発明の詳細な説明
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、US仮出願61/660119(「電力監視装置および電力監視方法」、2012年6月15日出願)、およびUS仮出願61/646350(「送電網監視システムおよび送電網監視方法」、2012年5月13日出願)の優先権を主張するものであり、これら両出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
〔背景技術〕
電力は、発電され、送電され、複数の終端点(例えば、消費者あるいは消費者の建物(以下、消費施設と称する))に配電される。消費施設としては、例えば、多家族向けの集合住宅(例えばアパートや老人ホームなど)、戸建て住宅、オフィスビル、複合施設(例えば、競技場、多目的屋内施設、ホテル、スポーツ施設など)、ショッピングモール、あるいは、電力が配電される他のタイプの建物や地域などが挙げられる。
消費施設に配電される電力は、典型的には発電所で発電される。発電所には、発電機で機械的エネルギを電力エネルギに変換することにより電力を生成する様々なタイプのものがある。上記発電機を動作させるエネルギは、例えば、化石燃料(例えば、石炭、石油、天然ガスなど)、原子力、太陽光、風力、水力など、様々なエネルギ源から供給される。また、発電所は、典型的には、交流(AC)電力を生成する。
発電所で生成された交流電力は、典型的には増幅され(電圧が「昇圧」され)、送電線を介して典型的には1または複数の送電変電所に送電される。送電変電所は、当該送電変電所からAC電力を送電する複数の配電変電所に接続されている。配電変電所は、典型的には受電したAC電力の電圧を低下(電圧を「降圧」)させ、降圧させたAC電力を複数の消費施設に電気的に接続された配電変圧器に伝送する。これにより、降圧されたAC電力が複数の消費施設に配電される。電力設備、送電線、および配電線を接続するウェブやネットワークは送電網と呼ばれる。
送電網を介して、測定可能な電力が発電され、送電され、配電される。送電網を通る特定の中間点あるいは終端点で受電および/または配電された電力の測定値が当該送電網に関連する情報として示される。例えば、送電網の終端点に配電された電力が配電変電所で受電された電力よりも顕著に低下している場合、電力の配電を妨害する流出あるいは悪意による流出が生じている可能性がある。送電網における上述した様々な地点における電力データの収集、およびそれらのデータの分析は、発電、送電、および消費施設への配電(電力分配)において電力供給者の役に立つ。
〔図面の簡単な説明〕
本発明は、以下に示す図面を参照することにより適切に理解することができる。図中に示した各要素は、本発明の概念を明確に示すことを意図しており、それら各要素の相対的な寸法は必ずしも正確ではない。また、複数の図面を通して、同じ部材に同じ符号を付している。
図1は、本発明の一実施形態にかかる典型的な電力送配電システムを示す図である。
図2Aは、本発明の一実施形態にかかる変圧器データ収集システムおよびメーターデータ収集システムを示す図である。
図2Bは、本発明の一実施形態にかかる電力線データ収集システムを示す図である。
図3は、図2Aに示した変圧器監視装置の概略構成を示す図である。
図4は、図2Aに示した運用演算装置の構成例を示すブロック図である。
図5は、図2Aに示した変圧器監視装置の構成例を示すブロック図である。
図6は、本発明の一実施形態にかかる変圧器の図である。
図7は、図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の衛星ユニットを示す図である。
図8は、図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の衛星ユニットを示す図である。
図9は、図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の本体ユニットを示す図である。
図10は、図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の本体ユニットを示す図である。
図11は、Y結線変圧器を用いる場合の、図1に示したシステムについての電力監視方法を示す図である。
図12は、デルタ結線変圧器を用いる場合の、図1に示したシステムについての電力監視方法を示す図である。
図13は、オープンデルタ結線変圧器を用いる場合の、図1に示したシステムについての電力監視方法を示す図である。
図14は、図1に示した電力送配電システムの動作を示すフローチャートである。
〔詳細な説明〕
図1は、電力を1または複数の消費施設106−111に配電する電力送配電システム100を示すブロック図である。上記の1または複数の消費施設106−111は、商業用の消費施設であってもよく、住宅などの消費施設であってもよく、その他のタイプの消費施設であってもよい。消費施設は、電力を消費するものであればどのような構造あるいは領域であってもよい。
電力送配電システム100は、複数の電力線101a−101jを介して相互接続された、少なくとも1つの送電ネットワーク118と、少なくとも1つの配電ネットワーク119と、上述した消費施設106−111とを備えている。
電力送配電システム100は、発電所10で発電された電力を送電ネットワーク118および配電ネットワーク119を介して1または複数の消費施設106−111に配電するための送電網である。
なお、電力線101aおよび101bは典型的には送電線であり、電力線101c,101dは典型的には配電線である。送電線101aおよび101bは、高電圧(110kV以上)の電力を伝送するものであり、架空電力線である場合が多い。配電変圧器は、AC電力を低電圧(例えば25kV以下)で配電線に伝送する。なお、本実施形態では、3相交流(AC)を用いて電力の送電を行う場合について説明する。ただし、これに限らず、他のタイプの電力および/または送電を行うようにしてもよい。
送電ネットワーク118は、1または複数の送電変電所102を備えている(簡単のために1つだけ図示している)。発電所10は電力線101aを介して送電変電所102に電気的に接続されており、送電変電所102は電力線101bを介して配電ネットワーク119に電気的に接続されている。発電所10(発電所10には変圧器は図示していない)は、送電線101aを介して送電変電所102に送電する前に、発電した電力の電圧を昇圧させる。なお、送電線101aを3本の線で示しているのは、送電変電所102に送電される電力は3相交流電力だからである。ただし、これに限らず、3相交流以外の電力を送電するようにしてもよい。
発電所10では、電力が発電され、発電した電力の電圧レベルが昇圧される。すなわち、送電ネットワーク118を介して送電する際の損失を低減するために、発電した電力の電圧は高電圧(例えば110kV以上)に昇圧される。
なお、図1に示した送電ネットワーク118には、2組の送電線101a,101b(それら各送電線を示す3本の線は3相交流電力であることを示している)と、1つの送電変電所102のみを示しているが、図1に示した構成は典型例にすぎない。送電ネットワーク118が、他の複数の送電線を介して相互接続された他の送電変電所をさらに備えていてもよい。また、送電ネットワーク118の構成を、昇圧した電力が配電ネットワーク119に送電されるまでの距離に応じて適宜設定してもよい。
配電ネットワーク119は、送電ネットワーク118からの電力を消費施設106−111に送電する。配電ネットワーク119は、配電変電所変圧器103と、1または複数の配電変圧器104,121とを備えている。なお、図1に示した例では、配電変電所変圧器103と2つの配電変圧器104,121とを備えており、配電変電所変圧器103と2つの配電変圧器104,121とが物理的に分離されているが、この構成は1つの典型例にすぎず、異なる構成を用いてもよい。
