詳細な説明
本開示は、膵胆管癌の診断、予後、再発のモニターおよび治療的または予防的治療の評価のためのマーカーのセット、ならびに該マーカーセットを含む使用方法およびキットを提供しようとするものである。以下の用語が本開示に適用される。
「約」は、示されている値からの凡そ+/−10%の変動を意味する。そのような変動は、本明細書に記載されている任意の与えられた値に、それに対して特定の言及がされているかどうかにかかわらず、常に含まれると理解されるべきである。
米国国立保健研究所(National Institutes of Health)により定義されている「生物マーカー」は、「正常な生物学的過程、発病過程または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定され評価される特性」である。
「胆管癌(CCA)」は、肝臓から胆汁を排出する胆管の癌である。それは、該腫瘍の全てが完全に切除できなければ治療不能であり急速に致死的となる比較的稀な腺癌である。
「染色体計数(chromosome enumeration)プローブ(CEP)」または「動原体プローブ」は、細胞内の特定の染色体の数が数えられることを可能にする任意のプローブである。染色体計数プローブは、典型的には、特定の染色体の動原体の近く又は該動原体における領域、典型的には反復性DNA配列(例えば、アルファサテライトDNA)を認識し、それに結合する。動原体は細胞分裂中の忠実な分離に必要とされるため、染色体の動原体は、典型的に、その染色体を代表するとみなされる。特定の遺伝子座に対応するシグナルの数(コピー数)を、動原体に対応するシグナルの数と比較することにより、特定の染色体領域の欠失または増幅は、それが通常は存在する染色体全体の喪失または獲得(アネウソミー(aneusomy))から区別されうる。この比較を行うための1つの方法は、該遺伝子座を表すシグナルの数を、動原体を表すシグナルの数で割り算することである。1未満の比は該遺伝子座の相対的な喪失または欠失を示し、1より大きな比は該遺伝子座の相対的な増加または増幅を示す。同様に、染色体内の不均衡な獲得または喪失を示すために、同じ染色体上の2つの異なる遺伝子座の間で、例えば、該染色体の、2つの異なる腕上で、比較が行われうる。染色体全体の喪失または獲得を概算するために、染色体に対する動原体プローブの代わりに、染色体腕プローブが代替的に使用されうる、と当業者は認識するであろう。しかし、そのようなプローブは、染色体を計数するのに、それほど正確ではない。なぜなら、そのようなプローブに対するシグナルの喪失は、染色体全体の喪失を常に示すわけではない可能性があるからである。染色体計数プローブの例には、Abbott Molecular,Inc.,Des Plaines,IL(旧称Vysis,Inc.,Downers Grove,IL)から商業的に入手可能であるCEP(登録商標)プローブが含まれる。
「コピー数」は、単一遺伝子座、1以上の遺伝子座またはゲノム全体のDNAのいずれかには無関係に、そのようなDNAの測定値である。2の「コピー数」は、(性染色体を除き、二倍性ゆえに)ヒトにおいては「野生型」である。ヒトにおける(性染色体の場合を除く)2以外の「コピー数」は野生型から逸脱している。そのような逸脱は、増幅、すなわち、コピー数の増加、および欠失、すなわち、コピー数の減少、更にはコピー数の非存在を含む。
「標識された」、「検出可能な標識で標識された」および「検出可能な様態で標識された」は、実体(例えば、プローブ)が検出可能であることを示すために、本明細書において互換的に用いられる。「標識」および「検出可能な標識」は、実体を検出可能にするために該実体に結合させた部分、例えば、標的配列への結合に際してプローブを検出可能にするために該プローブに結合させた部分を意味する。該部分自体は検出可能でないかもしれないが、更にもう1つの部分と反応すると検出可能となりうる。「検出可能な様態で標識された」なる語の使用は、そのように標識することを含むと意図される。検出可能な標識は、測定されうるシグナルを該標識が生成し、該シグナルの強度が結合実体の量に比例するするように選択されうる。核酸のような分子を標識および/または検出するための多種多様な系、例えばプローブがよく知られている。標識核酸は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的または他の手段により直接的または間接的に検出可能な標識を組込む又はコンジュゲート化(結合)することにより調製されうる。適当な検出可能標識には、放射性同位体、発蛍光団、発色団、化学発光物質、微粒子、酵素、磁性粒子、電子密集粒子、質量標識、スピン標識、ハプテンなどが含まれる。発蛍光団および化学発光物質が本発明において好ましい。
「遺伝子座特異的プローブ」および「遺伝子座特異的識別体(LSI)」は、染色体上の領域内の特定の遺伝子座、例えば、転移において獲得/喪失を受けることが確認されている遺伝子座に選択的に結合するプローブを表すために、本明細書において互換的に用いられる。プローブは、エキソン、イントロンおよび/または調節配列、例えばプロモーター配列などを含むコードもしくは非コード領域またはその両方を標的化しうる。
「核酸サンプル」は、プローブとのハイブリダイゼーションに適した形態の核酸を含むサンプル、例えば、核またはそのような核から単離もしくは精製された核酸を含むサンプルを意味する。核酸サンプルは、全または部分(例えば、特定の染色体)ゲノムDNA、全または部分mRNA(例えば、特定の染色体または遺伝子)、あるいは選択された配列を含みうる。凝縮染色体(例えば、間期または中期に存在するもの)はin situハイブリダイゼーション、例えばFISHにおける標的としての使用に適している。
「膵胆管癌」は、全てのタイプの膵胆管癌、例えば、全てのタイプの膵癌、例えば、膵頭部癌および膵体部癌、ならびに前記の胆管癌(CCA)、例えば、総胆管癌および門胆管癌、ならびに胆嚢癌を含む。
「所定カットオフ」および「所定レベル」は、一般に、アッセイ結果を所定カットオフ/レベルと比較することにより診断/予後/治療効力結果を評価するために用いられるカットオフ値を意味し、ここで、該所定カットオフ/レベルは種々の臨床パラメータ(例えば、疾患の重症度、進行/非進行/改善など)に既に関係または関連づけられている。
本開示の文脈における「プローブ」は、選択的ハイブリダイゼーションを可能または促進する条件下、標的配列の少なくとも一部に選択的にハイブリダイズしうるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。一般に、プローブはDNAのコードまたはセンス(+)鎖に相補的、あるいはDNAの非コードまたはアンチセンス(−)鎖に相補的(「逆相補的」と称されることがある)でありうる。プローブは長さにおいて有意に変動しうる。幾つかの用途においては約10〜約100ヌクレオチド、例えば、約15〜約75ヌクレオチド、例えば、約15〜約50ヌクレオチドの長さが好ましい可能性があり、一方、染色体プローブには約50〜1×105ヌクレオチドの長さが好ましい可能性があり、遺伝子座特異的プローブには約25,000〜約800,000ヌクレオチドの長さが好ましい可能性がある。
本開示の文脈における「選択的にハイブリダイズする」(ならびに「選択的ハイブリダイゼーション」、「特異的にハイブリダイズする」および「特異的ハイブリダイゼーション」)は、ストリンジェントな条件下の主として特定のヌクレオチド配列との核酸分子の結合、二本鎖形成またはハイブリダイゼーションを意味する。「ストリンジェントな条件」なる語は、プローブが主にその標的配列にハイブリダイズする、および他の非標的配列にそれより低い度合でハイブリダイズする又は全くハイブリダイズしない条件を意味する。核酸ハイブリダイゼーションの文脈における(例えば、アレイ、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーションまたはFISHにおける)「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は配列依存的であり、条件によって異なる。核酸のハイブリダイゼーションの広範な指針は、例えば、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes, Part I,Ch.2,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,”Elsevier,NY(1993)(“Tijssen”)に見出される。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、定められたイオン強度およびpHにおいて、特定の配列の熱融解点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列の50%が完全マッチプローブにハイブリダイズする(定められたイオン強度およびpHにおける)温度である。非常にストリンジェントな条件は、特定のプローブのTmに等しくなるように選択される。サザンまたはノーザンブロットにおけるフィルター上またはアレイ上の100個を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、標準的なハイブリダイゼーション溶液を使用した場合の42℃である(例えば、SambrookおよびRussell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Press,NY(2001)を参照されたい)。
