以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態に係る設計支援システムは、複数のプロジェクトに分かれて設計作業が進められる場合において、各プロジェクトの設計を支援するシステムである。具体的には、設計支援システムは、「段階的詳細化」及び「参照サマリ」の機能を提供する。「段階的詳細化」とは、上位(概要)レベルの設計を行う上位プロジェクトの設計内容を、下位プロジェクトに対して参照及び編集させる機能である。段階的詳細化によれば、下位プロジェクトは、上位プロジェクトの設計内容を参照及び編集しながら、自プロジェクトの設計を円滑に進めることが可能となる。「参照サマリ」とは、段階的詳細化によって詳細化された下位プロジェクトの設計内容を、上位プロジェクトの設計内容と同一の粒度(例えば概要レベル)に要約(サマリ)する機能である。参照サマリによれば、上位プロジェクトの設計内容と下位プロジェクトにおいて詳細化された設計内容とを同一の粒度で容易に比較することが可能となる。
[段階的詳細化]
まず、図1〜図63を用いて、段階的詳細化の機能について説明する。図1は、複数のプロジェクト間の関係を概念的に示す図である。プロジェクトとは、同一の目標を達成するために集められた1人以上(通常は複数)の人員から構成されるチームである。プロジェクトは、例えば、上位下位の設計段階、部署、担当、役割等により分けられたチームであってもよい。より具体的には、プロジェクトは、例えば自動車の設計におけるエンジン設計プロジェクトや燃費設計プロジェクト等のように設計要素毎に分けられた設計チームであってもよい。図1に示すように、本実施形態では、例えば車両の製品開発に関する設計を、複数のプロジェクト(図1の例では、プロジェクトPJ0〜PJ3)に分かれて実行することを想定している。例えば、上位層のプロジェクトPJ0は、上位(概要)レベルの設計を行うプロジェクトである。プロジェクトPJ0の下層(中間層)のプロジェクトPJ1,PJ2は、プロジェクトPJ0での設計内容に基づいて、下位(詳細)レベルの設計を行うプロジェクトである。プロジェクトPJ1,PJ2の下層(下位層)のプロジェクトPJ3は、プロジェクトPJ0〜PJ2での設計内容に基づいて、より下位レベルの設計を行うプロジェクトである。
各プロジェクトでは、例えば、技術モデル、業務モデル、課題モデル等についての設計が行われる。これらのモデルでは、設計項目と、各設計項目間の依存関係とが規定される。技術モデルとは、開発対象の製品に関する要件と要素との間の依存関係を規定したモデルである。即ち、技術モデルは、設計項目として、要件と要素とを有している。業務モデルとは、タスク(作業工程等)と成果物(例えば設計書作成、データ作成等)との間の依存関係を規定したモデルである。即ち、業務モデルは、設計項目として、タスクと成果物とを有している。課題モデルとは、課題(心配点、要因等)と対策(タスク(作業工程等)等)との依存関係を規定したモデルである。即ち、課題モデルは、設計項目として、課題と対策とを有している。本実施形態では、技術モデルの設計に着目して説明する。ただし、本実施形態に係る設計支援システムは、例えば上述した各モデルのように、何らかの設計項目と当該設計項目間の依存関係を規定したモデルであれば、どのようなモデルの設計に対しても適用可能である。
図2は、本実施形態に係る設計支援システム1の段階的詳細化に関する機能構成を示すブロック図である。設計支援システム1は、プロジェクト毎に設けられ、各プロジェクトの設計を支援するコンピュータシステムである。本実施形態では一例として、設計支援システム1は、情報処理サーバ10と一以上の情報処理端末20とを備えて構成される。ただし、設計支援システム1は、上述の構成に限定されず、例えば以下に述べる情報処理サーバ10及び情報処理端末20の機能を併せ持つ一体の装置として構成されてもよい。また、複数のプロジェクトが1つの設計支援システム1を共有するものとして構成されてもよい。また、設計支援システム1を構成する情報処理サーバ10は、プロジェクト毎に設けられなくともよく、複数のプロジェクトにより共有される1台のサーバ装置として構成されてもよい。
各プロジェクトの情報処理端末20は、例えば、当該プロジェクトのユーザ(設計担当者)が設計データを編集(追加、更新、削除等)するための端末である。情報処理端末20は、例えばパーソナルコンピュータ及び専用コンピュータ端末等であり、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、及び他装置とのデータ通信を行うための通信モジュール等を備えて構成される。また、情報処理端末20は、ディスプレイ等の出力装置と、ユーザからの入力操作を受け付けるマウス、キーボード等の入力装置を備えている。
各プロジェクトの情報処理サーバ10は、情報処理端末20との間でLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークを介して通信可能とされたサーバ装置である。情報処理サーバ10は、情報処理端末20と同様に、CPU、メモリ、HDD等の補助記憶装置、及び他装置とのデータ通信を行うための通信モジュール等を備えて構成される。情報処理サーバ10は、情報処理端末20からの各種命令の実行指示を受け、他プロジェクトの設計データを取得したり、情報処理端末20における設計データの編集のために必要となるデータを生成及び記憶したりする。また、各プロジェクトの情報処理サーバ10は、他プロジェクトの情報処理サーバ10との間でLAN等の通信ネットワークを介して通信可能とされており、相互にデータ送受信が可能とされている。これにより、各プロジェクトの情報処理サーバ10は、各プロジェクトの設計データ等を相互に参照することができる。
[設計データについて]
まず、本実施形態における設計データについて説明する。図3は、技術モデルの設計(車両設計)において生成される設計データの一例を示す図である。図3に示すように、設計データDは、論理的なデータ構造としてツリー形式で表現される。具体的には、設計データDは、設計項目を示す項目データD1と、各項目データD1間の依存関係を規定する依存関係データD2とを含んで構成される。項目データD1の種類としては、設計対象の製品等に要求される要件を示す要件データD11と、設計対象の製品等に含まれる設計要素を示す要素データD12とがある。設計データDは、一例として車両を設計対象とする設計データであり、車両に要求される要件(車両要求、燃費、排ガス、振動、出力)を示す要件データD11と、車両に含まれる設計要素(車、エンジン、T/M、ボディ)を示す要素データD12とを含んでいる。
図3に示すように、要件及び要素は、それぞれ階層構造を有していてもよい。図3に示す例では、要件(車両要求)を示す要件データD11とそれ以外の各要件(燃費、排ガス、振動、出力)を示す要件データD11との間の依存関係データD2により、要件データD11間の依存関係(親子関係)が規定されている。つまり、車両に要求される要件(車両要求)として、具体的には、燃費、排ガス、振動、出力といった要件があることが規定されている。同様に、要素(車)を示す要素データD12とそれ以外の各要素(エンジン、T/M、ボディ)を示す要素データD12との間の各依存関係データD2により、要素データD12間の依存関係(親子関係)が規定されている。つまり、車の設計要素として、具体的には、エンジン、T/M、ボディといった要素があることを示している。
また、要件データD11と要素データD12との間の依存関係データD2により、要件と要素との間の依存関係が規定されている。要件と要素との間の依存関係は、要件及び要素の一方の設計が他方の設計と何らかの関わりがあることを示すものである。例えば、図3に示す例では、要件(燃費)と要素(エンジン、ボディ)との間の依存関係データD2は、要件(燃費)の目標値が変更された場合に、要素(エンジン、ボディ)の設計変更が生じる可能性があることを示している。逆にいえば、要件(燃費)と要素(エンジン、ボディ)との間の依存関係データD2は、要素(エンジン、ボディ)の設計変更が生じた場合に、要件(燃費)の目標値を達成できるか否かの結果に影響が生じる可能性があることを示している。
各項目データD1(要件データD11又は要素データD12)は、少なくとも1つのデータセットDSに所属する。データセットDSとは、同一カテゴリに分類される項目データD1をグルーピングしたものである。データセットDSの種類としては、一以上の要件データD11を含む要件データセットDS1と、一以上の要素データD12を含む要素データセットDS2とがある。図3に示す例では、各要件データD11(燃費、排ガス、振動、出力)は、それぞれ異なる要件データセットDS1に含まれており、各要素データD12(エンジン、T/M、ボディ)は、それぞれ異なる要素データセットDS2に含まれている。
図4〜図6は、要件データ、要素データ、依存関係データの一例を示す図である。図4〜図6に示すように、要件データ、要素データ、依存関係データには、それぞれ各種属性値を示す情報(関連情報)が関連付けられている。
図4に示すように、要件データには、仕様リスク及び重要度等の関連情報が関連付けられている。仕様リスクとは、仕様の確定度合いを示す指標であり、仕様の確定度合いが大きいほど小さい値をとる。例えば、仕様が確定した状態では仕様リスクには「0(最小値)」が設定され、仕様が未検討の状態では仕様リスクは「5(最大値)」に設定される。重要度は、要件全体の中での相対的な重要度を示す指標であり、重要性が高いほど大きい値をとる。
図5に示すように、要素データには、要素リスク及び自由度等の関連情報が関連付けられている。要素リスクとは、要素設計の確定度合いを示す指標であり、要素設計の確定度合いが大きいほど小さい値をとる。自由度とは、他の方式に変更することについてどの程度許容できるかという許容度合いを示す指標であり、他の方式への変更についての許容度合いが大きいほど大きい値をとる。すなわち、自由に方式を変更可能な設計範囲が大きいほど、自由度には大きい値が設定される。
図6に示すように、依存関係データには、依存度及び自信度等の関連情報が関連付けられている。依存度とは、依存関係の強さ(感度)を示す指標であり、感度が大きいほど大きい値をとる。自信度とは、依存度の設定が適切であるか否かの確度を示す指標であり、依存度の設定が適切である可能性が高いほど大きい値をとる。
図7は、図3に示す要件データD11と要素データD12との間の依存関係データD2をDMM(Domain Mapping Matrix)形式で表現したものである。表中セルの値は、縦軸で示される要件データD11と横軸で示される要素データD12との間の依存関係データD2の依存度を示している。図8は、図3に示す要件データD11間の依存関係データD2をDSM(Domain Structure Matrix)形式で示した図である。表中セルの値は、縦軸で示される要件データD11と横軸で示される要件データD11との間の依存関係データD2の依存度を示している。なお、図3に示す要素データD12間の依存関係データD2についても、図8に示した要件データD11間の依存関係データD2と同様のDSM形式で表現することができる。
[依存関係データの参照編集]
続いて、依存関係データの参照編集について説明する。依存関係データの参照編集の種類としては、依存関係データの参照追加、参照更新、及び参照削除がある。依存関係データの参照追加とは、参照された他プロジェクトのデータセットに含まれる要件データ間、要素データ間、又は要件データと要素データとを直接結び付ける依存関係データを追加することである。依存関係データの参照更新とは、参照された他プロジェクトの依存関係データの関連情報を更新することである。依存関係データの参照削除とは、参照された他プロジェクトの依存関係データを削除することである。本実施形態では、依存関係データの参照削除は、依存関係データに対して、当該依存関係データを削除されたものとして扱うことを示す参照削除フラグを付加することにより行われる。
図9及び図10を用いて、依存関係データの参照編集について説明する。ここでは、プロジェクトPJ1がプロジェクトPJ0において設計されたデータセットを参照データセットとして参照する場合を例として説明する。なお、以降の説明において、「データセットを参照(取得)する」といった意味で「データセット」と記載した場合には、この「データセット」は、当該データセットに含まれる要件データ又は要素データと、当該要件データ又は要素データに紐付く依存関係データと、を包含するデータ群を示すものとする。
図9は、プロジェクトPJ1による依存関係データの参照編集実行前の設計データを示す図である。図9に示すように、プロジェクトPJ0において設計された要件データセットRS01に含まれる要件データR011〜R013が、プロジェクトPJ1により参照される。同様に、プロジェクトPJ0において設計された要素データセットES01に含まれる要素データE011〜E013が、プロジェクトPJ1により参照される。また、依存関係データR011−E011(要件データR011と要素データE011との間の依存関係を示すデータ。以下、他の依存関係データについても同様に表記する),R012−E011,R012−E012,R012−E013,R013−E012が、プロジェクトPJ1により参照される。なお、図9において、要素データセットES11、要素データE111、及び依存関係データR011−E111,R012−E111,R013−E111,E111−E012は、プロジェクトPJ1によって、参照編集によらずに追加されたデータである。
図10は、プロジェクトPJ1による依存関係データの参照編集実行後の設計データを示す図である。図10において、「!」マークは、依存関係データR013−E011,R012−E011,R012−E012,R013−E012が参照編集されたデータであることを示している。破線で示される依存関係データR012−E012,R013−E012は、参照削除された依存関係データである。この例では、依存度が「3」の依存関係データR013−E011が、参照追加されている。また、依存関係データR012−E011の依存度が、「6」から「9」に参照更新されている。また、依存関係データR012−E012,R013−E012が、参照削除されている。
[要件(要素)データの参照編集]
続いて、要件(要素)データの参照編集について説明する。要件データの参照編集は、要素データの参照編集と同様であるため、ここでは要素データの参照編集に着目して説明する。要素データの参照編集の種類としては、要素データの参照追加、参照更新、及び参照削除がある。要素データの参照追加とは、参照された他プロジェクトのデータセットに要素データを追加することである。要素データの参照更新とは、参照された他プロジェクトの要素データの関連情報を更新することである。要素データの参照削除とは、参照された他プロジェクトの要素データを削除することである。本実施形態では、要素データの参照削除は、要素データに対して、当該要素データを削除されたものとして扱うことを示す参照削除フラグを付加することにより行われる。
図10及び図11を用いて、要素データの参照編集について説明する。上述した図10は、プロジェクトPJ1による要素データの参照編集が実行される前の設計データを示す図である。図11は、プロジェクトPJ1による要素データの参照編集実行後の設計データを示す図である。図11において、要素データE012,E013,E015に付された「!」マークは、要素データE012,E013,E015が参照編集されたデータであることを示している。破線で示される要素データE013は、参照削除された要素データである。この例では、要素データE015が、要素データセットES01に参照追加されている。また、要素データE012の要素リスクが、「5」から「1」に参照更新されている。また、要素データE013が、参照削除されている。
[参照データマージ処理]
続いて、図12及び図13を用いて、起源を同一とする複数のデータセット(複数のプロジェクトの各々において参照編集されたデータセット)を参照する場合に実行される参照データマージ処理について説明する。参照データマージ処理とは、参照対象となる複数のデータセットの中に、互いに競合(矛盾)するデータ(要件データ、要素データ、又は依存関係データ)が含まれている場合に、当該競合するデータについて採用される設計値を決定する処理である。本実施形態では一例として、参照データマージ処理は、「参照パスの経路コストに基づくマージ処理」と、「参照編集状態に基づくマージ処理」と、「参照更新のマージルールに基づくマージ処理」とを含む。
図12は、プロジェクトPJ0〜PJ3間の参照関係の一例を概念的に示す図である。この例では、プロジェクトPJ1は、プロジェクトPJ0において作成されたデータセットXを参照する。また、プロジェクトPJ2は、データセットXと、プロジェクトPJ1による参照編集が反映されたデータセットX1とを参照する。また、プロジェクトPJ3は、データセットX1と、プロジェクトPJ2による参照編集が反映されたデータセットX2とを参照する。ここで、データセットX1,X2は、いずれも起源をデータセットXとするデータセットである。この例では、プロジェクトPJ2がデータセットXとデータセットX1とを参照する際、及び、プロジェクトPJ3がデータセットX1とデータセットX2とを参照する際において、参照データマージ処理が必要となり得る。
本実施形態では一例として、図13に示すフローに基づいて、参照データマージ処理が実行される。まず、参照パスの経路コストに基づくマージ処理(ステップS1)が実行される。ここで、参照パスとは、参照元(参照する側)のプロジェクトから参照先(参照される側)のプロジェクトへの参照関係を遡ることで得られるパスである。例えば、プロジェクトPJ2からプロジェクトPJ0への参照パスは、プロジェクトPJ2からプロジェクトPJ0へと直接辿る参照パスPJ2−PJ0と、プロジェクトPJ2からプロジェクトPJ1を経由してプロジェクトPJ0に遡る参照パスPJ2−PJ1−PJ0との2つの経路が存在する。ここで、参照パスPJ2−PJ1−PJ0は、プロジェクトPJ1により参照編集された後のデータセットX1を参照することで、間接的にプロジェクトPJ0のデータセットXを参照する参照パスである。参照パスの経路コストとは、参照パスに含まれるプロジェクトの個数を示す。
