JP2016090229A - 光学特性測定用被検体及び光学特性測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、車のヘッドライト周囲に配置されリング状に発光させたり、蛍光灯及び電球などの照明器具を被覆して発光態様を均一化させたり、スマートフォンなどに備える液晶表示装置の背面に面状発光体(バックライト導光板)として配置され液晶表示装置を均一に照射するなど、光の拡散、伝播を補助する目的で利用されている。
このような特徴を有する樹脂の光学特性として、例えば、光の透過率を測定するには、樹脂材料を所定の形状に成形した被検体を作製し、その被検体の端部より入射した入射光が樹脂材料内を伝播して出射したときの減衰率を測る必要があり、また、特定波長光の吸収率を測定するためには、被検体の端部より入射した入射光が材料内を伝播して出射したときの色差などを測定する必要がある。
そこで、被検体の全長を所望する長さとすることも考えられるが、その長さが、例えば、直線距離にして1から2メートル程度に及ぶときには、被検体の取り扱いが問題となるうえ、このような被検体を成形する金型も作製困難となり、ひいては、光学特性の測定自体が困難になる。
本実施形態の光学特性測定用被検体1は、所定の樹脂材料の光学特性を測定するための樹脂製の被検体であり、図1に示すように、光の入射する入射部10と、入射した光が出射する出射部20と、入射部10から入射した光を出射部20まで導く導光部30と、を備えている。
樹脂材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、シクロポリオレフィン、及び塩化ビニール樹脂などの様々な合成樹脂を用いることができ、光が透過可能な程度の透光性を有するものであればその材料は特に限定されるものではない。
入射部10から導光部30の中心に至るまでにはゲート40が設けられている。射出成形時に、このゲート40を介して溶融した樹脂材料が金型内に充填され、光学特性測定用被検体1が成形されることになる。
光路301は、渦巻き状に形成され、光路始端面となる入射部10から終端部50まで曲率が連続して変化するように構成されている。
このような光路301の始点となる入射部10の曲率半径R0(外側半径)は40mm以上、好ましくは53mm以上、光路301間の隙間Sは5〜10mm、好ましくは6mmである。
また、光路301の光路幅W0は5〜15mm、好ましくは10mm、光路301の高さh0は1〜5mmが、好ましくは2.5mmである。
このように光路301を渦巻き状に形成することにより、光路を直線形状にするよりも光学特性測定用被検体1をコンパクトに形成することができる。
図2は、光路301内を伝播する光Lの特性を示す図であり、θiは入射角、θcは臨界角を示している。
光Lは、伝播速度のそれぞれ異なる物質間(この場合では、樹脂と空気層)の境界面において、入射角θiが臨界角θcよりも大きいときには全反射し、入射角θiが臨界角θcよりも小さいときには所定の出射角をもって境界面から出射することが知られている。
例えば、樹脂材料がポリカーボネートの場合では、ポリカーボネートから空気への臨界角θcは約39.1°であることから、入射角θi≧39.1°では全反射し、入射角θi<39.1°ではポリカーボネートから空気へ出射することになる。
入射部10からの入射光を、その減衰を極力抑えながら出射部20へ導くためには、境界面において光が全反射を繰り返しながら伝播する必要があり、そのためには、入射角θiが臨界角θcよりも常に大きくなるように光路301を形成しなければならない。
ところが、光路301は渦巻き状に形成されていることから、図2(b)に示すように、曲率半径が小さいと、入射角θiが臨界角θcよりも小さくなることがある。このようなときには、光Lは全反射することなく、所定の出射角をもって光路301外に出射されることから、十分な光量の光Lを出射部20へ導くことができなくなる。
また、このとき、曲率半径のみならず光路幅W0も光を減衰させる要因となり、光路幅W0が所定値以上大きいと、光Lの伝播角が広がることから、図2(b)に示すように、境界面において入射角θiが臨界角θcよりも小さくなることがある。