「標的配列」、「標的領域」および「核酸標的」は、例えば喪失および/獲得の判定の対象となっている特定の染色体位置に存在するヌクレオチド配列を意味する。本明細書において用いられている用語は、特定の実施形態を説明することを目的としたものであるに過ぎず、ほかの点において限定的であると意図されるものではない。
膵胆管癌の検出、診断、予後、再発モニターおよび治療的/予防的治療の効力のモニターの方法
患者における高い段階の異形成または膵胆管癌を検出する、あるいはそのリスクの増大を推測する方法を提供する。該方法は、患者からの膵胆管細胞のサンプルを、MCL1(骨髄細胞白血病配列1)に対する遺伝子座特異的プローブ、EGFR(上皮増殖因子受容体)に対する遺伝子座特異的プローブ、MYCに対する遺伝子座特異的プローブおよびP16に対する遺伝子座特異的プローブを含む検出可能な様態で標識されたプローブのセットと、ハイブリダイゼーション条件下で接触させ、染色体異常の存在を判定することを含む。多染色体性は高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌を示し、一方、四染色体性、P16の喪失、MCL1、MYCまたはP16の単一遺伝子座獲得、あるいは併発するP16喪失を伴うMCL1、EGFRまたはMYCの単一遺伝子座獲得は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる。特に、多染色体性(細胞当たり2コピーを超える2以上の遺伝子座)(例えば、>4細胞におけるもの)は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌を示し、四染色体性(4コピーの各遺伝子座)(例えば、>11細胞におけるもの)、またはp16喪失(9q21の非存在)(例えば、少なくとも5%の細胞におけるもの)、または8>細胞におけるMCL1、MYCまたはP16の単一遺伝子座獲得(細胞当たり2コピーを超える1つの遺伝子座)、あるいは4>細胞における併発するP16喪失を伴うMCL1、EGFRまたはMYCの単一遺伝子座獲得は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる。該方法は、癌を炎症性良性状態から区別するために、前癌病変を特定するために、CCAのリスクを有することが知られている原発性硬化性胆管炎(PSC)患者のための早期スクリーニング手段を提供するために、ならびに治療判断を補助するための染色体異常に関する情報を得るために、ならびに/または予後情報および本明細書に記載されている他の利点を得るために使用されうる。
膵胆管細胞のサンプルはいずれかの適当な方法により得られうる。好ましい方法は内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)中のブラッシングによるものである。
前記方法は、当技術分野で公知のいずれかの適当な検出方法を用いて行われうる。好ましくは、前記方法は、in situハイブリダイゼーション、例えば蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いて行われる。好ましくは、各プローブは検出可能な様態で標識され、2以上のプローブが同一サンプルに対して同時または連続的に使用される場合には、好ましくは、各プローブは、異なる標識、例えば異なる発蛍光団で、検出可能な様態で標識される。
各プローブが検出可能な様態で標識されている(そして2以上のプローブが同一サンプルに対して同時または連続的に使用される場合には、異なって標識されている)in situハイブリダイゼーション、例えば、各プローブが発蛍光団で標識されている(そして2以上のプローブが同一サンプルに対して同時または連続的に使用される場合には、異なって標識されている)FISHにより、前記方法が行われる場合、該方法は、新鮮な膵胆管細胞[新鮮細胞は1〜3日間培養されることが可能であり、染色体が高度に凝縮され可視化されうる中期において細胞を遮断するためにブロッカー、例えばコルセミド(Colcemid)が培養に加えられることが可能である]のサンプルに対して行われることが可能であり、該サンプルは凍結され、または固定され(例えば、ホルマリン中で固定され、パラフィン中に包埋され)、標的核酸(例えば、DNA)の接近可能性を増大させ非特異的結合を低減するために(例えば、RNアーゼおよびペプシンで)処理され、ついで1以上のプローブでのハイブリダイゼーション、未結合プローブを除去するための洗浄、およびハイブリダイズしたプローブの検出に付されうる。例えば、細胞懸濁液は単層としてスライド上に適用されることが可能であり、所望の細胞密度が得られるまで光学または位相差顕微鏡により細胞密度が測定されうる。該スライドを2×クエン酸ナトリウム塩液中に37℃で10分間、HCl中の0.05% ペプシン中に37℃で13分間、PBS中に室温で5分間、1% ホルムアルデヒド中に室温で5分間、およびPBS中に室温で5分間浸漬し、等級付きアルコール中に通過させ、乾燥させることが可能である。膵胆管細胞のホルマリン固定されパラフィン包埋された(FFPE)サンプルの切片(厚さ約5μm)をスライド、例えばSuperFrost Plus正荷電スライド(ThermoShandon,Pittsburgh,PAから入手可能)上にマウントし、56℃で一晩焼き付けし、脱パラフィン化させ、1×クエン酸ナトリウム塩液(pH6.3)中に80℃で35分間浸漬させ、水中で3分間洗浄した。37℃で15分間のプロテアーゼ消化(4mg ペプシン/mLおよび0.2N HCl)の後、該切片を水中で3分間洗浄し、等級付きエタノールに通過させ、乾燥させることが可能である。好ましくは、FFPE切片またはスライド(細胞懸濁液を伴うもの(すなわち、細胞学的スライド))を使用する前記のとおりの1以上のプローブでのハイブリダイゼーションを、自動化共変性オーブン(HYBriteまたはThermoBrite Denaturation/Hybridization System,Abbot Molecular,Inc.,Des Plaines,IL)を製造業者の説明書に従い使用して(そのような方法は、典型的には、プローブおよび標的核酸の変性を含む)、37℃で16〜18時間行う。ハイブリダイゼーション後、該切片または細胞学的スライドを、好ましくは、カバーガラスを取り外すために洗浄バッファー(2×クエン酸ナトリウム塩液/0.3% NP4O;Abbott Molecular,Inc.から入手可能)中に室温で2〜10分間配置し、ついで73℃の洗浄バッファー中に2分間浸漬し、乾燥させ、4’6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩水和物(DAPI)I色落防止溶液(Abbott Molecular,Inc.)でマウントする。好ましくは、該スライドを、単一帯域通過フィルタ(Abbott Molecular,Inc.)を備えた落射蛍光顕微鏡で分析する。
検出前に、細胞サンプルは、所望により、見掛け上の細胞異常に基づいて、前選択されうる。前選択は、疑わしい細胞を特定し、それにより、スクリーニングがそれらの細胞に絞られることを可能にする。前選択はより速いスクリーニングを可能にし、陽性結果が見逃されない可能性を増加させる。細胞学的サンプルからの細胞は顕微鏡スライド上に配置され、異形成および腫瘍細胞に一般に関連している細胞異常に関して視覚的に走査されうる。そのような異常には、通常はプローブのそれらの標的DNAへのハイブリダイゼーションの後、核酸染料または色素、例えばヨウ化プロピジウムまたは4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)で核を対比染色することにより評価される核サイズ、核形状および核染色の異常が含まれる。典型的には、腫瘍(新生物)細胞は、拡大しており形状において不規則であり及び/又は斑染色パターンを示す核を含有する。ヨウ化プロピジウムは、典型的には約0.4μg/ml〜約5μg/mlの濃度で使用され、614nmの発光ピーク波長で観察されうる赤色の蛍光を発するDNA特異的染料である。DAPIは、典型的には約125ng/ml〜約1,000ng/mlの濃度で使用され、低倍率でDAPIフィルターで452nmの発光ピーク波長で観察されうる青色の蛍光を発するDNA特異的染料である。この場合、検出のために前選択された細胞のみが染色体喪失および/または獲得に関する計数に付される。好ましくは、少なくとも100のオーダーの前選択細胞、そしてDAPIフィルターを使用した場合に異常核を有する多数の細胞が存在するように見える場合には好ましくはそれ以上の前選択細胞が、染色体喪失および/または獲得を評価するために選択される。
あるいは、異形成または疑わしい病変の幾らかのレベルを示す組織における領域は、低倍率でDAPIフィルターを使用して局在化され、いずれかのプローブの異常なコピー数を有する核の存在に関して徹底的に精査されうる。正常細胞においては、与えられたプローブの2コピーが検出されるであろう。異常細胞においては、与えられたプローブの、それより多い又は少ないコピーが検出されるであろう。好ましくは、最も顕著なコピー数変化を伴う領域が計数のために選択される。可能な場合には、多数の異常な領域が選択され、各異常領域内で、少なくとも約10個のランダムな核が高倍率(64倍または100倍の対物レンズ)で分析されて、少なくとも約100個の核が分析される。好ましくは、核は非重複的であり、十分に明るいシグナルを有する。
あるいは、細胞学的または組織学的特徴から独立して、検出用の細胞が選択されうる。例えば、顕微鏡スライド上の与えられた領域内の全ての非重複的細胞は染色体喪失および/または獲得に関して評価されうる。もう1つの例として、該スライド上の細胞、例えば、顕微鏡スライド上で連続的に数において少なくとも約50、より好ましくは少なくとも約100のオーダーで変化した形態を示す細胞が、染色体喪失および/または獲得を評価するために選択されうる。
