JP2016144300A - パンタグラフの接触力変動低減装置 - Google Patents

パンタグラフの接触力変動低減装置 Download PDF

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Shigeyuki Kobayashi
樹幸 小林
隆之 臼田
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隆之 臼田
誠 横山
Makoto Yokoyama
誠 横山
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Abstract

【課題】スライディングモード制御を利用して、架線とパンタグラフの接触力変動を効果的に抑制するパンタグラフの制御手法を提供する。【解決手段】架線15に接して集電する舟体11と、舟体を架線に向かって接離する枠組12と、枠組を駆動する空気圧アクチュエータ13とを備えたパンタグラフ10を対象とする。舟体の質量、枠組の質量、舟体と枠組の間の剛性と減衰性能、パンタグラフのダンパ性能、設計パラメータ、制御ゲイン、アクチュエータのゲインと時定数及びパンタグラフのゲインとに基づいて定める係数行列に対して、舟体の変位と速度及び枠組の変位と速度、さらにアクチュエータの軸力とからなる状態変数を作用させて求めた切換関数を利用して生成した制御指令信号により、アクチュエータの軸力を調整する。【選択図】図2

Description

本発明は、高速電気鉄道の架線構造の周期性に起因する架線・パンタグラフ間の接触力変動を低減するパンタグラフの接触力変動低減装置に関し、特に、スライディングモード制御理論を用いたアクティブ制御によって架線・パンタグラフ間の接触力変動を抑制する接触力変動低減装置に関する。
電気鉄道の高速化を実現するためには克服すべき課題が多く有るが、パンタグラフ舟体と架線との間に生じる接触力の変動もその一つである。
電気鉄道では、列車の走行が高速になるほど架線を吊架している支持点と支持点以外の区間とで架線特性の差が大きく現れ、架線とパンタグラフの間の接触力変動が大きくなる。なお、パンタグラフ舟体と架線の接触力変動は、架線の支持点間隔やハンガ間隔さらにはドロッパ間隔に対応した周波数において卓越した振動成分を有し、列車速度が高速であるほど、また、トロリ線の支持点の間隔が短いほど高周波になる。
現行のパンタグラフは、ばね力で架線に対し与圧をかけて離線を防止しているが、接触力の変動が大きくなって与圧分を越えると、集電装置が電車線から離れる離線が生じるおそれがある。離線が頻発すると、集電装置と電車線との間にスパークが生じて、電車線や摺り板の損耗が進み、問題となる。さらに、車両が加速のため大電力を消費している最中に離線が生じると大きなアークが発生しやすく、車両への電力供給を不安定にするだけでなく、離線に伴うアーク放電によってパンタグラフ摺り板や架線の損耗を増大化する。また、離線に至らない場合でも、接触力は極力変動の小さい方がよい。
なお、複数のパンタグラフを併用使用すれば、一つのパンタグラフが離線しても、他のパンタグラフが接触するのでアーク放電を防ぐことができるが、パンタグラフの風切り音などの空力音が主要な騒音源となることから、高速走行車両では設置するパンタグラフの数をできるだけ少なくすることが求められる。
さらなる速度向上に向けて空力音低減と接触力変動低減を両立させるためには、パンタグラフの構造改良だけでは限界があるので、パンタグラフにアクチュエータを組み合わせ、制御技術を適用して接触力変動を低減する手法が検討されてきた。
たとえば、特許文献1には、架線のトロリ線とパンタグラフの舟体との間に作用する接触力の変動を低減する技術として、舟体をトロリ線に押し当てるアクチュエータを動的に制御するアクティブ方式のものが開示されている。アクチュエータの制御には、例えば、PID制御技術を適用することができる。PID制御は、比例動作に積分動作と微分動作を加えた制御を行い、残留残差をなくすようにアクチュエータの出力を制御する。この場合、制御したい物理量である接触力、あるいは、接触力を推定するために必要な物理量(例えば、歪ゲージで計測した舟体や支持機構にかかっている荷重など)をフィードバック信号として制御器に入力する。
この信号は高い周波数成分を含んでいるため、そのまま制御器にフィードバックすると制御系が発散することがある。このため、ゲインを非常に小さい値に設定して使用するか、フィードバック信号の位相遅れを覚悟してローパスフィルタを使用するというのが現状である。このような条件では、制御可能な周波数帯がごく低い周波数帯に限られてしまう。特許文献1開示の発明は、測定値の内の低周波数成分(例えば、2〜3Hz以下)をゼロに近づけるようにアクチュエータを制御するものである。
また、非特許文献1は、パンタグラフにPID制御を適用する上で生じる、アクチュエータの遅れ特性に起因して適用可能な周波数範囲に限界がある問題や、インピーダンス制御を適用する上で生じる、制御対象周波数範囲外で追従性能が悪化する問題などを回避するために行われた研究であって、架線などの地上設備に起因する接触力変動の卓越周波数に係るフィードフォワード制御に関する研究について記載したものである。
非特許文献1に記載された研究は、架線を支持する電柱間隔(支持点間隔)におけるトロリ線の剛性変化に起因する接触力変動を対象とする。支持点間隔と走行速度に基づいて接触力変動の周波数を知ることができるが、制御ゲインや位相といった制御パラメータについては、舟体へ作用する接触力変動の振幅値や抑制対象とする周波数に応じて適切な値を与える必要がある。そこで、最急降下法に基づいて最適化する手法を利用して、前述のアクチュエータの遅れを適応的に補償することを可能にしたものである。記載の手法により従来のPID制御より高い2〜5.5Hzの周波数領域で大きくて30%程度の接触力変動低減効果を有することを確認している。
特開2005−287209号公報
小林樹幸他「パンタグラフのアクティブ制御のための制御パラメータ最適化手法」鉄道総研報告第27巻第10号5〜10頁2013年10月
しかし、パンタグラフにこれら高度な制御を適用しても、なお適用周波数に限界があったり、外乱の影響を排除し切れなかったりする。
本願発明は、スライディングモード制御を利用して、架線や制御信号に影響する外乱の排除や、従来より高い周波数領域における接触力変動の効果的な抑制を可能とするパンタグラフの制御手法を提供するものである。
