JP2016078197A - 窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および窒化珪素球状体の検査方法 - Google Patents

窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および窒化珪素球状体の検査方法 Download PDF

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勝利 村松
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Abstract

【課題】表面上の傷や研磨痕などの凹凸が低減されている窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および当該窒化珪素球状体を検査する窒化珪素球状体の検査方法を提供する。
【解決手段】主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体1と、球状体1よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒2とを準備する工程と、複数の球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合することにより球状体1同士を摺接させる工程とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および窒化珪素球状体の検査方法に関し、特に軸受用転動体に好適である窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および窒化珪素球状体の検査方法に関する。
ベアリング(軸受)用転動体の材料には主に軸受鋼が用いられるが、高速回転、絶縁性、耐熱性、耐腐食性などの特性が要求される用途にはセラミックスが用いられる。一般にベアリング用のセラミックス材料には、高強度、高靱性および高硬度を有するとともに耐熱性および耐食性に優れる窒化珪素(Si)が用いられる。
また、転動体に使用される球状体の製造方法は、一般に転動体材料よりも高硬度の材料からなる砥粒または砥石を用いて、転動体の表面を研磨する工程を含んでいる。
特開2011−73076号公報には、互いに平面で対向する一対の加工定盤間に複数個のグリーンボールを挟み込み、両加工定盤の対向平面に沿う複数系統の相対移動で、グリーンボールに公転と、各種方向に自転とを行なわせながら、グリーンボールを真球に近い形状に研磨する研磨装置が開示されている。複数系統の相対移動とは、たとえば両加工定盤の互いに偏心した回転や、回転と直進との組み合わせ等である。この研磨装置を用いた研磨方法は、結合材の組成に制約がなく、かつ同時に複数個の加工が可能である。
また、特開平3−117558号公報には、定盤を用いずに容器に遊離砥粒を分散させた懸濁液とセラミックス球を入れ、懸濁液を撹拌させることによりセラミックス球を加工する方法が開示されている。また、遊離砥粒として、セラミックス球よりも高硬度であるダイヤモンド、緑色炭化珪素(GC)、白色アルミナ(WA)を用いることが開示されている。
特開2011−73076号公報 特開平3−117558号公報
しかしながら、窒化珪素を材料とした球状体を上記のような従来の製造方法により製造する場合、窒化珪素よりも高硬度の砥粒で研磨されることから、球状体の表面には砥粒の粒度に応じた傷や研磨痕が残ってしまう。
表面に傷や研磨痕が生じている球状体を軸受用転動体として用いた場合には、軸受寿命が低下する可能性がある。
仮に、粒度の小さい微細砥粒を用いた場合には球状体の表面粗さRa値を0.01μm以下とすることはできるが、それでもその表面には粒度に応じた傷や研磨痕が生じることから、このような球状体を軸受用転動体として用いた場合には、軸受寿命が低下する可能性がある。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものである。本発明の主たる目的は、表面の傷や研磨痕などの凹凸が低減されている窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および当該窒化珪素球状体を検査する窒化珪素球状体の検査方法を提供することにある。
本発明の窒化珪素球状体の製造方法は、主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体と、前記球状体よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒とを準備する工程と、複数の前記球状体と前記金属酸化物粉末と前記分散媒とを混合することにより前記球状体同士を摺接させる工程とを備える。
本発明に依れば、表面上の傷や研磨痕などの凹凸が低減されている窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および当該窒化珪素球状体を検査する窒化珪素球状体の検査方法を提供することができる。
実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法を説明するための図である。 図1中の矢印IIから見た断面図である。 実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法のフローチャートである。 実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法のフローチャートである。 実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法における球状体の検査方法を説明するための図である。 実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法における球状体の検査方法の変形例を説明するための図である。 実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法のフローチャートである。 実施例1における比較例の窒化珪素球状体の製造方法を説明するための図である。 実施例1における実施例の窒化珪素球状体のボールミル処理前の顕微鏡像である。 実施例1における実施例の窒化珪素球状体のボールミル処理後の顕微鏡像である。 実施例1における比較例の窒化珪素球状体の撹拌処理前の顕微鏡像である。 実施例1における比較例の窒化珪素球状体の撹拌処理後の顕微鏡像である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