例えば、配電変電所変圧器103と配電変圧器104とを一体化させたり、組み合わせたりしてもよい(配電変電所変圧器103と配電変圧器121とについても同様である)。また、適切な電圧レベルの電力を消費施設106−111に配電するように電力を調整するために(すなわち電力の電圧を変圧するために)、1または複数の変圧器を用いてもよい。配電変電所変圧器103および配電変圧器104が、目的の配電先(例えば消費施設106−111)に送電する前に、送電ネットワーク118から受電した電力を降圧(すなわちの電圧を低下)させるようにしてもよい。
上述したように、発電所10は、運用時には電力線101aを介して送電変電所102と電気的に接続される。発電所10は、電力を発電し、発電した電力を、電力線101aを介して送電変電所102に送電する。送電に先立って、発電所10は、遠距離への送電を、損失を低減して効率的に行うために、電力の電圧を昇圧させる。上述したように、電力線101bを介して電力を送電する際のエネルギ損失を最小化するためには、電力の電圧を昇圧させる必要がある。送電変電所102は、配電ネットワーク119の送電変電所変圧器103に電力を送る。
配電変電所変圧器103は、電力を受電すると、受電した電力の電圧を配電変圧器104,121が取扱い可能な電圧範囲に降圧させる。同様に、配電変圧器104,121は、受電した電力の電圧を、消費施設106−111におけるそれぞれの電力システム(図示せず)によって取扱い可能な電圧範囲に降圧させる。
本発明の一実施形態では、配電変圧器104,121は、配電変圧器データ収集システム105に電気的に接続されている。配電変圧器データ収集システム105は、配電変圧器104,121との1または複数の電気的接続を介して運用データを測定するための、1または複数の電子装置(監視する変圧器の数に応じた数の電子機器。図示せず。)を備えている。典型的な運用データとしては、例えば、配電変圧器104,121に配電された電力、あるいは配電変圧器104,121から配電される電力に関連するデータ(例えば電力測定値、エネルギ測定値、電圧測定値、電流測定値など)が挙げられる。また、配電変圧器データ収集システム105が、配電変圧器104,121が配置されている環境に関連するデータ(例えば配電変電所104,121内の温度など)を運用データとして収集するようにしてもよい。
本発明の一実施形態によれば、配電変電器データ収集システム105は、配電変圧器104,121に電力を供給する電力線101c,101d(例えば3相交流電力の場合にはそれぞれ3本の電力線からなる)に電気的に接続されている。これにより、配電変電器データ収集システム105は、配電変圧器104,121に配電される電力量を示すデータを収集する。また、配電変圧器データ収集システム105が、電力線101e−101j(すなわち、消費施設106−111に電力を配電するための電力線、あるいは送電網の下流側である消費施設106−111側へ配電するための配電変圧器の他の電力線)に接続されていてもよい。
また、各消費施設106−111が、配電変圧器104,121から受電した電力を当該消費施設106−111の1または複数の電力ポート(図示せず)に配電するための電力システム(図示せず)を備えていてもよい。なお、上記電力ポートは内部ポートであっても外部ポートであってもよい。
各消費施設106−111の上記電力システムは、当該消費施設に対応する電力メーター112−117にそれぞれ接続されている。各電力メーター112−117は、当該メーターが接続されている消費施設の電力システムが消費する電力量を計測する。電力会社(例えば公益企業あるいは計測会社)は、消費施設に責任を負う消費者への請求を行うために、電力メーター112−117の測定結果を示すデータを計測し、消費施設106−111で消費された電力量に応じて当該消費者への請求額を決定するために当該測定結果を用いる。メーター112−117から読み取られた値は、それぞれの消費施設の電力システムによって消費された実際の電力量を反映している。すなわち、本発明の一実施形態では、メーター112−117の記録データは消費者による電力消費量を示している。
運用中、メーター112−117に対応するそれぞれの消費施設の電力システムによって消費された電力量を示すデータを記録および検索するために様々な方法を用いることができる。例えば、公益企業の検針員が消費施設106−111まで物理的に移動してそれぞれのメーター112−117を読み取ってもよい。この方法では、上記検針員は、読み取ったデータを電子システム(例えば携帯型端末、パソコン(PC)、あるいはノートパソコンなど)に入力する。 入力されたデータは分析手段へ定期的に送信される。なお、メーターのデータを、電子的および自動的に検索できるようにしてもよい。例えば、図2Aに示すように、メーター112−117をネットワーク(例えば無線ネットワークなど。図示せず。)と通信可能に接続し、メーター112−117が定期的に自動的に分析手段へデータを送信するようにしてもよい。
本明細書に示すように、メーターデータ(メーター112−117によって読み取られた値を示すデータ。図示せず。)、および変圧器データ(変圧器データ収集システム105によって読み取られた値を示すデータ。図示せず。)は、記録され、比較され、特別な事象が生じていないかの分析(例えば、配電変圧器104,121と消費施設106−111との間で電力が盗難されていないか、あるいは盗難された形跡がないかといった分析や、電力利用傾向が追加の電力供給設備の必要性を示していないかの分析など)が行われる。盗難の分析については、配電変圧器104,121が受電した電力量が消費施設106−117に配電された電力の累計量(あるいは総量)よりもはるかに多い場合に、電力会社が発電した電力から犯罪者が電力を盗んでいる可能性があると判断する。
なお、電力送配電システム100が、送電線データ収集システム(LDCS;Line Data Collection System)290を備えていてもよい。LDCS290は、送電線101b−101dから送電線データを収集する。上記送電線データは、電力/電気の測定値を示している。上記送電線データは、例えば、送電網における電力損失、電力使用量、必要電力量、あるいは送電網における電力消費量を特定するために、メーターデータ(上述した消費施設106−111で収集される)、および/または、送電データ(上述した送電変電所104,121で収集される)を含んでいてもよい。例えば、データ収集を、送電電変電所と配電変電所との間や配電変電所と配電変圧器(消費施設に電力を配電する配電変圧器)との間で電力の盗難が発生しているか、あるいは盗難が発生した形跡がないかを判断するために行ってもよい。なお、LDCS290は、送電線101b,101c,および101d、すなわち100万V(MV)級の電力線にそれぞれ接続されている。LDCS290は、上述したように、運用データを計測および収集する。LDCS290が、上記の100万V級の電力線101b,101c,および101dに関する運用データ(例えば、電力、エネルギ、電圧、および/または電流など)を送信するようにしてもよい。
図2Aは、本発明の一実施形態にかかる変圧器データ収集システム105および複数のメーターデータ収集装置986−991を示す図である。変圧器データ収集システム105は、1または複数の変圧器監視装置243,244を備えている(図1参照)。なお、図2Aでは、配電変圧器104,121(図1参照)を監視する2つの変圧器監視装置243,244のみを示しているが、これに限らず、他の変圧器監視装置をさらに備えていてもよい。
変圧器監視装置243,244は、それぞれ配電変圧器104,121の二次側に接続されている。これにより、変圧器監視装置243,244は、配電変圧器104,121と消費施設106−111(図1参照)との間の値を計測する。
