JP2016106565A - バイオマス原料の糖化法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、バイオマス原料中のホロセルロース類をセルロース加水分解酵素により効率良く糖化すると同時に、セルロース加水分解酵素を効率的に利用し得る、簡便なバイオマス原料の糖化法を提供すること、さらにバイオマス原料の糖化法を用いたバイオエタノールの製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸(塩)を特定の割合で含む共重合体が、リグニン類とセルロース加水分解酵素の吸着を阻害し得る物質として作用することに着目し、リグニン類が共存するバイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、予め当該共重合体を添加して、その後バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を混合してバイオマス原料を糖化する糖化法を見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【解決手段】本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸(塩)を特定の割合で含む共重合体が、リグニン類とセルロース加水分解酵素の吸着を阻害し得る物質として作用することに着目し、リグニン類が共存するバイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、予め当該共重合体を添加して、その後バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を混合してバイオマス原料を糖化する糖化法を見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
Description
本発明は、リグニン類が共存するバイオマス原料中のホロセルロース類を、セルロース加水分解酵素を使用して糖化するバイオマス原料の糖化法に関する。
近年、エネルギーや環境に対する問題を解決する手段として、再生可能な材料を有効利用する技術の開発が強く求められている。このような技術のひとつにバイオリファイナリー技術があり、バイオマス資源を有効利用し、化学品や燃料に効率的に変換する技術に注目が集まっている。とりわけ自然界に最も多量に存在するバイオマス資源であるホロセルロース類を利用する技術の開発が強く求められている。
ホロセルロース類を化学品や燃料等の有用物質に変換する場合、ホロセルロース類を分解し、たとえば糖等の低分子量のホロセルロース誘導体に変換(糖化)する必要がある。ホロセルロース類の分解方法としては、ホロセルロース類を酸やアルカリで加水分解する方法、熱により分解する方法、マイクロ波を照射する方法、超臨界水処理、レーザー加熱する等の方法を、単独あるいは組み合わせて使用する方法が知られている。しかしながら実際には、これらの方法は操作が煩雑であったり、装置が高価であったりすることから限定的に利用されているに過ぎない。一方、セルロース加水分解酵素等の酵素を用いる生物学的方法は、操作が簡便かつ管理が容易であることからホロセルロース類の糖化の手段として最も普及している方法である。
セルラーゼ等のセルロース加水分解酵素を用いてバイオマス原料の糖化を行う場合、糖化を効率的に進めるために、バイオマス原料を予め、粉砕処理、蒸煮、熱分解、加圧分解、電子線、γ線、マイクロウェーブ、酸処理、アルカリ処理等を行ったものが用いられる。
ホロセルロース類に対するセルロース加水分解酵素の作用を増強する目的で、バイオマス原料に、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸(塩)とを必須構成単量体とする高分子アニオン系界面活性剤を添加して、加水分解酵素によりバイオマスを糖化する方法(特許文献1)が開示されている。また、セルロースからのリグニン剥離を促進してセルロースに対する酵素の作用を増強する目的で、塩基性化合物とアニオン系ポリマーの同時存在下でバイオマス原料を粉砕処理することが開示されている(特許文献2)。
一方、前処理されたバイオマス原料中にリグニン類が共存する場合、リグニン類は加水分解酵素を強力に吸着し、この現象に起因して、加水分解酵素によるホロセルロース類の分解(糖化)反応の効率が著しく抑制されてしまうことが知られている。つまり、バイオマス原料中のホロセルロース類を効率的に分解するための重要なポイントの1つが、加水分解酵素のリグニン類への吸着をコントロールすることにあることがわかってきた。また、リグニン類に加水分解酵素が吸着すると、通常、加水分解酵素の再利用は難しくなってしまう。産業上、加水分解酵素のコスト削減は重要であることから、加水分解酵素を再利用することも望まれている。
リグニン類を含有するバイオマス原料中のホロセルロース類を酵素で糖化する際に、バイオマス原料中のリグニン類の影響を回避する方法として、酵素を混合する前に、例えば、アルカリ蒸解やクラフト蒸解、オゾン処理、過酸化水素処理等によりバイオマス原料を脱リグニン処理する方法(特許文献3)や、リグニン類への加水分解酵素の吸着阻害する物質であるスキムミルクを添加してバイオマス原料を糖化する方法(特許文献4)、リグニン類と親水性化合物との反応物であるリグニン誘導体を添加してからバイオマス原料を糖化する方法(特許文献5)等が知られている。
しかしながら、特許文献3〜5の糖化法は、糖化効率および生産性において満足できるものではない。またこれらの方法は、糖化効率および生産性が改善されたとしても、操作が煩雑であり、装置が高価であり、さらには安全性等にも課題がある。より簡便な操作によりリグニン類の影響を回避し、効率良くバイオマス原料を糖化できる方法が求められている。
本発明の課題は、バイオマス原料中のホロセルロース類をセルロース加水分解酵素により効率良く糖化すると同時に、セルロース加水分解酵素を効率的に利用し得る、簡便なバイオマス原料の糖化法を提供することである。さらに本発明の課題は、バイオマス原料の糖化法を用いたバイオエタノールの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸(塩)を特定の割合で含む共重合体が、リグニン類とセルロース加水分解酵素の吸着を阻害し得る物質として作用することに着目し、リグニン類が共存するバイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、予め当該共重合体を添加して、その後バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を混合してバイオマス原料を糖化する糖化法を見出し、本発明を完成した。
さらに本発明者らは、上記糖化法により、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸(塩)を特定の割合で含む共重合体を用いてバイオマス原料を糖化した後、または、糖化と同時に、酵母等の微生物により糖類をアルコール発酵させてエタノールを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.下記工程(1)および工程(2)を含む、リグニン類が共存するバイオマス原料中のホロセルロース類の糖化法、
工程(1):バイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、1〜70モル%の単量体(A)2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと30〜99モル%の単量体(B)(メタ)アクリル酸(塩)を少なくとも含む共重合体を予め添加して、混合液を得る工程、
工程(2):工程(1)で得られた混合液とセルロース加水分解酵素またはバイオマス原料を混合することにより、バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を反応させ、バイオマス原料中のホロセルロース類を酵素糖化する工程。
2.前記共重合体において、単量体(A)と単量体(B)の合計が85モル%以上である、前項1に記載のバイオマス原料の糖化法。
3.前項1または2に記載された糖化法において、工程(2)の酵素糖化工程の後、または、酵素糖化工程と同時に、糖類をアルコール発酵することを含む、エタノールの製造方法。
1.下記工程(1)および工程(2)を含む、リグニン類が共存するバイオマス原料中のホロセルロース類の糖化法、
