JP2016016140A - 人工乳房の製造方法、人工乳房本体、および、人工乳房 - Google Patents

人工乳房の製造方法、人工乳房本体、および、人工乳房 Download PDF

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紀之 池山
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豊克 小澤
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Midori Kaoka
緑 歌岡
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【課題】幅広い年代の装着者に対応することが可能であり、入浴時等に他人に見られてもそれほど気にせずに済む、比較的安価な人工乳房を提供する。【解決手段】人工乳房1の製造方法は、準備工程と、貼り付け工程とを有する。準備工程では、乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部201を備え、シリコーンゴムよりなる乳房基材20を有する人工乳房本体2と、人工乳房本体2の乳房表面部201に貼り付けるための人工乳首3とが準備される。貼り付け工程では、人工乳房本体2の乳房表面部201に人工乳首3が貼り付けられる。【選択図】図3

Description

本発明は、人工乳房の製造方法、人工乳房本体、および、人工乳房に関する。
従来、乳房が切除された後の胸部に接着により装着される胸部装着型の人工乳房が知られている。この種の人工乳房は、一般に、切除される前の乳房あるいは残されている正常な乳房を型取りすることにより、完全なオーダーメイドで製造されている。そのため、上記人工乳房は、その膨らみ表面に乳首に対応する部分が予め一体成形される等、精巧に乳房形状が表現されているのが通常である。
また、上記のような胸部装着型の人工乳房ではなく、ブラジャーのカップにて保持されて使用されるバストパッドもある。この種のバストパッドは、乳房が切除された後の胸部にカップの保形に適した膨らみを与えることにより、衣服が着用された状態における装着者の胸部外観を違和感の少ないものにする。
上記バストパッドとしては、例えば、特許文献1に、ポリウレタンフィルムにてシリコーンゲルを覆ってなるバストパッドが開示されている。バストパッドは、基本的には、入浴時等に他人に見せない・見られないことを前提とする。そのため、バストパッドは、その膨らみ表面に乳首に対応する部分が形成されず、乳首まで含んで精巧に乳房形状が表現されることがないのが通常である。
特開2011−160909号公報
上述した従来技術は、以下の点で改良の余地がある。すなわち、完全なオーダーメイドによる人工乳房は、装着者の加齢による自然な乳房状態が十分に考慮され、細部にわたって精巧に乳房を模して製造される。そのため、上記人工乳房は、入浴時等に他人に見られても違和感が少ない。しかし、上記人工乳房は、製造に手間がかかるため、価格が高くなりがちである。
一方、バストパッドは、通常、乳房が寄せられたり、上げられたりしてブラジャーのカップ内に収容された状態における乳房形状を模して製造される。つまり、バストパッドは、装着者の加齢による自然な乳房状態が考慮されることなく製造される。そのため、バストパッドは、量産に適しており、その分、価格を低く抑えることができる。しかし、バストパッドは、乳房の切除位置に装着された場合に、正常な乳房との形状が全く異なるため、左右のバランスがとれない。それ故、バストパッドは、入浴時等に他人に見られることに対して対応することができない。
なお、上述したポリウレタンフィルムが用いられたバストパッドは、胸部に接着された場合に、蒸れが生じやすい。また、ポリウレタンフィルムの劣化によるひび割れ等も生じやすい。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、幅広い年代の装着者に対応することが可能であり、入浴時等に他人に見られてもそれほど気にせずに済む、比較的安価な人工乳房を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部を備え、シリコーンゴムよりなる乳房基材を有する人工乳房本体と、該人工乳房本体の上記乳房表面部に貼り付けるための人工乳首とを準備する準備工程と、