そこで、本発明の光学特性測定用被検体1は、光路301を渦巻き状に形成しながらも、上記のような値に曲率半径R0及び光路幅W0を規定することにより、入射部10からの入射光が全反射を繰り返しながら出射部20へ伝播するように形成されている。また、始点となる入射部10の曲率半径のみを規定したのは、入射部10から先では光が進むにつれて曲率半径が連続して大きくなり、それは全反射を促進する方向に作用するため、曲率半径の最も小さい部位に相当する入射部10の曲率半径のみを規定すれば必要にして十分だからである。
このように、入射した光の大部分を全反射させ、十分な光量の光を出射部20へ導くためには、入射部10の曲率半径R0は以下の式1により求めた値よりも大きくとることが必要である。
このような構成を実現させるために、裏面1bに反射子20aを備えている。反射子20aは、本実施形態では、裏面1bから外方に向けて凸設形成されており、図3に示す例では、複数の三角柱をその長手方向を光路長方向に直交させるように並べて配置してある。
このような構成により、光路301内を伝播する光Lが、図3(c)に示すように、三角柱の傾斜面で反射され、裏面1b側から表面1a側に向けて出射されることになる。
このような三角柱タイプの反射子20aは、幅W1は4mm、高さh1は0.5mm、ピッチP1は0.5mm、傾斜角α1は45°、配置数は10が好ましい。
幅W1以外の縮尺を維持したまま細い三角柱とすることも可能であり、その場合、配置数を増加して光路長方向の長さを維持する。光路長方向の反射子領域の長さT1はピッチP1と配置数の積で決まる(T1=P1×配置数)。配置数は最低2個必要であり、5個以上が好ましい。なお、反射子の面積(W1×T1)は、入射光の減衰を考慮した場合、小さいほど好ましいが、一方で、出射光を受光するカメラ類・輝度計類・照度計類(以下、カメラと略す)の受光装置の測定径より大きいことが好ましい。
傾斜角α1は、光Lの出射方向に影響を及ぼす因子であり、カメラなどの受光装置の位置に応じて適宜変更可能である。本実施形態では、カメラを表面1aに対して垂直(鉛直)方向に配置することから(図8参照)、傾斜角α1は45°が好ましい。これにより、出射光の多くを表面1aに対して垂直方向に向けることができる。
また、配置数は光量の増減に影響を及ぼす因子であり、出射部20の数や間隔等に応じて適宜変更可能である。
本実施形態では、光路301上に8つの反射子201a〜208aが設けられ、これに応じて光学特性測定用被検体1は8つの出射部201〜208を備えていることになる。
このような出射部20(反射子20a)の数は、特に限定されるものではなく適宜選択可能であるものの、その配置に関しては一定の法則性を備えていることが好ましい。
例えば、本実施形態では、図1(a)に示すように、各出射部201〜208が正面視において、一の直線k上に位置するように配置されている。
このような配置により、各出射部20からの出射光をカメラなどの受光装置によって受光する際に、受光装置に備える受光素子、レンズ及び受光装置自体などを直線kに沿って走査(スキャン)させれば足りることから、走査時間が短縮され、測定の高速化が図られる。
また、各反射子20aは、それぞれ異なる形状とすることもできるが、同一の形状とすることが好ましい、これは、形状が異なると、出射光の強度も変化することから、光路長が光学特性(例えば、減衰率、色差など)に及ぼす影響を確認するためには、その他の影響を極力排除することが好ましいからである。
そこで、光路301は、以下に示す特徴的な断面形状を有している。
光路301の断面であって光路長方向に直交する断面の形状を、図5(b)の(i)に示すような矩形状に形成した場合、表面1a及び裏面1bに対して平行に進む光Lは、光路301が曲率を有していることから、図5(b)に示すように、光路幅W0方向の境界面(両側面)で反射しながら光路301内を伝播するものの、光路高さh0方向の境界面、すなわち、表面1a及び裏面1bに入射することはない。つまり、断面形状を矩形状とすると、このような表面1a及び裏面1bに対して平行に進む光Lが裏面1bに設けられた反射子20aに向かって積極的に進むことはない。