図12に示す例では、参照パスPJ2−PJ0の経路コストは「0」であり、参照パスPJ2−PJ1−PJ0の経路コストは「1」である。また、プロジェクトPJ2からプロジェクトPJ1への参照パスPJ2−PJ1の経路コストは「0」である。
参照パスの経路コストに基づくマージ処理では、複数の参照先プロジェクトの各々への参照パスのうちに重複する経路がある場合、重複する経路を有する参照パスのうち経路コストが小さくなる方の参照パスを有する参照先プロジェクトのデータセットの設計値を優先する。例えば、プロジェクトPJ0のデータセットXとプロジェクトPJ1のデータセットX1とを参照するプロジェクトPJ2に着目する。この場合、プロジェクトPJ2からプロジェクトPJ0への参照パスPJ2−PJ1−PJ0と、プロジェクトPJ2からプロジェクトPJ1への参照パスPJ2−PJ1とが、互いに重複する経路(参照パスPJ2−PJ1)を有している。従って、参照パスの経路コストに基づくマージ処理により、互いに重複する経路を有する参照パス同士、即ち参照パスPJ2−PJ1−PJ0及び参照パスPJ2−PJ1について経路コストが比較される。
ここでは、参照パスPJ2−PJ1の経路コスト(=0)の方が、参照パスPJ2−PJ1−PJ0の経路コスト(=1)よりも小さい。従って、プロジェクトPJ2では、経路コストが小さくなる方の参照パスPJ2−PJ1に紐づくプロジェクトPJ1のデータセットX1に含まれるデータが、プロジェクトPJ0のデータセットXに含まれるデータよりも優先される。例えば、データセットXに含まれる要件データYの重要度が「5」であり、データセットX1に含まれる要件データYの重要度が「3」である場合には、データセットX1に含まれる要件データY(重要度が「3」)が採用される。同様に、プロジェクトPJ1のデータセットX1とプロジェクトPJ2のデータセットX2との間に互いに競合するデータが含まれている場合を考える。この場合、プロジェクトPJ3では、参照パスの経路コストに基づくマージ処理により、プロジェクトPJ2のデータセットX2に含まれるデータが、プロジェクトPJ1のデータセットX1に含まれるデータよりも優先される。
図12に示す例のように、参照パスの経路コストに基づくマージ処理によりマージできた場合(採用するデータを決定できた場合)には、参照データマージ処理を終了する(ステップS2:YES)。一方、参照パスの経路コストに基づくマージ処理によりマージできなかった場合(ステップS2:NO)には、参照編集状態に基づくマージ処理が実行される(ステップS3)。例えば、図14に示す例のように、プロジェクトPJ2がプロジェクトPJ1のデータセットX1を参照しない場合を考える。この場合、プロジェクトPJ3からプロジェクトPJ1,PJ2への参照パスの経路コストは、いずれも「0」となる。ここで、プロジェクトPJ3がプロジェクトPJ1のデータセットX1とプロジェクトPJ2のデータセットX2とを参照する場合を考える。データセットX1及びデータセットX2の間に互いに競合するデータが含まれている場合、プロジェクトPJ1,PJ2への参照パスの経路コストが等しいため、プロジェクトPJ3では、参照パスの経路コストに基づくマージ処理により、いずれのデータセットに含まれるデータを優先すべきか決定することができない。
参照編集状態に基づくマージ処理では、予め定められた参照編集状態間の優先順位に基づいてマージされる。参照編集状態としては、例えば参照更新されたことを示す「参照更新状態」、参照削除されたことを示す「参照削除状態」、参照更新及び参照削除のいずれも実行されていないことを示す「参照編集なし状態」等がある。ここで、参照編集状態間の優先順位が、予め「参照更新状態」、「参照編集なし状態」、「参照削除状態」の順に高いと定められているとする。また、図14に示す例において、プロジェクトPJ1のデータセットX1において、要件データYは参照削除されており、プロジェクトPJ2のデータセットX2において、要件データYは参照編集も参照削除もされていないとする。この場合、参照削除状態であるデータセットX1の要件データYよりも、参照編集なし状態であるデータセットX2の要件データYの方が、優先度が高い。従って、プロジェクトPJ3では、参照編集状態に基づくマージ処理により、参照編集なし状態であるデータセットX2の要件データYが採用される。つまり、プロジェクトPJ3においては、要件データYは削除されていないものとして参照されることとなる。
参照編集状態に基づくマージ処理によりマージできた場合には、参照データマージ処理を終了する(ステップS4:YES)。一方、参照編集状態に基づくマージ処理によりマージできなかった場合(ステップS4:NO)には、参照更新のマージルールに基づくマージ処理が実行される(ステップS5)。ここで、参照編集状態に基づくマージ処理によりマージできなかった場合とは、具体的には、互いに競合する複数のデータセットにおいて、同一の設計対象(要件データ、要素データ、又は依存関係データ)に対して異なる内容の参照更新が行われている場合である。
参照更新のマージルールに基づくマージ処理では、予め定められたマージルールに基づいてマージされる。例えば関連情報として予め用意されている予約属性(各種リスクの現在値,開始初期値,終了目論見値、自由度の現在値,開始初期値,終了目論見値、重要度、備考等)毎に予め定められたマージルールに従って採用する設計値が決定される。
ここで、予め定められたマージルールとは、例えば、各種リスク又は自由度の現在値,開始初期値については大きい方の値を優先し、各種リスク又は自由度の終了目論見値については小さい値を優先し、重要度については大きい値を優先し、備考については和を取る(両方の記載事項を併合する)といったルールである。このようなルールは、ユーザ等により設定可能なものであってもよい。
また、ユーザ等によるカスタマイズにより追加された関連情報(カスタム属性)についても、ユーザ等により設定されたマージルール(望大、望小、望目、0/1、非線形、関数等)に基づいてマージされてもよい。「望大」とは、できるだけ大きくなる方の設計値を優先することを示している。「望小」とは、できるだけ小さくなる方の設計値を優先することを示している。「望目」とは、予め定められた値(目標値)にできるだけ近い設計値を優先することを示している。「0/1」とは、離散的な値をとる設計値について、オン(1)とオフ(0)のうち予め定められた方の値を優先することを示している。「非線形、関数」とは、例えば関数(数式)やデータ列で示される設計値が、予め定められた非線形グラフ及び関数等により近似する方の設計値を優先することを示している。なお、上述のようなマージルールが定められておらず、採用する設計値を自動で判定できない関連情報については、互いに競合する複数の設計値を両方とも参照可能に保持するようにマージされてもよい。
[設計支援システムの各機能についての説明]
続いて、図2に示した設計支援システム1の各機能について説明する。まず、情報処理サーバ10の各機能について説明する。情報処理サーバ10は、データセット参照部11、参照データマージ部12、データ同期部13、マージ結果DB14、参照編集付きマージ結果DB15、自プロジェクトDB16、他プロジェクトDB17、及び参照設定実行部18を備えている。
データセット参照部(参照データ取得部)11は、情報処理端末20のデータセット参照指示部21により参照先として指定された他プロジェクトのデータセットを参照データセット(参照データ)として取得する機能要素である。具体的には、データセット参照部11は、他プロジェクトのデータセットに含まれる要件データ又は要素データと、当該要件データ又は要素データに紐付く依存関係データとを参照データセットとして取得する。データセット参照部11は、例えば他プロジェクトの情報処理サーバ10にアクセスし、当該他プロジェクトの情報処理サーバ10に記憶されているデータセットを取得することにより、参照データセットを取得してもよい。データセット参照部11は、参照データセットに対する参照編集許可設定(詳しくは後述)に関する情報も取得する。
データセット参照部11は、他プロジェクトのデータセットを参照データセットとして取得した後に、他プロジェクトのデータセットが更新された場合に、他プロジェクトの更新後のデータセット(更新後参照データ)を再度取得してもよい。例えば、データセット参照部11は、参照先の他プロジェクトにおける設計により参照データセットとして取得された他プロジェクトのデータセットが更新されたことを検知した場合に、当該他プロジェクトから更新後のデータセットを再度取得してもよい。なお、他プロジェクトにおけるデータセットの更新を検知する方法は何でもよい。例えば、データセット参照部11は、プロジェクト間の参照構造(例えば図12に示すような参照構造)をオリジナルのデータセット(最上位の参照先プロジェクトのデータセット)まで辿ることで、データセットの参照パスを生成する。そして、データセット参照部11は、参照パス上の他プロジェクトのデータセットの更新の有無を監視することにより、データセットの更新を検知してもよい。
また、データセット参照部11は、参照データセットに対する参照編集を実行した他プロジェクトからメール通知等の変更通知を受け取ることで、他プロジェクトにおける参照データセットの変更を検知してもよい。これにより、他プロジェクトにおいて参照データセットが変更された場合に、当該他プロジェクトの変更後の参照データセットを取得し、後述の参照データマージ部12及びデータ同期部13に受け渡すことができる。そして、参照データマージ部12及びデータ同期部13の処理により、他プロジェクトにおける最新の設計内容が反映されたデータがマージ結果DB14、参照編集付きマージ結果DB15、及び他プロジェクトDB17に記憶されることとなる。また、データセット参照部11は、後述する更新部26による更新処理が実行されるタイミングで、他プロジェクトの更新後参照データを取得してもよい。これにより、情報処理端末20上の設計データをサーバ同期させるタイミングで、他プロジェクトのデータ更新を考慮したデータを情報処理サーバ10上の各種DBに記憶させることができる。
参照データマージ部12は、データセット参照部11により互いに競合する複数の参照データセットが取得された場合に、上述した参照データマージ処理を実行する機能要素である。具体的には、参照データマージ部12は、データセット参照部11により取得された複数の参照データセットの中に、同一の要件データ、要素データ又は依存関係データについて互いに競合する複数のデータが含まれているか否かを判定し、競合する複数のデータが含まれていると判定された場合に、予め定められたルールに基づいて同一の要件データ、要素データ又は依存関係データについて採用される設計値を決定する。ここで、「予め定められたルール」とは、例えば、上述した「参照パスの経路コストに基づくマージ処理」、「参照編集状態に基づくマージ処理」、及び「参照更新のマージルールに基づくマージ処理」等のマージ処理におけるルールである。参照データマージ部12により、複数の参照データセットの中に、互いに競合するデータが含まれている場合であっても、採用される設計値を自動的に決定することができる。
参照データマージ部12は、例えば上述した参照パスの経路コストに基づくマージ処理により、互いに競合する複数のデータのそれぞれの保有元である他プロジェクトのそれぞれについて、参照パスの経路コスト(予め定められたルールに基づく優先度)を算出してもよい。そして、互いに競合する複数のデータのうち参照パスの経路コストが最小(優先度が最大)となる他プロジェクトに保有されるデータの設計値を、採用される設計値として決定してもよい。これにより、互いに競合する複数のデータのそれぞれを保有する他プロジェクトのそれぞれについて算出される参照パスの経路コストに応じて、採用される設計値を適切に決定することができる。
また、参照データマージ部12は、例えば上述した参照編集状態に基づくマージ処理により、互いに競合する複数のデータのそれぞれについて、参照編集状態(各データの保有元の他プロジェクトによりなされた編集の種類を示す編集情報)を取得し、複数のデータのうち参照編集状態に対して予め定められた優先度が最大となる参照編集状態に対応するデータの設計値を、採用される設計値として決定してもよい。これにより、互いに競合する複数のデータのそれぞれの参照編集状態に応じて、採用される設計値を適切に決定することができる。
参照データマージ部12は、上述の参照データマージ処理によって設計値が決定されたデータ(要件データ、要素データ、又は依存関係データ)を、マージ結果としてマージ結果DB14に記憶する。なお、設計値とは、データに関連付けられる属性値であってもよいし、当該データの有無(削除されている状態か否か)を示す情報であってもよい。
また、参照データマージ部12は、後述する更新部26から参照データセットに対する参照編集結果を取得する。参照編集結果とは、参照編集されたデータ(要件データ、要素データ、又は依存関係データ)と、参照編集の種類(参照追加、参照更新、参照削除)を示すフラグ情報とを含むペア情報である。参照データマージ部12は、更新部26から参照編集結果を取得すると、上述のマージ結果と参照編集結果とを合わせた参照編集付きマージ結果を参照編集付きマージ結果DB15に記憶する。
データ同期部13は、自プロジェクトDB16及び他プロジェクトDB17をデータセット参照部11又は更新部26から取得されたデータに基づいて最新の状態とする機能要素である。自プロジェクトDB16は、自プロジェクトにおいて追加されたデータセットに含まれる要件データ又は要素データ、及び当該要件データ又は要素データに紐づく依存関係データを自設計データセットとして記憶するデータベースである。他プロジェクトDB17は、データセット参照部11により取得された他プロジェクトの参照データセットを記憶するデータベースである。データ同期部13は、データセット参照部11から参照データセットを取得すると、当該参照データセットを他プロジェクトDB17に記憶する。また、データ同期部13は、更新部26から自設計データセットを取得すると、当該自設計データセットを自プロジェクトDB16に記憶する。
参照設定実行部18は、参照編集許可設定及び参照モード設定についての設定を実行する機能要素である。参照編集許可設定は、自設計データセットに対して設定される、他プロジェクトによる参照編集を許可するか否かについての設定である。参照編集許可設定は、参照編集を許可する「参照編集許可モード」、又は参照編集を許可しない「参照編集不許可モード」に設定される。参照モード設定とは、参照データセットに対して設定される、当該参照データセットを参照編集が可能な参照編集モードで参照するか否かについての設定である。参照モード設定は、参照編集か可能な状態で参照する「参照編集モード」、又は参照編集が不可能な(参照のみ許可される)状態で参照する「参照モード」に設定される。参照設定実行部18は、参照編集許可設定及び参照モード設定の設定内容を自プロジェクトDB16に記憶する。参照編集許可設定を自プロジェクトDB16に記憶することにより、例えば自設計データセットを参照しようとして自プロジェクトDB16にアクセスしてきた他プロジェクトの情報処理サーバ10に対して、自設計データセットの参照編集許可設定に関する情報を伝達することができる。
続いて、情報処理端末20の各機能について説明する。情報処理端末20は、データセット参照指示部21、参照編集前プロジェクトDB22、プロジェクトDB23、設計データ提示部24、編集実行部25、更新部26、参照編集取消部27、及び参照設定実行部28を備えている。
データセット参照指示部21は、ユーザによる所定の入力操作を受け付けて、当該入力操作により指定された他プロジェクトのデータセットを参照データセットとして取得するようにデータセット参照部11に指示する機能要素である。
参照編集前プロジェクトDB22は、自プロジェクトにおける参照編集結果(編集実行部25による参照編集結果)が反映されていない状態の参照データセット(互いに競合する複数の参照データセットがある場合には、これらをマージした後のデータセット)を記憶するデータベースである。参照編集前プロジェクトDB22は、マージ結果DB14に記憶されているデータ(マージ結果)と、他プロジェクトDB17に記憶されているデータ(参照データセット)とを取得する。そして、参照編集前プロジェクトDB22は、これらのデータに基づいて、自プロジェクトにおける参照編集結果が反映されていない状態の参照データセットを生成及び記憶する。具体的には、参照編集前プロジェクトDB22は、一以上の参照データセットのうち参照データマージ処理が必要なデータ部分をマージ結果で置き換えることで、自プロジェクトにおける参照編集結果が反映されていない状態の参照データセットを生成及び記憶することができる。参照編集前プロジェクトDB22に記憶される参照データセットに含まれるデータは、後述する参照編集取消部27により当該データに対する参照更新の取消処理が実行された際に、プロジェクトDB23を更新するためのデータとして用いられる(詳しくは後述する)。
