JP2016017070A - 高品質な玄米の取得方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高品質の玄米を取得すること。【解決手段】下記式(1)[式中、R1、R2、R3及びR4のいずれか一がトリフルオロメチル基を、その他は水素原子を表し、R5は、メチル基又はエチル基を表す。]で示される化合物を生育途中のイネに施用し、該イネを種子が完熟するまで栽培し、完熟した該種子より玄米を得ることを特徴とする、高品質の玄米の取得方法。【選択図】なし
Description
本発明は、ある種の植物生長調整作用が知られている化合物を施用することにより、高品質の玄米を得ることができるイネの栽培方法に関する。
イネの栽培方法において、収穫される玄米の品質向上を目的として、種々の栽培方法が検討されている。また、特定の化学物質を栽培中のイネに施用することにより、玄米の品質が向上することが知られている(例えば、特許文献1にはオリゴ糖類を含有する食酢をイネの登熟期後半に散布することで、玄米の収量や品質を高まることが記載されている。)。
また、下記の式(1)で示される化合物がイネ、トウモロコシ、コムギ等の植物に対する生長促進効果を有していることが記載されている(特許文献2)。
また、下記の式(1)で示される化合物がイネ、トウモロコシ、コムギ等の植物に対する生長促進効果を有していることが記載されている(特許文献2)。
本発明は、高品質の玄米を取得する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、下記式(I)で示される化合物をイネに施用することによって、高い品質の玄米が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は次の通りである。
[発明1]下記式(1)
[式中、R1、R2、R3及びR4のいずれか一がトリフルオロメチル基を、その他は水素原子を表し、R5はメチル基又はエチル基を表す。]
で示される化合物(以下、本化合物と記すことがある。)を生育途中のイネに施用する工程、該イネを種子が完熟するまで栽培する工程、及び、完熟した該種子を収穫し玄米を得る工程を含む、高品質の玄米の取得方法(以下、本発明方法と記すことがある。)。
[発明2]式(1)で示される化合物が、下記の化合物群Aから選ばれる化合物である[発明1]に記載の方法。
<化合物群A>
(1)5-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(2)6-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(3)4-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(4)7-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
[発明3]式(I)で示される化合物のイネへの施用が、イネの幼穂形成期から出穂期の期間に実施されることを特徴とする[発明1]又は[発明2]記載の方法。
[発明4]イネが、高温ストレスに暴露された又は暴露されるであろうイネである[発明1]〜[発明3]のいずれか記載の方法。
[発明1]下記式(1)
[式中、R1、R2、R3及びR4のいずれか一がトリフルオロメチル基を、その他は水素原子を表し、R5はメチル基又はエチル基を表す。]
で示される化合物(以下、本化合物と記すことがある。)を生育途中のイネに施用する工程、該イネを種子が完熟するまで栽培する工程、及び、完熟した該種子を収穫し玄米を得る工程を含む、高品質の玄米の取得方法(以下、本発明方法と記すことがある。)。
[発明2]式(1)で示される化合物が、下記の化合物群Aから選ばれる化合物である[発明1]に記載の方法。
<化合物群A>
(1)5-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(2)6-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(3)4-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(4)7-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
[発明3]式(I)で示される化合物のイネへの施用が、イネの幼穂形成期から出穂期の期間に実施されることを特徴とする[発明1]又は[発明2]記載の方法。
[発明4]イネが、高温ストレスに暴露された又は暴露されるであろうイネである[発明1]〜[発明3]のいずれか記載の方法。
本発明方法によって、高い品質の玄米を得ることができる。本発明方法は、特に登熟初中期に高温ストレスに晒されたイネに対して、優れた効果を得ることができる。
本発明における玄米の品質向上とは、米の品質を表す種々の指標のうち、玄米の検査規格における品位の指標の一つまたは一つ以上を、本化合物を施用しない栽培方法で得られる玄米よりも高い値にすることを意味する。
