以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転電機冷却用ポンプとしてのオイルポンプ1の模式図である。図2に示す電動機もしくは発電機として機能する回転電機3におけるロータ軸5内には、冷却用媒体通路としてのオイル通路7が形成されている。ロータ軸5は、オイルポンプ1における回転軸を含んでいる。すなわち、オイルポンプ1の回転軸は、回転電機3のロータ軸5を兼ねている。ここでの回転電機3は、例えば電動車両における駆動用の電動機であるモータとして利用される。
回転電機3は、大略円筒形状で軸方向両方の端部が開放しているハウジング11を備えている。ハウジング11の軸方向両端の開放部には、該開放部を閉塞するようにフロントカバー13とリアカバー15とをそれぞれ取り付けている。
フロントカバー13及びリアカバー15の中心部にはロータ軸支持孔13a及15aが貫通して形成され、このロータ軸支持孔13a及15aに、ロータ軸5が挿入された状態でベアリング17及び19を介して回転可能に支持されている。ベアリング17及び19に対して軸方向外側におけるロータ軸5とロータ軸支持孔13a及15aとの間には、シール材21及び23をそれぞれ介装している。
ロータ軸5の外周部には、ロータ軸5と一体的に回転するロータコア25を固定して設けている。ロータコア25は、円板状の電磁鋼鈑を軸方向に沿って多数積層して円筒状に形成したものであり、各電磁鋼鈑にはロータ軸5が挿入固定される取付孔が形成されている。このようなロータコア25には、図示していないが、軸方向に延在する永久磁石が円周方向の適宜位置に複数埋め込まれている。ロータ軸5とロータコア25とでロータを構成している。
一方、ハウジング11の内周面には、ロータコア25の外周面に対向するようにしてステータコア27を取り付けている。その際、ロータコア25の外周面とステータコア27の内周面との間には、エアギャップとなる環状の隙間29を形成している。ステータコア27もロータコア25と同様に、円板状の電磁鋼鈑を軸方向に沿って多数積層して円筒形状に形成したものである。このステータコア27は、図示していないが内周側に突出するティースを備えており、このティースにコイル31を巻き付けている。ステータコア27とコイル31とでステータを構成している。
ロータ軸5の軸心に設けてある前記したオイル通路7は、リアカバー15側の端部から軸方向に沿って延びる軸方向油路7aを備えている。軸方向油路7aの他方の端部はロータ軸5の軸方向ほぼ中央位置にあり、該他方の端部から径方向に沿って複数の径方向油路7bが形成される。径方向油路7bの外側の端部は、ロータ軸5の外周面に開口している。
一方、ロータコア25には、上記したロータ軸5の径方向油路7bに連通する径方向油路25aが径方向に沿って形成され、さらに径方向油路25aの外側端部に連通する軸方向油路25bが軸方向に沿って形成されている。そして、ロータコア25の軸方向油路25bの両端はロータ室33に開口している。ロータ室33は、ハウジング11とフロントカバー13及びリアカバー15とに囲まれている。
ハウジング11の下部には媒体収容部としてのオイルタンク35を設けてあり、オイルタンク35には冷却用媒体であるオイル37を収容している。オイルタンク35は、フロントカバー13及びリアカバー15の下部に設けてある連通孔13b及び15bを通してロータ室33に連通している。
したがって、オイルポンプ1からロータ軸5内のオイル通路7に供給されたオイルは、ロータコア25内の径方向油路25a及び軸方向油路25bを通って発熱部位を冷却した後、ロータ室33からオイルタンク35に溜められる。そして、オイルタンク35内のオイル37は、吸入通路39を通してオイルポンプ1に戻される。
次に、上記した回転電機3を冷却するためのオイルを吸入吐出するオイルポンプ1について、模式的な図1に基づき説明する。オイルポンプ1の具体的な構造については後で詳細に説明するが、ここではトロコイドポンプを採用しており、オイルを吸入吐出する第1ポート41及び第2ポート43を備えている。
第1ポート41には第1ポート通路45の一端を接続し、第1ポート通路45の他端は第1ポートタンク通路47の一端に接続する。第1ポートタンク通路47の他端は吸入通路39の一端に接続する。吸入通路39の他端はオイルタンク35に連通している。第1ポートタンク通路47には第1逆止弁49を配置する。第1逆止弁49は、第1ポートタンク通路47において、オイルタンク35から第1ポート41に向かうオイルの流れを許容する。上記第1ポートタンク通路47は第1通路を構成している。
第2ポート43には第2ポート通路51の一端を接続し、第2ポート通路51の他端は第2ポートロータ軸通路53の一端に接続する。第2ポートロータ軸通路53の他端は吐出通路55の一端に接続する。吐出通路55の他端はロータ軸5のオイル通路7に連通している。第2ポートロータ軸通路53には第2逆止弁57を配置する。第2逆止弁57は、第2ポートロータ軸通路53において、第2ポート43からオイル通路7に向かうオイルの流れを許容する。上記第2ポートロータ軸通路53は第2通路を構成している。
ここで、回転電機3のロータ軸5が一方向の回転として正回転したときには、第1ポート41に吸入負圧が発生して第1逆止弁49が開弁し、オイルタンク35から第1逆止弁49を経て第1ポート41に向かうオイルの流れが発生する。このとき、後述する第4逆止弁59には上記吸入負圧によって弁を閉じる方向の圧力が作用するので、オイル通路7から第4逆止弁59を経て第1ポート41へ向かうオイルの流れは発生しない。
さらに、ロータ軸5が正回転したときには、第2ポート43に正圧が発生して第2逆止弁57が開弁し、第2ポート43から第2逆止弁57を経てオイル通路7に向かうオイルの流れが発生する。このとき、後述する第3逆止弁61には上記正圧によって弁を閉じる方向の圧力が作用するので、第2ポート43から第3逆止弁61を経てオイルタンク35へ向かうオイルの流れは発生しない。
