JP2016056115A - 肺高血圧症治療薬およびそのスクリーニング方法 - Google Patents

肺高血圧症治療薬およびそのスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】肺動脈性肺高血圧症の病態形成に関与する分子を見出し、当該分子を標的とする新規な肺高血圧症の予防および/または治療用医薬を提供すること、および、当該分子を標的とする肺高血圧症治療薬のスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を有効成分とする肺高血圧症の予防および/または治療用医薬、および、IL−21およびIL−21受容体を用いる肺高血圧症治療薬のスクリーニング方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、肺高血圧症治療薬およびそのスクリーニング方法に関するものである。
循環器系は体循環と肺循環とから構成され、肺循環の主要な存在意義は肺ガス交換の場を提供することである。左心室から駆出された血液は体組織全体を広く潅流するが、肺血管系には右心系(右心室と右心房)を介してこの体組織全体を潅流した血液が流入して、肺毛細血管と肺胞間でガス交換を行っている。よって、肺循環系は基本的にhigh flow−low pressure−low resistanceな系であり、肺血流量の増加に対しては肺血管の拡張や再疎通(閉じている血管の再開通)などの機序で圧の上昇を抑える仕組みが内在している。
肺動脈平均圧は正常・安静時には上限20mmHgの範囲で制御されている。運動などで肺血流量が増加しても直ちに肺動脈の著明な増加は見られないが、肺血管床の約50−60%程度以上が閉塞すると圧や血管抵抗の上昇が生じることが報告されている。2008年の第4回肺高血圧ワールドシンポジウム(ダナポイント会議)では、安静時に右心カテーテル検査を用いて実測した肺動脈平均圧(mean PAP)が25mmHg以上の場合が肺高血圧症と定義された。さらに肺高血圧症例中で特に肺動脈楔入圧(PCWP)が15mmHg以下の場合を肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension)と定義した。2013年のニース会議でもこの定義は変更されておらず、肺動脈平均圧25mmHg以上が肺高血圧症の定義として維持されている。
肺動脈性肺高血圧症(以下「PAH」と略記する場合がある)は肺動脈の中膜、内膜の過増殖を病態背景に有する疾患である。現在、肺高血圧症治療には、エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン、アンブリセンタン等)、ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬(シルデナフィル、タダラフィル等)、プロスタグランジンI2およびその誘導体(エポプロステノール、べラプロスト等)などが使用されている。しかし、これらの治療による予後の改善は十分とは言えず、PAHは難病の1つに指定されている。それゆえ、PAHの新しい治療法の開発が要請されている。
近年、炎症がPAHの病態の進行に関わると報告されており、特に炎症性サイトカインであるIL−6(インターロイキン−6)の関与が報告されている。例えば、IL−6の血中濃度が高い特発性PAH患者は、IL−6の血中濃度が低い特発性PAH患者と比べて、予後が不良であることが報告されている(非特許文献1)。また、低酸素(10%O)負荷による実験的肺高血圧症モデルマウスを用いた検討の結果、IL−6がその病態形成に重要であることが報告されている(非特許文献2、3)。
Soon E et al, Circulation 122, 920-927, 2010 Steiner MK et al, Circ. Res. 104, 236-244, 2009 Savale L et al, Respir Res. 10, 6, 2009
本発明は、肺動脈性肺高血圧症の病態形成に関与する分子を見出し、当該分子を標的とする新規な肺高血圧症の予防および/または治療用医薬を提供することを課題とする。また、当該分子を標的とする肺高血圧症治療薬のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]IL−21(インターロイキン−21)からのシグナル伝達を阻害する物質を有効成分とする肺高血圧症の予防および/または治療用医薬。
[2]IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質が、IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質である前記[1]に記載の医薬。
[3]IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質が、抗IL−21抗体、抗IL−21受容体抗体、IL−21と結合するペプチドおよびIL−21受容体と結合するペプチドからなる群から選択される一種である前記[2]に記載の医薬。
[4]IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質が、抗IL−21抗体である前記[3]に記載の医薬。
[5]IL−21およびIL−21受容体を用いることを特徴とする肺高血圧症治療薬のスクリーニング方法。
[6]IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を選択することを特徴とする前記[5]に記載の方法。
[7]IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質を選択することを特徴とする前記[5]に記載の方法。
[8]被験物質とIL−21とIL−21受容体を発現する細胞を接触させる工程と、IL−21受容体の下流のシグナル量を測定する工程と、被験物質を接触させない場合の前記細胞におけるシグナル量と比較して、シグナル量を低下させる被験物質を選択する工程とを含むことを特徴とする前記[6]に記載の方法。
[9]被験物質とIL−21とIL−21受容体を接触させる工程と、IL−21とIL−21受容体との結合レベルを測定する工程と、被験物質を接触させない場合の結合レベルと比較して、結合レベルを低下させる被験物質を選択する工程とを含むことを特徴とする前記[7]に記載の方法。
本発明によれば、肺高血圧症の予防および/または治療に有用な新規な医薬を提供することができる。また、本発明のスクリーニング方法によれば、肺高血圧症の治療薬として有用な物質を取得することができる。
低酸素チェンバー内で飼育したマウスの肺におけるIL−6遺伝子の経時的な発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図である(**p<0.01)。 低酸素チェンバー内で飼育したマウスの肺の抗IL−6抗体による免疫組織化学染色像である。上段が細動脈(arteriole)、下段が小動脈(small artery)であり、左が正常酸素負荷、右が低酸素負荷である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の肺におけるSTAT3のリン酸化状態を、低酸素負荷後2日目の肺を試料とし、抗P−STAT3−Tyr705抗体および抗STAT3抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果を示す図である。 抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与によるIL−6シグナル阻害が低酸素誘発性肺高血圧症の病態に与える影響を検討するための実験プロトコールである。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後28日目における肺高血圧症の病態を検討した結果を示す図であり、Aは右室収縮期圧(RVSP)の結果、Bはフルトン係数の結果、Cは中膜肥厚係数の結果、Dは肺の切片をエラスチカ・ワンギーソン染色し肺血管リモデリングを観察した染色像を示す図である。 低酸素負荷後7日目の肺における、F4/80(マクロファージに限局して発現する糖たんぱく質)の発現を検討した結果を示す図であり、AおよびBは抗F4/80抗体によるウエスタンブロットの結果を示し、CおよびDは抗CD68抗体による免疫組織化学染色により陽性細胞を観察した結果を示す図である。 低酸素チェンバー内で飼育したマウスの肺から採取したマクロファージにおけるFizz1遺伝子(M2マクロファージマーカー)の経時的な発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図である(*p<0.05、**p<0.01)。