JP2016129524A - 改善された遺伝子治療方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】改善された遺伝子治療方法の提供。【解決手段】本発明は、一般に、改善された遺伝子治療ベクター、細胞に基づく組成物、およびそれを遺伝子治療の方法において使用する方法を提供する。本発明は、造血細胞を増大させるための改善された遺伝子治療組成物、ならびにサラセミアおよび貧血などの造血系の疾患、障害、および状態を処置するための関連する方法をさらに提供する。種々の実施形態では、本発明は、一部において、左側の(5’)レトロウイルスLTRと、目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞発現制御配列と、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した遍在発現制御配列と、右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含むベクターを意図している。【選択図】図3

Description

配列表に関する陳述
本出願に付随する配列表は、紙コピーの代わりにテキスト形式で提供され、これによって参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称はBLBD_005_00WO_ST25.txtである。テキストファイルは95KBであり、2011年9月23日に作成され、EFS−Webを介して電子的に提出されている。
背景
技術分野
本発明は、一般に、細胞を増大させるため、および遺伝子治療を用いて障害を処置するために使用する組成物に関する。より詳細には、本発明は、造血細胞を増大させるための改善された遺伝子治療組成物、ならびに造血系の疾患、障害、および状態を処置するための関連する方法に関する。
先行技術の説明
遺伝子治療の分野における最近の進歩により、βサラセミアおよび鎌状赤血球貧血などの異常ヘモグロビン症を患っている患者が新規の治療的手法から恩恵を受けることになるという期待が高まっている。β−グロビン遺伝子を保有するレンチウイルスベクターを用いて改変した造血細胞(HC)を移植することにより、ヘモグロビン障害のいくつかのマウスモデルの長期にわたる調整(correction)がもたらされた(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)が、対照的に、わずか1名のβサラセミア患者で輸血非依存性が導かれた(非特許文献5)。遺伝子改変された自己細胞を注入することの主要な利点は、GVHDおよび免疫抑制性移植前処置のリスクを回避すること、ならびに適合するドナーの不足に対処することであるが、現行の療法では、少なくとも3つの実質的な警告:毒性の骨髄破壊が必要条件であること(非特許文献6);現行の遺伝子移入方法では造血幹細胞(HSC)をほんの一部しか形質導入することができないこと(非特許文献7);ならびに、利用可能な種々のin vivo選択戦略は有効性および安全性が最適以下になること(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)に直面する。
例えば、βサラセミアレシピエントマウスでは、安定な生着および表現型の改善を実現するために、少なくとも200ラドの放射線照射および非常に高用量の骨髄細胞(>20×10)が必要であった(非特許文献11。しかし、放射線を照射したマウスレピシエント(非特許文献12)ならびに骨髄破壊されていないマウスレシピエント(非特許文献13)におけるサイトカイン増大骨髄細胞の長期再増殖能は欠陥があり、その結果、移植前順化レジメンの非存在下ではマウスおよび患者におけるレトロウイルスにより形質導入された細胞の生着が低レベルになる(非特許文献14)。
したがって、当技術分野において、造血障害を処置または予防するための改善された遺伝子治療の方法が必要である。本発明は、当技術分野で厄介なこれらおよび他の問題に対する解決を提供する。
Imrenら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2002年;99巻(22号):14380〜14385頁 Malikら、Ann NY Acad Sci. 2005年;1054巻:238〜249頁 Mayら、Nature. 2000年;406巻(6791号):82〜86頁 Pawliukら、Science. 2001年;294巻(5550号):2368〜2371頁 Cavazzana−Calvoら、Nature. 2010年;467巻(7313号):318〜322頁 Dunbarら、Hum Gene Ther. 1998年;9巻(17号):2629〜2640頁 Santoni de SioおよびNaldini、Methods Mol Biol. 2009年;506巻:59〜70頁 Beardら、J Clin Invest. 2010年;120巻(7号):2345〜2354頁 Cornettaら、Cancer Gene Ther. 2006年;13巻(9号):886〜895頁 Milsomら、Cancer Res. 2008年;68巻(15号):6171〜6180頁 Bradleyら、Biol Blood Marrow Transplant. 2002年;8巻(8号):453〜461頁 Petersら、Blood. 1996年;87巻(1号):30〜37頁 Ramshawら、Blood. 1995年;86巻(3号):924〜929頁 Dunbarら、1998年;Kittlerら、Blood. 1997年;90巻(2号):865〜872頁
簡単な要旨
本発明は、細胞を増大させるためおよび遺伝子治療を用いて障害を処置するための組成物を提供する。種々の実施形態では、本発明は、造血細胞を増大させるための改善された遺伝子治療組成物、ならびに造血系の疾患、障害、および状態を処置するための関連する方法を提供する。
種々の実施形態では、本発明は、一部において、左側の(5’)レトロウイルスLTRと、目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞発現制御配列と、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した遍在発現制御配列と、右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含むベクターを意図している。
特定の実施形態では、造血細胞発現制御配列は造血幹細胞プロモーターまたは造血前駆細胞プロモーターである。
ある実施形態では、造血細胞発現制御配列は、赤血球系細胞特異的プロモーターおよび必要に応じて赤血球系細胞特異的エンハンサーを含む。
さらなる実施形態では、造血細胞発現制御配列は、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される。
追加的な実施形態では、遍在発現制御配列は、サイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター(CMV)、伸長因子1アルファプロモーター(EF1−α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1プロモーター(PGK)、ユビキチン−Cプロモーター(UBQ−C)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチンプロモーター(CAG)、ポリオーマエンハンサー/単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(MC1)、ベータアクチンプロモーター(β−ACT)、およびシミアンウイルス40プロモーター(SV40)からなる群から選択される。
特定の一実施形態では、目的の遺伝子は、ヒトβ−グロビン、ヒトδ−グロビン、およびヒトγ−グロビンからなる群から選択される。
別の特定の実施形態では、ヒトβ−グロビン遺伝子は、コドン87におけるトレオニンからグルタミンへの変異(βA−T87Q)をコードするヒトβA−グロビン遺伝子またはヒトβA−グロビン遺伝子である。
ある特定の実施形態では、tEpoRはC末端切断を含む。
特定の追加的な実施形態では、C末端切断により、tEpoRのターンオーバーは内因性のエリスロポエチン受容体(EpoR)と比較して低下する。
さらなる特定の実施形態では、C末端切断により、tEpoRの半減期は内因性のエリスロポエチン受容体(EpoR)と比較して増加する。
種々の実施形態では、本発明は、一部において、左側の(5’)レトロウイルスLTRと、目的の遺伝子に作動可能に連結した第1の赤血球系細胞特異的発現制御配列と、tEpoRに作動可能に連結した第2の赤血球系細胞特異的発現制御配列と、右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含むベクターを意図している。
一実施形態では、第1の赤血球系細胞特異的発現制御配列は、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される。
特定の実施形態では、第2の赤血球系細胞特異的発現制御配列は、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される。
ある実施形態では、目的の遺伝子は、ヒトβ−グロビン、ヒトδ−グロビン、およびヒトγ−グロビンからなる群から選択される。
ある特定の実施形態では、ヒトβ−グロビン遺伝子は、野生型ヒトβ−グロビン遺伝子、イントロン配列の1つまたは複数の欠失を含む欠失ヒトβ−グロビン遺伝子、および少なくとも1つの抗鎌状赤血球化アミノ酸残基をコードする変異ヒトβ−グロビン遺伝子からなる群から選択される。
さらなる実施形態では、ヒトβ−グロビン遺伝子は、コドン87におけるトレオニンからグルタミンへの変異(βA−T87Q)をコードするヒトβA−グロビン遺伝子またはヒトβA−グロビン遺伝子である。
さらなる特定の実施形態では、tEpoRはC末端切断を含む。
追加的な実施形態では、tEpoRは約10〜約100アミノ酸のC末端切断を含む。
さらなる追加的な実施形態では、tEpoRは50〜60アミノ酸のC末端切断を含む。
特定の一実施形態では、tEpoRは80〜90アミノ酸のC末端切断を含む。
別の特定の実施形態では、tEpoRは85〜95アミノ酸のC末端切断を含む。
さらに別の特定の実施形態では、tEpoRは、約55アミノ酸、約83アミノ酸、または約91アミノ酸のC末端切断を含む。
種々の実施形態では、本発明は、一部において、左側の(5’)レトロウイルスLTRと、目的の遺伝子に作動可能に連結したβ−グロビンプロモーターおよびβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した発現制御配列と、右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含むベクターを意図している。
一実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、レンチウイルスベクターである。
ある実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、レンチウイルス由来の5’LTRまたは3’LTR、すなわち、1つのレンチウイルスLTRを含む。
ある特定の実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、レンチウイルス由来の5’LTRおよび3’LTR、すなわち、複数のレンチウイルスLTRを含む。
あるさらなる実施形態では、レンチウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎−脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択される。
ある追加的な実施形態では、レンチウイルスはHIV−1である。
特定の追加的な実施形態では、5’LTRのプロモーターは異種プロモーターで置き換えられる。
特定のさらなる実施形態では、異種プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、チミジンキナーゼプロモーター、またはシミアンウイルス40(SV40)プロモーターである。
ある特定の実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、1つまたは複数の改変を含む3’LTRを含む。
特定の実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、1つまたは複数の欠失を含む3’LTRを含む。
特定の一実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、自己不活性化(self−inactivating)(SIN)LTRである3’LTRを含む。
一実施形態では、β−グロビンプロモーターはヒトβ−グロビンプロモーターである。
別の実施形態では、β−グロビンLCRは、ヒトβ−グロビンLCR由来のDNAアーゼI高感受性部位2、3および4のうちの1つまたは複数を含む。
追加的な実施形態では、目的の遺伝子はグロビン遺伝子である。
さらなる実施形態では、グロビン遺伝子は、ヒトβ−グロビン、ヒトδ−グロビン、およびヒトγ−グロビンからなる群から選択される。
ある実施形態では、ヒトβ−グロビン遺伝子は、野生型ヒトβ−グロビン遺伝子、イントロン配列の1つまたは複数の欠失を含む欠失ヒトβ−グロビン遺伝子、および少なくとも1つの抗鎌状赤血球化アミノ酸残基をコードする変異ヒトβ−グロビン遺伝子からなる群から選択される。
特定の実施形態では、ヒトβ−グロビン遺伝子はコドン87におけるトレオニンからグルタミンへの変異(βA−T87Q)をコードするヒトβA−グロビン遺伝子またはヒトβA−グロビン遺伝子である。
特定の一実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、ヒトβ−グロビン3’エンハンサーエレメントをさらに含む。
さらなる実施形態では、発現制御配列は、サイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター(CMV)、伸長因子1アルファプロモーター(EF1−α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1プロモーター(PGK)、ユビキチン−Cプロモーター(UBQ−C)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチンプロモーター(CAG)、ポリオーマエンハンサー/単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(MC1)、ベータアクチンプロモーター(β−ACT)、およびシミアンウイルス40プロモーター(SV40)からなる群から選択される遍在発現制御配列である。
特定の実施形態では、発現制御配列は、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される赤血球特異的発現制御配列である。
ある特定の実施形態では、赤血球特異的発現制御配列はヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターを含む。
特定の実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、プサイパッケージング配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト(central polypurine tract)/DNAフラップ(DNA flap)(cPPT/FLAP)と、レトロウイルス輸送エレメント(retroviral export element)と、転写後調節エレメントと、インスレーターエレメントと、ポリアデニル化配列と、選択マーカーと、細胞自殺遺伝子のうちの1つまたは複数とを含む。
ある実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、プサイパッケージング配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、レトロウイルス輸送エレメントと、インスレーターエレメントと、ポリアデニル化配列とを含む。
さらなる実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、rev応答エレメント(RRE)であるレトロウイルス輸送エレメントを含む。
追加的な実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、HIV−1由来のcPPT/FLAPを含む。
一実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、最適化されたコザック配列を含む目的の遺伝子を含む。
種々の実施形態では、tEpoRは、最適化されたコザック配列を含む。
特定の実施形態では、本明細書において意図されているベクターはいずれも、最適なコザック配列(GCC)RCCATGGを含み、ここで、Rはプリン(AまたはG)である。
追加的な実施形態では、3’LTRは、少なくとも1つのインスレーターエレメントを含む。
ある追加的な実施形態では、3’LTRは、2つのインスレーターエレメントを含む。
特定の追加的な実施形態では、インスレーターは、配列番号37または配列番号38に記載のポリヌクレオチド配列を含む。
さらなる追加的な実施形態では、インスレーターは、配列番号37のヌクレオチド8〜49に記載のポリヌクレオチド配列を含む。
ある実施形態では、ポリアデニル化配列は、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、およびウサギβ−グロビンポリA配列(rβgpA)からなる群から選択される。
一実施形態においては、tEpoRは、C末端切断を含む。
別の実施形態では、tEpoRは、約10〜約100アミノ酸のC末端切断を含む。
さらに別の実施形態では、tEpoRは、50〜60アミノ酸のC末端切断を含む。
なおさらに別の実施形態では、tEpoRは、80〜90アミノ酸のC末端切断を含む。
特定の一実施形態では、tEpoRは、85〜95アミノ酸のC末端切断を含む。
さらなる実施形態では、tEpoRは、約55アミノ酸、約83アミノ酸、または約91アミノ酸のC末端切断を含む。
種々の実施形態では、本発明は、一部において、左側の(5’)レトロウイルスLTRと、プサイパッケージング配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、レトロウイルス輸送エレメントと、目的の遺伝子に作動可能に連結したβ−グロビンプロモーターおよびβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した赤血球系細胞特異的発現制御配列と、1つまたは複数のインスレーターエレメント、またはポリアデニル化配列を含む右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含むベクターを意図している。
種々の特定の実施形態では、本発明は、一部において、左側の(5’)HIV−1 LTRと、プサイパッケージング配列(Ψ+)と、HIV−1セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、rev応答エレメント(RRE)と、目的の遺伝子に作動可能に連結したβ−グロビンプロモーターおよびβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した赤血球系細胞特異的発現制御配列と、1つまたは複数のインスレーターエレメント、およびウサギβ−グロビンポリA配列(rβgpA)を含む右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターを意図している。
種々の他の実施形態では、本発明は、一部において、本明細書において意図されているベクターのいずれかを含む組成物を意図している。
一実施形態では、組成物は細胞を含む。
追加的な実施形態では、細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞、成体前駆細胞、および分化した成体細胞からなる群から選択される。
特定の実施形態では、細胞は造血幹細胞または造血前駆細胞である。
さらなる実施形態では、幹細胞または前駆細胞の供給源は骨髄、臍帯血、胎盤血、または末梢血である。
ある実施形態では、細胞は、ベクターを用いて形質導入される。
別の実施形態では、ベクターは、エピソームベクターであるまたは細胞のゲノムに組み込まれない。
特定の実施形態では、ベクターは細胞のゲノムに組み込まれる。
特定の一実施形態では、組み込みはゲノムにおける位置を標的にする。
種々の実施形態では、本発明は、一部において、形質導入された細胞を被験体に提供する方法であって、本明細書において意図されているベクターのいずれかを用いて形質導入された細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含む方法を意図している。
特定の実施形態では、形質導入された細胞は造血幹細胞を含む。
ある実施形態では、形質導入された細胞は造血前駆細胞を含む。
ある実施形態では、細胞の集団は、本明細書において意図されているベクターのいずれかを用いて形質導入された細胞を5%含む。
さらなる実施形態では、細胞の集団は、本明細書において意図されているベクターのいずれかを用いて形質導入された細胞を10%含む。
関連する特定の実施形態では、細胞の集団は、本明細書において意図されているベクターのいずれかを用いて形質導入された細胞を25%含む。
種々の実施形態では、形質導入された細胞を被験体に提供する方法は、エリスロポエチンを該被験体に投与する工程をさらに含む。
一実施形態では、細胞の集団およびエリスロポエチンを非経口的に投与する。
ある実施形態では、非経口投与は静脈内投与である。
追加的な実施形態では、エリスロポエチンを上記被験体に投与する前に細胞の集団を該被験体に投与する。
一実施形態では、被験体は異常ヘモグロビン症を有する。
特定の実施形態では、異常ヘモグロビン症は、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、サラセミアメジャー、中等症サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択される。
種々の他の実施形態では、本発明は、一部において、被験体における異常ヘモグロビン症を処置する方法であって、本明細書において意図されているベクターのいずれかを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含み、ここで、造血幹細胞または造血前駆細胞あるいは造血幹細胞または造血前駆細胞の後代細胞が、エリスロポエチンを投与した後の該被験体において、エリスロポエチンを投与する前の該被験体における造血幹細胞または造血前駆細胞あるいは後代細胞と比較して増加する方法を意図している。
特定の実施形態では、細胞の集団は骨髄、臍帯血、胎盤血、または末梢血から単離された。
追加的な実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞の5%は形質導入されている。
ある実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞の10%は形質導入されている。
さらなる実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞の25%は形質導入されている。
特定の実施形態では、被験体における異常ヘモグロビン症を処置する方法は、エリスロポエチンを該被験体に投与する工程を含む。
一実施形態では、細胞の集団およびエリスロポエチンを血管内に投与する。
さらなる実施形態では、投与は静脈内である。
別の実施形態では、異常ヘモグロビン症は、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、サラセミアメジャー、中等症サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択される。
別の特定の実施形態では、異常ヘモグロビン症はβ−サラセミアである。
ある特定の実施形態では、被験体は、骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けたまたは骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けている。
特定のさらなる実施形態では、被験体において増加した後代細胞は赤血球系細胞を含む。
追加的な特定の実施形態では、赤血球系細胞は赤血球前駆細胞である。
一実施形態では、赤血球系細胞は赤血球である。
一実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系細胞と比較して少なくとも10倍増加する。
別の実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系細胞と比較して少なくとも25倍増加する。
さらに別の実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系細胞と比較して少なくとも50倍増加する。
なおさらに別の実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系細胞と比較して少なくとも100倍増加する。
特定の実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも25倍増加する。
別の特定の実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも50倍増加する。
なおさらに別の特定の実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも100倍増加する。
なおさらに別の特定の実施形態では、赤血球系細胞は、エリスロポエチンを投与した後に、被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも150倍増加する。
種々の他の実施形態では、本発明は、一部において、被験体における赤血球系細胞の数を選択的に増大させる方法であって、本明細書において意図されているベクターのいずれかを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含み、ここで該被験体において造血幹細胞の赤血球系後代細胞の数が増大する方法を意図している。
種々の特定の実施形態では、本発明は、一部において、被験体において白血球と比較して赤血球の割合を増加させる方法であって、本明細書において意図されているベクターのいずれかを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程、エリスロポエチンを該被験体に投与する工程を含み、ここで、該被験体において、造血幹細胞の白血球後代細胞と比較して造血幹細胞の赤血球後代細胞の割合が増加する方法を意図している。
特定の実施形態では、被験体における赤血球系細胞の数を選択的に増大させる方法は、エリスロポエチンを該被験体に投与する工程を含む。
特定の実施形態では、被験体において白血球と比較して赤血球の割合を増加させる方法は、エリスロポエチンを該被験体に投与する工程を含む。
ある実施形態では、細胞の集団は骨髄、臍帯血、胎盤血、または末梢血から単離された。
一実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞の5%は形質導入されている。
別の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞の10%は形質導入されている。
さらに別の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞の25%は形質導入されている。
ある実施形態では、細胞の集団およびエリスロポエチンを血管内に投与する。
別のある実施形態では、投与は静脈内である。
さらなる実施形態では、被験体は異常ヘモグロビン症を有する。
さらなる特定の実施形態では、異常ヘモグロビン症は、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、サラセミアメジャー、中等症サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択される。
さらなる追加的な実施形態では、異常ヘモグロビン症はβ−サラセミアである。
さらなるある実施形態では、被験体は、骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けたまたは骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けている。
一実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、赤血球系後代細胞はエリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系後代細胞と比較して少なくとも10倍増加する。
別の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、赤血球系後代細胞はエリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系後代細胞と比較して少なくとも25倍増加する。
さらに別の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、赤血球系後代細胞はエリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系後代細胞と比較して少なくとも50倍増加する。
なおさらに別の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、赤血球系後代細胞はエリスロポエチンを投与する前の被験体における赤血球系後代細胞と比較して少なくとも100倍増加する。
特定の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体において、赤血球系後代細胞は非赤血球系細胞と比較して25倍増加する。
別の特定の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体において、赤血球系後代細胞は非赤血球系細胞と比較して50倍増加する。
さらに別の特定の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体において、赤血球系後代細胞は非赤血球系細胞と比較して100倍増加する。
なおさらに別の特定の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体において、赤血球系細胞後代は非赤血球系細胞と比較して150倍増加する。
種々の実施形態では、赤血球系後代細胞は赤血球を含む。
ある実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体において、RBCはWBCと比較して少なくとも25倍増加する。
別のある実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体において、RBCはWBCと比較して少なくとも50倍増加する。
さらに別のある実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体において、RBCはWBCと比較して少なくとも100倍増加する。
なおさらに別の実施形態では、エリスロポエチンを投与した後に、被験体においてRBCがWBCと比較して少なくとも150倍増加する。
本発明の好ましい実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
a)左側の(5’)レトロウイルスLTRと、
b)目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞発現制御配列と、
c)切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した遍在発現制御配列と、
d)右側の(3’)レトロウイルスLTRと
を含むベクター。
(項目2)
前記造血細胞発現制御配列が造血幹細胞プロモーターまたは造血前駆細胞プロモーターである、項目1に記載のベクター。
(項目3)
前記造血細胞発現制御配列が、赤血球系細胞特異的プロモーターおよび必要に応じて赤血球系細胞特異的エンハンサーを含む、項目1に記載のベクター。
(項目4)
前記造血細胞発現制御配列が、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される、項目3に記載のベクター。
(項目5)
前記遍在発現制御配列が、サイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター(CMV)、伸長因子1アルファプロモーター(EF1−α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1プロモーター(PGK)、ユビキチン−Cプロモーター(UBQ−C)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチンプロモーター(CAG)、ポリオーマエンハンサー/単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(MC1)、ベータアクチンプロモーター(β−ACT)、およびシミアンウイルス40プロモーター(SV40)からなる群から選択される、項目1に記載のベクター。
(項目6)
前記目的の遺伝子が、ヒトβ−グロビン、ヒトδ−グロビン、およびヒトγ−グロビンからなる群から選択される、項目1に記載のベクター。
(項目7)
前記ヒトβ−グロビン遺伝子が、コドン87におけるトレオニンからグルタミンへの変異(βA−T87Q)をコードするヒトβ−グロビン遺伝子またはヒトβ−グロビン遺伝子である、項目6に記載のベクター。
(項目8)
前記tEpoRがC末端切断を含む、項目1に記載のベクター。
(項目9)
前記C末端切断により、前記tEpoRのターンオーバーが内因性のエリスロポエチン受容体(EpoR)と比較して低下する、項目8に記載のベクター。
(項目10)
前記C末端切断により、前記tEpoRの半減期が内因性のエリスロポエチン受容体(EpoR)と比較して増加する、項目8に記載のベクター。
(項目11)
a)左側の(5’)レトロウイルスLTRと、
b)目的の遺伝子に作動可能に連結した第1の赤血球系細胞特異的発現制御配列と、
c)tEpoRに作動可能に連結した第2の赤血球系細胞特異的発現制御配列と、
d)右側の(3’)レトロウイルスLTRと
を含むベクター。
(項目12)
前記第1の赤血球系細胞特異的発現制御配列が、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される、項目11に記載のベクター。
(項目13)
前記第2の赤血球系細胞特異的発現制御配列が、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される、項目11に記載のベクター。
(項目14)
前記目的の遺伝子が、ヒトβ−グロビン、ヒトδ−グロビン、およびヒトγ−グロビンからなる群から選択される、項目11に記載のベクター。
(項目15)
前記ヒトβ−グロビン遺伝子が、野生型ヒトβ−グロビン遺伝子、イントロン配列の1つまたは複数の欠失を含む欠失ヒトβ−グロビン遺伝子、および少なくとも1つの抗鎌状赤血球化アミノ酸残基をコードする変異ヒトβ−グロビン遺伝子からなる群から選択される、項目14に記載のベクター。
(項目16)
前記ヒトβ−グロビン遺伝子が、コドン87におけるトレオニンからグルタミンへの変異(βA−T87Q)をコードするヒトβ−グロビン遺伝子またはヒトβ−グロビン遺伝子である、項目15に記載のベクター。
(項目17)
前記tEpoRがC末端切断を含む、項目11に記載のベクター。
(項目18)
前記tEpoRが約10〜約100アミノ酸のC末端切断を含む、項目11に記載のベクター。
(項目19)
前記tEpoRが50〜60アミノ酸のC末端切断を含む、項目11に記載のベクター。
(項目20)
前記tEpoRが80〜90アミノ酸のC末端切断を含む、項目11に記載のベクター。
(項目21)
前記tEpoRが85〜95アミノ酸のC末端切断を含む、項目11に記載のベクター。
(項目22)
前記tEpoRが約55アミノ酸、約83アミノ酸、または約91アミノ酸のC末端切断を含む、項目11に記載のベクター。
(項目23)
a)左側の(5’)レトロウイルスLTRと、
b)目的の遺伝子に作動可能に連結したβ−グロビンプロモーターおよびβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、
c)切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した発現制御配列と、
d)右側の(3’)レトロウイルスLTRと
を含むベクター。
(項目24)
レンチウイルスベクターである、項目1から23までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目25)
前記5’LTRまたは前記3’LTRがレンチウイルスLTRである、項目1から24までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目26)
前記5’LTRおよび前記3’LTRがレンチウイルスLTRである、項目1から24までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目27)
