JP2016086787A - パーキンソン病の診断 - Google Patents

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Abstract

【課題】常染色体優性遺伝性パーキンソン病の診断手段の提供。
【解決手段】常染色体優性遺伝性パーキンソン病を診断する目的で、生体試料のCHCHD2中の突然変異を検出する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、常染色体優性遺伝性パーキンソン病の診断法に関する。
パーキンソン病(PD[MIM 168600])は、アルツハイマー病に次いで多い神経変性疾患であり、黒質のドーパミン作動性ニューロンの死に起因する。PD症状は、主に、安静時振戦、筋固縮、動作緩慢、及び姿勢反射障害を包含する運動障害にある。PD症例の多くは孤発性であって遺伝性ではなく、実際、PD患者の11%のみが1又は複数のPDと診断される第一度近親者を持つとされる(非特許文献1)。それでも、希少な家族性症例における原因遺伝子の同定は、PD病因に対して新たな光明を投じる可能性がある。単一遺伝子変異型の神経変性疾患の多くは常染色体優性であるが、これまで常染色体優性型の家族性PDに関しては、わずか6つの遺伝子が報告されているにすぎない(非特許文献2〜4)。
Mov. Disord. 2010; 25: 2587-2594 Mov. Disord. 2013; 28: 14-23 Am. J. Hum. Genet. 2008; 82:822-833 Hum. Mol. Genet. 2014; 23: 1794-1801
しかしながら、遺伝性PDの検出方法を提供することは、PDの発症前診断手段を提供するだけでなく、PDの発症原因究明の新たな材料となり得る。
従って、本発明の課題は、新たな遺伝性パーキンソン病の診断手段を提供することにある。
そこで本発明者らは、PDを有する大規模な日本人家系8名の罹患個体及び5名の非罹患個体について次世代シーケンシング技術を用いて遺伝学的研究を行った結果、CHCHD2中の突然変異と常染色体優性遺伝性PDとの間に相関性があり、当該CHCHD2中の突然変異が遺伝性PDの原因遺伝子であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔4〕を提供するものである。
〔1〕常染色体優性遺伝性パーキンソン病を診断する目的で、生体試料のCHCHD2中の突然変異を検出する方法。
〔2〕CHCHD2中の突然変異が、c.182C>T(p.Thr 61 Ile)、c.434G>A(p.Arg 145 Gln)又はc.300+5G>Aである〔1〕記載の検出方法。
〔3〕CHCHD2中の突然変異検出用試薬を含有する常染色体優性遺伝性パーキンソン病診断薬。
〔4〕CHCHD2中の突然変異が、CHCHD2中のc.182C>T(p.Thr 61 Ile)c.434G>A(p.Arg 145 Gln)又はc.300+5G>Aである〔3〕記載の診断薬。
遺伝子を含有する生体試料のCHCHD2中の突然変異、c.182C>T、c.434G>A又はc.300+5G>Aを検出すれば、常染色体優性遺伝性(AD)PDが診断できる。CHCHD2はミトコンドリアに局在することから、本発明により、新たなパーキンソン病治療薬開発の可能性が生じた。また、ADPDの発症前診断が可能となる。
CHCHD2突然変異を有する家系図を示す。塗りつぶされた記号、罹患個体;塗りつぶしていない記号、非罹患個体;塗りつぶしていない記号内の数字、罹患していない子の数;M、異型接合性CHCHD2突然変異;及びW、野生型。家系Cにおいて4分の1が塗りつぶされた記号は、本態性振戦 (ET) に罹患した個体を示す。家系Aにおけるアスタリスクは、次世代シーケンシングにより解析された被験者を指す。 同定されたCHCHD2突然変異の配列電気泳動図を示す。 (C)ゲノムCHCHD2の遺伝子座及びCHCHD2構造の略図を示す。同定されたCHCHD2突然変異のゲノム位置が上部パネルに示される。突然変異のアミノ酸位置及び様々な種との配列アラインメントが下部パネルに示される。