スライディングモード制御は、パラメータ切換型の可変構造系に属するもので、適切に決められた切換関数の正負に応じて切り替える不連続入力によって、システムの状態を位相面上にある切換超平面に拘束させながら位相面の原点もしくは原点近傍の周期運動に収束させる制御手法であって、マッチング条件を満たす外乱に対して不変性を持つロバストな制御を可能とする。
しかし、実施可能なスライディングモード制御を構築するためには、現実の適用対象に即して、利用する状態変数を選定し、最適な入出力関数、切換関数などを確定する必要がある。
本発明のパンタグラフの接触力変動低減装置は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、架線に接して集電する舟体と、舟体を架線に向かって接離する枠組と、枠組を駆動するアクチュエータとを備えたパンタグラフを対象として、パンタグラフ舟体の質量、パンタグラフ枠組の質量、舟体と枠組の間の剛性と減衰性能、パンタグラフのダンパ性能、設計パラメータ、制御ゲイン、アクチュエータのゲインと時定数、およびパンタグラフのゲインとに基づいて定める係数行列に対して、舟体の変位と速度および枠組の変位と速度、さらにアクチュエータの軸力とからなる状態変数を作用させて求める切換関数を利用した制御指令信号を生成してスライディングモード制御を実行する制御装置を備え、この制御指令信号によりアクチュエータの軸力を調整して、走行中の架線と舟体の接触力変動を低減させることを特徴とする。
制御指令信号は、状態変数をスライディングモード状態に維持するための公称等価入力部と、切換関数に基づいて得た状態変数がスライディングモードから遠いほど早くスライディングモードに近付けるための比例到達則入力部と、切換関数の符号に応じて制御入力を切り替えて状態変数をスライディングモードに近付けるための非線形入力部で構成することができる。
なお、パンタグラフの状態方程式をDx=Ax+Bu、切換関数σをσ=Sx、(ここで、Aはシステム行列、Bは入力行列、Sは切換関数行列、xは状態変数、uは制御入力、Dは微分演算子である。)と表すとき、
公称等価制御入力ueqを、ueq=−(SB)−1SAx
比例到達則入力uを、u=−(SB)−1Φσ
非線形入力unlを、unl=(SB)−1ρsgn(σ)
(ここで、Φは制御ゲイン、ρはリレーゲイン、sgnは符号関数である。)として、u=ueq+u+unlで表される制御入力uを使用するものであってよい。
また、符号関数に代えて、飽和関数を用いることができる。
さらに、舟体の変位と速度は、加速度計、レーザードップラー振動計、レーザー変位計のいずれかにより測定し、枠組の変位と速度は、加速度計、レーザードップラー振動計、レーザー変位計、枠組の関節部に設けられるロータリーエンコーダのいずれかにより測定し、アクチュエータの軸力はロードセルにより測定することができる。
なお、舟体の変位と速度および枠組の変位と速度に代えて、舟体と枠組の相対変位と相対速度を用いて、制御入力を算定することができる。
本発明のパンタグラフの接触力変動低減装置は、舟体と枠組と枠組を駆動するアクチュエータとを備えたパンタグラフについて、スライディングモード制御理論に従って可観測な状態変数を用いて得られる制御入力でアクチュエータを駆動することにより、走行中の架線と舟体の間の接触力変化を低減する制御手法を実施することができる。
本発明のパンタグラフの接触力変動低減装置は、システム行列および入力行列に状態変数を作用させて公称等価制御入力と切換関数を算出し、これらを利用して制御指令信号を生成してスライディングモード制御を実行する制御装置を備えており、この制御指令信号によりアクチュエータの軸力を調整して、走行中の架線と舟体の接触力変動を低減させる。
スライディングモード制御を適用するために必要となるシステム行列と入力行列は、容易に評価可能な、パンタグラフ舟体の質量、パンタグラフ枠組の質量、舟体と枠組の間の剛性と減衰性能、パンタグラフのダンパ性能、設計パラメータ、制御ゲイン、アクチュエータのゲインと時定数、およびパンタグラフのゲインとに基づいて算定することができる。さらに、演算上必要となる状態変数は、比較的容易に測定できる、舟体の変位と速度、枠組の変位と速度、およびアクチュエータの推力として、リアルタイムに取得することができる。なお、舟体の変位と速度および枠組の変位と速度に代えて舟体と枠組の相対変位と相対速度を用いる場合も同じである。
本発明により、高度なスライディングモード制御理論を実際のパンタグラフに適用することが可能となり、容易に観測できる限られた状態変数の変化に基づいて空気圧アクチュエータを制御することにより、システムの摂動や外乱に惑わされずに架線と舟体の接触力変動をより大きく低減させることができる。
本発明に係る実施例において対象として選んだシングルアーム型パンタグラフの構造を示す略図である。 本発明の1実施例に係る制御系の構成を示すブロック図である。 本発明の制御装置に格納される制御入力生成アルゴリズムを説明するブロック図である。 本実施例に係るシングルアーム型パンタグラフについて、アクチュエータを含めたパンタグラフと架線の機構を簡略して示した集電系モデル図である。 接触力を仮想的なばねダンパで表したときのモデル図である。 接触力を内力として架線と舟体を1つの慣性系として扱うときのモデル図である。 列車が走行するとしたときに生じる架線剛性変動をシミュレーションにより求めたグラフである。 切換関数と飽和関数入力の関係を示すグラフである。 シミュレーションの対象としたモデルを示すブロック図である。 開ループ状態のパンタグラフにおける架線剛性kの変化を示すグラフである。 開ループ状態のパンタグラフにおける架線剛性kの挙動に対応する接触力f変動を拡大して示すグラフである。 シミュレーションに使った制御アルゴリズムを示すブロック図である。 接触力を切換関数として設計したスライディングモード制御器でパンタグラフを制御するときの指令電圧vの変動を表すグラフである。 接触力を切換関数として設計したスライディングモード制御器でパンタグラフを制御するときの軸力fの挙動を示すグラフである。 接触力を切換関数として設計したスライディングモード制御器でパンタグラフを制御するときの接触力fの挙動を開ループ時の接触力と比較して示すグラフである。 接触力を切換関数として設計したスライディングモード制御器でパンタグラフを制御するときの公称切換関数σの変動を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
初めに、本発明技術に関連してスライディングモード制御について概要を説明する。