玄米(水稲うるち玄米及び水稲もち玄米)の検査規格における品位は、例えば日本国の農産物検査法第6条の規定に基づき定められた農産物規格規定において定められた品位が代表例として挙げられる。当該規定においては、玄米における整粒の比率の最低限度が70%であり、形質の最低限度が1等標準品であり、水分の最高限度が16%であり、被害粒・死米・着色粒・異種穀粒および異物の合計の最高限度が15%であるものを1等級とし、それ以下の品位ものが、2等級や3等級と分類される。
上記の整粒とは、被害粒、死米、未熟粒、異種穀粒、及び異物を除いた粒と定義されており、この整粒の割合を増大させることが、玄米の品質向上において非常に重要な項目となっている。上記の被害粒には、発芽粒、病害粒、芽くされ粒、虫害粒、同割粒、奇形粒、茶米、砕粒、斑点粒、胚芽欠損粒、及びはく皮粒が含まれる。上記の死米には、青死米、及び白死米が含まれる。上記の着色粒には、全面着色粒、部分着色粒、及び赤米が含まれる。上記の未熟粒には、乳白粒、心白粒、青未熟粒、基部未熟粒、腹白未熟粒、背白粒、及び粉状質粒が含まれる。即ち、これらの被害粒、死米、及び未熟粒の割合を減少させることが、整粒の割合を増大させて、玄米の品質を向上させることを意味する。
イネが登熟初中期に高温状態に晒されると発生割合が増加すると言われている白未熟粒は、乳白粒、心白粒、腹白未熟粒、背白粒、基部未熟粒などの、胚乳に白濁をもつ未熟粒の総称として一般的に用いられており、白未熟粒を減少させることも、米の品質を向上させることを意味する。また、本発明における玄米の品質向上には、米の品位の指標のうち、食味に関する品位を向上させることも含まれる。米の食味の評価方法としては、人の五感によって評価される官能試験による指標もあるが、理化学的な成分評価による客観的指標も用いられる。食味の理化学的評価としてはタンパク質含有率、アミロース含有率、アミログラム特性、テクスチュログラム特性、炊飯特性等が挙げられる。
上記の整粒とは、被害粒、死米、未熟粒、異種穀粒、及び異物を除いた粒と定義されており、この整粒の割合を増大させることが、玄米の品質向上において非常に重要な項目となっている。上記の被害粒には、発芽粒、病害粒、芽くされ粒、虫害粒、同割粒、奇形粒、茶米、砕粒、斑点粒、胚芽欠損粒、及びはく皮粒が含まれる。上記の死米には、青死米、及び白死米が含まれる。上記の着色粒には、全面着色粒、部分着色粒、及び赤米が含まれる。上記の未熟粒には、乳白粒、心白粒、青未熟粒、基部未熟粒、腹白未熟粒、背白粒、及び粉状質粒が含まれる。即ち、これらの被害粒、死米、及び未熟粒の割合を減少させることが、整粒の割合を増大させて、玄米の品質を向上させることを意味する。
イネが登熟初中期に高温状態に晒されると発生割合が増加すると言われている白未熟粒は、乳白粒、心白粒、腹白未熟粒、背白粒、基部未熟粒などの、胚乳に白濁をもつ未熟粒の総称として一般的に用いられており、白未熟粒を減少させることも、米の品質を向上させることを意味する。また、本発明における玄米の品質向上には、米の品位の指標のうち、食味に関する品位を向上させることも含まれる。米の食味の評価方法としては、人の五感によって評価される官能試験による指標もあるが、理化学的な成分評価による客観的指標も用いられる。食味の理化学的評価としてはタンパク質含有率、アミロース含有率、アミログラム特性、テクスチュログラム特性、炊飯特性等が挙げられる。
本発明方法によって、玄米におけるこれらの被害粒、死米、未熟粒や、高温ストレスが原因とされる白未熟粒を減少させることが可能であり、実質的に整粒の割合を増大させることができる。
また、本発明方法によって、玄米の食味に関する品位も向上させることが可能となる。
これらの玄米の品質の重要な指標である整粒や未熟粒の割合は、市販の穀粒判別器を用いることにより評価することが可能である。具体的には、例えばサタケ社製の穀粒判別器RGQI20Aを用いることで、簡便に測定することが可能である。
また、米の収量を決定する収量構成要素としては、千粒重、登熟歩合、総籾数、1穂籾数、穂数等が挙げられるが、本発明方法により玄米における、これらの収量構成要素を向上させる効果も有している。
また、本発明方法によって、玄米の食味に関する品位も向上させることが可能となる。
これらの玄米の品質の重要な指標である整粒や未熟粒の割合は、市販の穀粒判別器を用いることにより評価することが可能である。具体的には、例えばサタケ社製の穀粒判別器RGQI20Aを用いることで、簡便に測定することが可能である。
また、米の収量を決定する収量構成要素としては、千粒重、登熟歩合、総籾数、1穂籾数、穂数等が挙げられるが、本発明方法により玄米における、これらの収量構成要素を向上させる効果も有している。
本発明方法において、本化合物を生育途中のイネに施用する場合、イネ植物の全体に本化合物を処理してもよいが、イネの一部分(茎葉、穂、根等)に対して処理してもよい。
また本発明方法において、本化合物をイネに施用する時期(生育ステージ)は必ずしも限定されず、種々の生育ステージ(移植後の栄養成長期、生殖生長期、登熟期)であってよいが、生殖生長期から登熟期にかけての、いわゆる幼穂形成期から出穂期の期間に施用することが好ましい。
本化合物を施用したイネは、公知の栽培方法にてイネの種子が完熟するまで栽培し、完熟した該種子を収穫し、該完熟種子より籾殻を外す(脱穀)ことにより玄米を取得する。収穫および脱穀方法は公知の方法にて行うことができ、農業機械を用いた刈入れおよび脱穀方法を使用することができる。
