JP2015232519A - クランプオン式超音波流量計及び流量の計測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】流体の流量を正確に計測可能なクランプオン式超音波流量計を提供する。【解決手段】流体が流れる配管10に対して臨界角を超える角度θwi1で第1の超音波信号を入射させ、配管10の管壁においてエバネッセント波を発生させる第1の超音波トランスデューサ101と、配管10に対して第1の超音波信号の入射角度θwi1と同じ角度θwi2で第2の超音波信号を入射させ、配管10の管壁においてエバネッセント波を発生させる第2の超音波トランスデューサ102と、第1の超音波信号が配管10内を経て第2の超音波トランスデューサ102に到達するまでの第1の時間と、第2の超音波信号が配管内を経て第1の超音波トランスデューサ101に到達するまでの第2の時間と、に基づき、配管10内の流体の流速及び/又は流量を算出する流量算出部302と、を備えるクランプオン式超音波流量計。【選択図】図1
Description
本発明は流体計測技術に関し、特にクランプオン式超音波流量計及び流量の計測方法に関する。
クランプオン式超音波流量計は、配管の外側の上流側と下流側にそれぞれ配置される超音波トランスデューサを備える。クランプオン式の流量計は一般に超音波を利用するため、以下、本明細書においては、「クランプオン式超音波流量計」のことを、単に「クランプオン式流量計」と略す場合がある。クランプオン式流量計は、配管の中を流れる流体に向かって超音波を送り込み、流体の上流から下流方向に従って伝播する超音波の伝播時間と、下流から上流方向に逆らって伝播する超音波の伝播時間と、に基づき、配管内を流れる流体の流速及び流量を算出する(例えば、特許文献1参照。)。クランプオン式流量計は、配管の外側に超音波トランスデューサを押し当てればよいため、設置する際に配管を切断する必要がない、配管内の空洞部を流れる流体に触れないため、測定対象の流体が腐食性であってもよい、測定対象の流体の純度に影響を与えない、並びに配管内に構造物が挿入されないため、圧力損失が生じない、等の利点を有する。
本発明は、流体の流量を正確に計測可能なクランプオン式超音波流量計及び流量の計測方法を提供することを目的の一つとする。ここで、流体とは、気体及び液体を含む。
本発明の態様によれば、(a)流体が流れる配管に対して臨界角を超える角度で第1の超音波信号を入射させ、配管の管壁においてエバネッセント波を発生させる第1の超音波トランスデューサと、(b)第1の超音波信号を受信可能な位置に配置され、配管に対して第1の超音波信号の入射角度と同じ角度で第2の超音波信号を入射させ、配管の管壁においてエバネッセント波を発生させる第2の超音波トランスデューサと、(c)第1の超音波信号が配管内を経て第2の超音波トランスデューサに到達するまでの第1の時間と、第2の超音波信号が配管内を経て第1の超音波トランスデューサに到達するまでの第2の時間と、に基づき、配管内の流体の流速及び/又は流量を算出する流量算出部と、を備えるクランプオン式超音波流量計が提供される。
本発明の他の態様によれば、(a)流体が流れる配管に対して臨界角を超える角度で第1の超音波信号を第1の超音波トランスデューサから入射させ、配管の管壁においてエバネッセント波を発生させることと、(b)第1の超音波信号を受信可能な位置に配置された第2の超音波トランスデューサから配管に対して第1の超音波信号の入射角度と同じ角度で第2の超音波信号を入射させ、配管の管壁においてエバネッセント波を発生させること、(c)第1の超音波信号が配管内を経て第2の超音波トランスデューサに到達するまでの第1の時間と、第2の超音波信号が配管内を経て第1の超音波トランスデューサに到達するまでの第2の時間と、に基づき、配管内の流体の流速及び/又は流量を算出することと、を含む、流量の計測方法が提供される。
本発明によれば、流体の流量を正確に計測可能なクランプオン式超音波流量計及び流量の計測方法を提供可能である。
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
実施の形態に係るクランプオン式流量計は、図1及び図2に示すように、流体が流れる配管10に対して臨界角を超える角度θwi1で第1の超音波信号を入射させ、配管10の管壁においてエバネッセント波を発生させる第1の超音波トランスデューサ101と、第1の超音波信号を受信可能な位置に配置され、配管10に対して第1の超音波信号の入射角度θwi1と同じ角度θwi2で第2の超音波信号を入射させ、配管10の管壁においてエバネッセント波を発生させる第2の超音波トランスデューサ102と、を備える。流体とは、気体又は液体である。
