以下、本発明に係る溶接電源装置を備えた溶接装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態では、アーク溶接用の溶接装置を例に説明する。実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
図1は、実施の形態に係る溶接装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す溶接装置1は、溶接電源装置2、ワイヤ送給装置3、溶接トーチ4、遠隔操作装置5、ガス供給装置6及びワイヤリール7を含む。
溶接装置1は、溶接トーチ4に保持された溶接ワイヤWと母材Bとの間でアークを発生させ、そのアークの高熱で溶接ワイヤWと母材Bを溶融して接合する装置である。
溶接電源装置2は、溶接ワイヤWと母材Bとの間に供給する電力(溶接用電力)と、ワイヤ送給装置3のワイヤ送給機構31に供給する電力(ワイヤ送給用電力)を生成し、ワイヤ送給装置3を介して溶接用電力を溶接トーチ4に供給するとともに、ワイヤ送給用電力をワイヤ送給装置3のワイヤ送給機構31に供給する機能を有する。
溶接電源装置2は、機能ブロックとして、電源部21、制御部22、無線通信部23、操作部24及び表示部25を含む。電源部21は、溶接電源装置2の駆動電力を生成するとともに、ワイヤ送給装置3の駆動電力と溶接用電力を生成する。ワイヤ送給装置3の駆動電力は、主として制御部33や表示部36などを駆動するための電力と溶接作業中に溶接ワイヤWを溶接トーチ4に送給するための駆動電力である。溶接用電力は、主として溶接ワイヤWと母材Bとの間にアークを発生させるための電力とアーク発生後の溶接作業用の電力である。
電源部21の電力発生動作は制御部22によって制御される。ワイヤ送給装置3は、パワーケーブルによって溶接電源装置2に接続される。溶接電源装置2の電源部21で生成されたワイヤ送給装置3の駆動電力と溶接トーチ4への溶接用電力は、パワーケーブルによってワイヤ送給装置3に供給され、溶接用電力は、更にワイヤ送給装置3を介して溶接ワイヤWと母材Bとの間に供給される。
ワイヤ送給装置3の駆動電力には、溶接作業中に、後述するワイヤ送給機構31を駆動して溶接ワイヤWを送給するためのワイヤ送給用電力とワイヤ送給装置3の制御部33等を駆動するための電力が含まれる。
電源部21は、溶接用電力を生成する溶接用電源211と溶接ワイヤ送給用の電力を生成するワイヤ送給用電源212とを有する。溶接装置1の溶接方式が、例えば、交流アーク溶接方式の場合、溶接用電源211は、一次整流回路、インバータ回路、二次整流回路及び直流/交流変換回路などを有する交流電源で構成される。溶接用電源211は、商用電源P(例えば、200[V]のAC電源)から所定のアーク発生用の交流電力と溶接作業用の交流電力を生成し、ワイヤ送給装置3を介して溶接トーチ4と母材Bに出力する。
アーク発生用の電力は、例えば、高周波発生方式の場合、所定の直流に数[kV]の高周波を重畳した高電圧/低電流の電力である。溶接作業用の電力は、例えば、ワイヤ送給装置3の操作部35や遠隔操作装置5の操作部54などによって設定された溶接条件(溶接電圧VW[V]と溶接電流IW[A])で出力される交流電力である。
ワイヤ送給用電源212は、例えば、ワイヤ送給装置3のワイヤ送給機構31が直流モータで溶接ワイヤWを送給する場合、商用電源Pから直流電力を生成する周知の直流電源で構成されている。ワイヤ送給用電源212は、商用電源Pから直流電力を生成し、ワイヤ送給機構31に規定されている駆動電圧でパワーケーブルを介してワイヤ送給装置3に出力する。
電源部21は、電力の発生動作に同期してガス供給装置6からシールドガスを溶接トーチ4に供給する制御を行う。電源部21は、制御ケーブルによってワイヤ送給装置3内のガス電磁弁32の制御端子に接続されており、電力の生成の開始に同期してガス電磁弁32に「開」の制御信号を出力し、電力の生成の停止に同期してガス電磁弁32に「閉」の制御信号を出力する。
制御部22は、操作部24による情報の入力、表示部25よる情報の出力、無線通信部23によるワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5との無線通信、電源部21によるアーク溶接のための電源供給などの各処理を統括的に制御する。
また、制御部22は、操作部24から入力されるアーク溶接に関する情報と、ワイヤ送給装置3から無線通信により入力されるアーク溶接に関する情報と、遠隔操作装置5から無線通信により入力されるアーク溶接に関する情報の受け付けを制御する。すなわち、制御部22は、操作部24、操作部35及び操作部54のいずれか1つの操作部から入力される情報を受け付けるように制御する。この制御は本実施の形態の特徴的な構成であるので、その制御の詳細は後述する。
制御部22は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びMPU(Micro−Processing Unit)を有するマイクロコンピュータで実現されている。なお、制御部22は、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)で実現してもよい。
操作部24は、作業者がアーク溶接に関する各種の情報を制御部22に入力する操作を行うブロックである。操作部24は、例えば、溶接電源装置2の筐体面に配設された操作パネルに設けられている。作業者が操作する操作部材は、例えば、操作パネルに所定の項目毎に配設された1又は2以上の操作ボタンや電源スイッチなどで構成される。なお、操作部24は、タッチパネルやキーボードなどの他の種類の入力装置で構成してもよい。
