に、本実施形態の移植用部材全体の強度も向上させることができる。それゆえ、移植直後から移植部位の組織強度を確保することが非常に容易となる。
−支持棒−
次に、本実施形態の移植用部材を構成する各部材の詳細について説明する。まず、支持棒を構成する材料としては、適度な強度を有し、生体組織に対して無害な材料であれば、生分解性材料あるいは非生分解性材料のいずれの材料を用いてもよく、2種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。
しかしながら、支持棒を構成する材料として、生分解性材料を用いる場合、公知の生分解性材料が利用できる。しかしながら、細胞との親和性等を考慮した場合、生分解性材料としては、下記(A)〜(C)に示す材料から選択することが好ましい。
(A)ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、脂肪族ポリエステル、ポリアミド
(B)(A)に示す高分子材料からなる群より選択される少なくとも2種類以上の高分子材料を含む混合材料
(C)(A)に示す高分子材料からなる群より選択される少なくとも2種類以上の高分子材料の重合に用いる各々の単量体を共重合させた共重合体
上記に列挙した生分解性材料の中でも、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、あるいは、これら高分子材料の重合に用いる各々の単量体を2種以上重合させた共重合体が特に好ましい。
また、生分解性材料の重量平均分子量としては、特に制限されるものではないが、移植用部材を移植後に、移植用部材が周囲の生体組織に馴染むまでの間の移植部位の強度を確保しつつ、支持棒の生分解を速やかに促進する観点で、10,000〜200,000の範囲内が好ましく、20,000〜120,000範囲内がより好ましい。
また、支持棒を構成する材料として、非生分解性材料を用いる場合、公知の非生分解性材料を用いることができ、たとえば、樹脂、金属、セラミック、ガラス、ガラスセラミックス等を用いることができる。これらの非生分解性材料の中でも、β−TCP(β−リン酸カルシウム)、HAP(ハイドロキシアパタイト)等の人工骨材料を用いることが特に好ましい。このような人工骨材料は、機械的強度が高い上に、ゲル状細胞含有層や、移植部位の周囲の生体組織に対する親和性も高い点で、好適な材料である。
また、支持棒は、通常の中実状の部材であってもよいが、無数の細孔を有する多孔質状の部材(多孔質支持棒)や、軸方向に貫通する貫通孔を有する中空状の部材((中空状支持棒)であってもよい。多孔質支持棒を用いた場合、移植後に、細孔中に血液構成成分や細胞が入り込むことで、周囲の生体組織と馴染み易くなる。これに加えて、移植前の本実施形態の移植用部材において、多孔質支持棒に予め血漿、血清、フィブリン等の血液構成成分や、線維芽細胞増殖因子を含有させておくことで、移植後により速やかに移植用部材が周囲の生体組織と馴染むことが容易になる。なお、多孔質支持棒の空隙率は特に限定されるものではないが、多孔質支持棒およびこれを用いた移植用部材全体の強度を確保する観点では90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。一方、空隙率の上限は、上述したような細孔を有することによる効果を十分に享受する観点からは、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。また、中空状支持棒としては、後述する中空糸を用いることができる。
ここで、上述した支持棒の材料および構造は適宜組み合わせることができるが、特に好適な支持棒としては、a)生分解性材料からなる中空状支持棒、b)生分解性材料からなる多孔質支持棒、あるいは、c)人工骨材料からなる多孔質支持棒を挙げることができる。支持棒が、a)生分解性材料からなる中空状支持棒である場合は、後述する細胞培養用中空糸モジュールを用いて細胞を培養した後、細胞培養用中空糸モジュールから取り出した複合部材をそのまま移植用部材として利用できるため、移植用部材を作製する製造工程が簡略化できるというメリットがある。但し、支持棒が、細胞培養用中空糸モジュール内において使用されていた生分解性材料からなる中空糸であるため、細胞培養用中空糸モジュール内での生分解の進行劣化や中空構造に起因する強度不足が生じやすい。したがって、このような強度不足を解消し、尚且つ、周囲の生体組織との馴染を良くするために血液構成成分を含有させることもできるという観点からは、支持棒として、b)生分解性材料からなる多孔質支持棒、あるいは、c)人工骨材料からなる多孔質支持棒を用いることがより好ましい。
また、支持棒の弾性率としては、移植用部材全体の強度を確保する観点からは、0.04MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましい。なお、弾性率の上限は特に制限されるものでは無いが、材料入手の容易性などの実用上の観点からは0.3MPa以下であることが好適である。
また、支持棒の直径(支持棒断面の形状が非円形状である場合は同一断面積を有する円形断面における直径)としては特に限定されないが、移植用部材全体の強度を確保する観点からは、0.05mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、内径の上限値は、実用上の観点から5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
本実施形態の移植用部材に用いられる支持棒の数は少なくとも1本であればよいが、移植用部材全体の強度を確保する観点からは3本以上が好ましく、5本以上がより好ましい。一方、支持棒の本数の上限は特に制限されるものではないが、実用上16本以下であることが好ましい。また、支持棒としては、材質・構造等の異なる2種類以上の支持棒を組み合わせて用いてもよい。
−ゲル状細胞含有層−
ゲル状細胞含有層は、細胞と、アガロースやコラーゲン等のゲル状物質とを含むものであり、その他にも必要に応じて各種の成分が含まれていてもよい。ゲル状細胞含有層を構成する細胞、ゲル状物質、必要に応じて用いられるその他の成分の種類や配合割合は、移植部位に応じて適宜選択される。また、ゲル状細胞含有層の厚みは、特に制限されるものではないが、移植手術に必要な量の細胞を確保すると共に、一般的な移植部位(隙間)のサイズ等を考慮すると0.1mm〜5.0mmの範囲内であることが好ましく、0.3mm〜3.0mmの範囲内がより好ましい。
−基材−
基材を構成する材料としては、生体に対して無害な材料であれば公知の材料が適宜利用できるが、たとえば、セラミックス、ガラスセラミックス、ガラス、金属、樹脂あるいはこれらを2種類以上組み合わせた複合材料から適宜選択可能である。しかしながら、これらの材料の中でも、特にβ−TCP(β−リン酸カルシウム)、HAP(ハイドロキシアパタイト)等の人工骨材料を用いることが好ましい。このような人工骨材料は、機械的強度も高い上に、また、ゲル状細胞含有層や、移植部位周辺の生体組織に対する親和性も高い点で、特に好適である。
