JP2015532834A - エマルジョン系及びエマルジョンベースの核酸増幅 - Google Patents
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Abstract
Description
いくつかの態様では、オリフィスにエマルジョン混合物を通過させることは、混合物をピペット操作する(pipetting)こと(例えば混合物を、ピペットチップを通して上下に反復して通過させること)を含み得る。このようなピペット操作は、手動で行うことができるか、又はコンピュータ制御ロボットの使用によるように自動化して行ってよい。ある態様では、オリフィスにエマルジョン混合物を通過させることは、オリフィスに混合物を少なくとも5、10、15、20、25、30、35又は40回通過させることを含む。いくつかの態様では、エマルジョン混合物は、オリフィスを5回から40回の間、10回から40回の間又は10回から30回の間(例えば40回以下)通過する。
まださらなる態様では、実施形態の方法は、複数の反応容器中(例えば6、12、24、48、96以上の反応容器中)のエマルジョンポリメラーゼ増幅のための方法としてさらに定義される。例えば、複数の反応容器は、プレート上のウェル(例えば96又は384ウェルプレート)として整列させることができる。
ある態様では、実施形態の方法は、油性混合物を水性相とともに乳化することを含む。いくつかの態様では、油性混合物は、以下に詳細に記載する組成物の1つであり、例えばミネラルオイル、炭酸ジエチルヘキシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、セチルPEG/PPG-10/1-ジメチコン、ラウリン酸ヘキシル及び/又はオレイン酸ポリグリセリル-3を含む組成物(例えばミネラルオイル、炭酸ジエチルヘキシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、セチルPEG/PPG-10/1-ジメチコン及びラウリン酸ヘキシルを含む油性混合物)である。
特許請求の範囲中での用語「又は(若しくは)」の使用は、二者択一のことだけを言うことが明確に示されないか又は選択肢が互いに排他的でない限り「及び/又は」を意味するが、本開示は、二者択一のみ及び「及び/又は」に言及する定義を支持する。本明細書で用いる場合、「別の」は、少なくとも第2又はそれより多くを意味し得る。
本明細書を通して、用語「約」は、値が、値を決定するために用いた装置、方法の誤差の固有の変動、又は研究対象のうちに存在する変動を含むことを示すために用いられる。
以下の図面は、本明細書の一部であり、本発明のある態様をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書中に示す具体例の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することにより、よりよく理解される。
多数の個別の核酸分子のエマルジョンベースの増幅についての最近開発された技術は、強力な新しい分析法であることが証明されている。BEAMing法は、エマルジョンを一旦破壊しても形成された生成物を区画内に保持するエマルジョンPCRに基づいている。よって、BEAMingにより得られるビーズは、鋳型集団中に存在するポリヌクレオチド多様性を正確に反映し、例えばポリヌクレオチド集団のどの割合が特定の配列変動を含むかを決定するために用いることができる。しかし、最先端のBEAMing法はDNA増幅のために有効であるが、BEAMingの真の能力を活用できる標準化可能なハイスループット技術用にスケールアップするには改修しにくい。例えば、核酸増幅において用いるためのエマルジョンは、有効なエマルジョンを作製するために多量の入力エネルギーが必要であり、よって、各エマルジョン系を作製するために特殊な機械が必要である。
エマルジョン中での核酸増幅のために、エマルジョン反応は、「油中水型」ミックスを激しく振とう又は撹拌して、多数のミクロンサイズの水性区画を作製するために充分な入力エネルギーを印加することにより、典型的に創出される。一実施形態によると、本発明は、エマルジョン混合物のピペット操作により達成できるような低減された入力エネルギーを用いて油中水型エマルジョンを作製する方法を提供する。ピペットチップ及びピペット操作サイクルの反復を用いて、連続油性相中に水性区画を含むエマルジョン(油中水型エマルジョン)を形成する。水性相は、ポリヌクレオチド鋳型、ビーズ、酵素、塩、緩衝剤及び前記鋳型を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーの1種以上を含む。並行して形成できる別々のエマルジョン集団の数は、マルチウェルプレートを用いることにより増加する。