NCBI参照配列アクセッション番号は以下の通りである:ヒト(H. sapiens), NP_057223.1;チンパンジー(P. troglodytes),XP_003318501.1;ハツカネズミ(M. musculus),NP_077128.2;ドブネズミ(R. norvegicus),NP_001015019.1;ニワトリ(G. gallus),NP_001006218.1;ゼブラフィッシュ(D. rerio),NP_957061.1;キイロショウジョウバエ(D. melanogaster),NP_573196.1;及び線虫(C. elegans),NP_497826.1。 CHCHD2 c.300+5G>Aのスプライシングアッセイを示す。pcDNA−CHCHD2−c.300+5G>Aは、SH−SY5Y細胞においてエクソン2スキッピングを誘導するが、野生型(WT)、c.182C>T、又はc.434G>Aはこれを誘導しない。エクソン2含有バンド及びエクソン2除外バンド(*)の間の中間の移動度を有する弱いバンドに留意されたい。 CHCHD2 c.300+5G>Aのスプライシングアッセイを示す。pSPL3−CHCHD2−エクソン2−c.300+5G>Aは、エクソン2を含まない転写産物、及び上流の隠れた5’スプライス部位(矢印)の活性化を介して部分的なエクソン2を包含する転写産物を生じる。 CHCHD2エクソン2WT及びc.300+5G>A突然変異体5’スプライス部位のU1 snRNPへの結合を示す。この結合は、HeLa核抽出物(3μg、6μg及び12μg)又は精製したU1 snRNP(0.28μg、0.55μg、及び1.1μg)を増量させて測定した。5’スプライス部位プローブのU1 snRNPへの結合は、HeLa核抽出物によって顕著に損なわれたが、精製したU1 snRNPではわずかに損なわれたにすぎなかった。 CHCHD2はミトコンドリアに局在することを示す。(A)SK−N−SH細胞の細胞成分分画。チューブリン、細胞質(C)マーカー;アセチルヒストンH3、核(N)マーカー;及びNDUFA9、ミトコンドリア(M)マーカー。(B)HeLa細胞におけるCHCHD2−3xFLAGのミトコンドリア局在を示す免疫細胞化学。過剰発現された野生型(WT)、p.Thr 61 Ile、及びp.Arg 145 GlnのCHCHD2はTom20と共局在したのに対し、ΔMTSとは共局在しなかった。(C)CHCHD2−3xFLAG発現HeLa細胞におけるミトコンドリアの免疫電子顕微鏡法。(D)SK−N−SH細胞由来のミトコンドリアに富む画分をトリプシンと共にインキュベートした。ウェスタンブロット解析のため、外膜(OM)(Tom20)、内膜(IM)(OPA1)、及びマトリクス(Hsp60)に対して適切なマーカーを使用した。
本発明においては、遺伝子を含む生体試料のCHCHD2中の突然変異を検出することにより、ADPDが診断できる。
生体試料としては、遺伝子を含む試料であればよく、例えば、だ液、血液、皮膚、毛髪等が挙げられる。
CHCHD2(コイルド−コイル−ヘリックス−コイルド−コイル−ヘリックスドメイン2)は、ミトコンドリアに局在するので、細胞中のミトコンドリア画分を使用するのが好ましい。
CHCHD2中の突然変異としては、c.182C>T(p.Thr 61 Ile)、c.434G>A(p.Arg 145 Gln)及びc.300+5G>Aから選ばれる変異が挙げられる。CHCHD2のゲノムDNAの配列を配列番号1に示す。配列番号1中のCDSは(82)..(131)、(2020)..(2269)、(3484)..(3628)、(4634)..(4644)である。
CHCHD2中の突然変異の検出手段としては、PCR法、サンガー法、タックマン法、次世代シーケンシング等が挙げられる。また、CHCHD2中の突然変異には、Thr 61 Ile、Arg 145 Glnが含まれるので、突然変異の発現産物であるポリペプチドの検出によっても行うことができる。当該変異ポリペプチドの検出方法としては、免疫学的測定法、アミノ酸シークエンス法、質量分析法等が挙げられる。
前記突然変異の検出には、前記変異箇所を含むプライマー、プローブが用いられる。そのようなプライマー又はプローブとしては、前記変異箇所を含む10〜100の塩基からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
