JP2016007166A - 細胞培養器具の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞培養表面のコートに必要な量以上のコート液を使用することなく、均一なコートが可能で、且つ余分なコート液をアスピレートして取り除く必要がない、細胞培養器具の製造方法の提供。【解決手段】第1のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液、もしくは、水又はエタノールのうちいずれか1つをコート液としてコートし、第2のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液をコート液として、スピンコート法によってコートする。【選択図】図1
Description
本発明は、細胞や組織片などの被培養物を培養する細胞培養器具の製造方法に関する。
生体細胞等の培養は、被培養物が収容された例えばシャーレのように高い光透過性の平板状の底部と筒状の側部を有する容器本体、この本体を上方から施蓋する蓋体とからなる容器が用いられる。このような細胞培養容器としては、その他に、複数の囲繞部が例えばマトリクス状に配置されてなるマイクロプレートや、マルチウェルプレート等と呼称される容器がある。
前記細胞培養容器の全体又は一部に、細胞接着抑制剤を被覆することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。細胞接着抑制剤を被覆することで、培養箇所以外に細胞が接着することを抑制できる。
さらに培養容器にコラーゲンをコートすることで接着系細胞に優れた特性が与えられることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。コラーゲン溶液を入れて放置した後、コラーゲン溶液を取り除く工程、培養容器を純水で洗浄する工程、室温で乾燥させる工程が記載されている。
また、基材表面の細胞培養に供する部分が、ε−ポリリジン及びその塩から選ばれた少なくとも1種によりコーティングされることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。ε−ポリリジン類のコーティング量が目的量となるように、ε−ポリリジン類溶液をスピンコート、バーコート等のコーティング法により塗布することが記載されているが、この場合、基材表面にε−ポリリジン類の溶液に接触させる工程の後に、コーティング量を調整するため、過剰なε−ポリリジン類の溶液をアスピレートして取り除くことが好ましいと記載されている。
しかし、除去したコート液はコートする物質が培養容器に付着したことにより溶液の濃度が低くなっていることから、一般的に再利用が不可能である。また、必要量以上のコート液を用いることで、コストも大きくなる。さらに、コート液をアスピレートして取り除く作業に手間もかかる。そのため、少ない液量でコートを行うことが望まれている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、コートに必要な量以上のコート液を使用することなく、均一なコートが可能で、且つ余分なコート液をアスピレートして取り除く必要がない、細胞培養器具の製造方法の提供を目的とする。
上記した課題は、以下の(1)から(10)に記載した本発明により達成される。
(1)細胞を培養する用途に使用される器具の製造方法において、細胞培養表面のコート工程に、
第1のコート工程と、その後に行う第2のコート工程を有し
前記第1のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液、もしくは、水又はエタノールのうちいずれか1つをコート液としてコートし、
前記第2のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液をコート液として、スピンコート法によってコートすることを特徴とする、細胞培養器具の製造方法。
(2)前記第1のコート工程は、スピンコート法によって行うことを特徴とする、(1)に記載の細胞培養器具の製造方法。
(3)前記第1のコート工程は、回転数1500〜2500rpmでスピンコートすることを特徴とする、(2)に記載の細胞培養器具の製造方法。
(4)前記第1のコート工程は、コート液を培養器具の表面積に対し、7.00×10−5〜2.50×10−4mL/mm2用いてスピンコートすることを特徴とする(2)又は(3)の細胞培養器具の製造方法。
(5)前記第2のコート工程は、回転数300〜1500rpmでスピンコートすることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(6)前記第2のコート工程は、コート液を培養器具の表面積に対し、3.50×10−5〜1.80×10−4mL/mm2用いてスピンコートすることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(7)前記コート工程において、コート液に用いるたんぱく質は、コラーゲンであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(8)前記第1のコート工程において、コラーゲン濃度が0〜0.12mg/mLのコート液を用いることを特徴とする、(7)の細胞培養器具の製造方法。
(9)前記第2のコート工程において、コラーゲン濃度が0.13〜0.50mg/mLのコート液を用いることを特徴とする、(7)又は(8)の細胞培養器具の製造方法。