作業者が操作部24から入力するアーク溶接に関する情報は、例えば、溶接電圧VWや溶接電流IWなどのアーク溶接に関するパラメータ値や表示部25に表示させる情報の選択(表示モードの選択)などである。アーク溶接に関する情報には、溶接電圧VWと溶接電流IW以外にアーク溶接の種類に応じた各種のパラメータ値が含まれる。例えば、TIG溶接では、クレータ処理に関するパラメータ値などがある。
表示モードには、例えば、溶接条件として設定されている溶接電圧VWと溶接電流IWなどのパラメータ値を表示するモード(入力表示モード)とワイヤ送給装置3で検出される溶接作業中の溶接電圧の検出値VDと溶接電流の検出値IDを表示するモード(検出値表示モード)などがある。
操作部24は、制御部22に接続されている。制御部22は、作業者が操作部24の電源スイッチを「ON」にすると、起動し、同電源スイッチを「OFF」にすると、動作を停止する。制御部22は、操作部24からの入力を受け付けた場合、その入力情報をメモリ(RAM)に一時保存する。
表示部25は、アーク溶接に関する各種の情報を作業者が視認できるように表示する。表示部25は、例えば、LEDや7セグメントなどの表示機で構成される。表示部25は、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成してもよい。
表示部25は、制御部22に接続されている。表示部25は、制御部22から転送される情報に基づいて、所定の表示をする。表示部25は、例えば、制御部22から入力される受信レベルに関する情報に基づいて、無線通信の通信状態に関する情報を絵文字や記号や文字メッセージなどで表示する。また、表示部25は、入力表示モードに設定されている場合、制御部22から転送される入力情報(操作部24から入力された情報や無線通信部23を介してワイヤ送給装置3や遠隔操作装置5から入力された情報)を表示する。表示部25は、検出値表示モードに設定されている場合、制御部22から転送される溶接電圧検出値VDと溶接電流検出値IDの情報を表示する。
無線通信部23は、ワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5との間で無線通信を行う。無線通信部23は、例えば、無線LANによりワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5との間で無線通信を行う。無線LANによる通信方式として、Bluetoth(登録商標)やZigbee(登録商標)などの通信方式を用いることができる。無線通信部23は、無線LANアクセスポイント(図示省略)を介してワイヤ送給装置3若しくは遠隔操作装置5又は両方の装置と無線接続を行い、無線通信により所定の情報の送受信を行う。
本実施の形態では、無線LANによるネットワーク通信方式を用いているが、溶接電源装置2とワイヤ送給装置3との間や溶接電源装置2と遠隔操作装置5との間での直接、双方向無線通信を行う通信方式を用いてもよい。
無線通信部23は、制御部22に接続されている。無線通信部23は、所定の変調方式でキャリア信号を送信すべき情報で変調して無線通信信号を生成し、その無線通信信号をアンテナ23Aから放射する。
例えば、無線通信部23は、溶接条件が設定されると、所定の周期(例えば、1秒)で、制御部22のメモリに溶接条件として記憶されている溶接電圧VWと溶接電流IWの情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号をワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5に送信する。
また、無線通信部23は、ワイヤ送給装置3若しくは遠隔操作装置5から無線通信信号を受信すると、その無線通信信号から送信された情報を復調し、制御部22に転送する。制御部22は、ワイヤ送給装置3若しくは遠隔操作装置5から送信された情報を表示させるために、その情報を表示部25に転送する。
また、無線通信部23は、受信レベルを検出し、その検出値を制御部22に入力する。制御部22は、無線通信の通信状態を表示させるために、その検出値に基づいて、受信レベルに関する情報を生成し、その情報を表示部25に転送する。
ワイヤ送給装置3は、機能ブロックとして、ワイヤ送給機構31、ガス電磁弁32、制御部33、無線通信部34、操作部35、表示部36および電圧/電流検出部37を含む。
ワイヤ送給機構31は、溶接作業中に溶接ワイヤWが巻き付けられたワイヤリール7から当該溶接ワイヤWを繰り出して溶接トーチ4に連続的に供給するための機構である。ワイヤ送給機構31は、ワイヤリール7から溶接トーチ4まで溶接ワイヤWをガイドするガイド機構と溶接ワイヤWを繰り出す駆動源であるワイヤ送給モータとを有する。ワイヤ送給モータは、溶接電源装置2から供給されるワイヤ送給用電力によって駆動される。
ガス電磁弁32は、ガス供給装置6から溶接トーチ4へのシールドガスの供給を制御するための弁である。シールドガスは、溶接面を空気から遮断するためのアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)といった不活性ガスである。シールドガスは、ガス供給装置6に封入されており、作業者が溶接作業を開始する際にガス供給装置6の栓を開くことによって、所定の圧力で溶接トーチ4への供給が可能になる。
ガス電磁弁32は、溶接開始から溶接終了までの期間に流路を開いてガス供給装置6から溶接トーチ4にシールドガスを供給する。ガス電磁弁32の開閉は、溶接電源装置2の電源部21から入力される制御信号によって行われる。
