JP2016098038A - ホットメルト組成物から成るシール材を有する樹脂製キャップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
樹脂製ライナーの形成方法は、シール材を構成する材料によって異なり、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂から成るシール材の場合には、キャップ内に供給された熱可塑性樹脂から成る溶融樹脂を型押するインシェルモールド法、或いはキャップを成形型の一部として熱可塑性樹脂を射出成形して成るインサート成形法等が提案されている。
また塩化ビニル樹脂から成るシール材の場合には、塩化ビニルのプラスチゾルをスピンライニングにより供給して形成する方法、天然ゴム等から成るライナーの場合には、天然ゴム等の水分散ラテックスを用い、これを乾燥させることにより形成する方法、或いはウレタン系エラストマーから成るシール材の場合には、イソシアネート成分及びポリオール成分を混合した後、架橋させることにより形成する方法等によって形成されている。
ホットメルト組成物から成るシール材は、上述した一般的なシール材に比して硬度が高いことから、容器口部の天面でシールをするよりも、容器口部の外周側角部でシールすることが密封性の点で有効であり、そのため、シール材をキャップシェルの頂板部内面の外周縁に形成すべく、ライナー材であるホットメルト組成物をスピンライニングによりキャップシェルに施した後、更にアフタースピンを行うことにより、ライナー材を外周縁側に流動させると共にライナー面を平滑化させている。
このようなシール材のはみ出しは、シール面の平滑性を損なうと共に、外観特性に劣る。しかもこのはみ出し部分がシール材から離脱してしまうと、内容物に混入するおそれもあることから、このような形状不良の発生を管理することが必要になり、安定して連続生産することができない。
従って本発明の目的は、ホットメルト組成物から成るシール材を有するキャップの製造方法において、シール材のはみ出しを有効に防止できるキャップの製造方法を提供することである。
1.前記ホットメルト組成物が、B型粘度計による180℃での粘度が500〜5000mPa・秒の範囲にあること、
2.前記ホットメルト組成物が、エチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とするホットメルト組成物であること、
3.前記ホットメルト組成物が滑剤を含有すること、
4.前記スピンライニング工程が、キャップシェルを100〜600rpmの条件で回転させることにより行われること、
が好適である。
またシール材のはみ出しが有効に防止されていることから、安定して連続生産することができ、生産性及び経済性に優れている。
本発明の優れた作用効果は後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、キャップシェルのシール材形成位置にプラズマ表面処理を行った後、ホットメルト組成物から成るシール材をスピンライニングにより施し、更にアフタースピンを行ってシール材表面を所望の位置に形成した場合には、シール材のはみ出しがなく、シール材の外周縁は一様な円弧を形成しており、密封性にも優れていた(実施例1〜5)。
これに対して、プラズマ表面処理を行わない以外は、実施例と同様にシール材を形成した場合には、シール材の外周縁の一部が外側に突出したはみ出し部が形成され、外観特性に劣ると共に、密封性の点でも実施例に比較して満足するものではなかった(比較例1〜3)。またプラズマ処理を行っても、シール形成位置表面の濡れ張力が32mN/m未満の場合には、はみ出しが形成されていた(比較例4)。
プラズマ処理に変えて、フレーム処理を行った場合には、シール材形成位置に的確にフレーム処理を施すことができず、キャップシェル裾部および内面の一部(ねじ部)が溶融変形してしまい、キャップシェルを商品として使用することができなかった(比較例5及び6)。
この際、シール材の供給に先立って、シール材形成位置にプラズマ表面処理工程を行い、シール材形成位置の濡れ張力を32mN/m以上にすることが重要な特徴である。プラズマ処理によれば、キャップ頂板部内面の限られた表面に効率よく、しかもキャップにダメージを与えることなく表面処理を施すことができる。これによりシール形成位置表面の濡れ性が改善され、スピンライニングの際又はアフタースピンの際にホットメルト組成物はシール形成位置表面に粘着しながら広がるため、シール形成位置からはみ出すことが有効に防止できる。