(10)前記コート工程において、コート液に用いるポリペプチドは、ポリLリジン又はポリDリジンであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(11)前記細胞培養器具は内径20mm〜200mmの培養皿であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(1)細胞を培養する用途に使用される器具の製造方法において、細胞培養表面のコート工程に、
第1のコート工程と、その後に行う第2のコート工程を有し
前記第1のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液、もしくは、水又はエタノールのうちいずれか1つをコート液としてコートし、
前記第2のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液をコート液として、スピンコート法によってコートすることを特徴とする、細胞培養器具の製造方法。
(2)前記第1のコート工程は、スピンコート法によって行うことを特徴とする、(1)に記載の細胞培養器具の製造方法。
(3)前記第1のコート工程は、回転数1500〜2500rpmでスピンコートすることを特徴とする、(2)に記載の細胞培養器具の製造方法。
(4)前記第1のコート工程は、コート液を培養器具の表面積に対し、7.00×10−5〜2.50×10−4mL/mm2用いてスピンコートすることを特徴とする(2)又は(3)の細胞培養器具の製造方法。
(5)前記第2のコート工程は、回転数300〜1500rpmでスピンコートすることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(6)前記第2のコート工程は、コート液を培養器具の表面積に対し、3.50×10−5〜1.80×10−4mL/mm2用いてスピンコートすることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(7)前記コート工程において、コート液に用いるたんぱく質は、コラーゲンであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(8)前記第1のコート工程において、コラーゲン濃度が0〜0.12mg/mLのコート液を用いることを特徴とする、(7)の細胞培養器具の製造方法。
(9)前記第2のコート工程において、コラーゲン濃度が0.13〜0.50mg/mLのコート液を用いることを特徴とする、(7)又は(8)の細胞培養器具の製造方法。
(10)前記コート工程において、コート液に用いるポリペプチドは、ポリLリジン又はポリDリジンであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
(11)前記細胞培養器具は内径20mm〜200mmの培養皿であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかの細胞培養器具の製造方法。
本発明によれば、必要量以上のコート液を使用することなく、且つアスピレートにより余分なコート液を取り除く必要がなく、細胞培養器具を製造することができる。
本発明の細胞培養器具の製造方法は、第1のコート工程と第2のコート工程を有する。第1のコート工程を行ってから、第2のコート工程を行うことで、培養器具表面の濡れ性が増し、培養器具表面がコートされやすくなる。これは、第1のコート工程によって培養器具表面の親水性が向上するためである。コートは少なくとも器具表面の細胞培養に供する部分が均一にコートされていれば良い。なお、本発明におけるコート液で形成される層は、用いるコート液の種類によって、細胞接着抑制又は細胞接着の機能を有するものである。
本発明において、第2のコート工程はスピンコート法によって行う。スピンコート法は、コート液を滴下又は噴射した平滑な器具を高速回転させることにより、遠心力で薄膜を形成することができ、回転速度を調整することでコートの膜厚を所望の厚みに形成することができる。本発明の第2のコート工程においては、培養器具表面に均一な膜を形成する必要があるため、従来のようにコート液を多めに入れてアスピレートする方法では、必要な液量が多くなり、コスト面で好ましくない。スピンコート法によれば、少ない量のコート液でも、遠心力により、培養器具表面に広げて薄膜を形成することができるため、コートに必要な量を超えるコート液を使用することなく、器具表面に均一なコートが可能となる。
本発明において、第1のコート工程のコート方法は特に限定されない。従来法である、コート液を浸して静置する方法でもよく、本発明の第2のコート工程と同様にスピンコートを行ってもよい。スピンコートを行うことにより、用いるコート液の液量を少量にすることができ、余分なコート液を取り除く必要がない。
本発明の第1のコート工程をスピンコートで行う場合、回転数は1500rpm〜2500rpmで行うことが好ましい。回転数が1500rpm未満であると、コート液が培養器具表面に濡れ広がらない。好ましくは1800rpm以上、より好ましくは2000rpm以上である。また、2500rpmを超えると、培養器具表面に均一なコートができない。好ましくは2400rpm以下、より好ましくは2300rpm以下である。
