JP2016043407A - 鍛造用金型材及びその製造方法、並びにギヤ鍛造用金型 - Google Patents

鍛造用金型材及びその製造方法、並びにギヤ鍛造用金型 Download PDF

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憲一 林
穣太郎 志田
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Abstract

【課題】 長寿命かつ高精度が要求されるトランスミッションギヤなどの歯形部品において、歯形成形とクラウニングを同時鍛造することができる新規な鍛造用金型材を提供する。【解決手段】 本発明の鍛造用金型材は、炭化タングステン(WC)の含有量を60〜95質量%とし、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)のいずれかないしは両方を結合相成分として含有してなる結合相が三層以上形成された超硬合金からなり、前記結合相の成分割合を鍛造成形品の軸方向と一対一で対応する厚さ方向に調節したことで、前記厚さ方向に傾斜特性を持たせた傾斜機能材料となっている。【選択図】 図1

Description

本発明は、傾斜特性を有する超硬合金の鍛造用金型材及びギヤ鍛造用金型、並びにギヤの鍛造方法に関する。
従来、炭化タングステン(WC)粒子と結合金属としてのコバルト(Co)とを適切な割合で混合し焼結させた超硬合金が知られている。WC粒子とCoを混合し焼結させた超硬合金(Cemented Carbide)は、高硬度かつ高強度であることなどから、金型や切削工具などの超硬工具を製造するための材料として使用されている。
自動車、航空機、産業機械等に用いられる機械部品の製造方法として、型鍛造が知られている。型鍛造は、対をなす金型(ダイス)同士、つまり上型及び下型を、ダイセットを介してプレス機に取り付けて、金属素材(ビレット)がセットされた金型同士を相対運動させ、金型内のパンチやスライダによって金属素材(以下、素材という)に圧力を加え(押圧し)塑性流動させて成形する方法である。型鍛造は、鍛流線 (fiber flow) が連続することで組織が緻密になることから、鋳造に比べて強靭な機械部品をつくることができる。
これら機械部品を製造するに際して、生産コストの低減と付加価値の向上を目指した努力が継続して行われている。ネットシェイプ、つまり、仕上がり形状で鍛造することができれば、工程が著しく改善される。その一例として、ギヤなどの歯形部品において、歯形の鍛造加工と同時に歯面のクラウニング加工を行う取り組みがなされている。
ここで、クラウニング加工とは、歯車同士の歯が噛み合っているとき、歯面を全体的になめらかにすることで相手の歯をしっかり噛み合わせることができるようにすることをいう。
特許文献1には、クラウニング付きギヤ鍛造成形装置に関し、歯形ダイと、この歯形ダイに上方から挿入可能なマンドレルと、前記マンドレルと一体的に下降駆動されて環状のギヤ素材を前記歯形ダイ内へ押し込むパンチとを備えたギヤ鍛造成形装置において、前記歯形ダイは、上端部に形成されたギヤ歯成形用のギヤ歯成形部と、このギヤ歯成形部から下方へ一体的に延びて前記ギヤ歯成形部で成形されたギヤ歯を案内するギヤ歯案内部であって前記ギヤ歯の外表面との間に微小クリアランスを形成可能なギヤ歯案内部とを備え、前記マンドレルは、前記パンチの下端から下方へ離隔したマンドレル途中部分の外周部に形成された微小深さの環状凹部を備え、前記歯形ダイスとマンドレルとパンチによりギヤ素材からギヤを鍛造成形する際に、前記環状凹部に充填したギヤ素材の全部又は一部をマンドレルの上昇動作を介してギヤの周壁部へ強制的に流動させることにより、前記ギヤ歯にクラウニングを形成するように構成したこと(その請求項1)、が記載されている。