上記人工乳房本体の上記乳房表面部に上記人工乳首を貼り付ける貼り付け工程とを有することを特徴とする人工乳房の製造方法にある。
本発明の他の態様は、乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部を備え、シリコーンゴムよりなる乳房基材を有することを特徴とする人工乳房本体にある。
本発明のさらに他の態様は、上記人工乳房本体と、該人工乳房本体における上記乳房表面部に貼り付けられている人工乳首とを有することを特徴とする人工乳房にある。
上記人工乳房の製造方法は、上記準備工程と、上記貼り付け工程とを有している。そのため、上記人工乳房の製造方法では、同じ人工乳房本体を用いた場合でも、人工乳首における乳輪の大きさ、乳頭形状、乳首色、人工乳首の貼り付け位置等を変えることができる。これに加え、左右の乳房形状(乳首形状は除く、以下省略)、乳房の大きさ、乳房色等を変えた異なる人工乳房本体を用いれば、さらに種々の条件の組み合わせによる人工乳房を構成することができる。それ故、上記人工乳房の製造方法によれば、幅広い年代の装着者における自然な乳房状態を表現可能な人工乳房が得られる。
また、上記人工乳房の製造方法では、バストパッドではなく、ブラジャーをつけていない自然な状態の乳房の膨らみが模された人工乳房本体が用いられる。そのため、人工乳房本体の乳房表面部に貼り付けられた人工乳首との相乗効果により、入浴時等に他人に見られてもそれほど気にせずに済む人工乳房が得られる。
また、人工乳房本体は、平均的な女性の自然な乳房を模して予め作製しておくことができる。一方、人工乳首は、主として、筋皮弁法やインプラント法等により乳房再建の手術を受ける患者に一時的に適用されているもの等を流用することができる。それ故、上記人工乳房の製造方法は、完全なオーダーメイドにより人工乳房を製造する場合に比べ、比較的安価に人工乳房を製造することができる。
なお、人工乳房本体は、シリコーンゴム製である。そのため、上述したバストパッドに比べて、柔らかい着け心地で肌に優しく、蒸れの少ない人工乳房が得られる。
次に、上記人工乳房本体は、乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部を備え、シリコーンゴムよりなる乳房基材を有している。そのため、上記人工乳房本体は、上記人工乳房の製造方法の実施に好適に用いることができる。
次に、上記人工乳房は、上記人工乳房本体と、上記人工乳房本体における乳房表面部に貼り付けられている人工乳首とを有している。上記人工乳房は、上記人工乳房の製造方法を実施することにより、容易に実現することができる。
よって、本発明によれば、幅広い年代の装着者に対応することが可能であり、入浴時等に他人に見られてもそれほど気にせずに済む、比較的安価な人工乳房を提供することができる。
さらに、上記人工乳房の製造方法、上記人工乳房本体、または、上記人工乳房によれば、完全なオーダーメイドではなく、患者等の装着者自身の年齢や体型等に合わせて最適な組み合わせを自在にアレンジ可能なセレクト・オーダーによる人工乳房を比較的安価に提供することが可能になる。
実施例1の人工乳房の製造方法に用いられる人工乳房本体(左側)の正面図である。 実施例1の人工乳房の製造方法に用いられる人工乳房本体の背面図である。 図1におけるIII−III断面図である。 図1におけるIV−IV断面図である。 図2におけるV−V断面図である。 実施例1の人工乳房の製造方法に用いられる人工乳首の正面図である。 図6におけるVII−VII断面図である。 実施例1の人工乳房の製造方法により得られる人工乳房(左側)の正面図である。 実施例1の人工乳房の製造方法を適用して得られた人工乳房(右側、乳房の大きさ:Lサイズ、乳輪の大きさ:Sサイズ)の外観写真であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。 実施例1の人工乳房の製造方法を適用して得られた人工乳房(右側、乳房の大きさ:Lサイズ、乳輪の大きさ:Mサイズ)の外観写真であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。 実施例1の人工乳房の製造方法を適用して得られた人工乳房(右側、乳房の大きさ:Lサイズ、乳輪の大きさ:Lサイズ)の外観写真であり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図である。
