以下に添付図面を参照して本願に係る配電設備に関する情報の出力方法、配電設備に関する情報の出力プログラム及び情報出力装置について説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
[システム構成]
図1は、実施例1に係る配電管理システムの構成例を示す図である。図1に示す配電管理システム1は、配電設備が互いに電気的に接続された配電システムの構造を管理する配電管理サービスを提供するものである。かかる配電管理サービスの一環として、配電管理システム1は、配電システムのうち指定を受け付けた配電設備に連なり、かつ2つの開閉器間を境界に区切られた配電区間に含まれる高圧系統に関する設備情報又は数値情報を出力する情報出力サービスを提供する。
この配電システムには、配電用変電所、高圧線や開閉器などの設備が含まれる高圧系統と、柱上または地中埋設式の変圧器、いわゆるバンク、低圧線、引込線や需要家などの設備が含まれる低圧系統とが含まれる。
図1に示すように、配電管理システム1には、サーバ装置10と、スマートメータ30A〜30Nと、配電設備管理システム50Aと、配電自動化システム50Bと、クライアント端末70A〜70Nとが収容される。なお、以下では、スマートメータ30A〜30Nの各装置を区別なく総称する場合には「スマートメータ30」と記載し、また、クライアント70A〜70Cの各装置を区別なく総称する場合には「クライアント端末70」と記載する場合がある。
これらサーバ装置10及びスマートメータ30の間は、ネットワーク5を介して相互に通信可能に接続される。かかるネットワーク5には、有線または無線を問わず、一例として、インターネット(Internet)を始め、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)などの任意の種類の通信網を採用できる。
サーバ装置10は、クライアント端末70に上記の情報出力サービスを提供するコンピュータである。
一実施形態として、サーバ装置10は、パッケージソフトウェアやオンラインソフトウェアとして上記の情報出力サービスを実現する情報出力プログラムを所望のコンピュータにインストールさせることによって実装できる。例えば、サーバ装置10は、上記の情報出力サービスを提供するWebサーバとして実装することとしてもよいし、アウトソーシングによって上記の情報出力サービスを提供するクラウドとして実装することとしてもかまわない。
スマートメータ30は、通信機能付きの電力の計量器である。例えば、スマートメータ30は、需要家の分電盤等に接続される。
一実施形態として、スマートメータ30は、一定期間、例えば30分間ごとに需要家の負荷設備が使用する電力を計量する。このとき、スマートメータ30は、負荷設備によって使用された電力を累積して計量する。以下では、累積して計量された負荷設備の電力使用値のことを「電力使用量」と記載する場合がある。その上で、スマートメータ30は、電力使用量をサーバ装置10へ送信する。なお、ここでは、スマートメータ30が電力使用量を一定期間ごとにアップロードする例を説明したが、電力使用量を間欠的にアップロードすることもできる。また、スマートメータ30は、電力使用量を能動的にアップロードするのではなく、サーバ装置10からのリクエストに応答して電力使用量をアップロードすることもできる。
配電設備管理システム50Aは、配電システムに含まれる配電設備に関する情報を管理する情報システムであり、また、配電自動化システム50Bは、配電システムに含まれる配電設備の監視や遠隔操作を行う情報システムである。これら配電設備管理システム50A及び配電自動化システム50Bから提供される情報により、配電設備が互いに電気的に接続された配電設備の接続情報、すなわち配電システムの構造情報がサーバ装置10によって管理されることになる。なお、配電設備管理システム50A及び配電自動化システム50Bは、1つの情報システムとして構築することもできるし、サーバ装置10をさらに含めて1つの情報システムとして構築することもできる。
クライアント端末70は、サーバ装置10から上記の情報出力サービスの提供を受けるコンピュータである。
一実施形態として、クライアント端末70には、パーソナルコンピュータを採用できる。クライアント端末70には、上記のパーソナルコンピュータなどの据置き型の端末のみならず、各種の携帯端末装置をクライアント端末70として採用することもできる。例えば、携帯端末装置の一例として、スマートフォン、携帯電話機やPHS(Personal Handyphone System)などの移動体通信端末、さらには、PDA(Personal Digital Assistants)などのスレート端末などがその範疇に含まれる。
このクライアント端末70は、一例として、電気事業者の所属員、例えば配電部門の運用担当者やその管理者等によって利用される。例えば、クライアント端末70は、サーバ装置10により管理される配電システムの構造がマップに重畳された配電系統図を所定の表示部に表示させることができる。かかる配電系統図上で配電設備の指定を受け付けた場合、クライアント端末70は、指定を受け付けた配電設備をサーバ装置10に通知し、この通知の応答としてサーバ装置10から返信された設備情報や数値情報を表示させる。なお、配電設備の指定は、必ずしも配電系統図上で受け付けずともよく、配電設備の名称や識別情報を指定することにより実現されることとしてもかまわない。
[サーバ装置10の構成]
図2は、実施例1に係るサーバ装置10の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、サーバ装置10は、通信I/F(interface)部11と、記憶部13と、制御部15とを有する。なお、サーバ装置10は、図2に示す機能部以外にも既知のコンピュータが有する各種の機能部、例えば各種の入力デバイスや音声出力デバイスなどの機能部を有することとしてもかまわない。
通信I/F部11は、他の装置、例えばスマートメータ30、配電設備管理システム50A、配電自動化システム50Bやクライアント端末70との間で通信制御を行うインタフェースである。
一実施形態として、上記の通信I/F部11には、LANカードなどのネットワークインタフェースカードを採用できる。例えば、通信I/F部11は、クライアント端末70から配電設備の指定を受信したり、また、配電系統図または指定の配電設備に対応する設備情報や数値情報をクライアント端末70へ送信したりする。