特許文献2には、クラウニング付歯形の鍛造成形装置に関し、歯厚が歯筋方向全体に一定の複数の歯を備えた歯車素材における歯面にクラウニングを成形するクラウニング付歯形の鍛造成形装置であって、歯車素材の各歯が嵌合する複数の歯形成形溝が内面に形成され、ダイスホルダに支持されるダイスと、前記ダイスに向けて軸方向に移動自在に設けられ、前記ダイスホルダとの間で前記歯車素材を軸方向に押圧するインナーパンチと、前記ダイスホルダに配置され、テーパ形状の外周面を有するとともに前記ダイスの外側に嵌合される駆動リングと、前記ダイスに対して軸方向に移動自在に前記インナーパンチの外側に装着されるアウターパンチとを有し、前記駆動リングの内周面の軸方向中央部分に前記ダイスの外周面に接触しない凹部を環状に形成し、前記駆動リングの前記外周面に接触するテーパ形状の摺動面を有するとともに前記アウターパンチにより駆動されて前記駆動リングの軸方向両端部を径方向に弾性収縮変形する加工ブロックを、前記駆動リングの外側に軸方向に移動自在に配置し、前記アウターパンチの軸方向移動により前記駆動リングを介して前記ダイスの軸方向両端部を径方向および周方向に弾性収縮変形させ、歯車素材の各歯の歯面にクラウニングを成形すること(その請求項1)、が記載されている。
特許文献3には、炭化タングステン基超硬合金に関し、炭化タングステン(WC),コバルト(Co)及びクロム(Cr)を含有し、Coが4〜30質量%含有し、CrがCo含有量の2〜18質量%含有し、残部がWC及び不可避不純物よりなり、前記超硬合金をその加熱温度又は焼結温度が1200℃以上1500℃以下の温度から800℃以下500℃以上の温度までを1次冷却として急冷し、被熱処理品の温度が均一になるように1次冷却の冷却温度範囲内で一定時間保持し、その1次冷却温度から200℃以下の温度までを2次冷却として急冷することで、抗折力や圧縮強度を高めるとともに疲労強度をも高める超硬合金の製造方法(その請求項1)、が記載されている。
特許文献4には、焼成タイルをプレス成形する金型を構成するプレス成形用複合金型材に関し、炭化タングステン基超硬合金と鋼材とを一体に接合した金型材であって、表層部は結合相成分の含有量が少なく、表層部から内層部にかけて段階的に結合相成分の含有量を増加させた少なくとも3層の炭化タングステン基超硬合金の焼結体からなり、内層部に鋼材が拡散反応によって接合していること(その請求項1)、が記載されている。
特許文献5には、非球面レンズ用の精密金型用超硬合金に関し、3〜20wt%のCo及び/又はNiと該Co及び/又はNiの量に対し3〜10wt%の炭化クロムとでなる結合相と、残り平均粒径0.8μm以下の炭化タングステンと不可避不純物とでなること(その請求項1)、が記載されている。
特許第5429762号公報 特許第4856946号公報 特許第5152770号公報 特許第3764807号公報 特公平6−35638号公報
しかしながら、特許文献1,2記載の既知の鍛造金型では、型に充填したギヤ素材の全部又は一部をギヤの周壁部へ強制的に流動させるものであり、ギヤ素材が比較的流動性がよい素材に限定されるうえ、型に局所的に応力が集中してしまうことで型寿命が短いという問題点がある。
特許文献3〜5記載の既知の炭化タングステン基超硬合金は、負荷が大きく且つ長寿命が要求される金型材として適しているが、歯形成形とクラウニングを同時鍛造するために金型材の構造自体を変更するという発想はなかった。
そのため、自動車のトランスミッションギヤなどの、長寿命かつ高精度が要求されるギヤについては、鍛造だけでは必要な寸法精度が得られず、鍛造後に、別の工程でクラウニング加工を行っているのが実情である。
本願発明者は、鋭意研究して、歯形成形とクラウニングを同時鍛造するために、傾斜特性を有する超硬合金の鍛造用金型材を新たに開発し実用化するに至った。
このような実情に鑑みて、本発明の目的は、炭化タングステン基超硬合金に関し、金型材の構造自体を抜本的に見直して、長寿命かつ高精度が要求されるトランスミッションギヤなどの歯形部品において、歯形成形とクラウニングを同時鍛造することができる新規な鍛造用金型材及びギヤ鍛造用金型、並びにギヤの鍛造方法を提供することにある。
本発明の鍛造用金型材は、炭化タングステン(WC)の含有量を基礎として、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)のいずれかないしは両方を結合相成分として含有してなる結合相が三層以上形成された超硬合金からなり、前記結合相の成分割合を鍛造成形品の軸方向と一対一で対応する厚さ方向に調節したことで、前記厚さ方向に傾斜特性を持たせた傾斜機能材料となっていることを特徴とする。
本発明によれば、前記結合相成分が増大した層は低ヤング率となって硬さが小さくなり、前記結合相成分が減少した層は高ヤング率となって硬さが大きくなるため、前記縦方向に傾斜特性が発現する。すなわち、鍛造金型とした場合に、低ヤング率となった層は鍛造成形品における素材の弾性変形量が大きくなり、高ヤング率となった層は鍛造成形品における素材の弾性変形量が小さくなる。例えば、前記結合相の成分割合を中央部の低ヤング率超硬に対して、上部分と下部分には高ヤング率超硬を配し、弾性変形量を中央部から0.005〜0.01mm少なくすることにより、鍛造成形された歯形部品の歯形形状が太鼓形となり、歯面のクラウニングが実現される。
