JP2016037646A - Cu−Co−Ti系銅合金条及びその製造方法 - Google Patents

Cu−Co−Ti系銅合金条及びその製造方法 Download PDF

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康弘 岡藤
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Abstract

【課題】導電率や強度を維持しつつ、加工性に優れたCu−Co−Ti系銅合金条及びその製造方法並びに該銅合金板を用いた大電流用電子部品及び放熱用電子部品を提供する。【解決手段】Co:0.2〜2.0質量%,Ti:0.1〜1.8質量%を含有し、Co/Tiの質量比:1.1〜1.7であって、残部が銅および不可避的不純物からなり、0.2%耐力(YS)が550MPa以上、導電率が65%IACS以上、かつ曲げ軸が圧延方向と平行になるようにW曲げ試験を行ったとき、割れの発生しない最小曲げ半径(MBR)と板厚(t)との比(MBR/t)が1.0以下であるCu−Co−Ti系銅合金条である。【選択図】なし

Description

本発明は電子材料などの電子部品の製造に好適に使用可能なCu−Co−Ti系銅合金板及び通電用又は放熱用電子部品に関し、特に、電機・電子機器、自動車等に搭載される端子、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電子部品の素材として使用されるCu−Co−Ti系銅合金板、及び該銅合金板を用いた電子部品に関する。中でも、電気自動車、ハイブリッド自動車等で用いられる大電流用コネクタや端子等の大電流用電子部品の用途、又はスマートフォンやタブレットPCで用いられる液晶フレーム等の放熱用電子部品の用途に好適なCu−Co−Ti系銅合金板及び該銅合金板を用いた電子部品に関するものである。
電子機器の端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム、放熱板等の電気又は熱を伝えるための材料として、強度と導電率に優れた銅合金条が広く用いられている。ここで、電気伝導性と熱伝導性は比例関係にある。ところで、近年、電子機器のコネクタにおいて高電流化が進んでおり、良好な曲げ性を有し,55%IACS以上の導電率、550MPa以上の耐力を有することが必要と考えられている。また、はんだ性を確保するため、コネクタ材料には良好なめっき性やはんだ濡れ性が求められる。
一方、例えばスマートフォンやタブレットPCの液晶には液晶フレームと呼ばれる放熱部品が用いられている。このような放熱用途の銅合金板においても、高熱伝導率化が進んでおり、良好な曲げ性を有し、高強度を有することが必要と考えられている。このため、放熱用途の銅合金板においても、60%IACS以上の導電率、550MPa以上の耐力を有することが必要と考えられている。
しかしながら、60%IACS以上の導電率をNi-Ti系銅合金で達成することは難しく,Co-Si系銅合金、Co-Ti系銅合金の開発が進められてきた。Co-Si系銅合金やCo−Ti系銅合金は、CoSiやCoTi化合物の固溶量が少ないため、Ni-Ti系銅合金よりも導電率を高くすることができる。
このCo-Ti系銅合金として、リードフレーム用銅合金(特許文献1、2)が開示されている。
特開昭60-218440号公報(第1表の試料No.6) 特開昭62-211337号公報(第2表のサンプル1、2)
しかしながら、特許文献1記載のCo-Ti系銅合金の場合、導電率は70%IACS以上と高いものの、引張強さが550MPa未満であるため、耐力も550MPa未満となり、強度が十分とはいえない。この理由としては、特許文献1記載のCo-Ti系銅合金が溶体化処理を実施していないために強度が低いと考えられる。
又、特許文献2記載のCo-Ti系銅合金の場合、導電率は70%IACS以上と高いものの、溶体化処理を実施していないことから引張強さが550MPa未満であるため、耐力も550MPa未満となり、強度が十分とはいえない。
そして、特許文献1、2記載のいずれのCo-Ti系銅合金も、曲げ性(加工性)が十分ではなかった。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、導電率や強度を維持しつつ、加工性に優れたCu−Co−Ti系銅合金条及びその製造方法の提供を目的とする。さらには、本発明は、該銅合金板の製造方法、及び大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することをも目的とする。