MCL1(1q21)、EGFR(7p12)、MYC(8q24)およびP16(9p21)のコピーが計数される。
したがって、そのような方法は、患者から得られた膵胆管細胞のサンプル、例えば核酸サンプルを、MCL1に対する遺伝子座特異的プローブ、EGFRに対する遺伝子座特異的プローブ、MYCに対する遺伝子座特異的プローブおよびP16に対する遺伝子座特異的プローブを含む検出可能な様態で標識されたプローブのセットと、該プローブがその標的核酸配列に選択的に結合し、安定なハイブリダイゼーション複合体を形成するのを可能にする(または促進する)条件下で接触させることを含む。そのような方法は、ハイブリダイゼーション複合体の形成を検出し、ハイブリダイゼーション複合体の数を計数することを更に含む。MCL1(1q21)、EGFR(7p12)、MYC(8q24)およびP16(9p21)を含むハイブリダイゼーション複合体の数を考慮して、該方法は、MCL1(1q21)、EGFR(7p12)、MYC(8q24)およびP16(9p21)のコピー数を決定することを更に含む。所望により、該コピー数は、予想される又は「正常」なコピー数(すなわち、2コピー)と比較されることが可能であり、ここで、適当な場合には、2を超えるコピー数(すなわち、獲得)および2未満のコピー数(すなわち、喪失)は、該細胞がFISHにより異常であることを示す。2コピーを超える2以上の遺伝子座の存在は多染色体性を示す。>4細胞における多染色体性の存在は高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌を示す。2コピーを超える単一遺伝子座のような、単一遺伝子座のコピー数の増加は、単一遺伝子座獲得を示す。8>細胞における単一遺伝子座の獲得は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる。2コピーを超える単一遺伝子座および0または1コピーのP16のような、併発するP16喪失を伴う単一遺伝子座のコピー数の増加は、併発するP16喪失を伴う単一遺伝子座獲得を示す。>4細胞における併発するP16喪失を伴う単一遺伝子座の獲得は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる。全遺伝子座の4コピーの存在は四染色体性を示す。>11細胞における四染色体性の存在は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる。P16シグナルの非存在はP16喪失を示す。細胞の少なくとも5%におけるP16の非存在は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる。
脱パラフィン化、前処理、染色および通常のスライド洗浄も、当技術分野で公知の方法に従い行われうるが、VP 2000 Process(Abbott Molecular,Inc.,Des Plaines,IL)のような自動化系の使用は、評価用のスライドを調製するのに必要とされる時間を減少させる。スライドは、大きなバッチ(例えば、50スライド)で調製されることが可能であり、一方、ハイブリダイゼーション後の洗浄のために標準的なコプリン(Coplin)ジャーが使用される場合には、小さなバッチ(例えば、4スライド)で調製されうる。また、スライドのスコア化は、自動化イメージングを用いて完全自動化されることが可能であり、それにより、試料分析に要される手作業の時間が節約される。完全自動化はまた、より異常な細胞をより頻繁に且つ一貫して捕捉するイメージングアルゴリズムの使用を可能にする。また、当技術分野で公知のスライド調製のいずれかの適当な方法が用いられうるが、スライドは、好ましくは、ThinPrep 2000(Hologic,Inc.,Bedford,MA)を使用して調製され、これはより均一な且つ一貫した細胞単層を与える。
当技術分野で既に公知である又は現在開発中である他の方法は、ホルマリン中に固定されパラフィン中に包埋された細胞以外の膵胆管細胞のサンプル、例えば、膵胆管細胞からの新鮮または凍結細胞、ホモジナイズされた細胞、細胞溶解細胞あるいは単離または精製核酸(例えば、DNAのような「核酸サンプル」)(本明細書中で用いる「膵胆管細胞のサンプル」は、コピー数および獲得/喪失の決定を可能にする膵胆管細胞のサンプルの全ての形態を含むと意図される)の使用を必要としうるか、または該使用が好ましいかもしれない。また、トランケート化人工物を減少させ、余分な包埋物を排除するために、核はパラフィン包埋試料の厚い切片から抽出されうる。典型的には、生物学的サンプルは、一旦得られたら、当技術分野で公知の標準的な方法を用いて、集められ、加工された後、ハイブリダイゼーションに付される。そのような加工は、典型的には、プロテアーゼ処理およびアルデヒド溶液(例えば、ホルムアルデヒド)中の追加的な固定を含む。
本発明において使用されうる方法の例には、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)、リアルタイムQ−PCR(Applied Biosystems,Foster City,CA)、PCR産物の濃度測定走査、デジタルPCR(所望により、コピー数が決定されるべき遺伝子および/または染色体領域の前増幅を伴う)(例えば、Vogelsteinら,PNAS USA 96:9236−9241(1999)、米国特許出願公開第2005/0252773号および米国特許出願公開第2009/0069194号を参照されたい)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH;例えば、Kallioniemiら,Science 258:818−821(1992);および国際公開出願番号WO 93/18186を参照されたい)、マイクロサテライトまたはサザン対立形質分析、ドットブロット、アレイ、マイクロアレイ(Carter,Nature Genetics Supplement 39:S16−S21(2007年7月))、多重(マルチプレックス)増幅可能プローブハイブリダイゼーション(MAPH)、多重連結依存的プローブ増幅(MLPA;例えば、Schoutenら,Nucleic Acids Res.30:e 57(2002)を参照されたい)、変性高速液体クロマトグラフィー(dHPLC;Kumarら,J.Biochem.Biophys.Methods 64(3):226−234(2005))、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、コーマ(combed)ゲノムDNA上の蛍光プローブ長の測定(Herrickら,PNAS 97(1):222−227(2000))、参照問合せピロシークエンシング(reference query pyrosequencing)(RQPS;Liuら,Cold Spring Harb.Protoc.doi:10.1101/pdb.prot5491(2010))、参照配列上へのフォスミド末端のマッピング(毛管に基づく技術)、微小電気泳動およびナノポアシークエンシング(例えば、Service,Science 311:1544−1546(2006);およびShendureら,Nat.Rev.Genet.5:335−344(2004)を参照されたい)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
in situハイブリダイゼーションおよび類似方法による分析のための核酸標的の変性は、典型的には、細胞形態を維持するような方法で行われる。例えば、染色体DNAは、高いpH、熱(例えば、約70〜95℃の温度)、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)およびそれらの組合せにより変性されうる。一方、プローブは数分間の加熱により変性されうる。
変性後、ハイブリダイゼーションを行う。プローブをその核酸標的に特異的にハイブリダイズさせるための条件は、一般に、特異的ハイブリッドを得るための、与えられたハイブリダイゼーション法において利用可能な条件の組合せを含み、その条件は当業者により容易に決定されうる。そのような条件は、典型的には、制御された温度、液相、およびプローブと標的との接触を含む。ハイブリダイゼーション条件は、プローブ濃度、標的の長さ、標的およびプローブG−C含量、溶媒組成、温度およびインキュベーションの持続時間を含む多数の要因によって変動する。少なくとも1つの工程が標的とのプローブの接触に先行しうる。あるいは、プローブおよび標的は、互いに接触したまま一緒に、または生物学的サンプルとのプローブの後続接触を伴って、変性条件に付されうる。ハイブリダイゼーションは、約25〜約55℃の範囲の温度で約0.5〜約96時間の範囲で例示される時間にわたって、またはより好ましくは、約32〜約40℃の温度で約2〜約16時間の範囲の時間にわたって、例えば2〜4×SSCとホルムアミドとの約50:50の体積比の混合物の液相中のプローブ/サンプルの後続のインキュベーションを伴って達成されうる。特異性を増加させるために、ブロッキング剤、例えば、米国特許第5,756,696号(その内容の全体を、特にブロッキング核酸の使用の説明に関して、参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている未標識ブロッキング核酸が使用されうる。他の条件は、当業者に容易に理解されるとおり、プローブを、サンプル中に存在するその核酸標的に特異的にハイブリダイズさせるために、容易に用いられうる。ハイブリダイゼーション法は、例えば、Pinketら,PNAS USA 85:9138−9142(1988);In situ Hybridization Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.33,Choo編,Humana Press,Totowa,NJ(1994);およびKallioniemiら,PNAS USA 89:5321−5325(1992)に記載されている。