基材の形状は、特に限定されず適宜選択できるが、移植部位に対応した形状およびサイズを有することが好ましい。また、基材には、支持棒を保持するための縦穴が1つ以上設けられる。この縦穴は、少なくとも支持面側に開口部を有するものであり、支持面側から支持面と反対側の面へと貫通していてもよい。また、基材は、中実状の部材であってもよいが、少なくとも一部分が多孔質状の部材、あるいは、全体が多孔質状の部材であることが特に好ましい。
−具体例−
次に、本実施形態の移植用部材の具体例を図面を用いてより詳細に説明する。図1〜図3は本実施形態の移植用部材の一例を示す模式断面図である。図1に示す移植用部材300A(300)は、基材310と、基材310の支持面310S上に形成されたゲル状細胞含有層320と、基材310とゲル状細胞含有層320とに跨るように、基材310およびゲル状細胞含有層320中に配置された複数本の直線状の支持棒330A(330)と、を備えている。
ここで、図1に示す例では、各支持棒330Aは、基材310とゲル状細胞含有層320とを貫通すると共に、支持面310Sに対して略直交するように配置されている。また、各支持棒330Aの長さは、基材310およびゲル状細胞含有層320の層の総厚みと略同一であり、各支持棒330Aの両端は、各々、ゲル状細胞含有層320の表面320Sおよび基材310の非支持面312S(支持面310Sと反対側の面)と略面一を成している。さらに、各支持棒330Aは、基材310の支持面310S側から非支持面312S側へと貫通するように設けられた縦穴314内に保持・固定されている。
なお、支持棒330Aの長さは、支持棒330Aが基材310およびゲル状細胞含有層320に跨って配置される限り、基材310およびゲル状細胞含有層320の層の総厚みよりも短くても長くてもよい。また、支持棒330Aは、支持面310Sに対して大きく傾くように配置されていてもよい。
図2に示す移植用部材300B(300)は、図1に示す移植用部材300Aの変形例であり、基本的には、図1に示す移植用部材300Aと同様の構造を有している。但し、図2に示す例では、支持棒330B(330)を保持・固定する縦穴316は、支持面310S側のみに開口部を有しており、基材310を貫通するようには設けられていない。このため、各支持棒330Bの長さも、図1に示す各支持棒330Aの長さよりも短くなっている。
また、図3に示す移植用部材300C(300)は、図1に示す移植用部材300Aの変形例であり、基本的には、図1に示す移植用部材300Aと同様の構造を有している。
但し、図3に示す移植用部材300C(300)は、図1に示す移植用部材300Aと図2に示す移植用部材300Bとを組み合わせた構造を有している点で異なっている。すなわち、基材310には、基材310を貫通するように設けられた縦穴314と、支持面310S側のみに開口部を有する縦穴316とが設けられている。そして、縦穴314内には支持棒330Aが保持・固定され、縦穴316内には、支持棒330Bが保持・固定されている。これら2種類の支持棒330Aと支持棒330Bとは、その材質や内部構造が同一であってもよく互いに異なっていてもよい。
<<移植用部材の製造方法>>
本実施形態の移植用部材の製造方法については特に制限されるものではなく、たとえば、ゲル状細胞含有層、支持棒、基材を各々別々に準備してこれらを組わせて作製してもよい。しかしながら、細胞培養を終えると同時に基材上にゲル状細胞含有層が予め形成された状態の部材を作製することができる細胞培養用中空糸モジュールを用いて移植用部材を製造することが特に好ましい。このような細胞培養用中空糸モジュールを用いた移植用部材の製造方法では、細胞培養用中空糸モジュール内にて細胞培養を終えた塊状の被培養部材(ゲル状細胞含有部材)を、細胞培養終了時の塊状状態を略維持したままゲル状細胞含有層として利用できる。このため、ゲル状細胞含有層の形状、強度、培養細胞の活性度等の劣化を抑制できる上に、移植用部材の製造工程における細菌感染の抑制が容易であり、さらに、厚みの大きいゲル状細胞含有層を得ることも容易である。以下に、細胞培養用中空糸モジュールおよびこれを用いた本実施形態の移植用部材の製造方法について詳述する。
<細胞培養用中空糸モジュール>
図4は、本実施形態の移植用部材の製造方法に用いられる細胞培養用中空糸モジュール(以下、「モジュール」と略す場合がある)の一例を示す模式側面図であり、図中の点線A−B間については、断面構造について示したものである。但し、図4中、中空糸束を構成する各々の中空糸や多孔質体の断面構造の詳細については記載を省略してある。
図4に例示するモジュール10A(10)は、半透膜機能を有する中空糸22を1本以上含む中空糸束20と、細胞培養面30Sを備えた多孔質体30と、細胞培養面30Sに向き合うと共に、細胞培養面30Sに略対応する表面形状を有する対向面40Sを備えた対向部材40と、中空糸束20、多孔質体30および対向部材40を格納するハウジング50と、を少なくとも有する。そして、細胞培養面30Sの面内において、細胞培養面30Sから対向面40Sまでの最短距離Dminが略一定となるように、細胞培養面30Sと対向面40Sとを対面させた状態で、ハウジング50内に多孔質体30および対向部材40が配置されると共に、中空糸束20が、少なくとも細胞培養面30Sと対向面40Sとの間に形成される空間の一部分を占めるように配置される。なお、細胞培養面30Sから対向面40Sまでの最短距離Dminを略一定とする場合、細胞培養面30Sの面内の任意の2点(たとえば、図4中のX1点およびX2点)における最短距離Dminはいずれも同一としてもよいが、最短距離Dminの最大値と最小値との中心値(=(最大値+最小値)/2)を基準値(100%)とした際に±20%の範囲内でばらついていることも許容される。そして、図4に示すモジュール10Aでは、中空糸束20が、多孔質体30を貫通すると共に、細胞培養面30Sと交差するように配置されている。
なお、ハウジング50は、円筒状部材60と、円筒状部材60の両端開口部を各々封止するキャップ62L、62Rとを有している。そして、細胞培養面30Sと対向面40Sとの間に形成される空間(より厳密には、当該空間のうち中空糸束20を構成する個々の中空糸22の外部側の空間)ECS(Extracapillary Space)内への物質供給およびECS外への物質排出のために、円筒状部材60の外周面には、モジュール10外とECSとを接続する第一ECS導管70Aおよび第二ECS導管70Bが、円筒状部材60の中心軸Cを挟んで一方側(図4中、上方側)と他方側(図4中、下方側)とに各々配置されている。また、中空糸束20を構成する個々の中空糸22の内部空間(以下、「ルーメン」と称す場合がある)とモジュール10外とを接続するために、中空糸22は、ハウジング50の両端部(キャップ62L、62R)に各々設けられた第一ルーメン導管80Aおよび第二ルーメン導管80Bに接続されている。