一方、本実施形態では、光路長方向に直交する断面の形状を、図5(a)の(i)に示すような台形状に形成してある。このようにすると、表面1a及び裏面1bに対して平行に進む光Lであっても、台形の斜辺に入射したときには、斜辺の傾斜角α2に従って伝播方向が変更され、図5(a)に示すように、光路高さh0方向に伝播可能な振れ角を得ることとなる。これにより、表面1a及び裏面1bに対して平行に進む光Lを、裏面1bに設けられた反射子20aに積極的に向かわせることができる。
このような伝播方向の制御に必要な傾斜角α2は、2°〜30°であり、好ましくは、4°〜10°である。
このような逃がし用出射部200を備えることにより、入射部10から入射される光のうちで、光路高さh0方向の振れ角を有する光が積極的に光路301外に出射され、方向性の揃った光Lが光路301内を伝播することとなる。これにより、外乱因子が抑制され、測定の精度を向上させることができる。
なお、逃がし用反射子200aは、他の反射子20aと同一の形状することもできるが、三角柱の配置数を他の反射子20aよりも多くするなどして、光路高さh0方向の振れ角を有する光を積極的に光路301外に出射させる形状を採用することが好ましい。
例えば、図6に示すような半円柱タイプの反射子20aを採用することもでき、図7に示すような半球状タイプの反射子20aを採用することもできる。
いずれのタイプでも、幅W2は4mm、高さh2は73μm、ピッチP2は352μmが好ましい。配置数は、図6(a)に示す例では14が好ましく、図6(b)に示すタイプでは10が好ましい。また、隙間S2は0.5mmが好ましい。
幅W2以外の縮尺を維持したまま細い半円柱とすることも可能であり、その場合、配置数を増加して光路長方向の長さを維持する。高さh2とピッチP2は概ね1:5とすることが好ましい。
このような半円柱タイプの反射子20aの中では、隙間を空けて配置する半円柱Bタイプよりも、半円柱を隙間なく配置する半円柱Aタイプの方が、表面1aから出射する光の量が多くなる傾向にある(図12参照)。
また、このような半円柱タイプの反射子20aと、三角柱タイプの反射子20aとを比べると、表面1aから出射する光の量に大きな差はない(図12参照)。
長さT3×幅W3以外の縮尺を維持したまま半球を縮小することも可能であり、その場合、配置数を増加して長さT3×幅W3を維持する。高さh3と直径Dは概ね1:5とすることが好ましい。
このような半球状タイプの反射子20aは、三角柱タイプ及び半円柱タイプの反射子20aよりも、表面1aから出射する光の量が少なくなる傾向にある(図12参照)。
以上のように構成された光学特性測定用被検体1を用いて、当該被検体を構成する合成樹脂の光学特性を測定する方法について説明する。
光学特性測定用被検体1を所定の設置台300の上に載置する。このとき、裏面1b側が設置台300に面するように載置する。なお、設置台300は、黒などの光を吸収しやすい色彩を有することが好ましい。
続いて、図1(a)に示す入射部10の近傍に所定の波長域を有する光源を配置するとともに、光源からの光を入射部10に向けて照射する。
光源からの光は、光路始端面となる入射部10から導光部30内に入射され、光路301に沿って全反射を繰り返しながら、終端部50に向かって伝播する。
ここで、反射子201a方向に向かう光が、45°の傾斜面に反射して、表面1aに対して垂直方向に向けて出射される。
出射部201から出射されずにそのまま通過した光は、出射分の光量が相対的に減少するものの次の出射部202に到達する。ここでも、同様に、反射子202a方向に向かう光が、傾斜面に反射して、表面1aに対して垂直方向に向けて出射される。
以後、それぞれの出射部203〜208においても、上記の出射が繰り返されることになり、出射を免れた光が終端部50から出射されることになる。
一方、各出射部201〜208から出射された光は、表面1aに対して鉛直方向を受光面とするカメラ100により受光される。
