JP2015201569A - 色素増感太陽電池用アノードの製造方法及び色素増感太陽電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】増感色素を吸着させた多孔質半導体層12を透明基板11上に有する色素増感太陽電池用アノード10の製造方法において、透明基板11上の予め設定した領域に、耐熱性樹脂で構成されるマスク13を形成した後、この透明基板11上に、溶射法を用いて多孔質半導体層14を形成する半導体層形成工程と、透明基板11上の領域からマスク13を除去した後、透明基板11上の領域外の多孔質半導体層12に増感色素を吸着させる色素吸着工程とを有する。色素増感太陽電池は、色素増感太陽電池用アノード10とカソードとを、隙間を有して対向配置し、色素増感太陽電池用アノード10とカソードの間に電解質を充填して製造する。
【選択図】図1
Description
この色素増感太陽電池は、増感色素を吸着させた多孔質半導体層が透明基板上に形成されたアノードと、導電層が形成されたカソードと、これらアノードとカソードの間に充填された電解質層とを、主な構成要素として構成されている(例えば、特許文献1参照)。
使用にあっては、色素増感太陽電池に太陽光が照射されると、増感色素中の電子が励起され、この励起された電子は多孔質半導体層からアノードへ注入され、外部負荷を経由してカソードへ移動する。このサイクルが繰り返されることで発電が行われる。
しかし、これらの場所に設置される太陽電池は、人の目に触れるため、例えば、都市景観やインテリア空間と調和する必要があり、高い意匠性や光透過性が求められる。
このため、光透過型の太陽電池の開発においては、光発電量と光透過量のコントロールが重要になる。一般的には、色素増感太陽電池の光起電層である二酸化チタン電極(多孔質半導体層)を薄膜化することにより、光透過性を向上させることができる。
また、二酸化チタン電極の成膜時間の短縮のため、二酸化チタン電極を溶射法により成膜する方法があるが、溶射法を用いて高い意匠性を達成するには、精度の良いマスキング技術が必要になってくる。ここで、溶射法を用いて二酸化チタン電極を成膜する場合、溶射フレームの温度は1000℃以上であるため、金属製のマスクを用いるのが一般的である。しかし、金属製のマスクを利用した場合、マスクの精密加工にコストがかかる上、ガラス基板(透明基板)に熱伝導性の良い金属が接触するため、ガラス基板内で温度差が生じてガラスが割れることもあり、生産歩留りの低下が懸念される。
前記透明基板上の予め設定した領域に、耐熱性樹脂で構成されるマスクを形成した後、該マスクが形成された前記透明基板上に、溶射法を用いて前記多孔質半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記透明基板上の前記領域から前記マスクを除去した後、前記透明基板上の前記領域外の前記多孔質半導体層に前記増感色素を吸着させる色素吸着工程とを有する。
従って、マスクで覆う領域の形状を種々変更することで、意匠性に優れ、しかも、マスクで覆う領域の面積を調整することで、光透過量と光発電量を自在にコントロール可能な、色素増感太陽電池用アノード及び色素増感太陽電池を製造できる。
まず、本発明の第1の実施の形態に係る色素増感太陽電池用アノード(光起電極)の製造方法で製造した色素増感太陽電池用アノードについて説明する。
図1(A)〜(D)に示すように、色素増感太陽電池用アノード(以下、単にアノードともいう)10は、透明基板11上に多孔質半導体層(以下、単に半導体層ともいう)12を溶射法により形成したものであり、この多孔質半導体層12に増感色素を吸着(担持)させている。以下、詳しく説明する。
これにより、溶射法を用いて透明基板11上に半導体層12を形成するに際し、透明基板11は、加わる溶射時の熱に対して、高い耐熱性を有することができる。
なお、透明基板は、上記材質に限定されるものではなく、例えば、適度の耐熱性を有するPEN樹脂、PET樹脂などで、厚さ50〜300μm程度の透明樹脂製フィルムを使用することもできる。このように、透明樹脂を用いる場合、屈曲性を有する樹脂製フィルムを用いることで、屈曲性を有するアノードを得ることができる。
また、金属酸化物の材料は、多孔質半導体層の緻密さと多孔性をバランスよく両立させる観点から、平均粒径が、例えば10〜200nm程度の微粒子であることが好ましい。