本実施形態の油中水型エマルジョンは、全般的に、エマルジョン中の区画間で内容物(例えば核酸)の交換があったとしてもほとんどなく、安定である。さらに、生化学的反応は、エマルジョンマイクロカプセル中で進行する。さらに、複雑な生化学的プロセス、特に遺伝子転写及び翻訳も、エマルジョンマイクロカプセル中で活発である。数千リットルの工業的規模までの全ての容量のエマルジョンを創出するための技術が存在する(Becher, 1957; Sherman, 1968; Lissant, 1974; Lissant, 1984)。
より低い粘度の油(非常に低い、低い及び/又は中程度と定義される)は、高い粘度の油を用いるよりも作業が容易である。低い粘度の油は、25℃にて10 mPas未満又は5mPas未満の粘度を有することができる。高い粘度の油は、25℃にて10〜30、20〜25又は22〜26 mPasの範囲内であり得る。油性相の大部分は、非常に低い、低い、中程度又はこのような油若しくはワックスの混合物のいずれかであることができる。高い粘度の油に対するより低い粘度の油の割合は、85:10から60:30まで変動できる。油性相の少なくとも60、65、70、75又は80及び85% (v/v)までが、より低い粘度の油であり得る。油性相の少なくとも10、15、17、20又は25及び23、25、27又は30% (v/v)までが、高い粘度の油であり得る。乳化剤は、油性相の少なくとも5、6、7、8又は9%及び10% (v/v)までを占めることができる。
ある態様では、実施形態のエマルジョン混合物中で乳化助剤を用いる。乳化助剤は、例えばエマルジョンPCR (emPCR)のために効果的に機能できるエマルジョンを形成するために必要な全入力エネルギーを下げるように機能する。乳化助剤は、混合物中のその他の乳化剤と一緒に作用して、エマルジョン中の水性区画の形成及び安定化を容易にすることができる。いくつかの態様では、実施形態に従って用いるための乳化助剤は、約3から約8の間のHLB値を有する。さらなる態様では、実施形態に従って用いるための乳化助剤は、<10,000 g/molの分子量を有する。実施形態に従って用いるための乳化助剤の例は、制限して、オレイン酸ポリグリセリル-3又はイソステアリン酸ポリグリセリル-4を含む。実施形態の乳化助剤を含む油性混合物の例を、以下の表1に示す。
実施形態のエマルジョンは、当該技術において知られる任意の手段により「破壊」又は崩壊させることができる。エマルジョンを破壊するための特に単純な方法は、洗浄剤を加えることである。用いることができる洗浄剤は、それらに限定されないが、Triton X100、ラウレス4及びノニデット(例えばNP-40)を含む。好ましくは、エマルジョン破壊溶液は、効果的な相分離をもたらすだけでなく、エマルジョンから放出されるビーズの凝集も妨げる。エマルジョン破壊緩衝液は、ピペット操作により容易に除去できない油性相の形成も妨げる。本明細書で例示するように、ある種のアルコールを破壊溶液に加えることにより、ビーズの凝集を最小限に保ち、かつピペット操作を可能にしながらエマルジョン破壊を大きく増進できる。例えば、いくつかの態様では、エマルジョン破壊溶液は、2-ブタノール及び/又は1-プロパノールを含む。実施形態のエマルジョン破壊溶液の処方の例を以下の表2に示す。
実施形態による核酸増幅及び分析のための一般的な方法は、例えばDiehlら, 2006及び米国特許出願公開第20100041048号(それぞれは、本明細書に参照により組み込まれている)に示されている。
分析対象DNA (実施形態に従う分析用)の供給源として用いることができる試料は、血液、血漿、血清、尿、便、痰、涙、唾液、洗浄液、骨髄又はその他の体液を含む。固形組織も分析対象DNAを提供できる。試料は、健常と考えられる組織又は疾患組織(例えば腫瘍)からであり得る。試料は、罹患した個体(例えばがん患者)、関係する家族メンバー、妊婦及び新生児から得ることができる。分析対象DNAの供給源は、例えば試験薬剤で処理してよく、分析対象DNAに対する試験薬剤の影響を決定できる。
増幅後、生成物ビーズを分析して、ビーズと結合したDNAの配列の特徴を決定できる。ハイブリダイゼーション、プライマー伸長及びヌクレオチド配列決定を含む、配列の特徴を決定するための任意の方法を用いることができる。いくつかの場合では、生成物ビーズを、フローサイトメトリーにより、すなわち異なる種の核酸分子又は蛍光標識ビーズを分離又は区別するための技術により分析できる。その他の分析手段を、簡便なように用いることができる。