また本発明方法において、本化合物をイネに施用する時期(生育ステージ)は必ずしも限定されず、種々の生育ステージ(移植後の栄養成長期、生殖生長期、登熟期)であってよいが、生殖生長期から登熟期にかけての、いわゆる幼穂形成期から出穂期の期間に施用することが好ましい。
本化合物を施用したイネは、公知の栽培方法にてイネの種子が完熟するまで栽培し、完熟した該種子を収穫し、該完熟種子より籾殻を外す(脱穀)ことにより玄米を取得する。収穫および脱穀方法は公知の方法にて行うことができ、農業機械を用いた刈入れおよび脱穀方法を使用することができる。
本発明方法において使用される本化合物は、公知の方法で製造することができ、試薬として購入することもできる。
本化合物の具体例としては、式(1)中のR1、R2、R3、R4及びR5が、表1に示される基の組合せである化合物(本化合物1〜本化合物8)が挙げられる。
本発明方法において本化合物を使用する場合、本化合物のみで使用してもよいが、後述するとおり種々の不活性成分(固体担体、液体担体、界面活性剤、その他の製剤用補助剤等)を用いて製剤化された植物生長促進組成物として使用することができる。
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えばカオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物、尿素等の合成有機物、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類、合成含水酸化珪素等の合成無機物等からなる微粉末又は粒状物等が挙げられ、液体担体としては、例えばキシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、ダイズ油、綿実油等の植物油、石油系脂肪族炭化水素類、エステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、及び水が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルモアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アラビアガム、アルギン酸及びその塩、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ザンサンガム等の多糖類、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミナゾル等の無機物、防腐剤、着色剤、及びPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT等の安定化剤が挙げられる。
本発明方法において、本化合物をイネに施用する場合、本化合物の有効量をイネ又はその栽培地に施用することにより行われる。イネ又はイネの栽培地に施用する場合は、本化合物を1回又は複数回施用する。
本発明方法における本化合物の施用方法としては、例えば、茎葉散布等のイネの茎葉、花器又は穂への施用;イネを植えつける前又は植えつけた後の土壌(栽培地)への施用(散布、灌注)等が挙げられる。
本発明方法におけるイネの茎葉、花器又は穂への散布方法としては、例えば、茎葉散布等の植物の表面に施用する方法が挙げられる。また、開花前、開花中、開花後を含む開花時期における花器あるいは植物全体に散布する方法、出穂時期の穂あるいは植物全体に散布する方法が挙げられる。
本発明方法における土壌への施用方法としては、例えば、土壌への散布、土壌混和、土壌への潅注(薬液潅水、土壌注入、薬液ドリップ)が挙げられ、処理する場所としては例えば、作条付近、栽培地の全面、植物地際部、株間、主幹畦、培土等が挙げられ、処理時期としては移植後の栄養成長期、生殖生長期、登熟期等が挙げられる。また、上記土壌処理において、本化合物を含有するペースト肥料等の固形肥料を土壌へ施用してもよい。また、本化合物を潅水液に混合してもよく、例えば、潅水設備(潅水チューブ、潅水パイプ、スプリンクラー等)への注入、条間湛水液への混入、水耕液へ混入等が挙げられる。また、あらかじめ潅水液と本化合物とを混合し、適切な潅水方法を用いて施用することができる。
本発明方法におけるイネ苗への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な濃度に希釈調製した希釈液を苗全体に散布する散布処理、粉剤に調製した本化合物を苗全体に付着させる塗布処理が挙げられる。また、苗を植えつける前又は植えつけた後の土壌への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な濃度に希釈調製した希釈液を、苗を植えつけた後に苗及び周辺土壌に散布する方法、粒剤又は粒剤等の固形剤に調製した本化合物を、苗を植えつけた後周辺土壌に散布する方法が挙げられる。
本化合物を、イネ又はイネの生育場所に処理する場合、その処理量は、処理するイネの生育ステージ、製剤形態、処理時期、気象条件、生育場所等によって変化させ得るが、10,000m2あたり、本化合物の純分として、通常0.1〜10,000グラム、好ましくは1〜1,000グラムの範囲である。
乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤等は、通常水で希釈して散布することにより処理する。この場合、本化合物の濃度は、通常0.1〜10,000ppm、好ましくは1〜1000ppmの範囲である。粉剤、粒剤等は通常希釈することなくそのまま処理する。
本発明におけるイネは、イネに除草剤耐性を付与する遺伝子や害虫に対する選択的毒素を産生する遺伝子、植物に病害抵抗性を付与する遺伝子、非生物的ストレスを緩和する遺伝子などが遺伝子組換え法あるいは交配育種によって導入された組換えイネであってもよく、これらを複数組み合わせたスタック品種であってもよい。
本化合物を、殺虫剤、殺菌剤、及び特定の除草剤に対するセーフナー等と同時にイネに施用してもよく、またそれらと同時に植物に施用してもよい。
本発明方法は、本化合物の処理されるイネが、非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろうイネであってもよい。
本発明方法による玄米の品質向上の効果は、当該非生物的ストレスが下記式で表される「ストレスの強さ」の値が105〜200、好ましくは110〜180、より好ましくは120〜160であるイネに対して、大きく発現する。
本発明方法による玄米の品質向上の効果は、当該非生物的ストレスが下記式で表される「ストレスの強さ」の値が105〜200、好ましくは110〜180、より好ましくは120〜160であるイネに対して、大きく発現する。
「ストレスの強さ」=100×「非生物的ストレス条件に暴露されていない植物におけるいずれか一つの植物表現型」/「非生物的ストレス条件に暴露された植物における当該いずれか一つの植物表現型」
ここで、「非生物的ストレス」とは、高温ストレス又は低温ストレスである温度ストレス、乾燥ストレス又は過湿ストレスである水分ストレス、塩ストレス等の非生物的ストレス条件に暴露された場合に植物細胞の生理機能の低下を来たし、植物の生理状態が悪化して生育が阻害されるようなストレスをいう。高温ストレスとは、植物の生育適温又は発芽適温よりも高い温度に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、植物が栽培されている環境における平均栽培温度が25℃以上、より厳しくは30℃以上、更に厳しくは35℃以上である条件を挙げることができる。低温ストレスとは、植物の生育適温又は発芽適温よりも低い温度に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、植物が栽培されている環境における平均栽培温度が15℃以下、より厳しくは10℃以下、更により厳しくは5℃以下である条件を挙げることができる。また、乾燥ストレスとは、植物は降雨量や灌水量の減少により土壌中の水分含量が減少し、吸水が阻害され植物の生育が阻害されるような水分環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌の種類により値は異なることがあるが、植物が栽培されている土壌含水率が15重量%以下、より厳しくは10重量%以下、更に厳しくは、7.5重量%以下が水分ストレスのある条件、又は、植物が栽培されている土壌のpF値が、2.3以上、厳しくは2.7以上、更に厳しくは3.0以上の条件を挙げることができる。過湿ストレスとは土壌中の水分含量が過剰になり植物の生育が阻害されるような水分環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌の種類により値は異なることがあるが、植物が栽培されている土壌含水率が30重量%以上、厳しくは40重量%以上、更に厳しくは50重量%以上の、又は、植物が栽培されている土壌のpF値が1.7以下、厳しくは1.0以下、更に厳しくは0.3以下である。なお、土壌のpF値は、「土壌・植物栄養・環境事典」(大洋社、1994年、松坂ら)の61〜62頁の「pF値測定法」に記述されている原理に従い、測定することができる。 また、塩ストレスとは、植物が栽培されている土壌あるいは水耕液中の塩類の蓄積により浸透圧が上昇し植物の吸水が阻害される結果、生育が阻害されるような環境に暴露された場合に受けるストレスをいい、具体的には、土壌あるいは水耕液中の塩による浸透圧ポテンシャルが0.2MPa(NaCl濃度では2,400ppm)以上、厳しくは0.25MPa以上、さらに厳しくは0.30MPaである条件である。土壌における浸透圧は、土壌を水で希釈して上澄み液の塩濃度を分析することによって、以下のラウールの式に基づいて求めることができる。
ラウールの式 π(atm)=cRT
R=0.082(L・atm/mol・K)
T=絶対温度(K)
c=イオンモル濃度(mol/L)
1atm=0.1MPa
R=0.082(L・atm/mol・K)
T=絶対温度(K)
c=イオンモル濃度(mol/L)
1atm=0.1MPa
本発明方法は、本化合物の処理されるイネが、高温ストレスに暴露された又は暴露されるであろうイネであってもよく、また低温ストレスに暴露された又は暴露されるであろうイネであってもよく、更に乾燥ストレスに暴露された又は暴露されるであろうイネであってもよい。いずれのイネにおいても、本発明方法により得られる玄米の品質向上が可能である。
以下、本発明を本化合物の製剤例及び試験例にてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。なお、以下の例において、部は特にことわりの無い限り重量部を示す。