また、本発明の第1のコート工程をスピンコートで行う場合、コート液の液量は、培養器具の表面積に対し、7.00×10−5〜2.50×10−4mL/mm2であることが好ましい。7.00×10−5mL/mm2未満であると、液量が少ないため培養器具表面が均一に濡れ広がらない。好ましくは6.00×10−5mL/mm2以上、より好ましくは5.50×10−5mL/mm2以上である。また、2.50×10−4mL/mm2を超えると、液量が多いためコート液を乾燥させる必要がある。好ましくは2.30×10−4mL/mm2以下、より好ましくは2.10×10−4mL/mm2以下である。
本発明の第1のコート工程では、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液、もしくは、水又はエタノールのうちいずれか1つをコート液として用いることができる。ここで、用いることができるたんぱく質は、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンのうちいずれか1つであることが好ましい。特に好ましくはコラーゲンである。また、用いることができるポリペプチドはポリLリジン又はポリDリジンであることが好ましい。
本発明の第1のコート工程において、用いるコート液の濃度は溶質及び溶媒によって適切な濃度は異なる。例えば溶質としてコラーゲン、溶媒として水を用いる場合、0〜0.12mg/mLが好ましい。濃度が0.12mg/mL超であると、コート液の粘度が高くなり、コート液が均一に濡れ広がらない。好ましくは0.11mg/mL以下である。
ここで、本発明で用いられる水は水道水、蒸留水、滅菌水を用いることができる。特に滅菌水を用いることが好ましい。
本発明の第2のコート工程は、スピンコートを回転数300〜1500rpmで行うことが好ましい。300rpm未満では、濡れ広がらない箇所があり、均一にコートを行うことができない。好ましくは400rpm以上、より好ましくは450rpm以上である。また、1500rpm超で行うとコート液が飛び散り、均一にコートを行うことができない。好ましくは1300rpm以下、より好ましくは1200rpm以下である。
本発明の第2のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液をコート液として用いることができる。ここで溶媒は第1のコート工程で用いるコート液と同一であることが好ましい。第1のコート工程と同様に、用いることができるたんぱく質は、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンのうちいずれか1つであることが好ましい。特に好ましくはコラーゲンである。また、用いることができるポリペプチドはポリLリジン又はポリDリジンであることが好ましい。
本発明の第2のコート工程において、用いるコート液は溶質及び溶媒によって適切な濃度は異なる。例えば溶質としてコラーゲン、溶媒として水を用いる場合、0.13〜0.50mg/mLが好ましい。0.13mg/mL未満では、溶媒の比率が高いため、乾燥に時間がかかる。好ましくは0.14mg/mL以上、より好ましくは0.15mg/mL以上である。0.50mg/mLを超えると、コート液の粘度が高く、均一に濡れ広がならない。好ましくは0.48mg/mL以下、より好ましくは0.46mg/mL以下である。
また、本発明の第2のコート工程をスピンコートで行う場合、コート液の液量は、培養器具の表面積に対し、3.50×10−5〜1.80×10−4mL/mm2であることが好ましい。3.50×10−5mL/mm2未満であると、液量が少ないため培養器具表面が均一に濡れ広がらない。好ましくは4.00×10−5mL/mm2以上、より好ましくは4.50×10−5mL/mm2以上である。また、1.80×10−4mL/mm2を超えると、液量が多いためコート液を乾燥させる必要がある。好ましくは1.70×10−4mL/mm2以下、より好ましくは1.60×10−4mL/mm2以下である。
本発明でコートを行う細胞培養器具は培養皿を用いることが好ましい。また、培養皿は内径20mm〜200mmの大きさを用いることができる。好ましくは30mm〜150mmである。また、本発明に用いられる細胞培養器具はガラス製であっても樹脂製であっても良い。
本発明の細胞培養器具は、コート工程以前に、コート液をコートする器具表面に対しては、放電処理を行ったものを用いることが好ましい。放電処理を行うことで、親水性が向上し、コート液が付着しやすくなる。また、第1のコート工程の直前に、放電処理済の器具表面に、再度放電処理を行ってもよい。放電処理は、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理が好ましい。
本発明の第1のコート工程では、スピンコートに要する時間は1〜5secである。1sec未満では培養容器表面に濡れ広がらない。好ましくは2sec以上である。5sec超では、均一にコートすることができない。好ましくは4sec以下である。
本発明の第2のコート工程では、スピンコートに要する時間は1〜4secである。1sec未満では培養容器表面に濡れ広がらない。好ましくは1.5sec以上である。4sec超では、均一にコートすることができない。好ましくは3sec以下である。
本発明においては、第1のコート工程及び第2のコート工程を室温で行うことができる。第2のコート液の種類によってはコート液を4℃に冷やしておく。