工程(1):バイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、1〜70モル%の単量体(A)2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと30〜99モル%の単量体(B)(メタ)アクリル酸(塩)を少なくとも含む共重合体を予め添加して、混合液を得る工程、
工程(2):工程(1)で得られた混合液とセルロース加水分解酵素またはバイオマス原料を混合することにより、バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を反応させ、バイオマス原料中のホロセルロース類を酵素糖化する工程。
2.前記共重合体において、単量体(A)と単量体(B)の合計が85モル%以上である、前項1に記載のバイオマス原料の糖化法。
3.前項1または2に記載された糖化法において、工程(2)の酵素糖化工程の後、または、酵素糖化工程と同時に、糖類をアルコール発酵することを含む、エタノールの製造方法。
本発明のリグニン類が共存するバイオマス原料中のホロセルロース類の糖化法は、リグニン類へのセルロース加水分解酵素の吸着が著しく抑制されたものであり、セルロース加水分解酵素によるホロセルロース類の糖化が阻害されることなく、バイオマス原料中のホロセルロース類を効率よく糖化することができる。加えて、糖化反応後のセルロース加水分解酵素は再利用可能であり、セルロース加水分解酵素を効率的に利用することができる。本発明のバイオマス原料の糖化法は、リグニン類を分解・除去するといった特別な処理を必要としないため、エネルギー的にも、時間的にも、実用上の操作的にも、非常に高効率で、ホロセルロース類の糖化が可能となる。また、本発明の糖化法により得られた糖類は、アルコール発酵や乳酸発酵等に使用することができ、高効率でバイオマス原料を利用して、エタノール等のアルコールや乳酸を生産することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、少なくとも工程(1)および工程(2)を含む、リグニン類が共存するバイオマス原料中のホロセルロース類の糖化法である。本発明の糖化法では、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸(塩)を特定の割合で含む共重合体により、リグニン類とセルロース加水分解酵素の不可逆的な吸着を抑制し、バイオマス原料の酵素糖化反応を行うものである。本発明の糖化法では、セルロース加水分解酵素がリグニン類に奪われることなくホロセルロース類の糖化に使われることから、効率よくホロセルロース類を糖化することができる。
〈工程(1)〉
工程(1)は、バイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸(塩)を特定の割合で含む共重合体を予め添加して、混合液を得る工程である。
工程(1)は、バイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸(塩)を特定の割合で含む共重合体を予め添加して、混合液を得る工程である。
本発明で用いることのできるバイオマス原料の種類には特に制限はなく、リグニン類が共存しており、ホロセルロース類が含まれるものであれば、いかなるものであってもよい。バイオマス原料としては例えば、木質系材料(針葉樹や広葉樹等の木本類の木の幹、枝、根、木の葉等、廃材、パルプ類、紙類等)、草本系材料(稲、麦、トウモロコシ、サトウキビ、豆類等の作物や雑草の茎や根、刈草等、それらの残渣)を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。特に、リグニン類が多く含まれるリグノセルロース系のバイオマス原料である、針葉樹(スギ、カラマツやヒノキ等)に由来する木質系材料や、広葉樹(ナブラヤシ、アブラヤシ、クヌギ等)に由来する木質系材料等を用いることができる。
バイオマス原料は、工程(1)に用いられる前に、糖化反応が効率良く進むよう裁断処理または粉砕処理等の物理的処理をし、適当な形状や大きさにしておくことが好適である。バイオマス原料の裁断、粉砕等の物理的処理がより適切に行われるためには、バイオマス原料は乾燥している状態が良い。バイオマス原料は、例えば順風式乾燥法等で乾燥させ、好ましくは含水率20質量%以下の状態に乾燥させておく。
バイオマス原料を裁断処理する場合、裁断処理のための機器や、裁断処理後のバイオマス原料の大きさは特に限定されないが、例えばロータリーカッター等で必要に応じて5cm以下、好ましくは2cm以下、特に好ましくは1cm以下のチップ片とすれば良い。
バイオマス原料を粉砕処理する場合、粉砕処理のための機器や、粉砕処理後の大きさは特に限定されないが、例えば、高圧圧縮ロールミル等でバイオマス原料の平均粒径が500μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下とすれば良い。平均粒径は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
バイオマス原料を粉砕処理する場合、粉砕処理のための機器や、粉砕処理後の大きさは特に限定されないが、例えば、高圧圧縮ロールミル等でバイオマス原料の平均粒径が500μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下とすれば良い。平均粒径は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
裁断、粉砕処理時の温度は特に制限はなく、−100〜200℃の範囲であれば良いが、余計なエネルギーを消費しないためには2〜100℃が好ましい。
裁断、粉砕処理の時間は、用いる機器や裁断、粉砕処理後のバイオマス原料の大きさ、バイオマス原料の乾燥等の状態によって変わるが、経済性の面からは30分以内が望ましい。
裁断、粉砕処理の時間は、用いる機器や裁断、粉砕処理後のバイオマス原料の大きさ、バイオマス原料の乾燥等の状態によって変わるが、経済性の面からは30分以内が望ましい。
裁断、粉砕処理後のバイオマス原料は、そのまま工程(1)に供しても良いし、さらに前処理を行ってもよい。前処理としては例えば、蒸煮処理、爆砕処理、水熱処理、酸(硫酸、希硫酸等)処理又はアルカリ処理等が挙げられ、これらの処理により、セルロース加水分解酵素のホロセルロース類への反応性を向上させることができる。また前処理として、アルカリ水溶液中において過酸化物と混合する等の処理を行っても良い。
バイオマス原料中に含まれるホロセルロース類とは、β−1,4グルコシド結合を多く含む多糖類を意味する。ホロセルロース類には、具体的には、セルロース、ヘミセルロース、または、それらの変性体等が含まれる。また、バイオマス原料は、リグニン類の除去、分解処理がされていないものであり、リグニン類を含むものである。リグニン類には、リグニンまたはその変性体等が含まれる。
本発明に用いるセルロース加水分解酵素としては、ホロセルロース類を加水分解できるセルロース加水分解酵素であれば制限無く使用することができ、動物、植物、微生物に由来するセルロース加水分解酵素を、単独、あるいは混合して利用できる。セルロース加水分解酵素としては、糖化効率の点から、セルラーゼやヘミセルラーゼ等がよく使用される。ここでセルラーゼとは、セルロースのβ1,4グルカンのグルコシド結合を加水分解する酵素のことであり、セルラーゼ(EC番号3.2.1.4)、エキソ−1,4β−D−グルコシダーゼ(EC番号3.2.1.74)およびエキソセロビオヒドロラーゼ(EC番号2.2.1.91)が使用できる。
さらに具体的には、セルラーゼとしては「セルラーゼ"オノヅカ"3S、セルラーゼY−NC等」(ヤクルト薬品(株)製)、「スクラーゼC等」(三菱化学フーズ(株)製)、「セルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4等」(天野エンザイム(株)製)、「TP−60、メイセラーゼ」(明治製菓(株)製)、「セルロシンAC40」、「セルロシンAL」、「セルロシンT3」等(エイチビィアイ(株)製)、「エンチロンCM、MHC、バイオヒット、バイオスター等」(洛東化成工業(株)製)、「セルクラスト1.5L」、「CellicCTec2」、「CellicHTec2」、「ウルトラフロL」、「ノバザイム188」、「フェニザイム」、「ビスコザイム」等(ノボザイムジャパン社製)、「Accellerase」(ジェネンコア社製)等を利用することができる。