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群のマウスの肺から、低酸素負荷後4日目に採取したマクロファージのM2マーカー遺伝子の発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図であり、AはFizz1遺伝子、BはArg1遺伝子、CはChi3l3遺伝子、DはMrc1遺伝子、EはCxcl12遺伝子の結果である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群のマウスの肺から、低酸素負荷後4日目に採取したマクロファージのM1マーカー遺伝子の発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図であり、AはNos2遺伝子、BはIL−12β遺伝子、CはTNF−α遺伝子の結果である。 マウスから気管支肺胞洗浄によって採取したマクロファージを培養し、IL−6、可溶性IL−16受容体またはその両方で刺激した後に、マクロファージのM2マーカー遺伝子およびM1マーカー遺伝子の発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図であり、AはFizz1遺伝子、BはArg1遺伝子、CはChi3l3遺伝子、DはMrc1遺伝子、EはCxcl12遺伝子、FはNos2遺伝子、GはIL−12β遺伝子、HはTNF−α遺伝子の結果である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後3日目の肺におけるTh1細胞、Th2細胞の動態をフローサイトメトリーにより解析した結果を示す図であり、Aは各群のフローサイトメトリー解析結果であり、BはIFN−γ発現CD4陽性細胞の頻度を示す図であり、CはIL−4発現CD4陽性細胞の頻度を示す図である。 低酸素チェンバー内で飼育したマウスの肺におけるIL−17遺伝子の経時的な発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図である(*p<0.05)。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後2日目の肺におけるTh17細胞マーカー遺伝子の発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図であり、AはIL−17A遺伝子、BはRorc遺伝子、CはCxcl1遺伝子、DはTNF−α遺伝子の結果である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後2日目の肺におけるIL−17発現量をウエスタンブロットにより解析した結果を示す図であり、Aはバンドの写真、Bはバンドの濃さを数値化した図である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後2日目の肺におけるTh17細胞の動態をフローサイトメトリーにより解析した結果を示す図であり、Aは各群のフローサイトメトリー解析結果であり、BはIL−17発現CD4陽性細胞の頻度を示す図である。 IL−17シグナルの阻害が低酸素誘発性肺高血圧症の病態に与える影響を検討するための実験プロトコールである。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−17A中和抗体投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後28日目における肺高血圧症の病態を検討した結果を示す図であり、Aは右室収縮期圧(RVSP)の結果、Bはフルトン係数の結果を示す図である。 低酸素チェンバー内で飼育したマウスの肺におけるIL−21遺伝子の経時的な発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図である(*p<0.05)。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後2日目の肺におけるIL−21遺伝子の発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後2日目の肺におけるIL−21発現量をウエスタンブロットにより解析した結果を示す図であり、Aはバンドの写真、Bはバンドの濃さを数値化した図である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗IL−6受容体抗体(MR16−1)投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後2日目の肺におけるIL−21産生Th17細胞の動態をフローサイトメトリーにより解析した結果を示す図であり、Aは各群のフローサイトメトリー解析結果であり、BはIL−21発現CD4陽性細胞の頻度を示し、CはIL−17AおよびIL−21発現CD4陽性細胞の頻度を示す図である。 マウスから気管支肺胞洗浄によって採取したマクロファージを培養し、IL−21で刺激した後に、マクロファージのM2マーカー遺伝子の発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図であり、AはFizz1遺伝子、BはArg1遺伝子、CはCxcl12遺伝子の結果である。 マウスから気管支肺胞洗浄によって採取したマクロファージを培養し、IL−21で刺激した後に、マクロファージのM1マーカー遺伝子の発現量を定量RT−PCRで解析した結果を示す図であり、AはNos2遺伝子、BはIL−12β遺伝子、CはTNF−α遺伝子の結果である。 ヒト肺動脈平滑筋細胞をIL−21で直接刺激して増殖に及ぼす効果を検討した結果を示す図である。 ヒト肺動脈平滑筋細胞を、IL−21存在下でマウス肺胞マクロファージを培養して得られた培養上清(マクロファージ馴化培地)を用いて培養した際に増殖に及ぼす効果を検討した結果を示す図である。 ヒト肺動脈平滑筋細胞を、IL−21存在下でマウス肺胞マクロファージを培養して得られた培養上清(マクロファージ馴化培地)に、Cxcl12受容体であるCXCR4の選択的阻害剤AMD3100を添加した培地を用いて培養した際に、増殖に及ぼす効果を検討した結果を示す図である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗抗IL−21中和抗体投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後7日目の肺におけるFizz1陽性細胞(M2マクロファージ)を、抗Fizz1抗体による免疫組織化学染色により観察した結果を示す図であり、Aは免疫組織化学染色像、Bは各群のFizz1陽性細胞を数示す図である。 低酸素コントロール抗体投与群、低酸素抗抗IL−21中和抗体投与群および正常酸素コントロール抗体投与群の低酸素負荷後7日目の肺におけるリン酸化ヒストンH3(pHH3)陽性細胞を、抗リン酸化ヒストンH3抗体による免疫蛍光染色により観察した結果を示す図であり、Aは免疫蛍光染色像、Bは各群のリン酸化ヒストンH3陽性細胞数を示す図である。 低酸素野生型マウス群、低酸素IL−21受容体遺伝子欠損マウス群、正常酸素野生型マウス群の低酸素負荷後28日目における肺高血圧症の病態を検討した結果を示す図であり、Aは右室収縮期圧(RVSP)の結果、Bはフルトン係数の結果、Cは中膜肥厚係数の結果を示す図である。 低酸素による肺高血圧症発症の分子機構を示す図である。
本発明者らは、IL−6シグナルの下流でヘルパーT細胞の1つのサブセットであるTh17細胞からIL−21が分泌されて、肺高血圧症の病態形成において重要な役割を持つことを見出した。すなわち、本発明者らは、低酸素条件下においてIL−6シグナル依存性にIL−21がTh17細胞から分泌され、IL−21の作用により、肺胞マクロファージがM2マクロファージ優位な状態に分化誘導されて、M2マクロファージから分泌される液性因子(SDF−1など)により肺動脈平滑筋細胞が増殖して肺血管がリモデリングすることで肺高血圧症を発症することを明らかにした(図30参照)。本発明者らは、IL−21シグナルが欠損するIL−21受容体欠損(IL−21RKO)マウスを用いて、低酸素誘発性肺高血圧症モデルを作成したところ、野生型マウスと比較してIL−21RKOマウスは肺高血圧症の病態の指標である右室収縮期圧、右室/左室+心室中隔重量比、肺動脈中膜肥厚率が有意に抑制されることを見出し、IL−21からのシグナル伝達阻害によって肺高血圧症の病態抑制が可能であることを見出した。IL−21からのシグナル伝達阻害による肺高血圧症治療の可能性を示唆する報告はこれまで全く無く、本発明者らの知見は、当該分野において革新的な成果と考えられる。
〔肺高血圧症の予防および/または治療用医薬〕