ここで、モジュール10を用いた細胞の培養・増殖は、細胞培養面30Sと、対向面40Sと、ハウジング50を構成する円筒状部材60の内周面とにより囲まれた空間(すなわち、ECS)内に種細胞を少なくとも含む被培養部材を配置する種細胞配置工程を少なくとも実施することにより行われる。この場合、ECS内を埋め尽くすように種細胞を増殖させることが極めて容易である。それゆえ、1人の患者の移植手術に必要な所望量の培養細胞を、1つのモジュール10を用いるだけで確保することも極めて容易である。また、それ故に、従来のように多数のシャーレから必要量の培養細胞をかき集める必要も無いため、高い衛生状態を確保・維持することも容易である。このような効果が得られる理由は、シャーレ内部の空間と比べて、ECSが、細胞が何がしかの固体表面に沿って増殖するという性質を最大限に発揮し易い空間、言い換えれば、細胞の3次元的かつ効率的な増殖に適した空間になっているためである。
すなわち、ECSは、細胞培養面30S、対向面40S、ハウジング50(円筒状部材60)の内周面、および、細胞培養面30Sと対向面40Sとの間の空間内を横切るように配置された中空糸22の外周面で囲まれた狭い空間である。これに加えて、直径10cm程度、高さ1cm〜2cm程度の一般的なシャーレの内部空間と比べて、ECSは、その空間体積がより狭く、中空糸が存在するため空間形状を定める固体表面の面積割合が空間体積に比して非常に大きい。このことからは、ECSは、細胞が増殖・占有可能な空間の単位体積に対して、細胞が増殖しやすい固体表面の面積割合が大きいと言える。これに加えて、シャーレ内の空間形状は単純な円柱状を成すが、ECSは、細胞培養面30Sと対向面40Sとの間の空間を横切るように配置された中空糸22の外周面によっても、その空間形状が定められるため、ECSの空間形状は非常に複雑である。このことからは、ECS内では、一方の固体表面に沿って増殖した細胞と、他方の固体表面に沿って増殖した細胞とが互いに接触し、両固体表面間を細胞で埋め尽くすように増殖し易いと言える。
また、モジュール10を用いて細胞培養を実施した場合、ECS内にて細胞を培養・増殖し終えることにより形成された層(増殖した細胞を含む被培養部材、あるいは、培養細胞層)の形状維持性や、強度を確保することが容易である。これは、培養細胞層内を貫通するように存在する中空糸22が、培養細胞層をその内側から支持すると共に、培養細胞層の流動や型崩れを防止して、培養細胞層全体の強度の向上に寄与するためである。これに加えて、多孔質体30の表面を構成する細胞培養面30Sには、多数の孔が存在する。それゆえ、細胞は、細胞培養面30S近傍の孔内にも増殖するため、アンカー効果によって、培養細胞層は、細胞培養面30Sに安定して固定される。それゆえ、培養を終えた後に、細胞培養面30Sに付着した状態で培養細胞層をモジュール10から取り出すことが容易になる。
これに加えて、図4に示す例では、中空糸22は、細胞培養面30Sと対向面40Sとの間の空間を横切るように配置されているため、中空糸22の軸方向と平行な方向、すなわち、培養細胞層の厚み方向に対して、細胞を均一に増殖させることが極めて容易である。シャーレを用いて培養する場合と異なり、図4に示す例では、培養細胞層の厚み方向に対して均一に培養液を供給することができるためである。また、細胞培養面30Sを基準面とした場合の単位面積当たりの中空糸22の配置密度、中空糸22の外径/内径、中空糸22のルーメンを流れる培養液の単位時間当たりの流量等を適宜選択することで、中空糸22の軸方向と直交する方向、すなわち、培養細胞層の平面方向についても、細胞を均一に増殖させることができる。
図5は、図4に示すモジュール10Aを用いて細胞培養を行った後、培養細胞層内に中空糸22を残したままの状態で、培養細胞層と多孔質体とが一体となった状態で取り出した複合部材の一例を示す模式断面図である。なお、図5中、多孔質体の細孔構造と、中空糸内部の構造については記載を省略してある。図5に示す複合部材100は、多孔質体30と、多孔質体30の細胞培養面30S上に形成された培養細胞層110と、多孔質体30および培養細胞層110を貫通する複数の中空糸22とを有する。なお、図5に示す複合部材100では、中空糸22が、多孔質体30および培養細胞層110の双方を貫通している。このため、中空糸22が、培養細胞層110を、多孔質体30に固定する作用も有する。なお、モジュール10から複合部材100を取り出す場合、中空糸22を、対向面40Sに対応する位置で切断することが望ましい。この場合、培養開始前にモジュール10内にセットされた中空糸22に対して、対向面40Sに対応する位置(切断予定位置)に切り目や折り目を予め設けておいてもよい。
なお、種細胞としては、患者もしくは患者と生体適合性の高い他人の体内から採取した細胞、あるいは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)などから分化した細胞を利用することができる。種細胞の種類については目的とする移植手術に応じて適宜選択でき、たとえば、軟骨欠損を治療するための移植手術が目的であれば、種細胞としては軟骨細胞を利用する。また、被培養部材を構成する成分としては、種細胞と、アガロースやコラーゲン等のゲル状物質とが含まれるが、その他にも必要に応じて各種の培地成分などが含まれていることが好ましい。
また、種細胞配置工程の実施に際しては、たとえば、第一ECS導管70AからECS内に被培養部材を供給し、この際、過剰量の被培養部材や予めECS内に存在していた物質は、第二ECS導管70Bから排出させる。また、細胞の培養に際しては、中空糸22の内部空間(ルーメン)には、空気等の酸素を含むガス、および、培養液から選択される少なくとも1種の媒体が配置される。これによりECS内に存在する細胞の培養に必要な酸素や培地成分を、中空糸22を介して供給できると共に、ECS内で発生した細胞の代謝成分等をECSからルーメン側へと移動させることができる。なお、ルーメン内には、一旦、媒体を配置したら、細胞の培養が完了するまで交換しなくてもよいが、通常は、たとえば、第一ルーメン導管80A側から媒体を断続的あるいは連続的に供給する媒体供給工程を実施することが特に好ましい。これにより、細胞の培養に必要十分な媒体をECS側へと供給することが極めて容易となる。なお、この場合、過剰量の媒体および物質交換によってECS側からルーメン内に移動した物質(細胞の代謝物等)が第二ルーメン導管80B側から排出される。
なお、培養液は、培養しようとする細胞の生育必須成分を含有するものであれば、従来公知のいかなる培養液も用いることができ、特に限定されない。ここで、「生育必須成分」とは、培養しようとする細胞が増殖する上で必要不可欠な成分を意味し、通常は、種々の有機物および無機物から構成され、細胞に酸素等を供給するための溶存ガスも含まれる。生育必須成分としては、たとえば、ダルベッコMEM、RPMI1640、ハムF12等の汎用培地に、血清あるいは各種増殖因子、分化誘導因子を添加して作製した培地等が用いられる。また、ルーメン内への培養液の供給は、通常、容器に収納された培養液を、ポンプにてルーメン内を繰り返し循環させることにより実施されるが、ルーメン内に供給された培養液を循環させない一過性の供給であってもよい。
