JP2016056167A - 有機物合成方法 - Google Patents

有機物合成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016056167A
JP2016056167A JP2015156126A JP2015156126A JP2016056167A JP 2016056167 A JP2016056167 A JP 2016056167A JP 2015156126 A JP2015156126 A JP 2015156126A JP 2015156126 A JP2015156126 A JP 2015156126A JP 2016056167 A JP2016056167 A JP 2016056167A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
liquid
discharge
plasma
gas
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015156126A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5924606B2 (ja
Inventor
達夫 森田
Tatsuo Morita
達夫 森田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
PM DIMENSIONS KK
Original Assignee
PM DIMENSIONS KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from PCT/JP2014/073730 external-priority patent/WO2015037565A1/ja
Application filed by PM DIMENSIONS KK filed Critical PM DIMENSIONS KK
Publication of JP2016056167A publication Critical patent/JP2016056167A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5924606B2 publication Critical patent/JP5924606B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Plasma Technology (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Abstract

【課題】液中プラズマによって有機物を合成する新規な方法を提供する。【解決手段】本発明による実施形態の有機物合成方法は、例えば液中プラズマ装置(1000)を用いて行われ、水に接する二酸化炭素ガスを含む気体の放電によってプラズマを形成すること、およびプラズマと水との接触によって水の中に、過蟻酸またはジホルミルペルオキサイドを含む有機物を生成することを含む。【選択図】図5