前記突然変異ポリペプチドの検出には、前記変異箇所を特異的に認識する抗体が用いられる。
前記突然変異のより好ましい検出手段としては、RT−PCR法、アレル特異的PCR法等のPCR法、ICAN法等の各種遺伝子増幅法を用いて得られた増幅産物中で前記突然変異の存在を検出することにより行う方法が挙げられる。このような増幅産物中の検出は、直接塩基配列を決定する方法(シーケンス法)に加えて、例えばPCR−SSCP法、PCR−CFLP法、PCR−PHFA法等で行うこともできる。また、ハイブリダイゼーション反応を利用した、例えば、タックマン法(Taqman PCR)、侵入法(Invader method)、RCA法、及びマイクロアレイ(DNAチップ)法等のスニップタイピングで使用される各種方法を用いて、前記突然変異を含むヌクレオチドの存在を検出することもできる。
このような検出方法に使用する本発明の診断薬は、前記突然変異を測定するための具体的な方法・手段に応じて、適当な構成をとることができる。該試薬は、例えば、前記突然変異を含む遺伝子増幅用プライマー及びハイブリダイゼーション用のプローブを含むことができる。これらのプライマー又はプローブは、適当な長さ、例えば、10〜100個の連続した塩基配列が好ましい。
前記変異ペプチドの存在は、例えば、前記抗体を用いたEIA及びELISA等の免疫学的特異反応を利用する方法、エドマン法を用いた気相シークエンサー等ペプチドのアミノ酸配列分析法、更には、MALDI−TOF/MS及びESI Q−TOF/MS法等に代表される質量分析によって検出することができる。
これらの診断薬に含まれる、各種のプライマー、プローブ、又は抗体は、当業者に公知の任意の放射性物質、蛍光物質、色素等の適当な標識物質によって標識されていても良い。更に、診断薬には、その構成・使用目的などに応じて、当業者に公知の他の要素又は成分、例えば、各種試薬、酵素、緩衝液、反応プレート(容器)、プロトコール(使用説明書)等が含まれる。
CDHCD2中の突然変異を検出すれば、ADPDが早期に診断できる。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
実施例1
A.方法
(1)被験者及び突然変異スクリーニング
本研究は、順天堂大学医学部の倫理委員会によって承認された。患者及び対照被験者を含む本研究における全ての参加者は日本人であり、順天堂大学DNAバンクから選択された。全員にインフォームドコンセントを行った。患者は全て、神経内科専門医によって英国PD Society Brain Bank臨床診断基準に従いPDと診断された。全ての対照被験者は、神経内科専門医によって神経疾患ではないことが確認された。我々は、少なくとも連続する二世代の内に罹患した家族を有するADPD患者を選択した。
家系Aの8名の罹患個体及び5名の非罹患個体からDNA試料を採取し(図1A)、既知のPD原因遺伝子突然変異を伴わないことを確認した。家系Aの全ての被験者についてGenome-Wide SNP Array 6.0(Affymetrix、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いて遺伝子型を同定し、SNPHitLink及びMerlinソフトウェアを用いてマルチポイントパラメトリック連鎖解析を行った。我々は、エキソームシーケンシングによって捕捉が困難な領域を補完するため、最長の遺伝距離を有するエキソームシーケンシング用に3名の患者(A−III−1、6及び17)、及び全ゲノムシーケンシング(WGS)用に1名の患者(A−II−18)を選択した(図1A)。HiSeq2000(Illumina、米国カリフォルニア州サンディエゴ)上で100塩基対(bp)のペアードエンドシーケンシングによりWGSを行った。SureSelect Human All Exon Kit(Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いてエキソームシーケンシング用の試料調製を行い、試料をGenomeAnalyzer IIx(Illumina)上の75bpのペアードエンドシーケンシングに供した。Burrows-Wheeler Aligner(BWA)version 0.5.9(Bioinformatics. 