上記準備工程において、人工乳房本体は、左右の乳房形状、乳房の大きさ、および、乳房色から選択される2種以上の条件が組み合わされて予め作製された複数の既製の人工乳房本体からなる群より選択されることによって準備されることが好ましい。
この場合には、人工乳房本体と人工乳首との組み合わせパターンを比較的容易に増加させることができる。そのため、この場合には、様々な組み合わせパターンから装着者に最適な人工乳房を得やすくなる。それ故、この場合には、幅広い年代の装着者の自然な乳房状態を表現しやすくなり、幅広い年代の装着者に対応しやすい人工乳房が得られる。また、この場合には、予め準備された既製の人工乳房本体を使用するため、比較的安価な人工乳房を提供しやすくなる。
上記準備工程において、人工乳首は、乳輪の大きさ、乳頭形状、および、乳首色から選択される2種以上の条件が組み合わされて予め作製された複数の既製の人工乳首からなる群より選択されることによって準備されることが好ましい。
この場合にも、人工乳房本体と人工乳首との組み合わせパターンを比較的容易に増加させることができる。そのため、この場合にも、既製の人工乳房本体を使用する場合と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記準備工程において、人工乳房本体と人工乳首との両方が、上述した既製の人工乳房本体の群と既製の人工乳首の群とから選択されて準備される場合には、人工乳房本体と人工乳首との組み合わせパターンをより一層増加させることができる。そのため、この場合には、上記作用効果をより一層大きくすることができる。
上記人工乳房本体は、乳房基材における乳房表面部と反対側の乳房裏面部に積層されており、かつ、シリコーンゲルよりなる粘着層をさらに有している構成とすることができる。
この場合には、接着剤をつけることなく粘着層により胸部の肌に直接装着することが可能な人工乳房が得られる。また、リムーバーにて接着剤を剥がさなくても済むため、着け外しの容易な人工乳房が得られる。それ故、この場合には、人工乳房の着け外しの際に装着者が感じる煩わしさを軽減しやすい人工乳房が得られる。また、人工乳房の着け直しも容易に行うことが可能となる。なお、人工乳房本体が粘着層を有さない場合には、乳房裏面部に接着剤を塗布し、胸部に人工乳房を接着すればよい。
乳房裏面部において、粘着層は、同じ厚みで形成されていてもよいし、異なる厚みで形成されていてもよい。粘着層は、具体的には、乳房裏面部の内側から外側に向かって厚みが薄くなる部分を含むことができる。この場合には、粘着性を確保しつつ、より自然な形で装着者の胸部に取り着けやすい人工乳房が得られる。
上記人工乳房本体は、乳房裏面部における外周縁部を残した状態で、乳房裏面部から乳房表面部側に向かって窪んだ窪み部を有しており、外周縁部の表面に粘着層が積層されている構成とすることができる。
この場合には、窪み部により、人工乳房の柔軟性を向上させることができる。また、窪み部の分だけ、軽量化を図ることができる。また、窪み部の分だけ、乳房基材の材料を節約することができるため、比較的安価な人工乳房をより一層提供しやすくなる。なお、窪み部は、乳房表面部に開口しないように形成される。また、型成形性の向上の観点から、窪み部は、アンダーカット部分を有さない形状に形成されているとよい。
上記窪み部を有する場合、粘着層の厚みの最大値は、人工乳房を胸部へ取り着ける際の圧力により粘着させやすくなる等の観点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上とすることができる。また、粘着層の厚みの最大値は、人工乳房を胸部から取り外す際の粘着層の過度な伸びを抑制し、使いやすさを向上させる等の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは9mm以下、さらに好ましくは8mm以下とすることができる。なお、粘着層の厚みは、後述する溝部がない部分における窪み部の外縁部位にて測定される値である。
また、粘着層は、胸部への接地面を確保しやすく、使用時に簡単に人工乳房が外れ難くなる等の観点から、乳房裏面部の外側から内側に向かう長さが、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上であるとよい。また、粘着層は、人工乳房を胸部から取り外す際に適度な力で取り外しやすくなる等の観点から、乳房裏面部の外側から内側に向かう長さが、好ましくは50mm以下、より好ましくは45mm以下、さらに好ましくは40mm以下、さらにより好ましくは35mm以下であるとよい。
