JP2016145815A - 情報取得装置及び情報取得方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 テラヘルツ波を利用して被検体の情報を取得する情報取得装置において、生体試料の状態を判定する精度を向上する。【解決手段】 情報取得装置100であって、被検体230にテラヘルツ波を照射する照射部104と、被検体からのテラヘルツ波を検出する検出部107と、検出部の検出結果を用いて光学特性のスペクトルを取得するスペクトル取得部123と、生体組織を被検体として用いた場合の検出部の検出結果を用いてスペクトル取得部が取得した第1のスペクトルと純水を被検体として用いた場合の検出部の検出結果を用いてスペクトル取得部が取得した第2のスペクトルとを比較した比較結果、及び判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する判定部125と、を有し、前記判定基準は、複数の生体組織を測定することにより取得した複数のスペクトルと純水を測定することにより取得した少なくとも1つのスペクトルとを比較した結果を用いて取得される。【選択図】 図1
Description
本発明は、テラヘルツ波を用いて被検体の情報を取得する情報取得装置及び情報取得方法に関する。
テラヘルツ波は、30GHz以上30THz以下の範囲のうち、任意の周波数帯域の成分を有する電磁波である。近年、テラヘルツ波を用いた非破壊なセンシング技術が開発されている。この周波数帯の電磁波では、分子の結合状態などの物性を調べる分光技術等が開発されており、複数の成分が混合している固体や溶液、気体の成分判定、さらに異なる組織状態が混合している生体の組織判定への応用が期待されている。
水溶液の状態を判定する方法として、特許文献1は、水溶液中の結晶状の粒子等の有無や割合を判定する方法及び装置を開示している。特許文献1では、判定にテラヘルツ領域の吸収スペクトルを利用しており、水の吸収スペクトルを判定の基準として、水の吸収スペクトルと測定で得られたスペクトルとの任意の周波数における吸収率を比較している。
しかしながら、生体組織を判定対象とした場合、テラヘルツ領域における生体組織の周波数スペクトルでは、状態が異なっていてもスペクトルの差が小さいことがある。例えば、生体組織の正常組織部と異常組織部とでは、スペクトルの差が小さいだけでなく、スペクトルの形状や光学特性の値に個体差が現れる傾向がある。また、生体組織は領域により細胞の分布や構成が変化する不均一な物質であり、特許文献1で対象としている溶液の様に均一な物質ではない。そのため、特許文献1のように、基準とするスペクトルからの変化を取得しても、生体組織の状態の判定を十分に高い精度で行うことができないことがある。
本発明は係る課題を鑑みてなされたもので、テラヘルツ波を利用して被検体の情報を取得する情報取得装置において、生体試料の状態を判定する精度を向上することを目的とする。
本発明の一側面としての情報取得装置は、テラヘルツ波を用いて被検体の情報を取得する情報取得装置であって、前記被検体にテラヘルツ波を照射する照射部と、前記被検体からのテラヘルツ波を検出する検出部と、前記検出部の検出結果を用いて光学特性のスペクトルを取得するスペクトル取得部と、生体組織を前記被検体として用いた場合の前記検出部の検出結果を用いて前記スペクトル取得部が取得した第1のスペクトルと純水を前記被検体として用いた場合の前記検出部の検出結果を用いて前記スペクトル取得部が取得した第2のスペクトルとを比較した比較結果、及び判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する判定部と、を有し、前記判定基準は、複数の生体組織を測定することにより取得した複数のスペクトルと純水を測定することにより取得した少なくとも1つのスペクトルとを比較した結果を用いて取得されることを特徴とする。
本発明の一側面としての情報取得装置によれば、生体組織の状態の判定の精度を向上できる。
以降の実施形態では、生体組織の状態を判定する情報取得装置において、判定の精度を向上するための構成について述べる。具体的には、テラヘルツ波が照射された位置において生体組織が第1の状態であるか第2の状態であるか、を判定する。第1の状態、第2の状態は限定されないが、以降の実施形態では、生体組織に異常が無い正常組織部と、細胞にがん化等の異常が発生している異常組織部と、のそれぞれを第1の状態、第2の状態として状態の判定を行う例を説明する。このような判定に、純水のスペクトル(基準スペクトル)と測定で得られた生体組織のスペクトル(測定スペクトル)との比等の比較結果を用いる。
生体組織の状態の判定に基準スペクトルと測定スペクトルとの比を用いることが適している理由として、水が生体に多く含まれていることがあげられる。また、異なる状態である正常組織部と異常組織部とでは、水分量が異なることがあげられる。異常組織部では、酸素欠乏や栄養不足を補うために血管新生が盛んであるため、異常組織部の水分量は正常組織部と比較して多い傾向がある。テラヘルツ波は水分量に敏感であるため、このような水分量の違いの検出に適している。さらに、純水は一般的に入手しやすく、温度や湿度等が一定の環境下では物性が安定しているため、基準として用いることに適している。
なお、本明細書の「純水」は、不純物が少なく純度の高い水のことを指し、蒸留水やイオン交換水、逆浸透(Reverse Osmosis:RO)水、RO−EDI(Electrodeionization)水等を含む。純水の定義として一般的な規格はないが、好ましくは比抵抗が0.1MΩcm以上の水を純水と言う。また、後述の実施形態において基準スペクトルを取得するために用いる純水の状態は、測定スペクトルの取得に用いた被検体の状態に合わせることが望ましい。例えば、被検体に含まれる水分が液体状態であれば液体状態の純水のスペクトルを基準状態として用いる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の情報取得装置100(以下、「装置100」と呼ぶ)について、図1を参照して説明する。本実施形態では、装置100としてテラヘルツ波パルス(以下、「パルス波」と呼ぶ)を用いた時間領域分光(THz−TDS:THz Time―Domain Spectroscopy)装置を使用する。
第1の実施形態の情報取得装置100(以下、「装置100」と呼ぶ)について、図1を参照して説明する。本実施形態では、装置100としてテラヘルツ波パルス(以下、「パルス波」と呼ぶ)を用いた時間領域分光(THz−TDS:THz Time―Domain Spectroscopy)装置を使用する。
まず、装置100の構成について、図1を参照して説明する。図1は、装置100の構成図である。装置100は、光源101、分岐部102、レンズ103、112、ミラー対108、調整部130、ミラー111、照射部104、サンプル部105、放物面鏡106、検出部107、アンプ113、及びロックインアンプ114を有する。また、装置100は、制御部121、時間波形取得部122(以下、「波形取得部122」と呼ぶ)、スペクトル取得部123、選択部124、判定部125、画像形成部126及び記憶部127を有する。照射部104は、電源141と発生部142と放物面鏡143とを有する。
光源101は、超短パルス光を出力する部分である。超短パルス光は、パルス幅がフェムト秒オーダのパルス光を指す。本実施形態の光源101は、超短パルス光として、パルス幅が10フェムト秒以上100フェムト秒以下のフェムト秒パルスレーザ(以下、「レーザ」と呼ぶ)を出力する。光源101からのレーザは、分岐部102としてのハーフミラーで分岐され、一方はレンズ103により集束して発生部142に照射する。
発生部142は、レーザが入射するとパルス波を発生する部分である。本実施形態では、半導体膜に導体でアンテナを形成した光伝導素子を用いる。これに限らず、発生部142として、半導体基板や有機結晶の表面にレーザを照射する形態や、非線形結晶にレーザを導波させる形態の発生素子等を用いても良い。発生部142は、レーザの入力によりパルス波を発生させれば良く、この目的を実現できる既知の技術が適用できる。発生部142のバイアス電圧は電源141により変調されており、変調されたパルス波は放物面鏡143によりサンプル部105の被検体230に照射される。
サンプル部105は、被検体230を含むセル202、220等のサンプルを配置する部分である。不図示の放物面鏡等の組み合わせにより発生部142からのパルス波が被検体230に照射され、被検体230を透過した又は被検体230で反射したパルス波が放物面鏡106を介して検出部107に入射するように構成されている。被検体230を含むサンプルは、パルス波の照射位置を選択できる可動式のステージ上に配置する。可動式のステージ上にサンプルを配置することで、被検体上(被検体230上)におけるパルス波の照射領域(測定点)を適宜変更できる。