前記レンチウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、ビスナウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択される、項目24から26までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目28)
前記レンチウイルスがHIV−1である、項目24から26までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目29)
前記5’LTRのプロモーターが異種プロモーターと置き換えられている、項目1から28までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目30)
前記異種プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、チミジンキナーゼプロモーター、またはシミアンウイルス40(SV40)プロモーターである、項目29に記載のベクター。
(項目31)
前記3’LTRが1つまたは複数の改変を含む、項目1から30までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目32)
前記3’LTRが1つまたは複数の欠失を含む、項目1から31までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目33)
前記3’LTRが自己不活性化(SIN)LTRである、項目1から32までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目34)
前記β−グロビンプロモーターがヒトβ−グロビンプロモーターである、項目23に記載のベクター。
(項目35)
前記β−グロビンLCRが、ヒトβ−グロビンLCR由来のDNAアーゼI高感受性部位2、3および4のうちの1つまたは複数を含む、項目23に記載のベクター。
(項目36)
前記目的の遺伝子がグロビン遺伝子である、項目23に記載のベクター。
(項目37)
前記グロビン遺伝子が、ヒトβ−グロビン、ヒトδ−グロビン、およびヒトγ−グロビンからなる群から選択される、項目36に記載のベクター。
(項目38)
前記ヒトβ−グロビン遺伝子が、野生型ヒトβ−グロビン遺伝子、イントロン配列の1つまたは複数の欠失を含む欠失ヒトβ−グロビン遺伝子、および少なくとも1つの抗鎌状赤血球化アミノ酸残基をコードする変異ヒトβ−グロビン遺伝子からなる群から選択される、項目37に記載のベクター。
(項目39)
前記ヒトβ−グロビン遺伝子が、コドン87におけるトレオニンからグルタミンへの変異(βA−T87Q)をコードするヒトβ−グロビン遺伝子またはヒトβ−グロビン遺伝子である、項目37に記載のベクター。
(項目40)
ヒトβ−グロビン3’エンハンサーエレメントをさらに含む、項目23に記載のベクター。
(項目41)
前記発現制御配列が、サイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター(CMV)、伸長因子1アルファプロモーター(EF1−α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1プロモーター(PGK)、ユビキチン−Cプロモーター(UBQ−C)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチンプロモーター(CAG)、ポリオーマエンハンサー/単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(MC1)、ベータアクチンプロモーター(β−ACT)、およびシミアンウイルス40プロモーター(SV40)からなる群から選択される遍在発現制御配列である、項目23に記載のベクター。
(項目42)
前記発現制御配列が、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される赤血球特異的発現制御配列である、項目23に記載のベクター。
(項目43)
前記赤血球特異的発現制御配列がヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターを含む、項目23に記載のベクター。
(項目44)
プサイパッケージング配列(Ψ)、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)、レトロウイルス輸送エレメント、転写後調節エレメント、インスレーターエレメント、ポリアデニル化配列、選択マーカー、および細胞自殺遺伝子のうちの1つまたは複数をさらに含む、項目1から43までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目45)
プサイパッケージング配列(Ψ)、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)、レトロウイルス輸送エレメント、インスレーターエレメント、およびポリアデニル化配列を含む、項目1から43までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目46)
前記レトロウイルス輸送エレメントがrev応答エレメント(RRE)である、項目1から45までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目47)
前記cPPT/FLAPがHIV−1由来である、項目1から46までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目48)
前記目的の遺伝子が、最適化されたコザック配列を含む、項目1から46までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目49)
前記tEpoRが、最適化されたコザック配列を含む、項目23に記載のベクター。
(項目50)
前記最適なコザック配列が(GCC)RCCATGGであり、ここで、Rがプリン(AまたはG)である、項目1から47までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目51)
前記3’LTRが、少なくとも1つのインスレーターエレメントを含む、項目44から45までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目52)
前記3’LTRが、2つのインスレーターエレメントを含む、項目44から45までのいずれか一項に記載のベクター。
(項目53)
配列番号37のヌクレオチド8〜49に記載のインスレーター配列を含む、項目51または項目52に記載のベクター。
(項目54)
配列番号38に記載のインスレーター配列を含む、項目51または項目52に記載のベクター。
(項目55)
前記ポリアデニル化配列が、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、およびウサギβ−グロビンポリA配列(rβgpA)からなる群から選択される、項目44または項目45に記載のベクター。
(項目56)
前記tEpoRが、C末端切断を含む、項目23に記載のベクター。
(項目57)
前記tEpoRが、約10〜約100アミノ酸のC末端切断を含む、項目23に記載のベクター。
(項目58)
前記tEpoRが、50〜60アミノ酸のC末端切断を含む、項目23に記載のベクター。
(項目59)
前記tEpoRが、80〜90アミノ酸のC末端切断を含む、項目23に記載のベクター。
(項目60)
前記tEpoRが、85〜95アミノ酸のC末端切断を含む、項目23に記載のベクター。
(項目61)
前記tEpoRが、約55アミノ酸、約83アミノ酸、または約91アミノ酸のC末端切断を含む、項目23に記載のベクター。
(項目62)
a)左側の(5’)レトロウイルスLTRと、
b)プサイパッケージング配列(Ψ+)と、
c)セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、
d)レトロウイルス輸送エレメントと、
e)目的の遺伝子に作動可能に連結したβ−グロビンプロモーターおよびβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、
f)切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した赤血球系細胞特異的発現制御配列と、
g)
i)1つまたは複数のインスレーターエレメント、または
ii)ポリアデニル化配列
を含む右側の(3’)レトロウイルスLTRと
を含むベクター。
(項目63)
a)左側の(5’)HIV−1 LTRと、
b)プサイパッケージング配列(Ψ+)と、
c)HIV−1セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、
d)rev応答エレメント(RRE)と、
e)目的の遺伝子に作動可能に連結したβ−グロビンプロモーターおよびβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、
f)切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した赤血球系細胞特異的発現制御配列と、
g)
i)1つまたは複数のインスレーターエレメント、および
ii)ウサギβ−グロビンポリA配列(rβgpA)
を含む右側の(3’)レトロウイルスLTRと
を含むレンチウイルスベクター。
(項目64)
項目1から63までのいずれか一項に記載のベクターを含む組成物。
(項目65)
細胞を含む、項目64に記載の組成物。
(項目66)
前記細胞が、胚性幹細胞、成体幹細胞、成体前駆細胞、および分化した成体細胞からなる群から選択される、項目65に記載の組成物。
(項目67)
前記細胞が造血幹細胞または造血前駆細胞である、項目65に記載の組成物。
(項目68)
前記幹細胞または前記前駆細胞の供給源が骨髄、臍帯血、胎盤血、または末梢血である、項目67に記載の組成物。
(項目69)
前記細胞が、前記ベクターを用いて形質導入されている、項目65に記載の組成物。
(項目70)
前記ベクターが、エピソームベクターであるまたは前記細胞のゲノムに組み込まれない、項目65に記載の組成物。
(項目71)
前記ベクターが前記細胞のゲノムに組み込まれる、項目65に記載の組成物。
(項目72)
前記組み込みが前記ゲノムにおける位置を標的にしている、項目71に記載の組成物。
(項目73)
形質導入された細胞を被験体に提供する方法であって、項目1から63までのいずれか一項に記載のベクターを用いて形質導入された細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含む方法。
(項目74)
前記形質導入された細胞が造血幹細胞を含む、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記形質導入された細胞が造血前駆細胞を含む、項目73に記載の方法。
(項目76)
前記細胞の集団が、項目1から63までのいずれか一項に記載のベクターを用いて形質導入された細胞を5%含む、項目73から75までのいずれか一項に記載の方法。
(項目77)
前記細胞の集団が、項目1から63までのいずれか一項に記載のベクターを用いて形質導入された細胞を10%含む、項目73から75までのいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記細胞の集団が、項目1から63までのいずれか一項に記載のベクターを用いて形質導入された細胞を25%含む、項目73から75までのいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
エリスロポエチンを前記被験体に投与する工程をさらに含む、項目73から78までのいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記細胞の集団およびエリスロポエチンを非経口的に投与する、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記非経口投与が静脈内投与である、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記エリスロポエチンを前記被験体に投与する前に前記細胞の集団を該被験体に投与する、項目79に記載の方法。
(項目83)
前記被験体が異常ヘモグロビン症を有する、項目73に記載の方法。
(項目84)
前記異常ヘモグロビン症が、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、サラセミアメジャー、中等症サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択される、項目83に記載の方法。
(項目85)
被験体における異常ヘモグロビン症を処置する方法であって、項目23、62、または63のいずれか一項に記載のベクターを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含み、ここで、該造血幹細胞または造血前駆細胞あるいは該造血幹細胞または造血前駆細胞の後代細胞が、エリスロポエチンを投与した後の該被験体において、エリスロポエチンを投与する前の該被験体における造血幹細胞または造血前駆細胞あるいは後代細胞と比較して増加する方法。
(項目86)
前記細胞の集団が骨髄、臍帯血、胎盤血、または末梢血から単離された、項目85に記載の方法。
(項目87)
前記造血幹細胞または前記造血前駆細胞の5%が形質導入されている、項目85に記載の方法。
(項目88)
前記造血幹細胞または前記造血前駆細胞の10%が形質導入されている、項目85に記載の方法。
(項目89)
前記造血幹細胞または前記造血前駆細胞の25%が形質導入されている、項目85に記載の方法。
(項目90)
エリスロポエチンを前記被験体に投与する工程を含む、項目85に記載の方法。
(項目91)
前記細胞の集団およびエリスロポエチンを血管内に投与する、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記投与が静脈内投与である、項目90または91に記載の方法。
(項目93)
前記異常ヘモグロビン症が、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、サラセミアメジャー、中等症サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択される、項目85または項目90に記載の方法。
(項目94)
前記異常ヘモグロビン症がβ−サラセミアである、項目85または項目90に記載の方法。
(項目95)
前記被験体が、骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けたまたは骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けている、項目85または項目90に記載の方法。
(項目96)
前記被験体において増加した前記後代細胞が赤血球系細胞を含む、項目85または項目90に記載の方法。
(項目97)
前記赤血球系細胞が赤血球前駆細胞である、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記赤血球系細胞が赤血球である、項目96に記載の方法。
(項目99)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系細胞と比較して少なくとも10倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目100)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系細胞と比較して少なくとも25倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目101)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系細胞と比較して少なくとも50倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目102)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、エリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系細胞と比較して少なくとも100倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目103)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも25倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目104)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも50倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目105)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも100倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目106)
前記赤血球系細胞が、エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体における非赤血球系細胞と比較して少なくとも150倍増加する、項目96に記載の方法。
(項目107)
被験体における赤血球系細胞の数を選択的に増大させる方法であって、項目23、62、または63のいずれか一項に記載のベクターを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含み、ここで、該被験体において該造血幹細胞の赤血球系後代細胞の数が増大する方法。
(項目108)
被験体において白血球と比較して赤血球の割合を増加させる方法であって、項目23、62、または63のいずれか一項に記載のベクターを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程、エリスロポエチンを該被験体に投与する工程を含み、ここで、該被験体において、該造血幹細胞の白血球後代細胞と比較して該造血幹細胞の赤血球後代細胞の割合が増加する方法。
(項目109)
エリスロポエチンを前記被験体に投与する工程を含む、項目107に記載の方法。
(項目110)
エリスロポエチンを前記被験体に投与する工程を含む、項目108に記載の方法。
(項目111)
前記細胞の集団が骨髄、臍帯血、胎盤血、または末梢血から単離された、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目112)
前記造血幹細胞または前記造血前駆細胞の5%が形質導入されている、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
前記造血幹細胞または前記造血前駆細胞の10%が形質導入されている、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記造血幹細胞または前記造血前駆細胞の25%が形質導入されている、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目115)
前記細胞の集団およびエリスロポエチンを血管内に投与する、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目116)
前記投与が静脈内である、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目117)
前記被験体が異常ヘモグロビン症を有する、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目118)
前記異常ヘモグロビン症が、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、サラセミアメジャー、中等症サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択される、項目117に記載の方法。
(項目119)
前記異常ヘモグロビン症がβ−サラセミアである、項目117に記載の方法。
(項目120)
前記被験体が、骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けたまたは骨髄切除化学療法もしくは放射線照射を受けている、項目107から110までのいずれか一項に記載の方法。
(項目121)
エリスロポエチンを投与した後に、前記赤血球系後代細胞がエリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系後代細胞と比較して少なくとも10倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目122)
エリスロポエチンを投与した後に、前記赤血球系後代細胞がエリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系後代細胞と比較して少なくとも25倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目123)
エリスロポエチンを投与した後に、前記赤血球系後代細胞がエリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系後代細胞と比較して少なくとも50倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目124)
エリスロポエチンを投与した後に、前記赤血球系後代細胞がエリスロポエチンを投与する前の前記被験体における該赤血球系後代細胞と比較して少なくとも100倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目125)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記赤血球系後代細胞が非赤血球系細胞と比較して25倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目126)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記赤血球系後代細胞が非赤血球系細胞と比較して50倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目127)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記赤血球系後代細胞が非赤血球系細胞と比較して100倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目128)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記赤血球系細胞後代が非赤血球系細胞と比較して150倍増加する、項目109に記載の方法。
(項目129)
前記赤血球系後代細胞が赤血球を含む、項目121から128までのいずれか一項に記載の方法。
(項目130)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記RBCがWBCと比較して少なくとも25倍増加する、項目110に記載の方法。
(項目131)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記RBCがWBCと比較して少なくとも50倍増加する、項目110に記載の方法。
(項目132)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記RBCがWBCと比較して少なくとも100倍増加する、項目110に記載の方法。
(項目133)
エリスロポエチンを投与した後に、前記被験体において、前記RBCがWBCと比較して少なくとも150倍増加する、項目110に記載の方法。
図1は、本明細書に記載の特定の実験において使用したいくつかのウイルスベクター構築物およびマウスエリスロポエチン受容体(EpoR)を示す。(A)MSCV(マウス幹細胞ウイルス)LTR(長い末端反復)プロモーターの制御下にある、内部リボソーム侵入部位(IRES)により駆動される増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)レポーター遺伝子を含有するマウスガンマレトロウイルスベクター(γRV)。EpoR cDNAをIRESの前にクローニングした。(B)ヒトβ−グロビンプロモーターの制御下にある改変β−グロビン(βAT87Q)鎖および遺伝子座制御領域(LCR)をコードするLentiGlobin(LG)ベクター。LGベクターは、右側の長い末端反復(LTR)のU3領域の欠失、ウサギβ−グロビンポリAシグナル、および高感受性部位4(HS4)ニワトリβ−グロビン遺伝子座の2つの250bpのクロマチンインスレーターも含有する。LG/HA−Y1は、ヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターの制御下にある切断型EpoR−Y1 cDNAを含有する。LG/HA−eGFPは、EpoRY1の代わりにeGFPを含有する。HPV570は、EF1αプロモーターの制御下にあるeGFPを含有する。(C)マウスの野生型EpoR(EpoRY1−8)および切断型EpoR(EpoRY1−7〜EpoRY1)。疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸は存在せず、番号付けには考慮されていない。チロシン(Y)343、401、429,431、443、460、464および479が示されている。EpoRY1およびEpoRY1−2では、Y401およびY429が終止コドンで置き換えられている。(D)ヒトの野生型EpoR(hEpoRY1−8)および切断型EpoR(hEpoRY1−7〜EpoRY1)。疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸は存在せず、番号付けには考慮されていない。チロシン(Y)344、402、430、432、444、461、465および480が示されている。 図1は、本明細書に記載の特定の実験において使用したいくつかのウイルスベクター構築物およびマウスエリスロポエチン受容体(EpoR)を示す。(A)MSCV(マウス幹細胞ウイルス)LTR(長い末端反復)プロモーターの制御下にある、内部リボソーム侵入部位(IRES)により駆動される増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)レポーター遺伝子を含有するマウスガンマレトロウイルスベクター(γRV)。EpoR cDNAをIRESの前にクローニングした。(B)ヒトβ−グロビンプロモーターの制御下にある改変β−グロビン(βAT87Q)鎖および遺伝子座制御領域(LCR)をコードするLentiGlobin(LG)ベクター。LGベクターは、右側の長い末端反復(LTR)のU3領域の欠失、ウサギβ−グロビンポリAシグナル、および高感受性部位4(HS4)ニワトリβ−グロビン遺伝子座の2つの250bpのクロマチンインスレーターも含有する。LG/HA−Y1は、ヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターの制御下にある切断型EpoR−Y1 cDNAを含有する。LG/HA−eGFPは、EpoRY1の代わりにeGFPを含有する。HPV570は、EF1αプロモーターの制御下にあるeGFPを含有する。(C)マウスの野生型EpoR(EpoRY1−8)および切断型EpoR(EpoRY1−7〜EpoRY1)。疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸は存在せず、番号付けには考慮されていない。チロシン(Y)343、401、429,431、443、460、464および479が示されている。EpoRY1およびEpoRY1−2では、Y401およびY429が終止コドンで置き換えられている。(D)ヒトの野生型EpoR(hEpoRY1−8)および切断型EpoR(hEpoRY1−7〜EpoRY1)。疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸は存在せず、番号付けには考慮されていない。チロシン(Y)344、402、430、432、444、461、465および480が示されている。 図1は、本明細書に記載の特定の実験において使用したいくつかのウイルスベクター構築物およびマウスエリスロポエチン受容体(EpoR)を示す。(A)MSCV(マウス幹細胞ウイルス)LTR(長い末端反復)プロモーターの制御下にある、内部リボソーム侵入部位(IRES)により駆動される増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)レポーター遺伝子を含有するマウスガンマレトロウイルスベクター(γRV)。EpoR cDNAをIRESの前にクローニングした。(B)ヒトβ−グロビンプロモーターの制御下にある改変β−グロビン(βAT87Q)鎖および遺伝子座制御領域(LCR)をコードするLentiGlobin(LG)ベクター。LGベクターは、右側の長い末端反復(LTR)のU3領域の欠失、ウサギβ−グロビンポリAシグナル、および高感受性部位4(HS4)ニワトリβ−グロビン遺伝子座の2つの250bpのクロマチンインスレーターも含有する。LG/HA−Y1は、ヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターの制御下にある切断型EpoR−Y1 cDNAを含有する。LG/HA−eGFPは、EpoRY1の代わりにeGFPを含有する。HPV570は、EF1αプロモーターの制御下にあるeGFPを含有する。(C)マウスの野生型EpoR(EpoRY1−8)および切断型EpoR(EpoRY1−7〜EpoRY1)。疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸は存在せず、番号付けには考慮されていない。チロシン(Y)343、401、429,431、443、460、464および479が示されている。EpoRY1およびEpoRY1−2では、Y401およびY429が終止コドンで置き換えられている。(D)ヒトの野生型EpoR(hEpoRY1−8)および切断型EpoR(hEpoRY1−7〜EpoRY1)。疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸は存在せず、番号付けには考慮されていない。チロシン(Y)344、402、430、432、444、461、465および480が示されている。 図2は、移植の20週間後の、tEpoRによって改変された末梢血液細胞の割合の増加を示す。(A)eGFP陽性のRBCおよびWBCの平均百分率、標準誤差、および個々の値。γRVレトロウイルスベクター(1)、γRV/EpoRY1レトロウイルスベクター(2)、γRV/EpoRY1−2レトロウイルスベクター(3)、またはγRV/EpoRY1−8レトロウイルスベクター(4)によって造血細胞(HC)に形質導入した。(B)同じマウスにおいて測定された平均血漿中Epoレベルおよび標準誤差。*群1および群4と比較してP<0.05。 図3は、LGベクター内のHAプロモーターによって付与されたeGFPの厳密な赤血球系の特異的発現を示す。LG/HA−eGFPを形質導入した細胞を移植した正常なマウス(上)またはHPV570(EF1α−eGFP)を形質導入した細胞を移植した正常なマウス(下)のBM(Bリンパ球系[B]、骨髄系[M]、および赤血球系[E])、胸腺(Tリンパ球系[T])、ならびに末梢血(B、M、T、およびRBC)におけるeGFP陽性細胞の平均百分率および個々の値。白血球については、CD45.2抗原発現によってドナー細胞を同定した。 図4は、tEpoRにより赤血球系細胞の増幅が媒介されることを示す。(A〜B)LGマウス(■)およびLG/HA−EpoRY1マウス(□)の末梢血中の改変されたRBCの百分率と形質導入されたWBCの百分率の間の関係。改変された白血球に対するtEpoRの最小の影響を仮定すると、改変された赤血球系細胞の1倍、10倍、50倍、および200倍の優先的増大(F率)に対応する4つの理論曲線が方程式3(A)および2(B)から導かれる。直線の湾曲が大きいこと(A)および直線が左側にシフトしていること(B)は、改変された赤血球系細胞の、改変されていない細胞よりも大きな利点に対応する。(C〜D)囲み枠の下の境界および上の境界は、25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを示す。囲み枠の上および下のウィスカー(エラーバー)は、90パーセンタイルおよび10パーセンタイルを示す。囲み枠内の線は中央値を示す。(C)LGマウス(■)およびLG/HA−EpoRY1マウス(□)における赤血球の増幅率Fの中央値および個々の赤血球の増幅率F。(D)LGマウス(■)およびLG/HA−EpoRY1マウス(□)における、移植前の遺伝子改変された白血球(WBC)画分とex vivoにおける改変されたHC画分の間の比率の中央値および個々の比率。 図5は、貧血および赤血球形成異常の調整が、ベクターにおけるtEpoRの存在とは関係なく、改変されたRBCのレベルに一部依存することを示す。LG/HA−EpoRY1を形質導入した骨髄細胞を移植したマウス(□)またはLGを形質導入した骨髄細胞を移植したマウス(■)。(A)移植を受けたβサラセミアマウスの、全ヘモグロビン濃度およびヒトヘモグロビン濃度(Hb)、赤血球数(RBC)、網状赤血球の百分率(Retic)および脾臓の重量と改変されたRBCとの相関を示す。回帰直線および95%信頼区間(破線)をRBCの割合が40%を超えるLGマウスから得た。水平方向および垂直方向に網掛けされた囲み枠の下の境界および上の境界は、βサラセミアのC57BL/6Jマウスおよび正常なC57BL/6Jマウスからの値の平均±SDを示す。ヘモグロビンについて、下の回帰直線および上の回帰直線は、それぞれ治療用(ヒト)ヘモグロビンおよび全ヘモグロビンに対応する。(B)脾臓の重量と脾臓における赤血球系細胞の百分率の相関。全てのマウスからのデータを用いて回帰直線および95%信頼区間をプロットした。モック形質導入細胞(mock−transduced cells)を受けたマウス3匹を含めた(●)。 図6は、tEpoRを治療用グロビン遺伝子と共発現させると、より低レベルの改変されたWBCで貧血が調整されることを示す。LG/HA−EpoRY1を形質導入した骨髄細胞を移植したマウス(□)またはLGを形質導入した骨髄細胞を移植したマウス(■)。(A)移植を受けたβサラセミアマウスの、改変されたRBC(RBC)、ヘマトクリット値(Hc)、全ヘモグロビン濃度(Hb)、および網状赤血球の百分率(Retic)と改変されたWBC(WBC)との相関。斜線によりWBCが20%を下回るデータとWBCが20%を上回るデータが分離されている。(B)WBCが20%を下回るマウスとWBCが20%を上回るマウスの改変されたRBCの百分率、ヘマトクリット値、全ヘモグロビン濃度、および網状赤血球の百分率の平均±SDおよび個々の値。グラフの下の数字は改変されたWBCの平均百分率を示す。 図6は、tEpoRを治療用グロビン遺伝子と共発現させると、より低レベルの改変されたWBCで貧血が調整されることを示す。LG/HA−EpoRY1を形質導入した骨髄細胞を移植したマウス(□)またはLGを形質導入した骨髄細胞を移植したマウス(■)。(A)移植を受けたβサラセミアマウスの、改変されたRBC(RBC)、ヘマトクリット値(Hc)、全ヘモグロビン濃度(Hb)、および網状赤血球の百分率(Retic)と改変されたWBC(WBC)との相関。斜線によりWBCが20%を下回るデータとWBCが20%を上回るデータが分離されている。(B)WBCが20%を下回るマウスとWBCが20%を上回るマウスの改変されたRBCの百分率、ヘマトクリット値、全ヘモグロビン濃度、および網状赤血球の百分率の平均±SDおよび個々の値。グラフの下の数字は改変されたWBCの平均百分率を示す。 図7は、移植の10カ月後にBM恒常性が維持されることを示す。(A)LGマウス(塗りつぶしの棒)およびLG/HA−Y1マウス(白抜きの棒)の末梢血(PB)および骨髄(BM)におけるCD45.2陽性白血球の中での骨髄系細胞(M)、Bリンパ系細胞(B)、およびTリンパ系細胞(T)の割合。(B)血漿中Epoとヒト調整RBC(RBC)の対数。回帰直線および95%信頼区間(破線)をRBCの割合が40%を超えるLGマウスから得た。水平方向および垂直方向に網掛けされた囲み枠の下の境界および上の境界は、それぞれβサラセミアのC57BL/6Jマウスおよび正常なC57BL/6Jマウスからの値の平均SDを示す。(C)LGマウス(■)およびLG/HA−Y1マウス(□)の末梢血における白血球数および血小板数の平均SDおよび個々の白血球数および血小板数。 図8は、赤血球系細胞の増大後にLG/HA−EpoRY1ベクター組み込み部位(IS)と癌原遺伝子の関連性がないことを示す。マウス4匹全てからの組み込み部位をこの分析のためにプールした。Ter119BM細胞(A)およびCD45BM細胞(B)から単離された組み込み部位が最も近いRefSeq遺伝子に従って標識される。相対的なクローンサイズをin vitroにおいてMuAトランスポザーゼによって触媒される独立した組み込み事象でそれが単離される回数によって数量化した。allOncoデータベースにおいてアノテートされた癌原遺伝子がアスタリスクによって示されている。最も近い遺伝子が癌遺伝子であるISの発生頻度は、赤血球系細胞と非赤血球系細胞の間で統計学的に差がない(P=0.5523)。(C)癌原遺伝子の近傍の組み込み部位。癌原遺伝子から>50kbの組み込み部位および<50kbの組み込み部位の割合が示されている。この試験で同定された組み込み部位と、移植の前後の、LGベクターを用いて形質導入されたHCを特徴とするISの間で、癌原遺伝子から<50kbに見いだされる組み込み部位の数に有意差は見いだされなかった(両側フィッシャー直接確率検定を用いてP>0.05)。 図8は、赤血球系細胞の増大後にLG/HA−EpoRY1ベクター組み込み部位(IS)と癌原遺伝子の関連性がないことを示す。マウス4匹全てからの組み込み部位をこの分析のためにプールした。Ter119BM細胞(A)およびCD45BM細胞(B)から単離された組み込み部位が最も近いRefSeq遺伝子に従って標識される。相対的なクローンサイズをin vitroにおいてMuAトランスポザーゼによって触媒される独立した組み込み事象でそれが単離される回数によって数量化した。allOncoデータベースにおいてアノテートされた癌原遺伝子がアスタリスクによって示されている。最も近い遺伝子が癌遺伝子であるISの発生頻度は、赤血球系細胞と非赤血球系細胞の間で統計学的に差がない(P=0.5523)。(C)癌原遺伝子の近傍の組み込み部位。癌原遺伝子から>50kbの組み込み部位および<50kbの組み込み部位の割合が示されている。この試験で同定された組み込み部位と、移植の前後の、LGベクターを用いて形質導入されたHCを特徴とするISの間で、癌原遺伝子から<50kbに見いだされる組み込み部位の数に有意差は見いだされなかった(両側フィッシャー直接確率検定を用いてP>0.05)。 図9は、移植の20週間後に、tEpoRにより、高い割合のeGFP+赤血球系細胞、リンパ系細胞および骨髄系細胞が誘導されることを示す。赤血球系(RBC)系、白血球(WBC)区画、リンパ系細胞(lympho)区画および骨髄系細胞(GM:顆粒球/単球)区画におけるeGFP陽性細胞の平均および中央値の百分率(それぞれ青色の線および赤色の線)、標準誤差(青色のエラーバー)、25パーセンタイルおよび75パーセンタイル(囲み枠の下の境界および上の境界)および個々の百分率(灰色の丸)。γRVレトロウイルスベクター、γRV/EpoRY1(Y1)レトロウイルスベクター、γRV/EpoRY1−2(Y1−2)レトロウイルスベクターまたはγRV/EpoRY1−8(Y1−8)レトロウイルスベクターによって造血細胞に形質導入した。 図10は、最高レベルのeGFPを発現している骨髄系細胞が、tEpoRによって改変された細胞を移植したマウスにおいて選択されることを示す。移植前の造血細胞(in vitro)、およびリンパ系細胞(lympho)区画および骨髄系細胞(GM)区画における平均蛍光強度の平均(ヒストグラム)、標準偏差(青色のエラーバー)、および個々のMFI(灰色の丸。γRVレトロウイルスベクター、γRV/EpoRY1(Y1)レトロウイルスベクター、γRV/EpoRY1−2(Y1−2)レトロウイルスベクターまたはγRV/EpoRY1−8(Y1−8)レトロウイルスベクターによって造血細胞に形質導入した。 図11は、LG/HA−EpoRY1マウス4匹のCD45骨髄細胞およびTer119骨髄細胞から単離された組み込み部位の分布を示す。組み込み部位が、最も近いRefSeq遺伝子に従って標識される。回収部位の割合をin vitroにおいてMuAトランスポザーゼによって触媒される独立した組み込み事象でそれが単離される回数によって数量化した。単離された組み込み部位の2%未満を占める回収部位はまとめて低発生頻度群とした。クローンの存在量を反映する独立したMu転位事象の数が各マウスの各細胞型の下に示されている。