ここで、多孔質半導体層の厚みが5μm未満の場合、半導体層の機能を十分発揮できず、変換効率が低下するおそれがある。一方、多孔質半導体層の厚みが40μmを超える場合、半導体層の機能が飽和し、光透過量の低下を招くおそれがある。
ここで、多孔質半導体層の形成領域が透明基板の面積の20%未満の場合、半導体層の機能を十分発揮できず、変換効率が低下するおそれがある。一方、多孔質半導体層の形成領域が80%を超える場合、半導体層の機能が飽和し、光透過量の低下を招くおそれがある。
また、透明基板11に多孔質半導体層12を形成する溶射法としては、例えば、高速フレーム溶射(HVOF)、コールドスプレー、フレーム溶射、爆発溶射(Dガン)、又は電気式溶射等を使用でき、その中でも高速フレーム溶射とコールドスプレーが好ましく、更には、高速フレーム溶射がより好ましい。
なお、上記増感色素を多孔質半導体層12に吸着させる方法としては、通常用いられる含浸法等の適宜の方法を使用できる。
色素増感太陽電池は、上記した増感色素を吸着させた多孔質半導体層12を透明基板11上に有する色素増感太陽電池用アノード10を用いたものであり、この色素増感太陽電池用アノード10と、カソード(対極)とが、隙間を有して対向配置され、色素増感太陽電池用アノード10とカソードの間に電解質が充填されたものである。以下、詳しく説明する。
この基板は、前記した透明基板と同様、ガラス板であってもよく、また、樹脂板であってもよい。なお、基板の厚みは、例えば、2〜5mm程度である。
また、基板に導電層を形成する方法としては、例えば、前記した溶射法や、通常用いられる成膜法等を使用できる。
色素増感太陽電池は、色素増感太陽電池用アノード10と、カソードの間に、電解質が充填され、この電解質が封止されている。
(準備工程)
まず、図1(A)に示す透明基板11を、通常用いられる方法により洗浄する。
次に、図1(B)に示すように、上記準備工程で洗浄した透明基板11上の予め設定した領域に、耐熱性樹脂で構成されるマスク13を形成する。
このマスク13は、引き続き行われる溶射時において、耐熱性を有し、また、材料の微粒子の衝突にも耐えうる樹脂で構成されれば、特に限定されるものではないが、特に紫外線硬化型の樹脂であることが好ましい。
上記した方法で、透明基板11上にマスク13を形成した後、このマスク13が形成された透明基板11上に、溶射法を用いて、図1(C)に示すように、前記した多孔質半導体層12と同等の厚みの多孔質半導体層14を形成する。
溶射装置20は、灯油等の燃料を酸素と共に燃焼室21で燃焼して高速フレームを発生させ、燃焼室21と直結した噴射ノズル22内で、霧化した材料のスラリーと高速フレームを混合し、材料の表層部を部分的に溶融させながら、バレル(噴射ノズル)23を介して高速フレームの流れで搬送し、高速フレームの流れに対して垂直に配置された透明基板11に堆積させる装置である。なお、酸素の流量は、灯油の流量よりも過剰にする。
この高速フレーム溶射法で形成した多孔質半導体層は、材料(特に、酸化チタン)の微粒子同士の結合が高く緻密で、良好な電子の移動性を得ることができるため好ましい。
また、噴射ノズルから噴射される高速フレームの速度は、噴射ノズルの先端で500m/秒以上であることが好適である。これを下回る速度の場合、堆積した材料粒子間に十分な密着強度を得ることができず、電池性能を低下させる原因となるおそれがある。
そして、噴射ノズルと透明基板との距離は、噴射ノズルの先端から100〜500mmであることが好ましいが、温度条件等によって変動する。
更に、材料粒子のスラリーに用いる分散媒は、特に限定されるものではなく、例えば、水又は水と有機溶媒との混合液であってもよい。このスラリー中の材料の含有率は、特に限定されるものではないが、効率的な堆積速度を実現でき、かつ噴射ノズルに閉塞が生じないようにするためには、5〜50質量%であることが好ましい。
この場合、まず、1パス目は、標準的な材料供給口を備えたバレル(以下、スタンダードバレルともいう)を使用し、透明基板に対する材料の密着性を高める。そして、2パス目以上は、上記バレルの先端部に、材料の吹付け範囲を広げるチップ(以下、チップバレルともいう)を設けて、吹付けられる材料の比表面積を向上させる。
これにより、透明基板11上のマスク13が存在する領域には、マスク13を介して、また、マスク13が存在しない領域には、透明基板11上に直接、多孔質半導体層14が形成される。
図1(D)に示すように、透明基板11上からマスク13を除去する。