はじめに、本発明の実施の形態の概要を列挙する。
(1)ある実施例において、窒化珪素球状体は、球状体1の表面からの深さが150μmよりも浅い領域において、外形の最大幅が25μm以上の欠陥が無い。
このような球状体1が軸受用転動体として用いられた場合、表面(転動面)からの深さが150μmよりも浅い領域に、軸受使用時の球状体1において最大のせん断応力が作用する領域は含まれている。そのため、球状体1は、このような最大のせん断応力が印加されたときにも、内部欠陥を起点としたクラック等の発生が抑制されている。つまり、表面(転動面)からの深さが150μmよりも浅い領域において、外形の最大幅が25μm以上の欠陥が無い球状体1は、軸受用転動体に好適である。
なお、このような球状体1は、表面の傷や研磨痕などの凹凸が十分に低減されているため、後述する球状体1を検査する工程(S30)を備える窒化珪素球状体の製造方法、または窒化珪素球状体の検査方法が実施されることにより得られる(選別され得る)。
また、このような球状体1は、表面の傷や研磨痕などの凹凸が十分に低減されているため、軸受用転動体として用いられた場合には当該凹凸に起因して軸受寿命が短くなることを防止することができる。
また、このような球状体1は、表面の傷や研磨痕などの凹凸が十分に低減されているため、軸受用転動体として用いられたときに軸受音響を小さくすることができ、軸受の音響特性を向上することができる。なお、このような球状体1は、上述のような窒化珪素球状体の製造方法が実施されることにより、製造することができる。
(2)別の実施例において、窒化珪素球状体の製造方法は、主な構成材料が窒化珪素(Si)である複数の球状体1と、球状体1よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒2とを準備する工程(S10)と、複数の球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合することにより球状体1同士を摺接させる工程(S20)とを備える。
ここで、球状体1の主な構成材料が窒化珪素であるとは、球状体1の50体積%以上を構成する材料が窒化珪素であるものをいう。言い換えると、球状体1は、50体積%以上の窒化珪素を含んでおり、たとえば80体積%以上98体積%以下の窒化珪素を含んでいる。また、球状体1同士を摺接させるとは、球状体1同士が互いの表面を摺りあいながら接触している状態に置くことをいう。
このようにすれば、摺接させる工程(S20)において球状体1は自身より高硬度の材料からなる砥粒で研磨されることがないため、該工程(S20)中において球状体1の表面に傷や研磨痕が生じることを抑制することができる。
さらに摺接させる工程(S20)において球状体1と金属酸化物粉末とが混合されることにより、球状体1はその表面を金属酸化物粉末に擦過される。さらに、金属酸化物粉末の種類によっては、球状体1はその表面において金属酸化物粉末と化学的な反応を起こす。このような機械的作用および化学的作用により、球状体1の表面の凹凸部を緩和あるいは除去することができる。つまり、準備する工程(S10)において所定の形状精度(真球度など)となるように加工され、表面に傷や研磨痕などの凹凸部が形成されている球状体1が準備されても、摺接させる工程(S20)において当該凹凸部を緩和、除去することができる。
その結果、本窒化珪素球状体の製造方法によれば、高い寸法精度を有するとともに、表面上の傷や研磨痕などの凹凸が低減されている窒化珪素球状体を製造することができる。
(3)別の実施例において、金属酸化物粉末は、酸化鉄(Fe)、酸化クロム(CrO)、および酸化セリウム(CeO)からなる群から選択される少なくとも1つである。
このようにすれば、Fe、CrO、およびCeOはそれぞれ窒化珪素(Si)よりも低硬度であるため、上記摺接させる工程(S20)において混合される複数の球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とにおいて、窒化珪素を主な構成材料とする球状体1よりも硬度が高い材料が存在しない。そのため、該工程(S20)中において球状体1の表面に傷や研磨痕などの凹凸が形成されることを抑制することができる。
さらに、Fe、CrO、およびCeOは、窒化珪素に対してその表面を酸化させる触媒として機能する。これにより、主な構成材料が窒化珪素である球状体1の表面に傷や研磨痕などの凹凸が形成されている場合にも、当該凹凸部を酸化させてSiO層とすることができ、この結果、球状体1同士を摺接させることによって当該凹凸部を容易に除去することができる。つまり、金属酸化物粉末をFe、CrO、およびCeOからなる群から選択される少なくとも1つとすることにより、より容易に表面上の傷や研磨痕などの凹凸が低減されている窒化珪素球状体を製造することができる。
(4)別の実施例において、摺接させる工程(S20)は、球状体1と、金属酸化物粉末と、分散媒2とを容器10に収容する工程(S21)と、容器10を動かすことにより球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合する工程(S22)とを含む。
本願発明者らは、このようにすることで、摺接させる工程(S20)において容器10を動かすことなく撹拌子31などにより球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合する場合と比べて、製造された窒化珪素球状体の表面の傷や研磨痕などの凹凸および表面粗さRa値を低減することができることを見出した。なお、詳細は後述する。