さらに具体的には、セルラーゼとしては「セルラーゼ"オノヅカ"3S、セルラーゼY−NC等」(ヤクルト薬品(株)製)、「スクラーゼC等」(三菱化学フーズ(株)製)、「セルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4等」(天野エンザイム(株)製)、「TP−60、メイセラーゼ」(明治製菓(株)製)、「セルロシンAC40」、「セルロシンAL」、「セルロシンT3」等(エイチビィアイ(株)製)、「エンチロンCM、MHC、バイオヒット、バイオスター等」(洛東化成工業(株)製)、「セルクラスト1.5L」、「CellicCTec2」、「CellicHTec2」、「ウルトラフロL」、「ノバザイム188」、「フェニザイム」、「ビスコザイム」等(ノボザイムジャパン社製)、「Accellerase」(ジェネンコア社製)等を利用することができる。
工程(1)では、糖化反応を効率的に行うために、高分子量体を添加剤として用いる。高分子量体としては、リグニン類とセルロース加水分解酵素の吸着を抑制する機能を有する必要がある。本発明では、かかる機能を有する高分子量体として、1〜70モル%の単量体(A)2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと30〜99モル%の単量体(B)(メタ)アクリル酸(塩)を少なくとも含み、かつ、単量体(A)と単量体(B)の合計が85モル%以上である共重合体を用いることを特徴とするものである。
水中での分散性のためには単量体(A)が1モル%以上あれば良い。リグニンやセルロース加水分解酵素との適度な相互作用のためには単量体(B)は30モル%以上が必要で、70モル%以上が好ましく、85モル%がより好ましい。
水中での分散性のためには単量体(A)が1モル%以上あれば良い。リグニンやセルロース加水分解酵素との適度な相互作用のためには単量体(B)は30モル%以上が必要で、70モル%以上が好ましく、85モル%がより好ましい。
なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を表し、(メタ)アクリル酸(塩)とは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸の塩を表す。
加えて、本発明の好ましい(メタ)アクリル酸(塩)は、アクリル酸ナトリウム塩、アクリル酸アンモニウム塩、メタクリル酸ナトリウム塩、メタクリル酸アンモニウム塩を例示することができる。
加えて、本発明の好ましい(メタ)アクリル酸(塩)は、アクリル酸ナトリウム塩、アクリル酸アンモニウム塩、メタクリル酸ナトリウム塩、メタクリル酸アンモニウム塩を例示することができる。
本発明において用いられる高分子量体は、単量体(A)2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと単量体(B)(メタ)アクリル酸(塩)以外に、単量体(A)、単量体(B)と共重合可能な単量体を含んでいてもよい。単量体(A)、単量体(B)と共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;スチレン、メチルスチレン、置換スチレン等のスチレン系単量体;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、イソブチレン等の不飽和炭化水素系単量体又は置換不飽和炭化水素系単量体等が挙げられ、本発明の高分子量体は、これらの単量体を1種もしくは2種以上含んでいてもよい。単量体(A)、単量体(B)と共重合可能な単量体としては、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル単量体、n−ブチルメタクリレートが挙げられる。
本発明における高分子量体を得るための方法としては、高分子量体を構成する上記単量体を、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等、公知の重合方法に従って重合することで目的の高分子量体を得ることができる。高分子量体を得るための単量体(B)として(メタ)アクリル酸を用いる場合には、重合後に水酸化ナトリウムやアンモニア水などで中和して、高分子量体における(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を(メタ)アクリル酸(塩)としてもよい。
具体的な重合方法としては、例えば、溶液重合の場合、単量体組成物を低級アルコールなどの有機溶媒中に溶解し、窒素、アルゴン等不活性ガス雰囲気下、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌することにより得ることができる。また、得られた共重合体の形態としては、粉状、溶液状のいずれでもよいが、水に溶解した際には透明溶液状態がよい。
また、これらの高分子量体を精製する場合は、再沈殿法、透析法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
本発明における高分子量体は、簡単には市販品を利用することも可能である。市販品としては、商品名として例えば、「リピジュアシリーズ」(リピジュアは日油(株)の登録商標である)があげられる。市販品についても、水酸化ナトリウムやアンモニア水などで中和して、高分子量体における(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を(メタ)アクリル酸(塩)とした高分子量体を得ることができる。
具体的な重合方法としては、例えば、溶液重合の場合、単量体組成物を低級アルコールなどの有機溶媒中に溶解し、窒素、アルゴン等不活性ガス雰囲気下、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌することにより得ることができる。また、得られた共重合体の形態としては、粉状、溶液状のいずれでもよいが、水に溶解した際には透明溶液状態がよい。
また、これらの高分子量体を精製する場合は、再沈殿法、透析法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
本発明における高分子量体は、簡単には市販品を利用することも可能である。市販品としては、商品名として例えば、「リピジュアシリーズ」(リピジュアは日油(株)の登録商標である)があげられる。市販品についても、水酸化ナトリウムやアンモニア水などで中和して、高分子量体における(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を(メタ)アクリル酸(塩)とした高分子量体を得ることができる。
本発明の高分子量体は、平均分子量が、2,500以上が好ましく、取り扱いの容易さの点で10,000,000以下が好ましく、より好ましくは2,500,000以下である。なお本発明においては、平均分子量とは重量平均分子量を意味する。重量平均分子量は後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
高分子量体の添加量は、バイオマス原料中に共存するリグニン類の量に依存するが、バイオマス原料の乾燥質量に対して0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。高分子量体の量が少なすぎると、リグニン類によるセルロース加水分解酵素への影響を回避することができない。
高分子量体の添加方法は、バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を混合する前であれば特に制限は無く、一括投入、分割投入のどちらでも良い。また高分子量体は、バイオマス原料と予め混合してもよいし、セルロース加水分解酵素と予め混合してもよい。バイオマス原料と高分子量体を予め混合する場合は、バイオマス原料の粉砕、裁断処理の後に高分子量体を混合することが好ましい。これにより、高分子量体によるリグニン類またはセルロース加水分解酵素のマスキング効果が十分に発揮されることとなる。また、セルロース加水分解酵素の活性を回収するという観点からは、セルロース加水分解酵素と高分子量体を予め混合するのが望ましい。また、高分子量体を均一に分散させるためには、攪拌しながら混合するのが良い。水やアルコール等、糖化反応に必要な溶媒は、適時投入、混合すれば良い。その他、ホロセルロース類の結晶構造を緩める機能を示す成分として、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性の界面活性剤や、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子、マレイン酸を含む共重合体等のアニオン系界面活性剤およびその塩等を、単独または適宜組合せて、適量投入しても良い。
