JP2016173266A - 放射線検出装置、放射線検出システム並びにシンチレータ層の形成方法及び放射線検出装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射線検出装置の検出量子効率を向上する技術を提供する。【解決手段】放射線検出装置は、複数の光電変換素子を含む画素アレイを有するセンサパネルと、放射線を光に変換する複数の柱状結晶が画素アレイの全域を覆うように配されたシンチレータ層とを備え、複数の柱状結晶のそれぞれは、センサパネルの法線から同一の方向に傾斜しており、複数の柱状結晶のそれぞれは、各柱状結晶の端部を除いて、センサパネルに近づくにつれて太くなる。【選択図】図3
Description
本発明は、放射線検出装置、放射線検出システム並びにシンチレータ層の形成方法及び放射線検出装置の製造方法に関する。
シンチレータ層とセンサパネルとを有し、シンチレータ層で放射線から変換された光をセンサパネルで検出する放射線検出装置が知られている。このような放射線検出装置では、入射した放射線の利用効率、すなわち検出量子効率(Detective Quantum Efficiency:DQE)の向上が求められている。特許文献1は、シンチレータ層が柱状結晶のシンチレータで形成された放射線検出装置を提案する。このシンチレータ層では、DQEを向上するために、センサパネルの中央の位置において柱状結晶がセンサパネルの表面に直交する方向に延び、その他の位置において柱状結晶がセンサパネルの中心に向かって傾斜している。
特許文献1の放射線検出装置では、センサパネルの中央部分において、シンチレータの柱状結晶がセンサパネルの表面に直交している。そのため、センサパネルの表面に対して直交する方向から入射した放射線の一部が柱状結晶の隙間を通り抜けてしまい、十分な検出量子効率が得られない。また、以下に詳細に説明するように、柱状結晶が一定の幅を有しているので、柱状結晶で発生した光は柱状結晶の上下に均等に広がってしまう。この観点でも特許文献1の放射線検出装置の検出量子効率は十分ではない。本発明は、放射線検出装置の検出量子効率を向上する技術を提供することを目的とする。
上記課題に鑑みて、複数の光電変換素子を含む画素アレイを有するセンサパネルと、放射線を光に変換する複数の柱状結晶が前記画素アレイの全域を覆うように配されたシンチレータ層とを備え、前記複数の柱状結晶のそれぞれは、前記センサパネルの法線から同一の方向に傾斜しており、前記複数の柱状結晶のそれぞれは、各柱状結晶の端部を除いて、前記センサパネルに近づくにつれて太くなることを特徴とする放射線検出装置が提供される。
上記手段により、放射線検出装置の検出量子効率を向上する技術が提供される。
添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について以下に説明する。様々な実施形態を通じて同様の要素には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、各実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。本発明の一部の実施形態は、例えば医療画像診断機器や非破壊検査機器等に用いられる放射線検出装置に関し、これらの放射線検出装置は例えば放射線撮像に用いられる。本明細書において、放射線は、X線、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、中性子線などを含む。
図1を参照して、本発明の一部の実施形態に係る放射線検出装置100の構成例について説明する。図1(a)は放射線検出装置100の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における放射線検出装置100の断面図である。説明のために、図1(a)では、図1(b)に示されている構成要素の一部が省略されている。また、図1(a)では、筐体110を透過的に示すとともに、シンチレータ層131の縁を破線で示す。
放射線検出装置100は、とりわけ、筐体110と、センサパネル120と、シンチレータパネル130と、回路基板170とを有する。センサパネル120と、シンチレータパネル130と、回路基板170とは筐体110に格納されている。シンチレータパネル130は、筐体110を通じて入射した放射線を、センサパネル120が検出可能な波長帯の電磁波(例えば、可視光)に変換する。放射線は、放射線検出装置100に対して、シンチレータパネル130側(図1(b)における上側)から照射される。すなわち、放射線検出装置100はいわゆる表面照射型の放射線検出装置である。センサパネル120は、特定の波長帯の電磁波(例えば、可視光など)を電気信号に変換する。回路基板170には、センサパネル120を駆動する駆動回路や、センサパネル120から電気信号を読み出す読出回路等の信号処理回路が配置されている。