記憶部13は、制御部15で実行されるOS(Operating System)を始め、上記の情報出力プログラムなどの各種プログラムに用いられるデータを記憶するデバイスである。
一実施形態として、記憶部13は、サーバ装置10における主記憶装置として実装される。例えば、記憶部13には、各種の半導体メモリ素子、例えばRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリを採用できる。また、記憶部13は、補助記憶装置として実装することもできる。この場合、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスクやSSD(Solid State Drive)などを採用できる。
記憶部13は、制御部15で実行されるプログラムに用いられるデータの一例として、配電システム情報13aと、負荷情報13bとを記憶する。これら配電システム情報13a及び負荷情報13b以外にも、他の電子データ、例えば電気事業者が管轄とするマップ、さらには、配電システム全体及び配電設備の仕様に関する情報なども併せて記憶することもできる。
ここで、本実施例に係るサーバ装置10では、配電設備が設置される位置を管理する位置の管理と、各々の配電設備を管理する設備の管理と、配電設備の電気的な接続構造を管理する電気接続の管理との3つに分けて配電システムが管理される。
このうち、位置の管理には、配電システムを形成する配電設備のうち所定の設備、例えば変電所、電柱、変圧器(バンク)などが設置される位置「ロケーション(location)」がエンティティとして用いられる。また、配電設備の管理には、1つの位置に紐付く設備「ユニット(unit)」と、2つの位置に紐付く設備「スパン(span)」とがエンティティとして用いられる。また、電気接続の管理には、互いの配電設備が電気的に接続される接続点「ノード(node)」と、複数の接続点によって定まる設備「ブランチ(branch)」とがエンティティとして用いられる。
図3は、配電システムの管理に用いるエンティティの一例を示す図である。図3に示すように、ロケーションの一例としては、例えば、電柱Pや柱上変圧器TRなどのように設置形態が架設ではない非架設の設備が設置される位置が挙げられる。この他、図示されていない配電用変電所(SS:SubStation)が設置される位置や変圧器(SSバンク)が設置される位置もロケーションの範疇に含まれる。なお、ここでは、地上に設置される設備を例示したが、地下に設置される設備、例えばマンホールやハンドホールが設置される位置などもロケーションの範疇に含まれる。
ユニットの一例としては、電柱P、開閉器SW、柱上変圧器TRなどが挙げられる。この他、図示されていない配電用変電所、SVR(Step Voltage Regulator)などの電圧調整器や各種の計器、例えばスマートメータ30、さらには、地中の設備であるマンホールやハンドホールなどもユニットの範疇に含まれる。
スパンの一例としては、配電用変電所および柱上変圧器TRの間で高圧電力が配電される高圧系統に敷設される電線WH、いわゆる「高圧線」が挙げられる。スパンの他の一例としては、柱上変圧器TRおよび需要家の負荷設備の間で低圧電力が配電される低圧系統のうち柱上変圧器TR及び引込線の区間に敷設される電線WL、いわゆる「低圧線」の他、引込柱および負荷設備の区間に敷設される電線、いわゆる「引込線」などが挙げられる。スパンの更なる一例としては、地中に埋め込まれたケーブルが挙げられる。なお、高圧線WH及び低圧線WLなどの電線Wについては、電柱Pに架設される単位の本数、例えば3本や2本を1つにまとめてスパンとして扱うことができる。
ノードの一例としては、図3中の拡大図21に示す高圧線WHと開閉器SWとの接続点、高圧線WHと柱上変圧器TRとの接続点、柱上変圧器TRと低圧線WLとの接続点が挙げられる。この他、図3中の拡大図22に示す高圧線WH21aと高圧線WH21bとが接続される点もノードの範疇に含まれる。具体的には、高圧線WH21a及び高圧線WH21bが通り装柱の電柱Pに架設されている場合にも、高圧線WH21a及び高圧線WH21b間が電気的に接続されているものとみなし、高圧線WH同士が接続される点を仮想的なノードとして扱われる。
ブランチの一例としては、図3に示す電柱P、高圧線WH、開閉器SW、柱上変圧器TR、低圧線WLなどの各種の設備が挙げられる。この他、不図示の配電用変電所、引込線、スマートメータ30や負荷設備などもブランチの範疇に含まれる。これら配電用変電所や負荷設備などの端点に位置する設備は、1つしかノードを持たない場合がある。
図2に示す配電システム情報13aには、上記のロケーションを管理するロケーションデータが含まれる。また、配電システム情報13aには、上記のユニットを管理するユニットデータと、上記のスパンを管理するスパンデータとが含まれる。さらに、配電システム情報13aには、上記のノードを管理するノードデータと、上記のブランチを管理するブランチデータとが含まれる。
このうち、ロケーションデータには、一例として、位置ID(identifier)、位置識別、経度および緯度などの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「位置ID」とは、設備が設置された位置を識別する識別情報を指す。また、「位置識別」とは、位置の種類の識別を指し、例えば、配電用変電所(SS)、電柱(POLE)や負荷設備(LOADL)などの種類が挙げられる。なお、ロケーションデータの各項目の情報は、例えば、他の既存のシステム、例えば配電設備管理システム50Aから変電所、電柱、変圧器などの特定の設備の位置情報を取得することができる。
ユニットデータには、設備ID、位置ID、種別及び属性情報などの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「設備ID」とは、設備を識別する識別情報を指し、ユニットデータではユニットの設備IDだけが格納される。また、「種別」とは、ユニットの種別を指し、例えば電柱(POLE)、開閉器(SW)、柱上変圧器(BANK)や負荷設備(LOADL)などの種類が挙げられる。また、「属性情報」とは、ユニットの属性に関する情報を指し、例えば、ユニットの型番や性能、例えばユニットが変圧器である場合には変圧器の容量や電圧比が登録される。かかる変圧器の容量は、現系統の設備の電気的な接続情報が抽出された場合に電圧降下の計算に用いることができる。例えば、ユニットが変圧器である場合には、抵抗値、リアクタンス値や変圧器の電圧比が登録される。なお、ユニットデータの各項目の情報は、例えば、他の既存のシステム、例えば配電設備管理システム50Aから取得される設備の属性情報うちユニットに分類される設備の属性情報が登録される。