次の状態方程式によって表される制御系を考える。
(1.1)
Dx=Ax+Bu
ただし、xはn次の状態変数ベクトル、uはm次(m<n)の制御入力ベクトル、Aはn×n次のシステム行列、Bはn×m次の入力行列である。また、本明細書においてDは微分演算子で、Dx=d/dt(x)である。
可変構造制御系の構造は、次の式で表される切換関数ベクトルσの符号によって支配される。
(1.2)
σ(x)=Sx
ただし、Sは切換関数行列である。切換関数σは一般にm次元であり、かつ線形である。切換関数の要素である切換関数σは、それぞれ原点x=0を通る線形な切換面σ=0を含んでいる。m入力を有するシステムはm個の切換関数σを持ち、2−1個の切換面を持つ。切換面同士の交差面を切換超平面と呼び、m個の入力を持つn次元のシステムはn−m次元の最終切換面σを持つ。
初期時間tにおけるシステムの初期状態をxとする。状態が切換面の方向に向かって動き切換面にたどり着くための条件を到達条件とよぶ。切換面σ上にシステムの初期値xがあれば、全てのt>tに対してx(t)はσ上に存在し、x(t)はスライディングモードにあるという。
スライディングモード制御では、状態を切換面σに到達させた(到達モード)後に、切換面内を原点(x=0)に向かって移動させ(スライディングモード)、原点近傍における最終的な周期状態(定常状態モード)に収束させるように制御する。
切換関数のダイナミクスDσを直接指定する到達則法を用いて到達条件を指定すると、スライディングモード制御に対する解の単純化もできるので便利である。
(1.3)
Dσ=−Qsgn(σ)−Kf(σ)
ここで、ゲインQ,Kは正の要素からなる対角行列で、sgnは符号関数を示す。また、f(σ)はσの関数である。
式(1.3)を到達則と呼び、Q,Kを適宜指定することによって到達則の構造、状態を指定することができる。
切換面上に状態が拘束されている定常状態モードの制御系を等価制御系と呼ぶ。等価制御系における制御では、状態軌跡が切換面σ(x)=Sx=0上にとどまるようにする等価制御入力ueqを使う。このとき、σの導関数Dσもゼロとなる。したがって、下の式により等価制御入力ueqが定まる。
(1.4)
Dσ=SDx=SAx+SBu=0
(1.5)
eq=−(SB)−1SAx
ここで、逆マトリックス(SB)−1の存在がσ(x)=0を保証するための必要条件となる。
もし系の状態がスライディングモード上にあれば、等価制御入力ueqを用いることで常にσ=0かつDσ=0を維持することができる。しかし、現実の系においては、等価制御入力ueqは未知の外生信号ξに依存しており、外乱項を含めた厳密な等価制御入力を求めることは困難である。
スライディングモード制御では、あるマッチング条件を満たせば、モデル誤差と外部からの外乱による効果から完全に独立して、ロバストというより不変になる。
すなわち、モデル誤差ΔAと外乱f(t)を含むシステムにおいて、
(1.6)
ΔA=BΔA’, f(t)=BΔf’
で表されるΔA’とΔf’が存在するというマッチング条件が満たされれば、システムは次式で表され、
(1.7)
Dx=(A+ΔA)x+Bu+f(t)
=Ax+B(u+ΔA’x+f’(t))
スライディングモードは不変となる。
このように、スライディングモード制御を適用することができれば、モデル誤差や外乱に左右されずに、システムを定常状態に収束させることができることになる。
スライディングモード制御を実現させるためには、与えられたプラントより低次数の望ましいシステムダイナミックスを表すための切換面σ(x)=0を設計し、どんな初期状態xであっても有限時間内に切換面に到達するような制御入力u(x,t)を設計する必要がある。
外乱等を考慮した状態方程式と接触力fの出力方程式を改めて示すと、
(1.8)
Dx=Ax(t)+B(t)u(t)+Gξ(t,x)+ΔA(t,x)x(t)
(1.9)
(t)=Cx(t)+gξ(ξ,ξ
ここで、uはm次の制御入力、ξは外乱、Cはm次のベクトル、Gとgは外乱と同じ次数を持つベクトルである。
式(1.9)の接触力fを切換関数σと定めるものとすると、切換関数ダイナミックスDf=0とする等価制御入力は、下式から求められる。なお、簡単のため、モデル誤差ΔAを無視する。
(1.10)
Df(t)=CDx(t)+gDξ(ξ,ξ
=CAx(t)+CB(t)u(t)+CGξ(t,x)+gDξ(ξ,ξ
=0
制御入力uについて解くと、下式になる。
(1.11)
u=−(CB)−1{CAx(t)+CGξ(t,x)+gDξ(ξ,ξ)}
これを出力方程式(1.8)に代入すると、下式になる。
(1.12)
Dx=[I−B(CB)−1C]Ax(t)
+[I−B(CB)−1C]Gξ(t,x)
−B(CB)−1gDξ(ξ,ξ
これを接触力を時間微分した式(1.10)に代入して整理すると、
(1.13)
Df(t)=CDx(t)+gDξ(ξ,ξ
=[I−CB(CB)−1]CAx(t)
+[I−CB(CB)−1]CGξ(t,x)
+[I−CB(CB)−1]gDξ(ξ,ξ
=0
と常に0になるから、等価制御入力を上のように定めることにより、状態変数変化や外乱に対して接触力は不変となり、この特性から、接触力変動を抑制することができることが分かる。
制御入力uは、等価制御入力に加えて、式(1.3)に示した、状態変数を迅速に切換面σに到達させ切換面内を原点に向かって移動させるために、切換面からの距離に対応する切換関数σに比例する項と切換関数の符号に伴って値を選択する項からなる到達則入力を用いて、次式のように構成される。
(1.14)
u=−(SB)−1{SAx+Qsgn(σ)+Kf(σ)}
なお、σ=Sxである。
式(1.14)は、アクチュエータを駆動する指令電圧vで表記した次式に置き換えることができる。
(1.15)
v=Vx+ρsgn(σ)+φσ
=veq+vnl+v
スライディングモード制御は線形制御と異なり、状態方程式と出力方程式の対からなる状態空間モデルに代わって、状態方程式(1.1)と切換関数(1.2)の対からなるモデルとして表される。このように表すことによって、{A,B,S}のマトリックス構造から制御系の基本的な特徴が概ね捉えられる。
スライディングモード制御を電気鉄道のパンタグラフに適用するためには、パンタグラフのシステムを適用可能な数学モデルで表現する必要がある。