バイオマス原料と高分子量体の混合液、または、セルロース加水分解酵素と高分子量体の混合液のpH条件は特に制限はないが、酵素糖化反応にスムーズに移行するために、pH7未満、好ましくはpH4〜6が良い。pHの調整は酸やアルカリを用いて行うことができる。酸としては硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸等、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、各種有機アミン等を用いることができる。
バイオマス原料と高分子量体、または、セルロース加水分解酵素と高分子量体の攪拌混合は、混合物が均一分散可能な装置であれば、特に限定はないが、例えば、リボン型混合機やパドル型混合機等があげられ、攪拌効率が高いものが好ましい。
また、上記攪拌混合の時間には特に限定は無く、バイオマス原料と高分子量体、または、セルロース加水分解酵素と高分子量体が、均一に混合攪拌されれば良いが、30分程度で十分である。
さらに、上記攪拌混合の温度は特に限定されず、高分子量体が、リグニン類またはセルロース加水分解酵素をマスキングできる温度であればよい。通常1〜100℃、余分なエネルギーを消費しないために、60℃以下が好ましい。
また、上記攪拌混合の時間には特に限定は無く、バイオマス原料と高分子量体、または、セルロース加水分解酵素と高分子量体が、均一に混合攪拌されれば良いが、30分程度で十分である。
さらに、上記攪拌混合の温度は特に限定されず、高分子量体が、リグニン類またはセルロース加水分解酵素をマスキングできる温度であればよい。通常1〜100℃、余分なエネルギーを消費しないために、60℃以下が好ましい。
工程(1)を行うことにより、酵素糖化反応用のバイオマス原料と高分子量体の混合液、または、セルロース加水分解酵素と高分子量体の混合液が得られる。この混合液は、通常、スラリー液として得ることができる。
〈工程(2)〉
工程(2)は、工程(1)で得られた混合液に、バイオマス原料またはセルロース加水分解酵素を混合して、バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を反応させることにより、バイオマス原料中のホロセルロース類を酵素糖化する工程である。
工程(2)は、工程(1)で得られた混合液に、バイオマス原料またはセルロース加水分解酵素を混合して、バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を反応させることにより、バイオマス原料中のホロセルロース類を酵素糖化する工程である。
工程(1)で得られた混合液では、高分子量体により、リグニン類またはセルロース加水分解酵素がマスキングされている。よって工程(2)において、バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を混合した場合に、セルロース加水分解酵素へのリグニン類の吸着が抑制され、工程(2)のホロセルロース類の糖化が効率よく進行する。しかも、リグニン類を除去、分解するような特別な処理を必要としないため、エネルギー的にも、時間的にも、実用上の操作的にも非常に効率高く、グルコースやキシロース等の単糖や、セロビオース、セロトリオース等のオリゴ糖を得ることができる。酵素糖化処理により得られた糖を、アルコール発酵や乳酸発酵等に使用する場合は、単糖まで分解することが好ましい。
工程(2)における糖化処理の条件は、糖化反応をスムーズに進行させ得るものであればいかなるものであっても良い。例えば、反応溶媒としては、水、有機溶媒、およびそれらの混合溶媒を使用できる。水は、水道水、工業用水、蒸留水、イオン交換水等を利用でき、単独でも複数を混合してもよい。有機溶媒は、炭化水素系の溶媒、エーテル系の溶媒、塩素系の溶媒、アルコール系の溶媒、ケトン系の溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ピリジン等を利用でき、単独でも複数を混合してもよい。有機溶媒としては、エタノール等のアルコール系の溶媒を用いることが好適である。有機溶媒は、10質量%以下、好ましくは5質量%以下の濃度で用いることができる。またバイオマス原料とセルロース加水分解酵素との混合液はpH2〜10、好ましくはpH3〜7である。pHの調整には酸やアルカリを用いることができる。酸としては硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸等、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、各種有機アミン等を用いることができる。反応温度は10〜90℃、好ましくは20〜70℃、より好ましくは40〜65℃である。反応時間は通常30分から5日間、好ましくは12時間〜3日間である。
酵素糖化工程後または酵素糖化工程と同時に、公知の方法を利用してアルコール発酵をさせることにより、エタノールを得ることができる。アルコール発酵は、糖類をエタノールに発酵することが可能な酵母や細菌等の微生物、遺伝子組換えにより糖類をエタノールに発酵することが可能となった酵母や細菌等の微生物を用いて行えば良い。アルコール発酵可能な微生物としては、サッカロマイセス属、ザイモモナス属、ピキア属等のエタノール発酵菌を用いることができる。
酵素糖化工程と同時にアルコール発酵を行う場合、酵素糖化工程の反応条件のpHと温度は、糖化反応とアルコール発酵のどちらも実施可能な条件とすることが望ましい。例えばpHは4〜7、温度は20〜40℃が好ましい。
酵素糖化工程とアルコール発酵を別々に行う場合、アルコール発酵工程では、アルコール発酵に適した条件とすることが望ましく、pHは4〜8、温度は40〜60℃が好ましい。
酵素糖化工程とアルコール発酵を別々に行う場合、アルコール発酵工程では、アルコール発酵に適した条件とすることが望ましく、pHは4〜8、温度は40〜60℃が好ましい。
なお、アルコール発酵においては、反応液中のエタノール濃度が上昇すると、反応効率が悪くなるので、反応液中からエタノールを随時分離して回収しても良い。例えば、エバポレーション装置等でエタノールを分離回収しながらアルコール発酵を行っても良いが、この場合の温度はセルロース加水分解酵素や微生物の失活を避けるため、60℃以下が望ましい。最終的に、得られたエタノールを蒸留等により回収することができ、エタノールの純度を上げるために再蒸留等を実施すればよい。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
まず、本発明のバイオマス原料の糖化法に用いる高分子量体の合成例を示す。なお、合成した共重合体は下記に示す方法で重量平均分子量を測定した。
<分子量測定>
得られた共重合体水溶液を1.0w/v%になるよう20mMリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し、この溶液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過して試験溶液とし、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量を測定・算出した。なお、GPC分析の測定条件は次のとおりである。
得られた共重合体水溶液を1.0w/v%になるよう20mMリン酸バッファー(pH7.4)で希釈し、この溶液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過して試験溶液とし、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量を測定・算出した。なお、GPC分析の測定条件は次のとおりである。
<GPC分析の測定条件>
カラム;G3000PWXL及びG6000PWXLを直列に配列(東ソー社製)、溶離溶媒;20mMリン酸バッファー(pH7.4)、標準物質;ポリエチレングリコール(ポリマー・ラボラトリー社製)、検出;視差屈折計RI−8020(東ソー社製)、流速;0.5mL/分、試料溶液使用量;10μL、カラム温度;45℃。
カラム;G3000PWXL及びG6000PWXLを直列に配列(東ソー社製)、溶離溶媒;20mMリン酸バッファー(pH7.4)、標準物質;ポリエチレングリコール(ポリマー・ラボラトリー社製)、検出;視差屈折計RI−8020(東ソー社製)、流速;0.5mL/分、試料溶液使用量;10μL、カラム温度;45℃。
〈合成例1〉
2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン34.4g及びメタクリル酸4.3gを160gの40質量%エタノール水溶液に溶解し、4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹き込んだ。続いて、重合開始剤として登録商標パーブチル−ND(日油社製)0.01gを添加し、60℃で3時間、70℃で2時間重合した。重合終了後、エタノール(あるいはエタノール/水)を良溶媒として、アセトンを貧溶媒として再沈精製し、加熱乾燥させて共重合体1を得た。