本発明においては、第2のコート工程の後に、リンス工程を設けてもよい。リンス工程は、第1のコート工程及び第2のコート工程で使用した溶媒をリンス液とし、第2のコート工程を終えた後の培養容器にコートすることで行われる。コート方法は特に限定されない。第2のコート工程の後にリンス液でコートすることによって、培養面に完全に接着しなかった遊離のコート剤が減らすことができる。よって、培養時に遊離のコート剤が培地や培養物へ影響を与える可能性を低減することができる。
本発明においては、コート後の細胞培養器具を乾燥させることで使用することができる。乾燥の手段として、送風のあるクリーンベンチ内又はタイベック付きバックに梱包して乾燥させる。クリーンベンチ内ではフタをあけた状態でも閉めた状態でもよいが、フタを開けた状態の方が短時間で乾燥することができるため好ましい。
以下、本発明の特徴をさらに具体的に示すため、本発明の細胞培養器具の製造方法の実施例を示すが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。なお、実施例のフロー図を図1に示す。
(実施例)
本実施例では、放電処理済の直径60mmの樹脂性培養皿(AGCテクノグラス社製、商品名:TC Treated 60mm Dish)を用いた。第1のコート工程で用いるコート液として、滅菌水、第2のコート工程で用いるコート液としてコラーゲンI(新田ゼラチン製、商品名:code CELLMATRIX−1P−20)(商品名)の滅菌水希釈溶液を使用した。スピンコートマシンはミカサ社製スピンコート装置1H−DXを用いた。
本実施例では、放電処理済の直径60mmの樹脂性培養皿(AGCテクノグラス社製、商品名:TC Treated 60mm Dish)を用いた。第1のコート工程で用いるコート液として、滅菌水、第2のコート工程で用いるコート液としてコラーゲンI(新田ゼラチン製、商品名:code CELLMATRIX−1P−20)(商品名)の滅菌水希釈溶液を使用した。スピンコートマシンはミカサ社製スピンコート装置1H−DXを用いた。
まず、コラーゲンI原液を希釈し、コラーゲンI溶液を調整した。あらかじめ4℃に冷やしておいた100mLメジュームビン(AGCテクノグラス社製、商品名:広口メジューム瓶)の質量を電子天秤で計測した。次にメジュームビンを氷上に置き、25mLピペット(AGCテクノグラス社製、商品名:プラスチックピペット)でコラーゲンI原液を加えた。コラーゲンI原液の入ったメジュームビンの質量を計測し、加えたコラーゲンI原液の量を計算し、そこから加える滅菌水の量を計算した。25mLピペットで滅菌水を前記メジュームビンに加え、ピペッティングして完全に混合した。
次に、培養皿にコートを行う。第1のコート工程として、スピンコートマシンの回転数、時間をセットし、水をディッシュに滴下して、スピンコートを行った。その後、第2のコート工程として、スピンコートマシンの回転数、時間を再度セットし、コラーゲンI溶液をディッシュに滴下してスピンコートを行った。なお、回転数、時間、水及びコラーゲンI溶液の量は表1〜表3に記載した。
続いて、従来法によるサンプルを作製した。まず、氷冷した滅菌水29mLにコラーゲンI原液を1mL加え、ピペッティングにより混ぜ合わせ、0.1mg/mLのコラーゲンIコート溶液を調整した。コート液を培養皿に入れ、培養皿を傾けてコート液を培養表面にいきわたらせた。5分間静置した後に、アスピレーターでコート液をできるだけ吸引除去した。その後、クリーンベンチ内で一晩乾燥させた。
以上により、作成した本発明のサンプル(例1〜5)と、従来法により作製したサンプル(例22)を用いて、CBB染色を行った。まず、各サンプルにCBB染色液(GE Healthcare社製、商品名:PhastGel BlueR)を1.5mL加えて一晩放置した。次に、各サンプルのCBB染色液を取り除いた後、バット内に入れた水につけて洗浄し、染色状態を確認した。染色状態については表1〜3に○(全体に均一に染色された)、△(一部のみ染色された)、×(染色されなかった)で示した。例1〜5、及び例22のCBB染色結果を図2に示す。各条件3つずつサンプルを用意し、比較した。ここで、CBB染色とは、コラーゲンが染色されるものであり、全体に均一に染色されたものは、全体に均一なコラーゲンコートができていることを示す。一部のみの染色は、全体に均一なコートがされていないことを示す。染色されなかったものは、コラーゲンコートができていないことを示す。
次に、細胞培養による各種測定を行った。HEK293細胞(P=44)を1.5×104cells/mL播込みした。培地にはDMEM/F12Ham‘s+20%KSR(無血清培地)を用い37℃、水蒸気飽和状態で、CO2インキュベーターで4日間培養した。ここで、コラーゲンを含有するコート液の均一な塗布を評価するために、コラーゲンが付着している場所のみにHEK293細胞が接着するよう、培地として無血清培地を用いた。血清培地を用いた場合、コラーゲンが付着していなくてもHEK293細胞は培養皿の培養表面に付着してしまう。例1〜5、例22、及びコートなしの場合の培養結果の顕微鏡写真を図3に示す。