スパンデータには、一例として、設備ID、位置ID1、位置ID2、種別および属性情報などの項目が対応付けられたデータを採用できる。ここで言う「設備ID」も、設備を識別する識別情報を指すが、スパンデータにはスパンの設備IDだけが格納される。また、「位置ID1」とは、スパンに紐付く2つの位置IDのうち一方の位置IDを指し、「位置ID2」とは、スパンに紐付く2つの位置IDのうち他方の位置IDを指す。また、「種別」とは、スパンの種別を指し、例えば、高圧線、低圧線及び引込線などの種類が挙げられる。また、「属性情報」は、スパンの属性に関する情報を指し、例えば、スパンの型番、太さ、材質、径間、単位(m)当たりの抵抗値や単位(m)当たりのリアクタンス値などが登録される。かかる径間、単位当たりの抵抗値や単位当たりのリアクタンス値は、現系統の設備の電気的な接続情報が抽出された場合に電圧降下の計算に用いることができる。なお、スパンデータの各項目の情報は、例えば、他の既存のシステム、例えば配電設備管理システム50Aから取得された設備の属性情報うちスパンに分類される設備の属性情報が登録される。
ノードデータには、一例として、ノードID及び位置IDなどの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「ノードID」は、ノードを識別する識別情報を指す。なお、ノードデータは、既存の他のシステム、例えば配電設備管理システム50Aおよび配電自動化システム50Bから取得される。例えば、配電設備管理システム50Aから取得された低圧系統の設備の情報または配電自動化システム50Bから取得された高圧系統の設備の情報からノードが抽出された後にノードの所在位置と対応付けてノードデータに登録される。
ブランチデータには、一例として、ブランチID、ノードID1、ノードID2、設備IDおよび開閉区分などの項目が対応付けられたデータを採用できる。かかる「ブランチID」とは、ブランチを識別する識別情報を指す。また、「ノードID1」とは、ブランチが持つ2つのノードIDのうち一方のノードIDを指し、「ノードID2」とは、ブランチが持つ2つのノードIDのうち他方のノードIDを指す。ただし、配電用変電所や負荷設備などの端点に位置するブランチは、ノードID1またはノードID2のいずれかにしかノードIDを持たない場合がある。例えば、ノードID1及びノードID2のうちノードID1には、ノードID2よりも一次側、すなわち変電所寄りの接続点のノードIDが登録されるとともに、ノードID2には、ノードID1よりも二次側、すなわち負荷設備寄りの接続点のノードIDが登録される。また、ここで言う「設備ID」も、設備を識別する識別情報を指すが、ブランチデータにはユニットまたはスパンのいずれかの設備IDが格納される。また、「開閉区分」は、開閉器のスイッチの開閉状態を指す。かかる開閉区分には、ブランチが開閉器である場合には「開状態」または「閉状態」のいずれかが設定されるが、ブランチが開閉器以外である場合には「ブランク」とされる。
なお、ブランチデータは、既存の他のシステム、例えば配電設備管理システム50Aおよび配電自動化システム50Bから取得される。例えば、配電設備管理システム50Aから取得された低圧系統の設備の情報または配電自動化システム50Bから取得された高圧系統の設備の情報からブランチが抽出された後にブランチが持つノードと対応付けてブランチデータとして登録される。
これらのうち、ノードデータ及びブランチデータには、互いが物理的に接続されるノードを記憶部13に登録されるが、配電用変電所が持つノードから需要家が持つノードまで、開閉器の開閉区分が「閉状態」である範囲内でノード及びブランチを探索することにより、互いが電気的に接続された配電設備に関する接続情報、すなわち「配電システムの構造情報」としてカレントノードデータ及びカレントブランチデータが得られる。
ここで、一例として、カレントノードデータ及びカレントブランチデータが表す配電システムのグラフ構造の一例を示す。図4A及び図4Bは、配電システムのグラフ構造の一例を示す図である。これら図4A及び図4Bには、配電用変電所をルートとするグラフ構造が2つの図面に分けて示されている。このうち、図4Aには、配電システムが有する高圧系統の配電設備のうち配電用変電所から連なる1番目から12番目の高圧線までが含まれる一方で、図4Bには、12番目から21番目の高圧線までが含まれる。なお、図4A及び図4Bには、配電用変電所を表す「SS」、電柱を表す「PO」、柱上変圧器を表す「TR」や需要家を表す「LL」などの配電設備の種別を識別する文字列を頭に付加してノードのIDが示されている。
図4A及び図4Bに示すように、配電用変電所SS及び高圧線WHは、ノードID「SS001」で識別されるノードを介して接続される。また、高圧線WH及び柱上変圧器TRは、ノードID「POO003B11」、「PO0005B21」、「PO0009B31」、「PO0014B41」、「PO0017B51」及び「PO0021B61」で識別されるノードを介して接続される。また、柱上変圧器TR及び需要家LLは、低圧線WLを介して接続される場合もあれば、低圧線WLを介さずに接続される場合がある。例えば、設備ID「LL105」〜「LL107」で識別される3軒の需要家の例で言えば、設備ID「LL105」〜「LL107」の需要家は、引込線を介して低圧線WLに接続されると共に、この低圧線WLがノードID「PO0003B12」のノードを介して設備ID「B11」の柱上変圧器TRに接続される。また、設備ID「LL102」〜「LL104」で識別される3軒の需要家の例で言えば、設備ID「LL102」〜「LL104」の需要家に接続される引込線は、低圧線を介さずにノードID「PO0003B12」のノードを介して、設備ID「B11」の柱上変圧器TRに接続される。なお、設備ID「HH01」の高圧需要家の場合、設備ID「HH01」の高圧需要家に接続される引込線が柱上変圧器TRを介さずにノードID「PO0007」で識別される高圧線のノードに接続される。
負荷情報13bは、需要家の消費電力に関する情報である。
一実施形態として、負荷情報13bには、設備ID、電力使用量の平均値、電力使用量の最大値、各時刻の電力使用量などの項目が対応付けられたデータを採用することができる。例えば、記憶部13には、負荷情報13bとして、図4A及び図4Bに示した配電システムに含まれる各需要家のスマートメータ30から30分単位で取得された電力使用量[kW]が登録される。