ビーズは、全体の表面特性、例えば疎水性若しくは親水性を変更するため、又は結合特異性を付与する分子を結合させるために、その他の材料との共有的又は非共有的相互作用により改変できる。このような分子は、限定することなく、抗体、リガンド、特異的に結合するタンパク質対のメンバー、受容体、核酸又は化学活性基(例えばアルデヒド又はカルボキシ基)を含む。特異的に結合するタンパク質対は、アビジン-ビオチン、ストレプトアビジン-ビオチン及び第VII因子-組織因子を含む。
望ましくは、実質的な割合の生成物ビーズが、ビーズあたり1つのタイプだけの核酸を含む。実質的な割合は、例えば、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%又は少なくとも50%であり得る。生成物ビーズのある集団は、2つ以上のタイプの核酸を含むこともできる。このような集団は、核酸に関して不均質である。ビーズあたり1つのタイプだけの核酸を有する生成物ビーズは、均質という。ビーズあたり1つのタイプだけの核酸を有する均質ビーズは、ポリメラーゼ連鎖反応における誤りによる誤りを含む核酸を有するものを含む。ビーズあたり2つのタイプの核酸を有する生成物ビーズは、不均質という。いずれの特定の理論に結び付けられることも望まないが、不均質生成物ビーズは、非同一配列の2つより多い鋳型分子を有する水性区画に起因すると考えられる。生成物ビーズの集団は、集団として不均質であることができるが、均質である個別の生成物ビーズを含有できる。
生成物ビーズの集団は、懸濁液で維持できる。代わりに、これらは沈降及び乾燥できる。後者の選択肢は、貯蔵安定性の点で有利であり得る。
遺伝子バリアントを区別する、すなわち分析物の配列の特徴を決定するためのある非常に簡便な方法は、蛍光色素でバリアントを異なるように標識化することによる。このような標識化は、1種のポリヌクレオチドに蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイゼーションさせることにより達成できる。代わりに、特定の遺伝子バリアントとハイブリダイズする1つのオリゴヌクレオチドプローブと特異的に結合するように蛍光標識抗体を用いることができる。このような抗体結合は、例えば、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブと結合したタンパク質又はポリペプチドにより媒介できる。もちろん、当該技術において知られるようにポリヌクレオチドを標識化するためのその他の手段を、限定することなく用いることができる。異なるポリヌクレオチド種を標識化するための別の手段は、プライマー伸長による。プライマーを、標識デオキシリボヌクレオチド、例えば蛍光標識デオキシリボヌクレオチドを用いて伸長できる。
アレル特異的ハイブリダイゼーション(ASH)によるような生成物ビーズ及び核酸の分析のための詳細な方法は、例えば米国特許出願公開第20100041048号(本明細書に参照により組み込まれている)を参照されたい。
望ましいならば、なお別の増幅ステップを、エマルジョンを破壊した後に用いることができる。このステップは、典型的に、ローリングサークル増幅としても知られる等温増幅を用いる。ローリングサークルを生じるために、分子インバージョンプローブ又はパッドロックプローブを用いることができる。プローブは、サークルを生じるための鋳型により駆動されるライゲーション反応の前に埋め合わせ(filling-in)を必要とするか又は必要としないことがある。埋め合わせが必要ならば、埋められる領域は、典型的に、1から30ヌクレオチドまでである。等温反応は、最終的に検出されるシグナルをかなり著しく増幅できる。等温増幅の後に、配列の特徴を、上記のように、1塩基伸長(SBE)又はアレルASH反応を用いて検出できる。代わりに、ビーズ上のアンプリコンのヌクレオチド配列は、合成時配列決定(sequencing-by-synthesis)を含む、当該技術において知られる任意のアレル識別配列決定法により決定できる。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示する技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者らにより見出された技術を代表し、よって、その実施のための好ましい態様であるとみなすことができることが当業者により認識される。しかし、本開示に鑑みて、当業者は、開示される具体的な実施形態において多くの変更を行って、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく同様又は類似の結果をまだ得ることができることを認識している。