センサパネル120には、例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサが用いられる。センサパネル120は既存の構成であってもよく、以下ではその一例を簡単に説明する。センサパネル120は、1つのセンサ基台121と、複数のセンサ基板122とを有する。各センサ基板122は、複数の画素が行列状(マトリクス状)に配された画素アレイを有する。各画素は、半導体基板126に形成された光電変換素子123及びスイッチング素子(不図示)により構成される。光電変換素子123は、半導体基板126内の不純物領域によって形成される。スイッチング素子は例えばMOSトランジスタであり、半導体基板126に形成された2つの不純物領域と、これらの間の部分を覆うゲート電極によって形成される。これらの複数の画素によって画素アレイが構成される。画素アレイはセンサ保護層124によって覆われている。センサ保護層124は、センサ基板122の外部からの影響から画素アレイを保護する。センサ保護層124は例えばポリイミド等の樹脂で形成される。センサ基板122の面のうち光電変換素子123が配されている側の面(図1(b)において上側の面)を受光面と呼ぶ。同様に、センサパネルの面のうち光電変換素子123が配されている側の面を受光面と呼ぶ。
複数のセンサ基板122はセンサ基台121の一方の面の上に隙間なく配列されており、その結果、複数のセンサ基板122の画素アレイが一体の画素アレイを形成する。複数のセンサ基板122の画素アレイによって形成された一体の画素アレイをセンサパネル120の画素アレイと呼ぶ。センサ基台121と、各センサ基板122の裏面(受光面とは反対側の面)とは、例えば接着剤によって互いに固定されている。
シンチレータパネル130は、シンチレータ層131と、シンチレータ基台132と、シンチレータ保護層135とを有する。シンチレータ層131は、例えば主成分であるヨウ化セシウム(CsI)に賦活剤としてタリウム(Tl)を添加して得られるCsI:Tl等のシンチレータによって構成される。これに代えて、例えばハロゲン化アルカリを主成分とする材料によってシンチレータが構成されてもよい。シンチレータ層131のうち一方の面(図1(b)において上側の面)はシンチレータ基台132に接している。シンチレータ層131のうちシンチレータ基台132に接していない面は、シンチレータ保護層135によって覆われている。シンチレータ保護層135は、シンチレータ層131を湿気等から保護する機能を有する。シンチレータ保護層135の材料として、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの有機樹脂やポリパラキシリレン等の有機膜、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系等のホットメルト樹脂などが用いられる。
シンチレータ基台132は、ガラス基板133と反射層134とを有する。反射層134はガラス基板133とシンチレータ層131との間に配される。反射層134は、シンチレータ層131で変換された光のうちシンチレータ基台132へ向けて進む成分を、センサパネル120へ向けて反射する。
センサパネル120の受光面と、シンチレータパネル130のうちシンチレータ基台132とは反対側の面(図1(b)において下側の面)とは、結合部材140によって互いに固定されている。結合部材140は、例えばアクリル系の透明な粘着材や、硬化した接着剤である。
各センサ基板122は、その一辺に配線接続部125を更に有する。配線接続部125には配線部材150の一端が取り付けられている。配線部材150の他端は、回路基板170に取り付けられている。配線部材150によって、センサ基板122の画素アレイと回路基板170の信号処理回路とが互いに電気的に接続される。
センサパネル120とシンチレータパネル130との結合部分は、封止部材160によって封止されている。封止部材160は、センサパネル120及びシンチレータパネル130の全周を覆うような枠形状を有する。封止部材160はさらに、配線接続部125と配線部材150との結合部分を覆う。封止部材160は、センサパネル120とシンチレータパネル130との結合部分を湿気等から保護する機能を有する。封止部材160の材料として、水分透過率の低い材料、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が用いられる。