図2にサンプル部105の形態例を示す。本実施形態では、装置外で準備した被検体230を含むサンプルをサンプル部105に設置する。図2(a)は装置100が被検体230で反射したパルス波を検出する反射型の測定装置である場合のサンプル部105の断面の模式図である。図2(b)は装置100が被検体230を透過したパルス波を検出する透過型の測定装置である場合のサンプル部105の断面の模式図である。
装置100が反射型の測定装置である場合、サンプル部105は、可動式ステージ上に配置されている保持部201、205を有し、その保持部201、205上に、セル202を配置する。セル202の空間204は、被検体230を配置するための空間である。セル202は、空間204に配置された生体組織の乾燥や純水の蒸散及び流出を防ぐために蓋203により密閉される。セル202の材質は、テラヘルツ波を良く透過し、物性が安定で既知なものが良い。具体的には、石英基板や単結晶のシリコン板等が挙げられる。
テラヘルツ波は、図2(a)において、セル202の下側から照射され、セル202の窓部材の表面206と、セル202と被検体230との界面(サンプル面)207とのそれぞれで反射される。窓部材とは、サンプルにおける被検体230より先にパルス波が到達する面で、パルス波は窓部材を介して被検体230に照射される。
本実施形態の情報取得方法では、純水測定後に生体組織の測定を行う。純水測定後、異なるセル202に準備した生体組織を保持部201、205に配置して生体組織の測定を行う。または、純水が配置されているセル202と生体組織が配置されているセル202とを予め保持部201、205のそれぞれ異なる位置に設置しておき、可動式ステージにより純水測定後に生体組織の測定を行う。もしくは、純水測定後に、純水の入ったセル202を洗浄して同一のセル202に生体組織を配置して生体組織の測定を行っても良い。スペクトル取得過程におけるセル202の厚さ等の構成の違いによる影響を抑えるためには、セル202は同一のものを使用することがより望ましい。
装置100が透過型の測定装置の場合、セル220は、平板210、211とスペーサー212、213とネジ215、216とを有する。平板210、211及びスペーサー212、213で囲まれている空間214には被検体230が配置され、被検体230は平板210、211で挟まれる。被検体230の厚さはスペーサー212、213で調整され、ネジ215、216で固定される。これらは可動式ステージと連動して動くように、例えば不図示のサンプル保持部に設置する。反射型と同様に、平板210、211の材質は、テラヘルツ波を良く透過し、物性が安定で既知なものが良い。
パルス波は、図2(b)において、セル220の左右どちらかから照射される。本実施形態では、平板210を窓部材として、図2(b)におけるセル220に対して左側からパルス波が照射されるものとする。この場合、平板210と被検体230との界面217をサンプル面とする。
透過型の測定装置においても、被検体230を変更する際、平板210、211の厚さ等の構成の違いによるスペクトルへの影響を低減するために、同一の平板210、211を使用することが望ましい。また、被検体230の情報をより精度良く取得するためには、スペーサー212、213で調整される被検体230の厚さも重要である。そのため、生体組織または純水層内の多重反射波を利用して被検体230の厚さを推定する方法の適用、又は他の周波数の光等を利用して被検体230の厚さを推定する構成を有することが望ましい。また、装置100が透過型の測定装置に場合も、純水測定と生体組織測定とで異なる平板210、211を使用する場合は、不図示のサンプル保持部に予め両方準備しておき、純水の測定後に可動ステージにより生体組織の測定に切り替えても良い。
装置100は、純水測定と生体組織測定とでパルス波の焦点深度に対するサンプル面207、217の被検体230の深さ方向における位置や傾きが一定となるように調整可能な構成にすることが望ましい。これは、検出部107に光伝導素子を使用する場合、サンプル面207、217の深さ方向における位置や傾きの違いが、周波数に依存した影響をスペクトルに与えるためである。本実施形態のように、生体組織を測定して取得した測定スペクトルと純水を測定して取得した基準スペクトルとを用いる場合、対象となる組織判定に影響がない程度に、被検体230の深さ方向の位置や傾きを調整することが重要である。
なお、パルス波の焦点深度とは、波動光学的な焦点深度であり、照射部104からのパルス波の平行伝搬領域に相当する。平行伝搬領域は、照射部104からのパルス波のうち、パルス波が略平行で伝播しているとみなせる領域である。ここで、「焦点深度」は、照射部104がパルス波のビーム径を絞った場合に、最も小さいビーム径をwとすると、照射部104からのパルス波のビーム径がw×√2以下になる範囲と定義する。
テラヘルツ波の平行伝搬領域に対するサンプル面の位置や傾きが純水測定と生体組織測定においてμmレベルで一致するよう、純水測定時の位置や傾きを記憶し、生体組織の測定の際に参照して位置や傾きを可動式ステージにより調整する構成が望ましい。被検体230を含むサンプルの位置や傾きの調整は、自動調整でもよいし、ユーザが手動で調整を行ってもよい。また、自動調整と手動調整とをどちらも実施可能な構成でもよい。
装置100が反射型の測定装置の場合、サンプル面207の位置や傾きは、サンプル面207上の複数の測定点にパルス波を照射して測定した複数の時間波形のピーク位置等から取得できる。例えば、サンプル面207の中心から等距離で横方向に2点、縦方向に2点の時間波形を取得すれば、サンプル面207からの反射波のピーク位置から算出できる高さの違いから傾きが分かる。純水測定と生体組織測定において、各測定点におけるピーク位置が一致するように生体組織測定前に調整すれば良い。
装置100が透過型の測定装置の場合、平板210、211内の多重反射波等からサンプル面217の傾きが分かる。例えば、平板210、211の厚さと物性が既知であれば、平板210、211と被検体230とを透過した透過波と、平板210、211内の多重反射波の時間波形上のピーク間の時間差は予測できる。パルス波の平行伝搬領域に対してセル220に傾きがある場合、傾きが大きいほどパルス波が平板210又は平板211を伝搬する距離が長くなり、予測されるピーク間の時間差よりも、観測されるピーク間の時間差が大きくなる。よって、純水測定時のピーク間の時間差と生体組織測定時のピーク間の時間差とが一致するように、生体組織測定前にサンプルの位置や傾きを調整すれば良い。
分岐部102で分岐されたレーザの他方は、位置が固定されているミラー対108と調整部130、ミラー111、レンズ112を介して、検出部107に照射される。調整部130は、レーザを反射して折り返すミラー対110と、ミラー対110が搭載されている可動ステージ109と、を有する。調整部130は、パルス波が検出部107で検出されるタイミングを調整する。具体的には、可動ステージ109を移動することによりレーザの光路長を変更する。その結果、検出部107に入力されるレーザと、発生部142に入力されるレーザとの相対的な光路長を変化させる。
本実施形態では、光源101と検出部107との間に調整部130を設け、光源101から検出部107に到達するまでのレーザの光路長を調整する。この方法に限らず、発生部142に入力されるレーザの伝搬経路上に調整部130を設け、発生部142に入力されるレーザの光路長を変化させてもよい。また、光路長を調整する方法として、伝播経路中の屈折率等を変化させることで光路長を変化させる方法等も適用できる。
検出部107は、パルス波とレーザとの入射によりパルス波を検出する。詳細には、検出部107は、レーザが入射する際に到達するパルス波の電界強度の瞬間値を検出する。本実施形態では、検出部107として光伝導素子を用いる。検出部107は、レーザの入射によりパルス波を検出できれば良く、この目的を実現できる既知の技術が適用できる。
検出部107の検出結果であるパルス波による信号は、信号強度を増幅するアンプ113、ノイズを削減して信号精度を向上するロックインアンプ114を通して、電源141の変調と同相の成分が抽出される。波形取得部122、スペクトル取得部123、選択部124、判定部125、画像形成部126を経て画像情報などの情報に変換される。