また、混合する工程(S22)において、容器10は、その内部に収容されている複数の球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合しながら球状体1同士を摺接させることができる限りにおいて、任意に動かされ得るが、たとえば回転される。
(5)別の実施例において、容器10は筒状体であり、混合する工程(S22)では、容器10を回転させることにより球状体1同士を摺接させる。
これにより、容器10内に主要されている球状体1、金属酸化物粉末および分散媒2を均一に混合することができるとともに、球状体1同士を摺接させることができる。
(6)別の実施例では、摺接させる工程(S20)において、金属酸化物粉末は、分散媒2の1L当たり60g以上80g以下の割合で球状体1と分散媒2と混合される。
このようにすれば、高能率かつ低コストで、表面上の傷や研磨痕などの凹凸が低減されている窒化珪素球状体を製造することができる。
(7)別の実施例において、窒化珪素球状体の製造方法は、摺接させる工程(S20)の後に、球状体1を検査する工程(S30)をさらに備え、球状体1を検査する工程(S30)では、球状体1に対して光を照射させ、球状体1の少なくとも一部を透過した光を検出することにより、球状体1の内部欠陥の有無を検査する。
球状体1に照射された光は、窒化珪素の透光性により球状体1の内部を透過して、球状体1の内部欠陥等により反射、吸収、屈折などされる。ここで、球状体1の表面上に傷や研磨痕などの凹凸が形成されている場合には、球状体1の内部を透過して再び球状体1の表面に達した光は当該表面上の凹凸により散乱、減衰などされる。よって、従来の窒化珪素球状体の製造方法により製造された窒化珪素球状体は、表面粗さが大きく、窒化珪素の透光性を利用した内部欠陥評価が可能な領域は表面近傍の領域に限られていた。
これに対し、上述のように、摺接させる工程(S20)により得られた窒化珪素球状体は、表面上の傷や研磨痕などの凹凸が低減されているため、このような球状体1に対して照射された光は球状体1の表面上の凹凸に起因して反射、吸収、屈折などされることが抑制されている。そのため、このような球状体1に照射された光のうち、球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)は、球状体1の内部から外部に進行する際にも球状体1の表面上の凹凸の影響を受にくい。その結果、従来よりも球状体1内部のより深い位置からの反射光などを検出することができる。このため、このような球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)を捉えることにより、球状体1の表面からより深い領域での内部欠陥の有無などの情報を精度良く得ることができる。
つまり、本窒化珪素球状体の製造方法によれば、従来の窒化珪素球状体の製造方法と比べて、より深い領域の内部欠陥についても高い精度で検査がなされた窒化珪素球状体を製造することができる。たとえば、球状体1が軸受用転動体として使用されたときに、球状体1においてせん断応力が最大となる領域の転動面からの深さは約120μmであるが、従来の窒化珪素球状体の製造方法ではこのような深さにある領域の内部欠陥については高い精度で検査された窒化珪素球状体を製造することができなかった。これに対し、本窒化珪素球状体の製造方法では、このような深さにある領域の内部欠陥についても高い精度で検査された窒化珪素球状体を製造することができる。
(8)別の実施例において、球状体1を検査する工程(S30)は、光が照射された球状体1を拡大鏡を用いて目視検査することにより実施される。
このようにしても、球状体1の内部欠陥の有無を高精度にかつ容易に検査することができる。
(9)別の実施例において、球状体1を検査する工程(S30)は、球状体1にレーザ光を照射したときに生じる反射光から、反射率または吸収率の変化を捉えることにより実施される。
このようにしても、球状体1の内部欠陥の有無を高精度にかつ容易に検査することができる。
(10)別の実施例において、窒化珪素球状体の検査方法は、主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体と、前記球状体よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒とを混合して前記球状体同士を摺接させることにより得られた球状体1を準備する工程(S40)と、球状体1に対して光を照射させ、球状体1の少なくとも一部を透過した光を検出することにより、球状体1の内部欠陥の有無を検査する工程(S50)とを備える。
このようにすれば、検査対象である球状体1の表面の傷や研磨痕などの凹凸が十分に低減されているため、このような球状体1に対して照射された光は球状体1の表面上の凹凸に起因して反射、吸収、屈折などされることが抑制されている。そのため、このような球状体1に照射された光のうち、窒化珪素の透光性により球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)は、球状体1の表面上の凹凸により散乱等されることが抑制されている。その結果、従来よりも球状体1内部のより深い位置からの反射光などを検出することができる。このため、このような球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)を捉えることにより、球状体1の表面からより深い領域での内部欠陥の有無などの情報を精度良く得ることができる。
つまり、本窒化珪素球状体の検査方法によれば、従来の窒化珪素球状体の検査方法と比べて、窒化珪素球状体に対してより深い領域の内部欠陥についても高い精度で検査することができる。
(実施の形態1)
図1〜図3を参照して、実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法について説明する。実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法は、主な構成材料が窒化珪素(Si)である複数の球状体1と、球状体1よりも低硬度の金属酸化物粉末(図示しない)と、分散媒2とを準備する工程(S10)と、複数の球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合することにより球状体1同士を摺接させる工程(S20)とを備える。