第1の超音波トランスデューサ101は配管10内を流れる流体の上流側に配置され、第2の超音波トランスデューサ102は下流側に配置される。第1の超音波トランスデューサ101から発せられた第1の超音波信号は、配管10を経て第2の超音波トランスデューサ102で受信される。第2の超音波トランスデューサ102から発せられた第2の超音波信号は、配管10を経て第1の超音波トランスデューサ101で受信される。例えば、第1の超音波トランスデューサ101と第2の超音波トランスデューサ102は、交互に駆動信号が印加され、交互に超音波信号を発する。
第1の超音波トランスデューサ101及び第2の超音波トランスデューサ102は、中央処理装置(CPU)300に電気的に接続されている。CPU300は、第1の超音波信号が第1の超音波トランスデューサ101から発せられてから配管10内を経て第2の超音波トランスデューサ102に到達するまでの第1の時間、及び第2の超音波信号が第2の超音波トランスデューサ102から発せられてから配管内を経て第1の超音波トランスデューサ101に到達するまでの第2の時間を計測する時間計測部301と、第1の時間と、第2の時間と、に基づき、配管10内の流体の流速及び/又は流量を算出する流量算出部302と、を含む。
第1の超音波トランスデューサ101は、例えば、第1の超音波信号を発する第1の振動子1と、第1の超音波信号が臨界角を超える角度θwi1で配管10に向かって入射するように、配管10の外表面上に配置される第1のウェッジ11と、を備える。同様に、第2の超音波トランスデューサ102は、例えば、第2の超音波信号を発する第2の振動子2と、第2の超音波信号が臨界角を超える角度θwi2で配管10に向かって入射するように、配管10の外表面上に配置される第2のウェッジ12と、を備える。配管10は、例えばステンレス鋼等の金属材料からなる金属配管である。第1及び第2のウェッジ11、12は、例えばポリエーテルイミド等のプラスチック等の合成樹脂等からなる。
超音波が等方等質の固体内を伝播する場合、縦波と横波の2種類の平面波が伝播でき、実体波(body wave)と呼ばれる。縦波と横波はそれぞれスネルの法則に従い2つの媒質の界面で屈折する。第1及び第2の超音波トランスデューサ101、102の第1及び第2のウェッジ11、12における超音波の音速をcW、配管10の管壁における超音波の音速をcPとし、第1ウェッジ11と配管10との界面に対する第1のウェッジ11からの入射角をθWi1、第2のウェッジ12と配管10との界面に対する第2のウェッジ12からの入射角をθWi2、配管10の管壁への出射角をθPとすると、スネルの法則から、下記式(1)を満足する。
sin(θWi1)/cW
=sin(θWi2)/cW
=sin(θP)/cP (1)
したがって、入射角θWの臨界角θcは、下記式(2)で与えられる。
θc=sin-1(cWi1/cP)
=sin-1(cWi2/cP) (2)
sin(θWi1)/cW
=sin(θWi2)/cW
=sin(θP)/cP (1)
したがって、入射角θWの臨界角θcは、下記式(2)で与えられる。
θc=sin-1(cWi1/cP)
=sin-1(cWi2/cP) (2)
超音波の入射角が臨界角θcを超える場合、超音波は界面で全反射し、第1及び第2のウェッジ11、12から配管10の管壁内へ平面波は伝播しない。一般に縦波より横波の方が臨界角が大きいため、入射角が横波の臨界角を超える場合には、縦波も横波も平面波としては配管10の管壁内へ伝播できないことになる。このとき、配管10の管壁内の音場は、界面に垂直な方向には指数関数的に減衰し、界面に平行な方向には周期性をもつ波動となる。この音場をエバネッセント波という。エバネッセント波のエネルギーは、界面に垂直な方向に沿って界面から波長程度の範囲に集中しており、それより深くは浸透しない(例えば、「超音波用語辞典」、2005年、工業調査会、27ページ参照。)。
例えば、配管10がステンレス鋼(SUS304)からなる場合、縦波の音速は5780m/sであり、横波の音速は3141m/sである。そのため、SUS304からなる配管10の管壁内において、例えば1MHzの超音波の縦波の波長は5.8mm、横波の波長は3.1mmとなる。したがって、管壁の厚みが数mm程度までであれば、配管10の外表面側で生じたエバネッセント波は、内表面まで浸透することができる。エバネッセント波は外表面の法線方向に平行に浸透していくのであるため、エバネッセント波の背と背、腹と腹の間隔は変わらずに内表面へと伝わる。エバネッセント波が配管10の内表面まで浸透することにより、配管10の管壁内から配管10内の流体に向かって、第1の超音波信号としての平面波が出射する。配管10の管壁の外表面と内表面における超音波振動の背と背、腹と腹の間の間隔が同じであるため、管壁部分を中抜きしてスネルの法則を適用することができる。そこで、配管10内の流体における超音波の音速をcaとして、出射する平面波の出射角θao1は、下記(3)式で与えられる。