続いて、図2を参照して、本発明の他の一部の実施形態に係る放射線検出装置200の構成例について説明する。図2(a)は放射線検出装置200の平面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B線における放射線検出装置200の断面図である。説明のために、図2(a)では、図2(b)に示されている構成要素の一部が省略されている。また、図2(a)では、筐体110を透過的に示すとともに、シンチレータ層131の縁を破線で示す。
放射線検出装置200は、センサパネル120の代わりにセンサパネル220を有する点で放射線検出装置100とは異なり、他の構成要素は同じであってもよい。センサパネル220も既存の構成であってもよく、以下ではその一例を簡単に説明する。センサパネル220は、複数の画素が行列状(マトリクス状)に配された画素アレイを有する。各画素は、単一の絶縁基板221の上に形成された光電変換素子222及びスイッチング素子(不図示)により構成される。光電変換素子222は、アモルファスシリコンによって形成される。スイッチング素子は例えばTFTであり、アモルファスシリコンによって形成される。これらの複数の画素によって画素アレイが構成される。画素アレイはセンサ保護層124によって覆われている。センサパネル220の面のうち光電変換素子222が配されている側の面(図2(b)において上側の面)を受光面と呼ぶ。センサパネル220は、その4つの辺のそれぞれに複数の配線接続部125を更に有する。配線接続部125には配線部材150の一端が取り付けられている。
センサパネル220は、センサパネル120とは異なり、センサ基板122を貼り合わせるためのセンサ基台121を必要としない。そのため、放射線を、放射線検出装置200に対してセンサパネル220側(図2(b)における下側)から照射してもよい。すなわち、放射線検出装置200はいわゆる裏面照射型の放射線検出装置であってもよい。
続いて、図3を参照して、一部の実施形態におけるシンチレータ層131の構造を詳細に説明する。図3(a)は、図1(b)の一部分の拡大図である。シンチレータ層131は、シンチレータの複数の柱状結晶301によって構成される。柱状結晶301の材料として、例えば、CsI:Tl、CsI:Na、CsBr:Tl、NaI:Tl、LiI:Eu、KI:Tl等が用いられる。柱状結晶301はそれぞれ、放射線を光に変換する。図3(a)に示されるようなシンチレータ層131の断面は、例えばSEM(走査型電子顕微鏡)により観察される。このような断面において、複数の柱状結晶301の断面は様々な大きさ・形状を有し、様々な間隔で並びうる。しかし、図3(a)では説明を簡単にするために、複数の柱状結晶301の大きさ・形状が同一であり、一定の間隔で並んでいるものとして説明する。
複数の柱状結晶301は、センサパネル120の画素アレイの全域を覆うように配されている。シンチレータ層131を構成する複数の柱状結晶301はいずれも、センサパネル120の法線302から同じ方向(図3(a)の左方向)に傾斜しており、画素アレイの全域にわたって同一の方向303に延在している。このように複数の柱状結晶301が配されることによって、法線302の方向から放射線検出装置100に入射した放射線のうち柱状結晶301に当たらずに直接センサパネル120に到達する成分を低減できる。さらに、複数の柱状結晶301は、これらの隙間が、センサパネル120の平面視において、複数の柱状結晶301の何れかに重なるように配されてもよい。これによって、柱状結晶301に当たらずに直接センサパネル120に到達する放射線の成分をさらに低減できる。
図3(a)に示す断面は、法線302と、柱状結晶301が延在する方向303を通る直線とによって張られる平面に一致する。この平面は、画素アレイの行又は列に平行であってもよいし、行及び列のそれぞれに対して傾斜していてもよい。本実施形態では、この平面は、画素アレイの行に平行であるとする。すなわち、柱状結晶301は、法線302と、画素アレイの行とによって張られる平面に平行に延在する。