Description

本発明は、液中プラズマによる有機物合成方法および処理方法、ならびに、これらの方法に用いられ得る液中プラズマ装置に関する。
「液中プラズマ」とは、液体と接触した非平衡プラズマである。液中プラズマは、液体に接触している気体中の放電によって気体を部分的にイオン化して形成される。放電によってプラズマを形成する気体は、液体の表面(液面)に接する空間内に導入されていてもよいし、液体中に気泡として導入されてもよい。液中プラズマ内の電子、イオン、原子、および分子は、気液界面を介して液体または液体中の物質に作用し、種々の化学反応を生じさせ得る。
液中でプラズマを形成し、水質の改善や廃液処理を行う技術の開発が進行している。そのような液中プラズマ技術の実用的な目的は、例えば、水溶液中の難分解性有機物の分解や殺菌である。オゾンでは分解できないダイオキシンなどの難分解性有機物をプラズマと水との反応によって形成されるヒドロキシラジカル(・OH)によって分解することができる。これは促進酸化法と呼ばれ、他に紫外線を用いる方法や、過酸化水素を用いる方法などが知られている。
液中でプラズマを生成する放電には、大別して直流または低周波による放電と、高周波またはマイクロ波による放電とがある。前者の例として、直流パルス放電による水中のストリーマ、アーク放電(非特許文献1参照)および誘電体バリア放電(特許文献1、2、3参照)を挙げることができる。誘電体バリア放電の場合は、電極間に気体を介在させ、該気体内に放電プラズマを誘起する。特許文献1、2、3に開示されている装置は、いずれも、気泡と水とから成る2相領域を電極で挟持する構造を有している。後者の例としては、RF放電、およびマイクロ波放電が挙げられる。この場合も、気泡が援用されている。液中に導入あるいは生成された気泡が電磁波のエネルギーを吸収してプラズマが生成される(非特許文献2、3参照)。水中放電技術全般については、非特許文献2にレビューされている。参考のために、非特許文献1から3の開示内容のすべてを本明細書に援用する。
特開2010−137212号公報 特開2004−268003号公報 特開2009−114001号公報
「Water Purification by Plasmas: Which Reactors are Most Energy Efeeicient?」 Muhammad Arif Malik 著 Plasma Chem Plasma process (2010) 30:21−31 「水中プラズマの形成とその特性」(安岡康一他、J. Plasma Fusion Res. Vol.84, No.10(2008)666−673) PLASMA CHEMISTRY Alexander Fridman 著Cambridge University Press 刊 2008年
本発明は、液中プラズマによって水溶液中の難分解性有機物の分解および殺菌をより効率的に実行する方法およびそのような方法に用いられ得る液中プラズマ装置を提供すること、ならびに、液中プラズマによって有機物を合成する方法およびそのような方法に用いられ得る液中プラズマ装置を提供することを主な目的とする。
本発明は、少なくとも以下の項目に記載の有機物合成方法、液中プラズマ装置、液中プラズマ処理方法および液体浄化システムを提供する。
[項目1]
水に接する二酸化炭素ガスを含む気体の放電によってプラズマを形成すること、および
前記プラズマと前記水との接触によって前記水の中に、過蟻酸またはジホルミルペルオキサイドを含む有機物を生成すること、
を含む、有機物合成方法。
[項目2]
前記放電は、誘電体バリア放電である、項目1に記載の有機物合成方法。
[項目3]
前記有機物は、過蟻酸を含む、項目1または2に記載の有機物合成方法。
[項目4]
液中プラズマ装置を用いる、項目1から3のいずれかに記載の有機物合成方法であって、
前記液中プラズマ装置は、
第1電極と、
前記第1電極に接する固体誘電体層と、
前記第1電極および前記固体誘電体層を受け入れる内部空間を有する放電室と、
前記固体誘電体層を介して前記第1電極に対向し、前記放電室の前記内部空間を水から分離するように配置された第2電極であって、前記内部空間の側に位置する気相面と、前記水の側に位置する液相面とを有し、前記気相面と前記液相面とを連結する複数の貫通孔を有する第2電極と、
前記放電室の前記内部空間内に二酸化炭素ガスを供給し、前記二酸化炭素ガスと前記水との界面を前記第2電極における各貫通孔内に形成する気体導入装置とを備え、
前記二酸化炭素ガスの放電により、前記水の中に前記有機物を生成する、項目1から3のいずれかに記載の有機物合成方法。
[項目5]
誘電体バリア放電を行う液中プラズマ装置であって、
第1電極と、
前記第1電極に接する固体誘電体層と、
前記第1電極および前記固体誘電体層を受け入れる内部空間を有する放電室と、
前記固体誘電体層を介して前記第1電極に対向し、前記放電室の前記内部空間を液体から分離するように配置された第2電極であって、前記内部空間の側に位置する気相面と、前記液体の側に位置する液相面とを有し、前記気相面と前記液相面とを連結する複数の貫通孔を有する第2電極と、
前記放電室の前記内部空間内に気体を供給し、前記気体と前記液体との界面を前記第2電極における各貫通孔内に形成する気体導入装置と、
を備える、液中プラズマ装置。
[項目6]
前記第1電極および前記第2電極は、いずれも平板状である、項目5に記載の液中プラズマ装置。
[項目7]
前記複数の貫通孔の各々の開口サイズは、前記第1電極と前記第2電極とによって規定される電極間距離よりも小さい、項目5または6に記載の液中プラズマ装置。
[項目8]
前記複数の貫通孔の各々の開口サイズは、0.5mmより小さい、項目5から7のいずれかに記載の液中プラズマ装置。
[項目9]
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して誘電体バリア放電を行うように構成された電気回路を備える、項目5から8のいずれかに記載の液中プラズマ装置。
[項目10]
静止または流動状態にある前記液体を少なくとも一時的に収容し、前記液体を前記第2電極の前記液相面に接触させる槽を備える、項目5から9のいずれかに記載の液中プラズマ装置。
[項目11]
前記放電室は、前記気体導入装置によって内部に導入された前記気体の一部を前記液体中に放出する開口部を有している、項目5から10のいずれかに記載の液中プラズマ装置。
[項目12]
前記液体は水である、項目5から11のいずれかに記載の液中プラズマ装置。
[項目13]
前記気体導入装置は、前記気体として二酸化炭素ガスを前記放電室の内部に供給するように構成されており、
前記二酸化炭素ガスの放電により、前記水の中に過蟻酸またはジホルミルペルオキサイドを含む有機物を生成する、項目12に記載の液中プラズマ装置。
[項目14]
項目5から13のいずれかに記載の液中プラズマ装置を用いて液体を処理する液中プラズマ処理方法であって、
前記第2電極の前記液相面に液体を接触させること、
前記気体導入装置によって前記放電室の前記内部空間内に気体を供給し、前記気体と前記液体との界面を前記第2電極における各貫通孔内に形成すること、
前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して誘電体バリア放電を行い、前記誘電体バリア放電によって前記放電室内に前記気体のプラズマを生成すること、
を含む、液中プラズマ処理方法。
[項目15]
前記第2電極の前記液相面に液体を接触させることは、前記液中プラズマ装置の前記反応室を前記液体の内部に配置することを含む、項目14に記載の液中プラズマ処理方法。
[項目16]
液中で放電可能な液中誘電体バリア放電プラズマ装置であって、
誘電体で被覆された電極と、
複数の貫通孔を有する電極と、
前記誘電体で被覆された電極を支持する電極支持基板と、
圧力調整室とを有し、
前記誘電体で被覆された電極と前記複数の貫通孔を有する電極とは対向配置され、前記貫通孔の開口径は前記誘電体で被覆された電極と前記複数の貫通孔を有する電極との電極間距離よりも小さく、気体導入口が前記電極支持基板に設けられており、前記圧力調整室は前記気体導入口と接続されている、液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目17]
前記複数の貫通孔を有する電極は、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金からなる群から選ばれた一種又は二種以上の材料で形成されている、項目16に記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目18]
前記複数の貫通孔を有する電極は、複数の貫通孔を設けたプラスチック樹脂またはセラミック材料にアルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金からなる群から選ばれた一種又は二種以上の材料で形成された導電性薄膜をコーティングしたものである、項目16に記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目19]