上記人工乳房本体は、上記外周縁部における下方側に、外周縁部から窪み部にわたって形成された複数の溝部を有している構成とすることができる。
この場合には、複数の溝部が蛇腹のように機能することにより、胸部の凹凸状態に対する追従性に優れた人工乳房が得られる。そのため、この場合には、胸部の凹凸状態に合わせやすい人工乳房が得られる。
上記溝部を有する場合、粘着層の一部は溝部内にも存在していることが好ましい。この場合には、溝部内に入り込んだ粘着層の部分と溝部の内周面とが接触する分、粘着層と乳房基材との接触面積が増加する。そのため、粘着層と乳房基材との密着性が向上し、粘着層が乳房基材から剥離し難くなる。そのため、人工乳房の耐久性向上に寄与することができる。なお、この場合には、溝部部分において粘着層の厚みが部分的に厚くなる。
上記窪み部を有する場合、乳房基材の厚みは、柔軟性と強度とのバランス等の観点から、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上とすることができる。また、乳房基材の厚みは、人工乳房の強度等の観点から、好ましくは15mm以下、より好ましくは14mm以下、さらに好ましくは13mm以下とすることができる。なお、上記乳房基材の厚みは、立ち上がり部を避けた窪み部の部分にて測定される値である。
上記人工乳房本体における乳房表面部への人工乳首の貼り付けには、例えば、接着剤や粘着剤等を用いることができる。
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
以下、実施例の人工乳房の製造方法、人工乳房本体、および、人工乳房について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
(実施例1)
実施例1の人工乳房の製造方法、人工乳房本体、および、人工乳房について、図1〜図11を用いて説明する。本例の人工乳房の製造方法は、準備工程と、貼り付け工程とを有している。図1〜図8に示すように、準備工程では、本例の人工乳房本体2と、人工乳首3とが準備される。人工乳房本体2は、乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部201を備えた乳房基材20を有している。乳房基材20は、シリコーンゴムよりなる。また、人工乳首3は、人工乳房本体2の乳房表面部201に貼り付けるためのものである。以下、詳説する。
本例において、人工乳房本体2は、乳房基材20における乳房表面部201と反対側の乳房裏面部202に積層された粘着層21を有している。粘着層21は、シリコーンゲルよりなる。本例では、図3に示されるように、縦断面における粘着層21の表面は、乳房が切除された後の胸部表面の曲線C1に概ね沿うように形成されている。また、図4に示されるように、横断面における粘着層21の表面も、上記と同様に、乳房が切除された後の胸部面の曲線C2に概ね沿うように形成されている。なお、曲線C1および曲線C2は、具体的には、多数の装着者の胸部を計測して得られたデータに基づいて決定することができる。
また、人工乳房本体2は、乳房裏面部202における外周縁部203を残した状態で、乳房裏面部202から乳房表面部201側に向かって窪んだ窪み部204を有している。粘着層21は、この乳房裏面部202における外周縁部203の表面に積層されている。そのため、人工乳房本体2を乳房裏面部202側から見た場合に、粘着層21は、窪み部204の外周を取り囲むように存在している。外周縁部203における下方側には、図2および図5に示されるように、外周縁部203から窪み部204にわたって複数の溝部205が形成されている。複数の溝部205は、互いに離間して形成されている。なお、図2において、粘着層21の下にある溝部205が描かれているのは、本例では、半透明色の粘着層21が用いられており、溝部205が透けて見えることによる。
人工乳房本体2において、粘着層21は、乳房裏面部202の外側から内側に向かう長さが20mm以上とされている。また、粘着層21は、乳房裏面部202の内側から外側に向かって厚みが漸次薄くなるように形成されている。粘着層21の厚みの最大値は、約5mmである。但し、本例では、粘着層21は、その一部が溝部205内にも存在している。したがって、溝部205部分において粘着層21の厚みが部分的に厚くなっている。上記粘着層21の厚みの最大値は、溝部205がない部分における窪み部204の外縁部位にて測定される値である。なお、図3に示される乳房基材20の厚みtは、約10mmである。