キャップシェル1の頂板部2の内面側には、頂板部2とスカート部3の境界部分に、環状傾斜面5が形成されていると共に、この環状傾斜面5よりも内側に環状突条6が形成されている。この環状突条6は、先端部分6aにおける径がキャップを適用する容器口部30の内径よりも小さく形成されている。
図に示す具体例においては、ホットメルト組成物から成るシール材20は、環状傾斜面5、環状突条6、及び環状傾斜面5と環状突条6の間に形成される平坦部7、により構成されるキャップ頂板部内面の環状部分(シール材形成位置)に形成されることから、かかるシール材形成位置にプラズマ表面処理が施される。
プラズマ表面処理は、シール材形成位置の濡れ張力が32mN/m以上、特に38〜60mN/mの範囲となる限り、真空プラズマ処理、減圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等、従来公知のプラズマ処理を使用することができるが、特に大気圧プラズマ処理を使用することが好ましい。大気圧プラズマ処理は定圧チャンバーの必要がないことから既存のラインに組み入れやすく、設備費等も他のプラズマ処理に比して有利である。
大気圧プラズマ処理は上記条件下で、上記ガス雰囲気下で放電することにより、プラズマジェットを電子的に励起させ、被処理材(シール材形成位置表面)と接触させることにより実施できる。
本発明の樹脂製キャップに用いるホットメルト組成物から成るシール材は、B型粘度計で測定した、180℃での粘度が500〜5000mPa・秒、特に500〜3000mPa・秒の範囲にある熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物から成るものであり、一般にホットメルト組成物として市販されているものの中から選択することができる。
ホットメルト組成物は、オレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂或いはスチレン系等の熱可塑性エラストマーに、粘度調整のためのワックスや可塑剤等が必要により配合されてなるものであり、本発明においては、ホットメルト組成物の中でも、B型粘度計における粘度が上記範囲にあり、且つライナー形成時にJIS A硬度が70乃至95の範囲になるホットメルト組成物を好適に使用することができる。また軟化点(R&B式)が70乃至110℃の範囲にあることが望ましい。
好適には、エチレン酢酸ビニル共重合体をベース樹脂とするホットメルト組成物を使用することができる。
本発明の樹脂製キャップに用いられるキャップシェルとしては、ポリプロピレンから成るものを使用することが望ましい。
シール材のはみ出しを防止するためには、キャップシェルのシール形成位置表面の濡れ張力が、シール材の濡れ張力よりも大きいことが望ましいが、耐熱性に優れていると共に成形時にフローマーク等が発生せず外観特性に優れたキャップシェルを成形可能なポリプロピレンは、シール材よりも濡れ張力が小さいことから、特にホットメルト組成物から成るシール材のはみ出しが顕著になる。しかしながら、本発明においては、プラズマ処理を施すことにより、シール材形成位置の濡れ張力を上述した範囲に調整することができることから、耐熱性などに優れたポリプロピレン製キャップシェルを用いることが特に本発明の趣旨に合致している。
尚、キャップシェル頂板部内面の形状は、図に示した具体例に限定されない。例えば、図に示した具体例では、環状突条6を形成することにより、シール材形成位置を区画していたが、スピンライニングによる遠心力によってシール材はキャップシェル頂板部内面の外周縁付近に形成されるので、環状突条は必ずしも形成しなくてもよい。
またキャップシェルの頂板部とスカート部の境界付近が環状傾斜面5として形成されることにより、シール材の量を低減して、シール材を冷却しやすくすることによってシール材の流動性を制御してはみ出しを有効に抑制できるが、本発明においてはプラズマ処理によってシール材形成位置の濡れ性を制御することによってシール材の流動性を制御できるので、必ずしも傾斜面にしなくてもよい。
更に図1に示すように、必須ではないが、環状傾斜面5の下方に、スカート部の内面からキャップ下方に突出する環状突起が8形成されていてもよく、これによりシール部のはみ出しを更に抑制できる。
本発明においては、まずキャップシェル頂板部内面のシール材形成位置に前述したプラズマ処理による表面処理工程に賦される。