なお、モジュール10は、図4に例示したように、中空糸束20が、多孔質体30を貫通すると共に、細胞培養面30Sと交差するように配置された態様(第一バリエーション)では無く、中空糸束20が、細胞培養面30Sと略平行を成すように配置された態様(第二バリエーション)であってもよい。図6は、モジュールの他の例(第二バリエーション)の一例を示す模式側面図であり、図中の点線A−B間については、断面構造について示したものである。但し、図6中、中空糸束を構成する各々の中空糸や多孔質体の断面構造の詳細については記載を省略してある。
ここで、ハウジング50内に配置される多孔質体30と対向部材40とは、図4に例示するモジュール10Aでは、円筒状部材60の中心軸Cの一方側(図4中、左側)と他方側(図4中、右側)とに各々配置されるのに対して、図6に例示するモジュール10B(10)では、円筒状部材60の中心軸Cを挟んで一方側(図6中、上方側)と他方側(図6中、下方側)とに各々配置されている点に特徴がある。それゆえ、図4に例示した場合と同様に、中心軸Cと略平行を成すように配置された中空糸束20は、図6に示すモジュール10Bにおいては、細胞培養面30Sと略平行を成しており、かつ、細胞培養面30Sと対向面40Sとの間に存在している。また、円筒状部材60の外周面に設けられる第一ECS導管70Aおよび第二ECS導管70B(図6中、双方共に図示省略)は、図6に示すモジュール10Bでは、一方の導管が、図6中の紙面手前側に配置されており、他方の導管が図6中の紙面奥側に配置されている。そして、以上に説明した点を除けば、図4に例示するモジュール10Aも、図6に例示するモジュール10Bも実質的に同様の構成を有する。
なお、図6に示すモジュール10Bを用いて細胞の培養・増殖を行った場合、中空糸22は、形成された培養細胞層110および多孔質体30の双方を貫通しない。このため、多孔質体30に対する培養細胞層110の固定強度という点では、図6に示すモジュール10Bを用いて細胞を培養した場合よりも、図4に示すモジュール10Aを用いて細胞を培養した場合の方がより大きい。
次に、モジュール10の内部構造およびモジュール10を構成する主要部材の詳細について説明する。
まず、細胞培養面30Sから対向面40Sまでの最短距離Dminとしては、従来技術(たとえば、http://www.jpte.co.jp/business/regenerative/cultured_cartilage.html参照)で利用されているような一般的なシャーレの高さ(1〜2cm程度)よりも十分に小さければ特に限定されないが、0.1mm〜5.0mmの範囲内であることが好ましく、0.3mm〜3.0mmの範囲内であることがより好ましい。最短距離Dminが5.0mmを上回ると、細胞培養面30Sと対向面40Sとの隙間が大きすぎるため、ECS内を細胞で埋め尽くすように細胞を培養することができても、培養細胞層110の強度が確保し難くなる可能性がある。このため、モジュール10から多孔質体30と、培養細胞層110と、中空糸22とが一体となった部材を回収したり、この部材を移植しようとした際に、培養細胞層110が型崩れし易くなるおそれがある。また、最短距離Dminが0.1mmを下回ると、移植手術に必要な量の細胞が確保できなくなったり、移植手術に必要な培養細胞層110の厚みが確保できなくなる場合がある。これに加えて、生体内における骨と骨との間の隙間などのように、生体内に形成される隙間は、一般的には0.3mm〜3.0mm程度である。よって、移植手術の際に、隙間のサイズが異なる個々の患部への移植を容易にするためのマージンの確保を考慮しても、最短距離Dminは0.1mm〜5.0mmの範囲内であることが好ましく、0.3mm〜3.0mmの範囲内であることがより好ましいと言える。
また、多孔質体30の形状は、特に限定されず適宜選択できるが、移植手術を行う場合には、移植部位に対応した形状およびサイズを有することが好ましい。ここで、「移植部位に対応した形状およびサイズ」とは、広義には、移植手術の対象となる部分に対して、取付・固定し易い形状およびサイズを意味する。なお、このような形状・サイズは、通常は、移植手術の対象となる部分に対して、隙間やサイズ的な過不足を極力小さくした状態で多孔質体30を含む複合部材100を取り付けられるように、移植手術の対象となる部分の表面形状に対応した形状およびサイズを有していることが好ましい。
したがって、移植手術での利用を考慮すると、多孔質体30の形状としては、円柱状、多角柱状、板状等の規則的かつ定型的な形状ではなく、移植部位の形状に合わせて、通常、不規則かつ不定形的な形状が採用されることになる。この場合、細胞培養面30Sは、通常、多くの場合において、患者の移植部位の形状に合わせるために、大なり小なり不規則に湾曲した非平坦面となる。なお、上述したような不規則かつ不定形的な形状およびサイズを持つ多孔質体30は、X線CT検査等によって得られた移植部位の3次元画像データに基づいて、所定の定型状の多孔質体(既製品)を切削加工したり、鋳型あるいは3Dプリンターにより造形物を作製した後に、必要に応じて造形物をポーラス化処理するなどにより容易に得ることができる。また、図4に示すモジュール10A内に多孔質体30をセットして使用する場合には、この多孔質体30には、中空糸22の直径に略対応した貫通孔も設けられる。
なお、多孔質体30を構成する材料としては、細胞の培養・増殖に悪影響を及ぼすものでなければ公知の材料が適宜利用できるが、たとえば、セラミックス、ガラスセラミックス、ガラス、金属、樹脂あるいはこれらを2種類以上組み合わせた複合材料から適宜選択可能である。しかしながら、これらの材料の中でも、特にβ−TCP(β−リン酸カルシウム)、HAP(ハイドロキシアパタイト)等の人工骨材料を用いることが好ましい。このような人工骨材料は、機械的強度も高く、また、生体や培養細胞に対する親和性も高いことから、移植手術にも適している。
対向部材40の形状は、対向面40Sが、細胞培養面30Sに略対応する表面形状を有しているのであれば特に限定されず、適宜選択できる。ここで、「対向面40Sが、細胞培養面30Sに略対応する表面形状を有する」とは、対向面40Sと細胞培養面30Sとが対面するように対向部材40と多孔質体30とを接触させた場合、対向面40Sと細胞培養面30Sとが、大きな隙間が形成されることなくほぼ全面が密着して接触できることを意味する。また、対向面40Sの表面は、細胞培養面30Sと異なり、通常、微細な凹凸や孔の無い平滑面とされる。これにより、培養した細胞をモジュール10から取り出す際に、培養細胞層110の一部あるいは全部が対向面40S側に付着した状態で取り残される可能性を小さくすることができる。
