JP2016057123A - 妨害波伝達特性測定システムおよび測定方法 - Google Patents
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A)AC電源ポート
A1)3線電源ケーブル(L(Live)線、N(Neutral)線、PE(Protection Earth)線)の場合
図2に、システムグラウンドを基準とする物理ポートを示す。評価対象である通信装置11の接地が不完全な場合を考えると、AC電源線12のPE線がシステムグラウンド14と同電位とは考えにくい。そのため、これら3線をシステムグラウンド14に対して対等に扱うと、図2に示すように、物理的ポート(#p1〜#p3)がAC電源線12の各線とシステムグラウンド14との間で定義される。ただし、電源系から混入する妨害波を考える場合は、すべての線が同相となるコモンモードの妨害波の混入を考えるため、物理的ポートからミクスドモードポートへの変換を考える。
PE線を除く2線(L線、N線)に対して、同一振幅で逆相の電圧が印加され、同一振幅で逆相の電流が生じる時、キルヒホッフの電流則から、PE線およびシステムグラウンドには電流は流れない。すなわち、ディファレンシャルモード電圧VDおよびディファレンシャルモード電流IDは、次式のように各電圧および電流によって記述することができる。
PE線を除く2線(L線、N線)に対して、同一振幅で同相の電圧が印加され、同一振幅で同相の電流が生じ、かつPE線が電流の帰路として働く時、キルヒホッフの電流則よりシステムグラウンドには電流が流れない。すなわち、1次コモンモード電圧VCPおよび1次コモンモード電流ICPは、次式のように記述することができる。
3線全てに、同一振幅で同相の電圧が印加され、同じく同一振幅で同相の電流が流れるとき、この電流の帰路はシステムグラウンドとなる。したがって、2次コモンモード電圧VCSおよび2次コモンモード電流ICSは、次式のように記述される。
通信装置の電源端子にはPE線が具備されていない場合、2線の電源ケーブルに対する伝搬モードを定義する。この場合、物理的ポートは3線電源ケーブルの場合と同じくシステムグラウンドを基準とした2つのポートとなる。しかし、ミクスドモードポートは2つの伝搬モードしか定義できないため、以下で説明するように、ディファレンシャルモードとコモンモードのみが定義できる。同様に、各線の電圧をV1(L)、V2(N)、電流をI1(L)、I2(N)とすると、伝送線路の伝搬モードは次のように記述できる。
3線の場合と同様に、L線とN線に同一振幅で逆相の電圧が印加され、同一振幅で逆相の電流が流れる時、キルヒホッフの電流則から、システムグラウンドには電流は流れない。すなわち、ディファレンシャルモード電圧VDおよびディファレンシャルモード電流IDは、次式のように各電圧および電流によって記述できる。
2線に、同一振幅で同相の電圧が印加され、同じく同一振幅で同相の電流が流れる時、この電流の帰路はシステムグラウンドとなる。したがって、2次コモンモード電圧VCおよび2次コモンモード電流ICは、次式のように記述される。
通信線が4対のペア線とシールドからなるSTPケーブルである場合、通信線13の物理的ポートは、各通信線とシールド線をそれぞれ物理的ポート(#c1〜#c8)として8つの通信ポート16で定義される(図2および3参照)。ここで、シールド線はシステムグラウンドまたは測定系のグラウンドと低インピーダンスで接続されているとする。実際の通信においては、2本ずつのペア線間で通信信号が伝送されることを考えると、それに対応したミクスドモードポートを設定すべきである。そこで、2本のペア線とシールド線のみを考慮して、伝搬モードに対応するポートを定義する。
通信線2線に対して、同一振幅で逆相の電圧が印加され、同一振幅で逆相の電流が流れる時、キルヒホッフの電流則から、シールドおよびシステムグラウンドには電流は流れない。すなわち、ディファレンシャルモード電圧VDおよびディファレンシャルモード電流IDは、次式のように各電圧および電流によって記述される。
通信線2線に対して、同一振幅で同相の電圧が印加され、同じく同一振幅同相の電流が流れる。また、この電流の帰路はシールドとなる。したがって、キルヒホッフの電流則よりシステムグラウンドには電流が流れない。すなわち、1次コモンモード電圧VCPおよび1次コモンモード電流ICPは、次式のように記述される。
シールドを含む全ての線に、同一振幅で同相の電圧が印加され、同じく同一振幅で同相の電流が流れるとき、この電流の帰路はシステムグラウンドとなる。ここで、STPケーブルの場合はシールド線が8線を覆っているため、全ての電流はシールド線を流れる。したがって、2次コモンモード電圧VCSおよび2次コモンモード電流ICSは、次式のように記述される。
次に、再現性の高い評価系を構築するためには、上述した各ポートの終端条件も定める必要がある。以降では、電源線は2線とし、物理的ポート(AC電源ポート、通信ポート)に対するミクスドモードポート(ディファレンシャルモード、1次コモンモード、2次コモンモード)の終端条件を決定する方法について説明する。