前記複数の貫通孔を有する電極は、貫通孔を有するように微細加工を施したシリコン基板を含む、項目16に記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目20]
前記複数の貫通孔を有する電極に設けられた貫通孔は、前記誘電体で被覆された電極に対向する側の開口径が他方の側の開口径より大きい、項目16から19のいずれかに記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目21]
前記複数の貫通孔を有する電極は、多孔質材料を含む、項目16に記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目22]
前記誘電体で被覆された電極は、フェライト系ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼で形成され、ソーダライムガラスで被覆されている、項目16から21のいずれかに記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目23]
前記圧力調整室は圧力調整機構を有する、項目16から22のいずれかに記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目24]
前記圧力調整室へ気体を導入するための気体導入管と、前記誘電体で被覆された電極と前記複数の貫通孔を有する電極へ電力を供給するための給電配線とをさらに有する、項目16から23のいずれかに記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置。
[項目25]
項目16から24のいずれかに記載の液中誘電体バリア放電プラズマ装置と、気体供給装置と、高圧電源とを含む、液体浄化システム。
本発明の実施形態によれば、液中プラズマを利用した有機物合成方法および他の処理方法が提供される。また、本発明の実施形態は、これらの方法に用いられ得る新規な液中プラズマ装置を提供する。
本発明の実施形態の液中プラズマ装置1000の基本構成を模式的に示す断面図である。 液中プラズマ装置1000の上面図である。 電極間距離Dを示す断面図である。 液中放電プラズマ装置1000が液体槽300を備える例を示す断面図である。 液体槽300に液体302が蓄えられている状態を示す断面図である。 本発明の実施形態の変形例における液中プラズマ装置1100の主要構成を模式的に示す断面図である。 本発明の実施形態の他の変形例における液中プラズマ装置1200の主要構成を模式的に示す断面図である。 (a)は、第2電極200における貫通孔202の配置例を示す上面図であり、(b)は、第2電極200を覆う固体誘電体層212を設けた例を示す断面図である。 液中誘電体バリア放電プラズマ装置を示す図である。 液中誘電体バリア放電プラズマ装置の電極部の一部を示す図である。 複数の貫通孔を有する電極の構造を示す図である。 複数の貫通孔を有する電極の構造を示す図である。 誘電体で被覆された電極の構造を示す図である。 液中で使用している状態を示す図である。 配管内で使用している状態を示す図である。 高電圧発生回路を示す図である。 メチレンブルー色素分解結果を示す図である。 水中プラズマの発光分光結果を示す図である。 多孔質材料を用いた複数の貫通孔を有する電極の構造を示す図である。 貫通孔を有するように微細加工を施したシリコン基板を用いた複数の貫通孔を有する電極の構造を示す図である。 蟻酸の標準試料を高速液体クロマトグラフで分析した結果を示す図であり、保持時間およびUVスペクトルを示す。 過蟻酸を含む標準試料を高速液体クロマトグラフで分析した結果を示す図であり、保持時間およびUVスペクトルを示す。 放電時間が5分の試料について高速液体クロマトグラフで分析した結果を示す図であり、保持時間およびUVスペクトルを示す。 放電時間が20分の試料について高速液体クロマトグラフで分析した結果を示す図であり、保持時間およびUVスペクトルを示す。 過蟻酸を含む標準水溶液についてのマトリックス支援レーザー脱離イオン化 タイムオブフライト質量分析法による質量分析の結果であり、(a)はポジティブモードによる測定結果であり、(b)はネガティブモードによる測定結果である。 放電時間が20分間の試料についてのマトリックス支援レーザー脱離イオン化 タイムオブフライト質量分析法による質量分析の結果であり、(a)はポジティブモードによる測定結果であり、(b)はネガティブモードによる測定結果である。 放電時間が1分の試料のUVスペクトルと放電時間が20分の試料のUVスペクトルとの差スペクトルである。 過蟻酸の生成量と二酸化炭素ガスの流量との関係を示すグラフである。 過蟻酸の生成量と電極の貫通孔の開口率との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による液中プラズマ装置ならびに液中プラズマ装置を用いた処理方法および有機物合成方法を説明するが、本発明の実施形態は、例示するものに限定されない。
<液中プラズマ装置の基本構成>
本発明の実施形態による液中プラズマ装置は、誘電体バリア放電を行うプラズマ装置である。この装置は、後述するように、有機物の合成に好適に用いられる。しかし、この液中プラズマ装置の用途は、有機物の合成に限定されない。
まず、図1および図2を参照して、ある態様における液中プラズマ装置1000の基本構成を説明する。図1は、液中プラズマ装置1000の基本構成を模式的に示す断面図である。図2は、液中プラズマ装置1000の上面図である。
図1に示される液中プラズマ装置1000は、内部空間114を有する放電室116と、放電室116の内部空間114に位置する第1電極100と、第1電極に対向する第2電極200とを備えている。第1電極100と第2電極200との間には、第1電極100に接している固体誘電体層112が存在している。したがって、第2電極200は、固体誘電体層112を介して第1電極100に対向している。第2電極200と固体誘電体層112との間には、放電のための空間(隙間)が存在する。固体誘電体層112は、第1電極100の表面を覆っていれば良い。
第1電極100および第2電極200は、それぞれ、金属などの導電性材料から形成されている。一方、放電室116は、絶縁材料から形成されている。
第2電極200は、放電室116の内部を不図示の液体から分離するように配置されている。第2電極200は、放電室116の外側に位置する液相面200aと、放電室116の内部空間114の側に位置する気相面200bとを有し、かつ、液相面200aと気相面200bとを連結する複数の貫通孔202を有している。図2には、単なる一例として8行9列に配置された72個の貫通孔202が記載されているが、貫通孔202の配置および個数は、この例に限定されない。貫通孔202の配置は、規則的であっても良いし、不規則であってもよい。複数の貫通孔202の開口サイズは、第2電極200の位置に応じて異なっていても良い。
図3を参照する。図3は、電極間距離Dを示す断面図である。電極間距離Dは、第1電極100と第2電極200とによって規定される。厳密に言えば、電極間距離Dは、第2電極200の気相面200bから固体誘電体層112の表面までの距離である。図面において、第1電極100、固体誘電体層112、および第2電極200のサイズの比率は、現実のサイズの比率を反映しているとは限らない。典型的には、固体誘電体層112の厚さは、第1電極100の厚さに比べて小さい。このため、電極間距離Dは、第1電極100と第2電極200との間の距離に実質的に等しい。
複数の貫通孔202の各々の開口サイズSは電極間距離Dよりも小さい。個々の貫通孔202の開口サイズSは、典型的には、0.5mmより小さい値に設定され得る。貫通孔202が延びる方向に対して垂直な面における貫通孔202の断面は、円形の形状を有している必要はない。また、複数の貫通孔202が同一または相似の形状を有している必要はない。
再び図1を参照する。液中プラズマ装置1000は、放電のための気体を放電室116の内部に供給する気体導入装置120を備えている。この例における気体導入装置120は、少なくとも1本の管118を介して気体を放電室116の内部空間114に供給することができる。気体導入装置120は、気体と液体との界面(気液界面)を第2電極200における各貫通孔202の内部に形成するように動作し得る。放電室116の内部空間114における気体の圧力は、第2電極200に対する液体の圧力に応じて適切に調整され得る。
図1に示される例において、第1電極100および第2電極200は、いずれも平板状であり、平行平板電極構造を形成している。しかし、第1電極100および第2電極200の形状は、平板状に限定されない。第1電極100および第2電極200は、平行である必要もない。図2に示される第2電極200は、概略的に円板の形状を有しているが、矩形であってもよいし、他の形状を有していても良い。第2電極200の上面(液相面200a)に垂直な方向から第1電極100を透視したとき、第2電極200の輪郭は、第1電極100の輪郭と同一であっても良いし、異なっていても良い。図1では、第1電極100が第2電極200よりも小さく記載されているが、第1電極100と第2電極200との大小関係は、任意であり得る。