制御部15は、各種のプログラムや制御データを格納する内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行するものである。
一実施形態として、制御部15は、中央処理装置、いわゆるCPU(Central Processing Unit)として実装される。なお、制御部15は、必ずしも中央処理装置として実装されずともよく、MPU(Micro Processing Unit)として実装されることとしてもよい。また、制御部15は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
制御部15は、各種のプログラムを実行することによって下記の処理部を仮想的に実現する。例えば、制御部15は、図2に示すように、取得部15aと、受付部15bと、抽出部15cと、算出部15dと、出力部15eとを有する。
取得部15aは、需要家から消費電力を取得する処理部である。
一実施形態として、取得部15aは、各需要家の負荷設備に接続されたスマートメータ30からアップデートされる電力使用量を取得する。続いて、取得部15aは、スマートメータ30が接続されている負荷設備の設備IDのレコードが有するフィールドのうち今回の検針時刻に対応するフィールドに今回の検針で得た電力使用量を追加登録する。例えば、各スマートメータ30が一定期間、例えば30分間ごとに電力使用量を検針する場合を想定する。この場合、負荷情報13bには、1つのスマートメータ30につき、スマートメータ30に電力使用量の検針結果を通知させる検針間隔と、スマートメータ30及びサーバ装置10間の伝送遅延時間との和に相当する時間の周期で上記の電力使用量の登録がなされることになる。
受付部15bは、配電システムに含まれるいずれかの配電設備の指定を受け付ける処理部である。
一実施形態として、受付部15bは、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、電気事業者が管轄するマップに配電システムの構造を重畳することによって配電系統図をクライアント端末70に表示させる。その上で、受付部15bは、クライアント端末70に表示させた配電系統図上で特定の配電設備を指定する操作を受け付けることにより、配電システムから任意の配電設備を指定させることができる。このような配線系統図上での指定に限らず、受付部15bは、クライアント端末70に表示させたウィンドウ上で配電設備が存在する位置情報、例えば緯度及び経度などを入力させることにより、配電システムから配電設備を指定させることもできる。
以下では、配電システムに含まれる配電設備のうち高圧系統の配電設備のことを「高圧設備」と記載し、低圧系統の配電設備のことを「低圧設備」と記載する場合がある。例えば、受付部15bが指定を受け付けることができる高圧設備の一例として、配電用変電所(SSバンク)、遮断機、開閉器、電柱、高圧電線などが挙げられる。また、受付部15bが指定を受け付けることができる低圧設備の一例として、低圧系統の中継設備の変圧器、配電先のスマートメータ、配電先の発電設備、低圧電線、引込線、パワーコンディショナ(PCS:Power Conditioning Subsystem)などが挙げられる。
抽出部15cは、受付部15bにより指定を受け付けた配電設備に対応する配電区間を抽出する処理部である。
一実施形態として、抽出部15cは、受付部15bにより指定された配電設備が高圧系統に含まれる場合には、2つの開閉器に挟まれ、指定の高圧設備を含む「第1の配電区間」を抽出する。一方、抽出部15cは、受付部15bにより指定された配電設備が低圧系統に含まれる場合には、少なくとも、受付部15bにより指定された低圧設備を含む低圧系統に含まれる柱上変圧器から指定の低圧設備を介して配電される低圧の配電先に対応する需要家と、先の柱上変圧器とに挟まれる「第2の配電区間」を抽出する。
より具体的には、抽出部15cは、受付部15bにより配電設備が指定された位置に高圧系統の配電設備及び低圧系統の配電設備の両方が存在する場合、これらの配電設備が「電線」または「電柱」のいずれであるかを判別する。このとき、指定の配電設備が「電線」である場合、配電設備が指定された位置に高圧線と低圧線の両方が存在することがわかる。この場合、抽出部15cは、改めて高圧線または低圧線のいずれかの指定を受付部15bを介して受け付けさせる。その上で、抽出部15cは、受付部15bを介して指定された高圧線に対応する第1の配電区間または低圧線に対応する第2の配電区間を抽出する。
一方、抽出部15cは、配電設備が「電柱」である場合、指定の低圧設備に対応する第2の配電区間を抽出する。このように指定の低圧設備に対応する第2の配電区間を抽出する技術的意義の一側面として、低圧設備の方が高圧設備よりも密集して配設されることが多いことから低圧設備が配電系統図上で指定しにくい点が挙げられる。他の一側面として、運用担当者が高圧設備を指定することを希望するのであれば、両系統の配電設備が存在する箇所でなくとも他の箇所で高圧設備を指定すればよいことから、運用担当者が低圧設備を指定する意思をもって指定操作を行う可能性の方が高いと推定できる点が挙げられる。
ここで、抽出部15cは、上記の「第1の配電区間」を抽出する場合、一例として、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、指定の高圧設備を含む開閉器区間を第1の配電区間として抽出する。
例えば、抽出部15cは、カレントブランチデータから受付部15bにより指定を受け付けた高圧設備に対応する設備IDを持つブランチのレコードを検索する。その上で、抽出部15cは、指定の高圧設備よりも上流側、すなわち配電用変電所寄りに存在する開閉器のブランチに到達するまで、カレントブランチデータに含まれるノードID1と同じノードIDが記録されたノードID2を持つブランチを探索する。これによって、2つの開閉器により定まる開閉器区間のうち上流側の一端が特定される。
これと並行して、抽出部15cは、指定の高圧設備よりも下流側、すなわち配電用変電所から離れる末端寄りに存在する開閉器のブランチに到達するまで、カレントブランチデータに含まれるノードID2と同じノードIDが記録されたノードID1を持つブランチを探索する。このとき、指定の高圧設備よりも下流側にノードID2と同じノードIDが記録されたノードID1を持つブランチが複数存在する場合には、下流側で高圧線の分岐が発生していることがわかる。この場合、抽出部15cは、カレントブランチデータに含まれる分岐のブランチのうち上段に接続される高圧線のブランチを対象に上記の探索を続ける。例えば、上段の高圧線の方が下段の高圧線よりもカレントブランチデータへの登載順が上位に登録される場合、抽出部15cは、カレントブランチデータに含まれる分岐のブランチのうち登載順が上位であるブランチを対象に探索を続ける。そして、抽出部15cは、高圧線の末端まで開閉器が存在しない場合、当該末端の高圧線を仮想的に下流側の開閉器とみなして抽出する。これによって、2つの開閉器により定まる開閉器区間のうち下流側の一端が特定される。