適当なインキュベーション時間が完了したら、一連の洗浄により、サンプルDNAへの染色体プローブの非特異的結合が除去されうる。所望のストリンジェンシーに応じて、温度および塩濃度が適切に選択される。要求されるストリンジェンシーのレベルは、ゲノム配列に関連した特定のプローブ配列の複雑さに左右され、プローブを既知遺伝的組成のサンプルに系統的にハイブリダイズさせることにより決定されうる。一般に、高いストリンジェンシーの洗浄は、約0.2×〜約2×SSCおよび約0.1%〜約1%のノニオン界面活性剤、例えばNonidet P−40(NP40)で、約65〜約80℃の範囲の温度で行われうる。より低いストリンジェンシーの洗浄が要求される場合には、該洗浄は、増加した濃度の塩で、より低い温度で行われうる。
発蛍光団標識プローブまたはプローブ組成物が使用される場合には、検出方法は、蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、またはプローブハイブリダイゼーションを判定するための他の手段を含みうる。任意の適当な顕微鏡イメージング法が、複数の発蛍光団を観察するために、本明細書に記載されている方法と共に用いられうる。蛍光顕微鏡法が用いられる場合、ハイブリダイズしたサンプルは、各発蛍光団の励起に適した光の下で、適当なフィルターの使用により観察されうる。あるいは、自動化デジタルイメージング系、例えばMetaSystems,BioViewまたはApplied Imaging系がシグナル計数およびデータ獲得アルゴリズムと共に使用される。
用いられる方法に応じて、結果の表示を促進するために、および蛍光強度における小さな相違を検出する感度を改善するために、デジタルイメージ分析系が用いられうる。典型的な系はQUIPS(定量的イメージ処理系(quantitative image processing system)の頭字語)であり、これは、自動化ステージ、焦点制御およびフィルターホイールを備えた標準的な蛍光顕微鏡に基づく自動化イメージ分析系(Ludl Electronic Products,Ltd.,Hawthorne,NY)である。該フィルターホイールは励起波長の選択のために該顕微鏡の蛍光励起光路内にマウントされる。ダイクロイックブロックにおける特別なフィルター(Chroma Technology,Brattleboro,VT)は、イメージレジストレーションシフトを伴わない複数の色素の励起を可能にする。該顕微鏡は2つのカメラポートを有し、そのうちの1つは高感度高速ビデオイメージ表示のための強化CCDカメラ(Quantex Corp.,Sunnyvale,CA)を有し、これはスライド上の興味深い領域を見出すために、および合焦するために使用される。他方のカメラポートは冷却CCDカメラ(Photometrics Ltd.,Tucson,AZによるモデル200)を有し、これは高い分解能および感度での実際のイメージ獲得のために使用される。該冷却CCDカメラはSUN 4/330ワークステーション(SUN Microsystems,Inc.,Mountain View,CA)にVMEバスを介してインターフェース接続される。多色イメージの全獲得は、イメージ処理ソフトウェアパッケージSCIL−Image(Delft Centre for Image Processing,Delft,Netherlands)を使用して制御される。
アレイCGH(aCGH)においては、プローブは基体上の別個の位置に固定化され、標識されない(例えば、国際特許出願公開第WO 96/17958号を参照されたい)。その代わりに、標的核酸を含むサンプル核酸は標識される。サンプル核酸はハイブリダイゼーションの前に標識され、あるいはハイブリダイゼーション複合体が検出可能な様態で標識される。二色または多色aCGHにおいては、該プローブアレイは、異なって標識された標的核酸の、2以上の集合体に、同時または連続的にハイブリダイズされる。
前記方法は、膵胆管癌の予後、膵胆管癌の予防的または治療的治療(例えば、EGFRを過剰発現する腫瘍を有する患者へのチロシンキナーゼインヒビターの投与)の効力のモニター、および膵胆管癌の再発のモニターにおいて使用されうる。該方法は、他の検出方法で得られた結果を確認するために使用されうる。前癌病変を有する患者における癌のリスクは、そのような方法、および癌の攻撃性を用いて評価されうる(例えば、視野内の、より多い染色体異常および/またはより広がった染色体異常は、細胞に影響を及ぼす)。そのような方法は、治療判断、例えば積極的サーベイランス、手術または療法(例えば、EGFRを過剰発現する腫瘍を有する患者へのチロシンキナーゼインヒビターの投与)および補助薬物治療の判断を補助するためにも使用されうる。所望により、本明細書に記載されている方法は、他の試験、例えば通常の細胞診、組織学的検査、前立腺特異抗原(PSA)アッセイ、ノモグラム、メチル化、突然変異などと共に使用されうる。
したがって、該方法は、試験サンプルが得られた患者の診断、予後、または治療的/予防的治療の効力の評価を更に含みうる。該方法が、試験サンプルが得られた患者の治療的/予防的治療の効力を評価することを更に含む場合、該方法は、所望により、効力を改善するために必要に応じて、該患者の治療的/予防的治療を修飾することを更に含む。該方法は自動化系または半自動化系における使用に適合化されうる。
一般に、染色体異常に関して膵胆管細胞のサンプルをアッセイするに際して得られた結果を評価するための基準として、所定レベルが用いられうる。一般に、そのような比較を行う際には、疾患、障害または状態の個々の段階またはエンドポイントとの或いは個々の徴候との個々の染色体異常(存在またはレベル)の連関または関連づけが行われうるように、個々のアッセイを、適当な条件下、十分な回数行うことにより、該所定レベルが得られる。典型的には、該所定レベルは参照被験者(または被験者の集団)のアッセイにより得られる。
特に、疾患の進行および/または治療をモニターするために用いられる所定レベルに対して、染色体異常(存在またはレベル)は「不変」、「好適」(または「好適に変化」)または「不適」(または「不適に変化」)でありうる。「上昇」または「増加」は、典型的または正常なレベルまたは範囲(例えば、所定レベル)より高い、あるいは別の参照レベルまたは範囲(例えば、より早期またはベースラインのサンプル)より高い、膵胆管細胞のサンプルにおける染色体異常のレベルに関するものである。「低下」または「減少(低減)」なる語は、典型的または正常なレベルまたは範囲(例えば、所定レベル)より低い、あるいは別の参照レベルまたは範囲(例えば、より早期またはベースラインのサンプル)より低い、膵胆管細胞のサンプルにおける染色体異常のレベルに関するものである。「変化」なる語は、典型的または正常なレベルまたは範囲(例えば、所定レベル)と比較して、あるいは別の参照レベルまたは範囲(例えば、より早期またはベースラインのサンプル)と比較して変化(増加または減少)した、膵胆管細胞のサンプルにおける染色体異常のレベルに関するものである。
与えられた染色体異常に関する典型的または正常なレベルまたは範囲は標準的な慣例に従い定められる。幾つかの場合における染色体異常のレベルは非常に低いため、いわゆる変化レベルまたは変化は、実験誤差またはサンプル変動によっては説明できない、典型的または正常なレベルまたは範囲あるいは参照レベルまたは範囲と比較していずれかの正味の変化が存在する場合に生じたとみなされうる。したがって、個々のサンプルにおいて測定されたレベルは、いわゆる正常被験者からの類似サンプルにおいて決定されたレベルまたはレベル範囲と比較されるであろう。この場合、「正常被験者」は、検出可能な疾患を有さない個体であり、「正常」または「対照」患者または集団は、例えば、それぞれ、検出可能な疾患を示さないものである。更に、染色体異常がヒト集団の大多数において高レベルで通常は見出されない場合には、「正常被験者」は、与えられた染色体異常の、検出可能なレベルの実質的増加を示さない個体であるとみなされることが可能であり、「正常」(「対照」と称されることがある)患者または集団は、与えられた染色体異常の、検出可能なレベルの実質的増加を示さないものである。「見掛け上正常な被験者」は、染色体異常が評価されていない又は評価されつつある者である。与えられた染色体異常のレベルが「上昇」していると言えるのは、該染色体異常が通常は検出不能であるが、試験サンプルにおいて検出される場合、および正常レベルより高いレベルでアナライトが試験サンプル中に存在する場合である。したがって、とりわけ、本開示は、膵胆管癌またはそのリスクを有する被験者のスクリーニング方法を提供する。
該方法は他のマーカーなどの検出をも含みうる。
本明細書に記載されている方法は、被験者が膵胆管癌またはその発生リスクを有するか否かを決定するためにも使用されうる。特に、そのような方法は、
(a)被験者からの膵胆管細胞のサンプルにおける染色体異常を(例えば、本明細書に記載されている方法、または当技術分野で公知の方法を用いて)決定し、