配列識別子の簡単な説明
配列番号1は、ヒトアルファグロビンcDNAのポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号2は、ヒトアルファグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、マウスアルファグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、ラットアルファグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、ヒトベータグロビンcDNAのポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号6は、ヒトベータグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、変異ヒトベータグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、マウスベータグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、ラットベータグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号10は、ヒトガンマグロビンcDNAのポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号11は、ヒトガンマグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号12は、マウスガンマグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号13は、ラットガンマグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号14は、ヒトデルタグロビンcDNAのポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号15は、ヒトデルタグロビンポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号16は、ヒトエリスロポエチン受容体cDNAのポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号17は、マウスエリスロポエチン受容体cDNAのポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号18は、ラットエリスロポエチン受容体cDNAのポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号19は、ヒトエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号20は、切断型ヒトエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号21は、切断型ヒトエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号22は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠くヒトエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号23は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く切断型ヒトエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号24は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く切断型ヒトエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号25は、マウスエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号26は、切断型マウスエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号27は、切断型マウスエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号28は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠くマウスエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号29は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く切断型マウスエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号30は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く切断型マウスエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号31は、ラットエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号32は、切断型ラットエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号33は、切断型ラットエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号34は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠くラットエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号35は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く切断型ラットエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号36は、24アミノ酸のN末端シグナルペプチドを欠く切断型ラットエリスロポエチン受容体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
配列番号37は、インスレーター配列を含むポリヌクレオチド配列を示す。
配列番号38は、インスレーター配列を含むポリヌクレオチド配列を示す。
詳細な説明
A.概要
本発明は、一般に、改善された遺伝子治療ベクター、および遺伝的障害を処置する、予防する、または軽減するためにそれを使用する方法に関する。遺伝子治療に関する1つの著しい難題は、調整された細胞が非形質導入細胞に対する内因性の選択的利点を有さない場合に、移植を受けている被験体において調整された細胞集団を維持し、かつ/または増大させることである。例えば、遺伝性造血障害、例えば、鎌状赤血球症およびβ−サラセミアでは、制限として、これだけに限定されないが、造血幹細胞または造血前駆細胞の形質導入が非効率的であること、毒性の骨髄抑制療法または骨髄破壊療法が必要条件であること、および形質導入された細胞をin vivoにおいて選択するための最適な方法がないことが挙げられる。
本発明は、一部において、本発明の遺伝子治療ベクターを用いて、治療用細胞の数をin vitro、ex vivo、またはin vivoにおいて選択的にまたは特異的に増大または増加させて、遺伝子治療の有効性および特異性をさらに増加させることができるという予想外の発見に基づく。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明は、一部において、本発明のベクターを保有する治療用細胞を実質的に増大させることができるので、遺伝子治療を受けている被験体に治療的、予防的、または軽減的エンドポイントをもたらすのに必要な細胞がより少ないことを意図している。さらに、本発明のベクターを保有する細胞の全てまたは少なくとも一部分は他の細胞よりも増殖的利点を有するので、治療的、予防的、または軽減的エンドポイントを実現するために骨髄抑制療法または骨髄破壊療法が必ずしも必要としない。
したがって、本発明は、細胞の一部のみが有効にベクターの標的になるが、治療的、予防的、または軽減的効果を付与するためには不十分なレベルである、遺伝病の処置における遺伝子治療の有効性を改善する、まだ満たされていない臨床的必要性に取り組む。本発明は、具体的には、所望の転帰を容易にするための、ベクター、遺伝子操作された細胞、および遺伝子操作された細胞またはその細胞の集団のin vitro、ex vivo、またはin vivoにおける選択的な増大に関する。
本発明の実施では、特に反対のことが示されなければ、分子生物学の従来の方法および当技術分野の技術の範囲内の組換えDNA技法が用いられ、その多くが例示のために下に記載されている。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989年);Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982年);DNA Cloning:A Practical Approach、I巻およびII巻(D. Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N. Gait編、1984年);Nucleic Acid Hybridization(B. Hames & S. Higgins編、1985年);Transcription and Translation(B. Hames & S. Higgins編、1984年);Animal Cell Culture(R. Freshney編、1986年);A Practical Guide to Molecular Cloning(B. Perbal編、1984年)を参照されたい。
本明細書において引用されている全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
B.定義
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的に関して、以下の用語が下で定義されている。
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを直鎖状の二本鎖DNAコピーに逆転写し、その後、そのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有結合により組み込むRNAウイルスを指す。レトロウイルスは遺伝子を送達するための一般的なツールである(Miller、2000年、Nature. 357巻:455〜460頁)。ウイルスが宿主ゲノムに組み込まれたら、そのウイルスは「プロウイルス」と称される。プロウイルスは、RNAポリメラーゼIIの鋳型としての機能を果たし、新しいウイルス粒子を産生するために必要な構造タンパク質および酵素をコードするRNA分子の発現を導く。
例示的なレトロウイルスとしては、これだけに限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルス(M−MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))およびレンチウイルスが挙げられる。
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合レトロウイルスの群(または属)を指す。例示的なレンチウイルスとしては、これだけに限定されないが、HIV(HIV1型、およびHIV2型を含めたヒト免疫不全ウイルス);ビスナ・マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);サル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。一実施形態では、HIVに基づくベクターの骨格(すなわち、HIVシス作用性配列エレメント)が好ましい。
レトロウイルスベクター、より詳細にはレンチウイルスベクターを本発明の実施において使用することができる。したがって、「レトロウイルス」または「レトロウイルスベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、それぞれ「レンチウイルス」および「レンチウイルスベクター」を包含するものとする。
「ベクター」という用語は、本明細書では、別の核酸分子を移行または運搬することができる核酸分子を指すために使用される。移行される核酸は、一般に、ベクター核酸分子と連結している、例えば、それに挿入されている。ベクターは、細胞における自律複製を導く配列を含んでもよく、宿主細胞のDNAへの組み込みを可能にするために十分な配列を含んでもよい。有用なベクターとしては、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌性人工染色体、およびウイルスベクターが挙げられる。有用なウイルスベクターとしては、例えば、複製欠損性のレトロウイルスおよびレンチウイルスが挙げられる。
当業者には明らかになる通り、「ウイルスベクター」という用語は、広く使用されており、一般には核酸分子の移行または細胞のゲノムへの組み込みを容易にするウイルス由来の核酸エレメントを含む核酸分子(例えば、移行プラスミド)、または核酸の移行を媒介するウイルス粒子のいずれかを指す。ウイルス粒子は、一般には、種々のウイルスの構成成分を含み、時には核酸(複数可)に加えて宿主細胞の構成成分も含む。
ウイルスベクターという用語は、核酸を細胞内に移行することができるウイルスもしくはウイルス粒子、または移行された核酸自体のいずれかを指す場合がある。ウイルスベクターおよび移行プラスミドは、主にウイルスに由来する構造的遺伝エレメントおよび/または機能的遺伝エレメントを含有する。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する構造的遺伝エレメントおよび機能的遺伝エレメントまたはそれらの部分を含有するウイルスベクターまたはプラスミドを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、主にレンチウイルスに由来するLTRを含めた構造的遺伝エレメントおよび機能的遺伝エレメントまたはそれらの部分を含有するウイルスベクターまたはプラスミドを指す。「ハイブリッド」という用語は、レトロウイルス、例えば、レンチウイルスの配列と非レンチウイルスのウイルス配列の両方を含有するベクター、LTRまたは他の核酸を指す。一実施形態では、ハイブリッドベクターとは、逆転写、複製、組み込みおよび/またはパッケージングのためのレトロウイルス、例えば、レンチウイルスの配列を含むベクターまたは移行プラスミドを指す。
特定の実施形態では、「レンチウイルスベクター」、「レンチウイルス発現ベクター」という用語は、レンチウイルス移行プラスミドおよび/または感染性レンチウイルス粒子を指すために使用することができる。本明細書において、クローニング部位、プロモーター、調節エレメント、異種核酸などのエレメントに言及している場合、これらのエレメントの配列は、本発明のレンチウイルス粒子ではRNA形態で存在し、本発明のDNAプラスミドではDNA形態で存在することが理解されるべきである。
プロウイルスの各末端は「長い末端反復」または「LTR」と称される構造である。「長い末端反復(LTR)」という用語は、それらの天然の配列の状況では、直接反復であり、U3領域、R領域およびU5領域を含有する、レトロウイルスのDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。LTRにより、一般に、レトロウイルスの遺伝子の発現(例えば、促進、開始および遺伝子転写物のポリアデニル化)およびウイルス複製の基礎をなす機能がもたらされる。LTRは、転写制御エレメント、ポリアデニル化シグナルおよびウイルスのゲノムの複製および組み込みのために必要な配列を含めた多数の調節シグナルを含有する。ウイルスLTRは、U3、RおよびU5と称される3つの領域に分けられる。U3領域はエンハンサーエレメントおよびプロモーターエレメントを含有する。U5領域はプライマー結合部位とR領域の間の配列であり、ポリアデニル化配列を含有する。R(反復)領域にはU3領域およびU5領域が隣接する。LTRは、U3領域、R領域およびU5領域で構成され、ウイルスのゲノムの5’末端および3’末端の両方に出現する。5’LTRにはゲノムの逆転写のために必要な配列(tRNAプライマー結合部位)および粒子へのウイルスRNAの効率的なパッケージングのために必要な配列(プサイ部位)が近接している。
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」という用語は、ウイルスカプシドまたは粒子内へのウイルスRNAの挿入のために必要な、レトロウイルスのゲノム内に位置する配列を指す。例えば、Cleverら、1995年 J. of Virology、69巻、4号;2101〜2109頁を参照されたい。いくつかのレトロウイルスベクターは、ウイルスのゲノムのキャプシド形成のために必要な最小のパッケージングシグナル(プサイ[Ψ]配列とも称される)を使用する。したがって、本明細書で使用される場合、「パッケージング配列」、「パッケージングシグナル」、「プサイ」という用語および「Ψ」という符号は、ウイルス粒子形成の間のレトロウイルスのRNA鎖のキャプシド形成のために必要な非コード配列への言及に使用される。
種々の実施形態では、ベクターは、改変された5’LTRおよび/または3’LTRを含む。3’LTRの改変は、多くの場合、ウイルスを複製欠損性にすることによってレンチウイルス系またはレトロウイルス系の安全性を改善するために行われる。本明細書で使用される場合、「複製欠損性」という用語は、完全な、有効な複製ができず、したがって、感染性ビリオンが産生されない(例えば、複製欠損性レンチウイルス後代)ウイルスを指す。「複製コンピテント」という用語は、複製することができ、したがって、ウイルスのウイルス複製により感染性ビリオン(例えば、複製コンピテントレンチウイルス後代)を産生することができる野生型ウイルスまたはバリアントウイルスを指す。
「自己不活性化」(SIN)ベクターとは、1回目のウイルス複製を越えてウイルスが転写されることを防ぐために、U3領域として公知の右側の(3’)LTRのエンハンサー−プロモーター領域が改変された(例えば、欠失または置換によって)複製欠損性ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを指す。これは、ウイルス複製の間に右側の(3’)LTRのU3領域が左側の(5’)LTRのU3領域の鋳型として使用され、したがって、ウイルスの転写物はU3エンハンサー−プロモーターなしでは生じ得ないことに起因する。本発明の別の実施形態では、3’LTRは、U5領域が、例えば、理想的なポリ(A)配列に置き換わるように改変されている。LTRに対する改変、例えば、3’LTR、5’LTR、または3’LTRと5’LTRの両方に対する改変なども、本発明に包含されることに留意するべきである。
5’LTRのU3領域を、ウイルス粒子の産生の間にウイルスのゲノムの転写を駆動するための異種プロモーターで置き換えることによって、さらなる安全性の増強がもたらされる。使用することができる異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルス性のシミアンウイルス40(SV40)プロモーター(例えば、初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(例えば、最初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。典型的なプロモーターは、Tatに依存しない様式で高レベルの転写を駆動することができる。この置き換えにより、ウイルス産生系に完全なU3配列が存在しないので、複製コンピテントウイルスが生成される組換えの可能性が低下する。ある実施形態では、異種プロモーターは、ウイルスのゲノムが転写される様式の制御において追加的な利点を有する。例えば、異種プロモーターは、誘導性であり得、したがって、誘導因子が存在する場合にのみウイルスのゲノムの全部または一部の転写が起こる。誘導因子としては、これだけに限定されないが、1つまたは複数の化合物または宿主細胞が培養される温度もしくはpHなどの生理的条件が挙げられる。
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、TARエレメントを含む。「TAR」という用語は、レンチウイルス(例えば、HIV)のLTRのR領域に位置する「トランス活性化反応」遺伝エレメントを指す。このエレメントは、レンチウイルスのトランス活性化因子(tat)遺伝エレメントと相互作用して、ウイルス複製を増強する。しかし、このエレメントは、5’LTRのU3領域が異種プロモーターで置き換えられている実施形態では必要ない。
「R領域」とは、レトロウイルスLTR内の、キャップ形成基の開始点(すなわち、転写の開始点)で始まり、ポリAトラクトの開始点の直前で終わる領域を指す。R領域は、U3領域およびU5領域と隣接しているとも定義される。R領域は、逆転写の間に新生DNAをゲノムの一方の末端から他方の末端まで移行させることにおいて役割を果たす。
本明細書で使用される場合、「FLAPエレメント」という用語は、その配列がレトロウイルス、例えば、HIV−1またはHIV−2のセントラルポリプリントラクトおよび中心終結配列(cPPTおよびCTS)を含む核酸を指す。適切なFLAPエレメントは米国特許第6,682,907号およびZennouら、2000年、Cell、101巻:173頁に記載されている。HIV−1の逆転写の間、セントラルポリプリントラクト(cPPT)にあるプラス鎖DNAの中心開始点および中心終結配列(CTS)にある中心終結点により、3本鎖DNA構造:HIV−1中心DNAフラップの形成が導かれる。いかなる理論に縛られることも望むものではないが、DNAフラップは、レンチウイルスのゲノム核内移行のシス活性決定因子として働く可能性があり、かつ/またはウイルスの力価を増大させる可能性がある。特定の実施形態では、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターの骨格は、ベクター内の、目的の異種遺伝子の上流または下流の1つまたは複数のFLAPエレメントを含む。例えば、特定の実施形態では、移行プラスミドはFLAPエレメントを含む。一実施形態では、本発明のベクターは、HIV−1から単離されたFLAPエレメントを含む。
一実施形態では、レトロウイルス移行ベクターまたはレンチウイルス移行ベクターは、1つまたは複数の輸送エレメントを含む。「輸送エレメント」という用語は、核から細胞の細胞質へのRNA転写物の輸送を調節するシス作用性転写後調節エレメントを指す。RNA輸送エレメントの例としては、これだけに限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)rev応答エレメント(RRE)(例えばCullenら、1991年 J. Virol. 65巻:1053頁;Cullenら、1991年 Cell 58巻:423頁を参照されたい)、およびB型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HPRE)が挙げられる。一般に、RNA輸送エレメントは遺伝子の3’UTR内に配置され、1つまたは多数のコピーとして挿入することができる。
特定の実施形態では、ウイルスベクターにおける異種配列の発現は、転写後調節エレメント、効率的なポリアデニル化部位、および必要に応じて、転写終結シグナルをベクターに組み入れることによって増大する。種々の転写後調節エレメント、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE;Zuffereyら、1999年、J. Virol.、73巻:2886頁);B型肝炎ウイルスに存在する転写後調節エレメント(HPRE)(Huangら、Mol. Cell. Biol.、5巻:3864頁);および同様のもの(Liuら、1995年、Genes Dev.、9巻:1766頁)により、タンパク質における異種核酸の発現が増大し得る。いくつかの場合には、WPREまたはHPREなどの転写後調節エレメントにより、細胞の形質転換のリスクが増大し、かつ/またはmRNA転写物の量が実質的にもしくは有意に増大しない、またはmRNAの安定性が増大しないので、特定の実施形態では、本発明のベクターはこれらのエレメントを欠くまたはそれを含まない。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のベクターは、追加的な安全対策としてWPREまたはHPREを欠くまたはそれを含まない。
異種核酸転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を導くエレメントにより、異種性の遺伝子発現が増加する。転写終結シグナルは、一般に、ポリアデニル化シグナルの下流に見いだされる。特定の実施形態では、ベクターは、発現させるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’のポリアデニル化配列を含む。「ポリA部位」または「ポリA配列」という用語は、本明細書で使用される場合、RNAポリメラーゼIIによる新生RNA転写物の終結およびポリアデニル化の両方を導くDNA配列を指す。ポリアデニル化配列は、コード配列の3’末端にポリA尾部を付加することによりmRNAの安定性を促進することができ、したがって、翻訳効率の増大に寄与する。ポリA尾部を欠く転写物は不安定であり、急速に分解されるので、組換え転写物の効率的なポリアデニル化が望ましい。本発明のベクターにおいて使用することができるポリAシグナルの実例としては、理想的なポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA AGTAAA)、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ−グロビンポリA配列(rβgpA)、または当技術分野で公知の別の適切な異種性または内在性のポリA配列が挙げられる。
ある実施形態では、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターは、1つまたは複数のインスレーターエレメントをさらに含む。インスレーターエレメントは、レンチウイルスにより発現された配列、例えば、治療用ポリペプチドを、ゲノムDNA内に存在するシス作用性エレメントによって媒介され、移行した配列(transferred
sequence)の調節解除された発現をもたらす可能性がある組み込み部位の影響(すなわち、位置の影響;例えば、Burgess−Beusseら、2002年、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA、99巻:16433頁;Zhanら、2001年、Hum. Genet.、109巻:471頁を参照されたい)から保護することに寄与し得る。いくつかの実施形態では、移行ベクターは、3’LTRに1つまたは複数のインスレーターエレメントを含み、プロウイルスを宿主ゲノムに組み込む際に、プロウイルスは、3’LTRの重複によって5’LTRまたは3’LTRの両方に1つまたは複数のインスレーターを含む。本発明において使用するための適切なインスレーターとしては、これだけに限定されないが、ニワトリβ−グロビンインスレーター(参照により本明細書に組み込まれるChungら、1993年、Cell 74巻:505頁;Chungら、1997年、PNAS 94巻:575頁;およびBellら、1999年、Cell 98巻:387頁を参照されたい)が挙げられる。インスレーターエレメントの例としては、これだけに限定されないが、ニワトリHS4などのβ−グロビン遺伝子座由来のインスレーターが挙げられる。
本発明の特定の実施形態によると、ウイルスベクターの骨格配列の大部分または全ては、レンチウイルス、例えば、HIV−1に由来する。しかし、レンチウイルスの配列の多くの異なる供給源を用いることができ、特定のレンチウイルスの配列における多数の置換および変更を、移行ベクターの本明細書に記載の機能を行う能力を損なうことなく適応させることができることが理解されるべきである。さらに、種々のレンチウイルスベクターが当技術分野で公知であり、その多くが本発明のウイルスベクターまたは移行プラスミドを作製するために適合させることができる。Naldiniら、(1996年a、1996年b、および1998年);Zuffereyら、(1997年);Dullら、1998年、米国特許第6,013,516号;および同第5,994,136号を参照されたい。
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、ゲノムRNA(gRNA)、プラス鎖RNA(RNA(+))、マイナス鎖RNA(RNA(−))、ゲノムDNA(gDNA)、相補DNA(cDNA)またはDNAを指す。ポリヌクレオチドは一本鎖ポリヌクレオチドおよび二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載の参照配列(例えば、配列表を参照されたい)のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはバリアントを包含し、一般にはバリアントが参照配列の少なくとも1つの生物活性を維持することが好ましい。種々の例示的な実施形態では、本発明は、一部において、ウイルスベクターおよび移行プラスミドのポリヌクレオチド配列、ならびにそれを含む組成物を意図している。特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数の治療用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび/または他の目的の遺伝子を提供する。
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列、または参照配列と下で定義されているストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドと実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチドを指す。これらの用語は、参照ポリヌクレオチドと比較して1つまたは複数のヌクレオチドが付加もしくは欠失している、または異なるヌクレオチドに置き換えられているポリヌクレオチドを包含する。この点について、参照ポリヌクレオチドに、変更されたポリヌクレオチドに参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性が保持される変異、付加、欠失および置換を含めた特定の変更を行うことができることが当技術分野ではよく理解されている。
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、そのネイティブな状態では通常それに付随する構成成分を実質的にまたは基本的に含まない材料、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞を意味する。特定の実施形態では、「得られた」または「由来する」という用語は、単離されたと同義に使用される。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」とは、本明細書で使用される場合、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、通常はその断片に近接する配列から取り出されたDNA断片を指す。
ポリヌクレオチドの方向を説明する用語としては、5’(通常、ポリヌクレオチドの遊離ホスフェート基を有する末端)および3’(通常、ポリヌクレオチドの遊離ヒドロキシル(OH)基を有する末端)が挙げられる。ポリヌクレオチド配列は、5’から3’の方向または3’から5’の方向にアノテートされ得る。
「相補的な」および「相補性」という用語は、塩基対合規則によって関連するポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、DNA配列5’AGTCATG3’の相補鎖は3’TCAGTAC5’である。後者の配列は多くの場合、逆相補体として左側に5’末端、右側に3’末端の5’CATGACT3’と書かれる。その逆相補体と等しい配列は、パリンドローム配列であると言える。相補性は、塩基対合規則に従って核酸の塩基の一部のみがマッチする場合、「部分的」であり得る。または、核酸間には「完全な」または「全体的な」相補性があり得る。
「核酸カセット」という用語は、本明細書で使用される場合、RNA、その後、ポリペプチドを発現することができるベクター内の遺伝子配列を指す。一実施形態では、核酸カセットは、目的の遺伝子(複数可)、例えば、目的のポリヌクレオチド(複数可)を含有する。別の実施形態では、核酸カセットは、1つまたは複数の発現制御配列および目的の遺伝子(複数可)、例えば、目的のポリヌクレオチド(複数可)を含有する。ベクターは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くの核酸カセットを含んでよい。核酸カセットは、ベクター内で位置的におよび逐次的に特定の方向に向けられ、したがって、カセット内の核酸がRNAに転写され、必要な場合にはタンパク質またはポリペプチドに翻訳され、形質転換された細胞における活性のために必要な適切な翻訳後改変を受け、適切な細胞内区画にターゲティングされるまたは細胞外区画に分泌されることによって生物活性について適した区画に転置され得る。カセットは、ベクターへの迅速な挿入に適した3’末端および5’末端を有することが好ましく、例えば、カセットは、各末端に制限エンドヌクレアーゼ部位を有する。本発明の好ましい実施形態では、核酸カセットは、造血障害などの遺伝的障害を処置する、予防する、または軽減するために使用する治療用遺伝子の配列を含有する。カセットは、単一の単位としてプラスミドまたはウイルスベクターから除去することおよびそれに挿入することができる。