その上で、抽出部15cは、先のようにして特定された上流側の開閉器および下流側の開閉器に挟まれる開閉器区間を「第1の配電区間」として抽出する。
また、抽出部15cは、上記の「第2の配電区間」を抽出する場合、一例として、記憶部13に記憶された配電システム情報13aを参照して、指定の低圧設備を含む低圧系統に含まれる柱上変圧器から指定の低圧設備を介して配電される低圧の配電先に対応する需要家と、先の柱上変圧器とに挟まれる区間を「第2の配電区間」として抽出する。
例えば、抽出部15cは、カレントブランチデータから受付部15bにより指定を受け付けた低圧設備に対応する設備IDを持つブランチのレコードを検索する。その上で、抽出部15cは、指定の低圧設備よりも上流側、すなわち配電用変電所寄りに存在する柱上変圧器のブランチに到達するまで、カレントブランチデータに含まれるノードID1と同じノードIDが記録されたノードID2を持つブランチを探索する。これによって、指定の低圧設備を収容する柱上変圧器が特定される。そして、抽出部15cは、指定の低圧設備を収容する柱上変圧器のブランチから各需要家のブランチに到達するまで、カレントブランチデータに含まれるノードID2と同じノードIDが記録されたノードID1を持つブランチを探索する。その上で、抽出部15cは、先の探索により得られた柱上変圧器及び需要家の低圧系統の配電区間のうち指定の低圧設備に対応する設備IDをブランチに含む低圧系統の配電区間を「第2の配電区間」として抽出する。
算出部15dは、負荷情報13bから数値情報を算出する処理部である。
一実施形態として、算出部15dは、抽出部15eにより抽出された第1の配電区間または第2の配電区間に含まれる各配電設備の電圧や電流を計算する。例えば、算出部15dは、カレントブランチデータに含まれるレコードのうち、第1の配電区間または第2の配電区間を収容する配電用変電所及び需要家間の全配電区間を特定する。その上で、算出部15dは、全配電区間に収容される各配電設備のブランチが含む属性情報、例えばリアクタンス値Xや抵抗値Rなどを参照する。例えば、ブランチの設備がユニットである設備、例えば開閉器や変圧器などには、ユニットデータに登録されていたリアクタンス値Xと抵抗値Rが属性情報としてそのまま登録されている。一方、ブランチの設備がスパンである設備には、スパンテーブルに登録されている単位当たりのリアクタンス値に径間の値が乗算された値がリアクタンス値Xとして登録されるとともに、単位当たりの抵抗値に径間の値が乗算された値が抵抗値Rとして登録されている。これらユニット及びスパンのリアクタンス値X及び抵抗値Rに加え、算出部15dは、変電所から送出される電気の電圧及び変圧器の電圧比、さらには、負荷情報13bに含まれる各需要家の負荷設備における電力使用量を用いて、全配電区間における各配電設備の電圧及び電流を算出する。かかる電圧の計算には、一例として、BFS(Backward-Forward Sweep)を始め、Newton-Raphson法などの既知のアルゴリズムを適応的に採用できる。例えば、BFSが採用された場合には、配電系統が放射状であるという特性を活かし、負荷設備からの逐次計算と変電所からの修正を交互に実行することによって各配電設備の電圧が算出される。
かかる電圧の他、算出部15dは、各配電設備の電流から損失電力量、いわゆる配電ロスを算出することもできる。例えば、算出部15dは、配電設備の抵抗値Rと、当該配電設備を流れる電流値Iの2乗とを乗算した値(R×I2)を、当該配電設備における配電ロスとして算出できる。この他、算出部15dは、需要家に供給される皮相電力に対する有効電力の割合である「力率」、さらには、配電設備、例えば柱上変圧器、低圧線や引込線の容量に対する各需要家の最大需要電力の和の割合である「利用率」なども算出することができる。
このように数値情報を算出する場合、算出部15dは、受付部15bにより配電設備の指定を受け付けた時点、例えば最新の時刻の1時間断面の数値情報を算出することもできるし、複数の時間断面の数値情報を算出することにより、1つの指標につき、任意の期間、例えば日、週、月、季節や年などにわたる時間変化を得ることもできる。このように、算出部15dは、数値情報の時間変化を算出する場合、任意の間隔で平均値を算出したり、中央値、最頻値または最大値を抽出したりといった統計処理を実行することもできる。
出力部15eは、クライアント端末70に対する出力制御を行う処理部である。ここでは、一例として、出力部15eがクライアント端末70に対する表示制御を行う場合を例示するが、表示の代わりに音声による出力を実行することとしてもよいし、印字による出力を実行することとしてもよいし、これらを組み合わせて実行することもできる。
一側面として、出力部15eは、抽出部15cにより抽出された第1の配電区間に対応する設備情報又は数値情報、または第2の配電区間に対応する設備情報又は数値情報をクライアント端末70に表示させる。
例えば、出力部15eは、クライアント端末70に表示される配電系統図のうち第1の配電区間または第2の配電区間に対応する部分の表示を、それ以外の配電区間の表示とは異なる表示形態で表示させる。かかる表示制御の一例として、出力部15eは、任意の強調表示を採用できる。例えば、出力部15eは、第1の配電区間または第2の配電区間に対応する部分の色、塗りつぶしや線種を変更したり、蛍光ペンによりマーカを付したりすることができる。また、出力部15eは、受付部15bにより指定された配電設備が「電線」である場合、指定の配電設備で電気が流れる方向、すなわち「配電方向」を識別する標示、例えば矢印などをさらに表示させることもできる。さらに、出力部15eは、カレントブランチデータに含まれるブランチのうち抽出部15cにより抽出された第1の配電区間または第2の配電区間に含まれる各配電設備の属性情報を参照して、電線の材質情報、該電線の断面積に関する情報、配電の供給方式、バンク接続相に関する情報の少なくとも1つを表示させることができる。