2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン34.4g及びメタクリル酸4.3gを160gの40質量%エタノール水溶液に溶解し、4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹き込んだ。続いて、重合開始剤として登録商標パーブチル−ND(日油社製)0.01gを添加し、60℃で3時間、70℃で2時間重合した。重合終了後、エタノール(あるいはエタノール/水)を良溶媒として、アセトンを貧溶媒として再沈精製し、加熱乾燥させて共重合体1を得た。
〈合成例2〜5、比較合成例1〉
表1に示す原料組成を用いた以外は合成例1と同様に重合を行ない、表1に示す共重合体を合成した。合成例2〜5では共重合体2〜5、比較合成例では共重合体6を得た。
表1に示す原料組成を用いた以外は合成例1と同様に重合を行ない、表1に示す共重合体を合成した。合成例2〜5では共重合体2〜5、比較合成例では共重合体6を得た。
共重合体1〜6の原料組成及び重量平均分子量等の測定結果を表1に示す。なお、表1では2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンをMPC、メタクリル酸をMA、アクリル酸をAA、n−ブチルメタクリレートをBMAとして示した。
次に調製例1〜6において、本発明のホロセルロース類の糖化法に用いる高分子量体溶液の調製例を示す。
〈調製例1〉
合成例1で得られた共重合体1を、イオン交換水、6Nおよび1N水酸化ナトリウム溶液でpH7に中和しながら5質量%となるように調製し、高分子量体1溶液を得た。
合成例1で得られた共重合体1を、イオン交換水、6Nおよび1N水酸化ナトリウム溶液でpH7に中和しながら5質量%となるように調製し、高分子量体1溶液を得た。
〈調製例2〉
合成例2で得られた共重合体2を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体2溶液を得た。
合成例2で得られた共重合体2を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体2溶液を得た。
〈調製例3〉
合成例2で得られた共重合体2を、イオン交換水、30質量%および10質量%アンモニア水でpH7に中和しながら5質量%となるように調製し、高分子量体3溶液を得た。
合成例2で得られた共重合体2を、イオン交換水、30質量%および10質量%アンモニア水でpH7に中和しながら5質量%となるように調製し、高分子量体3溶液を得た。
〈調製例4〉
合成例3で得られた共重合体3を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体4溶液を得た。
合成例3で得られた共重合体3を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体4溶液を得た。
〈調製例5〉
合成例4で得られた共重合体4を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体5溶液を得た。
合成例4で得られた共重合体4を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体5溶液を得た。
〈調製例6〉
合成例5で得られた共重合体5を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体6溶液を得た。
合成例5で得られた共重合体5を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体6溶液を得た。
〈比較調製例1〉
比較合成例1で得られた共重合体6を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体7溶液を得た。
比較合成例1で得られた共重合体6を用いる以外は調製例1と同様に操作し、高分子量体7溶液を得た。
〈比較調製例2〉
ポリエチレングリコール20000(平均分子量20,000±5,000、和光純薬工業(株)製)を5質量%となるようにイオン交換水に溶解し、高分子量体8溶液を得た。
ポリエチレングリコール20000(平均分子量20,000±5,000、和光純薬工業(株)製)を5質量%となるようにイオン交換水に溶解し、高分子量体8溶液を得た。
以下の実施例1−1〜1−7では、上記調製例1〜6により得られた高分子量体溶液を用いて、本発明のバイオマス原料中のホロセルロース類の酵素糖化を行った。
(実施例1−1)
バイオマス原料と高分子量体1溶液を予め混合して混合液を調製し、当該混合液にセルロース加水分解酵素を添加して反応させることにより、酵素糖化を行った。
バイオマス原料と高分子量体1溶液を予め混合して混合液を調製し、当該混合液にセルロース加水分解酵素を添加して反応させることにより、酵素糖化を行った。
(i)バイオマス原料の粉砕処理
バイオマス原料であるスギ粉末は、タンデムリングミル(商品名HV−30、TRU合同会社)を用いて粉砕した。HV−30は、粉砕ポットの内径が284mm、材質S45Cであり、その内部に外径252mm、内径198mm、厚さ21mmのS45C製のリングを10枚積層して用いた。乾燥粉砕装置KDS-2((株)北川鉄工所製)を使用して平均粒径200μmに粉砕したスギ粉末を、HV−30に投入した。その後、HV−30を、振幅8mmで振動数1,500cpm(circle per minute)でリングを運動させることにより、平均粒径20μmのスギ粉末の粉砕物を得た。粒径測定は、粒度測定専用機器である、マイクロトラック MT3300EX2(日機装株式会社)を用いて測定を行った。
バイオマス原料であるスギ粉末は、タンデムリングミル(商品名HV−30、TRU合同会社)を用いて粉砕した。HV−30は、粉砕ポットの内径が284mm、材質S45Cであり、その内部に外径252mm、内径198mm、厚さ21mmのS45C製のリングを10枚積層して用いた。乾燥粉砕装置KDS-2((株)北川鉄工所製)を使用して平均粒径200μmに粉砕したスギ粉末を、HV−30に投入した。その後、HV−30を、振幅8mmで振動数1,500cpm(circle per minute)でリングを運動させることにより、平均粒径20μmのスギ粉末の粉砕物を得た。粒径測定は、粒度測定専用機器である、マイクロトラック MT3300EX2(日機装株式会社)を用いて測定を行った。
(ii)バイオマス原料と高分子量体の混合液の調製(工程(1))
バイオマス原料として上記(i)により得られたスギ粉末粉砕物、高分子量体1溶液およびイオン交換水を混合した。得られた混合液を、121℃で15分間オートクレーブにかけた。このように調製された液を「スギ粉末−高分子量体混合液」とした。なお、後述する糖化反応液の終濃度で、スギ粉末粉砕物の濃度は20質量%に、高分子量体1の濃度は0.5質量%になるように調整した。
バイオマス原料として上記(i)により得られたスギ粉末粉砕物、高分子量体1溶液およびイオン交換水を混合した。得られた混合液を、121℃で15分間オートクレーブにかけた。このように調製された液を「スギ粉末−高分子量体混合液」とした。なお、後述する糖化反応液の終濃度で、スギ粉末粉砕物の濃度は20質量%に、高分子量体1の濃度は0.5質量%になるように調整した。
(iii)バイオマス原料の酵素糖化(工程(2))
上記工程(ii)により調製したスギ粉末−高分子量体混合液に、セルロース加水分解酵素としてCelliCTec2(商品名)(ノボザイム社製)を、対スギ粉末粉砕物の質量当たりのタンパク量で0.27質量%となるよう添加し、糖化反応液とした。糖化反応液を120rpmで振盪しながら50℃で48時間反応させることにより、酵素糖化を行い、酵素糖化液を得た。
上記工程(ii)により調製したスギ粉末−高分子量体混合液に、セルロース加水分解酵素としてCelliCTec2(商品名)(ノボザイム社製)を、対スギ粉末粉砕物の質量当たりのタンパク量で0.27質量%となるよう添加し、糖化反応液とした。糖化反応液を120rpmで振盪しながら50℃で48時間反応させることにより、酵素糖化を行い、酵素糖化液を得た。
(i)〜(iii)により得られた酵素糖化液について、糖化率および酵素回収率を以下に示す方法により求めた。糖化率と酵素回収率の結果は後述する表2に示す。
〈糖化率〉
糖化率は、工程(1)のバイオマス原料中のグルコース濃度と酵素糖化液中のグルコース濃度を測定することにより、以下の手順で算出した。