プロジェクトDB23は、他プロジェクトDB17を介して、データセット参照部11により取得された参照データセットを記憶するデータベース(設計データ記憶部、設計データ記憶処理部)である。具体的には、プロジェクトDB23は、自プロジェクトにおける編集結果(編集実行部25による通常編集及び参照編集の結果)が反映された設計データを記憶する。通常編集とは、自設計データセットを追加、更新、又は削除することである。また、自プロジェクトの編集実行部25により参照追加された要素データ、要件データ、又は依存関係データを自プロジェクトの編集実行部25により更新することも通常編集に含まれる。プロジェクトDB23は、情報処理サーバ10に記憶されている設計データと同期をとる場合には、参照編集付きマージ結果DB15に記憶されたデータ(参照編集付きマージ結果)と、自プロジェクトDB16に記憶されているデータ(自設計データセット)と、他プロジェクトDB17に記憶されているデータ(参照データセット)とを取得する。そして、これらのデータに基づいて、マージ結果が反映された参照データセットに対する参照編集の結果と通常編集の結果(通常編集により追加された自設計データセット)とからなる設計データを生成及び記憶する。
後述する編集実行部25により通常編集(自設計データセットの追加、更新、削除)が実行されると、プロジェクトDB23には、当該通常編集の結果が反映された自設計データセットが記憶される。また、編集実行部25により参照編集(参照データセットに対する参照追加・参照更新・参照削除)が実行されると、プロジェクトDB23には、参照編集結果が記憶される。つまり、プロジェクトDB23には、編集実行部25を介したユーザによる編集結果がリアルタイムに反映された設計データが記憶されることとなる。
設計データ提示部24は、プロジェクトDB23に記憶されている設計データをユーザに提示する機能要素である。設計データ提示部24は、例えばディスプレイ等の画面上に、図3に示したツリー形式や図7及び図8に示したDMM形式及びDSM形式等によって、設計データを表示する。ここで、設計データ提示部24は、プロジェクトDB23に記憶されているデータのうち、参照削除フラグ(詳しくは後述)が付加されているデータや、参照削除フラグが付加されている要件データ又は要素データに関連付けられている依存関係データについては、ユーザに提示しなくてもよい。或いは、設計データ提示部24は、これらのデータを、参照削除されたデータ又は参照削除された要件データ又は要素データに関連付けられている依存関係データであることがわかるようにしてユーザに提示してもよい。
編集実行部25は、ユーザによる入力操作に応じて、通常編集又は参照編集を実行する機能要素である。具体的には、編集実行部25は、通常編集により、自設計データセットの追加、更新、又は削除を実行し、当該通常編集後の自設計データをプロジェクトDB23に記憶する。また、編集実行部25は、参照データセットに対する参照編集により、要件データ、要素データ、又は依存関係データの参照追加、参照更新、又は参照削除を実行し、参照編集結果をプロジェクトDB23に記憶する。編集実行部25は、参照データセットが「参照編集許可モード」に設定されており、且つ当該参照データセットが「参照編集モード」に設定されている場合にのみ、当該参照データセットに含まれる要件データ又は要素データに対する参照編集を実行することが可能とされてもよい。また、2つの参照データセット間の依存関係データについては、当該2つの参照データセットがいずれも参照編集可能な場合にのみ、参照編集を実行することが可能とされてもよい。
編集実行部25は、要件データ、要素データ、又は依存関係データの参照追加を実行する場合には、参照追加されたデータをプロジェクトDB23に記憶する。この際、参照追加されたデータに、参照追加されたデータであることを示す参照追加フラグを付加する。
編集実行部25は、要件データ、要素データ、又は依存関係データの参照更新を実行する場合には、参照更新後のデータをプロジェクトDB23に記憶する。この際、参照更新後のデータに、参照更新されたデータであることを示す参照更新フラグを付加する。
編集実行部25は、要件データ、要素データ、又は依存関係データの参照削除を実行する場合には、参照削除されたデータをプロジェクトDB23から削除することなく、当該データに、参照削除されたデータであることを示す参照削除フラグを付加する。
更新部26は、ユーザによる所定の入力操作や後述する参照設定実行部28による参照編集許可設定又は参照モード設定が実行されたこと等をトリガとして、プロジェクトDB23に記憶されている設計データにより、情報処理サーバ10上のデータベース(自プロジェクトDB16、参照編集付きマージ結果DB15)を更新する機能要素である。具体的には、更新部26は、プロジェクトDB23に記憶されている自設計データセットをデータ同期部13に送信する。これにより、データ同期部13により自プロジェクトDB16が更新される。また、更新部26は、プロジェクトDB23に記憶されている参照編集結果を参照データマージ部12に送信する。これにより、参照データマージ部12により参照編集付きマージ結果DB15が更新される。
参照編集取消部27は、ユーザによる所定の入力操作等をトリガとして、ユーザの入力操作等により指定された要件データ、要素データ、又は依存関係データ(取消対象データ)に対する参照編集を取り消す取消(クリア)処理を実行する機能要素である。参照編集取消部27により、参照データセットに対する参照編集を容易に取り消すことができるため、自プロジェクトのユーザは、様々な設計パターンを容易に検討することができる。具体的には、参照編集取消部27は、プロジェクトDB23を参照することで、取消対象データに付加されているフラグの種類を確認し、当該フラグの種類に応じて以下の処理を実行する。
取消対象データに参照追加フラグが付加されている場合には、参照編集取消部27は、取消対象データをプロジェクトDB23から削除する。これにより、取消対象データについての参照追加が取り消される(参照追加されなかったものとされる)。
取消対象データに参照更新フラグが付加されている場合には、参照編集取消部27は、参照編集前プロジェクトDB22に記憶されている取消対象データを取得する。そして、当該取消対象データでプロジェクトDB23に記憶されている取消対象データを更新(上書き)する。また、参照編集取消部27は、取消対象データの参照更新フラグを削除する。これにより、取消対象データは、参照更新がされなかった場合において採用されるべきデータに更新されることとなる。
取消対象データに参照削除フラグが付加されている場合には、参照編集取消部27は、プロジェクトDB23に記憶されている取消対象データの参照削除フラグを削除する。取消対象データに付加された参照削除フラグが削除されることにより、設計データ提示部24は、当該取消対象データを、削除されていないデータとしてユーザに提示することとなる。
参照設定実行部28は、ユーザによる入力操作に応じて、自設計データセットに対する参照編集許可設定、及び参照データセットに対する参照モード設定を実行する機能要素である。参照設定実行部28は、参照編集許可設定及び参照モード設定の設定内容をプロジェクトDB23に記憶させる。また、参照設定実行部28は、情報処理サーバ10上の自プロジェクトDB16における参照編集許可設定及び参照モード設定の設定内容を更新するために、参照設定実行部18に対して参照編集許可設定又は参照モード設定の設定内容を送信する。
[1.2階層プロジェクト間での参照構成]
続いて、図15〜図29を用いて、2階層プロジェクト間で参照編集が実行される場合を例として、設計支援システム1により実行される機能について具体的に説明する。図15は、2階層プロジェクト間の参照関係を示す図である。ここでは一例として、図15に示すように、参照先のプロジェクトPJ0の要件データセットRS01及び要素データセットES01が、参照元のプロジェクトPJ1によって参照される場合を例として説明する。
[1−1.プロジェクトPJ0における設計データの作成]
まず、参照先のプロジェクトPJ0において、ユーザ(プロジェクトPJ0の設計担当者)による通常編集が実行される。図16は、プロジェクトPJ0において通常編集により新たに追加された設計データを示す図である。図17は、図16に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
プロジェクトPJ0の編集実行部25は、通常編集により、要件データセットRS01及び要素データセットES01を追加する。また、編集実行部25は、要件データセットRS01に要件データR011,R012を追加する。ここでは一例として、編集実行部25は、要件データR011,R012の重要度を「5」に設定し、仕様リスクを「5」に設定する。続いて、編集実行部25は、要素データセットES01に要素データE011〜E014を追加する。ここでは一例として、編集実行部25は、要素データE011〜E014の自由度を「5」に設定し、要素リスクを「5」に設定する。続いて、編集実行部25は、依存関係データR011−E011,R011−E012,R012−E012,R012−E013,R012−E014を追加する。ここでは一例として、編集実行部25は、依存関係データR011−E012の依存度を「6」に設定し、それ以外の依存関係データR011−E011,R012−E012,R012−E013,R012−E014の依存度を「9」に設定する。
編集実行部25は、ユーザによる入力操作を受け付けて、当該入力操作に応じた通常編集結果(上述の通常編集の結果)をプロジェクトDB23に記憶する。この際、ユーザは、設計データ提示部24によりディスプレイ等に表示される設計データの内容を確認しながら、編集実行部25を介して上述の通常編集を実行することができる。
プロジェクトPJ0において上述の通常編集が完了すると、ユーザによる所定の入力操作をトリガとして、更新部26による更新処理が実行される。具体的には、更新部26は、プロジェクトDB23に記憶された設計データ(図16に示す設計データ)を、自設計データセットとしてプロジェクトPJ0(プロジェクトPJ0の情報処理サーバ10)のデータ同期部13に送信する。データ同期部13は、当該自設計データセットを自プロジェクトDB16に記憶する。
[1−2.プロジェクトPJ1におけるプロジェクトPJ0のデータセット参照]
続いて、プロジェクトPJ1において、プロジェクトPJ0のデータセットRS01,ES01が参照される。具体的には、プロジェクトPJ1のデータセット参照指示部21が、ユーザによる入力操作(プロジェクトPJ0のデータセットRS01,ES01を参照することを指示する入力操作)を受け付ける。そして、データセット参照指示部21は、当該指示内容をプロジェクトPJ1のデータセット参照部11に送信する。
データセット参照部11は、当該指示内容を受信すると、プロジェクトPJ0の情報処理サーバ10(自プロジェクトDB16)にアクセスする。そして、データセット参照指示部21により指定されたデータセット及びデータセット間の依存関係データを、参照データセットとして取得する。具体的には、データセット参照部11は、要件データセットRS01及び当該要件データセットRS01に含まれる要件データR011,R012と、要素データセットES01及び当該要素データセットES01に含まれる要素データE011〜E014と、依存関係データR011−E011,R011−E012,R012−E012,R012−E013,R012−E014と、を参照データセットとして取得する。ここでは、一のプロジェクト(プロジェクトPJ0)のデータセットのみが参照されるため、取得される参照データセットには、互いに競合するデータセットは含まれない。従って、参照データマージ部12による処理は実行されず、データ同期部13による処理が実行される。データ同期部13は、データセット参照部11により取得された参照データセットを他プロジェクトDB17に記憶する。
続いて、プロジェクトPJ1のプロジェクトDB23は、他プロジェクトDB17に記憶されているプロジェクトPJ0の参照データセットを取得及び記憶する。そして、プロジェクトPJ1の設計データ提示部24は、プロジェクトPJ0の参照データセット(図16に示すプロジェクトPJ0の設計データと同一)を、プロジェクトPJ1のユーザに提示する。これにより、プロジェクトPJ1のユーザは、プロジェクトPJ0の参照データセットを参照しながら自プロジェクトPJ1の設計を進めることが可能となる。
[1−3.プロジェクトPJ0におけるデータ変更及びプロジェクトPJ1への伝達]
続いて、上述の「1−2」のデータセット参照処理が実行された後に、参照先のプロジェクトPJ0において設計データが変更される場合について説明する。ここでは一例として、図18及び図19に示すように、プロジェクトPJ0の設計データが変更された場合について説明する。図18は、変更後のプロジェクトPJ0の設計データを示す図であり、図19は、図18に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
ここでは一例として、プロジェクトPJ0の編集実行部25は、通常編集により、プロジェクトPJ0の設計データに対して以下の変更を加える。即ち、編集実行部25は、要件データセットRS01に要件データR013(重要度は「5」、仕様リスクは「5」)を追加し、要件データR012の重要度を「5」から「3」に更新する。また、編集実行部25は、要素データE011の自由度を「5」から「1」に更新し、要素データE014を削除する(要祖データE014に関連付けられる依存関係データR011−E014も削除される)。また、編集実行部25は、依存関係データR011−E012を削除し、依存度が「6」の依存関係データR012−E011を追加し、依存関係データR012−E012の依存度を「9」から「3」に更新し、依存度が「9」の依存関係データR013−E012を追加する。
この場合、プロジェクトPJ1のデータセット参照部11は、参照先として指定されたプロジェクトPJ0におけるデータセットの更新を検知し、当該プロジェクトPJ0から更新後のデータセット(更新後参照データ。図18に示す設計データ)を再度取得する。その後、再度取得されたデータセットは、データ同期部13により他プロジェクトDB17に記憶される。更に、他プロジェクトDB17に記憶された参照データセットは、参照編集前プロジェクトDB22及びプロジェクトDB23により取得及び記憶される。具体的には、参照編集前プロジェクトDB22及びプロジェクトDB23は、更新後参照データにより、自DBに記憶されている参照データを更新する。
これにより、プロジェクトPJ0における最新の設計内容が反映された参照データセットが、プロジェクトDB23に記憶される。そして、プロジェクトPJ1の設計データ提示部24は、プロジェクトDB23に記憶された更新後の参照データセットをプロジェクトPJ1のユーザに提示する。これにより、プロジェクトPJ1のユーザは、プロジェクトPJ0における上述の設計変更が反映された設計データ(参照データセット)を参照しながら設計を進めることが可能となる。その結果、プロジェクトPJ1のユーザがプロジェクトPJ0の古い設計データを参照して設計を進めてしまうことに起因してプロジェクトPJ1の設計内容とプロジェクトPJ0の設計内容との間に齟齬が生じるおそれを抑制することができる。
[1−4.プロジェクトPJ1における通常編集]
続いて、図20及び図21に示すように、プロジェクトPJ1において通常編集が実行される。図20は、通常編集実行後のプロジェクトPJ1の設計データを示す図であり、図21は、図20に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。プロジェクトPJ1の編集実行部25は、通常編集により、要素データセットES11を追加し、当該要素データセットES11に要素データE111を追加し、依存関係データR011−E111,R012−E111,R013−E111,E111−E012を追加する。編集実行部25は、当該通常編集により追加された上記データ(自設計データセット)をプロジェクトDB23に記憶する。
[1−5.参照編集の設定]
続いて、プロジェクトPJ1がプロジェクトPJ0の要件データセットRS01及び要素データセットES01を参照編集するために必要な設定が行われる。具体的には、プロジェクトPJ0の参照設定実行部18は、自設計データセットである要件データセットRS01及び要素データセットES01を参照編集許可モードに設定する。プロジェクトPJ0において要件データセットRS01及び要素データセットES01が参照編集許可モードに設定されたことは、プロジェクトPJ1のデータセット参照部11を介してプロジェクトPJ1に伝達される。一方、プロジェクトPJ1の参照設定実行部28は、参照データセット(プロジェクトPJ0の要件データセットRS01及び要素データセットES01)を参照編集モードに設定する。以上の設定により、プロジェクトPJ1の編集実行部25は、プロジェクトDB23に記憶されている参照データセット(要件データセットRS01、要素データセットES01、及び要件データセットRS01と要素データセットES01との間に規定される依存関係データ)に対する参照編集を実行することが可能となる。
[1−6.依存関係データの参照編集]
続いて、プロジェクトPJ1の編集実行部25により、依存関係データの参照編集が実行される。図10は、上述した通り、プロジェクトPJ1による依存関係データの参照編集が実行された後の設計データを示す図である。また、図22は、図10に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図22において、依存関係データの依存度(「*」以外)を示すマスに付加されている「!」マークは、当該依存度が参照更新されたことを示している。また、依存関係データの依存度「*」を示すマスに付加されている「!」マークは、当該依存関係データが参照削除されたことを示している。また、「*」は、当該依存関係データが参照削除されたものであることを示している。