他の側面として、出力部15eは、抽出部15cにより抽出された第1の配電区間に対応する設備情報または第2の配電区間に含まれる設備情報に対応する数値情報をクライアント端末70に表示させる。なお、上記の数値情報は、上記の設備情報と組み合わせて表示させることもできるし、単独で表示させることもできる。
例えば、出力部15eは、算出部15dにより算出された数値情報のうち抽出部15cにより抽出された第1の配電区間または第2の配電区間に含まれる各配電設備に対応付けて電圧を表示させることができる。この場合、出力部15eは、配電系統図上に各配電設備の電圧を表示させることができる他、グラフにより各配電設備の電圧を表示させることもできる。例えば、出力部15eは、算出部15dにより算出された各配電設備の電圧の結果を用いて、配電用変電所または柱上変圧器から各配電設備の距離と各配電設備の電圧との関係を示すグラフを生成して表示させることにより、電圧降下を視認させることもできる。
また、出力部15eは、抽出部15cにより抽出された第1の配電区間に対応する設備情報または第2の配電区間に含まれる配電設備に対応する数値情報の時間変化をクライアント端末70に表示させることもできる。例えば、出力部15eは、数値情報として表示させる項目、時間変化として表示させる期間、さらには、時間変化を表す目盛の粒度などの表示設定にしたがって数値情報の時間変化をクライアント端末70に表示させる。かかる表示設定については、予め標準設定を作成しておいたり、上記の第1の配電区間または第2の配電区間の表示時にクライアント端末70から任意の設定を受け付けるようにしてもかまわない。
[具体例]
ここで、図5〜図21を用いて、配電設備に関する情報の出力方法について具体例を説明する。図5は、配電系統図の一例を示す図である。図6は、第2の配電区間の表示例を示す図である。図7及び図8は、柱上変圧器からの距離と電圧との関係の一例を示すグラフである。図9及び図10は、配電ロスの時間変化の一例を示すグラフである。図11及び図12は、電線裕度の時間変化の一例を示すグラフである。図13は、第1の配電区間の表示例を示す図である。図14〜図16は、電圧の時間変化の一例を示すグラフである。図17〜図19は、電流の時間変化の一例を示すグラフである。図20及び図21は、利用率の時間変化の一例を示すグラフである。
図5には、電気事業者が管轄する配電システムの一部が配電系統図200として示されている。図5に示す配電系統図200上で配電設備の指定が受け付けられる。例えば、配電系統図200の一部、すなわち配電用変電所の周辺210が拡大表示された拡大画面220上の指定位置221でマウスのクリックやダブルクリックなどの操作により、配電設備の指定が受け付けられたとする。かかる指定位置221には、図4Aに示したノードID「PO0010」及びノードID「PO0011」の2つのノードを持つ高圧線221Aと、ノードID「PO0010」及びノードID「PO0011」の2つのノードを持つ低圧線221Bとが存在する。この場合、クライアント端末70を介して、高圧線221Aおよび低圧線221Bのいずれかの指定がさらに受け付けられる。
(1)低圧指定時
このとき、低圧線221Bが指定された場合、第2の配電区間が抽出された上で、図6に示すように、第2の配電区間が他の部分とは異なる表示形態で表示される。すなわち、図6に示すように、当該低圧線221Bを収容するバンク、すなわちノードID「PO0009B31」のノードを持つ柱上変圧器から、ノードID「PO0009B31」及びノードID「PO0010」の2つのノードを持つ低圧線及びノードID「PO0010」及びノードID「PO0011」の2つのノードを持つ低圧線221Bを経由して、ノードID「PO0011」のノードに引込線を介して接続される設備ID「LL908」の需要家に至るまでの区間が第2の配電区間として抽出される。その上で、第2の配電区間が黒の太線で強調表示される。このように低圧線221Bが選択された場合には、当該低圧線221Bを流れる電気の向きを表す矢印、すなわちノードID「PO0010」のノードからノードID「PO0011」のノードへの矢印も併せて表示される。これによって、逆潮流の発生時にはその旨を運用担当者に一目で把握させる。
さらに、図6に示すように、柱上変圧器、2つの低圧線及び需要家を接続する各ノードには、電圧が数値情報の一例として表示される。すなわち、ノードID「PO0009B31」のノードには、電圧「102.3[V]」及び「204.7[V]」が表示され、ノードID「PO0010」のノードには、電圧「102.1[V]」及び「204.6[V]」が表示され、ノードID「PO0011」のノードには、電圧「102.1[V]」及び「204.6[V]」が表示されるとともに、設備ID「LL908」の需要家が引込線に接続されるノードには、電圧「102.1[V]」及び「204.6[V]」が表示される。これによって、電圧降下を運用担当者に確認させることができる。
ここで、図6に示す第2の配電区間の表示と共に、第2の配電区間に含まれる低圧設備に関する数値情報または数値情報の時間変化をグラフにより表示することもできる。例えば、図7及び図8に示すように、柱上変圧器からの距離と電圧との関係の一例を示すグラフを表示させることができる。図7及び図8のグラフの縦軸は、電圧[V]を指し、横軸は、柱上変圧器からの距離を指す。これら図7及び図8に示すグラフの表示により、電圧降下を運用担当者に確認させると共に、電圧降下が急峻な部位を視認させやすくすることができる。例えば、図7に示すグラフの表示により、第2の配電区間に含まれる各低圧設備が101V±6Vの標準電圧の範囲内に収まっているかどうかを運用担当者に把握させることができる。図7の例で言えば、第2の配電区間において標準電圧を逸脱することはないが、ノードID「PO0009B31」及び「PO0010」の2つのノードを持つ低圧線で他の箇所に比べて電圧降下が大きいことを折れ線の勾配により把握させやすくできる。
また、図6に示す第2の配電区間の表示と共に、図9及び図10に示すように、配電ロスの時間変化を示すグラフを表示させることもできる。図9及び図10のグラフの縦軸は、配電ロス[V]を指し、横軸は、期間[Date/Time]を指す。このうち、図9には、指定の低圧線221Bを配下に収容する柱上変圧器B31に関する1日あたりの平均の配電ロスの推移が示されている。このように柱上変圧器B31の配電ロスの推移が表示されることにより、例えば、柱上変圧器B31の配電ロスが年間を通じて特に高いなどの傾向があれば、バンクのサイズを大きくし、配電ロスを減らすことが可能である。また、図10には、柱上変圧器B31から指定の低圧線221Bを経由して需要家に至る第2の配電区間内に収容される低圧線および引込線に関する1日あたりの平均の配電ロスの推移が示されている。このように低圧線や引込線の配電ロスの推移が表示されることにより、配電ロスでボトルネックになっている電線を把握させやすくできる。例えば、図10の例では、低圧線221Bの配電ロスが特に大きいので、低圧線221Bの電線の太さを大きくするなどの対策を取れば配電ロスを解消できる旨を運用担当者に把握させることができる。