上述したように、電源部21は、電力の生成動作に同期して「開」の制御信号をガス電磁弁32に出力するので、ガス電磁弁32は、溶接作業中にだけガス供給装置6からシールドガスを溶接トーチ4に供給する。
制御部33は、溶接電源装置2の制御部22のアーク溶接に関する情報の入力と出力の処理と同様の機能を果たす。制御部33も制御部22と同様、ROM、RAM及びMPUを有するマイクロコンピュータで実現されている。制御部33もFPGAなどのPLDで実現してもよい。
制御部33には、作業者がアーク溶接に関する情報の入力するための操作部35と、溶接トーチ4に設けられているトーチスイッチ41と、電圧/電流検出部37が接続されている。
操作部35は、溶接電源装置2の操作部24と同様に、ワイヤ送給装置3の筐体面に配設された操作パネルに設けられている。作業者が操作する操作部材は、例えば、操作パネルに所定の項目毎に配設された1又は2以上の操作ボタンや電源スイッチなどで構成される。なお、操作部35もタッチパネルやキーボードなどの他の種類の入力装置で構成してもよい。
作業者が操作部35によって入力するアーク溶接に関する情報は、例えば、溶接電圧VWや溶接電流IWなどのアーク溶接に関するパラメータ値や表示部36に表示させる情報の選択(表示モードの選択)などである。アーク溶接に関する情報には、溶接電圧VWと溶接電流IW以外にアーク溶接の種類に応じた各種のパラメータ値が含まれる。
操作部35は、制御部33に接続されている。制御部33は、作業者が操作部35の電源スイッチを「ON」にすると、起動し、同電源スイッチを「OFF」にすると、動作を停止する。
制御部33は、操作部35からのアーク溶接に関する情報が入力されると、その情報を一旦メモリ(RAM)に保存し、無線通信部34と表示部36に転送する。
トーチスイッチ41は、作業者が手元で溶接電流を制御するためのスイッチである。トーチスイッチ41は、制御ケーブルで溶接電源装置2の制御部22に接続されている。制御部22には、例えば、トーチスイッチ41が「ON」になると、ハイレベルの信号が入力され、トーチスイッチ4Aが「OFF」になると、ローレベルの信号が入力される。
従って、作業者は、トーチスイッチ41をONにした後、所定の時間tが経過してOFFにする操作をすることにより、制御部22にパルス幅tのパルス信号を入力することができる。制御部22へのパルス信号の入力は、マウスにおけるクリック操作に対応する。
例えば、パルス幅tが所定の時間よりも大きいクリック操作を溶接電流の通電又は遮断を行う指令信号に割り当てたり、パルス幅tが所定の時間以内のシングルクリックを所定のステップで溶接電流を減少させる指令信号に割り当て、そのシングルクリックを所定の時間間隔内で連続して2回した場合(ダブルクリックをした場合)、所定のステップで溶接電流の値を上昇させる指令信号に割り当てたりすることで、作業者は、溶接作業の開始、溶接中の溶接電流の変更、溶接作業の終了などを制御部22に入力することができる。
電圧/電流検出部37は、溶接ワイヤWと母材Bとの間の電圧(溶接電圧)と溶接ワイヤWと母材Bとの間に流れる電流(溶接電流)を検出する。電圧/電流検出部37は、電圧を検出する電圧センサと、その電圧センサから出力される電圧検出値VDをデジタル信号に変換して制御部33に出力する。また、電圧/電流検出部37は、電流を検出する電流センサと、その電流センサから出力される電流検出値IDをデジタル信号に変換して制御部33に出力する。
従って、制御部33には、操作部35から作業者によって設定されたアーク溶接に関する情報と、電圧/電流検出部37から溶接作業中の溶接電圧検出値VDと溶接電流検出値IDに関する情報が入力される。制御部33に入力されるこれらの情報は、無線通信によりワイヤ送給装置3から溶接電源装置2に送信される。なお、トーチスイッチ41をワイヤ送給装置3の制御部33に接続し、トーチスイッチ41から作業者によって操作された溶接電流の制御に関する情報を無線通信によりワイヤ送給装置3から溶接電源装置2に送信するようにしてもよい。
制御部33には、アーク溶接に関する各種の情報を作業者が視認できるように表示部36が接続されている。表示部36は、例えば、LEDや7セグメントなどの表示機で構成される。表示部36は、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されてもよい。
表示部36は、表示部25と同様に、制御部33から転送される情報に基づいて、所定の表示をする。表示部36は、制御部33から入力される受信レベルに関する情報に基づいて、無線通信の通信状態に関する情報を絵文字や記号や文字メッセージなどで表示する。
また、表示部36におけるアーク溶接に関する情報の表示には、表示部25と同様に入力表示モードと検出値表示モードがある。表示部36は、入力表示モードに設定されている場合、制御部33から転送される入力情報(操作部35から入力された情報や無線通信部34を介して溶接電源装置2から入力された情報)を表示する。表示部36は、検出値表示モードに設定されている場合、制御部33から転送される溶接電圧検出値VDと溶接電流検出値IDの情報を表示する。
無線通信部34は、溶接電源装置2との間で無線通信を行う。無線通信部34は、無線通信部23と同様に、無線LANにより溶接電源装置2との間で無線通信を行う。
無線通信部34は、無線LANアクセスポイント(図示省略)を介して溶接電源装置2と無線接続を行い、無線通信により所定の情報の送受信を行う。無線通信部34は、制御部33に接続されている。無線通信部34は、無線通信部23と同じ変調方式でキャリア信号を送信すべき情報で変調して無線通信信号を生成し、その無線通信信号をアンテナ34Aから放射する。