また、変圧器監視装置243,244、メーターデータ収集装置986−991、および運用演算装置287は、ネットワーク280を介して通信可能に接続されている。ネットワーク280は、装置間でのデータ伝送が可能であればどのようなタイプのネットワークであってもよく、例えば、無線ネットワーク、広域ネットワーク(wide area network)、ラージエリアネットワーク(large area network)、従来からある各種ネットワーク、あるいは将来開発される各種ネットワークなどを用いることができる。
他の実施例として、メーターデータ935−940および変圧器データ240,241を、運用演算装置287との直接接続を介して送信してもよく、運用演算装置287に手動で移動させるようにしてもよい。例えば、上記メーターデータ収集装置986−991は、例えばTキャリア1(T1)接続線などを介して運用演算装置287に直接接続されてもよい。また、メーターデータ935−940は、携帯電子端末(図示せず)によって収集した後、携帯電子端末を運用演算装置287に接続して収集したメーターデータを運用演算装置287に集約するようにしてもよい。また、電力会社の検針員が目視によってメーターデータ935−940を収集し、運用演算装置287に対して所定のフォーマット(例えばCSV;comma separated valuesなど)で供給するようにしてもよい。
なお、他の実施例として、メーター112−117に、ネットワーク通信装置(図示せず)と、当該メーター112−117が読み取った値の検索、記憶、および運用演算装置287への送信を行う演算部(図示せず)とを備え、メーター112−117(図1参照)自体をメーターデータ収集装置986−991として機能させてもよい。
変圧器監視装置234,244は、配電変圧器104,121にそれぞれ電気的に接続されている。例えば、変圧器監視装置243,244は、それぞれ配電変圧器104,121の二次側に電気的に接続されていてもよい。
変圧器監視装置234,244は、それぞれ、配電変圧器104,121を消費施設106−111(図1参照)に接続する1または複数の電力線(図示せず)に接続された1または複数のセンサ(図示せず)を備えている。これにより、変圧器監視装置243,244における上記の1または複数のセンサが、電力線101e−101fを介して消費施設106−111に配電される電力の電気的特性(例えば電力線に供給される電圧および/または電流)を検出する。具体的には、変圧器監視装置243,244は、これらの電気的特性を検出し、検出した特性(例えば電力)を含む変圧器データ240,241を、ネットワーク280を介して運用演算装置287に送信する。運用演算装置287は、変圧器データ240,241を受信すると、受信したそれらのデータを記憶する。
なお、典型的なシステムでは、送電変圧器毎に変圧器監視装置が配置される(すなわち、監視対象の変圧器104(図1参照)に対応して変圧器監視装置243が配置され、監視対象の変圧器121(図1参照)に対応して変圧器監視装置244が配置される)。監視対象の変圧器がさらに存在する場合には、変圧器監視装置を追加すればよい。
メーターデータ収集装置986−991は、ネットワーク280に通信可能に接続されている。運用中、各メーターデータ収集装置986−991は、送電変圧器104,121によって配電される電力の電気的特性(例えば電圧および/または電流)を検知する。各メーターデータ収集装置986−991は、検知した特性をそれぞれメーターデータ935−940に含めて送信する。メーターデータ935−940は、電圧および/または電流の測定値に加えて例えば消費電力などの電気的特性を示すデータであってもよい。また、各メーターデータ収集装置986−991は、それぞれ、メーターデータ935−940を、ネットワーク280を介して運用演算装置287に送信する。運用演算装置287は、メーターデータ収集装置986−991から取得したメーターデータ935−940にメーターデータ935−940を送信してきたメーターデータ収集装置986−991に固有の識別子でインデックスを付与して(検索キーを付して)記憶する。
各メーターデータ収集装置986−991が、データの収集および中央記憶手段(例えば運用演算装置287)に送信するための、自動計測(AMR;Automatic Meter Reading)手段(例えば論理回路および/またはハードウェア)、あるいは自動計測インターフェース(AMI;Automatic Metering Infrastructure)手段(例えば論理回路および/またはハードウェア)を備えていてもよい。
各メーターデータ収集装置986−991のAMR手段および/またはAMI手段は、それぞれの消費施設の電力システムの診断ルーチン情報等により消費電力を示すデータを収集する。各メーターデータ収集装置986−991は、上述したように、上記データを、ネットワーク280を介して運用演算装置287に送信する。なお、AMR手段は、例えば、携帯端末、モバイル機器、ネットワーク機器などの電話通信プラットフォーム(有線あるいは無線)、無線周波数(RF;radio frequency)、あるいは電力線通信(PLC;power line communication)に基づくハードウェアにより実装されてもよい。
運用演算装置287は、各変圧器に対応するメーターが生成した変圧器データ240,241を受信すると、それら各変圧器データ240,241の総量を比較する。
このように、メーターデータ収集装置986−988はメーター112−114(図1参照)に接続されて変圧器メーターデータ935−937をそれぞれ送信し、配電変圧器104は変圧器監視装置243に接続されている。この場合、メーター112−114は、配電変圧器104によって提供されてそれぞれの消費施設106−108の電力システムで消費された電力を計測する。また、運用演算装置287は、メーターデータ935−937内に含まれるデータを総計(例えば合計)し、変圧器監視装置243から提供される変圧器データ240の総量と比較する。
運用演算装置287は、配電変圧器104に接続された消費施設106−108に配電された電力量が配電変圧器104から送電された電力量よりも実質的に少ないと判断した場合、配電変圧器104と配電変圧器104に接続されている消費施設106−108との間で電力(あるいは電気)の盗難が行われていると判断する。
運用演算装置287が、電力の盗難を示すデータを記憶するようにしてもよい。あるいは、ユーザ(図示せず)が運用演算装置287を監視できるようにするとともに、電力(あるいは電気)の盗難が生じたときに運用演算装置287が表示または音声により警告を行うようにしてもよい。この処理の詳細については後述する。
運用演算装置287が、メーターデータ収集装置986−991が接続されたメーター112−117に対応する固有の識別子に基づいて、メーターデータ935−940の識別、記憶、および分析を行うようにしてもよい。また、運用演算装置287が、当該運用演算装置287に変圧器データ240,241を送信してきた配電変圧器104,121に固有の識別子に基づいて、変圧器データ240,241の識別、記憶、および分析を行うようにしてもよい。
運用演算装置287にデータを送信する前に、メーターデータ収集装置986−991および変圧器監視装置243,244は、データ内に固有の識別子(メーターデータ収集装置986−991に固有の識別子および変圧器監視装置243,244に固有の識別子)を埋め込む。また、各メーターデータ収集装置986−991は、メーターデータ収集装置986−991が接続された変圧器104,121に固有の識別子をデータに埋め込む。
この実施例では、メーターデータ収集装置986−991がメーターデータ935−940を運用演算装置287に送信したときに、運用演算装置287が配電変圧器104または配電変圧器121のどちらが消費施設106−111に配電しているかを特定することができる。一例として、配電変圧器104,121およびメーター112−117を含む上記送電網(電力送配電システム100)の一部をセットアップしている期間中に、運用演算装置287は、配電変圧器104,121およびメーターデータ収集装置986−991からセットアップデータを受信する。上記セットアップデータは、当該セットアップデータを送信してきた装置およびメーターデータ収集装置986−990が接続されている要素を特定するための固有の識別子を特定するためのデータである。