なお、装置100は、CPU、メモリ、記憶デバイス等を備えたコンピュータ(不図示)を有し、このコンピュータが、制御部121、波形取得部122、スペクトル取得部123、選択部124、判定部125、及び、画像形成部126等の機能を有する。不図示のコンピュータは、記憶部127を有し、検出部107の検出結果やテラヘルツ波の時間波形などを記憶する。また、記憶部127には、図3のフローチャートの各ステップに対応するプログラムが記憶されており、CPUがそのプログラムを読み込んで実行することで各処理が行われる。図3のフローチャートの各ステップについては後述する。
制御部121は、装置100の各構成を制御する。制御部121は、主に、可動ステージ109及びサンプル部105のステージの駆動を制御する。
波形取得部122は、テラヘルツ波の時間波形を取得する。具体的には、波形取得部122は、可動ステージ109及びミラー対110を含む調整部130による光路長の調整量と検出部107の検出結果とを用いて時間波形を取得する。
スペクトル取得部123は、波形取得部122で取得した時間波形を用いて被検体230の光学特性を取得して、横軸を周波数とした光学特性のスペクトルを取得する。また、スペクトル取得部123は、被検体230における異なる複数の位置を測定して得られた複数の測定結果又は被検体230の同じ位置において複数回測定して得られた複数の測定結果から標準偏差σを算出する。本実施形態では、光学特性のスペクトルとして、横軸が周波数の屈折率スペクトルまたは吸収係数スペクトルを用いる。なお、本明細書の光学特性は、被検体230の複素振幅反射率、複素屈折率、複素誘電率、反射率、屈折率、吸収係数、誘電率、電気伝導率等を含むと定義する。
ここで、スペクトル取得部123におけるスペクトル取得の方法について、説明する。波形取得部122が取得した時間波形には、セル202、220の窓部材の表(おもて)面で反射したテラへルツ波(第1の反射波)のピークと、サンプル面207、217で反射したテラヘルツ波(第2の反射波)のピークと、が少なくとも含まれている。そこでまず、スペクトル取得部123は、時間波形から第1の反射波のみを含む第1の領域と第2の反射波のみを含む第2の領域とを切り出す。時間波形から切り出す場合は、可能な限り他のピークが含まれず、且つ横軸である時間の幅を長くすることが望ましい。
スペクトル取得部123は、切り出した第1の領域及び第2の領域のそれぞれはフーリエ変換することによって横軸を周波数とする振幅スペクトルが取得できる。第1の時間波形から取得した振幅スペクトルは、参照スペクトル(リファレンス)として用いる。すなわち、第1の時間波形から取得した振幅スペクトルと第2の時間波形から取得した振幅スペクトルとの比を取得して、サンプル面の振幅スペクトルを取得する。取得したスペクトルを用いて、被検体の光学特性のスペクトルを取得することができる。各光学特性のスペクトルの取得方法の詳細は、P.U.Jepsen et al.,Optics Letters,(2007),15,14717.に記載されている。
スペクトル取得部123で取得したスペクトルは、選択部124に伝送され、判定に適した周波数範囲の選択に用いられる。抽出する周波数範囲の決定には、先に取得した標準偏差σを用いる。詳細については後述する。選択部124で選択された周波数範囲は、判定部125に伝送される。
判定部125は、時間波形及び屈折率スペクトルまたは吸収係数スペクトル等を解析して被検体230としての生体組織の状態を判定する。具体的には、判定部125は、測定スペクトルと基準スペクトルとを比較した比較結果を用いて、各測定点における被検体230の状態を判定する。例えば、生体組織に異常が無い正常組織部と、細胞にがん化等の異常が発生している異常組織部と、を判定(判別)する。このとき、選択部124で選択した周波数範囲における比較結果を用いて生体組織の状態を判別することが望ましい。情報取得方法(判定方法)の詳細については後述する。
画像形成部126は、サンプル部105のステージを走査することによって変更されたパルス波の照射位置の情報と、スペクトル取得部123で取得した光学特性の値又は判定部125の判定結果と、を用いて画像を生成する。上述の各構成で取得したパルス波の時間波形及びスペクトル、被検体230の情報、画像等は、コンピュータと接続されている不図示の表示部に必要に応じて表示することができる。
以上が、本実施形態の装置100の構成である。ここからは、装置100を用いて、生体組織の状態を判定する情報取得方法について図3を参照して説明する。図3は、装置100を用いて被検体230の状態を判定する情報取得方法のフローチャートである。なお、以降の説明では、装置100は反射型の測定装置であるものとして説明する。
初めに、装置100は、被検体230として純水で反射したパルス波の測定を行う(S301)。純水は、測定直前に純水発生装置から採取したものを用い、散乱等の要因となる空気泡が純水に混入しないようにシリンジ等を用いてセル202に注入する。次に、装置100は、純水測定と同じセル202を洗浄したもの、もしくは異なるセル202を用いて準備した生体組織で反射したパルス波の測定を行う(S302)。生体組織は、空気泡等が混入しないようにセル202に密着させる。
ステップS301の純水測定における各測定点の座標と、ステップS302の生体組織測定における各測定点の座標とは、同一であることが望ましい。生体組織で状態を判定したい測定点が複数ある場合は、純水も生体組織の各測定点と同一座標で信号取得測定をしておくとよい。これは、テラヘルツ信号がテラヘルツ波の集光点に対する位置や傾きに敏感であるため、判定対象である生体組織と判定精度を向上させるための比較対象である純水を同一条件で測定することで測定精度を向上させるためである。生体組織全体の2次元測定を行いイメージング像を得る場合は、純水の2次元測定を行うことが好ましい。
純水測定と生体組織測定では、測定精度上は同じセル202を用いることが望ましいが、そのためにはセル202の洗浄が必要になるため、測定時間や手間を考慮して純水測定と生体組織測定とで異なるセル202を使用できる。異なるセル202を使用する場合は、純水の測定と生体組織の測定で測定座標を同一にしたとしても、セル202の窓部材の厚さ分布の違いが、得られるスペクトルに影響を与える恐れがある。そのため、使用するセル全ての窓部材の厚さ分布を予め機械的または光学的に取得して記憶部127に記憶しておき、スペクトル取得の際に参照するとよい。
次に、波形取得部122及びスペクトル取得部123が、得られた純水と生体組織それぞれのパルス波を検出部107で検出した検出結果を用いて光学特性のスペクトルを取得する。具体的には、まず、波形取得部122が、検出部107の検出結果を用いて時間波形を取得する。続いて、スペクトル取得部123が、時間波形をフーリエ変換及び解析を行うことで周波数領域の光学特性のスペクトルを取得する(S303)。セル202の表面206側からパルス波を照射して得られる反射パルス波の時間波形には、セル202の表面206及びサンプル面207のそれぞれで反射したパルス波が現れる。これらを分離して各々フーリエ変換して解析することで、純水または生体組織について複素屈折率等の光学特性のスペクトル情報となる。
次に、判定部125が、基準スペクトルと測定スペクトルとの比較を行う(S304)。比較手段として、例えば、基準スペクトルと測定スペクトルの複数の周波数それぞれについて差または比をとる、もしくはさらに各種の統計解析手段を用いることもできる。
スペクトルの各周波数における差または比をとる等の比較を行うことは、安定な純水と比較することで測定誤差や装置誤差による影響を低減する点、組織状態毎の光学特性の差異要因となる水と比較する点から有効である。しかし、被検体230としての生体組織の種類によっては、状態が異なる組織のスペクトル間の差異が小さく、個体差によるデータのばらつきが生じやすいため、より精度良く判定を行うために統計解析の適用が有効な場合がある。例えば、多変量解析等を用いれば、スペクトルにおける微小な違いを統計的に抽出できる。比較手段は、判定対象により適当なものを選択する。
ここで、異常組織部のスペクトルと正常組織部のスペクトルについて、図4を参照して説明する。図4(a)は、純水、異常組織部及び正常組織部それぞれで取得した屈折率スペクトルの概略図である。上述したように、異常組織部では正常組織部と比較して水分量が多い傾向がある。そのため、異常組織部のスペクトルは正常組織部のスペクトルと比較して純水のスペクトルにより近くなる。具体的には、純水、異常組織部、正常組織部の順に屈折率が高くなる。