製剤例1
本化合物1〜8のいずれかひとつの10部を、キシレン35部とN,N−ジメチルホルムアミド35部との混合物に溶解し、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル14部およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部を加え、良く攪拌混合して各々の10%乳剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの10部を、キシレン35部とN,N−ジメチルホルムアミド35部との混合物に溶解し、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル14部およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部を加え、良く攪拌混合して各々の10%乳剤を得る。
製剤例2
本化合物1〜8のいずれかひとつの20部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末20部および珪藻土54部を混合した中に加え、良く攪拌混合して各々の20%水和剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの20部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末20部および珪藻土54部を混合した中に加え、良く攪拌混合して各々の20%水和剤を得る。
製剤例3
本化合物1〜8のいずれかひとつの2部に、合成含水酸化珪素微粉末1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部およびカオリンクレー65部を加え充分攪拌混合する。ついでこれらの混合物に適当量の水を加え、さらに攪拌し、増粒機で製粒し、通風乾燥して各々の2%粒剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの2部に、合成含水酸化珪素微粉末1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部およびカオリンクレー65部を加え充分攪拌混合する。ついでこれらの混合物に適当量の水を加え、さらに攪拌し、増粒機で製粒し、通風乾燥して各々の2%粒剤を得る。
製剤例4
本化合物1〜8のいずれかひとつの1部を適当量のアセトンに溶解し、これに合成含水酸化珪素微粉末5部、PAP0.3部およびフバサミクレー93.7部を加え、充分攪拌混合し、アセトンを蒸発除去して各々の1%粉剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの1部を適当量のアセトンに溶解し、これに合成含水酸化珪素微粉末5部、PAP0.3部およびフバサミクレー93.7部を加え、充分攪拌混合し、アセトンを蒸発除去して各々の1%粉剤を得る。
製剤例5
本化合物1〜8のいずれかひとつの10部;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩50部を含むホワイトカーボン35部;および水55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、各々の10%フロアブル剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの10部;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩50部を含むホワイトカーボン35部;および水55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、各々の10%フロアブル剤を得る。
製剤例6
本化合物1〜8のいずれかひとつの0.1部をキシレン5部およびトリクロロエタン5部に溶解し、これを脱臭灯油89.9部に混合して各々の0.1%油剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの0.1部をキシレン5部およびトリクロロエタン5部に溶解し、これを脱臭灯油89.9部に混合して各々の0.1%油剤を得る。
試験例1 イネ(米)の品質評価試験
〔供試植物の調製〕
406穴プラグトレーの穴にろ紙を載せ、表面消毒したイネ種子をろ紙上に播種した。2倍希釈した木村B水耕液(Plant Science 119:39-47 (1996))を用い、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:8500Lux、日長12時間の条件下で、14日間栽培した。
このイネ苗を、培土を詰めたプラスチックポット(直径70mm×高さ70mm)に1個体ずつ移植し、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:20,000Lux、日長12時間の条件下で、約50日間栽培し、供試植物を調製した。
〔供試植物に対する本化合物の施用〕
前記供試植物に本化合物1の水溶液(本化合物1の濃度:10ppm)を1個体あたり170mlの割合で灌注施用した。また、対照として、本化合物1の水溶液の代わりに水道水を灌注した。