乳化剤-油性混合物に対する標準的ピペットチップの試験。
ピペット操作サイクルの数及びABIL WE09の濃度を変動させて、一連の試験を行った。エマルジョンPCR及びオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを行って、このアプローチを機能的に試験した。これらの実験のために、単一チャネルピペット(20〜200μL; Cat# L-200XLS Mettler-Toledo, Rainin)及びGP-L200Fピペットチップ(Rainin/Mettler-Toledo)を用いて、18μLのPCRミックスを62μLの乳化剤-油性混合物 (6.5%、7%、7.5%、8%又は9% (w/v) ABIL WE09、75% (w/v) Tegosoft DEC及び18.5% (w/v) ミネラルオイル)と混合した。混合は、30〜40回50μLの容量を上下させるピペッティングにより行った。PCRサイクルは、実施例3に記載するようにして、PIK3CA Ex9 1634 a>cについて2%の変異頻度を有するBEAMing配列決定タグを有するPCR生成物を用いて行った。エマルジョン破壊は、新しく開発した破壊溶液1及び2(実施例2を参照されたい)を用いて行った。後続のハイブリダイゼーションは、実施例3に記載するようにして行った。
30サイクルは、チューブの底にビーズ沈殿物を一貫してもたらしたが、これは、過剰の大きい水性区画の結果である。40サイクルは、沈殿物を生じなかった。ABIL WE09の濃度は、測定した変異割合に対して影響しなかった(検出された変異割合の平均は、入力の2%と比較して1.5%であった)。よって、標準的なピペットチップを用いて、エマルジョンPCR用途(例えばBEAMing)のためのエマルジョンを作製することができる。
本発明者は、ABIL WE09を含むか又は含まない標準的な乳化剤-油性混合物に一般的に用いられる乳化剤を加えることにより、該乳化剤をスクリーニングした。乳化助剤の選択は、HLB値(3〜8の範囲)及び分子量(<10,000 g/mol)に基づいた。実験的な乳化剤は、以下のようにして調製した。0.18 g エマルゲーター(Emulgator) (Isolan GO33、Isolan GI34、Isolan GPS、Isolan PDI又はTegin OV)、0.35 g ABIL WE09 (ABIL WE09を含まない試料について、ミネラルオイルで置換した)、3.65 mL Tegosoft DEC及び1mLミネラルオイル。アルコールも、乳化助剤として作用する能力について、以下のようにして試験した。0.35 gアルコール(1-オクタノール、1-オクチル-1-ドデカノール、1-ハプトアノール(1-haptoanol)、2-ヘキシル-1-デコナール(deconal)又は1-ノナノール)、0.35 g ABIL WE09、3.65 mL Tegosoft DEC及び1mLミネラルオイル。単一チャネルピペット(20〜200μL; Cat# L-200XLS Mettler-Toledo, Rainin)及びGP-L200Fピペットチップ(Rainin/Mettler-Toledo)を用いて、18μLのPCRミックスと62μLの乳化剤-油性混合物とを混合した。混合は、50μLの容量を20又は40回ピペットで上下させて操作することにより行った。エマルジョンを、倒立顕微鏡の下で評価し、泡安定性を増幅の後に評価し、後続のBEAMingアッセイにおいて機能的試験を行った。PCRサイクルは、実施例3に記載するようにして、PIK3CA Ex9 1634 a>cについて2%の変異頻度を有するBEAMing配列決定タグを有するPCR生成物を用いて行った。エマルジョン破壊は、新しく開発した破壊溶液1及び2(実施例2を参照されたい)を用いて行った。後続のハイブリダイゼーションは、実施例3に記載するようにして行った。
1%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、5%、6%及び7%を含む一連の乳化助剤濃度を試験した。単一チャネルピペット(20〜200μL; Cat# L-200XLS Mettler-Toledo, Rainin)及びGP-L200Fピペットチップ(Rainin/Mettler-Toledo)を用いて、20μLのPCRミックスを60μLの乳化剤-油性混合物と混合した。混合は、60μLの容量を20又は40回ピペットで上下させて操作することにより行った。4%より高い(好ましくは7%)の乳化助剤濃度が、肯定的な目に見える効果を生じた。