培養4日目に、アラマーブルーを用いた蛍光測定を行った。これにより、細胞活性の有無を確認することができる。細胞培養液を吸引後、培地の1/10量(0.2mL)を添加し調整したアラマーブルー溶液(invitorogen社製、商品名:alamarBlue)を添加した。4時間反応させ、サンプルの培養液の一部(0.2mL)を96ウェルプレート(AGCテクノグラス社製、商品名:TC treated 96ウェルプレート)に移した。この際、1つのサンプルから2wellへ移した。続いて、測定器(バイオテックジャパン合同会社製、商品名:Fluoroskan Ascent F)を用いてEx544nm、Em590nmの波長で測定を行った。測定結果を図4と、表1〜3に記載した。蛍光が強いものは細胞活性があり、蛍光が弱いものは細胞活性がないことを示している。細胞活性がない箇所は、コラーゲンがコートされていないため、細胞の培養ができていない。
アラマーブルー測定後のサンプルで、ギムザ染色を行った。これにより、細胞が培養容器に接着しているか否かを確認することができる。アラマーブルー溶液を含む培地をアスピレートし、メタノールを培養面が覆われる程度に添加した。ドラフト内で30分以上放置した後にメタノールを廃棄して、2〜3%ギムザ染色液入りPBS(タカラバイオ社製、商品名:PHOSPHATE BUFFERTED SALTS)を培養面が覆われる程度に添加した。30分以上放置後、水洗浄を行い、乾燥させた後に染色の程度を確認した。測定結果を図5に示した。細胞が接着している部分は染色され、接着していない部分は染色されない。染色状態については表1〜3に従来法サンプルを基準として、○(従来法サンプルと同程度)、△(従来法サンプルより染色されていない)、×(全く染色されなかった)で示した。
以上のサンプル作製及び各種測定の結果を表1〜3にまとめた。例1〜20は2段階のコート工程をそれぞれスピンコート法により行ったサンプルであり例21は従来法の手コートによりコートしたサンプルである。
以上より、2段階のコート工程を実施した例については、従来法より少ない液量で、従来法と同様の効果を有するコートをすることが可能である。各種測定結果においても、従来法と同等の結果を得ていることが確認された。
本発明によれば、必要量以上のコート液を使用することなく、且つアスピレートにより余分なコート液を取り除く必要がなく、細胞培養器具を製造することができる。液量を少なくすることで、コストダウンが可能であり、且つアスピレートが不要なため作業の手間を省くことも可能である。
Claims (11)
- 細胞を培養する用途に使用される器具の製造方法において、細胞培養表面のコート工程に、
第1のコート工程と、その後に行う第2のコート工程を有し、
前記第1のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液、もしくは、水又はエタノールのうちいずれか1つをコート液としてコートし、
前記第2のコート工程は、たんぱく質、ポリペプチド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリエチレンイミン、もしくはこれらの混合物からなる群より選択される1つの溶質を、水又はエタノールを溶媒として用いた溶液をコート液として、スピンコート法によってコートすることを特徴とする、細胞培養器具の製造方法。 - 前記第1のコート工程は、スピンコート法によって行うことを特徴とする、請求項1に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記第1のコート工程は、回転数1500〜2500rpmでスピンコートすることを特徴とする、請求項2に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記第1のコート工程は、コート液を培養器具の表面積に対し、7.00×10−5〜2.50×10−4mL/mm2用いてスピンコートすることを特徴とする請求項2又は3に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記第2のコート工程は、回転数300〜1500rpmでスピンコートすることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記第2のコート工程は、コート液を培養器具の表面積に対し、3.50×10−5〜1.80×10−4mL/mm2用いてスピンコートすることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記コート工程において、コート液に用いるたんぱく質は、コラーゲンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記第1のコート工程において、コラーゲン濃度が0〜0.12mg/mLのコート液を用いることを特徴とする、請求項7に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記第2のコート工程において、コラーゲン濃度が0.13〜0.50mg/mLのコート液を用いることを特徴とする、請求項7又は8に記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記コート工程において、コート液に用いるポリペプチドは、ポリLリジン又はポリDリジンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の細胞培養器具の製造方法。
- 前記細胞培養器具は内径20mm〜200mmの培養皿であることを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の細胞培養器具の製造方法。
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