一方、本例において、人工乳首3は、乳頭部30と乳輪部31とを有しておれば、その構造は特に限定されない。本例では、具体的には、図6、図7に示されるように、人工乳首3は、乳首基材20と、乳首基材20における乳首表面側に形成されており、乳頭部30および乳輪部31の表層となるスキン層302とを有している。人工乳首3は、シリコーンゴムよりなる。なお、本例の人工乳首3は、乳頭部30における乳首基材301がスキン層302側へ窪んで形成された窪み305を有している。当該窪み305は、人工乳房本体2の乳房表面部201に人工乳首3が貼り付けられた際に、接着剤や粘着剤が入り込むことによって人工乳房本体2と人工乳首3との密着性を向上させるのに役立つ。
ここで、上記準備工程では、人工乳房本体2は、左右の乳房形状、乳房の大きさ、および、乳房色から選択される2種以上の条件が組み合わされて予め作製された複数の既製の人工乳房本体2からなる群より選択されることによって準備される。なお、既製の人工乳房本体2の基本的な構成は上述した通りである。
本例では、具体的には、複数の既製の人工乳房本体2は、左右の乳房形状、乳房の大きさ、および、乳房色の各条件が組み合わされて予め作製される。乳房の大きさは、より具体的には、Sサイズ(正面から見て、縦130mm×横140mm)、Mサイズ(正面から見て、縦140mm×横145mm)、Lサイズ(正面から見て、縦155mm×横150mm)の3種類である。また、乳房色は、より具体的には、ライトオークルとナチュラルオークルの2種類である。したがって、本例では、複数の既製の人工乳房本体2からなる群は、12種類の人工乳房本体2より構成されている。
また、上記準備工程では、人工乳首3は、乳輪の大きさ、乳頭形状、および、乳首色から選択される2種以上の条件が組み合わされて予め作製された複数の既製の人工乳首3からなる群より選択されることによって準備される。なお、既製の人工乳首3の基本的な構成は上述した通りである。
本例では、具体的には、複数の既製の人工乳首3は、乳輪の大きさ、乳頭形状、および、乳首色の各条件が組み合わされて予め作製される。乳輪の大きさは、より具体的には、Sサイズ(正面から見て、縦30mm×横35mm)、Mサイズ(正面から見て、縦36mm×横41mm)、Lサイズ(正面から見て、縦44mm×横50mm)の3種類である。また、乳頭形状は、より具体的には、縦11mm×横11mm×高さ4mm、縦13mm×横12mm×高さ7mmの2種類である。また、乳首色は、より具体的には、ライトブラウン、ブラウン、ダークブラウン、および、ピンクの4種類である。したがって、本例では、複数の既製の人工乳首3からなる群は、24種類の人工乳首3より構成されている。
本例において、人工乳房本体2は、例えば、次のようにして作製することができる。なお、人工乳房本体2の作製方法は、以下の作製方法に限定されるものではない。
所定の顔料を含む付加反応硬化型RTVシリコーンゴム材料からなる乳房基材形成用材料を石膏製のメス型に流し込む。メス型は、乳首に対応する部分のない乳房表面部201の外形を乳房基材形成用材料に転写可能な凹部を有している。なお、上記付加反応硬化型RTVシリコーンゴムとしては、例えば、硬化後にISO868に準拠して測定されるShoreA硬度が0以下のものを用いることができる。次いで、乳房基材形成用材料が流し込まれたメス型の上に石膏製の第1オス型を型締めし、乳房基材形成用材料を半硬化させる。第1オス型は、乳房裏面部202の形状(本例では、窪み部204、外周縁部203を含む)を乳房基材形成用材料に転写可能な第1凸部を有している。
次いで、半硬化させた乳房基材20を残したまま、第1オス型を外す。次いで、この乳房基材20が残されたメス型の上に石膏製の第2オス型を型締めする。第2オス型は、型閉じされた際に、乳房基材20の乳房裏面部202(本例では、外周縁部203)の表面と型面との間に粘着層形成用の空間を形成可能な第2凸部を有している。また、第2オス型は、上記空間に粘着層形成用材料を注入可能な注入口を有している。なお、メス型と第2オス型との型閉じ後、両型の合わせ目に形成された隙間は、外側からシールされる。次いで、上記注入口より、付加反応硬化型RTVシリコーンゲル材料からなる粘着層形成用材料を注入し、上記空間内にて粘着層形成用材料をゲル状に硬化させるとともに、乳房基材を完全に硬化させる。なお、上記付加反応硬化型RTVシリコーンゲルとしては、例えば、ゲル状に硬化した後にJIS K2220に準拠して測定される針入度(ちょう度、1/4円すい、9.388g)が約80[mm/10]のものを用いることができる。次いで、形成された人工乳房本体2を脱型する。これにより、人工乳房本体2が得られる。なお、上記において、人工乳房本体2の外形は、多数の装着者の乳房を型取りして得られたデータから平均的な女性の自然な乳房形状を算出ことにより決定されている。