そのため、純水のスペクトルと生体組織のスペクトルの差をとった場合、異常組織部では正常組織部と比較して値が0に近くなる。また、純水のスペクトルと生体組織のスペクトルとの比をとった場合、図4(b)に示したように異常組織部では正常組織部と比較して値が1に近くなる。また、複数の異なる光学特性のスペクトルを利用して比較することもできる。例として、図5(a)に、ある周波数又はある周波数帯域における屈折率の平均値を横軸、吸収係数の平均値を縦軸とした関係図を示す。屈折率、吸収係数ともに純水、異常組織部、正常組織部の順に高いため、図5(a)に示したような関係となる。測定スペクトルと基準スペクトルとの差または比をとる方法で比較を行った場合、図5(b)のような傾向が得られる。
上述したように、ステップS304における測定スペクトルと基準スペクトルとの比較には、各種の統計解析手段を用いることができる。統計解析手段の例として、主成分分析があげられる。主成分分析では、スペクトルの様な多数の変数を有する量的なデータを、少数個の無相関な合成変数に縮約して分析を行う。テラヘルツ領域における生体組織の測定スペクトルは、一見すると単調な変化しか持たない。主成分分析を行って得た合成変数(以下、ばらつきの大きな順に第一主成分、第二主成分等と称する)のうち主要なものに着目すれば、異なる状態を分離するための指標とすることができる。
例えば、異常組織部、正常組織部及び純水のスペクトル情報を主成分分析で得た各主成分を軸としてプロットした、いわゆるスコアプロット上で表すと、各組織のプロット群同士は大まかに分離される。このとき、異常組織部のスコアのプロット位置は、正常組織部のスコアのプロット位置と比較して純水のスコアのプロット位置と近い(図6(a))。そのため、スコアプロット上の測定スペクトルそれぞれに関するスコアのプロット位置と基準スペクトルそれぞれに関するスコアのプロット位置との近さ等を数値化して純水と生体組織のデータを比較することができる。
生体組織の測定スペクトルについて、純水スペクトルとの差または比をとった後に主成分分析をすることにより、図6(b)に示したような関係図を取得することも可能である。以上のように、ステップS304では、測定スペクトルと純水のスペクトルとの比または差、もしくは、スペクトルの関係図、もしくは主成分分析等の統計解析結果等を利用して、純水スペクトル(基準スペクトル)と生体組織の測定スペクトルとの比較を行う。
次に、選択部124が判定に有効な周波数範囲を決定し(S305)、判定部125が、その周波数範囲における比較結果を抽出する(S306)。判定に有効な周波数範囲とは、スペクトル取得部123で得られる標準偏差σが、異なる状態の判定に必要なスペクトルの差異(異なる複数の状態毎に取得したスペクトルの平均値同士の差異)Δの1/2倍以下、より望ましくは1/6倍以下となる範囲である。
例えば、屈折率スペクトルで差異Δとして0.03が必要な場合、標準偏差σが0.015、より望ましくは0.005である周波数範囲が判定に有効ということである。既述のように、テラヘルツ領域における生体組織のスペクトルでは、正常組織部と異常組織部のそれぞれのスペクトル間の差異Δが小さい。屈折率差を例とすると、差異Δは最少で0.02程度である。0.02の差異を有する異なる2つのスペクトルを見分ける場合、各スペクトルの測定の標準偏差σは、少なくともその半分以下、つまり0.01以下であると良い。
また、測定の際にセル202、220のような保持部材を用いる場合、検出部107で検出されるパルス波は、純水や生体組織などの被検体230と保持部材とを介したパルス波である。そのため、テラヘルツ波の透過性が高い材質を用いての保持部材を構成していても、検出部107に入射するパルス波は元のテラヘルツ波が減衰したものとなる。これらを考慮すると、装置100の取得信号のSN比はある程度高い必要があり、これを満たす周波数範囲は、装置100の構成、調整状況及び測定環境等の測定条件により変化しやすい。例えば、現実的な取得時間として数10秒以下で1つの信号を得るために積算回数を10回とした場合、振幅スペクトルのSN比としては100程度必要となる。そのため、異なる状態の微小な差異をより精度良く観測するためには、上記条件を満たす周波数範囲内の比較結果を用いることが必要となる。
また、さらに観測したい領域の広さに応じて周波数範囲を抽出することもできる。装置100では、発生するパルス波は、複数の異なる周波数成分を含む広帯域なテラヘルツ波である。このようなパルス波を集束して被検体230に照射する場合、周波数によって回折限界が異なるため、周波数に応じてそのビーム径が異なることになる。すなわち、パルス波は、異なるビーム径を有する複数の周波数成分を含むテラヘルツ波である。そのため、観測したい領域の広さ、またはイメージング測定における測定ピッチに合わせて周波数範囲を設定できる。生体組織は領域により細胞の分布や構造等が変化する不均一な系であるため、これらを考慮した周波数設定が重要な場合もある。
以上のように、判定部125は、取得された測定スペクトルを基準スペクトルと比較結果のうち、有効な周波数範囲の1つまたは複数の周波数における比較結果のみを抽出する。以降の説明では、判別部125が抽出した比較結果を、比較値と呼ぶ。
なお、本実施形態の情報取得方法は図3のフローチャートに示した方法に限らず、適宜変更できる。例えば、図3のフローチャートでは、判定部125が比較を行った(S304)後に、選択部124が周波数範囲を選択しているが、ステップS304の前に、選択部124が周波数範囲を決定してもよい。その後、判定部125が、その周波数範囲内でステップS304の比較の処理を行ってもよい。また、判定に有効な周波数範囲が予め分かっている場合には、ステップS305を省略できる。
ステップS307では、判定部125が、予め取得しておいたデータベースを参照して判定基準を取得し、取得した判定基準とステップS306で取得した比較値とを照合する。
データベースには、装置100又は異なる情報取得装置を用いて、図3のフローチャートのステップS301からステップS303又はステップS304までと同様の手順で取得した複数のスペクトル又は時間波形等のデータが蓄積されている。具体的には、異なる固体から取得した判定対象となり得る様々な臓器について、状態が既知な様々な生体組織のデータを取得し、各生体組織を測定した測定条件で測定した純水のデータと比較した結果を生体組織の臓器、状態に従って分類する。
測定条件とは、測定装置と、測定環境及び測定における測定機器の設定条件と、を含む。純水のデータとしてのスペクトルは、各生体組織を測定した測定条件で測定される。測定条件は完全に同じでなくても良く、好ましくは、測定装置が同じで、測定環境、測定機器の設定条件及びサンプルの設置状態等が略同じである。測定環境としては、測定時の温度の違いが±1℃以内、装置内のパルス波の伝搬経路における湿度の違いは±0.1%以内とする。測定機器の設定条件としては、調整部130の掃引速度及び掃引ステップ幅等の設定、ロックインアンプの設定等を同じにすることが重要である。サンプルの設置状態としては、既述のように、パルス波の平行伝搬領域に対するサンプル面の位置や傾きが純水測定と生体組織測定においてμmレベルで略一致させ、同一の測定座標を測定するように操作することが望ましい。
上述のように、生体組織はスペクトルの形状や光学特性の値に個体差が表れる傾向がある。そのため、均一な物質で形成されたサンプルとは異なり、信頼性の高いデータベースを作成するためには複数の異なる個体から取得した同一の臓器及び同一の状態のデータを取得した上で、それらの平均値等を蓄積する必要がある。複数の異なる個体のデータを取得する場合、各個体で、測定に用いる装置及び測定環境等の測定条件が異なることとなり、得られる各個体のデータには測定誤差や装置間誤差が含まれる。テラヘルツ領域における生体組織の正常組織部と異常組織部のスペクトル差は小さい傾向があるため、各個体のデータに測定誤差や装置間誤差が含まれると、組織間のスペクトル差が正しく観測されない可能性がある。
そこで、本実施形態では、均一で安定な物質である純水のデータと各個体の生体組織のデータとを同じ測定条件で取得し、純水のデータと生体組織のデータとの比較を行う。純水との比較結果を用いて形成された生体組織のデータベースは、異なる測定条件で測定した場合の測定誤差や装置間誤差が低減されるため、純水との比較を行わない場合と比べてデータベースの精度が向上する。結果として、そのデータベースを利用した生体組織の状態の判定の精度を向上できる。
判定基準は、データベースを参照して取得した基準値又は基準線のことで、ステップS304における比較手法に応じて必要な判定基準を用いればよい。判定部125は、既知の第1の状態の生体組織のスペクトルと純水のスペクトルとを比較した結果と、既知の第2の状態の生体組織のスペクトルと純水のスペクトルとを比較した結果と、の間を、判定基準として用いる。