本発明は、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を有効成分とする肺高血圧症の予防および/または治療用医薬を提供する。本発明の医薬の有効成分は、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質であればどのような物質でもよく、特に限定されないが、IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質であることが好ましい。IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質としては、例えば、抗IL−21抗体、抗IL−21受容体抗体、IL−21と結合するペプチド、IL−21受容体と結合するペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの抗体またはペプチドは、IL−21またはIL−21受容体と結合することにより、IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害することができる抗体(中和抗体)またはペプチドであることが好ましい。IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害することができる抗体またはペプチドは、IL−21からのシグナル伝達を阻害することができ、肺高血圧症の病態形成を抑制することができる。
IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害することができる抗体として公知の抗体は、本発明の医薬の有効成分として好適に用いることができる。このような公知の抗IL−21抗体および抗IL−21受容体抗体としては、例えば「Rosanne Spolski and Warren J. Leonard, Interleukin-21: a double-edged sword with therapeutic potential, Nature Reviews Drug Discovery 13, 379-95 (2014)」のTable 1に記載の抗IL−21抗体および抗IL−21受容体抗体、WO2000/053761に記載の抗zalpha11リガンド抗体、WO2010/055366に記載の抗IL−21抗体、WO2004/083249に記載の抗IL−21受容体抗体などが挙げられる。
IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害することができるペプチドとして公知のペプチドは、本発明の医薬の有効成分として好適に用いることができる。このような公知のIL−21と結合するペプチドおよびIL−21受容体と結合するペプチドとしては、例えば、WO2003/040313、WO2006/113331、WO2008/049920、JBC285、12223−12231,2010等に記載のIL−21と結合するペプチド、IL−21受容体と結合するペプチドなどが挙げられる。
抗IL−21抗体は、IL−21またはそのフラグメントを抗原として作製することができる。抗原に用いるIL−21は、どのような動物由来のIL−21でもよいが、哺乳動物のIL−21であることが好ましく、ヒトのIL−21であることがより好ましい。抗原に用いるIL−21またはそのフラグメントは、IL−21発現細胞の培養上清や細胞抽出物から公知の方法(例えば、アフィニティーカラム)で精製する方法や、公知の遺伝子組換え技術を用いて組換えタンパク質として作製する方法などにより取得することができる。主要な哺乳動物のIL−21をコードする遺伝子の塩基配列情報およびアミノ酸配列情報は、公知のデータベース(DDBJ/GenBank/EMBL等)から取得することができる。例えば、ヒトIL−21をコードする遺伝子の塩基配列のアクセッション番号はAF254069であり、ヒトIL−21のアミノ酸配列のアクセッション番号はAAG29348である。
抗IL−21受容体抗体は、IL−21受容体またはそのフラグメントを抗原として作製することができる。抗原に用いるIL−21受容体は、どのような動物由来のIL−21受容体でもよいが、哺乳動物のIL−21受容体であることが好ましく、ヒトのIL−21受容体であることがより好ましい。抗原に用いるIL−21受容体またはそのフラグメントは、IL−21受容体発現細胞の培養上清や細胞抽出物から公知の方法(例えば、アフィニティーカラム)で精製する方法や、公知の遺伝子組換え技術を用いて組換えタンパク質として作製する方法などにより取得することができる。主要な哺乳動物のIL−21受容体をコードする遺伝子の塩基配列情報およびアミノ酸配列情報は、公知のデータベース(DDBJ/GenBank/EMBL等)から取得することができる。例えば、ヒトIL−21受容体をコードする遺伝子の塩基配列のアクセッション番号は、AF254067であり、ヒトIL−21受容体のアミノ酸配列のアクセッション番号は、AAG29346である。
本発明の医薬の有効成分として用いる抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。また、完全な抗体分子でもよく、抗原に特異的に結合し得る抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、scFv等)でもよい。抗体はヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体が好ましい。
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は公知の方法で作製することができる。ポリクローナル抗体は、例えば、抗原(IL−21もしくはそのフラグメント、またはIL−21受容体もしくはそのフラグメント)をPBSに溶解し、所望により通常のアジュバント(例えばフロイント完全アジュバント)を適量混合したものを免疫原として哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等)を免疫し、常法に従い免疫した動物から血液を採取して血清を分離し、ポリクローナル抗体画分を精製することにより作製することができる。免疫方法は特に限定されないが、例えば、1回または適当な間隔で複数回、皮下注射または腹腔内注射する方法が好ましい。モノクローナル抗体は、例えば、上記免疫された哺乳動物から得た免疫細胞(例えば脾細胞)とミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを得、当該ハイブリドーマの培養物から抗体を採取することによって作製することができる。また、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞に導入し、遺伝子組換え技術を用いて組換え型のモノクローナル抗体を産生させることもできる。さらに、ファージディスプレイ法を用いてモノクローナル抗体を作製することもできる。得られた抗体がIL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害することは、例えばIL−21がIL−21受容体に結合すると細胞分裂が誘導される細胞(マウス由来B9細胞株、N1186ヒトT細胞株など)を用いて、IL−21依存性細胞増殖に対する阻害効果を測定することにより確認できる。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物由来の抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域と、ヒト抗体の重鎖定常領域および軽鎖定常領域からなる抗体をいう。ヒト化抗体は、ヒト以外の動物由来の抗体のCDR(相補性決定領域:complementarity determining region)をヒト抗体のCDRへ移植したものをいい、CDR移植抗体、再構成抗体などとも称される。ヒト化抗体のFR(フレームワーク領域:framework region)は、CDRが良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、ヒト化抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるFWのアミノ酸配列を置換してもよい。ヒト抗体の定常領域のアミノ酸配列は、公知のデータベース(Protein Data Bank等)から取得することができる。
本発明の医薬の有効成分として用いるペプチドは、公知の一般的なペプチド合成のプロトコールに従って、固相合成法(Fmoc法、Boc法)または液相合成法により作製することができる。また、ペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターを導入した形質転換体を用いて作製することができる。また、in vitro転写・翻訳系を用いる方法により作製することができる。ペプチドは、C末端がカルボキシル基、カルボキシレート、アミドまたはエステルのいずれであってもよい。また、ペプチドは、N末端のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているものであってもよい。ペプチドは塩を形成していてもよく、その塩としては、生理学的に許容される塩が好ましい。得られたペプチドがIL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害することは、例えばIL−21がIL−21受容体に結合すると細胞分裂が誘導される細胞(マウス由来B9細胞株、N1186ヒトT細胞株など)を用いて、IL−21依存性細胞増殖に対する阻害効果を測定することにより確認できる。