一方、本例において、人工乳首3は、乳房再建の手術を受ける患者に一時的に適用されているものを流用することにより準備することができる。本例では、市販の人工乳首3(池山メディカルジャパン社製、「既製ニップル PNI02」シリーズ)が用いられる。
上記人工乳房の製造方法における貼り付け工程では、具体的には、縮合反応硬化型シリコーン接着剤が乳首裏面部に塗布された人工乳首3が、人工乳房本体2の乳房表面部201における所定位置に貼り付けられる。なお、貼り付け位置は、装着者の年齢や体型等を考慮して決定される。
以上により、図8に示されるように、人工乳房本体2と、人工乳房本体2における乳房表面部201に貼り付けられている人工乳首3とを有する人工乳房1が得られる。
図9〜図11に、上述した本例の人工乳房の製造方法を適用して得られた人工乳房の外観を示す。図9〜図11において、人工乳房本体は、いずれも、乳房形状が右側、乳房の大きさがLサイズ、乳房色がライトオークルであり、同一のものである。但し、図9における人工乳首は、乳輪の大きさがSサイズであり、乳首色はピンクである。図10における人工乳首は、乳輪の大きさがMサイズであり、乳首色はブラウンである。図11における人工乳首は、乳輪の大きさがLサイズであり、乳首色はライトブラウンである。なお、乳頭形状は、いずれも同一である(縦13mm×横12mm×高さ7mm)。また、図9における人工乳首は、図10における人工乳首よりも上側に貼り着けられている。図11における人工乳首は、図10における人工乳首よりも下側に貼り着けられている。
図9〜図11に示されるように、同じ人工乳房本体を用いた場合でも、人工乳首における乳輪の大きさ、乳頭形状、乳首色、人工乳首の貼り付け位置等を変えることにより、幅広い年代の装着者における自然な乳房状態を表現可能な人工乳房が得られることがわかる。具体的には、図9〜図11では、図9、図10、図11の人工乳房の順に、加齢により乳房が下垂している状態がよく表現されていることがわかる。また、上記の結果から、左右の乳房形状、乳房の大きさ、乳房色等を変えた人工乳房本体を複数準備することにより、さらに種々の条件の組み合わせによる人工乳房を構成可能であることがわかる。本例では、具体的には、人工乳房本体が12種類、人工乳首が24種類準備される。そのため、少なくとも288通りの人工乳房を提供することが可能である。さらに、人工乳房本体への人工乳首の貼り付け位置を含めると、288通り以上の人工乳房を提供することが可能であるといえる。
以上のように、本例の人工乳房の製造方法は、上記準備工程と、上記貼り付け工程とを有している。そのため、上記人工乳房の製造方法は、同じ人工乳房本体を用いた場合でも、人工乳首における乳輪の大きさ、乳頭形状、乳首色、人工乳首の貼り付け位置等を変えることができる。これに加え、左右の乳房形状、乳房の大きさ、乳房色等を変えた異なる人工乳房本体を用いれば、さらに種々の条件の組み合わせによる人工乳房を構成することができる。それ故、上記人工乳房の製造方法によれば、幅広い年代の装着者における自然な乳房状態を表現可能な人工乳房が得られる。
特に、本例の人工乳房の製造方法では、人工乳房本体と人工乳首との両方が、上述した既製の人工乳房本体の群と既製の人工乳首の群とから選択されて準備される。そのため、本例の人工乳房の製造方法は、人工乳房本体と人工乳首との組み合わせパターンをより一層増加させることができる。そのため、本例の人工乳房の製造方法によれば、上記作用効果をより一層大きくすることができる。
また、本例の人工乳房の製造方法では、バストパッドではなく、ブラジャーをつけていない自然な状態の乳房の膨らみが模された人工乳房本体が用いられる。そのため、人工乳房本体の乳房表面部に貼り付けられた人工乳首との相乗効果により、入浴時等に他人に見られてもそれほど気にせずに済む人工乳房が得られる。