(b)工程(a)において決定された染色体異常のレベルを所定レベルと比較する工程を含むことが可能であり、ここで、工程(a)において決定された染色体異常のレベルが所定レベルに対して好適である場合には、該被験者は、膵胆管癌の、より低いリスクを有すると決定される。しかし、工程(a)において決定された染色体異常のレベルが所定レベルに対して不適である場合には、該被験者は膵胆管癌またはそのリスクを有すると決定される。
また、被験者における膵胆管癌の進行をモニターする方法を本発明において提供する。所望により、該方法は、
(a)被験者からの膵胆管細胞のサンプルにおける染色体異常を決定し、
(b)被験者からの膵胆管細胞の、より後のサンプルにおける、染色体異常のレベルを決定し、
(c)工程(b)において決定された染色体異常のレベルを、工程(a)において決定された染色体異常のレベルと比較する工程を含み、ここで、工程(b)におけるレベルが、工程(a)において決定されたレベルと比較して不変または不適である場合には、膵胆管癌が該被験者において継続、進行または悪化していると決定される。比較として、工程(B)において決定されたレベルが、工程(a)において決定されたレベルと比較して好適である場合には、膵胆管癌は該被験者において中断、軽減または改善している可能性がある。
所望により、該方法は、工程(b)において決定された染色体異常のレベルを、例えば所定レベルと比較することを更に含む。所望により、更に、工程(b)において決定されたレベルが、例えば、所定レベルに対して不適に変化していることを、該比較が示す場合には、該方法は、例えば1以上の医薬組成物、放射線および/またはホルモン療法で、ある期間にわたって被験者を治療することを含む。
更にまた、該方法は、例えば1以上の医薬組成物、放射線および/またはホルモン療法で治療を受けている被験者における治療をモニターするために用いられうる。特に、そのような方法は、被験者が治療される前に、被験者からの膵胆管細胞の第1サンプルを準備する。次に、膵胆管細胞の第1サンプルにおける染色体異常のレベルを(例えば、本明細書に記載されている又は当技術分野で公知の方法を用いて)決定する。染色体異常のレベルを決定した後、所望により、ついで該レベルを所定レベルと比較する。膵胆管細胞の第1サンプルにおいて決定されたレベルが所定レベルより低い場合には、該被験者は治療されない。しかし、膵胆管細胞の第1サンプルにおいて決定されたレベルが所定レベルより高い場合には、該被験者は、ある期間にわたって治療される。被験者が治療される期間は当業者により決定されうる(例えば、該期間は約7日間〜約2年間、好ましくは、約14日間〜約1年間でありうる)。
治療の経過中、ついで膵胆管細胞の第2および後続サンプルを該被験者から得る。サンプルの数、および該サンプルを被験者から得る時点は決定的なものではない。例えば、第2サンプルは、被験者が最初に治療された7日後に得られることが可能であり、第3サンプルは、被験者が最初に治療された2週間後に得られることが可能であり、第4サンプルは、被験者が最初に治療された3週間後に得られることが可能であり、第5サンプルは、被験者が最初に治療された4週間後に得られることが可能である、などであろう。
それぞれの第2または後続サンプルを被験者から得、第2または後続サンプルにおける染色体異常のレベルを(例えば、本明細書に記載されている又は当技術分野で公知の方法を用いて)決定する。ついで、第2および後続サンプルのそれぞれにおいて決定されたレベルを、第1サンプル(例えば、最初に所望により所定レベルと比較されたサンプル)において決定されたレベルと比較する。工程(c)において決定されたレベルが、工程(a)において決定されたレベルと比較して好適である場合には、膵胆管癌は中断、軽減または改善している可能性があり、該被験者は治療継続されるべきである。しかし、工程(c)において決定されたレベルが、工程(a)において決定されたレベルと比較して不変または不適である場合には、膵胆管癌が継続、進行または悪化していると決定され、該被験者は、例えば、より高い投与量の医薬組成物、放射線またはホルモンで治療されるべきであり、あるいは該被験者は、異なる方法で治療されるべきである。
一般に、反復試験が行われうるアッセイでは(例えば、疾患の進行および/または治療に対する応答をモニターする場合)、第2または後続試験サンプルは、第1試験サンプルが被験者から得られた後の或る期間において得られる。特に、被験者からの第2試験サンプルは、第1試験サンプルが被験者から得られた数分後、数時間後、数日後、数週間後または数年後に得られうる。例えば、第2試験サンプルは、第1試験サンプルが被験者から得られた後の約1分、約5分、約10分、約15分、約30分、約45分、約60分、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約2週、約3週、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約13週、約14週、約15週、約16週、約17週、約18週、約19週、約20、約21週、約22週、約23週、約24週、約25週、約26週、約27週、約28週、約29週、約30週、約31週、約32週、約33週、約34週、約35週、約36週、約37週、約38週、約39週、約40週、約41週、約42週、約43週、約44週、約45週、約46週、約47週、約48週、約49週、約50週、約51週、約52週、約1.5年、約2年、約2.5年、約3.0年、約3.5年、約4.0年、約4.5年、約5.0年、約5.5年、約6.0年、約6.5年、約7.0年、約7.5年、約8.0年、約8.5年、約9.0年、約9.5年または約10.0年の時期に被験者から得られうる。
更に、本開示はまた、膵胆管癌の素因を有する又は膵胆管癌に罹患している被験者が治療から利益を得るかどうかを決定する方法に関する。特に、該開示は付随的な診断方法および製品に関する。したがって、本明細書に記載されている「被験者における疾患の治療をモニターする」方法は、最適には、療法のための候補を選択または特定することをも更に含みうる。
したがって、特定の実施形態においては、該開示はまた、膵胆管癌またはそのリスクを有する被験者が療法の候補であるかどうかを決定する方法を提供する。一般に、該被験者は、該疾患の何らかの症状を経験している者、またはそのような疾患またはそのリスクを有すると実際に診断されている者、および/または本明細書に記載されている染色体異常の不適レベルを示す者である。
該方法は、所望により、本明細書に記載されているアッセイを含み、ここで、染色体異常のレベルは被験者の治療の前および後に評価される。治療後の染色体異常の不適レベルの観察は、更なる又は継続的な治療を受けることから被験者が利益を得ないことを証明しており、一方、治療後の染色体異常の好適レベルの観察は、更なる又は継続的な治療を受けることから被験者が利益を得ることを証明している。この証明は臨床研究の管理を補助し、患者のケアの改善をもたらすことを補助する。
プローブ
プローブのセットも提供する。該プローブセットは、MCL1(骨髄細胞白血病配列1)に対する遺伝子座特異的プローブ、EGFR(上皮増殖因子受容体)に対する遺伝子座特異的プローブ、MYCに対する遺伝子座特異的プローブおよびP16に対する遺伝子座特異的プローブを含む又はそれらからなる。
遺伝子座特異的プローブとして使用される適当なプローブは、遺伝子を含有する染色体上の特定の領域にハイブリダイズする。遺伝子MCL1(1q21)に対する遺伝子座特異的プローブは第1染色体上のq21(すなわち、1q21)におけるMCL1遺伝子の全部または一部にハイブリダイズしうる。遺伝子MCL1に関する最近公開された研究は、この遺伝子がCCA細胞におけるTRAIL(腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド)抵抗性を引き起こすことを示している(Werneburgら,J.Biol.Chem.282(30):28960−28970(2007))。TRAILは癌治療のための有望な物質であり、したがって、患者の腫瘍のMCL1状態は治療判断のための貴重な情報でありうる。
EGFRに対する遺伝子座特異的プローブは第7染色体上のp12(すなわち、7p12)におけるEGFR遺伝子の全部または一部にハイブリダイズしうる。EGFRは、非小細胞肺癌および進行性膵癌を有する患者の一部において、チロシンキナーゼインヒビターにより成功裏に標的化されており(DeHaanら,Hum.Pathol.38(3):491−499(2007年3月))、したがって、膵胆管癌の場合に潜在的に治療上重要なもう1つの遺伝子である。更に、EGFRは第7染色体上に位置し、膵胆管癌細胞における第7染色体の獲得(すなわち、トリソミー7)は悪性疾患の存在に関するリスク因子であることが示されている。なぜなら、トリソミー7を有する患者の約半分が癌と診断されているからである(Fritcherら(2009),前掲;Moreno Lunaら,Gastroenterology 131(4):1064−1072(2006))。
MYC(8q24)に対する遺伝子座特異的プローブは第8染色体上のq24(すなわち、8q24)におけるMYC遺伝子の全部または一部にハイブリダイズしうる。P16遺伝子(9q21)に対する遺伝子特異的プローブは第9染色体上のp21(すなわち、9p21)におけるP16遺伝子の全部または一部にハイブリダイズしうる。
染色体プローブとして使用される適当なプローブは、染色体の動原体に関連した反復性DNAにハイブリダイズしうる。霊長類染色体の動原体はDNAの長い縦列反復の複合体ファミリーを含有し、これは、α−サテライトDNAと称される約171塩基対(bp)の長さの単量体反復から構成される。染色体プローブは、典型的には、約50〜1×105ヌクレオチド長である。より長いプローブは、典型的には、約100〜500ヌクレオチド長の、より小さな断片を含む。