糖化率は、工程(1)のバイオマス原料中のグルコース濃度と酵素糖化液中のグルコース濃度を測定することにより、以下の手順で算出した。
(a)バイオマス原料1g中のグルコース単位量
バイオマス原料(スギ粉末粉砕物)1.0gに、72質量%の硫酸0.6mLを加え、30℃で1時間保持した後、水16.8mLを加えてオートクレーブにて120℃で1時間処理した。処理後の試料について、液量を測定した(バイオマス原料試験液量)。その後、当該試料の一部を用いて酵素法(F−キット グルコース:JKインターナショナル)でグルコース濃度を測定した。本測定で得られたグルコース濃度とバイオマス原料試験液量より、バイオマス原料1g中のグルコース単位量を算出した。
バイオマス原料1g中のグルコース単位量(g)=グルコース濃度(質量/容量%)×バイオマス原料試験液量(mL)×0.01
バイオマス原料(スギ粉末粉砕物)1.0gに、72質量%の硫酸0.6mLを加え、30℃で1時間保持した後、水16.8mLを加えてオートクレーブにて120℃で1時間処理した。処理後の試料について、液量を測定した(バイオマス原料試験液量)。その後、当該試料の一部を用いて酵素法(F−キット グルコース:JKインターナショナル)でグルコース濃度を測定した。本測定で得られたグルコース濃度とバイオマス原料試験液量より、バイオマス原料1g中のグルコース単位量を算出した。
バイオマス原料1g中のグルコース単位量(g)=グルコース濃度(質量/容量%)×バイオマス原料試験液量(mL)×0.01
(b)酵素糖化液中のグルコース量
酵素糖化液について、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離し、回収された上清液量を測定した(糖化試験液量)。上清液のグルコース濃度を酵素法(F−キット グルコース:JKインターナショナル)で測定した。本測定で得られたグルコース濃度と糖化試験液量より、酵素糖化液のグルコース量を算出した。
酵素糖化液のグルコース量(g)=グルコース濃度(質量/容量%)×糖化試験液量(mL)×0.01
酵素糖化液について、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離し、回収された上清液量を測定した(糖化試験液量)。上清液のグルコース濃度を酵素法(F−キット グルコース:JKインターナショナル)で測定した。本測定で得られたグルコース濃度と糖化試験液量より、酵素糖化液のグルコース量を算出した。
酵素糖化液のグルコース量(g)=グルコース濃度(質量/容量%)×糖化試験液量(mL)×0.01
(c)糖化率の測定
上記(a)および(b)により得られたグルコース量、および、(ii)にて用いたバイオマス原料(スギ粉末粉砕物)量から、下記式に従い糖化率を算出した。結果を後述する表2に示した。
糖化率(%)=酵素糖化液のグルコース量(g)/{バイオマス原料1g中のグルコース単位量(g/g)×バイオマス原料量(g)}×100
上記(a)および(b)により得られたグルコース量、および、(ii)にて用いたバイオマス原料(スギ粉末粉砕物)量から、下記式に従い糖化率を算出した。結果を後述する表2に示した。
糖化率(%)=酵素糖化液のグルコース量(g)/{バイオマス原料1g中のグルコース単位量(g/g)×バイオマス原料量(g)}×100
〈酵素回収率〉
酵素回収率は、以下の酵素回収試験1の手順で算出した。
上記(iii)の酵素糖化処理後の試料を準備し、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離した。得られた上清液1のタンパク量を、プロテインアッセイ(商品名)(バイオ・ラッドラボラトリーズ社製)を用いて測定した。スギ粉末粉砕物およびセルロース加水分解酵素を添加しないこと以外は、実施例1−1(i)〜(iii)に従って調製した溶液を、ブランク液1とした。スギ粉末粉砕物を添加しないこと以外は、実施例1−1(i)〜(iii)に従って調製した溶液を、酵素液1とした。ブランク液1および酵素液1について、前述と同様にプロテインアッセイにてタンパク量を測定した。
測定して得られた、上清液1、ブランク液1、酵素液1の各タンパク量を用いて、次式より酵素回収率1を算出した。結果を後述する表2に示した。なお、回収されたセルロース加水分解酵素に活性のあることは、スギ粉末粉砕物をバイオマス原料として用いて酵素糖化を行い、糖が産生されることにより確認した。
酵素回収率(%)=(上清液1中のタンパク量−ブランク液1中のタンパク量)/(酵素液1中のタンパク量−ブランク液1中のタンパク量)×100
酵素回収率は、以下の酵素回収試験1の手順で算出した。
上記(iii)の酵素糖化処理後の試料を準備し、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離した。得られた上清液1のタンパク量を、プロテインアッセイ(商品名)(バイオ・ラッドラボラトリーズ社製)を用いて測定した。スギ粉末粉砕物およびセルロース加水分解酵素を添加しないこと以外は、実施例1−1(i)〜(iii)に従って調製した溶液を、ブランク液1とした。スギ粉末粉砕物を添加しないこと以外は、実施例1−1(i)〜(iii)に従って調製した溶液を、酵素液1とした。ブランク液1および酵素液1について、前述と同様にプロテインアッセイにてタンパク量を測定した。
測定して得られた、上清液1、ブランク液1、酵素液1の各タンパク量を用いて、次式より酵素回収率1を算出した。結果を後述する表2に示した。なお、回収されたセルロース加水分解酵素に活性のあることは、スギ粉末粉砕物をバイオマス原料として用いて酵素糖化を行い、糖が産生されることにより確認した。
酵素回収率(%)=(上清液1中のタンパク量−ブランク液1中のタンパク量)/(酵素液1中のタンパク量−ブランク液1中のタンパク量)×100
(実施例1−2〉
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例2の高分子量体2溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例2の高分子量体2溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
〈実施例1−3〉
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例3の高分子量体3溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例3の高分子量体3溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
〈実施例1−4〉
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例4の高分子量体4溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例4の高分子量体4溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
〈実施例1−5〉
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例5の高分子量体5溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例5の高分子量体5溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
〈実施例1−6〉
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例6の高分子量体6溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに調製例6の高分子量体6溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
〈比較例1−1〉
調製例1の高分子量体1溶液を添加しない以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液を添加しない以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
〈比較例1−2〉
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに比較調製例1の高分子量体7溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに比較調製例1の高分子量体7溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
〈比較例1−3〉