第1電極100および第2電極200は、図1に示されるように、それぞれ、第1電気導体402および第2電気導体404を介して電気回路400に接続されている。電気回路400は、例えば昇圧回路を含む高圧回路であり得る。電気回路400は、商用電力系統、発電機、または蓄電池などの電源に接続され得る。電気回路400は、第1電極100と第2電極200との間に電圧を印加し、放電室116の内部で誘電体バリア放電を行うように構成されている。
次に、図4および図5を参照する。図4は、液中放電プラズマ装置1000が液体槽300を備える例を示している。図5は、液体槽300に液体302が蓄えられている状態を示している。このように、液体槽300は、静止または流動状態にある液体302を少なくとも一時的に収容するように構成されている。液体302の上面(液面)304は、大気と接触しており、大気圧を受けている。放電室116の内部空間114に導入された気体は、第2電極200の個々の貫通孔202の内部において、液体302と接触し、接触面204を形成している。したがって、放電室116の内部空間114における気体の圧力は、大気圧と水圧との合計値に相当する値を有している。放電室116の内部空間114に気体が断続的または連続して供給される場合、放電室116の内部空間114から液体302中に気体の一部が放出される。このような気体の一部は、第2電極200における複数の貫通孔202のいずれかから液体302中に放出され得る。こうして、放電室116の内部空間114内の気体の圧力は、液体302の圧力とバランスすることができる。
放電室116は、気体導入装置120によって内部空間114に導入された気体の一部を液体302中に放出する開口部を有していてもよい。
図6は、本発明の実施形態の変形例における液中プラズマ装置1100の主要構成を模式的に示す断面図である。液中プラズマ装置1100は、液中プラズマ装置1000の基本構成と同一の基本構成を有している。機能が同一の構成要素には同一の参照符号を付し、説明の繰り返しを省略する。
図6に示される液中プラズマ装置1100は、第1電極100を支持する絶縁支持体250を備えている。この絶縁支持体250は、放電のための空間を形成する凹部と、電極間距離Dを規定する凸部とを有している。この凸部によって第2電極200が支持されている。
絶縁支持体250は導電ベース420上に配置されている。導電ベース420は、絶縁支持体250の内部に設けた導体404aを介して第2電極200に電気的に接続されている。導電ベース420は導体404bに接続されている。このような構成例において、導体402と導電ベース420との間の絶縁を確保するために、導体402の表面が絶縁層によって被覆されている。導体402および導体404bに電圧を印加することにより、誘電体バリア放電を実行することができる。
図7は、本発明の実施形態の他の変形例における液中プラズマ装置1200の主要構成を模式的に示す断面図である。この液中プラズマ装置1200は、少なくとも底面が実質的に平坦な内部空間114を備えている点において、図6に示される液中プラズマ装置1100から異なっている。この内部空間114の底面は、第1電極100を被覆する誘電体層112の上面によって形成されている。この例における誘電体層112は、第1電極100の外周側面から横方向外側に拡大した部分を有している。この部分において誘電体層112は相対的に厚い。放電のための気体を内部空間114に供給するための管118は、誘電体層112のうち第1電極100が存在しない部分を貫通している。
液中プラズマ装置1200は、内部空間114内に進入した液体および/または気体を内部空間114から外部に排出することのできる排出管119およびバルブ122を有している。液体槽300中に供給された液体302は、放電の開始前または中断中において、内部空間内114に侵入する可能性がある。管118を介して気体を内部空間114に供給するとき、バルブ122を開けることにより、排出管119を介して内部空間114の液体302を排出することができる。このような排出管119を用いることにより、内部空間114の内部を気体で満たすことができるため、放電を安定して実行することが容易になる。加えて、内部空間114内で形成された反応生成物を気相にて外部へ取り出すことが可能になる。
前述したように、内部空間114の内部圧力は、気体導入装置120から内部空間114に供給する気体の流量によって調整され得る。前述したように、内部空間114における気体の圧力は、大気圧と水圧との合計値に相当する値を有している。このため、液体302に対する加圧を付加すれば、内部空間114における気体の圧力の上限値を高めることができる。
図8(a)は、第2電極200における貫通孔202の他の配置例を示す上面図である。気体と液体302との接触面204の広さは、第2電極200における貫通孔202の開口率に比例する(図29参照)。貫通孔202をハニカム状に配置すれば、第2電極200の機械的強度を維持しながら、開口率を高めることが容易である。
図8(b)は、第2電極200を覆う固体誘電体層212を設けた例を示す断面図である。図8(b)に示すように、第2電極200の放電に寄与する部分を覆うように固体誘電体層212を設けてもよい。固体誘電体層212は、第2電極200と水との導通を得るために、第2電極200の一部を露出するように形成されている。
<液中プラズマ装置>
以下、液中プラズマ装置の実施形態を詳細に説明する。
図9に、本発明の実施形態による液中プラズマ装置1の断面構造図を示す。放電部10は誘電体で被覆された電極2と複数の貫通孔を有する電極3によって挟まれた空間であり、そのギャップ長は1mm以下である。「ギャップ長」は、電極2における誘電体の表面から電極3の表面までの距離である。この距離は、前述した電極間距離Dに等しい。ギャップ長は、例えば0.5mm±0.1mmに設定され得る。
電極支持基板18と複数の貫通孔を有する電極3で囲まれた空間の機密性は、Oリング17によって保たれる。プラズマの原料となる気体は、気体導入管7により、圧力調整室12へ導かれ、電極支持基板18に設けられた気体導入口8から放電部10へ導入される。この気体は、放電部10でプラズマガスとなった後、複数の貫通孔を有する電極3に設けられた貫通孔9から液中へ排出される。この時、プラズマは貫通孔9で液と接触する。放電部10への液の侵入を停止することは、圧力調整機構11によって気体圧力を調整することで達成できる。圧力調整室12を設けることにより、その調整はより容易になる。
貫通孔9内に液面をとどめ、放電部10への液の侵入を防ぐことは重要である。液が放電部10に侵入し、電極表面を濡らした場合、液に導電性があれば静電遮蔽により気泡20内に電界は生じない。もし図10に示すように、電極間の一部に気泡20が生じ放電が発生したとしても、他の対向電極面は導電性液で短絡し、そのために負荷容量が大きくなり電源容量は増大する。本実施形態における液中プラズマ装置において、液の侵入を防ぐためには、圧力調整が不可欠である。
液が放電部10に侵入することを防止するためには、貫通孔9の開口径を適正に決定することが有効である。実験検討を重ねた結果、貫通孔9の開口径は、電極間距離以下であることが合理的であることを見出した。
図11に本実施形態における複数の貫通孔を有する電極3の断面図を示す。電極3は接地して使用され得る。複数の貫通孔を有する電極3は開口部を有することから、導電性があり、熱伝導性が良く、耐食性が良く、且つ加工性のよい金属材料から形成されていることが望ましい。具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金などを用いることができる。複合材料を用いることも可能である。具体的にはプラスチック樹脂やセラミクスの板に多孔を設け、導電性薄膜をコーティングしたものが挙げられる。
本実施形態の装置1においては、電極3の貫通孔の開口径をあまり小さくすると、表面張力による液の侵入が懸念される。これを防ぐためには、図12に示すように、貫通孔9を液相面32から気相面31に向けて口径が広がるように側壁に傾斜を持たせることが有効である。これは圧力損失の低減にも効果がある。
図13に本実施形態における誘電体で被覆された電極2の断面構造を示す。電極2には高電圧が印加され得る。電極2は、金属部34と、誘電体部33とを有し、給電配線4に接続されている。
誘電体部33の放電面35の側に位置する部分(固体誘電体層)は、放電部10への印加電圧が大きくなるように、できる限り薄いことが望ましい。この固体誘電体層の厚さは、誘電体部33の絶縁耐圧、厚さの制御性、機械的強度、加工容易性を考慮して決定される。誘電体部33の支持面36の側に位置する部分は、負荷容量の低減と、電極支持基板18への高電圧印加回避のために、厚い方が望ましい。