本発明は、炭化タングステン(WC)を基礎としており、WCの含有量は60〜95質量%である。
傾斜機能材料とは、その厚さ方向に組成成分や特性が連続的に変化している機能性複合材料であり、当該厚さ方向に成分や物性の境目がない。よって、従来の張り合わせ材とは異なり、本発明に係る傾斜機能材料では、剥がれることがない。
ヤング率は、縦弾性係数であり、一軸引張試験で弾性範囲では引張応力とひずみは比例し、当該引張応力を当該ひずみで割った値のことである。
本発明では、前記厚さ方向にヤング率に傾斜特性を持たせた傾斜機能材料となっており、弾性変形量の差で、歯面のクラウニングを実現している。
前記結合相成分となる金属元素としては、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)のいずれかないしは両方が適用できる。つまり、前記結合相がCoを有する場合があり、前記結合相がNiを有する場合があり、前記結合相がCo及びNiを有する場合がある。
例えば、Niを結合相としている場合、他の材質系統よりも耐食性に優れており、通常の環境下では磁性を持たない性質がある。
本発明では、上述の元素以外に、添加剤として既知の元素を加える場合がある。例えば、添加剤としてCrがCo含有量の2〜18質量%含有される場合がある。
前記結合相成分からなる層が設定どおりであることは、ヤング率の代用特性としての硬度を測定することで確認できる。
本発明は、前記傾斜特性を形成する多層領域における、ヤング率を最小値とする前記結合相成分が20〜30質量%の層を形成し、かつ、ヤング率を最大値とする前記結合相成分が5〜15質量%の層を形成していることを特徴とする。
本発明によれば、歯面のクラウニングに適した構造となる。
本発明の鍛造用金型材の製造方法は、炭化タングステン(WC)を基礎として、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)のいずれかないしは両方を含有してなる結合相が三層以上形成された超硬合金からなる鍛造用金型材の製造方法であって、前記結合相成分が5〜15質量%の第1の成分と、前記結合相成分が20〜40質量%の第2の成分と、を所定の質量比で混合し、その粉末混合物の成分割合を鍛造成形品の軸方向と一対一で対応する厚さ方向に調節することで、前記厚さ方向に傾斜特性を持たせた傾斜機能材料とすることを特徴とする。
本発明によれば、前記第2の成分の質量割合が増大した層は低ヤング率となり、前記第1の成分の質量割合が増大した層は高ヤング率となるため、前記厚さ方向に傾斜特性を持たせた傾斜機能材料とすることができる。
本発明は、前記鍛造成形品に見合ったサイズの金型に前記粉末混合物を順に入れてセットし、圧力が10〜100MPaで加圧しながら通電することで温度が1000〜1300℃に加熱して焼結体とすることを特徴とする。
本発明によれば、歯形成形とクラウニングを同時鍛造するに際して寸法の微調整が可能な多層構造の焼結体を得ることが容易にできる。また、既知の金型設備を用いることが可能である。
本発明のギヤ鍛造用金型は、前記鍛造用金型材からなり、歯形成形とクラウニングを同時鍛造する構成としたことを特徴とする。
本発明によれば、従来品よりも、飛躍的に生産性を高めたギヤ鍛造用金型となる。
本発明のギヤ鍛造用金型が対象とする鍛造成形品としては、スパーギヤ(平歯車)、ヘリカルギヤ(はすば歯車)、インターナルギヤ(内歯車)、スパイラルギヤ(ねじ歯車)。その他各種ギヤが挙げられる。
例えば、前記鍛造用金型材から得られたギヤ鍛造用金型を用いて、冷間鍛造によって歯形成形とクラウニングを同時鍛造することができる。
本発明の鍛造用金型材と鍛造用金型材の製造方法によれば、鍛造金型とした場合に、低ヤング率となった層は鍛造成形品における素材の弾性変形量が大きくなり、高ヤング率となった層は鍛造成形品における素材の弾性変形量が小さくなるので、例えば、前記結合相の成分割合を中央部の低ヤング率超硬に対して、上部分と下部分には高ヤング率超硬を配し、弾性変形量を中央部から0.005〜0.01mm少なくすることにより、鍛造成形された歯形部品の歯形形状が太鼓形となり、歯面のクラウニングが実現される。