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに比較調製例2の高分子量体8溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
調製例1の高分子量体1溶液の代わりに比較調製例2の高分子量体8溶液を用いる以外は実施例1−1と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
(実施例1−7)
セルロース加水分解酵素と高分子量体4溶液を予め混合して混合液を調製し、当該混合液にバイオマス原料を添加して反応させることにより、酵素糖化を行った。具体的な手法を以下に示す。
セルロース加水分解酵素と高分子量体4溶液を予め混合して混合液を調製し、当該混合液にバイオマス原料を添加して反応させることにより、酵素糖化を行った。具体的な手法を以下に示す。
(i)バイオマス原料の粉砕処理
実施例1−1の(i)と同様にして、スギ粉末の粉砕物を得た。
実施例1−1の(i)と同様にして、スギ粉末の粉砕物を得た。
(ii)セルロース加水分解酵素と高分子量体の混合液の調製(工程(1))
セルロース加水分解酵素CelliCTec2(商品名)(ノボザイム社製)を高分子量体4溶液により希釈し、「酵素−高分子量体液」を調製した。なお、後述する糖化反応液の終濃度で、酵素濃度が対スギ粉末質量当たりのタンパク量として0.27質量%、高分子量体4の濃度が0.5質量%となるように調整した。
セルロース加水分解酵素CelliCTec2(商品名)(ノボザイム社製)を高分子量体4溶液により希釈し、「酵素−高分子量体液」を調製した。なお、後述する糖化反応液の終濃度で、酵素濃度が対スギ粉末質量当たりのタンパク量として0.27質量%、高分子量体4の濃度が0.5質量%となるように調整した。
(iii)バイオマス原料液の調製
スギ粉末粉砕物およびイオン交換水を混合した。続いてこの溶液を、121℃で15分間オートクレーブにかけた。このように調製された液をバイオマス原料液とした。なおスギ粉末粉砕物は、後述する糖化反応液の終濃度で20質量%になるように調整した。
スギ粉末粉砕物およびイオン交換水を混合した。続いてこの溶液を、121℃で15分間オートクレーブにかけた。このように調製された液をバイオマス原料液とした。なおスギ粉末粉砕物は、後述する糖化反応液の終濃度で20質量%になるように調整した。
(iv)バイオマス原料の酵素糖化(工程(2))
上記(iii)にて調製したバイオマス原料液に、(ii)にて得られた酵素−高分子量体液を添加し、糖化反応液を調製した。糖化反応液を、120rpmで振盪しながら50℃で48時間反応させることにより酵素糖化を行い、酵素糖化液を得た。
上記(iii)にて調製したバイオマス原料液に、(ii)にて得られた酵素−高分子量体液を添加し、糖化反応液を調製した。糖化反応液を、120rpmで振盪しながら50℃で48時間反応させることにより酵素糖化を行い、酵素糖化液を得た。
得られた酵素糖化液について、糖化率および酵素回収率を、実施例1−1と同様に算出した。得られた結果を、後述する表2に示した。
〈比較例1−4〉
高分子量体4溶液の代わりにスキムミルクを最終濃度2%で用いる以外は実施例1−7と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
高分子量体4溶液の代わりにスキムミルクを最終濃度2%で用いる以外は実施例1−7と同様にして酵素糖化を行い、糖化率および酵素回収率を求めた。結果を表2に示した。
以下の実施例2−1では、本発明の糖化法により得られた糖類を用いて、エタノールの製造を行った。
(実施例2−1)
セルロース加水分解酵素と高分子量体4溶液を予め混合して混合液を調製し、当該混合液にバイオマス原料を添加し、さらに酵母を加えることによって糖化とアルコール発酵を同時に行った。具体的な手法を以下に示す。
セルロース加水分解酵素と高分子量体4溶液を予め混合して混合液を調製し、当該混合液にバイオマス原料を添加し、さらに酵母を加えることによって糖化とアルコール発酵を同時に行った。具体的な手法を以下に示す。
(i)バイオマス原料の粉砕処理
実施例1−1の(i)と同様にして、スギ粉末の粉砕物を得た。
実施例1−1の(i)と同様にして、スギ粉末の粉砕物を得た。
(ii)セルロース加水分解酵素と高分子量体の混合液の調製(工程(1))
セルロース加水分解酵素CelliCTec2(商品名)(ノボザイム社製)を高分子量体4溶液により希釈し、「酵素−高分子量体液」を調製した。なお、後述する糖化反応液の終濃度で、酵素濃度が対スギ粉末質量当たりのタンパク量として0.27質量%、高分子量体4の濃度が0.5質量%となるように調整した。
セルロース加水分解酵素CelliCTec2(商品名)(ノボザイム社製)を高分子量体4溶液により希釈し、「酵素−高分子量体液」を調製した。なお、後述する糖化反応液の終濃度で、酵素濃度が対スギ粉末質量当たりのタンパク量として0.27質量%、高分子量体4の濃度が0.5質量%となるように調整した。
(iii)バイオマス原料液の調製
スギ粉末粉砕物およびイオン交換水を混合した。続いてこの溶液を、121℃で15分間オートクレーブにかけた。このように調製された液をバイオマス原料液とした。なおスギ粉末粉砕物は、後述する糖化反応液の終濃度で20質量%になるように調整した。
スギ粉末粉砕物およびイオン交換水を混合した。続いてこの溶液を、121℃で15分間オートクレーブにかけた。このように調製された液をバイオマス原料液とした。なおスギ粉末粉砕物は、後述する糖化反応液の終濃度で20質量%になるように調整した。
(iv)バイオマス原料の酵素糖化およびアルコール発酵(工程(2))
上記(iii)にて調製したバイオマス原料液に、(ii)にて得られた酵素−高分子量体液を添加し、糖化反応液を調製した。この糖化反応液100gに、酵母(Shizosaccharomyces japonicus)を1.0×109個/mL添加し、500mLのバッフル付きフラスコで80rpmで振盪しながら37℃で72時間反応させ、アルコール発酵した。
工程(i)〜(iv)により得られたアルコール発酵後の試料について、次の方法によりエタノール濃度と酵素回収率を測定した。
上記(iii)にて調製したバイオマス原料液に、(ii)にて得られた酵素−高分子量体液を添加し、糖化反応液を調製した。この糖化反応液100gに、酵母(Shizosaccharomyces japonicus)を1.0×109個/mL添加し、500mLのバッフル付きフラスコで80rpmで振盪しながら37℃で72時間反応させ、アルコール発酵した。
工程(i)〜(iv)により得られたアルコール発酵後の試料について、次の方法によりエタノール濃度と酵素回収率を測定した。
〈エタノール濃度〉
アルコール濃度計を用いて、以下の手順でエタノール濃度の測定を行った。アルコール発酵終了後、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離した。得られた上清液中のエタノール濃度を、アルコメイト AL−3(製品名)(ウッドッソン社)により測定した。
その結果、アルコール発酵後の試料のエタノール濃度は65質量/容量%であった。
アルコール濃度計を用いて、以下の手順でエタノール濃度の測定を行った。アルコール発酵終了後、遠心分離によって沈殿物と上清液を分離した。得られた上清液中のエタノール濃度を、アルコメイト AL−3(製品名)(ウッドッソン社)により測定した。
その結果、アルコール発酵後の試料のエタノール濃度は65質量/容量%であった。
〈酵素回収率〉
アルコール発酵後の試料についての酵素回収率は、以下の酵素回収試験2の手順で算出した。
アルコール発酵後の試料を準備し、遠心分離によって沈殿物2と上清液2を分離した。得られた上清液2のタンパク量をプロテインアッセイ(商品名)(バイオ・ラッドラボラトリーズ社製)を用いて測定した。バイオマス原料および酵素を添加しない以外は、同様に調製して得られた溶液をブランク液2とした。バイオマス原料を添加しない以外は同様に調製して得られた溶液を酵素液2とした。上清液2、ブランク液2、酵素液2について、前述と同様にして、プロテインアッセイにてタンパク量を測定した。次式より酵素回収率を算出した。
酵素回収率(%)=(上清液2中のタンパク量−ブランク液2中のタンパク量)/(酵素液2中のタンパク量−ブランク液2中のタンパク量)×100
アルコール発酵後の試料についての酵素回収率は55%であった。
アルコール発酵後の試料についての酵素回収率は、以下の酵素回収試験2の手順で算出した。