θao1=sin-1(sinθWi1・ca/cW) (3)
θao1=sin-1(sinθWi1・ca/cW) (3)
第1の超音波信号としての平面波は配管10内の流体中を進み、配管10の管壁の出射した部分と対向する部分に入射する。そこで再びエバネッセント波が発生し、エバネッセント波は第1の超音波信号として配管10の管壁内を浸透する。さらに配管10の管壁から角度θwi1と同じ角度θwo1で第1の超音波信号としての平面波が配管外部に出射して第2の超音波トランスデューサ102で受信される。
第2の超音波トランスデューサ102から発せられた第2の超音波信号としての平面波も、臨界角を超える角度θwi2で配管10に入射し、配管10の管壁においてエバネッセント波を発生させる。エバネッセント波は、第2の超音波信号として配管10の管壁内に浸透する。エバネッセント波が配管10の内表面まで浸透することにより、配管10の管壁内から配管10内の流体に向かって、第2の超音波信号としての平面波が出射し、平面波は配管10の管壁の出射した部分と対向する部分に入射する。そこで再びエバネッセント波が発生し、エバネッセント波は第2の超音波信号として配管10の管壁内を浸透する。さらに配管10の管壁から角度θwi2と同じ角度θwo2で第2の超音波信号としての平面波が配管外部に出射して第1の超音波トランスデューサ101で受信される。
配管10の内部においては、流体が流速vで流れている。上述したように、第1の超音波トランスデューサ101は配管10内を流れる流体の上流側に配置され、第2の超音波トランスデューサ102は下流側に配置される。そのため、第1の超音波トランスデューサ101から発せられた第1の超音波信号は、配管10内の空洞部を流体の流れに従って伝播する。これに対し、第2の超音波トランスデューサ102から発せられた第2の超音波信号は、配管10内の空洞部を流体の流れに逆らって伝播する。よって、配管10内の空洞部において、第1の超音波信号の伝播時間と、第2の超音波信号の伝播時間と、で、流体の流速vによる差が生じる。
第1の超音波信号が配管10内の空洞部を横切るために必要な伝播時間t1は、下記(4)式で与えられる。
t1=L/(ca+v・cos((π/2)−θao1)) (4)
また、第2の超音波信号が配管10内の空洞部を横切るために必要な伝播時間t2は、下記(5)式で与えられる。
t2=L/(ca−v・cos((π/2)−θao2)) (5)
ここで、図3及び図4に示すように、Lは第1の超音波信号及び第2の超音波信号のそれぞれが配管10内の空洞部を横切る長さを表す。
また、θao2はθao1と等しいため、上記(5)式から、下記(6)式が得られる。
t2=L/(ca−v・cos((π/2)−θao1)) (6)
t1=L/(ca+v・cos((π/2)−θao1)) (4)
また、第2の超音波信号が配管10内の空洞部を横切るために必要な伝播時間t2は、下記(5)式で与えられる。
t2=L/(ca−v・cos((π/2)−θao2)) (5)
ここで、図3及び図4に示すように、Lは第1の超音波信号及び第2の超音波信号のそれぞれが配管10内の空洞部を横切る長さを表す。
また、θao2はθao1と等しいため、上記(5)式から、下記(6)式が得られる。
t2=L/(ca−v・cos((π/2)−θao1)) (6)
上記(4)及び(6)式より、伝播時間t2と伝播時間t1との差Δtは、下記(7)式で与えられる。
Δt=t2−t1≒(2Lv・sinθao1)/ca 2 (7)
上記(7)式より、配管10内の空洞部を流れる流体の流速vは、下記(8)式で与えられる。
v=ca 2Δt/(2L・sinθao1) (8)
ここで、出射角θao1は上記(3)式より算出可能である。長さLは、配管10の直径と出射角θao1より算出可能である。また、配管10内の空洞部を流れる流体における音速caは、流体の種類や温度によって定まる定数である。したがって、第1及び第2の超音波信号の伝搬時間の差Δtを計測することにより、配管10内の空洞部を流れる流体の流速vを算出可能である。
Δt=t2−t1≒(2Lv・sinθao1)/ca 2 (7)
上記(7)式より、配管10内の空洞部を流れる流体の流速vは、下記(8)式で与えられる。
v=ca 2Δt/(2L・sinθao1) (8)