ポリヌクレオチドとは目的のポリヌクレオチド(複数可)を包含する。本明細書で使用される場合、「目的のポリヌクレオチド(複数可)」という用語は、1つまたは複数のポリヌクレオチド、例えば、発現することが望まれる発現ベクターに挿入された、ポリペプチド(すなわち、目的のポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを指す。好ましい実施形態では、本発明のベクターおよび/またはプラスミドは、1つまたは複数の目的のポリヌクレオチド、または発現することが望まれるポリペプチド、例えば、切断型エリスロポエチン受容体をコードする他のポリヌクレオチド配列を含む。ある実施形態では、目的のポリヌクレオチド、例えばグロビン遺伝子は、疾患または障害の処置、予防、または軽減において治療効果をもたらすポリペプチドをコードし、該ポリペプチドは、「治療用ポリペプチド」と称することができる。例えば、配列番号2〜4、配列番号6〜9、配列番号11〜13、および配列番号15を参照されたい。
本明細書で使用される「グロビン」という用語は、ヘム部分と共有結合または非共有結合することができ、したがって、酸素を輸送または貯蔵することができる全てのタンパク質またはタンパク質サブユニットを意味する。脊椎動物および無脊椎動物のヘモグロビンのサブユニット、脊椎動物および無脊椎動物のミオグロビンまたはその変異体はグロビンという用語に含まれる。グロビンの例としては、α−グロビンまたはそのバリアント、β−グロビンまたはそのバリアント、γ−グロビンまたはそのバリアント、およびδ−グロビンが挙げられる。
一実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、異常ヘモグロビン症を処置するための治療的機能をもたらすポリペプチド、例えば、α−グロビン、β−グロビンまたはβ−グロビンA−T87Qをコードする遺伝子である。目的のポリヌクレオチド、およびそれにコードされるポリペプチドとは、野生型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにその機能的なバリアントおよび断片をどちらも包含する。特定の実施形態では、機能的なバリアントは、対応する野生型参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する。ある実施形態では、機能的なバリアントまたは断片は、対応する野生型ポリペプチドの生物活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を有する。本発明において使用するために適した代表的なポリヌクレオチド配列としては、これだけに限定されないが、α−グロビン、β−グロビン、β−グロビンA−T87Q、および種々の切断型エリスロポエチン受容体、例えば、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号26、配列番号27、配列番号29、配列番号30、配列番号32、配列番号33、配列番号35、および配列番号36をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さにかかわらず、他のDNA配列、例えば、本明細書の他の箇所で開示されているまたは当技術分野で公知のプロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、追加的な制限酵素部位、多重クローニング部位、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP部位、FRT部位、およびAtt部位)、終結コドン、転写終結シグナル、および自己切断性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどと組み合わせることができ、したがって、それらの全体の長さは相当に変動してよい。したがって、ほぼどんな長さのポリヌクレオチド断片も用いることができ、全長は調製の容易さおよび意図された組換えDNAプロトコールにおける使用によって限定されることが好ましいことが意図されている。
「発現制御配列」という用語は、作用的に連結したポリヌクレオチドの転写または発現を導くこと、増大させること、調節すること、または制御することができる1つまたは複数のプロモーター、エンハンサー、または他の転写制御エレメントまたはそれらの組み合わせを含むポリヌクレオチド配列を指す。特定の実施形態では、本発明のベクターは、特定の細胞、細胞型、または細胞系列、例えば、標的細胞に特異的な1つまたは複数の発現制御配列を含む、すなわち、特定の細胞、細胞型、または細胞系列に特異的な発現制御配列に作用的に連結したポリヌクレオチドの発現は、標的細胞では発現され、他の非標的細胞では発現されない。細胞特異的である、ベクターにおける1つまたは複数の発現制御配列のひとつひとつは、所望の療法に応じて、同じ細胞型または異なる細胞型において発現し得る。好ましい実施形態では、ベクターは、造血幹細胞または造血前駆細胞などの造血細胞に特異的な1つまたは複数の発現制御配列を含む。他の好ましい実施形態では、ベクターは、赤血球系細胞に特異的な1つまたは複数の発現制御配列を含む。
「プロモーター」という用語は、本明細書で使用される場合、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。「エンハンサー」という用語は、転写の増強をもたらすことができる配列を含有し、いくつかの場合には別の制御配列に対するその方向とは独立して機能することができるDNAのセグメントを指す。エンハンサーは、プロモーターおよび/または他のエンハンサーエレメントと協同的または相加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方をもたらすことができる配列を含有するDNAのセグメントを指す。
特定の実施形態では、本発明のベクターは、外因性、内在性、または異種性の制御配列、例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。「内在性の」制御配列とは、ゲノムにおける所与の遺伝子と天然に連結している制御配列である。「外因性の」制御配列とは、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技法)によって遺伝子の近位に配置され、したがってその遺伝子の転写が、連結したエンハンサー/プロモーターによって導かれるような制御配列である。「異種性の」制御配列は、遺伝的に操作される細胞とは異なる種由来の外因性の配列である。
「作動可能に連結した」という用語は、記載されている構成成分が、それらの意図された様式で機能することを可能にする関係にある近位を指す。一実施形態では、この用語は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、および/またはエンハンサー、または他の発現制御配列)と第2のポリヌクレオチド配列、例えば、目的のポリヌクレオチドとの間の機能的な連結であって、ここで、該発現制御配列により、第2の配列に対応する核酸の転写が導かれる連結を指す。
本明細書で使用される場合、「構成的発現制御配列」という用語は、作動可能に連結した配列の転写を継続的または連続的に可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構成的発現制御配列は、多種多様な細胞および組織型における発現を可能にする「遍在」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよく、制限されたいろいろの種類の細胞および組織型の発現をそれぞれ可能にする「細胞特異的」、「細胞型特異的」「細胞系列特異的」または「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよい。例示的な遍在する発現制御配列としては、これだけに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ウイルス性のシミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5プロモーター、P7.5プロモーター、およびP11プロモーター、伸長因子1−アルファ(EF1a)プロモーター、初期増殖応答1(EGR1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、真核生物翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、熱ショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、熱ショックタンパク質90kDaベータ、メンバー1(HSP90B1)、熱ショックタンパク質70kDa(HSP70)、β−キネシン(β−KIN)、ヒトROSA26遺伝子座(Irionsら、Nature Biotechnology 25巻、1477〜1482頁(2007年))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ−アクチン(CAG)プロモーター、およびβ−アクチンプロモーターが挙げられる。
特定の実施形態では、所望のポリヌクレオチド配列の細胞型特異的、系列特異的、または組織特異的な発現を実現する(例えば、ポリペプチドをコードする特定の核酸を細胞型、細胞系列、もしくは組織のあるサブセットにおいてのみ、または特定の発生段階に発現させる)ために、細胞、細胞型、細胞系列または組織特異的な発現制御配列を使用することが望ましい場合がある。細胞、細胞型、細胞系列または組織特異的な発現制御配列の実例としては、これだけに限定されないが、B29プロモーター(B細胞での発現)、runt転写因子(CBFa2)プロモーター(幹細胞での発現)、CD14プロモーター(単核球細胞での発現)、CD43プロモーター(白血球および血小板での発現)、CD45プロモーター(造血細胞での発現)、CD68プロモーター(マクロファージでの発現)、エンドグリンプロモーター(内皮細胞での発現)、fms関連チロシンキナーゼ1(FLT1)プロモーター(内皮細胞での発現)、インテグリン、アルファ2b(ITGA2B)プロモーター(巨核球での発現)、細胞内接着分子2(ICAM−2)プロモーター(内皮細胞での発現)、インターフェロンベータ(IFN−β)プロモーター(造血細胞での発現)、β−グロビンLCR(赤血球系細胞での発現)、グロビンプロモーター(赤血球系細胞での発現)、β−グロビンプロモーター(赤血球系細胞での発現)、α−グロビンHS40エンハンサー(赤血球系細胞での発現)、アンキリン−1プロモーター(赤血球系細胞での発現)、およびウィスコットアルドリッチ症候群タンパク質(WASP)プロモーター(造血細胞での発現)が挙げられる。
一実施形態では、本発明のベクターは、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択される1つまたは複数の細胞または組織特異的なプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。
本明細書で使用される場合、「条件発現」とは、これだけに限定されないが、誘導性発現;抑圧可能な発現;特定の生理的、生物学的、または疾患の状態を有する細胞または組織における発現などを含めた任意の種類の条件発現を指し得る。この定義は、細胞型または組織特異的な発現を排除するものではない。本発明のある特定の実施形態は、例えば、細胞、組織、生物体などを、ポリヌクレオチドの発現を引き起こす処理もしくは条件、または目的のポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドの発現の増大または減少を引き起こす処理または条件に供することによって発現が制御される、目的のポリヌクレオチドの条件発現を提供する。
誘導性プロモーター/系の実例としては、これだけに限定されないが、ステロイド誘導性プロモーター、例えば、グルココルチコイドまたはエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーターなど(対応するホルモンで処理することによって誘導される)、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター(種々の重金属で処理することによって誘導される)、MX−1プロモーター(インターフェロンによって誘導される)、「GeneSwitch」ミフェプリストン調節可能系(Sirinら、2003年、Gene、323巻:67頁)、クメート(cumate)誘導性遺伝子スイッチ(WO2002/088346)、テトラサイクリン依存性調節系などが挙げられる。
条件発現は、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによって実現することもできる。本発明のある特定の実施形態によると、ベクターは、部位特異的リコンビナーゼによって媒介される組換えのための部位を少なくとも1つ(一般には2つ)含む。本明細書で使用される場合、「リコンビナーゼ」または「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、野生型タンパク質であってよい、1箇所または複数箇所の組換え部位(例えば、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所、7箇所、10箇所、12箇所、15箇所、20箇所、30箇所、50箇所など)が関与する組換え反応に関与する切除的または統合的なタンパク質、酵素、補因子または関連するタンパク質(Landy、Current Opinion in Biotechnology 3巻:699〜707頁(1993年)を参照されたい)、またはその変異体、誘導体(例えば、組換えタンパク質配列またはその断片を含有する融合タンパク質)、断片、およびバリアントを包含する。本発明の特定の実施形態において使用するために適したリコンビナーゼの実例としては、これだけに限定されないが、Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCE1、およびParAが挙げられる。
ベクターは、多種多様な部位特異的リコンビナーゼのいずれかのための1箇所または複数箇所の組換え部位を含んでよい。部位特異的リコンビナーゼの標的部位は、ベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターの組み込みのために必要な任意の部位(複数可)に加えたものであることが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「組換え配列」、「組換え部位」または「部位特異的な組換え部位」という用語は、リコンビナーゼが認識し、結合する特定の核酸配列を指す。
例えば、Creリコンビナーゼのための1つの組換え部位は、8塩基対のコア配列と隣接した13塩基対の逆方向反復(リコンビナーゼ結合部位としての機能を果たす)を2つ含む34塩基対の配列であるloxPである(Sauer, B.、Current Opinion in Biotechnology 5巻:521〜527頁(1994年)の図1を参照されたい)。他の例示的なloxP部位としては、これだけに限定されないが、lox511(Hoessら、1996年;BethkeおよびSauer、1997年)、lox5171(LeeおよびSaito、1998年)、lox2272(LeeおよびSaito、1998年)、m2(Langerら、2002年)、lox71(Albertら、1995年)、およびlox66(Albertら、1995年)が挙げられる。
FLPリコンビナーゼのために適切な認識部位としては、これだけに限定されないが、FRT(McLeodら、1996年)、F、F、F(SchlakeおよびBode、1994年)、F、F(SchlakeおよびBode、1994年)、FRT(LE)(Senecoffら、1988年)、FRT(RE)(Senecoffら、1988年)が挙げられる。
認識配列の他の例は、attB配列、attP配列、attL配列、およびattR配列であり、これらはリコンビナーゼ酵素λインテグラーゼ、例えばフィーc31によって認識される。φC31SSRは、ヘテロタイプの部位attB(長さ34bp)とattP(長さ39bp)の間の組換えのみを媒介する(Grothら、2000年)。attBおよびattPは、それぞれ、細菌ゲノムおよびファージゲノムに対するファージインテグラーゼの付着部位に対して名づけられ、どちらも、φC31ホモ二量体が結合する可能性がある不完全な逆方向反復を含有する(Grothら、2000年)。産物の部位であるattLおよびattRは、さらなるφC31媒介性組換えに対して有効に不活性であり(Beltekiら、2003年)、それにより反応が不可逆的になる。挿入を触媒するために、ゲノムのattP部位へのattBを有するDNAの挿入が、ゲノムのattB部位へのattP部位の挿入よりも容易であることが見いだされている(Thyagarajanら、2001年;Beltekiら、2003年)。したがって、典型的な戦略では、相同組換えによってattPを有する「ドッキング部位」を定義済みの遺伝子座に位置づけ、次いでそれを挿入のために、attBを有する入ってくる配列とパートナーにする。
本明細書で使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」または「IRES」とは、ATGなどの開始コドンへのシストロン(タンパク質をコードする領域)の直接内部リボソーム侵入を促進し、それにより、キャップに依存しない遺伝子の翻訳を導くエレメントを指す。例えば、Jacksonら、1990年Trends Biochem Sci 15巻(12号):477〜83頁)およびJacksonおよびKaminski. 1995年 RNA 1巻(10号):985〜1000頁を参照されたい。特定の実施形態では、本発明によって意図されているベクターは、1つまたは複数のポリペプチドをコードする1つまたは複数の目的のポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、複数のポリペプチドのそれぞれの効率的な翻訳を実現するために、ポリヌクレオチド配列を1つまたは複数のIRES配列または自己切断性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によって分離することができる。
本明細書で使用される場合、「コザック配列」という用語は、mRNAのリボソームの小サブユニットへの最初の結合を著しく容易にし、翻訳を増大させる短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサスコザック配列は(GCC)RCCATGGであり、Rはプリン(AまたはG)である(Kozak、1986年 Cell. 44巻(2号):283〜92頁、およびKozak、1987年 Nucleic Acids Res. 15巻(20号):8125〜48頁)。特定の実施形態では、本発明によって意図されているベクターは、コンセンサスコザック配列を有するポリヌクレオチドおよび所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
ある特定の実施形態では、ベクターは、選択マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、ハイグロマイシン、メトトレキセート、ゼオシン、ブラストサイジン、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与する、(b)栄養要求性欠損を補完する、または(c)複合培地からは入手不可能な重大な栄養分を供給するタンパク質をコードする(例えば、バチルス属のD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)。任意の数の選択系を用いて、形質転換された細胞系を回収することができる。それらとしては、これだけに限定されないが、それぞれtk細胞またはaprt細胞において使用することができる単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、1977年 Cell 11巻:223〜232頁)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、1990年 Cell 22巻:817〜823頁)が挙げられる。
種々の実施形態では、本発明のベクターを使用して、細胞における1つまたは複数のポリペプチド、例えば、グロビン、EpoRの発現を増大させる、確立するおよび/または維持する。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーならびにそのバリアントおよび合成類似体を指す。したがって、これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が合成の天然に存在しないアミノ酸、例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体であるアミノ酸のポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸のポリマーに当てはまる。
本発明の特定の実施形態は、ポリペプチド「バリアント」も包含する。ポリペプチド「バリアント」という記述は、参照ポリペプチドと少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、切断、および/または置換によって区別され、生物活性を保持するポリペプチドを指す。ある実施形態では、当技術分野で公知の通り、ポリペプチドバリアントは、参照ポリペプチドと、保存されていても保存されていなくてもよい1つまたは複数の置換によって区別される。
ある実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチドの対応する配列に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超える配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、アミノ酸の付加または欠失は参照ポリペプチドのC末端および/またはN末端において起こる。ある実施形態では、アミノ酸の欠失は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125、約130、約135、約140、約145、約150、約155、約160、約165、約170、または約175またはそれより多くのアミノ酸(その間の全てのアミノ酸の数、例えば、25、26、27、29、30...100、101、102、103、104、105...170、171、172、173、174などを含む)のC末端切断を含む。
上記の通り、本発明のポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切断、および挿入を含めた種々のやり方で変更することができる。そのような操作のための方法は当技術分野で一般に、公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAの変異によって調製することができる。変異誘発およびヌクレオチド配列の変更のための方法は当技術分野で周知である。例えば、Kunkel(1985年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82巻:488〜492頁)、Kunkelら、(1987年、Methods in Enzymol、154巻:367〜382頁)、U.S. Pat. No. 4,873,192、Watson、J. D.ら、(Molecular Biology of the Gene、第4版、Benjamin/Cummings、Menlo Park、Calif.、1987年)およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する手引きは、Dayhoffら、(1978年)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl. Biomed. Res. Found.、Washington、D.C.)のモデルにおいて見いだすことができる。
「宿主細胞」とは、in vivo、ex vivo、またはin vitroにおいて、本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドを用いてトランスフェクトする、感染させる、または形質導入する細胞を包含する。宿主細胞は、パッケージング細胞、産生細胞、およびウイルスベクターを感染させた細胞を含んでよい。特定の実施形態では、本発明のウイルスベクターを感染させた宿主細胞を、治療を必要とする被験体に投与する。ある実施形態では、「標的細胞」という用語は、宿主細胞と互換的に使用され、トランスフェクトする、感染させる、または形質導入する、所望の細胞型の細胞を指す。好ましい実施形態では、標的細胞は、造血細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞である。
妥当なウイルス力価を実現するためには、多くの場合、大規模なウイルス粒子産生が必要である。ウイルス粒子は、移行ベクターをウイルスの構造遺伝子および/またはアクセサリー遺伝子、例えば、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、tat遺伝子、rev遺伝子、vif遺伝子、vpr遺伝子、vpu遺伝子、vpx遺伝子、またはnef遺伝子または他のレトロウイルスの遺伝子を含むパッケージング細胞系にトランスフェクトすることによって産生される。
本明細書で使用される場合、「パッケージングベクター」という用語は、パッケージングシグナルを欠き、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くのウイルスの構造遺伝子および/またはアクセサリー遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターまたはウイルスベクターを指す。一般には、パッケージングベクターはパッケージング細胞に含まれ、トランスフェクション、形質導入または感染によって細胞に導入される。トランスフェクション、形質導入または感染のための方法は当業者に周知である。本発明のレトロウイルス/レンチウイルス移行ベクターを、トランスフェクション、形質導入または感染によってパッケージング細胞系に導入して、産生細胞または産生細胞系を生成することができる。本発明のパッケージングベクターは、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクションまたは電気穿孔を含めた標準の方法によってヒト細胞または細胞系に導入することができる。いくつかの実施形態では、パッケージングベクターを、優性選択マーカー、例えば、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、ブラストサイジン、ゼオシン、チミジンキナーゼ、DHFR、Gln合成酵素またはADAなどと一緒に細胞に導入し、その後、適切な薬物の存在下でクローンを選択し、単離することができる。選択マーカー遺伝子は、コード遺伝子に、パッケージングベクターによって、例えば、IRESまたは自己切断性ウイルスペプチドによって物理的に連結させることができる。
ウイルスエンベロープタンパク質(env)により、細胞系から生成される組換えレトロウイルスによって最終的に感染させ、形質転換することができる宿主細胞の範囲が決定される。レンチウイルス、例えば、HIV−1、HIV−2、SIV、FIVおよびEIVなどの場合では、envタンパク質としてはgp41およびgp120が挙げられる。以前に記載されている通り、本発明のパッケージング細胞によって発現されるウイルスenvタンパク質は、ウイルスのgag遺伝子およびpol遺伝子とは別のベクター上にコードされることが好ましい。
本発明において使用することができるレトロウイルス由来のenv遺伝子の実例としては、これだけに限定されないが、MLVエンベロープ、10A1エンベロープ、BAEV、FeLV−B、RD114、SSAV、Ebola、Sendai、FPV(家禽ペストウイルス)、およびインフルエンザウイルスエンベロープが挙げられる。同様に、RNAウイルス(例えば、Picornaviridae科、Calciviridae科、Astroviridae科、Togaviridae科、Flaviviridae科、Coronaviridae科、Paramyxoviridae科、Rhabdoviridae科、Filoviridae科、Orthomyxoviridae科、Bunyaviridae科、Arenaviridae科、Reoviridae科、Birnaviridae科、Retroviridae科のRNAウイルス)由来のエンベロープならびにDNAウイルス(Hepadnaviridae科、Circoviridae科、Parvoviridae科、Papovaviridae科、Adenoviridae科、Herpesviridae科、Poxyiridae科、およびIridoviridae科)由来のエンベロープをコードする遺伝子を利用することができる。代表例としては、FeLV、VEE、HFVW、WDSV、SFV、狂犬病、ALV、BIV、BLV、EBV、CAEV、SNV、ChTLV、STLV、MPMV、SMRV、RAV、FuSV、MH2、AEV、AMV、CT10、およびEIAVが挙げられる。
他の実施形態では、本発明のウイルスをシュードタイピングするためのエンベロープタンパク質としては、これだけに限定されないが、以下のウイルスのいずれかが挙げられる:A型インフルエンザ、例えば、H1N1、H1N2、H3N2およびH5N1(トリインフルエンザ)など、B型インフルエンザ、C型インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群の任意のウイルス、腸内アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘、モノネガウイルス目、リッサウイルス、例えば、狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス、ドゥベンヘイジウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス(European bat virus)1&2およびオーストラリアコウモリウイルス(Australian bat virus)など、エフェメロウイルス、ベシクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、ヒトヘルペスウイルス6型および8型など、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、アレナウイルス、例えば、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス(Sabia−associated hemorrhagic fever virus)、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マチュポウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)など、Bunyaviridiae科、例えば、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、腎症候群を伴う出血熱を引き起こすウイルス、リフトバレー熱ウイルスなど、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱を含めたFiloviridae科(フィロウイルス)、キャサヌール森林病(Kaysanur Forest disease)ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ダニ媒介脳炎を引き起こすウイルスを含めたFlaviviridae科ならびにParamyxoviridae科、例えば、ヘンドラウイルスおよびニパーウイルスなど、大痘瘡、小痘瘡(天然痘)、アルファウイルス、例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS−CoV)、西ナイルウイルス、任意の脳炎(encephaliltis)を引き起こすウイルスなど。
一実施形態では、本発明は、組換えレトロウイルス、例えば、VSV−G糖タンパク質でシュードタイピングされたレンチウイルスを産生するパッケージング細胞を提供する。
「シュードタイプ」または「シュードタイピング」という用語は、本明細書で使用される場合、ウイルスエンベロープタンパク質が、好ましい特性を保有する別のウイルスのウイルスエンベロープタンパク質で置換されたウイルスを指す。例えば、HIVは、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV−G)エンベロープタンパク質を用いてシュードタイピングすることができ、これにより、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子によりコードされる)は通常ウイルスをCD4+提示細胞にターゲティングするので、HIVがより広い範囲の細胞に感染することが可能になる。本発明の好ましい実施形態では、レンチウイルスのエンベロープタンパク質はVSV−Gでシュードタイピングされている。一実施形態では、本発明は、組換えレトロウイルス、例えば、VSV−Gエンベロープ糖タンパク質を用いてシュードタイピングされたレンチウイルスを産生するパッケージング細胞を提供する。
本明細書で使用される場合、「パッケージング細胞系」という用語は、パッケージングシグナルを含有しないが、ウイルス粒子の正しいパッケージングに必要であるウイルスの構造タンパク質および複製酵素(例えば、gag、polおよびenv)を安定にまたは一過性に発現する細胞系への言及において使用される。本発明のパッケージング細胞を調製するために、任意の適切な細胞系を使用することができる。一般に、細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、パッケージング細胞系を作製するために使用される細胞はヒト細胞である。使用することができる適切な細胞系としては、例えば、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H10T1/2細胞、FLY細胞、Psi−2細胞、BOSC23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、BMT10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HT1080細胞、293細胞、293T細胞、B−50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos−2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、および211A細胞が挙げられる。好ましい実施形態では、パッケージング細胞は293細胞、293T細胞、またはA549細胞である。別の好ましい実施形態では、細胞はA549細胞である。
本明細書で使用される場合、「産生細胞系」という用語は、パッケージング細胞系およびパッケージングシグナルを含む移行ベクター構築物を含む、組換えレトロウイルス粒子を産生することができる細胞系を指す。感染性のウイルス粒子およびウイルスストック溶液の作製は、従来の技法を用いて行うことができる。ウイルスストック溶液を調製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、Y. Soneokaら(1995年)Nucl. Acids Res. 23巻:628〜633頁、およびN. R. Landauら(1992年)J. Virol. 66巻:5110〜5113頁によって例示されている。感染性ウイルス粒子はパッケージング細胞から従来の技法を用いて収集することができる。例えば、感染性粒子は、当技術分野で公知の通り、細胞溶解、または細胞培養物の上清を収集することによって収集することができる。必要に応じて、収集されたウイルス粒子は、所望であれば精製することができる。適切な精製技法は当業者に周知である。
レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを使用し、トランスフェクションではなくウイルス感染によって遺伝子(複数可)または他のポリヌクレオチド配列を送達することは、「形質導入」と称される。一実施形態では、感染およびプロウイルスの組み込みによってレトロウイルスベクターを細胞に形質導入する。ある実施形態では、細胞、例えば、標的細胞は、ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを使用して感染によって細胞に送達された遺伝子または他のポリヌクレオチド配列を含む場合に「形質導入される」。特定の実施形態では、形質導入された細胞は、その細胞のゲノムに、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターによって送達された遺伝子または他のポリヌクレオチド配列を1つまたは複数含む。
特定の実施形態では、1つまたは複数のポリペプチドを発現する、本発明のウイルスベクターを用いて形質導入された宿主細胞を被験体に投与して、造血疾患、障害、または状態を処置および/または予防する。本発明のある実施形態に従って利用することができる、遺伝子治療におけるウイルスベクターの使用に関する他の方法は、例えば、Kay, M. A.(1997年)Chest 111(6 Supp.):138S〜142S頁;Ferry, N.およびHeard, J. M.(1998年)Hum. Gene Ther. 9巻:1975〜81頁;Shiratory, Y.ら(1999年)Liver 19巻:265〜74頁;Oka, K.ら(2000年)Curr.