対向部材40を構成する材料は、細胞の培養・増殖に悪影響を与えるものでなければ特に限定されず、たとえば、金属や、セラミックスなどが適宜利用でき、また、ハウジング50を構成する部材と同一の材料を用いることもできる。なお、対向部材40を構成する材料が、ハウジング50を構成する部材と同一の材料である場合、対向部材40は、ハウジング50を構成する部材(図4に示す例では、円筒状部材60あるいはキャップ62R)と一体的に形成された部材であってもよい。
また、中空糸22を構成する材料としては、生分解性材料、非生分解性材料、および、両者の混合材料、から選択されるいずれの材料も利用できる。ここで、非生分解性材料としては、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)などを例示することができる。しかしながら、中空糸22を構成する材料としては生分解性材料を単独で用いることが好ましい。この場合、中空糸22と共に培養細胞を移植しても、中空糸22は最終的には生体内で分解され、体内に吸収されるため、生体に対して何らの悪影響を与えるおそれも無い。また、移植に際して中空糸22と培養細胞とを分離する必要性も無いため、培養細胞の回収に際して培養細胞の活性度が低下するのを抑制できる。これに加えて、移植直後においては、中空糸22は、移植部位の強度の弱さを補うこともできる。
中空糸22を構成する生分解性材料としては公知の生分解性材料が利用できる。しかしながら、細胞との親和性等を考慮した場合、生分解性材料としては、下記(i)〜(iii)に示す材料から選択することが好ましい。
(i)ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、脂肪族ポリエステル、ポリアミド
(ii)(i)に示す高分子材料からなる群より選択される少なくとも2種類以上の高分子材料を含む混合材料
(iii)(i)に示す高分子材料からなる群より選択される少なくとも2種類以上の高分子材料の重合に用いる各々の単量体を共重合させた共重合体
なお、中空糸22は、この中空糸22を培養細胞と共に生体中に移植した場合において、生体親和性に優れ、材料の分解に伴う生体への負荷も小さいことが必要である。これに加えて、細胞の培養においては、予めモジュール10を滅菌しておくことが必要である。従って、中空糸22を構成する生分解性材料は、生体親和性に優れること、材料分解に伴う生体への負荷が低いこと、および、効果的かつ簡易な滅菌処理が可能な高圧蒸気滅菌処理に耐えうる高い耐熱性を有していることが必要である。これらの特性をバランス良く満たすという観点からは、上記に列挙した生分解性材料の中でも、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、あるいは、これら高分子材料の重合に用いる各々の単量体を2種以上重合させた共重合体が特に好ましい。
また、生分解性材料の重量平均分子量としては、30000〜500000の範囲内が好ましく、30000〜300000の範囲内がより好ましく、70000〜180000の範囲内がさらに好ましい。重量平均分子量を30000以上とすることにより、中空糸22を紡糸する際に用いる紡糸用原料の粘性が増大し、紡糸が容易となる。また、重量平均分子量を500000以下とすることにより、モジュール10内での細胞の培養に必要な期間(通常、最大で6カ月)中においては、生分解性材料の分解の進行に伴う中空糸22の著しい強度の低下を防ぎつつ、生体内への移植後においては速やかな分解が可能となるため、移植治療に好適である。さらに、中空糸22が、円筒状の膜からなり、この膜の厚み方向に貫通する孔が設けられることで半透膜機能を発揮する場合、紡糸用原料の粘性の著しい増大を防ぐことができるため、孔の形成が容易となる。
また、中空糸22は、その表面が親水化処理されたものであってもよい。親水化処理を行うことによって、細胞に対する親和性が増すと共に、培養液の膜透過性も向上するからである。親水化処理方法として、たとえば、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アルコールなどによる処理が挙げられ、アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。これらの親水化処理方法の中でも、ポリビニルピロリドン処理が好ましい。中空糸22の表面により安定的な親水性を付与することができるからである。
また、モジュール10に用いられる中空糸束20は、1本以上の中空糸22を含むものである。なお、中空糸束20が2本以上の中空糸22から構成される場合、通常、各々の中空糸22は互いに略平行に配置される。また、中空糸22は、直線を成すようにその両端がハウジング50内に固定される。たとえば、図4および図6に例示したようにハウジング50が円筒体である場合、中空糸22が、ハウジング50を構成する円筒状部材60の中心軸Cと略平行を成すように、中空糸22の両端をハウジング50内に固定することができる。
中空糸束20を構成する中空糸22は、半透膜機能を有する。ここで、半透膜機能とは、ルーメン側からESC側へ、あるいは、ESC側からルーメン側へと、溶液中に含まれる一部の成分は通すが、他の成分は通さない機能を意味する。半透膜機能を有する中空糸22は、たとえば、孔径によって通過可能な成分を変化させることができる多孔質膜や、濃度勾配による通過のみならず様々な膜通過機能を有する生体膜と同様の機能を有する膜や部材等から構成することができ、培養しようとする細胞の種類や培養液等に応じて、中空糸22を構成する部材を適宜選択して用いることができる。なお、以下の説明においては、中空糸22が、円筒状の膜からなり、この膜の厚み方向に貫通する孔が設けられることで半透膜機能を発揮する場合について説明する。
ここで、中空糸22を構成する膜に設けられる孔の孔径(以下、「膜孔径」と称す場合がある。)は、培養液をルーメン側からESC側に通過させることができ、培養しようとする細胞がESC側からルーメン側へと通過できないものであれば特に限定されるものではない。なお、膜孔径が小さくなれば膜強度は強くなるが、物質交換率は小さくなり、一方、膜孔径が大きくなれば膜強度は弱くなるが、物質交換率は大きくなる。したがって、膜強度、すなわち中空糸22の強度と、大きな物質交換率とを、バランス良く両立させるためには、中空糸22の平均膜孔径は、0.01μm〜0.8μmの範囲内が好ましく、0.05μm〜0.2μmの範囲内がより好ましい。
中空糸22の内径としては、培養液を供給することができる太さであれば、特に限定されないが、高い膜透過性を確保する観点から、0.1mm〜3mmの範囲内が好ましい。また、加工が容易であることや、培養液中に生じた不溶成分による目詰まりを抑制する観点も考慮した場合、内径は、0.3mm〜1.0mmの範囲内がより好ましい。なお、内径は、0.3mm〜1.0mmの範囲内とする場合、外径は、0.2mm〜3.0mmの範囲内とすることが好ましい。
また、中空糸束20を構成する中空糸22の本数や、膜厚は、細胞の培養が可能であれば特に限定されないが、必要とする培養細胞の量、培養細胞が必要とする栄養量および酸素量、モジュール10内のECSの体積のいずれか1つまたは複数との関係等で適宜調整することが好ましい。
