JP2016168514A - 排水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、クラフトパルプ製造由来の排水の処理工程において発生する臭気等を抑制することを課題とする。【解決手段】本発明は、クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水を凝集沈殿処理する工程と、凝集沈殿処理する工程の後に、過酸化水素併用オゾン処理工程を少なくとも1工程含むことを特徴とする排水の処理方法に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、排水の処理方法に関する。具体的には、本発明は、クラフトパルプ工場の排水の処理方法及び再利用方法に関する。
クラフトパルプ工場では製造工程において大量の水が使用されており、クラフトパルプ製造由来の排水のみならず、マシン排水や塗料排水等が排水として排出される。このような排水は、河川、海域等の公共用水域に排出されるが、環境保全の観点から、ある程度の浄化処理が行われた後に排出されている。クラフトパルプ製造由来の排水は、リグニン濃度が高く、樹皮や澱粉等の懸濁物も多く含まれているため、COD値、BOD値及びSS値が一定の基準値以下となるように浄化処理が行われている(例えば、非特許文献1)。
クラフトパルプの製造に由来しない排水の処理工程においては、凝集沈殿法や活性汚泥法等を利用した各種の工程処理に加えて、過酸化水素併用オゾン処理を行う工程を設けることが検討されている。例えば、特許文献1では、過酸化水素併用オゾン処理工程において、下水排水中に過酸化水素とオゾンを供給することにより、排水中の有機物を分解除去することが提案されている。
また、非特許文献2では、染料等を含有した着色排水を過酸化水素併用オゾン処理することにより、排水中の有機物の分解に加えて、排水の脱色を行うことが検討されている。ここでは、排水中のCOD値やBOD値を下げることに加えて、排水の脱色処理を行うことが提案されている。
特開平8−267077号公報
紙パ技協誌、No.48、Vol.7(1994) SEN’I GAKKAISHI(報文) Vol.58, No.2(2002)「過酸化水素を併用したオゾン酸化による染色排水の分解に及ぼす各水質への影響」
上述したように、クラフトパルプ製造由来の排水処理工程においては、COD値、BOD値が一定の基準値以下となるように浄化処理が行われているが、このような処理工程では、臭気が発生することが問題となっている。特に、排水を浄化処理することにより排出される有機物や無機物を多く含んだ残渣成分(濃縮水)は、臭気が強く、作業環境の悪化が問題視されている。
クラフトパルプ製造由来の排水処理工程においては、臭気を抑制するために、上述したような過酸化水素併用オゾン処理工程を設けることも考えられる。しかし、単に過酸化水素併用オゾン処理工程を組み込んだだけでは、排水処理工程で発せられる臭気を十分に抑制することができないということが本発明者らの検討により明らかとなった。
また、クラフトパルプ製造由来の排水処理工程において出される残渣成分(濃縮水)は臭気が強いことに加えて、臭素酸が生成されることも問題となっている。このため、残渣成分(濃縮水)の取り扱いには、細心の注意が必要となり、作業効率が上がらない問題もあった。さらに、該濃縮水を蒸発などして、得られた濃縮物の臭気はさらに強く、臭素酸の濃度も高いため、焼却処分や埋め立てする際に二次汚染の可能性があり、問題となっていた。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、クラフトパルプ製造由来の排水の処理工程において発生する臭気を抑制することを目的として検討を進めた。特に、排水を浄化処理する工程で排出される有機物や無機物を多く含んだ残渣成分(濃縮水)に含まれる臭気と臭素酸の生成を抑制することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水を凝集沈殿処理する工程と、凝集沈殿処理する工程の後に、過酸化水素併用オゾン処理工程を少なくとも1工程含むことにより、処理工程における臭気の発生を抑制し、かつ、有機物や無機物を含む残渣成分(濃縮水)の臭気と臭素酸の生成を抑制できることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水を凝集沈殿処理する工程と、前記凝集沈殿処理する工程の後に、過酸化水素併用オゾン処理工程を少なくとも1工程含むことを特徴とする排水の処理方法。
[2]前記凝集沈殿処理する工程の後に、オゾン処理工程を含むことを特徴とする[1]記載の排水の処理方法
[3]前記排水の処理方法において、前記過酸化水素併用オゾン処理工程は、2工程以上含まれることを特徴とする[1]又は[2]に記載の排水の処理方法。
[4]前記では、オゾンを0.5〜1000mg/Lとなるように添加し、過酸化水素を0.025〜20000mg/Lとなるように添加することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の排水の処理方法。