以上より、回転電機3のロータ軸5が正回転したときのオイルの流れは次のようになる。オイルタンク35のオイル37は、吸入通路39、第1逆止弁49を備える第1ポートタンク通路47、第1ポート通路45、第2ポート通路51、第2逆止弁57を備える第2ポートロータ軸通路53、吐出通路55を通ってロータ軸5のオイル通路7に供給される。オイル通路7に供給されたオイルは、図2に示すように、ロータコア25の径方向油路25a及び軸方向油路25bを通ってロータ室33に流出した後、オイルタンク35に戻る。その間、ロータコア25やステータコア27、コイル31などが冷却される。
また、第2ポート通路51と第2ポートロータ軸通路53とを接続する第2ポート接続部63には、第2ポートタンク通路65の一端を接続し、第2ポートタンク通路65の他端は吸入通路39の一端に接続する。第2ポートタンク通路65には、前述した第3逆止弁61を配置する。第3逆止弁61は、第2ポートタンク通路65において、オイルタンク35から第2ポート43に向かうオイルの流れを許容する。上記第2ポートタンク通路65は第3通路を構成している。
また、第1ポート通路45と第1ポートタンク通路47とを接続する第1ポート接続部67には、第1ポートロータ軸通路69の一端を接続し、第1ポートロータ軸通路69の他端は吐出通路55の一端に接続する。第1ポートロータ軸通路69には、前述した第4逆止弁59を配置する。第4逆止弁59は、第1ポートロータ軸通路69において、第1ポート41からオイル通路7に向かうオイルの流れを許容する。上記第1ポートロータ軸通路69は第4通路を構成している。
ここで、回転電機3のロータ軸5が前記した一方向とは逆の他方向の回転として逆回転したときには、正回転したときとは逆に、第2ポート43に吸入負圧が発生して第3逆止弁61が開弁する。その際、オイルタンク35から第3逆止弁61を経て第2ポート43に向かうオイルの流れが発生する。このとき、第2逆止弁57には上記吸入負圧によって弁を閉じる方向の圧力が作用するので、オイル通路7から第2逆止弁57を経て第2ポート43へ向かうオイルの流れは発生しない。
さらに、ロータ軸5が逆回転したときには、正回転したときとは逆に、第1ポート41に正圧が発生して第4逆止弁59が開弁し、第1ポート41から第4逆止弁59を経てオイル通路7に向かうオイルの流れが発生する。このとき、第1逆止弁49には上記正圧によって弁を閉じる方向の圧力が作用するので、第1ポート41から第1逆止弁49を経てオイルタンク35へ向かうオイルの流れは発生しない。
以上より、回転電機3のロータ軸5が逆回転したときのオイルの流れは次のようになる。オイルタンク35のオイル37は、吸入通路39、第3逆止弁61を備える第2ポートタンク通路65、第2ポート通路51、第1ポート通路45、第4逆止弁59を備える第1ポートロータ軸通路69を通ってロータ軸5のオイル通路7に供給される。オイル通路7に供給されたオイルは、図2に示すように、ロータコア25の径方向油路25a及び軸方向油路25bを通ってロータ室33に流出した後、オイルタンク35に戻る。その間、ロータコア25やステータコア27、コイル31などが冷却される。
このように、本実施形態では、回転電機3のロータ軸5が正逆いずれの方向に回転しても、第1、第2ポート41,43を含むポンプ部からロータ軸5のオイル通路7に冷却用のオイルを供給できる。その際、回転電機3のロータ軸5がオイルポンプ1の回転軸を兼用しているので、ロータ軸5が逆回転した場合であっても、回転電機3に連動する機械式のオイルポンプ1による冷却用のオイルの送給ができるようになる。この場合、回転電機3を駆動用のモータとして搭載する電動車両が、前進、後進でロータ軸5の回転方向が入れ替わる場合に対応できる。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る回転電機冷却用ポンプとしてのオイルポンプ1Aの模式図である。図1に示した第1の実施形態のオイルポンプ1において、第2ポートロータ軸通路53の第2ポート43と反対側の端部と、第1ポートロータ軸通路69の第1ポート41と反対側の端部とを接続部71にて接続している。
第2の実施形態のオイルポンプ1Aは、上記した図1の接続部71に、図3に示すような弁構造体73を、図1の第2逆止弁57及び第4逆止弁59に代えて設けている。その他の構成は、図1に示す第1の実施形態と同様である。弁構造体73は、第2逆止弁57に対応する第2ポート側弁部73aと、第4逆止弁59に対応する第1ポート側弁部73bとを有して、第2逆止弁57及び第4逆止弁59の機能を併せ持っている。
すなわち、弁構造体73は、回転電機3のロータ軸5が正回転したときに、第1ポート41に吸入負圧が発生して第1ポート側弁部73bが閉じ、第2ポート43に正圧が発生して第2ポート側弁部73aが開く。このとき、第1の実施形態と同様に、上記吸入負圧によって第1逆止弁49が開き、上記正圧によって第3逆止弁61が閉じる。これにより、オイルタンク35のオイル37は、開弁状態の第1逆止弁49を介して第1ポート41に向けて流れ、さらに第2ポート43から開弁状態の第2ポート側弁部73aを介してオイル通路7に向けて流れる。
また、弁構造体73は、回転電機3のロータ軸5が逆回転したときに、第2ポート43に吸入負圧が発生して第2ポート側弁部73aが閉じ、第1ポート41に正圧が発生して第1ポート側弁部73bが開く。このとき、第1の実施形態と同様に、上記吸入負圧によって第3逆止弁61が開き、上記正圧によって第1逆止弁49が閉じる、これにより、オイルタンク35のオイル37は、開弁状態の第3逆止弁61を介して第2ポート43に向けて流れ、さらに第1ポート41から開弁状態の第1ポート側弁部73bを介してオイル通路7に向けて流れる。