〔本化合物施用後の植物を、適温条件下または高温ストレス条件下での栽培〕
前記の本化合物1を施用したイネ苗を適温条件下、または、高温ストレス条件下で栽培した。高温ストレス条件下での栽培は、温度:28℃/28℃(昼/夜)、照度:20,000Lux、日長12時間の条件に設定した人工気象器内で、前記のイネ苗を種子が完熟するまで約30日間栽培することにより実施した。適温条件下での栽培は、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:20,000Lux、日長12時間の条件に設定した人工気象器内で、同様に約30日間栽培することにより実施した。
〔玄米の品質評価〕
適温条件および高温ストレス条件下で栽培し、完熟したイネの主茎の種子を収穫し、籾殻を剥いた玄米を穀粒判別器(RGQI 20A;サタケ社製)で評価した。評価は、1試験区あたり12個体をまとめて評価した。
下表に示すとおり、本化合物1を施用したイネから収穫された玄米(本発明区)は、本化合物1を施用しなかったイネから収穫された玄米(対照区)に対して、適温条件区および高温ストレス条件区、いずれにおいても登熟歩合および整粒歩合が向上しており、未熟粒の比率も減少した。
特に高温ストレス条件区では、未熟粒のうちの白未熟粒(乳白粒、基部未熟粒および腹白未熟粒の合計)の割合が、本発明区で大きく減少した。
適温条件区:対照区 3.9% → 本発明区 2.3%;
高温ストレス区: 対照区 26.8% → 本発明区 15.2%。
〔供試植物の調製〕
406穴プラグトレーの穴にろ紙を載せ、表面消毒したイネ種子をろ紙上に播種した。2倍希釈した木村B水耕液(Plant Science 119:39-47 (1996))を用い、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:8500Lux、日長12時間の条件下で、14日間栽培した。
このイネ苗を、培土を詰めたプラスチックポット(直径70mm×高さ70mm)に1個体ずつ移植し、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:20,000Lux、日長12時間の条件下で、約50日間栽培し、供試植物を調製した。
〔供試植物に対する本化合物の施用〕
前記供試植物に本化合物1の水溶液(本化合物1の濃度:10ppm)を1個体あたり170mlの割合で灌注施用した。また、対照として、本化合物1の水溶液の代わりに水道水を灌注した。
〔本化合物施用後の植物を、適温条件下または高温ストレス条件下での栽培〕
前記の本化合物1を施用したイネ苗を適温条件下、または、高温ストレス条件下で栽培した。高温ストレス条件下での栽培は、温度:28℃/28℃(昼/夜)、照度:20,000Lux、日長12時間の条件に設定した人工気象器内で、前記のイネ苗を種子が完熟するまで約30日間栽培することにより実施した。適温条件下での栽培は、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:20,000Lux、日長12時間の条件に設定した人工気象器内で、同様に約30日間栽培することにより実施した。
〔玄米の品質評価〕
適温条件および高温ストレス条件下で栽培し、完熟したイネの主茎の種子を収穫し、籾殻を剥いた玄米を穀粒判別器(RGQI 20A;サタケ社製)で評価した。評価は、1試験区あたり12個体をまとめて評価した。
下表に示すとおり、本化合物1を施用したイネから収穫された玄米(本発明区)は、本化合物1を施用しなかったイネから収穫された玄米(対照区)に対して、適温条件区および高温ストレス条件区、いずれにおいても登熟歩合および整粒歩合が向上しており、未熟粒の比率も減少した。
特に高温ストレス条件区では、未熟粒のうちの白未熟粒(乳白粒、基部未熟粒および腹白未熟粒の合計)の割合が、本発明区で大きく減少した。
適温条件区:対照区 3.9% → 本発明区 2.3%;
高温ストレス区: 対照区 26.8% → 本発明区 15.2%。
本発明方法を用いることによって、効果的に玄米の品質を向上させることが可能となる。
Claims (4)
- 式(1)で示される化合物が、下記の化合物群Aから選ばれる化合物である請求項1に記載の方法。
<化合物群A>
(1)5-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(2)6-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(3)4-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(4)7-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル - イネへの施用が、幼穂形成期から出穂期の期間に実施されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
- イネが、高温ストレスに暴露された又は暴露されるであろうイネである請求項1〜3のいずれか記載の方法。
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