[5]前記過酸化水素併用オゾン処理工程では、オゾンと過酸化水素の添加率の質量比が1:0.05〜1:20となるように添加されることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の排水の処理方法。
[6]前記クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水のCODcr値が10〜3000mg/L、該工場排水の総溶解性固形分値が200〜5,000mg/Lであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の排水の処理方法。
[7]前記工場排水は、クラフトパルプ製造由来の排水を10質量%以上含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の排水の処理方法。
[8]活性汚泥処理工程をさらに含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の排水の処理方法。
[9]活性炭処理工程をさらに含むことを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の排水の処理方法。
[10]前記排水の処理方法で処理されたクラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水は、再利用されることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載の排水の処理方法。
本発明によれば、クラフトパルプ製造由来の排水の処理工程において発生する臭気を抑制することができる。さらに、本発明によれば、有機物や無機物を含む残渣成分(濃縮水)の臭気と臭素酸の生成を効果的に抑制することができる。
図1は、本発明の排水の処理方法の実施態様を示すフローシートである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(処理方法)
本発明は、クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水の処理方法に関する。本発明の排水の処理方法は、クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水を凝集沈殿処理する工程と、凝集沈殿処理する工程の後に、過酸化水素併用オゾン処理工程を少なくとも1工程含む。過酸化水素併用オゾン処理工程は、凝集沈殿処理工程の後であればいずれの段階に設けられてもよく、凝集沈殿処理する工程の直後に設けられてもよく、排水処理の最終工程として設けられてもよい。
本発明では、上記のような工程を含むことによって、クラフトパルプ製造由来の排水の処理工程において発生する臭気を抑制することができる。特に、排水の処理工程で排出される大量の有機物や無機物を含む残渣成分(以下、濃縮水ともいう)の臭気を効果的に抑制することができ、かつ濃縮水における臭素酸の生成も抑制することができる。このように、本発明では、濃縮水に含まれる臭気と臭素酸の生成の両方を抑制することができる。
なお、クラフトパルプ製造由来の排水の処理工程においては、有機物や無機物を含む濃縮水は大量に発生する。例えば、クラフトパルプ製造由来の排水の処理工程においては、一日当たり、数千トンの濃縮水が排出されることもあり、このような大量の濃縮水の臭気と臭素酸の生成を抑制することは非常に有用である。
また、過酸化水素併用オゾン処理工程は、排水の処理方法において、1工程のみ含まれていてもよいが、2工程以上含まれることが好ましい。特に、過酸化水素併用オゾン処理工程は2〜4工程設けられることが好ましい。このように過酸化水素併用オゾン処理工程を複数工程設けることにより、処理工程における臭気の発生を抑制し、かつ有機物や無機物を含む濃縮水の臭気と臭素酸の生成をより効果的に抑制することができる。
過酸化水素併用オゾン処理工程は、凝集沈殿処理する工程の後に少なくとも1工程設けられ、さらに、別の工程を経た後に少なくとも1工程設けられることが好ましい。過酸化水素併用オゾン処理工程を所定のタイミングで行うことにより、より効果的に、有機物や無機物を含む濃縮水の臭気と臭素酸の生成を抑制することができる。
本発明で排水処理を行う工場排水は、クラフトパルプ製造由来の排水であって、クラフトパルプ製造由来の排水を10質量%以上含む。工場排水の全質量に対し、クラフトパルプ製造由来の排水が占める割合は、10質量%以上であり、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。なお、工場排水の全質量に対してクラフトパルプ製造由来の排水が占める割合の上限には特に制限がなく、全てがクラフトパルプ製造由来の排水であってもよい。
ここで、クラフトパルプ製造由来の排水とは、チップからクラフトパルプを得る過程で排出される排水をいう。