本発明の医薬は、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を有効成分とし、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、経口投与のための製剤としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などが挙げられる。これらの製剤は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。非経口投与のための製剤としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。このような注射剤は、公知の方法に従って、例えば、本発明の医薬の有効成分を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO−50等)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。直腸投与に用いられる坐剤は、本発明の医薬の有効成分を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。本発明の医薬の有効成分がペプチドまたは抗体である場合、薬学的に許容される担体とともに製剤化された注射剤または輸液として、非経口投与経路、例えば、静脈内、筋肉内、皮膚内、腹腔内、皮下または局所に投与することが好ましい。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
本発明の医薬には、有効成分を0.001〜50質量%、好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%含有することができる。
本発明の医薬の投与量は、目的、疾患の重篤度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、有効成分の種類などを考慮して、適宜設定される。約65〜70kgの体重を有する平均的なヒトを対象とした場合、1日当たり0.02mg〜4000mg程度が好ましく、0.1mg〜200mg程度がより好ましい。1日当たりの総投与量は、単一投与量であっても分割投与量であってもよい。
〔スクリーニング方法〕
本発明は、肺高血圧症治療薬のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、IL−21およびIL−21受容体を用いることを特徴とする。本発明のスクリーニング方法で用いるIL−21およびIL−21受容体は、全長タンパク質でもよく、機能断片でもよい。本発明のスクリーニング方法に用いるIL−21およびIL−21受容体は、どのような動物由来のIL−21でもよいが、哺乳動物のIL−21であることが好ましく、ヒトのIL−21であることがより好ましい。IL−21およびIL−21受容体またはこれらのフラグメントは、上述の方法で作製することができる。
本発明のスクリーニング方法において用いる被験物質は、特に限定されないが、例えば、核酸、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物の組織抽出液、血漿等を好ましく用いることができる。被験物質は、新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。これら被験物質は塩を形成していてもよい。被験物質の塩としては、生理学的に許容される酸や塩基との塩が用いられる。
本発明のスクリーニング方法により、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を選択することが好ましい。IL−21からのシグナル伝達を阻害すれば、肺高血圧症の病態形成を抑制することができ、肺高血圧症を予防および/または治療することができる。本発明のスクリーニング方法により、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を選択する場合、例えば、被験物質とIL−21とIL−21受容体を発現する細胞を接触させる工程と、IL−21受容体の下流のシグナル量を測定する工程と、被験物質を接触させない場合の前記細胞におけるシグナル量と比較して、シグナル量を低下させる被験物質を選択する工程とを含む方法を好適に用いることができる。
IL−21受容体を発現する細胞は、IL−21との相互作用によりIL−21受容体の下流のシグナル量を測定可能なIL−21受容体発現細胞であればどのような細胞でもよい。このような細胞としては培養細胞が好ましく、初代培養細胞でもよく、細胞株でもよい。初代培養細胞として、例えばマウス肺胞マクロファージ、ヒトBリンパ球細胞などが挙げられ、細胞株として、例えばヒトN1186T細胞株、マウスB9細胞株、IL−21受容体を強制発現させたHEK293細胞などが挙げられる。これらはいずれも本発明のスクリーニング方法に好適に用いることができる。被験物質とIL−21とIL−21受容体発現細胞を接触させる方法は、特に限定されず、例えば、培養細胞を用いる場合には、培地に被験物質とIL−21を添加する方法などが挙げられる。接触時間は特に限定されず、適宜選択すればよい。また、被験物質を接触させない対照群を設ける。
IL−21受容体の下流のシグナル量は、例えばIL−21がIL−21受容体に結合すると細胞分裂が誘導される細胞(マウス由来B9細胞株、N1186ヒトT細胞株など)をIL−21受容体発現細胞として用いた場合には、用いたIL−21受容体発現細胞の細胞増殖を指標として測定することができる。細胞増殖の測定には、公知の細胞増殖方法を適宜選択して用いることができる。また、IL−21依存性に活性化されるSTAT3のチロシンリン酸化のレベルを指標として測定することができる。STAT3のチロシンリン酸化のレベルは、例えばウエスタンブロット等の公知の方法を用いて検出、定量することができる。
被験物質と接触させない対照群におけるシグナル量と比較して、被験物質を接触させた場合にシグナル量が低下していれば、当該被験物質を肺高血圧症治療薬候補物質として選択すれることができる。対照群のシグナル量と比較して、統計学的に有意にシグナル量を低下させる被験物質を選択することが好ましく、シグナル量を50%以下に低下させる被験物質を選択することがより好ましく、シグナル量を25%以下に低下させる被験物質を選択することがさらに好ましい。
本発明のスクリーニング方法により、IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質を選択することが好ましい。IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害すれば、IL−21からのシグナル伝達が阻害され、肺高血圧症の病態形成を抑制することができ、肺高血圧症を予防および/または治療することができる。本発明のスクリーニング方法により、IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質を選択する場合、例えば、被験物質とIL−21とIL−21受容体を接触させる工程と、IL−21とIL−21受容体との結合レベルを測定する工程と、被験物質を接触させない場合の結合レベルと比較して、結合レベルを低下させる被験物質を選択する工程とを含む方法を好適に用いることができる。
被験物質とIL−21とIL−21受容体を接触させる接触させる方法は特に限定されない。例えば、IL−21とIL−21受容体とを含む反応系を準備し、ここに被験物質を添加する方法が挙げられる。接触時間、接触温度は特に限定されず、適宜選択すればよい。IL−21受容体としてIL−21受容体発現細胞を用いてもよい。IL−21受容体発現細胞を用いる場合は、当該細胞を培養している培地に被験物質とIL−21を添加する方法などが挙げられる。どのような系を用いる場合も、被験物質を接触させない対照群を設ける。
IL−21とIL−21受容体との結合レベルを確認する方法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択して使用することができる。例えば、ELISA法、蛍光偏光法、細胞増殖を測定する方法などを好適に用いることができる。ELISA法を用いる場合、IL−21とIL−21受容体のいずれか一方を固相化し、そこに他方および被験物質を添加して反応させ、IL−21とIL−21受容体の結合レベルを適当な一次抗体および二次抗体を用いて検出することができる。