このように、本実施形態においても、回転電機3のロータ軸5が正逆いずれの方向に回転しても、第1、第2ポート41,43を含むポンプ部からロータ軸5のオイル通路7に冷却用のオイルを供給できる。その際、回転電機3のロータ軸5がオイルポンプ1の回転軸を兼用しているので、ロータ軸5が逆回転した場合であっても、回転電機3に連動する機械式のオイルポンプ1による冷却用のオイルの送給ができるようになる。
また、本実施形態では、図1の接続部71に、図1の第2逆止弁57及び第4逆止弁59の機能を併せ持つ弁構造体73が設けられている。つまり、弁構造体73は、図1の第2逆止弁57と第4逆止弁59とを統合したものである。これにより、本実施形態では、第2逆止弁57及び第4逆止弁59を備える第1の実施形態に比較して、構成部品が少なくて済み、オイルポンプ1Aを図1のオイルポンプ1に比較してより小型化することができる。なお、弁構造体73の具体的な構造については後で詳細に説明する。
次に、図1に示した第1の実施形態のオイルポンプ1の具体的な構造について詳細に説明する。
図4はオイルポンプ1の分解斜視図、図5は同外観図で、図2にて左右方向に延在するロータ軸5が図4、図5中では上下方向に延在する図となっている。図4、図5で省略している図2の回転電機3は、図4、図5中でロータ軸5の下部側に設けられる。
オイルポンプ1は、上記第1ポート41及び第2ポート43が形成された円板形状のポート部品75を備えている。オイルポンプ1は、さらにトロコイドポンプを構成するアウタロータ77及びインナロータ79、アウタロータ77が収容されるポンプボディ81、ポート部品75を間に挟んでポンプボディ81と反対側に位置する円板形状のカバー83、をそれぞれ備えている。アウタロータ77及びインナロータ79はポンプ部を構成している。
ポンプボディ81は、ポート部品75側の図4中で上部に凹部81aが形成され、凹部81aにアウタロータ77が収容固定される。このアウタロータ77の内側にインナロータ79が回転可能に配置される。アウタロータ77及びインナロータ79が凹部81aに収容された状態で、ポート部品75を、アウタロータ77及びインナロータ79を覆うようにポンプボディ81に重ね合わせ、さらにポート部品75のポンプボディ81と反対側にカバー83を重ね合わせる。
ポンプボディ81の凹部81aの中心には、ロータ軸挿入孔81bが形成され、このロータ軸挿入孔81bに、ロータ軸5の軸部5aよりも小径としたボディ挿入部5bが挿入される。ロータ軸5におけるボディ挿入部5bの先端側には、平板形状としたインナロータ挿入部5cを形成している。
一方、インナロータ79の中心にはインナロータ挿入部5cとほぼ同形状のロータ軸係合孔79aを形成し、図6に示すように、ロータ軸係合孔79aにインナロータ挿入部5cが挿入固定される。したがって、ロータ軸5の回転によりインナロータ79がアウタロータ77に対して回転し、オイルの吸引及び吐出が第1、第2ポート41,43を通してなされる。なお、図6で示されているインナロータ挿入部5cは、その平板形状部分の面と直交する方向から見た図であるので、外径がボディ挿入部5bと同等となっている。
ロータ軸5のインナロータ挿入部5cのさらに先端側には、インナロータ挿入部5cの平板形状部分の板厚とほぼ同等の外径の細径部5dを設けている。細径部5dは、図6に示すように、ポート部品75の中心に設けてある貫通孔75aに挿入される。細径部5dは、外径が貫通孔75aの内径よりも小さく、また軸方向長さが貫通孔75aの軸方向長さよりも少し短い。このため、細径部5dの周囲及び上部には、オイルが流入する空間85が、ポート部品75及びカバー83に囲まれた状態で形成される。
その際、ロータ軸5内のオイル通路7は、軸部5aからボディ挿入部5b、インナロータ挿入部5c及び細径部5dにまで連続して形成されており、細径部5dの先端に開口している。すなわち、オイル通路7はオイルが流入する空間85に連通している。また、この空間85の上部はカバー83によって密封され、空間85の下部のロータ軸5やインナロータ79との間は、環状のシール材87によって密封している。
上記した環状のシール材87は、図6に示すように、上部が開口する断面ほぼU字形状であって、内周面が上部ほど小径となるテーパ形状であり、ロータ軸5の細径部5dに嵌め込まれている。このシール材87は、テーパ形状となっている内周面が細径部5dの外周面に密着し、外周面がポート部品75の貫通孔75aの内周面に密着し、図6中の下端が、ロータ軸5のインナロータ挿入部5c及びインナロータ79の各上端面に密着している。
また、ポンプボディ81の凹部81aと反対側の下部には、シール用凹部81cが形成され、シール用凹部81cに、環状のシール材89を設けている。このシール材89も、図6に示すようにシール材87と同様に上部が開口する断面ほぼU字形状であって、内周面が上部ほど小径となるテーパ形状であり、ロータ軸5のボディ挿入部5bに嵌め込まれている。シール材89は、前記したシール材87に比較して内径及び外径共に大径であり、テーパ形状の内周面がボディ挿入部5bの外周面に密着し、外周面がシール用凹部81cの内周面に密着している。
ポート部品75は、その中心に位置する貫通孔75aの周囲四箇所に、逆止弁収容孔75b(75b1,75b2,75b3,75b4)が軸方向に沿って貫通して設けられている。そして、この四つの逆止弁収容孔75b1,75b2,75b3,75b4には、前記図1に示した第1〜第4逆止弁49,57,61,59をそれぞれ収容している。
第1〜第4逆止弁49,57,61,59は、いずれもボール91とばね93とを備えている。第1逆止弁49と第3逆止弁61は、図8に第3逆止弁61が示されているように、ボール91がポンプボディ81側に位置し、ばね93がカバー83側に位置する。一方、第2逆止弁57と第4逆止弁59は、図8に第2逆止弁57が示されているように、ボール91がカバー83側に位置し、ばね93がポンプボディ81側に位置する。