本実施例では、カテナリー式架線から集電するシングルアーム型パンタグラフを具体例として採用する。カテナリー式架線は、電柱から支持された吊架線にほぼ等間隔でハンガが取り付けられており、そのハンガにトロリ線が支持される構造を持つシングルカテナリー式と、吊架線に吊らされたハンガに補助吊架線を支持させて、この補助吊架線にさらに狭いほぼ等しい間隔で取り付けたドロッパにトロリ線を支持するようにしたコンパウンドカテナリー式のふたつが一般的である。架線はおもりやばねによって張力調整している。線条を太くし、張力を大きく取ったものが新幹線にも使用されている。
図1は、本実施例において対象として選んだ新幹線用のシングルアーム型パンタグラフの構造を示す略図である。シングルアーム型パンタグラフ10は、舟体1および上枠2aと下枠2bで構成される枠組2からなり、上枠2aの中にバランスロッド2cを通し、下枠2bの中に釣合棒2dを通して、上枠とバランスロッドおよび下枠と釣合棒でそれぞれ平行リンクを構成することにより、舟体1が車体4に対して常に平行になり、主ばね2eが縮む力で舟体1をトロリ線5に押し付けるようになっている。
なお、主ばね2eと平行に設けられた下降用空気圧シリンダ2fに圧空を供給することにより、主ばね2eを引き伸ばしてパンタグラフを折り畳むことができる。
さらに、アクティブ制御に用いる制御用空気圧アクチュエータ3が、主ばね2eやダンパ2gに実質並行に取り付けられていて、枠組2を伸縮することにより舟体を上下方向に駆動する。
図2は、本発明の1実施例に係る制御系の構成を示すブロック図である。
本実施例では、図1に示したパンタグラフ10について、舟体11と架線15との間に発生する接触力変動を抑制するための制御を行う。
パンタグラフ10には、アクティブ制御のための空気圧アクチュエータ13が取り付けられている。空気圧アクチュエータ13は、指令電圧vによって弁が動くことにより供給される圧縮空気の圧力で駆動され、軸力fを発生する。
空気圧アクチュエータ13から出力される軸力fにより、パンタグラフ10の枠組12が駆動されて、舟体11を床に対して垂直の方向に駆動する。軸力fはロードセル13aで測定される。パンタグラフのベースとなる車体屋根14の上にはレーザ変位計16が設けられていて、枠組12の上枠先端および舟体11の変位と加速度を非接触で測定する。
枠組12と舟体11の変位と加速度は、レーザドップラー振動計や、加速度計によって測定することもできる。また、枠組の関節部にロータリーエンコーダを設備して、枠組の変位や速度を測定してもよい。
制御装置は、入力変換器22と出力変換器23の機能を有するプロセス入出力装置(PIO)と、高速演算をするデジタル信号処理装置(DSP)で形成される制御器21により構成される。入力変換器22は、センサにより測定された軸力f、枠組12の変位xと加速度Dx、および舟体11の変位xと加速度Dxを入力して、制御器21に伝送する。また、出力変換器23は、制御器21から入力するデジタルの指令信号uをアナログの指令電圧vに変換し、空気圧アクチュエータ13に伝送して、空気圧アクチュエータ13を駆動する。
なお、枠組と舟体の加速度は、センサから受信する変位の測定信号を入力変換器22あるいは制御器21において微分することにより得ることもできる。また、速度測定センサを使用して、入力した速度の測定信号を入力変換器22や制御器21で積分することにより得るようにしてもよい。
制御器21は、デジタル測定信号を入力し、リアルタイムで制御演算してアクチュエータの操作をするためのデジタル制御信号を出力する。
図3は、制御器21に格納される制御入力生成アルゴリズムを説明するブロック図である。制御器21は、式(1.15)に従って、空気圧アクチュエータ13の駆動信号を算出して、スライディングモード制御を実現させる。
入力変換器22から入力した実測された状態変数x(参照番号31)は、演算器33で係数行列V(参照番号32)を掛けて等価制御入力ueqとする。また、演算器35で状態変数x(参照番号31)に切換行列S(参照番号34)を掛けて切換関数σとする。切換関数σは、制御ゲインφ(参照番号36)を乗じて比例到達則入力uとし、また、関数選択器37で符号関数もしくは飽和関数のいずれかを利用し、切換関数σの符号に従って所定の制御ゲインρ(参照番号38)を選択することによりリレー入力もしくは非線形入力unlとする。
指令信号は、加算器39において上記算定した等価制御入力ueqと比例到達則入力uと非線形入力unlを加算した値として得ることができる。制御入力uは、出力変換器23において指令信号をアナログ信号化することにより指令電圧vに変換されて制御用空気圧アクチュエータに伝送される。
図4は、制御用空気圧アクチュエータを含めたパンタグラフと架線の機構を抽象して示した集電系モデル図である。
,m,m はそれぞれ架線、舟体、枠組の、リンクの影響を考慮した相当質量である。また、x,x,xはそれぞれ架線、舟体、枠組の変位である。
質量mの架線は、剛性係数k、粘性抵抗係数cのばねダンパで支持されていると仮定し、舟体からの接触力fが加わる。また、架線の剛性変化等の外乱を力外乱ξと置く。質量mの舟体には接触力fと、枠組と接続された剛性係数k、粘性抵抗係数cのばねダンパの力が作用する。そのばねダンパの不確かさや、高速走行時に舟体に発生する揚力などの外乱を力外乱ξとする。質量mの枠組には、静押上力fが正方向にかかり、ばねダンパk,cおよびダンパcの力が作用する。
また、パンタグラフ10がリンクで構成されるため、指令電圧vによって制御用空気圧アクチュエータがDCゲインaに従って発生させる軸力fがてこによりDCゲインaを介して作用するものとする。また、部品点数が多く構造が複雑なため、このモデルで計上されない要素を力外乱ξとする。また、制御用空気圧アクチュエータは簡単のため遅れ時間τの1次遅れ系として扱い、図外の電源供給装置における信号ノイズ等を合わせて電圧の外乱ξを考慮に入れる。
このモデルから、架線、パンタグラフ、アクチュエータの状態方程式は、下の各式で表される。なお、添字は、tが架線、pがパンタグラフ、aがアクチュエータに係ることを意味する。
(架線の状態方程式)
(2.1)
Figure 2016144300
(パンタグラフの状態方程式)
(2.2)
Figure 2016144300
(制御用空気圧アクチュエータの状態方程式)
(2.3)
Figure 2016144300
以上の3式を1つの状態方程式にまとめると次式になる。
(2.4)
Figure 2016144300
第1式中の破線は、第2式の行列やベクトルの内容を示すために引いたものである。
この式に、外生入力となる接触力fを代入することで、架線とパンタグラフが接した状態を表す数学モデルが得られる。
接触力の与え方で数学モデル構造が変化する。たとえば、接触力を仮想的なばねダンパで表すことができる。また、接触力を系内力と扱うことにより自由度を1つ落としたモデルを構成することもできる。