本発明のCu−Co−Ti系銅合金条は、Co:0.2〜2.0質量%,Ti:0.1〜1.8質量%を含有し、Co/Tiの質量比:1.1〜1.7であって、残部が銅および不可避的不純物からなり、0.2%耐力(YS)が550MPa以上、導電率が65%IACS以上、かつ曲げ軸が圧延方向と平行になるようにW曲げ試験を行ったとき、割れの発生しない最小曲げ半径(MBR)と板厚(t)との比(MBR/t)が1.0以下である。
本発明のCu−Co−Ti系銅合金条において、Ni、Cr、Mg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be、B、Si、Zr、Al及びFeからなる群から選ばれる1種以上を合計0.01〜1.0質量%含有することが好ましい。
本発明のCu−Co−Ti系銅合金条の製造方法は、前記Cu−Co−Ti系銅合金条の製造方法であって、熱間圧延、第1の冷間圧延、850℃以上の温度での溶体化処理、時効処理、及び加工度10%以上の第2の冷間圧延、最終焼鈍をこの順で行う。
本発明の大電流用電子部品は、前記Cu−Co−Ti系銅合金条を用いてなる。
本発明の放熱用電子部品は、前記Cu−Co−Ti系銅合金条を用いてなる。
本発明によれば、導電率や強度を維持しつつ、加工性に優れたCu−Co−Ti系銅合金条及びその製造方法、並びに大電流用途又は放熱用途に好適な電子部品を提供することが可能である。この銅合金板は、端子、コネクタ、スイッチ、ソケット、リレー、バスバー、リードフレーム等の電子部品の素材として好適に使用することができ、特に大電流を通電する電子部品の素材又は大熱量を放散する電子部品の素材として有用である。
以下、本発明の実施形態に係るCu−Co−Ti系銅合金条について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
まず、銅合金条の組成の限定理由について説明する。
<Co及びTi>
Co及びTiは、時効処理を行うことによりCoとTiを含む微細な金属間化合物(例えば、CoTiを主体)の析出粒子を形成し、合金の強度を著しく増加させる。また、時効処理でのCoTi等の析出に伴い、導電性が向上する。ただし、Co濃度が0.2%未満の場合、またはTi濃度が0.1%未満の場合は、他方の成分を添加しても所望とする強度が得られない。また、Co濃度が2.0%を超える場合、またはTi濃度が1.8%を超える場合は鋳造時や熱間加工時に割れが生じ、製造が困難になる。
よって、Coの含有量を0.2〜2.0質量%とする。好ましくは、Coの含有量を0.2〜1.0質量%とする。同様に、Tiの含有量を0.1〜1.8質量%とする。好ましくは、Tiの含有量を0.12〜0.45質量%とする。
Co/Tiの質量比を1.1〜1.7とすると、析出硬化後の強度と導電率を共に向上させることができる。Co/Tiの質量比が1.1未満であるとCoTi等として析出しないTiの濃度が多くなって導電率が低下する。Co/Tiの質量比が1.7を超えるとCoTi等として析出しないCoの濃度が多くなって導電率が低下する。
さらに、Ni、Cr、Mg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be、B、Si、Zr、Al及びFeからなる群から選ばれる1種以上を合計0.01〜1.0質量%含有することが好ましい。これら元素は固溶強化や析出強化等により強度上昇に寄与する。これら元素の合計量が0.01質量%未満であると上記効果が得られない場合がある。又、これら元素の合計量が1.0質量%を超えると導電率が低下したり、熱間圧延で割れる場合がある。
本発明のCu−Co−Ti系銅合金条の厚みは特に限定されないが、例えば0.03〜0.60mmとすることができる。
<0.2%耐力(YS)及び導電率>
Cu−Co−Ti系銅合金条の0.2%耐力が550MPa以上、かつ導電率が65%IACS以上である。
銅合金条の0.2%耐力が550MPa未満であると強度が十分でなく、特に高電流化対応のコネクタ等に適さない。導電率が65%IACS未満であると電気伝導性及び熱伝導性が十分でない。
<(MBR/t)>
Cu−Co−Ti系銅合金条を曲げ軸が圧延方向と平行になるようにW曲げ試験を行ったとき、割れの発生しない最小曲げ半径(MBR)と板厚(t)との比(MBR/t)が1.0以下である。
銅合金条の(MBR/t)が1.0を超えると加工性が十分でなく、特に高電流化対応のコネクタ等に加工することが困難になることがある。