図8に示すように、図7の実線で示している部分の第2ポートタンク通路65は、第3逆止弁61のばね93を収容している位置の逆止弁収容孔75b3に連通している。また、第3逆止弁61のボール91は、図7の破線で示している部分の第2ポートタンク通路65を閉弁時に閉塞する。第2ポート43に吸入負圧が発生しているときには、第3逆止弁61のボール91がばね93に抗して図8中で上方に移動して第3逆止弁61が開弁し、第2ポートタンク通路65の図7中の実線で示す部分と破線で示す部分とが互いに連通する。
第3逆止弁61の開弁時に、第2ポートタンク通路65の図7の実線で示している部分と破線で示している部分とが互いに連通するように、第2ポートタンク通路65をポート部品75内に形成している。第3逆止弁61が開弁することで、オイルタンク35内のオイル37が、吸入負圧が発生している第2ポート43に吸引される。
また、図8に示すように、図7の実線で示している部分の第2ポートロータ軸通路53は、第2逆止弁57のボール91が位置する逆止弁収容孔75b2に開口して、第2逆止弁57の閉弁時にボール91により閉塞される。このため、第2ポート43に吸入負圧が発生したときには、第2逆止弁57のボール91が、第2ポートロータ軸通路53の図7の実線で示している部分を閉じた状態のままとする。
上記とは逆に、第2ポート43に正圧が発生したときには、第3逆止弁61のボール91が、図7の破線で示している部分の第2ポートタンク通路65を閉じるように作用して第3逆止弁61の閉弁状態を維持する。このとき、第2逆止弁57のボール91が、正圧を受けることで図8中の下方に向けてばね93に抗して移動して図7の実線で示している部分の第2ポートロータ軸通路53を開放し、第2ポートロータ軸通路53の図7の実線で示している部分と破線で示している部分とが互いに連通する。
第2逆止弁57の開弁時に、第2ポートロータ軸通路53の図7の実線で示している部分と破線で示している部分とが互いに連通するように、第2ポートロータ軸通路53をポート部品75内に形成している。第2逆止弁57が開弁することで、第2ポート43からロータ軸5のオイル通路7にオイルが供給される。
以上、図7及び、図7のVIII−VIII断面図である図8に基づいて、第3逆止弁61及び第2逆止弁57の作動について説明した。これら第3逆止弁61及び第2逆止弁57に対し図7中で左右対称位置にある第1逆止弁49及び第4逆止弁59は、上記第2ポート43に代わる第1ポート41に吸入負圧や正圧が発生したときに、第3逆止弁61及び第2逆止弁57と同様に作動する。
すなわち、第1ポート41に吸入負圧が発生したときには、第1逆止弁49のボール91がばね93に抗して移動して開弁する。その際、図7の破線で示している部分の第1ポートタンク通路47が開放されて、第1ポートタンク通路47の破線で示している部分と実線で示している部分とが互いに連通する。このとき、第4逆止弁59は、そのボール91が図7の実線で示している部分の第1ポートロータ軸通路69を閉塞したままであり、閉弁状態を維持する。
また、第1ポート41に正圧が発生したときには、第4逆止弁59のボール91がばね93に抗して移動して開弁する。その際、図7の実線で示している部分の第1ポートロータ軸通路69が開放されて、第1ポートロータ軸通路69の実線で示している部分と破線で示している部分とが互いに連通する。このとき、第1逆止弁49は、そのボール91が図7の破線で示している部分の第1ポートタンク通路47を閉塞したままであり、閉弁状態を維持する。
このような機能を有するポート部品75は、図9(b),(c)に示すように、第1ポート41、第2ポート43、中心の貫通孔75a、周囲四箇所の逆止弁収容孔75b1,75b2,75b3,75b4が、軸方向に貫通している。また、逆止弁収容孔75b2,75b3相互を連通する、実線で示す部分の第2ポートロータ軸通路53及び第2ポートタンク通路65は、図8に示すようにカバー83側に開口している。同様にして、逆止弁収容孔75b1,75b4相互を連通する、実線で示す部分の第1ポートタンク通路47及び第1ポートロータ軸通路69もカバー83側に開口している。
また、図9(b)において、破線で示す部分の第2ポートロータ軸通路53及び第2ポートタンク通路65、同破線で示す部分の第1ポートタンク通路47及び第1ポートロータ軸通路69は、ポート部品75の図9中(b)で紙面表側には開口せず、図9(c)のように図9(b)中の紙面裏側に開口している。さらに、図9(b)中の破線で示す吸入通路39及び吐出通路55も、ポート部品75の図9(b)中で紙面表側には開口せず、図9(c)のように図9(b)中の紙面裏側に開口している。すなわち、ポート部品75の図9(b)で紙面裏側から見た図は図9(c)のようになる。
このように、ポート部品75は、ロータ軸5の軸方向から貫通する孔や溝を備える構造であることから、ポート部品75の表裏いずれかの面から孔や溝を切削加工すればよく、また鋳造成形も中子を用いる必要がなく、製造が極めて容易である。
図9(a)のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図、D−D断面図を、図10(a)〜(d)にそれぞれ示す。図10(a)は、孔や溝が見える部分について、図9(a)の左側の表面に対応する図9(b)と同様である。一方、図10(d)は、孔や溝が見える部分について、図9(a)の右側の表面に対応する図9(c)と同様である。図11(a)は、図9(a)と同じ側から見たポート部品75の斜視図、図11(b)は、図9(c)と同じ側から見たポート部品75の斜視図である。
図10(b)では、図10(a)で見えている第2ポートロータ軸通路53及び第1ポートロータ軸通路69が見えなくなっている。つまり、第2ポートロータ軸通路53及び第1ポートロータ軸通路69は、図8や図11(a)でもわかるように、図10(a)で見えている部分の第2ポートタンク通路65及び第1ポートタンク通路47よりも図9(a)中で左側の表面からの深さが浅い。