被験物質を接触させない対照群におけるIL−21とIL−21受容体との結合レベルと比較して、被験物質を接触させた場合にIL−21とIL−21受容体との結合レベルが低下していれば、当該被験物質を目的物質として選択すれることができる。対照群の結合レベルと比較して、統計学的に有意に結合レベルを低下させる被験物質を選択することが好ましく、結合レベルを50%以下に低下させる被験物質を選択することがより好ましく、結合レベルを25%以下に低下させる被験物質を選択することがさらに好ましい。
本発明には、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質の有効量を投与する工程を包含することを特徴とする肺高血圧症の予防および/または治療方法が含まれる。また、本発明には、肺高血圧症の予防および/または治療用医薬組成物を製造するための、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質の使用が含まれる。また、本発明には、肺高血圧症の予防および/または治療に使用するための、IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質が含まれる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実験材料と方法〕
(1)実験動物
全ての実験は8週齢の雄マウスを使用して行った。IL−21受容体欠損(IL−21RKO)マウスを用いた実験以外の実験には、C57BL/6マウス(日本SLCから購入)を用いた。IL−21RKO)マウスは米国NIHのWarren J. Leonard博士から供与を受けた。IL−21RKOマウスの遺伝子バックグラウンドはC57BL/6である。
全てのマウスは明暗12時間/12時間サイクルで24±1℃に調節した飼育室に収容し、標準的マウス飼料と水を自由に摂取させた。低酸素負荷をする際には、マウスを10%酸素の低酸素チェンバー内に4週間収容した。ただし、低酸素チェンバー内の掃除のために週2回各5分間、マウスをチェンバー外(正常酸素環境)に置いた。低酸素チェンバーへ低酸素ガスを流量1L/分で持続的に供給した。実験では、低酸素コントロール抗体投与群および低酸素中和抗体投与群、ならびに正常酸素コントロール抗体投与群を設けた。1群の匹数は8〜12匹とした。低酸素曝露後、マウスの血行動態測定を行った後にマウスを安楽死させ、心臓と肺を摘出して臓器重量を測定し、病理学的解析に供した。
(2)中和抗体を用いた肺高血圧症モデルマウスの治療実験
(2−1)抗IL−6受容体中和抗体
抗IL−6受容体中和抗体(MR16−1)は、中外製薬株式会社から供与された。MR16−1は、マウスIL−6受容体に対するラットモノクローナルIgG1抗体である。MR16−1によるIL−6シグナル阻害効果を検討するために、最初にMR16−1またはコントロール抗体(purified rat non-immune isotype IgG; MP Biomedicals)2mgを、それぞれ低酸素または正常酸素負荷の直前に静脈内投与し、その後は1週間に1回0.5mgのMR16−1またはコントロール抗体を腹腔内投与した(図4参照)。
(2−2)IL−17中和抗体
IL−17中和抗体は、ラット抗マウスIL−17モノクローナル抗体(MAB421;R&D systems)を購入して使用した。抗IL−17中和抗体またはコントロールIgG0.2mgを、それぞれ低酸素または正常酸素の負荷1日前から負荷後4日目まで毎日、その後は負荷後7,10,13,16,19,22,25,28日目に腹腔内投与した(図16参照)。
(2−3)IL−21中和抗体
IL−21中和抗体は、市販のラット抗マウスIL−21モノクローナル抗体(FFA21, eBioscience)を購入して使用した。抗IL−21中和抗体またはアイソタイプコントロール抗体100μgを、それぞれ低酸素または正常酸素の負荷1日前、負荷当日、負荷後1,2,3,4日目に腹腔内投与した。
(3)右心カテーテルによる血行動態測定
ペントバルビタールナトリウム(60 mg/kg 腹腔内投与)と鎮痛薬の酒石酸ブトルファノール(0.1-0.4 mg/kg腹腔内投与)でマウスを麻酔した。さらに、ペントバルビタールナトリウム(15-20 mg/kg/h 腹腔内投与)と酒石酸ブトルファノール(0.03-0.05 mg/kg/h 腹腔内投与)を手術レベルの麻酔深度を維持するために定期的に追加投与した。直腸温モニターと連動したサーモスタット制御のヒートパッドを用いて、血行動態測定中のマウスの体温を37〜38℃に維持した。気管にカニュレーションを挿入し、マウス用の人工呼吸器(Minivent type 845; Harvard apparatus)を用いて肺を換気した。吸気ガスは高濃度酸素に調整され、人工呼吸器を1回換気量6μL/g、頻度170〜190/分に設定した。
ポリエチレンチューブを右外頸静脈に挿入して右室まで進めて右室圧(RVP)を測定した。RVPシグナルは圧トランスデューサー(MLT0670; ADインスツルメンツ)で検出し、圧アンプリファイアー(ML117; ADインスツルメンツ)でそのシグナルを中継して、Power Labシステム(ADインスツルメンツ)で連続的にサンプリングし、Chart software(ADインスツルメンツ)を用いてコンピューターに記録した。心拍数は右室収縮期のピークから得られた。心拍数が300〜500回/分の条件を満たす場合に測定を行った。300回/分以下に心拍数が低下した場合は測定から除外した。全身の血圧は、コンピューター化されたテールカフシステム(BP-98A-L; ソフトロン)を用いて、意識のある状態のマウスから非侵襲的に測定した。
(4)ウエスタンブロット
凍結したマウス肺を溶解用緩衝液(50 mM HEPES, 100 mM sodium fluoride, 2 mM sodium orthovanadate, 4 mM EDTA, 1% Tween-20, 0.1% SDS, プロテアーゼ阻害薬カクテルComplete (Roche Applied Science))中で、ポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイズした。遠心分離により固形物を除去し、肺の溶解液を定法に従いSDS−PAGEに供した。ブロットはECLシステム(GEヘルスケア)を用いて発色させた。ウエスタンブロット解析では以下の抗体を使用した。抗P−STAT3−Tyr705抗体(CloneD3A7, Cell Signaling Technology)、抗STAT3抗体(Clone 79D7, Cell Signaling Technology)、抗F4/80抗体(MCA497GA, AbD Serotec)、抗RELM alpha (Fizz1)抗体(ab39626, Abcam)、抗IL−17抗体(sc-52567, Santa Cruz)および抗IL−21抗体(MAB594, R&D Systems)。また、抗β−tubulin抗体(T5201, Sigma-Aldrich)によるウエスタンブロットを内部コントロールとして用いた。
(5)マウス肺からのマクロファージの単離
気管支肺胞洗浄液(BALF)は、0.9mLのPBSを3回気管支内に滴下して取得し、塊状の上皮細胞を除去するために40μmのセルストレーナーでろ過した。細胞培養実験のために、BALFから初代マウス肺胞マクロファージを得た。2%ウシ胎仔血清(FBS)含有DMEMを用いて、マクロファージを含む回収細胞を培養した。細胞を24ウェル細胞培養プレートに1.5×10個/ウェルで播種し、10%FBS、2mM L−グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを含むDMEMで培養した。37℃で4時間培養した後、血清を含有しないDMEMに培地交換し、種々のサイトカインによる刺激試験に供した。血清を含まない培地で一夜培養した後、組換えマウスIL−21(20ng/mL)、IL−6(20ng/mL)、可溶性IL−16受容体(sIL6R、20ng/mL)(R&D systems)で18時間刺激した。
(6)形態学的解析
血行動態測定後、マウスを過麻酔により安楽死させ、心臓を摘出した。心房を取り除き、右心室(RV)壁を左心室(LV)と中隔(septum)から分離した。水分を吸い取ったうえで組織重量を測定し、100gの体重換算で標準化した。RVと(LV+septum)との重量比(フルトン係数)を、右室肥大の指標として用いた。