Opin. Lipidol. 11巻:179〜86頁;Thule, P. M.およびLiu, J. M.(2000年)Gene Ther. 7巻:1744〜52頁;Yang, N. S.(1992年)Crit. Rev. Biotechnol. 12巻:335〜56頁;Alt, M.(1995年)J. Hepatol. 23巻:746〜58頁;Brody, S. L.およびCrystal, R. G.(1994年)Ann. N.Y. Acad. Sci. 716巻:90〜101頁;Strayer, D. S.(1999年)Expert Opin. Investig. Drugs 8巻:2159〜2172頁;Smith−Arica, J. R.およびBartlett, J. S.(2001年)Curr. Cardiol. Rep. 3巻:43〜49頁;およびLee, H. C.ら(2000年)Nature 408巻:483〜8頁に見いだすことができる。
「増強する(enhance)」または「促進する(promote)」または「増加させる(increase)」または「増大させる(expand)」とは、一般に、本発明のベクターまたは本発明のベクターを用いて形質導入された宿主細胞により、特定の細胞型または特定の細胞系列において、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答、または他の細胞型または特定の細胞系列において引き起こされる応答と比較してより大きな生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、引き出す、または引き起こすことができることを指す。測定可能な生理応答は、当技術分野における理解および本明細書における記載から明らかなものの中でも、細胞の増大、生着、生存能力、ホーミング、および/または自己再生の増加を含んでよい。本発明のベクターを用いて形質導入された造血幹細胞により前駆細胞が生じる一実施形態では、増加は、1つの系列、例えば、赤血球系列の前駆細胞の数を他の細胞系列と比較して増加させることを含む。造血幹細胞および/または造血前駆細胞の生着、生存能力、ホーミング、自己再生および/またはin vivoにおける増大の増加は、とりわけ、遺伝子発現、CFU−Cアッセイ、CFU−Sアッセイ、CAFCアッセイ、および細胞表面タンパク質発現などの当技術分野で公知の方法を用いて確認することができる。「増加した(increased)」または「増強された(enhanced)」量とは、一般には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクル、対照組成物によって生じる応答、または特定の細胞系列における応答の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍またはそれを超える倍数(例えば、500倍、1000倍)(間に入る1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)である増加を含んでよい。
「減少する(decrease)」または「低減する(lower)」または「減る(lessen)」または「低下する(reduce)」または「弱める(abate)」とは、一般に、本発明のベクターまたは本発明のベクターを用いて形質導入された宿主細胞により、特定の細胞型または特定の細胞系列において、ビヒクルもしくは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答、または他の細胞型もしくは特定の細胞系列において引き起こされる応答と比較してより少ない生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、引き出す、または引き起こすことができることを指す。「減少した(decrease)」または「低下した(reduced)」量とは、一般には「統計的に有意な」量であり、ビヒクル、対照組成物によって生じる応答(参照応答)、または特定の細胞系列における応答の1.1分の1、1.2分の1、1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、15分の1、20分の1、30分の1またはそれ未満(例えば、500分の1、1000分の1)(間に入る1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)である減少を含んでよい。
「維持する(maintain)」または「保全する(preserve)」または「維持(maintenance)」または「変化なし(no change)」または「実質的な変化なし(no substantial change)」または「実質的な減少なし(no substantial decrease)」とは、一般に、本発明のベクターまたは本発明のベクターを用いて形質導入された宿主細胞により、細胞において、ビヒクル、対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答、または特定の細胞系列における応答と比較して、より少ない生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、引き出す、または引き起こすことができることを指す。匹敵する応答とは、参照応答と有意差がないまたは測定可能には異ならない応答である。
冠詞「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1つ、または1つより多く(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「an(1つの)エレメント」とは、1つのエレメントまたは1つより多いエレメントを意味する。
選択肢(例えば、「or(または)」)の使用は、その選択肢のいずれか一方、その両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」および「含む(comprise)」という用語は同義に使用される。
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%だけ変動する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに関して±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さの範囲を指す。
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という単語は、本明細書全体を通して、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、明記されているステップもしくはエレメントまたはステップもしくはエレメントの群を包含するが、任意の他のステップもしくはエレメントまたはステップもしくはエレメントの群を排除するものではないと理解されたい。「からなる(consisting of)」とは、「からなる(consisting of)」という句に続くいかなるものも含み、それに限定されることを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という句は、列挙されているエレメントが必要または必須であること、および他のエレメントは存在してはならないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、この句の後に列挙されている任意のエレメントを包含し、列挙されているエレメントに関する本開示に明記されている活性または作用に干渉または寄与しない他のエレメントに限定されるものとする。したがって、「から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、列挙されているエレメントが必要または必須であるが、他のエレメントは任意選択ではなく、それらが列挙されているエレメントの活性または作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在するかもしれないし、存在しないかもしれないことを示す。
本明細書全体を通して「一実施形態」、「一つの実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加的な実施形態」または「さらなる実施形態」またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。したがって、本明細書全体を通して種々の箇所における前述の句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているのではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性を任意の適切な様式で1つまたは複数の実施形態に組み合わせることができる。
以下の説明において、特定の詳細は、本発明の種々の実施形態の徹底的な理解をもたらさすために記載されている。しかし、当業者には、これらの詳細なしで本発明を実施することができることが理解されよう。さらに、本明細書に記載の構造および置換基の種々の組み合わせに由来する個々のベクター、またはベクターの群が、各ベクターまたはベクターの群が個別に記載されているのと同じ程度に本出願により開示されていることが理解されるべきである。したがって、特定のベクター構造または特定の置換基の選択は本開示の範囲内である。
C.ウイルスベクター
レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは試験され、目的の遺伝子を広範囲の標的細胞のゲノムに安定に導入するための適切な送達ビヒクルであることが見いだされている。本発明は、一部において、遺伝子によりコードされるポリペプチドの細胞における発現を増加させるため、およびベクターを含む細胞の特定の集団または系列を増加または増大させるために、1つまたは複数の遺伝子を細胞に送達するために使用することができる遺伝子治療ベクターを意図している。このように、本発明のベクターにより、細胞におけるポリペプチドの発現の増加およびベクターを含む特定の細胞系列の増加を同時に行わない現存するベクターと比較して多数の治療的利点、予防的(prophylatic)利点、および軽減的利点がもたらされる。
本発明は、本発明の方法を実施するために使用することができる移行ベクターをさらに提供する。そのような移行ベクターは種々の異なるウイルスベクターを使用して作製することができることが当業者には理解されるが、特定の実施形態では、レンチウイルスベクターがin vitroおよびin vivoのどちらにおいても非分裂細胞への導入遺伝子の効率的な送達、組み込みおよび長期発現をもたらすことができることに一部起因して、移行ベクターはレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。種々のレンチウイルスベクターが当技術分野で公知であり、いずれも本発明の移行ベクターを作製するために適合させることができる。Naldiniら、(1996年a、1996年b、および1998年);Zuffereyら、(1997年);Dullら、1998年、米国特許第6,013,516号;および同第5,994,136号を参照されたい。一般に、これらのベクターは、プラスミドに基づくかウイルスに基づき、治療用ポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞内に移行させるために必須な配列を有するように構成されている。
例示的な実施形態では、レンチウイルスベクターはHIVベクターである。したがって、ベクターは、ヒト免疫不全−1(HIV−1)、ヒト免疫不全−2(HIV−2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ジェンブラナ病ウイルス(JDV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)などに由来してよい。本発明の大部分の態様に関して、HIVに基づく構築物がヒト細胞の形質導入において最も効率的であるという点で、HIVに基づくベクターの骨格(すなわち、HIVのシス作用性配列エレメントならびにHIVのgag遺伝子、pol遺伝子およびrev遺伝子)が一般に好ましい。
特定の例示的な実施形態は、造血障害、例えば、異常ヘモグロビン症を調整するために使用するベクター、組成物および方法についてのより詳細な記載を含むが、本発明は、本開示によって限定されるものと解釈されるべきではない。本明細書において例示されている原理を、他の系、例えば、眼、中枢神経系、および末梢神経系を含めた神経系;循環系;筋肉系;骨格系;および皮膚、心臓、肺、膵臓、肝臓、腎臓、腸を含めた器官などにおける遺伝子治療に適用することができることは当業者には容易に理解されよう。
一実施形態では、本発明は、特定の細胞型または細胞系列において目的のポリヌクレオチドの発現を導く発現制御配列、および切断型エリスロポエチン受容体に作動可能に連結した別の発現制御配列を含むベクター、例えば、レンチウイルスベクターを提供する。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明は、一部において、切断型エリスロポエチン受容体に作用的に連結した発現制御配列が、適切なEpoRアゴニストの存在下で、切断型エリスロポエチン受容体を発現する細胞の増大または増加を可能にすることを意図している。さらに、細胞型または細胞系列の発現制御配列を使用することにより、ポリヌクレオチドの発現を単一の系列における細胞分化の所望の段階に制限することにおいて安全性の利点がもたらされ、したがって、本発明のベクターにより、望ましくない細胞型におけるポリペプチドの異所性発現に対処する懸念が緩和される。
一実施形態では、治療用遺伝子または目的のポリヌクレオチドに作動可能に連結した発現制御配列は、切断型エリスロポエチン受容体に作動可能に連結した発現制御配列と同じ発現制御配列、または同じ細胞型または細胞系列において発現を引き出す発現制御配列である必要はない。別の実施形態では、治療用遺伝子または目的のポリヌクレオチドに作動可能に連結した発現制御配列により、切断型エリスロポエチン受容体に作動可能に連結した異なる発現制御配列と同じ細胞型または細胞系列において発現が引き出される。さらなる実施形態では、治療用遺伝子または目的のポリヌクレオチドに作動可能に連結した発現制御配列により、切断型エリスロポエチン受容体に作動可能に連結した同じ発現制御配列と同じである同じ細胞型または細胞系列における発現が引き出される。
1つの非限定的な例では、エリスロポエチン受容体の遍在的発現により、それが発現される細胞、すなわち、全ての細胞を増大または増加させることが可能になる。切断型エリスロポエチン受容体の遍在的発現を導く例示的な遍在的発現制御配列としては、これだけに限定されないが、サイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター(CMV)、伸長因子1アルファプロモーター(EF1−α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1プロモーター(PGK)、ユビキチン−Cプロモーター(UBQ−C)、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチンプロモーター(CAG)、ポリオーマエンハンサー/単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(MC1)、ベータアクチンプロモーター(β−ACT)、およびシミアンウイルス40プロモーター(SV40)が挙げられる。
別の非限定的な例では、エリスロポエチン受容体の条件的発現により、それが条件的に発現される細胞を増大または増加させることが可能になる。
さらに別の非限定的な例では、切断型エリスロポエチン受容体の幹細胞特異的発現により、それが発現される幹細胞(および幹細胞に由来する全ての細胞系列)、例えば、造血幹細胞を増大または増加させることが可能になる。切断型エリスロポエチン受容体の幹細胞特異的発現を導く例示的な幹細胞特異的発現制御配列としては、これだけに限定されないが、胚性幹細胞プロモーター、神経幹細胞プロモーター、間葉幹細胞プロモーター、肝幹細胞プロモーター、膵幹細胞プロモーター、心臓幹細胞プロモーター、腎幹細胞プロモーター、および造血幹細胞プロモーターが挙げられる。
さらに別の非限定的な例では、切断型エリスロポエチン受容体の細胞型または細胞系列に特異的な発現により、それが発現される特定の細胞型または細胞系列、例えば、標的細胞型または細胞系列を、別の細胞型または細胞系列、例えば、非標的細胞型または細胞系列と比較して増大または増加させることが可能になる。切断型エリスロポエチン受容体の発現を導く例示的な細胞型または細胞系列に特異的な発現制御配列としては、これだけに限定されないが、造血幹細胞プロモーター、造血前駆細胞プロモーター、骨髄系細胞プロモーター、リンパ系細胞プロモーター、血小板新生系列プロモーター、肥満細胞プロモーター、赤血球生成系列プロモーター、顆粒球形成系列プロモーター、および単核球形成系列プロモーターが挙げられる。
例示的な標的細胞系列としては、造血細胞系列、骨髄系列、リンパ球系列、血小板新生系列、赤血球生成系列、顆粒球形成系列プロモーター、および単核球形成系列が挙げられる。好ましい実施形態では、標的細胞系列は赤血球生成細胞系列である。
例示的な標的細胞型としては、造血幹細胞、造血前駆細胞、骨髄系前駆体、リンパ球系前駆体、血小板新生前駆体、赤血球前駆体、顆粒球形成前駆体、単核球形成前駆体、巨核芽球、前巨核球、巨核球、栓球/血小板、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染赤芽球、正染性赤芽球、多染赤血球、赤血球(RBC)、好塩基性前骨髄球、好塩基性骨髄球、好塩基性後骨髄球、好塩基球、好中性前骨髄球、好中性骨髄球、好中性後骨髄球、好中球、好酸性前骨髄球、好酸性骨髄球、マクロファージ、樹状細胞、リンパ芽球、前リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、小リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、およびリンパ球系樹状細胞が挙げられる。好ましい実施形態では、標的細胞型は、1つまたは複数の赤血球系細胞、例えば、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染赤芽球、正染性赤芽球、多染赤血球、および赤血球(RBC)である。
特定の実施形態では、本発明のベクターを用いて、ポリヌクレオチド、例えば、1つまたは複数または全ての造血細胞における目的の遺伝子の発現を増加させ、1つまたは複数の細胞型、例えば、造血幹細胞の数を増幅または増加させることができる。一実施形態では、ベクターは、目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーと、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した遍在する、条件的な、または細胞型もしくは細胞系列に特異的なプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーとを含む。別の実施形態では、ベクターは、1つまたは複数のレトロウイルスLTRと、目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞発現制御配列と、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した遍在する、条件的な、または細胞系列特異的な発現制御配列とを含む。
適切な細胞型または細胞系列に特異的な発現制御配列としては、これだけに限定されないが、例えば、造血幹細胞プロモーター、および造血前駆細胞プロモーターなどの造血細胞発現制御配列が挙げられる。1つまたは複数の赤血球系細胞における目的の遺伝子および/またはtEpoRの発現が望まれる実施形態では、適切な造血細胞発現制御配列として、これだけに限定されないが、赤血球系細胞特異的プロモーターおよび必要に応じて赤血球系細胞特異的エンハンサー、ヒトβ−グロビンプロモーター、ヒトβ−グロビンLCR、またはヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターを挙げることができる。
細胞型または細胞系列発現制御配列を使用することにより、ポリヌクレオチドの発現を単一の系列における細胞分化の所望の段階に制限することにおいて安全性の利点がもたらされ、したがって、本発明のベクターにより、望ましくない細胞型におけるポリペプチドの異所性発現に対処する懸念が緩和される。一実施形態では、本発明は、1つまたは複数のLTRと、目的の遺伝子に作動可能に連結した第1の赤血球系細胞特異的発現制御配列と、tEpoRに作動可能に連結した第2の赤血球系細胞特異的発現制御配列とを含むベクターを提供する。第1の赤血球系細胞特異的発現制御配列および第2の赤血球系細胞特異的発現制御配列は、それぞれ独立に、ヒトβ−グロビンプロモーター;ヒトβ−グロビンLCR;ならびにヒトα−グロビンHS40エンハンサーおよびアンキリン−1プロモーターからなる群から選択することができる。
種々の実施形態では、ベクターの設計は、特定の造血疾患、障害、または状態を処置する、予防するまたは軽減することを目的として行う。例えば、本発明は、ヒトα−グロビン、ヒトβ−グロビン、ヒトδ−グロビン、およびヒトγ−グロビンまたはその生物学的なバリアントもしくは断片からなる群から選択される目的の遺伝子を含む、異常ヘモグロビン症の遺伝子治療のためのベクターを意図している。一実施形態では、グロビン遺伝子は、野生型ヒトβ−グロビン遺伝子、イントロン配列の1つまたは複数の欠失を含む欠失ヒトβ−グロビン遺伝子、および少なくとも1つの抗鎌状赤血球化アミノ酸残基をコードする変異ヒトβ−グロビン遺伝子からなる群から選択される。
処置されている状態が鎌状赤血球異常ヘモグロビン症である特定の実施形態では、目的の遺伝子は抗鎌状赤血球化タンパク質であってよい。本明細書で使用される場合、「抗鎌状赤血球化タンパク質」とは、鎌状赤血球の状態における赤血球の鎌状化を導く病理学的事象を予防するまたは逆転させるポリペプチドを指す。本発明の一実施形態では、本発明の形質導入された細胞を使用して、抗鎌状赤血球化タンパク質を異常血色素症の状態を有する被験体に送達する。抗鎌状赤血球化タンパク質は、抗鎌状赤血球化アミノ酸残基を含む変異したβ−グロビン遺伝子も包含する。
好ましい実施形態では、そのようなグロビンバリアントの1つはコドン87におけるトレオニンからグルタミンへの変異(βA−T87Q)をコードするヒトβA−グロビン遺伝子、またはヒトβA−グロビン遺伝子である。他の抗鎌状赤血球化アミノ酸残基は当技術分野で公知であり、本発明において有用であり得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,051,402号;米国特許第5,861,488号;米国特許第6,670,323号;米国特許第5,864,029号;米国特許第5,877,288号;およびLevasseurら、Blood 102巻:4312〜4319頁(2003年)を参照されたい。
ある実施形態では、赤血球特異的発現制御配列を含むベクターを使用して、異常ヘモグロビン症を優に超える膨大な数の障害を処置する、予防する、または軽減する。赤血球前駆体は、循環中に分泌させ、したがって、全身に送達することができるポリペプチドを発現させるために有用な細胞集団である。そのようなin vivoにおけるタンパク質の送達の例は、血友病Bの患者において欠けている凝固因子であるヒト第IX因子である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるA. H. Changら、Molecular Therapy(2008年)を参照されたい。
一実施形態では、本発明のベクターを用いて形質導入された細胞を、in vitro、ex vivo、またはin vivoにおいて、タンパク質を分泌させるための「工場」として使用することができる。例えば、赤血球系細胞特異的発現制御配列を含むベクターを、HSCから分化した赤血球系細胞から、または胚性幹細胞からタンパク質を大規模にin vitro生成するために使用することができる。
このように発現させることができる目的のポリヌクレオチドとしては、これだけに限定されないが、リソソーム蓄積症に影響を及ぼす酵素であるアデノシンデアミナーゼ、アポリポタンパク質E、脳由来神経栄養因子(brain derived neurotropihic factor)(BDNF)、骨形成タンパク質2(BMP−2)、骨形成タンパク質6(BMP−6)、骨形成タンパク質7(BMP−7)、カルジオトロフィン1(CT−1)、CD22、CD40、毛様体神経栄養因子(CNTF)、CCL1−CCL28、CXCL1−CXCL17、CXCL1、CXCL2、CX3CL1、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、ドーパミン、エリスロポエチン、第IX因子、第VIII因子、上皮増殖因子(EGF)、エストロゲン、FAS−リガンド、線維芽細胞増殖因子1(FGF−1)、線維芽細胞増殖因子2(FGF−2)、線維芽細胞増殖因子4(FGF−4)、線維芽細胞増殖因子5(FGF−5)、線維芽細胞増殖因子6(FGF−6)、線維芽細胞増殖因子1(FGF−7)、線維芽細胞増殖因子1(FGF−10)、Flt−3、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM−CSF)、成長ホルモン、肝細胞増殖因子(HGF)、インターフェロンアルファ(IFN−a)、インターフェロンベータ(IFN−b)、インターフェロンガンマ(IFNg)、インスリン、グルカゴン、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、インスリン様増殖因子2(IGF−2)、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン8(IL−8)、インターロイキン9(IL−9)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン11(IL−11)、インターロイキン12(IL−12)、インターロイキン13(IL−13)、インターロイキン15(IL−15)、インターロイキン17(IL−17)、インターロイキン19(IL−19)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、単球走化性タンパク質1(MCP−1)、マクロファージ炎症性タンパク質3a(MIP−3a)、マクロファージ炎症性タンパク質3b(MIP−3b)、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン3(NT−3)、ニューロトロフィン4(NT−4)、副甲状腺ホルモン、血小板由来増殖因子AA(PDGF−AA)、血小板由来増殖因子AB(PDGF−AB)、血小板由来増殖因子BB(PDGF−BB)、血小板由来増殖因子CC(PDGF−CC)、血小板由来増殖因子DD(PDGF−DD)、RANTES、幹細胞因子(SCF)、ストロマ細胞由来因子1(SDF−1)、テストステロン、形質転換増殖因子アルファ(TGF−a)、形質転換増殖因子ベータ(TGF−b)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−a)、Wnt1、Wnt2、Wnt2b/13、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt7c、Wnt8、Wnt8a、Wnt8b、Wnt8c、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、Wnt14、Wnt15、またはWnt16、ソニックヘッジホッグ、デザートヘッジホッグ、およびインディアンヘッジホッグが挙げられる。
種々の実施形態では、本発明のベクターは、切断型エリスロポエチン受容体をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結した発現制御配列を含む。
特定の好ましい実施形態では、本発明のベクターは、tEpoRのターンオーバーを内因性のエリスロポエチン受容体(EpoR)と比較して低下させ、tEpoRの半減期を内因性のエリスロポエチン受容体(EpoR)と比較して増加させ、かつ/またはマイトジェン活性化シグナル伝達経路、例えば、MAPK、JAK/STAT、PI3K、AKT、RASの持続時間を増加させるC末端切断を有するtEpoRを含む。したがって、EpoRアゴニストと結合すると、tEpoRは、分裂誘発経路の活性化をもたらし、EpoR発現細胞またはいかなるEpoRも発現しない細胞と比較して細胞増殖または細胞の増大を増加させる。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、EpoRアゴニスト、例えば、エリスロポエチン(EPO)がEpoRと結合することにより、2つの受容体サブユニットの二量体形成およびその後の関連するJanusキナーゼ(Jak)2の活性化が誘導されると考えられている(Witthuhnら、1993年)。これにより、EpoRのいくつかのチロシン残基がリン酸化され、SH2を含有するタンパク質が動員され、その結果、シグナル伝達経路のいくつかのカスケード、特にRas/細胞外シグナル調節キナーゼ(Erk)/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)(Tortiら、1992年)経路およびホスファチジルイノシトール3キナーゼ/Aktキナーゼ経路(Damenら、1995年)が活性化される。Jak2により、シグナル伝達性転写活性化因子(Stat)5およびStat3(Kiritoら、1997年)もリン酸化され、次いでそれが核に転置して転写因子としての機能を果たし、EpoRの分裂誘発効果を媒介する。
いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明は、切断型エリスロポエチン受容体を細胞において発現させることにより、全長のエリスロポエチン受容体を発現している細胞またはエリスロポエチン受容体を全く発現していない細胞に対する増殖的利点をもたらすことを意図している。tEpoRポリペプチドは全長のEpoRよりも効率的に細胞表面に輸送される。さらに、本発明のtEpoRポリペプチドは、C末端の1つまたは複数の保存されたチロシン(Tyr)リン酸化部位および/またはタンパク質結合部位を欠く。tEpoRの1つの帰結は、tEpoRはそれでもなお分裂誘発経路を活性化することができるが、通常は急速に脱リン酸化し、EpoRの発現を下方制御するホスファターゼを効率的に動員することはできないことである。その結果、正常なEpoRと比較してtEpoRを通じた細胞内シグナル伝達が増加し、細胞の増殖または増大を増加させるマイトジェン活性化経路の活性化が増加する。
代表的な全長のEpoRのアミノ酸配列は、配列番号19、配列番号22、配列番号25、配列番号28、配列番号31および配列番号34に記載されている。切断型EpoRは、当技術分野で公知の組換え技法を用いて作製することができる。C末端のTyr残基またはその近くに終止コドンを挿入することによって特定の切断型EpoRを作製し、したがって、切断型EpoRを創製するプロセスにおいてTyr残基が除去されるまたは変異する。
例示的なヒトtEpoR受容体は、C末端のTyr残基、またはその近く、1アミノ酸以内、2アミノ酸以内、3アミノ酸以内、4アミノ酸以内、5アミノ酸以内、6アミノ酸以内、7アミノ酸以内、8アミノ酸以内、9アミノ酸以内、10アミノ酸以内、11アミノ酸以内、12アミノ酸以内、13アミノ酸以内、14アミノ酸以内、15アミノ酸以内、16アミノ酸以内、17アミノ酸以内、18アミノ酸以内、19アミノ酸以内、または20アミノ酸以内に終止コドンが導入される1つまたは複数の変異を含む。例示的なC末端のTyr残基としては、配列番号22に記載のTyr(Y)344、402、430、432、444、461、465および480が挙げられる(配列番号22は配列番号19に記載の全長のヒトEpoRの疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸を欠くことに留意されたい)。
例示的なマウスtEpoR受容体は、C末端のTyr残基、またはその近く、1アミノ酸以内、2アミノ酸以内、3アミノ酸以内、4アミノ酸以内、5アミノ酸以内、6アミノ酸以内、7アミノ酸以内、8アミノ酸以内、9アミノ酸以内、10アミノ酸以内、11アミノ酸以内、12アミノ酸以内、13アミノ酸以内、14アミノ酸以内、15アミノ酸以内、16アミノ酸以内、17アミノ酸以内、18アミノ酸以内、19アミノ酸以内、または20アミノ酸以内に終止コドンが導入される1つまたは複数の変異を含む。例示的なC末端のTyr残基としては、配列番号28に記載のTyr(Y)343、401、429、431、442、460、464および479が挙げられる(配列番号28は配列番号25に記載の全長のマウスEpoRの疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸を欠くことに留意されたい)。