図5は、接触力を仮想的なばねダンパで表したときの集電系モデル図である。
架線と舟体の接触力fを、架線と舟体の間に介装された剛性係数kを有するばねのばね力と粘性抵抗係数cを有するダンパの減衰力との和で表す。このばねダンパが十分硬ければ、架線と舟体の変位差は小さくなって架線と舟体が接触している状態の数学モデルが構築される。
ここでは、接触力fは次の出力方程式によって得られる。
(2.5)
=[−k −c 0 0 0][x]T
ここで、xはトロリ線の状態ベクトルを表し、x=[x Dx]Tである。また、xはパンタグラフの状態ベクトルを表し、x=[x Dx Dx]Tである。
これを式(2.4)に代入し整理すると、接触力を仮想的なばねダンパで置き換えた数学モデルに係る状態方程式が次式で得られる。
(2.6)
Figure 2016144300
添字sdは、接触力をばねsとダンパdに置き換えたモデルに係ることを意味する。
ここで、ばねダンパが十分大きければ架線と舟体が一体で運動するとみなすことができる。架線と舟体を一体とした慣性系の速度は、一体化した架線と舟体の変位をxt1で表すと、次式になる。
(2.7)
Dxt1=(mDx+mDx)/(m+m
また、一体化した架線と舟体の変位は、上式の両辺を積分したものとなる。
そこで、架線と舟体の相対変位eと相対速度Deをそれぞれe=x−x,De=Dx−Dxと定義したときに、状態変数xをeとxt1の項を含む状態変数zsd=[e De xt1 Dxt1 Dx]Tに変換する変換行列Tは下の式に表される。
(2.8)
Figure 2016144300
式(2.6)を変換行列Tで変数変換すると、下の式になる。
(2.9)
Figure 2016144300
ここで、接触力f
(2.10)
=[k 0 0 0 0 0]zsd
となる。
架線と舟体の間のばねダンパk,cが十分硬いため、k>>k,k,k、c>>c,c,cとすることができる。また、実物に即すると、架線質量は舟体や枠組の質量と比べて大きいためm>>m,mとすることができる。式(2.9)にこの条件を取り込んで整理すると、簡略された次式が得られる。
(2.11)
Figure 2016144300
ここで、1,2行目の相対速度ダイナミクス[De De]に注目すると、ばねダンパが十分に大きいことから、支配的な項はシステム行列左上(2×2)要素となり、式(2.11)の特性方程式は、次式のように、3つの行列式の積として表される。
(2.12)
Figure 2016144300
ばねダンパk,cが大きいため、左端行列式の極は複素平面上で他の極より左に配置されるので、この系の代表極は真ん中と右端の行列式の極となる。すなわち、ばねダンパが十分硬ければ、数学モデルは5次系として扱えることが分かる。
次に、図6は、接触力を内力として架線と舟体を1つの慣性系として扱うときのモデル図である。
架線と舟体の運動方程式は、それぞれ式(2.1)と式(2.2)からも導かれるように、次の式となる。
(架線の運動方程式)
(3.1)
Figure 2016144300
(舟体の運動方程式)
(3.2)
Figure 2016144300
ここで、接触力の内力化により、架線と舟体が完全に一体化して、
(3.3)
=x,Dx=Dx,D=D
となるので、この関係を(3.1)式に代入した式と(3.2)式を連立させて解くと、接触力fが次式で得られる。
(3.4)
Figure 2016144300
さらに、架線とアクチュエータ外乱を考慮できるように、架線の状態変数x=[x Dx]とアクチュエータの状態変数fと架線外乱ξとアクチュエータ外乱ξの項を追加して、
(3.5)
Figure 2016144300
これを(2.4)式に代入すると、架線と舟体が完全に一致する場合の状態方程式が下式として得られる。
(3.6)
Figure 2016144300
架線状態ベクトルを要素として含む状態変数xが架線と舟体の相対変位eと相対速度Deを含む状態変数zifとなるように変換する変換行列Tは下の式で表される。添字ifは、接触力を内力化したモデルに係ることを表す。
(3.7)
Figure 2016144300
式(3.6)の状態方程式を変換行列Tにより変数変換すると、次式を得る。
(3.8)
Figure 2016144300
また、接触力fは次式となる。
(3.9)
Figure 2016144300
1,2行目のeのダイナミックスには入力項と外乱項に入力端が存在せず、不可制御モードであることが分かる。また、接触力を出力とすると不可観測モードでもある。また、eのダイナミックスのシステム行列は式(2.1)に示した架線単体のシステム行列となっており、安定モードである。そこで、式(3.9)からeのダイナミックスを無視すると次式が得られる。
(3.10)
Figure 2016144300
(3.11)
Figure 2016144300
こうして得られた数学モデルは、次数が小さく取り扱いやすいため、以後はこのモデルを用いて説明する。このモデルを5次モデルと呼ぶことがある。ここで、添字sは、次数が小さい5次モデルに係るものであることを表す。また、架線と舟体が一致するモデルなので、状態変数x=x=xt1,Dx=Dx=Dxt1,Dx=Dx=Dxt1と置き換えることができる。なお、以後の説明は、技術的思想として5次モデルに限らず、他のモデルにも適用できることは言うまでもない。
式(3.10)の特性方程式は次式で表される。
(3.12)
Figure 2016144300
また、アクチュエータを駆動する指令電圧uから接触力fまでの伝達関数に係る零点特性方程式は下の式となる。
(3.13)
Figure 2016144300
零点は、式(2.1)に示される架線単体の2極と−k/cの3つであることが分かる。すなわち、架線単体の挙動に添わせるような制御入力を与えることで舟体と枠組間の相対変位が常に一定になり接触力変動が出力として現れないことを示している。
以上、式(2.5)に表すように接触力に仮想ばねダンパを適用したモデルと、式(3.5)に表すように接触力を内力化したモデルでは、系の状態方程式が異なることを示した。しかし、式(2.11)で表される仮想ばねダンパを適用した数学モデルでは、架線と舟体の相対速度ダイナミックスがシステム行列の左上(2×2)要素で支配されていることと収束が十分早いことを考慮すると、3行から7行のダイナミックスが支配的になるため、式(3.10)で表される5次モデルと差異が小さく、両者が近い挙動を示すことが分かる。