金属部34の材料は、誘電体部33の材料との間で熱膨張係数差が小さいことが好ましい。また、誘電体部33との密着性が良いこと、加工が容易なこと、および加工による給電配線4との接続が可能であることが実用上は有益である。実験検討の結果、誘電体部33の材料として、エポキシ樹脂、ホウケイ酸ガラスまたはソーダライムガラスが好適に用いられ得ることがわかった。また、金属部34の材料としては、42合金(42質量%のニッケルを含有する鉄合金)、フェライト系ステンレス鋼(SUS403系)、またはマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS410系)板を用いることができる。金属部34に誘電体部33を熱圧着して形成することができる。本発明の実施形態のある具体的な実施例において、放電面35側の誘電体厚は0.1mm、支持面側36の誘電体厚は2mmであった。また金属部34(ステンレス鋼板)の厚さは0.1mmであった。他に、誘電体としてセラミクスを、また金属に代わる導電性物質として半導体を使用してもよい。これらの形成は、メッキ、CVD、蒸着、熱酸化、印刷などの膜形成手法を用いて行ってもよい。
電極支持基板18および側壁15は、電極2と電極3との間に高電圧が印加されても、良好な電気絶縁性を示すことが好ましい。電極支持基板18および側壁15は、加工性のよい樹脂から形成され得る。セラミクスを用いてもよい。特に電極支持基板18には、プラズマに対する耐性が要求される。また、放電による、誘電体で被覆された電極2の温度上昇を考慮して、電極支持基板18は、耐熱特性の良い材料から形成され得る。
本実施形態の液中プラズマ装置を水処理の用途に使用する場合、電極支持基盤18は、100℃の温度で変形のないことが望ましい。具体的には、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などから電極支持基板18を形成することができる。
本実施形態において、上板14は側壁15を介して電極3に連結されている。より詳細には、上板14と電極3とは、側壁15の貫通孔を通る金属製ボルト・ナット19によって結合されている。このような場合、上板14は、樹脂またはセラミクスなどの絶縁材料から形成され得る。金属製ボルト・ナット19を用いる代わりに、絶縁性の結合方式によって上板14を側壁15に固定する場合、上板14は、アルミ合金やステンレス鋼などの金属材料から形成され得る。
図14は、本発明による液中プラズマ装置を備える液中プラズマ処理システムの実施形態を示す図である。
液中プラズマ装置1が装着された液処理槽26に被処理液体21が充填される。気体供給装置24から気体が気体導入管7を経て装置1に送り込まれる。装置1内でプラズマが生成され、プラズマが液体21と接触するとともに、生成された活性種などのプラズマ反応生成物が気泡20となって液体21中へ送り出される。気泡20は液体21中を浮揚、拡散してフィルター27を通過して外部へ放出される。フィルター27は排ガス中の有害物質を捕獲するために設けられる。
放電用電力は、給電配線4および給電配線5により、高圧電源25から装置1へ供給される。電源は商用電源29であってもよいし、太陽電池30であってもよい。この処理システムが屋外に設置され、常時運転が望まれる場合、補助電源を備えた太陽電池30による電力供給が合理的である。オゾンを用いた液処理を行うとき、気体供給装置24は送風ポンプまたは酸素供給装置であり得る。また、フィルター27はオゾン分解フィルターとなり得る。
図15に、局所場において液中プラズマ装置1を使用する形態を示す。配管28内に液中プラズマ装置1が挿入される。この形態では、給電配線4、給電配線5、および気体導入管7から電力およびプラズマ原料となる気体が送り込まれ、液体21がプラズマ処理される。図に示したように、液の滞留部位などの特定点に液中プラズマ装置1を設置することができる。
<水処理の実施例>
図9の装置1を用いて色素メチレンブルーの脱色を行った。図16は、本実施例で使用した高電圧駆動回路の構成を示す。発振回路はウイーンブリッジ回路であり、可変抵抗で発振周波数、および利得を調整する。本実施例で用いた発振周波数は26kHzであった。誘電体で被覆された電極2の金属部のサイズは2cm×2cm、放電面側誘電体厚さ1mm、支持基板側誘電体厚さ2mm、誘電体電極容量は20pFであった。該金属部としてフェライト系ステンレス鋼を、また該誘電体部としてはソーダライムガラス板を用い、両者を熱圧着して成型した。
電極間距離は0.5mmであった。電極支持基板18、上板14、および側壁15はポリアセタール樹脂板を用いて作製した。電源は商用100VACを整流して用い、高圧トランスの巻線比は1:28とした。放電電圧は2.8kV、皮相電力は10Wであった。気体供給装置24として吐出量3500cc/分のエアーポンプを用いた。
これらを用いて全体を図14の様に構成し、色素メチレンブルーの脱色を行った。図17に、処理液の分光透過特性の経時変化を示す。この結果から算出されたメチレンブルー分解エネルギー効率は0.180g/kWhだった。当該化学反応は、放電プラズマによって生成された酸化性活性種が作用して起こった。求められた効率は既報のパルスコロナ放電による結果に比して約2倍から3倍高い結果となっている(非特許文献3参照)。図18には本実施例中に測定された、水中プラズマの発光分光の結果を大気中プラズマと対比して示す。水中放電に於いて、明らかにヒドロキシラジカルの発生が認められる。
この実施例における液中プラズマ装置をオゾン処理に用いる場合、従来のオゾン処理装置に比べて、エネルギー効率の向上が実現される。以下、この点を説明する。
下記の化学反応式(I)から導出されるオゾン量は、1.25g/kWhである。
3/2O2 → O3 ΔH=1.5eV ・・・(I)
酸素を原料として誘電体バリア放電で生成されるオゾン量は、従来、0.05g/kWhから0.07g/kWh程度であった。また、そのエネルギー効率は4%〜6%であった。空気を原料とする場合は、この効率は2%〜3%である。その理由は、空気中の窒素が三体反応に寄与するためである。
従来のオゾン処理装置のエネルギー効率が低い最大の原因は、反応メカニズムに起因する。理論および実験の結果を参照すると、理論効率の30%までは期待できる(非特許文献3参照)。しかし、実用化されている実際のオゾン処理装置の効率は理論効率よりも低下する。その原因は、生成場から反応場への輸送途中にオゾンが分解して消滅するからである。その主たる要因は、輸送管壁や他粒子との衝突によるオゾン分子の分解、さらには温度上昇による分解の促進である。実用システムにおいては、さらにガス循環ポンプや冷却機などの付帯動力負荷が大きく、システムとしてのエネルギー効率はさらに低下する。エネルギー効率が低下すると、装置は大掛かりなものとなり、実用化は大型プラントに限られる。
本実施形態に係る液中プラズマ装置を用いると、電源容量の低減とプラズマ反応領域の拡大とを実現することが可能になる。水の絶縁破壊電界強度は1MV/cm以上である。直流パルス放電によってストリーマ放電を水中に生成するためには、電界集中効果を利用しても20kV以上の電圧供給が必要である。放電反応領域を広げるためには、電極面積を拡大する必要がある。従って電源容量は大きく、装置は大掛かりなものとなっている。
水中へ気泡を導入することによって放電は容易になる。誘電体バリア放電の場合、開始電圧は低減できるが、そのためには電極間距離は短く保つことが好ましい。誘電体バリア放電は、安定したストリーマコロナ放電と考えられている。必要な放電開始電圧は、パッシェンの式の下記の式(1)で与えられる値(Vs)よりも低くなる。
Vs=Bpd/ln(Apd/ln(1+1/γ)) ・・・(1)
A、B : 定数
p : 圧力
γ : γ係数
d : 放電ギャップ長
しかしながら、従来の液中誘電体バリア放電によれば、気泡および液体の2相混合領域が電極間に存在する。その結果、負荷容量が大きくなる。また、外部動力によって2相流を形成する必要がある。一方、高周波放電を行う場合、気泡中での電荷のトラップにより、Vsは下がる。しかし、プラズマによる高周波電力の吸収が大きくなり、電源容量は大きくなってしまう。
本発明による液中プラズマ装置の実施形態によれば、以下の効果の少なくとも1つが得られる。
1)液中誘電体バリア放電において放電プラズマを安定して定常的に生成する。
2)プラズマが液体と安定して接触できる。
3)小型軽量化および低消費電力化が可能になる。
<変形例>
図19および図20に、多孔質材料、および貫通孔を有するように微細加工を施したシリコン基板を構成部材の一部とする、複数の貫通孔を有する電極3の構造をそれぞれ示した。いずれの構造においても良好な放電特性が得られた。多孔質材料においては、バルク質、粉体質、および繊維質のいずれの場合でも良好な放電が実現された。この場合、各材質が非導電性であれば電解質である被処理液体が導電性を確保して電極となる。