肺は、組織学的および免疫組織化学的な解析のために回収した。肺動脈と気管は、それぞれ4%パラフォルムアルデヒド(PFA)を定圧で(肺動脈は100cmH2O、気管は25cmH2O)潅流して、肺血管と気道を完全に拡張した状態で固定した。切除した肺は4%PFAにて4℃で一夜固定し、パラフィン包埋して4μmで切片化した。肺血管の形態解析のために、切片にエラスチカ・ワンギーソン染色を施した。動脈の画像はBZ−9000顕微鏡(Keyence)で撮像した。各処置群でランダムに選んだ5〜6匹の動物の肺切片を用いて形態解析を行った。肺血管リモデリングは肺実質にある肺動脈、終末細気管支レベルにある小動脈(small artery)、肺細葉レベルにある細小動脈(arteriole)で中膜肥厚係数(% wall thickness)を測定して検討した。中膜肥厚係数は、内弾性板と外弾性板の間の距離を2倍して、外弾性板間の距離(血管の直径)で除したものに100を乗じたものと定義される。一層の弾性板しかない血管では、弾性板と内皮下の基底膜との間の距離を計測した。中膜肥厚は、切り口がほぼ円形の血管のみを対象に解析した。肺動脈の直径はNIH Image Jソフトウェアを用いて測定した。中膜肥厚係数は1匹のマウスあたり少なくとも10の肺小動脈と肺細小動脈で計算した。
(7)肺血管の組織学的、免疫組織化学的解析
免疫組織化学解析に用いるサンプルは4%PFA/PBSで1時間固定した後、5〜20%のスクロース入りPBSで置換してから、OCTコンパウンド(Sakura)で包埋して凍結し、10μm厚で切片化した。凍結切片はPBS処理してから、1%過酸化水素水/メタノールで30分処理し、PBST(PBS/0.1%Triton-X100)中に1%ウシ血清アルブミン(BSA)または5%スキムミルクを含むブロッキング溶液で1時間インキュベートし、PBST中の1次抗体で4℃一晩インキュベートした。1次抗体には、抗CD68抗体(1:200希釈; MCA1957GA, AbD Serotec)、抗RELM alpha(Fizz1)抗体(1:100希釈; ab39626, Abcam)、抗IL−6抗体(1:200希釈; ab6672, Abcam)、抗phospho−Histone−H3抗体(Ser10)(1:100希釈; 06-570, Upstate)、抗Actin, alpha−Smooth Muscle−Cy3抗体(1:200希釈; C6198, Sigma-Aldrich)を用いた。次に、PBSTで切片を洗浄し、蛍光標識2次抗体(1:200希釈; Alexa Fluor 488- or 546-結合; Invitrogen)またはHRP標識2次抗体(1:200希釈; 7074, Cell Signaling Technology)で室温1時間インキュベートした。必要に応じてPBSTで洗浄後、DAB(Sigma)を用いて発色させた。染色像はBZ−9000蛍光顕微鏡(Keyence)で撮像した。
(8)フローサイトメトリー(FACS)解析
マウスの肺組織をコラゲナーゼおよびDNaseI(1U/mL;Takara)含有DMEM中に直接浸漬し、で37℃40分〜1時間インキュベートした。組織懸濁液を40μmのメッシュに通し、ペレットをPBS−F(2%FBS入りPBS)で再懸濁して、PBS−Fで2回洗浄した。Fcγレセプターをブロックするために、CD16/32で細胞をプレインキュベートし、洗浄後、全量100μLのPBS−Fで蛍光標識した抗CD4抗体と30分間インキュベートした。
細胞内のサイトカインを染色するために、25ng/mLのPMA、1μg/mLのionomycinおよび10μgのbrefeldin A(Sigma-Aldrich)を含む培地で5時間刺激した。CD4の表面染色後、細胞を固定してマウスFoxp3 Buffer Set(BD Pharmingen)で膜透過化処理した。2回洗浄した後、細胞を蛍光標識抗体(抗IFN−γ抗体、抗IL−4抗体、抗IL−17A抗体、抗IL−21抗体)で氷上30分間染色した。細胞をFACSCanto(BD Biosciences)で解析し、続いてFlowJoソフトウェア(Tristar)で解析した。用いた抗体は以下の通りであり、いずれもeBiosciences社の製品である。FITC標識抗CD4抗体(RM4−5)、PE標識抗IFN−γ抗体(XMG1.2)、APC標識抗IL−4抗体(11B11)、APC標識抗IL−17A(eBio17B7)、PE標識抗IL−21抗体(mhalx21)。
(9)定量RT−PCRによる解析
肺組織または肺胞マクロファージからTRIzol(Invitrogen)を用いてトータルRNAを抽出した。定量リアルタイムRT−PCRはQuantiFast SYBRGreen RT−PCRキット(Qiagen)を用いて行った。RT−PCR反応は、80ngのトータルRNAを10分間50℃で逆転写させ、95℃で5分間変性した後、95℃10秒間と60℃30秒間を40サイクル行った。蛍光データはABI PRISM 7900HTを用いて収集し、解析した。用いた遺伝子とそのプライマーは以下の通りである。
Gapdh: 5’- TCTCCACACCTATGGTGCAA -3’ (配列番号1)
5’- CAAGAAACAGGGGAGCTGAG -3’ (配列番号2)
Fizz1: 5’- CCCTTCTCATCTGCATCTCC -3’ (配列番号3)
5’- AGGAGGCCCATCTGTTCATA -3’ (配列番号4)
Arg1: 5’- GTGAAGAACCCACGGTCTGT -3’ (配列番号5)
5’- CTGGTTGTCAGGGGAGTGTT -3’ (配列番号6)
Chi3I3: 5’- CCCACCAGGAAAGTACACAG -3’ (配列番号7)
5’- GAGGGAAATGTCTCTGGTGA -3’ (配列番号8)
Mrc1: 5’- CGCGAGGCAATTTTTAATCT -3’ (配列番号9)
5’- ATTTGCATTGCCCAGTAAGG -3’ (配列番号10)
Cxcl12: 5’- GGTTCTTCGAGAGCCACATC -3’ (配列番号11)
5’- TAATTTCGGGTCAATGCACA -3’ (配列番号12)
Il17a: 5’- TCCAGAAGGCCCTCAGACTA -3’ (配列番号13)
5’- CTCGACCCTGAAAGTGAAGG -3’ (配列番号14)
Rorc: 5’- AACCAGGCATCCTGAACTTG -3’ (配列番号15)
5’- CGTAGAAGGTCCTCCAGTCG -3’ (配列番号16)
Il17ra: 5’- TGTACCTCGAGGGTGCAGA -3’ (配列番号17)
5’- GGCCAGGATCTACCACAAAG -3’ (配列番号18)
Cxcl1: 5’- GCCTATCGCCAATGAGCTG -3’ (配列番号19)
5’- TCTGAACCAAGGGAGCTTCA -3’ (配列番号20)
Cxcl5: 5’- CTGCCCCTTCCTCAGTCATA -3’ (配列番号21)
5’- TGGATCCAGACAGACCTCCT -3’ (配列番号22)
Il21: 5’- GGACAGTGGCCCATAAATCA -3’ (配列番号23)
5’- CAGGGTTTGATGGCTTGAGT -3’ (配列番号24)
Il21r: 5’- ATGCGCTTGTCTCAATTCCT -3’ (配列番号25)
5’- CACGTAGTTGGAGGGTTCGT -3’ (配列番号26)
Il6: 5’- TGTGCAATGGCAATTCTGAT -3’ (配列番号27)
5’- GGTACTCCAGAAGACCAGAGGA -3’(配列番号28)
Nos2: 5’- GCTCATGACATCGACCAGAA -3’ (配列番号29)
5’- TGTTGCATTGGAAGTGAAGC -3’ (配列番号30)
Il12b: 5’- AGGTCACACTGGACCAAAGG -3’ (配列番号31)
5’- AGGGTACTCCCAGCTGACCT -3’ (配列番号32)
Tnf-α: 5’- TGCCTATGTCTCAGCCTCTTC -3’,(配列番号33)
5’- GGTCTGGGCCATAGAACTGA -3’ (配列番号34)
(10)ヒト肺動脈平滑筋細胞の増殖アッセイ
ヒト肺動脈平滑筋細胞はLonza社から購入した。ヒト肺動脈平滑筋細胞は最初から6世代までのものを使用した。ヒト肺動脈平滑筋細胞を96ウェル細胞培養プレートに2×10個/100μL/ウェルで播種した。培地には、5%FBSおよびSingleQuotサプリメント(Lonza)を含むSmBM(Lonza)を用いた。アッセイの2日前に、0.1%FBS、10mM L−グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを含むSmBMに培地交換した。
マクロファージ馴化培地を得るために、正常酸素条件で飼育したマウスから気管支肺胞洗浄によって初代マウス肺胞マクロファージを採取し、プールし、遠心分離により洗浄し、細胞数をカウントして、96ウェル細胞培養プレートに2×10個/100μL/ウェルで播種した。培地には、10%FBS、2mM L−グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを含むDMEMを用いた。37℃で4時間培養後、血清を含有しないDMEMに培地交換した。血清を含まない培地で一夜培養した後、組換えマウスIL−21(20ng/mL)で18時間刺激し、PBSで洗浄し、DMEM単独で24時間培養した。培地を回収し、0.2%FBSを含有する新鮮なDMEMで2倍に希釈して、馴化培地として用いた。