2009; 25: 1754-1760)を用いて参照ヒトゲノム(UCSC hg19)に対するリードアラインメントを行った。SAMtools version 0.1.1610を用い、各被験者において一塩基変異型(SNV)及びインデルを検出した。Applied Biosystems 3130及び3730 Genetic Analyzer(Life Technologies、米国カリフォルニア州カールスバド)を用いてサンガーシーケンシングにより、候補遺伝子の確認のために340名のADPD発端者、517名の孤発性PD患者、及び559名の対照被験者のゲノム配列を解析した。ExonPrimer(http://ihg.gsf.de/ihg/ExonPrimer.html)を用いてサンガーシーケンシング用プライマーを設計した。
(2)細胞培養及び形質移入
形質移入の前に、5日間(SK−N−SH細胞及びSH−SY5Y細胞)又は24時間(HeLa細胞)に亘り組織培養プレートに細胞を播種した。Lipofectamine 2000試薬(Life Technologies)を用い、製造業者の推奨に従って培養細胞に形質移入を行った。
(3)スプライシング解析
野生型(wt)及び突然変異ゲノムCHCHD2 DNAフラグメント(c.182C>T、c.300+5G>A、及びc.434G>A)を、pCR−Blunt II−TOPOベクター(Life Technologies)にクローニングし、その後pcDNA3.1/myc−His−A(Life Technologies)中のKpnI−XhoIサイトに移行させ、pcDNA3.1−CHCHD2(wt、c.182C>T、c.300+5G>A、及びc.434G>A)を作製した。隣接するイントロン配列(上流に52ヌクレオチド(nts)及び下流に14nts)を有するCHCHD2エクソン2(wt及びc.300+5G>A)をpSPL3にサブクローニングしてpSPL3−CHCHD2(wt及びc.300+5G>A)を作製した。TRI試薬(Life Technologies)に続いてRQ1 DNase(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)処理を用い、形質移入から24時間後に総RNAを抽出した。Superscript II逆転写酵素(Life Technologies)又はReverTra Ace(東洋紡株式会社、日本、大阪)を用いてランダムプライマーによりcDNAを合成した。形質移入されたpcDNAスプライシングミニ遺伝子の突然変異誘発性エクソンスキッピングを検出するための増幅に2つのプライマー対を使用した。製造業者の指示書に従い、PCR増幅フラグメントと共にRiboprobe in vitro転写システム(Promega)を用いてCHCHD2エクソン2の5’スプライス部位中に[α−32P]−UTP標識化RNAを合成した。Ohe他(Mol Cell Biol. 2010; 30: 2220-2228)の記載のようにRNA電気泳動移動度シフト解析を行った。精製されたU1 snRNPは、Reinhard Luhrmann博士(Max Planck Institute)から寄贈された。
(4)抗体
本研究で使用した抗体は、抗CHCHD2抗体(19424-1-AP、Proteintech、米国イリノイ州シカゴ)、抗α−チューブリン抗体(T9026、Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)、抗アセチルヒストンH3抗体(06-599、Merck Millipore、米国マサチューセッツ州ビレリカ)、抗Complex I NDUFA9抗体(MS111、MitoSciences、米国オレゴン州ユージーン)、抗Tom20抗体(sc-11415、Santa Cruz Biotechnology、米国テキサス州ダラス)、抗OPA1抗体(612606、BD Biosciences、米国ニュージャージー州フランクリンレイクス)、抗Hsp60抗体(SMC-110、StressMarq Biosciences、カナダ、バンクーバー州ビクトリア)、及び抗FLAG抗体(F1804、Sigma-Aldrich)を含む。
(5)局在性解析