図10及び図22に示すように、編集実行部25は、要素データセットES01に対する参照編集により、依存度が「3」の依存関係データR013−E011を参照追加する。具体的には、編集実行部25は、参照追加フラグが付加された依存関係データR013−E011を、プロジェクトDB23に記憶する。また、編集実行部25は、依存関係データR012−E011の依存度を「6」から「9」に参照更新する。具体的には、編集実行部25は、更新後の依存関係データR012−E011を、参照更新フラグを付加した上で、プロジェクトDB23に記憶する。また、編集実行部25は、依存関係データR012−E012,R013−E012を参照削除する。具体的には、編集実行部25は、プロジェクトDB23に記憶されている依存関係データR012−E012,R013−E012に参照削除フラグを付加する。
[1−7.要素データの参照編集]
続いて、プロジェクトPJ1の編集実行部25により、要素データの参照編集が実行される。図11は、上述した通り、プロジェクトPJ1による要素データの参照編集が実行された後の設計データを示す図である。また、図23は、図11に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図23において、要素データに付加されている「!」マークは、当該要素データが参照追加された要素データであることを示している。また、要素リスクに付加されている「!」マークは、当該要素リスクが参照更新されたことを示している。
図11及び図23に示すように、編集実行部25は、要素データセットES01に対する参照編集により、要素データセットES01に要素データE015を参照追加する。具体的には、編集実行部25は、参照追加フラグが付加された要素データE015をプロジェクトDB23に記憶する。また、編集実行部25は、要素データE012の要素リスクを「5」から「1」に参照更新する。具体的には、編集実行部25は、更新後の要素データE012を、参照更新フラグを付加した上で、プロジェクトDB23に記憶する。また、編集実行部25は、要素データE013を参照削除する。具体的には、編集実行部25は、プロジェクトDB23に記憶されている要素データE013に参照削除フラグを付加する。
[1−8.プロジェクトPJ0におけるデータ変更及びプロジェクトPJ1への伝達]
続いて、上述の「1−7」までの処理が実行された後に、参照先のプロジェクトPJ0において設計データが変更される場合について説明する。ここでは一例として、プロジェクトPJ0における設計データが、図18及び図19に示す状態(上述の「1−3」におけるデータ変更がされた後の状態)から、図24及び図25に示すように、変更された場合について説明する。図24は、変更後のプロジェクトPJ0の設計データを示す図であり、図25は、図24に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
ここでは一例として、プロジェクトPJ0の編集実行部25は、通常編集により、プロジェクトPJ0の設計データに対して以下の変更を加える。即ち、編集実行部25は、要件データR011の仕様リスクを「5」から「1」に更新する。また、編集実行部25は、要素データE011の要素リスクを「5」から「1」に更新し、要素データE012の自由度を「5」から「3」に更新する。また、編集実行部25は、依存関係データR012−E011の依存度を「6」から「3」に更新し、依存関係データR012−E012を削除し、依存関係データR012−E013の依存度を「9」から「6」に更新する。
この場合、プロジェクトPJ1のデータセット参照部11は、参照先として指定されたプロジェクトPJ0におけるデータセットの更新を検知し、当該プロジェクトPJ0から更新後のデータセット(更新後参照データ。図24に示す設計データ)を再度取得する。その後、再度取得されたデータセットは、データ同期部13により他プロジェクトDB17に記憶される。更に、他プロジェクトDB17に記憶された更新後の参照データセットの内容は、参照編集前プロジェクトDB22により取得及び記憶される。また、他プロジェクトDB17に記憶された更新後の参照データセットの内容は、プロジェクトDB23によっても取得される。なお、この例では参照先プロジェクトが1つだけであるが、参照先プロジェクトが複数あり、複数の参照先プロジェクトのうち少なくとも1つの参照先プロジェクトの更新後参照データがデータセット参照部11により取得された場合には、当該少なくとも1つの参照先プロジェクトの更新後参照データと他の参照先プロジェクトについてデータセット参照部11により既に取得されている参照データセットとが、参照データマージ部12に入力される。そして、参照データマージ部12は、入力されたこれらのデータに対して、上述の参照データマージ処理を実行し、マージ結果DB14及び参照編集付きマージ結果DB15を更新する。その結果、参照編集前プロジェクトDB22は、他プロジェクトDB17及びマージ結果DB14に記憶されたデータに基づいて更新され、プロジェクトDB23は、自プロジェクトDB16、他プロジェクトDB17、及び参照編集付きマージ結果DB15に記憶されたデータに基づいて更新されることとなる。
ここで、他プロジェクトDB17から取得された更新後の参照データセットでプロジェクトDB23に記憶される参照データが更新されてしまうと、プロジェクトPJ1における参照更新(上述の「1−6」及び「1−7」で実行された参照更新)の内容が上書きされてしまうおそれがある。これは、プロジェクトPJ1の設計を進めるプロジェクトPJ1のユーザにとって、好ましくない。そこで、プロジェクトDB23は、編集実行部25により参照更新が実行された要件データ、要素データ、又は依存関係データを、更新後参照データによる更新の対象から除外してもよい。即ち、プロジェクトDB23は、更新後参照データのうちプロジェクトPJ1において参照更新されたデータについては更新しなくてもよい。即ち、プロジェクトDB23は、プロジェクトPJ1において参照更新されていないデータ(参照削除されたデータ、又は、参照編集されていないデータ)についてのみ、プロジェクトPJ0での更新内容に基づいて更新してもよい。これにより、プロジェクトPJ1のユーザにより参照更新されたデータが、プロジェクトPJ1のユーザの意図に反して、プロジェクトPJ0において更新されたデータに上書きされてしまうことを防ぐことができる。ここで、プロジェクトDB23は、プロジェクトPJ1において参照更新されたデータであっても、参照更新の内容が参照先のプロジェクトPJ0における更新内容と競合しない場合には、プロジェクトPJ0の更新後参照データに基づいてプロジェクトPJ1のデータを更新してもよい。つまり、プロジェクトDB23は、参照先のプロジェクトPJ0における更新内容を反映するか否かを、関連情報単位で判断してもよい。具体的には、プロジェクトDB23は、プロジェクトPJ1において参照更新されたデータであっても、プロジェクトPJ1において参照更新された関連情報とプロジェクトPJ0において更新された関連情報とが異なる場合には、プロジェクトPJ0での更新内容を反映してもよい。例えば、プロジェクトDB23は、プロジェクトPJ1において要素リスクの参照更新(「5」→「1」)がされた要素データE012について、プロジェクトPJ0により自由度の更新(「5」→「3」)がされた場合には、当該自由度の更新を反映してもよい。本実施形態では、プロジェクトDB23は、参照先のプロジェクトにおける更新内容を反映するか否かを、データ(要件データ、要素データ、又は依存関係データ)単位ではなく、関連情報単位で判断するものとして説明する。ただし、参照先のプロジェクトにおける更新内容を反映するか否かをデータ単位で判断してもよいことは言うまでもない。また、プロジェクトDB23は、設計データ提示部24がユーザ操作に応じて適宜切り替えて提示することが可能なように、参照先のプロジェクトPJ0の更新後参照データ及びプロジェクトPJ1における参照編集結果の両方を記憶してもよい。
図26は、上記方針に基づいて更新された後のプロジェクトPJ1の設計データを示す図である。図27は、図26に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図26に示すように、プロジェクトDB23は、プロジェクトPJ1において参照更新されていない要件データR011については、プロジェクトPJ0による更新結果を反映する。一方、プロジェクトDB23は、プロジェクトPJ1において参照更新されている要素データE012については、プロジェクトPJ0による更新結果を反映しない。
[1−9.参照編集の取消処理]
続いて、プロジェクトPJ1において、上述の「1−6」及び「1−7」で実行された参照編集をすべて取り消す取消処理が実行される場合について説明する。具体的には、参照編集取消部27により、参照編集された要素データ及び依存関係データの各々について、参照編集の種類に応じた取消処理が実行される。図28は、上述の参照編集取消部27の取消処理後の設計データを示す図である。図29は、図28に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
参照編集取消部27は、要素データE015の参照追加を取り消す。具体的には、参照編集取消部27は、要素データE015と、要素データE015に紐づく依存関係データE111−E015とをプロジェクトDB23から削除する。参照編集取消部27は、要素データE013の参照削除を取り消す。具体的には、参照編集取消部27は、プロジェクトDB23から要素データE013に付加された参照削除フラグを削除する。これにより、要素データE013及び依存関係データR012−E013は、設計データ提示部24により再度ユーザに提示されるようになる。ここで、依存関係データR012−E013の依存度は、上述の「1−8」におけるプロジェクトPJ0での設計変更が反映されているため、「6」となっている。
参照編集取消部27は、要素データE012の要素リスクを「5」から「1」に更新した参照更新を取り消す。具体的には、参照編集取消部27は、参照編集前プロジェクトDB22に記憶されている要素データE012(上述の「1−8」において自由度が「3」に変更されたデータ)を取得する。そして、当該要素データE012でプロジェクトDB23に記憶されている要素データE012を更新(上書き)する。また、参照編集取消部27は、要素データE012の参照更新フラグを削除する。このように、要素データE012に対するプロジェクトPJ0での変更内容は、要素データE012に対する参照編集が有効である状態においては伝達されないが、参照編集が取り消された時点で伝達される。
参照編集取消部27は、依存関係データR012−E011の依存度を「6」から「9」に更新した参照更新を取り消す。具体的には、参照編集取消部27は、参照編集前プロジェクトDB22に記憶されている依存関係データR012−E011(上述の「1−8」において依存度が「3」に変更されたデータ)を取得する。そして、当該依存関係データR012−E011でプロジェクトDB23に記憶されている依存関係データR012−E011を更新(上書き)する。また、参照編集取消部27は、依存関係データR012−E011の参照更新フラグを削除する。このように、依存関係データR012−E011に対するプロジェクトPJ0での変更内容は、依存関係データR012−E011に対する参照編集が有効である状態においては伝達されないが、参照編集が取り消された時点で伝達される。
参照編集取消部27は、依存関係データR013−E011の参照追加を取り消す。具体的には、参照編集取消部27は、依存関係データR013−E011をプロジェクトDB23から削除する。
[2.3階層プロジェクト間での参照構成]
次に、図30〜図38を用いて、3階層プロジェクト間で参照編集が実行される場合において設計支援システム1により実行される機能について具体的に説明する。図30は、3階層プロジェクト間の参照関係を示す図である。図30に示す例では、中間層のプロジェクトPJ1,PJ2は、最上位のプロジェクトPJ0の要件データセットRS01及び要素データセットES01を参照する。また、最下層のプロジェクトPJ3は、プロジェクトPJ1の要件データセットRS01及び要素データセットES01,ES11を参照すると共に、プロジェクトPJ2の要件データセットRS01及び要素データセットES01,ES21を参照する。
[2−1.プロジェクトPJ1における参照編集]
まず、プロジェクトPJ1において、上述の「1−4」と同様の通常編集が実行される。これにより、プロジェクトPJ1の設計データは、図20及び図21に示す状態となる。続いて、プロジェクトPJ1において、上述の「1−6」及び「1−7」と同様の参照編集が実行されることにより、プロジェクトPJ1の設計データは、図11及び図23に示す状態となる。一方、プロジェクトPJ2においては、参照編集が実行されず、変更後のプロジェクトPJ0の設計データ(図18参照)が参照された状態となっているものとする。
[2−2.プロジェクトPJ3における参照データマージ]
続いて、プロジェクトPJ3のデータセット参照部11により、参照パスPJ3−PJ1−PJ0の参照編集内容(プロジェクトPJ1における参照編集が反映された要件データセットRS01、要素データセットES01、及び要件データセットRS01と要素データセットES01との間の依存関係データ)が取得される。また、当該データセット参照部11により、参照パスPJ3−PJ2−PJ0の参照編集内容(プロジェクトPJ2における参照編集が反映された要件データセットRS01、要素データセットES01、及び要件データセットRS01と要素データセットES01との間の依存関係データ)が取得される。続いて、プロジェクトPJ3の参照データマージ部12により、参照パスPJ3−PJ1−PJ0の参照編集内容と参照パスPJ3−PJ2−PJ0の参照編集内容とについての参照データマージが実行される。
ここでは一例として、参照データマージ部12は、上述した参照編集状態に基づくマージ処理を実行するものとする。この場合、プロジェクトPJ2においては参照編集が実行されていないため、互いに競合するデータについては、参照編集が実行されているプロジェクトPJ1のデータセットに含まれるデータが優先される。従って、参照データマージ部12による参照データマージ処理のマージ結果は、プロジェクトPJ1の参照編集結果と一致することとなる。図31は、上記参照データマージ処理実行後のプロジェクトPJ3の設計データを示す図である。図32は、図31に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。このように、プロジェクトPJ3のプロジェクトDB23には、プロジェクトPJ1と同様の設計データが記憶され、プロジェクトPJ3の設計データ提示部24は、プロジェクトPJ1と同様の設計データをユーザに提示することとなる。
[2−3.プロジェクトPJ2における参照編集]
続いて、プロジェクトPJ2において、編集実行部25により、図33に示すような設計データの編集(通常編集及び参照編集)が実行される。図33は、プロジェクトPJ2における編集後の設計データを示す図である。図34は、図33に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
図33に示すように、プロジェクトPJ2の編集実行部25は、通常編集により、要素データセットES21を追加し、当該要素データセットES21に要素データE211を追加する。また、編集実行部25は、依存関係データR011−E211,R012−E211,E211−E013を追加する。また、編集実行部25は、要素データセットES01に対する参照編集により、要素データE013の要素リスクを「5」から「1」に参照更新する。また、編集実行部25は、依存関係データR011−E011,R012−E013を参照削除し、依存関係データR012−E011の依存度を「6」から「3」に参照更新する。
[2−4.プロジェクトPJ3における参照データマージ]
続いて、プロジェクトPJ3のデータセット参照部11により、参照パスPJ3−PJ1−PJ0の参照編集内容(プロジェクトPJ1における参照編集が反映された要件データセットRS01、要素データセットES01、及び要件データセットRS01と要素データセットES01との間の依存関係データ)が取得される(図11及び図23参照)。また、当該データセット参照部11により、参照パスPJ3−PJ2−PJ0の参照編集内容(プロジェクトPJ2における参照編集が反映された要件データセットRS01、要素データセットES01、及び要件データセットRS01と要素データセットES01との間の依存関係データ)が取得される(図33及び図34参照)。続いて、プロジェクトPJ3の参照データマージ部12により、参照パスPJ3−PJ1−PJ0の参照編集内容と参照パスPJ3−PJ2−PJ0の参照編集内容とについての参照データマージが実行される。
参照データマージ部12は、上述した参照編集状態に基づくマージ処理及び参照更新のマージルールに基づくマージ処理を実行する。これにより、参照データマージ部12は、プロジェクトPJ1とプロジェクトPJ2とで互いに競合するデータ(要素データE013,依存関係データR012−E011)について、以下のように採用するデータを決定する。即ち、要素データE013については、プロジェクトPJ2における参照更新の方がプロジェクトPJ1における参照削除よりも優先されるため、参照データマージ部12は、プロジェクトPJ2における参照更新結果(要素リスクが「1」)を採用する。また、依存関係データR012−E011については、プロジェクトPJ1の参照更新結果(依存度「9」)の方がプロジェクトPJ2の参照更新結果(依存度「3」)よりも大きいため、参照データマージ部12は、予め定められたマージルールに基づいて、プロジェクトPJ1の参照更新結果を採用する。図35は、上記参照データマージ処理実行後のプロジェクトPJ3の設計データを示す図である。図36は、図35に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
[2−5.プロジェクトPJ3における参照編集]