クラフトパルプを得る過程では、まず、広葉樹や針葉樹などのチップ化された木質材料は、苛性ソーダ、硫化ソーダなどからなる蒸解薬液で蒸解され、未漂白クラフトパルプが得られる。また、この未漂白クラフトパルプは、製紙用原料として多様な用途に使用できるように、種々の漂白処理が施され、パルプに含まれる着色原因物質であるリグニン等が除去された後、漂白クラフトパルプとして使用されるのが一般的である。
パルプのオゾン漂白では、一般的に、オゾン濃度10〜12質量%程度の高濃度オゾン含有ガスが用いられる。このオゾン含有ガスは、空気または酸素を原料としてオゾン発生装置により製造されて、クラフトパルプ製造プロセスのオゾン漂白段階で供給される。漂白工程後にパルプを洗浄する際に生じる排水(漂白排水)は、汚染物として、パルプに含まれるリグニン等の着色原因物質など、多量の有機分を含んでいる。
なお、工場排水に含まれるクラフトパルプ排水以外の排水としては、例えば、調木工程廃水、各種洗浄工程廃水、製薬工程廃水、精選工程廃水、調成工程廃水、抄紙工程廃水、塗工工程廃水等が挙げられる。
処理を行う前の工場排水のCODcr値は、10mg/L以上であり、20mg/L以上であってもよく、50mg/L以上であってもよく、100mg/L以上であってもよい。処理を行う前の工場排水のCODcr値は、3,000mg/L以下であればよく、1500mg/L以下であることが好ましい。
また、処理を行う前の工場排水の総溶解性固形分値(TDS値)は、200mg/L以上であり、400mg/L以上であってもよく、700mg/L以上であってもよい。処理を行う前の工場排水の総溶解性固形分値(TDS値)は、5,000mg/L以下であればよく、4,500mg/L以下であることが好ましく、4,000mg/L以下であることがより好ましい。
上記のような範囲で、CODcr値及び総溶解性固形分値(TDS値)を有する工場排水は、少なくとも凝集沈殿処理する工程と過酸化水素併用オゾン処理工程を経ることにより、処理水となる。本発明では、処理水のCODcr値は処理前の70%以下であり、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることが最も好ましい。また、処理水の総溶解性固形分値(TDS値)は処理前と同等に抑制することが好ましい。必要に応じて、蒸発などを利用して処理水のTDS値を下げることも可能である。
具体的には、処理水のCODcr値は1.0〜400mg/Lであることが好ましく、1.0〜200mg/Lであることがより好ましく、1.0〜100mg/Lであることがさらに好ましく、1.0〜60mg/Lであることが特に好ましい。
本発明では、上記の排水の処理方法で処理されたクラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水(処理水)は、工業用水として再利用することができる。このようにして得られる再利用水は、臭気が少ないため、再利用した場合であっても作業環境を悪化させることがない。さらに、再利用をすることにより、水資源の有効利用が可能となり、工場におけるランニングコストを抑制することもできる。
本発明では、工場排水の40質量%以上が処理水に変換され得る。好ましくは工場排水の60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上が処理水として再利用可能な工業用水に変換される。このように、本発明では、工場排水の大部分が再利用可能な処理水となり、排水として、公共用水域に排出される排水を極力少なくすることができ、排水を公共用水域に一切排出しないクローズド化された排水処理システムを構築することも可能となる。
なお、工場排水の一部は、処理水に変換されず、各処理工程において蒸発したり、凝集沈殿処理工程において、沈降物と共に焼却処分や埋め立て処分されることとなる。
(凝集沈殿処理工程)
図1は、本発明の排水の処理方法の実施態様を示すフローシートである。図1に示されているように、本発明の排水の処理方法は、凝集沈殿処理工程を含む。また、本発明では、まず第1の工程として凝集沈殿処理工程を含むことが好ましい。
但し、凝集沈殿処理工程の前工程として、排水のCODcr値及び総溶解性固形分値(TDS値)等を測定する工程を設けても良い。加えて、固形分値(TDS値)から、凝集沈殿処理工程において添加する凝集剤の種類を決定する工程や、凝集剤の量を算出する工程を設けることとしてもよい。このように、凝集沈殿処理工程の前工程に、排水のCODcr値及び総溶解性固形分値(TDS値)を測定する工程等を設けることにより、凝集沈殿処理工程を効率よく行うことができ、後の処理工程にかかる負荷を軽減することができる。