本発明による液中プラズマ装置は、ある態様において、誘電体で被覆された電極と、複数の貫通孔を有する電極と、前記誘電体で被覆された電極を支持する電極支持基板と、圧力調整室とを備える液中誘電体バリア放電プラズマ装置である。この態様において、前記誘電体で被覆された電極と前記複数の貫通孔を有する電極とは、対向配置されている。気体導入口が前記電極支持基板に設けられている。前記圧力調整室は、前記気体導入口と接続されている。前記圧力調整室は、圧力調整機構を有していてもよい。前記圧力調整室へ気体を導入するための気体導入管と、いずれかの電極に電力を供給するための給電配線とを備えていても良い。
本発明の実施形態の液体浄化システムは、上記の液中誘電体バリア放電プラズマ装置と、気体供給装置と、高圧電源とを備える。
[有機物の合成]
図4に示した液中放電プラズマ装置1000を用いて、二酸化炭素および水から有機物を合成することを試みた。これまで、液中放電プラズマによって、有機物が合成されたという報告はない。
液中放電プラズマ装置1000を用いて、図5に示したように、液体槽300に液体302として水を蓄えた状態で、気体導入装置120から二酸化炭素ガスを1L(リットル)/分で供給しつつ、20W(AC100V、0.2A)の電力を投入し、水中で放電プラズマを発生させた。その結果、水中に、過蟻酸、ジホルミルペルオキサイド(diformyl peroxide)および蟻酸からなる群から選択される少なくとも1つの有機物が生成されていることが確認された。
水中に生成された有機物の同定には、高速液体クロマトグラフ(島津製作所製、LC−10)を用いた。カラムには、Develosil RPAQEOUS−AR−5(野村化学製)、移動相には50mMリン酸バッファー(pH2.4)を用い、オーブン温度は40℃とした。蟻酸の標準試料として、和光純薬特級(88%)を1000倍に希釈した水溶液を用いた。過蟻酸は市販されていないので、R. Gehr, D. Chen,
and M. Moreau, Water Science and Technology, 59(1), 89−96, (2009)に記載の方法で調製した過蟻酸水溶液を標準試料とした。過蟻酸を含む上記の水溶液は、蟻酸、過酸化水素、硫酸および過蟻酸の混合水溶液であり、この混合水溶液に含まれる各成分の初濃度(過蟻酸が生成しないときの濃度)は、蟻酸(9.9M)、過酸化水素(4.7M)、硫酸(0.77M)であり、上記の蟻酸の約20%が過蟻酸に変換されているものと推定される。
上記の標準試料についての測定結果(保持時間(リテンションタイム)およびUVスペクトル)を図21および図22に示す。これらの標準試料の結果に基づいて、水中放電プラズマによって生成された有機物を同定した。
放電時間が5分の試料および放電時間が20分の試料についての測定結果を図23および図24に示す。
図23と図24から明らかなように、水中放電プラズマによって過蟻酸(PFA)が生成されており、かつ、放電時間とともに、過蟻酸の生成量が増大している。また、過蟻酸よりもリテンションタイムが短く、191nmに強いUV吸収を示す有機物が生成されており、この有機物の生成量も放電時間とともに、増大している。
191nmに吸収を有する有機物を同定するために、マトリックス支援レーザー脱離イオン化タイムオブフライト質量分析法で、質量を求めた。質量分析には、島津製作所製のMALDI TOF−MSを用い、ネガティブおよびポジティブの両モードで測定を行った。マトリックス物質としては、DHBA(2,5−Dihydroxybenzoic acid)を用いた。試料としては、上記で標準試料として用いた過蟻酸を含む水溶液および放電時間が20分間の試料を用いた。測定結果を図25および図26に示す。
図25は、過蟻酸を含む標準水溶液についての結果であり、図25(a)はポジティブモードによる測定結果であり、図25(b)はネガティブモードによる測定結果である。図26は、放電時間が20分間の試料についての結果であり、図26(a)はポジティブモードによる測定結果であり、図26(b)はネガティブモードによる測定結果である。
上記の結果、191nmに吸収を有する有機物は、ジホルミルペルオキサイドであると考えられる。ジホルミルペルオキサイド(HOC−O−O−COH)の分子量はM=90である。m/z=89.4が分子量M=90のイオンに帰属されるのか、プロトンを1つ失った量M=89のイオンに帰属されるのかは明らかでない。また、m/z=60.5は質量61のイオンに帰属し、m/z=60.5がHOCOO-に、m/z=59.5がOCOO-に、またm/z=61.5が親分子イオンに対応すると考えられる。
ジホルミルペルオキサイドが生成される反応は
2HOC−O−OH(過蟻酸)→ HOC−O−O−COH + H2O +1/2O2
であると考えられる。
次に、過蟻酸の生成量を見積もった。図27は、放電時間が1分の試料のUVスペクトルと放電時間が20分の試料のUVスペクトルとの差スペクトルを示す。
図27の差スペクトルは、過蟻酸のUVスペクトルとほとんど一致している。したがって、この差スペクトルが、19分間に生成された過蟻酸に帰属されるとして、過蟻酸の生成量を見積もった。
図27の差スペクトルにおける吸収極大における吸光度は0.025であり、過蟻酸のモル吸光係数を50とすると、500mL中の過蟻酸の濃度は0.5mMとなり、19分間に生成した過蟻酸の絶対量は0.25mmolであると見積もれる。1分間の生成量に換算すると、0.013mmolとなる。供給電力は約20Wであるので、1分間で1.2kJということになる。そうすると、エネルギー効率は0.011mmol/kJとなる。
図28および図29を参照して、過蟻酸の生成量と二酸化炭素ガスの流量および電極の貫通孔の開口率との関係を説明する。実験には先と同様に、図4に示した液中放電プラズマ装置1000を用いた。
図28に示す、過蟻酸の生成量と二酸化炭素ガスの流量との関係を示すグラフから、二酸化炭素ガスの流量が少なくとも0.5L/minから0.75L/minの間では、二酸化炭素ガスの流量を多くすれば過蟻酸の生成量が増えるが、少なくとも1L/min以上に流量を増やすと、逆に過蟻酸の生成量が減ることがわかる。すなわち、二酸化炭素ガスの流量は、電極の貫通孔の開口率に応じて、好適な範囲があることがわかる。この場合、開口率とは、気相面と液相面とを実効的に連結する貫通孔の合計断面積の、放電面積に対する比率をいう。すなわち、気体の脱出孔となっている貫通孔は開口には含まれない。
図29に示す、過蟻酸の生成量と電極の貫通孔の開口率との関係を示すグラフから、図4に示した液中放電プラズマ装置1000が備える第2電極200における貫通孔202の開口率0.35よりも開口率が小さくなると、過蟻酸の生成量が開口率にほぼ比例して少なくなることが分かる。したがって、過蟻酸の生成量の観点からは、開口率は高い方が好ましいと言える。
上述したように、二酸化炭素および水だけから、水中放電プラズマによって、有機物を合成することができた。この合成プロセスを用いると、地球温暖化の原因と言われている二酸化炭素を固定化できる。また、純粋な過蟻酸を合成する方法は見つかっておらず、過蟻酸を合成する有力な方法となり得る。過蟻酸は、強い酸化力を有するので、タンパク質のジスルフィド結合切断に用いられている。また、有機合成においてエポキシ化、ヒドロキシル化などの酸化反応にも用いられている。また、医療・食品産業においては殺菌力が利用される。
本発明の実施形態における液中プラズマ装置は、非平衡プラズマによって形成された反応生成物を化学反応に供して、新たに物質を合成、変性、または分解することに使用され得る。液中プラズマ装置によれば、生成されるプラズマが、プラズマによって処理されるべき物質に隣接している点に特徴を有している。本発明の実施形態による液中プラズマ装置は、具体的には、浄排水場、飲料水、食品工場、半導体工場、液晶工場、養魚水槽、および水族館などにおける殺菌処理に利用され得る。また、汚染水処理における有機物の分解、工場廃液の処理、溶液中での材料合成にも利用され得る。
なお、本発明の実施形態による液中プラズマ装置が備える電極構造は、気体中プラズマ処理に使用することも可能である。プラズマ領域と反応領域を分離したリモートプラズマCVD、リモートプラズマ表面処理などが挙げられる。また、このような電極構造は、大気中の汚染物質を分解する空気清浄機としても用いることも可能である。
本発明の実施形態による液中プラズマ装置によれば、その動作に必要な電源容量を低減し、小型軽量化を実現することができる。これにより、局所場における処理に対応しやすくなる。また、処理量、環境に応じた処理システムの構築が容易になる。民生用機器として、液中プラズマ技術を活用することが可能になる。
100 第1電極
112 固体誘電体層
114 内部空間
116 放電室
118 管
120 気体導入装置
200 第2電極
200a 液相面
200b 気相面
202 貫通孔
204 接触面
300 液体槽
302 液体
304 液面
400 電気回路
402 第1電気導体
404 第2電気導体
1000 液中プラズマ装置