中空糸束20が2本以上の中空糸22から構成される場合、中空糸束20の両端部分は、一般に使用される封止材を用いて中空糸22間の間隙を封鎖すると共に、たとえば、糊付け等することでハウジング50の内周面側に固定することができる。封止材としては、たとえば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの公知の樹脂を利用できる。
−ハウジング−
ハウジング50は、(1)中空糸束20、多孔質体30および対向部材40を少なくとも格納でき、(2)最短距離Dminが略一定となるように細胞培養面30Sと対向面40Sとを対面させた状態で、多孔質体30および対向部材40を配置でき、かつ、(3)中空糸束20が多孔質体30および対向部材40の間に形成される空間の一部を占めるように配置できるのであれば、その構造は図4および図6に示す例に限定されない。また、ハウジング50には、図4および図6に例示したように、細胞の培養を効率的に行う観点から、通常は、ECSおよびルーメンに接続される導管が適宜設けられる。そして、細胞の培養に際して、これらの導管には、チューブを介して外部の機器(たとえば、ポンプ、培養液供給タンク、被培養部材供給タンクなど)に適宜接続される。また、ハウジング50の内周面のうち、少なくともECSを構成する内周面は、細胞培養面30Sと異なり、通常、微細な凹凸や孔の無い平滑面とされる。これにより、培養した細胞をモジュール10から取り出す際に、培養細胞層110の一部あるいは全部が内周面側に付着した状態で取り残される可能性を小さくすることができる。
ハウジング50を構成する材質は、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂などの樹脂材料を利用することができる。これらの樹脂材料の中でも、ポリカーボネート樹脂およびポリスルホン樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂およびポリスルホン樹脂は、耐熱性に優れるため、ハウジング50の高圧蒸気滅菌が可能となり、効率的な滅菌処理を行うことができる。また、ポリカーボネート樹脂およびポリスルホン樹脂は、透明性が高いため、肉眼により細胞の培養状態を容易に確認することができる。
また、モジュール10では、ハウジング50の任意の部分が脱着可能であることが好ましい。ここで、「ハウジングの任意の部分が脱着可能」とは、ハウジング50の任意の部分(脱着可能部分)がハウジング50のその他の部分(本体部分)から分離可能であり、かつ、脱着可能部分は、本体部分に装着可能であることを意味する。また、「脱着可能」とは、脱着可能部分を、本体部分と接触させたまま開閉することが可能な態様、または、脱着可能部分を本体部分から完全に離間するように分離できると共に、分離した脱着可能部分を再び本体部分に取り付け可能な態様を意味する。たとえば、図4および図6に示すモジュール10では、ハウジング50の本体部分を構成する円筒状部材60に対して、キャップ62R、62Rが脱着可能に設けられてもよい。このキャップ62R、62Rは、たとえば、スクリュー式、はめ込み式、ボルト止め式等により脱着可能としてよい。なお、多孔質体30、培養細胞層110および中空糸束20を一体的に取り出すこと容易にする上では、たとえば、図4に示すモジュール10Aでは、多孔質体30をキャップ62L側に固定して取り付けることが好ましく、図6に示すモジュール10Bでは、多孔質体30および対向部材40をキャップ62L側に固定して取り付けることが好ましい。
図7は、細胞培養用中空糸モジュールの他の例を示す模式側面図である。図7中に示す各部材について、図4中に示すものと同様の機能を持つ部材については同一の符号が付してある。図7に示すモジュール200では、細胞培養面30Sから対向面40Sまでの最短距離Dminが0.1mm〜5.0mmの範囲内に設定される。最短距離Dminを上記範囲内に設定することにより、容易にECS内を細胞で埋め尽くすように細胞を培養することができると共に、移植手術に必要な量の細胞の確保も極めて容易である。
なお、最短距離Dminは、0.3mm〜3.0mmの範囲内であることがより好ましい。また、最短距離Dminは、図4等に例示したモジュール10と同様に、細胞培養面30Sの面内において略一定の値であってもよいが、図7に例示するように、ばらついていてもよい。この場合、たとえば、生体内に形成される一般的な隙間の隙間間隔がばらついているときでも、隙間を過不足無く培養細胞で埋め尽くすように移植手術を行うことが極めて容易になる。ここで、細胞培養面30Sの面内において最短距離Dminがばらつく場合は、最短距離Dminの最大値と最小値との中心値(=(最大値+最小値)/2)を基準値(100%)とした際に±20%を超える範囲でばらつく。したがって、対向部材40の形状は、図4等に例示したモジュール10と同様に、対向面40Sが、細胞培養面30Sに略対応する表面形状を有していてもよく、図7に例示したように細胞培養面30Sに対応しない表面形状を有していてもよい。
なお、モジュール200において、中空糸束20は、図7に示す例では、多孔質体30を貫通すると共に細胞培養面30Sと交差するように配置されているが、図6に例示したように細胞培養面30Sと略平行を成すように配置することもできる。
以上に説明した点を除けば、図7に例示するモジュール200は、図4または図6等に例示したモジュール10と実質同様の構成を有する。
<移植用部材の製造>
本実施形態の移植用部材の製造方法においては、図4および図7等に例示したモジュールから取り出した複合部材をそのまま本実施形態の移植用部材として用いてもよい(第一の製造方法)。この場合、多孔質体からなる基材と、基材の少なくとも片面に設けられると共に増殖した細胞を含む被培養部材からなるゲル状細胞含有層と、基材とゲル状細胞含有層とに跨るように、基材およびゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の中空糸からなる支持棒と、を少なくとも備えた移植用部材を得ることができる。
また、多孔質体と、増殖した細胞を含む被培養部材と、中空糸束とが一体となった状態でモジュールから取り出された複合部材から中空糸束を構成する少なくとも一部の中空糸を棒状部材に置換する中空糸−棒状部材置換工程を実施することで、移植用部材を作製してもよい(第二の製造方法)。この場合も、多孔質体からなる基材と、基材の少なくとも片面に設けられると共に増殖した細胞を含む被培養部材からなるゲル状細胞含有層と、基材とゲル状細胞含有層とに跨るように、基材およびゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の支持棒と、を少なくとも備えた移植用部材を得ることができる。なお、この移植用部材では、移植用部材を構成する支持棒は、(i)中空糸−棒状部材置換工程で用いた棒状部材のみ、または、(ii)棒状部材および中空糸−棒状部材置換工程において棒状部材に置換されなかった中空糸の組み合わせから構成される。