この馴化培地を用いてヒト肺動脈平滑筋細胞を3日間培養した。必要であれば、馴化培地に、CXCR4の化学抑制剤であるAMD3100(1μg/μL、Sigma)または溶媒(PBS)を添加した。ヒト肺動脈平滑筋細胞を、組換えヒトIL−21で24時間刺激した。細胞増殖はMTSアッセイ(Cell Titer 96 kit、Promega)を用いて評価した。すなわち、各ウェル(100μL)に20μLのMTS試薬を添加し、37℃で2時間培養後にOD490を測定した。
(11)統計解析
全てのデータは平均値±標準誤差で表した。多群間の差は一元配置分散分析法それに続くSheffe法を用いた事後比較により比較した。2群間の差の検定には、スチューデントt検定を用いた。P<0.05の場合に統計的有意差ありと判断した。
〔実験結果〕
実験1:低酸素負荷によるC57BL6マウス肺でのIL−6発現動態の検討
C57BL/6マウスを低酸素チェンバー(10%酸素)内で飼育し、低酸素負荷後2、4、7、14および28日目のマウス肺からRNAを回収し、IL−6 mRNAの発現量を定量RT−PCRで解析した。IL−6 mRNAの発現量は低酸素負荷後2日目に負荷前の約8倍に増加したが、負荷後4日目には約5倍に下がり、負荷後7日目にはベースラインレベルに復帰した(図1)。
抗IL−6抗体による免疫組織化学染色によりIL−6の発現部位を検討すると、低酸素負荷後2日目のマウス肺の細動脈(arteriole)、小動脈(small artery)の内皮細胞(内膜)と平滑筋細胞(中膜)に発現が強く見られた(図2)。
実験2:低酸素誘発性肺高血圧症モデルでの抗IL−6受容体抗体(MR16−1)によるIL−6シグナル阻害の肺高血圧症病態に対する効果の検討
IL−6シグナルは主に転写因子STAT3(signal transducer and activator of transcription 3)により媒介されるため、低酸素負荷後2日目の肺におけるSTAT3活性化、すなわちSTAT3の705チロシン残基のリン酸化状態をウエスタンブロットにより検討した。低酸素コントロール抗体投与群では、正常酸素コントロール抗体投与群よりSTAT3チロシンリン酸化が亢進していたが、低酸素MR16−1投与群では、そのリン酸化が正常酸素コントロール抗体投与群と同レベルに抑制されていた(図3)。この結果から、抗IL−6受容体抗体投与により、マウス肺でのIL−6によるSTAT3活性化が効率的に抑制されることが示された。
抗IL−6受容体抗体投与によるIL−6シグナル阻害が低酸素誘発性肺高血圧症の病態に与える影響を検討するために、図4に示した実験プロトコールでコントロール抗体(ラットIgG)またはMR16−1を投与した。低酸素負荷後28日目に右心カテーテルによりマウスの右室収縮期圧(right ventricular systolic pressure; RVSP)を測定し、その後マウスの心臓を摘出して右室肥大の度合いの指標であるフルトン係数、肺動脈のリモデリングの指標である中膜肥厚係数を計測した。結果を図5A〜Dに示した。低酸素コントロール抗体投与群のマウスでは、右室収縮期圧、フルトン係数および中膜肥厚係数のいずれにおいても、正常酸素コントロール抗体投与群よりも有意な増加が認められたが、低酸素MR16−1投与群ではその増加が有意に抑圧された。この結果より、抗IL−6受容体抗体投与により、IL−6シグナル阻害は低酸素誘発性PAHと肺血管のリモデリングが効果的に抑制されることが示された。
実験3:低酸素負荷による肺でのマクロファージの動態と抗IL−6受容体抗体によるIL−6シグナル阻害の効果の検討
低酸素負荷後の肺における炎症細胞の浸潤を検討する目的で、マクロファージに焦点を当てて、その動態を検討した。低酸素負荷後7日目の肺における、F4/80(マクロファージに限局して発現する糖たんぱく質)の発現を、ウエスタンブロットにより検討した結果を図6A、Bに示した。低酸素コントロール抗体投与群では正常酸素コントロール抗体投与群に比して有意に増加していたが、低酸素MR16−1投与群ではその増加が有意に抑制されていた。F4/80に対する免疫組織化学染色でもウエスタンブロットと同様の結果が得られた(図6C、D)。以上の結果より、抗IL−6受容体抗体投与によるIL−6シグナル阻害は、低酸素により誘導される肺へのマクロファージ浸潤を抑制することが示された。
低酸素負荷により肺のマクロファージはM2マクロファージ型の特徴を獲得することが報告されている(Vegardi E et al. Circulation 123, 1986-1995, 2011)。そこで、抗IL−6受容体抗体投与のマクロファージの極性形成への影響を検討した。2,4,7および14日間低酸素(10%酸素)に曝したC57BL/6マウスから気管支肺胞洗浄液を採取して、その中のマクロファージの極性を定量RT−PCRで同定したところ、M2マクロファージマーカーの1つFizz1遺伝子の発現量は低酸素負荷後4日目にピークを示した(図7)。そこで、低酸素負荷後4日目に採取したマクロファージのM2マーカー遺伝子Fizz1、Arg1、Chi3l3、Mrc1およびCxcl12の発現状態をコントロール抗体投与群とMR16−1投与群とで比較したところ、低酸素コントロール投与群では、これらの遺伝子発現が正常酸素コントロール投与群より有意に増加していたが、低酸素MR16−1投与群ではこれらの遺伝子の発現増加は有意に抑制されていた(図8A〜E)。一方、M1マクロファージの代表的遺伝子であるNos2、IL−12βおよびTNF−αの発現量は2群間で有意な差を認めなかった(図9A〜C)。
気管支肺胞洗浄によって採取したマクロファージをin vitroで培養して、IL−6、可溶性IL−16受容体をそれぞれ単独刺激または共刺激してもM1、M2マクロファージマーカーの発現量の変動は観察されなかったため(図10A〜H)、上記の低酸素誘発性マクロファージのM2極性化現象はIL−6とIL−6受容体による直接刺激で誘導されたものではないことが示唆された。
実験4:低酸素誘発性肺高血圧症モデルでの抗IL−6受容体抗体によるIL−6シグナル阻害のTh17細胞とTh17サイトカインに対する効果の検討
マクロファージの極性形成にヘルパーT細胞が決定的な働きをすることが近年報告されている。そこで、低酸素負荷後3日目の肺組織でのTh1細胞、Th2細胞の動態に対して抗IL−6受容体抗体投与が影響を与えるかどうかを検討した。正常酸素コントロール投与群、低酸素コントロール投与群および低酸素MR16−1投与群のマウスから試験開始3日目に肺を摘出し、上記実験材料と方法(8)に記載の方法で実験を行った。
CD4陽性ヘルパーT細胞をTh1マーカーのインターフェロン−γ、Th2マーカーのIL−4でFACS展開して、コントロール抗体投与群とMR16−1投与群とで比較したが、有意な差を認めなかった(図11A〜C)。
次に第3のヘルパーT細胞分画であるTh17細胞の動態について検討した。C57BL/6マウスを低酸素チェンバーで飼育して、低酸素負荷後2、4、7、14、28日目の肺から回収したトータルRNAを用いて定量RT−PCRを行い、Th17細胞の代表的なマーカーであるIL−17 mRNAの発現量を検討したところ、低酸素負荷後2日目に負荷前の約6倍に増加してピークを認めたが、負荷後7日目以降も発現は継続して上昇していた(図12)。
次に、低酸素負荷後2日目の肺組織でのTh17細胞の動態に対する抗IL−6受容体抗体投与の影響を検討した。すなわち、低酸素負荷後2日目の肺から回収したトータルRNAを用いて定量RT−PCRを行い、IL−17Aとその他のTh17細胞マーカー遺伝子であるIL−17A、Rorc(Ror−γt)、Cxcl1、Cxcl5のmRNAの発現量を解析した。その結果、低酸素コントロール投与群では、正常酸素コントロール投与群と比較して有意な発現量の増加が観察されたが、低酸素MR16−1投与群では、発現量の増加が有意に抑制されていた(図13A〜D)。また、ウエスタンブロットによりIL−17タンパク質の発現を検討すると同様の結果が得られた(図14A、B)。さらに、FACSによってTh17細胞の動態を確認したところ、低酸素コントロール投与群では、正常酸素コントロール投与群と比較して有意な増加が観察されたが、低酸素MR16−1投与群では、低酸素負荷による増加が有意に抑制されていた(図15A、B)。
実験5:低酸素誘発性肺高血圧症モデルでの抗IL−17A中和抗体によるIL−17シグナル阻害の肺高血圧症病態に対する効果の検討