ここで、出射角θao1は上記(3)式より算出可能である。長さLは、配管10の直径と出射角θao1より算出可能である。また、配管10内の空洞部を流れる流体における音速caは、流体の種類や温度によって定まる定数である。したがって、第1及び第2の超音波信号の伝搬時間の差Δtを計測することにより、配管10内の空洞部を流れる流体の流速vを算出可能である。
さらに、配管10内の空洞部を流れる流体の流量qは、下記(9)式から算出可能である。
q=kSv (9)
上記(9)式において、kは流量補正係数、Sは配管10の断面積を表す。配管10の内直径をDとすると、
L=D/cos(θao1))
S=πD2/4
となるため、(8)及び(9)式より、流体の流量qを以下のように表してもよい。
q=πkDca 2Δt/(4・tanθao1) (9’)
q=kSv (9)
上記(9)式において、kは流量補正係数、Sは配管10の断面積を表す。配管10の内直径をDとすると、
L=D/cos(θao1))
S=πD2/4
となるため、(8)及び(9)式より、流体の流量qを以下のように表してもよい。
q=πkDca 2Δt/(4・tanθao1) (9’)
図1ないし図4に示す時間計測部301は、第1の超音波トランスデューサ101が第1の超音波信号を発したタイミングと、第2の超音波トランスデューサ102が第1の超音波信号を受信したタイミングと、を監視し、第1の超音波信号が第1の超音波トランスデューサ101から発せられてから配管10内を経て第2の超音波トランスデューサ102に到達するまでの第1の時間を計測する。また、時間計測部301は、第2の超音波トランスデューサ102が第2の超音波信号を発したタイミングと、第1の超音波トランスデューサ101が第2の超音波信号を受信したタイミングと、を監視し、第2の超音波信号が第2の超音波トランスデューサ102から発せられてから配管10内を経て第1の超音波トランスデューサ101に到達するまでの第2の時間を計測する。
時間計測部301は、第2の時間と第1の時間の差の値を算出し、流量算出部302に伝送する。ただし、時間計測部301は、第2の時間と第1の時間の差を、直接計測してもよい。ここで、第1及び第2のウェッジ11、12及び配管10の管壁内部では、第1の超音波信号の伝播時間と、第2の超音波信号の伝播時間と、の間に、差が生じない。したがって、第2の時間と第1の時間の差は、上記(7)式で与えられる配管10内の空洞部における伝播時間t2と伝播時間t1との差Δtのみによって生じる。
流量算出部302は、例えば、上記(3)式に基づき、配管10の管壁から空洞部に出射する第1の超音波信号の出射角θao1の値を算出する。なお、流量算出部302は、予め算出された出射角θao1を記憶していてもよい。
流量算出部302は、上記(8)式の右辺の変数に算出した値を代入して、配管10内の空洞部を流れる流体の流速vを算出する。なお、流量算出部302は、第1の時間の逆数と第2の時間の逆数の差に基づいて流速を算出してもよい。また、流量算出部302は、上記(9)式の右辺の変数に算出した値を代入して、配管10内の空洞部を流れる流体の流量qを算出する。CPU300には、流量記憶装置303及び出力装置304が接続されている。流量算出部302は、算出した流体の流速v及び流量qを、流量記憶装置303に保存し、出力装置304に出力する。
本発明者らは、鋭意研究の末、以下の知見を見出した。即ち、従来のクランプオン式流量計においては、ウェッジ11と配管10の接合部において全反射が起きないよう、配管に対して臨界角を超えない角度で超音波信号を入射している。そのため、配管の管壁に、実体波が全反射されることなく進入する。また、配管の管壁の厚さによっては、実体波とともに、配管管壁内部に、伝播形態の異なる複数の種類のガイド波が発生し、混在することとなる。しかし、伝播形態の異なる超音波は、それぞれ音速が異なる。そのため、計測される超音波の伝播時間に分布が生じ、算出される流体の流速に誤差が生じる。
これに対し、本発明の実施の形態によれば、配管10に対して臨界角を超える角度で超音波信号を入射することによって、実体波を全反射させ、配管の管壁において、エバネッセント波を発生させる。これにより、配管管壁内での多重反射は起こらなくなるため、計測される流体の流速の誤差を抑制することが可能となる。