図2Bは、本発明の一実施形態にかかる送電線データ収集システム290を示している。送電線データ収集システム290は、複数の送電線監視装置270−272と運用演算装置287とを備えている。各送電線監視装置270−272は、ネットワーク280を介して運用演算装置287と通信を行う。
図1に示したように、送電線監視装置270−272は、送電線101b,101c,101dにそれぞれ電気的に接続されている。各送電線監視装置270−272は、送電変電所102と下流側の配電変電所変圧器103とを接続する送電線、あるいは配電変電所変圧器103と下流側の配電変圧器104,121とを接続する送電線である、送電線101b,101c,101dに接続された1または複数のセンサ(図示せず)を備えている。
送電線監視装置270−272における1または複数のセンサは、送電線101a,101b,101cを流れる電力の電気的特性(例えば電圧および/または電流)を検出する。各送電線監視装置270−272は、上記電気的特性を定期的に検出し、検出した電気的特性をそれぞれ送電線データ273−275に含めて、ネットワーク280を介して運用演算装置287に送信する。運用演算装置287は、送電線監視装置270−272から送電線データ273-275を受信すると、受信した送電線データ273-275を記憶する。
図3は、図2Aに示した変圧器監視装置243,244、および/または送電線監視装置270−272(図2B参照)として用いられる一般的な変圧器監視装置1000を示す図である。変圧器監視装置1000は、導電ケーブルに取り付けられて当該導電ケーブルから電圧および/または電流のデータを収集するために用いられる。
変圧器監視装置1000は、本体ユニット1001と本体ユニット1001にケーブル1011を介して接続された衛星ユニット1021とを備えている。変圧器監視装置1000は、電圧データおよび/または電流データ(配電変圧器104,121(図1)および電力線101b−101jからの変圧器データ240,241(図2A))を収集するために様々な方法で用いることができる。
電圧および/または電流データを収集するために、衛星ユニット1021および/または本体ユニット1001は導電ケーブルの周囲あるいは導電ケーブルのコネクタ(ブッシングともいう)に取り付けられる。
変圧器監視装置1000の衛星ユニット1021は、ヒンジ1040でヒンジ接続された2つの部材1088および1089を備えている。部材1088および1089を閉じて取り付ける際(図3参照)、部材1088および1089はラッチ1006で接続され、導電ケーブルは部材1088および1089の接続によって形成される開口部1019を通る。
衛星ユニット1021は、周囲に部材1088および1089が取り付けられた導電ケーブルを流れる電流を検出するための電流検出装置(図示せず)を収容したセンサユニットハウジング1005を備えている。上記電流検出装置には、米国特許7940039に開示されて本明細書に参照によって組み込まれる、1または複数の無芯電流センサが実装されている。
本体ユニット1001は、ヒンジ1015でヒンジ接続された部材1016および1017を備えている。部材1016および1017を閉じて取り付ける際(図3参照)、部材1016および1017はラッチ1002で接続され、導電ケーブルは部材1016および1017の接続によって形成される開口部1020を通る。
本体ユニット1001は、周囲に部材1016および1017が取り付けられた導電ケーブルを流れる電流を検出するための電流検出装置(図示せず)を収容したセンサユニットハウジング1018を備えている。上記電流検出装置には、米国特許7940039に開示されて本明細書に参照によって組み込まれる、1または複数のロゴスキーコイル(Ragowski coils)が実装されている。
衛星ユニット1021とは異なり、本体ユニット部1017は、拡張された箱状のハウジング部1012を備えている。ハウジング部1012内には、変圧器監視装置1000を動作させるための1または複数のプリント回路基板(PCB。図示せず。)、半導体チップ(図示せず)、および/または他の電子部品(図示せず)が備えられている。なお、本実施形態では、ハウジング部1012の形状を矩形形状としているが、ハウジング部1012の形状およびサイズはこれに限るものではない。
また、本体ユニット1001は、1または複数のケーブル1004,1007を備えている。ケーブル1004,1007は、それぞれ、導電ケーブル(あるいは導電ケーブルに対応するバスバー(図示せず))と接地電位(あるいは基準電圧源(図示せず))とに接続される。
なお、本実施形態では、監視装置1000を用いて電流データおよび/または電圧データの収集を行う。また、監視装置1000は、携帯型であり、電気的接続部および/または変圧器ポートに簡単に接続および/または取り付けられる。衛星ユニットおよび本体ユニットは、非侵襲な方法でケーブル1004,1007の接続点に接続あるいは取り付けできるので、操作者(あるいは事業者)は接続あるいは取り付けのために変圧器104,121の電源を切る必要がない。また、送電網に配置されるときに電力線に入り込む(あるいは侵入する)必要がない。したがって、監視装置1000は、簡単に取り付けることができる。また、送電網に簡単に配備することができる。
運用中、衛星ユニット1021および/または本体ユニット1001は、導電ケーブルを流れる電流を示すデータを収集する。衛星ユニット1021は、収集したデータを、ケーブル1011を介して本体ユニット1001に送信する。なお、ケーブル1004,1007を、衛星ユニットが取り付けられている導電ケーブルの電圧を示すデータを収集するために用いてもよい。導電ケーブルに対応する電流および電圧を示すデータは、例えば電力使用量を算出するために用いられる。
上述したように、電流データおよび/または電圧データを収集して電力使用量を算出するための監視装置1000の利用方法には様々な方法がある
変圧器監視装置1000を用いて、電圧および電流を、3相システムから収集してもよく(この場合、複数の変圧器監視装置100が用いられる)、単相システムから収集してもよい。
単相システムの場合、当該単相システムは、2本の導電ケーブルと1本の中性ケーブル(neutral cable)とを備えている。例えば、典型的な米国の家庭への電力供給には、2本の導電ケーブル(ホットケーブル)と1本の中性ケーブルとが用いられる。なお、この例では、導電ケーブルに印加される電圧は240ボルト(トータル電圧)であり、導電ケーブルと中性ケーブルとの間の電圧は120ボルトである。これは単相システムの典型的な例である。
3相システムでは、典型的には3本の導電ケーブルと1本の中性ケーブルとが用いられる(中性ケーブルを用いない場合もある)。あるシステムでは、各導電ケーブルの電圧を他の2本の導電ケーブルの電圧から120°ずれた位相で計測する。複数の変圧器監視装置1000は、各導電ケーブルから電流値を読み取り、各導電ケーブルと中性ケーブルとの間の電圧値を読み取る(あるいは各導電ケーブル間の電圧値を読み取る)。これらの読み取られた値はその後の電力使用量の計算に用いられる。
なお、変圧器監視装置1000の本体ユニット1001は、1または複数の発光ダイオード(LED;light emitting diodes)1003を備えていてもよい。上記発光ダイオードは、演算部(ここでは図示せず。図4に示した分析演算部308参照。)によって、状態、動作、あるいは変圧器監視装置1000によって実行される他の機能を示すために用いられる。
図4は、図2Aに示した運用演算装置287の典型例を示している。図4に示したように、運用演算装置287は、分析演算部(分析ロジック)308、メーターデータ390、変圧器データ391、電力線データ392、および構成データ312を記憶したメモリ300を備えている。