なお、架線のばね定数kは、トロリ線の張力、架線支持点やハンガの位置、車体の速度によっても変化する。
図7は、支持点が50m間隔、ハンガが5m毎に設けられている架線に対して、径間中における架線の剛性変動をシミュレーションにより求めたグラフである。変動幅が非常に大きく、走行速度に応じた周波数成分を持っている。
したがって、原点を架線のどの位置に設定するかにより数学モデルが影響を受けることになる。本実施例の数学モデルでは、接触力と静押上力の平衡点を状態変数の原点としている。実際には、接触力変動が生じても離線が起きにくい程度の与圧を与えた状態である。
なお、架線の剛性変動については、外乱もしくはシステムの不確かさξに含める形で数学モデルに取り込むことができる。
本実施例の制御装置は、図7に表されるような、架線の剛性変動に起因するパンタグラフの接触力変動を緩和することを目的とする。
制御器の設計には、式(3.10)の状態方程式と式(3.11)の接触力出力方程式で表される5次モデルを用いる。接触力が基準とする値より大きいか小さいかで制御入力を切り替えるものとして、式(1.10)で示した接触力出力fを切換関数σfcに用いることとする。ここでは、5次モデルに関して求めた接触力出力fの式(3.5)に基づいて、算定する。
ただし、架線質量が舟体と枠組の質量より十分に大きいことを考慮すると共に、操作器として使用する空気圧アクチュエータに遅れがあるため接触力の変化に瞬時に応答することができないことを考慮し、軸力状態変数fに係る要素に微小な係数Nを取り込んで、切換関数行列Cと入力行列Bを掛けたものが不正則になることを防いでいる。
切換関数が正のときリレー入力が負になるように符号を調整すると、切換関数σfcは次式により算定される。
(4.1)
Figure 2016144300
ただし、Stp=[k −k −c]、xtp=[xt1 Dxt1 Dx]である。
なお、外乱が存在しない場合には、切換関数は、式(4.1)の右辺第1項のみで表され、これを公称切換関数と呼ぶ。なお、添字xは、系の状態変数xのみで定めることによる。
(4.2)
σ=[Stp −N][xtp]
ここで、スライディングモード(架線・パンタグラフサブシステム)状態変数xtpと軸力状態変数fを含む状態ベクトルと、スライディングモード状態変数xtpと公称切換関数σを含む状態ベクトルの相互間の変数変換は、変換行列、逆変換行列を用いて次式のように行うことができる。
(4.3)
Figure 2016144300
式(3.10)で得られた5次モデルにシステムの不確かさをΔで示した第4項を加えた状態方程式を次式に示す。
(4.4)
Figure 2016144300
式(4.4)に式(4.3)に示した変数変換を施すと、軸力状態変数fを公称切換関数σに入れ変えた状態方程式が得られる。
(4.5)
Figure 2016144300
さらに、式(4.1)に従い、上記公称切換関数σに外乱項gξ(ξ,ξ)を加味して得た切換関数σfcを時間微分すると、下式の切換関数ダイナミックスを得る。
(4.6)
Figure 2016144300
等価制御入力ueqは、切換関数ダイナミックスDσfc=0として、式(4.6)を制御入力uについて解くことにより、次式の通り得られる。
(4.7)
eq=(NB)−1{Aσ1tp+Aσ2σfc}
+(NB)−1{Stptpξtp−NGξ+ΔAσ1tp
+ΔAσ2σfc+Aσ2ξ(ξ,ξ)−gDξ(ξ,ξ)}
外乱の微分項があることが特徴である。
ここで、右辺第1項は外乱を入れない公称等価制御入力であって、式(1.11)の外乱を除いた右辺第1項にC=Stp−Nの関係を代入して得られる下の式で表される公称等価制御入力unomと等価である。
(4.8)
nom=−([Stp−N]B)−1[Stp−N]A
式(4.8)に基づいてフィードバックゲイン制御則を次式の通り得ることができる。
(4.9)
Figure 2016144300
さらに、m>>m,m、k>>c、k=0の条件を考慮すると、次式に簡略化される。
(4.10)
Figure 2016144300
式(4.10)によれば、舟体変位と枠組変位および舟体速度と枠組速度に対応する要素が正負逆の同値になっているから、舟体と枠組の相対変位と相対速度および軸力の情報のみを使って公称等価制御入力unomを求めることができる。公称等価制御入力unomはDσfc=0にする機能を有する。この式を用いることで、部品点数が多く構造が複雑な枠組に関するパラメータは質量mのみ使えばよく、また架線に関するパラメータは使わないため、実装も容易であることが期待できる。
また、Nを0に近づけるとハイゲインになることが分かる。アクチュエータの即応性を高め、1次遅れの影響を無くして、切換関数ゼロを維持するには無限大の制御入力が必要になり現実的でない。
制御入力uとして、次式で表すように、公称等価制御入力unomと比例到達則入力とリレー入力を複合したものを採用する。
(4.11)
=(NB)−1{Aσ1tp+Aσ2σfc}+(NB)−1Φσfc
+(NB)−1ρsgn(σfc
Φは正のスカラー数、ρはリレーゲインで正のスカラー数である。
右辺第1項は公称等価制御入力unom、第2項は比例到達則入力、第3項はリレー入力である。比例到達則は、初期状態からより早くスライディングモードに到達することを狙って切換関数に比例する制御入力を出力する。
式(4.11)を式(4.6)に代入することにより、下の式が得られる。
(4.12)
Dσfc=−Φσfc−ρsgn(σfc)+Sfcfcξfc−NGξ
+ΔAσ1tp+ΔAσ2σfc+Aσ2ξ(ξ,ξ
+ΔAσ2ξ(ξ,ξ)−gDξ(ξ,ξ
切換関数のリアプノフ関数を正定関数である次式に設定する。
(4.13)
V=σfc
このとき、これの導関数が負関数であれば、切換関数がゼロに収束しスライディングモード状態に移行することが保証される。
リアプノフ関数の導関数は下の式で表される。
(4.14)
DV=2σfc・Dσfc
=−2Φσfc
−2σfc{ρsgn(σfc)−Sfcfcξfc+NGξ
−ΔAσ1tp−ΔAσ2σfc−Aσ2ξ(ξ,ξ
−ΔAσ2ξ(ξ,ξ)+gDξ(ξ,ξ)}
≦−2Φσfc
−2σfc{ρ−||Sfcfc||・||ξfc||−|NG|・|ξ|
−||Aσ1||・||xtp||−|ΔAσ2|・|σfc|
−||Aσ2||・||ξ(ξ,ξ)||
−||ΔAσ2||・||ξ(ξ,ξ)||
−||g||・||Dξ(ξ,ξ)||}
式(4.14)において、{ }内の外乱・不確かさ項をdと置けば、下式になる。
(4.15)
DV≦−2Φσfc −2|σfc|(ρ−d)