本発明のギヤ鍛造用金型とギヤの鍛造方法によれば、後工程でのクラウニングが不要となり、工程が単純化される。
本発明を適用した実施形態の鍛造用金型材を示す側断面の構造図である。 上記鍛造用金型材の組織のうち、比較的高ヤング率の層を光学式金属顕微鏡にて撮像した画像である。 上記鍛造用金型材の組織のうち、比較的低ヤング率の層を光学式金属顕微鏡にて撮像した画像である。 上記鍛造用金型材の各層とヤング率との関係を示すグラフ図である。 上記鍛造用金型材の製造方法を示す図である。 上記鍛造用金型材の製造方法の他の例を示す図である。 上記鍛造用金型材の各層と硬さとの関係を示すグラフ図である。 上記鍛造用金型材の構造の他の例を示す側断面の構造図である。 上記鍛造用金型材の他の例の各層と硬さとの関係を示すグラフ図である。 本発明を適用したギヤ鍛造用金型にて製造される被成形品を示す図であり、(a)はスパーギヤであり、(b)はヘリカルギヤである。 本発明を適用したギヤ鍛造用金型を示す斜視図である。 本発明を適用したギヤ鍛造用金型を示す側断面図である。
本発明を実施するため形態を、実施例に基づいて以下に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明と実質同一又は均等の範囲内において、既知の変更を加えることが可能である。
(ギヤ鍛造用金型)
図11は、本発明を適用したギヤ鍛造用金型301を示す斜視図である。図12は、本発明を適用したギヤ鍛造用金型301を示す側断面図である。ここで、符号401は、本発明に係る鍛造用金型材1を切削等の機械加工を施したダイニブである。図12に示すとおり、内側から外側に向かって順に、ダイニブ401、内側ケース501、外側ケース502の順に焼き嵌めして、固着状態としている。超硬合金は鉄系材料と比較して高価であることから、鍛造加工上の重要度が高いダイニブは超硬合金とし、内側ケース501や外側ケース502は鉄系材料を用いることが一般に行われている。ここで、符号503は、ギヤ鍛造用金型301を鍛造装置にボルトなどの固定部材で固定するための穴である。図11に示す例は、スパーギヤ鍛造用金型301であるが、この例に限定されるものではない。図12に示す例は、内側ケース501と外側ケース502としているが、この例に限定されるものではない。
(実施形態1)
本実施形態の鍛造用金型材1は円柱形状を呈しており、図1は、その側断面の構造図である。本実施形態の鍛造用金型材1は、炭化タングステン(WC)及びコバルト(Co)を含有し、結合相としてCoが5〜30質量%含有され、残部がWC及び不可避不純物よりなり、前記結合相の成分割合を鍛造成形品の軸方向と一対一で対応する縦方向に変化させた傾斜特性を有する超硬合金の金型材である。前記WCの含有量は60〜95質量%に設定される。そして、前記結合相成分が5〜15質量%の第1の成分と前記結合相成分が20〜40質量%の第2の成分とが所定の質量比で混合されてなる層が三層以上形成されている。図1に示す例では、前記第1の成分と前記第2の成分とが所定の質量比で混合されてなる層が8層形成されているが、この例に限定されるものではない。
便宜上、図1では、前記結合相成分が5〜15質量%の第1の成分のみからなるA層を符号10とし、また、前記結合相成分が20〜40質量%の第2の成分のみからなるB層を符号20とする。そして、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で8:2の割合で混合した成分からなる層を符号12とし、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で6:4の割合で混合した成分からなる層を符号14とし、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で4:6の割合で混合した成分からなる層を符号16とし、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で2:8の割合で混合した成分からなる層を符号18とする。図1に示すとおり、前記第2の成分からなるB層が中間層として配されており、前記中間層を挟んで前記縦方向に前記B層よりも前記第2の成分の割合を少なくした層が形成されている。
図2は、本実施形態の鍛造用金型材1のA層10の組織を光学式金属顕微鏡にて撮像した画像である。図3は、上記鍛造用金型材1のB層20の組織を光学式金属顕微鏡にて撮像した画像である。ここで、A層10とB層20とは、WC粒子径とCo含有量が異なっている。図2では、WC粒子径が1.5〜2.0μmであり、Coが約14質量%含有されている。図3では、WC粒子径が2.5〜3.0μmであり、Coが約25質量%含有されている。