分析演算部308は、運用演算装置287の機能を制御する(詳細については後述する)。なお、分析演算部308は、ソフトウェアであってもよく、ハードウェアであってもよく、ファームウェアであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。図4に示した実施例では、分析演算部308はソフトウェアとして実装され、メモリ300に記憶されている。
分析演算部308は、ソフトウェアとして実装される場合、コンピュータ読取可能な記録媒体に記憶され、指示を受け取って実行することができる指示実行装置に読み出される。本明細書において、「コンピュータ読取可能な記録媒体」とは、指示実行装置によって用いられるコンピュータプログラムを含むかあるいは記憶するものであればどのような記録媒体であってもよい。
図4に示した運用演算装置287の典型的な実施例は、少なくともバスを含む局所インターフェース301を介して運用演算装置287の他の部材と通信し、駆動させる少なくとも1つの従来の演算手段302(例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP;digital signal processor)あるいは中央演算装置(CPU;central processing unit))を備えている。また、演算手段302は、分析演算部308などのソフトウェアの命令を実行するように構成されている。
入力インターフェース303は、運用演算装置287のユーザからのデータ入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード、キーパッド、あるいはマウスなどを用いることができる。出力インターフェース304は、ユーザにデータを出力するためのものであり、例えば、プリンタや表示装置(例えば液晶ディスプレイ(LCD;liquid crystal display)など)を用いることができる。また、ネットワークインターフェース305は、ネットワーク280(図2A)を介して運用演算装置287と他の装置との通信を可能にするためのものであり、例えばモデムなどを用いることができる。
メモリ300は、メーターデータ390、変圧器データ391、電力データ392、および構成データ312を記憶している。メーターデータ390は、各メーター112−117(図1)から取得した電力使用量の計測値および/または他の電力特性を示す。メーターデータ390は、メーターデータ収集装置986−991(図2A)から取得したメーターデータ935−940(図2A)の総計を示している。
分析演算部308は、メーターデータ935−940を取得し、取得したメーターデータ935−940を、メーター112−117が接続されている変圧器104あるいは121(図1)に基づいて検索できるように記憶(メーターデータ390として記憶)させる。なお、メーターデータ390は、メーターデータ収集装置986−991によってメーター112−117から動的かつ定期的に収集される。例えば、メーターデータ390は、電流測定値、電圧測定値、および/または、メーター112−117毎および/または変圧器104あるいは121毎の所定時間毎の電力計算値を含んでいてもよい(ただしこれに限定されるわけではない)。また、分析演算部308が、収集したメーターデータ390を用いて、対応する変圧器104あるいは121によって供給された電力量が消費施設106−111で受け取られた電力量と実質的に同じであるか否かを判断するようにしてもよい。
メーターデータ390における各メーターデータ935−940のエントリは、当該メーターデータ935−940が収集されたメーター112−117(図1)を識別するために識別子(図示せず)に関連付けられていてもよい。このような識別子は、メーター112−117で実行される演算部(図示せず)によってメーター112−117でランダムに生成されてもよい。
その場合、メーター112−117の演算部によって生成された識別子を示すデータは、当該メーターが接続されている変圧器監視装置243あるいは244に送信される。これにより、変圧器監視装置243,244が変圧器データ240,241を送信するときに、メーターに固有の識別子および/またはメーターデータを変圧器監視装置243,244に送信するメーターに固有の識別子を送信できる。分析演算部308は、変圧器データ240,241を受け取ると、受け取った変圧器データ240,241および変圧器監視装置243,244に固有の識別子および/またはメーターに固有の識別子を、演算時に固有の識別子を検索できるように変圧器データ391として記憶させる。なお、分析演算部308が、変圧器監視装置243,244に固有の識別子と、当該変圧器監視装置243,244がメーターデータを受け取ったメーター112−117の識別子とを対応付けて記憶するようにしてもよい。これにより、分析演算部308は、運用時に、構成データ312を用いて、メーターデータ390における特定のメーターデータの総計を変換器データ391と比較することができる。
変圧器データ391は、配電変圧器104,121から取得した電力使用量の測定値の総計を示すデータである。これらのデータは動的かつ定期的に収集される。なお、変圧器データ240,241は、電流測定値および/または消費施設106−111に供給された電力の総計を示す所定期間における電力計算値を示すデータを含んでいる。変圧器データ391は、「グループ」(すなわち変圧器監視装置243,244によって監視されている2以上の消費施設)に送られている電力の総量を示すデータを含んでいる。ただし、変圧器データ391が変圧器監視装置によって監視されている単一の消費施設に送られている電力データを含んでいてもよい。
配電ネットワーク119(図1)のセットアップ中に、分析演算部308が、1または複数の変圧器104,121に関する固有の識別子を識別するためのデータを受け取るようにしてもよい。また、変圧器監視装置243,244が1または複数の変圧器104,121に組み込まれて電気的に接続されたときに、変圧器104,121の識別子を示すデータがメーター112−117および/または運用演算装置287に供給されるようにしてもよい。また、運用演算装置287が、上記識別子(すなわち上記変圧器の識別子)を構成データ312に記憶させるようにしてもよい。この際、運用演算装置287が、各メーター112−117と当該メーター112−117に対応する消費施設106−111に電力を配電する配電変圧器を識別するための識別子とをメモリ内で関連付けて記憶させるようにしてもよい。
電力線データ273−275は、システム100における電力線101b−101dに沿った電力線データ収集システム290から得られる電力使用量の測定値を示すデータである。これらのデータは動的かつ定期的に収集される。電力線データ273−274は、電流測定値、電圧測定値、および/または、所定期間における配電変電所変圧器103および配電変圧器104,121に供給される電力の総量を示すデータを含んでいる。電力データ392は、「グループ」(すなわち1または複数の配電変電所変圧器103)に送られている電力の総量を示すデータを含んでいる。
運用中、分析演算部308は、ネットワークインターフェース305を介してネットワーク280(図2)からメーターデータ935−940を受け取り、受け取ったメーターデータ935−040をメーターデータ390としてメモリ300に記憶させる。メーターデータ390は、当該メーターデータに対応する消費施設106−111に電力を供給している配電変圧器104,121を検索できるように記憶される。識別子あるいは構成データ312を利用可能に記憶する方法としては、様々な方法を用いることができる。