CISPR16−1−2(非特許文献2)では、30MHz以下の発信源を持つEUT(Equipment Under Test)が発する30〜300MHzの伝導妨害波測定を行うための妨害波印加回路(CDNE:Coupling/Decoupling Network for Emission Measurement)の特性が規定されている。
CDNEを用いる場合、ディファレンシャルモードポートの終端条件は、高インピーダンスと規定されており、商用電源側の影響を除外できる。
CDNEにより、コモンモードの終端インピーダンスは、30〜300MHzの周波数範囲において150Ωとすることが規定されている。
図5に、通信ポートの終端条件を示す。ベクトルネットワークアナライザ(VNA)等の一般的な測定機器のほとんどは、最大4ポートであり、同時に測定できるポート数が限られている。通信線だけでも8ポートある系では、測定回数が増加し、現実的ではない。そこで、STPケーブルの対称性を利用し、通信線のうちの任意の2線のみを評価し、残りの6線は50Ωで終端する。ここで、評価する2線は、それぞれシールド線と通信線に対応する物理的ポート(#2および#3)である。
図5(a)に示すように、ディファレンシャルモードの場合は、2線をループにして電流が流れるため、各線の終端抵抗(R=50Ω)が直列に挿入されることから、終端インピーダンスは100Ωとなる。
図5(b)に示すように、1次コモンモードの場合は、2線のそれぞれからシステムグラウンド14に向けて同じ電流が流れるため、各線の終端抵抗(R=50Ω)が並列に挿入されることから、終端インピーダンスは25Ωとなる。
2次コモンモードの終端インピーダンスは、STPケーブルのシールドが測定系のグラウンドに寄生結合を介して接続されているため安定化しない。この場合、ベクトルネットワークアナライザ等の測定機器に接続された同軸ケーブルの外皮をシステムグラウンドに低インピーダンスで接続することにより、終端条件を短絡とすることができる。
次に、ポートの定義に対応するケーブルの伝搬モードについて説明する。2線のケーブルが、システムグラウンドから一定の距離で直線上に配線された系を考えると、それらの伝搬モードをディファレンシャルモードおよびコモンモードとして定義することができる。ケーブルが十分に長く、対称性を保ちながらシステムグラウンドから一定の距離で、真直ぐに配線されている場合には、伝送経路におけるモード変換は発生しない。従って、ケーブル両端のアウトレット端子、通信装置との接続コネクタ等においてのみモード変換を考えればよい。
図9に、本発明の一実施形態における妨害波伝達特性測定システムを示す。妨害波伝達特性測定システムは、ベクトルネットワークアナライザ31を用いて、通信装置21のAC電源ポートから通信ポートへの妨害波の伝達特性を評価する。ベクトルネットワークアナライザ31の1つのポートは、CDNE27を介して、評価対象である通信装置21のAC電源ポート(図4の物理的ポート#1)に接続され、コモンモードの信号(妨害波等)を電源線に注入することができる。このとき、ポートに接続された同軸ケーブルの外皮に伝わる2次コモンモードを低減するために、吸収クランプ32を設置する。
次に、図9に示した妨害波伝達特性測定システムを使用して、評価対象である通信装置のAC電源ポートから混入し、通信装置内部を通過して、通信ポートに伝達される妨害波の伝達特性の測定法および妨害波の評価法について説明する。上記の測定システムによれば、通信装置21のAC電源ポートと通信ポートの散乱行列(Sパラメータ)が測定できる。しかしながら、その測定結果は、物理的ポートに対応するSパラメータであるため、それらをミクスドモードポートに対応させたSパラメータに変換する必要がある。
市販のスイッチングハブに対する評価例を説明する。スイッチングハブの多くは、PE線がない2線電源ケーブルが主流である。また、筐体は、金属筐体またはプラスチック筐体である。筐体が金属筐体であっても、UTPケーブルで接続した場合、筐体がSTPケーブルのシールドと接続されていない場合には、システムグラウンドに接続されていない。このようなことから、妨害波の伝達特性が、どのような影響を与えるかは不明である。
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、スイッチングハブ(DUT1〜DUT3)を用いて、図9に示した妨害波伝達特性測定システムにおける電源線の高さhの違いが妨害波の伝達特性に与える影響を評価する。スイッチンハブの通信ポート(RJ45コネクタ)および電源端子は、スイッチングハブの底面から15mm程度の高さにあるため、第1の実施形態においては、スイッチングハブがシステムグラウンドから85mmの高さとなるように設置されている。
図15に、CISPR16−2−1(非特許文献4)で規定されている測定系を構成した妨害波伝達特性測定システムを示す。本規定においては、評価対象である通信装置21の高さh1は、システムグラウンド24から100mmの高さに配置される。これは、第2の実施形態で述べたように、システムグラウンドと通信装置との間の寄生容量を考慮したものである。電源線22は、システムグラウンド上に配置したCDNE27から、高さh2=30mmで、水平方向に長さl=200mm配線し、そこから垂直方向に配線して、通信装置21に接続される。その他の構成は、図9に示した妨害波伝達特性測定システムに同じである。