図4は、上記鍛造用金型材1の各層とヤング率との関係を示すグラフ図である。理論上は、A層10のヤング率は540[GPa]となり、B層20のヤング率は440[GPa]となり、V字形状の傾斜特性がグラフ化される。
冷間鍛造用金型材1としては、その平均粒度が1.5〜20.0μmのWC粉が使用され、Co粉末が7〜25質量%配合される。
これらWC粉と、Co粉末をそれぞれ秤量して有機溶媒(アルコール、アセトン、ヘキサン等)とともにボールミル或いはアトライターにいれて湿式混合する。その後、有機溶媒を蒸発除去し混合した粉末を乾燥させる。スプレードライヤでこれら粉末を乾燥し同時に造粒を行うことで、量産性を高められる。
図5は、上記鍛造用金型材1の製造方法を示す図である。まず、ダイ101に下パンチ102をセットする。次に、前記粉末混合物を前記層の順に入れて、上パンチ103をセットする。そして、電源104をONして通電焼結する。例えば、圧力が10〜100MPaで加圧しながら通電することで焼結体の温度を1000〜1300℃に加熱する。加熱時間は、最高温度で5〜120分間である。前記焼結条件は組成、形状、用途に応じて最適の条件が選ばれる。そして、前記焼結後に放電加工、研削加工、研磨加工の順に加工が施されて円柱形状のギヤ鍛造用金型を完成させる。
図6は、上記鍛造用金型材1の製造方法の他の例を示す図である。まず、ダイ101に下パンチ102をセットして、ピン105を立てる。次に、前記粉末混合物を前記層の順に入れて、上パンチ103をセットする。そして、電源104をONして通電焼結する。例えば、圧力が10〜100MPaで加圧しながら通電することで焼結体の温度を1000〜1300℃に加熱する。加熱時間は、最高温度で5〜120分間である。前記焼結条件は組成、形状、用途に応じて最適の条件が選ばれる。そして、前記焼結後に放電加工、研削加工、研磨加工の順に加工が施されて円筒形状のギヤ鍛造用金型を完成させる。
図7は、図1の構造の鍛造用金型材1の各層と硬さとの関係を示すグラフ図である。測定結果、A層10のロックウエル硬さは88.9[HRA]となり、B層20のロックウエル硬さは81.8[HRA]となり、V字形状の傾斜特性がグラフ化され、設定どおりの傾斜特性となった。
図10は、本発明を適用したギヤ鍛造用金型にて製造される被成形品を示す図であり、図10(a)はスパーギヤ201であり、図10(b)はヘリカルギヤ202である。図10(a)に示すとおり、金型温度が200℃以下の低温でスパーギヤを冷間鍛造することで、歯形成形とクラウニングを同時鍛造することができた。つまり、鍛造成形されたスパーギヤ201の歯形形状は太鼓形となり、歯面のクラウニングが実現されていることが確認された。
(実施形態2)
本実施形態の鍛造用金型材1は円柱形状を呈しており、図8は、その側断面の構造図である。図8は、図1の他の例である。ここで、同一の符号は同じ機能を示すことから、その説明を適宜省略する。図8では、便宜上、前記結合相成分が5〜15質量%の第1の成分と、前記結合相成分が20〜40質量%の第2の成分とを質量比で5:5の割合で混合した成分からなる層を符号15とする。そして、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で4:6の割合で混合した成分からなる層を符号16とし、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で3:7の割合で混合した成分からなる層を符号17とし、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で2:8の割合で混合した成分からなる層を符号18とし、前記第1の成分と前記第2の成分を質量比で1:9の割合で混合した成分からなる層を符号19とする。図8に示すとおり、前記第2の成分からなるB層が中間層として配されており、前記中間層を挟んで前記縦方向に前記B層よりも前記第2の成分の割合を少なくした層が形成されている。
図9は、図8の構造の鍛造用金型材1の各層と硬さとの関係を示すグラフ図である。測定結果、A/B層15のロックウエル硬さは85.0[HRA]となり、B層20のロックウエル硬さは82.0[HRA]となり、V字形状の傾斜特性がグラフ化され、設定どおりの傾斜特性となった。