凝集沈殿処理工程では、凝集剤を添加することにより排水中のリグニン化合物等を沈降させることができる。凝集剤の添加量は排水のCODcr値と総溶解性固形分値(TDS値)により調節することが好ましい。具体的には、凝集沈殿後のCODcr値は凝集沈殿前の値の10〜90%、好ましくは20〜80%となるように、凝集剤を添加することが好ましい。また、凝集沈殿後のTDS値は凝集沈殿前の値の100〜200%、好ましくは100〜150%となるように、凝集剤を添加することが好ましい。凝集沈殿処理工程において、上記範囲となるように凝集剤を添加し、CODcr値とTDS値を制御することにより、後の工程の負担を軽減することができ、処理効率を大幅に良化することができ、コスト的にもメリットが得られる。なお、凝集沈殿処理工程において、凝集剤を入れすぎると、総溶解性固形分値(TDS値)が増大し、凝集剤の量を減らしすぎるとCODcr値を低減する効果を十分に得られない傾向となる。
凝集剤としては、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム、ポリ鉄、塩化第二鉄、塩化アルミニウム等の無機凝集剤や、有機凝集剤を挙げることができる。凝集沈殿処理工程では、工場排水に無機凝集剤を添加し、次に有機高分子凝集剤の添加によって微細な濁質を凝集させることができる。無機凝集剤を添加する目的は濁質の荷電中和にあり、微細な濁質を一次凝集させ、次に添加する高分子量の有機高分子凝集剤により、微細な濁質の一次凝集体をさらに大きくフロック化し、凝集沈殿しやすくしている。
本発明で用いる無機凝集剤の種類は特に限定はない。例えば、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、含鉄硫酸アルミニウム、消石灰など、必要に応じて任意に選定できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機凝集剤の添加量も特に限定はなく、排水の性状や以下の有機凝集剤の併用の有無などに応じて対応する。
無機凝集剤と共に、一般に使われている有機凝集剤も併用することができる。この場合、用いる有機凝集剤の種類には特に限定はない。例えば、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリ重縮合物、ポリアルキレンポリアミンなどのカチオン性有機系ポリマー、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミドなどのアニオン性有機系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリオキシエチレンなどのノニオン性有機系ポリマーを挙げることができる。有機凝集剤の添加量も特に限定はなく、排水の性状に応じて対応する。
凝集沈殿処理工程においては、排水のpHを調整し、用いる凝集剤の凝集効果と沈殿効果が最も発揮されやすい範囲とすることが好ましい。例えば塩化第二鉄であればpH4〜7、ポリ塩化アルミニウムおよび硫酸アルミニウムであればpH5〜7となるように適宜pHが調整されることが好ましい。
凝集沈殿処理工程は全行程中に1工程のみ設けられていてもよいし、2工程以上設けられていてもよい。例えば、図1において、凝集沈殿処理工程が第1工程として設けられ、その後にP工程として後述するような他の処理工程が設けられた後に、さらに凝集沈殿処理工程を設けることとしてもよい。凝集沈殿処理工程を2工程設けることにより、効果的にCODcr値を下げることができる。
(過酸化水素併用オゾン水処理工程)
過酸化水素併用オゾン水処理工程は、処理を行いたい排水中に添加した過酸化水素とオゾンとを反応させて、過酸化水素やオゾンよりも酸化分解力が非常に強いヒドロキシラジカル(OHラジカル)を効率的に生成させて、難分解性物質を分解除去する工程である。過酸化水素併用オゾン水処理工程においては、オゾン反応槽に排水と過酸化水素水を予め入れておき、そこにオゾンを供給することにより、処理を行う。反応槽は撹拌システムを有していてもよく、供給された排水と過酸化水素にオゾンが効率よく反応できるようにすることが好ましい。
過酸化水素併用オゾン処理工程では、オゾンを0.5〜1000mg/Lとなるように添加し、過酸化水素を0.025〜20,000mg/Lとなるように添加することが好ましい。オゾンの添加量は、0.5〜1000mg/Lであることが好ましく、0.5〜500mg/Lであることがより好ましく、0.5〜100mg/Lであることがさらに好ましい。また、過酸化水素の添加量は、0.025〜20,000mg/Lであることが好ましく、0.1〜200mg/Lであることがより好ましく、0.1〜100mg/Lであることがさらに好ましい。
なお、オゾンと過酸化水素の添加率の質量比は、1:0.05〜1:20であることが好ましく、1:0.1〜1:10であることがより好ましく、1:0.2〜1:5であることがさらに好ましい。
過酸化水素併用オゾン処理工程におけるオゾンと過酸化水素の添加量を上記範囲内とすることにより、有機物や無機物を含む濃縮水の臭気と臭素酸の生成を抑制することができる。
(その他の処理工程)
本発明の排水の処理方法は、凝集沈殿処理工程に加えて、その他の処理工程を含んでもよい。例えば、中和処理工程、オゾン処理工程、曝気処理工程等の化学処理工程、活性汚泥処理工程などの生物処理工程、ろ過処理工程、加圧浮上処理工程、活性炭処理工程などの物理処理工程を適宜選択し、組合せることが好ましい。
