JP2016173075A - 水力機械及びその運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶存酸素濃度が確実に増加された状態の水を下流に流出させることができる水力機械を提供する。【解決手段】実施の形態による水力機械は、上池から流れる水が流入する流入部2Aと、流入部2Aから流出する水によって回転するランナ5と、ランナ5から流出する水を下流に流出させる流出部12Dと、マイクロナノバブルを含む水を生成するマイクロナノバブル発生装置20と、を備える。マイクロナノバブル発生装置20は、マイクロナノバブルを含む水を、当該水力機械の流入部2Aと流出部12Dとの間の部分から当該水力機械を流れる水に供給する。【選択図】図1
Description
本発明の実施の形態は、水力機械及びその運転方法に関する。
上池から導かれる水によって機械的エネルギーを得る水力機械には、種々の型式が存在する。例えば、フランシス水車型の水力機械では、上池から導かれた水が、鉄管を通ってケーシングに導かれる。水は、ケーシングにより等流速化され、ケーシングの内周側に配置されたステーベーン及び流量調整用のガイドベーンを通ってランナへ流入する。ランナは、通過する水のエネルギーにより回転し、主軸を介して連結する発電電動機を駆動する。これにより、発電電動機において発電が行われる。ランナから流出する水は、吸出し管を通って下池又は放水路に流出する。
ところで、上述した上池(上流側の貯水池)の水の溶存酸素濃度は、水深や気温変化等の要因により変化する。特に、湖底部に存在する水の溶存酸素濃度は、夏から秋にかけて数mg/litまで低下することがある。このような溶存酸素濃度が低下した水を取水して水力機械から下池に流出させる場合には、下池に存在する水生生物の生存に必要な溶存酸素が不足することにより生態系に影響を及ぼす可能性があることが従来から知られている。
そのため、これまでに、下池の湖底部から空気やオゾン等を放出することにより下池の水の溶存酸素濃度を増加させる手法や、水力機械を流れる水に空気を供給することにより下池の水の溶存酸素濃度を増加させる手法等が提案されている。具体的には例えば、ランナ側圧室及び吸出し管の内壁に設けられた給気口から空気を供給することにより内部を流れる水の溶存酸素濃度を増加させる水力機械等が従来から知られている。
しかしながら、上述の水力機械のように、ランナ側圧室や吸出し管の内壁に設けられた給気口から空気を供給する構成では、水の流速が遅かったり、空気の給気量が多かったりする場合に、空気が水に溶け込み難くなる。また、このような水力機械において給気口を微細に形成した場合には空気が水に溶け込み易くなるが、この場合、給気口が詰まる虞がある。そのため、水の溶存酸素濃度を確実に増加させることに、改善の余地があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、溶存酸素濃度が確実に増加された状態の水を下流に流出させることができる水力機械を提供することを目的とする。
実施の形態による水力機械は、上池から流れる水が流入する流入部と、前記流入部から流出する水によって回転するランナと、前記ランナから流出する水を下流に流出させる流出部と、を備えている。この水力機械は、マイクロナノバブルを含む水を生成するマイクロナノバブル発生装置をさらに備えている。このマイクロナノバブル発生装置は、前記マイクロナノバブルを含む水を、当該水力機械の前記流入部と前記流出部との間の部分から当該水力機械を流れる水に供給する。
実施の形態による水力機械の運転方法は、上池から流れる水が流入する流入部と、前記流入部から流出する水によって回転するランナと、前記ランナから流出する水を下流に流出させる流出部と、を備える水力機械の運転方法である。当該方法は、前記水力機械に、マイクロナノバブルを含む水を生成するマイクロナノバブル発生装置を設置し、前記マイクロナノバブル発生装置が生成したマイクロナノバブルを含む水を、前記水力機械の前記流入部と前記流出部との間の部分から当該水力機械を流れる水に供給する、ことを特徴とする。
実施の形態による水力機械の運転方法は、上池から流れる水が流入する流入部と、前記流入部から流出する水によって回転するランナと、前記ランナから流出する水を下流に流出させる流出部と、を備える水力機械の運転方法である。当該方法は、前記水力機械に、マイクロナノバブルを含む水を生成するマイクロナノバブル発生装置を設置し、前記マイクロナノバブル発生装置が生成したマイクロナノバブルを含む水を、前記水力機械の前記流入部と前記流出部との間の部分から当該水力機械を流れる水に供給する、ことを特徴とする。
本発明によれば、溶存酸素濃度が確実に増加された状態の水を下流に流出させることができる。