IL−17シグナルの阻害が低酸素誘発性肺高血圧症の病態形成に与える影響を検討する目的で、C57BL/6マウスを低酸素チェンバーで飼育して、図16に示した実験プロトコールでコントロール抗体または抗IL−17A中和抗体を投与した。低酸素負荷後28日目に右心カテーテルによりマウスの右室収縮期圧(RVSP)を測定して、マウスの心臓を摘出してフルトン係数を測定した。RVSPおよびフルトン係数のどちらもコントロール抗体投与群と抗IL−17A中和抗体投与群との間に有意な差は観察されなかった(図17A、B)。なお、示してないが、コントロール抗体投与群と抗IL−17A中和抗体投与群とも、正常酸素コントロール抗体投与群と比較して有意な増加が観察され、低酸素誘発性PAHの病態が形成されていた。この結果より、IL−17シグナル阻害は低酸素誘発性PAHの病態形成を抑制し得ないことが明らかになった。
実験6:低酸素誘発性肺高血圧症モデルでの抗IL−6受容体抗体によるIL−6シグナル阻害のIL−21産生Th17細胞に対する効果の検討
次に、Th17細胞が産生するTh17サイトカインの1つであるIL−21に焦点を当てて検討した。低酸素負荷後2、4、7、14、28日目の肺から回収したトータルRNAを用いて定量RT−PCRを行い、IL−21 mRNAの発現量を検討したところ、低酸素負荷後2日目に負荷前の約2倍に増加してピークを認め、負荷後7日目まで継続してその増加が観察されたが、14日目以降はベースラインに復帰した(図18)。
次に、正常酸素コントロール投与群、低酸素コントロール投与群および低酸素MR16−1投与群について、実験開始2日目の肺から回収したトータルRNAを用いて定量RT−PCRを行い、IL−21 mRNAの発現量を解析したところ、低酸素コントロール投与群では、正常酸素コントロール投与群と比較して有意な発現量の増加が観察されたが、低酸素MR16−1投与群では、発現量の増加が有意に抑制されていた(図19)。また、ウエスタンブロットによりIL−17タンパク質の発現を検討すると同様の結果が得られた(図20A、B)。さらに、FACSによってIL−21産生Th17細胞(CD4、IL−17aおよびIL−21の三重陽性細胞)の動態を確認したところ、低酸素コントロール投与群では、正常酸素コントロール投与群と比較して有意な増加が観察されたが、低酸素MR16−1投与群では、低酸素負荷による増加が有意に抑制されていた(図21A〜C)。
実験7:IL−21による肺胞マクロファージの極性化と肺動脈平滑筋細胞の増殖の検討
C57BL/6マウスから気管支肺胞洗浄で採取したマクロファージをin vitroで培養して、一晩血清除去した後にIL−21存在下で18時間培養してマクロファージマーカーの遺伝子発現を検討した。IL−21刺激によりM2マクロファージマーカー遺伝子であるFizz1、Arg1およびCxcl12のmRNA発現量が約2倍に増加した(図22A〜C)のに対して、M1マクロファージマーカー遺伝子であるNos2、IL−12βおよびTNF−αの発現量には、有意な変化が見認められなかった(図23A〜C)。
次に、IL−21と肺動脈平滑筋細胞の増殖の関連性を検討した。ヒト肺動脈平滑筋細胞に対してIL−21で直接刺激しても増殖応答は全く見られなかった(図24)。一方、気管支肺胞洗浄で採取したマウス肺胞マクロファージを、IL−21存在下で培養して、得られた培養上清(マクロファージ馴化培地)を用いてヒト肺動脈平滑筋細胞を培養すると、増殖促進効果が観察された(図25)。この結果から、マクロファージにIL−21が作用して分泌された何らかの液性因子がヒト肺動脈平滑筋細胞に作用して増殖を促進することが示唆された。
M2マクロファージが分泌する液性因子の1つであるCxcl12は、肺動脈平滑筋の増殖に関連すること報告されている(Takeda Y et al. Nature 479, 122-126, 2011)。そこで、Cxcl12の受容体であるCXCR4の選択的阻害剤AMD3100をマクロファージ馴化培地に添加してヒト肺動脈平滑筋細胞を培養したところ、マクロファージ馴化培地による増殖促進作用が抑制された(図26)。以上の結果から、IL−21によるマクロファージのM2極性化が、肺動脈平滑筋細胞の増殖に必要であることが示唆された。
実験8:低酸素誘発性肺高血圧症モデルでの抗IL−21抗体による肺高血圧症病態に対する効果の検討
低酸素誘発性肺高血圧症モデルでは、低酸素によりマウス肺動脈の内皮細胞や平滑筋細胞でIL−6の発現が誘導され、その下流でTh17細胞からIL−21が分泌されることが肺高血圧症病態形成に決定的な役割をしていることが示唆された。そこで、我々は低酸素誘発性肺高血圧症モデルに対してコントロール抗体または抗IL−21中和抗体を投与して、マクロファージのM2極性形成と肺動脈平滑筋細胞の増殖に対する効果を検討した。
低酸素負荷後7日目において、低酸素コントロール抗体投与群では、M2マクロファージマーカーであるFizz1陽性細胞が、正常酸素コントロール抗体投与群と比較して有意に増加していたが、低酸素IL−21中和抗体投与群ではその増加は有意に抑制されていた(図27A、B)。また、低酸素負荷後7日目において、低酸素コントロール抗体投与群では、肺動脈平滑筋細胞の細胞分裂の指標となるリン酸化ヒストンH3(pHH3)陽性細胞(図中矢印)が、正常酸素コントロール抗体投与群と比較して有意に増加していたが、低酸素IL−21中和抗体投与群ではその増加が有意に抑制されていた(図28A、B)。これらの結果から、Th17細胞由来のIL−21がマクロファージのM2極性化を介して、肺動脈平滑筋細胞の増殖を正に調節していることが示唆された。
実験9:低酸素誘発性肺高血圧症モデルでのIL−21受容体(IL−21R)遺伝子欠損(KO)による肺高血圧症病態に対する効果の検討
IL−21受容体遺伝子欠損(IL−21RKO)マウス(Ozaki et al., Science 298, 1630-1634, 2002)と野生型マウスを用いて、それぞれ低酸素誘発性肺高血圧症モデルを作製し、肺高血圧症病態形成に対するIL−21R遺伝子欠損の影響を検討した。低酸素負荷後28日目に右心カテーテルによりマウスのRVSPを測定し、その後マウスの心臓を摘出してフルトン係数を測定し、さらに肺組織をEVG染色して肺動脈の中膜肥厚係数を計測した。低酸素負荷した野生型マウスではRVSP、フルトン係数および中膜肥厚係数のいずれにおいても、正常酸素環の野生型マウスに比べて有意な増加が認められたが、低酸素負荷したIL−21RKOマウスでは、これらの増加が有意に抑制された(図29A〜C)。この結果から、IL−21シグナル阻害は低酸素誘発性高血圧症の病態形成過程を抑制し得ることが明らかになった。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (9)

  1. IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を有効成分とする肺高血圧症の予防および/または治療用医薬。
  2. IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質が、IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質である請求項1に記載の医薬。
  3. IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質が、抗IL−21抗体、抗IL−21受容体抗体、IL−21と結合するペプチドおよびIL−21受容体と結合するペプチドからなる群から選択される一種である請求項2に記載の医薬。
  4. IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質が、抗IL−21抗体である請求項3に記載の医薬。
  5. IL−21およびIL−21受容体を用いることを特徴とする肺高血圧症治療薬のスクリーニング方法。
  6. IL−21からのシグナル伝達を阻害する物質を選択することを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. IL−21とIL−21受容体との相互作用を阻害する物質を選択することを特徴とする請求項5に記載の方法。
  8. 被験物質とIL−21とIL−21受容体を発現する細胞を接触させる工程と、IL−21受容体の下流のシグナル量を測定する工程と、被験物質を接触させない場合の前記細胞におけるシグナル量と比較して、シグナル量を低下させる被験物質を選択する工程とを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
  9. 被験物質とIL−21とIL−21受容体を接触させる工程と、IL−21とIL−21受容体との結合レベルを測定する工程と、被験物質を接触させない場合の結合レベルと比較して、結合レベルを低下させる被験物質を選択する工程とを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
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