アルコール発酵後の試料を準備し、遠心分離によって沈殿物2と上清液2を分離した。得られた上清液2のタンパク量をプロテインアッセイ(商品名)(バイオ・ラッドラボラトリーズ社製)を用いて測定した。バイオマス原料および酵素を添加しない以外は、同様に調製して得られた溶液をブランク液2とした。バイオマス原料を添加しない以外は同様に調製して得られた溶液を酵素液2とした。上清液2、ブランク液2、酵素液2について、前述と同様にして、プロテインアッセイにてタンパク量を測定した。次式より酵素回収率を算出した。
酵素回収率(%)=(上清液2中のタンパク量−ブランク液2中のタンパク量)/(酵素液2中のタンパク量−ブランク液2中のタンパク量)×100
アルコール発酵後の試料についての酵素回収率は55%であった。
(比較例2−1)
「酵素‐高分子量体液」の調製に高分子量体4溶液の代わりに、スキムミルクを最終濃度で2%で用いる以外は実施例2−1に従いアルコール発酵を実施した。アルコール発酵終了後にエタノール濃度、酵素回収率を測定した。
その結果、アルコール発酵後のエタノール濃度は58%および酵素回収率は4%であった。
「酵素‐高分子量体液」の調製に高分子量体4溶液の代わりに、スキムミルクを最終濃度で2%で用いる以外は実施例2−1に従いアルコール発酵を実施した。アルコール発酵終了後にエタノール濃度、酵素回収率を測定した。
その結果、アルコール発酵後のエタノール濃度は58%および酵素回収率は4%であった。
(総論)
実施例1−1〜1−7の結果より明らかなように、本発明のバイオマス原料の糖化法は、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとポリ(メタ)アクリル酸(塩)を含む特定の共重合体を、バイオマス原料またはセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に添加することにより、リグニン類のセルロース加水分解酵素への吸着を防ぎ、酵素機能の低下を防ぐことができ、バイオマス原料から糖類を効率的に得ることができる。また、本発明のバイオマス原料の糖化法は、酵素糖化反応後のセルロース加水分解酵素の回収率にも優れることから、効率的な糖類の製造法として有用である。実施例2−1の結果から明らかなように、得られた糖類はエタノールの生産に有効に用いることができ、同様に他の糖類の生産にも有効に用いることができる。
一方、比較例1−1の結果からは、本発明の共重合体を添加しない場合は、リグニン類にセルロース加水分解酵素が吸着して、酵素機能を阻害してしまうとともに、ほとんどセルロース加水分解酵素を回収することができない。また、比較例1−3の結果からは、本発明の共重合体の代わりに、ポリエチレングリコールを用いた場合は、セルロース加水分解酵素の回収はほとんどできなかった。これはポリエチレングリコールがアニオン性官能基を有さないため、リグニン類またはセルロース加水分解酵素と相互作用することができず、リグニン類のセルロース加水分解酵素への吸着を抑制できなかったためであると考えられる。さらに、比較例1−2の結果からは、単量体の組成が本発明の特定のものではない共重合体を添加した場合は、リグニン類へのセルロース加水分解酵素の吸着が若干抑制されるものの、吸着抑制作用は十分ではないことがわかった。よって、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとポリ(メタ)アクリル酸(塩)を含む共重合体として、単量体の組成(割合)が特定のものであることが重要であることがわかった。また比較例1−4からは、スキムミルクをセルロース加水分解酵素に混合してからバイオマス原料に添加したとしても、リグニン類のセルロース加水分解酵素への吸着は若干抑制されるものの、その吸着抑制作用は十分ではなく、十分なセルロース加水分解酵素の回収率が得られないことがわかった。
実施例1−1〜1−7の結果より明らかなように、本発明のバイオマス原料の糖化法は、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとポリ(メタ)アクリル酸(塩)を含む特定の共重合体を、バイオマス原料またはセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に添加することにより、リグニン類のセルロース加水分解酵素への吸着を防ぎ、酵素機能の低下を防ぐことができ、バイオマス原料から糖類を効率的に得ることができる。また、本発明のバイオマス原料の糖化法は、酵素糖化反応後のセルロース加水分解酵素の回収率にも優れることから、効率的な糖類の製造法として有用である。実施例2−1の結果から明らかなように、得られた糖類はエタノールの生産に有効に用いることができ、同様に他の糖類の生産にも有効に用いることができる。
一方、比較例1−1の結果からは、本発明の共重合体を添加しない場合は、リグニン類にセルロース加水分解酵素が吸着して、酵素機能を阻害してしまうとともに、ほとんどセルロース加水分解酵素を回収することができない。また、比較例1−3の結果からは、本発明の共重合体の代わりに、ポリエチレングリコールを用いた場合は、セルロース加水分解酵素の回収はほとんどできなかった。これはポリエチレングリコールがアニオン性官能基を有さないため、リグニン類またはセルロース加水分解酵素と相互作用することができず、リグニン類のセルロース加水分解酵素への吸着を抑制できなかったためであると考えられる。さらに、比較例1−2の結果からは、単量体の組成が本発明の特定のものではない共重合体を添加した場合は、リグニン類へのセルロース加水分解酵素の吸着が若干抑制されるものの、吸着抑制作用は十分ではないことがわかった。よって、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとポリ(メタ)アクリル酸(塩)を含む共重合体として、単量体の組成(割合)が特定のものであることが重要であることがわかった。また比較例1−4からは、スキムミルクをセルロース加水分解酵素に混合してからバイオマス原料に添加したとしても、リグニン類のセルロース加水分解酵素への吸着は若干抑制されるものの、その吸着抑制作用は十分ではなく、十分なセルロース加水分解酵素の回収率が得られないことがわかった。
本発明のリグニン類が共存するバイオマス原料中のホロセルロース類の糖化法は、リグニン類へのセルロース加水分解酵素の吸着が著しく抑制されたものであり、セルロース加水分解酵素によるホロセルロース類の糖化が阻害されることなく、バイオマス原料中のホロセルロース類を効率よく糖化することができ、有用である。加えて、酵素糖化反応後のセルロース加水分解酵素は再利用可能であり、セルロース加水分解酵素を効率的に利用することができ、経済的にも有利である。また、本発明の糖化法により得られた糖類は、アルコール発酵や乳酸発酵等に使用することができ、高効率でバイオマス原料を利用してアルコールやエタノールを生産することができる。
Claims (3)
- 下記工程(1)および工程(2)を含む、リグニン類が共存するバイオマス原料中のホロセルロース類の糖化法、
工程(1):バイオマス原料およびセルロース加水分解酵素の少なくとも一方に、1〜70モル%の単量体(A)2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと30〜99モル%の単量体(B)(メタ)アクリル酸(塩)を少なくとも含む共重合体を予め添加して、混合液を得る工程、
工程(2):工程(1)で得られた混合液とセルロース加水分解酵素またはバイオマス原料を混合することにより、バイオマス原料とセルロース加水分解酵素を反応させ、バイオマス原料中のホロセルロース類を酵素糖化する工程。 - 前記共重合体において、単量体(A)と単量体(B)の合計が85モル%以上である、請求項1に記載のバイオマス原料の糖化法。
- 請求項1または2に記載された糖化法において、工程(2)の酵素糖化工程の後、または、酵素糖化工程と同時に、糖類をアルコール発酵することを含む、エタノールの製造方法。
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JP2014246361A JP2016106565A (ja) | 2014-12-04 | 2014-12-04 | バイオマス原料の糖化法 |
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JP2016106564A (ja) * | 2014-12-04 | 2016-06-20 | 秋田県 | バイオマス原料の糖化方法 |
-
2014
- 2014-12-04 JP JP2014246361A patent/JP2016106565A/ja active Pending
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