各柱状結晶301は、端部を除いて、センサパネル120に近づくにつれて、すなわちシンチレータ基台132側からセンサパネル120側に向けて幅が太くなるようなテーパーを有する。柱状結晶301のうちシンチレータ基台132側の端部とは、例えば、シンチレータ基台132に接した部分である。柱状結晶301を蒸着により形成した場合に、この端部は柱状結晶301が成長を開始した部分である。柱状結晶301のうちセンサパネル120側の端部とは、例えば、柱状結晶301の頂点に向かって幅が細くなる部分である。柱状結晶301を蒸着により形成した場合に、この端部は柱状結晶301が成長を終了した部分である。柱状結晶301のうち両端部を除いた部分を主要部分と呼ぶ。
柱状結晶301の主要部分がこのようなテーパーを有することにより、シンチレータ層131のうち柱状結晶301の充填率は、センサパネル120に近い位置ほど高くなる。これにより、シンチレータ層131のうちセンサパネル120に近い位置で放射線が光に変換される確率が高まる。例えば、シンチレータ基台132側(シンチレータ層131の中央よりも上)にあるシンチレータ層131の断面であって、センサパネル120に平行な平面による断面において、柱状結晶301の充填率は0.76よりも小さい(例えば、0.72である)。また、センサパネル120側(シンチレータ層131の中央よりも下)にあるシンチレータ層131の断面であって、センサパネル120に平行な平面による断面において、柱状結晶301の充填率は0.76よりも大きい(例えば、0.80である)。
さらに、柱状結晶301の主要部分がこのようなテーパーを有することにより、柱状結晶301で発生した光のうちセンサパネル120へ向かう成分の比率を増やすことができる。図3(c)に示すように、点304で光が発生したとする。この場合、この光のうち、点304から柱状結晶301の外周にそれぞれ下した2本の垂線305以下の範囲の成分が少なくともセンサパネル120へ向かう。従って、点304で発生した光のうち50%を超える成分がセンサパネル120へ向かう。一方、柱状結晶がテーパーを有していない場合に、発生した光の半分(50%)がセンサパネル120へ向かう。従って、柱状結晶301の主要部がテーパーを有することによって、DQEを向上できる。
複数の柱状結晶301の配置を詳細に説明するために、図3(a)及び図3(b)に示すように各種パラメータを規定する。図3(b)は、図3(a)に示された柱状結晶301のうち、互いに隣接する2つの柱状結晶301a、301bに着目し、xy平面に配置した図である。
・シンチレータ層131の膜厚をt_scとする。この膜厚は、法線302に沿ったシンチレータ層131の厚さである。本実施形態では、柱状結晶301の主要部分の膜厚をシンチレータ層131の厚さと呼ぶ。柱状結晶301の主要部分は柱状結晶301全体の大部分を占めるので、t_scはシンチレータ層131全体の膜厚にほぼ等しい。
・複数の柱状結晶301の平均傾斜角度をθ_scとする。柱状結晶301の傾斜角度とは、柱状結晶301が延在する方向303と、センサパネル120の法線302とのなす角のことである。複数の柱状結晶301はシンチレータ層131の全域にわたって同じ方向303に延在しているが、その方向にばらつきを有することがある。そこで、複数の柱状結晶301の傾斜角度の平均値をθ_scとする。θ_scの算出に用いられる柱状結晶301は、例えばSEM観察領域内の代表的な柱状結晶301(例えば、50本の柱状結晶301)であってもよい。本実施形態では、θ_sc>0°となる。
・光電変換素子123の幅をw_pixとする。本実施形態では、光電変換素子123の幅は、法線302と、柱状結晶301が延在する方向303を通る直線とによって張られる平面において測定される。これに代えて、光電変換素子123の幅は、画素アレイの行方向について測定されてもよいし、列方向について測定されてもよい。画素アレイを構成する光電変換素子123が複数種類の幅を有するならば、それらの光電変換素子123のうちの代表的なものの幅をw_pixとしてもよい。光電変換素子123が半導体基板内の不純物領域によって形成される場合に、電荷蓄積領域として機能する不純物領域の幅をw_pixとしてもよい。
・光電変換素子123のピッチをp_pixとする。光電変換素子123のピッチは、互いに隣接する2つの光電変換素子123の中心間の距離である。本実施形態では、光電変換素子123のピッチは、法線302と、柱状結晶301が延在する方向303を通る直線とによって張られる平面において測定される。これに代えて、光電変換素子123のピッチは、画素アレイの行方向について測定されてもよいし、列方向について測定されてもよい。互いに隣接する2つの光電変換素子123の幅が、光電変換素子123の組ごとに複数種類の値を取り得るならば、それらの値のうちの代表的なものをp_pixとしてもよい。