例示的なラットtEpoR受容体は、C末端のTyr残基、またはその近く、1アミノ酸以内、2アミノ酸以内、3アミノ酸以内、4アミノ酸以内、5アミノ酸以内、6アミノ酸以内、7アミノ酸以内、8アミノ酸以内、9アミノ酸以内、10アミノ酸以内、11アミノ酸以内、12アミノ酸以内、13アミノ酸以内、14アミノ酸以内、15アミノ酸以内、16アミノ酸以内、17アミノ酸以内、18アミノ酸以内、19アミノ酸以内、または20アミノ酸以内に終止コドンが導入される1つまたは複数の変異を含む。例示的なC末端のTyr残基としては、配列番号34に記載のTyr(Y)343、401、429、431、442、460、464および479が挙げられる(配列番号34は配列番号31に記載の全長のラットEpoRの疎水性のリーダー配列を構成する最初の24アミノ酸を欠くことに留意されたい)。
生物活性のある切断型EpoRの特定の例としては、これだけに限定されないが、配列番号19、配列番号22、配列番号25、配列番号28、配列番号31、および配列番号34に記載のアミノ酸配列のアミノ酸1〜335、1〜336、1〜337、1〜338、1〜339、1〜340、1〜341、1〜342、1〜343、1〜344、1〜345、1〜346、1〜347、1〜348、1〜349、1〜350、1〜351、1〜352、1〜353、1〜354、1〜355、1〜356、1〜357、1〜358、1〜359、1〜360、1〜361、1〜362、1〜363、1〜364、1〜365、1〜366、1〜367、1〜368、1〜369、1〜370、1〜371、1〜372、1〜373、1〜374、1〜375、1〜376、1〜377、1〜378、1〜379、1〜380、1〜381、1〜382、1〜383、1〜384、1〜385、1〜386、1〜387、1〜388、1〜389、1〜390、1〜391、1〜392、1〜393、1〜394、1〜395、1〜396、1〜397、1〜398、1〜399、1〜400、1〜401、1〜402、1〜403、1〜404、1〜405、1〜406、1〜407、1〜408、1〜409、1〜410、1〜411、1〜412、1〜413、1〜414、1〜415、1〜416、1〜417、1〜418、1〜419、1〜420、1〜421、1〜422、1〜423、1〜424、1〜425、1〜526、1〜427、1〜428、1〜429、1〜430、1〜431、1〜432、1〜433、1〜434、1〜435、1〜436、1〜437、1〜438、1〜439、1〜440、1〜441、1〜442、1〜443、1〜444、1〜445、1〜446、1〜447、1〜448、1〜449、1〜450、1〜451、1〜452、1〜453、1〜454、1〜455、1〜456、1〜457、1〜458、1〜459、1〜460、1〜461、1〜462、1〜463、1〜464、1〜465、1〜466、1〜467、1〜468、1〜469、1〜470、1〜471、1〜472、1〜473、1〜474、1〜475、1〜476、1〜477、1〜478、1〜479、1〜480、1〜481、1〜482、1〜483、1〜484、1〜485、1〜486、1〜487、1〜488、1〜489、1〜490、1〜491、1〜492、1〜493、1〜494、1〜495、1〜496、1〜497、1〜498、1〜499、または1〜500を含む、またはそれからなるC末端切断型EpoRおよびそのバリアントが挙げられる。ある実施形態では、本発明のtEpoRポリペプチドは、in vitro、ex vivo、またはin vivoにおいて細胞を増殖させるまたは細胞を増大させることができる全長のEpoRポリペプチドの最小の活性断片を含む。
tEpoRポリペプチドバリアントの特定の例としては、例えば、配列番号22に記載のTyr(Y)344、402、430、432、444、461、465および480、ならびに配列番号28または配列番号34に記載のTyr(Y)343、401、429、431、442、460、464および479からなる群から選択されるC末端のTyr残基に1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、または置換を有するtEpoRポリペプチドが挙げられる。
好ましい実施形態では、本発明のベクターは、約50〜約60アミノ酸、約80〜約90アミノ酸、または約85〜約95アミノ酸、または約55アミノ酸、約83アミノ酸、または約91アミノ酸のC末端切断を含むtEpoRを含む。
一実施形態では、本発明のベクターは、少なくとも1つの改変されたまたは改変されていないレトロウイルスLTR、例えば、レンチウイルスLTRと、目的の遺伝子に作動可能に連結したβ−グロビンプロモーターおよびβ−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した発現制御配列とを含む。LTRの適切な改変としては、これだけに限定されないが、5’LTRを異種プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、チミジンキナーゼプロモーター、またはシミアンウイルス40(SV40)プロモーターで置き換えること、および本明細書の他の箇所で考察されている3’LTRの1つまたは複数の改変、付加、および/または欠失が挙げられる。
特定の実施形態では、ヒトβ−グロビンプロモーター、ヒトβ−グロビンLCR由来のDNAアーゼI高感受性部位2、3および4のうちの1つまたは複数を含むβ−グロビンLCR、および/またはヒトβ−グロビン3’エンハンサーエレメントを使用して、ポリヌクレオチドの赤血球での発現を実現する。
種々の実施形態では、本発明のベクターは、本明細書の他の箇所で考察されている通り、プサイパッケージング配列(Ψ+)、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)、レトロウイルス輸送エレメント、転写後調節エレメント、インスレーターエレメント、ポリアデニル化配列、選択マーカー、および細胞自殺遺伝子からなる群から選択される1つまたは複数のエレメントを含む。
一実施形態では、ベクターは、左側の(5’)レトロウイルスLTRと、プサイパッケージング配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、レトロウイルス輸送エレメントと、β−グロビンプロモーターと、β−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、必要に応じて目的のポリヌクレオチドに作動可能に連結した3’β−グロビンエンハンサーと、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した赤血球系細胞特異的発現制御配列と、1つまたは複数のインスレーターエレメント、またはポリアデニル化配列を含む右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含む。
特定の実施形態では、本発明のベクターは、左側の(5’)HIV−1 LTRと、プサイパッケージング配列(Ψ+)と、HIV−1セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、rev応答エレメント(RRE)と、β−グロビンプロモーターと、β−グロビン遺伝子座制御領域(LCR)と、必要に応じて目的のポリヌクレオチドに作動可能に連結した3’β−グロビンエンハンサーと、切断型エリスロポエチン受容体(tEpoR)に作動可能に連結した赤血球系細胞特異的発現制御配列と、1つまたは複数のインスレーターエレメント、およびウサギβ−グロビンポリA配列(rβgpA)を含む右側の(3’)レトロウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターである。
多くの他の異なる実施形態を本発明の現行の実施形態から適合させ得、したがって、治療用導入遺伝子または目的の遺伝子を標的細胞型または細胞系列において発現させること、およびtEpoRを、増大させようとする同じおよび/または異なる標的細胞型または細胞系列において発現させることが当業者には理解されよう。
D.組成物および製剤
本発明は、本明細書に記載の方法に従って作製された形質導入された細胞と、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物をさらに含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容されるキャリア」とは、薬学的に許容される細胞培養培地を含めた生理的に適合性の任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを包含する。一実施形態では、キャリアを含む組成物は、非経口投与、例えば、血管内投与(静脈内投与または動脈内投与)、腹腔内投与または筋肉内投与に適している。薬学的に許容されるキャリアとしては、滅菌注射用液剤または分散剤を即時調製するための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質へのそのような媒体および作用剤(agent)の使用は当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または作用剤が形質導入された細胞と適合しない場合を除く限りでは、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が意図されている。
本発明の組成物は、細胞または動物に投与するために、単独で、または1つまたは複数の他の療法のモダリティと組み合わせて、薬学的に許容されるまたは生理的に許容される液剤に製剤化される、本明細書に記載の1つまたは複数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、それを含むベクター、形質導入された細胞などを含んでよい。所望であれば、本発明の組成物は、他の作用剤、例えば、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、小分子または種々の薬学的に活性な作用剤などとも組み合わせて投与することができることも理解されよう。同様に組成物に含めることができる他の構成成分に対する限定は、追加的な作用剤が、意図された遺伝子治療を送達する組成物の能力に悪影響を及ぼさないのであれば、実質的に存在しない。
本発明の医薬組成物では、薬学的に許容される賦形剤およびキャリア溶液の処方は、本明細書に記載の特定の組成物を、例えば、経口的、非経口的、静脈内、鼻腔内、および筋肉内への投与および処方を含めた種々の治療レジメンにおいて使用するための適切な投薬および治療レジメンの開発と同様に当業者に周知である。
ある特定の状況では、本明細書に開示されている組成物を、例えば、米国特許第5,543,158号;同第5,641,515号および同第5,399,363号(そのそれぞれの全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる)に記載の通り、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、またはさらには腹腔内に送達することが望ましい。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水中に調製することができる。分散物をグリセロール、液体ポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物中に、および油中に調製することもできる。通常の保管および使用の条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を予防するために防腐剤を含有する。
注射による使用に適した医薬形態としては、滅菌水溶液または分散物、および滅菌の注射可能な溶液または分散物を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる(米国特許第5,466,468号、その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる)。全ての場合において、形態は滅菌されているべきであり、また、容易に注射可能である程度まで流体であるべきである。形態は製造および保管の条件下で安定であるべきであり、また、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されるべきである。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適切なそれらの混合物、ならびに/または植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散の場合では必要な粒度を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって容易にすることができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによってもたらすことができる。
水溶液中で非経口投与するためには、例えば、溶液は、必要であれば適切に緩衝されているべきであり、液体希釈剤は最初に十分な食塩水またはグルコースを用いて等張性にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は本開示を考慮すれば当業者に公知になろう。例えば、1投与量を、等張性のNaCl溶液1mlに溶解させ、皮下注入用流体1000mlに添加するか、提唱された注入部位に注射することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Baltimore、MD:Lippincott Williams & Wilkins、2000年を参照されたい)。治療されている被験体の状態に応じて、投与量にいくらかの変動が必ず生じる。いずれにしても、投与に関与する人が個々の被験体に対する適切な用量を決定する。さらに、ヒトに投与するためには、調製物は、FDA Office of Biologics standardsにより必要とされる滅菌、発熱性、および一般的な安全性および純度の標準に適うべきである。
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙されている種々の他の成分を含む適切な溶媒中に組み入れ、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散物は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒および上に列挙されているものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合では、好ましい調製方法は、活性成分の粉末と、それに加えて任意の追加的な所望の成分を、予め滅菌濾過したその溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥技法である。
本明細書に開示されている組成物は、中性の形態または塩の形態に製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては酸付加塩(タンパク質の遊離のアミノ基と形成される)が挙げられ、これは、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される。遊離のカルボキシル基と形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることができる。製剤化の際、溶液を投与製剤と適合する様式および治療的に有効な量で投与する。製剤は、注射用溶液、薬物放出カプセル剤などの種々の剤形で容易に投与される。
本明細書で使用される場合、「キャリア」とは、任意のかつ全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、緩衝液、キャリア溶液、懸濁物、コロイドなどを包含する。薬学的に活性な物質へのそのような媒体および作用物質の使用は当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または作用物質が活性成分と適合しない場合を除く限りでは、治療用組成物におけるその使用が意図されている。補足的な活性成分も組成物に組み入れることができる。
「薬学的に許容される」という句は、ヒトに投与された際にアレルギー性または同様の不都合な応答を生じさせない分子実体および組成物を指す。タンパク質を活性成分として含有する水性組成物の調製は当技術分野ではよく理解されている。一般には、そのような組成物は、液体の溶液または懸濁物のいずれかとしての注射剤として調製され、注射前に液体での溶液、または液体での懸濁物に適した固体形態も調製することができる。調製物は乳化されていてもよい。
ある特定の実施形態では、組成物は、鼻腔内噴霧、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達することができる。遺伝子、ポリヌクレオチド、およびペプチド組成物を経鼻エアロゾル噴霧によって肺に直接送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および同第5,804,212号(そのそれぞれの全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる)に記載されている。同様に、鼻腔内微小粒子樹脂(Takenagaら、1998年)およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる)を使用した薬物の送達も、製薬技術分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroetheylene)支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号(その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる)に記載されている。
ある特定の実施形態では、送達は、本発明の組成物を適切な宿主細胞に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微小粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞を、必要に応じて、CPPポリペプチドなどと混合して使用することによって起こり得る。具体的には、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、ナノ粒子などのいずれかに封入して送達するために製剤化することができる。そのような送達ビヒクルの製剤化および使用は、公知かつ従来の技法を用いて行うことができる。本発明の製剤および組成物は、細胞または動物に投与するために、単独で、または1つまたは複数の他の療法のモダリティと組み合わせて、薬学的に許容されるまたは生理的に許容される溶液(例えば、培養培地)中に製剤化された、本明細書に記載の任意の数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および小分子の組み合わせで構成される1つまたは複数の抑制因子および/または活性化因子を含んでよい。所望であれば、本発明の組成物は、他の作用物質、例えば、細胞、他のタンパク質またはポリペプチドまたは種々の薬学的に活性な作用物質などとも組み合わせて投与することができることも理解されよう。
特定の実施形態では、本発明による製剤または組成物は、本明細書に記載の任意の数のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および小分子の組み合わせと接触した細胞を含む。
ある特定の態様では、本発明は、これだけに限定されないが、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターを含めたウイルスベクター系を送達するため(すなわち、ウイルス媒介性形質導入)に適した製剤または組成物を提供する。
ex vivo送達のための例示的な製剤は、当技術分野で公知の種々のトランスフェクション薬剤、例えば、リン酸カルシウム、電気穿孔、熱ショックおよび種々のリポソーム製剤(すなわち、脂質媒介性トランスフェクション)などの使用も含んでよい。下でより詳細に説明されている通り、リポソームは、水性流体の画分が閉じ込められた脂質二重層である。DNAは、自発的にカチオン性リポソームの外面と会合し(その電荷によって)、これらのリポソームは細胞膜と相互作用する。
ある特定の態様では、本発明は、1種または複数種の薬学的に許容されるキャリア(添加物)および/または希釈剤(例えば、薬学的に許容される細胞培養培地)と一緒に製剤化された治療有効量の本明細書に記載の1つまたは複数のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む薬学的に許容される組成物を提供する。
本発明の特定の実施形態は、他の製剤、例えば、製薬技術分野で周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版 Baltimore、MD:Lippincott Williams & Wilkins、2000年に記載されているものなどを含んでよい。
E.遺伝子治療の方法
レトロウイルスベクターにより、遺伝子治療の改善された方法がもたらされる。本明細書で使用される場合、「遺伝子治療」という用語は、遺伝子および/または遺伝子の発現を回復させる、調整する、または改変する、細胞のゲノムへのポリヌクレオチドの導入を指す。種々の実施形態では、本発明のウイルスベクターは、単一遺伝子の疾患、障害、もしくは状態または造血系の疾患、障害、もしくは状態を有すると診断された被験体またはそれを有する疑いがある被験体に治癒的、予防的、または軽減的利益をもたらすポリペプチドをコードする治療用導入遺伝子を発現する造血発現制御配列を含む。さらに、本発明のベクターは、特定の細胞の集団または系列、例えば、赤血球系細胞を増加または増大させるために、細胞において切断型エリスロポエチン受容体を発現する別の発現制御配列を含む。ウイルスを、in vivo、ex vivo、またはin vitroにおいて細胞に感染させ、それに形質導入することができる。ex vivoおよびin vitroにおける実施形態では、次いで、形質導入された細胞を、治療を必要とする被験体に投与することができる。本発明は、本発明のベクター系、ウイルス粒子、および形質導入された細胞を使用して、被験体における単一遺伝子の疾患、障害、もしくは状態または造血系の疾患、障害、もしくは状態、例えば、異常ヘモグロビン症を処置する、予防する、および/または軽減することを意図している。
本明細書で使用される場合、「造血」とは、前駆細胞からの血液細胞の形成および発達ならびに幹細胞からの前駆細胞の形成を指す。血液細胞としては、これだけに限定されないが、赤血球(erythrocyte)または赤血球(red blood cell)(RBC)、網状赤血球、単球、好中球、巨核球、好酸球、好塩基球、B細胞、マクロファージ、顆粒球、肥満細胞、栓球、および白血球が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「異常ヘモグロビン症」または「異常ヘモグロビン症の状態」という用語は、血液中に異常なヘモグロビン分子が存在することを伴う任意の障害を包含する。異常ヘモグロビン症の例としては、これだけに限定されないが、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、およびサラセミアが挙げられる。血液中に異常なヘモグロビンの組み合わせが存在する異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球/Hb−C症)も包含される。
「鎌状赤血球貧血」または「鎌状赤血球症」という用語は、本明細書では、赤血球の鎌状化に起因する任意の症候性の貧血性の状態を包含すると定義される。鎌状赤血球症の徴候としては、貧血;疼痛;ならびに/または臓器機能障害、例えば、腎不全、網膜症、急性胸部症候群、虚血、持続勃起症および脳卒中が挙げられる。本明細書で使用される場合、「鎌状赤血球症」という用語は、特にHbSにおける鎌状赤血球置換についてホモ接合体である被験体における鎌状赤血球貧血に伴う種々の臨床的問題を指す。本明細書において鎌状赤血球症という用語を使用することによって言及される体質性徴候としては、成長および発達の遅延、特に肺炎球菌に起因する重篤な感染症が発生する傾向の増加、再発性梗塞および最終的な脾組織の破壊を伴う、循環している細菌の有効なクリアランスが妨げられる脾機能の著しい欠陥がある。「鎌状赤血球症」という用語には、主に腰椎、腹部、および大腿骨幹(femoral shaft)に影響を及ぼし、機構および重症度が減圧痛と同様である筋骨格痛の急性エピソードも包含される。成人では、そのような発作(attack)は、一般に、数週間または数カ月ごとに持続時間の短い軽度または中程度の発作(bout)として顕在化し、その間に平均で1年に約1回、5〜7日間続く苦痛な発作(attack)に襲われる。そのような発症のトリガーとなることが公知の事象はアシドーシス、低酸素症および脱水であり、これらは全て細胞内でのHbSの重合を増強する(J. H. Jandl、Blood: Textbook of Hematology、第2版、Little, Brown and Company, Boston、1996年、544〜545頁)。本明細書で使用される場合、「サラセミア」という用語は、ヘモグロビンの合成に影響を及ぼす変異に起因して起こる遺伝性貧血を包含する。したがって、この用語は、重度のまたはβサラセミア、サラセミアメジャー、中等症サラセミア、ヘモグロビンH症などのαサラセミアなどのサラセミアの状態によって生じる任意の症候性貧血を包含する。
本明細書で使用される場合、「サラセミア」とは、ヘモグロビンの生成の欠陥を特徴とする遺伝性障害を指す。サラセミアの例としては、αサラセミアおよびβサラセミアが挙げられる。βサラセミアは、ベータグロビン鎖の変異によって引き起こされ、重症型または軽症型で(in a major or minor form)起こり得る。重症型のβサラセミアでは、出生時には小児は正常であるが、生後1年間で貧血を発症する。軽度の型のβサラセミアでは、小さな赤血球が産生され、グロビン鎖由来の1つまたは複数の遺伝子の欠失によってサラセミアが引き起こされる。
αサラセミアは、一般には、HBA1遺伝子およびHBA2遺伝子が関与する欠失によって生じる。これらの遺伝子はどちらも、ヘモグロビンの構成成分(サブユニット)であるα−グロビンをコードする。各細胞のゲノムにはHBA1遺伝子の2つのコピーおよびHBA2遺伝子の2つのコピーが存在する。結果として、α−グロビンを産生する4つの対立遺伝子が存在する。種々の種類のαサラセミアがこれらの対立遺伝子の一部または全部の喪失に起因する。αサラセミアの最も重度の型であるHb Bart症候群は、α−グロビン対立遺伝子4つ全てが喪失することによって生じる。HbH症は、α−グロビン対立遺伝子4つのうち3つが喪失することによって引き起こされる。これらの2つの状態では、α−グロビンの不足により、細胞が正常なヘモグロビンを作ることが妨げられる。その代わりに、細胞は、ヘモグロビンBart(Hb Bart)またはヘモグロビンH(HbH)と称される異常な形態のヘモグロビンを産生する。これらの異常なヘモグロビン分子は酸素を体の組織に有効に運搬することができない。Hb BartまたはHbHで正常なヘモグロビンが置換されることにより、αサラセミアに関連する貧血および他の重篤な健康問題が引き起こされる。
好ましい実施形態では、本発明の遺伝子治療の方法を用いて、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β−サラセミア、サラセミメジャーア、中等症サラセミア、α−サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択される異常ヘモグロビン症を処置する、予防する、または軽減する。
種々の実施形態では、レトロウイルスベクターを、遺伝子治療を必要とする被験体の細胞、組織、または器官にin vivoで直接注射することによって投与する。種々の他の実施形態では、細胞に、本発明のベクターを用いてin vitroまたはex vivoで形質導入し、必要に応じてex vivoで増大させる。次いで、形質導入された細胞を、遺伝子治療を必要とする被験体に投与する。
本発明の遺伝子治療の方法における形質導入および投与に適した細胞としては、これだけに限定されないが、幹細胞、前駆細胞、および分化細胞が挙げられる。ある実施形態では、形質導入される細胞は胚性幹細胞、骨髄幹細胞、臍帯幹細胞、胎盤幹細胞、間葉幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、心臓幹細胞、腎幹細胞、造血幹細胞である。
種々の実施形態では、幹細胞を使用することが好ましく、これは、幹細胞がin vivoで特定の生物学的ニッシェに投与されると適切な細胞型に分化する能力を有するためである。「幹細胞」という用語は、(1)長期にわたって自己再生できること、または元の細胞と同一のコピーを少なくとも1つ生成することができること、(2)単一細胞レベルで、多数の、またいくつかの例ではただ1つの特殊化した細胞型に分化することができること、および(3)in vivoで組織の機能的再生をすることができる未分化細胞である細胞を指す。幹細胞は、それらの発生上の能力に従って、全能性、多能性、多分化能(multipotent)および少能性(oligopotent)/単能性に細分類される。「自己再生」とは、変更されていない娘細胞を産生する独特の能力および特殊化した細胞型を生成する独特の能力(潜在力)を有する細胞を指す。自己再生は、2つのやり方で実現することができる。非対称細胞分裂により、親の細胞と同一である娘細胞が1つと、親の細胞とは異なり、前駆細胞または分化細胞である娘細胞が1つ産生される。非対称細胞分裂では細胞の数は増大しない。対称細胞分裂により、同一の娘細胞が2つ産生される。細胞の「増殖」または「拡大」とは、対称的に分裂する細胞を指す。
本明細書で使用される場合、「多能性」という用語は、細胞の、体または体質(すなわち、胚本体(embryo proper))の全ての系列を形成する能力を意味する。例えば、胚性幹細胞は、3つの胚葉、外胚葉、中胚葉、および内胚葉のそれぞれから細胞を形成することができる多能性幹細胞の一種である。本明細書で使用される場合、「多分化能」という用語は、成体幹細胞の、1つの系列の多数の細胞型を形成する能力を指す。例えば、造血幹細胞は、血液細胞系列の全ての細胞、例えば、リンパ系細胞および骨髄性細胞を形成することができる。
本明細書で使用される場合、「前駆体」または「前駆細胞」という用語は、自己再生する能力、およびより成熟した細胞に分化する能力を有する細胞を指す。前駆細胞の効力は多能性幹細胞および多分化能性幹細胞と比較して低下する。多くの前駆細胞は単一の系列に沿って分化するが、かなり広範囲の増殖能力も有し得る。
造血幹細胞(HSC)は、生物体の生存期間にわたって成熟血液細胞のレパートリー全体を生成することができる拘束された造血前駆細胞(HPC)を生じさせる。「造血幹細胞」または「HSC」という用語は、骨髄系列(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、およびリンパ系列(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、および当技術分野で公知のその他の系列を含めた、生物体の血液細胞の種類の全てを生じさせる多分化能性幹細胞を指す(Fei, R.ら、米国特許第5,635,387号;McGlaveら、米国特許第5,460,964号;Simmons, P.ら、米国特許第5,677,136号;Tsukamotoら、米国特許第5,750,397号;Schwartzら、米国特許第5,759,793号;DiGuistoら、米国特許第5,681,599号;Tsukamotoら、米国特許第5,716,827号を参照されたい)。致死的に放射線照射した動物またはヒトに移植すると、造血幹細胞および前駆細胞は赤血球、好中球−マクロファージ、巨核球およびリンパ系の造血細胞プールを再配置させることができる。
好ましい実施形態では、形質導入される細胞は、骨髄、臍帯血、または末梢循環から単離された造血幹細胞および/または造血前駆細胞である。特に好ましい実施形態では、形質導入される細胞は、骨髄、臍帯血、または末梢循環から単離された造血幹細胞である。