以下に、添付の図面を参照して、本発明の各実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る水力機械1を示している。本実施の形態に係る水力機械1は、一例としてフランシス水車として構成されている。水力機械1は、図示しない上池から鉄管を通って水が流入するケーシング2と、複数のステーベーン3と、複数のガイドベーン4と、ランナ5と、を備えている。ケーシング2は、上流側端部に上池から流れる水が流入する流入部2Aを有する。流入部2Aは、説明の便宜上、図中において二点鎖線で示されている。流入部2Aに流入した水は、この例では、ケーシング2内で等流速化されてステーベーン3に流出する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る水力機械1を示している。本実施の形態に係る水力機械1は、一例としてフランシス水車として構成されている。水力機械1は、図示しない上池から鉄管を通って水が流入するケーシング2と、複数のステーベーン3と、複数のガイドベーン4と、ランナ5と、を備えている。ケーシング2は、上流側端部に上池から流れる水が流入する流入部2Aを有する。流入部2Aは、説明の便宜上、図中において二点鎖線で示されている。流入部2Aに流入した水は、この例では、ケーシング2内で等流速化されてステーベーン3に流出する。
ステーベーン3は、ケーシング2から流出する水をガイドベーン4及びランナ5に導くためのものであり、ケーシング2の内周側において周方向に所定の間隔をあけて配置されている。ガイドベーン4は、流入した水をランナ5に導くためのものであり、周方向に所定の間隔をあけて配置されている。各ガイドベーン4は、回動自在に設けられており、回転して開度を変えることにより、ランナ5に流入する水の流量を調整可能に構成されている。
ランナ5は、ケーシング2に対して回転軸線Cを中心に回転自在に構成され、ガイドベーン4から流出する水によって回転する。ランナ5は、クラウン6と、バンド7と、クラウン6とバンド7との間に設けられた複数のランナ羽根8と、を有している。ランナ羽根8は、周方向に所定の間隔をあけて配置されている。ランナ5には、主軸9を介して発電電動機10が連結されている。発電電動機10は、水車運転時にランナ5の回転によって発電を行う発電機としての機能を有するとともに、ポンプ運転時にランナ5を回転させる電動機としての機能も有する。発電電動機10は、ランナ5によって駆動されることで発電を行う。
また、ランナ5の下流側には、吸出し管12が設けられている。吸出し管12は、ランナ5から下流側に向かうに従い断面積が拡大する上部ドラフト12Aと、上部ドラフト12Aの下流側端部から湾曲する曲がり部12Bと、曲がり部12Bから下流側に向けて断面積が拡大する下流側拡大部12Cと、を有する。吸出し管12は、下流側拡大部12Cを下池(放水路を介して)に連結する。下流側拡大部12Cの下流側端部に下池に水を流出させる流出部12Dが設けられている。
図1において、符号20は、水力機械1が備えるマイクロナノバブル発生装置を示している。このマイクロナノバブル発生装置20は、マイクロナノバブルを多量に含む水を生成し、水力機械1を流れる水に供給するように構成されている。マイクロナノバブル発生装20は、水力機械1を流れる水の溶存酸素濃度を増加させることにより、その下流に位置する下池の水の溶存酸素濃度を増加させる目的で設けられている。
本実施の形態では、吸出し管12の上部ドラフト12Aの壁面に注入口22Aが形成されており、マイクロナノバブル発生装置20は、生成したマイクロナノバブルを含む水を、注入口22Aから当該水力機械1を流れる水に供給する。図示の例では、注入口22Aとマイクロナノバブル発生装置20との間に、弁部材24が設けられている。この弁部材24を開閉させることで、マイクロナノバブル発生装置20から水力機械1内部へのマイクロナノバブルを含む水の供給及び遮断を切り換えることができる。また、弁部材24は、その開度の調整によってマイクロナノバブルを含む水の流量を調整できるように構成されていてもよい。
本実施の形態において、「マイクロナノバブル」とは、一般に呼称されるマイクロバブル及びナノバブルを総称したものであり、概ね直径50μm以下の気泡を意味する。マイクロナノバブルは、50μmよりも大きい直径の気泡にはない特性を有している。例えば、50μmよりも大きい直径の気泡(通常の気泡)は、水圧により水中を上昇し水面で破裂して消えるのに対し、マイクロナノバブルは、水中で縮小し水に溶解する。このため、マイクロナノバブルは、水中に溶け込む量も通常の気泡に対して多く、溶存酸素濃度を好適に増加させることができる。
図2は、マイクロナノバブルを一定の流量でタンク内の水に供給する際の水の溶存酸素濃度の変化と、一般的な散気管からマイクロナノバブルよりも大きい気泡を一定の流量でタンク内の水に供給する際の水の溶存酸素濃度の変化と、を比較したグラフを示している。このグラフにおいては、マイクロナノバブルを供給された水の溶存酸素濃度の変化が実線で示され、散気管から気泡を供給された水の溶存酸素濃度の変化が破線で示されている。図2に示すように、マイクロナノバブルの水への供給は、一般的な散気管からの気泡の水への供給に比べ、水の溶存酸素濃度を2倍近く増加させている。この結果からも、マイクロナノバブルは、溶存酸素濃度増加への適合性が良いことがわかる。
マイクロナノバブルを含む水を生成する手法としては、例えば、以下1,2のような手法がある。
1.水中に空気等の気体を注入し、水流、又は、気体が通過する流路の形状等により、注入した気体をせん断することで気泡を微細化する手法。
2.気体を液体へ溶解する際に、液体の圧力が大きいほど気体の溶解度が大きくなるヘンリーの法則を応用し、例えば、水を高圧の状態で貯留する加圧タンク内に十分に気体を溶解させ、この水を加圧タンクから放出するときに急激に減圧させることで、溶解した気体を微細な気泡にする手法。
2.気体を液体へ溶解する際に、液体の圧力が大きいほど気体の溶解度が大きくなるヘンリーの法則を応用し、例えば、水を高圧の状態で貯留する加圧タンク内に十分に気体を溶解させ、この水を加圧タンクから放出するときに急激に減圧させることで、溶解した気体を微細な気泡にする手法。
本実施の形態によるマイクロナノバブル発生装置20においては、上記1及び上記2のいずれの手法が採用されてもよい。また、その他の手法が採用されてもよい。マイクロナノバブル発生装置20においては、水力機械の設置条件に応じて異なる水の流量及び流速、マイクロナノバブルを含む水を生成するための水へのマイクロナノバブルの供給能力、マイクロナノバブルを含む水を生成するための水における溶存酸素濃度上昇度、及び設備運営コスト等を勘案することにより、好適な方式又は製品が採用されることが望ましい。近年では、マイクロ・ナノバブル学会が日本国において2012年に設立された。そのため、各種分野における研究やマイクロナノバブルに関連する製品の開発が急速に発展してきており、新たな方式又は製品によりマイクロナノバブルの生成が可能となると見込まれる。そのため、様々な種類の水力機械に好適に用いられ得る方式又は製品が拡充されていくものと見込まれる。
なお、マイクロナノバブル発生装置20において利用されるマイクロナノバブルを含む水を生成するための水は、例えば、図示しない貯水タンクに貯留されている水が利用されてもよい。しかしながら、このような生成用の水の確保は、このような態様に限定されるものではない。例えば、水力機械1を流れる水の一部が、マイクロナノバブルを含む水を生成するための水として利用されてもよい。
次に、本実施の形態の作用について説明する。
図1に示す水力機械1においては、上池から導かれた水が鉄管を通ってケーシング2の流入部2Aに導かれる。水は、ケーシング2により等流速化され、ケーシング2の内周側に配置されたステーベーン3及びガイドベーン4を通ってランナ5へ流入する。ランナ5は、通過する水のエネルギーにより回転し、主軸9を介して連結する発電電動機10を駆動する。これにより、発電電動機10において発電が行われる。ランナ5から流出する水は、吸出し管12の流出部12Dを通って下池に流出する。
このような運転中に、マイクロナノバブル発生装置20は、マイクロナノバブルを多量に含む水を、水力機械1を流れる水に供給することができる。マイクロナノバブルを含む水の供給は、断続的に行ってもよいし、継続的に行ってもよいし、任意のタイミングで任意の量で行ってもよい。
水力機械1を流れる水は、ランナ5の上流では上池からランナ5までの落差により高い水圧であり、ランナ5で回転エネルギーに変換されることにより水圧が低下する。さらに、水の流速は、吸出し管12で流路が拡大することにより低下する。このような水力機械1を流れる水の中にマイクロナノバブルを含む水が供給されると、ランナ5の上流から下流に移行する際の水の圧力変化によりマイクロナノバブルが水中で拡散される。また、マイクロナノバブルはランナ5の下流において低速の水との接触時間が長くなる。これにより、マイクロナノバブルが水に溶け込み易くなる。その結果、水力機械1を流れる水の溶存酸素濃度が確実に増加されることになる。
また、上述の特許文献1のように水力機械を流れる水に空気を供給する技術では、水の流速が遅かったり給気量が多かったりすると、空気が水に溶け込み難くなる虞がある。すなわち、水力機械の運転状態に応じて、空気が水に溶け込み難くなる場合がある。一方、本実施の形態の構成では、予めマイクロナノバブルを含む水を生成して、水力機械1を流れる水に供給するため、水力機械1の運転状態によらず、常時、安定した状態で水力機械1を流れる水の溶存酸素濃度を増加させることができる。また、注入口22Aの大きさ又は形状によらず、安定した状態で水の溶存酸素濃度を増加させることができるため、注入口22Aを微細に形成しなくても溶存酸素濃度の増加効果が得られる。これにより、注入口22Aが詰まることも防止できる。
したがって、本実施の形態の水力機械1によれば、溶存酸素濃度が確実に増加した状態の水を下流に流出させることができる。そして、下池の水の溶存酸素濃度を確実に増加させることができ、下池に生存する水生生物の生態系を好適に維持することができる。すなわち、マイクロナノバブルは、その直径が50μmよりも大きい気泡と比較して長く水中に留まることから、水力機械1の通過後の下流、すなわち下池においても、マイクロナノバブルの多くが水中に留まることになる。そのため、下池の水の溶存酸素濃度が確実に増加する。また、本実施の形態の構成によれば、水力機械1から流出する水は、下池の水を攪拌するので、下池全体の溶存酸素濃度を効率的に増加させることができる。
また、水力機械1において水の溶存酸素濃度が高い状態では、キャビテーションが生じ易くなり、特に、ランナ羽根8の翼面等において壊食の問題が生じ得る。このため、マイクロナノバブルを含んだ水を供給する場合には、ランナ5よりも下流の位置から供給することが望ましい。したがって、本実施の形態では、吸出し管12の上部ドラフト12Aに、注入口22Aが形成されている。そして、この注入口22Aからマイクロナノバブルを含む水が供給される。これにより、キャビテーションの発生によるランナ羽根8の翼面等への影響が抑制される。
また、上部ドラフト12Aには、従来から給気管やマンホール等が設けられることが多く、この位置に注入口22Aを設置することは、難しくない。また、流入口22Aがランナ5の下流に位置する場合、ランナ5による旋回流により、マイクロナノバブルを含む水が大きく拡散され、マイクロナノバブルが水に効率的に溶け込み易くなる効果も期待される。
そのため、本実施の形態の水力機械1によれば、従来の水力機械の構造から大幅な設計変更を伴わずに且つランナ5等の構造物をキャビテーションにより傷めることなく、下流に流出させる水の溶存酸素濃度を増加させることができるという効果もある。
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
本実施の形態では、図3に示すように、マイクロナノバブルを含む水を水力機械の内部に供給するための注入口22Bが、ランナ羽根8の下流側端部に形成されている。図示の例では、マイクロナノバブル発生装置20が、主軸9及びクラウン6を通して注入口22Bから水力機械の内部にマイクロナノバブルを含む水を供給するようになっている。
このような構成を備える第2の実施の形態においては、上述の第1の実施の形態と同様に、キャビテーションの発生によるランナ羽根8の翼面等への影響が抑制される。また、回転するランナ5の旋回によって、流入口22Bから供給されたマイクロナノバブルを含む水も旋回する。これにより、マイクロナノバブルを含む水を大きく拡散させることができるため、マイクロナノバブルが水に十分に溶け込み易くなる。
このような本実施の形態によれば、ランナ5等の構造物をキャビテーションにより傷めることなく、下流に流出させる水の溶存酸素濃度を増加させることができる。また、マイクロナノバブルを含む水を大きく拡散させることできることで、下流に流出させる水の溶存酸素濃度を効率的に増加させることができるという効果がある。
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1及び第2の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1及び第2の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
本実施の形態では、図4に示すように、主軸9のランナ5側の端部に注入口22Cが形成されている。マイクロナノバブル発生装置20は、マイクロナノバブルを含む水を注入口22Cから当該水力機械を流れる水に供給するようになっている。
このような構成を備える第3の実施の形態においては、上述の第1の実施の形態等と同様に、キャビテーションの発生によるランナ羽根8の翼面等への影響が抑制される。また、水力機械においては、主軸9のランナ5側の端部から旋回流の抑制のために給気を行う構成を有するものがあるため、本実施の形態の構成では、マイクロナノバブル発生装置20から注入口22Cまでの経路を容易に形成できる。
また、主軸9のランナ5側の端部よりも下流側の領域は、ランナ5の回転中心が位置するため、水の旋回により水圧が低くなる。そのため、比較的低い圧力の水に、マイクロナノバブルを含む水を供給することができるため、圧力変化によってマイクロナノバブルを水中で大きく拡散させることができる。このため、マイクロナノバブルが水に十分に溶け込み易くなる。
このような本実施の形態によれば、ランナ5等の構造物をキャビテーションにより傷めることなく且つ従来の水力機械の構造から大幅な設計変更を伴わずに、下流に流出させる水の溶存酸素濃度を増加させることができる。また、マイクロナノバブルを水中で大きく拡散させることができることで、下流に流出させる水の溶存酸素濃度を効率的に増加させることができるという効果がある。
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第3の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第3の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
本実施の形態では、図5に示すように、マイクロナノバブルを含む水を水力機械の内部に供給するための注入口22Dが、吸出し管12の壁面の広範囲にわたって複数形成されている。具体的に、この例では、上部ドラフト12A及び曲がり部12Bに複数の注入口22Dが形成されている。
このような構成を備える第4の実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態等と同様に、キャビテーションの発生によるランナ羽根8の翼面等への影響が抑制される。
また、本実施の形態のマイクロナノバブル装置20は、予めマイクロナノバブルを生成して水力機械の内部に水を供給するため、注入口の形状や水力機械の運転状態を問わず、溶存酸素濃度を増加させることができる。しかし、より効率の良い溶存酸素濃度の増加を得るためには、マイクロナノバブルを含む水を水中に多く拡散させることが重要である。そのため、複数の任意の位置からマイクロナノバブルを含む水を供給することが望ましい。これに対して、本実施の形態によれば、吸出し管12には注入口を形成可能な領域が大きく確保されるため、任意の位置に任意の個数の注入口22Dを比較的自由に形成できる。これにより、容易に、マイクロナノバブルを含む水を水中に多く拡散させることができる。
このような本実施の形態によれば、下流に流出させる水の溶存酸素濃度を効率的に増加させることができるという効果がある。
(第5の実施の形態)
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第4の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第4の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図6に示すように、本実施の形態では、吸出し管12の上部ドラフト12Aの壁面で一端部を開口させる給気管30が設けられている。給気管30は、吸出し管12内において強い旋回流が生じることにより振動が生じた場合に、吸出し管12の内部に空気を供給することで振動を低減させるために設けられている。上記の旋回流は、水力機械の運転状態が設計点から外れた部分負荷状態等であるときに生じる場合がある。この給気管30には、切換弁32が設けられている。切換弁32の開閉の切換によって、給気管30からの給気が切り換えられる。
そして、本実施の形態では、マイクロナノバブル発生装置20が給気管30に接続されている。そして、マイクロナノバブル発生装置20は、マイクロナノバブルを含む水を、給気管30から水力機械を流れる水に供給するようになっている。
水力機械では、給気管30を備えるものが多くある。第5の実施の形態によれば、給気管30の一部を利用することで、マイクロナノバブルを含む水を、水力機械を流れる水に供給することができる。
このような本実施の形態によれば、低コストで、水力機械に水の溶存酸素濃度を増加させる機能を追加することができるという効果がある。なお、図6では給気管30が吸出し管12から空気を供給する構成であるが、主軸9の端部から給気を行う給気管も知られている。変形例として、このような給気管を利用して、マイクロナノバブルを含む水を供給してもよい。
(第6の実施の形態)
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第5の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第5の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
本実施の形態では、ランナ5よりも上流側を流れる水をマイクロバブル発生装置20に供給する導水管40が設けられている。マイクロナノバブル発生装置20は、導水管40からの水を用いて、マイクロナノバブルを含む水を生成する。導水管40には、切換弁41が設けられている。切換弁41の開閉の切換によって、マイクロナノバブル発生装置20へのランナ5の上流側からの水の供給及び遮断が切り換えられる。また、図示の例では、マイクロナノバブルを含む水が吸出し管12の上部ドラフト12Aから供給される。
本実施の形態においては、ランナ5よりも上流側を流れる水をマイクロナノバブル発生装置20に供給することにより、注水用の水の確保や貯水タンク等の設備が不要となる。
また、本実施の形態のマイクロナノバブル装置20では、切換弁41を開くと、高圧の状態の水が供給される。この高圧の水に、マイクロナノバブルを混入させてマイクロナノバブルを含む水を生成して、水力機械を流れる水に供給する。ここで、高圧の水には、多くの気体を溶解させることができる(ヘンリーの法則)。したがって、本実施の形態では、マイクロナノバブル装置20において、多くのマイクロナノバブルを水に溶解させることができ、マイクロナノバブルを含む水の溶存酸素濃度を効率的に高めることができる。そして、このようなマイクロナノバブルを含む水が、ランナ5の下流側の低圧の水に供給されることにより、マイクロナノバブルは微細化され得るため、マイクロナノバブルが水に十分に溶け込み易くなる。
上述の第1の実施の形態で説明したように、マイクロナノバブルを含む水の生成手法には、水を高圧の状態で貯留する加圧タンク内に十分に気体を溶解させ、この水を加圧タンクから放出するときに急激に減圧させることで、溶解した気体を微細な気泡にする手法がある(手法2)。本実施の形態のマイクロナノバブル装置20は、ランナ5の上流側の高圧の水を利用することにより、手法2に係る加圧タンクにおける加圧のための動力を低減し得るか、又は当該加圧タンク自体を省略し得る。また、マイクロナノバブル装置20からのマイクロナノバブルを含む水がランナ5の下流側の低圧の水に供給されることにより、手法2において減圧を行う変圧設備の動力を低減し得るか、又は当該変圧設備自体を省略し得る。
したがって、本実施の形態によれば、マイクロナノバブル装置20に対する注水用の水の確保や貯水タンク等の設備が不要となり、且つマイクロナノバブル装置20自体の省エネルギー化乃至簡素化が可能となることで、低コストで効率的に、下流に流出される水の溶存酸素濃度を増加させることができるという効果がある。
(第7の実施の形態)
図8は、本発明の第7の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第6の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
図8は、本発明の第7の実施の形態に係る水力機械の概略図である。本実施の形態における上述の第1乃至第6の実施の形態の構成部分と同様の構成部分については、同一の符号を示し、説明を省略する。
本実施の形態では、図8に示すように、水力機械1を流れる水にマイクロナノバブル発生装置20からのマイクロナノバブルを含む水が供給される位置(供給位置)よりも下流側に、溶存酸素濃度計測装置44が設けられている。図示の例では、マイクロナノバブルを含む水が吸出し管12の上部ドラフト12Aの壁面に形成された注入口から供給される。溶存酸素濃度計測装置44は、吸出し管12の下流側拡大部12Cに設けられている。
また、符号45は、マイクロナノバブル発生装置20及び溶存酸素濃度計測装置44に接続される制御装置を示している。制御装置45は、溶存酸素濃度計測装置44の計測結果に基づき、マイクロナノバブル発生装置20が供給するマイクロナノバブルを含む水の流量及び/又は当該供給する水に混入するマクロナノバブルの混入量を制御するようになっている。より詳しくは、制御装置45は、溶存酸素濃度計測装置44によって計測される溶存酸素濃度が所定の溶存酸素濃度になるようマイクロナノバブル発生装置20を制御する。
本実施の形態によれば、水の溶存酸素濃度を所望の値に制御できる。これにより、例えば、吸出し管12の下流に流出された水の溶存酸素濃度が所定の濃度を超えた場合に、マイクロナノバブル発生装置20の出力調整を行うことにより動力を節約することができる。また、溶存酸素濃度が過多となって環境へ逆影響を及ぼすことを防止できる。なお、本実施の形態では、マイクロナノバブルを含む水が吸出し管12の上部ドラフト12Aから供給されるが、他の位置から供給される場合においても、本実施の形態に係る溶存酸素濃度計測装置44及び制御装置45を適用することは可能である。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記の実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、本実施の形態で説明した水力機械は、フランシス水車型の水力機械であるが、マイクロナノバブル発生装置20は、カプラン水車、バルブ水車、ペルトン水車等の他の型式の水力機械においても適用できる。
1 水力機械、2 ケーシング、2A 流入部、3 ステーベーン、4 ガイドベーン、5 ランナ、6 クラウン、7 バンド、8 ランナ羽根、9 主軸、10 発電電動機、12 吸出し管、12A 上部ドラフト、12B 曲がり部、12C 下流側拡大部、12D 流出部、20 マイクロナノバブル発生装置、22A,22B,22C,22D 注入口、24 弁部材、30 給気管、32 切換弁、40 導水管、41 切換弁、44 溶存酸素濃度計測装置、45 制御装置、C 回転軸線。
Claims (9)
- 上池から流れる水が流入する流入部と、
前記流入部から流出する水によって回転するランナと、
前記ランナから流出する水を下流に流出させる流出部と、を備える水力機械であって、
マイクロナノバブルを含む水を生成するマイクロナノバブル発生装置を備え、
前記マイクロナノバブル発生装置は、前記マイクロナノバブルを含む水を、当該水力機械の前記流入部と前記流出部との間の部分から当該水力機械を流れる水に供給する、
ことを特徴とする水力機械。 - 前記ランナから流出する水を下流に流出させる吸出し管を備え、
前記流出部は、前記吸出し管の下流側端部に設けられ、
前記吸出し管の上部ドラフトの壁面に注入口が形成され、
前記マイクロナノバブル発生装置は、前記マイクロナノバブルを含む水を、前記注入口から当該水力機械を流れる水に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水力機械。 - 前記ランナの下流側端部に、注入口が形成され、
前記マイクロナノバブル発生装置は、前記マイクロナノバブルを含む水を、前記注入口から当該水力機械を流れる水に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水力機械。 - 前記ランナと発電機とを連結する主軸を備え、
前記主軸の前記ランナ側の端部に注入口が形成され、
前記マイクロナノバブル発生装置は、前記マイクロナノバブルを含む水を、前記注入口から当該水力機械を流れる水に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水力機械。 - 前記ランナから流出する水を下流に流出させる吸出し管を備え、
前記流出部は、前記吸出し管の下流側端部に設けられ、
前記吸出し管の壁面に複数の注入口が形成され、
前記マイクロナノバブル発生装置は、前記マイクロナノバブルを含む水を、前記複数の注入口から当該水力機械を流れる水に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水力機械。 - 前記ランナから流出する水を下流に流出させる吸出し管と、
前記吸出し管の内部に空気を供給する給気管と、を備え、
前記給気管に前記マイクロナノバブル発生装置が接続され、
前記マイクロナノバブル発生装置は、前記マイクロナノバブルを含む水を、前記給気管から当該水力機械を流れる水に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の水力機械。 - 前記ランナよりも上流側を流れる水を前記マイクロバブル発生装置に供給する導水管を備え、
前記マイクロナノバブル発生装置は、前記導水管からの水を用いて、前記マイクロナノバブルを含む水を生成し、前記ランナよりも下流に供給する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水力機械。 - 前記マイクロナノバブルを含む水の供給位置よりも下流側に配置される溶存酸素濃度計測装置と、
前記マイクロナノバブル発生装置が供給する前記マイクロナノバブルを含む水の流量及び/又は当該供給する水に混入するマクロナノバブルの混入量を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記溶存酸素濃度計測装置の計測結果に基づき、前記マイクロナノバブル発生装置が供給する前記マイクロナノバブルを含む水の流量及び/又は当該供給する水に混入するマクロナノバブルの混入量を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の水力機械。 - 上池から流れる水が流入する流入部と、前記流入部から流出する水によって回転するランナと、前記ランナから流出する水を下流に流出させる流出部と、を備える水力機械の運転方法であって、
前記水力機械に、マイクロナノバブルを含む水を生成するマイクロナノバブル発生装置を設置し、前記マイクロナノバブル発生装置が生成したマイクロナノバブルを含む水を、前記水力機械の前記流入部と前記流出部との間の部分から当該水力機械を流れる水に供給する、
ことを特徴とする水力機械の運転方法。
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