まず、主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体1と、球状体1よりも低硬度の金属酸化物粉末(図示しない)と、分散媒2とを準備する(工程(S10))。
球状体1は、たとえば窒化珪素の原料粉末が球状に成形され、当該成形体に対して加圧焼結や常圧焼結などが実施されることにより準備される。球状体1は、さらに、窒化珪素よりも高硬度の砥粒(たとえばダイヤモンド、緑色炭化珪素(GC)系、白色アルミナ(WA)系など)により研磨されたものであってもよい。
球状体1の外径は、任意の大きさとすればよいが、たとえば軸受用転動体としてJIS規格やISO規格などにより標準化された寸法である。本工程(S10)では、球状体1は複数個準備される。このとき、複数の球状体1は、それぞれほぼ同寸法であるのが好ましい。
金属酸化物粉末は、球状体1の主な構成材料である窒化珪素よりも低硬度の金属酸化物を粉末状にしたものである。金属酸化物粉末は、球状体1よりも低硬度である。金属酸化物粉末は、たとえば酸化鉄(Fe)、酸化クロム(CrO)、および酸化セリウム(CeO)からなる群から選択される少なくとも一つである。金属酸化物粉末の粒子径(粒度)は、たとえば砥粒や遊離砥粒として一般的に扱われている任意の大きさとすればよいが、好ましくは1μm以下である。なお、金属酸化物粉末の粒子径の分布(粒度分布)は、金属酸化物粉末が球状体1よりも低硬度であるため、厳しく制限される必要はない。
分散媒2は、金属酸化物粉末が懸濁される液体である。分散媒2は、金属酸化物粉末を懸濁させることができる限りにおいて任意の液体とすることができるが、たとえばOH基をもつ液体であり、水やアルコールなどである。
次に、複数の球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合することにより球状体1同士を摺接させる(工程(S20))。
本工程(S20)では、まず、先の工程(S10)において準備した複数の球状体1、金属酸化物粉末、および分散媒2を、容器10に収容する(工程(S21))。容器10は、所定量の球状体1、金属酸化物粉末、および分散媒2を収容可能な限りにおいて、任意の形状および寸法を有していればよい。容器10は、たとえば直径200mm、軸方向における長さが200mmの円筒状であって、容器10を構成する材料がポリエチレンである。このような容器10には、たとえば外径が10.3188mm(13/32インチ)の球状体1を300個と、金属酸化物粉末を100g、分散媒2を1.5L収容させることができる。このとき、分散媒2と金属酸化物粉末とは、分散媒2の1L当たり60g以上80g以下の割合で容器10内に収容され、混合されるのが好ましい。
容器10は、中心軸Cを回転軸とするように、回転可能に設けられている。容器10は、たとえば水平方向において互いに平行に延びるように配置されている2つのローラ11上に配置されている。このとき、容器10の中心軸Cは、ローラ11の回転軸と平行である。2つのローラ11はたとえば円柱状に設けられている。すなわち、容器10およびローラ11は、ボールミルとして構成されていてもよい。
次に、容器10を動かすことにより球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合する(工程(S22))。たとえば、中心軸Cを回転軸として容器10を回転させることにより、容器10内に収容されている球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とを混合する。すわなち、工程(S22)において、球状体1と金属酸化物粉末と分散媒2とは、たとえばボールミルにより均一に混合される。このときの処理条件は、球状体1同士を摺接させることができるように選択される。容器10の回転数は、任意に選択することができ、たとえば10rpm以上100rpm以下である。
このようにして、本工程(S20)では球状体1同士を摺接させることができる。
上記工程(S10)〜工程(S20)が実施されることにより、窒化珪素球状体が製造され、実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法が完了する。
このようにすれば、摺接させる工程(S20)において球状体1は自身より高硬度の材料からなる砥粒で研磨されることがないため、該工程(S20)中において球状体1の表面に傷や研磨痕が生じることを抑制することができる。
さらに摺接させる工程(S20)において球状体1と金属酸化物粉末とが混合されることにより、球状体1はその表面を金属酸化物粉末に擦過される。さらに、金属酸化物粉末の種類によっては、球状体1はその表面において金属酸化物粉末と化学的な反応を起こす。このような機械的作用および化学的作用により、球状体1の表面の凹凸部を緩和あるいは除去することができる。つまり、準備する工程(S10)において所定の寸法精度(真球度など)となるように加工され、表面に傷や研磨痕などの凹凸部が形成されている球状体1が準備されても、摺接させる工程(S20)において当該凹凸部を緩和、除去することができる。
また、金属酸化物粉末をFe、CrO、およびCeOからなる群から選択される少なくとも1つとすることにより、主な構成材料が窒化珪素である球状体1の表面に傷や研磨痕などの凹凸が形成されている場合にも、当該凹凸部を酸化させてSiO層とすることができ、この結果、球状体1同士を摺接させることによって当該凹凸部を容易に除去することができる。
また、分散媒2を水とすることにより、摺接させる工程(S20)において球状体1の表面に容易にSiO層を形成することができる。すなわち、球状体1同士を酸化鉄などの触媒活性を有しメカノケミカル反応を起こすことができる紛末とともに水中で摺接させることにより、メカノケミカル反応(トライボケミカル反応)を起こすことができる。その結果、主な構成材料が窒化珪素である球状体1の表面に傷や研磨痕などの凹凸が形成されている場合にも、当該凹凸部の窒化珪素と水と金属酸化物粉末とによりSiO層を容易に生成することができ、当該SiO層を球状体1同士が摺接したときの摩擦によって球状体1の表面から容易に除去することができる。