・柱状結晶301の平均間隔をp_scとする。一般に、互いに隣接する2つの柱状結晶301の間隔は、柱状結晶301のペアごとに異なりうる。そこで、例えば、シンチレータ層131の1枚のSEM断面図における、互いに隣接する2つの柱状結晶301の間隔の平均値をp_scとする。互いに隣接する2つの柱状結晶301の間隔とは、SEM断面図においてそれぞれの柱状結晶301の中心を通り、柱状結晶301が延在する方向303に延びる2本の直線の間の距離のことである。
・柱状結晶301のうち、主要部分(すなわち、両端部を除いた部分)のうち最も細い部分の平均柱径をwa_scとし、最も太い部分の平均柱径をwb_scとする。柱状結晶301のうちシンチレータ基台132側の端部とは、シンチレータ基台132から所定の距離(例えば、30μm)にある部分としてもよい。また、柱状結晶301のうちセンサパネル120側の端部とは、柱状結晶301の先端から所定の距離(例えば、20μm)にある部分としてもよい。
一般に、柱状結晶301の柱径は、柱状結晶301ごとに異なりうる。さらに、SEM断面図が柱状結晶301の中心からどの程度ずれた位置で柱状結晶301を切断するかによって、SEM断面図で観察される柱状結晶301の柱径も異なり得る。そこで、例えば、シンチレータ層131の1枚のSEM断面図における、複数の柱状結晶301の平均値をwa_sc、wb_scとする。平均値の算出に用いられる複数の柱状結晶301は、例えば、1枚のSEM断面図で観察される柱状結晶301のうち、柱径が大きいものから順に所定の割合で(例えば、上位20%を)選択したものであってもよい。このように平均値を算出することによって、中心から離れた位置をSEM断面図が通り、それ故SEM断面図では小さな柱径を有するものとして観察される柱状結晶301の影響を緩和できる。
続いて、様々な実施形態において、上述のパラメータが満たす関係について説明する。一部の実施形態では、
p_pix ≧ t_sc × tan(θ_sc) …(1)
を満たす。この不等式の右辺は、センサパネル120の受光面に対する1本の柱状結晶301の正射影の長さである。従って、この不等式は、1本の柱状結晶301の正射影の長さが画素ピッチを超えないことを意味する。
p_pix ≧ t_sc × tan(θ_sc) …(1)
を満たす。この不等式の右辺は、センサパネル120の受光面に対する1本の柱状結晶301の正射影の長さである。従って、この不等式は、1本の柱状結晶301の正射影の長さが画素ピッチを超えないことを意味する。
一部の実施形態では、
p_pix−w_pix ≧ t_sc×tan(θ_sc) …(2)
を満たす。この不等式の左辺は、互いに隣接する2つの光電変換素子123の間の隙間部分の幅である。従って、この不等式は、1本の柱状結晶301の正射影の長さが光電変換素子123の間の隙間部分の幅を超えないことを意味する。不等式(2)を満たす場合に、1本の柱状結晶301の正射影が複数の光電変換素子123にまたがることがない。柱状結晶301で放射線から変換された光は、当該柱状結晶301に沿って進む。そのため、センサパネル120の受光面の同じ位置に向けて照射された放射線であっても、シンチレータ層131のどの高さで光に変換されるかによって、当該光が受光面に到達する位置が異なる。不等式(2)を満たすことによって、放射線から光に変換されたシンチレータ層131の高さに起因して当該光が複数の光電変換素子123にまたがることを抑制できる。
p_pix−w_pix ≧ t_sc×tan(θ_sc) …(2)
を満たす。この不等式の左辺は、互いに隣接する2つの光電変換素子123の間の隙間部分の幅である。従って、この不等式は、1本の柱状結晶301の正射影の長さが光電変換素子123の間の隙間部分の幅を超えないことを意味する。不等式(2)を満たす場合に、1本の柱状結晶301の正射影が複数の光電変換素子123にまたがることがない。柱状結晶301で放射線から変換された光は、当該柱状結晶301に沿って進む。そのため、センサパネル120の受光面の同じ位置に向けて照射された放射線であっても、シンチレータ層131のどの高さで光に変換されるかによって、当該光が受光面に到達する位置が異なる。不等式(2)を満たすことによって、放射線から光に変換されたシンチレータ層131の高さに起因して当該光が複数の光電変換素子123にまたがることを抑制できる。
一部の実施形態では、
t_sc×sin(θ_sc) > p_sc−wa_sc/2−wb_sc/2 …(3)