例えば、無線通信部34は、制御部33から溶接電圧VWと溶接電流IWの情報が転送されると、その情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号を溶接電源装置2に送信する。また、無線通信部34は、制御部33から溶接電圧検出値VDと溶接電流検出値IDの情報が転送されると、その情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号を溶接電源装置2に送信する。なお、トーチスイッチ41を制御部33に接続した構成では、無線通信部34は、制御部33からトーチスイッチ41の操作に関する情報が転送されると、その情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号を溶接電源装置2に送信する。
また、無線通信部34は、溶接電源装置2から無線通信信号を受信すると、その無線通信信号から送信された情報を復調し、制御部33に転送する。また、無線通信部34は、受信レベルを検出し、その検出値を制御部33に入力する。制御部33は、無線通信の通信状態を表示させるために、その検出値に基づいて、受信レベルに関する情報を生成し、その情報を表示部34に転送する。
溶接トーチ4は、溶接作業において、ワイヤ送給装置3から繰り出される溶接ワイヤWを保持するとともに、ガス供給装置6から供給されるシールドガスをアークと溶接金属を覆うように放出する器具である。溶接トーチ4には、上述したトーチスイッチ41が設けられている。
遠隔操作装置5は、リモコンと呼ばれるものであり、機能ブロックとして、電池51、制御部52、無線通信部53、操作部54及び表示部55を含む。図示はしていないが、遠隔操作装置5には、電池51の電圧を検出する電池電圧検出器が設けられている。
電池51は、遠隔操作装置5の駆動電源である。電池51の電圧は電池電圧検出器により検出され、その検出値は制御部52に入力される。
制御部52は、溶接電源装置2の制御部22のアーク溶接に関する情報の入力と出力の処理と同様の機能を果たすブロックである。制御部52も制御部22と同様に、ROM、RAM及びMPUを有するマイクロコンピュータで実現されている。制御部52もFPGAなどのPLDで実現してもよい。
制御部52には、無線通信部53、操作部54及び表示部56が接続されている。操作部54は、作業者がアーク溶接に関する各種の情報を制御部52に入力する操作を行うブロックである。操作部54は、遠隔操作装置5の筐体面に配設された操作パネルに設けられている。作業者が操作する操作部材は、例えば、操作パネルに所定の項目毎に配設された1又は2以上の操作ボタンや電源スイッチなどで構成される。遠隔操作装置5の操作パネルには、例えば、溶接電源装置2の電源部21の起動、溶接電圧VWの設定・変更、溶接電流IWの設定・変更、表示モードの切換などの操作ボタンが設けられている。
なお、溶接作業中に作業者の両手が塞がっている場合でも溶接電圧VWと溶接電流IWの変更などができるように、操作パネルに音声入力用のマイクと音声出力用のスピーカを設けてもよい。
また、遠隔操作装置5は、例えば、タブレット端末に遠隔操作用の専用アプリケーションを搭載することによって実現することも可能である。この場合は、通常、タッチパネルによって操作部54が実現される。
表示部55は、アーク溶接に関する各種の情報や電池51の残容量に関する情報や溶接電源装置2との無線通信状態などを表示する。表示部55は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成される。表示部55は、LEDや7セグメントなどの表示機で構成されてもよい。
表示部55は、制御部52から転送される情報に基づいて、所定の表示をする。表示部55は、制御部52から入力される電池51の電圧に関する情報に基づいて、電池51の残容量に関する情報を絵文字や記号や文字メッセージなどで表示する。また、表示部55は、制御部52から入力される受信レベルに関する情報に基づいて、無線通信の通信状態に関する情報を絵文字や記号や文字メッセージなどで表示する。
表示部55におけるアーク溶接に関する情報の表示にも表示部25,36と同様に、入力表示モードと検出値表示モードなどがある。表示部55は、入力表示モードに設定されている場合、制御部52から転送される入力情報(操作部54から入力された情報や無線通信部53を介して溶接電源装置2から入力された情報)を表示する。表示部55は、検出値表示モードに設定されている場合、溶接電源装置2の制御部22から転送される溶接電圧検出値VDと溶接電流検出値IDの情報を表示する。
無線通信部53は、溶接電源装置2との間で無線通信を行う。無線通信部53は、無線通信部23と同様に、無線LANにより溶接電源装置2との間で無線通信を行う。
無線通信部53は、無線LANアクセスポイント(図示省略)を介して溶接電源装置2と無線接続を行い、無線通信により所定の情報の送受信を行う。無線通信部53は、制御部52に接続されている。無線通信部53は、無線通信部23と同じ変調方式でキャリア信号を送信すべき情報で変調して無線通信信号を生成し、その無線通信信号をアンテナ53Aから放射する。
例えば、無線通信部53は、制御部52から溶接電圧VWと溶接電流IWの情報が転送されると、その情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号を溶接電源装置2に送信する。