続いて、プロジェクトPJ3において、編集実行部25により、図37に示すような設計データの編集(通常編集及び参照編集)が実行される。図37は、プロジェクトPJ3における編集後の設計データを示す図である。図38は、図37に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
図37に示すように、プロジェクトPJ3の編集実行部25は、通常編集により、要素データセットES31を追加し、当該要素データセットES31に要素データE311,E312を追加する。また、編集実行部25は、依存関係データR011−E311,R011−E312,R012−E312,R013−E311,E311−E111,E312−E211を追加する。また、編集実行部25は、要素データセットES01に対する参照編集により、要素データE011の要素リスクを「5」から「1」に参照更新し、依存関係データR012−E011,R013−E011を参照削除する。また、編集実行部25は、要素データセットES11に対する参照編集により、要素データE111の要素リスクを「5」から「1」に参照更新し、依存関係データR011−E111,R012−E111,R013−E111を参照削除する。また、編集実行部25は、要素データセットES21に対する参照編集により、要素データE211の要素リスクを「5」から「1」に参照更新し、依存関係データR011−E211,R012−E211を参照削除する。
以上述べた設計支援システム1によれば、データセット参照部11により、他プロジェクトのデータセットに含まれる要件データ又は要素データと、当該要件データ又は要素データに紐付く依存関係データが、参照データセット(参照データ)として取得される。具体的には、当該参照データセットは、他プロジェクトDB17を介して、プロジェクトDB23に記憶される。そして、編集実行部25により、各プロジェクトの設計担当者(ユーザ)に対して、参照データセットを編集する参照編集(参照追加、参照更新、参照削除)の機能が提供される。これにより、各プロジェクトのユーザは、自プロジェクトの設計を進めるうちに、他プロジェクトの設計との整合性が取れなくなった場合等において、他プロジェクトの設計データを参照編集により適宜変更しつつ、自プロジェクトの設計を円滑に進めることが可能となる。これにより、複数のプロジェクトに分かれて実行される設計作業において、プロジェクト間でのすり合わせを効率的に行うことが可能となる。また、各プロジェクトは、プロジェクト全体の膨大な設計データのうち、自プロジェクトにおいて必要となるデータのみに絞って参照することで、効率的に設計を行うことも可能となる。
[3.実施例(段階的詳細化)]
続いて、図39〜図61を用いて、自動車の設計開発に上述の設計支援システム1を適用する場合の段階的詳細化の実施例について説明する。図39は、実施例におけるプロジェクト間の参照関係を示す図である。図39に示すように、本実施例では、6つのプロジェクト(車両企画PJ、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、出力設計PJ、ピストン設計PJ、WP設計PJ)が存在する。各プロジェクト(PJ)は、上述の設計支援システム1を備えている。
車両企画PJは、要件データセットRS00,RS01,RS02、及び要素データセットES00,ES01,ES02を設計する。エンジン設計PJは、車両企画PJから要件データセットRS01,RS02、及び要素データセットES01を参照する。また、エンジン設計PJは、自設計データセットとして要素データセットES11を設計する。燃費設計PJは、車両企画PJから、要件データセットRS01を参照し、エンジン設計PJから要素データセットES01,ES11を参照する。また、燃費設計PJは、自設計データセットとして、要件データセットRS21を設計する。出力設計PJは、車両企画PJから要件データセットRS02を参照し、エンジン設計PJから要素データセットES01,ES11を参照する。また、出力設計PJは、自設計データセットとして、要件データセットRS31を設計する。
ピストン設計PJは、エンジン設計PJから要素データセットES01,ES11を参照し、燃費設計PJから要件データセットRS01,RS21、及び要素データセットES11を参照し、出力設計PJから要件データセットRS02,RS31、及び要素データセットES11を参照する。また、ピストン設計PJは、自設計データセットとして、要素データセットES41を設計する。WP設計PJは、エンジン設計PJから要素データセットES01,ES11を参照し、燃費設計PJから要件データセットRS01,RS21、及び要素データセットES11を参照し、出力設計PJから要件データセットRS02,RS31、及び要素データセットES11を参照する。また、WP設計PJは、自設計データセットとして、要素データセットES51を設計する。
[3−1.車両企画PJによる設計]
まず、車両企画PJは、車両レベルの性能(要件)とユニット(要素)、各性能をどのユニットで実現するか(性能とユニット間の依存関係)の方針決定に関する設計を実行する。図40は、車両企画PJにより設計された設計データを示す図である。図41は、図40に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
図40及び図41に示すように、車両企画PJの編集実行部25は、ユーザ(車両企画担当者)からの入力操作を受け付けて、以下の編集を実行する。即ち、編集実行部25は、通常編集により、要件データセットRS00,RS01,RS02、及び要素データセットES00,ES01,ES02を追加する。そして、編集実行部25は、要件データセットRS00に要件データ「車両要求」を追加し、要件データセットRS01に要件データ「燃費(重要度=5、仕様リスク=4)」を追加し、要件データセットRS02に要件データ「出力(重要度=3、仕様リスク=4)」を追加する。また、編集実行部25は、要素データセットES00に要素データ「車両」を追加し、要素データセットES01に要素データ「エンジン(自由度=5、要素リスク=5)」を追加し、要素データセットES02に要素データ「T/M(自由度=1、要素リスク=5)」を追加する。また、編集実行部25は、「燃費」−「エンジン」間、「燃費」−「T/M」間、「出力」−「エンジン」間に、依存関係データ(依存度=9)を追加し、「出力」−「T/M」間に依存関係データ(依存度=3)を追加する。
[3−2.エンジン設計PJによる設計(設計前)]
続いて、エンジン設計PJは、車両企画PJの設計結果を受けて、エンジン設計の準備をする。具体的には、エンジン設計PJは、車両企画PJの設計データの一部を参照し、エンジン詳細データセットを追加するための準備を行う。図42は、エンジン設計前の設計データ(車両企画PJから参照したデータセット)を示す図である。図43は、図42に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図42及び図43に示すように、エンジン設計PJのデータセット参照部11は、車両企画PJの要件データセットRS01,RS02及び要素データセットES01、並びに当該データセットに含まれるデータに紐付く依存関係データを、参照データセットとして取得する。
[3−3.エンジン設計PJによる設計(設計後)]
続いて、エンジン設計PJは、エンジン部品の詳細化(要素の洗い出し)、及び各性能をどの部品で実現するか(性能とエンジン部品との間の依存関係)についての方針決定に関する設計を実行する。図44は、エンジン設計後の設計データを示す図である。図45は、図44に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
図44及び図45に示すように、エンジン設計PJの編集実行部25は、ユーザ(エンジン設計担当者)からの入力操作を受け付けて、以下の編集を実行する。即ち、編集実行部25は、通常編集により、要素データセット(エンジン詳細データセット)ES11を追加し、当該要素データセットES11に要素データ「ピストン」、「シリンダブロック」、「インテークバルブ」、「EGR」、「カムシャフト」、及び「メカWP」を追加する。また、編集実行部25は、要件データ「燃費」と上記各要素データとの間に依存関係データを追加し、要件データ「出力」と「EGR」及び「メカWP」を除いた上記各要素データとの間に依存関係データを追加する。
また、編集実行部25により、「燃費」−「エンジン」間及び「出力」−「エンジン」間の依存関係データは、参照削除される。言い換えると、ユーザは、エンジン部品を詳細化した要素データセットES31の定義が完了したことで各要件データ「燃費」、「出力」から「エンジン」への直接の依存関係データは不要となったと判断し、編集実行部25を介して上記参照削除を実行する。また、編集実行部25により、「エンジン」の要素リスクは、「5」から「4」に参照更新される。言い換えると、ユーザは、エンジン部品の設計が詳細化されたことで、「エンジン」についての要素リスクが下がったと判断し、編集実行部25を介して上記参照更新を実行する。
[3−3.燃費設計PJによる設計(設計前)]
続いて、燃費設計PJは、車両企画PJ及びエンジン設計PJの設計結果を受けて、燃費設計の準備をする。具体的には、燃費設計PJは、車両企画PJ及びエンジン設計PJの設計データの一部を参照し、燃費詳細データセットを追加するための準備を行う。図46は、燃費設計前の設計データ(車両企画PJ及びエンジン設計PJから参照したデータセット)を示す図である。図47は、図46に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図46及び図47に示すように、燃費設計PJのデータセット参照部11は、車両企画PJの要件データセットRS01と、エンジン設計PJの要素データセットES01,ES11と、これらのデータセットに含まれるデータに紐付く依存関係データとを、参照データセットとして取得する。
続いて、燃費設計PJの参照データマージ部12は、車両企画PJから参照された参照データセットと、エンジン設計PJから参照された参照データセットとの間で競合するデータについて、参照データマージ処理を実行する。具体的には、車両企画PJの要件データセットRS01の「燃費」には、「燃費」−「エンジン」間の依存関係データが紐づいている。一方、エンジン設計PJの要素データセットES01の「エンジン」には、「燃費」−「エンジン」間の依存関係データが紐付いていない(参照削除されている)。つまり、「燃費」−「エンジン」間の依存関係データについて、車両企画PJから参照された参照データセットと、エンジン設計PJから参照された参照データセットとの間で競合している。ここでは一例として、参照データマージ部12は、上述の参照パスの経路コストに基づくマージ処理により、燃費設計PJからの参照パスの経路コストが小さい方のエンジン設計PJの参照編集結果(参照削除)を優先している。
[3−4.燃費設計PJによる設計(設計後)]
続いて、燃費設計PJは、燃費特性を詳細化(要件の洗い出し)、各特性の機能割付(要件に対する目標値の設定)を行い、各特性をどの部品で実現するか(特性とエンジン部品との間の依存関係)についての方針決定に関する設計を実行する。図48は、燃費設計後の設計データを示す図である。図49は、図48に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
図48及び図49に示すように、燃費設計PJの編集実行部25は、ユーザ(燃費設計担当者)からの入力操作を受け付けて、以下の編集を実行する。即ち、編集実行部25は、通常編集により、要件データセット(燃費詳細データセット)RS21を追加し、当該要件データセットRS21に要件データ「フリクション」、「空燃比」、「ポンプ損失」、及び「冷却損失」を追加する。また、編集実行部25は、「フリクション」の目標値として「摩耗損失:3[Nm]」を定義し、「冷却損失」の目標値として「冷却損失:5[Nm]」を定義する。つまり、燃費性能が、「フリクション」及び「冷却損失」の目標値として具現化される。また、編集実行部25は、要件データセットRS21内の各要件データと要素データセットES11内の各要素データとの間に依存関係データを追加する。
また、編集実行部25により、「燃費」と要素データセットES11内の各要素データとの間の依存関係データは、参照削除される。言い換えると、ユーザは、燃費性能を詳細化した要件データセットRS21の定義が完了したことで「燃費」から要素データセットES11内の各要素データへの直接の依存関係データは不要となったと判断し、編集実行部25を介して上記参照削除を実行する。また、編集実行部25により、「燃費」の仕様リスクは、「4」から「3」に参照更新される。言い換えると、ユーザは、燃費性能の設計が詳細化されたことで、燃費性能の達成の目途がついたと判断し、編集実行部25を介して上記参照更新を実行する。
また、編集実行部25により、「ピストン」の要素リスクは、「5」から「3」に参照更新される。これは、例えば以下の理由による。即ち、ユーザは、図49に示すDMM形式の表を参照することで、「フリクション」性能に最も影響が大きい(依存度が高い)要素は「ピストン」であることを把握する。これにより、ユーザは、「フリクション」の目標値(摩耗損失:3[Nm])を達成するために、例えばピストン重量を軽くすることで摩耗損失を抑える方式を検討することができる。そして、ユーザは、このような検討を進めた結果、ピストンの実現方針案が具体化されたと判断し、編集実行部25を介して、「ピストン」の要素リスクを「5」から「3」に参照更新する。
また、編集実行部25により、「メカWP」の要素リスクは、「5」から「3」に参照更新される。これは、例えば以下の理由による。即ち、ユーザは、図49に示すDMM形式の表を参照することで、「冷却損失」性能に最も影響が大きい(依存度が高い)要素は「メカWP」であることを把握する。これにより、ユーザは、「冷却損失」の目標値(冷却損失:5[Nm])を達成するために、例えばメカWPで冷却水の流量調整をすることで冷却損失を抑える方式を検討することができる。そして、ユーザは、このような検討を進めた結果、メカWPの実現方針案が具体化されたと判断し、編集実行部25を介して、「メカWP」の要素リスクを「5」から「3」に参照更新する。
[3−5.出力設計PJによる設計(設計前)]
続いて、出力設計PJは、車両企画PJ及びエンジン設計PJの設計結果を受けて、出力設計の準備をする。具体的には、出力設計PJは、車両企画PJ及びエンジン設計PJの設計データの一部を参照し、出力詳細データセットを追加するための準備を行う。図50は、出力設計前の設計データ(車両企画PJ及びエンジン設計PJから参照したデータセット)を示す図である。図51は、図50に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図50及び図51に示すように、出力設計PJのデータセット参照部11は、車両企画PJの要件データセットRS02と、エンジン設計PJの要素データセットES01,ES11と、これらのデータセットに含まれるデータに紐付く依存関係データとを、参照データセットとして取得する。
続いて、出力設計PJの参照データマージ部12は、車両企画PJから参照された参照データセットと、エンジン設計PJから参照された参照データセットとの間で競合するデータについて、参照データマージ処理を実行する。具体的には、車両企画PJの要件データセットRS02の「出力」には、「出力」−「エンジン」間の依存関係データが紐づいている。一方、エンジン設計PJの要素データセットES01の「エンジン」には、「出力」−「エンジン」間の依存関係データが紐付いていない(参照削除されている)。つまり、「出力」−「エンジン」間の依存関係データについて、車両企画PJから参照された参照データセットと、エンジン設計PJから参照された参照データセットとの間で競合している。ここでは一例として、参照データマージ部12は、上述の参照パスの経路コストに基づくマージ処理により、出力設計PJからの参照パスの経路コストが小さい方のエンジン設計PJの参照編集結果(参照削除)を優先している。
[3−6.出力設計PJによる設計(設計後)]
続いて、出力設計PJは、出力特性を詳細化(要件の洗い出し)、各特性の機能割付(要件に対する目標値の設定)を行い、各特性をどの部品で実現するか(特性とエンジン部品との間の依存関係)についての方針決定に関する設計を実行する。図52は、出力設計後の設計データを示す図である。図53は、図52に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
図52及び図53に示すように、出力設計PJの編集実行部25は、ユーザ(出力設計担当者)からの入力操作を受け付けて、以下の編集を実行する。即ち、編集実行部25は、通常編集により、要件データセット(出力詳細データセット)RS31を追加し、当該要件データセットRS31に要件データ「圧縮比」、「体積効率」、及び「点火時期」を追加する。また、編集実行部25は、「圧縮比」の目標値として「実圧縮比:12」を定義する。つまり、出力性能が、「圧縮比」の目標値として具現化される。また、編集実行部25は、要件データセットRS31内の各要件データと要素データセットES11内の各要素データとの間に依存関係データを追加する。
また、編集実行部25により、「出力」と要素データセットES11内の各要素データとの間の依存関係データは、参照削除される。言い換えると、ユーザは、出力性能を詳細化した要件データセットRS31の定義が完了したことで「出力」から要素データセットES11内の各要素データへの直接の依存関係データは不要となったと判断し、編集実行部25を介して上記参照削除を実行する。また、編集実行部25により、「出力」の仕様リスクは、「4」から「3」に参照更新される。言い換えると、ユーザは、出力性能の設計が詳細化されたことで、出力性能の達成の目途がついたと判断し、編集実行部25を介して上記参照更新を実行する。