また、図6に示す第2の配電区間の表示と共に、図11及び図12に示すように、電線裕度の時間変化を示すグラフを表示させることもできる。図11及び図12のグラフの縦軸は、電線裕度[%]を指し、横軸は、期間[Date/Time]を指す。このうち、図11には、指定の低圧線221B(4本)に関する1日あたりの平均の電線裕度の推移が示されている。このように1日あたりの平均の電線裕度の推移が表示されることにより、指定の低圧線221Bの容量に余裕があるかどうかを中長期のスパンで運用担当者に把握させることができる。例えば、図11の例で言えば、電線裕度が中長期のスパンで低いので、配電線には余裕があることを運用担当者に把握させることができる。また、図12には、指定の低圧線221B(4本)に関する各時間帯の電線裕度の推移が1日間にわたって示されている。このように各時間帯の電線裕度の推移が表示されることにより、指定の低圧線221Bの容量に余裕があるかどうかを図11よりも短期のスパンで運用担当者に把握させることができる。例えば、図11及び図12の例で言えば、電線裕度が短期のスパンおよび中長期のスパンの両方で低いので、現状よりも電線の太さを細くしても余裕があることを運用担当者に把握させることができる。
(2)高圧指定時
一方、高圧線221Aが指定された場合、第1の配電区間が抽出された上で、図13に示すように、第1の配電区間が他の部分とは異なる表示形態で表示される。すなわち、図13に示すように、高圧線221Aの上流側の開閉器は、ノードID「PO0001」の電柱よりも1つ前の電柱に特定される一方で、高圧線221Aの下流側の開閉器は、高圧系統の末端まで存在しない。このため、ノードID「PO0020」及びノードID「PO0021B61」の2つのノードを含む高圧線が仮想的に高圧線221Aの下流側の開閉器として特定される。この結果、高圧線221Aの上流側に存在する配電用変電所手前の開閉器から、高圧系統の末端の高圧線、すなわちノードID「PO0020」及びノードID「PO0021B61」の2つのノードを含む高圧線までの区間が第1の配電区間として抽出される。その上で、第1の配電区間が黒の太線で強調表示される。このように高圧線221Aが選択された場合には、当該高圧線221Aを流れる電気の向きを表す矢印、すなわちノードID「PO0010」のノードからノードID「PO0011」のノードへの矢印も併せて表示される。これによって、逆潮流の発生時にはその旨を運用担当者に一目で把握させる。
さらに、図13に示すように、第1の配電区間のうち柱上変圧器が存在する各ノードには、配電用変電所の送出電圧「6750[V]」と共に、3本の高圧線の電圧の各々が数値情報の一例として表示される。すなわち、ノードID「PO0003B11」のノードには、電圧「6749[V]」、「6749[V]」及び「6749[V]」が表示され、ノードID「PO0005B21」のノードには、電圧「6748[V]」、「6748[V]」及び「6748[V]」が表示される。さらに、ノードID「PO0009B31」のノードには、電圧「6748[V]」、「6748[V]」及び「6748[V]」が表示され、ノードID「PO0014B41」のノードには、電圧「6748[V]」、「6748[V]」及び「6747[V]」が表示される。さらに、ノードID「PO0017B51」のノードには、電圧「6748[V]」、「6748[V]」及び「6747[V]」が表示され、ノードID「PO0021B61」のノードには、電圧「6748[V]」、「6748[V]」及び「6747[V]」が表示される。これによって、電圧降下を運用担当者に確認させることができる。
ここで、図13に示す第1の配電区間の表示と共に、第1の配電区間に含まれる高圧設備に関する数値情報または数値情報の時間変化をグラフにより表示することもできる。例えば、図14〜図16に示すように、高圧線221Aのa、b、cの3相の電圧の時間変化を示すグラフを表示させることができる。図14〜図16のグラフの縦軸は、電圧[V]を指し、横軸は、期間[Date/Time]を指す。このうち、図14には、指定の高圧線221Aの1年間にわたる平均電圧の推移が示されている。このように1年間にわたる平均電圧の推移が表示されることにより、例えば、冬に変電所からの送出電圧が変わるため、冬に電圧が高い傾向にあることを運用担当者に把握させることができる。また、図15には、指定の高圧線221Aに関し、1年間のうち同一の時間帯で最も高い電圧が各時間帯ごとにプロットされたグラフが示されている。これによって、例えば、早朝(5時〜6時)に3相のバランスが温水器などの稼働による影響によって崩れる時間帯が存在すること、さらには、20時頃は電気が利用される時間帯であるので電圧が下がることなどを運用担当者に把握させることができる。さらに、図16には、指定の高圧線221Aに関し、1年間のうち同一の時間帯で最も低い電圧が各時間帯ごとにプロットされたグラフが示されている。これによって、例えば、20時頃は電気が利用される時間帯であるので電圧が下がることなどを運用担当者に把握させることができる。
また、図13に示す第1の配電区間の表示と共に、図17〜図19に示すように、高圧線221Aのa、b、cの3相の電流の時間変化を示すグラフを表示させることもできる。図17〜図19のグラフの縦軸は、電流[A]を指し、横軸は、期間[Date/Time]を指す。このうち、図17には、指定の高圧線221Aの1年間にわたる平均電流の推移が示されている。このように1年間にわたる平均電流の推移が表示されることにより、例えば、冬に電気を使う傾向にあることを運用担当者に把握させることができる。また、図18には、指定の高圧線221Aに関し、1年間のうち同一の時間帯で最高の電流が各時間帯ごとにプロットされたグラフが示されている。これによって、例えば、20時頃は電気が利用される時間帯であるので、電流値が上がり、特にb相で顕著であることがわかる。さらに、図19には、指定の高圧線221Aに関し、1年間のうち同一の時間帯で最低の電流が各時間帯ごとにプロットされたグラフが示されている。これによって、例えば、15時頃は電気が利用されない時間帯であるので電流が小さくなる傾向にあることなどを運用担当者に把握させることができる。