また、無線通信部53は、溶接電源装置2から無線通信信号を受信すると、その無線通信信号から送信された情報を復調し、制御部52に転送する。また、無線通信部53は、受信レベルを検出し、その検出値を制御部52に入力する。制御部52は、無線通信の通信状態を表示させるために、その検出値に基づいて、受信レベルに関する情報を生成し、その情報を表示部55に転送する。
溶接装置1を用いた溶接作業では、作業者は、通常、溶接電源装置2の操作部24の電源スイッチを「ON」にして溶接電源装置2を起動するとともに、ワイヤ送給装置3の操作部35の電源スイッチを「ON」にしてワイヤ送給装置3を起動する。また、作業者は、遠隔操作装置5を保持している場合は、遠隔操作装置5の操作部54の電源スイッチを「ON」にして遠隔操作装置5を起動する。
作業者が溶接作業をする場合、通常、作業者は、溶接電源装置2の操作部24、ワイヤ送給装置3の操作部35、遠隔操作装置5の操作部54のいずれかの操作部を用いて、溶接電圧VWと溶接電流IWなどの溶接条件を設定する。
次に、作業者は、作業現場で溶接トーチ4に保持された溶接ワイヤWが母材Bに対して所定の位置となるように当該溶接トーチ4を把持してトーチスイッチ41を操作することにより、溶接ワイヤWと母材Bとの間にアークを発生させた後、溶接作業を開始する。
そして、作業開始後は、作業者は、母材Bの溶接状態を確認しながら、適宜トーチスイッチ41を操作して溶接電流IWを調節しながら溶接作業を行い、母材Bの溶接終了点まで溶接作業を行うと、トーチスイッチ41を操作して溶接電源装置2の電源部21を停止させ、溶接作業を終了する。
本実施の形態に係る溶接装置1は、上記の作業者の一連の溶接作業において、溶接電源装置2、ワイヤ送給装置3及び遠隔操作装置5の間で溶接電源装置2の制御部22に情報を入力する操作が重複する可能性がある場合に、当該制御部22が優先順位に従って入力情報の受け付けを制御する構成に特徴点がある。
次に、溶接電源装置2の制御部22の入力情報の受付制御について、図2のフローチャートを用いて説明する。
なお、以下の説明では、制御部22が入力情報の受付制御を開始する前に、作業者によって無線通信が可能なワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5が制御部22に登録されているものとする。具体的には、ワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5を識別する両装置に固有の識別情報(例えば、ID番号や機器の製造番号などの情報)が制御部22に登録されているものとする。なお、溶接電源装置2には複数個の遠隔操作装置5を登録することが可能であるが、以下の説明では、溶接電源装置2に1台の遠隔操作装置5が登録されているものとする。
また、ワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5の両装置が溶接電源装置2に無線接続されている場合、制御部22には、遠隔操作装置5の操作部54による情報の入力がワイヤ送給装置3の操作部35による情報の入力よりも優先することが予め設定されている。なお、溶接電源装置2に複数個の遠隔操作装置5が登録可能になっている場合は、複数個の遠隔操作装置5のうち、作業者が溶接作業で使用する遠隔操作装置5を最優先機器に登録するようにするとよい。
この優先順位の設定は、作業者が溶接作業中に母材Bの溶接状態に応じて適宜トーチスイッチ41や操作部54を操作して溶接条件を変更することがあるので、ワイヤ送給装置3の操作部35による情報と溶接電源装置2の操作部24による情報の入力の受付けを禁止し、溶接作業の作業者が使用する遠隔操作装置5の操作部54による情報の入力の受付けだけを許可することにより、作業者以外の人の誤操作を防止するためのものである。
また、ワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5のいずれか一方の装置が溶接電源装置2に無線接続されている場合は、制御部22には、無線通信による情報の入力が溶接電源装置2の操作部24による情報の入力よりも優先することが予め設定されている。これは、ワイヤ送給装置3若しくは遠隔操作装置5は、作業現場の近くに配置され、作業者が溶接作業の開始前に溶接条件の設定をしたり、溶接作業中に溶接条件を変更したりする場合、通常、作業者は、遠隔操作装置5の操作部54若しくはワイヤ送給装置3の操作部35を操作すると考えられるので、溶接電源装置2の操作部24による情報の入力の受付けを禁止し、無線通信による情報の入力の受付けだけを許可することにより、作業者以外の人の誤操作を防止するためのものである。
図2は、制御部22が起動すると、所定の時間(例えば、1秒)毎に繰り返される入力情報の受付制御を示すフローチャートである。作業者が溶接電源装置2の操作部24の電源スイッチを「ON」にすると、制御部22、無線通信部23、操作部24及び表示部25が起動し、制御部22は、図2に示すフローチャートを実行する。そして、作業者が電源スイッチを「OFF」にすると、制御部22は、図2に示すフローチャートの実行を終了して制御動作を停止し、無線通信部23、操作部24及び表示部25も動作を停止する。
制御部22は、入力情報の受付制御を開始すると、まず、ワイヤ送給装置3の無線接続の状態を示すフラグF1と遠隔操作装置5の無線接続の状態を示すフラグF2をいずれも「0」にリセットする(S100)。フラグF1,F2は、「1」の場合、無線接続がされている状態を示し、「0」の場合、無線接続がされていない状態を示す。