これにより、多孔質半導体層14のうち、マスク13が存在していた領域(予め設定した領域)の多孔質半導体層は、マスク13と共に透明基板11上から除去され、マスク13が存在していなかった領域(予め設定した領域外)の多孔質半導体層は残存し、透明基板11上に多孔質半導体層12が形成される。
なお、マスク13の除去方法は、特に限定されるものではないが、マスク13として前記した紫外線硬化型の樹脂を用いた場合、例えば、50℃程度に加熱した水に10分程度浸漬させることで、透明基板11からマスク13を剥離させ、取り除くことができる。
この増感色素は、通常用いられる含浸法等の適宜の方法により、多孔質半導体層12に吸着させることができる。
上記した方法で、多孔質半導体層12に増感色素を吸着させた後は、これを十分に洗浄する。
上記した色素増感太陽電池用アノード10とカソードを準備する。
なお、カソードは、導電膜を備えた基板を、通常用いられる方法により洗浄した後、例えば、溶射法により、この基板に、導電材料の水溶液を吹付けることで得られる(基板の表面に導電層を形成したものが得られる)。なお、基板に導電層を形成した後は、例えば、所定の温度で焼成する。
この色素増感太陽電池用アノード10とカソードを、隙間を開けて対向配置し、この間に電解質を充填し、封止することで、色素増感太陽電池を製造できる。
まず、試験に用いたアノードとカソード、及び色素増感太陽電池の製造方法について、以下説明する。
アノードの多孔質半導体層と、カソードの導電層は、図2に示す溶射装置20を用いた高速フレーム溶射法により形成した。
なお、アノードの透明基板とカソードの基板には、厚さ3mmの透明導電膜付ガラスの基板(FTO基板)を用い、多孔質半導体層の材料には、二酸化チタンの粉末であるP90(日本アエロジル社製)を、導電層の材料には、塩化白金酸(関東化学社製)水溶液を、それぞれ用いた。
なお、多孔質半導体層の形成においては、上記したP90粉体を純水に20質量%加えたものを、スラリーとして用い、導電層の形成においては、塩化白金酸粉体を純水に0.1質量%加えたものを、前駆体溶液として用いた。
アノードとカソードの作製に際しては、上記した基板に、スラリー又は溶液を吹付けることで、多孔質半導体層である二酸化チタン膜と、導電層である白金膜を、それぞれ形成した。
膜厚調整は、溶射による吹付け回数(パス数)を変えることで行った。
ここで、二酸化チタン膜の成膜については、1パス目にスタンダードバレルを使用し、2パス目以上にチップバレルを使用した。また、白金膜の成膜については、スタンダードバレルを使用した。
また、カソードは、白金膜が形成された基板を、450℃で30分間焼成することで作製した。
この膜厚測定は、超精密非接触表面性状測定器(Talysurf CCI−Lite:AMETEK社)を用いて行い、また、光透過率測定は、ヘーズメータ(HZ−V3:スガ試験機社製)を利用して行った。
なお、アノードとカソードは、スペーサー入りの光硬化性樹脂を用いて封止した。
また、アノードとカソードの間の電解質は、電解液を、予め設けていた樹脂の隙間から毛細管現象を利用して封入することで充填した。この電解液には、アセトニトリルに、ヨウ化リチウム(500mM)、t−ブチルピリジン(580mM)、ヨウ素(50mM)、及びイオン液体(600mM)をそれぞれ添加した溶液を用いた。
上記方法で作製した色素増感太陽電池について、光透過率と光電変換効率の測定を行った。なお、光電変換効率の測定は、100mW/cm2に調整した擬似太陽光照射下で、I−V特性計測装置を用いて計測した。
アノードは、厚さ3mmのガラス基板を洗浄した後、ハンドプリント装置(SHP−2530V−AJ:SERIA社製)を用いて、紫外線硬化型の耐熱性樹脂をスクリーンプリントした。
次に、上記耐熱性樹脂を紫外線で硬化させてマスクを形成した後、このガラス基板に二酸化チタン膜を、溶射法により成膜した。ここで、二酸化チタンの溶射パス回数は2回に固定した。
一方、カソードは、厚さ3mmのガラス基板を洗浄した後、このガラス基板に白金膜を、溶射法により成膜した。ここで、塩化白金酸溶液の吹付け回数は5回に固定した。
一方、カソードは、白金膜を450℃で30分間焼成した。
アノードは、1cm×10cmの短冊状のセル(二酸化チタン膜)を8個並列に並べた構成であり(図1(D)参照)、この合計面積を80cm2とした。また、別のアノードとして、上記と同様の方法で、1cm×10cmの短冊状のセルを4個並列に並べ、この合計面積を40cm2としたものについても作製した。
隣り合う短冊状のセルの間には、金属配線及び保護層を設けた。