図1に示したP工程では、活性汚泥処理工程などの生物処理工程、中和処理工程、化学処理工程、加圧浮上処理工程、物理処理工程を設けることが好ましく、中でも、活性汚泥処理工程、活性炭処理工程、加圧浮上処理工程を設けることが好ましい。また、P工程では、上述したような工程を組み合わせて2工程以上設けてもよい。このように、凝集沈殿処理工程の後に、活性汚泥処理や活性炭処理工程を設けることにより、排水中のCODcr値を大きく低減することができ、後処理工程の負担を大きく低減することができる。
活性汚泥処理は、多種の微生物を含んだ活性汚泥を利用する方法であり、工場排水を活性汚泥と撹拌、曝気して排水中の有機物を酸化分解させるものである。これにより、処理物を分離、沈殿させて得られる上澄水のCODcr値は大幅に低減される。なお、活性汚泥処理工程は、凝集沈殿処理工程の後に設けられることが好ましい。これにより、排水処理の効率を高めることができ、さらに、過酸化水素併用オゾン処理の効果をより高めることができる。
活性炭処理では、活性炭の高比表面積を有する多孔性の吸着効果が利用される。活性炭処理工程の前工程として、オゾン処理工程を設置することで活性炭を生物活性炭とすることが可能であり、活性炭の吸着作用と共に活性炭層内に増殖した微生物により有機物を分解することで、活性炭の吸着機能をより長く持続することが可能である。活性炭処理において、粒状活性炭、粉末活性炭の何れも使用可能である。活性炭処理もTDS値を上げずにCODcr値低減を行う処理として有効である。
加圧浮上処理(DAF処理)では、排水中で加圧溶解空気を発生させて浮遊物等の固形分を除去する方法である。これにより、木材や植物由来の樹皮や繊維を取り除くことができる。例えば、加圧浮上処理工程では、シックナーや加圧浮上装置にて固液分離することにより、濁度の低い処理水を得ることができる。
図1に示したQ工程では、P工程とは異なる処理工程を設けることが好ましい。Q工程では、処理水中の汚染物質を濃縮する工程を設けてもよい。このような濃縮工程としては、例えば蒸発工程を挙げることができる。このような工程で得られた汚染物質濃縮水に、さらに過酸化水素併用オゾン処理工程を施してもよい。
なお、工場排水中は、カルシウムを含んでいるため、スケール防止の目的でpH変更による硬度処理や分散剤を注入してもよい。
過酸化水素併用オゾン処理工程は、図1に示されるように、凝集沈殿処理工程の後であればいずれの段階に設けられてもよく、凝集沈殿処理する工程の直後に設けられてもよく、排水処理の最終工程として設けられてもよい。特に下記に示す処理工程を有することが好ましい。
(a)凝集沈殿処理工程の後で、過酸化水素併用オゾン処理工程以外にさらにオゾン処理工程を設ける。オゾン処理工程は複数設けられてもよい。
(b)凝集沈殿処理工程の後で、過酸化水素併用オゾン処理工程を複数工程設ける。
(c)凝集沈殿処理工程の後で、過酸化水素併用オゾン処理工程を複数工程とオゾン処理工程を設ける。オゾン処理工程は複数設けられてもよい。
この場合、凝集沈殿処理工程は1工程のみ設けられていてもよく、2工程以上設けられていてもよい。
また、本発明では、過酸化水素併用オゾン処理工程は、凝集沈殿処理工程の後であって、別の工程を経る前に少なくとも1工程設けられることが好ましい。特に、凝集沈殿処理工程の後であって、蒸発工程の前に過酸化水素併用オゾン処理工程が設けられることが好ましい。ここでは、上記の(a)〜(c)の処理工程を適宜採用することができ、特に、過酸化水素併用オゾン処理工程を複数工程設けることが好ましい。なお、過酸化水素併用オゾン処理工程は、蒸発工程の後に得られた濃縮水に対して行われてもよい。
オゾン処理工程によって臭素酸が増加するが、臭気低減効果が大きく、過酸化水素併用オゾン処理工程との併用で、低コストで臭気と臭素酸抑制の効果が得られることが可能である。過酸化水素併用オゾン処理工程は所定のタイミングで、複数工程実施することにより、臭気と臭素酸が抑制できる。特に蒸発工程で得られた濃縮水に対して過酸化水素併用オゾン処理工程を設けると、臭気と臭素酸の抑制効果が大きくなる。以上のように過酸化水素併用オゾン処理工程とオゾン処理工程を所定のタイミングで複数工程設ける、或いは過酸化水素併用オゾン処理工程を所定のタイミングで複数工程設けることにより、濃縮水の臭気や臭素酸の生成を効果的に抑制することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
クラフトパルプ製造由来の排水を30質量%、マシン排水を40質量%、塗料排水やその他雑排水30質量%含む工場排水を得た。この工場排水を凝集沈殿処理(1)し、次いで、活性汚泥処理し、次いで、凝集沈殿処理(2)を行った。次いで、過酸化水素併用オゾン処理Aおよび活性炭処理を行った。上記処理水を、凝集沈殿処理(3)し、再度過酸化水素併用オゾン処理Bおよび活性炭処理を行った。その後、エバポレーターによる蒸発処理を行った。蒸発により蒸留水(蒸発前の95質量%)と濃縮水(蒸発前の5質量%)を得た。各処理工程の条件は表1のとおりである。
Figure 2016168514