染色体領域または部分領域を標的化する遺伝子座特異的プローブおよび染色体計数プローブ(CEP)は商業的に入手可能であり、あるいは当業者により容易に製造されうる。そのようなプローブはAbbott Molecular,Inc.(Des Plaines,IL)、Molecular Probes,Inc.(Eugene,OR)またはCytocell(Oxfordshire,UK)から商業的に入手可能である。染色体プローブは、例えば、タンパク質核酸(PNA)、クローン化ヒトDNA、例えばプラスミド、細菌人工染色体(BAC)およびPI人工染色体(PAC)(ヒトDNA配列のインサートを含有するもの)から製造されうる。関心のある領域はPCR増幅またはクローニングにより得られうる。もう1つの実施形態においては、該染色体プローブはオリゴプローブでありうる。あるいは、染色体プローブは当技術分野で公知の方法に従い合成的に製造されうる。
特定の遺伝子座の標的化が望まれる場合には、標的化遺伝子の全長に沿ってハイブリダイズするプローブが好ましいことがあるが、それが必要なわけではない。遺伝子座特異的プローブは、癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子(その遺伝的異常が転移に相関しているもの、例えばMYC)にハイブリダイズするように設計されうる。
該プローブは当技術分野で公知のいずれかの方法により製造されうる。プローブは合成または組換え製造されうる。そのようなプローブは約25,000塩基対〜約800,000塩基対の長さの範囲でありうる。
好ましくは、プローブは検出可能な様態で標識され、2以上のプローブが同一サンプル上で同時または連続的に使用される場合には、好ましくは、各プローブは異なって標識される。好ましくは、該プローブは、発蛍光団で、検出可能な様態で標識される。好ましい発蛍光団の例には、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、リッサミン(lissamine)ローダミンB、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン−5−イソチオシアナート(FITC)、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、テトラメチルローダミン−5−イソチオシアナート、テトラメチルローダミン−6−イソチオシアナート、5−カルボキシルテトラメチルローダミン、6−カルボキシテトラメチルローダミン、7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸、N−4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−3−インダセンプロピオン酸、エオシン−5−イソチオシアナート、エリスロシン−5−イソチオシアナート、SpectrumRed(Abbott Molecular,Inc.)、SpectrumGold(Abbott Molecular,Inc.)、SpectrumGreen(Abbott Molecular,Inc.)、SpectrumAqua(Abbott Molecular,Inc.)、テキサスレッド(TEXAS RED)(Molecular Probes,Inc.)、ルシファーイエロー(Lucifer yellow)およびカスケード・ブルー(CASCADE blue)アセチルアジド(Molecular Probes,Inc.)が含まれるが、これらに限定されるものではない。使用される個々の標識は決定的なものではないが、望ましくは、個々の標識は該プローブのin situハイブリダイゼーションおよびいずれかの他のプローブ上の標識の検出を妨げるものではない。該標識は、望ましくは、アッセイの感度を最大にするために、およびいずれのバックグラウンドを超えるものでも検出可能となるように、可能な限り低いコピー数で検出可能である。また、望ましくは、該標識は、非常に局在化したシグナルを与え、それにより、高度の空間的分解能を与える。
核酸プローブへの発蛍光団の結合は当技術分野でよく知られており、いずれかの利用可能な手段により達成されうる。例えば、発蛍光団は個々のヌクレオチドに共有結合されることが可能であり、標準的な技術、例えばニックトランスレーション、ランダムプライミング(Rigbyら,J.Mol.Biol.113:237(1997))、PCR標識、末端標識、個々の残基、例えばシトシン残基の化学修飾による直接標識(米国特許第5,491,224号)などを用いて、標識ヌクレオチドはプローブ内に取り込まれうる。あるいは、発蛍光団は、プローブ内に取り込まれている活性化リンカーアームでヌクレオチドに共有結合されることが可能であり、例えば、アミノ交換されている該プローブのデオキシシチジンヌクレオチドにリンカーを介して共有結合されることが可能である。プローブを標識するための方法は米国特許第5,491,224号およびMorrisonら,Molecular Cytogenetics:Protocols and Applications,Chapter 2,“Labeling Fluorescence In Situ Hybridization Probes for Genomic Targets,”pp.21−40,Fan編,Humana Press(2002)(それらの両方を、プローブの標識のそれらの説明に関して、参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
標識含有部分として、発蛍光団の代わりに、他の物質または染料が使用されうる、と当業者は認識するであろう。発光物質には、例えば、放射線発光、化学発光、生物発光およびリン光標識含有部分が含まれる。視認可能な光で検出可能である物質には、シアニン染料が含まれる。あるいは間接的手段により可視化される検出部分が使用されうる。例えば、プローブは、当技術分野で公知の通常の方法を用いて、ビオチンまたはジゴキシゲニンで標識され、ついで検出のために更に加工されうる。ビオチン含有プローブの可視化は、検出可能なマーカーにコンジュゲート化されたアビジンの後続の結合により達成されうる。該検出可能マーカーは発蛍光団であることが可能であり、この場合、プローブの可視化および識別は後記のとおりに達成されうる。
あるいは、標的領域にハイブリダイズした染色体プローブは、不溶性有色生成物の生成のための適当な基質との標識部分の酵素反応により可視化されうる。各プローブは、異なる標識部分の選択により、該セット内の他のプローブから識別されうる。セット内のビオチン含有プローブは、適当な基質およびアルカリホスファターゼ(AP)またはホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲート化されたアビジンの存在下の後続のインキュベーションにより検出されうる。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスファートおよびニトロブルーテトラゾリウム(NBT)はアルカリホスファターゼの基質として働き、ジアミノベンゾアートはHRPの基質として働く。
キット
また、キットも提供する。該キットは、(a)患者における膵胆管癌の検出を可能にするプローブのセット、および(b)患者における膵胆管癌の検出、診断、予後または治療的/予防的治療の評価のための説明書を含む。したがって、該キットは、(a)患者における膵胆管癌の検出を可能にするプローブのセット[ここで、該プローブセットは、MCL1(骨髄細胞白血病配列1)に対する遺伝子座特異的プローブ、EGFR(上皮増殖因子受容体)に対する遺伝子座特異的プローブ、MYCに対する遺伝子座特異的プローブおよびP16に対する遺伝子座特異的プローブを含む又はそれらからなる]、および(b)患者における膵胆管癌の検出のための説明書(ここで、該説明書は、患者から得られた膵胆管細胞のサンプルにおいて、染色体異常の存在を判定することを含み、ここで、多染色体性は高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌を示し、四染色体性、P16の喪失、MCL1、MYCまたはP16の単一遺伝子座獲得、あるいは併発するP16喪失を伴うMCL1、EGFRまたはMYCの単一遺伝子座獲得は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる)を含みうる。特に、多染色体性(細胞当たり2コピーを超える2以上の遺伝子座)(例えば、>4細胞におけるもの)は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌を示す。MCL1、MYCまたはP16の単一遺伝子座獲得(細胞当たり2コピーを超えるもの)(例えば、8>細胞におけるもの)、併発するP16喪失を伴うMCL1、EGFRまたはMYCの単一遺伝子座獲得(例えば、4>細胞におけるもの)、あるいは四染色体性(4コピーの各遺伝子座)(例えば、>11細胞におけるもの)、またはp16喪失(P16の非存在)(例えば、少なくとも5%の細胞におけるもの)は、高い段階の異形成、膵胆管癌または膵胆管への転移癌のリスクの増大を推測させる。そのようなキットは、ブロッキング剤または他のプローブ、該プローブの検出を促進するための種々の標識または標識化剤、ハイブリダイゼーション用の試薬(例えば、バッファー)、間期スプレッド(spread)などを更に含みうる。
以下の実施例は本開示を例示するためのものである。該実施例は、特許請求している本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1