無線接続がされていない状態とは溶接電源装置2が無線通信によって情報を送信する機器から当該情報を受け取ることができない状態という意味であり、無線接続がされている状態とは溶接電源装置2が無線通信によって情報の送信者から当該情報を受け取ることができる状態という意味である。
無線LANによる無線通信プロトルでは通信相手を特定して情報を送信するので、溶接電源装置2が情報を受け取ることができない状態には、溶接電源装置2の無線通信部23の受信レベルが情報を復調できないレベルになっているといった物理的に受信ができない状態のほか、ソフト的に受信ができない状態も含まれる。
物理的に受信ができない状態が生じる場合としては、例えば、遠隔操作装置5の場合、アクセスポイントと遠隔操作装置5の距離が長すぎる場合や、アクセスポイントと遠隔操作装置5の間に電波を遮蔽する遮蔽物が存在する場合や、アクセスポイントと遠隔操作装置5の間にマルチパスを生じさせる電波の反射物が存在する場合などがある。また、無線LANによる通信方式では、所定の周波数帯域に設定された所定数のキャリア周数数(チャネル)をランダムに変化させながら(周波数ホッピングを行いながら)無線通信が行われる。従って、無線通信部23と無線通信部34若しくは無線通信部53との間で使用していた周波数(チャネル)を無線通信部34若しくは無線通信部53が変更することにより、無線通信ができなる場合もある。
ソフト的に受信ができない状態とは、例えば、情報を送信する機器が遠隔操作装置5の場合、遠隔操作装置5が送信した情報に溶接電源装置2とは異なる送信相手が指定されている場合や溶接電源装置2の制御部22に遠隔操作装置5とは異なる機器が登録されている場合などである。
前者の場合は、例えば、1つの遠隔操作装置5が複数の溶接電源装置2A,2B,2C,…に登録されている場合にその遠隔操作装置5から溶接電源装置2Aを受信相手として情報を送信した場合、指定されていない溶接電源装置2B,2C,…は、遠隔操作装置5からの情報を受信しても受け取らない処理をするので、溶接電源装置2B,2C,…に対して遠隔操作装置5の状態は無線接続がされていない状態となる。一方、溶接電源装置2Aは、遠隔操作装置5からの情報は受け取る処理をするので、溶接電源装置2Aに対して遠隔操作装置5の状態は無線接続がされている状態となる。
後者の場合は、例えば、溶接電源装置2に複数の遠隔操作装置5A,5B,5C,…が登録されているが、遠隔操作装置5Aに優先順位が設定されている場合に遠隔操作装置5A以外の遠隔操作装置5B,5C,…から溶接電源装置2を受信相手として情報を送信した場合、溶接電源装置2は遠隔操作装置5B,5C,…からの情報を受信しても受け取らない処理をするので、溶接電源装置2に対して遠隔操作装置5B,5C,…の状態は無線接続がされていない状態となる。一方、溶接電源装置2は、遠隔操作装置5Aからの情報は受け取る処理をするので、溶接電源装置2に対して遠隔操作装置5Aの状態は無線接続がされている状態となる。
制御部22は、ワイヤ送給装置3の識別情報(ID番号)を含む所定の無線接続確認情報を無線通信部23に送出し、無線通信部23からその無線接続確認情報で変調した接続確認信号をワイヤ送給装置3に送信させる(S101)。
続いて、制御部22は、送信した無線接続確認情報に対して所定の時間内にワイヤ送給装置3から応答があるか否かを判別する(S102)。制御部22は、所定の時間内にワイヤ送給装置3から応答があれば(S102:Y)、ワイヤ送給装置3は無線接続されていると判断し、フラグF1を「1」にセットする(S103)。一方、制御部22は、所定の時間内にワイヤ送給装置3から応答がなければ(S102:N)、ワイヤ送給装置3は無線接続されていないと判断し、フラグF1を「0」にリセットする(S104)。
制御部22が所定の時間内にワイヤ送給装置3からの応答信号を受信しないケースとしては、上述した電波状況が悪い場合やワイヤ送給装置3が上述したソフト的に受信ができない状態である場合が含まれる。電波状況が悪い場合、制御部22は、所定の時間内にワイヤ送給装置3からの応答信号を受信しないことによってワイヤ送給装置3は無線接続されていないと判断する。また、例えば、制御部22が無線接続確認情報を送信したときに、ワイヤ送給装置3の電源スイッチが「OFF」状態になっている場合、ワイヤ送給装置3の制御部33及び無線通信部34が起動していないので、ワイヤ送給装置3から溶接電源装置2に応答信号が返信されることはなく、この場合も、制御部22は、ワイヤ送給装置3は無線接続されていないと判断する。
また、ワイヤ送給装置3がソフト的に受信のできない状態である場合、制御部22は、所定の時間内にワイヤ送給装置3からの信号を受信してもその信号を復調した情報に溶接電源装置2のID番号が含まれてないので、その信号は応答信号ではない、すなわち、所定の時間内に応答がない、と判断し、ワイヤ送給装置3は無線接続されていないと判断する。
続いて、制御部22は、遠隔操作装置5の識別情報(ID番号)を含む所定の無線接続確認情報を無線通信部23に送出し、無線通信部23からその無線接続確認情報で変調した接続確認信号を遠隔操作装置5に送信させる(S105)。
制御部22は、送信した無線接続確認情報に対して所定の時間内に遠隔操作装置5から応答があるか否かを判別する(S106)。制御部22は、所定の時間内に遠隔操作装置5から応答があれば(S106:Y)、遠隔操作装置5は無線接続されていると判断し、フラグF2を「1」にセットする(S107)。一方、制御部22は、所定の時間内に遠隔操作装置5から応答がなれば(S106:N)、遠隔操作装置5は無線接続されていないと判断し、フラグF2を「0」にリセットする(S108)。