図10(c)では、図10(d)で見えている吸入通路39、第2ポートタンク通路65及び第1ポートタンク通路47が見えなくなっている。つまり、吸入通路39、図10(d)で見えている部分の第2ポートタンク通路65及び第1ポートタンク通路47は、図11(a)でもわかるように、図10(d)で見えている吐出通路55や図10(d)で見えている部分の第2ポートロータ軸通路53、第1ポートロータ軸通路69よりも図9(a)中で右側の表面からの深さが浅い。
上記図4〜図11に示したオイルポンプ1の具体的な構造において、ロータ軸5が正回転及び逆回転したときのオイルの流れは次のようになる。
ロータ軸5が正回転し、第1ポート41に吸入負圧が発生すると、図2に示すオイルタンク35内のオイル37が吸入通路39から開弁状態の第1逆止弁49を有する第1ポートタンク通路47を通って第1ポート41に流入する。その際、第2ポート43に正圧が発生すると、上記第1ポート41から流入したオイルが第2ポート43から、開弁状態の第2逆止弁57を有する第2ポートロータ軸通路53及び吐出通路55を通ってロータ軸5のオイル通路7に供給される。
ロータ軸5が逆回転し、第2ポート43に吸入負圧が発生すると、図2に示すオイルタンク35内のオイル37が吸入通路39から開弁状態の第3逆止弁61を有する第2ポートタンク通路65を通って第2ポート43に流入する。その際、第1ポート41に正圧が発生すると、上記第2ポート43から流入したオイルが第1ポート41から、開弁状態の第4逆止弁59を有する第1ポートロータ軸通路69及び吐出通路55を通ってロータ軸5のオイル通路7に供給される。
次に、前記図3に示した第2の実施形態における弁構造体73の具体的な構造について図12を用いて説明する。
弁構造体73は、アウタ部材としてのアウタケース95と、アウタケース95内の移動空間95a内を図12中で左右方向に移動可能に収容されるインナ部材としてのインナケース97とを備えている。なお、アウタケース95とインナケース97との間は、オイルが漏れない程度の隙間が形成されている。アウタケース95は、図3に示す第1ポートロータ軸通路69に連通する第1ポート側通路95bと、第2ポートロータ軸通路53に連通する第2ポート側通路95cと、吐出通路55に連通する回転軸側通路95dとを備えている。
第1ポート側通路95bは、インナケース97の図12中で右側の移動方向一方側の端部に位置し、第2ポート側通路95cは、インナケース97の図12中で左側の移動方向他方側の端部に位置している。また、回転軸側通路95dは、インナケース97の移動方向中央に位置している。
インナケース97は、図12中で左右方向に対応する移動方向の長さが移動空間95aの同方向の長さよりも短い。そのため、図12のようにインナケース97が移動空間95a内の移動方向中央に位置しているときには、インナケース97と第1ポート側通路95bとの間に空隙が形成され、この空隙に第1弾性部材としての第1リリーフスプリング99を収容している。同様にして、インナケース97と第2ポート側通路95cとの間に空隙が形成され、この空隙に第2弾性部材としての第2リリーフスプリング101を収容している。
第1リリーフスプリング99と第2リリーフスプリング101は、弾性力が互いに同等であり、したがってインナケース97は、外力が作用しなければ図12に示すように移動空間95a内において移動方向中央に位置する。
インナケース97は、第1ポート側通路95bに対向する位置に、弁空間としての内部空間97aと第1リリーフスプリング99が収容された空隙とを連通する第1開口部97bが形成されている。同様にして、インナケース97は、第2ポート側通路95cに対向する位置に、内部空間97aと第2リリーフスプリング101が収容された空隙とを連通する第2開口部97cが形成されている。第1開口部97b及び第2開口部97cは、内部空間97aに対して通路断面積が小さくなっている。
そして、インナケース97の内部空間97aには、第1開口部97b側に位置する第1ボール103と、第2開口部97c側に位置する第2ボール105と、第1、第2ボール103,105相互間に位置する押圧スプリング107とを収容している。第1ボール103は第1開口部を封止可能な第1封止部材を、第2ボール105は第2開口部を封止可能な第2封止部材をそれぞれ構成し、押圧スプリング107は押圧部材を構成している。
押圧スプリング107が、その両側に位置する第1、第2ボール103,105を互いに離反する方向に押圧することで、第1、第2ボール103,105が第1、第2開口部97b,97cをそれぞれ閉塞する。押圧スプリング107の弾性力(ばね定数)は、第1、第2リリーフスプリング99,101よりも小さい。すなわち、第1、第2リリーフスプリング99,101は、押圧スプリング107よりも強い弾性力を備えている。また、インナケース97の回転軸側通路95dに対向する図12中で下壁には、回転軸側通路95dよりも移動方向の幅が充分大きい回転軸側開口部97dを形成している。
押圧スプリング107は、第1開口部97bを通しての第1ボール103に作用するオイルの圧力により、第1ボール103が第1開口部97bから離反移動して第1開口部97bを開放する際に押されて圧縮変形する。このとき、インナケース97は図12の位置からほとんど移動せず、第1開口部97bと回転軸側通路95dとが、回転軸側開口部97dを通して連通する。
同様にして、押圧スプリング107は、第2開口部97cを通しての第2ボール105に作用するオイルの圧力により、第2ボール105が第2開口部97cから離反移動して第2開口部97cを開放する際に押されて圧縮変形する。このとき、インナケース97は図12の位置からほとんど移動せず、第2開口部97cと回転軸側通路95dとが、回転軸側開口部97dを通して連通する。