Claims (4)

  1. 水に接する二酸化炭素ガスを含む気体の放電によってプラズマを形成すること、および
    前記プラズマと前記水との接触によって前記水の中に、過蟻酸またはジホルミルペルオキサイドを含む有機物を生成すること、
    を含む、有機物合成方法。
  2. 前記放電は、誘電体バリア放電である、請求項1に記載の有機物合成方法。
  3. 前記有機物は、過蟻酸を含む、請求項1または2に記載の有機物合成方法。
  4. 液中プラズマ装置を用いる、請求項1から3のいずれかに記載の有機物合成方法であって、
    前記液中プラズマ装置は、
    第1電極と、
    前記第1電極に接する固体誘電体層と、
    前記第1電極および前記固体誘電体層を受け入れる内部空間を有する放電室と、
    前記固体誘電体層を介して前記第1電極に対向し、前記放電室の前記内部空間を水から分離するように配置された第2電極であって、前記内部空間の側に位置する気相面と、前記水の側に位置する液相面とを有し、前記気相面と前記液相面とを連結する複数の貫通孔を有する第2電極と、
    前記放電室の前記内部空間内に二酸化炭素ガスを供給し、前記二酸化炭素ガスと前記水との界面を前記第2電極における各貫通孔内に形成する気体導入装置とを備え、
    前記二酸化炭素ガスの放電により、前記水の中に前記有機物を生成する、請求項1から3のいずれかに記載の有機物合成方法。
JP2015156126A 2014-09-09 2015-08-06 有機物合成方法 Expired - Fee Related JP5924606B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
WOPCT/JP2014/073730 2014-09-09
PCT/JP2014/073730 WO2015037565A1 (ja) 2013-09-10 2014-09-09 有機物合成方法および液中プラズマ装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016056167A true JP2016056167A (ja) 2016-04-21
JP5924606B2 JP5924606B2 (ja) 2016-05-25