なお、凝集沈殿処理(1)をする前原水のTDSが3,390mg/L、CODcrが830mg/L、臭気強度が3.5、臭素酸イオンが0.25μg/L未満であった。
(実施例2〜4)
過酸化水素併用オゾン処理の条件を表2の通りとした以外は、実施例1と同様の排水処理を行った。
(比較例1〜3)
過酸化水素併用オゾン処理の条件を表2の通りとした以外は、実施例1と同様の排水処理を行った。
(評価)
(臭気の評価)
試料を30mlのガラス瓶にとり、臭気の質について評価した。評価者を4名として下記基準で臭気の質を評価しその点数を平均値にて表示した。平均点は2.5以下のものが合格とした。
0:臭わない
1:かすかに臭う
2:何の臭いかわかるが弱い臭い
3:楽に感知できる
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(臭素酸の評価)
処理水の濃縮水に含まれる臭素酸の含有量を下記の基準に従って評価した。
◎:0〜50μg/L
○:51〜300μg/L
△:301〜500μg/L
×:501μg/L以上
Figure 2016168514
表2より、実施例1〜4では、濃縮水の臭気と臭素酸の発生が抑えられていることがわかる。一方、比較例1及び2では、臭素酸の発生量が多く、比較例3では、臭気が強いことがわかる。
本発明によれば、クラフトパルプ製造由来の排水の処理工程において発生する臭気を抑制することができ、有機物や無機物を含む濃縮水の臭気と臭素酸の生成を効果的に抑制することができる。このため、本発明はクラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水の処理システムとして有効利用することができ、産業上の利用可能性が高い。

Claims (10)

  1. クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水を凝集沈殿処理する工程と、
    前記凝集沈殿処理する工程の後に、過酸化水素併用オゾン処理工程を少なくとも1工程含むことを特徴とする排水の処理方法。
  2. 前記凝集沈殿処理する工程の後に、オゾン処理工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の排水の処理方法
  3. 前記排水の処理方法において、前記過酸化水素併用オゾン処理工程は、2工程以上含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水の処理方法。
  4. 前記過酸化水素併用オゾン処理工程では、オゾンを0.5〜1000mg/Lとなるように添加し、過酸化水素を0.025〜20,000mg/Lとなるように添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  5. 前記過酸化水素併用オゾン処理工程では、オゾンと過酸化水素水の添加率の質量比が1:0.05〜1:20となるように添加されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  6. 前記クラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水のCODcr値が10〜3,000mg/L、該工場排水の総溶解性固形分値が200〜5,000mg/Lであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  7. 前記工場排水は、クラフトパルプ製造由来の排水を10質量%以上含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  8. 活性汚泥処理工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  9. 活性炭処理工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
  10. 前記排水の処理方法で処理されたクラフトパルプ製造由来の排水を含む工場排水は、再利用されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の排水の処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018196844A (ja) * 2017-05-23 2018-12-13 メタウォーター株式会社 水処理システムおよび水処理方法
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CN114590877A (zh) * 2022-03-10 2022-06-07 华北水利水电大学 一种高效去除溴酸盐的复配混凝系统的构建方法及其在水处理中的应用
CN116040843A (zh) * 2022-12-14 2023-05-02 中国五冶集团有限公司 一种一体化微污染水体处理装置

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