本願発明者らは、実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法により製造された窒化珪素球状体は、表面粗さRaが0.004μm未満であって、アンデロン値が低く抑えられていることを確認した(詳細は後述する)。つまり、窒化珪素球状体は、軸受用転動体として好適であり、表面の凹凸に起因して軸受寿命が短くなることが抑制されており、かつ軸受音響を小さく抑えることができる。
(実施の形態2)
次に、図4を参照して、実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法について説明する。実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法は、基本的には実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法と同様の構成を備えるが、摺接させる工程(S20)の後に、球状体1を検査する工程(S30)をさらに備える点で異なる。
球状体1を検査する工程(S30)では、球状体1に対して光を照射させ、球状体1の少なくとも一部を透過した光を検出することにより、球状体1の内部欠陥の有無を検査する。
図5を参照して、球状体1を検査する工程(S30)は、光が照射された球状体1を実体顕微鏡20などの拡大鏡を用いて目視検査することにより実施され得る。
また、図6を参照して、球状体1を検査する工程(S30)は、球状体1にレーザ光を照射したときに生じる反射光から、反射率または吸収率の変化を捉えることにより実施されてもよい。このときの検査系は、たとえば光源21、反射鏡22、レンズ23、受光素子24、および処理装置25で構成される。光源21は、球状体1にレーザ光を照射可能に設けられている。反射鏡22は、球状体1にレーザ光を照射したときに生じる反射光をレンズ23に入光させ、レンズ23は当該反射光を受光素子24上に集光させる。受光素子24は、当該反射光を受光し、受光信号を処理装置25に出力する。処理装置25は、受光素子24から受けた受光信号を処理し、球状体1の内部欠陥の有無等の処理結果を出力する。
摺接させる工程(S20)により得られた窒化珪素球状体は、表面上の傷や研磨痕などの凹凸が低減されているため、このような球状体1に対して照射された光は球状体1の表面上の凹凸に起因して反射、吸収、屈折などされることが抑制されている。そのため、このような球状体1に照射された光のうち、球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)は、球状体1の内部から外部に進行する際にも球状体1の表面上の凹凸の影響を受にくい。その結果、このような球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)を捉えることにより、球状体1の表面からより深い領域での内部欠陥の有無などの情報を精度良く得ることができる。これにより、実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法によれば、従来の窒化珪素球状体の製造方法と比べて、より深い領域の内部欠陥についても高い精度で検査がなされた窒化珪素球状体を製造することができる。
上述のように、球状体1が軸受用転動体として使用されたときに、球状体1においてせん断応力が最大となる領域の転動面からの深さは約120μmであるが、実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法では、このような深さにある領域の内部欠陥についても高い精度で検査された窒化珪素球状体を製造することができる。
その結果、摺接させる工程(S20)による処理がなされた球状体1のうち、球状体1の表面からの深さが150μmよりも浅い領域において、外形の最大幅が25μm以上の欠陥が無い球状体1と、そうでない球状体1とを選り分けることができる。軸受用転動体に好適である。
(実施の形態3)
次に、図7を参照して、実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法について説明する。実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法は、主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体1と、球状体よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒2とを混合して球状体1同士を摺接させることにより得られた球状体1を準備する工程(S40)と、球状体1に対して光を照射させ、球状体1の少なくとも一部を透過した光を検出することにより、球状体1の内部欠陥の有無を検査する工程(S50)とを備える。
まず、球状体1を準備する(工程(S10))。球状体1は、主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体と、球状体よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒とを混合することにより球状体同士を摺接させることにより得られたものである。このときの球状体1の表面粗さRa値は、たとえば0.004μm未満である。また、球状体1は、その表面が透光性を有する材料からなる薄膜により覆われてもよい。この場合、主な構成材料が窒化珪素である球状体および該球状体を覆うように形成された薄膜の表面の傷や研磨痕などの凹凸が十分に低減されている。
次に、球状体1に対して光を照射させ、球状体1の少なくとも一部を透過した光を検出することにより、球状体1の内部欠陥の有無を検査する(工程(S50))。