また、編集実行部25により、「カムシャフト」の要素リスクは、「5」から「3」に参照更新される。これは、例えば以下の理由による。即ち、ユーザは、図53に示すDMM形式の表を参照することで、「圧縮比」性能に影響が大きい(依存度が高い)要素は「カムシャフト」であることを把握する。これにより、ユーザは、「圧縮比」の目標値(実圧縮比:12)を達成するために、例えばカムシャフトの作用角を大きくすることで空気を多く取り込む方式を検討することができる。そして、ユーザは、このような検討を進めた結果、カムシャフトの実現方針案が具体化されたと判断し、編集実行部25を介して、「カムシャフト」の要素リスクを「5」から「3」に参照更新する。
[3−7.ピストン設計PJによる設計(設計前)]
続いて、ピストン設計PJは、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJの設計結果を受けて、ピストン設計の準備をする。具体的には、ピストン設計PJは、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJの設計データの一部を参照し、ピストン詳細データセットを追加するための準備を行う。図54は、ピストン設計前の設計データ(エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJから参照したデータセット)を示す図である。図55は、図54に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図54及び図55に示すように、ピストン設計PJのデータセット参照部11は、エンジン設計PJの要素データセットES01,ES11と、燃費設計PJの要件データセットRS01,RS21及び要素データセットES11と、出力設計PJの要件データセットRS02,RS31及び要素データセットES11と、これらのデータセットに含まれるデータに紐付く依存関係データとを、参照データセットとして取得する。
続いて、ピストン設計PJの参照データマージ部12は、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJの間で競合する要素データセットES11に含まれるデータについて、参照データマージ処理を実行する(図54及び図55参照)。
[3−8.ピストン設計PJによる設計(設計後)]
続いて、ピストン設計PJは、ピストン仕様の詳細化(要素の洗い出し)、各特性をどの部品仕様で実現するか(特性とピストン仕様との間の依存関係)についての具体的な方式決定に関する設計を実行する。図56は、ピストン設計後の設計データを示す図である。図57は、図56に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
図56及び図57に示すように、ピストン設計PJの編集実行部25は、ユーザ(ピストン設計担当者)からの入力操作を受け付けて、以下の編集を実行する。即ち、編集実行部25は、通常編集により、要素データセット(ピストン詳細データセット)ES41を追加し、当該要素データセットES41に要素データ「重量」、「冠面形状」、「コーティング」、「強度」、「表面処理」、及び「材質」を追加する。また、ユーザにより、燃費性能(フリクションの目標値「摩耗損失:3[Nm]」)と、出力性能(圧縮比の目標値「実圧縮比:12」)とを両方加味した上で、ピストンの設計検討が行われる。その結果、編集実行部25は、「重量」の設計値として「重量:270[g]」を定義し、「強度」の設計値として「安全率:0.9」を定義する。つまり、燃費性能及び出力性能の実現方式が、ピストンの「重量」及び「強度」の設計値として具現化される。また、編集実行部25は、要件データセットRS21,RS31内の各要件データと要素データセットES41内の各要素データとの間に依存関係データを追加する。
また、編集実行部25により、要件データセットRS21,RS31内の各要件データと「ピストン」との間の依存関係データは、参照削除される。言い換えると、ユーザは、ピストンを詳細化した要件データセットRS41の定義が完了したことで「ピストン」から要件データセットRS21,RS31内の各要件データへの直接の依存関係データは不要となったと判断し、編集実行部25を介して上記参照削除を実行する。また、編集実行部25により、「ピストン」の要素リスクは、「3」から「1」に参照更新される。言い換えると、ユーザは、ピストン設計の詳細化が完了したと判断し、編集実行部25を介して上記参照更新を実行する。
また、編集実行部25により、「フリクション」の仕様リスクは、「3」から「1」に参照更新される。これは、例えば以下の理由による。即ち、ユーザは、図57に示すDMM形式の表を参照することで、「フリクション」性能に影響が大きい(依存度が高い)要素は「重量」であることを把握する。これにより、ユーザは、「フリクション」の目標値(摩擦損失:3[Nm])を達成するために、例えばピストンを軽くする方式を検討することができる。そして、ユーザは、このような検討を進めた結果、フリクションの目標値達成の目途がついたと判断し、編集実行部25を介して、「フリクション」の仕様リスクを「3」から「1」に参照更新する。
また、編集実行部25により、「圧縮比」の目標値は、「12」から「10」に参照更新される。これは、例えば以下の理由による。上述の通り、「フリクション」の目標値を達成するためにピストンを軽くしたことにより、ピストンの強度を「安全率:0.9」に下げることとなった。これにより、圧縮比の目標値(実圧縮比:12)を満たすことができなくなった。そこで、ユーザは、妥協案として、編集実行部25を介して、「圧縮比」の目標値を「実圧縮比:10」に参照更新している。また、圧縮比の目標値を下方修正することとなるため、編集実行部25により、「圧縮比」の仕様リスクが「3」から「4」に参照更新されている。
[3−9.WP設計PJによる設計(設計前)]
続いて、WP設計PJは、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJの設計結果を受けて、WP設計の準備をする。具体的には、WP設計PJは、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJの設計データの一部を参照し、WP詳細データセットを追加するための準備を行う。図58は、WP設計前の設計データ(エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJから参照したデータセット)を示す図である。図59は、図58に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。図58及び図59に示すように、WP設計PJのデータセット参照部11は、エンジン設計PJの要素データセットES01,ES11と、燃費設計PJの要件データセットRS01,RS21及び要素データセットES11と、出力設計PJの要件データセットRS02,RS31及び要素データセットES11と、これらのデータセットに含まれるデータに紐付く依存関係データとを、参照データセットとして取得する。
続いて、WP設計PJの参照データマージ部12は、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、及び出力設計PJの間で競合する要素データセットES11に含まれるデータについて、参照データマージ処理を実行する(図58及び図59参照)。
[3−10.WP設計PJによる設計(設計後)]
続いて、WP設計PJは、WP仕様の詳細化(要素の洗い出し)、各特性をどの部品仕様で実現するか(特性とWP仕様との間の依存関係)についての具体的な方式決定に関する設計を実行する。図60は、WP設計後の設計データを示す図である。図61は、図60に示す設計データにおける要件・要素データ間の依存関係データをDMM形式で示した図である。
ここでは一例として、WP設計PJのユーザ(WP設計担当者)により、燃費性能(冷却損失:5[Nm])を実現するためのWPの設計検討が行われる。その結果、WPを「メカWP」から「電動WP」に変更することが決定される。即ち、図60及び図61に示すように、WP設計PJの編集実行部25は、参照データセットである要素データセットES11に含まれる要素データ「メカWP」を参照削除すると共に、要素データセットES11に新たな要素データ「電動WP」を参照追加する。
また、編集実行部25は、通常編集により、要素データセット(WP詳細データセット)ES51を追加し、当該要素データセットES51に要素データ「流量」、「消費電力」、及び「形状」を追加する。また、ユーザにより、燃費性能(冷却損失の目標値「冷却損失:5[Nm]」)を加味した上で、「電動WP」の設計検討が行われる。その結果、編集実行部25は、電動WPの「流量」の設計値として「流量:100[L/min]」を定義する。つまり、燃費性能の実現方式が、電動WPの「流量」の設計値として具現化される。また、編集実行部25は、要件データセットRS21,RS31内の各要件データと要素データセットES51内の各要素データとの間に依存関係データを追加する。
また、編集実行部25により、「冷却損失」の仕様リスクは、「3」から「1」に参照更新される。これは、上述のように、「冷却損失」の目標達成のために、メカWPを電動WPに変更し、メカWPの流量を100L/minに下げて冷却水への伝熱を抑える方式が具体的に検討されたことによる。つまり、ユーザは、このような検討を進めた結果、冷却損失の目標値達成の目途がついたと判断し、編集実行部25を介して、「冷却損失」の仕様リスクを「3」から「1」に参照更新する。また、編集実行部25により、「電動WP」の要素リスクは、「3」から「1」に通常編集により更新される。言い換えると、ユーザは、電動WPの構成の詳細化が完了したと判断し、編集実行部25を介して上記参照更新及び通常編集による更新を実行する。
続いて、図62を用いて、設計支援システム1の段階的詳細化に関する動作(一実施形態に係る設計支援方法を含む動作)を説明する。図62は、参照先として指定された他プロジェクトのデータセットが参照データセットとして取得されてから、参照編集が実行され、最後に参照編集が取り消される処理が実行される場合のフローを示す図である。まず、データセット参照部11により、情報処理端末20のデータセット参照指示部21により参照先として指定された他プロジェクトのデータセットが、参照データセットとして取得される(ステップS101、参照データ取得ステップ)。
続いて、データセット参照部11により取得された複数の参照データセットの中に、同一の要件データ、要素データ又は依存関係データについて互いに競合する第1のデータ及び第2のデータが含まれている場合には、参照データマージ部12により、上述の参照データマージ処理が実行され、採用される設計値が決定される(ステップS102、参照データマージステップ)。
続いて、データセット参照部11により取得された参照データセットは、他プロジェクトDB17を介して、プロジェクトDB23に記憶される(ステップS103、設計データ記憶処理ステップ)。ここで、ステップS102において参照データマージ部12による参照データマージ処理が実行されている場合には、プロジェクトDB23は、参照編集付きマージ結果DB15から参照編集付きマージ結果を取得及び記憶する。これにより、参照データマージ処理のマージ結果と自プロジェクトにおける参照編集とが反映された参照データセットが、プロジェクトDB23に記憶されることとなる。
続いて、プロジェクトDB23に記憶された参照データセットは、設計データ提示部24によりユーザに提示される(ステップS104、設計データ提示ステップ)。続いて、編集実行部25により、ユーザからの入力操作に応じて、プロジェクトDB23に記憶された参照データセットを編集する参照編集が実行される(ステップS105、編集実行ステップ)。続いて、参照編集取消部27により、ユーザによる入力操作等をトリガとして、指定された要件データ、要素データ、又は依存関係データ(取消対象データ)に対する参照編集を取り消す処理が実行される(ステップS106、参照編集取消ステップ)。
続いて、図63を用いて、一実施形態に係る設計支援プログラムについて説明する。図63は、設計支援プログラムP1の機能構成(モジュール構成)を示すブロック図である。設計支援プログラムP1は、コンピュータシステムを設計支援システム1として機能させるためのプログラムである。特に、設計支援プログラムP1は、コンピュータシステムを、段階的詳細化に関する機能を有する設計支援システム1(図2参照)として機能させるためのプログラムである。図63に示すように、設計支援プログラムP1は、参照データ取得モジュールP11、参照データマージモジュールP12、設計データ記憶モジュールP13、設計データ提示モジュールP14、編集実行モジュールP15、及び参照編集取消モジュールP16を備える。参照データ取得モジュールP11、参照データマージモジュールP12、設計データ記憶モジュールP13、設計データ提示モジュールP14、編集実行モジュールP15、及び参照編集取消モジュールP16が実行されることにより実現される機能はそれぞれ、上述した設計支援システム1のデータセット参照部11、参照データマージ部12、プロジェクトDB23、設計データ提示部24、編集実行部25、及び参照編集取消部27の機能と同様である。
設計支援プログラムP1は、例えばCD−ROM及びDVD等の記録媒体に記憶され、設計支援システム1として用いられるコンピュータシステムにより実行される。具体的には、当該コンピュータシステムを構成する各装置(情報処理サーバ10、情報処理端末20)は、例えばCD−ROMドライブ及びDVDドライブ等の記録媒体読取部を備えている。記録媒体読取部に記録媒体がセットされると、各装置は、記録媒体読取部から記録媒体に格納された設計支援プログラムP1にアクセス可能となる。そして、設計支援プログラムP1を各装置に実行させることによって、コンピュータシステムを、設計支援システム1として動作させることが可能となる。なお、設計支援プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号としてネットワークを介して提供されるものであってもよい。
[参照サマリ]
次に、参照サマリの機能について説明する。なお、上述の段階的詳細化に関する説明内容と重複する内容については、適宜説明を省略する。図64は、本実施形態に係る設計支援システム1の参照サマリに関する機能構成を示すブロック図である。図64に示すように、情報処理サーバ10は、参照サマリに関する機能要素として、設計データ取得部111、サマリ対象データセット抽出部112、サマリ実行部113、参照サマリ比較部114、及び自プロジェクトDB16を備えている。また、情報処理端末20は、参照サマリに関する機能要素として、参照サマリ指示部121、参照サマリ比較結果DB122、参照サマリ反映部123、参照サマリ整合部124、プロジェクトDB23、及び設計データ提示部24を備えている。
以下、設計支援システム1の参照サマリに関する各機能について説明する。なお、説明の便宜上、図64に示す情報処理サーバ10及び情報処理端末20は、図30に示したプロジェクトPJ0の情報処理サーバ10及び情報処理端末20であるものとする。また、以下の説明においては、プロジェクトPJ0よりも下位のプロジェクトであるプロジェクトPJ1,PJ2の設計内容をプロジェクトPJ0と同一の設計粒度にサマリするケースについて考える。また、適宜、別ケースとして、プロジェクトPJ3の設計内容をプロジェクトPJ0と同一の設計粒度にサマリするケースについても考える。
ここで、「設計粒度」とは、設計データに含まれているデータセットの組み合わせ(個数及び種類)を示す。即ち、「設計粒度が同一である」とは、設計データに含まれているデータセットの組み合わせが同一であることを意味する。また、サマリ処理の対象となるプロジェクトのことを「サマリ元プロジェクト」という。一方、サマリ元プロジェクトをサマリした結果(サマリ結果)と比較される対象となるプロジェクトのことを「サマリ先プロジェクト」という。上記の場合には、プロジェクトPJ0がサマリ先プロジェクトであり、プロジェクトPJ1,PJ2,PJ3がサマリ元プロジェクトである。また、サマリ先プロジェクトの設計粒度は、サマリ元プロジェクトをサマリする際の目標となる設計粒度となる。
参照サマリ指示部121は、プロジェクトPJ0のユーザによるサマリ元プロジェクトを指定するユーザ操作を受け付け、指定されたサマリ元プロジェクトを設計データ取得部111に通知する機能要素である。ここでは一例として、サマリ元プロジェクトとしてプロジェクトPJ1,PJ2が指定されるものとする。また、参照サマリ指示部121は、プロジェクトDB23に記憶されているプロジェクトPJ0の設計データを取得すると共に、当該設計データを設計データ取得部111に送信する。
設計データ取得部111は、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データ(第1の設計データ)と、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データ(第2の設計データ)とを取得する機能要素である。具体的には、設計データ取得部111は、参照サマリ指示部121から、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データを取得する。また、設計データ取得部111は、参照サマリ指示部121からの通知により、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2を特定することができる。そして、設計データ取得部111は、例えばサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の情報処理サーバ10にアクセスすることで、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データを取得する。