を満たす。図3(b)を参照してこの式の意味を説明する。図3(b)のx軸はセンサパネル120の受光面に平行であり、y軸は当該受光面に直交する。柱状結晶301aの主要部分のうちx成分が最大となる点を原点Oに置く。この場合に、柱状結晶301aの主要部分のうちx成分が最小となる点Pの座標は、(−t_sc×tan(θ_sc)−wa_sc/2cos(θ_sc)−wb_sc/2cos(θ_sc),t_sc)となる。また、柱状結晶301aの左側に隣接する柱状結晶301bの主要部分のうちx成分が最大となる点Qの座標は、(−p_sc/cos(θ_sc),0)となる。センサパネル120の平面視において柱状結晶301aと柱状結晶301bとは互いに重なる部分を有するためには、点Pのx成分が点Qのx成分よりも小さければよい。この条件が不等式(3)である。従って、不等式(3)を満たすようにシンチレータ層131を形成すれば、センサパネル120の法線302の方向からシンチレータ層131に入射した放射線が柱状結晶301に当たらずに受光面に到達することを抑制できる。不等式(3)を満たすパラメータとして、例えばθ_sc≧0.48°かつt_sc≧600μmとしてもよい。
t_sc×sin(θ_sc) > p_sc−wa_sc/2−wb_sc/2 …(3)
を満たす。図3(b)を参照してこの式の意味を説明する。図3(b)のx軸はセンサパネル120の受光面に平行であり、y軸は当該受光面に直交する。柱状結晶301aの主要部分のうちx成分が最大となる点を原点Oに置く。この場合に、柱状結晶301aの主要部分のうちx成分が最小となる点Pの座標は、(−t_sc×tan(θ_sc)−wa_sc/2cos(θ_sc)−wb_sc/2cos(θ_sc),t_sc)となる。また、柱状結晶301aの左側に隣接する柱状結晶301bの主要部分のうちx成分が最大となる点Qの座標は、(−p_sc/cos(θ_sc),0)となる。センサパネル120の平面視において柱状結晶301aと柱状結晶301bとは互いに重なる部分を有するためには、点Pのx成分が点Qのx成分よりも小さければよい。この条件が不等式(3)である。従って、不等式(3)を満たすようにシンチレータ層131を形成すれば、センサパネル120の法線302の方向からシンチレータ層131に入射した放射線が柱状結晶301に当たらずに受光面に到達することを抑制できる。不等式(3)を満たすパラメータとして、例えばθ_sc≧0.48°かつt_sc≧600μmとしてもよい。
不等式(3)の右辺のうち、wa_sc/2+wb_sc/2は、1本の柱状結晶301の平均の柱径とみなすことができる。そこで、w_scを複数の柱状結晶301の平均柱径として、不等式(3)を、
t_sc×sin(θ_sc) > p_sc−w_sc …(4)
に置き換えてもよい。
t_sc×sin(θ_sc) > p_sc−w_sc …(4)
に置き換えてもよい。
続いて、図4を参照して、シンチレータ層131の形成方法について説明する。まず、図4(a)に示す蒸着装置を用いる場合について説明する。蒸着装置は、ホルダ回転部401と、保持機構403と、基板ホルダ404と、蒸着源405とを有する。基板ホルダ404は、保持機構403を介してホルダ回転部401に固定されている。ホルダ回転部401は回転軸402を中心に回転可能である。保持機構403は、ホルダ回転部401の回転軸402の方向406に対して、基板ホルダ404の主面に直交する方向407が傾斜するように、基板ホルダ404を保持する。方向406と方向407とのなす角をθ_subで表す。
シンチレータ層131を形成するために、まずシンチレータ基台132を基板ホルダ404に取り付ける。その後、装置内を真空にして蒸着源405から柱状結晶の材料を供給している間に、ホルダ回転部401を回転することによって、シンチレータ層131が形成される。このシンチレータ層131では、上述のように、シンチレータ層131の全域にわたって柱状結晶301が傾斜している。
また、図4(a)に示される蒸着装置の代わりに、図4(b)に示される蒸着装置を用いてシンチレータ層131を形成してもよい。図4(b)の蒸着装置は、基板ホルダ404の代わりに基板ホルダ408を備える点で図4(a)の蒸着装置とは異なる。基板ホルダ408は、ホルダ回転部401とは独立に回転可能なように保持機構403に取り付けられている。まず、基板ホルダ408にシンチレータ基台132を取り付ける。その後、蒸着源405から柱状結晶の材料を供給している間に、ホルダ回転部401を回転しつつ、基板ホルダ408をホルダ回転部401に対して回転することによって、シンチレータ層131が形成される。