この実施例は候補プローブの選択を記載する。
多重比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)研究(Millerら,J.Exp.Clin.Cancer Res.28:62(2009);Shiraishiら,Oncology 60(2):151−161(2001);およびLeeら,J.Korean Med.Sci.19(5):682−687(2004))に基づいて膵胆管腫瘍において見出される共通の染色体変化を特定するために、文献の精査を行った。新規プローブを設計し、製造した。また、商業的に入手可能なプローブセットであるUroVysion(商標)(Abbott Molecular,Des Plaines,IL)を比較のために評価した。第1プローブセットは、SpectrumRed(商標)で標識されたEGFR(7p12)に対する遺伝子座特異的プローブ、SpectrumGreen(商標)で標識されたMYC(8q24)に対する遺伝子座特異的プローブ、SpectrumGold(商標)で標識されたP16(9p21)に対する遺伝子座特異的プローブ、およびSpectrumAqua(商標)で標識された第9染色体に対する動原体プローブ(染色体計数プローブ9(CEP9(登録商標)))からなるものであった。第2プローブセットは、SpectrumRed(商標)で標識されたP53(17p13)に対する遺伝子座特異的プローブ、SpectrumAqua(商標)で標識された第17染色体に対する動原体プローブ(CEP17(登録商標))、SpectrumGreen(商標)で標識されたERBB2(17q11)に対する遺伝子座特異的プローブ、およびSpectrumGold(商標)で標識されたAURKA(20q13)に対する遺伝子座特異的プローブからなるものであった。第3プローブセットは、SpectrumRed(商標)で標識されたMCL1(骨髄細胞白血病配列1;1q21.2)に対する遺伝子座特異的プローブ、SpectrumAqua(商標)で標識されたD5S721(5q15)に対する遺伝子座特異的プローブ、SpectrumGold(商標)で標識されたCCND1(サイクリンD1;11q13)に対する遺伝子座特異的プローブ、およびSpectrumGreen(商標)で標識されたTEL(12p13)に対する遺伝子座特異的プローブからなるものであった。UroVysion(商標)プローブセットは、SpectrumRed(商標)で標識された第3染色体に対する動原体プローブ(CEP3(登録商標))、SpectrumGreen(商標)で標識された第7染色体に対する動原体プローブ(CEP7(登録商標))、SpectrumGold(商標)で標識されたP16(9p21)に対する遺伝子座特異的プローブ、およびSpectrumAqua(商標)で標識された第17染色体に対する動原体プローブ(CEP17(登録商標))からなる。
膵胆管癌を検出する際のプローブの質および精度を評価するために、プローブ選択研究を行った。このアッセイの意図される臨床用途は、ERCP中に得られる膵胆管ブラッシングであるが、腫瘍切除試料を評価した。なぜなら、関心のある細胞が、高い信頼性で多数存在するからである。癌を含有する集められたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)肝臓(n=14)、胆管(n=1)および膵臓(n=14)切除体を特定した。各切除体は1人の患者からのものであった。FISH分析のための各場合のために、4個のスライドを調製した。対応するH&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)スライドが病理学者により顕微鏡法で評価され、関心領域(腫瘍および良性管)が選び出された。それらの29個の切除体のうち、16個の領域のCCA(2個の領域は同一切除体/患者からのものであった)および14個の領域の膵腺癌が特定された。9個の切除試料のなかで9個の良性管が特定された。該関心領域を未染色組織スライド上で同時に選び出し、3つの候補FISHプローブセットおよびUroVysion(商標)でハイブリダイズさせた。各プローブセットごとに別々のスライドを使用した。4個のプローブ発蛍光団のそれぞれを可視化するためのフィルターを備えた蛍光顕微鏡を使用して、ハイブリダイズしたスライドを評価した。該関心領域をFISHスライド上に配置し、その領域内の50個の細胞を評価した。それらの4個のプローブのそれぞれに関する、細胞当たりのシグナルの数を記録した。
全プローブは、P53(17p13)に対する遺伝子座特異的プローブ以外は高い質を有していた。該プローブは非常に小さく、非特異的であった。したがって、それを識別し評価することはしばしば困難であった。
パラフィン包埋腫瘍試料において観察された遺伝子座獲得を図1に示す。該図はプローブに対する細胞の百分率の棒グラフである。1,500個の腫瘍細胞のうち、コピー数増加(細胞当たり>2コピー)を伴う細胞の比率を、各プローブに関して評価した。300個の正常細胞のうち、コピー数増加(細胞当たり>2コピー)を伴う細胞の比率を、各プローブに関して評価した。図1に示されているとおり、腫瘍試料における増加の最高比率を示した5個のプローブには、8q24、1q21、7p12、17q12および11q13が含まれた。
プローブ当たりに観察された平均プローブコピー数を図2に示す。図2に示されているとおり、最高平均コピー数を示した5個のプローブには、8q24、17q12、20q13、1q21および7p12が含まれた。
ホモ接合喪失を有する細胞の比率を図3に示す。1,500個の腫瘍細胞のうち、各遺伝子座のホモ接合喪失(細胞当たり0コピー)を有する腫瘍細胞の比率を、各プローブに関して評価した。300個の正常細胞のうち、各遺伝子座のホモ接合喪失(細胞当たり0コピー)を有する正常細胞の比率を、各プローブに関して評価した。図3に示されているとおり、ホモ接合喪失を有する細胞の最高比率を示したプローブは9p21であった。この研究における癌細胞の40%以上がホモ接合喪失を有していた。
全ての記録細胞からのシグナルパターンを使用する癌の検出のための最適カットオフ値を決定するために、統計分析を行った。正常膵胆管組織に存在するシグナルの数を表すために、前記の9個の良性管を使用した。表1に示されているとおり、偽陽性を伴わない(すなわち、100%の特異性)で、各プローブに関して、正常染色体含量を有する細胞からの腫瘍細胞において染色体異常(獲得および喪失)を最も良く識別したカットオフ値を決定するために、ROC(受信者動作特性)分析を行った。1q21および11q13に関するカットオフは、保存的となるために、2%(1細胞)から4%(2細胞)に増加された。
前記に基づいて、P16(9p21)に対する遺伝子座特異的プローブを選択した。プローブ選択統計分析の次工程は、100%の標的特異性を有する表1からの確立されたカットオフを使用して3個のプローブの種々の発癌性プローブ組合せの感度(感受性)を計算することであった。表2は、高い感度を有する25個のプローブ組合せ、および比較用のUroVysion(商標)(CEP3(登録商標)、CEP7(登録商標)およびCEP17(登録商標))の性能を一覧している。P16(9p21)に対する遺伝子座特異的プローブの添加を伴う各プローブセットの感度が示されている。
MYC(8q24)に対する遺伝子座特異的プローブは、分析された全ての他のプローブと比較して最も頻繁に最高コピー数を伴う獲得を検出した。MCL1(1q21)、EGFR(7p12)、MYC(8q24)およびP16(9p21)を含むプローブセットは、UroVysion(商標)の動原体プローブ(80.0%)より高い感度(86.7%)を有していた。このプローブセットの感度(93.3%)は、UroVysion(商標)(96.7%)より1つだけ少ない癌症例を検出した。
実施例2
この実施例は、実施例1において選択されたFISHプローブを使用するERCPブラッシングの分析を記載する。
この研究の目的は、臨床病理追跡を伴う患者からの膵胆管ブラッシング試料を使用するFISHにより試料が異常であるとみなすためのカットオフを選択することであった。悪性疾患の検出に関する該新規プローブセットの性能はUroVysion(商標)の性能と後に比較される。
癌を疑わせる膵胆管狭窄を有する患者がMayo Clinicにおける臨床診療の一部としてERCPを受け、その途中に、狭窄ブラッシングが得られ、Molecular Cytology Laboratoryに提出された。ブラッシングを細胞ペレットに製し、UroVysion(商標)プローブセットを使用してFISH分析を行った。残存細胞ペレットを、それが存在する場合には、実験室内で保管した。2005年にMayo Clinic Molecular Cytology Laboratoryにおいてブラッシングを連続的に受けた97名の異なる患者からの試料を遡及的に特定した。包含基準は以下のとおりであった:(a)追跡の際の良性または悪性としての狭窄の最終的分類、(b)利用可能な残存細胞ペレット、および(c)癌を有さない患者に関する少なくとも1年の臨床追跡。癌に関するゴールドスタンダードには、悪性疾患の病理学的証拠(例えば、生検、細針吸引(FNA)または通常の細胞診)および/または臨床的証拠(イメージング上の腫瘍または塊、明白な転移を伴う癌の進行)が含まれた。別々ののERCP処置からの2以上の試料を有する患者の場合には、最も早い/第1ブラッシングのみを分析に使用した。最も早いブラッシング試料が利用不可能な場合には、次の連続的な来院の際のブラッシングを利用した。