リレーゲインρが外乱・不確かさdより小さいときは、導関数が正になる場合が有るが、ρがdより大きければ切換関数σfcの全域でリアプノフ導関数が負になるため、切換関数はゼロに収束しスライディングモードが発生することが分かる。
しかし、考慮すべき不確かさが多いこと、リレー入力によるチャタリングの問題、デジタル制御化の問題などがあるため、実装のためには、リレーゲインρを試行錯誤的に決めていくことが好ましい。
なお、リレー入力において符号関数sgn(σ)に代えて飽和関数sat(σ)を用いることにより、これらの問題を緩和することもできる。
図8は、飽和関数sat(σ)を用いた場合の、切換関数と飽和関数制御入力の関係を示すグラフである。使用する飽和関数制御入力は、切換関数の絶対値|σfc|がδ以下になる境界層内で、制御入力が切換関数と比例関係になるように設定したものである。
飽和関数sat(σ)を組み込んだ切換関数のリアプノフ導関数は、δで決まる境界層の内では負にならないこともあるが、リレーゲインρを外乱・不確かさdより大きい理想的なリレー入力が作れれば、上記境界層の外では負関数となり、接触力変動幅は飽和関数のδで抑えることができる。
上記のスライディングモード制御器では、設計パラメータNを取り込んで公称等価制御入力unomを決定した。リレー入力に切換関数、公称等価制御入力に公称切換関数を用いており、切換関数行列が異なっている。そして公称切換関数は設計パラメータNによって特性が変化する。
ここでは、これと異なるアプローチとして、設計パラメータNの代わりに、最適制御理論を用いて重みを設計パラメータとして公称等価制御入力unomを決定する。
状態変数の一つを外乱項を含まない公称接触力fに入れ替えるように変数変換する。そして、スライディングモード状態で、公称接触力変動が小さくなるように、重みをかけた切換関数行列を設計する。一方、リレー入力に用いる切換関数には外乱項を含む接触力fを用いる。したがって、スライディングモード状態は、接触力f=0のときである。
制御対象を下の式で記述する。
(5.1)
Figure 2016144300
tp=[xt1 Dxt1 Dx]は、架線とパンタグラフの状態変数を表す。式の上段は架線・パンタグラフのダイナミクスを表し、下段がアクチュエータのダイナミクスを表す。
状態ベクトルxtpと公称接触力fを要素として含む状態ベクトルxfx=[f Dxt1 Dx]の間の変数変換を行う変換行列Tfxは式(3.4)を参照すると次式で表される。
(5.2)
Figure 2016144300
この変換行列は、次式のような関係を持つ。
(5.3)
Figure 2016144300
式(5.1)を変数変換すると、次式が得られる。
(5.4)
Figure 2016144300
公称切換関数σomを次式に定める。
(5.5)
Figure 2016144300
fxは状態変数に係る切換行列(行ベクトル)、Sは軸力fに係る切換行列(スカラー)である。
切換関数σomがスライディングモード状態であるときの軸力fは、式(5.5)においてσom=0であるので、次式となる。
(5.6)
=−S −1fxfx
式(5.4)と式(5.5)から、xfxダイナミクスは次式のようになる。
(5.7)
Dxfx=Tfx11tpfx11 −1fx+Tfx11tp
={(Tfx11tpfx11 −1)
−(Tfx11tp)S −1fx }xfx
式(5.7)がスライディングモード状態でのシステム行列となる。
そして、最適制御手法を用いた切換関数行列設計法に則り、切換平面を決定する。つまり、下式のスライディングモード状態変数xfxによる評価関数Jの最小化問題を解くことになる。
(5.8)
Figure 2016144300
ここで、Qは重み行列で、次式の対角行列である。
(5.9)
Figure 2016144300
ただし、qfx,qDx1,qx2,qDx2,qfaは、それぞれ、公称接触力f、舟体速度Dx、枠組変位x、枠組速度Dx、軸力fの重みを表している。
公称接触力の重みqfaを他の状態変数と比べて大きく設定して、最適制御手法に則り、接触力変動を抑えるような公称切換関数行列を求める。
得られた切換関数行列により表した公称切換関数の式(5.5)を、元の状態変数x=[xtp]の関数に戻すと、下の式になる。
(5.10)
Figure 2016144300
上記のように公称等価制御入力を決定し、さらに厳密な接触力の関数であるリレー入力と比例到達則を加えることにより、制御入力が次式のように決められる。
(5.11)
Figure 2016144300
(シミュレーションによる確認)
シミュレーションにより、本発明の制御装置の性能を確認した。
シミュレーションには、実機とよく整合する値として認められてきた下のパラメータを使用した。
=100kg,m=2kg,m=15kg,
=100Ns/m,c=60Ns/m,c=80Ns/m,
(t)=kt1−kt0|sin(2πft)|,
t1=6000N/m,kt0=5000N/m,f=2Hz,k=38000N/m。
図9は、シミュレーションの対象としたモデルを示すブロック図である。
シミュレーションには、パンタグラフの質量系が水平移動する線形モデルを用い、架線剛性kを2Hzで変動させた場合について、各状態量の挙動を観察し制御による接触力変動抑制の効果を確認した。
普通の解析では、各質点の変位の原点は重力とばね力が釣り合ったところに置けばよいが、図に示すように水平配置した線形モデルを用いるときは、質点は重力の影響を受けないので、ばねが自然長で釣り合って、架線剛性を変動させても系は動かない。そのため、シミュレーションでは、54Nの静押上力fを枠組に作用させた後、振動が収まりバランスしたところを状態量の原点とした。状態量が原点に落ち着いているところから架線剛性の変動を開始して、接触力がある程度安定した時点で制御を開始した。
図10は、架線剛性kの変化を示すグラフである。架線剛性kは1000〜6000N/mの間を2Hzの周期で変動させた。剛性のピーク位置が、パンタグラフが支持点を通過したときに対応する。
図11は、図10の架線剛性kの挙動に対応する接触力f変動を示すグラフである。
接触力fは、架線剛性kの振動に伴いほぼ46〜66Nの振幅約20Nの間で周期的に変動している。
次に、上記のシステムについて本発明に係る制御系を構成した場合について、シミュレーションした結果について説明する。
図12は、本シミュレーションに使った制御アルゴリズムを示すブロック図である。