また、図5に示すように、従来のクランプオン式流量計は、配管に対して臨界角を超えない角度で超音波信号を入射しているため、配管の管壁内で、超音波の多重反射が起きる。しかし、多重反射が起きると、図6に示すように、受信側の超音波トランスデューサにおいて、波形が時間的に拡がり、振幅のピークが(1)であるか、(2)であるのか、特定するのが困難になる場合がある。これにより、超音波の伝播時間の特定も困難になることもある。これに対し、多重反射を起こさないエバネッセント波を用いることにより、受信側の超音波トランスデューサにおいて、波形の時間的な拡がりを抑制することが可能となる。そのため、信号波形が鋭くなり、超音波の伝播時間の特定が容易になる。さらに、従来のクランプオン式流量計では配管の管壁内を多重反射した超音波が配管のフランジ面などで反射して戻ってくるため、本来の超音波信号でない信号が受信側の超音波トランスデューサにおいて受信され、正しい計測に影響を及ぼす場合がある。これに対し、多重反射を起こさないエバネッセント波を用いることにより、受信側の超音波トランスデューサにおいて、本来の受信信号を高いSN比で受信することが可能となる。
(実施例)
肉厚が3.7mmであるステンレス鋼(SUS304)鋼管(40Aスケジュール40)を用意した。これに、ポリエーテルイミドからなるウェッジをそれぞれ有する送信側及び受信側超音波トランスデューサを配置した。ウェッジは、ステンレス鋼への超音波の入射角が、54°及び57°となるよう作製した。
肉厚が3.7mmであるステンレス鋼(SUS304)鋼管(40Aスケジュール40)を用意した。これに、ポリエーテルイミドからなるウェッジをそれぞれ有する送信側及び受信側超音波トランスデューサを配置した。ウェッジは、ステンレス鋼への超音波の入射角が、54°及び57°となるよう作製した。
ポリエーテルイミドにおける超音波の縦波の音速は2438m/sである。また、ステンレス鋼における超音波の縦波の音速は5780m/s、同じく横波の音速は3141m/sであるので、縦波、横波の臨界角はそれぞれ24.9°、50.9°である。入射角が50.9°を超えると超音波の実体波(縦波、横波)は配管に伝わることができなくなるため、単に角度の量的な問題ではなく、質的に異なった状態となっている。
ステンレス鋼鋼管に0.3MPaGの圧縮空気を流して、送信側超音波トランスデューサから超音波信号を発したところ、図7及び図8に示すように、入射角が54°及び57°のいずれであっても、時間的な拡がりが抑制され、かつ振幅が十分な超音波信号を、受信側超音波トランスデューサで受信できた。
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、ウェッジの材料はポリエーテルイミドに限られず、配管の材料もステンレス鋼に限られない。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、ウェッジの材料はポリエーテルイミドに限られず、配管の材料もステンレス鋼に限られない。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
1 第1の振動子
2 第2の振動子
10 配管
11 第1のウェッジ
12 第2のウェッジ
101 第1の超音波トランスデューサ
102 第2の超音波トランスデューサ
301 時間計測部
302 流量算出部
303 流量記憶装置
304 出力装置
2 第2の振動子
10 配管
11 第1のウェッジ
12 第2のウェッジ
101 第1の超音波トランスデューサ
102 第2の超音波トランスデューサ
301 時間計測部
302 流量算出部
303 流量記憶装置
304 出力装置
Claims (18)
- 流体が流れる配管に対して臨界角を超える角度で第1の超音波信号を入射させ、前記配管の管壁においてエバネッセント波を発生させる第1の超音波トランスデューサと、
前記第1の超音波信号を受信可能な位置に配置され、前記配管に対して前記角度と同じ角度で第2の超音波信号を入射させ、前記配管の管壁においてエバネッセント波を発生させる第2の超音波トランスデューサと、
前記第1の超音波信号が前記配管内を経て前記第2の超音波トランスデューサに到達するまでの第1の時間と、前記第2の超音波信号が前記配管内を経て前記第1の超音波トランスデューサに到達するまでの第2の時間と、に基づき、前記配管内の流体の流速及び/又は流量を算出する流量算出部と、
を備えるクランプオン式超音波流量計。 - 前記第1の超音波信号及び前記第2の超音波信号が、前記配管の管壁の外表面と内表面の間を前記エバネッセント波として浸透する、請求項1に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 前記第1の超音波トランスデューサが、前記第1の超音波信号を発する第1の振動子と、前記第1の超音波信号が前記臨界角を超える角度で前記配管に入射するよう、前記配管上に配置される第1のウェッジと、を備える、請求項1又は2に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 