実施例1において選択された4個のFISHプローブを含有する最終プローブ混合物を以下の処方で調製した:SpectrumGold(商標)で標識されたMCL1(1q21)、SpectrumGreen(商標)で標識されたEGFR(7p12)、SpectrumAqua(商標)で標識されたMYC(8q24)、およびSpectrumRed(商標)で標識されたP16(9p21)。
各保管細胞ペレットからの細胞懸濁液を、ピペットを使用してガラススライド上に手動で滴下させ、該最終プローブセットでハイブリダイズさせた。試料の盲検評価が保証されるように、スライドに研究識別番号を付けた。別々に各細胞のFISHシグナルパターンを決定するために各蛍光プローブの可視化のためのフィルターを有する蛍光顕微鏡でスライドを分析した。各試料の一方の末端から、100個の連続的な上皮細胞のシグナルパターンを計数し、記録した。FISHパターンは、二染色体性(各プローブに関して2個のシグナル)、ホモ接合9p21喪失(0コピーの9p21プローブ)、単一遺伝子座獲得(>2コピーの1遺伝子座)、併発する9p21喪失を伴う単一遺伝子座獲得(0または1コピーの9p21を伴う>2コピーの1遺伝子座)、四染色体性(プローブ当たり4コピー)および多染色体性(>2コピーの2以上のプローブ)を含んでいた。100細胞の計数の後、該試料の残りを次いでスクリーニングし、いずれかの異常なFISHパターンを、それが存在する場合には記録した。100個未満の細胞しか存在しない、またはハイブリダイゼーションシグナルが存在しない若しくは不明瞭である場合には、試料は非診断的とみなされた。
各細胞をそのFISHシグナルパターンに従い分類した。各試料に関して、100の細胞数を、ホモ接合9p21喪失を伴う細胞の比率を計算するために用いた。その他のFISH異常(単一遺伝子座獲得、併発する9p21喪失を伴う単一遺伝子座獲得、四染色体性および多染色体性)に関しては、異常細胞の絶対数を表にした。癌を有さない患者は統計分析では良性(正常)とみなされた。高い特異性を維持しつつ最高感度を有するカットオフを選択するために、各FISH異常に関して、ROC曲線を作成した。
52名の男性および45名の女性が該研究に参加し、平均年齢は57歳(20〜86歳の範囲)であった。45名の患者(46%)が原発性硬化性胆管炎(PSC)を有していた。55名の患者(57%)が、胆管癌(CCA;n=36)、膵腺癌(n=10)、胆嚢腺癌(n=4)、転移性結腸腺癌(n=2)、転移性乳腺癌(n=1)、形質細胞腫(n=1)および移植後リンパ増殖性障害(n=1)を含む癌と診断された。7個の試料は、細胞充実性の欠如(n=4)、材料の不明瞭さ(n=2)またはハイブリダイゼーションシグナルの欠如(n=1)のため、非診断的FISH結果を示した。
100細胞計数におけるホモ接合9p21喪失、1q21の単一遺伝子獲得を有する細胞の絶対数、8q24の単一遺伝子座獲得を有する細胞の絶対数、9p21の単一遺伝子座獲得を有する細胞の絶対数、単一遺伝子座獲得および併発する9p21喪失(ヘミ接合またはホモ接合)を有する細胞の絶対数、四染色体性を有する細胞の絶対数、および多染色体性を有する細胞の絶対数のROC曲線分析に基づいて、膵胆管ブラッシングに対してFISHプローブセット1q21、7p12、8q24および9p21を陽性的に使用するための最適カットオフ値を選択した。該カットオフを表4に示す。
該新規プローブセットに関するカットオフ値の適用は41個の陽性試料を与えた。該新規プローブセットおよび該カットオフ値を用いて検出されたそれぞれの各FISH異常に関する試料の数を表5に示す。多染色体性およびいずれかの他のFISH異常に関するカットオフ値に達した試料(n=14)を多染色体性として分類した。単一遺伝子座獲得および併発する9p21喪失を伴う単一遺伝子座獲得に関するカットオフ値に達した試料(n=2)を、併発する9p21喪失を伴う単一遺伝子座獲得として分類した。
合計90個の試料が両方のプローブセットにより診断的FISH結果を示した。UroVysion(商標)プローブセットを考慮した場合、多染色体性は、標準的な臨床診療に従い陽性とみなされた唯一のFISH異常であった。UroVysion(商標)は21個の試料において真に陽性であり、そのうちの2個は該新規プローブセットによっては陰性であった。該新規FISHプローブセットは36個の試料において真に陽性であり、そのうちの18個はUroVysion(商標)によっては陰性であった。膵胆管悪性疾患の検出に関してUroVysion(商標)と比較した場合の(表4におけるカットオフ値を使用した場合の)該新規FISHプローブセットの性能特性を表6に示す。該新規プローブセットはUroVysion(商標)より有意に高感度であった(それぞれ73%対41%)。1つの例がUroVysion(商標)によっては偽陽性であり、5つの例が該新規プローブセットによっては偽陽性であった。
したがって、1q21(MCL1)、7p12(EGFR)、8q24(MYC)および9p21(P16)に対するプローブを含有する新規FISHプローブセットをカットオフ値(表4)の選択のために膵胆管ブラッシング試料に適用した。現在使用されているFISHプローブセット(すなわち、UroVysion(商標))と比較して、該新規プローブセットでは、膵胆管悪性疾患の検出に関する関連感度が有意に高かった(P<0.001)。該新規プローブセットは、UroVysion(商標)と比較して、癌を有する16名の追加的な患者(32%)を検出した。悪性疾患を有さない5名の患者が該新規プローブセットでは陽性と特定され、そのうちの1名はUroVysion(商標)によっても陽性とみなされた。UroVysion(商標)と比較された該新規プローブセットの特異性は有意に異なっていた(P=0.046)。
実施例3
この実施例は、実施例2におけるFISHプローブでのERCPブラッシングの分析において使用されたカットオフの妥当性検証を示す。
患者のブラッシング試料の別の組を評価した。該新規プローブセットの性能を癌の検出に関してUroVysion(商標)および通常の細胞診と評価した。
標準的な実施に従い、通常の細胞診およびUroVysion(商標)FISHのためにERCPブラッシングを集めた。2006年〜2008年に評価された112名の異なる連続的な患者からの残存細胞ペレットを遡及的に特定した。包含基準および悪性疾患に関するゴールドスタンダードは、実施例2において用いたのと同じであった。
標準的な実施に従い、Mayo Clinic Molecular Cytology Laboratoryにおける通常の細胞診およびUroVysion(商標)のために各試料を等しく分割した。通常の細胞診では、ThinPrepスライドがPap染色され、悪性疾患に関して陰性、異型、疑い又は陽性と細胞病理学者により評価された。UroVysion(商標)FISHプローブセットとのハイブリダイゼーションのために、細胞懸濁液をスライド上に手動で滴下した。4個以上の多染色体性細胞が存在する場合には、FISHスライドは陽性とみなされた。
該膵胆管FISHプローブセットとのハイブリダイゼーションのための手動滴下スライドを調製するために、残存細胞ペレットを遡及的に使用した。実施例2に記載されているとおりに、スライド調製、FISHハイブリダイゼーションおよび分析を行った。ブラッシングカットオフ研究からのカットオフ値(表4)を、各試料に関する膵胆管FISH結果を得るために、ブラッシング妥当性検証試料の分析から得られた細胞数に適用した。
67名の男性および45名の女性が該研究に参加し、平均年齢は58歳(23〜94歳の範囲)であった。45名の患者(46%)がPSCを有していた。65名の患者(58%)が、CCA(n=49)、膵腺癌(n=8)、転移癌(n=4)、胆嚢腺癌(n=3)膨大部腺癌(n=1)を含む癌と診断された。通常の細胞診の結果(表7)は55例(49%)の陰性、24例(21%)の異型、15例(13%)の疑い、および18例(16%)の陽性を含んでいた。通常の細胞診断分類ごとの癌を有する試料の比率を表7に示す。
FISH結果(表8)は、多染色体性を有する50例(46%)、四染色体性を有する4例(4%)、1q21、8q24または9p21の単一遺伝子座獲得を有する6例(5%)および陰性の52例(46%)を含んでいた。FISH診断分類ごとの癌を有する試料の比率を表8に示す。
ブラッシングの妥当性検証組合せにおける膵胆管FISHプローブセット(表4のカットオフ値を使用した場合)、UroVysion(商標)および通常の細胞診の性能特性を表9に示す。UroVysion(商標)を使用する標準的な臨床診療に従い、多染色体性はどちらのプローブセットにおいても統計計算では陽性とみなされた。陽性の通常の細胞診の結果のみが臨床診療において妥当だとみなされた。したがって、異型および疑いの細胞診結果は統計では陰性とみなされた。該膵胆管プローブセットは通常の細胞診(74%対28%、P<0.0001)およびUroVysion(商標)(74%対51%、P=0.0003)より有意に高感度であり、類似した特異性を示した。該膵胆管プローブセットにより、UroVysion(商標)と比較して3個少ない偽陽性を伴って14個の追加的な癌症例が検出された。
この研究の結果は、ERCPブラッシング試料において該膵胆管プローブセットに関して得られたFISHカットオフ値が適切なものであることを示している。独立した患者コホートに対するこれらのカットオフ値の適用は、類似した特異性で、UroVysion(商標)または通常の細胞診より有意に高い感度をもたらした。これらのデータは該カットオフ値の妥当性を示しているだけでなく、該膵胆管FISHプローブセットの臨床的有用性をも実証している。
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