ここで、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の情報処理サーバ10上に記憶されている設計データは、最新の設計データとは異なっている場合がある。例えば、各プロジェクトPJ1,PJ2の情報処理端末20において、各プロジェクトPJ1,PJ2のユーザが編集実行部25を介して、プロジェクトDB23に記憶されている設計データを編集している可能性がある。この場合、最新の編集(通常編集又は参照編集)が反映された設計データは、プロジェクトDB23にのみ記憶され、更新部26による更新が実行されるまでは、情報処理サーバ10のデータベース(参照編集付きマージ結果DB15、自プロジェクトDB16)に記憶されない。
そこで、設計データ取得部111は、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2において、情報処理端末20での編集が完了しており、最新の設計データが情報処理サーバ10のデータベースに記憶されていることを確認してもよい。そして、設計データ取得部111は、確認完了するまではサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データの取得処理を保留し、確認完了後に、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の情報処理サーバ10からサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データを取得してもよい。例えば、設計データ取得部111は、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の情報処理サーバ10の自プロジェクトDB16に記憶されている参照モード設定を参照することで、上記の確認を行ってもよい。具体的には、設計データ取得部111は、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の参照モード設定が「参照モード」であれば、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の情報処理端末20による参照編集が完了しており、更新部26による更新(データ同期)が実行完了していると判断してもよい。
サマリ対象データセット抽出部112は、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データとに共通に含まれるデータセットをサマリ対象データセットとして抽出する機能要素である。ここで、プロジェクトPJ1,PJ2は、いずれもプロジェクトPJ0の要件データセットRS01及び要素データセットES01を参照している(図11及び図33参照)。即ち、要件データセットRS01及び要素データセットES01が、プロジェクトPJ0〜PJ2で共通に含まれるデータセットである。従って、サマリ対象データセット抽出部112は、要件データセットRS01及び要素データセットES01を、サマリ対象データとして抽出する。
サマリ実行部113は、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データに基づいて、サマリ対象データセット抽出部112により抽出されたサマリ対象データセット(要件データセットRS01及び要素データセットES01)以外のデータセットを含まないサマリ結果(第3の設計データ)を生成する機能要素である。ここで、サマリ元プロジェクトPJ1には、サマリ対象データセット以外に要素データセットES11が含まれている(図11参照)。また、サマリ元プロジェクトPJ2には、サマリ対象データセット以外に要素データセットES21が含まれている(図33参照)。そこで、サマリ実行部113は、以下に述べるような処理により、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データに基づいて、要素データセットES11,ES21を含まないサマリ結果を生成する。
(第1の例)
サマリ実行部113は、サマリ元プロジェクトが複数(本実施形態では一例としてプロジェクトPJ1,PJ2の2つ)である場合には、以下のようにしてサマリ結果を生成してもよい。即ち、サマリ実行部113は、複数のサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2のそれぞれの設計データを、予め定められたルールに基づいて1つのマージデータ(第4の設計データ)に変換する。ここで、「予め定められたルール」とは、例えば上述した参照データマージ処理における各種ルールである。即ち、ここでの「予め定められたルール」とは、「参照パスの経路コストに基づくマージ処理」、「参照編集状態に基づくマージ処理」、及び「参照更新のマージルールに基づくマージ処理」等のマージ処理におけるルールである。上述の変換処理により、図35に示すようなデータ構成のマージデータが得られる。
そして、サマリ実行部113は、得られたマージデータについて、サマリ対象データセットRS01,ES01に含まれる2つの項目データ(要件データ又は要素データ)を検出する。具体的には、サマリ実行部113は、サマリ対象データセットRS01,ES01以外のデータセットES11,ES21に含まれる項目データ(ここでは一例として、要素データE111)に関連付けられた複数の依存関係データR011−E111,E111−E012を介して結び付けられた2つの項目データ(ここでは一例として、要件データR011及び要素データE012)を検出する。そして、サマリ実行部113は、当該複数の依存関係データR011−E111,E111−E012から、要件データR011と要素データE012との間の依存関係を示す1つの依存関係データR011−E012を生成する。サマリ実行部113は、このような処理(依存関係データのサマリ)を、検出された全ての2つの項目データの組み合わせに対して実行する。そして、サマリ実行部113は、サマリ対象データセット以外のデータセットES11,ES21を削除することで、サマリ結果を生成してもよい。ここで、データセットES11,ES21に含まれる要素データと、当該要素データに関連付けられた依存関係データとは、当該データセットES11,ES21の削除に伴って削除される。
図65は、依存関係データのサマリについて説明するための図である。図65(a)は、直列の依存関係データをサマリする場合の例を示す図である。図65(a)において、要件データA及び要素データXは、サマリ対象データセットに含まれる項目データである。一方、要件データa及び要素データxは、サマリ対象データセット以外のデータセットに含まれる項目データである。この場合、サマリ実行部113は、上述の処理(依存関係データのサマリ)により、複数(ここでは一例として3つ)の依存関係データA−a,a−x,x−Xから、1つの依存関係データA−Xを生成する。
新たに生成される依存関係データA−Xの関連情報(依存度等)は、予め定められたルールにより設定される。例えば、直列の依存関係データをサマリする場合には、依存関係データA−Xの依存度には、以下の優先度に従って、依存関係データA−a,a−x,x−Xのうちのいずれかの依存度が設定される。ここで、優先度は、優先度1、優先度2、優先度3の順に高いものとする。つまり、優先度1のルールにより依存関係データA−a,a−x,x−Xのうちのいずれかの依存度を決定することができなかった場合には、優先度2のルールが適用される。優先度2のルールでも依存度を決定することができなかった場合には、優先度3のルールが適用される。
優先度1:自信度考慮済みの依存度が最小である依存関係データの依存度
優先度2:依存度が最小である依存関係データの依存度
優先度3:自信度が最大である依存関係データの依存度
「自信度考慮済みの依存度」とは、依存度及び自信度に基づく予め定められた演算により求まる値である。例えば自信度が相対的に大きい依存関係データの依存度が採用され易くなるように演算された値である。ここで、図65(a)に示す依存関係データA−a,a−x,x−Xの自信度は、いずれも同一であるものとする。この場合、自信度の相対的な大きさは、依存関係データA−a,a−x,x−X間で等しくなるため、優先度1のルールは優先度2のルールと同一となる。そして、優先度1のルールにより、依存関係データA−Xの依存度は、依存度が最小である依存関係データA−aの依存度「3」に設定される。ただし、上述のルールは一例に過ぎず、その他の値が依存関係データA−Xの依存度として設定されてもよい。例えば、全ての依存関係データA−a,a−x,x−Xの平均値が依存関係データA−Xの依存度として設定されてもよい。
図65(b)は、並列の依存関係データをサマリする場合の例を示す図である。図65(b)に示すように、要件データA及び要素データXの間に、複数の並列するパスが存在する場合には、まず、各パスについて上述した直列の依存関係データのサマリルールが適用される。この例では、要件データA及び要件データXの間に、依存関係データA−a,a−x,x−Xにより形成されるパスと、依存関係データA−b,b−y,y−Xにより形成されるパスとが存在している。ここで、依存関係データA−a,a−x,x−X,A−b,b−y,y−Xの自信度はいずれも同一であるものとする。この場合、依存関係データA−a,a−x,x−Xからは、依存度が最小の依存関係データA−aの依存度が採用されて、依存度「3」の依存関係データA−Xが生成される。また、依存関係データA−b,b−y,y−Xからは、依存度が最小の依存関係データb−yの依存度が採用されて、依存度「6」の依存関係データA−Xが生成される。以上の処理により、並列の2つの依存関係データA−Xが生成される。
続いて、並列の2つの依存関係データA−Xのサマリが実行される。例えば、並列の依存関係データをサマリする場合には、依存関係データA−Xの依存度には、以下の優先度に従って、2つの依存関係データA−Xのうちのいずれかの依存度が設定される。
優先度1:自信度考慮済みの依存度が最大である依存関係データの依存度
優先度2:依存度が最大である依存関係データの依存度
優先度3:自信度が最小である依存関係データの依存度
図65(b)に示す例では、並列の2つの依存関係データA−Xの自信度に差はないため、優先度1のルールは優先度2のルールと同一となる。そして、優先度1のルールにより、依存関係データA−Xの依存度は、依存度が最大である依存関係データA−X(図65(b)の図示下側の依存関係データ)の依存度「6」に設定される。ただし、上述のルールは一例に過ぎず、その他の値が依存関係データA−Xの依存度として設定されてもよい。例えば、並列する2つの依存関係データA−Xの平均値が依存関係データA−Xの依存度として設定されてもよい。また、例えば依存度以外の属性のサマリルールについては、当該属性に応じて別途定められてもよい。また、上述のようなサマリルールが定められていない属性については、サマリ元となる依存関係データの値を全て参照可能に保持するようにサマリされてもよい。
(第2の例)
また、サマリ実行部113は、サマリ元プロジェクトが複数(本実施形態では一例としてPJ1,PJ2の2つ)である場合には、第1の例とは逆の処理を行ってもよい。即ち、サマリ実行部113は、まず、各サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2に対して、上述の第1の例に示した方法と同様に、検出された全ての2つの項目データの組み合わせに対して依存関係データのサマリを実行する。そして、サマリ実行部113は、各サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2に対する依存関係データのサマリにより得られた複数の設計データ(第5の設計データ)を、上述した参照データマージ処理における各種ルールに基づいて1つのマージデータ(サマリ結果)に変換することで、サマリ結果を生成してもよい。
第1の例及び第2の例に示すように、設計支援システム1は、サマリ実行部113を備えることにより、サマリ元プロジェクトが複数(本実施形態では一例としてPJ1,PJ2の2つ)ある場合において、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データと共通のデータセット構成を有し且つ複数のサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計内容に基づくサマリ結果が、効率的且つ適切に生成される。その結果、例えばサマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果とを比較することにより、サマリ先プロジェクトPJ0の設計内容と複数のサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計内容との差異を容易に把握することが可能となる。従って、サマリ先プロジェクトPJ0と複数のサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2との間でのすり合わせを効率的に行うことが可能となる。
(第3の例)
また、サマリ実行部113は、仮に、サマリ元プロジェクトが1つ(例えば図30に示すプロジェクトPJ3)である場合には、サマリ元プロジェクトPJ3の設計データに対して、上述の第1の例に示した方法と同様に、検出された全ての2つの項目データの組み合わせに対して依存関係データのサマリを実行することで、サマリ結果を生成することができる。これにより、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データと共通のデータセット構成を有するサマリ元プロジェクトPJ3の設計データを効率的且つ適切に生成することが可能となる。
なお、第1の例〜第3の例は、サマリ実行部113によるサマリ結果を生成するための処理の一例に過ぎない。例えば、サマリ実行部113は、サマリ元プロジェクトが複数である場合に、上述した依存関係データのサマリを設計データの一部に対して実行した後に、参照データマージ処理を実行し、再度これらの処理を繰り返し実行するといった反復的(試行錯誤的)な手法によりサマリ結果を生成してもよい。サマリ実行部113は、上述の第1の例〜第3の例に示す手順、或いはその他の手順によりサマリ結果を生成すると、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データと当該サマリ結果とを参照サマリ比較部114に出力する。
参照サマリ比較部(比較部)114は、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果(ここでは一例としてプロジェクトPJ3のサマリ結果)とを比較した結果(比較結果データ)を出力する機能要素である。具体的には、参照サマリ比較部114は、サマリ実行部113から入力されたサマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果とを取得する。そして、図66に示すように、参照サマリ比較部114は、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果とを比較することで、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果との間における各データ(要件データ、要素データ、及び依存関係データ)についての差分を示す比較結果データを生成する。
より具体的には、参照サマリ比較部114は、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果との一方にのみ含まれるデータの有無や、共通して含まれるデータの設計値(例えば仕様リスク、要素リスク、依存度等の属性値)の差分の有無を判定する。これにより、参照サマリ比較部114は、例えば図67及び図68に示すように差分箇所が目立つようにレイアウトされたデータ(例えば差分箇所に下線や色を付けるレイアウトがされたデータ)を差分結果データとして生成してもよい。また、参照サマリ比較部114は、単に差分箇所の情報がリスト形式で記載されたテキストデータ等を差分結果データとして生成してもよい。
参照サマリ比較部114は、生成された比較結果データを自プロジェクトDB16及び参照サマリ比較結果DB122に出力する。自プロジェクトDB16には、比較結果データと共に、参照サマリ比較部114による比較が実行された際のプロジェクトPJ0の設計データのリビジョン番号等が記憶される。これにより、プロジェクトPJ0の設計データのリビジョン毎の比較結果が自プロジェクトDB16にヒストリー形式で記憶され、プロジェクトPJ0のユーザ等がこれらの比較結果を後で確認することが可能となる。
参照サマリ比較結果DB122は、一時的に比較結果データを記憶する機能要素である。参照サマリ比較結果DB122に記憶された比較結果データは、設計データ提示部24が比較結果データをユーザに提示する際や、参照サマリ反映部123が後述する処理を実行する際に参照される。
参照サマリ反映部(反映部)123は、比較結果データに基づいて、サマリ先プロジェクトPJ0のプロジェクトDB23に記憶されている設計データを、サマリ結果と同一の設計データに更新(反映)する機能要素である。参照サマリ反映部123による上述の処理によれば、サマリ先プロジェクトPJ0の設計内容をサマリ元プロジェクトの設計内容に合わせることができる。これにより、サマリ先プロジェクトPJ0とサマリ元プロジェクトとの間の設計のすり合わせが自動化され、設計作業の効率化が図れる。また、参照サマリ反映部123は、サマリ結果のうちユーザにより指定された一部のデータ(要件データ、要素データ、又は依存関係データ)のみをプロジェクトPJ0の設計データに反映してもよい。例えば、プロジェクトPJ0のユーザは、設計データ提示部24により提示された比較結果データを参照し、サマリ結果と同一のデータに変更する部分を選択する。そして、参照サマリ反映部123は、ユーザにより選択されたデータについてのみサマリ結果と同一の設計データに変更する。