前記第2の超音波トランスデューサが、前記第2の超音波信号を発する第2の振動子と、前記第2の超音波信号が前記臨界角を超える角度で前記配管に入射するよう、前記配管上に配置される第2のウェッジと、を備える、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 前記流量算出部が、前記配管の管壁から前記配管内の空洞部に出射する前記第1及び第2の超音波信号の出射角に基づき、前記配管内の流体の流速及び/又は流量を算出する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 前記配管の管壁から前記空洞部に出射する前記第1の超音波信号の出射角が、前記第1の超音波トランスデューサから前記配管への前記第1の超音波信号の入射角、前記第1の超音波トランスデューサにおける前記第1の超音波信号の音速、及び前記空洞部を流れる流体における前記第1の超音波信号の音速に基づき算出される、請求項5に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 前記配管の管壁から前記空洞部に出射する前記第2の超音波信号の出射角が、前記第2の超音波トランスデューサから前記配管への前記第2の超音波信号の入射角、前記第2の超音波トランスデューサにおける前記第2の超音波信号の音速、及び前記空洞部を流れる流体における前記第2の超音波信号の音速に基づき算出される、請求項5又は6に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 前記配管が金属配管である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 前記流体が気体である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のクランプオン式超音波流量計。
- 流体が流れる配管に対して臨界角を超える角度で第1の超音波信号を第1の超音波トランスデューサから入射させ、前記配管の管壁においてエバネッセント波を発生させることと、
前記第1の超音波信号を受信可能な位置に配置された第2の超音波トランスデューサから前記配管に対して前記角度と同じ角度で第2の超音波信号を入射させ、前記配管の管壁においてエバネッセント波を発生させること、
前記第1の超音波信号が前記配管内を経て前記第2の超音波トランスデューサに到達するまでの第1の時間と、前記第2の超音波信号が前記配管内を経て前記第1の超音波トランスデューサに到達するまでの第2の時間と、に基づき、前記配管内の流体の流速及び/又は流量を算出することと、
を含む、流量の計測方法。 - 前記第1の超音波信号及び前記第2の超音波信号が、前記配管の管壁の外表面と内表面の間を前記エバネッセント波として浸透する、請求項10に記載の流量の計測方法。
- 前記第1の超音波トランスデューサが、前記第1の超音波信号を発する第1の振動子と、前記第1の超音波信号が前記臨界角を超える角度で前記配管に入射するよう、前記配管上に配置された第1のウェッジと、を備える、請求項10又は11に記載の流量の計測方法。
- 前記第2の超音波トランスデューサが、前記第2の超音波信号を発する第2の振動子と、前記第2の超音波信号が前記臨界角を超える角度で前記配管に入射するよう、前記配管上に配置される第2のウェッジと、を備える、請求項10ないし12のいずれか1項に記載の流量の計測方法。
- 前記配管の管壁から前記配管内の空洞部に出射する前記第1及び第2の超音波信号の出射角に基づき、前記配管内の流体の流速及び/又は流量が算出される、請求項10ないし13のいずれか1項に記載の流量の計測方法。
- 前記配管の管壁から前記空洞部に出射する前記第1の超音波信号の出射角が、前記第1の超音波トランスデューサから前記配管への前記第1の超音波信号の入射角、前記第1の超音波トランスデューサにおける前記第1の超音波信号の音速、及び前記空洞部を流れる流体における前記第1の超音波信号の音速に基づき算出される、請求項14に記載の流量の計測方法。
- 前記配管の管壁から前記空洞部に出射する前記第2の超音波信号の出射角が、前記第2の超音波トランスデューサから前記配管への前記第2の超音波信号の入射角、前記第2の超音波トランスデューサにおける前記第2の超音波信号の音速、及び前記空洞部を流れる流体における前記第2の超音波信号の音速に基づき算出される、請求項14又は15に記載の流量の計測方法。
- 前記配管が金属配管である、請求項10ないし16のいずれか1項に記載の流量の計測方法。
- 前記流体が気体である、請求項10ないし17のいずれか1項に記載の流量の計測方法。
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