制御部22が所定の時間内に遠隔操作装置5からの応答信号を受信しないケースについても、上述したワイヤ送給装置3からの応答信号を受信しないケースと同様のケースが考えられる。
更には、遠隔操作装置5の電池51の残容量が消耗し、電池切れの状態になっている場合も考えられる。電池51の残容量が所定の容量以下に消耗している場合、無線通信部53が溶接電源装置2からの無線接続確認情報を受信できたとしても無線通信部53から十分な出力で応答信号を送信できない状況が生じる。この場合は、溶接電源装置2の無線通信部34が応答信号を受信できないので、制御部22は、遠隔操作装置5は無線接続されていないと判断し、フラグF2を「0」にリセットすることになる。
続いて、制御部22は、フラグF1,F2の設定状態を判別する(S109〜S111)。フラグF1,F2の両方が「1」に設定されている場合(S109:Y)、ワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5の両装置は無線接続されている状態であるので、制御部22は、ワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5のうち、予め設定されている優先順位の高い遠隔操作装置5の操作部54を操作して無線通信により入力される情報だけを受け付ける入力受付モード(以下、「第1の入力受付モード」という。)を設定して(S113)、入力受付の制御を終了する。
これにより、制御部22は、作業者が溶接電源装置2の操作部24を操作してもその操作情報の入力を無視し、作業者がワイヤ送給装置3の操作部35を操作してもその操作情報の無線通信による入力を無視し、作業者が遠隔操作装置5の操作部54を操作した操作情報の無線通信による入力だけを受け付ける状態となる。
一方、フラグF1,F2の両方が「1」に設定されていない場合(S109:NO)、制御部22は、フラグF1,F2の両方が「0」に設定されているか否かを判別する(S110)。フラグF1,F2の両方が「0」に設定されている場合(S110:Y)、制御部22は、ワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5の両装置は無線接続されておらず、作業者が溶接電源装置2の制御部22に情報を入力できる操作部は、操作部24だけになるので、作業者が溶接電源装置2の操作部24を操作した情報の入力を受け付ける入力受付モード(以下、「第3の入力受付モード」という。)を設定して(S114)、入力受付の制御を終了する。
これにより、制御部22は、作業者がワイヤ送給装置3の操作部35や遠隔操作装置5の操作部54を操作してもその操作情報の無線通信による入力を無視し、作業者が溶接電源装置2の操作部24を操作した操作情報の入力だけを受け付ける状態となる。
フラグF1,F2の両方が「0」に設定されていない場合は(S110:N)、制御部22は、更に、フラグF1,F2がF1=1,F2=0とF1=0,F2=1のいずれであるかを判別する(S111)。フラグF1,F2がF1=1,F2=0であれば(S111:Y)、制御部22は、ワイヤ送給装置3の操作部35を操作して無線通信により入力される情報の入力だけを受け付ける入力受付モード(以下、「第2の入力受付モード」という。)を設定して(S113)、入力受付の制御を終了する。
すなわち、制御部22は、作業者が溶接電源装置2の操作部24を操作してもその操作情報の入力を無視し、作業者が遠隔操作装置5の操作部54を操作してもその操作情報の無線通信による入力を無視し、作業者がワイヤ送給装置3の操作部35を操作した操作情報の無線通信による入力だけを受け付ける状態となる。
なお、第1乃至第3の入力受付モードは、作業者が溶接電源装置2の操作部24、ワイヤ送給装置3の操作部35及び遠隔操作装置5の操作部54の各操作部を操作した操作情報を溶接電源装置2の制御部22に入力する際の操作情報の入力受付けに関するモードであり、ワイヤ送給装置3から定期的に溶接電源装置2に送信されるアーク溶接に関する情報(例えば、溶接電圧検出値VDと溶接電流検出値ID)や遠隔操作装置5から定期的に溶接電源装置2に送信される遠隔操作装置5のステータス情報などについては適用されない。
従って、例えば、第1の入力受付モードに設定されていても制御部22はワイヤ送給装置3から無線通信で送信される溶接電圧検出値VDと溶接電流検出値IDの情報などの入力を受け付け、それらの情報を表示部25に表示することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、作業者が操作部を操作して溶接電源装置2の制御部22にアーク溶接に関する情報を入力する場合、溶接電源装置2にワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5の両方が無線接続されている状態では、遠隔操作装置5の操作部54による情報の入力受付だけを許可し、溶接電源装置2にワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5のいずれか一方が無線接続されている状態では、無線接続されているワイヤ送給装置3の操作部35による情報の入力操作又は遠隔操作装置5の操作部54による情報の入力受付だけを許可し、溶接電源装置2の操作部24による情報の入力操作は、溶接電源装置2にワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5の両方が無線接続されていない場合にだけ入力受付を許可するようにしているので、作業者以外の人が作業者の操作している操作部とは異なる操作部を誤って操作して作業者の設定した溶接条件等が変更されることを防止することができる。