シミュレーションした制御系は、舟体の変位xと速度Dx、枠組の変位xと速度Dx、アクチュエータの軸力fの測定値xを使い、式(4.10)に従い、予め知られたパラメータである舟体の剛性係数k1と粘性抵抗係数c1、枠組の質量m2,アクチュエータ時定数τ、軸力から接触力へのDCゲインap、入力から軸力へのDCゲインaa、設計パラメータNを使って、公称等価制御入力unom(図中ueq)を算定する。
また、状態変数の測定値を使い、式(4.1)に基づいて、予め知られた舟体の剛性係数と粘性抵抗係数c1と設計パラメータNを使って、切換関数σfcを求める。
さらに、切換関数σfcに制御ゲインφを掛けて比例到達則入力uとし、切換関数σfcの符号に応じて制御入力を切り替えて非線形入力unlとする。指令電圧vは、公称等価制御入力unomと比例到達則入力uと非線形入力unlを加算して求める。
スライディングモード制御器のパラメータは、式(4.2)に従って公称切換関数σを求めるための公称切換関数行列を下式の通りとし、
(6.1)
[Stp −N]=[38000 60 −38000 −60|−0.002]
さらに、境界層δを2N、リレーゲインρを2V、比例到達則ゲインΦを2Vとした。
図13は指令電圧vの変動を表すグラフ、図14は軸力fの応答を示すグラフである。
また、図15は、制御下の接触力fの挙動と開ループにおける接触力fの挙動を比較して示すグラフである。制御下における接触力fの変動幅は約3Nと開ループに対して約85%減少しており、この制御器により接触力変動が大幅に減少することが分かる。接触力fの振幅は、境界層δ内に収まっている。
図16は、公称切換関数σの変動を表示したグラフである。接触力応答と波形がよく一致している。
なお、公称等価制御入力unomを求める式(4.10)の係数行列は、舟体変位と枠組変位および舟体速度と枠組速度に対応する要素が正負逆の同値になっているから、舟体と枠組の相対変位(x−x)と相対速度(Dx−Dx)および軸力fの情報のみを使って、近似的に公称等価制御入力unomを求めることができる。舟体と枠組の相対変位と相対速度は、専用のセンサを用いることで得ることもできる。
また、切換関数σfcは状態変数の測定値xから求める代わりに、力センサを設けて、直接測定した接触力fを用いて求めることもできる。
以上の通り、本発明の制御装置により接触力変動を抑制できることが確認できた。また、切換関数を出力とすることで、外乱や不確かさに対しても接触力fの変動を抑えることができることが分かった。
1 舟体
2 枠組
2a 上枠
2b 下枠
2c バランスロッド
2d 釣合棒
2e 主ばね
2f 下降用空気圧シリンダ
2g ダンパ
3 制御用空気圧アクチュエータ
4 車両
5 トロリ線
10 パンタグラフ
11 舟体
12 パンタグラフ枠組
13 空気圧アクチュエータ
13a ロードセル
14 車体天井
15 架線
16 レーザ変位計
21 制御器
22 入力変換器
23 出力変換器
31 状態変数
32 係数行列
33 演算器
34 切換行列
35 演算器
36 制御ゲイン
37 関数選択器
38 制御ゲイン
39 加算器

Claims (6)

  1. 架線に接して集電する舟体と、舟体を架線に向かって接離する枠組と、枠組を駆動するアクチュエータとを備えたパンタグラフにおける架線に対する接触力の変動を抑制する制御装置であって、前記舟体の質量、前記枠組の質量、該舟体と該枠組の間の剛性と減衰性能、前記パンタグラフのダンパ性能、設計パラメータ、制御ゲイン、前記アクチュエータのゲインと時定数、および前記パンタグラフのゲインとに基づいて定める係数行列に対して、前記舟体の変位と速度および前記枠組の変位と速度、さらに前記アクチュエータの軸力とからなる状態変数を作用させて求める切換関数を利用した制御指令信号を生成してスライディングモード制御を実行する制御装置を備え、該制御指令信号により前記アクチュエータの軸力を調整して、走行中の架線と舟体の接触力変動を低減させるパンタグラフの接触力変動低減装置。
  2. 前記制御指令信号は、前記状態変数をスライディングモード状態に維持するための公称等価入力部と、前記切換関数に基づいて得た状態変数がスライディングモードから遠いほど早くスライディングモードに近付けるための比例到達則入力部と、前記切換関数の符号に応じて制御入力を切り替えて前記状態変数をスライディングモードに近付けるための非線形入力部で構成することを特徴とする請求項1記載のパンタグラフの接触力変動低減装置。
  3. 前記パンタグラフの状態方程式をDx=Ax+Bu、切換関数σをσ=Sx、(ここで、Aはシステム行列、Bは入力行列、Sは切換関数行列、xは状態変数、uは制御入力、Dは微分演算子である。)と表すとき、
    公称等価制御入力ueqを、ueq=−(SB)−1SAx
    比例到達則入力uを、u=−(SB)−1Φσ
    非線形入力unlを、unl=(SB)−1ρsgn(σ)
    (ここで、Φは制御ゲイン、ρはリレーゲイン、sgnは符号関数である。)として、制御入力uがu=ueq+u+unlで表されることを特徴とする請求項1または2に記載のパンタグラフの接触力変動低減装置。
  4. 前記符号関数に代えて、飽和関数を用いることを特徴とする請求項3記載のパンタグラフの接触力変動低減装置。
  5. 前記舟体の変位と速度は、加速度計、レーザードップラー振動計、レーザー変位計のいずれかにより測定され、および前記枠組の変位と速度は、加速度計、レーザードップラー振動計、レーザー変位計、枠組の関節部に設けられるロータリーエンコーダのいずれかにより測定され、前記アクチュエータの軸力はロードセルにより測定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のパンタグラフの接触力変動低減装置。
  6. 前記舟体の変位と速度および前記枠組の変位と速度に代えて、前記舟体と前記枠組の相対変位と相対速度を用いることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のパンタグラフの接触力変動低減装置。
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CN106004457A (zh) * 2016-08-09 2016-10-12 涓ョ淮 一种用于城市轨道交通车辆的防震调节式受电弓
CN106004457B (zh) * 2016-08-09 2017-03-22 严维 一种用于城市轨道交通车辆的防震调节式受电弓

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