参照サマリ整合部(整合部)124は、参照サマリ反映部123によりサマリ先プロジェクトPJ0の設計データがサマリ結果と同一の設計データに更新されたことを示す通知情報を、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データに基づいて生成された設計データを保有する全てのプロジェクトに対して通知する機能要素である。具体的には、参照サマリ整合部124は、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データ(又は当該設計データを参照編集して生成された設計データ)を参照するプロジェクト(図30に示す例では、プロジェクトPJ1〜PJ3)に対して通知する。
より具体的には、参照サマリ整合部124は、各プロジェクトPJ1〜PJ3に対して、参照サマリ反映部123によりサマリ結果と同一の設計データに変更された部分(要件データ、要素データ、又は依存関係データ)に関して、参照編集を取り消す取消(クリア)処理を実行した上で、参照データセットに対する参照データマージ処理を実行するように指示してもよい。これにより、通知先の各プロジェクトPJ1〜PJ3において、参照編集取消部27による取消処理が実行され、データセット参照部11、参照データマージ部12、及びデータ同期部13による処理が実行される。その結果、通知先の各プロジェクトPJ1〜PJ3のプロジェクトDB23には、サマリ先プロジェクトPJ0での参照サマリ反映部123による反映が考慮された最新の設計データが記憶される。
このような参照サマリ整合部124の処理により、通知を受けたプロジェクトPJ1〜PJ3側において、サマリ先プロジェクトPJ0の最新の設計データを自プロジェクトの設計データに反映させるといった処理(上述の参照編集の取消処理、及び参照データマージ処理)をスムーズに実行することが可能となる。その結果、各プロジェクトPJ1〜PJ3のユーザは、上位のプロジェクトPJ0において、下位のプロジェクトの設計データ(参照編集により変更された部分等)が反映(承認)されたことを把握することができる。
以上述べた設計支援システム1によれば、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ元プロジェクト(例えばプロジェクトPJ1,PJ2)の設計データとで共通のデータセットが、サマリ対象データセットとして抽出される。そして、サマリ元プロジェクトの設計データに基づいて、サマリ対象データセット以外のデータセットを含まないサマリ結果が生成される。つまり、データセット構成がサマリ先プロジェクトPJ0の設計データと同一であり、設計粒度がサマリ先プロジェクトPJ0の設計データの設計粒度と同等であるサマリ結果を得ることができる。即ち、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとの比較に適したサマリ結果を得ることができる。その結果、例えばサマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果とを比較することにより、サマリ先プロジェクトPJ0の設計内容とサマリ元プロジェクトの設計内容との差異を容易に把握することが可能となる。従って、サマリ先プロジェクトPJ0とサマリ元プロジェクトとの間でのすり合わせを効率的に行うことが可能となる。
[4.実施例(参照サマリ)]
続いて、自動車の設計開発に上述の設計支援システム1を適用する場合の参照サマリを用いた設計検証の実施例について説明する。ここでは、図39に示す各プロジェクト(車両企画PJ、エンジン設計PJ、燃費設計PJ、出力設計PJ、ピストン設計PJ、WP設計PJ)間での参照サマリを用いた設計検証について説明する。
[4−1.車両企画PJにおける検証]
車両企画PJにおいて、性能設計(燃費設計及び出力設計)の結果が、車両企画の設計粒度で検証される。具体的には、車両企画PJをサマリ先プロジェクト、燃費設計PJ及び出力設計PJをサマリ元プロジェクトとして、上述の参照サマリが実行される。具体的には、車両企画PJの設計支援システム1において、燃費設計PJの設計データ(図48参照)と出力設計PJの設計データ(図52参照)とについて、上述の設計データ取得部111、サマリ対象データセット抽出部112、サマリ実行部113による処理が実行される。これにより、車両企画PJの設計データ(図40参照)と同一の設計粒度のサマリ結果、即ち、要件データセットRS00,RS01,RS02と、要素データセットES00,ES01,ES02と、これらのデータセットに含まれる項目データ(要件データ又は要素データ)間の依存関係データから構成されるサマリ結果が、サマリ実行部113により出力される。
続いて、参照サマリ比較部114により、車両企画PJの設計データと上述のサマリ結果とが比較され、比較結果データが参照サマリ比較結果DB122に出力される。車両企画PJのユーザは、この比較結果データを設計データ提示部24等により確認することで、設計差分を車両企画PJの設計データに反映してもよいか否かを判断することができる。つまり、車両企画PJのユーザは、性能設計(燃費設計及び出力設計)の結果を受けて、車両企画の方針を変更するか否かを判断することができる。
車両企画PJのユーザは、設計差分を車両企画PJの設計データに反映してもよいと判断した場合には、例えば参照サマリ反映部123に対して所定のユーザ操作を実行することにより、参照サマリ反映部123に、車両企画PJの設計データを上述のサマリ結果と同一の設計データに更新させることができる。その後、参照サマリ整合部124により、車両企画PJの設計データ(又は当該設計データを参照編集して生成された設計データ)を参照する各プロジェクトに対する通知が実行される。その結果、各プロジェクトにおける設計データは、車両企画PJにおける設計データの変更(反映)が考慮された最新の設計データとなる。
[4−2.エンジン設計PJにおける検証]
エンジン設計PJにおいて、エンジン詳細設計(ピストン設計及びWP設計)の結果が、エンジン設計の設計粒度で検証される。具体的には、エンジン設計PJをサマリ先プロジェクト、ピストン設計PJ及びWP設計PJをサマリ元プロジェクトとして、上述の参照サマリが実行される。具体的には、エンジン設計PJの設計支援システム1において、ピストン設計PJの設計データ(図56参照)とWP設計PJの設計データ(図60参照)とについて、上述の設計データ取得部111、サマリ対象データセット抽出部112、サマリ実行部113による処理が実行される。これにより、エンジン設計PJの設計データ(図44参照)と同一の設計粒度のサマリ結果、即ち、要件データセットRS01,RS02と、要素データセットES01,ES11と、これらのデータセットに含まれる項目データ(要件データ又は要素データ)間の依存関係データから構成されるサマリ結果が、サマリ実行部113により出力される。
続いて、参照サマリ比較部114により、エンジン設計PJの設計データと上述のサマリ結果とが比較され、比較結果データが参照サマリ比較結果DB122に出力される。エンジン設計PJのユーザは、この比較結果データを設計データ提示部24等により確認することで、設計差分をエンジン設計PJの設計データに反映してもよいか否かを判断することができる。つまり、エンジン設計PJのユーザは、エンジン詳細設計(ピストン設計及びWP設計)の結果を受けて、エンジン設計の方針を変更するか否かを判断することができる。
エンジン設計PJのユーザは、設計差分をエンジン設計PJの設計データに反映してもよいと判断した場合には、例えば参照サマリ反映部123に対して所定のユーザ操作を実行することにより、参照サマリ反映部123に、エンジン設計PJの設計データを上述のサマリ結果と同一の設計データに更新させることができる。その後、参照サマリ整合部124により、エンジン設計PJの設計データ(又は当該設計データを参照編集して生成された設計データ)を参照する各プロジェクトに対する通知が実行される。その結果、各プロジェクトにおける設計データは、エンジン設計PJにおける設計データの変更(反映)が考慮された最新の設計データとなる。
[4−3.燃費設計PJにおける検証]
燃費設計PJにおいて、エンジン詳細設計(ピストン設計及びWP設計)の結果が、燃費設計の設計粒度で検証される。具体的には、燃費設計PJをサマリ先プロジェクト、ピストン設計PJ及びWP設計PJをサマリ元プロジェクトとして、上述の参照サマリが実行される。具体的には、燃費設計PJの設計支援システム1において、ピストン設計PJの設計データ(図56参照)とWP設計PJの設計データ(図60参照)とについて、上述の設計データ取得部111、サマリ対象データセット抽出部112、サマリ実行部113による処理が実行される。これにより、燃費設計PJの設計データ(図48参照)と同一の設計粒度のサマリ結果、即ち、要件データセットRS01,RS21と、要素データセットES01,ES11と、これらのデータセットに含まれる項目データ(要件データ又は要素データ)間の依存関係データから構成されるサマリ結果が、サマリ実行部113により出力される。
続いて、参照サマリ比較部114により、燃費設計PJの設計データと上述のサマリ結果とが比較され、比較結果データが参照サマリ比較結果DB122に出力される。燃費設計PJのユーザは、この比較結果データを設計データ提示部24等により確認することで、設計差分を燃費設計PJの設計データに反映してもよいか否かを判断することができる。つまり、燃費設計PJのユーザは、エンジン詳細設計(ピストン設計及びWP設計)の結果を受けて、燃費設計の方針を変更するか否かを判断することができる。
燃費設計PJのユーザは、設計差分を燃費設計PJの設計データに反映してもよいと判断した場合には、例えば参照サマリ反映部123に対して所定のユーザ操作を実行することにより、参照サマリ反映部123に、燃費設計PJの設計データを上述のサマリ結果と同一の設計データに更新させることができる。その後、参照サマリ整合部124により、燃費設計PJの設計データ(又は当該設計データを参照編集して生成された設計データ)を参照する各プロジェクトに対する通知が実行される。その結果、各プロジェクトにおける設計データは、燃費設計PJにおける設計データの変更(反映)が考慮された最新の設計データとなる。
[4−4.出力設計PJにおける検証]
出力設計PJにおいて、エンジン詳細設計(ピストン設計及びWP設計)の結果が、出力設計の設計粒度で検証される。具体的には、出力設計PJをサマリ先プロジェクト、ピストン設計PJ及びWP設計PJをサマリ元プロジェクトとして、上述の参照サマリが実行される。具体的には、出力設計PJの設計支援システム1において、ピストン設計PJの設計データ(図56参照)とWP設計PJの設計データ(図60参照)とについて、上述の設計データ取得部111、サマリ対象データセット抽出部112、サマリ実行部113による処理が実行される。これにより、出力設計PJの設計データ(図52参照)と同一の設計粒度のサマリ結果、即ち、要件データセットRS02,RS31と、要素データセットES01,ES11と、これらのデータセットに含まれる項目データ(要件データ又は要素データ)間の依存関係データから構成されるサマリ結果が、サマリ実行部113により出力される。
続いて、参照サマリ比較部114により、出力設計PJの設計データと上述のサマリ結果とが比較され、比較結果データが参照サマリ比較結果DB122に出力される。出力設計PJのユーザは、この比較結果データを設計データ提示部24等により確認することで、設計差分を出力設計PJの設計データに反映してもよいか否かを判断することができる。つまり、出力設計PJのユーザは、エンジン詳細設計(ピストン設計及びWP設計)の結果を受けて、出力設計の方針を変更するか否かを判断することができる。
出力設計PJのユーザは、設計差分を出力設計PJの設計データに反映してもよいと判断した場合には、例えば参照サマリ反映部123に対して所定のユーザ操作を実行することにより、参照サマリ反映部123に、出力設計PJの設計データを上述のサマリ結果と同一の設計データに更新させることができる。その後、参照サマリ整合部124により、出力設計PJの設計データ(又は当該設計データを参照編集して生成された設計データ)を参照する各プロジェクトに対する通知が実行される。その結果、各プロジェクトにおける設計データは、出力設計PJにおける設計データの変更(反映)が考慮された最新の設計データとなる。
続いて、図69を用いて、設計支援システム1の参照サマリに関する動作(一実施形態に係る設計支援方法を含む動作)を説明する。図69は、サマリ先プロジェクトPJ0において、指定された参照元プロジェクトに対する参照サマリに関する処理が実行される場合のフローを示す図である。まず、設計データ取得部111により、サマリ元プロジェクトとして指定された他プロジェクト(ここでは一例としてプロジェクトPJ1,PJ2)の設計データが取得される(ステップS201、設計データ取得ステップ)。
続いて、サマリ対象データセット抽出部112により、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データ及びサマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データに共通に含まれるデータセットがサマリ対象データセットとして抽出される(ステップS202、サマリ対象データセット抽出ステップ)。
続いて、サマリ実行部113により、サマリ元プロジェクトPJ1,PJ2の設計データに基づいて、サマリ対象データセット抽出部112により抽出されたサマリ対象データセット以外のデータセットを含まないサマリ結果が生成及び出力される(ステップS203、サマリ実行ステップ)。具体的には、サマリ実行部113は、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データと当該サマリ結果とを参照サマリ比較部114に出力する。なお、サマリ結果の生成は、上述した第1の例〜第3の例等に示した手順により実行される。
続いて、参照サマリ比較部114により、サマリ実行部113から出力されたサマリ先プロジェクトPJ0の設計データ及びサマリ結果が取得される。そして、参照サマリ比較部114により、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果とが比較され、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データとサマリ結果との間における項目データ(要件データ又は要素データ)及び依存関係データのそれぞれについての差分を示す比較結果データが出力される(ステップS204、比較ステップ)。
続いて、参照サマリ反映部123により、サマリ先プロジェクトPJ0のプロジェクトDB23に記憶されている設計データが、比較結果データに基づいてサマリ結果と同一の設計データに更新(反映)される(ステップS205、反映ステップ)。続いて、参照サマリ整合部124により、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データがサマリ結果と同一の設計データに更新されたことを示す通知情報が、サマリ先プロジェクトPJ0の設計データ(又は当該設計データを参照編集して生成された設計データ)を参照するプロジェクト(図30に示す例では、プロジェクトPJ1〜PJ3)に対して通知される(ステップS206、整合ステップ)。
続いて、図70を用いて、一実施形態に係る設計支援プログラムについて説明する。図70は、設計支援プログラムP2の機能構成(モジュール構成)を示すブロック図である。設計支援プログラムP2は、コンピュータシステムを設計支援システム1として機能させるためのプログラムである。特に、設計支援プログラムP2は、コンピュータシステムを、参照サマリに関する機能を有する設計支援システム1(図64参照)として機能させるためのプログラムである。図70に示すように、設計支援プログラムP2は、設計データ取得モジュールP21、サマリ対象データセット抽出モジュールP22、サマリ実行モジュールP23、参照サマリ比較モジュールP24、参照サマリ反映モジュールP25、及び参照サマリ整合モジュールP26を備える。設計データ取得モジュールP21、サマリ対象データセット抽出モジュールP22、サマリ実行モジュールP23、参照サマリ比較モジュールP24、参照サマリ反映モジュールP25、及び参照サマリ整合モジュールP26が実行されることにより実現される機能はそれぞれ、上述した設計支援システム1の設計データ取得部111、サマリ対象データセット抽出部112、サマリ実行部113、参照サマリ比較部114、参照サマリ反映部123、及び参照サマリ整合部124の機能と同様である。
設計支援プログラムP2は、例えばCD−ROM及びDVD等の記録媒体に記憶され、設計支援システム1として用いられるコンピュータシステムにより実行される。具体的には、当該コンピュータシステムを構成する各装置(情報処理サーバ10、情報処理端末20)は、例えばCD−ROMドライブ及びDVDドライブ等の記録媒体読取部を備えている。記録媒体読取部に記録媒体がセットされると、各装置は、記録媒体読取部から記録媒体に格納された設計支援プログラムP2にアクセス可能となる。そして、設計支援プログラムP2を各装置に実行させることによって、コンピュータシステムを、設計支援システム1として動作させることが可能となる。なお、設計支援プログラムP2は、搬送波に重畳されたデータ信号としてネットワークを介して提供されるものであってもよい。