本工程(S50)は、実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法における、球状体1を検査する工程(S30)と同様に実施され得る。具体的には、本工程(S50)は、図5に示すように、たとえば光が照射された球状体1を実体顕微鏡などの拡大鏡を用いて目視検査することにより実施され得る。また、本工程(S50)は、図6に示すように、球状体1を検査する工程(S30)は、球状体1にレーザ光を照射したときに生じる反射光から、反射率または吸収率の変化を捉えることにより実施されてもよい。
先の工程(S40)において準備した球状体1は、表面の傷や研磨痕などの凹凸が低減されている。そのため、このような球状体1に対して照射された光は球状体1の表面上の凹凸に起因して反射、吸収、屈折などされることが抑制されている。また、球状体1は、主な構成材料が窒化珪素であるため透光性を有している。そのため、このような球状体1に照射された光のうち、窒化珪素の透光性により球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)は、球状体1の表面上の凹凸により散乱等されることが抑制されている。その結果、このような球状体1の少なくとも一部を透過した光(反射光、透過光、屈折光など)を捉えることにより、球状体1の表面からより深い領域での内部欠陥の有無などの情報を精度良く得ることができる。
つまり、本窒化珪素球状体の検査方法によれば、従来の窒化珪素球状体の検査方法と比べて、窒化珪素球状体に対してより深い領域の内部欠陥についても高い精度で検査することができる。
なお、実施の形態2に係る窒化珪素球状体の製造方法および実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法では、図5や図6に示す検査系を例示しているが、これに限られるものではない。球状体1に対して光を照射させ、球状体1の少なくとも一部を透過した光を検出することが可能である限りにおいて、任意の方法を採用し得る。
次に、実施例について説明する。
実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法に従って製造された窒化珪素球状体について、表面粗さを評価した。
はじめに、実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法の球状体1同士を摺接させる工程(S20)において、複数の前記球状体と金属酸化物粉末と分散媒とを混合することにより球状体同士を摺接させる処理方法と、得られた球状体1の表面粗さとの関係を評価した。
まず、窒化珪素の含有率が80体積%以上98体積%以下である球状体を複数個準備した。球状体は、砥粒にダイヤモンドを用いて研磨加工されたものとした。球状体の外径は13/32インチとした。球状体の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra値は0.004μmであった。図9および図11に、準備した球状体表面の顕微鏡像を示す。準備した球状体の表面には、傷や研磨痕が確認された。
(試料1〜試料3:実施例1)
次に、図1に示すように、実施例として、準備した球状体1をボールミル(容器10)に収容し、これを回転させることにより球状体1と分散媒2と金属酸化物粉末とを混合させた。具体的には、複数の球状体1と、分散媒2としての水と、金属酸化物粉末としての酸化鉄(Fe)、酸化クロム(CrO)、および酸化セリウム(CeO)のいずれか1つとをボールミル容器10に収容し、表1に示す条件でボールミル処理を行った。ボールミル容器10は、容器材質をポリエチレンとした。ボールミル容器10の形状は円筒状であり、容器の寸法は内径Φ200mm、軸方向の長さL200mとした。金属酸化物粉末に酸化鉄を用いてボールミル処理を行い試料1の球状体1を得た。また、酸化クロムを用いてボールミル処理を行い試料2の球状体1を得た。酸化セリウムを用いてボールミル処理を行い試料3の球状体1を得た。
(試料4、試料5:比較例1)
また、比較例として、複数の球状体と、分散媒としての水と、窒化珪素よりも高硬度の酸化アルミニウム(Al)とを上記ボールミル容器に収容し、表1に示す条件でボールミル処理を行い、試料4の球状体を得た。
また、比較例として、複数の球状体と、分散媒としての水とを上記ボールミル容器に収容し、表1に示す条件(金属酸化物粉末の収容量のみ0gに変更した)でボールミル処理を行い、試料5の球状体を得た。
(試料6〜試料10:比較例2)
さらに、図8を参照して、比較例として、上述のように準備した球状体1を内部において撹拌子31が回転可能に設けられている固定容器30に収容し、撹拌子31を回転させることにより球状体1と分散媒2と金属酸化物粉末とを混合させた。具体的には、複数の球状体1と、分散媒2としての水と、金属酸化物粉末としての酸化鉄(Fe)、酸化クロム(CrO)、酸化セリウム(CeO)、および酸化アルミニウム(Al)のいずれか1つとを固定容器30に収容し、表2に示す条件で撹拌処理を行った。その結果、金属酸化物粉末に酸化鉄を用いて作製された試料6の球状体、酸化クロムを用いて作製された試料7の球状体、酸化セリウムを用いて作製された試料8の球状体、および酸化セリウムを用いて作製された試料9の球状体を得た。
また、比較例として、複数の球状体と、分散媒としての水とを上記固定容器30に収容し、表2に示す条件(金属酸化物粉末の収容量のみ0gに変更した)で撹拌処理を行い、試料10の球状体を得た。
このようにして得られた試料1〜試料10の球状体に対し、真球度、直径不同、ロットの直径の相互差、表面粗さ(算術平均粗さ)Ra、寸法を測定した。表3に、ボールミル処理が施された試料1〜試料5の球状体に対する測定結果を上述したボールミル処理前の球状体の測定結果と合わせて示す。表4に、撹拌処理が施された試料6〜試料10の球状体に対する該測定結果を上述した撹拌処理前の球状体の測定結果と合わせて示す。
表3に示すように、ボールミル処理により、窒化珪素よりも低硬度の酸化鉄、酸化クロム、または酸化セリウムおよび水とともに混合された試料1〜試料3の球状体は、表面粗さRa値がボールミル処理前の0.0040μmから0.0019μm以下に低減していた。図10に、試料2の球状体の表面の顕微鏡像を示す。図9に示すボールミル処理前の被加工物球状体の顕微鏡像と比べて、傷や研磨痕が目立たなくなっていることが確認された。一方で、ボールミル処理の前後で真球度等の形状精度に変化は見られなかった。