柱状結晶301が上述したパラメータを有するように、ホルダ回転部401の回転速度、当該回転速度の変動、基板ホルダ404又は408の傾斜角度θ_sub、蒸着源405からの材料の供給量などが適宜調整される。このように形成されたシンチレータ層131とセンサパネル120又は220とを既存の方法で組み合わせることによって、放射線検出装置100又は200が製造される。
続いて、図1の放射線検出装置100の具体的な実施例について以下に説明する。センサ保護層124の材料をポリイミドとし、その厚さを5μmとする。光電変換素子123の幅w_pixを220μmとし、光電変換素子123のピッチp_pixを220μmとする。柱状結晶301の材料はCsI:Tlである。シンチレータ層131は、θ_sc=20°、t_sc=600μm、wa_sc=2μm、wb_sc=6μmを満たす。このようなシンチレータ層131は、図4(b)の装置でθ_sub=30°として蒸着を行うことによって形成される。シンチレータ保護層135として、厚さが10μmのポリパラキシリレンを用いる。結合部材140として、厚さ25umのアクリル系透明粘着材を用いる。封止部材160として、エポキシ系の樹脂を用いる。
放射線検出装置100の上記の実施例について特性評価を行った。具体的には、IEC(国際電気標準会議) 62220−1、61267で規定される基準線質RQA5を用いて、DQE及びMTF(変調伝達関数、ModulationTransferFunction)を測定した。放射線検出装置100のシンチレータパネル130側(図1(b)の上側)から、受光面に直交するように放射線を照射したところ、DQEが0.73(0lp/mm)となり、MTFが0.32(2lp/mm)となった。
同様に、比較例の放射線検出装置についても同様の特性評価を行った。比較例の放射線検出装置は、θ_sc=0°(すなわち、柱状結晶が受光面に直交する)点のみが上記の放射線検出装置100の実施例とは異なる。比較例の放射線検出装置では、DQEが0.69(0lp/mm)、MTFが0.32(2lp/mm)となった。すなわち、放射線検出装置100の実施例は、比較例の放射線検出装置よりもDQEの観点で優れている。
続いて、図2の放射線検出装置200の具体的な実施例について以下に説明する。センサ保護層124の材料をポリイミドとし、その厚さを5μmとする。絶縁基板221はガラス基板であり、その厚さは0.3mmである。光電変換素子123の幅w_pixを150μmとし、光電変換素子123のピッチp_pixを170μmとする。その他の構成は、上記の放射線検出装置100の実施例と同様である。
放射線検出装置200の上記の実施例について特性評価を行った。具体的には、IEC 62220−1、61267で規定される基準線質RQA5を用いて、DQE及びMTFを測定した。放射線検出装置200のセンサパネル120側(図2(b)の下側)から、受光面に直交するように放射線を照射したところ、DQEが0.71(0lp/mm)となり、MTFが0.39(2lp/mm)となった。すなわち、放射線検出装置200の実施例は、比較例の放射線検出装置よりもDQE及びMTFの観点で優れている。
図5は、上述の放射線検出装置のX線診断システム(放射線検出システム)への応用例を示した図である。X線チューブ6050(放射線源)で発生した放射線としてのX線6060は、被験者又は患者6061の胸部6062を透過し、上述の何れかの放射線検出装置である検出装置6040に入射する。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応してシンチレータは発光し、これを光電変換して、電気的情報を得る。この情報はデジタル信号に変換され信号処理部となるイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室の表示部となるディスプレイ6080で観察できる。なお、放射線検出システムは、検出装置と、検出装置からの信号を処理する信号処理部とを少なくとも有する。
また、この情報は電話回線6090等の伝送処理部により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールームなど表示部となるディスプレイ6081に表示もしくは光ディスク等の記録部に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。また記録部となるフィルムプロセッサ6100により記録媒体となるフィルム6110に記録することもできる。
100、200:放射線検出装置、120、220:センサパネル、131:シンチレータ層、301:柱状結晶
Claims (13)
- 複数の光電変換素子を含む画素アレイを有するセンサパネルと、