また、本例の人工乳房の製造方法によれば、人工乳房本体は、平均的な女性の自然な乳房を模して予め作製しておくことができる。一方、人工乳首は、主として、筋皮弁法やインプラント法等により乳房再建の手術を受ける患者に一時的に適用されているものを流用することができる。それ故、上記人工乳房の製造方法は、完全なオーダーメイドにより人工乳房を製造する場合に比べ、比較的安価に人工乳房を製造することができる。
なお、人工乳房本体は、シリコーンゴム製である。そのため、上述したバストパッドに比べて、柔らかい着け心地で肌に優しく、蒸れの少ない人工乳房が得られる。
次に、本例の人工乳房本体は、乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部を備え、シリコーンゴムよりなる乳房基材を有している。そのため、上記人工乳房本体は、上記人工乳房の製造方法の実施に好適に用いることができる。
次に、本例の人工乳房は、上記人工乳房本体と、上記人工乳房本体における乳房表面部に貼り付けられている人工乳首とを有している。上記人工乳房は、上記人工乳房の製造方法を実施することにより、容易に実現することができる。
よって、本例の人工乳房の製造方法、人工乳房本体、人工乳房によれば、幅広い年代の装着者に対応することが可能であり、入浴時等に他人に見られてもそれほど気にせずに済む、比較的安価な人工乳房を提供することが可能になるといえる。
さらに、本例の人工乳房の製造方法、人工乳房本体、人工乳房によれば、完全なオーダーメイドではなく、患者等の装着者自身の年齢や体型等に合わせて最適な組み合わせを自在にアレンジ可能なセレクト・オーダーによる人工乳房を比較的安価に提供することが可能になるといえる。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
1 人工乳房
2 人工乳房本体
20 乳房基材
201 乳房表面部
3 人工乳首

Claims (9)

  1. 乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部を備え、シリコーンゴムよりなる乳房基材を有する人工乳房本体と、該人工乳房本体の上記乳房表面部に貼り付けるための人工乳首とを準備する準備工程と、
    上記人工乳房本体の上記乳房表面部に上記人工乳首を貼り付ける貼り付け工程とを有することを特徴とする人工乳房の製造方法。
  2. 上記準備工程において、
    上記人工乳房本体は、左右の乳房形状、乳房の大きさ、および、乳房色から選択される2種以上の条件が組み合わされて予め作製された複数の既製の人工乳房本体からなる群より選択されることによって準備されることを特徴とする請求項1に記載の人工乳房の製造方法。
  3. 上記準備工程において、
    上記人工乳首は、乳輪の大きさ、乳頭形状、および、乳首色から選択される2種以上の条件が組み合わされて予め作製された複数の既製の人工乳首からなる群より選択されることによって準備されることを特徴とする請求項1または2に記載の人工乳房の製造方法。
  4. 上記人工乳房本体は、
    上記乳房基材における上記乳房表面部と反対側の乳房裏面部に積層されており、かつ、シリコーンゲルよりなる粘着層をさらに有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工乳房の製造方法。
  5. 乳房の膨らみが模されているとともに乳首に対応する部分が形成されていない乳房表面部を備え、シリコーンゴムよりなる乳房基材を有することを特徴とする人工乳房本体。
  6. 上記乳房基材における上記乳房表面部と反対側の乳房裏面部に積層されており、シリコーンゲルよりなる粘着層をさらに有していることを特徴とする請求項5に記載の人工乳房本体。
  7. 上記乳房裏面部における外周縁部を残した状態で、上記乳房裏面部から上記乳房表面部側に向かって窪んだ窪み部を有しており、
    上記外周縁部の表面に上記粘着層が積層されていることを特徴とする請求項6に記載の人工乳房本体。
  8. 上記外周縁部における下方側に、上記外周縁部から上記窪み部にわたって形成された複数の溝部を有していることを特徴とする請求項7に記載の人工乳房本体。
  9. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の人工乳房本体と、該人工乳房本体における上記乳房表面部に貼り付けられている人工乳首とを有することを特徴とする人工乳房。
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