HSCは、特定の表現型マーカーまたは遺伝子型マーカーに応じて同定することができる。例えば、HSCは、それらのサイズが小さいこと、系列(lin)マーカーを欠くこと、生体染色色素、例えば、ローダミン123(ローダミンDULL、rholoとも称される)またはHoechst33342での染色性が低いこと(サイドポピュレーション)、およびそれらの表面上に、その多くが分化シリーズのクラスターに属する種々の抗原マーカー(例えば、CD34、CD38、CD90、CD133、CD105、CD45、Ter119、およびc−kit、幹細胞因子の受容体)が存在することによって同定することができる。HSCは、系列拘束を検出するために一般に使用されるマーカーについて主に陰性であり、したがって、多くの場合、Lin(−)細胞と称される。
一実施形態では、ヒトHSCは、CD34+、CD59+、Thy1/CD90、CD38lo/−、C−kit/CD117、およびLin(−)と特徴付けることができる。しかし、特定のHSCはCD34/CD38であるので、全ての幹細胞がこれらの組み合わせに包含されるとは限らない。いくつかの試験では、最初期の幹細胞は細胞表面上のc−kitを欠く場合があることも示唆されている。ヒトHSCに関しては、CD34HSCおよびCD34HSCはどちらもCD133であることが示されているので、CD133は初期のマーカーを意味することができる。CD34細胞およびLin(−)細胞は、造血前駆細胞も含むことは当技術分野で公知である。
別の実施形態では、造血階層をSLAMコードによって決定する。SLAM(シグナル伝達リンパ球活性化分子)ファミリーは、遺伝子が、第1染色体(マウス)上の単一の遺伝子座に大部分がタンデムに位置し、全てが免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのサブセットに属し、最初はT細胞刺激に関与すると考えられていた>10分子の群である。このファミリーは、CD48、CD150、CD244などを含み、CD150は創始メンバー(founding member)であり、したがって、slamF1、すなわち、SLAMファミリーメンバー1とも称される。造血階層についてのサインSLAMコードは、造血幹細胞(HSC)−CD150CD48CD244;多分化能性前駆細胞(MPPs)−CD150CD48CD244;系列制限前駆細胞(LRPs)−CD150CD48CD244;一般的な骨髄系前駆細胞(CMP)−linSCA−1c−kitCD34CD16/32mid;顆粒球−マクロファージ前駆体(GMP)−linSCA−1c−kitCD34CD16/32hi;および巨核球−赤血球前駆細胞(MEP)−linSCA−1c−kitCD34CD16/32lowである。
マウスでは、スタンフォード大学のIrving Weissmanのグループが1988年にマウス造血幹細胞を初めて単離し、マウス造血階層を区別するためのマーカーも初めて解明した。造血階層に関するマーカーは、長期造血幹細胞(LT−HSC)−CD34、SCA−1、Thy1.1+/lo、C−kit、lin、CD135、Slamf1/CD150;短期造血幹細胞(ST−HSC)−CD34、SCA−1、Thy1.1+/lo、C−kit、lin、CD135、Slamf1/CD150、Mac−1(CD11b)lo;初期多分化能性前駆体−(初期MPP)−CD34、SCA−1、Thy1.1、C−kit、lin、CD135、Slamf1/CD150、Mac−1(CD11b)lo、CD4lo;および後期多分化能性前駆体(後期MPP)−CD34、SCA−1、Thy1.1、C−kit、lin、CD135high、Slamf1/CD150、Mac−1(CD11b)lo、CD4loである。
一実施形態では、造血細胞はCD105Sca1細胞である。
本発明の細胞は、自己由来/自源性(autogeneic)(「自己」)であっても非自己由来(「非自己」、例えば、同種異系、同系または異種)であってもよい。「自己由来」とは、本明細書で使用される場合、同じ被験体由来の細胞を指す。「同種異系」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。「同系」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞と遺伝的に同一である、異なる被験体の細胞を指す。「異種」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、本発明の細胞は同種異系のものである。
「被験体」とは、本明細書で使用される場合、本明細書の他の箇所で開示されている遺伝子治療ベクター、細胞に基づく治療薬、および方法を用いて処置することができる単一遺伝子の疾患、障害、または状態の症状を示す任意の動物を包含する。好ましい実施形態では、被験体として、本明細書の他の箇所で開示されている遺伝子治療ベクター、細胞に基づく治療薬、および方法を用いて処置することができる造血系の疾患、障害、または状態、例えば、異常ヘモグロビン症の症状を示す任意の動物が挙げられる。適切な被験体(例えば、患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモット)、農場動物、および家畜動物または愛玩動物(例えば、ネコまたはイヌ)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者が含まれる。典型的な被験体としては、遺伝子治療によって調節することができる1つまたは複数の生理的活性の量が異常である(「正常な」または「健常な」被験体よりも少量または多量である)動物が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」または「処置すること(treating)」とは、疾患または病的状態の症状または病態に対する任意の有益なまたは望ましい効果を包含し、また、治療されている疾患または状態の1種または複数種の測定可能なマーカーの最低限の減少でさえ含んでよい。治療は、必要に応じて、疾患もしくは状態の症状の軽減もしくは改善、または疾患もしくは状態の進行の遅延を含んでよい。「治療(treatment)」とは、必ずしも疾患もしくは状態、またはそれに付随する症状の完全な根絶もしくは治癒を示すものではない。
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」および同様の単語、例えば、「予防される(prevented)」、「予防すること(preventing)」などは、疾患または状態の発生または再発を予防するため、阻害するため、またはその可能性を低下させるための手法を指す。この用語は、疾患もしくは状態の発症もしくは再発を遅延させること、または疾患もしくは状態の症状の発生もしくは再発を遅延させることも指す。本明細書で使用される場合、「予防(prevention)」および同様の単語は、疾患または状態が発症または再発する前に、疾患または状態の強さ、影響、症状および/または負荷を軽減することも包含する。
本明細書で使用される場合、「量」という用語は、臨床結果を含めた有益なまたは所望の予防結果または治療結果を実現するためのウイルスまたは形質導入された治療用細胞の「有効な量(an amount effective)」または「有効量(an effective amount)」を指す。
「予防有効量」とは、所望の予防結果を実現するために有効なウイルスまたは形質導入された治療用細胞の量を指す。必ずではないが一般には、予防的な用量は疾患の前に、または疾患のより早い段階で被験体に用いられるので、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
ウイルスまたは形質導入された治療用細胞の「治療有効量」は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに、幹細胞および前駆細胞の個体における所望の応答を引き出す能力などの要因に応じて変動してよい。治療有効量は、ウイルスまたは形質導入された治療用細胞のいかなる毒性の影響または有害な影響よりも治療的に有益な影響が上回る量でもある。「治療有効量」という用語は、被験体(例えば、患者)を「治療する」ために有効な量を包含する。
一実施形態では、本発明は、形質導入された細胞を被験体に提供する方法であって、目的の遺伝子に作動可能に連結した細胞型もしくは細胞系列に特異的なプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサー、およびtEpoRに作動可能に連結した、遍在するプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーまたはtEpoRに作動可能に連結した、細胞型もしくは細胞系列に特異的なプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーを含むベクター、または本明細書の他の箇所で考察されている本発明の別の適切なベクターを用いて形質導入された1つまたは複数の細胞を、例えば、非経口的に投与する工程を含む方法を提供する。
特定の実施形態では、被験体における異常ヘモグロビン症を処置する方法が提供される。該方法は、目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞特異的プロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサー、およびtEpoRに作動可能に連結した、遍在するプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーまたはtEpoRに作動可能に連結した、細胞型もしくは細胞系列に特異的なプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーを含むベクター、または本明細書の他の箇所で考察されている本発明の別の適切なベクターを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含む。
一実施形態では、本発明は、被験体における赤血球系細胞の数を選択的に増大させる方法であって、目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞特異的プロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサー、およびtEpoRに作動可能に連結した、遍在するプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーまたはtEpoRに作動可能に連結した、細胞型もしくは細胞系列に特異的なプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーを含むベクター、または本明細書の他の箇所で考察されている本発明の別の適切なベクターを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程を含み、ここで、該被験体において造血幹細胞の赤血球系後代細胞の数が増大する方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、被験体における白血球(white blood cell)または白血球(leukocyte)と比較した赤血球(red blood cell)または赤血球(erythrocyte)の割合を増加させる方法を提供する。該方法は、目的の遺伝子に作動可能に連結した造血細胞プロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーおよびtEpoRに作動可能に連結した、遍在するプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーまたはtEpoRに作動可能に連結した、細胞型もしくは細胞系列に特異的なプロモーター、エンハンサー、もしくはプロモーター/エンハンサーを含むベクター、または本明細書の他の箇所で考察されている本発明の別の適切なベクターを用いて形質導入された造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を投与する工程であって、ここで、該被験体において、造血幹細胞の白血球後代細胞と比較して造血幹細胞の赤血球後代細胞の割合が増加する工程を含む。
特定の実施形態では、上記被験体にEPOを投与せず、切断型EpoRによって媒介される細胞の増大の有効性は該被験体における内在性のEPO産生に起因する。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明は、一部において、サラセミアなどの異常ヘモグロビン症に罹患している特定の被験体が、例えば、正常な被験体と比較して構成的に高レベル、例えば、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、または約50倍またはそれを超える血漿中EPOを有することを意図している。したがって、tEpoRを発現する細胞の数を、tEpoRを発現しない細胞および/または内因性のEpoRを発現する細胞と比較して約5倍、約10倍、約25倍、約50倍、約75倍、約100倍、約150倍、約200倍または約250倍またはそれを超えて増加または増大させるために十分に高レベルのEPO。別の実施形態では、tEpoRを発現する細胞の数を、tEpoRを発現しない細胞および/または内因性のEpoRを発現する細胞と比較して少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍または少なくとも250倍またはそれを超えて増加または増大させるために十分に高レベルのEPO。
ある実施形態では、被験体に、EpoRアゴニスト、例えば、EPOも、形質導入された細胞の投与に先立って、それと同時に、および/またはその後に投与する。本明細書で使用される場合、「エリスロポエチン」または「EPO」という用語は、赤血球の産生(赤血球生成)の刺激に関与する主要なホルモンである、腎臓で産生される糖タンパク質を指す。EPOは、骨髄における関係する赤血球前駆体の分裂および分化を刺激する。正常な血漿中エリスロポエチンレベルは0.01〜0.03単位/mLにわたり、低酸素症または貧血の間には100〜1,000倍増加し得る。GraberおよびKrantz、Ann. Rev. Med. 29巻:51頁(1978年);EschbachおよびAdamson、Kidney Intl. 28巻:1頁(1985年)。組換えヒトエリスロポエチン(rHuEpoまたはエポエチン(epoietin)アルファ)はEPOGEN(登録商標)(エポエチンアルファ、組換えヒトエリスロポエチン)(Amgen Inc.、Thousand Oaks、Calif.)として、およびPROCRIT(登録商標)(エポエチンアルファ、組換えヒトエリスロポエチン)(Ortho Biotech Inc.、Raritan、N.J.)として市販されている。
好ましい実施形態では、被験体にEPOを投与する。
例示的な実施形態では、形質導入された細胞を上記被験体に投与した後、該被験体に、1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、または7日ごと、毎週、隔週、毎月、隔月、1カ月ごと、2カ月ごと、3カ月ごと、4カ月ごと、5カ月ごと、または6カ月ごと、または年に1回、または間の任意の時間の頻度で処置の期間にわたってEPOを投与する。特定の例示的な実施形態では、被験体に投与するEPOの用量は、これだけに限定することなく、1週間当たり約100〜約50000単位(IU;国際単位)、1週間当たり約200〜約40000IU、1週間当たり約500〜約30000IU、1週間当たり約1000〜約40000IU、1週間当たり約1000〜約30000IU、1週間当たり約1000〜約20000IU、1週間当たり約5000〜約40000IU、1週間当たり約5000〜約30000IU、1週間当たり約5000〜約20000IU、1週間当たり約10000〜約40000IU、1週間当たり約10000〜約30000IU、1週間当たり約10000〜約20000IU、または、1週間当たり、任意の間の範囲のIUである。
特定の例示的な実施形態では、上記被験体に投与するEPOの用量は、これだけに限定することなく、1週間当たり少なくとも約100単位、1週間当たり少なくとも約200単位、1週間当たり少なくとも約500単位、1週間当たり少なくとも約1000単位、1週間当たり少なくとも約5000単位、1週間当たり少なくとも約10000単位、1週間当たり少なくとも約20000単位、1週間当たり少なくとも約30000単位、1週間当たり少なくとも約40000単位、1週間当たり少なくとも約50000単位、または、1週間当たり、任意の間の範囲のIUである。
特定の例示的な実施形態では、上記被験体に投与するEPOの用量は、これだけに限定することなく、1週間当たり体重1kg当たり約1〜約500IU、1週間当たり体重1kg当たり約10〜約500IU、1週間当たり体重1kg当たり約25〜約500IU、1週間当たり体重1kg当たり約50〜約500IU、1週間当たり体重1kg当たり約100〜約500IU、1週間当たり体重1kg当たり約100〜約250IU、1週間当たり体重1kg当たり約250〜約500IU、または、1週間当たり体重1kg当たり、任意の間の範囲のIUである。
特定の例示的な実施形態では、上記被験体に投与するEPOの用量は、これだけに限定することなく、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約1IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約10IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約25IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約50IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約75IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約100IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約200IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約250IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約300IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約350IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約400IU、1週間当たり体重1kg当たり少なくとも約500IU、または、1週間当たり体重1kg当たり、任意の間の範囲のIUである。
本発明により提供される種々の方法では、EPOまたは別のEpoRアゴニストの存在下でtEpoRを発現させることにより、tEpoRを発現している細胞の集団がtEpoRを発現しない細胞および/または正常なEpoRを発現する細胞と比較して増加または増大する。本明細書の他の箇所で言及されている通り、全ての細胞においてtEpoR受容体を発現させる発現制御配列(遍在発現または条件的発現)、または特定の細胞型または細胞系列においてtEpoR受容体を発現させる発現制御配列により、tEpoR発現細胞がtEpoRを発現しない細胞および/または正常なEpoRを発現する細胞と比較して増大する。
本発明のベクターおよび方法を用いて増大させる例示的な細胞としては、これだけに限定されないが、胚性幹細胞、骨髄幹細胞、臍帯幹細胞、胎盤幹細胞、間葉幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、心臓幹細胞、腎幹細胞、造血幹細胞、造血前駆細胞、骨髄系前駆体、リンパ球系前駆体、血小板新生前駆体、赤血球前駆体、顆粒球形成前駆体、単核球形成前駆体、巨核芽球、前巨核球、巨核球、栓球/血小板、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染赤芽球、正染性赤芽球、多染赤血球、赤血球(RBC)、好塩基性前骨髄球、好塩基性骨髄球、好塩基性後骨髄球、好塩基球、好中性前骨髄球、好中性骨髄球、好中性後骨髄球、好中球、好酸性前骨髄球、好酸性骨髄球、マクロファージ、樹状細胞、リンパ芽球、前リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、小リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、およびリンパ球系樹状細胞が挙げられる。好ましい実施形態では、標的細胞型は、1つまたは複数の赤血球系細胞、例えば、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染赤芽球、正染性赤芽球、多染赤血球、および赤血球(RBC)である。
好ましい実施形態では、本発明のベクターおよび方法を用いて増大させる細胞としては、これだけに限定されないが、造血幹細胞または造血前駆細胞、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染赤芽球、正染性赤芽球、多染性血球、および赤血球(RBC)、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
一実施形態では、EPOを投与した後、tEpoRを発現している細胞が、 EPOを投与する前の被験体におけるtEpoRを発現している細胞と比較して、またはtEpoRを発現していない細胞および/または内因性のEpoRを発現している細胞と比較して約5倍、約10倍、約25倍、約50倍、約75倍、約100倍、約150倍、約200倍または約250倍またはそれを超えて増大する。
別の実施形態では、EPOを投与した後、tEpoRを発現している細胞が、EPOを投与する前の被験体におけるtEpoRを発現している細胞と比較して、またはtEpoRを発現していない細胞および/または内因性のEpoRを発現している細胞と比較して少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍または少なくとも250倍またはそれを超えて増大する。
特定の実施形態では、EPOを投与した後、tEpoRを発現している赤血球系細胞が、EPOを投与する前の被験体におけるtEpoRを発現している赤血球系細胞と比較して、またはtEpoRベクターを含むがtEpoRを発現しない非赤血球系細胞と比較して約5倍、約10倍、約25倍、約50倍、約75倍、約100倍、約150倍、約200倍または約250倍またはそれを超えて増大する。
別の実施形態では、EPOを投与した後、tEpoRを発現している赤血球系細胞が、EPOを投与する前の被験体におけるtEpoRを発現している赤血球系細胞と比較して、またはtEpoRベクターを含むがtEpoRを発現しない非赤血球系細胞と比較して少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍または少なくとも250倍またはそれを超えて増大する。
いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明のベクター、組成物、および方法によってもたらされる重要な利点は、既存の方法と比較して低い百分率の形質導入された細胞を含む細胞の集団を投与することによって実現することができる、遺伝子治療の有効性の高さである。これにより、形質導入された細胞における細胞の遺伝子の有害な変異、形質転換、または癌遺伝子活性化の機会が低下することに関連する重要な安全性の利点がもたらされる。
形質導入された細胞は、骨髄切除療法を受けた個体または受けていない個体において骨髄移植または臍帯血移植の一部として投与することができる。一実施形態では、本発明の形質導入された細胞を、化学的切除(chemoablative)または放射線切除(radioablative)骨髄療法を受けた個体に骨髄移植において投与する。
一実施形態では、ある用量の形質導入された細胞を被験体に静脈内送達する。好ましい実施形態では、形質導入された造血幹細胞を被験体に静脈内投与する。
特定の実施形態では、患者は、1kg当たり細胞約1×10個、1kg当たり細胞約5×10個、1kg当たり細胞約1×10個、1kg当たり細胞約2×10個、1kg当たり細胞約3×10個、1kg当たり細胞約4×10個、1kg当たり細胞約5×10個、1kg当たり細胞約6×10個、1kg当たり細胞約7×10個、1kg当たり細胞約8×10個、1kg当たり細胞約9×10個、1kg当たり細胞約1×10個、1kg当たり細胞約5×10個、1kg当たり細胞約1×10個、またはそれより多くの用量の形質導入された細胞、例えば、造血幹細胞を1回の単回静脈内用量で受ける。ある実施形態では、患者は、1kg当たり少なくとも細胞1×10個、1kg当たり少なくとも細胞5×10個、1kg当たり少なくとも細胞1×10個、1kg当たり少なくとも細胞2×10個、1kg当たり少なくとも細胞3×10個、1kg当たり少なくとも細胞4×10個、1kg当たり少なくとも細胞5×10個、1kg当たり少なくとも細胞6×10個、1kg当たり少なくとも細胞7×10個、1kg当たり少なくとも細胞8×10個、1kg当たり少なくとも細胞9×10個、1kg当たり少なくとも細胞1×10個、1kg当たり少なくとも細胞5×10個、1kg当たり少なくとも細胞1×10個、またはそれより多くの用量の形質導入された細胞、例えば、造血幹細胞を1回の単回静脈内用量で受ける。
追加的な実施形態では、患者は、1kg当たり細胞約1×10個〜1kg当たり細胞約1×10個、1kg当たり細胞約1×10個〜1kg当たり細胞約1×10個、1kg当たり細胞約1×10個〜1kg当たり細胞約9×10個、1kg当たり細胞約2×10個〜1kg当たり細胞約8×10個、1kg当たり細胞約2×10個〜1kg当たり細胞約8×10個、1kg当たり細胞約2×10個〜1kg当たり細胞約5×10個、1kg当たり細胞約3×10個〜1kg当たり細胞約5×10個、1kg当たり細胞約3×10個〜1kg当たり細胞約4×10個、または1kg当たりの細胞の任意の間の用量の形質導入された細胞、例えば、造血幹細胞を受ける。
種々の実施形態では、本発明の方法は、既存の方法よりも頑強かつ安全な遺伝子治療であって、形質導入された細胞を約5%、形質導入された細胞を約10%、形質導入された細胞を約15%、形質導入された細胞を約20%、形質導入された細胞を約25%、形質導入された細胞を約30%、形質導入された細胞を約35%、形質導入された細胞を約40%、形質導入された細胞を約45%、または形質導入された細胞を約50%含む細胞の集団または用量を被験体に投与する工程を含む遺伝子治療を提供する。
好ましい一実施形態では、本発明は、赤血球系細胞の集団が増大または増加する潜在性を有する形質導入された細胞、例えば、幹細胞、例えば、造血幹細胞を提供する。特定の実施形態では、造血幹細胞を、本発明のベクターを用いて形質導入し、異常ヘモグロビン症に対する治療を必要とする個体に投与する。造血幹細胞は赤血球系細胞を起源とし、したがって好ましい。
種々の実施形態では、本発明のベクター、組成物、および方法により、ex vivo遺伝子治療および自家移植を用いた遺伝子治療の方法の改善がもたらされる。1つの非限定的な例では、本発明は、どちらも赤血球特異的転写性制御下にあるヒトβ−グロビンおよび切断型エリスロポエチン受容体をコードするレンチウイルスベクターを提供する。この切断型受容体により、ヒト保有者においてtEpoRを発現している細胞に対して、エリスロポエチンに対する感受性の増強、および良性増殖的利点が付与される。ベクターを用いて形質導入された細胞を、異常ヘモグロビン症を有し、血漿中EPOレベルが上昇しているか組換えEPOを投与されたかいずれかの被験体に移植することにより、たとえ形質導入された細胞/形質導入されていない細胞の比が低くても、疾患が長期にわたって調整される。
ここで、本発明を以下の実施例によってより詳細に記載する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものになるよう、また本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供される。
(実施例1)
細胞培養、形質導入、および骨髄細胞移植
いくつかの実施形態では5−フルオロウラシル(5−FU)細胞とも称される造血幹細胞(HSC)を、4日前に150mg/kgの5−FU(Sigma−Aldrich)を注射した雄のドナーマウスの骨髄(BM)細胞から得、Lympholyte−M密度勾配精製(Cedarlane)にかけた。特定の実施形態では、磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して雄のマウスBMからCD105Sca1細胞を選別することによってHSCを精製した。髄質のリンパ骨髄性(lymphomyeloid)細胞および赤血球系細胞を、磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用してCD45抗原の存在または非存在に基づいて精製した。純度を、CD45抗原およびTer119抗原に対する抗体を用いた血球計算によって確認した。
異所性シュードタイピングされたレトロウイルスベクターを、Fugene(Roche Diagnostics、Meylan、France)を使用してBOSC23細胞を一過性にトランスフェクトすることによって生成した。NIH3T3細胞を形質導入した2日後に異所性レトロウイルスベクターの力価をフローサイトメトリーによって評価した。水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質−Gでシュードタイピングされた組換えレンチウイルスベクターを作製した。力価は、ウイルスの上清1ミリリットル当たり約2×108形質導入単位であった。
形質導入する前に、細胞を洗浄し、15%FCS、100ng/mLの組換えマウス幹細胞因子、6.25ng/mLのインターロイキン−3、および10ng/mLのインターロイキン−6を含有するアルファ−MEM培地(Invitrogen)中1mL当たり細胞1〜2×10個の最終濃度で懸濁させ、37℃で成長させた。サイトカインは全てPeprotechからのものであった。組換えヒトエリスロポエチン(rhEpo;3U/mL;Roche Pharma)を赤血球系細胞培養物に加えた。
ガンマレトロウイルスベクター(RV)を用いた5−FU細胞への形質導入を40時間後に開始した。細胞を、24時間離して2回、レトロネクチン(Takara)でコーティングしたペトリ皿上、8g/mLの硫酸プロタミン(Sigma−Aldrich)、補体除去した血清、およびサイトカインを含有するアルファ−MEM培地中、希釈していないレトロウイルスの上清に曝露させた。形質導入した2日後に、増強緑色蛍光タンパク質−(eGFP)陽性細胞の百分率(フローサイトメトリーによって決定されたところ24%〜32%、4日後に変化せず)を、モック形質導入細胞を用いて10%に設定した。細胞400万個(eGFP発現細胞4×10個を含む)を致死的に放射線照射したβサラセミアの雌のマウスHbbth−1/th−1に静脈内注射した。本実験では、MOIは1(2回)であった。βサラセミアのレシピエントに、1100ラド(3時間にわたって550ラドの分割線量)の全身照射を受けさせた。
細胞を単離した16時間後に、レンチウイルスベクターを用いて細胞に形質導入した。5−FU細胞を、レトロネクチンでコーティングしたペトリ皿上、硫酸プロタミンおよびサイトカインを補充したStemPro−34無血清培地(Invitrogen)中、ベクターに曝露した。6時後に、トリプシン−EDTA溶液(Cambrex BioScience)および細胞スクレーパーを使用することによって細胞を収集した。合計500,000〜750,000個の形質導入された5−FU細胞を、全身照射を受けたβサラセミアの雌のレシピエントのそれぞれに静脈内注射した。
実験1では、MOIは20であり、βサラセミアのレシピエントに、600ラド(単回線量)を受けさせた。
実験2では、3群のマウスに、それぞれ0.3、2、または10のMOI、および1100ラド(3時間にわたって550ラドの分割線量)で形質導入された細胞を受けさせた。LGマウスおよびLG/HA−Y1マウスを用いて形質導入された細胞の移植を受けたβサラセミアマウスをそれぞれLGマウスおよびLG/HA−Y1マウスと名付けた。
第3の実験では、200ラドの線量を単回照射した後に、βサラセミアマウス4匹にそれぞれCD105Sca1細胞25,000個を注射した。LG/HA−Y1を20のMOIで用いて細胞に形質導入した。In vitro試験のために、LG/HA−Y1を50のMOIで用いて骨髄赤血球系(CD45)細胞およびリンパ/骨髄性(CD45)細胞に形質導入した。2日後にRNAを抽出した。
血液パラメータ