分析演算部308は、電力送配電システム100(100)をさらに分析するための様々な機能を実行する。例えば、分析演算部308は、収集した変圧器データ391、電力線データ392、および/またはメーターデータ390を用いて、送電線101a,101bあるいは配電線101c−101jにおいて電力の盗難が生じているか否かを判定する。分析演算部308は、消費施設のグループ(例えば消費施設106−108あるいは109−111)によって消費される電力の総量と、対応する配電変圧器104あるいは121によって実際に供給された電力量の総量とを比較する。また、分析演算部308は、配電変電所変圧器103に送電した電力と配電変圧器104,121が受け取った電力の総量とを比較するか、あるいは、送電変電所102に送電した電力と1または複数の配電変電所変圧器103が受け取った電力の総量とを比較する。
比較の結果、電力送配電システム100におけるいずれかの場所で電力の盗難が生じていることが示された場合、分析演算部308は、運用演算装置287のユーザに問題が生じていることを通知する。なお、分析演算部308が、電力送配電システム100のどこで電力の盗難が生じているのかを特定するようにしてもよい。分析演算部308は、表示または音声によりユーザに警告する。この際、電力送配電システム100のどの位置で問題が生じているのかを示すようにしてもよい。
上述したように、分析演算部308は、取得した上記データに基づいて様々な運用や分析を行う。例えば、分析演算部308は、システム容量の寄与度分析を行う。分析演算部308は、1または複数の消費施設106−111がいつ最大電力使用量(および/または条件)になるかを判定するようにしてもよい。分析演算部308は、このデータに基づいて、複数の消費施設106−111の優先度(例えばどの消費施設でいつ最大負荷が必要になるか)を判定する。消費施設106−111に要求される負荷は、システムの課金能力に影響する。このため、上記優先度はどの消費施設106−111が請求管理の観点から利益をもたらすかを決定する。
また、分析演算部308は、メーターデータ390(図4)、変圧器データ391、電力線データ392、および構成データ312(これらをまとめて「運用演算装置データ」と称する)を用いて資産負荷を決定する。例えば、分析は、変電所および給電線負荷、変圧負荷、配電部負荷、電力線負荷、およびケーブル負荷について行われる。また、運用演算装置データは、詳細な電圧計算およびシステム100の分析および/またはシステム100の要素における技術的損失計算、および、各配電変圧器での電圧計測値と配電変圧器の製造者が定めた定格最小/最大電圧との比較、製造者の推奨する電圧範囲外で運用されることにより電力の損失および電力の増大が生じている配電変圧器の特定、および配電変圧器のサイズおよび寿命情報の特定などに用いられる。
電力会社が負荷制御装置(図示せず)を組み込んでもよい。その場合、分析演算部308が、運用演算装置データを1または複数の負荷制御装置の位置を特定するために用いてもよい。
図5は、図3に示した変圧器監視装置1000の具体例を示している。図5に示したように、変圧器監視装置1000は、制御演算部2003、電圧データ2001、電流データ2002、および電力データ2020を記憶するメモリ2000を備えている。
制御演算部2003は、変圧器監視装置1000の機能を制御する(詳細については後述する)。制御演算部2003は、ソフトウェアであってもよく、ハードウェアであってもよく、ファームウェアであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。図5に示した実施例では、制御演算部2003はソフトウェアとして実装され、メモリ2000に記憶されている。
制御演算部2003は、ソフトウェアとして実装される場合、コンピュータ読取可能な記録媒体に記憶され、指示を受け取って実行することができる指示実行装置に読み出される。本明細書において、「コンピュータ読取可能な記録媒体」とは、指示実行装置によって用いられるコンピュータプログラムを含むかあるいは記憶するものであればどのような記録媒体であってもよい。
図5に示した変圧器監装置1000の典型的な実施例は、少なくともバスを含む局所インターフェース2005を介して変圧器監視装置1000の他の部材と通信し、駆動させる少なくとも1つの従来の演算部2004(例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP;digital signal processor)あるいは中央演算装置(CPU;central processing unit))を備えている。また、演算部2004は、制御演算部2003などのソフトウェアの命令を実行するように構成されている。
入力インターフェース2006は、変圧器監視装置1000のユーザからのデータ入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード、キーパッド、あるいはマウスなどを用いることができる。出力インターフェース2007は、ユーザにデータを出力するためのものであり、例えば、プリンタや表示装置(例えば液晶ディスプレイ(LCD;liquid crystal display)など)を用いることができる。また、ネットワークインターフェース2008は、ネットワーク280(図2A)を介して変圧器監視装置1000と他の装置との通信を可能にするためのものであり、例えばモデムあるいは無線通信装置などを用いることができる。
また、変圧器監視装置1000は、通信インターフェース2050をさらに備えている。通信インターフェース2050は、電力データ2020、電圧データ2001、電流データ2002、あるいは変圧器監視装置1000によって収集あるいは計算された他のデータを、他のシステムあるいは装置と通信可能なものであればどのようなインターフェースであってもよい。例えば、上記通信インターフェースは、他の装置が変圧器監視装置1000から識別子を検索するためにシリアル通信を行うシリアルバスインターフェースであってもよい。あるいは、上記通信インターフェース2050は、他の装置が変圧器監視装置1000から識別子を検索するためにUSB(universal serial bus)通信を行うUSBであってもよい。また、上記通信インターフェース2050は、無線周波数(RF;radio frequency)通信、移動体通信、電力線通信、あるいはWiFi(登録商標)通信などを含む他の方法および/または他の装置を用いるものであってもよい。変圧器監視装置1000は、1または複数の電圧データ収集装置2009、および1または複数の電流データ収集装置2010を備えている。図3に示した変圧器監視装置1000は、変圧器におけるケーブル1004,1007(図3)との接続点(図示せず)の電圧を検出する電圧データ収集装置2009を備えている。制御演算部2003は、ケーブル1004,1007を介して上記接続点の電圧を示すデータを取得し、取得したデータを電圧データ2001として記憶する。制御演算部2003は、電圧データ2001に対する処理あるいは電圧データ2001を用いた処理(例えば運用演算装置287(図2A)に電圧データ2001を定期的に送信する処理など)を実行する。
また、図3に示した変圧器監視装置1000は、センサユニットハウジング1005(図3)およびセンシングユニットハウジング1008(図3)を有する電流センサ(図示せず)を備えている。上記電流センサは、周囲に連結されたセンサユニットハウジング1005,1008が配置されている導電ケーブル(図示せず)を流れる電流を検出する。制御演算部2003は、衛星センサユニット1021(図3)からケーブル1011を介して電流を示すデータを受け取り、センサユニットハウジング1018内に備えられる本体ユニット1001の電流センサから電流を示すデータを受け取る。制御演算部2003は、検出された電流を示すデータを電流データ2002として記憶させる。制御演算部2003は、電流データ2002に対する処理、あるいは電流データ2002を用いた処理(例えば運用演算装置287(図2A)が電流データ2002を定期的に送信する処理など)を実行する。