また、インナケース97は、回転軸側開口部97dと反対側の上壁の移動方向中央にリリーフ用開口部97eを備えている。一方、アウタケース95の回転軸側通路95dと反対側の上壁には、第1リリーフ通路95e及び第2リリーフ通路95fをそれぞれ設けている。
第1リリーフ通路95eは、一端が第1ポート側通路95bに連通し、他端が、インナケース97が図12のように移動方向中央に位置しているときのリリーフ用開口部97eよりも第1ポート側通路95b側に位置してインナケース97の壁面に対向するようにして開口する。第2リリーフ通路95fは、一端が第2ポート側通路95cに連通し、他端が、インナケース97が図12のように移動方向中央に位置しているときのリリーフ用開口部97eよりも第2ポート側通路95c側に位置してインナケース97の壁面に対向するようにして開口する。
次に、弁構造体73の動作について図13、図14を用いて説明する。図13は弁構造体73に通常圧力が作用した状態を示し、図14は弁構造体73に通常圧力よりも高い圧力の過剰圧力が作用した状態を示している。
ロータ軸5が正回転しつつ通常圧力が発生しているときには、図13(a)に示すように、図3の第2ポート側弁部73aに対応する第2ボール105が、正圧を受けて押圧スプリング107を撓ませつつ第1ボール103に向けて接近移動する。これにより、アウタケース95の第2ポート側通路95cと回転軸側通路95dとが、インナケース97の第2開口部97c及び回転軸側開口部97dを通して連通する。その際、第2ポート43から吐出されるオイルが、第2ポートロータ軸通路53を経て第2ポート側通路95cに達し、さらにインナケース97内から吐出通路55を経てオイル通路7に向けて流れる。
ロータ軸5が逆回転しつつ通常圧力が発生しているときには、図13(b)に示すように、図3の第1ポート側弁部73bに対応する第1ボール103が、正圧を受けて押圧スプリング107を撓ませつつ第2ボール105に向けて接近移動する。これにより、アウタケース95の第1ポート側通路95bと回転軸側通路95dとが、インナケース97の第1開口部97b及び回転軸側開口部97dを通して連通する。その結果、第1ポート41から吐出されるオイルが、第1ポートロータ軸通路69を経て第1ポート側通路95bに達し、さらにインナケース97内から吐出通路55を経てオイル通路7に向けて流れる。
このように、本実施形態では、弁構造体73を、アウタケース95内のインナケース97内に、押圧スプリング107及び第1、第2ボール103,105を収容する構造としている。これにより、ロータ軸5の正回転時には第2ボール105が押圧スプリング107を撓ませつつ移動して第2開口部97cを開放し、逆回転時には第1ボール103が押圧スプリング107を撓ませつつ移動して第1開口部97bを開放する。その結果、ロータ軸5の正逆いずれの回転でも、弁構造体73によってロータ軸5のオイル通路7にオイルを供給できる。
また、ロータ軸5が正回転しつつ過剰圧力が発生したときには、図14(a)に示すように、第2ポートロータ軸通路53からの過剰圧力によって、インナケース97が、図13(a)に対して第1リリーフスプリング99を撓ませつつ第1ポート側通路95bに向かって移動する。このとき、インナケース97のリリーフ用開口部97eがアウタケース95の第1リリーフ通路95eに連通し、インナケース97の回転軸側開口部97dはアウタケース95の回転軸側通路95dに連通したままである。
したがって、上記過剰圧力が発生したときに、第2開口部97cからインナケース97内に入り込んだオイルの一部は、第1リリーフ通路95eから第1ポート側通路95b及び第1ポートロータ軸通路69を経て第1ポート41に向けて流れる。このとき、第2開口部97cからインナケース97内に入り込んだオイルの他の一部は、図13(a)の通常圧力発生時と同様に回転軸側開口部97d及び回転軸側通路95dを通って吐出通路55に流れる。つまり、過剰圧力発生時には、第2ポート43から吐出されるオイルの一部が、弁構造体73を経て吸入負圧が発生している第1ポート41に戻るようにして循環する。
一方、ロータ軸5が逆回転しつつ過剰圧力が発生したときには、図14(b)に示すように、第1ポートロータ軸通路69からの過剰圧力によって、インナケース97が、図13(b)に対して第2リリーフスプリング101を撓ませつつ第2ポート側通路95cに向かって移動する。このとき、インナケース97のリリーフ用開口部97eがアウタケース95の第2リリーフ通路95fに連通し、インナケース97の回転軸側開口部97dはアウタケース95の回転軸側通路95dに連通したままである。
したがって、上記過剰圧力が発生したときに、第1開口部97bからインナケース97内に入り込んだオイルの一部は、第2リリーフ通路95fから第2ポート側通路95c及び第2ポートロータ軸通路53を経て第2ポート43に向けて流れる。このとき、第1開口部97bからインナケース97内に入り込んだオイルの他の一部は、図13(b)の通常圧力発生時と同様に回転軸側開口部97d及び回転軸側通路95dを通って吐出通路55に流れる。つまり、過剰圧力発生時には、第1ポート41から吐出されるオイルの一部が、弁構造体73を経て吸入負圧が発生している第2ポート43に戻るようにして循環する。
このように、本実施形態では、弁構造体73が第1、第2リリーフ通路95e,95fを備えることで、ロータ軸5の正逆両方の回転時において過剰圧力が発生したときにオイルのリリーフ機能が発揮される。これにより、オイルの圧力が作用する部品各部を保護することができる。また、リリーフ機能が発揮されることで、吸入負圧の大きさも制限できるため、キャビテーションの発生を抑えて騒音を抑えることができ、上記部品保護と相まって信頼性のあるオイルポンプとすることができる。