Amo他(Biochem. J. 2007; 404: 345-351)に記載されるようにSK−N−SH神経芽腫細胞からのミトコンドリアの単離を行った。SK−N−SH細胞由来のミトコンドリアに富む画分を、氷上にて30分間、1%Triton X−100を含む、又は含まないトリプシン(0、0.1、0.3、1、3、10、30、及び100μg)を用いて消化した。今井譲博士(順天堂大学)から提供されたヒト胎児脳cDNAライブラリーからCHCHD2コーディング領域を増幅した。cDNAフラグメントをpcDNA3.1−C−3xFLAGへとクローニングした。Quikchange Lightning site-directed mutagenesis kit(Stratagene、米国カリフォルニア州ラホーヤ)を用いて部位特異的変異誘発を行い、CHCHD2点突然変異(c.182C>T、c.300+5G>A、及びc.434G>A)を作出した。PCRにより欠失突然変異体(ΔMTS)を作出した。免疫蛍光顕微鏡法及び免疫電子顕微鏡法にはHeLa細胞を使用した。共焦点顕微鏡法により外因性CHCHD2の局在を検出した。Hoechst 33258(Life Technologies)を用いて核を対比染色した。二次抗体として抗マウスイムノゴールド抗体(EM.GMTA10、BBI Solutions、英国カーディフ)を用いて、Ishikawa他(PLoS One 2014; 9: e94645)に記載されるように免疫電子顕微鏡解析を行った。
(6)統計学的解析
SNPHitLinkを用い、ハーディー−ワインベルク平衡P値>0.05、対照における最小コールレート1、最大信頼>0.02、最小区間100kb、及び最小マイナーアレル頻度(MAF)0.2を有するSNPを選択した。Merlinソフトウェア、及び疾患頻度0.001を用いてパラメトリックマルチポイント連鎖解析を行った。罹患していない患者の兄弟姉妹及び子供達の表現型を0と表した(表現型なし)。517名の孤発性PD患者と559名の非罹患対照被験者との間でアレル頻度の有意性を算出するため多重検定に対するボンフェローニ補正によるカイ二乗検定を使用した。JMP 8(SAS Institute、米国ノースカロライナ州ドライブケーリー)を用いて、本研究で見出された変異型のオッズ比(OR)及び95%信頼区間(CI)を算出した。全ての統計学的解析において、P値<0.05を統計学的に有意とした。
B.結果
次世代シーケンシングを用いて、我々は、4つの症例において累計230万を超える変異型を検出した。同定された変異型を以下の基準に従って選別した:(1)ポジティブ異質性ロッド値(HLOD)>1を有する領域に位置する;(2)dbSNP132を含まない;(3)エクソン部位又はスプライス部位に位置する;(4)異型接合状態で保有される;(5)非同義であるか、又は異常スプライシングを引き起こすと予想される;(6)サンガーシーケンシングによって確認される;及び(7)500名を超える非罹患日本人対照(1000対立遺伝子)には見出されない。1つの変異型のみがこれらの選別基準を満たした(表1)。
コイルド−コイル−ヘリックス−コイルド−コイル−ヘリックスドメイン2(CHCHD2;参照配列アクセッション番号NM_016139.2)における異型接合性c.182C>T(p.Thr 61 Ile)突然変異は、家系AにおいてPDと共に同時分離した(図1A及び図1B)。CHCHD2は、染色体7p11.2上に位置し、予測されたN末端ミトコンドリア標的配列(MTS)を含む151アミノ酸をコードする4つのエクソンを含む(図1C)。これらの結果に基づき、我々は、ADPDに関する新たな遺伝子としてCHCHD2を提案する。CHCHD2と家系Aとの関連を確認するため、我々は、CHCHD2の5’及び3’隣接領域をマッピングした6つのマイクロサテライトを用いて、パラメトリックマルチポイント連鎖解析を行った。Merlinによるパラメトリックマルチポイント連鎖解析より、D7S506においてZmax3.009を得た。