なお、制御演算部2003が、電圧データ2001および電流データ2002を運用演算装置287に送信する前に、電圧データ2001と電流データ2002とを用いた演算を行うようにしてもよい。例えば、制御演算部2003が、電圧データ2001および電流データ2002を用いて所定期間における電力使用量を定期的に算出し、電力データ2020として記憶するようにしてもよい。
運用中、制御演算部2003は、データを、上記ケーブルを介して電力線通信(PLC;power line communication)により運用演算装置287に送信する。あるいは、制御演算部2003が、上記データを、ネットワーク280(図2A)を介して無線通信あるいはその他の方法で送信するようにしてもよい。
図6−10は、図3に示した変圧器監視装置1000の適用例、使用例、および運用例を示している。図6に示したように、変圧器(図示せず)を収容した変圧器容器1022は電柱1036に取り付けられる。1または複数のケーブル1024−1026は、変圧器容器2022から送電先(例えば消費施設106−111(図1))に電流を送る。ケーブル1024−1026は、上記変圧器容器の接続部1064−1066に接続されている。各接続部1064−1066は、導電コネクタ(当該導電コネクタの一部はバスバーと呼ばれる)を備えている。
図7は、変圧器監視装置1000における、接続部1064−1066(図6)のいずれかに取り付けられる(開状態の)衛星ユニット1021を示している。例えば電力会社の作業員などの技術者(図示せず)は、接続部1006aおよび1006bからなるラッチ1006(図3)を外し、センサユニット(図示せず)インターフェースが当該接続部に連結されて当該接続部を流れる電流を検出できるように、部材1088および1089を接続部1064−1066の周囲に配置する。図8は、変圧器監視装置1000における、接続部1064−1066の周囲に取り付けられた閉状態の衛星ユニット1021を示している。
図9は、変圧器監視装置1000における、接続部1064−1066のいずれかに取り付けられる(開状態の)本体ユニット1001を示している。技術者は、接続部1002aおよび1002bからなるラッチ1002を外し、センサユニット(図示せず)インターフェースが当該接続部に連結されて当該接続部を流れる電流を検出できるように、部材1016および1017を接続部1064−1066の周囲に配置する。図10は、接続部1064−1066の周囲に取り付けられた変圧器監視装置1000を示している。図10は、変圧器監視装置1000における、接続部1064−1066の周囲に取り付けられた閉状態の本体ユニット1001を示している。
本体ユニット1001のケーブル1004,1007(図3)を、衛星ユニット1021が接続された接続部1064−1066のいずれか、および本体ユニット1001が接続された接続部1064−1066のいずれかにそれぞれ接続する。ケーブル1004は複数の分離・区別されたケーブルを備えている。あるケーブルは衛星ユニット1021が接続された接続点に接続され、あるケーブルは本体ユニット1001が接続された接続点に接続される。
運用中、センサユニットハウジング1005,1018(図3)内の電流検出装置は、それら各電流検出装置が接続されている接続部に流れる電流を検出する。また、それぞれの接続部(すなわち、本体ユニットが接続された接続部および衛星ユニットが接続された接続部)において、ケーブル1004,1007と上記接続部との連結部と基準導電体との間の電圧を検出する。
また、分析演算部308が、各接続部についての電流データを電流センサから受け取り、各接続部についての電圧データを電圧センサから受け取るようにしてもよい。分析演算部308は、収集されたデータを用いて所定期間の電力を計算し、運用演算装置287(図2A)に送信する。あるいは、分析演算部308が、計算や処理を行うことなく、電圧データおよび電流データを運用演算装置287に直接送信するようにしてもよい。
図11−13は、システム100(図1)に備えられる変圧器監視装置1000(図3)で用いられる方法を示している。上述したように、監視装置1000を、導電ケーブル(図示せず)、あるいは導電ケーブルを変圧器容器1022(図6)に接続するブッシング(図示せず)に接続してもよい。運用中、変圧器監視装置1000は当該変圧器監視装置1000に接続された導電ケーブルに対応する電流および電圧を読み取り、本体ユニット1001(図3)は読み取られた電流および電圧を用いて電力使用量を算出する。
なお、変圧器監視装置1000(図3)が、ハウジング1005(図3)およびハウジング1008(図3)からなる衛星ユニット1021(図3)と本体ユニット1001とを備えた電流検知装置を、2つ備えていてもよい。
図11は、3相電力配電用のY字結線の配電変圧器1200を示している。3相電力は、360°を1/60としたときに、位相が互いに120°異なる交流電力を供給するコンダクタを3つ備えている。3相電力は、3本の導電ケーブルによって送電され、配電変電所変圧器103(図1)および配電変圧器104(図1)に3本の導電ケーブルによって配電される。このため、配電変圧器104は、受け取った電力の電圧を消費施設106−108(図1)に配電するための電圧レベルに変換するために3つの巻線ペア(それぞれが異なる位相の入力電圧を受け取る)を有している。
配電変圧器1200では、3つの単相変圧器1201−1203が共通リード線(中性線)1204に接続されている。図中では、変圧器1201の位相を位相A、変圧器1202の位相を位相B、変圧器1203の位相を位相Cとして各変圧器の接続部を区別して示している。
図11に示した例では、配電変圧器1200での電力の計算に用いるデータ(例えば電圧データおよび電流データ)を取得するために、3つの監視装置1000a、1000b、および1000c(それぞれの構成は監視装置1000(図3)と実質的に同様)が用いられている。
監視装置1000aにおける少なくとも1つの電流検出装置1217は、位相Aの電流データを収集するために用いられる。電流データを収集するために用いられる監視装置1000aの電流検出装置1217は、衛星ユニット1021(図3)あるいは本体ユニット1001(図3)に収容されていてもよい。監視装置1000aの電圧リード線1004aは、電圧データを取得するために、位相Aの導電ケーブルと共通リード線1204とを接続している。なお、衛星ユニット1021の電流検出装置および本体ユニット1001の電流検出装置(電流検出装置1217)の両方を位相Aの導電ケーブルに取り付けてもよい。
また、監視装置1000bの電流検出装置1218は、位相Bの電流データを収集するために用いられる。位相Aの場合と同様、電流データを収集するために用いられる監視装置1000bの電流検出装置1218は、衛星ユニット1021(図3)あるいは本体ユニット1001(図3)に収容されていてもよい。監視装置1000bの電圧リード線1004bは、電圧データを取得するために、位相Bの導電ケーブルと共通リード線1204とを接続している。位相Aの場合と同様、衛星ユニット1021の電流検出装置および本体ユニット1001の電流検出装置(電流検出装置1218)の両方を位相Bの導電ケーブルに取り付けてもよい。
また、監視装置1000cの電流検出装置1219は、位相Cの電流データを収集するために用いられる。位相Aの場合と同様、電流データを収集するために用いられる監視装置1000cの電流検出装置1219は、衛星ユニット1021(図3)あるいは本体ユニット1001(図3)に収容されていてもよい。監視装置1000cの電圧リード線1004cは、電圧データを取得するために、位相Cの導電ケーブルと共通リード線1204とを接続している。位相Cの場合と同様、衛星ユニット1021の電流検出装置および本体ユニット1001の電流検出装置(電流検出装置1219)の両方を位相Cの導電ケーブルに取り付けてもよい。
監視中、監視装置1000a−1000cの制御演算部2003(図5)は、電流測定値および電圧測定値を用いて総電力量を計算する。変圧器監視装置1000a、1000b、および1000cの測定結果に基づいて算出された電力は、電力送配電システム100(図1)に関連する情報を生成する様々なアプリケーションで用いることができる。