比較値が周波数領域のスペクトルの差または比の場合は、判定部125は、まず、データベースから生体組織の各状態におけるスペクトルの差または比の平均値と標準偏差σとを求める。そして、判定したい異なる状態毎の平均値のうち最も高い平均値と標準偏差σとの差と、及び最も低い平均値と標準偏差σとの和を算出し、それらの値の中間値を基準値とする。図4(b)のように、純水のスペクトルとの比から判定する場合、異常組織部の平均値と標準偏差σとの差と、正常組織部の平均値と標準偏差σとの和と、の中間値が基準値となる。判定部125は、比較値が基準値よりも値が大きければ異常組織部、値が小さければ正常組織部と判定する(S308、S309)。
判定するための比較値が、図5(a)に示したような異なる光学特性を縦軸、横軸にした関係図である場合、まず、比較値を得た際の周波数範囲において、データベースから生体組織の各状態におけるスペクトルの差または比の平均値を得る。その後、図5(b)のように、関係図上に判定のための基準線をひく。判定部125は、比較値が関係図上で異常組織部側であれば異常組織部、正常組織側であれば正常組織部と判定する(S308、S309)。
判定するための比較値が主成分分析により得られたスコアの場合、まず、データベースにある判定したい異なる状態の全データから1つのスコアプロットを作成し、図6(b)のようにスコアプロット上に判定のための基準線をひく。判定部125は、比較値がスコアプロット上で異常組織部側であれば異常組織部、正常組織側であれば正常組織部と判定する(S308、S309)。
この判定手法では、純水との比較により測定誤差や装置間誤差による影響が低減され精度が向上したデータベースを参照して得られる基準値を利用する。さらに純水は、正常組織部のスペクトルと異常組織部のスペクトルとの間の差の要因となるため、純水との比較により差が明確になる。そのため、この判定方法では純水との比較なしで判定する場合よりも判定精度が向上する。
生体組織全体のイメージング測定であれば、全測定点について判定部125が図3のフローチャートに沿った判定を行う。画像形成部126は、その結果に基づいて全測定点を各々の状態に対応した色で表示するようにすることで、生体組織の状態ごとに色分けした画像を得る。
以上、生体組織の状態の情報取得方法について、図3を参照して説明した。しかし、スペクトルを用いた情報取得方法に限らず、装置100で取得した時間波形を判定に利用しても良い。時間波形を用いた場合の情報取得方法のフローチャートを図13に示す。
初めに、検出部107は、純水及び生体組織それぞれからのパルス波の検出を行い(S1301、S1302)、波形取得部122が時間波形を取得する(S1303)。ここで、被検体230が純水の場合の検出部107の検出結果を用いて取得した時間波形を「基準波形」、被検体230が生体組織の場合の検出部107の検出結果を用いて取得した時間波形を「測定波形」と呼ぶ。次に、測定中のパルス波信号の強度変化の影響を低減し測定精度を確保するため、セル202表面からのパルス波強度によりサンプル面207からのパルス波の強度を規格化する(S1304)。
次に、時間波形上に存在する複数のパルス波から、サンプル面207からの反射波を取り出す(S1305)。続いて、測定波形と基準波形とを比較し(S1306)、例えば差分等の比較結果を取得する(S1307)。その後、データベースを参照して判定基準を取得し、ステップS1307で取得した比較結果と判定基準とを照合する(S1308)。比較の処理で差分をとった場合は、各臓器の各状態における基準値は、時間波形差分の平均値と標準偏差σとで表される。ステップS1307で得られた比較値が、正常組織の平均値±標準偏差σの範囲であれば正常組織、異常組織の平均値±標準偏差σの範囲であれば異常組織と判定される(S1309、S1310)。
装置100は、データベースに記憶されている、複数の異なる生体組織を測定して取得したスペクトル又は時間波形と、各生体組織と同じ測定条件で純水を測定して取得したスペクトル又は時間波形との比較結果を用いて、判定基準を決定する。そして、生体組織の測定によって得られた測定スペクトル又は測定波形と、純水の測定によって得られた基準スペクトル又は基準波形との比較結果、及び上述の判定基準を用いて生体組織の状態の判定を行う。
装置100によれば、純水を測定して得られた基準スペクトル又は基準波形との比較を行わない場合と比較して、生体組織の状態の判定の精度を向上できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、純水測定と生体組織測定とで、サンプル部105に配置するサンプルを置き換える、または可動式ステージで位置を切り替える形態であった。置き換える場合は、同一のセル202を用いた場合であっても、置き方によりパルス波に対するサンプル面207の位置や傾きが変わる可能性がある。その結果、純水と生体組織で測定状態が異なることとなり、正しい比較値が得られなくなることがある。また、可動式ステージで位置を切り替える場合は、純水測定と生体組織測定とでセル202が異なることになる。その結果、スペクトル取得過程で、セル202の窓部材の厚さ違い等による解析誤差が生じ、正しい比較値が得られなくなる可能性がある。これは、セル220を用いる透過型の測定装置でも同様である。
第1の実施形態は、純水測定と生体組織測定とで、サンプル部105に配置するサンプルを置き換える、または可動式ステージで位置を切り替える形態であった。置き換える場合は、同一のセル202を用いた場合であっても、置き方によりパルス波に対するサンプル面207の位置や傾きが変わる可能性がある。その結果、純水と生体組織で測定状態が異なることとなり、正しい比較値が得られなくなることがある。また、可動式ステージで位置を切り替える場合は、純水測定と生体組織測定とでセル202が異なることになる。その結果、スペクトル取得過程で、セル202の窓部材の厚さ違い等による解析誤差が生じ、正しい比較値が得られなくなる可能性がある。これは、セル220を用いる透過型の測定装置でも同様である。
本実施形態では、これらを改善し、置き換えや切り替えなしで同一のセルで純水と生体組織を測定できる構成を有する。具体的には、本実施形態の情報取得装置は、装置100のサンプル部105に代わるサンプル部701と、純水供給部702と、を有する。図7に、本実施形態のサンプル部701とその周辺の構成を示す。情報取得方法は第1の実施形態と同様である。
図8に本実施形態のサンプル部701における反射型のセル802の一例を示す。第1の実施形態と同様に、セル802は、生体組織または純水等の被検体230を設置する空間804が設けられており、このセル802を可動式ステージと連動して動く保持部801、805上に固定して配置する形態である。セル802は、生体組織の乾燥や、純水の蒸散や流出を防ぐために蓋803により密閉される。セル802の材質は、テラヘルツ波を良く透過し、物性が安定で既知なものが好ましい。具体的には、石英基板や単結晶のシリコン板等が挙げられる。パルス波は、図8の下側からセル802に照射され、セル802表面と、セル802と被検体230との界面で反射される。
セル802は、純水供給部702と純水循環用の供給線703と回収線704とで接続されている。純水供給部702は、純水を格納するタンク等の容器である。この構造により、純水の測定を行う際は空間804に供給線703から純水を注入して純水の測定を行い、純水測定後は回収線704を利用することで、セル802の置き換えや切り替えを行わなくても純水を回収できる。
生体組織を配置する前に、蓋803を開放して放置する、もしくは供給線703と回収線704から乾燥空気等を流すことにより空間804を乾燥させ純水の残存をなくす。乾燥空気等を流す形態とする場合は、図7の供給線703と回収線704の両方、もしくはどちらか一方に乾燥空気発生器等につながる供給線を接続し、純水を循環させる場合と乾燥空気等を供給させる場合とで配線を切り替えられるようにする。乾燥を確認できれば、生体組織を空間804内にセル802密着するように配置し、蓋803で密閉する。このように、生体組織をセル802に配置した状態で生体組織の測定を行い、図3に示したフローチャートに従って判定を行う。
セル802は保持部801、805に固定された状態であるが、生体組織の測定後は洗浄する必要があるため、保持具から取り外すことができる。保持部801、805の周囲に有機化合物を分解する紫外線オゾン洗浄が可能な高密度紫外線ランプを設置する等、洗浄機構を組み込んでも良い。洗浄機構を組み込めば、セル802を固定したまま測定する生体組織を変更することができ、セル802の置き換えによる測定精度への影響を低減できる。