CHCHD2がADPDの真の原因遺伝子かどうかを特定するため、我々は、サンガーシーケンシングにより340名のADPD発端者をスクリーニングし、さらに3名のCHCHD2変異型を有する患者を検出した(家系B〜D、図1A及び図1B)。3つの変異型のいずれも、500名を超える非罹患日本人対照には見出されなかった(表2)。さらに、本研究で検出された3つの変異型のいずれも1000 Genomes、Exome variant server、the Human Genetic Variation Database、又はdbSNP138において見出されなかった(表2)。p.Thr61 Ile変異型が家系A及びCの患者において同定されたが、ハプロタイプ解析により独立した創始者が推定された。我々は、4つの独立したADPDの家系において、全部で2つのミスセンス突然変異(c.182C>T、p.Thr61 Ile、及びc.434G>A、p.Arg145 Gln)及び1つのスプライス部位突然変異(c.300+5G>A)を同定し、これはCHCHD2がADPDの新規な原因遺伝子である可能性を示唆している。
Thr 61及びArg 145は脊椎動物間の保存残基(図1C)であり、この部位が機能的に重要であることが示唆されている。p.Thr61 Ile及びp.Arg145 Glnの置換は、Polyphen2(Nat. Methods 2010; 7: 575-576)、MutationTaster(Nat. Protoc. 2009; 4: 1073-1081)、及びSIFT(Nucleic Acid Res 2009; 37: e67)により損傷/疾患を引き起こすと予測されている。さらに、我々は、Human Splicing Finder(HSF; version 2.4.1)(Nucleic Acid Res 2007; 35: 5995-6003)を用いてc.300+5G>A突然変異を解析し、それがCHCHD2スプライシングに影響を及ぼすかどうかを予測した。5’スプライス部位におけるc.300+5G>A突然変異は、HSFスコアを88.2から76.0に減少し、MaxEntスコアを6.71から1.62に減少した。SDスコア(Hum. Mol. Genet 2008; 17: 4022-4035)も同様にc.300+5G>Aが異常スプライシングを引き起こし、スプライシング突然変異のようであると予測した。
この突然変異のいずれかが培養細胞におけるスプライシングに影響を及ぼすかどうかを特定するため、我々は、wt及び突然変異全長(4921bp)ゲノムDNAフラグメントをpcDNA3.1哺乳類発現ベクターにクローニングした。図2Aに示されるように、エクソン2スプライシングは、pcDNA−CHCHD2 wt、c.182C>T、又はc.434G>Aによって影響を受けなかったが、c.300+5G>A突然変異はエクソン2スキッピングを引き起こした。いずれのクローンもエクソン3スプライシングに影響を与えなかった。CHCHD2エクソン2及び隣接イントロンを改変されたエクソントラッピングベクターpSPL3(J.Neurol Neurosurg Psychiatry 1992; 55: 181-184)の2つの専用の構成エクソン(proprietary constitutive exons)の間に挿入することにより、HeLa細胞においてc.300+5G>A突然変異を更に解析した。図2Bは、この異型接合に関して、c.300+5G>A突然変異がCHCHD2エクソン2除外を引き起こすことを示す。エクソン2が除外されたmRNAは、最後のエクソン接合部の24nts上流に未成熟終止コドン(PTC)を生じ、そのためにナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)に抵抗性のはずである。エクソンを含むバンド及びエクソンを含まない(exon-skipped)バンドの間の中間の移動度を有するバンドをシーケンシングし、CHCHD2エクソン2のc.161における上流の隠れた(cryptic)5’スプライス部位の活性化に起因することが示された。最後のエクソン接合部の98nts上流に作製されたPTCによって、このmRNAがNMDに供されると予測した。RNA電気泳動移動度シフト解析を用いて、wt及びc.300+5G>A突然変異5’スプライス部位へのU1 snRNP結合を試験した。wtの5’スプライス部位RNAと比べ、c.300+5G>AについてHeLa核抽出物におけるU1 snRNP結合の減少が観察された(図2C、レーン4及び11)。