図15〜図18は、図4に示した第1の実施形態の変形例となる第3の実施形態を示す。第3の実施形態は、図1に示した第1〜第4逆止弁49,57,61,59において、図4ではロータ軸5の軸方向に沿って配置したボール91及びばね93を、ロータ軸5と直角な方向に沿って配置している。すなわち、第3の実施形態のポート部品75Aは、ボール91及びばね93を収容する逆止弁収容孔75Ab(75Ab1,75Ab2,75Ab3,75Ab4)を、第1ポート通路45や第2ポート通路51など他の通路と平行に形成している。また、四つの逆止弁収容孔75Abは、カバー83側に開口していて、軸方向に貫通していない。
その他ポート部品75Aの他の部位の構造や、ポート部品75A以外のポンプボディ81などの構成は、第1の実施形態と基本的にほぼ同等であり、同等の構成要素には同一の符号を付してある。
この場合図15、図17において、逆止弁収容孔75Ab1におけるボール91側の端部に連通する第1ポートタンク通路47の破線で示す横通路47aが、逆止弁収容孔75Ab1と同軸上にロータ軸5と直角方向に延設されている。さらに、上記横通路47aから軸方向に延設される破線で示す縦通路47bも形成されている。横通路47a及び縦通路47bは、第1ポートタンク通路47の一部である。
同様にして、逆止弁収容孔75Ab3におけるボール91側の端部に連通する第2ポートタンク通路65の破線で示す横通路65aも、逆止弁収容孔75Ab3と同軸上に形成されている。さらに、上記横通路65aから軸方向に延設される破線で示す縦通路65bも形成されている。横通路65a及び縦通路65bは、第2ポートタンク通路65の一部である。
また、逆止弁収容孔75Ab2におけるボール91側の端部に連通する第2ポートロータ軸通路53の破線で示す横通路53a及び、逆止弁収容孔75Ab4におけるボール91側の端部に連通する第1ポートロータ軸通路69の破線で示す横通路69aも、逆止弁収容孔75Ab2及び75Ab4と同軸上にそれぞれ形成されている。さらに、逆止弁収容孔75Ab2,75Ab4の上記横通路53a,69aと反対側には、軸方向に延設される縦通路53b,69bもそれぞれ形成されている。
そして、第1、第2ポートタンク通路47,65及び第2、第1ポートロータ軸通路53,69のそれぞれの横通路47a,65a及び53a,69aは、ポート部品75Aの内部に形成されていて外部からは見えない状態となっている。
このような外部から見えない状態の通路孔は、ポート部品75Aを鋳造成形する際に中子を用いることで形成できる。あるいは、図18のように、ポート部品75Aの外周面から貫通孔109を切削加工した後、外周面に形成される開口部をウェルチプラグ111で塞ぐようにしてもよい。
上記図14〜図18に示した第3の実施形態は、四つの逆止弁収容孔75Abをロータ軸5に対し直角方向に延設している。このため、第1の実施形態に比較してポート部品75Aをより偏平に形成でき、ロータ軸5の軸方向寸法を短縮したい場合に有効である。逆に、第1の実施形態では、第3の実施形態に比較してポート部品75をより小径にできるので、ロータ軸5の径方向寸法を短縮したい場合に有効である。
図19は、第4の実施形態のポート部品75Bを示す。第4の実施形態は、第3の実施形態に対し、図17における第2、第4逆止弁57,59の二つのばね93を一つのばね113に統合した例である。この場合、ばね113及び、ばね113の両側に位置する二つのボール91を、弁空間となる一つの逆止弁収容孔75bhに収容して弁構造体を構成している。その他の構成は、第3の実施形態とほぼ同様である。
この場合、第1、第2ポートロータ軸通路69,53の横通路69a,53aが第1、第2開口部をそれぞれ構成する。また、横通路69a側のボール91が第1封止部材を、横通路53a側のボール91が第2封止部材を、それぞれ構成する。さらに、ばね113が弾性部材を構成する。第4の実施形態は、二つのボール91相互間に一つのばね113を配置する構成とすることで、第3の実施形態に比較して部品点数を削減できる。
図20は、第5の実施形態のポート部品75Cを示す。第5の実施形態は、図12に示したリリーフ機能を備える弁構造体73の構成を、図19の第4の実施形態に適用している。
図20のインナケース97Cは、図21にもその単体で示すように、円板形状のポート部品75Cの面に直交する方向の両側(ロータ軸5の軸方向両側に相当)が開口した大略直方体形状となっている。そして、このインナケース97C内に、第1、第2ボール103,105及び押圧スプリング107を収容する。インナケース97Cは、ポート部品75Cに形成した移動空間75Caに移動可能に収容し、インナケース97Cの移動方向両側の空隙に、第1リリーフスプリング99及び第2リリーフスプリング101をそれぞれ収容する。
インナケース97Cの第1、第2リリーフスプリング99,101にそれぞれ対向する壁部には、円形の貫通孔で構成される第1開口部97Cb、第2開口部97Ccを設けている。また、インナケース97Cの長手方向壁部の上端には、図12の回転軸側開口部97d、リリーフ用開口部97eにそれぞれ対応する切欠部97Cd,97Ceを設けている。吐出通路55に常時連通する切欠部97Cdは、インナケース97Cの長手方向に対応する幅寸法が、切欠部97Ceの同寸法に対して充分大きくなっている。
図12の第1、第2リリーフ通路95e,95fにそれぞれ対応する第1、第2リリーフ通路75Ce,75Cfは、ポート部品75Cに形成している。したがって、ポート部品75Cは、図12の弁構造体73におけるアウタケース95に代わるものとなってアウタ部材を構成する。
図22は、図20に示したポート部品75Cの平面図である。図23(a)は、図13(a)に対応しており、図22に対し、ロータ軸5が正回転しつつ通常圧力が発生している状態を示す。この場合、第1ポート41に発生する吸入負圧により第1逆止弁49が開弁し、第2ポート43に発生する正圧により第2ボール105が押されて押圧スプリング107を撓ませつつ移動する。これにより、第2開口部97Ccが開放される。