本実施形態の情報取得装置でも、純水を測定して得られた基準スペクトル又は基準波形との比較を行わない場合と比較して、生体組織の状態の判定の精度を向上できる。
また、本実施形態では、純水供給部702を設けて純水循環機構を有する構成とすることで、セル802の置き換えを行なわずに、純水の測定と生体組織の測定とを同一のセルを用いて実施できる。そのため、パルス波に対するサンプル面の位置や傾き等、測定結果に影響が大きい条件を固定できる。これにより、判定におけるステップS306で取得する比較値の精度を向上できる。また、データベースを構成するためのデータの測定においても、同様の形態の情報取得装置を用いれば、判定の精度を向上できる。
なお、例として反射型を挙げたが、透過型の形態でも良い。透過型においても、純水と生体組織で同一のセル、パルス波に対するサンプル面の位置や傾き等の条件が固定できることで比較値の精度を向上させ、判定の精度が向上する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態の情報取得装置900(以下、「装置900」と呼ぶ)について図9を用いて説明する。第1、第2の実施形態の装置100は、パルス波を用いてテラヘルツ波の時間波形を取得していたのに対し、装置900は、テラヘルツ波の連続波を用いて測定を行う。また、装置900では、異なる複数の周波数の連続波をそれぞれ照射して測定を行うため、時間波形を取得しない。そのため、第1の実施形態の情報取得方法のフローチャートのステップS303においてスペクトルを取得する方法が異なる。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。装置900も、図3のフローチャートの各ステップに対応するプログラムが記憶されている記憶部127を有しており、CPUがそのプログラムを読み込んで実行することで各処理が行われる。
第3の実施形態の情報取得装置900(以下、「装置900」と呼ぶ)について図9を用いて説明する。第1、第2の実施形態の装置100は、パルス波を用いてテラヘルツ波の時間波形を取得していたのに対し、装置900は、テラヘルツ波の連続波を用いて測定を行う。また、装置900では、異なる複数の周波数の連続波をそれぞれ照射して測定を行うため、時間波形を取得しない。そのため、第1の実施形態の情報取得方法のフローチャートのステップS303においてスペクトルを取得する方法が異なる。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。なお、第1の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。装置900も、図3のフローチャートの各ステップに対応するプログラムが記憶されている記憶部127を有しており、CPUがそのプログラムを読み込んで実行することで各処理が行われる。
図9は、本実施形態の情報取得装置の照射部と検出部の構成図である。連続波を出力する光源(連続波光源)901から発生したテラヘルツ波の連続波は、サンプル部902に配置されている被検体230を含むサンプルに照射される。その後、サンプルを透過又はサンプルで反射したテラヘルツ波を検出部(検出器)903で検出する。サンプル部902は、第1の実施形態の様な置き換え、切り替え形式、または第2の実施形態の様な純水循環機構を含む形式のどちらでも良い。
テラヘルツ波の連続波を発生する光源901としては、共鳴トンネルダイオード発振器や量子カスケードレーザなどがある。検出器903としては、CMOS型やショットキー型などが挙げられる。
本実施形態でも、第1、第2の実施形態と同様に図3に示したフローチャートに従い生体組織の判定を行う。光源901から出力されるテラヘルツ波の周波数を変更する、または、異なる周波数のテラヘルツ波を発生する光源901を複数用いて測定を行う。ステップS301の純水測定とステップS302の生体組織測定とのそれぞれで取得されるテラヘルツ信号は、ある周波数における連続波であるため、ステップS303におけるスペクトルの取得では、時間波形を用いずにスペクトルを取得できる。測定に用いるテラヘルツ波の周波数は、ステップS305で決定される周波数範囲の条件を満たすように設定する。
連続波光源の場合、時間領域におけるパルス波形が取得できないため、サンプルセルや平板で囲まれた純水または生体組織のみの情報を時間波形上で分離することはできない。得られるスペクトル情報から純水または生体組織のみの情報を分離するためには、サンプルセルまたは平板のみを測定した測定結果をリファレンスとして差し引くことが必要である。
第1、第2の実施形態では、測定に用いるテラヘルツ波は、複数の異なる周波数成分を含む広帯域なテラヘルツ波である。そのため、発生する広帯域なテラヘルツ波をなるべく多く検出できるように測定条件を固定する必要があった。特に焦点深度、ビーム径がより小さくなる高周波側の周波数成分の検出には、サンプル面に照射されたテラヘルツ波に対するサンプル面の位置や傾きが大きく影響を与える。広帯域なテラヘルツ波を一度に検出する場合、より条件の厳しい高周波側に測定条件を合わせる必要がある。しかし、連続波光源の場合、一度に全周波数帯域を検出する必要がないため、各周波数の測定で最適な測定条件であれば良い。ステップS305で抽出する周波数範囲を低周波側に限定するのであれば、THz−TDS装置と比較して測定準備における調整の負担が軽減され得る。
以上、本実施形態の装置900及びそれを用いた情報取得方法によれば、純水を測定して得られた基準スペクトル又は基準波形との比較を行わない場合と比較して、生体組織の状態の判定の精度を向上できる。
(実施例1)
実施例1として、第1の実施形態の装置100について、より具体的に説明する。本実施例では、測定する純水は超純水発生装置から採取した比抵抗が18.2MΩcmのものを用いる。生体組織はSprague−Dawleyラット(以下、単に「ラット」と呼ぶ)の脳生組織を用いる。サンプルセルの材質はz−cut石英である。ここでは、屈折率スペクトルの比をとることで純水と生体組織の比較値を得る例について記述する。抽出した周波数範囲は0.8THzから1.2THzであり、この領域で0.02以上の屈折率差が区別可能である。
実施例1として、第1の実施形態の装置100について、より具体的に説明する。本実施例では、測定する純水は超純水発生装置から採取した比抵抗が18.2MΩcmのものを用いる。生体組織はSprague−Dawleyラット(以下、単に「ラット」と呼ぶ)の脳生組織を用いる。サンプルセルの材質はz−cut石英である。ここでは、屈折率スペクトルの比をとることで純水と生体組織の比較値を得る例について記述する。抽出した周波数範囲は0.8THzから1.2THzであり、この領域で0.02以上の屈折率差が区別可能である。
図10(a)は、第1の実施形態の装置構成で測定した、異なるラット3個体A、B、及びCそれぞれの脳の正常組織領域における屈折率スペクトルである。図10(b)は、各ラットA、B及びCそれぞれの脳の腫瘍組織領域における屈折率スペクトルである。各スペクトルは各領域の異なる位置5点を測定した結果の平均値を示している。測定された5点は、各領域の中心点1点と、中心点から上下左右に250μmの点である。また、図10(c)は、ラット3個体A、B、及びCそれぞれの生体組織の測定を行う前に取得した純水の屈折率スペクトルである。正常組織で個体によるばらつきが大きいが、腫瘍領域が正常領域よりも屈折率が高く、腫瘍領域が純水のスペクトルにより近いことが分かる。
純水との比較の有無による判定精度の違いを検証する。まずは純水との比較をしない場合の判定の正答率を算出する。正答率とは、正常組織は正常組織と判定され、異常組織は異常組織と判定される確率である。図10(a)、図10(b)に示した屈折率スペクトルでラット脳の正常組織領域と腫瘍組織領域におけるデータベースを作成した。各個体の正常組織におけるスペクトルが、3個体の正常組織の平均値±標準偏差σの領域にあれば、正常組織の判定成功、それ以外であれば判定不成功と判定する。周波数5点(0.8THz、0.9THz、1.0THz、1.1THz、1.2THz)で判定し、全周波数で成功であれば正しく判定できたとした。結果、これら3個体の正常組織における正答率は33%であった。また、同じ工程で算出した3個体の腫瘍組織における正答率も33%であった。
次に、純水と比較した場合の判定の正答率を算出する。図11は、純水の屈折率スペクトルに対する上記3個体の正常組織と腫瘍組織の屈折率スペクトルの比、つまり比較値を周波数5点(0.8THz、0.9THz、1.0THz、1.1THz、1.2THz)で表したものである。各周波数において、左側3つの棒グラフが腫瘍組織、右側3つの棒グラフが正常組織との比である。各周波数における棒グラフ上に示した点線は、腫瘍組織の平均値から標準偏差σを差し引いたものと正常組織の平均値に標準偏差σを足したものの中間値である。