単一チャネルピペット(20〜200μL; Cat# L-200XLS Mettler-Toledo, Rainin)及びGP-L200Fピペットチップ(Rainin/Mettler-Toledo)を用いて、20μLのPCRミックスを、5%の乳化助剤を含む60μLの乳化剤-油性混合物と混合した。混合は、60μLの容量を10、15、20、25、30、35、40又は45回ピペットで上下させて操作することにより行った。少なくとも20回のピペット操作サイクルが、最適な結果のために必要であり、35回より多くではさらなる効果が見られなかった。よって、ピペット操作サイクルの最適範囲は、25〜35であり、好ましい混合サイクル数は、30である。
単一チャネルピペット(20〜200μL; Cat# L-200XLS Mettler-Toledo, Rainin)及びGP-L200Fピペットチップ(Rainin/Mettler-Toledo)を用いて、20μLのPCRミックスを、7%の乳化助剤を含む60又は70μLのいずれかの乳化剤-油性混合物と混合した(それぞれ1:4及び1:4.5の比率)。混合は、60μLの容量を20、25、30又は35回ピペットで上下させて操作することにより行った。これらの水性相と油性相との比率はともに良好なエマルジョンをもたらし、好ましい比率は1:4.5であった。
単一チャネルピペット(20〜200μL; Cat# L-200XLS Mettler-Toledo, Rainin)及びGP-L200Fピペットチップ(Rainin/Mettler-Toledo)を用いて、20μLのPCRミックスを、7%の乳化助剤を含む70μLの乳化剤-油性混合物と混合した。混合は、50、60、70、80又は90μLのいずれかの容量を30回ピペットで上下させて操作することにより行った。80μLより多いピペット操作容量では、ピペット中に空気が入りすぎる結果をもたらした。最適な混合容量は、70μLであった。
種々のピペット(表6)及びピペットチップ(図3)を用いて、20μLのPCRミックスを60μLの乳化剤-油性混合物(表1を参照されたい)と混合した。混合は、70μLの容量を30回ピペットで上下させて操作することにより行った。PCRサイクルは、実施例3に記載するようにして行った。エマルジョン破壊は、新しく開発した破壊溶液1及び2(実施例2を参照されたい)を用いて行った。後続のハイブリダイゼーションは、実施例3に記載するようにして行った。BEAMingフローサイトメトリーデータの比較を表7に示す。ピペットチップの直径の変動は、エマルジョン形成プロセスに影響し、より大きい直径の場合に、さらなるピペット操作サイクルを必要とした。650μmを超える直径について(図3、P250モデル)、エマルジョン形成は、非常に高いサイクル数でのみ可能であった。より小さい直径(図3、FXF-20モデル)では、より少ないピペット操作サイクルを必要とした。ピペットチップの形状は、エマルジョン形成プロセスに影響しなかった。電子ピペットは、異なるピペット操作速度設定ができる。速度は、エマルジョン形成プロセスにとって重要であり、各モデルについて検証して、必要であれば調節する必要がある。速度を調節できないならば、ピペット操作サイクル数の変動は、エマルジョンの質の差を打ち消すことができる。しかし、ピペットチップに基づく乳化プロセスは、一般的に利用可能な異なるピペットチップ及びピペットについて機能する。モデル間で異なる可能性がある変数は、チップ開口部のサイズ及び循環速度である。
本発明者らは、解乳化(すなわちエマルジョン破壊)と、以下の要件、すなわち反応容器(例えばチューブ又は96ウェルプレート)の交換なし、遠心分離なし、減圧の使用なし、生成物ビーズに結合した2本鎖DNAの変性ステップ(すなわち未結合DNA鎖の除去)なし、及び標準的でないピペット操作の使用なしを満たす後続の生成物ビーズ(例えばBEAMingビーズ)の回収との手順を用いた。これらの要件は、破壊プロセスの自動化及び標準化のために重要である。用いたアプローチは、油中水型エマルジョンのエマルジョン破壊及び水性分散相中に存在する成分(例えば生成物ビーズ)の回収を可能にする溶液についてのスクリーニングに基づいた。