図12は、3相電力を配電するためのデルタ結線の配電変圧器1300を示している。配電変圧器1300は、配電変圧器104(図1)として用いることができる。配電変圧器1300は、配電変圧器1200(図11)と同様、3本の導電ケーブルで受け取った電力(すなわち3相電力)の電圧を消費施設106−108(図1)に配電するための電圧レベルに変換するために、3つの単相変圧器を備えている。
配電変圧器1300は、3つの単相変圧器1301−1303を備えている。図中では、変圧器1301の位相を位相A、変圧器1302の位相を位相B、変圧器1303の位相を位相Cとして各変圧器の接続部を区別して示している。
図12に示した例では、配電変圧器1300での電力の計算に用いられる電圧データおよび電流データを取得するために2つの変圧器監視装置1000dおよび1000eが用いられている。変圧器監視装置1000dは入力側の3本の導電ケーブルのうちの1本(図12の位相B)に接続されており、変圧器監視装置1000eは入力側の3本の導電ケーブルのうちの他の1本(図12の位相C)に接続されている。監視装置1000dおよび1000c(それぞれ監視装置1000(図3)と実質的に同様の構成を有する)は、配電変圧器1300での電力を計算するために用いられるデータ(例えば電圧データおよび電流データ)を取得するために用いられる。
監視装置1000dの電流検出装置1318は、位相Bに関する電流データを収集するために用いられる。電流データの収集に用いられる監視装置1000dの電流検出装置1318は、衛星ユニット1021(図3)あるいは本体ユニット1001(図3)に収容されていてもよい。監視装置1000dの電圧リード線1004dは、位相Bの導電ケーブルと位相Aの導電ケーブルとに接続され、これら両導電ケーブルの位相差を測定する。なお、衛星ユニット1021の電流検出装置および本体ユニット1001の電流検出装置(電流検出装置1318)の両方を位相Bの導電ケーブルに取り付けてもよい。また、デルタ結線構造では、位相Aの導電ケーブルが「共通」の導電ケーブルとして設定され、電流を検出した導電ケーブルと「共通」として指定された導電ケーブル(位相A)との間の電位差に基づいて電力が計算される。
位相Bの場合と同様、監視装置1000eの電流検出装置1319は、位相Cに関する電流データを収集するために用いられる。電流データを収集するために用いられる監視装置1000eの電流検出装置1319は、衛星ユニット1021(図3)あるいは本体ユニット1001(図3)に収容されていてもよい。監視装置1000eの電圧リード線1004eは、位相Cの導電ケーブルと位相Aの導電ケーブルとに接続されている。なお、衛星ユニット1021の電流検出装置および本体ユニット1001の電流検出装置(電流検出装置1318)の両方を位相Cの導電ケーブルに取り付けてもよい。
監視中、監視装置1000dおよび1000eの制御演算部2003(図5)は、電流測定値および電圧測定値を用いて総電力量を算出する。変圧器監視装置1000fおよび1000gの測定結果に基づいて算出された電力は、電力送配電システム100(図1)に関連する情報を生成する様々なアプリケーションで用いることができる。
図13は、電力配電のためのオープンデルタ結線の配電変圧器1400を示している。配電変圧器1400は、受け取った電力の電圧を消費施設106−108(図1)に配電するための電圧レベルに変換するための2つの単相変圧器を備えている。
配電変圧器1400は、2つの単相変圧器1401−1402を備えている。図13の例では、配電変圧器1400で電力を計算するために用いられる電圧データおよび電流データを取得するために、2つの変圧器監視装置1000fおよび1000gが用いられている。
変圧器監視装置1000fは、3本の導電ケーブルのうちの1本(図13の位相A)に接続されており、変圧器監視装置1000gは3本の導電ケーブルのうちの他の1本(図13の位相B)に接続されている。監視装置1000fおよび1000g(それぞれ監視装置1000(図3)と実質的に同様の構成を有する)は、配電変圧器1400で電力を計算するために用いられるデータ(例えば電圧データおよび電流データ)を取得するために用いられる。
監視装置1000fにおける電流検出装置1418および1419の少なくとも一方は、位相Aの電圧データおよび電流データを収集するために用いられる。図13の例では両方の電流検出装置を位相Aに接続しているが、必ずしも両方を接続する必要はない。また、監視装置1000fの電流検出装置は、衛星ユニット1021(図3)あるいは本体ユニット1001(図3)に収容されていてもよい。監視装置1000fの電圧リード線1004fは、位相Aの導電ケーブルと接地電位とに接続されている。なお、衛星ユニット1021および本体ユニット1001の両方の電流検出装置を位相Aの導電ケーブルに取り付けてもよい。
監視装置1000gの本体ユニット1001(図3)に収容されている電流検出装置1420、および監視装置1000gの衛星ユニット1021(図3)に収容されている電流検出装置1421が、位相Bについての電流データを収集するために用いられる。監視装置1000gの電圧リード線1004gは、変圧器1402の2次側の出力電圧に接続されている。
監視中、変圧器監視装置1000fおよび1000gの制御演算部2003(図5)は、電流測定値および電圧測定値を用いて総電力量を計算する。変圧器監視装置1000fおよび1000gの測定結果から算出された電力は、電力送配電システム100(図1)に関連する情報を生成する様々なアプリケーションで用いることができる。
図14は、図1に示した電力送配電システム100の典型的な動作を示すフローチャートである。
ステップ1500では、送電網の第1位置で第1変圧器監視装置1000(図3)を第1導電体に電気的に接続する。また、ステップ1501では、上記第1導電体を流れる第1電流、および上記第1導電体に印加された第1電圧を測定する。
ステップ1502では、第2変圧器監視装置1000を上記変圧器に電気的に接続された第2導電体に接続する。また、ステップ1503では、上記第2導電体を流れる電流、および上記第2導電体に印加された第2電圧を測定する。
最後に、ステップ1504において、上記第1電流、上記第1電圧、上記第2電流、および上記第2電圧に基づいて、上記変圧器に対応する電力を示す値を計算する。
本発明の一実施形態にかかる典型的な電力送配電システムを示す図である。
本発明の一実施形態にかかる変圧器データ収集システムおよびメーターデータ収集システムを示す図である。
本発明の一実施形態にかかる電力線データ収集システムを示す図である。
図2Aに示した変圧器監視装置の概略構成を示す図である。
図2Aに示した運用演算装置の構成例を示すブロック図である。
図2Aに示した変圧器監視装置の構成例を示すブロック図である。
本発明の一実施形態にかかる変圧器の図である。
図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の衛星ユニットを示す図である。
図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の衛星ユニットを示す図である。
図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の本体ユニットを示す図である。
図6に示した変圧器に組み込まれた、図3に示した変圧器監視装置の本体ユニットを示す図である。
Y字結線の変圧器を用いる場合の、図1に示したシステムについての電力監視方法を示す図である。
デルタ結線の変圧器を用いる場合の、図1に示したシステムについての電力監視方法を示す図である。
オープンデルタ結線の変圧器を用いる場合の、図1に示したシステムについての電力監視方法を示す図である。
図1に示した電力送配電システムの動作を示すフローチャートである。