本実施例では、判定の基準値は、0.9886@0.8THz、0.9840@0.9THz、0.9876@1.0THz、0.9808@1.1THz、0.9889@1.2THzである。比較値が基準値より大きければ腫瘍組織、比較値が基準値よりも小さければ正常組織と判定する。図から明らかな様に、全周波数において腫瘍組織は腫瘍組織、正常組織は正常組織と判定でき、判定の正答率はどちらも100%となった。純水と比較しない場合と比べて、判定の精度が向上したことが分かる。
純水との比較により判定精度が向上した理由の1つは、複数の異なる生体組織を測定して取得したスペクトル又は時間波形と、各生体組織と同じ測定条件で純水を測定して取得したスペクトル又は時間波形と、を有するデータベースを用いることである。上述のようなデータベースに含まれるデータを用いて取得した判定基準と、生体組織の測定によって得られた測定スペクトル又は時間波形と純水の測定によって得られたスペクトル又は時間波形との比較結果とを用いて生体組織の状態の判定を行う。このような構成にすることにより、測定条件の違いによって生じる測定誤差や装置間誤差による影響を低減できる。
純水との比較により判定精度が向上した別の理由として、判定対象である腫瘍組織と正常組織の成分的な違いに水分量が関連していることもあげられる。既述の通り、腫瘍組織では正常組織と比較して水分量が多い傾向がある。判定対象の差異要因となるものを利用した比較値を利用することが、判定精度の向上につながる。
以上、本実施例の装置100及びそれを用いた情報取得方法によれば、純水を測定して得られた基準スペクトル又は時間波形との比較を行わない場合と比較して、生体組織の状態の判定の精度を向上できる。
(実施例2)
実施例2として、第1の実施形態の装置100の一例について、より具体的に説明する。本実施例では、被検体230としての純水や生体組織、利用するデータは実施例1と同様であるが、純水との比較で統計解析手段の一つである主成分分析を用いる例を記述する。抽出した周波数範囲は0.8THzから1.5THzであり、この領域で0.02以上の屈折率差が区別可能である。
実施例2として、第1の実施形態の装置100の一例について、より具体的に説明する。本実施例では、被検体230としての純水や生体組織、利用するデータは実施例1と同様であるが、純水との比較で統計解析手段の一つである主成分分析を用いる例を記述する。抽出した周波数範囲は0.8THzから1.5THzであり、この領域で0.02以上の屈折率差が区別可能である。
ここでは、主成分分析により得られるスコアプロットの、純水との比較の有無による違いについて記述する。図12(a)は、ラット3個体A、B、Cの脳の正常組織と腫瘍組織それぞれにおける測定結果と、各個体の測定直前に行った純水の測定結果を主成分分析して得られたスコアプロットである。主成分分析に用いるスペクトルデータとして、屈折率スペクトルと消衰係数スペクトルを使用し、結果を第1主成分(PC1)軸と第2主成分(PC2)軸上で表している。各個体の各領域で5点ずつ測定しているため、純水を3点測定した結果と合わせるとプロットは合計33点ある。
図12(b)は、図3に示したフローチャートに従い、純水のスペクトルと生体組織のスペクトル(測定スペクトル)との差を比較値として用いて主成分分析して得られたスコアプロットである。また、図12(c)は、図3に示したフローチャートに従い、純水のスペクトルと測定スペクトルとの比を比較値として用いて主成分分析して得られたスコアプロットである。
主成分分析をする際、初めに規格化処理を行っているため、全スコアプロットのばらつきの程度の比較ができる。スペクトルの差と比のどちらの比較値を用いた場合も、純水との比較を行わない場合と比べてプロットのばらつきが抑えられていることが分かる。これは、純水との比較により装置の状態や測定環境の違いによって生じる測定誤差による影響が低減された効果と考えられる。
主成分分析により比較値を得る場合、線形判定分析等により正常組織と腫瘍組織とを判定するための基準値としての基準線を取得する。純水との比較値を用いてプロットのばらつきが抑えられたことにより、生体組織の状態間の境界が明確になるため、基準線の位置がより正確に決められる。そのため、純水との比較値から得た基準線による判定は、純水との比較を行わない場合の判定と比較して正答率の上昇、つまり判定精度の向上が見込まれる。
本実施例で示したスコアプロットでは、データベースを形成する個体数が少なく、また組織状態が明確に異なる測定点の結果を使用しているが、データベースを形成する個体数が多くなればデータのばらつきはより大きくなる。また、正常組織と異常組織の境界などの組織状態が曖昧な領域のデータは、基準線付近にプロットされるため、測定誤差の影響により判定に間違いが生じて正答率が低くなる可能性がある。これらを考慮すると、主成分分析による判定においても、純水との比較を行うことで生体組織の状態の判定の精度は向上すると見込まれる。
以上のように、本実施例においても、純水を測定して得られた基準スペクトル又は基準波形との比較を行わない場合と比較して、生体組織の状態の判定の精度を向上できる。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、スペクトルとして主に屈折率スペクトルを使用しているが、これに限らず、被検体230の光学特性のスペクトルであれば、いずれも被検体230の状態の判定に用いることができる。例えば、吸収係数スペクトルを取得し、上述の方法と同様にスペクトルの比較値、基準値を求めれば、図3のフローチャートに基づいて被検体230の状態を判定できる。スペクトルの種類は、被検体230の種類や状態、装置性能等に基づいて適宜選択することが望ましい。
また、実施例としてラット脳生組織の例を示したが、上述の実施形態では、ヒトの様々な臓器(脳、大腸、胃等)についても適用可能である。ラットとヒトとでは動物の種は異なるが、組織が細胞の集合体であることや、異常組織部では正常組織部では水分量が多い傾向は同様であるため、ヒト組織においても純水との比較による判定の精度向上が見込まれる。
上述の実施例1、実施例2ともに第1の実施形態に記述した装置100を用いた例であった。しかし、第2の実施形態に記述した構成を用いれば、パルス波に対するサンプル面の位置や傾きの影響を抑制することができ、さらなる判定精度の向上が見込まれる。また、判定に使用する周波数が限定されている場合などは、第3の実施形態に記述した装置900を用いることで、サンプル面の調整等の負担が軽減され得る。
さらに、上述の実施形態、実施例では、基準スペクトルと測定スペクトルとの比較のための統計解析として主成分分析を利用したが、これに限らず、独立成分分析やクラスター分析等のような、多変量データを統計的に扱う多変量解析を適用できる。この場合、多変量解析を行って取得した特徴値を用いて比較を行うことができる。
上述の実施形態では、セル202、220の窓部材と被検体230との界面をサンプル面としているが、これに限らず、被検体230の内部の界面又は被検体230の窓部材と接している面と対向する裏面等の状態の判別を行うこともできる。
104 照射部
107 検出部
123 スペクトル取得部
125 判定部
107 検出部
123 スペクトル取得部
125 判定部
Claims (20)
- テラヘルツ波を用いて被検体の情報を取得する情報取得装置であって、
前記被検体にテラヘルツ波を照射する照射部と、
前記被検体からのテラヘルツ波を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果を用いて光学特性のスペクトルを取得するスペクトル取得部と、
生体組織を前記被検体として用いた場合の前記検出部の検出結果を用いて前記スペクトル取得部が取得した第1のスペクトルと純水を前記被検体として用いた場合の前記検出部の検出結果を用いて前記スペクトル取得部が取得した第2のスペクトルとを比較した比較結果、及び判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する判定部と、を有し、
前記判定基準は、複数の生体組織を測定することにより取得した複数のスペクトルと純水を測定することにより取得した少なくとも1つのスペクトルとを比較した結果を用いて取得される
ことを特徴とする情報取得装置。 - 前記被検体の状態の判定に有効な周波数範囲を選択する選択部を更に有し、