血液試料を、自動細胞計数器(Cell Dyn3700;Abbot Diagnostic)を使用してヘモグロビンおよび血液細胞数について分析した。ヘマトクリット値を手動の遠心分離法によって得た。全ヘモグロビンに対する可溶性ヘモグロビンの割合を、Drabkin試薬(Sigma−Aldrich)を用いて全溶血物、および遠心分離した(20,000gで5分間)溶血物の上清におけるヘモグロビンを測定することによって決定した。エリスロポエチン濃度を、ヒトEpo標準物質を用い、Epoモノクローナル酵素イムノアッセイキット(Medac Diagnostika)を使用することによって決定した。マウスヘモグロビンおよびヒトヘモグロビンを陽イオン交換HPLCによって分離した。溶血物をPolyCAT Aカラム(PolyLC Inc)に注入した。2種のトリス緩衝液(緩衝液A:40mMのトリス、3mMのKCN、酢酸を用いてpH6.5に調整;緩衝液B:40mMのトリス、3mMのKCN、200mMのNaCl、酢酸を用いてpH6.5に調整)を用い、15分間で7%〜70%の緩衝液Bの直線勾配で溶出を実現した。ヘモグロビンを418nmの波長で検出した。
フローサイトメトリー
eGFP陽性WBCを、RBCを溶解させ、CD45.2に対するビオチン化抗体(BD Biosciences)およびストレプトアビジン−Alexa Fluor647(Invitrogen)を用いて標識付けした後に検出した。細胞内ヒトβ−グロビンを検出するために、RBCを洗浄し、2%ホルムアルデヒド中に30分間固定し、50%メタノールおよび50%アセトン中で30秒間透過処理し、ヒトHbAを特異的に認識するFITC標識抗体(PerkinElmerWallac)を用いて染色した。ビオチン化した抗CD45.2、およびPE抗マウスGR1/Mac1、抗マウスCD3、または抗マウスB220(全てeBiosciences由来)のいずれか、その後ストレプトアビジン−Alexa Fluor647による標識付けによって骨髄系およびリンパ球系BM細胞を検出した。抗マウスTer119およびCD71抗原を使用することによって赤血球前駆細胞を同定した。
定量的PCRおよびRT−定量的PCR分析
Nucleospin Bloodキット(Macherey Nagel)を用いてゲノムDNAを抽出した。白血球の中でのドナー雄細胞の画分(D)およびベクターのコピー数(V)を定量的PCRによって決定し、結果を、雄の細胞および雌の細胞由来のゲノムDNAの段階希釈物ならびに一倍体ゲノム当たり1コピーのベクターが組み込まれたマウス細胞系由来のゲノムDNAの段階希釈物についての結果と比較した。7300ABIプリズム検出システム(Applied Biosystems)およびROX(Eurogentec)を含有する2×定量的PCR(qPCR)MasterMixを使用し、95℃で10分間の活性化ステップ後の94℃で15秒間の変性ならびに60℃で1分間のアニーリングおよび伸長を伴う40サイクルにわたってリアルタイムPCRを実施した。プライマーおよびプローブが表1に記載されている。
表1.リアルタイムPCRのために使用したプライマーおよびプローブ
EpoRはエリスロポエチン受容体を示し、FAMは6−カルボキシフルオレセインエステルであり、LVはレンチウイルスベクターであり、NFQは非蛍光クエンチャーであり、MGBは副溝結合物質(minor groove binder)であり、SRYは性決定領域Yであり、TAMRAはテトラメチル−6−カルボキシローダミンである。*Applied Biosystems。
Purelink micro to midi total RNA purification system(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出し、Superscript III first−strand synthesis super mix(Invitrogen)を用いてcDNAを合成した。マウス(m)EpoR、mGAPDH、および18s cDNAを、TaqMan遺伝子発現アッセイを用いて数量化した(表1)。比較Ct法(ΔΔCT)を用いて、細胞型間でmEpoRの生成レベルを比較した。逆転写酵素または試料を省いた対照試料を含めた。
改変された赤血球系細胞の増幅率
tEpoRおよびβ−グロビンの赤血球系細胞の増大に対する効果を、末梢血における改変されたWBCの百分率と改変されたRBCの百分率の間の比較に基づいて算出した。改変されたRBCの百分率(%RBC)を、抗ヒトHbA抗体を用いたフローサイトメトリーによって決定した。改変されたWBC(%WBC)の百分率を、白血球当たりのベクターのコピー数(V)およびドナー雄細胞の画分(D)から決定した。以下の通り算出した:
・ドナー白血球当たりのベクターのコピー数V=V/D;
・ドナー細胞の中での改変されたWBCの百分率%WBC+dは、ポアソン則に従ってVから決定した:%WBC+d=[1−exp(−V)]×100;および
・全ての白血球の中での改変されたWBCの百分率
%WBC=%WBC+d×D。
in vivoにおいて、改変されたWBCには改変されていないWBCに対する利点または不都合がないと仮定して、骨髄における改変された赤血球にもたらされる生存的利益および改変された赤血球系細胞に付与される産生的利点に起因する改変された赤血球系細胞の増幅率(F)を以下の通り算出した:
=(%RBC/%RBC)/(%WBC/%WBC)(方程式1)
結果として、(%RBC/%RBC)=F(%WBC/%WBC)(方程式2)
また、%RBCと%WBCの間の双曲線形相関は、以下により説明される:
%RBC={F[(100/(F−1)]×%WBC}/{[100/(F−1)]+%WBC}(方程式3)
この数学的モデルはRobertsら、Ann NY Acad Sci. 2005年;1054巻:423〜428頁により導かれ、WBCおよびRBCの破壊と生成の定常状態の平衡を仮定するものである。
改変された白血球がtEpoRの影響を受けなかったことを評価するために、in vivoにおける改変されたWBCの画分およびex vivoにおける改変されたHCの画分を算出し、割り算し(divided)、LGで形質導入された細胞を移植されたマウスとLG/HA−Y1で形質導入された細胞を移植されたマウスの間で比較した。
組み込み部位分析
ベクターを感染させた細胞由来のゲノムDNAを精製し、ファージMuAトランスポザーゼおよびMuA認識部位を含有する合成オリゴヌクレオチドで処理することによってPCR用のリンカーを付加した。次いで、組み込まれたベクターに近接するゲノムDNAを、ベクターDNA末端およびリンカーと相補的なPCRプライマーを使用することによって増幅した。PCR産物の配列を、454/Rocheパイロシークエンシングによって決定し、データを精選し、分析した。Mu転位法により、存在量の推定値がもたらされ、単一のMu部位の単離をもたらすin vitroにおける独立したMu組み込み事象の数により、相対的な存在量が報告される。少数の場合では、2匹以上のマウスにおいて組み込み部位が見いだされた。これらの場合は、移植前に形質導入された細胞が成長したことに起因するか、またはPCRの間の交差に起因する可能性がある。これらの場合では、組み込み部位を相対的な存在量に基づいて単一のマウスに割り当てた。組み込み部位の癌原遺伝子との近傍性を、allOncoデータベース(Cancer gene data sets.microb230.med.upenn.edu/protocols/cancer−genes.htmlで入手可能。2011年4月5日にアクセスした)と比較することによって決定した。
統計解析
2群比較のためにスチューデントt検定またはマンホイットニー順位和検定を用いた。3群以上を比較するためには一元配置分散分析およびホルムシダックまたはクラスカルワリスの順位に基づく方法を用いた。相関係数(R2)およびP値の決定を伴うデータには線形回帰を適用した。全ての試験を、SigmaPlotバージョン10.0ソフトウェアを用いて実施した。P<0.05を有意とみなした。
(実施例2)
tEpoRを発現しているHCはβサラセミアマウスにおいて増殖的利点を有する
背景
血漿中Epoのレベルが構成的に上昇している(正常なマウス値の20〜50倍)β−サラセミアマウスモデルを用いて、同系のレシピエントに移植した、tEpoRを遍在的に発現させるベクターを用いて形質導入した骨髄細胞の増大を検査した。
EpoR cDNAおよびeGFPを遍在的に発現させるガンマレトロウイルスベクター(γRV)を構築した。これらのγRVは、全長のマウスEpoR(mEpoRY1−8)、2つの切断型受容体(mEpoRY1−2またはmEpoRY1)のいずれか、またはeGFPのみをコードする(図1A〜1C)。全ての構築物が、Ba/F3細胞において効率的なEpo受容体を発現することが示された。mEpoRY1−8は、UT7−GM細胞において機能的であることも示された。
βサラセミアドナー由来のBM細胞に、上記の4種のγRVを用いて形質導入した。遺伝子改変された細胞を10%含む細胞400万個を致死的に放射線照射したβサラセミアのレシピエントに注射した。
結果
移植した20週間後に、対照γRVによって改変された細胞を移植したマウスの血液では、それぞれ5.5%および3.1%のeGFP陽性のRBCおよびWBCが検出された(図2A)。
γRV/EpoRY1−8で形質導入された細胞を受けているマウスではそれらのeGFP陽性RBC集団(2.7%)およびeGFP陽性WBC集団(4.1%)に対照マウスと比較して有意な増幅は示されなかった。リンパ球系区画および骨髄性系区画の別々の分析でも、特定の造血細胞型の増幅は示されなかった(図9および表2)。
表2
対照群(RV)と他の群のマウスの、白血球(WBC)、リンパ系細胞(LYMPHO)、骨髄細胞(GM)および赤血球(RBC)におけるeGFP陽性細胞の平均、標準偏差(SD)、標準誤差(SE)、中央値、25パーセンタイル、75パーセンタイルおよび百分率の平均または中央値の差異の有意性(p値)。
γRV/EpoRY1で形質導入された細胞を受けているマウスでは、eGFP陽性のRBCおよびWBCがそれぞれ39.2%および30.8%増幅した。これにより、改変されたRBCおよびWBCの割合が対照群と比較してそれぞれ7倍(P=0.021)および10倍(P=0.001)増加したことが示された。γRV/EpoRY1−2を受けているマウスでは、改変されたRBCおよびWBCの平均増幅レベルの割合はそれぞれ8倍および6倍であった。
したがって、γRV/EpoRY1マウスおよびγRV/EpoRY1−2マウスにおけるeGFP陽性細胞の平均百分率は、γRV/EpoRY1−8で形質導入された群において観察された平均値とは有意に異なった。
骨髄細胞を検査して、eGFP陽性細胞の割合がWBCよりもRBCにおいて高かったことが、レシピエントの放射線抵抗性メモリーリンパ系細胞が持続されたことに起因するかどうかを決定した。eGFP陽性細胞の百分率の中央値には、γRV/EpoRY1−2マウス(P=0.009)およびγRV/EpoRY1動物において、リンパ球よりも顆粒球/単球で値が大きくなる傾向が示された。eGFP陽性細胞の百分率は赤血球系区画と骨髄系区画の間では統計的に異ならず(表3)、これは、tEpoRが赤血球系細胞において骨髄細胞よりも優先的な効果を発揮しなかったことを示している。
表3
RBCと、白血球(WBC)、リンパ系細胞(LYMPHO)および骨髄細胞(GM)におけるGFP陽性細胞の百分率の平均または中央値の統計的差異の有意性(p値)。
EpoRが切断型受容体よりも低いレベルで発現したかどうかを決定するために、in
vitroで成長させた、移植後の形質導入されたHCのeGFP平均蛍光強度(MFI)を比較した。移植前の形質導入された細胞のMFIは全てのベクターで同等であった(図10)。形質導入の10日後にeGFP発現について選別したCD45細胞におけるqRT−PCRによって数量化したEpoRY1およびEpoRY1−8のmRNAは同様であった。しかし、マウスでは、γRV/EpoRY1とγRVの間(P=0.031)、およびγRV/EpoRY1とγRV/EpoRY1−8の間(P=0.017)で、骨髄系区画においてMFIに統計的有意差があった。顆粒球におけるMFIが最大であったマウス4匹では、改変された骨髄細胞の百分率が最大であった。γRVマウスとγRV/EpoRY1−8マウスの間で、任意の細胞型において差異は観察されなかった。
まとめると、これらの結果により、野生型EpoRが選択されなかったことが、EpoRの発現のレベルがより低いことに起因するのではないこと、しかし、最大レベルのEpoR−Y1を発現している骨髄細胞が、より低レベルの切断型EpoRを発現している細胞よりも優先されたことが示された。血球数(表4)は群間で統計的に異ならなかった。しかし、血漿中Epoレベルは、γRV/EpoRY1を移植したマウスおよびγRV/EpoRY1−2を移植したマウスでは他の2つの群の2.5分の1であった(P=0.005)(図2B)。
表4
20週前に移植したマウスの4つの群におけるヘマトクリット値(Hc)、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、白血球数(WBC)および特異的な細胞サブセット、平均血球体積(MCV)、平均血球ヘモグロビン含有量(MCH)、平均血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、血小板数および血漿中エリスロポエチンレベル(Epo)の平均、標準偏差(SD)、標準誤差(SE)、範囲、最大値、最小値、中央値、25パーセンタイル、75パーセンタイル
(実施例3)
キメラHS40/アンキリンプロモーターは、β−グロビン/LCRレンチウイルスベクター内で赤血球特異的である
背景
細胞の増大をRBC区画に制限するために、tEpoRを赤血球系細胞特異的に発現させるようにレンチウイルスベクターを設計した。赤血球特異的β−グロビンプロモーター/LCRエンハンサーに駆動されるヒトβ−グロビン遺伝子およびtEpoR cDNA発現カセットの両方を含有する緻密なレンチウイルスのプロウイルス内の転写干渉の可能性のある影響を評価した。tEpoRを発現させるために、ヒトβ−グロビンHS40エンハンサーをHAと称されるアンキリン−1プロモーターに連結した(Moreau−Gaudryら、Blood、2001年;98巻(9号):2664〜2672頁)。
赤血球特異性のレベルを評価するために、まずeGFPをグロビン/LCRレンチウイルスベクターLG(図1B)に導入し、LG/HA−eGFPベクターを得た。レンチウイルスベクターHPV570を、eGFPを遍在的に発現させる対照ベクターとして使用した。正常なC57BL/6J−CD45.2マウス由来のBM細胞にこれらのベクターを用いて形質導入し、コンジェニックC57BL/6JCD45.1マウスに注射した。
結果
LGベクターとの関連で、HAプロモーターは、β−グロビン/LCRカセットから干渉されることなく高程度の赤血球特異性を示す。in vitroにおいて成長させた細胞を分析することにより、LG/HA−eGFPおよびHPV570について、それぞれ細胞当たり0.14個および1.50個のプロウイルスのコピーが明らかになった。移植の5カ月後の循環WBCにおけるドナーキメラ現象は同様であった(およそ90%のCD45.2陽性WBC)。同時点で、eGFP陽性のWBC末梢サブセット(骨髄系、Tリンパ球系、およびBリンパ球系)ならびにeGFP陽性RBCの百分率をフローサイトメトリーによって決定した。移植の6カ月後に、BM由来の細胞および胸腺由来の細胞を、同じ抗体ならびに赤血球系列に対する抗体を用いたフローサイトメトリーによって分析した。eGFP陽性の骨髄系細胞、リンパ球系細胞、および赤血球系細胞の百分率は、HPV570で改変された細胞の移植を受けたマウスのものと同等であったが、eGFP陽性の赤芽球およびRBCの百分率は、LG/HA−eGFPで改変された細胞の移植を受けたマウスにおける骨髄系eGFP細胞およびリンパ球系eGFP細胞の百分率をはるかに超えた(図3)。
eGFPをtEpoRで置き換えると赤血球特異的発現が維持された。改変された赤血球系細胞および非赤血球系細胞におけるtEpoRの発現を比較した。非βサラセミアマウス由来のBM細胞を汎白血球CD45抗原の存在または非存在に基づいて精製し、次いで、LG/HA−EpoRY1ベクターを用いて形質導入した。2日後にRNAを抽出し、RT−qPCRによって分析した。形質導入された赤血球系CD45(>99%Ter119)細胞におけるtEpoRY1の発現は形質導入されたCD45(<1%Ter119)細胞における発現よりも100倍超大きかった(GAPDHおよびリボソーム18s RNAに対して正規化した場合、それぞれ147倍および109倍)。この方法では形質導入されていないCD45細胞においても形質導入されていないCD45細胞においても内因性のEpoR mRNAは検出不可能であり、これは、非赤血球系細胞に対して赤血球系細胞において観察されたEpoR mRNAの100倍の増加が、トランスジェニックEpoRに由来し、アンキリンプロモーターの特異性に起因することを示している。
(実施例4)
移植を受けたβサラセミアマウスにおける赤血球特異的tEpoRとβ−グロビンの共発現および赤血球系細胞の選択的な増大
背景
γRV/EpoRY1ベクターとγRV/EpoRY1−2ベクターの実質的に同様の効果を考慮して(図1)、EpoRY1をその後のLGベクターを用いたマウス移植実験用にした。
LGベクターまたはLG/HA−Y1ベクターのいずれかを用いて形質導入された同系のβサラセミアの骨髄細胞を移植したβサラセミアマウスにおけるRBCおよびWBCの百分率を比較した。血液細胞数、RBCを発現しているヒトHbの百分率、ヒトβ−グロビン発現のレベル、ドナーキメラ現象の程度、およびベクターのコピー数を移植の40週間後または35週間後に決定した。
結果
RBCの百分率とWBCの百分率の間の関係が示されている(図4A〜B)。値を、改変されたRBCの理論的な増大(F)が改変されたWBCの増大の1倍、10倍、50倍、または200倍である4つの理論曲線(実施例1の「改変された赤血球系細胞の増幅率」のセクションに記載されている方程式2および方程式3から導かれた)と比較した。LG/HA−EpoRY1マウスの大部分について、RBCはWBCと比較して50倍および200倍に増大したが、LGマウスのRBCの増大はWBCのたった1倍から10倍の間であった。LG/HA−EpoRY1マウスおよびLGマウスについての赤血球の増幅率Fの中央値はそれぞれ97.2(範囲、8.2〜729.7)および5.0(範囲、0.5〜14.4)であった(図4C)。
tEpoRで改変された赤血球系細胞についての明らかな利点は、赤血球系細胞に特異的であり、改変されたWBCに不都合が付与されないことと決定された。さらに、tEpoRで改変されたWBCは改変されていないWBC細胞に対する利点を有さないことが決定された。ドナーWBCの中でのWBCの画分を決定し、移植前(形質導入の10日後、組換えヒトEpoを加えず;図4D)の形質導入されたバルクHCの画分と比較した。画分の中央値の比は同等であり(P=0.21)、1に近く、これは、in vivoにおいて、改変されたWBCには改変されていないドナーWBC細胞に対する不都合も利益もなかったことを示している。Epoを用いて成長させたHCにおけるコピー数も測定し、これはEpoを用いずに成長させた細胞において決定されたものと同様であり、これは、in vitroにおいて、Epoにより、形質導入された細胞に増殖的利点が付与されなかったことを示している。
(実施例5)
βサラセミアの表現型の調整は、治療用ヒトβ−グロビンを発現する循環RBCの割合と相関する
背景
LG/HA−EpoRY1ベクターにより、β−サラセミア症の表現型が調整される。β−サラセミア症の表現型を、LGマウスおよびLG/HA−EpoRY1マウス(すなわち、LGで形質導入された骨髄細胞またはLG/HA−EpoRY1で形質導入された骨髄細胞を投与したマウス)の両方における循環RBCの所与の割合について評価した。LGマウスおよびLG/HA−EpoRY1マウスの血液のパラメータ、Hb濃度、ならびにRBCおよび網状赤血球の数をRBCに応じて記録した。RBCの百分率が>40%であれば、LGベクターを用いたβ−サラセミアの表現型の調整が明らかになることが以前示されている。
結果
3匹を除いた全てのマウスにおいて、閾値の40%超のRBCを有するLGマウスから得られたデータに線形回帰を適用した。LGで形質導入された骨髄細胞を受けているマウス群(図6A)内で、RBCのレベルと、(1)総Hbの濃度、(2)ヒトβ−グロビンAT87Qの濃度、(3)RBC数、(4)網状赤血球数、および(5)脾臓の重量の正規化の間で有意な相関(図5)が見いだされた。
閾値の40%超のRBCを有するLG/HA−EpoRY1マウスから得られたデータに線形回帰を適用した。
移植を受けているLG/HA−EpoRY1マウスにおいて測定された血液の値の大部分が、測定されたパラメータ全てに対応する当てはめた回帰直線について95%信頼度バンド内に入った。
次いで、LG移植マウス5匹、LG/HA−EpoRY1移植マウス5匹、およびモック移植マウス3匹の脾臓内の赤血球系細胞の百分率を測定した。
マウスの両群において、脾臓サイズの減少は脾臓の赤血球系細胞の百分率の減少と関連し、これは、赤血球形成異常の減少および最終赤血球系細胞分化の効率の改善と一致した(図5B)。まとめると、これらのデータにより、βサラセミアの表現型の調整が、治療用ヒトβ−グロビンをLGマウス群およびLG/HA−EpoRY1マウス群のどちらでも同様の割合で発現した循環RBCの割合と相関し、tEpoRの発現によってもたらされる付属的な利益が伴うことが示された。
(実施例6)
RBCの増大は、最小のレンチウイルス移入および二次的な移植後に系列に制限された治療的なものになる
背景
治療用β−グロビンAT87QとtEpoRの共発現により、β−サラセミアにおいてEpoの血漿中濃度の上昇との関連でRBCの増大が誘導され、その結果、LGマウスに対してLG/HA−EpoRY1マウスにおいて低い割合のWBCで表現型の調整の程度が増加する。<20%のWBCで、実質的に全てのLG/HA−EpoRY1マウスが調整された表現型を有した(図6A)。8.3%のLG/HA−EpoRY1 WBCで改変された赤血球前駆細胞から81.6%のRBCが生じ、一方、10.4%のLG
WBCにより27%以下のRBCが生じた(図6B)。
したがって、平均のWBCの割合が8.3%で、LG/HA−EpoRY1マウスの平均ヘマトクリット値(40.1%)およびヘモグロビン濃度(12.7g/dL)が同等の百分率(10.4%)のWBCを有するLGマウスにおける値をはるかに超えた(図6B)。LGマウスにおいて同様の調整が得られた(平均ヘマトクリット値、40.2%;ヘモグロビン濃度、12.5g/dL)が、より大きな割合のWBCが必要であった(42.6%)。WBCの割合が最低であったLG/HA−EpoRY1群のマウス4匹(3.3%±1.4%)の平均ヒトβ−グロビンAT87Qレベルは78.4%±20.1%のRBCに分布して33.1%±5.6%であったが、一方、改変されたWBCの割合が最低であったLGマウス4匹(0.9%、6.8%、11.2%、および13.3%)の中では、2匹のマウスのみが、検出可能なヒトβ−グロビンAT87Qを発現した最も高い割合のWBCを有し(23.8%および12.2%)、改変されたRBCの百分率はそれぞれ1.0%、6.0%、42.3%、および21.3%であった。
再増殖性HSCが枯渇したかどうかを評価するため、および長期試験において改変されたHCの割合をさらに減少させるために、一次移植の40週間後に一次移植したマウスHCを用いて二次的なBM移植を実施した。致死的に放射線照射した雌のマウス11匹に、モック移植を受けている一次マウス3匹、LGの一次レシピエント4匹、およびLG/HA−EpoRY1の一次雌マウス4匹由来の骨髄細胞500万個を受けさせた。LGマウスおよびLG/HA−EpoRY1マウスのHCを、モック形質導入細胞を移植したマウスのうちの1匹由来の細胞で希釈して、移植を受けた二次動物におけるWBCの割合を減少させた(表5)。
結果
二次移植後にLG/HA−EpoRY1を用いて改変された赤血球系細胞の増幅がLGベクターと比較して増加したことを示すデータが表5に要約されている。データは、二次移植の10週間後の、LGで改変された細胞を二次移植されたマウス(群2)およびLG/HA−EpoRY1で改変された細胞を二次移植されたマウス(群3)それぞれについて示されている。移植の10週間後の増幅率Fは、LGマウスおよびLG/HA−Y1マウスについて、それぞれ0〜12および48〜2374にわたった。LG群およびLG/HA−EpoRY1群では、実際に、WBCの平均理論的百分率はWBCの平均実測百分率と同様であった。
表5
希釈は、モック形質導入細胞を移植したマウス由来の細胞を用いた希釈率を示し、Fは改変された白血球に対する改変された赤血球系細胞の増幅率であり、一次は、一次ドナーのBMにおける改変された有核細胞の百分率であり、RBCは、ヒトヘモグロビンを含有するRBCの百分率であり、WBC(theo)は、ドナー細胞を用いた100%の再構成を仮定する改変されたWBCの理論的百分率であり;WBCは、ドナー細胞を用いた100%の再構成を仮定し、コピー数から推定される二次移植における改変されたWBCの百分率である。
WBCにおけるベクターのコピー数は、LGマウスとLG/HA−Y1マウスの間で統計的に異ならなかった(表6)。しかし、ヒトβ−グロビンAT87Qを発現しているRBCの平均百分率およびβ−グロビンAT87Qの血中濃度は、LG/HA−EpoRY1ベクターの存在下ではLGベクター(17.8%の赤血球中に5.9%のヒトβ−グロビンAT87Qが分布)よりも大きかった(75.9%の赤血球中に26.1%のヒトβ−グロビンAT87Qが分布)。算出により、差異は、ハイブリッドヘモグロビン(ヒトβ−グロビンAT87Qとマウスβ−グロビンで構成される)における血球内RBC含有量はLG/HA−EpoRY1マウス群およびLGマウス群のどちらとも同様であったので(それぞれ4.8pgおよび4.6pg)、LG/HA−EpoRY1ベクターの場合では、RBC集団が増大したことに起因することが示された。驚いたことに、貧血および他のパラメータの高度に効率的な調整がLG/HA−EpoRY1を移植したβサラセミアマウスにおいて観察されたが、LGベクターを移植したβサラセミアマウスでは観察されなかった(表6)。さらに、二次移植実験により、広範囲にわたるHC分裂後でさえも赤血球系列に制限されたままの細胞の増大がもたらされたことも同じく予想外であった。
表6
モック改変細胞(1)、LGで改変された細胞(2)、およびLG/HA−Y1で改変された細胞(3)を二次移植したレシピエントの群における、二次移植の10週間後の平均の血液学的パラメータおよびSDである。コピーは、細胞当たりの末梢血コピー数を示し、RBCはヒトヘモグロビンを含有するRBC(%)であり、hu−gloはヒトβ−グロビン(%)であり、Hbはヘモグロビン(g/dL)であり、Hcはヘマトクリット値(%)であり、RTCは網状赤血球(%)であり、RBCは赤血球(1012/L)であり、MCVは平均血球体積(fL)であり、MCHは平均血球ヘモグロビン(pg)であり、MChuHは改変されたRBC中の平均血球ヒトヘモグロビン(pg)であり、;sol Hbは可溶性ヘモグロビン(g/dL)であり、WBCは白血球(109/L)である。多重比較およびペアワイズ比較を、それぞれ一元配置分散分析およびホルムシダック法を用いることによって行う。全体的な有意水準<0.05(P値)が得られる場合、統計的有意性は、群1と群2の間(S1−2)、群1と群3の間(S1−3)、および群2と群3の間(S2−3)で、あり(Y)またはなし(N)で示される。
(実施例7)
赤血球系細胞の増大は自己制御される
背景
LGベクターを用いて形質導入された細胞およびLG/HA−EpoRY1ベクターを用いて形質導入された細胞の移植を受けたβサラセミアマウスの末梢血およびBMにおいて、種々の造血系列を、系列特異的抗体を用いたフローサイトメトリーによって分析した。
結果
CD45.2陽性細胞の中でのTリンパ球系、Bリンパ球系、および骨髄細胞の平均百分率は、移植を受けたLGマウスとLG/HA−EpoRY1マウスの間で統計的に異ならなかった(図7A)。血漿中Epo濃度およびRBCの数はtEpoRの存在または非存在とは関係なく逆相関し(図7B)、これは、tEpoRの存在により、血漿中Epoによる改変された赤血球系細胞の産生の制御が損なわれなかったことを示す。
RBCの百分率とWBC数または血小板数の間の相関も観察されず(示されていない)、マウスの2つの群の間のWBC数(P=0.125)と血小板数(P=0.254)の有意差も観察されなかった(図7C)。マウスの脾臓、肝臓、肺、腎臓、心臓、BM、および胸腺の組織切片を移植の10カ月後に分析した。新生細胞浸潤は観察されなかった。
ベクター組み込みの細胞増殖に対する可能性のある影響を調査するために、5カ月前にLG/HA−EpoRY1ベクターによって形質導入された細胞の移植を受けたβサラセミアマウス4匹由来の細胞に対して挿入部位分析を実施した。細胞増殖に対する圧力を最大にし、それにより、細胞の増殖または生存を促進する遺伝子の挿入活性化の影響が検出される機会を最大にするために低用量の放射線照射(200ラド)を用いて前処置した後に比較的少数のHSCの移植をマウスに行った。移植の5カ月後に、各マウスのリンパ性骨髄(CD45)細胞および赤血球系(CD45)細胞を選別し、ゲノムDNAを抽出し、組み込み部位配列を決定した。
組み込み部位を、in vitroにおけるMu媒介性転位を用いて分析した。精製されたMuトランスポザーゼタンパク質の標的配列特異性は最小であるので、制限酵素を用いてゲノムDNAを切断することを伴う標準の方法よりも組み込み部位の回収の偏りははるかに少ない。さらなる有利な点は、各組み込み部位に関連づけられる独立したMu転位事象の数により、元の試料中の細胞クローンの割合の推定値がもたらされることである。
454/Rocheパイロシークエンスを用いて合計2510の配列読み取りを生成した。最初に接種した少数の細胞に対応する47の独特の組み込み部位を含め、合計1070の独立したMu転位事象から部位を回収した。リンパ性骨髄細胞試料および赤血球系細胞試料における組み込み部位分布の比較により、マウスの中で系列間の種々の程度の共通性が示され(図11)、これは、おそらくサンプリングが少数であることの確率論的影響に起因する。
挿入事象の分析により、LG/Ha−EpoRY1ベクターの使用が安全な治療モダリティであること、および改変された赤血球系細胞の成長が、細胞の成長または増殖に促進される特定の細胞クローンの増生に関与する遺伝子の近くへの組み込みに起因するものではないことが示された。クローン増大をもたらすEpoRシグナル伝達と癌原遺伝子の挿入活性化の間の相互作用は観察されなかった。細胞の成長に関連する単一の遺伝子の近くへの組み込み部位の濃縮の例はなかった。さらに、癌に関連した遺伝子の一覧(allOncoデータベース)に対する最も豊富な細胞クローンの分布(組み込み部位によって印付けられる)を分析し、クローンの存在量と癌に関連した遺伝子に対する近傍性との間に関連は見いだされなかった(図8A〜B)。
移植前および移植の9カ月後にβサラセミアマウスにおいて、LG/HA−EpoRY1細胞における癌遺伝子から50kb以内の組み込み部位の割合と、LGベクターによって改変されたマウスHCにおいて同定された挿入部位(IS)の割合を以前の試験に記載の通り比較した(Ronenら、Mol Ther、2011年3月8日にオンライン公開)。フィッシャーの直接確率検定によると、癌に関連した遺伝子に対する近傍性について設定間で統計的有意差は見いだされなかった(図8C)。
さらに、LG/HA−EpoRY1で処理した細胞由来の部位を、LGで形質導入された細胞由来の部位と比較したところ、他の種類のゲノムの特徴と比較して組み込みの偏りを検出することはできなかった。2つのベクター間で挿入部位に強力な差異を示したゲノムのアノテーションの形態はなかった。
したがって、これらのデータでは、細胞の成長または増殖に関与する遺伝子の近くへの組み込みにより、特定の細胞クローンの増生が促進されるという観念は支持されない。
上記の種々の実施形態を組み合わせて別の実施形態をもたらすことができる。本明細書において参照され、かつ/または本出願データシートに列挙されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。必要であれば、実施形態の態様を、種々の特許、出願および刊行物の概念を用いるように改変して、さらに別の実施形態をもたらすことができる。
これらおよび他の変化は、上記の発明の詳細な説明を踏まえて実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、可能性のある実施形態の全てをそのような特許請求の範囲に権利が与えられる等価物の全範囲と一緒に包含するものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示により限定されない。

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  1. 明細書に記載された発明。
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