Family

ID=55793286

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015156126A Expired - Fee Related JP5924606B2 (ja) 2014-09-09 2015-08-06 有機物合成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5924606B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111163835A (zh) * 2017-10-12 2020-05-15 韩国机械研究院 皮肤治疗装置

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05117183A (ja) * 1991-10-24 1993-05-14 Nippon Paint Co Ltd 二酸化炭素の固定方法
JP2008178870A (ja) * 2006-12-28 2008-08-07 Sharp Corp プラズマ発生装置、ラジカル生成方法および洗浄浄化装置
JP2009202154A (ja) * 2008-02-04 2009-09-10 National Tsing Hua Univ プラズマ技術を用いることによる二酸化炭素の有用な有機製品への変換
JP2010137212A (ja) * 2008-12-10 2010-06-24 Pm Dimensions Kk プラズマ発生装置
JP2013049015A (ja) * 2011-08-31 2013-03-14 Panasonic Corp 水処理装置

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05117183A (ja) * 1991-10-24 1993-05-14 Nippon Paint Co Ltd 二酸化炭素の固定方法
JP2008178870A (ja) * 2006-12-28 2008-08-07 Sharp Corp プラズマ発生装置、ラジカル生成方法および洗浄浄化装置
JP2009202154A (ja) * 2008-02-04 2009-09-10 National Tsing Hua Univ プラズマ技術を用いることによる二酸化炭素の有用な有機製品への変換
JP2010137212A (ja) * 2008-12-10 2010-06-24 Pm Dimensions Kk プラズマ発生装置
JP2013049015A (ja) * 2011-08-31 2013-03-14 Panasonic Corp 水処理装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111163835A (zh) * 2017-10-12 2020-05-15 韩国机械研究院 皮肤治疗装置
JP2020535905A (ja) * 2017-10-12 2020-12-10 韓国機械研究院Korea Institute Of Machinery & Materials 皮膚処置装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP5924606B2 (ja) 2016-05-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2015037565A1 (ja) 有機物合成方法および液中プラズマ装置
US9352984B2 (en) Fluid treatment using plasma technology
US7384619B2 (en) Method for generating hydrogen from water or steam in a plasma
Zhou et al. Sustainable plasma-catalytic bubbles for hydrogen peroxide synthesis
Lamichhane et al. Sustainable nitrogen fixation from synergistic effect of photo-electrochemical water splitting and atmospheric pressure N2 plasma
Takeuchi et al. Generation mechanism of hydrogen peroxide in dc plasma with a liquid electrode
Patel et al. Plasma-activated electrolysis for cogeneration of nitric oxide and hydrogen from water and nitrogen
Yan et al. Degradation of phenol in aqueous solutions by gas–liquid gliding arc discharges
KR20120003816A (ko) 균일 전기장 유전체 장벽 방전 반응기
JP2017501860A (ja) モジュール式マイクロプラズママイクロチャネル反応装置、小型反応モジュール、及びオゾン生成装置
JP2009054557A (ja) 液体中プラズマ発生装置
WO2009025835A1 (en) Non-thermal plasma synthesis of ammonia
Zhang et al. Rotating gliding arc assisted water splitting in atmospheric nitrogen
KR101596178B1 (ko) 질소 첨가리스·오존 발생 유닛
JP6020844B2 (ja) 液中プラズマ装置および液体浄化システム
Samaranayake et al. Pulsed power production of ozone using nonthermal gas discharges
JP2015056407A5 (ja)
Takeuchi et al. Effective utilization of ozone in plasma-based advanced oxidation process
JP5924606B2 (ja) 有機物合成方法
US20170369341A1 (en) Water treatment apparatus and water treatment method
JP2016175820A (ja) アンモニアの製造方法及び化合物製造装置
CN209968113U (zh) 一种催化协同去除不同溶解度VOCs的多相放电系统
Panta et al. An experimental study of co-axial dielectric barrier discharge for ozone generation
Lee et al. Enhanced production of hydroxyl radicals in plasma-treated water via a negative DC bias coupling
US20230338597A1 (en) Non-contact microplasma ozonized mist radical sterilizer

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20151124

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160222

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20160301

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160315

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160407

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5924606

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees