本明細書において、長さ方向の両側のうち、吸収性物品の中心を通って幅方向に延在する仮想中心線の近位側を「長さ方向の内側」と表現し、遠位側を「長さ方向の外側」と表現する場合がある。また、幅方向の両側のうち、吸収性物品の中心を通って長さ方向に延在する仮想中心線の近位側を「幅方向の内側」と表現し、遠位側を「幅方向の外側」と表現する場合がある。また、厚さ方向の両側のうち、着用者の肌側に位置する厚さ方向の一方側を「肌側」といい、着用者の着衣側に位置する厚さ方向の他方側を「着衣側」という場合がある。
以下、本発明の吸収性物品に包含される態様について説明する。
本発明の一態様(以下、「態様1」という。)に係る吸収性物品は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸液性の吸収体とを備え、互いに直交する長さ方向、幅方向及び厚さ方向を有する吸収性物品であって、前記トップシートは、前記長さ方向に延在する畝部が形成された肌側表面を有する不織布であり、前記吸収体は、第1吸収層と、該第1吸収層の最小幅よりも小さい最大幅を有し且つ前記第1吸収層よりも前記トップシート側又は前記バックシート側に位置する第2吸収層とによって構成されており、前記吸収性物品は、透液性の第1シートと、透液性の第2シートと、前記第1シート及び前記第2シートの間に配置された吸収性ポリマー層とを有する吸液性シートであって、前記トップシート及び前記吸収体の間に配置された吸液性シートをさらに備え、前記吸収性物品の幅方向において、前記吸収性ポリマー層の両端縁は、前記第1吸収層の両端縁よりも内側にあり且つ前記第2吸収層の両端縁よりも外側にある、前記吸収性物品である。
この態様1に係る吸収性物品は、吸収体が、第1吸収層と該第1吸収層の最小幅よりも小さい最大幅を有する第2吸収層とによって構成され、且つ前記吸収性物品の幅方向において前記第2吸収層の両端縁が前記第1吸収層の両端縁よりも内側にあるという構成を備えているので、吸収体の前記幅方向における両端縁が、前記第1吸収層の両端縁のみによって構成され(すなわち、低坪量部分として構成され)、当該両端縁の厚みが各吸収層の重なる部分(すなわち、高坪量部分)よりも薄くなっているため、前記吸収体の厚み(特に、高坪量部分の厚み)に起因する違和感が着用者の両大腿部の内側部分又は股間部に生じにくい。
さらに、態様1に係る吸収性物品は、前記トップシートと前記吸収体との間に、幅方向の両端縁が前記第1吸収層の両端縁よりも内側にあり且つ前記第2吸収層の両端縁よりも外側にある吸液性シートを備えることで、吸収性物品の吸収性能(特に、吸収速度)を向上させつつ、前記第1吸収層及び前記第2吸収層の各両端縁によって形成される吸収体の厚さの差(段差)を着用者に感得させにくくすることができる。特に、吸収性ポリマー層が尿などの液体を吸収して膨潤した後においては、当該吸収性ポリマー層が緩衝層として機能するため、上述の吸収体の段差をより一層着用者に感得させにくくすることができ、吸収性物品を長時間使用したとしても良好な装着感を維持することができる。なお、前記吸収性ポリマー層は、吸収性物品に提供された尿などの液体を吸収すると膨潤して厚みが増大するが、態様1に係る吸収性物品は、前記吸収性ポリマー層の幅方向の両端縁が前記第1吸収層の両端縁よりも内側にあることにより、上述のように吸収性ポリマー層の厚みが増大したとしても、吸収性物品の幅方向の両端部において厚みの薄い状態(すなわち、低坪量部分)を維持することができ、前記吸収性ポリマー層の厚みの増大に伴う違和感が着用者の両大腿部の内側部分又は股間部に生じにくい。
また、態様1に係る吸収性物品の吸収体は、幅方向において、第1吸収層及び第2吸収層が重なる高坪量部分と、第1吸収層及び第2吸収層が重ならない低坪量部分との間で吸収体の強度(例えば、曲げ強度など)が異なることにより、前記高坪量部分と前記低坪量部分との間の境界を折れ起点(長さ方向に延びる折り曲げ線)として幅方向に折れ曲がりやすくなっていることに加え、トップシートにおいても、前記長さ方向に延在する畝部が形成されていることによって当該畝部と非畝部(例えば、溝部)との間の境界を折れ起点(長さ方向に延びる折り曲げ線)として幅方向に折れ曲がりやすくなっているため、前記吸収体及び前記トップシートが、一体となって着用者の股間部の形状に合わせてフィットしやすく、尿などの液体の液漏れを生じにくくすることができる。
したがって、態様1に係る吸収性物品は、上述の各効果があいまって、従来の吸収性物品では達成し得なかった優れた装着感を、長時間に亘って着用者に提供することができる。
態様1に係る吸収性物品の好ましい一態様(以下、「態様2」という。)として、前記吸収性物品は、長さ方向において、前記第1吸収層の両端縁が前記第2吸収層の両端縁よりも外側又は内側にあり、前記吸収性ポリマー層の両端縁が前記第1吸収層及び前記第2吸収層の各両端縁よりも内側にあってもよい。
この態様2に係る吸収性物品は、長さ方向において、前記第1吸収層の両端縁が前記第2吸収層の両端縁よりも外側又は内側にあるという構成を備えているので、吸収体の前記長さ方向における両端縁が、前記第1吸収層又は前記第2吸収層の両端縁のみによって構成され(すなわち、低坪量部分として構成され)、当該両端縁の厚みが各吸収層の重なる部分(すなわち、高坪量部分)よりも薄くなっているため、前記吸収体の厚み(特に、高坪量部分の厚み)に起因する違和感が着用者の腹側部及び背側部に生じにくい。
さらに、態様2に係る吸収性物品は、該吸収性物品に供給された尿などの液体が吸液性シート内の吸収性ポリマー層に吸収されると、吸収性ポリマー層の膨潤によって当該吸収性ポリマー層の厚みが増大するが、前記吸収性ポリマー層の前記長さ方向の両端縁が前記第1吸収層及び前記第2吸収層の前記長さ方向の各両端縁よりも内側に位置していることにより、上述のように吸収性ポリマー層の厚みが増大したとしても、吸収性物品の長さ方向の両端部において厚みの薄い状態(すなわち、低坪量部分)を維持することができ、前記吸収性ポリマー層の厚みの増大に伴う違和感が着用者の腹側部及び背側部に生じにくい。
また、態様2に係る吸収性物品の吸収体は、長さ方向において、第1吸収層及び第2吸収層が重なる高坪量部分と、第1吸収層及び第2吸収層が重ならない低坪量部分との間で吸収体の強度(例えば、曲げ強度など)が異なることにより、前記高坪量部分と前記低坪量部分との間の境界を折れ起点(幅方向に延びる折り曲げ線)として長さ方向に折れ曲がりやすくなっているが、上記したように前記トップシートは、前記長さ方向に延在する畝部が形成されていることによって当該畝部と非畝部との間の境界を折れ起点(長さ方向に延びる折り曲げ線)として幅方向に折れ曲がりやすくなっているため、当該トップシートによって前記吸収体が長さ方向に折れ曲がるのを抑制することができ、吸収性物品の着用時に、吸収体が長さ方向に折れ曲がった状態で着用されることに起因する液漏れや着用者の違和感を、より一層低減することができる。
したがって、態様2に係る吸収性物品は、より優れた装着感を着用者に提供することができる。
態様1又は態様2に係る吸収性物品の好ましい一態様(以下、「態様3」という。)として、前記吸収性物品は、前記第1吸収層の前記長さ方向の両端縁が、前記第2吸収層の前記長さ方向の両端縁よりも外側にあり、前記第2吸収層が、前記第1吸収層よりも前記バックシート側に位置するものであってもよい。
この態様3に係る吸収性物品は、前記第1吸収層の長さ方向の両端縁が、前記第2吸収層の長さ方向の両端縁よりも外側にあり、前記第2吸収層が、前記第1吸収層よりも前記バックシート側に位置するという構成を備えているので、吸収体のトップシート側の面が前記第1吸収層のトップシート側の面によって形成されて、前記第1吸収層及び前記第2吸収層の前記幅方向及び前記長さ方向のサイズ差に起因する吸収体の段差が、吸収体のトップシート側には形成されず、バックシート側に形成されるため、当該段差に起因する着用者の違和感を、より一層生じにくくすることができる。
態様1〜3のいずれかに係る吸収性物品の好ましい一態様(以下、「態様4」という。)として、前記吸収性物品は、前記第1吸収層の厚さが前記第2吸収層の厚さよりも大きいものであってもよい。
この態様4に係る吸収性物品は、前記第1吸収層の厚さが前記第2吸収層の厚さよりも大きいため、前記第1吸収層の厚さが前記第2吸収層の厚さよりも小さいものと比べて、吸収体の段差の程度(すなわち、段差の高さ)が小さくなり、当該段差に起因する着用者の違和感を、より一層生じにくくすることができる。
態様1〜4のいずれかに係る吸収性物品の好ましい一態様(以下、「態様5」という。)として、前記吸収性物品は、前記不織布の湿潤時厚さが、前記不織布の乾燥時厚さの85%以上であってもよい。
この態様5に係る吸収性物品は、不織布の湿潤時厚さが乾燥時厚さの85%以上であるので、トップシートが、吸収性物品に供給された尿などの液体によって湿潤状態にある場合であっても、前記トップシートに形成された畝部の形状が維持されやすく、上述の吸収体の段差又は低坪量部分の折れ曲がりに起因する着用者の違和感を低減することができる。
さらに、前記トップシートに形成された畝部の形状が維持されると、該トップシート内の空隙を確保することができるため、態様5に係る吸収性物品は、着用者が高齢者や疾病者等の場合であっても、当該高齢者や疾病者等の尿に多く含まれる微小な固形成分(例えば、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シュウ酸カルシウム結晶、上皮細胞等)によってトップシート内の尿の流路が閉塞しにくく、トップシートの透液性を長時間に亘って持続させることができる。
したがって、態様5に係る吸収性物品は、より優れた装着感を着用者に提供することができるとともに、吸収性物品の吸収性能を長時間に亘って持続させることができる。
なお、本発明の吸収性物品の種類及び用途は特に限定されるものではない。吸収性物品としては、例えば、尿取りパッド、使い捨てオムツ、生理用ナプキン、パンティーライナー等の衛生用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。本発明の吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されるものではなく、例えば、着用者の液状排泄物(例えば、尿、水様便、経血等)が挙げられる。
以下、図1〜図5に基づいて、本発明に係る吸収性物品の一実施形態である尿取りパッド100を説明する。図1は、尿取りパッド100の平面図であり、図2は、尿取りパッド100の分解斜視図であり、図3は、図1のA−A線端面図であり、図4は、図1のB−B線端面図であり、図5は、トップシート120の一部拡大斜視図である。
尿取りパッド100は、伸展状態において、互いに直交する長さ方向X、幅方向Y及び厚さ方向Zを有する。
尿取りパッド100は、肌側表面121を有する透液性のトップシート120と、着衣側表面131を有する不透液性のバックシート130と、トップシート120及びバックシート130の間に配置された吸液性の吸収体140とを備える。
尿取りパッド100は、長さ方向Xに並ぶ腹側部111、股間部112及び背側部113を有する。尿取りパッド100が着用される際、腹側部111は着用者の腹部に当てられ、股間部112は着用者の股間部に当てられ、背側部113は着用者の尻部及び/又は背部に当てられる。尿取りパッド100の長さは、通常350〜880mm、幅は通常160〜460mmである。
尿取りパッド100は、トップシート120の肌側表面121が着用者の肌側に位置し、バックシート130の着衣側表面131が着用者の着衣側に位置するように着用される。尿取りパッド100は、好ましくは、後述する外装体200に装着された状態で着用される。尿取りパッド100の平面視形状は、長さ方向Xの略中央がくびれた瓢箪状であるので、尿取りパッド100のくびれた部分が着用者の股間にフィットしやすい。着用者から排泄された尿は、トップシート120を通じて吸収体140に浸透し、吸収体140で吸収及び保持される。吸収体140で吸収及び保持される尿の漏れは、バックシート130によって防止される。
トップシート120として使用される透液性シートは、不織布である。不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)不織布等)等が挙げられるが、好ましくはエアスルー不織布である。トップシート120として使用される不織布の坪量は、透液性、肌触り等を考慮して適宜調整される。
トップシート120の肌側表面121には、畝部122が形成されている。畝部122は、長さ方向Xに延在し、幅方向Yに所定間隔で並んでおり、隣り合う2つの畝部122の間には1つの溝部123が位置する形成されている。すなわち、肌側表面121には、長さ方向Xに延在する複数の畝部122と、長さ方向Xに延在する複数の溝部123とからなる畝溝構造124が形成されている。なお、図1及び図2において、1つの畝部122は、隣り合う2本の線の間の領域として示されており、1つの溝部123は1本の線によって示されている。また、図の簡略化のため、図1では、肌側表面121に形成された畝溝構造124の一部が省略されている。また、図1に示されるB−B線は、畝部122を通る線であるため、B−B線端面図(図4)には溝部123が現れない。
畝溝構造124が、トップシート120のうち厚さ方向Zにおいて吸収体140と重なる部分の略全体に形成されている本実施形態は、トップシート120のうち畝溝構造124が形成された部分が厚さ方向Zにおいて吸収体140の高坪量部分及び低坪量部分の両方と重なっている(すなわち、畝溝構造124は高坪量部分及び低坪量部分を跨ぐように配置されている)ので、吸収体における坪量差若しくは厚さの差(段差)又は吸収体の低坪量部分の折れ曲がりに起因する着用者の違和感を軽減できる点で有利である。ただし、畝溝構造124の配置は、高坪量部分及び低坪量部分を跨ぐ範囲において変更可能である。
畝部122及び溝部123が長さ方向Xに略直線状に連続して延在する本実施形態は、トップシート120に供給された尿が畝部122及び溝部123に沿って長さ方向Xに広がりやすく、幅方向Yへの尿の広がり及びこれに起因する尿取りパッド100からの尿の漏れを防止できる点で有利である。また、本実施形態は、トップシート120に形成された畝部122と溝部123との間の境界を折れ起点(長さ方向Xに延びる折り曲げ線)として、トップシート120が幅方向Yに折れ曲がりやすいため、後述する吸収体140とともにトップシート120が、着用者の股間部の形状に合わせてフィットしやすく、尿などの液体の液漏れを生じにくくすることができるという点でも有利である。ただし、畝部122及び溝部123の形態は変更可能である。変更例としては、例えば、畝部122及び溝部123が幅方向Yに延在し、長さ方向Xに並ぶ実施形態、畝部122及び溝部123が方向を変化させながら(例えば、波状)延在する実施形態、畝部122及び溝部123が長さ方向Xに断続的に延在する実施形態等が挙げられる。
畝部122の表面は曲面であり、畝部122の断面形状は表面に向かって略逆U字型形状である。ただし、畝部122の断面形状は変更可能である。変更例としては、例えば、畝部122の断面形状が台形状、三角状等である実施形態が挙げられる。本実施形態を含め、畝部122が頂部に向けて先細りとなる実施形態は、尿取りパッド100に加えられた力(例えば、着用者の体圧)によって畝部122が潰れても、溝部123の空間を維持できる点で有利である。
畝部122は、厚さT1を有し、溝部123は厚さT2を有する。畝部122の厚さT1は、通常0.3〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.4mm、さらに好ましくは0.8〜1.2mmであり、溝部123の厚さT2は、通常0.1〜0.5mm、好ましくは0.2〜0.4mm、さらに好ましくは0.2〜0.3mmである。畝部及び溝部の厚さの測定は、尿取りパッドから切り出した100mm×100mmのトップシートサンプルと、レーザー変位計(例えば、キーエンス株式会社製 高精度2次元レーザー変位計LJ−Gシリーズ(型式:LJ−G030))とを使用して、次のように非接触方式で実施される。トップシートサンプルを水平の測定台の上に置き、異なる5つの畝部について、測定台からの変位をレーザー変位計で測定し、5つの測定値の平均値を畝部の厚さ(mm)とする。同様に、異なる5つの溝部について、測定台からの変位をレーザー変位計で計測し、5つの測定値の平均値を溝部の厚さ(mm)とする。
畝部122は幅W1を有し、溝部123は幅W2を有する。畝部122の幅W1は、通常2.0〜5.0mm、好ましくは3.0〜4.0mmであり、溝部123の幅W2は、通常1.0〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.0mmである。隣り合う2つの畝部122の間隔は、通常、溝部の幅W2と等しく、隣り合う2つの溝部123の間隔は、通常、畝部122の幅と等しい。畝部122の幅W1は、無加圧状態におけるトップシート120の平面写真又は平面画像に基づいて、畝部122と、その両側に位置する2つの溝部123との境界線間の距離として測定される。溝部123の幅W2も同様である。
本実施形態では、畝部122の厚さ及び幅がどの畝部でも略同一であるが、他の畝部とは厚さ又は幅が異なる畝部が存在してもよい。溝部122の厚さ及び幅についても同様である。
トップシート120として使用される不織布は、当該不織布のうち畝部122における厚さ方向配向繊維の含有率が、畝部122以外の部分(例えば、溝部123)における厚さ方向配向繊維の含有率よりも大きいものが好ましい。ここで、「厚さ方向配向繊維」は、厚さ方向Zに対して+45度〜−45度の角度で配向している繊維である。畝部122における厚さ配向繊維の含有率は、好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。畝部122における厚さ配向繊維の含有率と、不織布のうち畝部122以外の部分(例えば、溝部123)における厚さ方向配向繊維の含有率との差は、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。なお、畝部122における厚さ配向繊維の含有率の上限は100%である一方、不織布のうち畝部122以外の部分(例えば、溝部123)における厚さ方向配向繊維の含有率の下限は0%であるので、両者の差の上限は100%である。
不織布の所定部分における厚さ方向配向繊維の含有率の測定方法は、以下のとおりである。
(1)不織布を切断し、不織布サンプルを作製する。
(2)株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−100を使用して、不織布サンプルの切断面に対して垂直の方向からの拡大画像を撮影する。拡大画像は、50本以上の繊維の測定が可能となるような倍率に拡大された画像であり、拡大倍率は、例えば20〜50倍である。拡大画像の撮影の際、不織布サンプルの切断面の最も手前の繊維(イレギュラーに手前に飛び出した繊維を除く)にピントを合わせ、撮影深度(奥行き)を設定する。拡大画像は、3D画像としてPC画面上に作成される。
(3)3D画像を2D画像に変換し、2D画像上に、不織布サンプルの厚さ方向に平行に延在する複数の線を引き、不織布サンプルの厚さ方向に対して+45度〜−45度の角度で配向する繊維の本数をカウントする。
(4)カウントした繊維の本数の、測定範囲内の全繊維の本数に対する割合を計算する。
(5)(1)〜(4)を数回(例えば3〜5回)繰り返し、その平均値を厚さ方向配向繊維の含有率とする。
トップシート120として使用される不織布の湿潤時厚さは、不織布の乾燥時厚さの85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。トップシート120として使用される不織布の湿潤時厚さが乾燥時厚さの85%以上であると、トップシート120が、尿取りパッド100(吸収性物品)に供給された尿などの液体によって湿潤状態にある場合であっても、トップシート120に形成された畝部122の形状が維持されやすいため、後述する吸収体140の第1吸収層140a及び第2吸収層140bのサイズ差によって形成される段差又は吸収体140の低坪量部分の折れ曲がりに起因する着用者の違和感を低減することができるという点で有利である。さらに、このようにしてトップシート120に形成された畝部122の形状が維持されると、トップシート120内の空隙を確保することができるため、尿取りパッド100の着用者が高齢者や疾病者等の場合であっても、当該高齢者や疾病者等の尿に多く含まれる微小な固形成分(例えば、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シュウ酸カルシウム結晶、上皮細胞等)によってトップシート120内の尿の流路が閉塞しにくく、トップシート120の透液性を長時間に亘って持続させることができる。
不織布の乾燥時厚さ及び湿潤時厚さの測定方法は、以下のとおりである。なお、不織布の各種パラメータの測定には、状態調節した不織布が使用される。不織布の状態調節は、乾燥状態にある不織布を、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)において24時間以上保存することにより実施される。乾燥状態にある不織布は、水分率が通常12%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下である不織布である。
[乾燥時厚さ]
厚さ計(例えば、株式会社大栄科学精器製作所製FS−60DS,測定子面積15cm2)を用いて、状態調節後の不織布の異なる3つの部位(厚さ計FS−60DSを使用する場合、各部位の面積は15cm2)を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定する。10枚の不織布のそれぞれについて同様の測定を行い、合計30個の測定値の平均値を不織布の乾燥時厚さとする。
[湿潤時厚さ]
状態調節後の不織布から切り出された10個の試験片(長さ10mm×幅10mm)を20℃の蒸留水に1時間浸漬する。次いで、厚さ計(例えば、株式会社大栄科学精器製作所製FS−60DS,測定子面積15cm2)を用いて、各試験片の異なる3つの部位(厚さ計FS−60DSを使用する場合、当該部位の面積は15cm2)を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定する。合計30個の測定値の平均値を不織布の湿潤時厚さとする。
トップシート120として使用される不織布の坪量は、好ましくは18〜40g/m2、さらに好ましくは25〜35g/m2である。不織布の坪量が18〜40g/m2の範囲内にあると、不織布が湿潤状態となっても乾燥時の厚さや形状が維持されやすく、例えば、不織布の乾燥時厚さの85%以上の湿潤時厚さを実現しやすい。さらに、不織布の乾燥時厚さが0.6〜1.6mm、好ましくは0.8〜1.4mmの範囲内であると、不織布の乾燥時の厚さや形状がより維持されやすく、例えば、不織布の乾燥時厚さの85%以上、更には90%以上の湿潤時厚さをより容易に実現することができる。
不織布の坪量の測定方法は、次のとおりである。状態調節後の不織布から切り出された3個の試験片(10mm×10mm)の質量を直示天秤(例えば、研精工業株式会社製 電子天秤HF−300)で測定し、3個の試験片の質量の平均値から算出された不織布の単位面積当たりの質量(g/m2)を、不織布の坪量とする。
畝溝構造124が形成された不織布は、例えば、熱可塑性樹脂繊維を含有するウェブに畝溝構造を形成した後、加熱処理してウェブ中の熱可塑性樹脂繊維同士の交差部分を熱融着させることにより製造することができる。なお、エアスルー不織布を製造する場合、加熱処理は、ウェブに対して熱風を吹き付けることにより実施される。
ウェブに含有される熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。
熱可塑性樹脂繊維は、1種類の熱可塑性樹脂で構成されてもよいが、2種類以上の熱可塑性樹脂を含有する複合繊維であることが好ましい。好ましい複合繊維は、芯鞘型複合繊維である。芯鞘型複合繊維の鞘成分を形成する熱可塑性樹脂としては、融点が芯成分を形成する熱可塑性樹脂の融点よりも低い熱可塑性樹脂が選択される。
ウェブに畝溝構造を形成する方法としては、例えば、特開2008−25079号公報、特開2008−23326号公報、特開2009−30218号公報等に記載の方法が挙げられる。これらの方法によれば、ウェブを通気性支持部材(例えば、網状支持部材)上に載置し、通気性支持部材を所定方向に移動させながら、ウェブの上面に連続的に気体(通常はエア)を噴射することにより、ウェブに畝溝構造を形成することができる。なお、ウェブの下面は、通気性支持部材の形状に沿った形状となる。例えば、網状支持部材のウェブ載置面が平坦である場合には、ウェブの下面は略平坦となる(したがって、不織布の下面も略平坦となる)。
ウェブの上面のうち、気体が噴射された領域には、通気性支持部材の移動方向に延在する溝部が形成されるとともに、隣り合う2つの溝部の間に畝部が形成される。この際、気体が噴射された領域の繊維が溝部の両側に移動するので、畝部の坪量は、通常、溝部の坪量よりも高くなる。また、通気性支持部材の不通気部(例えば、ワイヤ)に衝突して跳ね返された気体によってウェブ中の繊維が巻き上がり、ウェブに形成される畝溝構造のうち、畝部における厚さ方向配向繊維の含有率が、その他の部分(例えば、溝部)における厚さ方向配向繊維の含有率よりも大きくなる。畝部及び溝部の数、間隔、坪量、繊維密度、厚さ方向配向繊維の含有率等は、ノズルの数、口径及びピッチ、ノズルから噴射される気体の温度及び噴射量、ウェブのテンション等を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
図12及び図13は、畝溝構造124が形成された不織布を製造するための不織布製造装置の一実施形態を説明するための図である。図12(A)は、不織布製造装置300の全体図であり、図12(B)は、不織布製造装置300の噴射部330の拡大斜視図であり、図13は、噴射部330から噴射された気体の、ウェブWに対する作用を説明するための図である。
不織布製造装置300は、ウェブWを支持する通気性支持部材310と、通気性支持部材310を所定方向Fに移動させるコンベア320と、通気性支持部材310に支持されたウェブWの表面に、気体を噴射する噴射部330と、気体噴射処理後のウェブWを加熱処理するヒータ部340とを備える。
通気性支持部材310は、不通気部である所定太さの複数のワイヤが織り込まれることにより形成された網状支持部材である。通気性支持部材310には、複数のワイヤが所定間隔を空けて織り込まれることにより、通気部である複数の孔部が形成されている。孔部は、噴射部330から噴射された気体Gを下方に通気する。
コンベア320は、通気性支持部材310を支持する通気性ベルト部321と、通気性ベルト部321を所定方向に回転させる回転部322,323とを備える。
噴射部330は、送気管331を介して不図示の送気部に通気可能に連結されている。噴射部330には、複数の噴射口332が所定間隔で形成されている。不図示の送気部から送気管331を介して噴射部330に送気された気体Gは、噴射部330に形成された複数の噴射口332から、通気性支持部材310に支持されたウェブWの上面に連続的に噴射される。通気性支持部材310を通り抜けた気体Gは、噴射部330の下方に配置された吸気部350によって吸引される。
噴射口332から噴射された気体Gが通気性支持部材310の不通気部(ワイヤ)に衝突して跳ね返されることにより、ウェブW中の繊維が巻き上がり、ウェブWの厚さ方向に対する配向性が向上する(図13参照)。これにより、ウェブWに形成される畝溝構造のうち、畝部における厚さ方向配向繊維の含有率が、溝部における厚さ方向配向繊維の含有率よりも大きくなる。
噴射口332から噴射される気体Gの温度は、常温であってもよいが、畝溝構造の成形性の向上の点から、ウェブWを構成する熱可塑性樹脂繊維の軟化点以上であって、融点の+50℃〜−50℃の範囲であることが好ましい。
通気性支持部材310に支持されたウェブWは、気体噴射処理の後、ヒータ部340によって加熱処理される。通気性支持部材310に支持されたウェブWは、ヒータ部340の内部に形成される加熱空間を所定時間の滞留をもって連続的に移動する。ヒータ部340での加熱処理により、ウェブWに形成された畝溝構造が保持された状態で、ウェブW中の熱可塑性樹脂繊維同士の交差部分が熱融着し、畝溝構造124が形成された不織布が製造される。
トップシート120として使用される不織布は、肌側表面121を有する第1繊維層と、第1繊維層よりも吸収体140側に位置する第2繊維層とを有することが好ましい。
第2繊維層における平均繊維径は、第1繊維層における平均繊維径よりも大きいことが好ましい。第2繊維層における平均繊維径が第1繊維層における平均繊維径よりも大きいと、不織布が湿潤状態となっても乾燥時の厚さや形状(特に、畝部の形状)がより維持されやすくなる。第1繊維層における平均繊維径は、好ましくは1.3〜3.3dtexであり、第2繊維層における平均繊維径は、好ましくは2.3〜4.4dtexである。
第1繊維層及び第2繊維層における平均繊維径の測定方法は、例えば、次のとおりである。不織布の第1繊維層側表面及び第2繊維層側表面を電子顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス社製VE−8800)で300倍に拡大し、拡大画像中に存在する繊維の繊維径(2点間距離)を測定する。任意の30本の繊維について同様の測定を行い(n=30)、平均値を求める。この平均値を不織布の第1繊維層及び第2繊維層における平均繊維径とする。1つの拡大画像に数本(例えば、3〜5本程度)の繊維しか映らない場合、電子顕微鏡で拡大する部位を変えて、拡大画像を複数回撮影し、n=30とする。
第1繊維層における平均繊維長は、好ましくは30〜55mmであり、第2繊維層における平均繊維長は、好ましくは30〜55mmである。なお、平均繊維長は、重さ加重平均繊維長を意味する。重さ加重平均繊維長は、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off−line)]により、L(w)値として測定される。
第1繊維層及び第2繊維層は、同芯芯鞘型複合繊維を含有することが好ましい。第2繊維層は偏芯芯鞘型複合繊維を含有し、第1繊維層は偏芯芯鞘型複合繊維を含有しないことが好ましい。各繊維層をこのように構成することで、不織布が湿潤状態となっても乾燥時の厚さや形状(特に、畝部の形状)がより維持されやすくなる。第2繊維層が偏芯芯鞘型複合繊維を含有する場合、その含有量は、好ましくは第2繊維層の10質量%〜100質量%、さらに好ましくは第2繊維層の50質量%〜100質量%である。なお、同芯芯鞘型複合繊維は、加熱に起因するスパイラル状の捲縮を発現しにくい一方、偏芯芯鞘型複合繊維は、加熱に起因するスパイラル状の捲縮を発現しやすい。
また、第1繊維層は、耐久親水性を有する繊維で構成され、第2繊維層は、耐久親水性を有する繊維と、非耐久親水性を有する繊維とで構成されていることが好ましい。上記繊維の化学的性質と、上述の不織布の特定の構造とを組み合わせることにより、吸収性物品が漏れにくくなる。
上記のように、第1繊維層が耐久親水性を有する繊維を含んでいると、トップシートの表面に供給された高齢者や疾病者等の尿は、第1繊維層の内部に引き込まれやすい。そして、第2の繊維層が耐久親水性を有する繊維と非耐久親水性を有する繊維とを含んでいると、上述のように第1繊維層に引きこまれた尿が、第2繊維層に接触して該第2繊維層に含まれる非耐久親水性を有する繊維の非耐久親水性成分とともに、高齢者や疾病者等の尿に多く含まれる微小な固形成分を保持したまま、吸収体に迅速に移行する傾向がある。
さらに、上記第2繊維層では、尿の吸収回数が増えるにつれ、非耐久親水性成分が尿とともに吸収体に移行するので、非耐久親水性を有する繊維を構成する樹脂(熱可塑性樹脂)が露出するようになる。この熱可塑性樹脂は、非耐久親水性成分よりも疎水性であり、尿に含まれる前記固形成分は、第2繊維層内の繊維に付着しにくく、吸収体に移行しやすい傾向がある。これは、尿に含まれる前記固形成分の表面が親水性を有する傾向があるためである。
なお、第2繊維層に含まれる、耐久親水性を有する繊維は、吸収性物品が繰り返し尿を吸収した際に、尿を第1繊維層から第2繊維層に引き込む役割を有する。第2繊維層が耐久親水性を有する繊維を含まない場合には、尿の吸収回数が増えるにつれ、第2繊維層において、繊維を構成する樹脂(熱可塑性樹脂)が露出し、ひいては第2繊維層が疎水性を呈するようになり、第2繊維層が尿を引き込みにくくなる。
また、第2繊維層が、非耐久親水性を有する繊維を含まない場合、例えば、第2繊維層が耐久親水性を有する繊維のみを含む場合などは、トップシートの表面に供給された尿が、第1繊維層及び第2繊維層に引き込まれやすいものの、第1繊維層及び第2繊維層に留まりやすいため、第1繊維層及び第2繊維層に引き込まれた尿が吸収体に移行しにくい傾向がある。また、尿に含まれる前記固形成分は、耐久親水性を有する繊維に付着しやすいため、トップシートが前記固形成分で目詰まりしやすい傾向がある。
なお、本明細書において、「耐久親水性を有する繊維」は、後述の初期親水性評価試験における評点が45/50以上であり且つ後述の耐久親水性評価試験における評点が45/50以上である繊維と定義される。
また、本発明の吸収性物品において、上述の第1繊維層及び/又は第2繊維層は、耐久親水性を有する繊維を2種以上含むことができる。その場合には、初期親水性評価試験の評点と、耐久親水性評価試験の評点との差が小さい方が、耐久親水性がより高いと評価する。
また、本明細書において、「非耐久親水性を有する繊維」は、後述の初期親水性評価試験における評点が45/50以上であり且つ後述の耐久親水性評価試験における評点が45/50未満である繊維と定義される。
さらに、本発明の吸収性物品において、上記第2繊維層は、非耐久親水性を有する繊維を2種以上含むことができる。その場合には、初期親水性評価試験の評点と、耐久親水性評価試験の評点との差が大きい方が、非耐久親水性がより高い、すなわち、耐久親水性がより低いと評価する。
[初期親水性評価試験]
(1a)評価すべき繊維をカード機に通してウェブを形成し、該ウェブから坪量30g/m2の不織布を製造し、当該不織布から10cm×10cmのサンプルを切り出す。
(1b)上記サンプルを、12cm×12cmのサイズにカットした10枚のろ紙の上に置き、ビュレットを、サンプルの表面から1cmの高さに滴下口が配置されるようにセットする。
(1c)ビュレットから、脱イオン水の液滴1滴(約0.05mL)を、サンプル上に滴下し、上記液滴が滴下されてから消失するまでの消失時間を計測する。
(1d)(1c)のビュレット滴下試験を、別の場所にて計50箇所繰り返し、消失時間が3秒未満の個数nを算出し、n/50を評点とする。
なお、上記試験は、20℃の恒温室中で実施する。
[耐久親水性評価試験]
(2a)評価すべき繊維をカード機に通してウェブを形成し、該ウェブから坪量30g/m2の不織布を製造し、当該不織布から10cm×10cmのサンプルを切り出す。
(2b)上記サンプルを、金網の上に置き、サンプルの上に、内径6cmの円筒を置き、脱イオン水70mLを、円筒内に注ぐ。
(2c)脱イオン水を注いでから3分間、サンプルを静置し、次いで、サンプルを、12cm×12cmのサイズにカットした10枚のろ紙の間に挟み、その上に12cm×12cmのサイズのアクリル板を載せ、アクリル板の上から4kgのおもりを載せ、サンプルを5分間脱水する。
(2d)脱水後、サンプルを1時間風乾する。
(2e)サンプルの脱イオン水を透過させた部分において、(1c)及び(1d)のビュレット滴下試験を実施する。
なお、上記試験は、20℃の恒温室中で実施する。
上記の耐久親水性を有する繊維及び非耐久親水性を有する繊維は、上述の定義を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、それぞれ、耐久親水化剤及び非耐久親水化剤を、繊維にコーティング又は練り込むことにより形成することができる。
上記耐久親水化剤及び非耐久親水化剤としては、特に制限されず、当技術分野で、繊維にコーティング又は練り込まれているものを採用することができる。上記非耐久親水化剤としては、例えば、アルキルホスフェートエステル塩、アルキルホスフェート金属塩等が挙げられる。上記耐久親水化剤としては、例えば、炭素数が10〜30のアルキルホスフェートエステル塩と、炭素数が10〜30のベタイン化合物、硫酸エステル塩又はスルホネート塩との混合物、アルキルホスフェートエステル塩とポリエーテル変性シリコーンとの混合物等が挙げられる。
また、上記の第1繊維層及び第2繊維層は、尿に含まれる前記固形成分とともに尿を迅速に吸収体に移行させる観点から、トップシートを構成する不織布中に、それぞれ、20〜80質量%及び80〜20質量%の比率で含まれていることが好ましく、30〜70質量%及び70〜30質量%の比率で含まれていることが更に好ましく、35〜65質量%及び65〜35質量%の比率で含まれていることが特に好ましい。
さらに、上記第2繊維層は、尿に含まれる前記固形成分とともに尿を迅速に吸収体に移行させる観点から、耐久親水性を有する繊維と非耐久親水性を有する繊維とを、それらの総質量を基準として、それぞれ、好ましくは20〜80質量%及び80〜20質量%、更に好ましくは30〜70質量%及び70〜30質量%、特に好ましくは35〜65質量%及び65〜35質量%の比率で含む。
本発明における畝部(長さ方向Xに延在する凸条部)は、上述の実施形態に限定されず、同様の作用効果が奏される範囲内において適宜形態の変更が可能である。そのような変更例としては、例えば、トップシートとして使用される不織布は、肌側表面に、長さ方向Xに点在する多数の凸部が形成されていてもよい。このような点在する多数の凸部が肌側表面に形成された不織布においては、凸部が形成された部分の厚さ(不織布の下面から凸部の頂部までの距離)、凸部が形成されていない部分(凹部)の厚さ(不織布の下面から凹部の最深部までの距離)、凸部のピッチ(隣り合う2つの凸部の頂部間の距離)等は、凹凸構造の機能(例えば、透液性の向上、肌触りの向上等)を考慮して、適宜調整される。このような点在する多数の凸部が肌側表面に形成された不織布を製造する方法としては、例えば、ギア延伸を利用する方法、熱伸長性繊維の熱伸長及び/又は熱収縮性繊維の熱収縮を利用する方法などが挙げられる。なお、熱伸長性繊維の熱伸長及び/又は熱収縮性繊維の熱収縮を利用する方法によれば、不織布に形成される畝溝構造のうち、畝部における厚さ方向配向繊維の含有率が、その他の部分(例えば、溝部)における厚さ方向配向繊維の含有率よりも大きくなると考えられる。
バックシート130として使用される不透液性シートとしては、例えば、防水処理を施した不織布(例えば、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等)、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート等が挙げられる。バックシート130の厚さ、坪量等は、不透液性等を考慮して適宜調整される。バックシート130は、着用時のムレを低減させるために、不透液性に加えて、通気性又は透湿性を有することが好ましい。
吸収体140は、トップシート120及びバックシート130の間に配置されており、腹側部111から股間部112を通じて背側部113まで延在している。
吸収体140は、第1吸収層140a及び第2吸収層140bを有する。ただし、吸収体140が有する層の数は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、適宜変更が可能であり、例えば、吸収体140が第1吸収層140a及び第2吸収層140b以外の1又は2以上の層を有していてもよく、また、第1吸収層140a又は第2吸収層140bが複数の層によって構成されていてもよい。
第1吸収層140a及び第2吸収層140bは、着用者から排泄された尿を吸収可能な吸収性材料を含有する。吸収性材料としては、例えば、親水性繊維、吸収性ポリマー等が挙げられる。親水性繊維としては、例えば、木材パルプ;非木材パルプ;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース等が挙げられる。吸収性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系の高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer:SAP)等が挙げられる。
第1吸収層140aの平面視形状は、長さ方向の略中央がくびれた瓢箪状であり、第2吸収層140bの平面視形状は、略矩形状である。これにより、吸収体140のくびれた部分が着用者の股間にフィットしやすくなる。ただし、吸収体140の平面視形状は変更可能である。
第1吸収層140a及び第2吸収層140bの坪量は、吸収体140の吸液性等を考慮して適宜調整される。第1吸収層140aの坪量は、通常150〜400g/m2、好ましくは200〜300g/m2である。第2吸収層140bの坪量は、通常150〜400g/m2、好ましくは200〜300g/m2である。なお、吸収層の坪量の測定は、次のように実施される。尿取りパッドから切り出された3個の試験片(10mm×10mm)の質量を直示天秤(例えば、研精工業株式会社製 電子天秤HF−300)で測定し、3個の試験片の質量の平均値から算出された吸収層の単位面積当たりの質量(g/m2)を、吸収層の坪量とする。
図1に示すように、第2吸収層140bの最大長さは、第1吸収層140aの最小長さよりも小さく、更に具体的には、尿取りパッド100の長さ方向Xにおいて、第1吸収層140aの両端縁(Ex1、E'x1)は、第2吸収層140bの両端縁(Ex2、E’x2)よりも外側にある。このように、吸収体140が、尿取りパッド100の長さ方向Xにおいて、第1吸収層140aの両端縁(Ex1、E'x1)が第2吸収層140bの両端縁(Ex2、E’x2)よりも外側にあるという構成を備えていると、吸収体140の長さ方向Xにおける両端縁が、第1吸収層140aの両端縁(Ex1、E'x1)のみによって構成され(すなわち、低坪量部分として構成され)、当該両端縁の厚みが各吸収層(140a、140b)の重なる部分(すなわち、高坪量部分)よりも薄くなるため、前記吸収体140の厚み(特に、高坪量部分の厚み)に起因する違和感が着用者の腹側部及び背側部に生じにくい。なお、本発明の別の実施形態においては、第1吸収層140aの両端縁(Ex1、E'x1)が、第2吸収層140bの両端縁(Ex2、E’x2)よりも内側にあってもよい。このような形態のものにおいても、吸収体140の長さ方向Xにおける両端縁が、第2吸収層140bの両端縁(Ex2、E'x2)のみによって構成される(すなわち、低坪量部分として構成される)ため、上述と同様の効果を得ることができる。
第1吸収層140aの最小長さと第2吸収層140bの最大長さとの差(第1吸収層140aの最小長さ−第2吸収層140bの最大長さ)は、好ましくは5〜50mm、さらに好ましくは5〜20mmである。ただし、第1吸収層140a及び第2吸収層140bの長さは、吸収体140に高坪量部分及び低坪量部分が形成される範囲において適宜変更可能である。なお、第1吸収層140aの最小長さは、第1吸収層140aが投影された、厚さ方向Zに垂直な仮想平面において、第1吸収層140aの長さ方向Xの一方側の端縁上の点のうち最も長さ方向Xの内側にある点を通って幅方向Yに延在する仮想直線と、第1吸収層140aの長さ方向Xの他方側の端縁上の点のうち最も長さ方向Xの内側にある点を通って幅方向Yに延在する仮想直線との距離である。第2吸収層140bの最大長さは、第2吸収層140bが投影された、厚さ方向Zに垂直な仮想平面において、第2吸収層140bの長さ方向Xの一方側の端縁上の点のうち最も長さ方向Xの外側にある点を通って幅方向Yに延在する仮想直線と、第2吸収層140bの長さ方向Xの他方側の端縁上の点のうち最も長さ方向Xの外側にある点を通って幅方向Yに延在する仮想直線との距離である。
また、図1に示すように、第2吸収層140bの最大幅は、第1吸収層140aの最小幅よりも小さく、更に具体的には、尿取りパッド100の幅方向Yにおいて、第2吸収層140bの両端縁(Ey2、E’y2)が、第1吸収層140aの両端縁(Ey1、E’y1)よりも内側にある。このように、吸収体140が、尿取りパッド100の幅方向Yにおいて、第2吸収層140bの両端縁(Ey2、E’y2)が第1吸収層140aの両端縁(Ey1、E’y1)よりも内側にあるという構成を備えていると、吸収体140の幅方向Yにおける両端縁が、第1吸収層140aの両端縁(Ey1、E’y1)のみによって構成され(すなわち、低坪量部分として構成され)、当該両端縁の厚みが各吸収層(140a、140b)の重なる部分(すなわち、高坪量部分)よりも薄くなるため、吸収体140の厚み(特に、高坪量部分の厚み)に起因する違和感が着用者の両大腿部の内側部分又は股間部に生じにくい。なお、本発明の別の実施形態においては、第2吸収層140bが、第1吸収層140aよりもバックシート130側に位置していてもよく、このような形態のものにおいても、吸収体140の幅方向Yにおける両端縁が、第1吸収層140aの両端縁(Ey1、E’y1)のみによって構成される(すなわち、低坪量部分として構成される)ため、上述と同様の効果を得ることができる。
第1吸収層140aの最小幅と第2吸収層140bの最大幅との差(第1吸収層140aの最小幅−第2吸収層140bの最大幅)は、好ましくは5〜50mm、さらに好ましくは5〜20mmである。ただし、第1吸収層140a及び第2吸収層140bの幅は、吸収体140に高坪量部分及び低坪量部分が形成される範囲において適宜変更可能である。なお、第1吸収層140aの最小幅は、第1吸収層140aが投影された、厚さ方向Zに垂直な仮想平面において、第1吸収層140aの幅方向Yの一方側の端縁上の点のうち最も幅方向Xの内側にある点を通って長さ方向Xに延在する仮想直線と、第1吸収層140aの幅方向Yの他方側の端縁上の点のうち最も幅方向Yの内側にある点を通って長さ方向Xに延在する仮想直線との距離である。第2吸収層140bの最大幅は、第2吸収層140bが投影された、厚さ方向Zに垂直な仮想平面において、第2吸収層140bの幅方向Yの一方側の端縁上の点のうち最も幅方向Yの外側にある点を通って長さ方向Xに延在する仮想直線と、第2吸収層140bの幅方向Yの他方側の端縁上の点のうち最も幅方向Yの外側にある点を通って長さ方向Xに延在する仮想直線との距離である。
吸収体140は、第1吸収層140a及び第2吸収層140bのうち互いに重なる部分によって形成された高坪量部分と、第1吸収層140aのうち第2吸収層140bと重ならない部分によって形成された低坪量部分とを有する。このため、吸収体140には、高坪量部分と低坪量部分との坪量差が存在する。また、高坪量部分の厚さは低坪量部分の厚さよりも大きいため、吸収体140には厚さの差(段差)が存在する。なお、高坪量及び低坪量とは、相対的な坪量の高低を意味する。
上述したように、第1吸収層140a及び第2吸収層140bは、第1吸収層140aの長さ方向Xの両端縁(Ex1、E'x1)が第2吸収層140bの長さ方向Xの両端縁(Ex2、E’x2)よりも長さ方向Xの外側に位置し、第1吸収層140aの幅方向Yの両端縁(Ey1、E’y1)が第2吸収層140bの幅方向Yの両端縁(Ey2、E’y2)よりも幅方向Yの外側に位置するように、重なっている。したがって、低坪量部分は、高坪量部分の周縁(本実施形態の場合は、図1に示すように、第2吸収層140bの周縁(Ex2、E’x2、Ey2、E’y2)に一致する。)の全体から延在し、高坪量部分の長さ方向Xの両端縁(本実施形態の場合は、第2吸収層140bの長さ方向Xの両端縁(Ex2、E’x2)に一致する。)から長さ方向Xに延在する第1部分と、高坪量部分の幅方向Yの両端縁(本実施形態の場合は、第2吸収層140bの幅方向Yの両端縁(Ey2、E’y2)に一致する。)から幅方向Yに延在する第2部分と、を有する。ただし、低坪量部分の位置は、本発明の効果を阻害しない範囲内で適宜変更が可能であり、例えば、低坪量部分が第2部分のみを有する形態であっても、低坪量部分が第2部分と高坪量部分の長さ方向Xの一端縁のみから長さ方向Xに延在する第1部分とを有する形態であってもよい。
上述のとおり、吸収体140の長さ方向Xの両端部は低坪量部分であるため、吸収体140は幅方向Yに延在する折り曲げ線(例えば、高坪量部分の長さ方向の両端縁及び低坪量部分の長さ方向の両端縁)で折れ曲がりやすい。一方、長さ方向Xに延在する畝部122が形成された不織布は、幅方向Yに延在する折り曲げ線で折り曲がりにくい。このような不織布が厚さ方向Zにおいて吸収体140と重なっていることにより、吸収体140は、幅方向Yに延在する折れ曲げ線で折れ曲がりにくくなる。したがって、尿取りパッド100(吸収性物品)の着用時に、吸収体140が長さ方向Xに折れ曲がった状態で着用されることに起因する液漏れや着用者の違和感をより一層低減することができる。
第1吸収層140aは第2吸収層140bよりもトップシート120側に位置する。これにより、吸収体140のトップシート120側の面が第1吸収層140aのトップシート120側の面によって形成され、第1吸収層140a及び第2吸収層140bの幅方向Y及び長さ方向Xのサイズ差に起因する吸収体140の段差が、該吸収体140のトップシート120側には形成されず、バックシート130側に形成されるため、第1吸収層140aが第2吸収層140bよりもバックシート130側に位置する実施形態と比較して、吸収体140の段差に起因する着用者の違和感を、より一層生じにくくすることができる。ただし、上述のとおり、第1吸収層140a及び第2吸収層140bの位置関係は変更可能であり、例えば、第2吸収層140bが第1吸収層140aよりもトップシート120側に位置してもよい。
第1吸収層140a及び第2吸収層140bの厚さは、吸収体140の吸液性等を考慮して適宜調整される。第1吸収層140aの厚さは、通常1.5〜5.0mm、好ましくは2.5〜3.5mmであり、第2吸収層140bの厚さは、通常1.5〜5.0mm、好ましくは2.5〜3.5mmである。なお、吸収体の厚さの測定は、尿取りパッドから切り出した100mm×100mmの吸収体サンプルと、市販の厚さ測定器(例えば、PEACOCK社製JA257,測定面50mm(直径),測定圧3g/cm2)とを使用して、次のように実施される。厚さ測定器により、吸収体サンプルの異なる5つの部位を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定し、5つの測定値の平均値を厚さ(mm)とする。
第1吸収層140aの厚さは、第2吸収層140bの厚さよりも大きいことが好ましい。これにより、第1吸収層140aの厚さが第2吸収層140bの厚さよりも小さい実施形態と比較して、吸収体140の段差の程度(すなわち、段差の高さ)が小さくなり、当該段差に起因する着用者の違和感を、より一層生じにくくすることができる。特に、厚さの大きい第1吸収層140aが、厚さの小さい第2吸収層140bよりもトップシート120側に位置すると、この効果が顕著である。第1吸収層140aの厚さと第2吸収層140bの厚さとの差(第1吸収層140aの厚さ−第2吸収層140bの厚さ)は、好ましくは1〜7mm、さらに好ましくは1〜3mmである。
第1吸収層140a及び第2吸収層140bは、コアラップで被覆されていてもよい。吸収性材料の層状成形体である第1吸収層140a及び第2吸収層140bをコアラップで被覆することにより、第1吸収層140a及び第2吸収層140bの保形性を向上させ、これら各吸収層(140a、140b)の崩壊を防止することができる。なお、コアラップとして使用される透液性シートとしては、例えば、不織布等が挙げられる。
第1吸収層140aには、第1吸収層140aを厚さ方向Zに貫通する貫通孔141aが形成されており、第2吸収層140bには、第2吸収層140bを厚さ方向Zに貫通する貫通孔141bが形成されている。貫通孔141a,141bは、尿取りパッド100の股間部112に位置しているとともに、吸収体140の幅方向Yの中心を通って長さ方向Xに延在している。第1吸収層140a及び第2吸収層140bは、貫通孔141a,141bの位置が一致するように(すなわち、貫通孔141a,141bが互いに通じるように)積層されている。こうして、吸収体140には、吸収体140を厚さ方向Zに貫通する貫通孔141が貫通孔141a,141bによって形成されている。貫通孔141は、貫通孔141a,141bと同様、尿取りパッド100の股間部112に位置しているとともに、吸収体140の幅方向Yの中心を通って長さ方向Xに延在している。このため、貫通孔141の位置が、着用者の陰部(尿排泄口)の位置と一致しやすく、着用者に対する尿取りパッド100のフィット性が向上する。また、着用者の陰部(尿排泄口)が当接する部分が、湿潤状態となりにくくなるため、着用者の不快感が防止される。
吸収体140には、貫通孔141の代わりに、トップシート120側に開口する凹部が形成されていてもよい。トップシート120側に開口する凹部を有する吸収体は、例えば、貫通孔141aを有する第1吸収層と、貫通孔141bを有しない第2吸収層とを積層することによって形成することができる。
貫通孔141a,141bの長さ、幅等は、第1吸収層140a及び第2吸収層140bのサイズ等を考慮して適宜調整される。貫通孔141aの幅は、通常5.0〜50mm、好ましくは10〜20mmである。貫通孔141bの幅は、貫通孔141aの幅と等しいか又はそれよりも狭く、通常5.0〜40mm、好ましくは10〜15mmである。貫通孔141aの長さは、通常50〜300mm、好ましくは50〜200mm、さらに好ましくは50〜150mmである。貫通孔141bの長さは、貫通孔141aの長さと等しいか又はそれよりも短く、通常30〜250mm、好ましくは30〜150mmである。貫通孔141aの幅及び長さが、貫通孔141bの幅及び長さと等しいか又はそれよりも大きいことにより、第1吸収層140a及び第2吸収層140bを積層する工程で多少のずれが生じたとしても、吸収体140のトップシート120側表面からみた貫通孔141の大きさがほぼ一定に保たれる。また、貫通孔141の内壁面に段差が生じ、貫通孔141の内表面積が大きくなるので、貫通孔141が形成された部分における吸収体140の尿吸収能が向上する。
吸収体140には、吸収体140を厚さ方向Zに一体化する圧搾部142,143が貫通孔141の幅方向Yの外側(両側)に形成されている。圧搾部142,143は、第1吸収層140a及び第2吸収層140bを厚さ方向Zに一体化する。圧搾部142,143は、股間部112において長さ方向Xに延在している。圧搾部142,143は、ヒートエンボス処理によって形成された、トップシート120側に開口する凹部である。
尿取りパッド100は、トップシート120及び吸収体140の間に配置された吸液性シート160をさらに備える。吸液性シート160は、厚さ方向Zにおいて貫通孔141と重ならないように、股間部112から背側部113に至る領域内に配置されている。
吸液性シート160は、透液性の第1シート161及び透液性の第2シート162と、これらのシート161,162の間に配置された吸収性ポリマー層163とを有する。透液性の第1シート161、第2シート162は、例えば、不織布である。不織布としては、トップシート120と同様の具体例が挙げられる。吸収性ポリマー層163に含有される吸収性ポリマーとしては、吸収体140と同様の具体例が挙げられる。吸収性ポリマー163層の坪量は、尿取りパッド100に求められる尿吸収量等を考慮して適宜調整される。例えば、透液性の第1シート161及び第2シート162が180mm×130mmのサイズである場合、1g当たり生理食塩水60gを吸収する吸収性ポリマー2gを使用して、透液性の第1シート161及び第2シート162と略同一サイズの吸収性ポリマー層163を形成することができる。
吸収性ポリマー層163は、最大幅D1を有する。最大幅D1は、吸収性ポリマー層163が投影された、厚さ方向Zに垂直な平面において、吸収性ポリマー層163の輪郭線上の点のうち、幅方向Yの一方側において最も外側にある点を通って長さ方向Xに延在する仮想直線と、幅方向Yの他方側において最も外側にある点を通って長さ方向Xに延在する仮想直線との距離である。本実施形態では、吸収性ポリマー層163の幅は略一定である。
吸収性ポリマー層163は、透液性の第1シート161及び第2シート162の少なくとも一方の表面に塗工された接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)によって、透液性の第1シート161及び第2シート162の間に固定されている。吸液性シート160から吸収体140への透液性の観点から、接着剤は、透液性の第1シート161及び第2シート162の界面全体には塗工されておらず、例えば、ドット、スパイラル、ストライプ等のパターンで塗工されている。
吸収性ポリマー層163の幅方向Yの両端縁(Esy、E’sy)は、第1吸収層140aの両端縁(Ey1、E’y1)よりも内側にあり、かつ、第2吸収層140bの両端縁(Ey2、E’y2)よりも外側に位置する。吸収性ポリマー層163がこのような位置に配置されていると、第1吸収層140a及び第2吸収層140bの各両端縁(Ey1、E’y1、Ey2、E’y2)によって形成される吸収体140の厚さの差(段差)を着用者に感得させにくくすることができる。特に、吸収性ポリマー層163が尿などの液体を吸収して膨潤した後においては、当該吸収性ポリマー層163が緩衝層として機能するため、上述の吸収体140の段差をより一層着用者に感得させにくくすることができ、尿取りパッド100を長時間使用したとしても良好な装着感を維持することができる。なお、吸収性ポリマー層163は、尿取りパッド100に提供された尿などの液体を吸収すると膨潤して厚みが増大するが、吸収性ポリマー層163の幅方向Yの両端縁(Esy、E’sy)が第1吸収層140aの両端縁(Ey1、E’y1)よりも内側にあることにより、上述のように吸収性ポリマー層163の厚みが増大したとしても、尿取りパッド100の幅方向Yの両端部において厚みの薄い状態(すなわち、低坪量部分)を維持することができ、上述の吸収性ポリマー層163の厚みの増大に伴う違和感が着用者の両大腿部の内側部分又は股間部に生じにくい。
また、吸収性ポリマー層163の長さ方向Xの両端縁(Esx、E’sx)は、第2吸収層140bの長さ方向Xの両端縁(Ex2、E’x2)よりも長さ方向Xの内側に位置する。このため、尿取りパッド100に供給された尿を吸収性ポリマー層163が吸収して膨潤し、吸収性ポリマー層163の厚さが増加しても、尿取りパッド100の長さ方向Xの両端部において厚みの薄い状態(すなわち、低坪量部分)を維持することができ、吸収性ポリマー層163の厚みの増大に伴う違和感が着用者の腹側部及び背側部に生じにくい。また、畝部122における厚さ方向配向繊維の含有率が畝部122以外の部分(例えば、溝部123)における厚さ方向配向繊維の含有率よりも大きい不織布が、厚さ方向Zにおいて吸液性シート160と重なっているので、吸収性ポリマー層163が存在する領域と存在しない領域との境界に生じる厚さの差(段差)に起因する違和感が着用者に更に生じにくい。さらに、吸液性シート160が存在することにより、吸収体140からトップシート120への尿の戻りを防止することができる。
吸収性ポリマー層163は、任意の方向に延在する吸収性ポリマー不存在領域によって、複数の領域に分断されていてもよい。
尿取りパッド100において、吸収体140には、高坪量部分と低坪量部分との坪量差及び厚さの差(段差)が存在する。しかしながら、畝部122における厚さ方向配向繊維の含有率が畝部122以外の部分(例えば、溝部123)における厚さ方向配向繊維の含有率よりも大きい不織布が、厚さ方向Zにおいて吸収体140と重なっているので、吸収体140の坪量差及び厚さの差(厚さ差)に起因する違和感に起因する違和感が着用者に更に生じにくい。また、低坪量部分が折れ曲がったとしても、低坪量部分の折れ曲がりに起因する違和感が着用者に生じにくい。このため、尿取りパッド100では、着用者の装着感が向上している。
以下、図6〜図9に基づいて、本発明の一実施形態に係る尿取りパッドが装着される外装体200を説明する。図6は、外装体200の平面図であり、図7は、外装体200の分解斜視図であり、図8は、パンツ形状に変形した外装体200の斜視図であり、図9は、外装体200が具備するサイドシート250a,250bを説明するための図である。
外装体200は、伸展状態において、互いに直交する長さ方向X、幅方向Y及び厚さ方向Zを有する。外装体200の長さ方向X、幅方向Y及び厚さ方向Zは、尿取りパッド100の長さ方向X、幅方向Y及び厚さ方向Zと一致する。
外装体200は、長さ方向Xの両端縁201,202及び幅方向Yの両端縁203,204を有する本体部210と、本体部210の幅方向Yの両端縁203,204から幅方向Yに延在するサイドフラップシート280a,280bとを備える。
本体部210は、長さ方向Xに並ぶ腹側部211、股間部212及び背側部213を有する。腹側部211は着用者の腹部に当てられる部分であり、股間部212は着用者の股間部に当てられる部分であり、背側部213は着用者の尻部及び/又は背部に当てられる部分である。本体部210の長さは、通常650〜1000mm、幅は通常300〜690mmである。
一対のサイドフラップシート280a,280bは、本体部210の背側部213の両側に設けられている。サイドフラップシート280a,280bに取り付けられた係合手段であるメカニカルファスナのフック部281a,281bによって腹側部211の幅方向Yの両端縁と背側部213の幅方向Yの両端縁とが係合されると、外装体200はパンツ形状に形成され、本体部210の長さ方向Xの両端縁201,202によってウエスト開口部が形成されるとともに、本体部210の幅方向Yの両端縁213,214によってレッグ開口部が形成される(図8参照)。
外装体200は、展開型からパンツ型に変形可能であるが、最初からパンツ型に成形されていてもよい。例えば、股間部212の幅方向Yの両端縁と、背側部213の幅方向Yの両端縁とを接合することにより、外装体200をパンツ型に成形することができる。この場合、一対のサイドフラップシート280a,280bは省略することができる。
本体部210は、長さ方向Xの略中央部分(股間部212に対応する部分)がくびれた瓢箪状である。このため、股間部212が着用者の股間にフィットしやすくなっている。ただし、本体部210の形状は、パンツ型に変形可能である範囲において適宜変更可能である。
本体部210は、肌側表面221を有する透液性のトップシート220と、着衣側表面231を有する不透液性のバックシート230と、トップシート220及びバックシート230間に配置された吸液性の吸収体240と、トップシート220の肌側表面221の幅方向Yの両側部分に配置された不透液性のサイドシート250a,250bとを備える。ただし、吸収体240及び不透液性のサイドシート250a,250bは省略可能である。
トップシート220として使用される透液性シートは、例えば、不織布である。不織布としては、トップシート120と同様の具体例が挙げられる。トップシート220の坪量、厚さ等は、透液性、肌触り等を考慮して適宜調整される。
バックシート230は、肌側に位置する不透液性シート231と、着衣側に位置する不透液性シート232とを有する。不透液性シート231,232としては、例えば、防水処理を施した不織布、合成樹脂フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート等が挙げられる。バックシート230の厚さ、坪量等は、不透液性等を考慮して適宜調整される。バックシート230は、着用時のムレを低減させるために、不透液性に加えて、通気性又は透湿性を有することが好ましい。
吸収体240は、トップシート200及びバックシート300の間に配置されており、腹側部211から股間部212を通じて背側部213まで延在している。吸収体240の平面視形状は、長さ方向Xの略中央がくびれた瓢箪状である。これにより、吸収体240のくびれた部分が着用者の股間にフィットしやすくなる。吸収体240は、着用者から排泄された尿を吸収し得る吸収性材料を含有する。吸収性材料としては、吸収体140と同様の具体例が挙げられる。吸収体240は、コアラップで被覆されていてもよい。吸収体240の厚さ、坪量等は、吸液性等を考慮して適宜調整される。吸収体240の厚さは、通常3〜10mm、好ましくは4〜7mmであり、坪量は、通常150〜500g/m2、好ましくは200〜400g/m2である。
吸収体240には、吸収体240を厚さ方向Zに貫通する貫通孔241が形成されている。貫通孔241は、外装体200の股間部212に位置しているとともに、吸収体240の幅方向Yの中心を通って長さ方向Xに延在している。このため、尿取りパッド100を外装体200に装着する際、尿取りパッド100の貫通孔141の位置を、外装体200の貫通孔241の位置と一致させやすい。
吸収体240には、貫通孔241の代わりに、トップシート220側に開口する凹部が形成されていてもよい。トップシート220側に開口する凹部を有する吸収体は、例えば、貫通孔241を有する第1吸収層と、貫通孔を有しない第2吸収層とを積層することによって形成することができる。
貫通孔241の長さ、幅等は、吸収体240のサイズ等を考慮して適宜調整される。貫通孔241の幅は、貫通孔141の幅と等しいか又はそれよりも広く、通常5〜50mm、好ましくは15〜25mmである。貫通孔241の長さは、貫通孔141の長さと等しいか又はそれよりも長く、通常50〜700mm、好ましくは90〜350mmである。貫通孔241の幅及び長さが、貫通孔141の幅及び長さと等しいか又はそれよりも大きいので、尿取りパッド100を外装体200に装着する際、尿取りパッド100の貫通孔141の位置を、外装体200の貫通孔241の位置と一致させやすい。
サイドシート250a,250bとして使用される不透液性シートとしては、例えば、防水処理を施した不織布(例えば、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等)、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート等が挙げられる。サイドシート250a,250bの厚さ、坪量等は、不透液性等を考慮して適宜調整される。
サイドシート250aは、長さ方向Xの両端縁251a,252a及び幅方向Yの両端縁253a,254aを有し、サイドシート250bは、長さ方向Xの両端縁251b,252b及び幅方向Yの両端縁253b,254bを有する。サイドシート250a,250bは、その一部分として、防漏部255a,255bを有する。防漏部255aは、長さ方向Xの両端縁256a,257a及び幅方向Yの両端縁258a,259aを有し、防漏部255bは、長さ方向Xの両端縁256b,257b及び幅方向Yの両端縁258b,259bを有する。サイドシート250a,250bの端縁253a,253bは、トップシート220の肌側表面221の幅方向Yの中心を通り、長さ方向Xに延在する仮想中心線に対して、端縁254a,254bよりも近位に位置する。以下、サイドシート250a,250bの端縁253a,253bを近位端縁といい、端縁254a,254bを遠位端縁という場合がある。同様に、防漏部255a,255bの端縁258a,258bを近位端縁といい、端縁259a,259bを遠位端縁という場合がある。
防漏部255a,255bは、サイドシート250a,250bのうち厚さ方向Zにおいてトップシート220と重なる領域内に形成されており、防漏部255a,255bの近位端縁258a,258bは、サイドシート250a,250bの近位端縁253a,253bと一致している。
厚さ方向Zにおいてトップシート220と重なるサイドシート250a,250bの領域のうち、防漏部255a,255bは、トップシート220の肌側表面221に固定されていないが、防漏部255a,255b以外の部分は、トップシート220の肌側表面221に固定されている。したがって、防漏部255a,255bの長さ方向Xの両端縁及び遠位端縁259a,259bは、トップシート220の肌側表面221に固定された固定端部となっている一方、防漏部250a,250bの近位端縁258a,258bは、トップシート220の肌側表面221に固定されておらず、トップシート220の肌側表面221から離間可能な自由端部となっている。サイドシート250a,250bとトップシート220との接合様式としては、例えば、ホットメルト型接着剤による接合等が挙げられる。
外装体200において、トップシート220の肌側表面221は、尿取りパッド100を装着するための装着面となる。尿取りパッド100は、トップシート220の肌側表面221に脱着可能に装着することができる。
以下、図10及び図11に基づいて、本発明の一実施形態に係る尿取りパッドを外装体に装着してなる着用物品500を説明する。図10は、着用物品500の一部拡大平面図であり、図11は、図10のA−A線断面図である。
着用物品500は、外装体200と、外装体200の装着面(トップシート220の肌側表面221)に脱着可能に装着された尿取りパッド100とを備える。
尿取りパッド100は、尿取りパッド100の幅方向Yの両側部分が外装体200の装着面(トップシート220の肌側表面221)と防漏部225a,255bの間に位置するように、外装体200の装着面に配置されている。尿取りパッド100を外装体に装着する際、尿取りパッド100のトップシート120に形成された畝溝構造124が目印となり、尿取りパッド100の長さ方向Xと外装体200の長さ方向Xとの位置合わせがしやすい。
尿取りパッド100が有する吸収性ポリマー層163の最大幅D1は、弾性部材270aと弾性部材270bとの間隔D2よりも大きい。吸収性ポリマー層163が尿取りパッド100に供給された尿を吸収して膨潤すると、防漏部255a,255bはそれらの起立方向に押し上げられる。したがって、防漏部255a,255bの起立によって形成された立体ギャザー部が倒れにくく、立体ギャザー部による尿漏れ防止効果が効果的に発揮される。
弾性部材270aと弾性部材270bとの間隔D2は、弾性部材270aの長さ方向Xの両端縁271a,272aを通り、装着面に沿って延在する第1仮想線と、弾性部材270bの長さ方向Xの両端縁271b,272bを通り、装着面沿って延在する第2仮想線との間隔である。弾性部材270a,270bの長さ方向Xの両端縁は、第1仮想線と第2仮想線とが略平行となるように配置されている。
防漏部255a,255bの長さ方向Xの両端縁は、尿取りパッド100の長さ方向の両端縁と略一致していてもよい。これにより、防漏部255a,255bの起立によって形成された立体ギャザー部が倒れにくく、立体ギャザー部による尿漏れ防止効果が効果的に発揮される。
尿取りパッド100の吸収体140に形成された貫通孔141は、外装体200の吸収体240に形成された貫通孔241とは、厚さ方向Zにおいて重なっている。したがって、着用物品500の着用時にトップシート120が押圧されても、トップシート120のうち吸収体140の貫通孔141内に入り込んだ部分は押圧されにくく、この部分における畝部122の形状が維持されやすい。