その際、オイルの流れは図23(a)の矢印で示すようになる。すなわち、オイルタンク35内のオイルが、吸入通路39、開弁状態の第1逆止弁49を備える第1ポートタンク通路47を経て第1ポート41に流入する。さらに、第2ポート43から吐出されたオイルが、第2ポートロータ軸通路53を経て移動空間75Ca内に流入する。そして、開放されている第2開口部97Ccを通ってインナケース97C内の弁空間としての内部空間97Caに流入し、インナケース97Cの切欠部97Cd及び吐出通路55を経てロータ軸5のオイル通路7に供給される。
図23(b)は、図13(b)に対応しており、図22に対し、ロータ軸5が逆回転しつつ通常圧力が発生している状態を示す。この場合、第2ポート43に発生する吸入負圧により第3逆止弁61が開弁し、第1ポート41に発生する正圧により第1ボール103が押されて押圧スプリング107を撓ませつつ移動する。これにより、第1開口部97Cbが開放される。
その際、オイルの流れは図23(b)の矢印で示すようになる。すなわち、オイルタンク35内のオイルが、吸入通路39、開弁状態の第3逆止弁61を備える第2ポートタンク通路65を経て第2ポート43に流入する。さらに、第1ポート41から吐出されたオイルが、第1ポートロータ軸通路69を経て移動空間75Ca内に流入する。そして、開放されている第1開口部97Cbを通ってインナケース97C内の弁空間としての内部空間97Caに流入し、インナケース97Cの切欠部97Cd及び吐出通路55を経てロータ軸5のオイル通路7に供給される。
図24(a)は、図14(a)に対応しており、ロータ軸5が正回転しつつ過剰圧力が発生している状態を示す。この場合、図14(a)と同様に、過剰圧力によってインナケース97Cが、図23(a)に対し、第1リリーフスプリング99を撓ませつつ移動する。このとき、インナケース97Cの切欠部97Ceが第1リリーフ通路75Ceに連通し、インナケース97の切欠部97Cdは吐出通路55に連通したままである。
したがって、上記過剰圧力が発生したときには、第2開口部97Ccを通してインナケース97C内に入り込んだオイルの一部は、図23(a)と同様に、切欠部97Cdを経て吐出通路55に流れる。さらに、第2開口部97Ccを通してインナケース97C内に入り込んだオイルの他の一部は、切欠部97Ce及び第1リリーフ通路75Ceを通り、第1ポートロータ軸通路69を経て第1ポート41に向けて流れる。つまり、過剰圧力発生時には、第2ポート43から吐出されるオイルの一部が、弁構造体を経て吸入負圧が発生している第1ポート41に戻るようにして循環する。
図24(b)は、図14(b)に対応しており、ロータ軸5が逆回転しつつ過剰圧力が発生している状態を示す。この場合、図24(a)と同様に、過剰圧力によってインナケース97Cが、図23(b)に対し、第2リリーフスプリング101を撓ませつつ移動する。このとき、インナケース97Cの切欠部97Ceが第2リリーフ通路75Cfに連通し、インナケース97の切欠部97Cdは吐出通路55に連通したままである。
したがって、上記過剰圧力が発生したときには、第1開口部97Cbを通してインナケース97C内に入り込んだオイルの一部は、図23(b)と同様に、切欠部97Cdを経て吐出通路55に流れる。さらに、第1開口部97Cbを通してインナケース97C内に入り込んだオイルの他の一部は、切欠部97Ce及び第2リリーフ通路75Cfを通り、第2ポートロータ軸通路53を経て第2ポート43に向けて流れる。つまり、過剰圧力発生時には、第1ポート41から吐出されるオイルの一部が、弁構造体を経て吸入負圧が発生している第2ポート43に戻るようにして循環する。
以上より、第5の実施形態のポート部品75Cにおいても、過剰圧力が発生したときには、第1、第2リリーフスプリング99,101のいずれかが撓みつつインナケース97Cが移動する。その際、インナケース97Cの切欠部97Ceが、第1、第2リリーフ通路75Ce,75Cfのいずれかに連通する。
したがって、本実施形態においても、ロータ軸5の正逆両方の回転時において過剰圧力が発生したときにオイルのリリーフ機能が発揮される。これにより、オイルの圧力が作用する部品各部を保護することができる。また、リリーフ機能が発揮されることで、吸入負圧の大きさも制限できるため、キャビテーションの発生を抑えて騒音を抑えることができ、上記部品保護と相まって信頼性のあるオイルポンプとすることができる。
また、第5の実施形態のポート部品75Cは、図12に示した第2の実施形態のポート部品75に比較して、インナケース97Cが直方体形状となってより単純化されており、部品点数の削減効果に加えて製造コスト低下も達成できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
例えば、上記した実施形態では、オイルポンプ1は、トロコイドポンプとしているが、回転電機3のロータ軸5に接続されて駆動力を得るタイプであれば、どのような形式でもよく、トロコイドポンプに限ることはない。また、図2のようにハウジング11の下部に位置して回転電機3の内部に一体的に設けているオイルタンク35に代えて、回転電機3の外部に単独のオイルタンクを設けてもよい。
また、上記した実施形態では、ボール91及びばね93を、第1の実施形態(図4、図7)ではロータ軸5と平行な方向に並べて配置しているが、ロータ軸5に対して傾斜する方向に並べて配置してもよい。さらに、第3の実施形態(図15、図17)では、ボール91及びばね93を、ロータ軸5の径方向と平行な方向に並べて配置しているが、径方向に対して傾斜する方向に並べて配置してもよい。
さらに、上記したボール91及びばね93を、第1の実施形態のようにロータ軸5の軸方向に沿って並べて配置したものと、第3の実施形態のようにロータ軸5の径方向に沿って並べて配置したものとを混在させてもよい。