次いで、プラズマ表面処理が施されたシール材形成位置に、上述したホットメルト組成物から成る溶融状態にあるシール材を、スピンライニングにより塗布供給するスピンライニング工程に賦される。この際キャップシェルを100〜600rpmの条件で回転させることが特に好適である。その後、必要により、キャップシェルを更に回転することにより、シール材は遠心力によって外側に広がりながら、表面が平滑化され、自然放冷されて固化することによりシール材が完成する。尚、図に示したように、シール材形成位置に環状傾斜面を形成した場合には、環状傾斜面に相当する箇所のシール材が容器口部の外側角部と圧着して密封性を確保可能なシール材が形成される。
内径38mmのポリプロピレン製キャップシェルの頂板部内面のシール材形成位置に、大気圧プラズマ発生装置キーエンス社製ぬれ性改善プラズマ照射器『ST-7000』を用い、1秒間プラズマを照射した。プラズマ照射後のシール材形成位置の濡れ張力は56mN/mであった。
次いで、キャップシェルを400rpmの速度で回転しながら、エチレン酢酸ビニル共重合体から成り、B型粘度計による粘度が560mPa・sであるホットメルト組成物を供給して、ホットメルト組成物のはみ出しについて、30個のキャップについて評価した。結果を表1に示す。
ホットメルト組成物の粘度を1150mPa・s(実施例2)、2100mPa・s(実施例3)、2950mPa・s(実施例4)とした以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト組成物のはみ出しについて評価した。結果を表1に示す。
ホットメルト組成物の粘度を4700mPa・s、キャップの回転数を600rpmとした以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト組成物のはみ出しについて評価した。結果を表1に示す。
プラズマ処理を行わない以外は、実施例1〜3と同様にして、ホットメルト組成物のはみ出しについて評価した。結果を表1に示す。
実施例1で用いたキャップシェルについて、プラズマ照射時間を変えて濡れ張力を測定すると共に、プラズマ照射後のキャップシェルにつき、実施例1で用いたホットメルト組成物を用いて、連続ライニング性を評価した。結果を表2に示す
連続ライニング性評価の条件は、以下の通りである。
キャップシェルを400rpmの速度で回転しながら、エチレン酢酸ビニル共重合体から成り、B型粘度計による粘度が560mPa・sであるホットメルト組成物を供給して、連続20個のキャップについて、ホットメルト組成物のはみ出しおよび欠けの有無を評価した。
プラズマ処理に代えてフレーム処理(キャップ内面をガスバーナーで0.16s/1回で表面処理を実施)を施した以外は、実施例6と同様にして連続ライニング性を測定した。結果を表2に示す。
実施例1と同様にして、粘度が560mPa・sであるホットメルト組成物を供給して、ホットメルト組成物の平滑度について、評価した。キャップシェルの回転速度を表3に示すように変化させて、形成されたシール材について平滑度を測定した。結果を表3に示す。
平滑度の測定方法は、以下の通りである。
キャップがビンと接触する位置をミツトヨ社製真円度・円筒形状測定機『ROUNDTEST RA-2200』を用いて軸方向の振れを6rpmの回転速度で測定し、振れ幅の最大値と最小値の差をシール材の平滑度とした。
また、密封性に優れていると共に、開栓トルクも小さく、特に螺子部を有するキャップとして好適に使用できる。
Claims (5)
- 頂板部及び該頂板部の周縁から垂下するスカート部から成るポリプロピレン製キャップシェルの頂板部内面の外周縁に、ホットメルト組成物から成る環状のシール材をスピンライニングにより形成するキャップの製造方法であって、
前記ホットメルト組成物のキャップシェル内面へのスピンライニング工程の前に、キャップシェル頂板部内面の少なくともシール材形成位置にプラズマ表面処理工程を設けることにより、該シール材形成位置の濡れ張力を32mN/m以上にすることを特徴とするキャップの製造方法。 - 前記ホットメルト組成物が、B型粘度計による180℃での粘度が500〜5000mPa・秒の範囲にある請求項1記載のキャップの製造方法。
- 前記ホットメルト組成物が、エチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とするホットメルト組成物である請求項1又は2記載のキャップの製造方法。
- 前記ホットメルト組成物が滑剤を含有する請求項1〜3の何れかに記載のキャップの製造方法。
- 前記スピンライニング工程が、キャップシェルを100〜600rpmの条件で回転させることにより行われる請求項1〜4の何れかに記載のキャップの製造方法。
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