なお、第一の製造方法および第二の製造方法のいずれの場合においても、細胞培養装置であるモジュール内にて培養された塊状の被培養部材(ゲル状細胞含有部材)を、細胞培養終了時の塊状状態を略維持したままの状態で、移植用部材を構成するゲル状細胞含有層として利用できる。
たとえば、図5に示す複合部材100をそのまま移植用部材として用いる場合は、図1に示す断面構造を有する移植用部材300Aを得ることができる。この場合、図5に示す複合部材100を構成する中空糸22、多孔質体30および培養細胞層110が、図1に示す移植用部材300Aを構成する支持棒330A、基材310およびゲル状細胞含有層320に各々対応する。
また、図5に示す複合部材100を構成する全ての中空糸22を棒状部材に置換することによっても図1に示す移植用部材300Aを得ることができる。なお、中空糸22と置換する棒状部材、すなわち、支持棒330Aとして多孔質支持棒を用いる場合は、予め血漿、血清、フィブリン等の血液構成成分を含浸させた多孔質支持棒を用いることが好ましい。なお、移植用部材300Aの作製に際しては、複合部材100を構成する中空糸22のうち、一部のみを棒状部材に交換することもできる。この場合、移植用部材300Aを構成する支持棒330Aは、元からあった中空糸22と、中空糸22と置換した棒状部材とからなる。
なお、図5に示す複合部材100の作製に用いる多孔質体30に、中空糸22を挿通させるための第一の縦穴32(貫通穴)以外に、細胞培養面30S側のみに開口部を有する第二の縦穴もさらに設けられている場合は、図3に示す移植用部材300Cを作製することもできる。この場合、移植用部材300Cの作製に際して、第一の縦穴32に対応する縦穴314内に保持・固定される支持棒330Aとして中空糸22がそのまま利用され、第二の縦穴に対応する縦穴316内には、支持棒330Bとして別途準備した棒状部材が差し込まれる。
また、図6に例示したようなモジュールから取り出した複合部材を用いて本実施形態の移植用部材を作製する場合には、複合部材を構成する多孔質体30として、少なくとも細胞培養面30S側に開口部を有する縦穴が設けられたものを用いる(第三の製造方法)。この場合、モジュールから複合部材を取り出した後に、培養細胞層110中を貫く中空糸22を除去すると共に、多孔質体30に設けられた縦穴に支持棒330として別途準備した棒状部材を差し込むことで、図1〜図3に例示するような移植用部材300を得ることができる。なお、中空糸22は除去せずにゲル状細胞含有層320(培養細胞層110)中に残したままとしてもよい。
<移植用部材の作製例>
図4に示すモジュール10Aを用いて軟骨細胞の培養実験を行った。なお、培養実験に用いたモジュール10Aの最短距離Dminは約3mmであり、細胞培養面30Sの単位面積当たりの中空糸22(外径:1.4mm)の配置密度は約5.8本/cmである。
培養実験に際しては、まず、ECS内に被培養部材(間葉系幹細胞を含むゲル状物質、軟骨細胞密度:10個/ml、ゲル成分:キトサンゲル)を充填した。次に、中空糸22のルーメンに、溶存酸素量7〜8mg/lの培養液を14日間に渡って連続的に供給し続けた。なお、培養液の代わりに水性インクを溶解した水溶液を供給した拡散試験の結果からは、中空糸22に導入した培養液がECS内に行き渡るのに要する時間は約15分程度と推定される。培養終了後、細胞培養面30Sと対向面40Sとの間に形成された培養細胞層110について、光学顕微鏡を用いて観察したところ、軟骨細胞の密度は10個/mlまで増大していた。また、培養細胞層110の厚み方向(図4中における中心軸Cに対応する方向)に対して、軟骨細胞がばらつき無く一様に増殖していることが確認された。
なお、モジュール10Aから取り出した図5に示す断面構造を有する複合部材100は、これをそのまま図1に示す断面構造を有する移植用部材300Aとして利用できる。
また、複合部材100の中空糸22を、支持棒330Aに置換した移植用部材300Aを以下の手順で作製した。まず、支持棒330Aとして、直径が約1.4mm弱のポリ乳酸製の多孔質ロッドを準備した。次に、この多孔質ロッドを、血清中に浸して血清を含浸させた。その後、複合部材100から全ての中空糸22を引き抜いた部材に、血清を含浸する多孔質ロッドを差し込んだ。これにより、支持棒330Aとして血清を含有するポリ乳酸製の多孔質ロッドを備えた図1に示す断面構造を有する移植用部材300Aを得た。
<多孔質支持棒の細胞増殖効果の評価>
移植用部材に用いる多孔質支持棒に血液構成成分を含有させた場合において、移植後により速やかに移植用部材が周囲の生体組織と馴染が良くなるか否かについて、以下に説明する疑似的実験により評価した。
(実験例1)
多孔質ロッド(外径:1.3mm、材質:ポリ乳酸樹脂、空隙率:83%)には、予めFGF−2(Fibroblast Growth Factor 2)を陰圧浸透させた後、冷蔵保存した。次に、400μlのアテロコラーゲンに4×10個(1×10cell/mL)のP1ヒト耳介軟骨細胞を混合したゲル状物質中に、上述した多孔質体を埋入し、37℃で168時間保持した。なお、培地としては、基礎培地に5%ヒト血清を添加し、細胞の生存が最低限担保できるものを使用した。
(実験例2)
実験例1において、FGF−2を予め浸透させていない多孔質体を用いた以外は、実施例1と同様に実験した。
(評価結果)
実験後のゲル状物質をサンプリングして、サンプリングしたゲル状物質中の細胞数をカウントした。その結果、実験例2の細胞数を基準(100%)とした場合の実験例1の細胞数は、約113%であった(値は3回の実験の平均値)。この結果からは、多孔質体は液性因子の徐放材としても機能すると考えられ、線維芽細胞増殖因子等を含有する多孔質支持棒を用いた移植用部材では、移植後において周辺組織と速やかに馴染みやすいと予想される。
<多孔質支持棒の弾性率評価>
多孔質支持棒の弾性率は、測定装置としてインストロン社製、4443型を用いて評価サンプルに荷重を加えた際の、荷重と変位との関係から測定した。
−測定条件−
有効長:3mm
リミット変位:0.5mm
圧縮速度:1mm/min
なお、有効長を3mmとしたのは、図1に例示した移植用部材300Aのように、ゲル状細胞含有層320中に位置する支持棒330Aの長さが、ゲル状細胞含有層320と一致しており、且つ、ゲル状細胞含有層320の厚みが3mmである場合を想定したものである。
−評価サンプル−
サンプル1:中空糸(外径:1.3mm、内径0.8mm、材質:ポリ乳酸樹脂、空隙率:83%)
サンプル2:多孔質ロッド(外径:1.3mm、材質:ポリ乳酸樹脂、空隙率:83%)サンプル3:多孔質ロッド(外径:1.3mm、材質:ポリ乳酸樹脂、空隙率:74%)
なお、サンプル2は、<多孔質支持棒の細胞増殖効果の評価>において用いた多孔質ロッドと同一の多孔質ロッドである。
測定は、各サンプルについて5回実施し、その平均値を弾性率として求めた。結果を以下の表1に示す。なお、表1中、括弧内に示される数値は標準偏差である。