乳化及び乳化破壊プロセス(自動化及び手動)の分析ラン内精度検査の設定を図8に示す。エマルジョンPCRビーズを調製するために、1ミリリットルのDynabeads MyOne ストレプトアビジンC1 (Life Technologies)を、1.5 mLマイクロ遠心チューブ中でボルテックスすることにより完全に再懸濁した。短い遠心分離の後に、チューブをDynal MPC 磁性粒子濃縮機(Life Technologies)上に1分間置いてビーズを濃縮し、上清をピペットで除去した。ビーズを2回、1000μLの1×結合洗浄緩衝液(200 mM Tris-HCl (pH 8.4)、500 mM KCl)で洗浄し、ボルテックスすることにより再懸濁した。それぞれの洗浄及び短い遠心分離の後に、チューブをDynal磁石上に1分間置いてビーズを濃縮し、上清をピペットで除去した。ビーズを1000μLの1×結合緩衝液(1M NaCl、5mM Tris-HCl (pH 7.5)、0.5 mM EDTA)に再懸濁し、100μLのビオチン化ビーズアダプタプライマー(1×TE緩衝液中に100μΜ; 5'-2-Bio-TTCCCGCGAAATTAATACGAC (配列番号1); IDT)を加え、混合物を直ちにボルテックスした。ビーズ懸濁物を15〜25℃にて15分間インキュベートした。短い遠心分離の後に、チューブをDynal MPC磁性粒子濃縮機上に1分間置いてビーズを濃縮し、上清をピペットで除去した。ビーズを2回、1000μLの1×結合洗浄緩衝液(200 mM Tris-HCl (pH 8.4)、500 mM KCl)で洗浄し、最後に、1000μLの1×結合洗浄緩衝液に再懸濁した。
gctggagctctgcagctaTGACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGAGCTGGTGGCGTAGG
CAAGAGTGCCTTGACGATACAGCTAATTCAGAATCATTTTGTGGACGAATATGgtc gtattaatttcgcggga (配列番号2)。70マイクロリットルの乳化剤-油性混合物(表1を参照されたい)を、電子マルチチャネルピペットを用いて加え、80μLの容量を30回ピペットで上下させて操作することにより混合した。プレートを、PCR粘着フィルム(Abgene/Thermo Scientific)で密閉し、表13のPCRプログラムに従って運転した。
フローサイトメトリーを、製造業者の使用説明に従って準備したAccuri C6フローサイトメータ(Becton Dickinson)を用いて行った。ビーズを96ウェルプレート中に再懸濁し、表14中の条件に従って運転した。FCS expression v3ソフトウェア(DeNovo)を用いて、FCSファイルを分析した。分析は、単一ビーズ集団に対して行った。精度検査の結果を表15に示す。
以下の参考文献は、本明細書に示すものを補充する手順又はその他の詳細の例を示す範囲において、本明細書に参照により具体的に組み込まれている。
Claims (36)
- (a)ポリメラーゼ反応混合物を含む水性相と油性混合物とを含む混合物を準備することと、
(b)2mmから50μmの間の直径を有するオリフィスに40μl/秒から220μl/秒の速度で混合物を通過させることにより、混合物を乳化することと、
(c)エマルジョンを、核酸増幅のために充分な条件に供することと
を含む、エマルジョンポリメラーゼ増幅の方法。 - 混合物が、オリフィスを少なくとも5、10、15、20、25、30、35又は40回通過する請求項1に記載の方法。
- 混合物が、オリフィスを40回以下通過する請求項1に記載の方法。
- 混合物が、60μl/秒 から180μl/秒、80μl/秒から160μl/秒、又は80μl/秒から120μl/秒の速度でオリフィスを通過する請求項1に記載の方法。
- オリフィスが、1mmから100μmの間、800μmから200μmの間、又は800μmから400μmの間の直径を有する請求項1に記載の方法。
- オリフィスに混合物を通過させることが、混合物をピペット操作することを含む請求項1に記載の方法。
- 油性混合物が、ミネラルオイル、炭酸ジエチルヘキシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、セチルPEG/PPG-10/1-ジメチコン、ラウリン酸ヘキシル又はオレイン酸ポリグリセリル-3を含む請求項1に記載の方法。
- 油性混合物が、ミネラルオイル、炭酸ジエチルヘキシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、セチルPEG/PPG-10/1-ジメチコン及びラウリン酸ヘキシルを含む請求項7に記載の方法。
- 油性混合物が、
(a) 10〜30%(w/v)のミネラルオイルと、
(b) 55〜75%(w/v)の炭酸ジエチルヘキシルと、
(d)5〜15% (w/v)の、イソステアリン酸ポリグリセリル-4とセチルPEG/PPG-10/1-ジメチコンとラウリン酸ヘキシルとからなる組成物と、
(d)5〜15% (w/v)のオレイン酸ポリグリセリル-3又はイソステアリン酸ポリグリセリル-4と