また、カソード側に電解液の注入口を穿孔した後、スペーサー入りの紫外線硬化型の樹脂を用いて、アノードとカソードの間をシーリングした。そして、注入口より電解液を充填した後、注入口を封止して、色素増感太陽電池を形成した。
上記した2種類のアノードを使用した各色素増感太陽電池について、光透過率と光電変換効率の測定を行った。
図3(A)に、ガラス基板上に溶射成膜した二酸化チタン膜のパス回数に対する膜厚を示す。また、図3(B)に、増感色素を吸着させた二酸化チタン膜の膜厚に対する光透過率を示す。
図3(A)に示すように、パス回数の増加に伴って膜厚が増加した。一方、図3(B)に示すように、二酸化チタン膜を成膜する前のガラス基板の光透過率は83.7%であったのに対し、二酸化チタンの膜厚が1.9μmのとき、ガラス基板の光透過率は40.2%、12μmのときは4.18%となり、光透過率は膜厚の増加に伴い大幅に低減した。
図4(A)に示すように、上記した二酸化チタン膜と同様、パス回数の増加に伴って膜厚が増加した。一方、図4(B)に示すように、白金膜の膜厚が20nm以上になると、光透過率は著しく低下し、膜厚が45nmのとき、光透過率は43.1%となり、非成膜時に比べて光透過率が半減した。
まず、色素増感太陽電池の光電変換効率の結果を、図5(A)に示す。
図5(A)に示すように、色素増感太陽電池の光電変換効率は、二酸化チタン膜の膜厚の増加と共に増加した。
図5(B)に示すように、色素増感太陽電池の光電変換効率が2.06%(二酸化チタン膜の膜厚:1.9μm)のとき、色素増感太陽電池の光透過率は20.3%であり、また、色素増感太陽電池の光電変換効率が4.30%(二酸化チタン膜の膜厚:12μm)のとき、色素増感太陽電池の光透過率は5.2%であった。
つまり、色素増感太陽電池の光電変換効率が増加、即ち二酸化チタン膜の膜厚が増加するほど、光透過率は減少した。
従って、二酸化チタン膜の膜厚調整によって、発電量と光透過量の両立を図ることは、非常に困難であることが分かる。
図6に、二酸化チタン膜の形成領域を種々変更した場合のI−V特性を測定した結果を示す。なお、二酸化チタン膜の形成領域は、80cm2(図6中の○印)、40cm2(図6中の×印)、0.25cm2(図6中の◆印)、とした。
二酸化チタン膜の形成領域(面積)の増大により、短絡電流密度(Jsc)と曲線因子(FF)が低減した結果、光電変換効率は、図6より、二酸化チタン膜の形成領域が0.25cm2のとき2.79%であったのに対し、80cm2のときは2.44%、40cm2のときは2.54%となった。ここで、短絡電流密度と曲線因子の低下の原因としては、金属配線による集電効果が不十分であったこと、集電配線の形成により、アノードとカソードの距離が増大したことなどが考えられる。
図7に示すように、二酸化チタン膜の形成領域を変更する方法は、二酸化チタン膜の膜厚を調整する方法に比べ、光透過量の増大に伴う光変換効率の低下を抑制できることが分った。
Claims (4)
- 増感色素を吸着させた多孔質半導体層を透明基板上に有する色素増感太陽電池用アノードの製造方法において、
前記透明基板上の予め設定した領域に、耐熱性樹脂で構成されるマスクを形成した後、該マスクが形成された前記透明基板上に、溶射法を用いて前記多孔質半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記透明基板上の前記領域から前記マスクを除去した後、前記透明基板上の前記領域外の前記多孔質半導体層に前記増感色素を吸着させる色素吸着工程とを有することを特徴とする色素増感太陽電池用アノードの製造方法。 - 請求項1記載の色素増感太陽電池用アノードの製造方法において、前記耐熱性樹脂は、紫外線硬化型の樹脂であることを特徴とする色素増感太陽電池用アノードの製造方法。
- 請求項1又は2記載の色素増感太陽電池用アノードの製造方法において、前記多孔質半導体層の材料は、酸化チタンの微粒子であることを特徴とする色素増感太陽電池用アノードの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池用アノードの製造方法を用いて製造した色素増感太陽電池用アノードと、カソードとを、隙間を有して対向配置し、前記色素増感太陽電池用アノードと前記カソードの間に電解質を充填することを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。
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