Figure 2016174772
10、10A、10B :モジュール
20 :中空糸束
22 :中空糸
30 :多孔質体
30S :細胞培養面
32 :縦穴
40 :対向部材
40S :対向面
50 :ハウジング
60 :円筒状部材
62L :キャップ
62R :キャップ
70A :第一ECS導管
70B :第二ECS導管
80A :第一ルーメン導管
80B :第二ルーメン導管
100 :複合部材
110 :培養細胞層
200 :モジュール
300、300A、300B、300C :移植用部材
310 :基材
310S :支持面
312S :非支持面
314、316 :縦穴
320 :ゲル状細胞含有層
320S :表面
330、330A、330B :支持棒

Claims (11)

  1. 基材と、
    前記基材の少なくとも片面に設けられたゲル状細胞含有層と、
    前記基材と前記ゲル状細胞含有層とに跨るように、前記基材および前記ゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の支持棒と、を少なくとも備えることを特徴とする移植用部材。
  2. 前記支持棒を構成する材料として、生分解性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の移植用部材
  3. 前記支持棒が、多孔質状の多孔質支持棒であることを特徴とする請求項1または2に記載の移植用部材。
  4. 前記多孔質支持棒の空隙率が30%〜90%の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の移植用部材。
  5. 前記多孔質支持棒が、i)血漿、血清、および、フィブリンからなる群より選択される少なくとも1種の血液構成成分、および、ii)線維芽細胞増殖因子、の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項3または4に記載の移植用部材。
  6. 前記支持棒の弾性率が、0.04MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の移植用部材。
  7. 前記支持棒を3本以上有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の移植用部材。
  8. 前記ゲル状細胞含有層の厚みが0.1mm〜5.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の移植用部材。
  9. 前記ゲル状細胞含有層が、細胞培養装置内にて培養された塊状のゲル状細胞含有部材を、細胞培養終了時の塊状状態を略維持したまま取り出した部材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の移植用部材。
  10. 半透膜機能を有する中空糸を1本以上含む中空糸束と、細胞培養面を備えた多孔質体と、前記細胞培養面に向き合うと共に、前記細胞培養面に略対応する表面形状を有する対向面を備えた対向部材と、前記中空糸束、前記多孔質体および前記対向部材を格納するハウジングと、を少なくとも有し、前記細胞培養面の面内において、前記細胞培養面から前記対向面までの最短距離が略一定となるように、前記細胞培養面と前記対向面とを対面させた状態で、前記ハウジング内に前記多孔質体および前記対向部材が配置されると共に、前記中空糸束が、少なくとも前記細胞培養面と前記対向面との間に形成される空間の一部分を占め、前記多孔質体を貫通し且つ前記細胞培養面と交差するように配置されている細胞培養用中空糸モジュールを用いて、
    前記細胞培養面と、前記対向面と、前記ハウジングの内周面とにより囲まれた空間内に、種細胞を少なくとも含む被培養部材を配置する種細胞配置工程と、
    前記中空糸の内部空間に、酸素を含むガス、および、培養液から選択される少なくとも1種の媒体を供給する媒体供給工程と、
    細胞の培養が完了した後に、前記多孔質体と、増殖した細胞を含む前記被培養部材と、前記中空糸束とが一体となった状態で、これら部材を前記ハウジング内から取り出す取り出し工程と、を少なくとも実施することにより、前記多孔質体と、増殖した細胞を含む前記被培養部材と、前記中空糸束とが一体となった複合部材を作製し、
    さらに、前記複合部材から、前記中空糸束を構成する少なくとも一部の中空糸を棒状部材に置換する中空糸−棒状部材置換工程を少なくとも実施することにより、
    前記多孔質体からなる基材と、前記基材の少なくとも片面に設けられると共に増殖した細胞を含む前記被培養部材からなるゲル状細胞含有層と、前記基材と前記ゲル状細胞含有層とに跨るように、前記基材および前記ゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の支持棒と、を少なくとも備え、且つ、前記支持棒が、(i)前記棒状部材のみ、または、(ii)前記棒状部材および前記中空糸−棒状部材置換工程において棒状部材に置換されなかった中空糸とから構成される移植用部材を製造することを特徴とする移植用部材の製造方法。
  11. 半透膜機能を有する中空糸を1本以上含む中空糸束と、細胞培養面を備えた多孔質体と、前記細胞培養面に向き合うと共に、前記細胞培養面に略対応する表面形状を有する対向面を備えた対向部材と、前記中空糸束、前記多孔質体および前記対向部材を格納するハウジングと、を少なくとも有し、前記細胞培養面の面内において、前記細胞培養面から前記対向面までの最短距離が略一定となるように、前記細胞培養面と前記対向面とを対面させた状態で、前記ハウジング内に前記多孔質体および前記対向部材が配置されると共に、前記中空糸束が、少なくとも前記細胞培養面と前記対向面との間に形成される空間の一部分を占め、前記多孔質体を貫通し且つ前記細胞培養面と交差するように配置されている細胞培養用中空糸モジュールを用いて、
    前記細胞培養面と、前記対向面と、前記ハウジングの内周面とにより囲まれた空間内に、種細胞を少なくとも含む被培養部材を配置する種細胞配置工程と、
    前記中空糸の内部空間に、酸素を含むガス、および、培養液から選択される少なくとも1種の媒体を供給する媒体供給工程と、
    細胞の培養が完了した後に、前記多孔質体と、増殖した細胞を含む前記被培養部材と、前記中空糸束とが一体となった状態で、これら部材を前記ハウジング内から取り出す取り出し工程と、を少なくとも実施することにより、
    前記多孔質体からなる基材と、基材の少なくとも片面に設けられると共に増殖した細胞を含む前記被培養部材からなるゲル状細胞含有層と、前記基材と前記ゲル状細胞含有層とに跨るように、前記基材および前記ゲル状細胞含有層中に配置された1本以上の前記中空糸からなる支持棒と、を少なくとも備えた移植用部材を製造することを特徴とする移植用部材の製造方法。
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