窒化珪素よりも高硬度の酸化アルミニウムおよび水とともにボールミル処理された試料4の球状体は、表面粗さRa値がボールミル処理前の0.0040μmから0.0045μmに増加していた。これは、主な構成材料が窒化珪素である球状体同士が摺接される際に、球状体の表面を高硬度の酸化アルミニウムが擦過することにより、該表面に傷や研磨痕が生じるためと考えられる。
つまり、実施例1および比較例1の結果から、窒化珪素球状体よりも低硬度の金属酸化物粉末を用いてボールミル処理を行うことにより、球状体1の表面上の傷や研磨痕などの凹凸を十分に低減できることが確認された。また、真球度等の形状精度が十分に高められた球状体をボールミル処理することにより、形状精度が高く、かつ表面上の傷や研磨痕などが十分に低減された球状体を得ることができることが確認された。
また、表4に示すように、撹拌処理により、窒化珪素よりも低硬度の酸化鉄、酸化クロム、または酸化セリウムおよび水とともに混合された試料6〜試料8の球状体は、撹拌処理の前後で表面粗さRa値に変化が見られなかった。図12に、撹拌処理後の試料7の球状体の表面の顕微鏡像を示す。金属酸化物粉末を用いて撹拌処理を行っても、図11に示す撹拌処理前の被加工物球状体の顕微鏡像と比べて表面の傷や研磨痕を低減できていなかった。
つまり、実施例1および比較例2の結果から、上記撹拌処理では、ボールミル処理に用いることで球状体の表面粗さ低減効果を奏することが確認された窒化珪素よりも低硬度の金属酸化物粉末を用いても、球状体の傷や研磨痕を十分に低減できなかった。これは、ボールミル処理では、球状体1同士が互いの表面を摺りあいながら接触している状態を実現することができるため、球状体の表面において上述した金属酸化物粉末による機械的作用および化学的作用を十分に発現することができ、球状体1の表面の凹凸部を緩和あるいは除去することができると考えられる。これに対し、撹拌処理では、球状体1同士が互いの表面を摺りあいながら接触している状態を実現することが困難であり、球状体の表面において上述した金属酸化物粉末による機械的作用および化学的作用を十分に発現させることができず、球状体1の表面の凹凸部を緩和あるいは除去することが困難であるためと考えられる。
実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法に従って製造された窒化珪素球状体について、音響特性を評価した。本実施例では、上述した実施例1において準備した試料1〜試料5の球状体に対し、音響特性を評価した。
試料1〜試料5の球状体に対し、軸受転動体としての音響特性を評価した。具体的には、試料1〜試料5の球状体を用いて軸受(5S−2LA−HSL020UP)を組み立て、当該軸受の外輪を固定して内輪を一定速度で回転させ、このとき外輪に伝達されるラジアル方向の振動成分をアンデロン値として測定した。アンデロン値の測定にはアンデロンメータ(株式会社菅原研究所)を用いた。アンデロン値の測定条件は、回転数を1800/分、アキシャル荷重2500Nとした。また、アンデロン値の測定範囲は、Lバンド(低周波数帯域、50Hz以上300Hz以下)、Mバンド(中周波数帯域、300Hz以上1800Hz以下)、Hバンド(高周波数帯域、1800Hz以上10000Hz以下)とした。なお、ボールミル処理前の球状体に対しても、同様の測定条件で音響特性を評価した。表3に、該測定結果を上述したボールミル処理前の球状体の測定結果と合わせて示す。
表5に示すように、試料1〜試料3の球状体は、ボールミル処理前の被加工物球状体と比べて、Hバンドでのアンデロン値が小さかった。これは、実施例1に示すように、試料1〜試料3の球状体は、表面粗さが十分に小さいため、軸受用転動体として用いられたときに振動を抑制でき、Hバンドでの音響特性が向上されていると考えられる。
一方、試料4の球状体はボールミル処理前の被加工物球状体と比べて変化はないものの、試料5の球状体は、ボールミル処理前の被加工物球状体と比べてHバンドでの音響特性が低下していた。
つまり、本実施例2の結果から、上記実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法により製造された窒化珪素球状体は、軸受用転動体として使用した時の音響特性を向上することができることが確認された。
実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法に従って、窒化珪素球状体について外観検査を行った。
まず、窒化珪素からなり、外径が13/32インチの球状体を4種類準備した。具体的には、複数の球状体は、砥粒にダイヤモンドを用いて研磨加工されたものとした。球状体の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra値は0.004μmであった。当該研磨加工後、研磨面(表面)からの深さがそれぞれ50μm、80μm、120μm、150μmの位置に金属介在物欠陥(外形の最大幅が45μmのステンレス(SUS)粉を導入し、試料11〜試料14の4種類の球状体を準備した。各球状体において金属介在物欠陥が導入された位置は、X線CT(Computed Tomography)機器を用いて研磨面から上記深さにあることを確認した。
試料11〜試料14の球状体に対し、以下の検査方法により内部欠陥を検出可能であるか否かを評価した。第1の検査方法として、図5に示すように、拡大鏡として実体顕微鏡20を用いて試料11〜試料14の球状体を目視検査する方法を採用した。また、第2の検査方法として、図6に示す検査系を用いて、試料11〜試料14の球状体にレーザ光を照射したときに生じる反射光から、吸収率の変化を捉える方法を採用した。
さらに、試料11〜試料14の球状体に対し、実施の形態1に係る窒化珪素球状体の製造方法における球状体1同士を摺接させる工程(S20)に従ってボールミル処理を行った。なお、ボールミル処理は、複数の球状体と、分散媒としての水と、金属酸化物粉末としての酸化鉄とをボールミル容器に収容し、上記表1に示す条件で行った。ボールミル処理後の試料11〜試料14の球状体に対し、ボールミル処理前と同様に上記第1および第2の検査方法により、内部欠陥を検出可能であるか否かを評価した。検査結果を表6に示す。