<製造>
Cu−Co−Ti系銅合金条を製造する条件として、インゴットを熱間圧延、第1の冷間圧延、溶体化処理(加熱とそれに続く水冷からなる処理)、時効処理、及び加工度10%以上の第2の冷間圧延、最終焼鈍をこの順で行う。このとき、溶体化処理を850℃以上で行うことで、その後の時効時に析出させるための元素を銅中に確実に固溶させられる。これにより、時効時の強度が向上し、0.2%耐力(YS)、導電率及び(MBR/t)を上記範囲とする合金条が得られる。
時効処理後に加工度10%以上の第2の冷間圧延を行うことで強度が上昇する。
第2の冷間圧延の加工度が10%未満の場合、上記した効果が得られない。第2の冷間圧延の加工度が95%を超える場合、曲げ加工性が低下する。第2の冷間圧延の加工度が10〜95%であると好ましい。
なお、第1の冷間圧延の加工度は、例えば80〜98%である。
その他の条件は、通常のCu−Co−Ti系銅合金条の製造条件と同等とすることができる。
電気銅を原料とし、大気溶解炉を用いて表1に示す組成の銅合金を溶製し、インゴットに鋳造した。このインゴットを850〜1000℃で熱間圧延を行ない、熱間圧延後の材料を適宜面削等を行って10mmの厚みとした。その後、第1の冷間圧延を加工度80〜98%で行い、その後、850〜1000℃で1〜60秒の加熱とそれに続く水冷を溶体化処理として行った。次に、時効処理を500〜700℃で1〜50時間行い、第2の冷間圧延を加工度10〜95%で行った。最後に350℃で60秒の最終焼鈍を行い、0.2mmの厚みの試料を製造した。
各試料につき、以下の評価を行った。
<0.2%耐力(YS)>
引張試験機により、JIS−Z2241に従い、圧延方向と平行な方向における0.2%耐力(YS)を測定した。
<導電率(%IACS)>
得られた試料の導電率(%IACS)を4端子法により測定した。
<曲げ性>
JIS−H3130に従って、Badway(曲げ軸が圧延方向と同一方向)のW曲げ試験を行い、割れの発生しない最小半径(MBR)と板厚(t)との比である(MBR/t)値を測定した。試料の幅は10mmとした。t=0.2mmである。
得られた結果を表1に示す。
Figure 2016037646
表1から明らかなように、Co,Tiの含有量、及びCo/Tiの質量比を所定の範囲として製造した各実施例の場合、0.2%耐力(YS)が550MPa以上、導電率が65%IACS以上、(MBR/t)が1.0以下となり、導電率や強度を維持しつつ、加工性が向上した。
一方、Co,Tiの含有量が所定の範囲未満となった比較例1の場合、0.2%耐力(YS)が550MPa未満となり、強度が劣った。
Co,Tiの含有量が所定の範囲を超えた比較例2の場合、熱間圧延で材料が割れ、製造ができなかった。
Co/Tiの質量比が所定の範囲を超えた比較例3の場合、及びCo/Tiの質量比が所定の範囲未満となった比較例4の場合、いずれも導電率が65%IACS未満に低下した。

Claims (5)

  1. Co:0.2〜2.0質量%,Ti:0.1〜1.8質量%を含有し、Co/Tiの質量比:1.1〜1.7であって、残部が銅および不可避的不純物からなり、
    0.2%耐力(YS)が550MPa以上、導電率が65%IACS以上、
    かつ曲げ軸が圧延方向と平行になるようにW曲げ試験を行ったとき、割れの発生しない最小曲げ半径(MBR)と板厚(t)との比(MBR/t)が1.0以下であるCu−Co−Ti系銅合金条。
  2. Ni、Cr、Mg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be、B、Si、Zr、Al及びFeからなる群から選ばれる1種以上を合計0.01〜1.0質量%含有する請求項1記載のCu−Co−Ti系銅合金条。
  3. 請求項1又は2に記載のCu−Co−Ti系銅合金条の製造方法であって、
    熱間圧延、第1の冷間圧延、850℃以上の温度での溶体化処理、時効処理、及び加工度10%以上の第2の冷間圧延、最終焼鈍をこの順で行うCu−Co−Ti系銅合金条の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載のCu−Co−Ti系銅合金条を用いた大電流用電子部品。
  5. 請求項1又は2に記載のCu−Co−Ti系銅合金条を用いた放熱用電子部品。
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