前記判定部は、前記周波数範囲内の1つ又は複数の周波数における前記比較結果、及び前記判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報取得装置。 - 前記周波数範囲は、前記第1のスペクトルを用いて取得した標準偏差が、前記生体組織の第1の状態のスペクトルと前記生体組織の第2の状態のスペクトルとの差異の1/2倍となる周波数範囲である
ことを特徴とする請求項2に記載の情報取得装置。 - 前記周波数範囲は、前記第1のスペクトルを用いて取得した標準偏差が、各周波数における前記生体組織の第1の状態のスペクトルと前記生体組織の第2の状態のスペクトルとの差異の1/6倍となる周波数である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の情報取得装置。 - 前記少なくとも1つのスペクトルは、前記複数の生体組織のそれぞれを測定した測定条件で純水を測定することにより取得される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - 前記第1のスペクトル、前記第2のスペクトル、前記複数のスペクトル及び前記純水のスペクトルのそれぞれは、屈折率スペクトル又は吸収係数スペクトルである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - 前記判定部は、既知の第1の状態の前記生体組織のスペクトルと前記純水のスペクトルとを比較した結果と、既知の第2の状態の前記生体組織のスペクトルと前記純水のスペクトルとを比較した結果と、の間を、前記判定基準とする
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - 前記判定部は、前記第1のスペクトルと前記第2のスペクトルとの比または差を多変量解析した結果、または、前記第1のスペクトルを多変量解析して取得した特徴値と前記第2のスペクトルを多変量解析して取得した特徴値との差または比を前記比較結果とする
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - 前記判定部は、前記複数のスペクトルと前記少なくとも1つのスペクトルとの比または差を多変量解析した結果を用いて前記判定基準を取得する
ことを特徴とする請求項8に記載の情報取得装置。 - 前記多変量解析は、主成分分析又は独立成分分析又はクラスター分析を含む
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の情報取得装置。 - 前記判定部は、前記第1のスペクトルと前記第2のスペクトルとの比または差を前記比較結果とする
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - 前記判定部は、前記複数のスペクトルと前記少なくとも1つのスペクトルとの比または差を用いて標準偏差と異なる複数の状態毎の平均値とを取得し、前記複数の異なる状態毎の平均値のうち、最も高い平均値と前記標準偏差との差と最も低い平均値と前記標準偏との和との中間値を前記判定基準とする
ことを特徴とする請求項11に記載の情報取得装置。 - 前記判定部は、第1の光学特性について前記第1のスペクトルと前記第2のスペクトルとの比または差を取得し、第2の光学特性について前記第1のスペクトルと前記第2のスペクトルとの比または差を取得し、第1の光学特性を横軸、第2の光学特性を縦軸とした関係図を前記比較結果とする
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - 前記判定部は、前記複数のスペクトルと前記少なくとも1つのスペクトルとの比または差を用いて作成した前記関係図を用いて前記判定基準を取得する
ことを特徴とする請求項13に記載の情報取得装置。 - 前記複数のスペクトルと前記少なくとも1つのスペクトルとを含むデータベースを有する
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - テラヘルツ波を用いて被検体の情報を取得する情報取得装置であって、
前記被検体にテラヘルツ波を照射する照射部と、
前記被検体からのテラヘルツ波を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果を用いて時間波形を取得する波形取得部と、
生体組織を前記被検体として用いた場合の前記検出部の検出結果を用いて前記波形取得部が取得した第1の時間波形と純水を前記被検体として用いた場合の前記検出部の検出結果を用いて前記波形取得部が取得した第1の時間波形とを比較した比較結果、及び判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する判定部と、を有し、
前記判定基準は、複数の生体組織を測定することにより取得した複数の時間波形と純水を測定することにより取得した少なくとも1つの時間波形とを比較した結果を用いて取得される
ことを特徴とする情報取得装置。 - 前記判定部は、前記生体組織の前記照射部からのテラヘルツ波の照射領域において、前記生体組織が正常組織部又は異常組織部であることを判定する
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の情報取得装置。 - テラヘルツ波を用いて被検体の情報を取得する情報取得方法であって、
前記被検体にテラヘルツ波を照射する照射ステップと、
前記被検体からのテラヘルツ波を検出する検出ステップと、
前記検出ステップの検出結果を用いてスペクトルを取得するスペクトル取得ステップと、
生体組織を前記被検体として用いた場合の前記検出ステップの検出結果を用いて取得した第1のスペクトルと純水を前記被検体として用いた場合の前記検出ステップの検出結果を用いて取得した第2のスペクトルとを比較した比較結果、及び判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する判定ステップと、を有し、
前記判定基準は、複数の生体組織を測定することにより取得した複数のスペクトルと純水を測定することにより取得した少なくとも1つのスペクトルとを比較した結果を用いて取得される
ことを特徴とする情報取得方法。 - テラヘルツ波を用いて被検体の情報を取得する情報取得方法であって、
前記被検体にテラヘルツ波を照射する照射ステップと、
前記被検体からのテラヘルツ波を検出する検出ステップと、
前記検出ステップの検出結果を用いて時間波形を取得する波形取得ステップと、
生体組織を前記被検体として用いた場合の前記検出ステップの検出結果を用いて取得した第1の時間波形と純水を前記被検体として用いた場合の前記検出ステップの検出結果を用いて取得した第2の時間波形とを比較した比較結果、及び判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する判定ステップと、を有し、
前記判定基準は、複数の生体組織を測定することにより取得した複数の時間波形と純水を測定することにより取得した少なくとも1つの時間波形とを比較した結果を用いて取得される
ことを特徴とする情報取得方法。 - テラヘルツ波を用いて被検体の情報を取得する情報取得装置に用いるプログラムであって、
生体組織を前記被検体として用いた場合に取得した第1の時間波形又は第1のスペクトルと純水を前記被検体として用いた場合に取得した第2の時間波形又は第2のスペクトルとを比較した比較結果、及び判定基準に基づいて前記生体組織の状態を判定する判定ステップを有し、
前記判定基準は、複数の生体組織を測定することにより取得した複数の時間波形又は複数のスペクトルと純水を測定することにより取得した少なくとも1つの時間波形又は少なくとも1つのスペクトルとを比較した結果を用いて取得した基準値である
ことを特徴とするプログラム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019060609A (ja) * | 2017-09-22 | 2019-04-18 | 国立研究開発法人理化学研究所 | テラヘルツ波を用いた細胞評価用の媒質 |
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JPWO2020090944A1 (ja) * | 2018-10-30 | 2021-09-16 | 京セラ株式会社 | 測定装置および測定方法 |
-
2015
- 2015-12-25 JP JP2015254741A patent/JP2016145815A/ja active Pending
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