表6に示すように、金属介在物欠陥の表面深さが80μmよりも浅い試料11および試料12の球状体に対しては、ボールミル処理前においても第1および第2の検査方法により当該金属介在物欠陥を検出することができた。しかし、金属介在物欠陥の表面深さが80μmよりも深い試料13および試料14の球状体に対しては、ボールミル処理前では第1および第2の検査方法ともに当該金属介在物欠陥を検出することができなかったのに対し、ボールミル処理後では第1および第2の検査方法によっても当該金属介在物欠陥を検出することができた。これは、上述のようにボールミル処理前の球状体では表面の傷や研磨痕などの凹凸が形成されており、透過光が表面で散乱・減衰等されて表面から深い位置に存在する内部欠陥を検出することが困難であるのに対し、ボールミル処理後の球状体では表面の傷や研磨痕などの凹凸が十分に低減されているため、球状体表面での透過光の散乱・減衰等が抑制され表面から深い位置に存在する内部欠陥を検出することができると考えられる。
つまり、本実施例3の結果から、上記実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法により、窒化珪素球状体に対して表面からより深い位置まで内部欠陥の有無を検査することができることが確認された。また、実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法が、特に軸受用転動体用の窒化珪素球状体の検査方法として特に好適であることが確認された。具体的には、窒化珪素球状体を軸受用転動体として用いた場合、窒化珪素球状体には転動面から120μm程度の領域までせん断応力が作用するため、当該領域に金属介在物欠陥などを有する球状体は高信頼性が求められる軸受用転動体には不適である。これに対し、上記実施の形態3に係る窒化珪素球状体の検査方法を実施することにより、転動面からの深さが少なくとも150μm程度の領域までの内部欠陥の有無を評価することができるため、転動面(球状体の表面)からの深さが少なくとも150μm程度の領域において、所定の大きさの内部欠陥(たとえば外形の最大幅が25μm以上の欠陥が無い球状体を選別することができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲のすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、軸受用転動体に用いられる窒化珪素球状体、窒化珪素球状体の製造方法、および窒化珪素球状体の検査方法に特に有利に適用される。
1 球状体、2 分散媒、10 容器、11 ローラ、20 実体顕微鏡、21 光源、22 反射鏡、23 レンズ、24 受光素子、25 処理装置、30 固定容器、30 撹拌子。

Claims (10)

  1. 主な構成材料が窒化珪素である球状体であって、
    前記球状体の表面からの深さが150μmよりも浅い領域において、外形の最大幅が25μm以上の欠陥が無い、窒化珪素球状体。
  2. 主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体と、前記球状体よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒とを準備する工程と、
    複数の前記球状体と前記金属酸化物粉末と前記分散媒とを混合することにより前記球状体同士を摺接させる工程とを備える、窒化珪素球状体の製造方法。
  3. 前記金属酸化物粉末は、酸化鉄、酸化クロム、および酸化セリウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の窒化珪素球状体の製造方法。
  4. 前記摺接させる工程は、前記球状体と、前記金属酸化物粉末と、前記分散媒とを容器に収容する工程と、
    前記容器を動かすことにより前記球状体と前記金属酸化物粉末と前記分散媒とを混合する工程とを含む、請求項2または請求項3に記載の窒化珪素球状体の製造方法。
  5. 前記容器は筒状体であり、前記混合する工程では、前記容器を回転させることにより前記球状体同士を摺接させる、請求項4に記載の窒化珪素球状体の製造方法。
  6. 前記摺接させる工程において、前記金属酸化物粉末は、前記分散媒1L当たり60g以上80g以下の割合で前記球状体と前記分散媒と混合されている、請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の窒化珪素球状体の製造方法。
  7. 前記摺接させる工程の後に、前記球状体を検査する工程をさらに備え、
    前記球状体を検査する工程では、前記球状体に対して光を照射させ、前記球状体の少なくとも一部を透過した前記光を検出することにより、前記球状体の内部欠陥の有無を検査する、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の窒化珪素球状体の製造方法。
  8. 前記球状体を検査する工程は、光が照射された前記球状体を拡大鏡を用いて目視検査することにより実施される、請求項7に記載の窒化珪素球状体の製造方法。
  9. 前記球状体を検査する工程は、前記球状体にレーザ光を照射したときに生じる反射光から、反射率または吸収率の変化を捉えることにより実施される、請求項7に記載の窒化珪素球状体の製造方法。
  10. 主な構成材料が窒化珪素である複数の球状体と、前記球状体よりも低硬度の金属酸化物粉末と、分散媒とを混合して前記球状体同士を摺接させることにより得られた球状体を準備する工程と、
    前記球状体に対して光を照射させ、前記球状体の少なくとも一部を透過した前記光を検出することにより、前記球状体の内部欠陥の有無を検査する工程とを備える、窒化珪素球状体の検査方法。
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