各出射部201〜208は、直線k上に配置されていることから、例えば、カメラ100を直線kに沿って移動させることで、各出射部201〜208から出射された光の強度及び波長分布などの光学特性を測定することができる。
そして、光源の強度及び波長分布と、各出射部201〜208から出射された光の強度及び波長分布とを比較(例えば、比を算出)することで、当該被検体を構成する合成樹脂の光学特性(例えば、減衰率、特定波長の吸収率)を求めることができる。
このような光学特性を一の合成樹脂を基準として複数種類の合成樹脂について求めることで、被検体を同一形状に成形することを前提として、複数の合成樹脂同士の特性が相対的に比較可能となる。
また、本実施形態では、光路長方向に直交する断面の形状を台形形状としたが、光路幅W0方向の少なくともいずれか一方の側面に傾斜角α2を有すれば足りることから、断面の形状は台形形状でなくてもよい。
また、本実施形態では逃がし用出射部200を設けてあるが、これに代えて又はこれに加えて、光源から入射部10までの間に偏光板を設けることもできる。これにより、方向性の揃った光を入射部10に入射させることができる。
また、本発明の光学特性測定用被検体は、樹脂材料の射出成形時における流動特性を評価するためのスパイラルフロー試験の成形品として利用することもできる。例えば、一定の成形条件(樹脂温度、射出圧力など)で成形したときの成形品において、入射部10から終端部50までの長さ(光路長)が長いほど樹脂の流動性が高いなどの評価を行うことができる。
また、上記スパイラルフロー試験によって成形された被検体の終端部50については、入射光と直交する方向の断面を、平面状に作製し、入射光と同軸上にカメラを設置することで、被検体を通過した光を測定することも可能である。
例えば、図10は、出射部(反射子)を本実施形態のように間欠的に設けた例と、光路長に亘って連続的に設けた例において、光路長と出射部からの出射光の強度との関係を示すグラフであり、(a)は光路長と相対輝度との関係を示すグラフ、(b)は光路長と光路断面を通過する光エネルギーとの関係を示すグラフである。
これより、出射部(反射子)を光路長に亘って連続的に設けた例では、ある一定の光路長を境に光の強度(輝度)が極端に低下するものの、間欠的に設けた例では、出射部からのみ光が出射されることから、光の強度(輝度)が極端に低下することなく所定の光路長ごとに設けられた出射部ごとに徐々に低下することが分かる。また、間欠的に設けた例では、出射部以外からの出射光が確認できないことが分かる。
また、図11(b)は、光路断面形状の違いが輝度に及ぼす影響を示すグラフであり、これを見ると、傾斜角α2のない断面形状よりも、傾斜角α2のある断面形状(特に傾斜角α2=6°,10°)の方が出射部からの輝度が高いことから、傾斜角α2が反射子20aに向かう光量の増加に寄与していることが分かる。
これらを見ると、三角柱タイプの反射子は、カメラ100の位置する90°方向への出射光強度に最も優れているといえる。
10 入射部
20 出射部
30 導光部
301 光路
20a 反射子
100 カメラ
300 設置台
Claims (2)
- 光の入射する入射部と、
入射した光が出射する出射部と、
前記入射部から入射した光を前記出射部まで導く導光部と、を備え、
前記導光部は、入射した光が全反射する曲率の光路を有する
ことを特徴とする光学特性測定用被検体。 - 樹脂材料により形成された被検体に光を入射させる工程と、
前記被検体内を伝播して出射された光を測定する工程と、を有し、
前記被検体は、
光の入射する入射部と、
入射した光が出射する出射部と、
前記入射部から入射した光を前記出射部まで導く導光部と、を備え、
前記導光部は、入射した光が全反射する曲率の光路を有する
ことを特徴とする光学特性測定方法。
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2014
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