これにより、作業者は、溶接作業の開始から終了まで溶接条件等の設定や変更の操作を安心して行うことができる。
また、作業者が遠隔操作装置5の操作部54を操作して溶接作業を行っている場合、障害物などにより受信状況が悪化したり、電池51が消耗したりして溶接電源装置2との無線通信ができなくなったときには、表示部55に受信レベルや電池51の残容量が表示されるとともに、溶接電源装置2の制御部22の入力受付モードが自動的に第2の入力受付モード若しくは第3の入力受付モードに変更されるので、作業者は、溶接作業を中止することなく、例えば、ワイヤ送給装置3の操作部35を操作することにより、溶接作業を最後まで行うことができる。
また、本実施の形態によれば、従来のように溶接電源装置2に溶接条件等を入力する装置を溶接電源装置2とワイヤ送給装置3若しくは遠隔操作装置5との間で切り換えるためのスイッチなどの切換部材を設ける必要がないので、溶接電源装置2の部品点数の削減やコストの低減を図ることができる。
上記の実施形態では、制御部22がワイヤ送給装置3や遠隔操作装置5にID番号を含む無線接確認情報を送信し、ワイヤ送給装置3や遠隔操作装置5からの応答信号の有無によりワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5が無線接続されているか否かを判断していたが、溶接電源装置2とワイヤ送給装置3及び遠隔操作装置5との間で予め設定した照合番号を送受することによりワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5が無線接続されているか否かを判断するようにしてもよい。
具体的には、例えば、溶接電源装置2から所定のバイト位置に照合番号を含む無線接続確認情報をワイヤ送給装置3に送信し、ワイヤ送給装置3から同じバイト位置に照合番号を含む無線接続確認情報を返信させる。そして、溶接電源装置2は、返信された無線接続確認情報から照合番号を取得し、その照合番号が送信した照合番号と一致していれば、ワイヤ送給装置3は無線接続されていると判断し、一致していなければ、ワイヤ送給装置3は無線接続されていると判断する。遠隔操作装置5についても同様である。
上記の実施の形態では、溶接電源装置2とワイヤ送給装置3及び遠隔操作装置5との間を、無線LANを用いたネットワーク通信方式で相互に無線通信する構成について説明したが、溶接電源装置2とワイヤ送給装置3同士、溶接電源装置2と遠隔操作装置5同士をそれぞれ所定の送受信周波数で無線通信する構成にしてもよい。
このような構成にした場合、溶接電源装置2で、ワイヤ送給装置3が情報を送信するための送信周波数(溶接電源装置2では受信周波数)のキャリア信号や遠隔操作装置5が情報を送信するための送信周波数(溶接電源装置2では受信周波数)のキャリア信号を検出し、キャリア信号が出力されていない場合に、溶接電源装置2がワイヤ送給装置3若しくは遠隔操作装置5は無線接続がされていないと判断するようにしてもよい。
上記の実施の形態では、無線接続の確認を一定の期間毎に行うようにしているが、この期間は、可変であってもよい。例えば、0.01秒〜60秒の間で無線接続の確認処理の周期を可変にしてもよい。
上記の実施の形態では、溶接電源装置2にワイヤ送給装置3と遠隔操作装置5を無線通信により接続する構成の溶接装置1を例に説明したが、溶接装置1の構成は、図1の構成に限定されるものではない。
溶接電源装置2に無線通信機器を接続した構成を有する溶接装置としては、図示はしないが、例えば、ワイヤ送給装置3は有線で溶接電源装置2に接続され、遠隔操作装置5だけが無線通信によって溶接電源装置2に接続される構成の溶接装置がある。
また、遠隔操作装置5を有しておらず、溶接電源装置2にワイヤ送給装置3だけが無線通信により接続される構成の溶接装置もある。
また、図3に示すような溶接装置1Aもある。
図3に示す溶接装置1Aは、溶接トーチ41に遠隔操作装置5の機能を内蔵し、溶接電源装置2にワイヤ送給装置3と溶接トーチ4Aを無線通信により接続する構成である。溶接装置1Aの溶接トーチ4Aは、図1に示す溶接トーチ4に遠隔操作装置5内の電池51、制御部52、無線通信部53、操作部54及び表示部55を内蔵したものである。
なお、電池51に代えて溶接電源装置2から供給される電力を用いて制御部52、無線通信部53、操作部54及び表示部55を駆動する駆動電源を設けた構成でもよい。
また、トーチ機構部4Bは、溶接作業中にワイヤ送給装置3のワイヤ送給機構31から送給される溶接ワイヤWを繰り出す機構とガス供給装置6からガス電磁弁32を介して供給されるシールドガスをアークと溶接ワイヤWとに吹き付ける機構を行う部材である。
溶接トーチ4A内に追加された電池51、制御部52、無線通信部53、操作部54及び表示部55の各部については既に説明しているので、ここでは説明を省略する。
また、図3の構成において、ワイヤ送給装置3が溶接電源装置2に有線で接続され、溶接トーチ4Aだけが溶接電源装置2に無線通信により接続される構成の溶接装置もある。
また、図示はしないが、溶接トーチ4,4Aが溶接棒を装着するタイプの溶接装置では、ワイヤ送給装置3がなく、溶接電源装置2に遠隔操作装置5だけを無線通信により接続する構成が知られている。
これらの種々の溶接装置においても本発明を適用することができ、本実施の形態に係る溶接装置1,1Aと同様の作用、効果を奏することができる。
上記の実施の形態では、アーク溶接の溶接装置について説明したが、本発明は、溶接電源装置に1又は2以上の無線通信による遠隔操作機能を備えた装置が無線接続される構成を有するアーク溶接以外の溶接装置にも広く適用することができる。