また、図13に示す第1の配電区間の表示と共に、図20及び図21に示すように、第1の配電区間に含まれる各柱上変圧器、すなわちノードID「PO0003B11」、「PO0005B21」、「PO0009B31」、「PO0014B41」、「PO0017B51」及び「PO0021B61」の6つのバンクの利用率の時間変化を示すグラフを表示させることもできる。図20及び図21のグラフの縦軸は、利用率[%]を指し、横軸は、期間[Date/Time]を指す。このうち、図20には、第1の配電区間に含まれる柱上変圧器ごとに当該柱上変圧器の1日あたりの平均の利用率の推移が1年間にわたって示されている。このように1日あたりの平均の利用率の推移が柱上変圧器ごとに表示されることにより、例えば、6つのバンクの中で「PO0014B41」のバンクの利用率が最も高く、その中でも1月6日にピークがあることがわかる。また、図21には、第1の配電区間に含まれる柱上変圧器ごとに当該柱上変圧器の各時間帯の利用率の推移が1日間にわたって示されている。このように各時間帯の利用率の推移が柱上変圧器ごとに表示されることにより、例えば、昼は利用率が低いので、昼に利用が多い需要家(商店など)が新規増設される場合は、バンクの容量変更やつなぎ換えなどの現場工事を伴う可能性が低いことを運用担当者に把握させることができる。また、「PO0014B41」のバンクの利用率が年間で最も高い1月6日の中でも、特に19時頃高くなることをさらに運用担当者に把握させることができる。
(3)技術的意義の一側面
上記(2)で示した表示により、高圧系統の中でも指定の高圧設備を含む開閉器区間に絞って設備情報又は数値情報を表示できるので、多くの高圧設備の中から目的とする高圧設備または配電設備の稼働に関する数値などをたやすく入手させることができる。また、上記(1)で示した表示により、低圧系統の中でも指定の低圧設備を含むバンク配下及び需要家の区間に絞って設備情報又は数値情報を表示できるので、多くの低圧設備の中から目的とする低圧設備または低圧設備の稼働に関する数値などをたやすく入手させることができる。よって、配電設備の情報把握の容易化を図ることができる。
さらに、指定を受け付けた配電設備が高圧設備または低圧設備であるかによって表示させる区間を第1の配電区間または第2の配電区間に変えるので、高圧系統及び低圧系統の運用担当者が共通して1つのシステムを使用する場合でも、各運用担当者が入手したい情報を容易に入手させることができる。すなわち、従来においては、高圧系統用のシステムと低圧系統用のシステムとが別個に構築されていたが、両者が1つのシステムとして構築されるケースが想定される。これは、太陽光発電等の分散型電源の増加により逆潮流が発生することが原因となっている。すなわち、逆潮流が発生していなければ、高圧系統及び低圧系統の各運用担当者は、自分が担当する系統だけを監視していればよかったが、逆潮流が発生する場合、故障等の異常の原因が他の系統にまたがる場合が出てくるので、自分が担当する系統だけを監視していればよいという訳にはいかない。これらのことから、高圧系統用のシステムと低圧系統用のシステムとが1つのシステムとして構築されるケースが想定される。このような場合でも、自分が担当する系統の設備に絞って設備情報や数値情報を表示させたり、自分が担当する系統の設備に連なる他の系統の設備を指定することにより、他の系統の設備の中でも自分が担当する系統の設備に関係する部分に絞って設備情報や数値情報を表示させたりすることができる。
[処理の流れ]
図22は、実施例1に係る情報出力処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、受付部15bにより配電設備の指定が受け付けられた場合に起動される。図22に示すように、受付部15bは、配電系統図上で配電設備の指定を受け付ける(ステップS101)。
このとき、ステップS101で配電設備が指定された位置に高圧系統の配電設備及び低圧系統の配電設備の両方が存在する場合(ステップS102Yes)、抽出部15cは、これらの配電設備が「電線」または「電柱」のいずれであるかを判別する(ステップS103)。なお、高圧系統の配電設備及び低圧系統の配電設備のうちいずれかの配電設備しか存在しない場合(ステップS102No)、後述のステップS106へ移行する。
ここで、指定の配電設備が「電線」である場合(ステップS103Yes)、配電設備が指定された位置に高圧線と低圧線の両方が存在することがわかる。この場合、抽出部15cは、改めて高圧線または低圧線のいずれかの指定を受付部15bを介して受け付けさせる(ステップS104)。一方、配電設備が「電柱」である場合(ステップS103No)、抽出部15cは、ステップS101で指定された配電設備が低圧設備であると解釈する(ステップS105)。
その上で、指定の配電設備が「高圧設備」である場合(ステップS106Yes)、抽出部15cは、2つの開閉器に挟まれ、ステップS101で指定された高圧設備を含む「第1の配電区間」を抽出する(ステップS107)。算出部15dは、第1の配電区間の各配電設備の電圧や電流などを含む数値情報を算出する(ステップS108)。その後、出力部15eは、ステップS107で抽出された第1の配電区間に含まれる高圧設備に関する設備情報及び数値情報をクライアント端末70に表示させ(ステップS109)、処理を終了する。
一方、指定の配電設備が「低圧設備」である場合(ステップS106No)、抽出部15cは、少なくとも、ステップS101で指定された低圧設備を含む低圧系統に含まれる柱上変圧器から指定の低圧設備を介して配電される低圧の配電先に対応する需要家と、先の柱上変圧器とに挟まれる「第2の配電区間」を抽出する(ステップS110)。算出部15dは、第2の配電区間の各配電設備の電圧や電流などを含む数値情報を算出する(ステップS111)。その後、出力部15eは、ステップS110で抽出された第2の配電区間に含まれる低圧設備に関する設備情報及び数値情報をクライアント端末70に表示させ(ステップS112)、処理を終了する。
[効果の一側面]
上述してきたように、本実施例に係るサーバ装置10は、配電システムのうち指定を受け付けた配電設備に連なり、かつ2つの開閉器間を境界に区切られた配電区間に含まれる高圧系統に関する設備情報又は数値情報を出力する。したがって、本実施例に係るサーバ装置10によれば、配電設備の情報把握の容易化を図ることができる。