図10は、本発明を適用したギヤ鍛造用金型にて製造される被成形品を示す図であり、図10(a)はスパーギヤ201であり、図10(b)はヘリカルギヤ202である。図10(b)に示すとおり、ヘリカルギヤを冷間鍛造することで、歯形成形とクラウニングを同時鍛造することができた。つまり、鍛造成形されたヘリカルギヤ202の歯形形状は太鼓形となり、歯面のクラウニングが実現されていることが確認された。
なお、本発明は、上述の実施形態や実施例に限定されず、各種バリエーションに応じて仕様を変更することができる。
例えば、上述の説明では、前記結合相がCoを有する例を挙げて説明したが、これに限定されず、前記結合相がNiを有する場合があり、前記結合相がCo及びNiを有する場合がある。
例えば、上述の説明では、添加剤としてのCrを含有しない例を挙げて説明したが、これに限定されず、添加剤としてCrがCo含有量の2〜18質量%含有される場合がある。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
1 鍛造用金型材、
10 結合相成分が5〜15質量%の第1の成分からなるA層、
20 結合相成分が20〜40質量%の第2の成分からなるB層

Claims (7)

  1. 炭化タングステン(WC)を基礎として、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)のいずれかないしは両方を結合相成分として含有してなる結合相が三層以上形成された超硬合金からなり、前記結合相の成分割合を鍛造成形品の軸方向と一対一で対応する厚さ方向に調節したことで、前記厚さ方向に傾斜特性を持たせた傾斜機能材料となっていることを特徴とする鍛造用金型材。
  2. 前記傾斜特性を形成する多層領域における、ヤング率を最小値とする前記結合相成分が20〜40質量%の層を形成し、かつ、ヤング率を最大値とする前記結合相成分が5〜15質量%の層を形成していることを特徴とする請求項1記載の鍛造用金型材。
  3. 炭化タングステン(WC)を基礎として、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)のいずれかないしは両方を含有してなる結合相が三層以上形成された超硬合金からなる鍛造用金型材の製造方法であって、前記結合相成分が5〜15質量%の第1の成分と、前記結合相成分が20〜40質量%の第2の成分と、を所定の質量比で混合し、その粉末混合物の成分割合を鍛造成形品の軸方向と一対一で対応する厚さ方向に調節することで、前記厚さ方向に傾斜特性を持たせた傾斜機能材料とすることを特徴とする鍛造用金型材の製造方法。
  4. 前記傾斜特性を形成する多層領域における、ヤング率を最小値とするために前記結合相成分が20〜40質量%の層を形成し、かつ、ヤング率を最大値とするために前記結合相成分が5〜15質量%の層を形成することを特徴とする請求項3記載の鍛造用金型材の製造方法。
  5. 前記鍛造成形品に見合ったサイズの金型に前記粉末混合物を順に入れてセットし、圧力が10〜100MPaで加圧しながら通電することで温度が1000〜1300℃に加熱して焼結体とすることを特徴とする請求項3または4記載の鍛造用金型材の製造方法。
  6. 請求項1または2記載の鍛造用金型材からなり、歯形成形とクラウニングを同時鍛造する構成としたことを特徴とするギヤ鍛造用金型。
  7. 請求項3から5のいずれか一項記載の鍛造用金型材の製造方法によって得られた鍛造用金型材からなり、歯形成形とクラウニングを同時鍛造する構成としたことを特徴とするギヤ鍛造用金型。
JP2014172133A 2014-08-27 2014-08-27 鍛造用金型材及びその製造方法、並びにギヤ鍛造用金型 Pending JP2016043407A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113696478A (zh) * 2021-09-08 2021-11-26 昆明理工大学 一种基于3d打印技术合成的高耐磨性齿轮

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CN113696478A (zh) * 2021-09-08 2021-11-26 昆明理工大学 一种基于3d打印技术合成的高耐磨性齿轮

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