第4の実施形態では、CDNEの筐体をシステムグラウンドと十分低いインピーダンスで接地する。図9に示したように、電源線22をシステムグラウンド24から高さhに直線状に配置するために、CDNE27をシステムグラウンド24から一定の高さに設置する必要がある。このとき、低インピーダンスの接地となるように、導電性の高い金属箱36の上に設置する。このような本実施形態の有用性について、以下に説明する。
本実施形態によれば、通信装置の電源線から混入し、通信装置の内部を通過して、通信線へ伝達される妨害波の伝達特性を再現性よく、安定的に評価することができる。特に、通信装置の物理的ポート(AC電源ポート、通信ポート)および妨害波の伝搬モードごとに分離するためのミクスドモードポート(ディファレンシャルモード、1次コモンモード、2次コモンモード)を定義することにより、各ポートの伝搬モードごとの評価が可能となるため、どのポートのどの伝搬モードの妨害波に対する対策を重点的に行うかの判断が容易になる。
2,11,21 通信装置
3 分電盤
4 インバータ/コンバータ
5 電源線
6,13,23 多対通信線
12,22 AC電源線
14,24 システムグラウンド
15 AC電源ポート
16 通信ポート
17,27 CDNE
18 アウトレット
31 ベクトルネットワークアナライザ
32 吸収クランプ
33 銅板
34 同軸ケーブル用コネクタ
35 RJ45−SMA変換ボード
36,37,38 金属箱
Claims (8)
- 電源供給を受けるための電源線と、他の装置との通信のための通信線とが接続された通信装置において、前記電源線から混入し、前記通信装置の内部を通過して、前記通信線へ伝達される妨害波の伝達特性を評価するための妨害波伝達特性測定方法であって、
前記通信装置における測定用の物理的ポートとして、前記電源線側の電源ポートおよび前記通信線側の通信ポートとを定義すること、
ディファレンシャルモード、1次コモンモード、2次コモンモードからなる妨害波の伝搬モードごとに、伝達特性を分離して測定するためのミクスドモードポートを定義すること、および
前記物理的ポートに対応するSパラメータを前記ミクスドモードポートに対応するSパラメータに変換して、伝搬モードごとの伝達特性を測定すること
を備えたことを特徴とする妨害波伝達特性測定方法。 - 前記通信線は、シールド付き撚り対線であり、前記1次コモンモードの帰路電流がシールドを流れると仮定して、前記シールドと前記通信線との間の終端インピーダンスを定義することを特徴とする請求項1に記載の妨害波伝達特性測定方法。
- 前記通信線は、シールドの無い撚り対線であり、前記1次コモンモードの帰路電流が他の通信線を流れると仮定して、前記通信線と前記地の通信線との間の終端インピーダンスを定義することを特徴とする請求項1に記載の妨害波伝達特性測定方法。
- 電源供給を受けるための電源線と、他の装置との通信のための通信線とが接続された通信装置において、前記電源線から混入し、前記通信装置の内部を通過して、前記通信線へ伝達される妨害波の伝達特性を評価するための妨害波伝達特性測定システムであって、
前記通信装置の前記電源線に接続される第1のポートと、前記通信線に接続される第2および3のポートとを備えたベクトルネットワークアナライザと、
前記電源線および前記第1のポートを接続する同軸ケーブルに挿入された吸収クランプと、
前記通信線および前記第2のポート、前記通信線および前記第3のポートのそれぞれを接続する同軸ケーブルのシールドとシステムグラウンドとを低インピーダンスで接続する接地手段と
を備えたことを特徴とする妨害波伝達特性測定システム。 - 前記電源線と前記第1のポートとを接続する同軸ケーブルとの間に挿入された妨害波印加回路をさらに備え、
前記妨害波印加回路と前記通信装置との間の前記電源線は、前記システムグラウンドから一定の高さで直線状に配置されることを特徴とする請求項4に記載の妨害波伝達特性測定システム。 - 前記妨害波印加回路は、前記システムグラウンドと低インピーダンスで接続されていることを特徴とする請求項5に記載の妨害波伝達特性測定システム。
- 前記一定の高さは、100mm以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の妨害波伝達特性測定システム。
- 前記接続手段は、前記同軸ケーブルが接続されるコネクタが設置された導電性の金属板であって、前記金属板を前記システムグラウンドに接続することにより、前記同軸ケーブルのシールドと前記システムグラウンドとが低インピーダンスで接続されることを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載の妨害波伝達特性測定システム。
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