放射線を光に変換する複数の柱状結晶が前記画素アレイの全域を覆うように配されたシンチレータ層とを備え、
前記複数の柱状結晶のそれぞれは、前記センサパネルの法線から同一の方向に傾斜しており、
前記複数の柱状結晶のそれぞれは、各柱状結晶の端部を除いて、前記センサパネルに近づくにつれて太くなることを特徴とする放射線検出装置。 - 前記複数の柱状結晶の隙間が、前記センサパネルの平面視において、前記複数の柱状結晶の少なくとも何れかに重なることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
- 前記複数の光電変換素子のピッチをp_pixとし、前記シンチレータ層の厚さをt_scとし、前記複数の柱状結晶が延在する方向と前記センサパネルの法線とのなす角の平均をθ_scとした場合に、
p_pix ≧ t_sc × tan(θ_sc)
を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。 - 前記複数の光電変換素子の1つの幅をw_pixとした場合に、
p_pix−w_pix ≧ t_sc×tan(θ_sc)
を満たすことを特徴とする請求項3に記載の放射線検出装置。 - 前記シンチレータ層の厚さをt_scとし、前記複数の柱状結晶のそれぞれが延在する方向と前記センサパネルの法線とのなす角の平均をθ_scとし、前記複数の柱状結晶の平均間隔をp_scとし、前記複数の柱状結晶の平均柱径をw_scとした場合に、
t_sc×sin(θ_sc) > p_sc−w_sc
を満たすことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の放射線検出装置。 - 前記シンチレータ層の厚さをt_scとし、前記複数の柱状結晶のそれぞれが延在する方向と前記センサパネルの法線とのなす角の平均をθ_scとし、前記複数の柱状結晶の平均間隔をp_scとし、前記複数の柱状結晶のうち端部を除いて最も細い部分の平均柱径をwa_scとし、前記複数の柱状結晶のうち端部を除いて最も太い部分の平均柱径をwb_scとした場合に、
t_sc×sin(θ_sc) > p_sc−wa_sc/2−wb_sc/2
を満たすことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の放射線検出装置。 - 前記センサパネルに平行な第1平面による前記シンチレータ層の断面における前記複数の柱状結晶の充填率が0.76よりも小さく、
前記センサパネルに平行であり、前記第1平面よりも前記センサパネルに近い位置にある第2平面による前記シンチレータ層の断面における前記複数の柱状結晶の充填率が0.76よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の放射線検出装置。 - 前記センサパネルは、絶縁基板を備え、
前記複数の光電変換素子は、前記絶縁基板の上にアモルファスシリコンによって形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線検出装置。 - 前記センサパネルは、半導体基板を備え、
前記複数の光電変換素子は、前記半導体基板内の不純物領域によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線検出装置。 - 請求項1乃至9の何れか1項に記載の放射線検出装置と、
前記放射線検出装置によって得られた信号を処理する信号処理手段と
を備えることを特徴とする放射線検出システム。 - 蒸着装置を用いてシンチレータ層を形成する方法であって、
前記蒸着装置は、ホルダ回転部と、前記ホルダ回転部に取り付けられた基板ホルダと、蒸着源とを有し、
前記方法は、
シンチレータ基台が前記ホルダ回転部の回転軸に対して傾斜するように前記基板ホルダに前記シンチレータ基台を固定する工程と、
前記蒸着源からシンチレータの材料を供給している間に、前記基板ホルダを回転する工程とを有することを特徴とする方法。 - 前記基板ホルダは前記ホルダ回転部に対して回転可能であり、
前記蒸着源からシンチレータの材料を供給している間に、前記基板ホルダを回転するとともに前記ホルダ回転部を前記ホルダ回転部に対して回転することを特徴とする請求項11に記載の方法。 - センサパネルとシンチレータ層とを有する放射線検出装置の製造方法であって、
請求項11又は12に記載の方法で前記シンチレータ層を形成することを特徴とする製造方法。
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