CHCHD2が孤発性PDに対する感受性遺伝子であり得るかどうかを調査するため、我々は、517名の孤発性PD患者及び559名の非罹患対照被験者においてスプライス接合部を含む全てのCHCHD2エクソンをシーケンシングした。3つのSNV(rs10043、rs142444896、及びrs8406)が、それぞれオッズ比 0.45(95%CI、0.27〜0.75、p=3.9×10-3)、オッズ比 4.37(95%CI、1.54〜12.40、p=7.5×10-3)、及びオッズ比 0.58(95%CI、0.37〜0.89、p=3.6×10-2)の統計学的に異なる頻度を有することを確認した(表2)。我々の対照被験者におけるいくつかの変異型の頻度は、公的なデータベースと比較した場合にわずかに異なっていた(表2)。CHCHD2変異型と孤発性PDのリスクとの関連を確認するため、我々は、以前報告された日本人孤発性PDに対する全ゲノム関連研究(GWAS)(Nat Genet. 2009; 41: 1303-1307)を検査した。1つのSNP(rs816411)がCHCHD2のイントロン上に見出されたが、患者と対照被験者との間でその頻度に有意差はなかった(オッズ比、1.17、95%CI、0.96〜1.19、p=0.22、コクラン−アーミテージの傾向検定)。
CHCHD2は、予測されたN末端MTSを有することから、我々は、CHCHD2がミトコンドリア中に位置するかどうかを特定した。細胞成分画分のウェスタンブロット解析により、内因性CHCHD2がミトコンドリア中に存在することが明らかとなった(図3A)。さらに、共焦点顕微鏡研究により、外因性に発現されたCHCHD2はミトコンドリアに局在するのに対し、MTS欠失CHCHD2はそうではないことが示された(図3B)。免疫電子顕微鏡法及びトリプシン消化アッセイは、CHCHD2が主に膜間腔(IMS)に局在することを示した(図3C及びD)。wtとミスセンス突然変異体との間で局在の差異は観察されなかった(図3B)。これらの結果は、CHCHD2が、そのN末端MTSによって媒介されてミトコンドリアIMSに局在化されることを示唆している。
CHCHD2突然変異を有する患者の臨床的特徴を表3に要約する。発症時の平均年齢は56.2±8.1歳(40〜67歳の範囲)であった。家系Cの2人(図1A中C−III−3及びC−IV−2)が主に、上肢の振戦様本態性振戦(ET)のみを示したが、他の患者は、英国Barin BankのPD診断基準と明確に一致するレボドパ症状に対する反応と共に、動作緩慢、筋固縮、及び歩行障害を含む典型的なパーキンソン病様の特徴を呈した。さらに、我々は、異型接合性c.182C>T(p.Thr 61 Ile)突然変異を有する3名の無症候性保因者(図1A中A−III−18、A−IV−5及びA−IV−8)を検出した。サンプリング時の彼らの年齢は、それぞれ55歳、56歳、及び35歳であった。
次世代シーケンシングによりADPDの大規模な家系からミスセンス突然変異(CHCHD2、c.182C>T、p.Thr 61 Ile)を同定した。CHCHD2突然変異スクリーニングにより、341名のADPDの独立家系のうち4名において3つのCHCHD2突然変異(c.182C>T、p.Thr 61 Ile;c.434G>A、p.Arg 145 Gln;及びc.300+5G>A)を検出した。
CHCHD2は、ミトコンドリア呼吸において重要な役割を果たし、ミトコンドリア内膜腔に局在し、シトクロムcオキシダーゼ活性に関与する。よって、CHCHD2遺伝子はミトコンドリア呼吸と強く結びついたパーキンソン病の第1原因遺伝子である。

Claims (4)

  1. 常染色体優性遺伝性パーキンソン病を診断する目的で、生体試料のCHCHD2中の突然変異を検出する方法。
  2. CHCHD2中の突然変異が、c.182C>T(p.Thr 61 Ile)、c.434G>A(p.Arg 145 Gln)又はc.300+5G>Aである請求項1記載の検出方法。
  3. CHCHD2中の突然変異検出用試薬を含有する常染色体優性遺伝性パーキンソン病診断薬。
  4. CHCHD2中の突然変異が、CHCHD2中のc.182C>T(p.Thr61 Ile)c.434G>A(p.Arg 145 Gln)又はc.300+5G>Aである請求項3記載の診断薬。
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