を含む請求項8に記載の方法。 - (a) 10〜30%(w/v)のミネラルオイルと、
(b) 55〜75%(w/v)の炭酸ジエチルヘキシルと、
(d)5〜15% (w/v)の、イソステアリン酸ポリグリセリル-4とセチルPEG/PPG-10/1-ジメチコンとラウリン酸ヘキシルとからなる組成物と、
(d)5〜15% (w/v)のオレイン酸ポリグリセリル-3又はイソステアリン酸ポリグリセリル-4と
を含む油性組成物。 - 5〜15% (w/v)のオレイン酸ポリグリセリル-3を含む請求項10に記載の油性組成物。
- 5〜15% (w/v)のイソステアリン酸ポリグリセリル-4を含む請求項10に記載の油性組成物。
- (a) 15〜25% (w/v)のミネラルオイルと、
(b) 60〜70% (w/v)の炭酸ジエチルヘキシルと、
(d)5〜10% (w/v)の、イソステアリン酸ポリグリセリル-4とセチルPEG/PPG-10/1 -ジメチコンとラウリン酸ヘキシルとからなる組成物と、
(d)5〜10% (w/v)のオレイン酸ポリグリセリル-3又はイソステアリン酸ポリグリセリル-4と
を含む請求項10に記載の油性組成物。 - (a) 18〜22% (w/v)のミネラルオイルと、
(b) 62〜66% (w/v)の炭酸ジエチルヘキシルと、
(d)5〜10% (w/v)の、イソステアリン酸ポリグリセリル-4とセチルPEG/PPG-10/1 -ジメチコンとラウリン酸ヘキシルとからなる組成物と、
(d)5〜10% (w/v)のオレイン酸ポリグリセリル-3又はイソステアリン酸ポリグリセリル-4と
を含む請求項13に記載の油性組成物。 - (a) 20〜50%の2-ブタノールと、
(b) 20〜50%の1-プロパノールと、
(c)10〜40%の水と
を含み、
少なくとも1種の洗浄剤と少なくとも1種の塩とを含むエマルジョン破壊溶液。 - 0.1%から2.0%のSDSを含む請求項15に記載のエマルジョン破壊溶液。
- アルカリ性変性剤を含む請求項15に記載のエマルジョン破壊溶液。
- (a) 30〜50%の2-ブタノールと、
(b) 30〜50%の1-プロパノールと、
(c) 10〜30%の水と
を含む請求項15に記載のエマルジョン破壊溶液。 - pH緩衝剤、NaCl、Triton X-100、キレート化剤又はSDSをさらに含む請求項15に記載のエマルジョン破壊溶液。
- (a)5〜20%の2-ブタノールと、
(b)5〜20%の1-プロパノールと、
(c) 70〜90%の水と
を含み、
少なくとも1種の洗浄剤と少なくとも1種の塩とを含むエマルジョン浄化溶液。 - pH緩衝剤、NaCl、Triton X-100、キレート化剤、NaOH又はSDSをさらに含む請求項20に記載のエマルジョン浄化溶液。
- (a) (i)ポリメラーゼ反応混合物を含む水性相と、(ii)請求項10〜14に従う油性組成物とを含む混合物を準備することと、
(b)混合物を乳化することと
を含むエマルジョンポリメラーゼ増幅の方法。 - エマルジョンポリメラーゼ増幅の方法としてさらに定義され、
(c)エマルジョンを、核酸増幅のために充分な条件に供すること
をさらに含む請求項22に記載の方法。 - 混合物を乳化することが、1mmから50μmの間の直径を有するオリフィスに40μl/秒から220μl/秒の速度で混合物を通過させることを含む請求項22に記載の方法。
- 混合物が、オリフィスを少なくとも5、10、15、20、25、30、35又は40回通過する請求項24に記載の方法。
- オリフィスが、約800μmから200μmの間の直径を有する請求項24に記載の方法。
- オリフィスに混合物を通過させることが、混合物をピペット操作することを含む請求項24に記載の方法。
- 乳化ステップが、自動化されている請求項22に記載の方法。
- 複数の反応容器中でのエマルジョンポリメラーゼ増幅の方法としてさらに定義される請求項23に記載の方法。
- 複数の反応容器が、プレート上のウェルとして整列されている請求項29に記載の方法。
- 水性相が、複数の核酸鋳型とコンジュゲートした複数のビーズを含む請求項22に記載の方法。
- ビーズが、磁性である請求項31に記載の方法。
- (d)破壊溶液を混合物に加えてエマルジョンを破壊すること
をさらに含む請求項22に記載の方法。 - 破壊溶液が、請求項15〜19のいずれか1項に従う破壊溶液である請求項33に記載の方法。
- (e)油性相又は水性相を除去すること
をさらに含む請求項33に記載の方法。 - 破壊溶液が、アルカリ性変性剤をさらに含む請求項33に記載の方法。
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